説明

細裂き食肉製品の製造方法及び製造装置

【課題】乾燥魚介製品等よりも油脂分を多く含む食肉から、切口がひきちぎられているような状態、1本1本ほぐされた状態を呈する細裂き食肉製品を短時間に大量に製造する。
【解決手段】原料食肉Mを細裂きステーション3に導入して、細裂き食肉製品M’を製造する方法であって、細裂きステーション3が、周縁部にピッチ幅0.1〜1.5mm、深さ0.01〜1.0mmのジグザグ状の溝を有する円盤状又は多角円盤状の裂刃5が軸方向に所定間隔をあけて複数枚配列された一対の裂刃手段6,7を備え、一対の裂刃手段6,7は刃先同士が軸方向に所定間隔をあけて交互に且つ所定交差深さで交わるように配設されると共に逆方向に同一周速度で駆動回転するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏肉等の原料食肉を細裂きする、細裂き食肉製品の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品加工は、中華人民共和国(中国)において人手を使って行われることが多くなっているが、人手を使って直接作業を行う場合には、本来の調理方法に近い工程で行うことが可能であるという利点がある。例えば、四川料理を代表するメニューのひとつである棒棒鶏(バンバンジー)の「棒棒」とは、棒でたたいて軟らかくするという意味があるとされ、火を通した鶏を棒でたたき、手で裂いて盛り付けるというのが、本来の調理方法であるとされているが、かかる棒棒鶏用の鶏を食品加工用に大量生産する際に、蒸した鶏の胸肉(正肉)を人が直接手で裂いてほぐすという作業を行うことで、棒棒鶏に用いる鶏肉として消費者が期待する肉の外観及び食感を得ることが可能となっていた。
【0003】
しかしながら、最近、食の安全性の問題により、日本国内の消費者が、中国から輸入された加工食品の購入を敬遠する傾向が強まった結果、中国からの加工食品の輸入が激減することとなり、食肉製品についても需要を満たすために日本国内で生産する必要が生じてきた。一例では、中国における蒸し鶏のほぐし処理の人手による処理効率は、一人あたり1〜2kg/時間であるが、日本国内で従来品とコスト面・品質面において同等レベルの製品を生産するためには、作業効率を上げる必要があるため機械化が必須であり、しかも、本来の方法により調理されたような印象を与える製品を製造することが求められる。例えば、棒棒鶏用の鶏に関しては、機械により一律に裁断された蒸した鶏が、包丁で細切りされたような切り口を有するのではなく、1本1本細かく手で裂いたようにほぐされたような印象を与える食肉製品を生産する方法を開発することが期待されている。
【0004】
従来、引き裂いた感を呈する食品の加工装置としては、機枠の上下に回転ドラムを軸架し、その回転ドラムに適宜間隔をおいて、切歯盤を取付けると共に、その切歯盤の間に合成樹脂環体を固着せしめ、該合成樹脂環体の外周縁面にはローレットを刻設した乾燥魚貝類の加工装置(例えば、特許文献1参照)や、上下回転軸に夫々所望間隔をおいて、上下歯状刃盤を軸着し、該上下歯状刃盤が交互に僅か前記間隔の間に食い込むように上下回転軸を機枠に軸架せしめた乾燥魚貝類の加工装置(例えば、特許文献2参照)や、上下の切歯盤を互い違いに配列し、切歯盤を複数枚合わせに構成した乾燥魚介類の加工装置(例えば、特許文献3参照)や、機枠に平行に軸架され、刃先同士が軸方向に適宜の隙間をおいて交互に且つ適宜の交差深さで交わるように複数枚配列されて逆向き駆動回転する上下一対の裂刃を備えて、この一対の裂刃の間を通すことにより、加工原料の繊維方向に裂口を入れるように構成されている加工装置であって、上記一対の裂刃は、平坦部と角部とを周方向に交互に備えた多角円盤状を呈し、少なくとも角部同士が適宜の交差深さで回転交わるように軸方向に配列されてなることを特徴とする乾燥魚介類等の食品加工装置(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
【0005】
