説明

細菌性および真菌性生物膜の酵素による剥離のための組成物および方法

生物膜からの細菌細胞の剥離を促進する、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体の、単離核酸配列およびアミノ酸配列を提供する。表面にしっかり付着した生物膜コロニーを形成するが、細胞を媒体中に放出できない、または表面上に分散できない、単離された変異体細菌もまた提供する。さらに、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼを突然変異させることにより、またはその発現もしくは活性を変化させることにより、生物膜からの細菌細胞の剥離を調節する方法を記載する。さらに、細菌感染症を予防、抑制および処置するための組成物、方法およびデバイスも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
緒言
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組込まれる2002年12月20日提出の米国仮出願第60/435,817号に基づく優先権の利益を主張する。
発明分野
【0002】
本発明は、生物膜からの細菌細胞の剥離を促進するタンパク質である、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼすなわちジスペルシンBおよびそれらの活性断片もしくは変異体の単離核酸配列、ならびにそれらによってコードされるアミノ酸配列を提供する。核酸配列を含むベクターおよび、ジスペルシンBタンパク質またはそれらの活性断片もしくは変異体を発現する宿主細胞も提供する。A. actinomycetemcomitansの生物膜剥離変異体(biofilm detachment mutant)についても記載される。本発明の核酸配列およびアミノ酸配列は、生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を調節する方法において、また生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を調節する剤を同定する方法において、有用である。したがって、これらの核酸配列およびアミノ酸配列および剤は、細菌感染または真菌感染の予防および処置において、また消毒薬および防腐溶液において、有用に用いられることが期待される。
発明背景
【0003】
生物膜は、不活性または生きている表面に付着して増殖する細菌または真菌の集団である。多くの証拠は、生物膜がヒトの健康に対する重大な脅威であることを示している。公衆衛生局によれば、生物膜は、ヒトにおける細菌感染の80%以上の原因であると推定されている(National Institutes of Health, 1998 RFA# DE-98-006)。生物膜が原因である疾患の例には、虫歯、歯周病、膵嚢胞性線維症、肺炎、先天性弁(native valve)心内膜炎、および中耳炎(Costerton et al. Science 1999 284: 1318-1322)、さらに種々の医療用デバイスの感染、例えば導尿カテーテル、機械弁、心臓ペースメーカー、人工関節、およびコンタクトレンズ(Donlan, R.M. 2001 Emerging Infect. Dis. 7: 277-281)の感染などが含まれる。真菌も臨床的に重要な生物膜を形成し、例えば、カンジダ感染症である。生物膜感染症は、毎年米国において何百万人もの患者を苦しめ、多大な医療費の支出を必要とさせている(Costerton et al. Science 1999 284: 1318-1322)。生物膜中で増殖する細菌は抗菌剤に対して抵抗性の増加を示し、根絶するのは殆ど不可能である。生物膜感染症の処置のための新しい方法が必要である。
【0004】
生物膜中の細菌は、細菌全体を保持し、細菌全体を下の表面にしっかりと付着させる細胞外多糖類(EPS)物質の網の目にからめられている。前の研究により、EPSを分解する酵素は、生物膜からの細胞の剥離を引き起こせることが示されている。例えば、アルギン酸EPSの分解を触媒する酵素であるアルギン酸リアーゼの過剰発現は、Pseudomonas aeruginosaのコロニーの表面への付着を困難にする(Boyd, A. and Charkrabarty, A.M. Appl. Environ. Microbiol. 1994 60: 2355-2359)。アルギン酸リアーゼは、膵嚢胞性線維症患者の肺におけるP. aeruginosa感染症の処置に使用することが示唆されている(Mrsny et al. Pulm. Pharmacol. 1994 7: 357-366)。類似の多糖類リアーゼが、P. Fluorescensによって生成されることが示されている(Allison et al. FEMS Microbiol. Lett. 1998 167: 179-184)。2種類の他のEPS分解酵素である、植物の病原体Xanthomonas campestrisからのエンド−β−1,4−マンナナーゼ(Dow et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 2003 100: 10995-11000)、およびメタン生成古細菌Methanosarcina mazeiからの脱凝集酵素(disaggregatase)(Liu et al. Appl. Environ. Microbiol. 1985 49: 608-613)が、生物膜の細胞の剥離を引き起こすことが示されている。X. Campestrisの場合、EPS分解酵素の生成は、植物中のバクテリアの全毒性のために必要であった。歯の病原体であるStreptococcus mutansの生物膜コロニーからの細胞の剥離は、未同定の内因性酵素活性によって引き起こされることが示された(Lee et al. Infect. Immun. 1996 64: 1035-1038)。多糖類加水分解酵素の複合混合物が、スチールおよびポリプロピレン基質から生物膜を除去することが示された(Johansen et al. Appl. Environ. Microbiol. 1997 63: 3724-3728)。これらの所見は、EPS分解酵素が、生物膜を表面から除去するための剤として用いられる可能性があることを示唆している。
【0005】
酵素は、一般に産業環境において生物膜を除去するために用いられているにも関わらず、酵素を臨床環境での生物膜の除去のための剤として用いる可能性については、研究がなされていない。臨床上の特別な関心は、留置用医療用デバイス、特に静脈内カテーテルの生物膜感染症にある。カテーテル感染は入院患者によくみられ、高い罹患率および死亡率と関連する。これらの感染症を処置するための有望な新しいアプローチは、抗菌剤を被覆または浸透させたカテーテルを使用することであり、これら抗菌剤には抗生物質(Schierholz et al. J. Antimicrobial. Chemother. 2000 46: 45-50)、銀(Bechert et al. Infection 1999 27: S24-S29)、およびペプチド菌体感知阻害剤(Balaban et al. J. Infect. Dis. 2003 187: 625-630)などが含まれる。多くの研究により、抗菌活性を有する医療用デバイスは、細菌のコロニー形成および感染のリスクを低減させることが示されている(Tcholakian, R.K. and Raad, I.I. Antimicrob. Agents Chemother. 2001 45:1990-1993)。
【0006】
本発明は、細菌細胞の剥離に関連する単離タンパク質およびその活性断片と変異体、ならびに、かかるタンパク質およびその活性断片と変異体をコードする核酸配列を提供する。細菌性または真菌性の生物膜細胞の剥離を調節する方法、ならびに、これらのタンパク質およびその活性断片と変異体および/または核酸配列を介して、細菌または真菌の剥離を調節する剤を同定する方法もまた提供される。
【0007】
発明の概要
本発明の目的は、生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を促進する、単離タンパク質およびそれらの活性断片と変異体を提供することである。単離タンパク質は、本明細書において、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼすなわちジスペルシンBと称する。
本発明の他の目的は、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼおよびその活性断片と変異体をコードする単離核酸配列、ならびに、これらの配列を含むベクターおよび該ベクターを発現する宿主細胞を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を調節するための方法を提供することである。1つの態様において、該方法は、細菌細胞を突然変異させて、生物膜からの細菌細胞の剥離を抑制することを含む。他の態様において、該方法は、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体の、細菌細胞または真菌細胞における発現および/またはレベルを高めて、剥離を増加させることを含む。さらに他の態様において、該方法は、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体の発現および/またはレベルを低めて、または、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体の活性を抑制して、細菌細胞の剥離を減少させることを含む。
【0009】
本発明の他の目的は、表面にしっかり付着するが、細胞を媒体中に放出したり表面上に広げたりしない、Actinobacillus actinomycetemcomitansの単離された変異体を提供することである。
本発明の他の目的は、細菌細胞または真菌細胞の生物膜からの剥離を調節する剤を同定するための方法であって、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼの活性および/またはレベルおよび/または発現を調節する剤の能力を評価することを含む、前記方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、細菌細胞中での可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼの発現および/または活性を抑制する剤の投与を介した、感染性細菌の播殖の予防に用いるための組成物および方法を提供することである。
本発明の他の目的は、感染性細菌または真菌の表面への付着を予防または抑制するため、または感染性細菌または真菌を表面から除去するための組成物および方法であって、該表面を、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体によって処置することを含む、前記方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼのホモログを有するその他の細菌種を同定するために用いることのできるプライマー対を含む、PCRプライマー対およびキットを提供することである。
【0012】
発明の詳細な説明
小さなグラム陰性球棹菌Actinobacillus actinomycetemcomitansは、ヒト口腔の一般的な居住細菌(common inhabitant)である(King, E.O. and Tatum, H.W. J. Infect. Dis. 1962 111:85-94)。A. actinomycetemcomitansは、青少年に影響を及ぼす重篤で急速な歯周病の一形態である、局所的な若年性の歯周炎の病原因子とされている(Zambon, J.J. J. Clin. Periodontol 1985 12: 1-20)。A. actinomycetemcomitansは粘膜下組織にも侵入することでき、感染性心内膜炎および他の非口腔的感染症を引き起こす(Kaplan et al. Rev. Infect. Dis. 1989 11: 46-63)。
【0013】
