説明

細胞画像化および治療のための組成物および方法

本発明は、全般的に化学および放射性核種画像の分野に関する。より具体的には、本発明は、N4化合物および誘導体を含む組成物、キット、ならびに画像化法および療法に関する。本化合物は、金属原子にキレート化することができる。前記金属原子は、放射性ではない。前記金属原子は、銅、コバルト、白金、鉄、ヒ素、レニウム、またはゲルマニウムであってよい。前記化合物は、放射性核種にキレート化することができる。前記放射性核種は、特定の実施形態では、68Ga、90Y、99mTc、68Ga、または188Reからなる群から選択される。前記放射性核種は99mTcであってよい。本化合物は、医薬組成物に含まれ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、全般的に化学および放射性核種画像の分野に関する。より具体的には、本発明は、N4化合物および誘導体を含む組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
放射性核種画像モダリティ(陽電子放出断層撮影装置、PET;単光子放出コンピューター断層撮影、SPECT)は、放射性核種標識された化合物の位置および濃度をマッピングするものである。組織特異的な疾患治療の診断、予後、計画、および監視を改善するために、より疾患に特異的な医薬品を開発することによって、疾患組織の特性が広範に決定される。PET18F−フルオロデオキシグルコース(FDG)は、腫瘍、心筋梗塞、および神経系疾患を診断し評価するために使用されてきた。18F−FDGを使用する腫瘍代謝画像がこの20年間に研究されてきたが、その臨床診療は、入手し易さ、アベイラビリティ、およびアイソトープ費用などの要因によって未だ制限されている。さらに、18Fの化学的性質は複雑であり、長い合成時間が必要とされ(例えば、18F−FDG、40分〜75分)、多数の薬剤を同時に生成することは困難である。したがって、組織特異的な標的放射性画像および放射線治療のために金属アイソトープを使用して薬剤を標識する、簡単なキレート化技術を開発することが望ましいであろう。
【0003】
シンチグラフィーによる腫瘍画像の改善は、より腫瘍に特異的な放射性医薬品の開発から利益を得ることになろう。より高い腫瘍特異性により、放射性標識リガンドならびに放射性標識抗体は、シンチグラフィーによる腫瘍の検出に新たな時代を開き、広範な前臨床開発および評価を受けている(Mathiasら、1996年、1997年a、1997年b)。放射性核種画像モダリティ(例えば、PET、SPECT)は、放射性核種標識された放射性トレーサーの位置および濃度をマッピングする診断用断面画像技術である。CTおよびMRIによって、腫瘍の位置および程度に関する多量の解剖学的情報が得られるものの、これらの画像モダリティは一般に、浸潤性病変を、浮腫、放射線壊死、悪性度(grading)、または神経膠症と正確に区別することができない。PETおよびSPECTを使用して、代謝活性を測定することによって腫瘍を位置付け特徴付けることができる。したがって、腫瘍のより特異的な画像を可能にする方法が望ましい。
【0004】
画像化のための新規化合物を生成する一手法は、本発明の組成物とは異なるエチレンジシステイン(EC)誘導体の使用を含むものであった。幾つかの化合物が、窒素および硫黄キレートを使用して99mTcで標識されている(Blondeauら、1967年;Davisonら、1980年)。ジアミノジチオール化合物とも呼ばれるビス−アミノエタンチオール四座リガンドは、オキソテクネチウム基と、2つのチオール硫黄原子および2つのアミン窒素原子との効率的な結合をベースとして、非常に安定なTc(V)O錯体を形成することが知られている。99mTc−2−ピロールチオン(pyrrolthione)錯体で標識された2−ピロールチオンの放射性金属錯体は、画像および療法用の放射性医薬品として使用するために開発された(特許文献1)。99mTc−L,L−エチレンジシステイン(99mTc−EC)は、最近の成功しているNキレートの一例である。ECは、高い放射化学的純度および安定性により容易かつ効率的に99mTcで標識することができ、活発な尿細管輸送によって腎臓を介して排出される(Surmaら、1994年;Van Neromら、1990年、1993年;Verbruggenら、1990年、1992年)。さらに、エチレンジシステイン(EC)とキレート化され、様々なリガンドと結合した99mTcは、予後用の手段としての、および哺乳動物体内の特定部位に治療剤を送達するための手段として、組織特異的疾患用の造影剤として使用するために開発された(WO0191807A2、AU0175210A5)。99mTc−EC−キレートは、腎臓の画像および腎臓機能の検査のために開発された(米国特許第5,986,074号および米国特許第5,955,053号)。99mTc−EC錯体の調製方法および前記方法を実施するためのキットも開発されている(米国特許第5,268,163号およびWO9116076A1)。特許文献2には、エチレンシステイン薬物複合体が開示されており、参照によってその全体を本明細書に組み込む。
【特許文献1】国際公開第01/80906号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,691,724号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、組織特異的な標的放射性画像および放射線治療に使用できる、金属アイソトープを使用する標識薬剤の簡単なキレート化技術に関する化合物および方法を提供する。
【0006】
本発明の一態様は、標的リガンドに結合したN4化合物を含む化合物を対象とし、ここでN4化合物は次式を含む
【0007】
【化2】

[式中、A、A、A、およびAは、それぞれ独立に−(CH−であり、X=2〜4であり;A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である場合、前記標的リガンドは、疾患受容体標的リガンド、疾患細胞周期リガンド、腫瘍血管形成標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、および保護基からなる群から選択され;A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である場合、前記標的リガンドは、疾患受容体標的リガンド、疾患細胞周期リガンド、腫瘍血管形成標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、および保護基からなる群から選択される]。幾つかの実施形態では、A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−であり、前記標的リガンドは疾患受容体であり得る。前記疾患受容体は、腫瘍標的リガンドであり得る。前記標的リガンドは、テトラ酢酸マンノース、α−β−チロシン、チロシン、チロシン誘導体、エストロン、タモキシフェン、およびαメチルチロシンからなる群から選択され得る。前記疾患受容体は、グルコース輸送体、エストロゲン受容体、またはアミノ酸輸送体であり得る。幾つかの実施形態では、A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−であり、前記標的リガンドは、保護基であり得る(例えば、トリフルオロ酢酸エチル)。幾つかの実施形態では、A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−であり、前記標的リガンドは疾患受容体であり得る。前記疾患受容体は、腫瘍標的リガンド、グルコース輸送体、エストロゲン受容体、またはアミノ酸輸送体であり得る。前記標的リガンドは、テトラ酢酸マンノース、α−β−チロシン、チロシン、チロシン誘導体、エストロン、タモキシフェン、およびαメチルチロシンからなる群から選択され得る。幾つかの実施形態では、A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−であり、前記標的リガンドは、保護基(例えば、トリフルオロ酢酸エチル)であり得る。
【0008】
幾つかの実施形態では、標的リガンドは、アミフォスチン、アンギオスタチン、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、乳糖、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、およびトリメチルリシンからなる群から選択される。COX−2阻害剤は、セレコキシブ、ロフェコキシブ、およびエトリコキシブからなるリストから選択され得る。幾つかの実施形態では、標的リガンドは、テトラ酢酸マンノース、α−β−チロシン、チロシン、チロシン誘導体、エストロン、タモキシフェン、αメチルチロシン、およびトリフルオロ酢酸エチルからなる群から選択される。標的リガンドは、抗癌化合物であり得る。標的リガンドは、疎水性であり得る。前記化合物は、疎水性であり得る。標的リガンドは糖であり得る。幾つかの実施形態では、A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である。幾つかの実施形態では、A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である。幾つかの実施形態では、A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である。幾つかの実施形態では、A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である。幾つかの実施形態では、A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である。幾つかの実施形態では、A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である。幾つかの実施形態では、A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である。幾つかの実施形態では、A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である。幾つかの実施形態では、A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である。幾つかの実施形態では、A=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−であり、Aが−(CH−でない場合、またはA=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−であり、Aが−(CHでない場合、前記標的リガンドは、疾患受容体標的リガンド、疾患細胞周期リガンド、腫瘍血管形成標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、および保護基からなる群から選択され得る。標的リガンドは、疾患受容体標的リガンドであり得る。前記疾患受容体標的リガンドは、腫瘍標的リガンド、グルコース輸送体、エストロゲン受容体、アミノ酸輸送体、または保護基(例えば、トリフルオロ酢酸エチル)であり得る。
【0009】
幾つかの実施形態では、化合物は次式を有すると定義される
【0010】
【化3】

[式中、A、A、A、およびAは、それぞれ独立に−(CH−であり、X=2〜4であり、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素、
【0011】
【化4】

