説明

細胞識別装置、細胞識別方法、細胞識別用プログラム、および細胞解析装置

【課題】 撮像した細胞の画像から個々の細胞を識別すること。
【解決手段】 細胞の位相差画像に対してエッジ抽出処理を行い(ステップS20)、細胞の輪郭を得る(ステップS30)。また、核の蛍光画像を2値化した後(ステップS40)、エッジ抽出処理を行い(ステップS50)、核の輪郭を得る(ステップS60)。細胞の輪郭を抽出した位相差画像に、核の輪郭を重ねあわせる(ステップS70)。1つの細胞内に核が2つ以上存在している細胞を抽出し(ステップS80)、1つの細胞の輪郭内に1つの核が含まれるように分割し(ステップS90)、核の輪郭を1つ含む細胞の輪郭を1つの細胞と認識する(ステップS110)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像した細胞の画像から細胞の輪郭を抽出して細胞を識別する細胞識別装置、細胞識別方法、細胞識別用プログラム、および識別した細胞の画像を撮像し、撮像した画像を画像処理して解析する細胞解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞を撮像した画像を2値化することによって、細胞の輪郭を抽出する細胞画像処理方法が特許文献1によって知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−274422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の細胞画像処理方法においては、画像上で隣同士つながった2つ以上の細胞は、1つの細胞として誤って抽出されてしまう可能性があるという問題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の細胞識別装置は、第1の撮像光学系で撮像した第1画像から一つの細胞として識別する細胞輪郭候補を抽出するとともに、第2の撮像光学系で撮像した第2画像から核を抽出する輪郭抽出手段と、輪郭抽出手段で抽出した細胞輪郭候補と核とに基づいて、一つの核が存在する細胞輪郭候補を一つの細胞として識別する識別手段とを備えることを特徴とする。
請求項2に記載の細胞識別装置は、請求項1に記載の細胞識別装置において、輪郭抽出手段で抽出した細胞輪郭候補と核とを重畳する画像重畳手段をさらに備え、識別手段は、画像重畳手段で重畳された画像に基づいて、一つの細胞輪郭候補内に核が一つだけ存在するか、複数個存在するかを判断する判断手段と、判断手段により一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断された場合、一つの細胞輪郭候補内に一つの核が存在するように該当する細胞輪郭候補を分割する分割手段とを含み、識別手段は、分割手段によって分割された一つの核を取り囲む一つの細胞輪郭候補を一つの細胞として識別することを特徴とする。
請求項3に記載の細胞識別装置は、請求項2に記載の細胞識別装置において、分割手段は、判断手段により一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断された場合には、一つの細胞輪郭候補に含まれる核の重心同士を結ぶ直線の垂直二等分線により、一つの細胞輪郭候補の中に一つの核を含むように分割することを特徴とする。
請求項4に記載の細胞識別装置は、請求項2に記載の細胞識別装置において、輪郭抽出手段で抽出した細胞輪郭候補および核を表示する表示手段と、判断手段により一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断された場合に、使用者が細胞輪郭候補を分割するための分割線を入力する入力手段とをさらに有し、表示手段は、判断手段により一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断された場合には、当該細胞輪郭候補を表示し、分割手段は、使用者によって前記入力手段を介して入力された分割線と細胞輪郭候補の輪郭線とで囲まれた核を一つ含む領域を細胞輪郭候補として分割することを特徴とする。
請求項5に記載の細胞識別装置は、請求項4に記載の細胞識別装置において、表示手段は、判断手段により核が複数存在すると判断された細胞輪郭候補を拡大して表示することを特徴とする。
請求項6に記載の細胞識別装置は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞識別装置において、第1の撮像光学系で撮像した第1画像は細胞の位相差画像または微分干渉画像であり、第2の撮像光学系で撮像した第2画像は核の蛍光画像であることを特徴とする。
