説明

細菌検査装置および細菌検査方法

【課題】発色や蛍光の白とびを防ぎ、検査精度を高めることができる細菌検査装置および細菌検査方法を提供する。
【解決手段】光源25が、培地1を載せるための載置部12の周囲に等間隔で複数設けられている。導光部材24が、光を透過可能な材質から成り、載置部12に載せられた培地1を観察するための観察孔21dと載置部12との間の空間を囲む壁を形成する。導光部材24は、内周面24aに縦方向断面がギザギザになるよう複数本の溝を形成して成る光出射面24bを有する。導光部材24は、肉厚内を透過する光を、観察孔21dと載置部12とを結ぶ線に対してほぼ垂直な平行光にする。光源25は、導光部材24の肉厚内に光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌検査装置および細菌検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や水などの衛生状態や汚染状況を調べるために、大腸菌の検出や菌数、種類等を検査する大腸菌検査が行われている。一般的に、大腸菌検査は、検体を培地に加えて培養した後、培地の発色や蛍光を肉眼で観察することにより行われている(例えば、特許文献1または2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−176640号公報
【特許文献1】特表平9−501314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および2記載のような一般的な大腸菌検査では、培地の発色や蛍光を観察するとき、培地に紫外線などの光を直接あてるため、光の反射により発色や蛍光が白とびする可能性が高いという課題があった。また、発色や蛍光の白とびにより、菌数の測定等に誤差を生じてしまうという課題もあった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、発色や蛍光の白とびを防ぎ、検査精度を高めることができる細菌検査装置および細菌検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る細菌検査装置は、培地に加えた検体中の細菌の種類または数を蛍光または発色により検査するための細菌検査装置であって、前記培地を載せるための載置部と、前記載置部に載せた培地に光を照射するための発光部とを有し、前記発光部は導光部材と光源とを有し、前記導光部材は光を透過可能な材質から成り、前記載置部に対向する観察位置と前記載置部との間の空間を囲む壁を形成し、肉厚内を透過する光を、前記観察位置と前記載置部とを結ぶ線に対してほぼ垂直な平行光にする光出射面を内周面に有し、前記光源は前記導光部材の肉厚内に光を照射するよう設けられていることを、特徴とする。
【0007】
本発明に係る細菌検査装置は、培地に加えた検体中の細菌、特に、糞便性大腸菌や病原性大腸菌などの大腸菌の種類や、それら各種の大腸菌の数を蛍光または発色に基づいて検査するのに使用される。本発明に係る細菌検査装置により載置部に載せられた培地を観察するとき、光源が導光部材の肉厚内に光を照射し、観察位置と載置部とを結ぶ線に対してほぼ垂直な平行光を周囲の導光部材から照射する。これにより、培地を明るく照射しつつ、培地に直接あたって観察位置に向かって反射する光の量を抑えることができ、光の反射による発色や蛍光の白とびを防ぐことができる。このため、検体中の大腸菌の種類または数を正確に把握することができ、大腸菌検査の精度を高めることができる。
【0008】
本発明において、光源は点光源から成る場合、載置部の周囲または観察位置の周囲に等間隔で複数設けられていることが好ましい。その場合、光源を増やすことにより、観察位置と載置部との間の空間の周囲から偏りなく平行光を照射することができ、培地全体をより明るく照らすことができる。光源は、所望の波長の光を照射可能であればいかなる光源であってもよいが、発光ダイオード(LED)から成ることが好ましい。導光部材は、外周面が肉厚内で内周面からの光を反射可能となっていることが好ましい。光出射面は、例えば、導光部材の内周面に縦方向断面がギザギザになるよう複数本の溝を形成することにより構成することができる。この場合、光源は導光部材の肉厚内に載置部側から観察位置側に向かってまたは観察位置側から載置部側に向かって光を照射するよう、載置部の周囲または観察位置の周囲に設けられ、導光部材は載置部側から観察位置側に向かってまたは観察位置側から載置部側に向かって肉厚内を透過する光を、観察位置と載置部とを結ぶ線に対してほぼ垂直な平行光にすることができる。