ブロス中で培養された場合、A. actinomycetemcomitansの新鮮な臨床分離株は、ガラス、プラスチック、および唾液で被覆されたヒドロキシアパタイトなどの表面に除去しにくい生物膜を形成する(Fine et al. Arch. Oral. Biol. 1999 44: 1063-1076;Fine et al. Microbiol. 1999 145: 1335-1347;Fine et al. Arch. Oral Biol. 2001 46: 1065-1078;Haase et al. Infect. Immun. 1999 67: 2901-2908;Inouye et al. FEMS Microbiol. Lett. 1990 69: 13-18;Kachlany et al. J. Bacteriol. 2000 182: 6169-6176;Kachlany et al. Mol. Microbiol. 2001 40: 542-554;Kagermeier, A.S. and London, J. Infect. Immun. 1985 47: 654-658;Kaplan, J.B., and Fine, D.H. Appl. Environ. Microbiol. 2002 68: 4943-4950;King, E.O. and Tatum, H.W. J. Infect. Dis. 1962 111: 85-94;Rosan et al. Oral. Microbiol. Immunol. 1988 3: 58-93)。殆ど全ての細胞は表面に付着して増殖し、ブロスは透明のままで多くの場合無菌である(Fine et al. Arch. Oral. Biol. 1999 44: 1063-1076)。表面に形成された密度の高い生物膜は、洗浄剤などの剤、タンパク質分解酵素、熱、超音波処理、渦流攪拌等による除去に抵抗性があり(Fine et al. Arch. Oral. Biol. 1999 44: 1063-1076)、機械的なかきとりによってのみ、取り除くことができる。A. actinomycetemcomitansの生物膜コロニーは、プランクトン様に増殖する細胞に比べて、抗菌剤に対して高い抵抗性を示す(Fine et al. J. Clin. Periodontol. 2001 28: 697-700)。
【0014】
強い付着は、A. actinomycetemcomitansがラットの口にコロニーを形成する能力において重要な役割を果たすことが示され(Fine et al. Arch. Oral Biol. 2001 46: 1065-1078)、ヒトにおいてコロニーを形成する能力においても同様に重要な役割を有すると考えられている。表面への強い付着は、細胞の表面に形成される、長く束になったピリ(線毛)の存在に依存する(Inouye et al. FEMS Microbiol. Lett. 1990 69: 13-18;Rosan et al. Oral. Microbiol. Immunol. 1988 3: 58-63)。主要なピリンサブユニットタンパク質をコードするflp−1での突然変異は、フィムブリエを生成できない、または表面に付着できない細胞を生じる(Kachlany et al. Mol. Microbiol. 2001 40: 542-554)。
【0015】
A. actinomycetemcomitansの生物膜コロニーは、液体媒体中に細胞を放出することが示され、該細胞は培養容器の表面に付着して新しいコロニーを形成し、生物膜が広がることを可能にする(Kaplan, J.B. and Fine D.H. Appl. Environ. Microbiol. 2002 68: 4943-4950)。
【0016】
本発明の1つの側面は、表面には付着するが、媒体中に細胞を放出できないか、または表面に細胞を広がらせることのできない生物膜コロニーを形成する、A. actinomycetemcomitansの変異体に関する。A. actinomycetemcomitansの生物膜剥離変異体は、本明細書において、JK1023変異体と呼ぶ。A. actinomycetemcomitansの生物膜剥離JK1023変異体を作製するために、A. actinomycetemcomitansのCU1000N株をトランスポゾンIS903φkanを用いて突然変異させた。次に突然変異株(JK1023と指定)を単離した。この変異株は、野生型A. actinomycetemcomitans粗コロニー表現型(rough-colony phenotype)より粗いコロニー形態を寒天培地上に生じさせる(Fine et al. Microbiol. 1999 145: 1335-1347;Haase et al. Infect. Immun. 1999 67: 2901-2908;Inouye et al. FEMS Microbiol. Lett. 1990 69: 13-18)。JK1023コロニーは、堅い質感を有し、寒天培地表面から取り除くのが非常に困難であった。ブロス内で培養した場合、JK1023株は、大きさと形が野生株と類似した生物膜コロニーを生成したが、培養容器の表面にサテライトコロニーを生成することはできなかった。JK1023細胞のポリスチリンへの付着は、野生型のCU1000N株のそれと、96穴マイクロタイタープレート結合アッセイによる測定で同程度であった。
【0017】
本発明のJK1023変異株の生物膜コロニーが、生物膜細胞の剥離の能力が欠損していることを示すために、生物膜コロニーを、24穴マイクロタイタープレートの穴に入れたブロス中に吊り下げたポリスチレンロッド上で24時間増殖させた。生物膜細胞の剥離の量は、穴の底で増殖する細菌をクリスタル・バイオレットで染色することにより、定量した。穴の底でのコロニー形成は、ポリスチレンロッド上で増殖した生物膜コロニーから剥離し、穴の底に落ちた細胞から生じる。このアッセイにおいて、JK1023株の生物膜コロニーは、野生株と比べて非常に少ない細胞を増殖させた(P<0.01、対応なし両側t検定)。これらのデータは、JK1023変異株は、野生型の表面付着の表現型であるが、CU1000N野性株と比較すると生物膜細胞の剥離が低下している表現型を示すことを示唆する。
【0018】
本変異株のトランスポゾン挿入部位を含む領域のDNA配列解析により、挿入は、本明細書においてdspBと指定された1,143塩基対のオープン・リーディング・フレームにあることが示された。CU1000株からのdspB遺伝子は、本明細書でジスペルシンBと呼ばれる、381個のアミノ酸残基を有する分子量43.4kDaのタンパク質をコードすることが予測された。dspBの5’端は予測された信号ペプチドを含み、ジスペルシンBが分泌タンパク質であることを示唆している。
【0019】
dspB核酸配列または断片は、A. actinomycetemcomitansに加えて、Actiobacillus pleuropneumonaie、Haemophilus aphrophilusおよびActijnobacillus ligniersiiからも単離されている。dspBは、我々が試験した株の中ではHaemophilus influenzae、Pasteurella multicido、Mannheimia haemolytica、Actionobacillus equuliおよびHaemophilus ducreyiの遺伝子中には存在しなかった。
従って、本発明の他の側面は、ジスペルシンBまたはその活性断片および変異体をコードする核酸配列、ならびにジスペルシンBおよびその活性断片および変異体のアミノ酸配列に関する。本発明にさらに含まれるのは、これらの核酸配列を含むベクター、およびジスペルシンBまたはその活性断片を発現するベクターを含む宿主細胞である。
【0020】
本明細書で用いられる用語「核酸配列」は、非修飾RNAもしくはDNAまたは修飾RNAもしくはDNAを含むことが意図されるが、それらに限定しない。従って、核酸配列の用語により、一本鎖DNAおよび二本鎖DNA、一本鎖領域と二本鎖領域が混合しているDNA、一本鎖RNAおよび二本鎖RNA、一本鎖領域と二本鎖領域が混合しているRNA、ならびに、一本鎖またはより典型的には二本鎖のDNAおよびRNA、または一本鎖領域と二本鎖領域が混合しているDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子、を含むことが意図される。さらに、本発明のDNAまたはRNA配列は、修飾された主鎖および/または修飾された塩基を含むことができる。DNAおよびRNAに対する種々の修飾が、複数の有用な目的のために、当分野において知られている。本明細書で用いられる用語「核酸配列」は、核酸配列のかかる化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態ならびに、単純型と複雑型細胞を含む、ウィルスおよび細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学的形態を包含する。
【0021】
CU1000株のdspBのDNA配列は、アクセッション番号AY228551としてGenBankに供託され、2003年8月4日公開された。このDNAの核酸配列は、配列番号1である。ジスペルシンBタンパク質のオーソログをコードする核酸配列は、A. ligniersiiの19393株、A. actinomycetemcomitansのIDH781株、Haemophilus aphrohpilusのNJ8700株、およびA. pleuropneumoniaeのIA5株において同定されており、それぞれ配列番号3、5、7および9として示されている。従って、本発明の好ましい単離核酸配列は、配列番号1、3、5、7または9を含む。
【0022】
本発明にまた含まれるのは、ジスペルシンBと類似の酵素活性を有するタンパク質をコードする、配列番号1、3、5、7または9の例示されたdspB核酸配列の対立遺伝子、および、類似の酵素活性を有するタンパク質をコードする、配列番号1、3、5、7または9の例示されたdspB核酸配列であって、実質的配列同一性パーセントを有する該核酸配列である。
本明細書で用いられる用語「対立遺伝子変異体」は、2または3以上の代替的な天然に存在する遺伝子の形態の1つであって、各遺伝子がユニークな核酸配列を含むものを意味する。本発明が包含する対立遺伝子は、類似または同一の酵素活性を有するタンパク質をコードする。
【0023】
本明細書で核酸配列に関連して用いられる用語「配列同一性パーセント」は、最大に一致するように並べた場合に同一である、2つの配列中の残基を指す。配列同一性を比較する長さは、好ましくは少なくとも約9の連続したヌクレオチド長を超え、より好ましくは少なくとも約18の連続したヌクレオチド長、さらにより好ましくは少なくとも約30〜50の連続したヌクレオチド長またはそれ以上である。当該技術分野に知られている種々のアルゴリズムが、核酸配列の同一性を測定するために利用可能である。その例には、FASTA(FASTA2およびFASTA3を含む)、GapおよびBestfitが含まれ、これらはWisconsin Package Version 10.0, Genetics Computer Group (GCG), Madison, Wisconsinのプログラムであるが、これらに限定はされない。
【0024】
「実質的配列同一性パーセント(substantial percent sequence identity)」は、本発明の核酸配列またはその断片を指す場合、適切なヌクレオチドの挿入または欠失を有する他の核酸(またはその相補鎖)と最適に整列させた場合、FASTA、BLASTまたはGapなどの、任意の周知の配列同一性のアルゴリズムにより測定したときに、ヌクレオチド塩基の少なくとも約50%が同一であることを意味する。本発明の目的のためには、より好ましくは少なくとも約60%〜70%、さらにより好ましくは約80%〜90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%〜98%のヌクレオチド塩基が、FASTA、BLASTまたはGapなどの任意の周知の配列同一性のアルゴリズムにより測定した場合に、同一である。
【0025】
実質的配列同一性パーセントを有し、類似の機能活性を有するタンパク質をコードする核酸配列を、本明細書においてオーソログと呼ぶ。
ジスペルシンBの推定アミノ酸配列およびそれらの例示のオーソログを図1に示す。具体的には、A. actinomycetemcomitansのCU1000N株のジスペルシンBのアミノ酸配列(配列番号2)、ならびに、A. actinomycetemcomitansのIDH781株(配列番号6)、Haemophilus aphrophilusのNJ8700株(配列番号8)、A. ligniersiiの19393株(配列番号4)、およびA. pleuropneumoniaeのIA5株(配列番号10)からのジスペルシンBのオーソログのアミノ酸配列を示す。
【0026】
ジスペルシンBおよびこれらオーソログのアミノ酸配列と、ファミリー20グリコシル加水分解酵素の共通塩基配列には類似性がある。より具体的には、予測されたジスペルシンBのタンパク質配列の40〜297アミノ酸残基は、ファミリー20グリコシル加水分解酵素の触媒領域(NCBI保存領域データベースアクセッション番号pfam00728)と相同である。酵素のこのファミリーは、細菌性キチナーゼ、キトビアーゼおよびラクト−N−ビオシダーゼ(Sano et al. J. Biol. Chem. 1993 268: 18560-18566;Tews et al. Gene 1996 170: 63-67;Tsujibo et al. Biochim. Biophys. Acta 1998 1425: 437-440)、および親核性ヘキソサミニダーゼ(Graham et al. J. Biol. Chem. 1988 263: 16823-16829)を含む。A. actinomycetemcomitansジスペルシンBに関連するタンパク質は、Lactococcus lactisのラクト−N−ビオシダーゼ(GenBankアクセッション番号AAK05592)であり、これは、ギャップおよび末端の延長を数えないで、281個のアミノ酸残基中28%の同一性を示す。ジスペルシンBとラクト−N−ビオシダーゼとの間の類似性は、Arg47および酸性アミノ酸対Asp202およびGlu203を含む領域で高い。これらの残基は、他のファミリー20グリコシル加水分解酵素における基質結合および触媒に関与することが示されている(Mark et al. J. Biol. Chem. 2001 276: 10330-10337;Mark et al. J. Biol. Chem. 1998 273:19618-19642;Prag et al. J. Mol. Biol. 2000 300: 611-617)。ジスペルシンBのC末端側の半分は、L. lactisのラクト−N−ビオシダーゼに保存されている3個のTrp残基を含む(236、279および353位置)。複数のTrp残基は、全てのファミリー20グリコシル加水分解酵素の触媒ドメインのC末端領域に存在する(Graham et al. J. Biol. Chem. 1988 263: 16823-16829;Tews et al. Gene 1996 170: 63-67)。これらのTrp残基は、ヘキソサミン糖環の疎水性表面に相補的な、基質結合ポケットの一部に並ぶ(Tews et al. Nature Struct. Biol. 1996 3: 638-648)。ジスペルシンBおよびそのオーソログのこれらの領域内のアミノ酸の突然変異が、酵素活性を変化させることが予想される。
