説明

終止点用踏切制御子およびその調整方法

【課題】終止点用踏切制御子が一台だけでも踏切の両側の終止点で列車を検知する。
【解決手段】開電路形の終止点用踏切制御子50に、制御子内配線AA,BB及び分岐配線aa,bbに割り込む形で介挿接続されていて第1切替状態では発振有無検出部25から出力された照査用発振信号の送出先を第1接続端子51及びその先の上り終止点DDCに切り替えるが第2切替状態では照査用発振信号の送出先を第2接続端子52及びその先の下り終止点BDCに切り替える切替回路部56と、列車運転方向指示に応じて切替回路部56に第1,第2切替状態のうち何れか一方の切替状態をとらせる切替制御部55とを設ける。また、制御子内配線AA,BBにて伝送される照査用発振信号のレベルを加減調整する第1調整部25aに加えて、分岐配線aa,bbにて伝送される照査用発振信号のレベルを加減調整する第2調整部57も設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道の単線区間の踏切に設置される踏切保安装置のうち、無絶縁で使用できる短小軌道回路の一種である開電路形の終止点用踏切制御子に関する。
また、そのような終止点用踏切制御子の調整方法にも関する。
なお、本願に添付した特許請求の範囲および明細書では、「列車の運転方向」を「列車運転方向」と言う。また、「列車運転方向」を示す出力がリレー出力であれリレー以外の信号出力であれ、それを「列車運転方向指示」と言う。
【背景技術】
【0002】
鉄道の線路の踏切に設置される踏切保安装置は(例えば非特許文献1,2参照)、列車を検知するための踏切制御子と、音響にて警報を発するためのスピーカとせん光にて警報を発するための警報灯を装備した踏切警報機と、第3種の踏切には無いが第1種の踏切では踏切遮断機と、踏切制御子の検知結果に基づいて踏切警報機や踏切遮断機の動作を制御する踏切制御装置とを具えている。そして、踏切の手前の始動点に設置された踏切制御子で列車を検知すると、踏切警報機にて警報を発するとともに、少し時間をおいて第1種の踏切では踏切遮断機を降下させ、踏切通過後の終止点に設置された踏切制御子で列車通過を検知すると、警報等を止めるとともに、第1種の踏切では踏切遮断機を上昇させるようになっている。以下、このような踏切保安装置や踏切制御子の構成等を、図面を引用して説明する。
【0003】
図6は、(a)が複線区間における踏切制御子21〜24の配置図、(b)が単線区間における踏切制御子21,23,24の配置図、(c)が単線用の踏切制御装置31を含む単線用の踏切保安装置のブロック図、(d)が閉電路形の始動点用踏切制御子21,23の接続図、(e)が開電路形の終止点用踏切制御子22,24の接続図である。また、図7(a)は、終止点用踏切制御子24に発振式のものを採用したときのブロック図であり、同図(b)は、終止点用踏切制御子24に送受信式のH形を採用したときのブロック図である。さらに、図8(a)は、コストを考慮して現在設置されている単線用踏切保安装置に係る概要構成図であり、同図(b)は、コストを無視すれば理想といえる単線用踏切保安装置に係る概要構成図である。
【0004】
複線区間の踏切8に係る踏切保安装置では(図6(a)参照)、下り側の線路10について踏切8の起点側で手前位置の下り始動点ADCに始動点用踏切制御子21が設置されるとともに踏切8の終点側で列車通過後位置の下り終止点BDCに終止点用踏切制御子22が設置されるばかりか、上り側の線路10についても踏切8の終点側で手前位置の上り始動点CDCに始動点用踏切制御子23が設置されるとともに踏切8の起点側で列車通過後位置の上り終止点DDCに終止点用踏切制御子24が設置される。始動点ADC,CDCは、踏切警報を発してから列車が踏切8に到達するまでの時間を確保するために、例えば駅中間の踏切で列車の走行速度が100km/Hの場合には踏切8から700〜 800m程の遠くに設定されるが、終止点BDC,DDCは、踏切横断物等による誤作動を避けつつも列車の通過を早く検出するために、踏切8から例えば20〜30m程の近くに設定されることが多い。
【0005】
これに対し(図6(b)参照)、線路10が一つしかない単線区間に設けられた踏切8に係る踏切保安装置では、同じ線路10に対し、踏切8の両側に分かれて下り始動点ADCと上り始動点CDCとが設定され、下り始動点ADCには始動点用踏切制御子21が設置される一方、上り始動点CDCには始動点用踏切制御子23が設定される。また、同じ線路10に対し、下り終止点BDCと上り終止点DDCとのうち何れか一方だけが上り下り共用の終止点として設定され、その共用終止点には終止点用踏切制御子が設置される。例えば上り終止点DDCが選択されて、それが踏切8と下り始動点ADCとの間に設定された場合(図6(b)の場合)、そこに終止点用踏切制御子24が設置され、下り終止点BDCは設定されないので、終止点用踏切制御子22は設置されない。このように、踏切8に近い終止点については共用化を図ることで、設備費の過大化が抑制される。