【0009】
本発明に係る細菌検査装置は、背景光源を有し、前記載置部は光を透過可能な材質から成り、前記背景光源は前記載置部を透過して前記観察位置に向かって光を照射するよう前記載置部を挟んで前記観察位置と反対側に設けられていることが好ましい。細菌によっては、背景光源から観察位置に向かって光を照射し、培地を透過した光で観察することによって検査が容易になる。また、背景光源から載置部を透過した光により、平行光のみでは暗くなる培地の周囲や培地を入れたシャーレなどの容器の周囲を明るく照らすことができる。
【0010】
本発明に係る細菌検査装置は、前記載置部に載せられた前記培地を撮影可能に前記観察位置に設けられた撮影手段と、前記撮影手段で撮影された画像を記録する記録手段とを、有することが好ましい。この場合、検査した検体の培地の状態を、画像に記録することができ、記録された画像を後処理で利用することもできる。また、記録されてた画像により、検査が適切に行われていたかどうかを判断することができ、トレーサビリティを確保することができる。なお、画像は、静止画像であっても動画像であってもよい。
【0011】
本発明に係る細菌検査方法は、検体を加えた培地を載置部に載せ、前記載置部に対向する観察位置と前記載置部とを結ぶ線に対してほぼ垂直な平行光を周囲から照射し、前記載置部に載せられた前記培地を、前記観察位置に設けられた撮影手段により撮影し、前記撮影手段で撮影された画像を記録手段により記録し、前記撮影手段で撮影された画像または前記記録手段で記録された画像の蛍光または発色に基づいて検体中の細菌の種類または数を検査することを、特徴とする。
【0012】
本発明に係る細菌検査方法は、本発明に係る細菌検査装置により容易に実施することができる。本発明に係る細菌検査方法では、載置部に載せられた培地を観察するとき、観察位置と載置部とを結ぶ線に対してほぼ垂直な平行光を周囲から照射することにより、培地を明るく照射しつつ、培地に直接あたって観察位置に向かって反射する光の量を抑えることができ、光の反射による発色や蛍光の白とびを防ぐことができる。このため、検体中の細菌、特に、大腸菌の種類または数を正確に把握することができ、大腸菌検査の精度を高めることができる。
【0013】
本発明に係る細菌検査方法は、検査した検体の培地の状態を、画像で記録することができ、記録された画像を後処理で利用することもできる。また、記録された画像により、検査が適切に行われていたかどうかを判断することができ、トレーサビリティを確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発色や蛍光の白とびを防ぎ、検査精度を高めることができる細菌検査装置および細菌検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図3は、本発明の実施の形態の細菌検査装置および細菌検査方法を示している。
図1および図2に示すように、細菌検査装置10は、培地1に加えた検体中の大腸菌の種類または数を蛍光または発色により検査するための細菌検査装置10であって、装置本体11と載置部12と発光部13と背景光源14と撮影手段15と表示手段16と制御部17とを有している。
【0016】
図1および図2に示すように、装置本体11は、全体的に円柱状の外形を成し、内部に観察室21と発光室22とを有している。観察室21は、装置本体11の中央から上部にかけて設けられ、床面21aが円形で平坦であり、側面21bが円筒状を成し、天井面21cがドーム状を成している。観察室21は、天井面21cの中央に、外部に連通する円形の観察孔21dを有している。
【0017】
発光室22は、装置本体11の下部の、観察室21の下方に設けられている。発光室22は、床面22aが円形で平坦であり、側面22bから天井面22cにかけてドーム状を成している。発光室22は、幅および高さが観察室21より小さく形成されている。装置本体11は、観察室21の床面21aの中央と発光室22の天井面22cの中央とをつなぐ円形の連通孔23を有しており、観察室21と発光室22とが連通している。
【0018】