また、1本の細肉又は2〜3本位の細肉がつながった状態で、切口がひきちぎられた状態、むしられた状態を呈する製品に加工することを目的に機枠の乾燥材料搬入側部位に乾燥材料用の搬入コンベヤを具備し、その搬入コンベヤの搬出端部側上方の機枠に、周面部が周方向に波形形成された強制回転しない第1乾燥材料押圧ローラーを設け、その第1乾燥材料押圧ローラーから搬入コンベヤの搬送方向に間隔をあけて、周面部が周方向に波形形成された強制回転する第2乾燥材料押圧ローラーを第1乾燥材料押圧ローラーに並設せしめ、前記搬入コンベヤの搬出端部側前方の機枠上部に軸支された第1回転軸に、周縁部の周方向に切歯が連続形成された複数枚の小径切歯盤を軸方向に一定間隔で取付けて小径切歯盤列を構成し、該小径切歯盤列の下方における機枠に軸支された第2回転軸に、周縁部の周方向に切歯が連続形成された複数枚の大径切歯盤を軸方向に一定間隔で取付けて第1大径切歯盤列を構成し、その第1大径切歯盤列上方の機枠上部における搬入コンベヤ側と反対側部位に高さ位置調整可能軸支された第3回転軸に、周縁部の周方向に切歯が断続形成された複数枚の大径切歯盤を軸方向に一定間隔で取付けて第2大径切歯盤列を構成し、前記小径切歯盤列の小径切歯盤を第1大径切歯盤列の大径切歯盤間に食込ませると共に逆方向に回転せしめ、該第1大径切歯盤列の大径切歯盤を第2大径切歯盤列の大径切歯盤間に食込ませると共に、両方の大径切歯盤列を異なる周速で逆方向回転せしめるように構成してなる乾燥魚介類及び加工肉類の加工装置(例えば、特許文献5参照)が提案されている。
【0006】
その他、複数の薄板帯状の長い切断刃がそれぞれ所定の位置寸法を維持して、切断をより多く繰り返しても各切断刃が、それぞれ対応する切断台の各切断刃挿入溝に正常に出入り可能として、円滑に機能する切断装置を得ることを目的とした、それぞれの切断刃をガイドする切断刃スライドガイドを備えた構成を有する装置(例えば、特許文献6参照)や、加熱した鶏肉を引き裂いたようにほぐす食品加工装置を提供することを目的に、回動する環状凹陥部を有する皿体内で回転する刃により材料を細断撹拌するようにしたサイレントカッターにおいて、前記刃の主作用部分を錐形としたことを特徴とする鶏肉ほぐし装置(例えば、特許文献7参照)が提案されている。
【0007】
特許文献1記載の装置は、刃先の加圧による歯型様の跡が付くにとどまるものであり、特許文献2〜4記載の装置は、いずれも製品をすだれ状に加工するものであり、得られた製品は、一本一本引き裂いたような外観を呈するものではない。また、特許文献5記載の装置は、切口がひきちぎられた状態、むしられた状態を呈する、1〜3本位の細肉がつながった製品を生産するものであるが、乾燥材料を、第1工程で径の異なる2つの切歯盤を用いてすだれ状に加工し、該すだれ状加工物を、次工程で同一径の2つの切歯盤を用いて1〜3本位の細肉がつながった製品へ加工するといった2段階の工程で加工するものであり、装置が複雑かつ大型化していた。また、切歯盤の周縁部に溝が形成されているが、その溝は比較的大きなものであった。さらに、2つの切歯盤の周速を異なるように構成し、これにより被処理物に応力をかけて、ひきちぎられた状態を形成するものであった。
【0008】
【特許文献1】実公昭55−42707号公報
【特許文献2】実公昭55−51186号公報
【特許文献3】実公昭60−28232号公報
【特許文献4】実用新案登録第3099385号公報
【特許文献5】実開平7−39467号公報
【特許文献6】特開2005−231020号公報
【特許文献7】特開2005−262361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、乾燥魚介製品等よりも油脂分を多く含む食肉を一定方向で細裂きステーションに導入でき、切口がひきちぎられているような状態、1本1本ほぐされた状態を呈する細裂き食肉製品を短時間に大量に製造するための方法又は装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特許文献4に示されるような従来の装置を用いて蒸し鶏の胸肉の加工を試みたが、ベルトコンベアで搬送される鶏肉を繊維方向と同じ方向に細裂きステーションに導入しようとしても、鶏肉の脂の影響でずれてしまい、また、切口がひきちぎられているような状態、1本1本ほぐされた状態を呈するような期待通りの製品が得ることができないことを確認した。そこで、さらに検討したところ、所望の形状に原料食肉を加工するには、裂刃周縁部の溝の形状と一対の裂刃手段の回転速度(周速度)が重要な要素であるという知見を得、周縁部に非常に細かい溝を有する複数の裂刃が配設された一対の裂刃手段を同一の周速で逆方向に回転させて処理することにより、裂刃の溝に鶏肉が食いこみ、その方向がずれず、加えて、1工程で、切口がひきちぎられているような状態、1本1本ほぐされた状態を呈する食肉製品を製造することができること見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち本発明は、[1]原料食肉を細裂きステーションに導入して、細裂き食肉製品を製造する方法であって、前記細裂きステーションが、周縁部にピッチ幅0.1〜1.5mm、深さ0.01〜1.0mmのジグザグ状の溝を有する円盤状又は多角円盤状の裂刃が軸方向に所定間隔をあけて複数枚配列された一対の裂刃手段を備え、該一対の裂刃手段は刃先同士が軸方向に所定間隔をあけて交互に且つ所定交差深さで交わるように配設されると共に逆方向に同一周速度で駆動回転するよう構成されていることを特徴とする細裂き食肉製品の製造方法に関する。