からなる群から選択され、
は、
【0012】
【化5】

からなる群から選択される]。
【0013】
本化合物は、金属原子にキレート化することができる。前記金属原子は、放射性ではない。前記金属原子は、銅、コバルト、白金、鉄、ヒ素、レニウム、またはゲルマニウムであってよい。前記化合物は、放射性核種にキレート化することができる。前記放射性核種は、99mTc、188Re、186Re、183Sm、166Ho、90Y、89Sr、67Ga、68Ga、111In、183Gd、59Fe、225Ac、212Bi、211At、45Ti、60Cu、61Cu、67Cu、64Cu、または62Cuであってよい。特定の実施形態では、前記放射性核種は、68Ga、90Y、99mTc、68Ga、または188Reからなる群から選択される。前記放射性核種は99mTcであってよい。本化合物は、医薬組成物に含まれ得る。
【0014】
本発明の別の態様は、対象に本発明の化合物を投与することを含む癌の治療方法に関する。対象は、ヒトなどの哺乳動物であり得る。化合物は、99mTc、188Re、186Re、183Sm、166Ho、90Y、89Sr、67Ga、68Ga、111In、183Gd、59Fe、225Ac、212Bi、211At、45Ti、60Cu、61Cu、67Cu、64Cu、または62Cuにキレート化することができる。化合物は、第2の抗癌化合物、放射線療法、または手術と組み合わせて投与することができる。
【0015】
本発明の別の態様は、対象に本発明の化合物を投与することを含む画像化法に関する。対象は、ヒトなどの哺乳動物であり得る。化合物は、99mTc、188Re、186Re、183Sm、166Ho、90Y、89Sr、67Ga、68Ga、111In、183Gd、59Fe、225Ac、212Bi、211At、45Ti、60Cu、61Cu、67Cu、64Cu、または62Cuにキレート化することができる。前記画像は、PET画像またはSPET画像を含むことができる。
【0016】
本発明の別の態様は、本発明の化合物および還元剤を含むキットに関する。このキットは、放射性核種を含むことができる。放射性核種は、99mTc、188Re、186Re、183Sm、166Ho、90Y、89Sr、67Ga、68Ga、111In、183Gd、59Fe、225Ac、212Bi、211At、45Ti、60Cu、61Cu、67Cu、64Cu、または62Cuであってよい。キットは、抗酸化剤(例えば、ビタミンC、トコフェロール、ピリドキシン、チアミン、またはルチン)を含むことができる。キットは、遷移キレート化剤(例えばグルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルカリン酸塩、クエン酸塩、または酒石酸塩)を含むことができる。還元剤は、塩化スズ(II)またはトリフェニルホスフィンであってよい。
【0017】
「a」または「an」という用語の使用は、請求の範囲および/または本明細書において「含む」という用語と共に使用される場合には「1つ」を意味することができるが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味とも一致する。本明細書で使用される「別の」は、少なくとも1つの第2のものまたはそれ以上のものを意味する。
【0018】
本明細書で論じられる任意の実施形態は、本発明の任意の方法または組成物に関連して実施され得、その逆もまた同様であることが企図される。さらに本発明の組成物を使用して、本発明の方法を実現することができる。
【0019】
本願を通して「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために使用される装置、方法に固有の誤差変動、または研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0020】
請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替のみを指すことが明確に示されない、またはその代替が相互排他的でない場合、「および/または」を意味するために使用される。
【0021】
本明細書および請求の範囲(複数項)で使用される、「含んでいる(comprising)」(ならびに、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含んでいるという任意形態)、「有している(having)」(ならびに、「有する(have)」および「有する(has)」などの有しているという任意形態)、「含んでいる(including)」(ならびに、「含む(includes)」および「含む(include)」などの含んでいるという任意形態)、または「含有している(containing)」(ならびに、「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの含んでいるという任意形態)という用語は、包括的またはオープンエンドであり、列挙されていない追加の要素または方法ステップを排除するものではない。
【0022】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになろう。しかし、本発明の精神および範囲内の様々な変化および改変は、この詳細な説明から当業者には明らかであるはずなので、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の特定の実施形態を示すが、例示目的のみによって与えられるものであることを理解されたい。
【0023】
以下の図は本明細書の部分を形成し、本発明の幾つかの態様をさらに示すために含まれるものである。本発明は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と共にこれらの図の1つまたは複数を参照することによってより理解され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
核医学分野では、少量の体内投与された放射活性標識トレーサー化合物(放射性トレーサーまたは放射性医薬品と呼ばれる)の分布を検出することによって、幾つかの病的状態の位置が特定され、またはそれらの程度が評価される。これらの放射性医薬品の検出方法は、一般に画像法または放射性画像法として知られている。
【0025】
I.定義
「アルキル」基は、直鎖、分岐鎖、および環式アルキル基を含む脂肪族飽和炭化水素を指す。アルキル基は、非環式および環式サブユニットの任意の組合せを含むことができる。さらに、特に本明細書で使用される「アルキル」という用語には、飽和基ならびに不飽和基が含まれる。不飽和基は、1つまたは複数の(例えば1つ、2つ、または3つの)二重結合および/または三重結合を含む。好ましくは、アルキルは飽和である。「アルキル」という用語には、飽和および不飽和のアルキル基が含まれる。置換されている場合、その置換基(複数)は、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、NO、N(CH、アミノ、またはSHであってよい。好ましくは、アルキル基は1〜12個の炭素を有する。より好ましくは、1〜7個の炭素、より好ましくは2〜4個の炭素の低級アルキルであり、より好ましくは−CH−CH−、−CH−CH−CH−、および−CH−CH−CH−CH−からなる群から選択される。
【0026】
「結合する」および「結合した」という用語は、本明細書では同じ分子内の化学的結合と定義される。例えば、2つ以上の分子および/または原子は、共有結合によって一緒になって結合し、単一分子を形成することができる。2つの分子が直接連結によって互いに結合することができ(例えば、化合物が共有結合によって直接結合する)、または化合物は、間接連結によって結合することができる(例えば、2つの化合物が、1つまたは複数のリンカーと共有結合して、単一分子を形成する)。他の場合では、金属原子が、キレート化相互反応によって分子と結合することができる。
【0027】
「N4誘導体」という用語は、本明細書では少なくとも1つの他の分子または原子と結合したN4化合物と定義される。幾つかの実施形態では、誘導体は、キレート化された原子を有するN4化合物を含む。N4誘導体は、標的リガンドに結合し(例えば共有結合によって)、かつ/またはリンカーに結合し(例えば共有結合によって)、かつ/または金属キレートに結合する(例えばキレート化相互反応によって)N4化合物を含むことができる。
【0028】
本明細書で使用されるように「放射性核種」という用語は、特定の実施形態では、粒子または電磁放射線の放出によって崩壊する放射性核種(測定可能な寿命の間で存在することができ、核のその電荷、質量、数、および量子状態によって区別されるある種の原子)と定義される。この用語は、「ラジオアイソトープ」という用語と同義に使用することができる。
【0029】
本明細書で使用される「治療剤」という用語は、疾患または病状の治療をもたらす薬剤と定義される。特定の実施形態における薬剤は、疾患または病状の少なくとも1つの症候またはパラメータを改善する。例えば腫瘍療法では、治療剤は腫瘍の寸法を縮小し、腫瘍の増殖もしくは転移を阻害もしくは防止し、または腫瘍を排除する。具体例には、抗癌薬などの薬物、遺伝子療法組成物、放射性核種、ホルモン、栄養補助食品、またはそれらの組合せが含まれる。
【0030】
本明細書で使用される「腫瘍」という用語は、組織内の細胞の制御されない進行性増殖と定義される。当業者は、新生物または悪性腫瘍などの他の同義語の存在を知っている。特定の実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。他の特定の実施形態では、原発性または転移形態としての腫瘍は、肝臓、前立腺、膵臓、頭頸部、胸部、脳、結腸、アデノイド、口、皮膚、肺、精巣、卵巣、頸部、子宮内膜、膀胱、胃、および上皮などの癌に由来する。
【0031】
本明細書で使用される「薬物」という用語は、疾患もしくは病状の治療の助けとなる、または疾患もしくは病状に関連した任意の生理学的もしくは病理学的状態を制御もしくは改善する化合物と定義される。
【0032】
本明細書で使用される「抗癌薬」という用語は、固形腫瘍などの癌の治療のための薬物と定義される。抗癌薬は、腫瘍の寸法を縮小し、腫瘍の増殖もしくは転移を阻害もしくは防止し、および/または腫瘍を排除することが好ましい。「抗癌(anticancer)薬」、「抗癌(anti−cancer)薬」、および「抗癌化合物」という用語は、本明細書では同義に使用される。
【0033】
本明細書で使用される「a」または「an」は、1つまたは複数を意味することができる。請求の範囲(複数項)で使用されるように、「含む」という用語と共に使用される場合には、「a」または「an」という用語は、1つまたは2つ以上を意味することができる。本明細書で使用される「別の」は、少なくとも1つの第2のものまたはそれ以上のものを意味することができる。
【0034】
II.N4化合物および誘導体
本発明は、一般に疎水性キレート化剤であるN4化合物が疎水性分子と結合して、画像化および放射線治療を含む目的で使用される新規化合物を生成し得る方法を提供する。幾つかのN4化合物は、Sigma chemical company(ミズーリ州セントルイス)およびAldrich Chemical company(ウィスコンシン州ミルウォーキー)などの市販の供給源から得ることができる。米国特許第5,880,281号には、幾つかのN4化合物を生成するための方法が記載されている。
【0035】
本明細書では、N4化合物は、構造
【0036】
【化6】

[式中、A、A、A、およびAは、アルキルであり、
、R、R、およびRは、水素である]
を有すると定義される。幾つかのN4化合物を以下に示す。
【0037】
N4化合物の構造
【0038】
【化7】

1)登録番号:294−90−6
CAインデックス名:1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(6CI,8CI,9CI)
他の名称:サイクレン(Cyclen);NSC629374;テトラアザ−12−クラウン−4
【0039】
【化8】

2)登録番号:295−14−7
CAインデックス名:1,4,7,10−テトラアザシクロトリデカン(6CI,8CI,9CI)
他の名称:サイクラム(Cyclam)13
【0040】
【化9】

3)登録番号:52877−36−8
CAインデックス名:1,4,7,11−テトラアザシクロテトラデカン(9CI)
他の名称:イソサイクラム
【0041】
【化10】

4)登録番号:295−37−4
CAインデックス名:1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン(6CI,7CI,8CI,9CI)
他の名称:サイクラム;JM1498;NSC180811
【0042】
【化11】

5)登録番号:15439−16−4
CAインデックス名:1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン(8CI,9CI)
他の名称:サイクラル(Cyclal)
【0043】
【化12】

6)登録番号:24772−41−6
CAインデックス名:1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカン(8CI,9CI)
【0044】
【化13】

7)登録番号:43031−32−9
CAインデックス名:1,5,9,13−テトラアザシクロヘプタデカン(9CI)
【0045】
【化14】

8)登録番号:68966−28−9
CAインデックス名:1,5,10,14−テトラアザシクロオクタデカン(9CI)
【0046】
【化15】

9)非存在化合物
名称:1,5,9,14−テトラアザシクロオクタデカン
【0047】
【化16】

10)非存在化合物
名称:1,5,10,15−テトラアザシクロノナデカン
【0048】
【化17】

11)登録番号:3713−77−7
CAインデックス名:1,6,11,16−テトラアザシクロエイコサン(8CI,9CI)
:非存在化合物
:市販入手不可能
N4化合物は、キレート化剤として使用することができる。例えば、サイクラムおよび他のN4化合物は、急性カドミウム中毒を緩和するそれらの能力について試験された(Srivastavaら、1996年)。米国特許第4,141,654号には、アクチニドイオンをキレート化するために使用できる、N4化合物に類似の構造を有する幾つかの化合物が記載されている。米国特許第5,648,063号には、金属イオンをキレート化することができ、幾つかのNMR診断手順でも使用できる、N4化合物に類似の構造を有する化合物が開示されている。米国特許第6,071,490号は、PET画像のために改変されたサイクレンを利用している。米国特許第6,613,305号には、様々なN4化合物に結合したビタミンB12が開示されている。
【0049】
A.標的リガンド
本発明では一般に、標的部分(例えば、疎水性抗癌薬)をN4化合物に結合させることが好ましい。しかし幾つかの実施形態では、標的部分に結合していないN4化合物は、画像および療法に使用できる。標的部分は、幾つかの方法によってN4化合物に結合させることができる。一方法は、ハロゲン(例えばヨウ化)標的部分を合成することである。例えば、標的部分(例えば疎水性分子)のヒドロキシ基は、トシル−、メシル−、トリフラート、またはハロゲン(例えばヨウ化)基に変換することができる。反応条件は、一般に有機溶媒(ジメチルホルムアミド、DMF)中で実施される。本発明の幾つかの実施形態では、最終生成物は、塩酸塩形成後に水に溶解する。あるいはN4化合物を標的部分に結合させる別の方法は、スルホン酸(例えば、トシル−、メシル−、またはトリフラート)標的部分を合成することである。N4化合物上の二置換、三置換、または全ての置換基は、これらのヨウ化またはスルホン酸標的薬剤を反応させることによって調製できる。一置換については、窒素基の選択的保護が必要である。N4化合物と結合できる標的リガンドには、アミノ酸(例えば、チロシン、セリン)、アミノ酸誘導体(例えば、αメチルチロシン)、タモキシフェン、エストロン、およびテトラ酢酸マンノースが含まれる。
【0050】
他のリガンドも、N4化合物に結合することができる。一般に、本発明に関連して使用されるリガンドは、一方または両方の酸の手でN4化合物と反応し、共有結合することができるハロゲン基またはヒドロキシ基を有するはずである。本発明における使用に企図されるリガンドには、それに限定されるものではないが、血管新生/抗血管新生リガンド、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、解糖マーカー、代謝拮抗リガンド、アポトーシス/低酸素リガンド、DNA挿入剤、受容体マーカー、ペプチド、ヌクレオチド、抗生物質または抗真菌剤などの抗菌剤、臓器特異的リガンドおよび糖、ならびにグルコース擬態薬剤が含まれる。
【0051】
ヒドロキシ基またはハロゲン化物を有するか、あるいはその構造に導入されたヒドロキシ基またはハロゲン基を有することができる(例えば、側鎖の添加によって、または標的リガンド内のフェノール基にハロゲン基を結合させることによって)、知られているまたは後に発見され得る実質的に任意の標的リガンドを、本発明で使用できることが企図される。幾つかの実施形態では、標的リガンドは、N4化合物に直接結合することができ(例えば、標的リガンドおよびN4化合物の間の共有結合によって)、または標的リガンドは、リンカーを介してN4化合物に間接的に結合することができる。ECなどの既に別の(非N4化合物)キレート化剤に結合していた標的リガンドが、本発明のN4化合物に結合し、治療目的に使用できることが想定される。幾つかの場合には、標的リガンドをN4化合物と共有結合させるために、標的リガンドを修飾する必要があり得る(例えば、ヒドロキシルまたはハロゲンを含有する側鎖を添加する)。例えば、EC化合物とのリガンドの共有結合は、一般に水中で実施され、幾つかの場合には有機溶媒中の反応を利用することによって標的リガンドをN4化合物と共有結合させることが好ましい。これらの場合には、水中での反応によってECと共有結合することができる標的リガンドを修飾して(例えばハロゲン基またはヒドロキシ基をその構造に導入することができる)、有機溶媒中での反応によって、標的リガンドをN4化合物に共有結合させることができる。
【0052】
N4誘導体は、腫瘍(例えば、癌性、前癌性、良性)、腫瘍血管形成、低酸素症、アポトーシス欠陥、疾患受容体(例えば、癌を示す細胞受容体)、疾患機能的経路(例えば、疾患状態によって変えられた代謝経路)、および疾患細胞周期を標的にするために使用できる。さらにN4誘導体は、これらの生化学的過程で医薬品の有効性を評価するために使用することができる。
【0053】
N4誘導体はまた、診断用手段として、および/またはある種の治療への応答を予測するために使用することができる。例えば、タモキシフェン(エストロゲン受容体標的リガンド)を含むN4誘導体は、癌性腫瘍を画像化するために使用することができる。この例では画像は、癌性細胞がどの程度エストロゲン受容体を発現するかなどの疾患についての重要な情報を提供することができ、エストロゲン受容体を発現する細胞を標的にする治療に対して、疾患がどの位応答するかを予測するために使用することができる(例えば、癌性腫瘍が高レベルのエストロゲン受容体を選択的に発現すると同定される場合、その癌性細胞が、エストロゲン受容体を発現する細胞を標的にする治療量の抗癌剤に応答する可能性が高いことがこの情報によって示される)。この手法は、「画像誘導療法」と呼ばれる。
【0054】
N4化合物を組織標的リガンドに結合させる利点は、その組織標的リガンドの特異的結合特性が、対象となる領域にわたって放射性信号を集中させ得るということである。画像および/または療法に使用されるN4誘導体は、癌性腫瘍、前癌性腫瘍、疾患受容体、低酸素組織(低酸素症)、アポトーシス経路、疾患細胞周期、および/または疾患機能的経路を標的にするように設計された標的リガンドに結合したN4化合物を含み得ることが想定される。N4誘導体はまた、様々な代謝および/または生化学経路または個体反応に対する医薬品の有効性を評価するために使用することができる。本発明で使用できる幾つかの標的リガンドの例を、表1に見ることができる。幾つかの実施形態では、抗癌薬は、標的リガンドとして使用することができる。抗癌薬は、当技術分野では周知である(例えば、Connors、1996年)。米国特許第6,691,724号の表2には、本発明の様々な実施形態において標的リガンドとして使用することができる抗癌薬の幾つかの例が列挙されている。
【0055】
【表1】