図2に示すように、載置部12は、光を透過可能な乳白色のアクリル板から成り、円盤形状を成している。載置部12は、装置本体11の内部の連通孔23に取り付けられている。載置部12は、観察室21の側の表面に培地1が入ったシャーレ2を載せるため、表面が平坦になっている。載置部12は、シャーレ2より大きい径を有している。観察孔21dは、載置部12に載せられたシャーレ2の中の培地1を観察するための観察位置にある。
【0019】
図2および図3に示すように、発光部13は、導光部材24と光源25とを有している。導光部材24は、光を透過可能な透明なアクリル製またはポリカーボネート製の材質から成り、ほぼ円筒形状を成している。導光部材24は、中心線が上下方向を向き、装置本体11の内部に設けられている。導光部材24は、内周面24aの中間の高さ部分が観察室21の側面21bを成し、観察孔21dと載置部12との間の空間を囲む壁を形成している。導光部材24は、光出射面24bを内周面24a全体に有している。光出射面24bは、導光部材24の内周面24aに縦方向断面がギザギザになるよう円周方向に複数本の溝を形成することにより構成されている。光出射面24bは、導光部材24の高さ方向に肉厚内を透過する光を、観察孔21dと載置部12とを結ぶ線に対してほぼ垂直な平行光にする。導光部材24は、外側面24cおよび上端面24dに、銀色または白色の反射材26が貼り付けられている。
【0020】
光源25は、複数個、例えば36個の発光ダイオード(LED)から成っている。光源25は、載置部12の周囲の導光部材24の下端面24eに等間隔で取り付けられ、導光部材24の下端面24eから上端面24dへと高さ方向に肉厚内に光を照射するようになっている。
【0021】
図2に示すように、背景光源14は、複数個、例えば、16個の発光ダイオード(LED)から成っている。背景光源14は、発光室22の床面22aに、その床面22aの周囲に沿って等間隔で取り付けられている。これにより、背景光源14は、載置部12を透過して観察孔21dに向かって光を照射するよう載置部12を挟んで観察孔21dと反対側に配置される。
【0022】
図1に示すように、細菌検査装置10は、装置本体11の側部に矩形状の開口27を有している。開口27は、装置本体11と導光部材24とを貫通して観察室21を外部と連通させる。
【0023】
図1に示すように、撮影手段15は、画像を撮影可能なCCDカメラまたはCMOSカメラから成り、観察孔21dに取り付けられている。撮影手段15は、載置部12に載せられたシャーレ2の中の培地1を撮影可能となっている。表示手段16は、液晶のディスプレイから成っている。
【0024】
図1に示すように、制御部17は、コンピュータから成り、撮影手段15および表示手段16に接続されている。制御部17は、撮影手段15の撮影操作や表示手段16の表示操作を制御可能である。制御部17は、撮影手段15で撮影された画像を入力可能であり、その入力された画像を記録する記録手段28を有している。記録手段28は、メモリから成っている。また、制御部17は、撮影手段15で撮影された画像や記録手段28で記録された画像を、表示手段16に出力して表示可能になっている。制御部17は、撮影手段15で撮影された画像や記録手段28で記録された画像に対して、さまざまな解析を実施可能である。
【0025】
次に、作用について説明する。
細菌検査装置10は、培地1に加えた検体中の糞便性大腸菌や病原性大腸菌などの大腸菌の種類や、それら各種の大腸菌の数を蛍光または発色に基づいて検査するのに使用される。本発明の実施の形態の細菌検査方法は、細菌検査装置10により容易に実施することができる。まず、検体を加えた培地1を入れたシャーレ2を、装置本体11の側部の開口27から観察室21の内部に入れて載置部12に載せ、光源25および背景光源14から光を照射する。
【0026】
このとき、光源25は、導光部材24の肉厚内に光を照射し、観察孔21dと載置部12とを結ぶ線に対してほぼ垂直な平行光を周囲の導光部材24から照射する。また、背景光源14は、発光室22の内部から載置部12を透過して観察孔21dに向かう光を照射する。光源25が複数個の発光ダイオードから成るため、観察孔21dと載置部12との間に周囲から偏りなく平行光を照射することができ、培地1全体を明るく照らすことができる。また、導光部材24の外側面24cおよび上端面24dの反射材26が、導光部材24の内周面24aからの光や光源25からの光を反射する。これらの反射光も光出射面24bから平行光となって照射されるため、培地1全体をより明るく照らすことができる。この状態で撮影装置により培地1を撮影し、撮影された画像により大腸菌検査を行う。