【0006】
そのため(図6(c)参照)、単線区間の踏切8に係る踏切保安装置は、同じ線路10の下り始動点ADC,共用終止点DDC,上り始動点CDCそれぞれに設置された始動点用踏切制御子21,始動点用踏切制御子23,終止点用踏切制御子24と、それらの踏切制御子21,23,24から列車検知結果を入力しそれに基づく論理判定にて列車の踏切への接近および通過と列車運転方向とを認知する踏切制御装置31と、音響にて警報を発するためのスピーカと、せん光にて警報を発するための警報灯32と、第1種の踏切では踏切遮断機33とを具えている。なお、その他、故障表示器や、複線など跨線数が複数の踏切には列車方向指示器なども、設けられているが、その説明は割愛する。
【0007】
そして、下り列車が下り始動点ADCと共用終止点DDCとの間に在線しているときには下りSRリレー(下りの列車運転方向指示)が無励磁となるが、それ以外のときには下りSRリレーが励磁される。また、上り列車が上り始動点CDCと共用終止点DDCとの間に在線しているときには上りSRリレー(上りの列車運転方向指示)が無励磁となるが、それ以外のときには上りSRリレーが励磁される。そのような列車運転方向の判別結果として方向別に出力される下りSRと上りSRが組み合わせられて、最終の警報出力となる警報Rリレー回路が構成されている。そして、この警報Rリレーの条件により、警報音制御器、警報灯制御器(断続リレー)、踏切遮断機制御リレーと呼ばれる機器が駆動され、それらの出力がそれぞれ警報音のスピーカ、警報灯32、踏切遮断機33に送出されて、音や光で警報が発せられるとともに、遮断桿で道路交通が遮断される。
【0008】
ここで(図6(d),(e)参照)、踏切制御子について詳述すると、故障時のフェールセーフのため、下り始動点ADCや上り始動点CDCに設置される始動点用踏切制御子21,23には閉電路形の踏切制御子が用いられ(図6(d)参照)、下り終止点BDCや上り終止点DDCに設置される終止点用踏切制御子22,24には開電路形の踏切制御子が用いられる(図6(e)参照)。そのうち、閉電路形踏切制御子21,23は(図6(d)参照)、線路10を成す一対のレール11,12それぞれに一端を溶接等で取り付けられた接続線の対を二対使用するものであり、線路10における接続線取付箇所の取付間隔は約15mほどになっている。そして、その接続線取付箇所の間のレール11,12を介して常に閉電路が構成されており、列車の非在線時には照査用発振信号が閉電路に一巡伝送されて踏切制御子の出力用の始動Rリレーが励磁されるのに対し、列車が約30m程の列車検知長の区間に存在すると、列車の車軸でレール11,12が短絡されるために、照査用発振信号の伝送が断たれて、始動Rリレーが無励磁となる。
【0009】
一方、開電路形踏切制御子22,24は(図6(e)参照)、線路10を成す一対のレール11,12それぞれに一端を溶接等で取り付けられた接続線を一対だけ使用するものであり、その接続線に照査用発振信号を常に送出するようになっているが、レール11,12の間が繋がっていないので常態では開電路が構成されているにとどまるため、その開電路に照査用発振信号が送出されていても、列車の非在線時には照査用発振信号の伝送がレール11,12の間で断たれて、踏切制御子の出力用の終止Rリレー(出力リレー)が無励磁となっている。そして、列車が約30m程の列車検知長の区間に進入して存在すると、列車の車軸でレール11,12が短絡されるために、開電路が一時的に閉電路となって、照査用発振信号が一巡伝送され、終止Rリレー(出力リレー)が励磁される。
【0010】
このような開電路形の終止点用踏切制御子22,24は(図7参照)、内部に、照査用発振信号の接続線への送出を試行して照査用発振信号の一巡伝送の状態を検出する発振有無検出部25と、照査用発振信号の一巡伝送が検出されたときには終止Rリレーを励磁するが照査用発振信号の一巡伝送が検出されないときには終止Rリレーを励磁しないリレー駆動部26とを具えている。発振有無検出部25には、接続線を発振回路の発振ループの一部とする発振式のものと(図7(a)参照)、照査用発振信号を送信部で生成し接続線で伝送させ受信部で検出する送受信式のH形と(図7(b)参照)、2タイプが実用化されているが、後ほど説明する本発明においては終止点用踏切制御子の方式の違いが問題にならないので、その詳細は図示するにとどめ、ここでは終止点用踏切制御子24を具体例にして、接続線A1,B1(第1接続線)との接続状態を詳述する。
【0011】