1.腫瘍血管形成標的
本明細書を通して「腫瘍血管形成標的」は、腫瘍新血管形成および腫瘍細胞に結合する薬剤の使用を指す。この目的で使用される薬剤は、腫瘍血管床の寸法の測定および腫瘍体積の測定を含む様々な腫瘍測定の実施に使用されることが当業者には知られている。これらの薬剤の幾つかは、血管壁に結合する。当業者には、この目的での使用に入手可能な薬剤が思い当たるはずである。腫瘍血管形成標的リガンドは、先に定義の腫瘍血管形成標的の目的で使用されるリガンドである。腫瘍血管形成標的リガンドの例には、血管形成に対する生化学的過程の評価のために開発されたセレコキシブ、C225、ハーセプチン、アンギオスタチン、およびサリドマイドが含まれる。
【0056】
幾つかの実施形態では、腫瘍標的リガンドは、腫瘍細胞に関連する低酸素を標的にすることによって腫瘍組織に関連し得る。低酸素組織を標的にする腫瘍標的リガンドの例には、ニトロイミダゾールおよびメトロニダゾールが含まれ、これらのリガンドは、癌以外の理由により(例えば卒中)低酸素になっている他の低酸素組織を標的にするために使用することもできる。
【0057】
2.腫瘍アポトーシス標的
「腫瘍アポトーシス標的」は、アポトーシス状態にある、またはアポトーシス状態になる危険性のある細胞に結合する薬剤の使用を指す。これらの薬剤は一般に、腫瘍などの細胞集団におけるアポトーシスまたはプログラム細胞死の程度または危険性の指標を提供するために使用される。当業者には、この目的で使用される薬剤が思い当たるはずである。アポトーシス標的薬剤の幾つかの例を表1に示す。「腫瘍アポトーシス標的リガンド」は、この段落で定義される「腫瘍アポトーシス標的」を実施することができるリガンドである。腫瘍アポトーシスリガンドの例には、TRAIL(TNF−関連アポトーシス誘発性リガンド)モノクローナル抗体が含まれる。TRAILは、様々な形質転換細胞株においてアポトーシスを急速に誘発する腫瘍壊死因子リガンドファミリーのメンバーである。腫瘍アポトーシス標的リガンドの他の例には、4アミノ酸配列アスパラギン酸−グルタミン酸−バリン−アスパラギン酸を含む、ペプチドまたはポリペプチドなどのカスパーゼ−3基質が含まれる。
【0058】
重要な研究が、癌細胞に対するアポトーシス感受性を修復するなどのアポトーシスに影響を及ぼす新規化合物の創製および評価を対象としている(Reed、2003年)。本発明を使用して、知られているおよび/または後に発見される腫瘍アポトーシス標的化合物の評価および/または有効性を促進できることが想定される。
【0059】
3.疾患受容体標的
「疾患受容体標的」では、幾つかの薬剤が、癌などの疾患状態に過剰発現している幾つかの細胞受容体に結合するそれらの能力を利用される。標的とされるかかる受容体の例には、エストロゲン受容体、アミノ酸輸送体、アンドロゲン受容体、下垂体受容体、トランスフェリン受容体、プロゲステロン受容体、およびグルコース輸送体が含まれる。疾患−受容体標的に適用することができる薬剤の例を、表1に示す。疾患受容体標的リガンド(例えば、ペンテトレオチド、オクトレオチド、トランスフェリン、および下垂体ペプチド)は、それらの幾つかが特定の細胞に過剰発現する細胞受容体と結合する。
【0060】
エストロゲン、エストロン、およびタモキシフェンは、エストロゲン受容体を標的とする。エストロゲン受容体は、ある種の癌に過剰発現し、幾つかの実施形態では、エストロゲン受容体標的リガンドを含むN4誘導体を使用して、腫瘍を画像化することができる。エストロゲン受容体の発現はまた、骨粗鬆症および子宮内膜症の疾患では変化する。エストロゲン受容体標的リガンドを含むN4誘導体を使用して、骨粗鬆症および子宮内膜症などの他の疾患を画像化できることが期待されている。
【0061】
グルコース輸送体は、幾つかの癌性細胞などの様々な疾患細胞に過剰発現する。テトラ酢酸マンノース、デオキシグルコース、幾つかの多糖類(例えば、ネオマイシン、カナマイシン、トブラマイシン)、および単糖類(例えばグルコサミン)もグルコース輸送体に結合し、疾患受容体標的リガンドとして使用することができる。これらのリガンドは免疫原性ではなく、血漿から素早く除去されるので、受容体画像は抗体画像と比較してより見込みがあるように思われる。
【0062】
同様にアミノ酸輸送体も、幾つかの癌性細胞などの様々な疾患細胞に過剰発現する。アミノ酸および/またはアミノ酸誘導体(例えば、セリン、チロシン、αメチルチロシン)は、疾患受容体標的リガンドとして使用することができる。
【0063】
さらなる受容体標的リガンドが利用可能であり、N4化合物に結合することができる。疾患受容体標的リガンドの他の例には、黄体形成ホルモンおよびトランスフェリンが含まれる。葉酸、葉酸塩、トムデックス、およびメトトレキサートは、葉酸塩受容体に結合する疾患受容体標的リガンドの例である。
【0064】
「腫瘍標的」は、腫瘍(例えば、癌性、前癌性、および/または良性)と優先的に関連する化合物の能力を指す。「腫瘍標的リガンド」は、非腫瘍組織と比較して腫瘍組織に優先的に結合または関連する化合物を指す。優先的に腫瘍を標的にするリガンド(例えば、小分子または抗体)は、当技術分野で周知であり、現在知られているまたは後に発見され得る腫瘍標的リガンドが、本発明で使用できることが期待される。
【0065】
4.疾患細胞周期標的
疾患細胞周期標的は、増殖細胞内で亢進される薬剤標的を指す。この目的で使用される化合物を使用して、腫瘍細胞DNA含量などの細胞中の様々なパラメータを測定することができる。
【0066】
幾つかの疾患細胞周期標的リガンドは、ヌクレオシド類似体である。例えば、ピリミジンヌクレオシド(例えば、2’−フルオロ−2’−デオキシ−5−ヨード−1−β−D−アラビノフラノシルウラシル[FIAU]、2’−フルオロ−2’−デオキシ−5−ヨード−1−β−D−リボフラノシルウラシル[FIRU]、2’−フルオロ−2’−5−メチル−1−β−D−アラビノフラノシルウラシル[FMAU]、2’−フルオロ−2’−デオキシ−5−ヨードビニル−1−β−D−リボフラノシルウラシル[IVFRU])およびアシクログアノシン:9−[(2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エトキシ)メチル]グアニン(GCV)および9−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシ−メチル)ブチル]グアニン(PCV)(Tjuvajevら、2002年;Gambhirら、1998年;Gambhirら、1999年)および他の18F−標識アシクログアノシン類似体、例えば8−フルオロ−9−[(2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エトキシ)メチル]グアニン(FGCV)(Gambhirら、1999年;Namavariら、2000年)、8−フルオロ−9−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン(FPCV)(Gambhirら、2000年;Iyerら、2001年)、9−[3−フルオロ−1−ヒドロキシ−2−プロポキシメチル]グアニン(FHPG)(Alauddinら、1996年;Alauddinら、1999年)、ならびに9−[4−フルオロ−3−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン(FHBG)(AlauddinおよびConti、1998年;Yaghoubiら、2001年)が、野生型および突然変異型(Gambhirら、2000年)HSV1−tk発現の画像化のためのレポーター基質として開発されている。当業者には、疾患細胞周期標的のために使用されるこれらおよび他の薬剤が思い当たるはずである。
【0067】
疾患標的リガンドの例には、例えばアデノシンおよびペンシクロビルが含まれる。抗ウィルス性ヌクレオシド類似体FHBG(ペンシクロビル類似体)、別の疾患標的リガンドが、PETを使用する細胞増殖のin vivo測定のために用意され(Alauddinら、2001年)、類似の標的リガンドが本発明で使用できることが期待される。
【0068】
5.低酸素疾患標的
疾患細胞低酸素標的は、低酸素細胞内で亢進される薬剤標的を指す。この目的で使用される化合物を使用して、腫瘍細胞低酸素症、抵抗性、または残留物含有量などの細胞における様々なパラメータを測定することができる。
【0069】
幾つかの疾患細胞低酸素標的リガンドには、2−または5−ニトロイミダゾール類似体が含まれる。例えば、ミソニダゾール(2−ニトロイミダゾール)およびメトロニダゾール(5−ニトロイミダゾール)類似体。
【0070】
6.解糖疾患標的
疾患細胞解糖標的は、細胞内のグルコース利用によって亢進される薬剤標的を指す。この目的で使用される化合物を使用して、腫瘍細胞増殖、炎症の程度などの細胞における様々なパラメータを測定することができる。疾患細胞解糖標的リガンドには、グルコース、ガラクトース、マンノース、およびリボース類似体が含まれる。
【0071】
B.リンカー
アミノ基またはヒドロキシ基が利用できない場合(例えば、酸性官能基)でも、本発明の方法を使用して、エチレンジアミン、アミノプロパノール、ジエチレントリアミン、アスパラギン酸、ポリアスパラギン酸、グルタミン酸、ポリグルタミン酸、またはリシンなどのリンカーを添加することによって、所望のリガンドを、N4化合物(放射性標識されていても、またはされていなくてもよい)に結合させることができる。例えば、米国特許第6,737,247号には、本発明で使用できる幾つかのリンカーが開示されており、権利放棄することなく参照によってその全体を本明細書に組み込む。米国特許第5,605,672号には、本発明のリンカーとして使用できる幾つかの「好ましい主鎖」が開示されており、参照によってその全体を本明細書に組み込む。幾つかの実施形態では、N4化合物はリンカーと結合することができ、そのリンカーは、標的リガンドと結合する。他の実施形態では、1つまたは複数のリンカーを使用することができる。例えば、N4化合物はリンカーと結合することができ、そのリンカーは第2のリンカーに結合し、その第2のリンカーが標的リガンドに結合する。幾つかの実施形態では、一緒になって結合する2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のリンカーを使用して、N4化合物および標的リガンドに結合することができる。しかし一般に、N4化合物および標的リガンドに結合する単一リンカーのみを使用することが好ましい。
【0072】
C.N4誘導体
「N4誘導体」という用語は、少なくとも1つの他の分子または原子に結合したN4化合物と本明細書では定義される。幾つかの実施形態では、この誘導体は、キレート化された原子を有するN4化合物を含む。N4誘導体は、標的リガンドに結合している(例えば共有結合により)および/またはリンカーに結合している(例えば共有結合により)および/または金属キレートに結合している(例えばキレート化相互反応)N4化合物を含むことができる。
【0073】
本発明の幾つかの実施形態は、N4誘導体、N4誘導体の生成方法、およびN4誘導体の使用に関する。幾つかの実施形態では、N4誘導体は、式
【0074】
【化18】