請求項7に記載の細胞解析装置は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞識別装置と、細胞の画像を所定時間間隔で複数枚撮像し、撮像した複数枚の画像に対して画像処理を実行して、個々の細胞の時系列変化を解析する解析手段とを有することを特徴とする。
請求項8に記載の細胞識別方法は、第1の撮像光学系で撮像した第1画像から一つの細胞として識別する細胞輪郭候補を抽出するとともに、第2の撮像光学系で撮像した第2画像から核を抽出し、抽出した細胞輪郭候補と核とに基づいて、一つの核が存在する細胞輪郭候補を一つの細胞として識別することを特徴とする。
請求項9に記載の細胞識別方法は、請求項8に記載の細胞識別方法において、抽出した細胞輪郭候補と核とを重畳し、重畳された画像に基づいて、一つの細胞輪郭候補内に核が一つだけ存在するか、複数個存在するかを判断し、一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断した場合、一つの細胞輪郭候補内に一つの核が存在するように該当する細胞輪郭候補を分割し、分割した一つの核を取り囲む一つの細胞輪郭候補を一つの細胞として識別することを特徴とする。
請求項10に記載の細胞識別方法は、請求項9に記載の細胞識別方法において、一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断した場合には、一つの細胞輪郭候補に含まれる核の重心同士を結ぶ直線の垂直二等分線により、一つの細胞輪郭候補の中に一つの核を含むように分割することを特徴とする。
請求項11に記載の細胞識別方法は、請求項9に記載の細胞識別方法において、一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断した場合には、表示手段に表示されている当該細胞輪郭候補に対して使用者が入力手段を介して入力した分割線と細胞輪郭候補の輪郭線とで囲まれた核を一つ含む領域を細胞輪郭候補として分割することを特徴とする。
請求項12に記載の細胞識別方法は、請求項11に記載の細胞識別方法において、表示手段には核が複数存在すると判断された細胞輪郭候補を拡大して表示することを特徴とする。
請求項13に記載の細胞識別方法は、請求項8〜12のいずれか一項に記載の細胞識別方法において、第1の撮像光学系で撮像した第1画像は細胞の位相差画像または微分干渉画像であり、第2の撮像光学系で撮像した第2画像は核の蛍光画像であることを特徴とする。
請求項14に記載の細胞識別用プログラムは、第1の撮像光学系で撮像した第1画像から一つの細胞として識別する細胞輪郭候補を抽出するとともに、第2の撮像光学系で撮像した第2画像から核を抽出する輪郭抽出処理と、輪郭抽出処理で抽出した細胞輪郭候補と核とに基づいて、一つの核が存在する細胞輪郭候補を一つの細胞として識別する識別処理とを有することを特徴とする。
請求項15に記載の細胞識別用プログラムは、請求項14に記載の細胞識別用プログラムにおいて、輪郭抽出処理で抽出した細胞輪郭候補と核とを重畳する画像重畳処理をさらに有し、識別処理は、画像重畳処理で重畳された画像に基づいて、一つの細胞輪郭候補内に核が一つだけ存在するか、複数個存在するかを判断する判断処理と、判断処理で一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断した場合、一つの細胞輪郭候補内に一つの核が存在するように該当する細胞輪郭候補を分割する分割処理とを含み、識別処理は、分割処理で分割した一つの核を取り囲む一つの細胞輪郭候補を一つの細胞として識別することを特徴とする。
請求項16に記載の細胞識別用プログラムは、請求項15に記載の細胞識別用プログラムにおいて、分割処理は、判断処理で一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断した場合には、表示手段に表示されている当該細胞輪郭候補に対して使用者が入力手段を介して入力した分割線と細胞輪郭候補の輪郭線とで囲まれた核を一つ含む領域を細胞輪郭候補として分割することを特徴とする。