一対の接続線A1,B1のうち一方の接続線A1は一端がレール11に溶接等で接続され他方の接続線B1は一端がレール12に接続されて(図7参照)、その接続線取付箇所14から何れの接続線A1,B1も終止点用踏切制御子24の方に延びていて、発振有無検出部25に接続されている。なお、必須ではないが大抵は終止点用踏切制御子24が踏切器具箱内に収納されているので、接続線A1,B1は、何れも、発振有無検出部25に直に接続されるのでなく、延長線を介在させて間接的に接続されている。即ち、接続線A1,B1は、それぞれ、他端が配線端子盤28の端子に接続され、そこから踏切器具箱内配線27によって終止点用踏切制御子24の筐体の端子まで延長され、そこから制御子内配線AA,BBによって発振有無検出部25に接続されて、発振有無検出部25から照査用発振信号を伝達されるものとなっている。
【0012】
また、リレー駆動部26の終止Rリレーの接点はリレー信号の伝達のため踏切器具箱内配線にて踏切制御装置31の入力ユニットに接続されている。
さらに、終止点用踏切制御子24は、発振式であれ(図7(a)参照)、H形であれ(図7(b)参照)、何れのタイプであっても、列車検知長を加減して規定値に合わせるために、制御子内配線AA,BBにて伝送される照査用発振信号のレベルを上げ下げ(加減調整)する調整器25a(第1調整部)を具備している。図示した調整器25aは、発振有無検出部25に内蔵状態で配設されていて、入力レベルを手動操作にて調整するようになっているが、照査用発振信号のレベルを調整してから固定できれば、出力レベルを調整するようになっていても良く、発振有無検出部25に添設状態で配設されていても良く、制御子内配線AA,BBに介挿状態で配設されていても良い。
【0013】
このように、単線区間の踏切8に係る現状の踏切保安装置では(図8(a)参照)、線路10において踏切8の近くに共用終止点DDCが設定され更にそれより踏切8から遠くに且つ踏切8の両側に分かれて下り始動点ADCと上り始動点CDCが設定され、下り始動点ADCでは閉電路形の始動点用踏切制御子21に至る接続線の一端が線路10に溶接され、共用終止点DDCの接続線取付箇所14には開電路形の終止点用踏切制御子24に至る接続線(第1接続線A1,B1)の一端が線路10に溶接され、上り始動点CDCでは閉電路形の始動点用踏切制御子23に至る接続線の一端が線路10に接続される。そして、踏切制御子21の始動Rリレーと踏切制御子24の終止Rリレーと踏切制御子23の始動Rリレーとの励磁有無状態に応じて、踏切制御装置31が警報灯32の動作を制御し、更に第1種の踏切では踏切制御装置31が踏切遮断機33の動作をも制御し、上り始動点CDCと共用終止点DDCとの間が上りの踏切制御区間となり、下り始動点ADCと共用終止点DDCとの間が下りの踏切制御区間となる。
【0014】
すなわち、列車が上り始動点CDCの列車検知長の区間に進入し掛かってから共用終止点DDCの列車検知長の区間を進出し終えるまでは、列車が上りの踏切制御区間の中に存在するとの判別がなされ、列車運転方向が上りであることを示す上りSRリレーが常態の励磁から無励磁になって、警報灯32にて警報が発せられるとともに、第1種の踏切では踏切遮断機33にて道路交通が遮断される。また、列車が下り始動点ADCの列車検知長の区間に進入し掛かってから共用終止点DDCの列車検知長の区間を進出し終えるまでは、列車が下りの踏切制御区間の中に存在するとの判別がなされ、列車運転方向が下りであることを示す下りSRリレーが常態の励磁から無励磁になって、警報灯32にて警報が発せられるとともに、第1種の踏切では踏切遮断機33にて道路交通が遮断される。さらに、それ以外のときには、上りの踏切制御区間にも下りの踏切制御区間にも列車が在線していないとの判別がなされて、スピーカや警報灯32から警報が発せられることがなく、第1種の踏切8では道路交通が遮断されない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】鉄道技術者のための信号概論 信号シリーズ1 「鉄道信号一般」社団法人日本鉄道電気技術協会2005年3月18日発行、改訂版p.107〜118
【非特許文献2】鉄道技術者のための電気概論 信号シリーズ8 「踏切保安装置」社団法人日本鉄道電気技術協会2007年10月30日発行、4版p.35〜120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このように、現状では、単線区間の線路10の踏切8に設置される踏切保安装置において、列車が踏切道を通過したことを検知し、踏切警報を停止させ更に第1種の踏切では踏切遮断機33を上昇させるために使用する開電路形の終止点用踏切制御子は、踏切道を挟んで起点側あるいは終点側のどちら側か一方だけで左右のレール11,12に接続線を介して取付けられるのが一般的である。