【0027】
好ましい態様において、本発明の単離されたアミノ酸配列は、配列番号2、4、6、8もしくは10またはそれらの活性断片もしくは変異体を含む。好ましい活性断片は、ファミリー20グリコシル加水分解酵素の共通塩基配列に類似した、配列番号2、4、6、8または10のアミノ酸配列の部分を含むものである。
【0028】
本明細書で用いられる「活性変異体」または「機能的に同等な変異体」は、ジスペルシンBタンパク質と構造的に異なるポリペプチド配列であるが、このタンパク質との重要な機能的差異は有さないものである。例えば、A. actinomycetemcomitansの種々の株からのオーソログポリペプチド配列を並べると、通常は0〜10%のアミノ酸配列の相違(divergence)が観察される(Kaplan et al. Oral Microbiol. Immunol. December 2002 17: 354-359;Kaplan et al. Infect. Immun. 2001 69: 5375-5384)。この量の相違を示すタンパク質は、機能的に同等な変異体と考えられるが、これは、これらの変異体をコードする対立遺伝子の混合が母集団において頻繁に観察されるという事実による(Kaplan et al. Oral Microbol. Immunol. December 2002 17: 354-359)。A. actinomycetemcomitansのIDH781株からのジスペルシンBの配列(配列番号6)は、従って、配列番号2と機能的に同等であるか、またはその活性変異体であることが予想され、本発明の範囲に含まれる。同様に、A. actinomycetemcomitansの他の株からのジスペルシンBの配列、例えば異なる血清型、制限断片長多型遺伝子型、16SリボソームRNA遺伝子型、または、異なる対象から単離された系統学的に多様な株に通常観察される、任意にプライムされたPCR遺伝子型(Kaplan et al. J. Clin. Microbiol. 2002 40: 1181-1187;Kaplan et al., Oral Microbiol. Immunol. December 2002 17: 354-359)を示すものもまた、配列番号2と機能的に同等かまたは活性な変異体であり、本発明の範囲に包含される。
【0029】
同様に、系統発生的に多様な細菌種からのオーソログタンパク質は通常、機能的に同等かまたは活性な変異体であり、これは、興味ある遺伝子をプラスミドにクローニングする通常の方法は、プラスミドライブラリをスクリーニングして、異なる細菌種において遺伝的突然変異を相補するプラスミドを見出すことであるという事実によって証拠付けられる(Kaplan et al. J. Mol. Biol. 1985 183: 327-340)。これは、細菌酵素について特にあてはまる。異なる細菌種のオーソログ酵素は、50%またはそれ以上の相違を示すことができ、しかも同一の基質を利用し、同じ化学反応を触媒し、そして同じ産物を生成する。この配列の相違は、遺伝的浮動と、個体群における選択された遺伝的変化の定着とが組み合わさって生じる。選択され定着された遺伝的変化は、基質、反応、および産物以外の酵素の特徴を変化させるものであり、例えば、反応速度、最適pH、最適温度、発現レベル、および他の酵素との相互反応などであり、これらの遺伝的変化は、細菌細胞に対しその環境における選択的有利性を与える。A. actinomycetemcomitansは遺伝的にA. pleuropneumoniaeに近く関連しており(Dewhirst et al., J. Bacteriol. 1992 174: 2002-2013)、A. actinomycetemcomitansが生成するものに類似した生物膜(これは本明細書に示されるように、A. actinomycetemcomitansジスペルシンBと接触して剥離するものである)を生成するため、配列番号10と同定されるA. pleuropneumoniaeのdspBホモログは、配列番号2と機能的に同等かまたは活性な変異体であることが予想され、これは本発明の範囲に包含される。同様に、Actinobacillus ligniersiiはActinobacillus pleuropneumoniaeに遺伝的に近く関連しており(Dewhirst et al., J. Bacteriol. 1992 174: 2002-2013)、またHaemophilus aphrophilusはA. actinomycetemcomitansに遺伝的に近く関連しているため(Dewhirst et al., J. Bacteriol. 1992 174: 2002-2013; Kaplan et al. J. Clin. Microbiol. 2002 40: 1181-1187)、そしてA. ligniersiiとHaemophilus aphrophilusの両者はA. actinomycetemcomitansが作成するものと類似の生物膜を作成するために、それぞれ配列番号4および配列番号8と同定されるActinobacillus ligniersiiおよびHaemophilus aphrophilusのジスペルシンホモログは、配列番号2と機能的に同等かまたは活性な変異体であることが予想され、これらも本発明の範囲に包含される。
【0030】
上記の例は、A. actinomycetemcomitansジスペルシンBの、天然に存在する機能的に同等かまたは活性な変異体を示す。しかしながら、当業者が本開示を読んで理解するように、A. actinomycetemcomitansジスペルシンBの機能的に同等かまたは活性な変異体をコードする人工的に作製された遺伝子はまた、本明細書の教示に従い、種々のよく知られた遺伝工学的技法を用いて、ルーチンに作製することができる。例えば、20個のN末端アミノ酸残基が欠損し、32個のアミノ酸残基のC末端尾を含み、天然のジスペルシンB酵素と機能的に同等な、遺伝子操作されたジスペルシンB酵素が作製されている。この遺伝子操作されたジスペルシンB酵素のN末端におけるメチオニン残基は、大腸菌に発現されるとメチオニンアミノペプチダーゼの作用により除去されたが、メチオニンの不在は酵素活性に影響しなかったことが示されている。この遺伝子操作されたジスペルシンB酵素からの、C末端の28個のアミノ酸残基の開裂は、酵素活性に影響しなかったことも示されている。これらの例は、A. actinomycetemcomitansジスペルシンBの機能的に同等な変異体をコードする人工遺伝子が作製可能であることを示している。これらの人工的に作製された、A. actinomycetemcomitansジスペルシンBの機能的に同等な変異体は、本発明の範囲に包含される。
【0031】
上記の例は、遺伝子操作されたA. actinomycetemcomitansジスペルシンBの機能的に同等な変異体であって、タンパク質のN末端におけるアミノ酸残基の欠失か、またはタンパク質のC末端における付加的ポリペプチドの融合のどちらかを含む前記変異体を示している。他の遺伝子操作された改変体(alteration)、例えばタンパク質のN末端における付加的ポリペプチドの融合、タンパク質のC末端におけるアミノ酸残基の欠失、アミノ酸残基の中間における欠失および挿入、およびアミノ酸置換もまた、A. actinomycetemcomitansジスペルシンBの機能的に同等な変異体を生じる。どの欠失、挿入およびアミノ酸置換が、A. actinomycetemcomitansジスペルシンBの機能的に同等な変異体を作製するかについての情報は、アミノ酸配列アラインメント(alignment)から、および、一般に利用可能なコンピュータソフトウェアから得ることができ、このソフトウェアは、両方の一次アミノ酸配列および、既知の3次元構造を有する類縁のタンパク質に対するアミノ酸配列アラインメントに基づいて、ポリペプチドの2次構造を予測するものである。A. actinomycetemcomitansジスペルシンBは、例えば、ファミリー20グリコシル加水分解酵素のメンバーであって、これは、幾つかのよく研究された酵素を含むファミリーおよび、公共データベースにおいて多くの類縁の一次アミノ酸配列により代表されるファミリーを含む。幾つかのケースにおいては、ファミリー20グリコシル加水分解酵素の3次元構造は知られている(Tews et al. Nature Struct. Biol. 1996 3: 638-648)。
【0032】
全てのファミリー20グリコシル加水分解酵素は、(βα)バレルモチーフ(barrel motif)(TIM−バレルモチーフとしても知られている;Tews et al. Nature Struct. Biol. 1996 3: 638-648;Prag et al. J. Mol. Biol. 2000 300: 611-617)を有し、これは、タンパク質データバンク(PDB)データベースの既知のタンパク質構造の中でもっとも一般的な酵素の立体構造型(fold)である。全ての既知の酵素の10%がこのドメインを持つと推定されている(Wierenge, R.K., FEBS Lett. 2001 492: 193-198)。(βα)バレルモチーフは、多くの異なる酵素ファミリーに見られ、全く関連のない反応を触媒する。多くの類縁の一次アミノ酸配列が利用可能なことは、幾つかのA. actinomycetemcomitansジスペルシンBホモログの3次元構造が利用可能なことと組み合わさって、これらの配列構造および2次構造の予測の基礎となっている。例えば、(βα)バレルモチーフは8個のαヘリックスおよび8個のβストランドからなり、ここで8個の平行なβストランドはタンパク質の内側でバレル(たる型)を形成し、それらはタンパク質の外側の8個のαヘリックスで覆われている。上記のタンパク質配列アラインメントおよび構造予測に基づき、A. actinomycetemcomitansのdspBにおける8個のβストランドは、配列番号2の41〜44、69〜81、130〜134、169〜171、189〜200、253〜256、288〜300、および348〜350の位置を含むアミノ酸残基を含むことが予想される。これら8つの領域のβストランドアーキテクチャを破壊するアミノ酸配列中のいかなる改変も、これによって酵素の(βα)バレルの3次元構造が同時に破壊されるため、酵素活性の低下を生じさせることが予想される。同様に、上記のタンパク質配列アラインメントおよび構造予測に基づき、A. actinomycetemcomitansのdspBにおける8個のαヘリックスは、配列番号2の52〜63、89〜93、143〜149、176〜183、214〜228、269〜284、309〜321、および361〜374の位置を含むアミノ酸残基を含むことが予想される。これら8つの領域のαヘリックスのアーキテクチャを破壊するアミノ酸配列中のいかなる改変も、これによって酵素の(βα)バレルの3次元構造が同時に破壊されるため、酵素活性の低下を生じさせることが予想される。
【0033】
同様に、βストランドは、4つの内向き側鎖(βバレル内部を向いている)および4つの外向き側鎖(αへリックス方向を向いている)からなり、内向きアミノ酸残基の改変は、(βα)バレル内側の基質結合ポケットに同時に改変を生じるため酵素活性を低下させることが予想され、また、外向きアミノ酸残基の改変は、それらがβストランドとαへリックスとの間の相互作用に干渉する場合、酵素活性を低下させることが予想される。同様に、ファミリー20グリコシル加水分解酵素の活性部位は、常にバレルの8個の平行βストランドのC末端に位置する。A. actinomycetemcomitansジスペルシンBの相同領域における改変は、酵素活性に影響することが予想される。同様に、αへリックスとβストランドの間の領域、すなわち、配列番号2の45〜51、64〜68、82〜88、94〜129、135〜142、150〜168、172〜175、182〜188、201〜213、229〜252、257〜268、285〜287、301〜308、322〜347、および351〜360の位置への挿入および欠失の導入は、酵素活性に影響しないことが予想される。同様に、残基47(アルギニン)、203(アスパルテート)、および204(グルタメート)の殆ど任意の改変は、これら3つの残基が全てのファミリー20グリコシル加水分解酵素における基質結合および触媒に直接関与していることが示されているため、酵素活性の完全な喪失を生じさせる(Mark et al. J. Biol. Chem. 1998 273: 19618-19624;Prag et al. J. Mol. Biol. 2000 300: 611-617;Mark et al. J. Biol. Chem. 2001 276”10330-10337)。同様に、236、257および350位置における3個のトリプトファン残基の任意の非芳香族アミノ酸残基への改変は、これら3個のトリプトファン残基が、基質のヘキソサミン糖鎖の疎水性表面に補完的な基質結合ポケットの一部に並ぶことが示されているため、酵素活性の低下を生じさせる(Tews et al. Nature Struct. Biol. 1996 3: 638-648)。A. actinomycetemcomitansジスペルシンBにおけるこれらの必須アミン酸残基の位置により、酵素活性を失うことなしに、46個以下のアミノ酸残基がN末端から削除され得ること、および31個以下のアミノ酸がC末端から削除され得ることが予測される。機能的に同等な変異体を生じるこれら全ての遺伝子改変は、本発明の範囲に含まれる。