請求項17に記載の細胞識別用プログラムは、請求項14〜16のいずれか一項に記載の細胞識別用プログラムにおいて、第1の撮像光学系で撮像した第1画像は細胞の位相差画像または微分干渉画像であり、第2の撮像光学系で撮像した第2画像は核の蛍光画像であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、隣接する2つの細胞を個々の2つの細胞として識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明による細胞識別装置の一実施の形態の構成を示すブロック図である。細胞識別装置100は、入力装置110と、制御装置120と、モニタ130と、画像メモリ140とを備えている。また、細胞識別装置100には細胞の拡大画像を撮像するカメラ付き顕微鏡200が接続されており、使用者によって観察され、顕微鏡200で撮像された細胞の画像は、制御装置120へ転送され、画像メモリ140に格納されるとともにモニタ130に表示される。
【0008】
顕微鏡200は、CCD210を撮像素子とし、透過光による位相差観察光学系と、落射蛍光による蛍光観察光学系とを有する。本実施の形態では、位相差観察光学系で撮像した位相差画像と、蛍光観察光学系で撮像した核の蛍光画像とに基づいて細胞を識別し、識別した細胞を蛍光観察光学系で観察する。
【0009】
本実施の形態における細胞識別装置100は、顕微鏡200で撮像した細胞の画像内に含まれる個々の細胞を識別する。顕微鏡200で細胞を撮像するに当たっては、あらかじめ細胞の核を蛍光染色するための蛍光色素、例えばHoechstと、細胞を蛍光染色するため蛍光色素、例えばDiBACで細胞を染色しておく。そして、これらの色素で染色した細胞の拡大画像を顕微鏡200で撮像する。このとき、照明光学系や細胞に照射する励起光の波長を変化させることによって、位相差画像、あらかじめ加えた蛍光色素により細胞を蛍光染色した蛍光画像、および核を蛍光染色した蛍光画像のいずれかを撮像することができる。
【0010】
本実施の形態では、顕微鏡200として倒立顕微鏡を使用し、上部の照明系から所定波長の光を照射し、図2に示すように細胞の位相差画像を撮像する。その後、照明を落射蛍光照明に変更して細胞の核を蛍光染色している色素を励起する波長の光を照射し、図3に示す細胞の核の蛍光画像を撮像する。このとき、図2に示す細胞の位相差画像と、図3に示す核の蛍光画像とは、その視野が同一になるように撮像する。
【0011】
顕微鏡200で撮像した細胞の位相差画像、および核の蛍光画像の画像データは、制御装置120へ転送され、画像メモリ140へ格納される。制御装置120においては、細胞の位相差画像、および核の蛍光画像を画像処理して、以下に説明するように画像内に存在する個々の細胞を識別する。細胞の位相差画像に対してエッジ抽出処理を行い、抽出したエッジの隣り合うもの同士を直線で結ぶことによって細胞の輪郭を抽出する。ここで抽出した細胞の輪郭を1つの細胞の輪郭候補として、後述するように個々の細胞を識別する。
【0012】
図4は、エッジ抽出処理を行った結果に基づいて、細胞の輪郭を抽出するアルゴリズムの具体例を図示したものである。図4における各点は、エッジ抽出処理によって抽出されたエッジを表している。図4(a)において、任意の2つのエッジAおよびBを直線4aで結び、直線4aから垂直方向に最も離れたエッジCと、直線4aの端点、すなわちエッジAおよびBとをそれぞれ直線4bおよび4cで結ぶ。
【0013】
次に、図4(b)に示すように、直線4bと直線4cのそれぞれから垂直方向に最も離れたエッジDおよびEと、直線4bと直線4cのそれぞれの端点とを直線で結ぶ。これによって、エッジA,D,C、EおよびBが直線で結ばれ、その輪郭が抽出されていく。そして、図4(c)において、上述した図4(b)で示したのと同じ処理を行い、その後、全ての点が直線で結ばれるまで処理を繰り返すことによって、細胞の輪郭を抽出することができる。
【0014】
次に、核の蛍光画像に対して行う画像処理について説明する。まず、核の蛍光画像を2値化する。そして、2値化した核の蛍光画像に対して、細胞の位相差画像に対して行ったのと同様にエッジ抽出を行い、核の輪郭を得る。
【0015】
その後、抽出した細胞の輪郭に、抽出した核の輪郭を重ねあわせて(重畳して)、図5に示す細胞の輪郭5aおよび核の輪郭5bを表示した画像を生成する。そして、生成した画像内において、1つの細胞の輪郭5a内に核の輪郭5bが2つ以上存在している細胞の輪郭5aを抽出する。1つの細胞の輪郭5a内に核の輪郭5bが2つ以上存在している場合、2つの細胞が隣接した状態で細胞の位相差画像が撮像されており、エッジ抽出した結果、1つの細胞として輪郭が抽出されてしまったと考えられる。よって、1つの細胞の輪郭5a内に核の輪郭5bが2つ以上存在している場合には、1つの細胞の輪郭5a内に1つの核の輪郭5bが存在するように、細胞の輪郭5aを分割する。