これらの場合のうち、終止点用踏切制御子24が踏切8の起点側に取付けられた場合は(図8(a)参照)、踏切8が上りの踏切制御区間に属するので、上り列車に対しては、列車速度の如何に拘わらず、上り列車が完全に踏切道を通過し終わったことを検知でき、通過し終えた時点で警報が停止し、所要の機能がその通りに発揮される。
【0017】
一方、下り列車に対しては、踏切8が下りの踏切制御区間に属さないので、列車の速度によっては、あるいは踏切道の幅員によっては、下り列車が踏切道を通過中にも拘わらず通過したものと見做されることがあり、そうするとその時点で警報が停止するので所期の目的を果たすことができない。
列車が共用終止点DDCを通過し終えたら直ちに警報等を止めるのでなく、予め設定しておいた遅延時素だけ更に経過するのを待ってその後に警報等を止めるので、踏切8を通過する下り列車の速度が通常より多少遅い程度かそれ以上であれば、下り列車が踏切道を通過中にも拘わらず通過したものと見做されることはないのであるが、列車速度の速度があまりに遅かったり列車が踏切8で停止したようなときには、下り列車が踏切8を通過し終える前に通過したものと見做されることが起こりうる。
【0018】
なお、終止点用踏切制御子が踏切8の終点側にだけ取付けられた場合については図示や繰り返しとなる煩雑な説明は割愛するが、この場合も上り下りが入れ替わるだけで同様の不都合が生じうる。
そして、かかる不都合を回避するには、コスト負担を無視することが許される理想的な安全重視の環境下であれば、複線用の踏切保安装置でも惜しげなく単線区間に適用することができるので、単線区間の線路10の踏切8に踏切保安装置を設置する際、踏切道を挟んだ両側それぞれに始動点用踏切制御子と終止点用踏切制御子とを取り付ければ良い。
【0019】
すなわち(図8(b)参照)、踏切8の起点側のレール11,12に対しては遠くの下り始動点ADCに始動点用踏切制御子21を接続線にて接続するとともに近くの上り終止点DDCの接続線取付箇所14には接続線を介して終止点用踏切制御子24を接続し、踏切8の終点側のレール11,12に対しては近くの下り終止点BDCの接続線取付箇所15に接続線を介して終止点用踏切制御子22を接続するとともに遠くの上り始動点CDCには始動点用踏切制御子23を接続線にて接続するのである。これにより、上り始動点CDCから上り終止点DDCに至る上りの踏切制御区間に踏切8が属するばかりでなく、下りの踏切制御区間が下り始動点ADCから下り終止点BDCに至る区間に広がって、踏切8が下りの踏切制御区間にも属することとなるので、上り列車であれ、下り列車であれ、列車速度の如何に拘わらず、さらには踏切道の幅員にも拘わらず、列車が完全に踏切道を通過し終わったことを検知できて、所期の目的が達成される。
【0020】
しかしながら、このようなコスト無視の対処策では、開電路形の終止点用踏切制御子を2つも設置しなければならず、終止点用踏切制御子についてはイニシャルコストもランニングコストも倍増する。単線区間は営業収益に乏しい所なので、コストは抑えなければならない。また、近接した範囲に複数・多数の踏切制御子が設置されるので、それらが同じ線路に送出する照査用発振信号に関して相互干渉が発生しやすくなるが、これを回避するためには列車検知用の信号すなわち照査用発振信号の周波数を変える必要がある。既に多くの信号周波数を使用しているなかで、更に周波数を増やすことは、混変調が増えるなどの不都合もある。
そこで、終止点用踏切制御子が一台しかなくても踏切の両側の終止点で列車を検知できるように改良することが、技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の終止点用踏切制御子は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、要するに、単線区間では一の踏切を上り列車と下り列車が同時に通過することが無いということに基づいて、一台の終止点用踏切制御子に時分割で二台分の機能を発揮させることにより、簡便かつ安価に、踏切の両側の終止点で列車を検知できるようになっている。
【0022】