【0012】
また本発明は、[2]多角円盤状の裂刃が、8角〜16角形の刃であることを特徴とする上記[1]記載の細裂き食肉製品の製造方法や、[3]原料食肉が、蒸し鶏であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の細裂き食肉製品の製造方法に関する。
【0013】
さらに本発明は、[4]原料食肉の搬入手段と、搬入された原料食肉を細裂きする細裂きステーションとを備えた細裂き食肉製品の製造装置であって、前記細裂きステーションが、周縁部にピッチ幅0.1〜1.5mm、深さ0.01〜1.0mmのジグザグ状の溝を有する円盤状又は多角円盤状の裂刃が軸方向に所定間隔をあけて複数枚配列された一対の裂刃手段を備え、該一対の裂刃手段は刃先同士が軸方向に所定間隔をあけて交互に且つ所定交差深さで交わるように配設されると共に逆方向に同一周速度で駆動回転するよう構成されていることを特徴とする細裂き食肉製品の製造装置や、[5]多角円盤状の裂刃が、8角〜16角形の刃であることを特徴とする上記[4]記載の細裂き食肉製品の製造装置に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の食肉製品の製造方法及び製造装置によれば、乾燥魚介製品等よりも油脂分を多く含む食肉を一定方向で細裂きステーションに導入でき、切口がひきちぎられているような状態、1本1本ほぐされた状態を呈する細裂き食肉製品を短時間に大量に製造することができる。本発明の製造方法及び製造装置によれば、250kg肉/時間の処理が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の細裂き食肉製品の製造方法としては、原料食肉を細裂きステーションに導入して、細裂き食肉製品を製造する方法であって、前記細裂きステーションが、周縁部にピッチ幅0.1〜1.5mm、深さ0.01〜1.0mmの溝を有する円盤状又は多角円盤状の裂刃が軸方向に所定間隔をあけて複数枚配列された一対の裂刃手段を備え、該一対の裂刃手段は刃先同士が軸方向に所定間隔をあけて交互に且つ所定交差深さで交わるように配設されると共に逆方向に同一周速度で駆動回転するよう構成されているものであれば特に制限されるものではなく、本発明の製造方法における原料食肉としては、牛肉、豚肉、鶏肉等が挙げられ、具体的には、蒸し鶏、スモークチキン、焼豚等を挙げることができる。原料食肉の形状は特に制限されないが、細裂き処理後に大きさ等を整える必要がないように、例えば、長さ(繊維方向)3〜20cm程度、厚さ1〜10mm程度に予め形状を整えておくことが好ましい。
【0016】
本発明の細裂き食肉製品の製造方法において、原料食肉を細裂きステーションに導入する場合、食肉の繊維方向と進行方向がほぼ一致するように導入することが好ましく、食肉の繊維方向と進行方向の角度は、30°以内であることが好ましい。具体的には、原料食肉を把持して食肉の繊維方向と進行方向がほぼ一致するように細裂きステーションに直接導入してもよいし、細裂きステーションの上流に設けられたベルトコンベア等の搬入手段に原料食肉を食肉の繊維方向と進行方向がほぼ一致するように載置して、原料食肉を細裂きステーションに導入してもよい。
【0017】
上記のように、細裂きステーションは一対の裂刃手段を備えている。裂刃手段の裂刃の周縁部にはジグザグ状の溝が設けられており、かかる溝のピッチ幅(図2のa)は、0.1〜1.5mmであり、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.2〜0.6mmであることがより好ましい。また、溝の深さ(図2のb)は、0.01〜1.0mmであり、0.05〜0.5mmであることが好ましく、0.05〜0.30mmであることがより好ましい。このようなピッチ幅及び深さとすることが非常に重要であり、これにより、導入された原料食肉のすべり(繊維方向のずれ)を防止することができると共に、切口がひきちぎられているような状態で1本1本ほぐされた状態を呈する食肉製品とすることができる。すなわち、上記の溝よりも小さな溝であると、原料食肉のすべりを防止することができず、上記の溝よりも大きな溝であると、原料食肉は切断されるが、切口がひきちぎられているような状態にはならない。