【0034】
A. actinomycetemcomitansジスペルシンBの機能的に異なる変異体をコードする遺伝子はまた、よく知られた遺伝子操作の技法を用いて、本出願の教示に従って作製することができる。例えば、上記のように、配列番号2の残基47(アルギニン)、203(アスパルテート)、および204(グルタメート)の殆ど任意の改変は、酵素活性の完全な喪失を生じることが予想される。代替的に、臨床の場面において有用となり得る特徴を示すA. actinomycetemcomitansジスペルシンBの変異体は、人工的に作製することができる。例えば、A. actinomycetemcomitansジスペルシンBの最適温度は30℃である。最適温度37℃を示す、遺伝子操作によるジスペルシンBの変異体を作製することが望ましく、それによって、酵素の有効性を高め、または処置のコストを低減することになる。かかる変異体は、まず、例えばUV光またはニトロソグアニジンなどの化学的突然変異原を用いてA. actinomycetemcomitansのdspB遺伝子配列にランダムな突然変異を作製し、次に、例えば、定量96穴マイクロタイタープレートアッセイ(Kaplan et al. J. Bateriol. 2003 185: 4693-4698)によって、これらのランダムな多数の変異体をスクリーニングし、高い最適温度を示すものを探すことにより、人工的に作製することができる。代替的な方法は、DNAシャフリング(Christians et al. Nature Biotechnol. 1999 17: 259-264;Dichek et al. J. Lipid Res. 1993 34: 1393-1340)による配列の指向進化を利用し、定量的96穴マイクロタイタープレートアッセイに基づく高スループット・ロボティックスクリーンと組み合わせて(Kaplan et al. J. Bateriol. 2003 185: 4693-4698)、最適温度が増加した変異体を同定する。これらの方法はまた、生体材料に対する高い持続性(substantivity)、高い最適pH、水溶液中での高い安定性、高い反応率、乾燥への高い安定性、および酵素の有効性の増加または処置のコストの低減をもたらすことができる他の特徴を示す、A. actinomycetemcomitansジスペルシンBの変異体を作製するためにも用いることができる。
【0035】
有用な変異体を作製するために用いることのできる代替方法は、部位特異的突然変異誘発法である。例えば、A. actinomycetemcomitansジスペルシンBにおける(βα)バレルの8個のαへリックスは、酵素の外表面に晒されている多くのアミノ酸残基を含み、そして、αへリックスの外向きアミノ酸残基の改変は、酵素の外表面の特性を変化させ、それによって、酵素活性に影響を及ぼすことなく、生体材料に対する酵素の持続性を増加させる可能性がある。よって、これらの外向きアミノ酸残基を、例えば極性残基から荷電残基へと体系的に突然変異させることができ、その結果生じた変異体をスクリーニングして、生体材料に対する持続性が増加した変異体を同定する。酵素の臨床での有用性または費用対効果を改善することを意図した、A. actinomycetemcomitansジスペルシンBの機能的に異なる変異体は、生物膜から細菌細胞または真菌細胞を剥離するために適用される場合、本発明の範囲に含まれる。
【0036】
本発明においてさらに提供されるのは、融合タンパク質および融合タンパク質をコードする核酸配列である。本発明の融合タンパク質は、生物膜からの細菌細胞の剥離を促進する、単離された可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼタンパク質のアミノ酸配列、および、第2ポリペプチドを含む。これらの融合タンパク質の第2ポリペプチドの例は、His tagなどの精製を促進するもの、アルブミン、フィブロネクチンまたはトロンビン等のタンパク質または抗体などの、表面への付着を促進するもの、および/または、酵素を特定の細菌または真菌受容体などの細菌細胞または真菌細胞へ標的化させるものなどを含むが、これらに限定はされない。かかる融合タンパク質をコードする核酸配列は、生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を促進する、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体をコードする単離核酸配列、および第2ポリペプチドをコードする第2核酸配列を含有する。好ましい態様においては、第2核酸配列は、His tagなどの精製を促進するポリペプチド;アルブミン、フィブロネクチンまたはトロンビンなどの融合タンパク質の表面への付着を促進する抗体またはタンパク質;あるいは、融合タンパク質をそれぞれ細菌細胞または真菌細胞へ特異的に標的化させる細菌受容体または真菌受容体、などをコードする。
【0037】
オクタヒスチジン金属結合部位をC末端に含むよう操作したジスペルシンBタンパク質を、大腸菌に発現させた。このタンパク質をNi親和性クロマトグラフィにより精製し、ハイブリッドタンパク質からトロンビンを用いて、ジスペルシンBタンパク質を開裂した。精製され開裂されたジスペルシンBタンパク質のSDS−PAGEによる解析から、見かけの分子量41kDaで移動するタンパク質が示された。ジスペルシンBのN末端配列は、XCVKGNSIYPQK(配列番号11)(ここでXは、未同定の残基)であった。これは、CU1000のdspBのコドン22〜33に適合し、ジペプチドMet−Asnが、大腸菌に発現されたジスペルシンB融合タンパク質のN末端から開裂されたことを示した。精製され開裂されたジスペルシンBタンパク質の質量分析では、見かけの分子量41.5kDaの単一の主要なピークを示し、これは、開裂され処理されたジスペルシンBタンパク質に対する予測された分子量41.4kDaと等しかった。大腸菌に発現されたジスペルシンBの収率は、1lの培養液当たり30mgのタンパク質であった。
【0038】
ジスペルシンBの、種々の4−ニトロフェニルで標識された合成ヘキソサミン基質を開裂する能力を、in vitro酵素アッセイで試験した。ジスペルシンBは、β置換N−アセチルグルコサミニドの1→4グリコシド結合に対して特異性を示し、これは、他のファミリー20グリコシル加水分解酵素の既知の機能と整合していた(Tews et al. Nature Struct. Biol. 1996 3: 638-648)。ジスペルシンBは、α置換N−アセチルグルコサミニドまたはαもしくはβ置換N−アセチルガラクトサミンに対して活性を示さなかった。
ジスペルシンBのグリコシル加水分解酵素活性は、pH5.0で最適であり、これは他のファミリー20グリコシル加水分解酵素の最適pHと同様である。ジスペルシンBは、30℃で最大活性を示した。ジスペルシンBのグリコシル加水分解酵素活性は、キナクリン(Kovacs, P. and Csaba, G. Cell Biochem. Funct. 2001 19: 287-290)およびNAG−チアゾリン(Mark et al. J. Biol. Chem. 2001 276: 10330-10337)により阻害されたが、これらはファミリー20β−N−アセチルグルコサミニダーゼの2つの小分子阻害剤である。
【0039】
次に、ジスペルシンBタンパク質の、A. actinomycetemcomitansのJK1023変異株の生物膜細胞の剥離に対する効果について検討した。これらの実験において、ジスペルシンBタンパク質をJK1023変異株の増殖媒体に添加し、このタンパク質の添加が細胞の媒体中への放出および分散を回復させるかどうかを決定した。JK1023株の生物膜コロニーを含むポリスチレンロッドを、種々の量のジスペルシンBを含むブロス液中に懸濁させ、生物膜の剥離の量を、穴の底で増殖する細菌をクリスタルバイオレットで染色することにより計測した。精製されたジスペルシンBは、用量に応じて細胞を媒体中へ放出し、マイクロタイタープレート穴の底にコロニーを形成するJK1023変異株の能力を回復させた。熱で不活性化させたジスペルシンBは、JK1023株の生物膜剥離に対して効果を有さなかった。
【0040】
ジスペルシンBタンパク質の、A. actinomycetemcomitansおよび他の細菌が既に形成した生物膜コロニーを剥離する効果についても検討した。これらの実験において、ジスペルシンBを添加すると、野生型CU1000株の既形成生物膜コロニーの剥離を引き起こした。ジスペルシンB(50μg/ml)は、6時間後に表面に関連した細菌量を90%減少させた。さらに、光学顕微鏡検査による解析によれば、処理されたコロニー表面は、模擬処理した細胞に観察される滑らかな生物膜コロニーに比べると、ザラザラした綿毛状(grainy and flocculent)となった。また、培養容器の表面は、高い倍率では繊維状の外観を有する、同じようなザラザラした材料で覆われた。これらの所見は、ジスペルシンBで処理した既形成生物膜コロニーにおいて観察された付着の減少と整合する。
【0041】
ジスペルシンBは、4種類の血清型を表わすA. actinomycetemcomitansの系統発生的に異なる4種類の株、すなわち、近縁種の細菌Haemophilus aphrophilusの1株、およびブタ病原菌Actinobacillus pleuropneumoniaeの2株の生物膜コロニーに対して試験された場合にも、同様の生物膜密度の減少を引き起こした。ジスペルシンBは、Neisseria subflave、Cardiobacterium hominisまたはStreptococcus mitis、すなわちN−アセチルグルコサミン残基を含む生物膜を有していない細菌の、生物膜コロニーの剥離は引き起こさなかった。
【0042】
ジスペルシンBはまた、表面からのStaphylococcus epidermidisの剥離も引き起こす。グラム陽性細菌S. epidermidisは、カテーテルおよび他の留置医療デバイスに関連する感染の最も一般的な原因である。S. epidermidisは、主としてN−アセチルグルコサミン残基を含む多糖類を含む細胞外粘液を生成し(Mack et al. J. Bacteriol. 1996 178:175;Baldassarri et al. Infect. Immun. 1996 64: 3410)、これはプラスチックの表面に付着する膜の形成を可能とする。S. epidermidisなどの生物膜細菌は、抗生物質および宿主防衛に対して非常に抵抗性が高く、根絶することはは殆ど不可能である(Costerton et al. Annu. Rev. Microbiol. 1995 49:711)。従って、この細菌のカテーテルなどの留置デバイスへの付着は、特に免疫力が低下した患者において、骨髄炎、急性敗血症および死を引き起こす可能性があり、院内の血流および心血管系感染症、および入院患者の罹患の第一の原因である(Vuong, C. and Otto, M. Microbes, Infect. 2002 4: 481)。
【0043】
感染した静脈内カテーテルから単離したS. epidermidisの4種の異なる株を、これらの実験に用いた。4株全ては、ica遺伝子座を含んでおり、コンゴレッド寒天培地上に濃い赤色のコロニーを生成し、これらはどちらもスライムの生成を示唆している(Ariocola et al. J. Clin. Microbiol. 2001 39: 2151;Aricola et al. Biomaterials 2002 Biomaterials 23: 4233)。4種の株の生物膜形成能力は、新鮮なブロス液に一晩培養物の連続希釈物を作製し、続いて希釈物を96穴ポリスチレンマイクロタイタープレートの穴に移して測定した。16時間のインキュベーションの後、穴を水道水の流水下で洗浄して弱く付着した細胞を除去し、穴の底に付着して残った細菌をクリスタルバイオレットで染色した。予想通りに全4株は、穴の底に濃く染色された物質の存在が示すように、付着性の生物膜を生成した。濃く染色された物質の量は、マイクロタイタープレートリーダーで590nmで光学密度を計測することにより定量した。ジスペルシンBタンパク質を洗浄の30分前に穴に添加すると(最終濃度:40μg/ml)、生物膜物質は殆ど、または全く明らかにならなかった。対照的に、熱で不活性化したジスペルシンBタンパク質は、S. epidermidisの生物膜に対して効果を有さなかった。A. actinomycetemcomitansジスペルシンBと類縁の、他の2つのN−アセチルグルコサミニダーゼ酵素であるSerratia marcescensのキチナーゼおよびタチナタマメ(jack bean)のβヘキソサミニダーゼもまた、S. epidermidisの生物膜に対して効果を有さなかった。本明細書に記載されたオーソログと異なり、これら類縁のタンパク質は、ジスペルシンBと25%未満の同一性のみを有しており、生物膜放出活性を示さない。従って、これらの実験により、ジスペルシンBの酵素活性が、S. epidermidis生物膜の細胞を穴の表面から取り除くのに関与していることを示している。ジスペルシンBは、S. epidermidis細胞の生物利用能に対しては効果を有さなかった。