具体的には、鉄道の単線区間の線路に設けられた踏切の両側のうち何れか一方で前記線路に第1接続線を介して外部接続するための第1接続端子と、前記第1接続端子に接続された制御子内配線を介して照査用発振信号の送出を試行して前記照査用発振信号の一巡伝送の状態を検出する発振有無検出部と、前記照査用発振信号の一巡伝送の検出の有無に応じて選択的に出力リレーを励磁するリレー駆動部とを備えた開電路形の終止点用踏切制御子において、前記踏切の両側のうち何れか他方で前記線路に第2接続線を介して外部接続するための第2接続端子と、前記線路を走行して前記踏切に接近して来た列車の上り下りを判別する列車方向判別手段から送出された列車運転方向指示を伝える第3接続線を外部接続するための第3接続端子と、前記制御子内配線から分岐して前記第2接続端子に接続された分岐配線および前記制御子内配線に割り込む形で介挿接続されていて第1切替状態では前記照査用発振信号の送出先を前記第1接続端子に切り替えるが第2切替状態では前記照査用発振信号の送出先を前記第2接続端子に切り替える切替回路部と、前記列車運転方向指示に応じて前記切替回路部に前記第1切替状態と前記第2切替状態とのうち何れか一方の切替状態をとらせる切替制御部とを設けたことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の終止点用踏切制御子は(解決手段2)、上記解決手段1の終止点用踏切制御子であって、前記発振有無検出部または前記制御子内配線に配設されていて前記制御子内配線にて伝送される前記照査用発振信号のレベルを加減調整する第1調整部と、前記分岐配線に配設されていて前記分岐配線にて伝送される前記照査用発振信号のレベルを加減調整する第2調整部とを備えたことを特徴とする。
【0024】
さらに、本発明の終止点用踏切制御子は(解決手段3)、上記解決手段2の終止点用踏切制御子であって、前記発振有無検出部から出力された前記照査用発振信号のレベルを検出するレベル検出回路と、前記列車運転方向指示の如何に拘わらず前記切替回路部に前記第1切替状態をとらせたうえで前記レベル検出回路の検出値を取得しそれを調整済みレベル値として記憶保持しておきそれから前記切替回路部に前記第2切替状態をとらせたうえで前記レベル検出回路の検出値が前記調整済みレベル値に一致するように前記第2調整部を作動させる調整制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0025】
また、本発明の終止点用踏切制御子は(解決手段4)、上記解決手段2の終止点用踏切制御子であって、前記列車運転方向指示の如何に拘わらず前記切替回路部に前記第1切替状態をとらせたうえで前記第1調整部を作動させて前記照査用発振信号のレベルを単調に漸増または漸減させながら前記リレー駆動部の励磁状態を監視しその励磁状態が変化したら前記第1調整部の作動を停止させる調整制御手段を備えたことを特徴とする。
そして、この終止点用踏切制御子の調整方法は(当初請求項8)、前記線路における前記第1接続線および前記第2接続線の接続部位が属する列車検知長の端のところで前記線路が列車の車軸で短絡された状態を実際に又は模擬的に現出させてから、前記調整制御手段を作動させることにより、前記第1接続線を経由する照査用発振信号と前記第2接続線を経由する照査用発振信号とのレベルを整合させる、というものである。
【0026】
また、本発明の終止点用踏切制御子は(解決手段5)、上記解決手段2の終止点用踏切制御子であって、前記列車運転方向指示の如何に拘わらず前記切替回路部に前記第2切替状態をとらせたうえで前記第2調整部を作動させて前記照査用発振信号のレベルを単調に漸増または漸減させながら前記リレー駆動部の励磁状態を監視しその励磁状態が変化したら前記第2調整部の作動を停止させる調整制御手段を備えたことを特徴とする。
そして、この終止点用踏切制御子の調整方法は(当初請求項8)、前記線路における前記第1接続線および前記第2接続線の接続部位が属する列車検知長の端のところで前記線路が列車の車軸で短絡された状態を実際に又は模擬的に現出させてから、前記調整制御手段を作動させることにより、前記第1接続線を経由する照査用発振信号と前記第2接続線を経由する照査用発振信号とのレベルを整合させる、というものである。
【0027】
また、本発明の終止点用踏切制御子は(解決手段6)、上記解決手段4,5の終止点用踏切制御子であって、前記発振有無検出部から出力された前記照査用発振信号のレベルを検出するレベル検出回路を備え、前記調整制御手段が、前記第1調整部および前記第2調整部のうち何れか一方について前記リレー駆動部の励磁状態の変化に基づく調整が済んだら前記レベル検出回路の検出値を取得し、それを調整済みレベル値として記憶保持しておき、それから前記列車運転方向指示の如何に拘わらず前記切替回路部に前記第1切替状態および前記第2切替状態のうち前記リレー駆動部の励磁状態の変化に基づく調整のときの切替状態と異なる切替状態をとらせたうえで前記レベル検出回路の検出値が前記調整済みレベル値に一致するように前記第1調整部および前記第2調整部のうち何れか他方を作動させるようになっていることを特徴とする。
なお、この手段には以下の二態様が含まれている。
【0028】