[式中、A、A、A、およびAは、アルキルであり、
、R、およびRは、それぞれ独立に、水素、
【0075】
【化19】

からなる群から選択され、
は、
【0076】
【化20】

からなる群から選択される]
を有する化合物である。
【0077】
N4誘導体は、キレート化された金属原子を有することができる(即ち、N4誘導体はラジオアイソトープで標識できる)。その金属原子は、放射性であっても、または放射性でなくてもよい。
【0078】
D.ラジオアイソトープ標識
例えば、画像または化学療法剤としてのN4誘導体の使用を伴う幾つかの実施形態を容易にするために、ラジオアイソトープをN4誘導体にキレート化することができる。例えば、N4誘導体を、99mTc、188Re、186Re、183Sm、166Ho、90Y、89Sr、67Ga、68Ga、111In、183Gd、59Fe、225Ac、212Bi、211At、45Ti、60Cu、61Cu、67Cu、64Cu、または62Cuに結合(好ましくはキレート化)させることができる。
【0079】
一般に、実質的に任意のα,β−放射体、γ−放射体、またはβ,γ−放射体が、本発明に関連して使用できると思われる。好ましいα放射体には、ビスマス−213、アスタチン−211、およびラジウム−223が含まれる。好ましいβ,γ−放射体には、166Ho、188Re、186Re、153Sm、および89Srが含まれる。好ましいβ−放射体には、90Yおよび225Acが含まれる。好ましいγ−放射体には、67Ga、68Ga、64Cu、62Cu、および111Inが含まれる。好ましいα−放射体には、211Atおよび212Biが含まれる。またGd、Mn、Cu、またはFeなどのパラ磁性体は、本発明に関連して使用するためにN4誘導体とキレート化し得ることが想定される。
【0080】
放射性画像では、放射性標識は一般にγ−放射線を放出する放射性核種であり、放射性トレーサーは一般に、γ−放射線検出カメラを使用して位置決めされる(この過程はしばしばγシンチグラフィーと呼ばれる)。放射性トレーサーは、病的部位で位置を特定するように選択されるか(陽性造影という)、あるいは放射性トレーサーは、かかる病的部位で特に位置を特定しないよう選択されるか(陰性造影という)のいずれかであるため、画像化部位が検出可能である。
【0081】
67Ga/68Ga、99mTc、111In、123I、125I、169Yb、または186Re/188Reを含む様々な放射性核種が、放射性画像および放射性免疫療法に有用であることが知られている。より良好な画像特性および低料金が理由で、可能な場合には123I、131I、67Ga、および111In標識化合物の代替に、対応する99mTc標識化合物を提供するか、または交換する試みが行われてきた。好ましい物理的特性ならびに極度の低価格($0.21/mCi)が理由で、99mTcは放射性医薬品を標識するのに好ましい。DTPA−薬物複合体は、99mTcでは効果的に標識できなかったことが報告されているが(Mathiasら、1997年)、DTPA部分は、99mTcとは111Inとほど安定にはキレート化しない(Goldsmith、1997年)。
【0082】
ヒトでの最適な放射性画像のためには、幾つかの因子が考慮されなければならない。検出効果を最大限にするために、100〜200keV範囲のγエネルギーを放出する放射性核種が一般には好ましい。患者への吸収放射線量を最小限にするために、画像手順が許す限り、放射性核種の物理的半減期は短くすべきである。任意の日およびその日の任意の時間に試験を実施できるようにするために、放射性核種の供給源は、臨床治療現場で常時利用可能であることが有利である。99mTcは140keVのγ放射線を放出し、6時間という物理的半減期を有し、モリブデン−99/テクネチウム−99m発生器を使用してその場で容易に利用可能であるため、99mTcはしばしば好ましい放射性核種である。
【0083】
幾つかの実施形態では、N4誘導体は、PET画像のために68Gaで、または体内放射性核種療法のために188Re(βおよびγ放射体)で、標識(例えばキレート化)することができる。上記のように、99mTc、68Ga、および188Reは、利用しやすく手頃な価格の発生器から得ることができる。非放射性金属(例えば、銅、コバルト、白金、鉄、ヒ素、レニウム、ゲルマニウム)とキレート化する場合、冷却(非放射性)N4誘導体は、金属化学療法剤として使用することができる。この技術の特異性の一態様は、同PETスルホン酸塩前駆体またはSPECTヨウ化薬剤を使用して、キレート化剤であるN4化合物と反応させることである。次いで、最終生成物は金属とキレート化してもよいが、これはさらに容易で、より利用しやすく、より手頃な価格である。
【0084】
テクネチウムは、幾つかの酸化状態+1、+2、+4、+5、+6、および+7を有する。テクネチウムが+1の酸化状態にある場合、TcMIBIと呼ばれる。TcMIBIは一般に、熱反応で生成される(Seaboldら、1999年)。TcをN4化合物またはN4誘導体とキレート化することを含む本発明の幾つかの実施形態では、Tcは+4の酸化状態であることが一般に好ましい。この酸化状態は、N4化合物またはN4誘導体とキレートを形成するのに理想的である。したがって、放射性テクネチウムの錯体を本発明の薬物複合体で形成する際、テクネチウム錯体、好ましくは99mTc過テクネチウム酸の塩を、一般に還元剤の存在下で本発明の薬物複合体と反応させる。
【0085】
本発明で使用される好ましい還元剤は、Tcを+4のその酸化状態に還元するための、塩化第1スズ(SnCl)形態のスズイオンである。しかし、ジチオン酸イオンまたは第1鉄イオンなどの他の還元剤が、本発明に関連して有用となり得ることが企図される。還元剤は、固相還元剤であり得ることも企図される。還元剤の量は、コロイド形成を回避することが必要である場合に重要となり得る。例えば、Tc過テクネチウム酸約100〜約300mCi当たりSnCl約10〜約100μgを使用することが好ましい。最も好ましい量は、Tc過テクネチウム酸約200mCi当たりSnCl約0.1mgおよび生理食塩水約2mlである。
【0086】
放射性核種で標識されたN4誘導体での腫瘍画像化に加えて、これらの化合物が、他の疾患に関係する組織の画像化、ならびに癌および他の疾患に関係する診断に使用できることも想定される。例えば、本発明の放射性核種で標識されたN4誘導体は、腫瘍だけでなく、感染症、低酸素組織(卒中)、心筋梗塞、アポトーシス細胞、アルツハイマー疾患、および子宮内膜症などの他の組織特異的状態を画像化するために有用となり得ることが企図される。組織標的リガンドに結合する放射性標識N4化合物を含むN4誘導体を使用する画像の利点は、組織標的リガンドの特異的結合特性が、対象となる領域にわたって放射性信号を集中させるということである。
【0087】
E.放射性標識N4誘導体を調製するためのキット
錯体およびかかる錯体を調製するための手段は、本発明の所定量のN4誘導体と、放射性核種で複合体を標識するのに十分な量の還元剤を含有する封止バイアルを一般に含むキットの形態で提供され得る。本発明の幾つかの実施形態では、キットは放射性核種を含む。さらなる幾つかの実施形態では、放射性核種は99mTcである。キットはまた、例えば浸透圧を調節するための医薬として許容可能な塩、緩衝液、保存剤、抗酸化剤等の通常の医薬補助材料を含有することができる。
【0088】
幾つかの実施形態では、N4誘導体の酸化を防止するために、組成物に抗酸化剤および遷移キレート化剤(transition chelator)を含む。幾つかの実施形態では、抗酸化剤はビタミンC(アスコルビン酸)である。しかし、トコフェロール、ピリドキシン、チアミン、またはルチンなどの、当業者に知られている他の任意の抗酸化剤を使用できることも企図される。本発明で使用される遷移キレート化剤の例には、それに限定されるものではないが、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルカリン酸塩、クエン酸塩、および酒石酸塩が含まれる。キットの成分は、液体形態、凍結形態、または乾燥形態であってよい。幾つかの実施形態では、キットの成分は凍結乾燥形態で提供され得る。
【0089】
III.N4誘導体の使用
本発明のN4誘導体は、予後目的で使用することもできる。N4誘導体は、腫瘍を有する患者に投与することができると想定される。標識化戦略としての放射性標識N4化合物の使用は、疾患受容体、低酸素症マーカー、アポトーシス欠陥、疾患細胞周期、疾患機能的経路を標的とし、これらの生化学的過程の医薬品の有効性を評価するように設計されたリガンドで効果的となり得ることが想定される。疾患受容体、低酸素症マーカー、アポトーシス欠陥、疾患細胞周期、疾患機能的経路、およびこれらの生化学的過程への医薬品の有効性評価に関係する患者の特定の問題に対するN4誘導体の有効性を決定するために、画像化を実施することができる。この方法論を使用して、どのN4誘導体が患者にとって最も効果的となるかを医師は迅速に決定することがき、対応する療法または治療態様を設計することができる。まず薬剤を選択し、身体的にも経済的にも著しいコストをかけて数カ月の患者の時間を必要とすることがある一連の化学療法を投与した後、癌の化学療法剤の有効性を決定するという方法よりも、この方法論は非常に有利である。
【0090】
本発明はまた、化学療法または放射線治療が成功している前の患者の進行を監視して、癌が寛解状態にあるか、または転移しつつあるかを決定するために使用することができる。家族に癌の病歴があるまたは癌に関連する遺伝子(複数)を持つと診断されたことのある人々は、医療従事者によって、本発明の方法論を使用して監視され得る。本発明の方法および医薬品はまた、発癌物質への環境曝露などの癌の危険因子を持つヒトにおいて癌が発症しているかどうかを監視するために、医療従事者によって使用され得る。
【0091】
IV.薬物評価
本発明の幾つかの薬物系リガンドは、薬物に対する対象の薬理学的応答の測定に適用することができる。薬物投与に対する対象の応答を決定する際には、広範なパラメータが測定され得る。当業者には、測定され得る応答の種類が思い当たるはずである。これらの応答は、評価される特定の薬物、対象が治療を受ける特定の疾患または状態、および対象の特徴を含む様々な因子に部分的に依存する。放射性標識剤は、薬物評価の測定に適用することができる。
【0092】
V.医薬調製物
本発明の医薬組成物は、医薬として許容可能な担体に溶解または分散した本発明の有効量のN4誘導体を含む。「医薬として」または「薬理学的に許容可能な」という語句は、例えばヒトなどの動物に適切に投与される場合に、副作用、アレルギー、または他の有害反応をもたらさない分子の存在および組成物を指す。放射性標識N4誘導体などの少なくとも1つのN4誘導体、または追加の有効成分を含有する医薬組成物の調製は、参照によって本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、18th Ed. Mack Printing Company、1990年に例示のように、本開示に照らして当業者は知ることになろう。さらに動物(例えばヒト)への投与については、調製物は、FDA Office of Biological Standardsによって必要とされる無菌、発熱、一般的安全性、および純度の標準を満たすべきであることを理解されよう。
【0093】
本明細書で使用される「医薬として許容可能な担体」には、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、色素、当業者に知られているはずの材料およびそれらの組合せ(参照によって本明細書に組み込まれる、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences、18th Ed. Mack Printing Company、1990年、1289〜1329頁参照)が含まれる。任意の通常の担体が有効成分に不適合である場合を除いて、治療組成物または医薬組成物におけるその使用が企図される。
【0094】
本発明のN4誘導体は、それが固体、液体、またはエアロゾル形態で投与されるかどうか、および注射などの投与経路のために滅菌される必要があるかどうかに依存して様々な種類の担体を含むことができる。本発明は、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病変内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、局所、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、結膜下、膀胱内、粘膜内、心膜内、臍帯内、眼内、経口、局所(topically)、局所(locally)、注射、注入、持続注入、カテーテルによる、洗浄による標的細胞を直接浸す局所かん流、脂質組成(例えばリポソーム)、または当業者に知られているはずの他の方法もしくは前記の任意の組合せ(参照によって本明細書に組み込まれる、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences、18th Ed. Mack Printing Company、1990年、1289〜1329頁参照)によって投与することができる。
【0095】
患者に投与される本発明の組成物の実際の投与量は、患者の体重、状態の重篤度、治療される疾患の種類、以前の治療または併用療法の介入、特発性疾患、および投与経路などの身体的および生理学的因子によって決定することができる。投与に関与する医療従事者は、いずれにしても組成物中の有効成分(複数)の濃度および個々の対象に適した用量(複数)を決定することになる。
【0096】