【0044】
ジスペルシンBタンパク質の量および、S. epidermidisの生物膜をマイクロタイタープレート穴から取り除くのに必要な時間の長さについても試験した。これらの実験において、複数の穴に10−4希釈のS. epidermidis培養物を播種し、プレートを16時間インキュベートした。弱く付着した細胞を洗い流した後、穴をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で満たし、次に様々な量のジスペルシンBタンパク質(1ml当たり200pg〜120μgの最終濃度)を様々な時間(0〜9分間)穴に添加した。4.8μg/mlのジスペルシンBの処理で、2分後に、吸収がバックグランドレベルまで低下した(約0.09O.D.単位)。40ng/mlの濃度では、ジスペルシンBは、9分後に50%以上の光学密度の低下を引き起こした(3.63から1.74O.D.単位へ)。これらのデータは、ジスペルシンBが、臨床的に実現可能な酵素濃度でS. epidermidisの生物膜の剥離を引き起こすことを示す。
【0045】
生物膜細胞の剥離の定量化を、S. epidermidisの生物膜をポリスチレンロッド上で増殖させ、続いて該ロッドをPBS(対照として)または60μg/mlのジスペルシンBとPBSとを含むチューブに移すことにより行った。該チューブは15分間インキュベートし、PBS中ですすぎ、処理後にロッドに付着している残留細菌を超音波処理により除去し、次に、この超音波処理物を連続的に希釈したものを寒天培地にプレーティングして定量した。模擬処理およびジスペルシンBで処理したロッドを、クリスタルバイオレットで染色した後、比較した。模擬処理した対照ロッドは、表面に形成された厚い生物膜に対応する濃く染色された物質の層を含んでいた。ジスペルシンBで処理したロッドは、濃く染色された物質の痕を示さず、染色前の超音波処理したロッドおよび播種なしのロッドと外観が類似していた。ロッドに付着して残留した細胞の定量化により、ジスペルシンBの処理によって、表面に関連する細菌数が5.8log低下したことが明らかとなった。
【0046】
ジスペルシンBの、ポリウレタンおよびテフロン(登録商標)静脈内カテーテルに付着して増殖したS. epidermidis生物膜を除去する能力についても試験した。これらの実験において、カテーテルは、10−3希釈のS. epidermidis培養物を含むチューブ内に入れ、16時間インキュベートした。カテーテルは次にPBSですすぎ、PBS(対照として)または60μg/mlのジスペルシンBとPBSとを含むチューブに移した。5分後、カテーテルをPBSですすぎ、表面に付着した残留生物膜細菌を、メチレンブルー(ポリウレタンカテーテルに対して)またはクリスタルバイオレット(テフロン(登録商標)カテーテルに対して)で染色した。対照カテーテルはその表面に濃く染色された物質の層を含んでおり、生物膜の存在を示し、一方ジスペルシンBで処理したカテーテルは濃く染色された物質を含まず、播種なしカテーテルと外観が類似していた。
【0047】
このように、本発明のジスペルシンBは、S. epidermidis生物膜を種々のプラスチック生体材料から取り除くことができる。
ジスペルシンBで予め被覆された表面の、S. epidermidis生物膜形成を防ぐ能力についても示された。これらの実験において、PBSまたは40μg/mlのジスペルシンBとPBSとを含むチューブ内のポリウレタンカテーテルおよびテフロン(登録商標)カテーテルを、4℃で24時間インキュベートした。カテーテルは次にPBSですすぎ、10−1希釈のS. epidermidis培養物を含むチューブ内に移した。6時間後、カテーテルをPBSですすいで弱く付着した細胞を除去し、次に前述のようにして染色した。対照カテーテルの表面は濃く染色された物質の層で覆われており、生物膜の存在を示し、一方ジスペルシンBで被覆したカテーテルは濃く染色された物質を含まず、播種なしカテーテルと外観が類似していた。このように、本発明のジスペルシンBで予め被覆されたプラスチックカテーテルは、S. epidermidisの付着または生物膜生成を大幅に低減させた。10分間前に被覆したカテーテル、および24時間前に被覆して乾燥させたカテーテルもまた、S. epidermidisのコロニー形成および生物膜形成に対して抵抗性を有した。
【0048】
従って、これらの実験で示されたように、単離されたジスペルシンBの添加およびdspB遺伝子の突然変異は、種々の細菌の生物膜コロニーからの、細胞の剥離、特にN−アセチルグルコサミンを含む多糖類を含む生物膜を有する細菌の生物膜コロニーからの、細胞の剥離を調節する。真菌もまた、N−アセチルグルコサミンを含む多糖類を含む可能性のある、臨床的に重要な生物膜を形成する。ジスペルシンBは、これらの真菌性の多糖類の分解および、それらの生物膜からのかかる真菌細胞の剥離の調節にも、有効であると考えられる。
【0049】
従って、本発明はまた、生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離、特に、N−アセチルグルコサミンを含む多糖類を含む生物膜を有する細菌または真菌の剥離を調節する方法に関する。
本明細書で用いる「剥離の調節」により、細菌性生物膜もしくは真菌性生物膜の剥離、または生物膜からの細菌細胞もしくは真菌細胞の放出の、増加および減少を含むことを意味する。さらに、「剥離の調節」により、細菌または真菌の、生物膜として付着する能力における変化も含むことを意味する。例えば、本明細書で示されるように、ジスペルシンBは、剥離を促進することによってばかりでなく、細菌が表面に付着して生物膜を形成する能力を抑制することによっても、S. epidermidisの剥離を調節する。
【0050】
本発明の1つの態様においては、前記方法は、本発明のJK1023変異体におけるように、細菌細胞のdspBを突然変異させて生物膜からの細菌細胞の剥離を抑制することを含む。他の態様において、前記方法は、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼの発現および/またはレベルを減少させること、または細菌細胞中の可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼの活性を阻害して、細菌細胞の剥離を低減させることを含む。
【0051】
本発明はまた、細菌細胞または真菌細胞の生物膜からの剥離を促進する方法を提供し、この方法は、細菌細胞または真菌細胞を、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体、または可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体をコードする核酸配列に接触させることを含む。例えば、A. actinomycetemcomitansジスペルシンBは、Haemophilus aphrophilus、Actionbacillus pleuropneumonaieおよびS. epidermidisの生物膜を剥離することが見出された。Actionobacillus ligniersii、および、例えばどのような意味でもこれに限定するものではないがStaphylococcus aureusおよびYersinia pestisなどを含む、N−アセチルグルコサミンを含む多糖類を含む生物膜を有する他の細菌または真菌の生物膜剥離もまた、本発明の可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片の存在下で促進されると考えられる。
【0052】
従って、単離されたジスペルシンBタンパク質およびそれらの活性断片または変異体は、細菌性または真菌性生物膜の付着を防ぐこと、または阻害すること、およびかかる細菌または真菌による感染を処置することに用いることができる。
1つの態様においては、単離されたジスペルシンBタンパク質およびその活性断片または変異体は、生物膜感染を処置するため、例えば雌ヒツジにおける乳腺炎、雌ウシにおける乳房炎またはヒトにおける骨髄炎および感染性心内膜炎を処置するために、非経口的に直接用いることができる。この態様においては、単離された可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼタンパク質またはその活性断片もしくは変異体は、好ましくは、生物に対して薬学的に許容し得る担体中の医薬組成物として投与される。
【0053】
「生物」により、本明細書で用いられる場合、哺乳類を含むがそれには限定されない全ての動物を意味し、最も好ましくはヒトを意味する。
任意の薬学的に許容し得るビヒクルまたは担体、および補助剤を、ジスペルシンBタンパク質またはその活性断片もしくは変異体を含む医薬製剤の製造、溶解および投与に用いることができる。かかるビヒクル、担体および補助剤は当業者によく知られており、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1985などの教科書に記載されている。医薬組成物中に含まれるべき活性成分の適切な濃度は、当業者によりルーチンで決定することができ、投与形態および処置する状態の重篤度に依存する。
【0054】
経口投与に好適な医薬製剤は、便利な単位形態で提供することができ、これに限定はしないがカプセルまたは錠剤を含み、該カプセルまたは錠剤の各々は、予め決められた量のジスペルシンBタンパク質またはその活性断片もしくは変異体を、粉体または顆粒として;溶液、懸濁液または乳濁液として含む。ジスペルシンBタンパク質またはその活性断片もしくは変異体はまた、ボーラス、舐薬、またはペーストとすることもできる。経口投与用の錠剤およびカプセルは、従来の賦形剤、例えば結合剤、充填剤、潤滑剤、分解剤、または湿潤剤などを含むことができる。錠剤は、当業者に知られた方法に従って被覆することができる。当業者に知られている時間放出製剤も適している。経口用液体製剤は、例えば水性もしくは油性の懸濁液、溶液、乳濁液、シロップもしくはエリキシル剤などの形態で、または、水もしくは他の好適なビヒクルと共に使用前に構成する乾燥製品として、提供することができる。かかる液体製剤は、従来の添加剤、例えば懸濁剤、非水溶性ビヒクルで食用油を含むもの、または保存剤などを含むことができる。
【0055】
本発明のジスペルシンBタンパク質またはそれらの活性断片もしくは変異体はまた、例えば、注入により、例えばボーラス注入または持続輸注により、非経口投与用の製剤にすることができ、アンプル、予注入シリンジ、少量輸注にて単位用量形態で、または、保存剤添加の複数用量用容器にて、製剤とすることができる。非経口的投与のためにジスペルシンBタンパク質またはその活性断片もしくは変異体を含む、薬学的に許容し得る組成物は、油性または水性のビヒクル中に懸濁液、溶液または乳濁液の形態で存在することができ、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの製剤化用の剤を含むことができる。代替的に、活性成分は、殺菌した固体の無菌性単離によりまたは溶液から凍結乾燥することにより粉末形態にしておき、使用前に、殺菌した発熱物質を含まない水などの好適なビヒクルと構成することもできる。
【0056】
表皮への局所投与については、本発明のジスペルシンBタンパク質またはその活性断片もしくは変異体は、軟膏、クリーム、またはローション中に、または経皮パッチとして製剤化することができる。軟膏およびクリームは、例えば、水性または油性のベースと共に、好適な増粘剤および/またはゲル化剤を添加して製剤化することができる。ローションは水性または油性のベースと共に製剤化することができ、一般にまた、1種または2種以上の乳化剤、安定剤、懸濁剤、増粘剤、または着色剤を含む。口への局所投与に好適な製剤は、以下を含む:風味付けされたベース、通常はショ糖およびアカシアまたはトラガカントの中に、ジスペルシンBタンパク質またはそれらの活性断片もしくは変異体を含むロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンまたはショ糖およびアカシアなどの不活性ベースに活性成分を含むパステル剤;および、好適な液体担体中に活性成分を含むうがい薬、。眼への局所投与に対しては、ジスペルシンBタンパク質またはそれらの活性断片もしくは変異体は、好適な殺菌した水性または非水性のビヒクル中の溶液または懸濁液中に作製することができる。バッファ(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウムまたはエデト酸二ナトリウム)などの添加剤およびヒプロメロース(hypromellose)などの増粘剤もまた含有可能である。