すなわち、解決手段6に含まれる二態様のうち一方は、上記解決手段4の終止点用踏切制御子であって、前記発振有無検出部から出力された前記照査用発振信号のレベルを検出するレベル検出回路を備え、前記調整制御手段が、前記リレー駆動部の励磁状態の変化に基づく前記第1調整部の調整が済んだら前記レベル検出回路の検出値を取得し、それを調整済みレベル値として記憶保持しておき、それから前記列車運転方向指示の如何に拘わらず前記切替回路部に前記第2切替状態をとらせたうえで前記レベル検出回路の検出値が前記調整済みレベル値に一致するように前記第2調整部を作動させるようになっていることを特徴とする、というものである。
【0029】
また、解決手段6に含まれる二態様のうち他方は、上記解決手段5の終止点用踏切制御子であって、前記発振有無検出部から出力された前記照査用発振信号のレベルを検出するレベル検出回路を備え、前記調整制御手段が、前記リレー駆動部の励磁状態の変化に基づく前記第2調整部の調整が済んだら前記レベル検出回路の検出値を取得し、それを調整済みレベル値として記憶保持しておき、それから前記列車運転方向指示の如何に拘わらず前記切替回路部に前記第1切替状態をとらせたうえで前記レベル検出回路の検出値が前記調整済みレベル値に一致するように前記第1調整部を作動させるようになっていることを特徴とする、というものである。
【0030】
また、本発明の終止点用踏切制御子は(解決手段7)、上記解決手段3〜6の終止点用踏切制御子であって、前記調整制御手段が又は前記調整制御手段および前記レベル検出回路が、前記発振有無検出部と前記リレー駆動部と前記切替回路部と前記切替制御部とを内蔵している筐体とは別体の調整治具に納められていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
このような本発明の終止点用踏切制御子にあっては(解決手段1)、始動点用踏切制御子と踏切制御装置と組み合わされて踏切保安装置を構成するが、その際、各装置が次のように接続される。すなわち、始動点用踏切制御子は、複数の閉電路形のものが前記踏切の両側に分かれて前記線路に接続される。また、本発明の終止点用踏切制御子は、前記始動点用踏切制御子のうち何れか一方と前記踏切との間で前記線路に対し前記第1接続線を介して前記第1接続端子が接続され、前記始動点用踏切制御子のうち何れか他方と前記踏切との間で前記線路に対し前記第2接続線を介して前記第2接続端子が接続されるとともに、前記踏切制御装置に組み込まれた又は別体の前記列車方向判別手段に対し前記第3接続線を介して前記第3接続端子が接続される。さらに、踏切制御装置は、前記始動点用踏切制御子での列車検知結果と本発明の終止点用踏切制御子での列車検知結果とに基づいて踏切警報を発するために、複数の前記始動点用踏切制御子および本発明の終止点用踏切制御子それぞれに対して各リレー出力を入力できるように接続される。
【0032】
このように、二台目の終止点用踏切制御子を追加して線路等に接続するのでなく、従来の終止点用踏切制御子に代えて本発明の終止点用踏切制御子を導入し、その第1,2接続端子にて踏切の両側に接続することにより、照査用発振信号の送出先が切替回路部にて両接続先の何れかに切り替えられるようになる。しかも、その信号送出先切替を列車の上り下りに応じて行うようにもしたことにより、簡便な改良でありながらも、一台の終止点用踏切制御子が時分割で二台分の機能を発揮して踏切の両側の終止点で列車を検知することとなる。そのため、踏切が上りの踏切制御区間ばかりか下りの踏切制御区間にも属するようになって、上り列車であれ、下り列車であれ、列車速度の如何に拘わらず、列車が完全に踏切道を通過し終わったことが検知できて、所期の目的が達成される。
したがって、この発明によれば、終止点用踏切制御子が一台しかなくても踏切の両側の終止点で列車を検知できる踏切保安装置を安価に実現することができる。
【0033】
また、本発明の終止点用踏切制御子にあっては(解決手段2)、従来から設けられていた発振有無検出部や制御子内配線に係る第1調整部に加えて、或いは制御子内配線に新たな第1調整部を設けたことに加えて、新設の分岐配線に係る第2調整部も設けたことにより、制御子内配線等に係る照査用発振信号のレベル調整と、分岐配線に係る照査用発振信号のレベル調整とを、分けて行うことができる。
そのため、第1接続線と第2接続線とで長さが相違し、それに起因して切替回路部の切替状態によってインピーダンス特にインダクタンスが異なることになった場合でも、第1,第2調整部をそれぞれ操作することで簡便に且つ切替状態毎に照査用発振信号の発振状態を調整することができる。
【0034】
これにより、何れの切替状態であっても列車検知条件を終止点用踏切制御子の規格値等に対して的確に整合させることができる。
しかも、第1,第2調整部の操作の前提となる切替回路部の切替状態の選択が、終止点用踏切制御子の筐体に予め設けられている第3接続端子を介して列車運転方向指示の模擬信号を与える等のことで、簡便に行える。