【0027】
細菌検査装置10およびそれによる細菌検査方法では、発光部13が照射する平行光により、培地1を明るく照射しつつ、培地1に直接あたって観察孔21dに向かって反射する光の量を抑えることができ、光の反射による発色や蛍光の白とびを防ぐことができる。このため、検体中の大腸菌の種類または数を正確に把握することができ、大腸菌検査の精度を高めることができる。また、平行光のみでは暗くなる培地1の周囲や培地1を入れたシャーレ2の周囲を、背景光源14から載置部12を透過した光により明るく照らすことができる。なお、細菌によっては、背景光源14から観察孔21dに向かって光を照射し、培地を透過した光で観察することによって検査が容易になる。
【0028】
撮影手段15や記録手段28により、検査した検体の培地1の状態を、画像で記録することができ、記録された画像を後処理で利用することもできる。また、記録された画像により、検査が適切に行われていたかどうかを判断することができ、トレーサビリティを確保することができる。細菌検査装置10およびそれによる細菌検査方法は、特に、河川水やダムの水などの大腸菌検査の使用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態の細菌検査装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す細菌検査装置の装置本体の内部の断面図である。
【図3】図1に示す細菌検査装置の発光部の切断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 培地
2 シャーレ
10 細菌検査装置
11 装置本体
12 載置部
13 発光部
14 背景光源
15 撮影手段
16 表示手段
17 制御部
21 観察室
21d 観察孔
22 発光室
23 連通孔
24 導光部材
24b 光出射面
25 光源
26 反射材
27 開口
28 記録手段




【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地に加えた検体中の細菌の種類または数を蛍光または発色により検査するための細菌検査装置であって、
前記培地を載せるための載置部と、
前記載置部に載せた培地に光を照射するための発光部とを有し、
前記発光部は導光部材と光源とを有し、
前記導光部材は光を透過可能な材質から成り、前記載置部に対向する観察位置と前記載置部との間の空間を囲む壁を形成し、肉厚内を透過する光を、前記観察位置と前記載置部とを結ぶ線に対してほぼ垂直な平行光にする光出射面を内周面に有し、
前記光源は前記導光部材の肉厚内に光を照射するよう設けられていることを、
特徴とする細菌検査装置。
【請求項2】
背景光源を有し、
前記載置部は光を透過可能な材質から成り、
前記背景光源は前記載置部を透過して前記観察位置に向かって光を照射するよう前記載置部を挟んで前記観察位置と反対側に設けられていることを、
特徴とする請求項1記載の細菌検査装置。
【請求項3】
前記載置部に載せられた前記培地を撮影可能に前記観察位置に設けられた撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された画像を記録する記録手段とを、
有することを特徴とする請求項1または2記載の細菌検査装置。
【請求項4】
検体を加えた培地を載置部に載せ、
前記載置部に対向する観察位置と前記載置部とを結ぶ線に対してほぼ垂直な平行光を周囲から照射し、
前記載置部に載せられた前記培地を、前記観察位置に設けられた撮影手段により撮影し、
前記撮影手段で撮影された画像を記録手段により記録し、
前記撮影手段で撮影された画像または前記記録手段で記録された画像の蛍光または発色に基づいて検体中の細菌の種類または数を検査することを、
特徴とする細菌検査方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−19564(P2010−19564A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177664(P2008−177664)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(506004023)株式会社イズム (2)
【出願人】(503368214)社団法人東北建設協会 (7)
【Fターム(参考)】