【0057】
鼻腔内投与の場合、本発明のジスペルシンBタンパク質またはその活性断片もしくは変異体は、液体スプレーまたは分散性粉末または滴剤の形態で提供することができる。滴剤は、1種または2種以上の分散剤、溶解剤、または懸濁剤を含む、水性または非水性ベースと共に製剤化することができる。液体スプレーは、加圧パックから便利に送達される。
吸入による投与の場合、本発明のジスペルシンBタンパク質またはそれらの活性断片もしくは変異体は、通気器、ネブライザー、またはエアゾールスプレーを送達する加圧パックまたは他の便利な方法により、送達することができる。加圧パックは、好適な噴霧剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガスなどを含むことができる。加圧エアゾールの場合、用量単位は、計測した量を送達するためのバルブを提供することにより決定することができる。
【0058】
代替的に、吸入または通気器による投与の場合、本発明のジスペルシンBタンパク質またはそれらの活性断片もしくは変異体は、乾燥粉末組成物の形態、例えば活性成分と乳糖またはスターチなどの好適な粉末ベースとの粉末混合物の形態をとることができる。粉末組成物は、例えばカプセル、カートリッジまたはゼラチンのブリスターパックなどに入れた単位用量形態をとることができ、それらから、吸入器または通気器の助けにより粉末が投与される。
【0059】
必要に応じて、任意の前述の製剤を、ジスペルシンBタンパク質またはその活性断片もしくは変異体の持続放出を提供するように適合することができる。
本発明のジスペルシンBタンパク質またはその活性断片もしくは変異体の、処置に用いるために必要な量は、選択された特定のタンパク質または活性断片もしくは変異体によるのみでなく、投与経路、処置される状態の特徴、および生物の年齢および状態によっても当然変化する。
【0060】
生物膜からの細菌の剥離の増加はまた、抗生物質による治療に対する細菌の抵抗性を減少させることが期待される。従って、本発明はまた、本発明の医薬組成物を抗生物質投与と組み合わせて、またはそれに先立って投与することによる、細菌感染に対する抗生物質治療の有効性を強化するための方法も提供する。
【0061】
本発明の他の態様により、これらに限定はしないがスポンジまたはガーゼを含む創傷包帯を、単離されたジスペルシンBタンパク質またはその活性断片もしくは変異体を含浸させて、細菌または真菌の付着を妨害または抑制し、創傷の感染のリスクを低減することができる。同様に、カテーテルシールドおよびカテーテル挿入部位を被覆するために用いる他の材料を、ジスペルシンBタンパク質またはその活性断片もしくは変異体により被覆または含浸させて、細菌性または真菌性生物膜のそれらへの付着を阻害することができる。ハイリスクの外科手術中に創傷の感染を防ぐために用いられる粘着性ドレープもまた、単離されたタンパク質またはその活性断片もしくは変異体に含浸させることができる。ジスペルシンBタンパク質またはその活性断片もしくは変異体により被覆することができるさらなる医療デバイスは以下を含むが、これらに限定はされない:中心静脈カテーテル、血管内カテーテル、尿カテーテル、ヒックマンカテーテル、腹膜透析カテーテル、気管内チューブ、機械弁、心臓ペースメーカー、動静脈シャント、強膜バックル(schleral buckle)、人工関節、鼓膜切開チューブ、気管切開チューブ、人工声帯(voice prosthetics)、人工ペニス、人工尿道括約筋、合成恥骨膣スリング(synthetic pubovaginal sling)、縫合糸、骨用アンカー、骨用スクリュー、眼内レンズ、コンタクトレンズ、子宮内デバイス、大腿動脈移植および血管移植。ガーゼまたはスポンジ、カテーテルシールドおよび粘着性ドレープを含浸させるため、またはカテーテルシールドおよび他の医療デバイスを被覆するための溶液の例は、リン酸緩衝生理食塩水(pH約7.5)および重炭酸緩衝液(pH約9.0)を含むが、これらに限定されない。
【0062】
さらに他の態様において、単離されたジスペルシンBタンパク質またはその活性断片もしくは変異体は、消毒溶液に組み込むことができる。かかる溶液は、さらに、アルコールなどの抗菌薬または抗真菌剤、プロビドン−ヨード溶液および抗生物質および保存剤を含むことができる。これらの溶液は、例えば、カテーテルなどのデバイスの挿入または移植の前に皮膚またはその周辺領域の消毒剤として、カテーテルのロックおよび/またはフラッシュ溶液として、および、任意の医療デバイスの消毒すすぎ剤として用いることができ、前記医療デバイスには、針、ロイアロックコネクタ(Leur-Lok connector)、針なしコネクタおよびハブなどのカテーテル部品、および他の移植用デバイスが含まれるが、これらに限定されない。これらの溶液はまた、クランプ、ピンセット、鋏、皮膚用フック、チューブ、針、開創器、スケーラー、ドリル、チゼル、ラスプおよび鋸などを含む外科用器具の被覆または消毒のために用いることができるが、外科用器具はこれらに限定はされない。
【0063】
本発明の核酸配列およびアミノ酸配列、およびJK1023変異株はまた、生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を調節する剤を同定するためにも用いることができる。例えば、剤の有する、本発明の可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼの活性および/または発現を調節する能力を評価することができる。
かかる剤には、これらに限定はされないが、dspB遺伝子を標的とするアンチセンスのオリゴヌクレオチドまたはリボザイム、ジスペルシンBのペプチド模倣薬、および、ジスペルシンBの活性および/またはレベルおよび/または発現を調節する、キナクリンおよびNAGチアゾリンなどの小さな有機化学物質が含まれる。
【0064】
可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼが有する、生物膜からの細菌細胞の剥離を促進するという能力を抑制する剤は、感染性の細菌の播殖、特にA. actinomycetemcomitansおよび近縁種の細菌であるHaemophilus aphrophilusなどの口腔の感染性細菌の播殖を防ぐのに、有用であることが期待される。
ジスペルシンBの活性を模倣する剤、例えばペプチド模倣薬およびジスペルシンBと構造および活性が類似の有機小分子は、単離されたジスペルシンBまたはその活性断片もしくは変異体と同様の様式で、細菌性または真菌性生物膜の表面への付着から生じる感染を、防ぐ、抑制する、または処置するために、用いることができる。かかる使用は上記の本明細書に詳細に記載されている。
【0065】
本発明はまた、ジスペルシンBホモログを有する細菌のさらなる種を同定するために用いるための、プライマー対および、かかるプライマー対を含むキットを提供する。本発明のキットにおいて有用な縮重プライマー対の例は、5’-GAYCAYGARAAYTAYCG-3’(配列番号12)および5’-TCNCCRTCRTARCTCCA-3’ (配列番号13)を含み、ここでYはCまたはT、およびRはAまたはGである。本発明のキットは、好ましくは、キットの使用の手引き、および/または陽性および陰性対照サンプルをさらに含む。これらのキットによってジスペルシンBホモログを有すると同定された細菌は、さらに試験して、ホモログがジスペルシンBと同一または類似の酵素活性を示すオーソログであるかどうかを決定する。本発明のプライマーおよびキットは、従って、生物膜へのその付着が核酸配列、アミノ酸配列、および本明細書に記載の剤を用いて調節できるさらなる細菌、ならびに、ジスペルシンBのさらなるオーソログ核酸配列およびアミノ酸を、同定するのに有用である。
以下の非限定的な例は、本発明をさらに説明するために提供される。
【0066】

例1:細菌株および増殖条件
A. actinomycetemcomitansのCU1000(血清型f)は、13歳の若年性局所歯周炎の患者から単離された臨床株である(Fine et al. Microbiol. 1999 145: 1335-1347)。CU1000N株は、CU1000株のナリジクス酸自然発生誘導体であって、母株と同じく、表面への付着、生物膜コロニー形成および生物膜の分散表現型を示す誘導体である(Fine et al. Arch. Oral Biol. 2001 46: 1065-1078;Kachlany et al. J. Bacteriol. 2000 182: 6169-6176;Kachlany et al. Mol. Microbiol. 2001 40: 542-554;Thomson et al. J. Bacteriol. 1999 181: 7298-7307)。トランスポゾンIS903φkanによるCU1000N株の突然変異誘発を、Thomsonらが示した手順に従って行った(J. Bacteriol. 1999 181: 7298-7307)。他に利用した株には、A. actinomycetemcomitansのDF2200(血清型a)、NJ8800(血清型b)、NJ2700(血清型c)、およびNJ9500(血清型e)(Kaplan et al. J. Clin. Microbio. 2002 40: 1181-1187);ならびに、A. actinomycetemcomitansのIDH781株(Saarela et al. Oral Microbiol. Immunol. 1993 8: 111-115);Haemophilus aphrophilusの NJ8700株(Kaplan et al. J. Clin. Microbiol. 2002 40: 1181-1187);Neisseria subflavaのNJ9702株(Kaplan, J.B. and Fine, D.H. Appl. Environ. Microbiol. 2002 68: 4943-4950);Cardiobacterium hominisのNJ6500株;Actionbacillus ligniersiiの19393株(ATCC, Manassa, VAから入手);およびStreptococcus mitis のNJ9705株(Kaplan, J. B. and Fine, D. H. Appl. Environ. Microbiol. 2002 68: 4943-4950)が含まれる。S. epidermidis株は、感染した静脈内カテーテルの表面から単離され、Api-Staph生化学同定キット(Biomerieux Lyons France)を用いて同定した。A. pleuropneumoniae株は、Veterinary Diagnostics Laboratory(Iowa State University, Ames, IL)から入手した。細菌は、Trypticase大豆ブロス(BD Biosystems)に、1リットル当たりイースト抽出物6gおよびグルコース8gを加えた中で培養した。播種した培養容器は37℃、10%CO下でインキュベートしたが、S. epidermidisの培養のみは、37℃の空気中でインキュベートした。
【0067】
例2:dspBのクローニングおよび配列決定
A. actinomycetemcomitansのJK1023突然変異株のトランスポゾン挿入部位を、逆PCR法を用いてKaplanら(Infect. Immun. 2001 69: 5375-5384)に従ってクローニングおよび配列決定した。逆PCR産物のDNA配列を、Actinobacillus遺伝子配列決定プロジェクトによるA. actinomycetemcomitansのHK1651株の遺伝子配列と比較して、トランスポゾンが、dspBと指定された長いオープン・リーディング・フレーム(ORF)の中に挿入されたことを見出した。HK1651のdspBの上流および下流配列にハイブリダイズするプライマーを用いて、A. actinomycetemcomitansのCU1000株からのdspBコーディング領域を、Kaplanら(Infect. Immun. 2001 69: 5375-5384)に従った方法を用いてPCRにより増幅した。
【0068】
フォワードプライマー(5-GCGCGCCATatgAATTGTTGCGTAAAAGGCAATTCC-3(配列便号14))は、NdeI制限酵素認識部位(下線部)およびATG開始コドン(小文字部)を、dspBのコドン位置19〜20に導入し、リバースプライマー(5-GCGGTACCCTCATCCCCATTCGTCTTATGAATC-3(配列便号15))は、dspBの終止コドンをKpnI制限酵素認識部位(下線部)で置き換えた。PCR産物(1,106塩基対)を、NdeIおよびKpnIを用いて切断(digest)し、プラスミドpET29b(Novagen)のNdeI/KpnI部位に結紮した。得られたプラスミド(pRC1とする)のインサートは、Kaplanらが記載した手順(Infect. Immun. 2001 69: 5375-5384)に従ってDNA配列決定解析を行った。
【0069】
例3:組み換えジスペルシンBの発現および精製