【0016】
細胞の輪郭5aを分割するに当たっては、例えば図6に示すように、1つの細胞の輪郭5a内に含まれる核の輪郭5bの重心同士を直線6aで結び、その直線の垂直二等分線6bにより細胞の輪郭5aを分割する。図5に示した細胞の輪郭5aおよび核の輪郭5bを表示した画像に対して、細胞の輪郭5aの分割処理を行った結果を図7に示す。これにより、1つの細胞の輪郭5a内に1つの核の輪郭5bが存在するよう細胞の輪郭5aを分割することができる。そして、分割処理を行った結果得られた画像において、核の輪郭5bを1つ含む細胞の輪郭5aを1つの細胞と認識して、個々の細胞を識別する。
【0017】
すなわち、垂直二等分線(分割線)6bで分割した1つの核輪郭候補を取り囲む1つの細胞輪郭候補を1つの細胞として識別することによって、1つの核輪郭候補が存在する細胞輪郭候補を1つの細胞として識別する。なお、識別した個々の細胞には、個々の細胞を一意に識別するためのID(識別符号)が付与され、付与されたIDは、識別した細胞の輪郭、すなわち形状、および画像内における細胞の位置、例えば画像内をXY座標系としたときの核の重心の座標値とともに個々の細胞の識別データとして不図示のメモリに格納される。そして識別した個々の細胞の観察画像は、細胞の識別データに基づいて細胞単位に画像処理することができる。
【0018】
本実施の形態においては、例えば図8および図9に示すように、顕微鏡200を使用して個々の細胞の観察画像に対して画像処理を行い、その観察結果を得る。すなわち、顕微鏡200において、細胞に照射する励起光の波長を、細胞を蛍光染色している色素(例えばDiBAC)を励起する波長に変化させ、図8に示す細胞の蛍光画像を所定の時間間隔で撮像する。そして、蛍光画像における各細胞の蛍光強度を計測して、図9に示すようにその時系列変化を示すグラフをモニタ130に表示する。
【0019】
なお、図9は、図8で識別した2つの細胞8aおよび8bの輪郭内における蛍光強度の平均値の時系列変化を示すグラフを示す図である。図9においては、時点t1で試薬を添加すると、細胞8aおよび8bの輪郭内における蛍光強度の平均値が増加していることがわかる。例えば細胞を蛍光染色している色素がDiBACの場合には、細胞の膜電位が変化していることがわかる。
【0020】
図10は、本実施の形態における細胞識別装置100の動作を示すフローチャートである。顕微鏡200を使用して細胞の観察を開始するにあたり、使用者は観察対象の細胞に上述した蛍光色素を加えて予め蛍光染色した細胞を含むシャーレを顕微鏡200にセットし、観察倍率の設定などの前準備を行う。図10に示す処理は、これらの前準備が完了し、使用者によって細胞識別処理の実行が指示されると起動するプログラムとして制御装置120により実行される。
【0021】
ステップS10において、顕微鏡200で拡大撮像された画像を画像メモリ140に格納するとともにモニタ130に表示する。その後、ステップS11へ進み、顕微鏡200で撮像された画像が細胞の位相差画像であるか、あるいは核の蛍光画像であるかを判断する。顕微鏡200で撮像された画像が細胞の位相差画像である場合には、ステップS20へ進む。ステップS20では、細胞の位相差画像に対してエッジ抽出処理を行う。その後、ステップS30へ進み、抽出したエッジをつなぎ合わせて細胞の輪郭5aを得る。その後、ステップS61へ進む。
【0022】
一方、顕微鏡200で撮像された画像が核の蛍光画像であると判断した場合には、ステップS40へ進む。ステップS40では、核の蛍光画像を2値化した後、ステップS50へ進み、2値化した結果得られた画像に対してエッジ抽出処理を行い核のエッジを抽出する。その後、ステップS60へ進み、抽出したエッジをつなぎ合わせて核の輪郭5bを得る。その後、ステップS61へ進む。
【0023】
ステップS61では、撮像された細胞の位相差画像、および核の蛍光画像に対する画像処理が完了したか否かを判断する。画像処理が完了したと判断した場合には、ステップS70へ進む。ステップS70では、細胞の位相差画像から抽出した細胞の輪郭5aと、核の蛍光画像から抽出した核の輪郭5bとを重畳して、図5に示したように細胞および核の輪郭を表示した画像を生成して、ステップS71へ進み、生成した画像をモニタ130に表示する。
【0024】