幾つかの実施形態では、医薬組成物は、例えば少なくとも約0.1%のN4誘導体を含むことができる。他の実施形態では、活性化合物は、単位重量の約2%〜約75%、または約25%〜約60%、および例えばその中で導き出せる任意の範囲を含むことができる。他の非限定的な例では、用量は、体重1kg当たり約0.1mgから、体重1kg当たり0.5mg、体重1kg当たり1mg、体重1kg当たり約5mg、体重1kg当たり約10mg、体重1kg当たり約20mg、体重1kg当たり約30mg、体重1kg当たり約40mg、体重1kg当たり約50mg、体重1kg当たり約75mg、体重1kg当たり約100mg、体重1kg当たり約200mg、体重1kg当たり約350mg、体重1kg当たり約500mg、体重1kg当たり約750mg、体重1kg当たり約1000mgまで、または1投与当たりさらに多量、およびその中で導き出せる任意の範囲を含むこともできる。本明細書に列挙した数から導き出せる範囲の非限定的な例では、上記の数を基にして体重1kg当たり約10mg〜体重1kg当たり約100mg等の範囲を投与することができる。
【0097】
いかなる場合でも、組成物は1つまたは複数の成分の酸化を遅延させるための様々な抗酸化剤を含むことができる。さらに、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばそれに限定されるものではないがパラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、またはそれらの組合せなどの保存剤によって、微生物作用を防止することができる。
【0098】
N4誘導体は、遊離塩基、中性、または塩の形態の組成物に配合することができる。医薬として許容可能な塩には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化鉄などの無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、もしくはプロカインなどの有機塩基に由来する遊離カルボキシル基で形成される塩が含まれる。
【0099】
組成物が液体形態である実施形態では、担体は、それに限定されるものではないが、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、脂質(例えば、トリグリセロール、植物油、リポソーム)、およびそれらの組合せを含む溶媒または分散媒であってよい。例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、例えば液体ポリオールもしくは脂質などの担体中に分散させることにより必要な粒経を維持することによって、例えばヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤を使用することによって、またはかかる方法の組合せによって、適切な流動性を維持することができる。多くの場合、例えば糖類、塩化ナトリウム、またはそれらの組合せなどの等張剤を含むことが好ましいであろう。
【0100】
滅菌注射溶液は、必要な量の適切な溶媒中に、必要により先に列挙した様々な量の他の成分と共にN4誘導体を導入した後に滅菌濾過することによって調製される。一般に分散剤は、塩基性分散媒および/または他の成分を含有する滅菌ビヒクルに、様々な滅菌有効成分を導入することによって調製される。注射可能な滅菌溶剤、懸濁剤、または乳剤の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥または冷凍乾燥技術であり、これによって、先の滅菌濾過した液体媒体から有効成分と追加の所望の任意成分の粉末が得られる。液体媒体は、必要に応じて適切に緩衝化すべきであり、まず液体希釈剤を等張にした後、十分な生理食塩水またはグルコースと共に注射する。直接注射用の高濃度組成物の調製物も企図され、この場合、極度に急速な浸透をもたらし、高濃度の活性薬剤を小領域に送達するために、溶媒としてDMSOを使用することが想定される。
【0101】
組成物は、製造および保存条件下で安定であり、バクテリアおよび菌類などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。内毒素汚染は、例えばタンパク質0.5ng/mg未満の安全なレベルに、最小限に抑えられるべきであることを理解されたい。
【0102】
特定の実施形態では、例えばモノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、またはそれらの組合せなどの吸収を遅延する薬剤を組成物に使用することによって、注入可能な組成物の持続的吸収をもたらすことができる。
【0103】
VI.併用療法
本発明の一態様は、本発明の放射性標識N4誘導体などのN4誘導体を、別の薬剤または療法、好ましくは別の癌治療と組み合わせて使用できるものである。N4誘導体は、数分から数週間の範囲の間隔で、他の薬剤治療の前または後に用いることができる。他の薬剤および発現構築物が細胞に対して別々に適用される実施形態では、一般に、その薬剤および発現構築物が細胞に対して有利な組合せ効果をなおも発揮できるように、各送達時の間に長時間が経過しないようにした。例えばこのような場合には、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のモダリティを用いて実質的に同時に(即ち約1分未満以内)、細胞、組織、または有機体をN4誘導体と接触させ得ることが企図される。他の態様では、N4誘導体の投与前および/または後、約1分、約5分、約10分、約20分、約30分、約45分、約60分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約37時間、約38時間、約39時間、約40時間、約41時間、約42時間、約43時間、約44時間、約45時間、約46時間、約47時間、約48時間まで、またはそれより長時間以内に、1つまたは複数の薬剤を投与することができる。他の幾つかの実施形態では、N4誘導体の投与前および/または後、約1日から、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20、約21日まで、それ以内で薬剤を投与することができる。幾つかの場合、治療期間を著しく延長することが望ましいが、この場合、それぞれの投与間に数週(例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、もしくは約8週、またはそれ以上)が経過する。
【0104】
様々な組合せを使用することができ、N4誘導体を「A」、任意の他の治療剤であってよい第2の薬剤を「B」とする。
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
患者への本発明の治療発現構築物の投与は、もしあればベクターの毒性を考慮に入れて、化学療法の投与に関する一般的な手順に従うことになる。治療周期は必要に応じて反復されると予測される。また、様々な標準的療法ならびに外科的介入が、N4誘導体と組み合わせて適用され得ることが企図される。これらの療法は、それに限定されるものではないが、化学療法、放射線治療、免疫療法、遺伝子療法、および手術が含まれる。
【0105】
A.化学療法
癌療法には、化学治療および放射線系治療の両方との様々な併用療法も含まれる。併用化学療法には、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソ尿素、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、シスプラチン、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、または前述の任意の類似体もしくは誘導体変異体が含まれる。
【0106】
B.放射線治療
DNA損傷を引き起こし、広範に使用されてきた他の因子には、γ線、X線として一般に知られるもの、および/または腫瘍細胞への放射性アイソトープの有向送達が含まれる。マイクロ波およびUV照射などのDNA損傷因子の他の形態も企図される。これらの因子の全てが、DNA、DNA前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合体および維持に広範な損傷を及ぼす可能性が最も高い。X線範囲の線量は、1日当たり50レントゲンから、長期では(3〜4週)200レントゲンの範囲であり、単一線量2000〜6000レントゲンまでである。放射性アイソトープの線量範囲は広範に変化し、アイソトープの半減期、放出される放射線の強度および種類、ならびに腫瘍性細胞による取込みに依存する。「接触した」および「曝露した」という用語は、細胞に適用される場合、本明細書では治療構築物および化学治療剤または放射線治療剤が標的細胞に送達されるか、または標的細胞と直接並置される過程を説明するために使用される。細胞の殺滅または停止を実現するために、細胞を殺滅するかまたはその潜伏を防止するのに有効な組合せの量で、両方の薬剤が送達される。
【0107】
C.免疫療法
免疫療法は一般に、癌細胞を標的とし破壊するための免疫エフェクター細胞および分子の使用に依存するものである。免疫エフェクターは、例えば腫瘍細胞の表面上のあるマーカーに特異的な抗体であってよい。抗体のみで療法のエフェクターとして働くことができ、または他の細胞を集めて細胞殺滅を実際に行うことができる。抗体は、薬物または毒素(化学療法剤、放射性ヌクレオチド、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素等)に結合することもでき、単に標的剤としてのみ働くこともできる。あるいはエフェクターは、腫瘍細胞標的と直接または間接的に相互作用する表面分子を担持するリンパ球であってよい。様々なエフェクター細胞には、細胞障害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0108】
したがって免疫療法は、併用療法の一部分として、場合により遺伝子療法と併用して使用することができよう。併用療法の一般的な手法を以下に論じる。一般に腫瘍細胞は、標的可能な、即ち他の細胞の大部分には存在しないあるマーカーを担持するはずである。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらのいずれかは、本発明の文脈では標的として適し得る。一般的な腫瘍マーカーには、癌胎児性抗原、前立腺特異抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG−72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erbB、およびp155が含まれる。
【0109】
D.遺伝子療法
さらに別の実施形態では、第2の治療は、治療ポリヌクレオチドが第1の治療剤の前、後、または同時に投与される第2の遺伝子療法である。遺伝子産物をコードするベクターと共に治療剤を送達することは、標的組織への抗過剰増殖性の組合せ作用を有することになる。
【0110】
E.手術
癌を有するヒトの約60%は、予防、診断、または病期的な根治および緩和目的の手術を含むある種の手術を受けることになる。根治目的の手術は、本発明の治療、化学療法、放射線治療、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、および/または代替療法などの他の療法と組み合わせて使用できる癌治療である。根治目的の手術は、癌性組織の全てまたは一部分が、物理的または部分的に除去され、切除され、かつ/または破壊される切除術を含む。腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部分の物理的除去を指す。腫瘍切除に加えて手術による治療には、レーザー手術、凍結外科手術、電気外科手術、および顕微鏡下手術(モース手術)が含まれる。さらに本発明が、表在癌、前癌状態、または正常組織の偶発的量の除去と共に使用できることが企図される。
【実施例】
【0111】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれるものである。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において良好に機能するように本発明者によって発見された技術を表し、したがってその実施のための好ましい態様を構成するとみなされ得ることを、当業者は理解すべきである。しかし、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示されている特定の実施形態で多くの変更が行われることを当業者は本開示に照らして理解すべきであり、さらに当業者は同様のまたは類似の結果を得るはずである。
【0112】
(実施例1)
N−一置換物のためのN4化合物の保護
A.トリフルオロ酢酸エチルでのサイクラムの保護
【0113】
【化21】

サイクラム(1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン)4.006g(20mmol)を、トリエチルアミン2.79mLの乾燥メタノール15mL中溶液に入れた。トリフルオロ酢酸エチル6.92mLを、先の溶液に室温で撹拌しながら滴加した。添加を5分間継続した。均質な反応混合物を氷水浴で冷却して、穏やかな発熱を制御した。N2下で5時間撹拌を継続した。揮発物を真空下で除去した。残渣を小シリカゲルプラグ(25g)に通過させ、100%のEtOAcで溶出した。溶出した溶媒を濃縮して、生成物を白色気泡として得た(8.972g、95%収率)。
【0114】
B.トリフルオロ酢酸エチルでのサイクレンの保護
【0115】
【化22】

先の(実施例1、A)方法に従って、この反応ではサイクラムの代わりにサイクレン(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン)3.445mg(20mmol)を使用した(8.276g、93%収率)。
【0116】
C.トリフルオロ酢酸エチルでのサイクラルの保護
【0117】
【化23】