【0018】
各裂刃手段に設けられた裂刃の形状及び大きさは同一であることが好ましく、多角円盤状の裂刃の場合、8角〜16角形の多角円盤状裂刃を挙げることができる。裂刃の直径は、例えば、10〜50cm程度であり、10〜30cm程度であることが好ましい。なお、多角形の場合は、角部同士の直径を意味する。また、裂刃の厚さは、例えば0.5〜10mm程度である。
【0019】
各裂刃手段は上記のような裂刃が軸方向に複数枚配列されており、裂刃の枚数は特に制限されないが、例えば、5〜50枚程度であり、各裂刃手段における裂刃の間隔としては、2〜30mm程度であり、2〜15mm程度であることが好ましい。
【0020】
各裂刃手段が組み合わされた一対の裂刃手段としての裂刃の間隔は、上記各裂刃手段における裂刃の間隔と裂刃の厚さから導き出すことができる。かかる一対の裂刃手段としての裂刃の間隔は、等間隔であってもよいが、手で引き裂いたような状態により近づけることができることから、非等間隔であることが好ましい。すなわち、裂刃が等間隔に配置された2つの裂刃手段を用いる場合には、裂刃の間隔が等間隔とはならないようにずらして配置することができ、例えば、隣り合う間隔が1:1.2〜1:3程度になるようにずらして配置することができる。また、裂刃手段同士の交差深さは、加工食肉が切断される程度に適宜調整することができ、例えば、3〜50mmである。
【0021】
かかる一対の裂刃手段は、逆方向に同一周速度で回転する。裂刃手段の回転速度としては、例えば、5〜20回転/分であり、5〜15回転/分であることが好ましい。上述した所定形状の溝と相俟って同一周速度で逆回転させることが本発明においては重要である。すなわち、従来の装置のように、それぞれの裂刃手段の周速度を変えてひきちぎられた状態を形成するものではない。なお、多角円盤状の裂刃の場合、一対の裂刃手段は、裂刃の角部同士が相対的に一致して回転するように設けることが好ましい。
【0022】
また、本発明の細裂き食肉製品の製造装置としては、原料食肉の搬入手段と、搬入された原料食肉を細裂きする細裂きステーションとを備えた細裂き食肉製品の製造装置であって、前記細裂きステーションが、周縁部にピッチ幅0.1〜1.5mm、深さ0.01〜1.0mmの溝を有する円盤状又は多角円盤状の裂刃が軸方向に所定間隔をあけて複数枚配列された一対の裂刃手段を備え、該一対の裂刃手段は刃先同士が軸方向に所定間隔をあけて交互に且つ所定交差深さで交わるように配設されると共に逆方向に同一周速度で駆動回転するよう構成されている装置であれば特に制限されるものではなく、細裂きステーションは上述したものと同様である。搬入手段としては、上記細裂きステーションの幅に合わせて設けられたベルトコンベア等を挙げることができる。
【0023】
搬入手段は、細裂きステーションの上方に設けられ、搬入手段の先端から落下するように原料食肉が細裂きステーションに導入される。また、本発明の細裂き食肉製品の製造装置は、細裂きステーションで加工された細裂き食肉を搬出するベルトコンベア等の搬出手段を備えていてもよく、かかる搬出手段は細裂きステーションの下方に設けられる。
【0024】
以下、図面を参照して本発明の細裂き食肉製品の製造装置をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。図1は本発明の細裂き食肉製品の製造装置の概略説明図であり、図2は裂刃手段における裂刃の拡大図である。また、図3は本発明の装置の細裂きステーション入口側の図であり、原料食肉を細裂きステーションに導入する時の状態を示し、図4は本発明の装置の細裂きステーション出口側の図であり、原料食肉が細裂きステーションで処理された後の状態を示す。
【0025】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る細裂き食肉製品の製造装置1は、原料食肉Mの搬入手段であるベルトコンベア2と、搬入された原料食肉Mを細裂きする細裂きステーション3と、細裂き食肉M’の搬出手段であるベルトコンベア4とを備えている。ベルトコンベア2は、細裂きステーション3の上方に位置し、搬送される原料食肉Mがベルトコンベア2の先端から落下して細裂きステーション3に導入される。また、ベルトコンベア4は、細裂きステーション3の下方に位置し、細裂きステーション3から落下する細裂き食肉M’を載置し、搬出する。
【0026】