その後、ステップS80へ進み、1つの細胞の輪郭5a内に核の輪郭5bが2つ以上存在している細胞の輪郭5aを抽出して、ステップS90へ進む。ステップS90では、1つの細胞内に核が2つ以上存在している細胞の輪郭5aを上述したように1つの輪郭の輪郭5a内に含まれる核の輪郭5bの重心同士を直線で結び、その直線の垂直二等分線6bにより、1つの細胞の輪郭5a内に1つの核の輪郭5bが含まれるように分割する。
【0025】
その後、ステップS100へ進み、抽出した1つの細胞の輪郭5a内に核の輪郭5bが2つ以上存在している全ての細胞の輪郭5aに対して分割処理が完了したか否かを判断する。抽出した全ての細胞の輪郭5aに対して分割処理が完了していないと判断した場合には、全て完了するまで分割処理を繰り返す。抽出した全ての細胞の輪郭5aに対して分割処理が完了したと判断した場合には、ステップS110へ進む。ステップS110では、核の輪郭を1つ含む細胞の輪郭5aを1つの細胞と認識して、認識した個々の細胞にID番号を付与して、上述した細胞の識別データをメモリに記憶する。その後、処理を終了する。
【0026】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
(1)抽出した細胞の輪郭と抽出した核の輪郭とを重畳して、細胞および核の輪郭を表示した画像を生成し、生成した画像内から1つの細胞の輪郭内に核の輪郭が2つ以上存在している細胞の輪郭を抽出して分割することとした。これによって、抽出した1つの細胞の輪郭が、実際には複数の細胞により構成されていることを正確に判定することができ、細胞の輪郭の分割を適切に行うことができる。
(2)1つの細胞内に核が2つ以上存在している場合には、1つの輪郭内に含まれる核の重心同士を直線で結び、その直線の垂直2等分線により、1つの細胞の輪郭内に1つの核が含まれるように分割して、核の輪郭を1つ含む細胞の輪郭を1つの細胞と認識することとした。これによって、同一視野で撮像した細胞の位相差画像、および核の蛍光画像内に存在する個々の細胞を的確に認識することができる。
【0027】
なお、上述した本実施の形態においては、抽出した細胞の輪郭と核の輪郭とを重畳して生成した画像に基づいて、1つの細胞の輪郭内に核の輪郭が2つ以上存在している細胞の輪郭を抽出し、制御装置120が抽出した細胞の輪郭を核の輪郭の重心同士を結ぶ直線の垂直二等分線により分割することとした。しかし、抽出した1つの細胞の輪郭内に核の輪郭が2つ以上存在している細胞をモニタ140に拡大表示し、入力装置110を使用して使用者が細胞の分割線を例えばドラッグ操作によって入力できるようにしてもよい。この場合、制御装置120は、使用者によって入力された分割線と細胞の輪郭線とで囲まれた核を1つ含む領域を1つの細胞として識別する。
【0028】
上述した実施の形態では、エッジ抽出処理によって抽出したエッジを図4にて説明したアルゴリズムによってつなぎ合わせて、細胞、および核の輪郭を得ることとしたが、これに限定されず、その他のアルゴリズムによってエッジをつなぎ合わせてもよい。
【0029】
上述した実施の形態では、顕微鏡200で撮像した拡大画像を細胞識別装置100へ取り込んで画像処理を行い、画像内に存在する個々の細胞を識別することとしたが、顕微鏡200で撮像した拡大画像を細胞識別プログラムを備えた汎用PCへ取り込んで、汎用PC上で画像内に存在する個々の細胞を識別してもよい。
【0030】
上述した実施の形態では、顕微鏡200で撮像した細胞の位相差画像に基づいて細胞の輪郭を抽出することとした。しかし、顕微鏡200によって細胞の微分干渉画像を撮像し、撮像した細胞の微分干渉画像に基づいて細胞の輪郭を抽出してもよい。
【0031】
上述した実施の形態では、細胞の位相差画像から抽出した細胞の輪郭に、核の蛍光画像から抽出した核の輪郭を重ねあわせて生成した画像に基づいて個々の細胞を識別することとした。しかし、画像の重ねあわせをせずに、例えば、画像内をXY座標系としたときの細胞の輪郭を構成する各点の座標値と、核の重心の座標値とに基づいて、細胞の輪郭内に核が1つ存在する細胞の輪郭を判別し、当該核を1つ含む細胞の輪郭を1つの細胞として識別してもよい。また、その他のアルゴリズムにより個々の細胞を識別してもよい。
【0032】
特許請求の範囲の構成要素と実施の形態との対応関係について説明する。制御装置120は輪郭抽出手段、画像重畳手段、識別手段、判断手段、および分割手段に相当する。入力装置110は入力手段に、モニタ130は表示手段に相当する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における構成に何ら限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による細胞識別装置の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】細胞の位相差画像を示す図である。