したがって、この発明によれば、終止点用踏切制御子が一台しかなくても踏切の両側の終止点で列車を検知することができるうえ、調整まで簡便に済ませることができる。
【0035】
さらに、本発明の終止点用踏切制御子にあっては(解決手段3)、調整に際し、発振有無検出部や制御子内配線に係る第1調整部を例えば従来の遣り方の手動方式で操作して、制御子内配線等に係る照査用発振信号のレベル調整を済ませると、それによって適切な状態になった照査用発振信号のレベルがレベル検出回路によって検出される。そして、調整制御手段を作動させると、適切な信号レベルの検出値が調整済みレベル値として記憶保持され、それから、切替回路部の状態が第1切替状態から第2切替状態に切り替わるとともに、第2調整部が作動して、レベル検出回路の検出値が調整済みレベル値に一致する。これにより、第2調整部が自動調整されて、分岐配線に係る照査用発振信号のレベルが、制御子内配線等に係る照査用発振信号のレベルと同じく適切な状態になる。
したがって、この発明によれば、終止点用踏切制御子が一台しかなくても踏切の両側の終止点で列車を検知することができるうえ、調整がより簡便になる。
【0036】
また、本発明の終止点用踏切制御子およびその調整方法にあっては(解決手段4,5)、列車検知長の端のところで線路が列車の車軸で短絡された状態を実際に又は模擬的に現出させたうえで調整が行われるが、その際、切替回路部の状態が調整対象側に切り替えられるとともに調整対象の調整部が作動して照査用発振信号のレベルが単調に漸増または漸減し、その単調変化の途中でリレー駆動部の励磁状態が変化するとその時点で調整対象の調整部が作動を停止する。これにより、調整対象の調整部の調整が自動で行われる。
したがって、この発明によれば、終止点用踏切制御子が一台しかなくても踏切の両側の終止点で列車を検知することができるうえ、調整がより簡便になる。
【0037】
また、本発明の終止点用踏切制御子にあっては(解決手段6)、第1,第2調整部のうち何れか一方については上記解決手段4,5に準じて自動調整することができ、第1,第2調整部のうち何れか他方については上記解決手段3に準じて自動調整することができるので、調整がより一層簡便になる。
【0038】
また、本発明の終止点用踏切制御子にあっては(解決手段7)、調整時に作動すれば足りる調整制御手段等が、常時作動する発振有無検出部等を内蔵した筐体から分離され、別体の調整治具に納められているため、他の終止点用踏切制御子と共用することもできるので、自動調整機能を導入しても、コストアップを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例1について、接続線切替機能付き終止点用踏切制御子とそれを導入した踏切保安装置の構造を示し、(a)が踏切保安装置の概要構成図、(b)が終止点用踏切制御子の回路図である。
【図2】(a)が終止点用踏切制御子の調整状況を示す概略図、(b)が上り列車到来時の踏切保安装置および終止点用踏切制御子の動作状態を示す概略図、(c)が下り列車到来時の踏切保安装置および終止点用踏切制御子の動作状態を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例2について、(a)が終止点用踏切制御子の回路図、(b)が終止点用踏切制御子の調整状況図である。
【図4】本発明の実施例3について、(a)が終止点用踏切制御子の回路図、(b)が終止点用踏切制御子の調整状況図である。
【図5】本発明の実施例4について、(a)が終止点用踏切制御子の回路図、(b)が終止点用踏切制御子の調整状況図である。
【図6】従来の踏切保安装置を示し、(a)が複線区間における踏切制御子の配置図、(b)が単線区間における踏切制御子の配置図、(c)が単線用の踏切保安装置のブロック図、(d)が閉電路形の始動点用踏切制御子の接続図、(e)が開電路形の終止点用踏切制御子の接続図である。
【図7】現行の終止点用踏切制御子を示し、(a)が発振式のもののブロック図、(b)が送受信式のH形のブロック図である。
【図8】(a)が従来の単線用踏切保安装置の概要構成図、(b)が理想の単線用踏切保安装置の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
このような本発明の終止点用踏切制御子について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜3により説明する。