プラスミドpRC1は、ヘキサヒスチジン金属結合部位と、ハイブリッドタンパク質からC末端尾を開裂するために用いることができるトロンビンプロテアーゼ開裂部位とを含む32個のアミノ酸残基のC末端尾に融合された、dspBのアミノ酸21〜381をコードする遺伝子を運ぶ。この遺伝子は、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性tacプロモーターの下流に位置していた。
【0070】
大腸菌におけるdspBの発現
LBブロス500mlにカナミシン50μg/mlを添加したものを含む1リットルの三角フラスコに、大腸菌BL21株(DE3)(Dubendorff, J.W. and Studier, F.W. J. Mol. Biol. 1991 219: 61-68)の一晩培養液をpRC1で転換したものを播種した。フラスコを37℃で攪拌しながら(200rpm)、培養液の光学密度(280nmで測定)が0.6になるまでインキュベートした(約3時間)。IPTGを加えて最終濃度を0.2mMとし、フラスコをさらに5時間攪拌しながらインキュベートした。細胞は、6,000×gで15分間遠心分離して収穫し、細胞沈殿物を−80℃で保存した。
【0071】
タンパク質の精製
細胞沈殿物を氷上で解凍し、10mg/mlのリソザイムを含むリーシスバッファ(lysis buffer)[20mMトリスHCl(pH7.2)、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム]20ml中に再懸濁した。細胞懸濁物を、マイクロプローブを備えたソニケーターBranson model 4550を用いて、50%容量、70%デューティサイクルで30秒間超音波処理し、続いて氷上で30秒間冷却した。超音波処理および冷却ステップをさらに4回繰り返した。細胞を上記のように遠心分離で沈殿させ、上澄みを新しいチューブに移した。細胞沈殿物をリソザイムなしのリーシスバッファ20ml中に再度懸濁し、さらに5サイクルの超音波処理および冷却を行った。細胞を遠心分離で沈殿させ、上澄みを除去して新しいチューブに移した。2つの上澄みを混ぜて、3mlのベッド体積のNi親和性カラム(Pahrmacia、カタログ番号154-0990)に、製造者による指示書に従って負荷した。カラムを、5mMのイミダゾールを含む洗浄バッファ50ml[50mMのMOPS(pH8.5)、20mMのKCl]で洗浄し、次に50mMのイミダゾールを含む洗浄バッファ25ml、および100mMのイミダゾールを含む洗浄バッファ25mlで洗浄した。断片(各1.5ml)を最終の洗浄中に収集し、ハイブリッドタンパク質の存在を、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)およびSambrookら(1989. Molecular cloning: a laboratory manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)が記載した手順に従ってクマシー・ブルー染色により検査した。タンパク質を含む断片をプールして、水に対して10,000MWカットオフ透析膜を用いて一晩透析した。精製タンパク質は、タンパク質1mg当たり5単位のトロンビン(Novagen)を用いて室温で1時間かけて切断し、トロンビンは、トロンビン開裂捕捉キット(Novagen)を用いてキットについている指示書に従って取り除いた。未切断のタンパク質は、サンプルをNi親和性カラムに前述のように負荷し、カラムを5mMのイミダゾールを含む洗浄バッファ10mlで洗浄して除去した。洗浄物の断片(各1.5ml)を収集し、タンパク質の存在をSDS−PAGEにより解析した。タンパク質を含む断片をプールし、水に対して透析し、−20℃で保存した。精製したタンパク質のN末端配列解析をエドマン分解法(Edman degradation procedure)を用いてBeckman model 2300のプロテインシーケンサーで実施した。質量スペクトルは、日立製4414型質量分析器を用いて測定した。
【0072】
例4:酵素アッセイ
合成基質(Sigma Chemical Co.より購入)は、4−ニトロフェニル−N−アセチル−β−D−ガラクトサミニド、4−ニトロフェニル−N−アセチル−α−D−ガラクトサミニド、4−ニトロフェニル−N−アセチル−β−D−グルコサアミニド、および4−ニトロフェニル−N−アセチル−α−D−グルコサミニドであった。酵素反応は、37℃の水槽中に入れた15mlのポリプロピレンチューブ中の、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH5.9)、100mMのNaCl、5mMの基質、および3.7μg/mlの精製タンパク質を含む10ml体積内で行った。反応は、反応混合物1mlをNaOH5μlを含む新しいチューブに移すことにより、様々な時点で終了させた。各チューブ内でのp−ニトロフェノラートの放出による吸収の増加を、405nmに設定した島津製作所製UV−Mini分光光度計で測定した。
【0073】
例5:A. actinomycetemcomitansの他の株、および細菌の他の種における、dspBオーソログの同定
微生物遺伝子データベースwww.ncbi.nlm.nih.govで、A. actinomycetemcomitansのdspBのホモログを検索した。dspBホモログは、A. pleuropneumoniae血清型(serovars)1、5および7の未完了の遺伝子で同定された。A. pleuropneumoniaeのdspBホモログは、アミノ酸レベルでA. actinomycetemcomitansのCU1000のdspB配列と60%の同一性を示した。Pasteurellaceae科の他のメンバーにおけるdspBホモログをさらに検索した。A. actinomycetemcomitansのCU1000のdspBのアミノ酸配列は、A. pleuropneumoniaeのdspBホモログと揃っており、非常によく保存されている配列の2つの領域が同定された。これらの保存されたアミノ酸(5’-GAYCAYGARAAYTAYCG-3’(配列番号12)および5’-TCNCCRTCRTARCTCCA-3’ (配列番号13)、ここでY=CまたはT、R=AまたはG、およびN=AまたはCまたはGまたはTである)をコードするDNA配列にハイブリダイズする縮重・オリゴヌクレオチドプライマーを合成し、これらのプライマーを用いて、Pasteurellaceaeの種々の種から精製された遺伝子DNAをPCRにより増幅した。予想されたサイズのPCR産物が、A. actinomycetemcomitansのIDH781株(Saarela et al. 1993. Oral Microbiol. Immunol. 8: 111-115)、A. pleuropneumoniaeのIA5株(Veterinary Diagnostics Laboratory, Iowa State University, Ames, IAより入手)、Haemophilus aphrophilusのNJ8700株(Kaplan et al. 2002 J. Clin. Microbiol. 40: 1181-1187)、およびA. lignieressiの19393株(American Type Culture Collection, Manassas, VAより入手)からの遺伝子DNAに観察された。Haemophilus somnus、Actionbacillus equuli、Pasteurella multocidaおよびMannheimia haemolyticaからのDNAには、PCR産物は観察されなかった。
【0074】
PCR産物を、マルチコピープラスミドにクローニングし、DNA塩基配列決定法を行った。図1は、予想されたA. actinomycetemcomitansCU1000のdspBアミノ酸配列と、A. actinomycetemcomitansの他の株および他のPasteurellaceae細菌からのdspBホモログの配列を比較したものである。
【0075】
例6:A. actinomycetemcomitansの野生株でのdspBの過剰発現
A. actinomycetemcomitansの野生株でのdspBの過剰発現の効果を決定するために、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)誘発性プロモーターの制御のもとでdspBを含むプラスミドを作製した。このプラスミドをCU1000野生株に導入し、1mMのIPTGの存在下で細胞を増殖させた。dspBを発現するプラスミドを収容している(harboring)CU1000細胞は、寒天培地上に滑らかなコロニー形態を示し、培養容器の表面のサテライトコロニーの数の増加によって示されるように、培養液ブロス中に分散性の高い表現型を示す生物膜を生成した。これらの所見により、dspB発現は、生物膜の分散量に関連していることが確認される。
【0076】
例7:マイクロタイタープレート内でのポリスチレンロッドからの生物膜細胞の剥離
予めポリスチレンロッド上に増殖させた生物膜コロニーからの細胞の剥離を測定するアッセイを、96穴マイクロタイタープレートで行った。生物膜コロニーを、マイクロタイタープレートの96穴内のブロスに懸濁させたポリスチレンロッド上に増殖させた。生物膜から剥離した細胞は、穴の底に落ちて、その表面に付着し、新しい生物膜コロニーを形成した。穴の底に増殖した生物膜の量は、ロッド上の生物膜コロニーから剥離した細胞数に比例し、これはクリスタルバイオレットで染色して計測した。剥離アッセイは以下のように行った。
【0077】
機器の構成
96穴ポリスチレン平底組織培養プレート(Falcon No. 353072)の蓋を以下のように改良した:まず、直径1.5mmの孔を96個、蓋にあけて、各孔が96穴の中心にそれぞれ対応して位置するようにする。次に、長さ11mmのポリスチレンロッド(直径1.5mm、Plastruct Corp., City of Industry, CA)を各孔に入れ(ロッドの1つの端が蓋の先端と同じ高さになるように)、トリクロロメタンプラスチック溶媒で確保した。この改良蓋を96穴マイクロタイタープレート底部上に置いた場合、ロッドは穴の中に、各ロッドの底が穴の底から約2mm上になるように吊り下げられた。改良蓋は、70%エタノールに30分間浸し、生物学的に安全なキャビネット内で空気乾燥させることにより殺菌した。
【0078】
ポリスチレンロッドの播種およびインキュベーション
マイクロタイタープレート底部に媒体(1穴当たり100μl)を充填し、各穴に、寒天培地から殺菌爪楊枝を用いて2〜3日令のコロニーを1つずつ播種した。改良蓋を播種プレート上にかぶせて、ポリスチレンロッドを播種媒体中に浸し、プレートを37℃で24時間インキュベートして、細菌をロッドに付着させた。次に蓋を、予め暖められた媒体を入れた新鮮なマイクロタイタープレートに移動させ、さらに24時間インキュベートして、生物膜の細胞をロッドから剥離させた。
【0079】
剥離細胞の測定
蓋を取り、プレートを水道水の流水で広範に洗浄し、緩く付着した細胞を除去した。穴にグラム染色試薬100μl(100ml当たり、クリスタルバイオレット2g、シュウ酸アンモニウム0.8g、エタノール20ml)を充填し、プレートを室温で10分間インキュベートした。プレートは再度水道水の流水で広範に洗浄し、未結合の染料を除去した。穴は次にエタノール100μlを充填し、プレートを室温で10分間インキュベートして、染料を溶解した。各穴のエタノール/染料の光学密度(590nmにおける)を、Bio-Radのベンチマークマイクロプレートリーダーで計測した。
【0080】
例8:ポリスチレンロッド上での生物膜の増殖
ポリスチレンロッド(直径1.5mm;Plastruct Corp., City of Industry, Calf.)を35mmの長さに切断し、70%エタノール中で30分間殺菌し、生物学的に安全なキャビネット内で空気乾燥させた。ロッドを、S. epidermidisを播種したブロス0.5mlを含む1.5mlのマイクロ遠心管に入れ、16時間インキュベートした。ロッドを次に水道水の流水ですすぎ、PBS0.5mlまたはPBSとジスペルシンBを0.5mlを含む新鮮なマイクロ遠心管に入れた。ロッドを水ですすぎ、上記と同様にしてクリスタルバイオレットで染色した(Kaplan, J.B., and Fine, D.H. Appl. Environ. Microbiol. 2002 68: 4943-4950)。超音波処理のため、ロッドを、PBS3mlを含む15mlの円錐遠心管に入れ、30秒間、40%のデューティサイクルおよび70%の容量で、カップホーン(cup horn)付きBranson model 200ソニケーターで超音波処理した。剥離細胞の定量化のために、超音波処理物を順番に希釈して、1.5%寒天培地で固化した媒体上にプレートした。
【0081】
例9:ポリスチレンマイクロタイタープレート内での生物膜の増殖
96穴ポリスチレンマイクロタイタープレート(model 3595, Corning)の穴に、S. epidermidisを播種したブロス100μlを充填し、プレートを16時間インキュベートした。マイクロタイタープレートの洗浄は、媒体を吸引し、穴を200μlのPBSで3回洗浄するか、またはプレート全体を冷たい水道水の流水を流したたらいの中に浸すことにより行った。生物膜を前述と同様にしてクリスタルバイオレットで染色した(Kaplan, J.B., and Fine, D.H. Appl. Environ. Microbiol. 2002 68: 4943-4950)。