先の(実施例1、A)方法に従って、この反応ではサイクラムの代わりにサイクラル(1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン)4.287g(20mmol)を使用した(9.227g、95%収率)。
【0118】
(実施例2)
スルホン化およびヨウ化チロシン誘導体の調製
【0119】
【化24】

A.3−ブロモプロパノールでのチロシンのO−アルキル化
N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−チロシンメチルエステル(以下Boc−Tyr)2953.3mg(10mmol)のメタノール(無水)30mL中溶液を、ナトリウムメトキシド540.2mg(10mmol)を含有するメタノール溶液50mLに添加した。3−ブロモプロパノール1363μL(15mmol)を、先のBoc−Tyr溶液に添加した。混合物を、窒素雰囲気下の室温で20分間撹拌した後70℃で6時間撹拌した。揮発物を除去するために、混合物を減圧下で蒸発させた後、酢酸エチル20mLに溶解した。有機相を水(2×20mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を除去した。透明な液体が白色固体に変化し、ヒドロキシプロピル−Boc−Tyr(以下HOPr−Boc−Tyr)2.9158g(82.5%収率)を、ヘキサン−酢酸エチル系勾配(10:1〜1:1)を使用するカラムクロマトグラフィーによって得た。
【0120】
B.3−ヒドロキシプロピル−Boc−Tyrのトシル化
ピリジン(無水)10ml中ヒドロキシプロピル−Boc−Tyr(以下HOPr−Boc−Tyr)1413.6mg(4.0mmol)を、p−トルエンスルホニルクロリド1143.9mg(6.0mmol)のピリジン(無水)20mL中溶液に、窒素雰囲気下の氷水浴中で撹拌しながら添加した。混合物を終夜冷蔵庫に置いた。反応混合物はその後色が変化し、その後ピリジン塩酸塩をフィルター分離した。ピリジンを除去するために、減圧下で濾液を蒸発させた。白色固体1.8123g(87.9%収率)を、ヘキサン−酢酸エチル系勾配(10:1〜2:1)を使用するカラムクロマトグラフィーによって得た。
【0121】
C.3−ヨードプロピル−Boc−Tyr(以下I−Pr−Boc−Tyr)の合成
ヨウ化カリウム1992.1mg(12mmol)を、TsO−Pr−Boc−Tyr1522.8mg(3.0mmol)のアセトニトリル(無水)15ml中溶液に注いだ。混合物は溶媒に完全には溶解せず、静置して2時間還流した。固体を濾別し、濾過溶液を蒸発させてアセトニトリルを除去した。残渣を、ヘキサン:酢酸エチル系勾配(10:1〜10:4)を使用するカラムクロマトグラフィーによって単離した。透明な液体1324.5mgを得た(95.3%収率)。
【0122】
(実施例3)
スルホン化およびヨウ化α−メチルチロシン誘導体の調製
【0123】
【化25】

A.α−メチルチロシンのN−保護
二炭酸ジ−tert−ブチル13.095g(60mmol)を、α−メチルチロシン(以下AMT)8.370g(40mmol)およびトリエチルアミン(無水)11.2mL(80mmol)のDMF(無水)40mL中溶液に添加した。混合物を終夜室温で撹拌した後、減圧下で蒸発させ、その後固体を除去するために濾過した。白色固体(以下Boc−AMT)11.217g(90.6%収率)を、ヘキサン−酢酸エチル系勾配(10:1〜10:7)を使用する残渣のカラム分離によって得た。
【0124】
B.3−ブロモプロパノールでのBoc−AMTのO−アルキル化
Boc−AMT3.094g(10mmol)を使用し、先の(実施例2、B)方法を使用してそれに従った。透明な溶液が白色固体(以下HO−Pr−Boc−AMT)に変化し、ヘキサン−酢酸エチル系勾配(10:1〜10:5)を使用するカラムクロマトグラフィーによって3.289g(89.5%収率)を得た。
【0125】
C.3−HO−Pr−Boc−AMTのトシル化
HO−Pr−Boc−AMT2.940g(8.0mmol)を使用し、先の2−3)の方法に従った。白色固体(以下TsO−Pr−Boc−AMT)3.493g(83.7%収率)を、ヘキサン−酢酸エチル系勾配(10:1〜10:5)を使用するカラムクロマトグラフィーによって得た。
D.3−ヨードプロピル−Boc−Tyr(以下I−Pr−Boc−Tyr)の合成
TsO−Pr−Boc−AMT3.130g(6.0mmol)を使用し、先の2−4)の方法に従った。透明な溶液(以下I−Pr−Boc−AMT)2.801g(97.8%収率)を、ヘキサン−酢酸エチル系勾配(10:1〜10:4)を使用するカラムクロマトグラフィーによって得た。
【0126】
(実施例4)
スルホン化およびヨウ化タモキシフェン誘導体の調製
【0127】
【化26】

A.4−ヒドロキシメチル−N,N−ジエチルタモキシフェンのトシル化
4−ヒドロキシメチル−N,N−ジエチルタモキシフェン(以下HO−TMX)1.289g(8.0mmol)を使用し、先の2−3)の方法に従った。薄黄色の液体(以下TsO−TMX)1.445g(82.5%収率)を、ヘキサン:エチルエーテル:トリエチルアミン勾配=100:100:5〜100:100:20)を使用するカラムクロマトグラフィーによって得た。
【0128】
B.4−ヨードメチル−N,N−ジエチルの合成
I−TMX1.168g(2.0mmol)を使用し、先の(実施例2、D)方法に従った。透明な液体(以下I−TMX)1.058g(98.1%収率)を、ヘキサン:エチルエーテル:トリエチルアミン勾配=100:100:1〜100:100:10)を使用する短カラムクロマトグラフィーに通過させた後に得た。
【0129】
(実施例5)
【0130】
【化27】

スルホン化およびヨウ化エストロン誘導体の調製
A.3−ブロモプロパノールでのエストロンのO−アルキル化
エストロン2.703g(10mmol)を使用し、先の2−2)の方法に従った。透明な液体が白色固体(以下HO−Pr−EST)に変化し、ヘキサン−酢酸エチル系勾配(10:1〜10:5)を使用するカラムクロマトグラフィーによって2.405g(73.2%収率)を得た。
【0131】
B.HO−Pr−ESTのトシル化
HO−Pr−EST1.971g(6.0mmol)を使用し、先の2−3)の方法に従った。白色固体(以下TsO−Pr−EST)2.253g(77.8%収率)を、ヘキサン−酢酸エチル系勾配(10:1〜10:5)を使用するカラムクロマトグラフィーによって得た。
【0132】
C.3−ヨードプロピル−ESTの合成
TsO−Pr−EST1.930g(4.0mmol)を使用し、先の2−4)の方法に従った。透明な液体(以下I−Pr−EST)1.720g(98.1%収率)を、ヘキサン−酢酸エチル系勾配(10:1〜10:4)を使用するカラムクロマトグラフィーによって得た。
【0133】
(実施例6)
サイクラルの1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−Dマンノピラノース(FDG合成のための前駆体)との反応
【0134】
【化28】

A.N,N’,N’’,N’’’−四置換サイクラル−DGの実施例
1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノース200mg(0.416mmol)を、サイクラル22.3mg(0.104mmol)およびトリエチルアミン84.2mg、116マイクロmL(0.832mmol)のDMF(無水)10mL中溶液に入れた。混合物を窒素雰囲気下で16時間、50℃で撹拌し、蒸発させて揮発物を除去した。残渣を1,4−ジオキサン6mLに入れ、次いで白色沈殿物が生じた。固体を濾過によって廃棄した。4N−HClの1,4−ジオキサン中溶液1mlを濾液に滴加し、次いで薄い茶色の粉末が沈殿した。固体を濾過によって収集し、凍結乾燥機で乾燥させた。
【0135】
固体を1N−塩酸水溶液3mLに溶解し、30分間撹拌した。1N−NaHCO3を先の溶液に添加してpH=約9にした。溶液を膜(MWカットオフ<500)で精製し、凍結乾燥機で蒸発させた。薄い茶色の固体63.2mg(67.2%収率)を収集した。
【0136】
B.N,N’,N’’−三置換サイクラル−DGの実施例
1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノース200mg(0.416mmol)を、サイクラル29.6mg(0.138mmol)およびトリエチルアミン84.2mg、116マイクロmL(0.832mmol)のDMF(無水)10mL中溶液に入れた。混合物を窒素雰囲気下で16時間、50℃で撹拌し、蒸発させて揮発物を除去した。残渣を1,4−ジオキサン6mLに入れ、次いで白色沈殿物が生じた。固体を濾過によって破棄した。4N−HClの1,4−ジオキサン溶液1mlを濾液に滴加し、次いで薄い茶色の粉末が沈殿した。
【0137】
固体を濾過によって収集し、凍結乾燥機で乾燥させた。固体を1N−塩酸水溶液3mLに溶解し、30分間撹拌した。1N−NaHCO3を先の溶液に添加してpH=約9にした。溶液を膜(MWカットオフ<500)で精製し、凍結乾燥機で蒸発させた。薄い茶色の固体58.8mg(57.4%収率)を収集した。
【0138】
C.N,N’−二置換サイクラル−DGの実施例
1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノース200mg(0.416mmol)を、サイクラル44.6mg(0.208mmol)およびトリエチルアミン84.2mg、116マイクロmL(0.832mmol)のDMF(無水)10mL中溶液に入れた。混合物を窒素雰囲気下で16時間、50℃で撹拌し、蒸発させて揮発物を除去した。残渣を1,4−ジオキサン6mLに入れ、次いで白色沈殿物が生じた。固体を濾過によって破棄した。4N−HClの1,4−ジオキサン溶液1mlを濾液に滴加し、次いで薄い茶色の粉末が沈殿した。固体を濾過によって収集し、凍結乾燥機で乾燥させた。
【0139】
固体を1N−塩酸水溶液3mLに溶解し、30分間撹拌した。1N−NaHCO3を先の溶液に添加してpH=約9にした。溶液を膜(MWカットオフ<500)で精製し、凍結乾燥機で蒸発させた。残渣を最小の水に溶解した。SephadexG−75単離後に凍結乾燥機によって薄い茶色の固体23.9mg(19.8%収率)を収集した。
【0140】
D.N−一置換サイクラル−DGの実施例
1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノース200mg(0.416mmol)を、N,N’,N’’−トリス(トリフルオロアセチル)−サイクラル(実施例1、Cより)209mg(0.416mmol)およびトリエチルアミン84.2mg、116マイクロmL(0.832mmol)のDMF(無水)10mL中溶液に入れた。混合物を窒素雰囲気下で6時間、50℃で撹拌し、蒸発させて揮発物を除去した。
【0141】
残渣を1,4−ジオキサン6mLに入れ、次いで白色沈殿物が生じた。固体を濾過によって破棄した。4N−HClの1,4−ジオキサン溶液1mlを濾液に滴加し、次いで薄い茶色の粉末が沈殿した。濾過によって収集した固体を、1N−塩酸水溶液3mLに溶解し、30分間撹拌した。1N−NaHCO3を先の溶液に添加してpH=約9にした。溶液を凍結乾燥機で蒸発させ、最小の水に溶解した。SephadexG−75単離後に凍結乾燥機によって白色固体123.3mg(78.7%収率)を収集した。
【0142】
(実施例7)
サイクラルのヨウ化αメチルチロシン(AMT)との反応
類似の反応条件を使用して、他のサイクラル標的剤複合物を調製することができた。
【0143】
【化29】