細裂きステーション3は、多角円盤状の裂刃5が軸方向に7mm程度の間隔をあけて30枚程度配列された一対の裂刃手段6,7を備えている。図2に示すように、裂刃手段6,7における裂刃5は、直径(DL)約15cm、厚さ約1mmの12角形の多角円盤状裂刃であって、その周縁部には、ピッチ幅a約0.3mm、深さb約0.1mmの溝が設けられている。裂刃手段6,7は、刃先同士が軸方向に交互に且つ深さ方向に交わるように配設され、モーター8により、それぞれ逆方向に10回転/分程度の速度で駆動回転する。このとき、裂刃手段6,7は、裂刃5の角部同士が相対的に一致して回転する。なお、ベルトコンベア2,4もモーター8により駆動されており、ベルトコンベア2,4及び裂刃手段6,7が一つの駆動源で制御される。
【0027】
上記のような構成の装置1を用いて細裂き食肉製品を製造するには、図3に示すように、例えば予め適当な形状に整形した蒸した鶏胸肉(原料食肉M)をベルトコンベア2上に、食肉の繊維方向が進行方向と一致するように載置する。ベルトコンベア2により搬送された原料食肉Mは、ベルトコンベア2の先端から落下し、下方の細裂きステーション3に導入される。細裂きステーション3では、導入された原料食肉Mが裂刃5の周縁部の所定形状の溝と係合してその方向がずれることはない。また、裂刃手段6,7の同一周速度での回転、及び裂刃5の周縁部の所定形状の溝との組み合わせの効果によって、切口がひきちぎられているような状態、1本1本ほぐされた状態を呈する細裂き食肉M’が製造される。図4に示すように、処理された細裂き食肉M’は、ベルトコンベア4により搬送され、回収ボックスに回収される。この製造された細裂き食肉M’は、棒棒鶏用とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の細裂き食肉製品の製造装置の概略説明図である。
【図2】裂刃手段における裂刃の拡大図である。
【図3】本発明の装置の細裂きステーション入口側の図であり、原料食肉を細裂きステーションに導入する時の状態を示す。
【図4】本発明の装置の細裂きステーション出口側の図であり、原料食肉が細裂きステーションで処理された後の状態を示す。
【符号の説明】
【0029】
1 細裂き食肉製品の製造装置
2 ベルトコンベア(搬入手段)
3 細裂きステーション
4 ベルトコンベア(搬出手段)
5 裂刃
6 裂刃手段
7 裂刃手段
8 モーター
M 原料食肉
M’ 細裂き食肉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料食肉を細裂きステーションに導入して、細裂き食肉製品を製造する方法であって、
前記細裂きステーションが、周縁部にピッチ幅0.1〜1.5mm、深さ0.01〜1.0mmのジグザグ状の溝を有する円盤状又は多角円盤状の裂刃が軸方向に所定間隔をあけて複数枚配列された一対の裂刃手段を備え、該一対の裂刃手段は刃先同士が軸方向に所定間隔をあけて交互に且つ所定交差深さで交わるように配設されると共に逆方向に同一周速度で駆動回転するよう構成されていることを特徴とする細裂き食肉製品の製造方法。
【請求項2】
多角円盤状の裂刃が、8角〜16角形の刃であることを特徴とする請求項1記載の細裂き食肉製品の製造方法。
【請求項3】
原料食肉が、蒸し鶏であることを特徴とする請求項1又は2記載の細裂き食肉製品の製造方法。
【請求項4】
原料食肉の搬入手段と、搬入された原料食肉を細裂きする細裂きステーションとを備えた細裂き食肉製品の製造装置であって、
前記細裂きステーションが、周縁部にピッチ幅0.1〜1.5mm、深さ0.01〜1.0mmのジグザグ状の溝を有する円盤状又は多角円盤状の裂刃が軸方向に所定間隔をあけて複数枚配列された一対の裂刃手段を備え、該一対の裂刃手段は刃先同士が軸方向に所定間隔をあけて交互に且つ所定交差深さで交わるように配設されると共に逆方向に同一周速度で駆動回転するよう構成されていることを特徴とする細裂き食肉製品の製造装置。
【請求項5】
多角円盤状の裂刃が、8角〜16角形の刃であることを特徴とする請求項4記載の細裂き食肉製品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−268363(P2009−268363A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118993(P2008−118993)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000113067)プリマハム株式会社 (72)
【出願人】(594001247)有限会社村岡食品機械製作所 (1)
【Fターム(参考)】