【図3】細胞の核の蛍光画像を示す図である。
【図4】エッジ抽出処理を行った結果に基づいて、細胞の輪郭を抽出するアルゴリズムの具体例を図示したものである。
【図5】細胞および核の輪郭を表示した位相差画像を示す図である。
【図6】1つの細胞内に核が2つ以上存在している場合に、細胞の輪郭を分割する具体例を示す図である。
【図7】細胞の輪郭の分割処理を行った結果を示す図である。
【図8】細胞の観察方法の具体例を示す第1の図である。
【図9】細胞の観察方法の具体例を示す第2の図である。
【図10】本実施の形態における細胞識別装置100の動作を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0034】
100 細胞識別装置
110 入力装置
120 制御装置
130 モニタ
140 画像メモリ
200 顕微鏡
210 CCD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の撮像光学系で撮像した第1画像から一つの細胞として識別する細胞輪郭候補を抽出するとともに、第2の撮像光学系で撮像した第2画像から核を抽出する輪郭抽出手段と、
前記輪郭抽出手段で抽出した細胞輪郭候補と核とに基づいて、一つの核が存在する細胞輪郭候補を一つの細胞として識別する識別手段とを備えることを特徴とする細胞識別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞識別装置において、
前記輪郭抽出手段で抽出した細胞輪郭候補と核とを重畳する画像重畳手段をさらに備え、
前記識別手段は、
前記画像重畳手段で重畳された画像に基づいて、一つの細胞輪郭候補内に核が一つだけ存在するか、複数個存在するかを判断する判断手段と、
前記判断手段により一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断された場合、一つの細胞輪郭候補内に一つの核が存在するように該当する細胞輪郭候補を分割する分割手段とを含み、
前記識別手段は、前記分割手段によって分割された一つの核を取り囲む一つの細胞輪郭候補を一つの細胞として識別することを特徴とする細胞識別装置。
【請求項3】
請求項2に記載の細胞識別装置において、
前記分割手段は、前記判断手段により一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断された場合には、一つの細胞輪郭候補に含まれる核の重心同士を結ぶ直線の垂直二等分線により、一つの細胞輪郭候補の中に一つの核を含むように分割することを特徴とする細胞識別装置。
【請求項4】
請求項2に記載の細胞識別装置において、
前記輪郭抽出手段で抽出した細胞輪郭候補および核を表示する表示手段と、
前記判断手段により一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断された場合に、使用者が細胞輪郭候補を分割するための分割線を入力する入力手段とをさらに有し、
前記表示手段は、前記判断手段により一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断された場合には、当該細胞輪郭候補を表示し、
前記分割手段は、使用者によって前記入力手段を介して入力された分割線と細胞輪郭候補の輪郭線とで囲まれた核を一つ含む領域を細胞輪郭候補として分割することを特徴とする細胞識別装置。
【請求項5】
請求項4に記載の細胞識別装置において、
前記表示手段は、前記判断手段により核が複数存在すると判断された細胞輪郭候補を拡大して表示することを特徴とする細胞識別装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞識別装置において、
前記第1の撮像光学系で撮像した第1画像は細胞の位相差画像または微分干渉画像であり、前記第2の撮像光学系で撮像した第2画像は核の蛍光画像であることを特徴とする細胞識別装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞識別装置と、
細胞の画像を所定時間間隔で複数枚撮像し、撮像した複数枚の画像に対して画像処理を実行して、個々の細胞の時系列変化を解析する解析手段とを有することを特徴とする細胞解析装置。
【請求項8】