A.N,N’,N’’,N’’’−四置換AMTの実施例
I−AMT286.4mg(0.6mmol)を、サイクラル32.2mg(0.15mmol)およびトリエチルアミン83.6μL(0.6mmol)のDMF(無水)10mL中溶液に入れた。混合物を窒素雰囲気下で16時間、70℃で撹拌し、蒸発させて揮発物を除去した。1N−塩酸水溶液5mLを、蒸発残渣のエタノール5mL中溶液に注いだ。反応混合物を濃縮器なしに60℃で30分間加熱し、冷却した。1N−NaHCO3を先の溶液に添加してpH=約9にした。溶媒を減圧下で除去し、残渣を最小の水に溶解した。SephadexG−75単離後に凍結乾燥機によって白色固体91.3mg(52.7%収率)を収集した。
【0144】
B.N,N’,N’’−三置換AMTの実施例
I−AMT286.4mg(0.6mmol)を、サイクラル42.9mg(0.2mmol)およびトリエチルアミン83.6micrlL(0.6mmol)のDMF(無水)10mL中溶液に入れた。混合物を窒素雰囲気下で16時間、70℃で撹拌し、蒸発させて揮発物を除去した。
【0145】
1N−塩酸水溶液5mLを、蒸発残渣のエタノール5mL中溶液に注いだ。反応混合物を濃縮器なしに60℃で30分間加熱し、冷却した。1N−NaHCO3を先の溶液に添加してpH=約9にした。溶媒を減圧下で除去し、残渣を最小の水に溶解した。SephadexG−75単離後に凍結乾燥機によって白色固体76.7mg(41.7%収率)を収集した。
【0146】
C.N,N’−二置換AMTの実施例
I−AMT286.4mg(0.6mmol)を、サイクラル64.3mg(0.3mmol)およびトリエチルアミン83.6μL(0.6mmol)のDMF(無水)10mL中溶液に入れた。混合物を窒素雰囲気下で16時間、70℃で撹拌し、蒸発させて揮発物を除去した。1N−塩酸水溶液5mLを、蒸発残渣のエタノール5mL中溶液に注いだ。反応混合物を濃縮器なしに60℃で30分間加熱し、冷却した。1N−NaHCO3を先の溶液に添加してpH=約9にした。溶媒を減圧下で除去し、残渣を最小の水に溶解した。SephadexG−75単離後に凍結乾燥機によって白色固体52.3mg(25.9%収率)を収集した。
【0147】
D.N−一置換AMTの実施例
I−AMT286.4mg(0.6mmol)を、N,N’,N’’−トリス(トリフルオロアセチル)−サイクラル(実施例1〜3より)301.4mg(0.6mmol)およびトリエチルアミン83.6micrlL(0.6mmol)のDMF(無水)10mL中溶液に入れた。混合物を窒素雰囲気下で6時間、70℃で撹拌し、蒸発させて揮発物を除去した。1N−炭酸カリウム2mLを、蒸発残渣のメタノール5mL中溶液に注ぎ、40℃で1時間静置した。
【0148】
1N−塩酸水溶液9mLを先の溶液に添加した。反応混合物を濃縮器なしに60℃で30分間加熱し、冷却した。1N−NaHCO3を先の溶液に添加してpH=約9にした。溶媒を減圧下で除去し、残渣を最小の水に溶解した。SephadexG−75単離後に凍結乾燥機によって白色固体233.4mg(86.5%収率)を収集した。
【0149】
(実施例8)
サイクラルのスルホン化αメチルチロシン(TsO−AMT)との反応
本明細書に提示したものに類似の反応条件を使用して、他のサイクラル標的剤複合物を調製することができる。
【0150】
A.N,N’,N’’,N’’’−四置換AMTの実施例
【0151】
【化30】

TsO−AMT313mg(0.6mmol)を、サイクラル32.2mg(0.15mmol)およびトリエチルアミン167.2μL(1.2mmol)のDMF(無水)10mL中溶液に入れた。反応は、先の実施例7−1)に従った。白色固体72.3mg(41.7%収率)を収集した。
【0152】
B.N,N’,N’’−三置換AMTの実施例
TsO−AMT313mg(0.6mmol)を、サイクラル42.9mg(0.2mmol)およびトリエチルアミン167.2micrlL(1.2mmol)のDMF(無水)10mL中溶液に入れた。反応は、先の実施例7−2)に従った。白色固体56.7mg(30.8%収率)を収集した。
【0153】
C.N,N’−二置換AMTの実施例
TsO−AMT313.0mg(0.6mmol)を、サイクラル64.3mg(0.3mmol)およびトリエチルアミン167.2μL(1.2mmol)のDMF(無水)10mL中溶液に入れた。反応は、先の実施例7−3)に従った。白色固体45.4mg(22.1%収率)を収集した。
【0154】
D.N−一置換AMTの実施例
TsO−AMT313.0mg(0.6mmol)を、N,N’,N’’−トリス(トリフルオロアセチル)−サイクラル(実施例1〜3より)301.4mg(0.6mmol)およびトリエチルアミン167.2μL(1.2mmol)のDMF(無水)10mL中溶液に入れた。反応は、先の実施例7−4)に従った。白色固体197.2mg(73.1%収率)を収集した。
【0155】
(実施例9)
N4誘導体を使用する画像化
A.材料および方法
サイクラムのテトラ酢酸マンノース複合体との反応(N4−DG−サイクラム)
DMF5mL中1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノース(300mg、0.625mmol)を、1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン(N4)(250.2mg、1.237mmol)およびトリエチルアミン(174マイクロL、1.249mmol)のDMF5mL中混合物に添加した。反応混合物を室温で6時間撹拌した。反応溶媒を、高真空下、40〜45℃で乾燥するまで蒸発させた。次いで、1,4−ジオキサン溶液(10mL)を添加した。沈殿物を濾過した。塩酸(4N)の1,4−ジオキサン(2mL、8mmol)中溶液を添加した。混合物を氷浴中で冷却した。混合物をブフナー漏斗で濾過し、ジエチルエーテル(2×5mL)で洗浄した。濾液を乾燥するまで蒸発させ、白色固体383.1mg(90.8%)を得た。1H− NMR/N4−DG d (ppm)8.50 (s, 1H), 3.98−4.01 (m, 1H), 3.76 (s, 2H), 3.54−3.60 (m, 9H), 3.38−3.45 (m, 8H), 3.31−3.37 (m, 1H), 3.18−3.22 (m, 1H), 2.02−2.31 (m, 4H), 2.15 (s, 12H). 13C− NMR/N4−DG d (ppm) 197.3, 175.2, 170.4, 165.6, 67.0, 66.8, 66.4, 51.7, 45.3, 44.0, 43.6, 43.2, 42.9, 42.5, 41.9, 38.6, 37.5, 37.3, 31.8, 19.5, 19.3, 14.5.合成スキームを図1に示す。
【0156】
N4−DG(N4−DG−サイクラム)の放射性標識
N4−DG(5mg)を、水0.2mlに溶解した。塩化スズ(II)溶液(0.1ml、1mg/ml)を添加した。ナトリウム過テクネチウム酸(Na99mTcO、37〜370MBq、Mallinckrodt、テキサス州ヒューストン)を添加した。最後に、この溶液に水を添加して、体積を1mlに調節した。放射化学的純度は、メタノール:酢酸アンモニウム(1:4)で溶出するTLC(ITLC SG、Gelman Sciences、ミシガン州アナーバー)によって決定した。放射性TLC分析(Bioscan、ワシントンDC)から、放射化学的純度は97%超であった。
【0157】
68Ga標識については、1N HCLを使用して68Ge/68Ga発生器(Isotope Products Laboratories、カリフォルニア州バレンシア)から68Gaを溶出した。GaCl担体を添加するか、または担体を添加しないで、酸性溶液を乾燥するまで蒸発させた。溶液を水で再構成した。次いで、水0.2mlに溶解したN4−DG(5mg)を、放射性溶液に添加した。
99mTc−N4−DG(N4−DG−サイクラム)およびN4−DG−サイクラル)のin vitro細胞取込み
2つの異なる細胞株(ヒト肺NSCLC A549、胸部13762)を、細胞取込みアッセイで使用した。細胞株は、American Type Culture Collection(メリーランド州ロックビル)から得た。各ウェル50,000を含有する12ウェルの組織培養プレートに、細胞を入れた。99mTc−および68Ga−N4−DG4μCi(0.148MBq)またはN4(0.1mg/ウェル)を各ウェルに添加した。放射性トレーサーを用いて、37℃において異なる間隔で細胞をインキュベートした。インキュベーション後、氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を2回洗浄し、トリプシン溶液0.5mlでトリプシン処理した。次いで細胞を収集し、放射能をγカウンターによって測定した。データは、3つの測定値の平均±SDパーセント取込み比で表した。
【0158】
乳房の腫瘍を担持するラットにおける99mTc−N4−DGの生体内分布
動物は、The University of Texas M.D.Anderson Cancer Center facilityに収容されていた。動物(ラットおよびウサギ(以下参照))を含む全ての手順は、M.D.Anderson Animal Use and Care Committeeによって承認されているものである。25−ゲージ針を使用して、Fischer−344ラット(150±25g)(Harlan Sprague−Dawley、インディアナ州インディアナポリス)(n=18)に、脚の腰部においてラット乳腺腺癌細胞(げっ歯類1匹当たり10個の細胞)を皮下接種した。接種後、この研究を12〜15日実施した。約1cmの腫瘍寸法を測定した。99mTc−N4−DGを使用して生体内分布の研究を実施した。各群が時間間隔(0.5、2、および4時間、n=3/時点)を表し、1化合物当たり合計9匹のげっ歯類を含む3つの群にげっ歯類を分割した。注射活性は、ラット1匹当たり25±0.5μCi(0.925±0.019MBq)であった。99mTc−N4−DGの注射質量は、げっ歯類1匹当たり0.1mgであった。放射性トレーサーの投与後、ラットを屠殺し、選択組織を摘出し、秤量し、放射能を計数した。各サンプルのトレーサーの生体内分布を、組織湿重量1グラム当たりの注入用量パーセンテージ(ID/g%)として算出した。腫瘍/非標的組織の計数密度比を、対応するID/g%値から算出した。
【0159】
シンチグラフィーによる画像研究
Fischer344雌ラット(150±25g)(Harlan Sprague−Dawley、インディアナ州インディアナポリス)に、13762腫瘍細胞株懸濁液(ラット1匹当たり10個の細胞/、Fischerラットに特異的な腫瘍細胞株)からの乳房腫瘍0.1mlを後脚において皮下接種した。接種後、画像研究を12〜15日実施した。約1〜1.5cmの腫瘍寸法を測定した。シンチグラフィーによる画像は、Siemens Medical Systems(イリノイ州ホフマンエステーツ)製のM−カメラを使用して得た。カメラには、低エネルギー平行孔コリメーターが備えられていた。視野は、53.3cm×38.7cmである。固有空間分解能は3.2mmであり、画素寸法は19.18mm(32×32、ズーム=1)〜0.187mm(1024×1024、ズーム=3.2)である。この系は、低エネルギーの高解像度コリメーター(99mTcで必要とされる)で、少なくとも172計数/分(cpm)/μCiの平面感度(planar sensitivity)および4〜20mmの空間分解能に設計されている。PET画像研究にはuPETを使用した(ラット1匹当たり0.5mCi)。
【0160】
99mTc−N4−DGまたは99mTc−N4(ラット1匹当たり0.3mCi;ウサギ1匹当たり0.1質量mg)を、腹腔内注入して0.5〜4時間直後に、平面シンチグラフィーを得た。放射性トレーサー蓄積を比較するために、ROI(ピクセル当たりの対象領域数)を決定した。腫瘍および筋肉の間のROI計数を使用して、腫瘍対非腫瘍比を算出した。
【0161】
B.結果
in vitro細胞取込み研究
試験した癌細胞株において、インキュベーション時間の関数としての99mTc−または68Ga−N4−DGまたは99mTc−N4−AMTの取込み増加があった(図2、図3、図4A〜C)。対照群としての99mTc−N4の取込みは、いずれの時点でも0.5%未満であった。
【0162】
生体内分布およびシンチグラフィーによる画像研究
腫瘍を担持するラットにおける99mTc−N4−DGの生体内分布は、時間の関数としての腫瘍対組織の計数密度比の増加を示した(表2)。腫瘍を担持する動物モデルの平面画像によって、99mTc−または68Ga−N4−DG(図5A〜B、図6、図7)およびN4−AMT(図9、図10)で腫瘍が明確に視覚化され得ることが確認された。コンピューターでアウトラインされた対象領域(ROI)は、99mTc−N4−DG群における腫瘍/バックグラウンド比が、時間の関数として増加したことを示した(図8)。最適な画像時間は、ラットモデル1匹当たり1時間であった。
【0163】
【表2】