【0082】
例10:96穴マイクロタイタープレート生物膜細胞剥離アッセイ
96穴マイクロタイタープレート(Falcon no. 353072)の穴に、10〜10CFUの細菌を含む媒体100μlを充填し、37℃、10%CO下で20時間インキュベートした。酵素溶液10μl[リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に1mg・ml−1]、または、対照の場合はPBS10μlを各穴に加え、プレートをさらに6時間インキュベートした。穴は水道水の流水で広範に洗浄し、表面に付着した残留細菌をクリスタルバイオレットで染色し、再度洗浄し、Kachlanyら(Mol. Microbiol. 2001 40: 542-554)により記載された手順に従って、エタノールで染色を抜いた。エタノール−染料溶液の光学密度(O.D.)を、590nmに設定したBioRad Benchmarkマイクロタイタープレートリーダーにより計測した。
【0083】
例11:静脈内カテーテル上での生物膜の増殖
ポリウレタンカテーテル(直径1.1mm、model 381434、Becton-Dickinson)およびテフロン(登録商標)カテーテル(直径1.2mm、model 3055、Critikon)を用いた。カテーテルの先端は、殺菌高真空グリースにより栓をして、媒体および染料が管腔に入るのを防いだ。カテーテルは播種し、ポリスチレンロッドに対する上記と同様に処置した。ジスペルシンBによるカテーテルの前もっての被覆は、PBSまたはリン酸ナトリウム緩衝液(pH9)中で10分〜24時間行った。ある場合においては、被覆されたカテーテルは使用の前に24時間空気乾燥させた。テフロン(登録商標)カテーテルは、前述のようにクリスタルバイオレットで染色した(Kaplan, J.B., and Fine, D.H. Appl. Environ. Microbiol. 2002 68: 4943-4950)。ポリウレタンカテーテルは、水中の1%メチレンブルーで2分間染色した。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】A. actinomycetemcomitansのCU1000株(配列番号2)、A. actinomycetemcomitansのIDH781株(配列番号6)、Haemophilus aphrophilusのNJ8700株(配列番号8)、A. ligniersiiの19393株(配列番号4)、およびA. pleuropneumoniaeのIA5株(配列番号10)からの、本発明の例示のジスペルシンBオーソログのクラスター配列を示す。
【配列表】











【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を促進する可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体をコードする、単離核酸配列。
【請求項2】
配列番号1、3、5、7または9の少なくとも30個の連続したヌクレトチドに対して50%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項1に記載の単離核酸配列。
【請求項3】
配列番号1、3、5、7または9の核酸配列を含む、請求項1に記載の単離核酸配列。
【請求項4】
請求項1、2または3のいずれかに記載の単離核酸配列と第2ポリペプチドをコードする第2核酸配列とを含む融合ポリペプチドをコードする、核酸配列。
【請求項5】
請求項1、2、3または4のいずれかに記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項6】
請求項5に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項7】
請求項1、2、3または4のいずれかに記載の核酸配列によりコードされる、単離アミノ酸配列。
【請求項8】
生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を促進する、単離された可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼタンパク質またはその活性断片もしくは変異体。
【請求項9】
配列番号2、4、6、8または10を含む、請求項8に記載の単離された可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼタンパク質またはその活性断片もしくは変異体。
【請求項10】
請求項8または9に記載のアミノ酸配列および、第2ポリペプチドを含む、融合タンパク質。
【請求項11】
有効量の請求項8または9に記載の単離された可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼタンパク質またはその活性断片もしくは変異体、および薬学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の医薬組成物を、抗生物質と組み合わせて、または抗生物質の投与に先立って投与することを含む、細菌感染症に対する抗生物質の有効性を強化するための方法。
【請求項13】
請求項8または9に記載の単離された可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼタンパク質またはその活性断片もしくは変異体で被覆された、医療用デバイス。
【請求項14】
請求項8または9に記載の単離された可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼタンパク質またはその活性断片もしくは変異体を浸透させた、創傷治療用デバイス。
【請求項15】
請求項8または9に記載の単離された可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼタンパク質またはその活性断片もしくは変異体を含む、消毒液。
【請求項16】
生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を抑制するための方法であって、細菌細胞のdspB遺伝子を突然変異させて、生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を抑制することを含む、前記方法。
【請求項17】
生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を抑制するための方法であって、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼの発現もしくはレベルを低下させること、または、細菌細胞内での可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼの活性を抑制することにより、生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を低減させることを含む、前記方法。
【請求項18】
Actinobacillus actinomycetemcomitansの単離された突然変異体であって、表面に強く付着するが、細胞を媒体中に放出できないかまたは表面上に分散できない生物膜のコロニーを形成する、前記突然変異体。
【請求項19】
dspB遺伝子が突然変異している、請求項18に記載の突然変異体。
【請求項20】
生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を調節する剤を同定するための方法であって、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼの活性または発現またはレベルを調節する該剤の能力を評価することを含む、前記方法。
【請求項21】
生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を促進するための方法であって、細菌細胞を、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体と、または、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体をコードする核酸配列と接触させることにより、生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を促進することを含む、前記方法。
【請求項22】
医療用デバイスまたは外科用器具上の細菌または真菌による、生物の感染のリスクを低下させるための方法であって、生物が該医療用デバイスまたは外科用器具と接触する前に、該医療用デバイスまたは外科用器具を可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体と接触させることを含む、前記方法。
【請求項23】
医療用デバイスが、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体により被覆されている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体による被覆が、医療用デバイス上で乾燥される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
医療用デバイスがカテーテルであり、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体が、該カテーテル内のカテーテルロック溶液中に存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
細菌感染または真菌感染を抑制する、防ぐまたは処置するための方法であって、生物に、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体を、または、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体をコードする核酸配列を投与することにより、生物膜からの細菌細胞または真菌細胞の剥離を促進することを含む、前記方法。
【請求項27】
細菌感染または真菌感染が、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体により分解可能な生物膜多糖類を含む、N−アセチルグルコサミニダーゼを生成する細菌または真菌によるものである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体、または、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体をコードする核酸配列が、生物内に埋め込まれた医療用デバイスの被覆物として投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体、または、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体をコードする核酸配列が、医薬組成物として投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体、または、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体をコードする核酸配列が、消毒溶液中に組み込まれており、埋込み型医療用デバイスの挿入の前に対象に経皮的に適用される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
対象に適用される創傷包帯が、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体、または、可溶性のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼまたはその活性断片もしくは変異体をコードする核酸配列を浸透させたものである、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
dspBホモログを有する細菌を同定する、プライマー対。
【請求項33】
配列番号12および配列番号13を含む、請求項32に記載のプライマー対。
【請求項34】
dspBホモログを有する細菌を同定するためのキットであって、請求項32または33に記載のプライマー対、およびdspBホモログを有する細菌を同定するための該プライマー対の使用についての説明書を含む、前記キット。

【図1】
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【公表番号】特表2006−511226(P2006−511226A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564840(P2004−564840)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/034683
【国際公開番号】WO2004/061117
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(505233435)ユニバーシティー オブ メディシン アンド デンティストリー オブ ニュージャージー (1)
【Fターム(参考)】