第1の撮像光学系で撮像した第1画像から一つの細胞として識別する細胞輪郭候補を抽出するとともに、第2の撮像光学系で撮像した第2画像から核を抽出し、
抽出した細胞輪郭候補と核とに基づいて、一つの核が存在する細胞輪郭候補を一つの細胞として識別することを特徴とする細胞識別方法。
【請求項9】
請求項8に記載の細胞識別方法において、
抽出した細胞輪郭候補と核とを重畳し、
重畳された画像に基づいて、一つの細胞輪郭候補内に核が一つだけ存在するか、複数個存在するかを判断し、
一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断した場合、一つの細胞輪郭候補内に一つの核が存在するように該当する細胞輪郭候補を分割し、
分割した一つの核を取り囲む一つの細胞輪郭候補を一つの細胞として識別することを特徴とする細胞識別方法。
【請求項10】
請求項9に記載の細胞識別方法において、
一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断した場合には、一つの細胞輪郭候補に含まれる核の重心同士を結ぶ直線の垂直二等分線により、一つの細胞輪郭候補の中に一つの核を含むように分割することを特徴とする細胞識別方法。
【請求項11】
請求項9に記載の細胞識別方法において、
一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断した場合には、表示手段に表示されている当該細胞輪郭候補に対して使用者が入力手段を介して入力した分割線と細胞輪郭候補の輪郭線とで囲まれた核を一つ含む領域を細胞輪郭候補として分割することを特徴とする細胞識別方法。
【請求項12】
請求項11に記載の細胞識別方法において、
前記表示手段には核が複数存在すると判断された細胞輪郭候補を拡大して表示することを特徴とする細胞識別方法。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一項に記載の細胞識別方法において、
前記第1の撮像光学系で撮像した第1画像は細胞の位相差画像または微分干渉画像であり、前記第2の撮像光学系で撮像した第2画像は核の蛍光画像であることを特徴とする細胞識別方法。
【請求項14】
第1の撮像光学系で撮像した第1画像から一つの細胞として識別する細胞輪郭候補を抽出するとともに、第2の撮像光学系で撮像した第2画像から核を抽出する輪郭抽出処理と、
前記輪郭抽出処理で抽出した細胞輪郭候補と核とに基づいて、一つの核が存在する細胞輪郭候補を一つの細胞として識別する識別処理とを有することを特徴とするコンピュータで実行される細胞識別用プログラム。
【請求項15】
請求項14に記載の細胞識別用プログラムにおいて、
前記輪郭抽出処理で抽出した細胞輪郭候補と核とを重畳する画像重畳処理をさらに有し、
前記識別処理は、
前記画像重畳処理で重畳された画像に基づいて、一つの細胞輪郭候補内に核が一つだけ存在するか、複数個存在するかを判断する判断処理と、
前記判断処理で一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断した場合、一つの細胞輪郭候補内に一つの核が存在するように該当する細胞輪郭候補を分割する分割処理とを含み、
前記識別処理は、前記分割処理で分割した一つの核を取り囲む一つの細胞輪郭候補を一つの細胞として識別することを特徴とする細胞識別用プログラム。
【請求項16】
請求項15に記載の細胞識別用プログラムにおいて、
前記分割処理は、前記判断処理で一つの細胞輪郭候補内に核が複数個存在すると判断した場合には、表示手段に表示されている当該細胞輪郭候補に対して使用者が入力手段を介して入力した分割線と細胞輪郭候補の輪郭線とで囲まれた核を一つ含む領域を細胞輪郭候補として分割することを特徴とする細胞識別用プログラム。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか一項に記載の細胞識別用プログラムにおいて、
前記第1の撮像光学系で撮像した第1画像は細胞の位相差画像または微分干渉画像であり、前記第2の撮像光学系で撮像した第2画像は核の蛍光画像であることを特徴とする細胞識別用プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−18394(P2006−18394A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193332(P2004−193332)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】