データは3匹の動物からの平均±標準偏差を示す
本明細書に開示および特許請求されている組成物および方法の全ては、過度の実験なしに本開示に照らして行われ遂行され得る。本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態に関して記載されているが、本明細書に記載の組成物および方法、ならびに本方法のステップまたはステップの連続において、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく変更を行い得ることが、当業者には明らかとなろう。より具体的には、化学的および生理学的両方に関係する幾つかの薬剤は、本明細書に記載の薬剤に代替することができると共に、同じまたは類似の結果が達成されることが明らかとなろう。当業者に明らかである全てのかかる代替および改変は、添付の請求の範囲によって定義されるように、本発明の精神、範囲、および概念に含まれるとみなされる。
【0164】
(参考文献)
以下の参考文献は、本明細書中に記載されたものに対して補充するような例示的な手法または他の詳細を提供する範囲において、参考として本明細書中に具体的に援用される。
【0165】
【数1】

【0166】
【数2】

【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】N4−DGの合成の図である。
【図2】231乳癌細胞における99mTc−N4−DG(サイクラム)のin vitro細胞取込みのグラフである。1ウェル当たり50,000個の細胞をプレートに入れ、密集度70〜80%に達するまで静置した。トレーサーを1ウェル当たり4μCiで投与し、37℃で1〜3時間インキュベートした。次いで細胞を回収し、放射能を計数し定量化した。
【図3】ヒト肺癌細胞における68Ga−N4−DG2(サイクラム)の細胞取込みのグラフである。A549細胞を使用するin vitro細胞取込みは、68Ga−N4−DGの取込みの増大を示したが、68Ga−N4は乏しい取込みを示した。
【図4A】ラット乳房腫瘍細胞における68Ga−N4−DG2(サイクラム)の細胞取込みのグラフである。13762細胞を使用するin vitro細胞取込みは、68Ga−N4−DGの取込みの増大を示したが、68Ga−N4は乏しい取込みを示した。
【図4B】99mTc−N4−DG(サイクラル)の細胞取込み研究のグラフである。1ウェル当たり50,000個の細胞をプレートに入れ、密集度70〜80%に達するまで静置した。トレーサーを1ウェル当たり4μCiで投与し、37℃で0.5〜2時間インキュベートした。次いで細胞を回収し、放射能を計数し定量化した。
【図4C】13762乳癌細胞株における99mTc−標識N4、ビオチン、AMT、およびDOTA化合物のin vitro研究のグラフである。1ウェル当たり50,000個の細胞をプレートに入れ、密集度70〜80%に達するまで静置した。トレーサーを1ウェル当たり4μCiで投与し、37℃で0.5〜1.5時間インキュベートした。
【図5A】68Ga−N4−DG対18F−FDG(uPET)の図である。類似の分布パターンが、68Ga−N4−DG(サイクラム)と18F−FDGとの間で観測された。
【図5B】68Ga−N4のμPET画像である。乳房腫瘍を担持するラットに400μCiの68Ga−N4を注入した。注入2時間後の選択画像を示した。
【図6】腫瘍のあるラットおよび腫瘍のないラットの10、60、および120分における99mTc−N4−DG(サイクラム)画像である。ラット1匹当たり300mCiを静脈注射した10、60、および120分後の、腫瘍(乳房の腫瘍細胞株)のあるラットおよび腫瘍のないラットにおける99mTc−N4−DGの平面シンチグラフィーでは、500,000計数を得て腫瘍の可視化を実施した。腫瘍対非腫瘍比を示す。T=腫瘍およびM=筋肉。
【図7】乳房の腫瘍細胞株を担持するラットの10、60、および120分における99mTc−N4−DG(サイクラム)および99mTc−EC−DG画像の比較の図である。乳房の腫瘍細胞株を担持するラットの99mTc−N4−DGおよび99mTc−EC−DGの60および120分の平面シンチグラフィー比較。(ラット1匹当たり300mCiを静脈注射、500,000計数を得た)。腫瘍対非腫瘍比を示す。T=腫瘍およびM=筋肉。
【図8】乳癌細胞株を担持するラットおよび担持しないラットでの99mTc−N4−DG(サイクラム)画像の腫瘍対筋肉の計数密度比のグラフである。99mTc−N4−DGでは腫瘍対筋肉比の増大が観測された。
【図9】注入1時間および3時間直後のウサギにおける99mTc−N4および99mTc−N4−AMT(サイクラム)画像を比較する図である。腫瘍可視化を比較するための、VX2腫瘍を担持するウサギにおける99mTc−N4および99mTc−N4−AMTの平面シンチグラフィー(ウサギ1匹当たり1mCi、静脈注入)。99mTc−N4−AMT群では腫瘍/筋肉比の増大が見られた。
【図10】68Gaマイクロ−PET画像である。乳房腫瘍を担持するラットに、400μCiの68Ga−N4−AMTを注入した。注入2時間後に腫瘍(右脚)が画像化されたことが全身画像によって示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的リガンドに結合した、次式を含むN4化合物を含む化合物
【化1】

[式中、A、A、A、およびAは、それぞれ独立に−(CH−であり、X=2〜4であり、
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である場合、前記標的リガンドは、疾患受容体標的リガンド、疾患細胞周期リガンド、腫瘍血管形成標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、および保護基からなる群から選択され、
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である場合、前記標的リガンドは、疾患受容体標的リガンド、疾患細胞周期リガンド、腫瘍血管形成標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、および保護基からなる群から選択される]。
【請求項2】
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−であり、前記標的リガンドが疾患受容体である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記疾患受容体が腫瘍標的リガンドである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記標的リガンドが、テトラ酢酸マンノース、α−β−チロシン、チロシン、チロシン誘導体、エストロン、タモキシフェン、およびαメチルチロシンからなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
前記疾患受容体がグルコース輸送体である、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
前記疾患受容体がエストロゲン受容体である、請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
前記疾患受容体がアミノ酸輸送体である、請求項2に記載の化合物。
【請求項8】
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−であり、前記標的リガンドが保護基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記保護基がトリフルオロ酢酸エチルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−であり、前記標的リガンドが疾患受容体である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記疾患受容体が腫瘍標的リガンドである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記疾患受容体がグルコース輸送体である、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
前記疾患受容体がエストロゲン受容体である、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
前記疾患受容体がアミノ酸輸送体である、請求項10に記載の化合物。
【請求項15】
前記標的リガンドが、テトラ酢酸マンノース、α−β−チロシン、チロシン、チロシン誘導体、エストロン、タモキシフェン、およびαメチルチロシンからなる群から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項16】
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−であり、前記標的リガンドが保護基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
前記保護基がトリフルオロ酢酸エチルである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
前記標的リガンドが、アミフォスチン、アンギオスタチン、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、乳糖、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、およびトリメチルリシンからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
前記標的リガンドがCOX−2阻害剤である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
前記COX−2阻害剤が、セレコキシブ、ロフェコキシブ、およびエトリコキシブからなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
前記標的リガンドが、テトラ酢酸マンノース、α−β−チロシン、チロシン、チロシン誘導体、エストロン、タモキシフェン、αメチルチロシン、およびトリフルオロ酢酸エチルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
前記標的リガンドが抗癌化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
前記標的リガンドが疎水性である、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
疎水性である、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
前記標的リガンドが糖である、請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項28】
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項29】
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項30】
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項31】
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項32】
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項33】
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項34】
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−、およびA=−(CH−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項35】
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−である場合、Aは−(CH−ではなく、
=−(CH−、A=−(CH−、A=−(CH−である場合、Aは−(CHではなく、
前記標的リガンドが、疾患受容体標的リガンド、疾患細胞周期リガンド、腫瘍血管形成標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、および保護基からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項36】
前記標的リガンドが疾患受容体標的リガンドである、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
前記疾患受容体標的リガンドが腫瘍標的リガンドである、請求項36に記載の化合物。
【請求項38】
前記疾患受容体がグルコース輸送体である、請求項36に記載の化合物。
【請求項39】
前記疾患受容体がエストロゲン受容体である、請求項36に記載の化合物。
【請求項40】
前記疾患受容体がアミノ酸輸送体である、請求項36に記載の化合物。
【請求項41】
前記標的リガンドが保護基である、請求項35に記載の化合物。
【請求項42】
前記保護基がトリフルオロ酢酸エチルである、請求項41に記載の化合物。
【請求項43】
次式を有するとさらに定義される、請求項1に記載の化合物
【化1−2】

[式中、A、A、A、およびAは、それぞれ独立に−(CH−であり、X=2〜4であり、
、R、およびRは、それぞれ独立に、水素、
【化1−3】

からなる群から選択され、
は、
【化1−4】

および
【化1−5】

からなる群から選択される]。
【請求項44】
金属原子にキレート化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項45】
前記金属原子が放射性ではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項46】
前記金属原子が、銅、コバルト、白金、鉄、ヒ素、レニウム、またはゲルマニウムである、請求項45に記載の化合物。
【請求項47】
放射性核種にキレート化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項48】
前記放射性核種が、99mTc、188Re、186Re、183Sm、166Ho、90Y、89Sr、67Ga、68Ga、111In、183Gd、59Fe、225Ac、212Bi、211At、45Ti、60Cu、61Cu、67Cu、64Cu、または62Cuである、請求項47に記載の化合物。
【請求項49】
前記放射性核種が、68Ga、90Y、99mTc、68Ga、または188Reである、請求項48に記載の化合物。
【請求項50】
前記放射性核種が99mTcである、請求項49に記載の化合物。
【請求項51】
医薬組成物に含まれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項52】
請求項1の化合物を対象に投与することを含む、癌の治療方法。
【請求項53】
前記対象が哺乳動物である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記哺乳動物がヒトである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記化合物が、99mTc、188Re、186Re、183Sm、166Ho、90Y、89Sr、67Ga、68Ga、111In、183Gd、59Fe、225Ac、212Bi、211At、45Ti、60Cu、61Cu、67Cu、64Cu、または62Cuにキレート化されている、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記化合物が99mTcにキレート化されている、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記化合物が、第2の抗癌化合物と組み合わせて投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記化合物が、放射線療法または手術と組み合わせて投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
請求項1に記載の化合物を対象に投与することを含む、画像化法。
【請求項60】
前記対象が哺乳動物である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記哺乳動物がヒトである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記化合物が、99mTc、188Re、186Re、183Sm、166Ho、90Y、89Sr、67Ga、68Ga、111In、183Gd、59Fe、225Ac、212Bi、211At、45Ti、60Cu、61Cu、67Cu、64Cu、または62Cuにキレート化されている、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記化合物が99mTcにキレート化されている、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記画像がPET画像を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記画像がSPET画像を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
請求項1に記載の化合物および還元剤を含むキット。
【請求項67】
放射性核種をさらに含む、請求項66に記載のキット。
【請求項68】
前記放射性核種が、99mTc、188Re、186Re、183Sm、166Ho、90Y、89Sr、67Ga、68Ga、111In、183Gd、59Fe、225Ac、212Bi、211At、45Ti、60Cu、61Cu、67Cu、64Cu、または62Cuである、請求項67に記載のキット。
【請求項69】
前記放射性核種が99mTcである、請求項68に記載のキット。
【請求項70】
抗酸化剤をさらに含む、請求項66に記載のキット。
【請求項71】
前記抗酸化剤が、ビタミンC、トコフェロール、ピリドキシン、チアミン、またはルチンである、請求項70に記載のキット。
【請求項72】
前記抗酸化剤がビタミンCである、請求項71に記載のキット。
【請求項73】
遷移キレート化剤をさらに含む、請求項66に記載のキット。
【請求項74】
前記遷移キレート化剤が、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルカリン酸塩、クエン酸塩、または酒石酸塩である、請求項73に記載のキット。
【請求項75】
前記遷移キレート化剤が、グルコン酸塩またはグルカリン酸塩である、請求項74に記載のキット。
【請求項76】
前記還元剤が、塩化スズ(II)またはトリフェニルホスフィンである、請求項66に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−534381(P2009−534381A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506472(P2009−506472)
【出願日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/016784
【国際公開番号】WO2007/120153
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(501100582)ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム (19)
【Fターム(参考)】