図1〜2に示した実施例1は、上述した解決手段1〜2(出願当初の請求項1〜2)を具現化したものであり、図3に示した実施例2は、上述した解決手段3(出願当初の請求項3)を具現化したものであり、図4に示した実施例3は、上述した解決手段4,5,7(出願当初の請求項4,5,7)を具現化したものであり、図5に示した実施例4は、上述した解決手段6,7(出願当初の請求項6,7)を具現化したものである。
【0041】
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、筐体やネジ等の機械的部材や,電気回路・電子回路の回路素子などについては詳細な図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に記号で図示した。
また、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したが、それらについて背景技術の欄で述べたことは以下の実施例についても共通するので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0042】
本発明の終止点用踏切制御子の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が接続線切替機能付き終止点用踏切制御子50を組み込んだ踏切保安装置40の概要構成図、(b)が終止点用踏切制御子50の回路図である。
【0043】
この踏切保安装置40は、鉄道の単線区間の線路10に設けられた踏切8に係る踏切警報を行うために設けられたものであり、踏切8の起点側の下り始動点ADCの所で線路10に接続線を介して接続された閉電路形の始動点用踏切制御子21と、踏切8の終点側の上り始動点CDCの所で線路10に接続線を介して接続された閉電路形の始動点用踏切制御子23と、始動点用踏切制御子21の接続先の下り始動点ADCと踏切8との間に設定された上り終止点DDCの所で線路10の接続線取付箇所14に溶接にて一端部を接続された第1接続線A1,B1と、始動点用踏切制御子23の接続先の上り始動点CDCと踏切8との間に設定された下り終止点BDCの所で線路10の接続線取付箇所15に溶接にて一端部を接続された第2接続線A2,B2とを備えている。
【0044】
また、踏切保安装置40は、線路10に接続線を介して接続されると線路10の接続線取付箇所に係る列車検知を行う開電路形の終止点用踏切制御子50と、始動点用踏切制御子21での列車検知結果を示す始動Rリレーの出力と始動点用踏切制御子23での列車検知結果を示す始動Rリレーの出力と終止点用踏切制御子50での列車検知結果を示す終止Rリレーの出力とを入力してそれらに基づき踏切警報制御を行って列車運転方向を判別するとともに列車運転方向に応じて上りSRリレーで上りSRを出力したり下りSRリレーで下りSRを出力する単線用の踏切制御装置31と、それらを組み合わせた結果である警報Rリレーの出力に応動するスピーカや,警報灯32,踏切遮断機33と、図示しない電源装置も備えている。
【0045】
このような踏切保安装置40は、既述した現状の単線区間の踏切保安装置(図8(a)参照)において、既述の終止点用踏切制御子24(図7参照)に代えて新たな終止点用踏切制御子50を導入したうえで(図1(a)参照)、終止点用踏切制御子50から線路10へ照査用発振信号を送出するための接続として、既述した踏切器具箱内配線27と第1接続線A1,B1とによる終止点用踏切制御子50から線路10の上り終止点DDCの接続線取付箇所14に至る接続を維持するとともに、新たな踏切器具箱内配線42と第2接続線A2,B2とによる終止点用踏切制御子50から線路10の下り終止点BDCの接続線取付箇所15に至る接続を追加したものとなっている(図1(b)参照)。さらに、踏切制御装置31から警報Rと下りSRを取り込むための踏切器具箱内配線43も追加されている。これらのうち、第2接続線A2,B2と終止点用踏切制御子50とそれに係る踏切器具箱内配線42,43は未だ説明していないが、それ以外のものは既に詳述したので、ここでは未説明のものを詳述する。
【0046】
第2接続線A2,B2は、基本的には既存の第1接続線A1,B1と同様の絶縁被覆電線で良いが、終止点用踏切制御子24の収容されていた踏切器具箱内に終止点用踏切制御子50を収納しようとすると第1接続線A1,B1よりも長くなりがちで、例えば第1接続線A1,B1が好ましいとされる15m以下になっていると、必要な列車検知長を確保するには第2接続線A2,B2が70〜100mほどになって、第2接続線A2,B2のインダクタンスが増加することから、第2接続線A2,B2の方にはコンデンサを直列に介挿接続して増加インダクタンスの影響を相殺することにより、第1接続線A1,B1と第2接続線A2,B2のインピーダンス特性をなるべく近づけておくのが望ましい。
【0047】
具体的には、後で詳述するが、厳しい外部環境に曝される第2接続線A2,B2に対して直にコンデンサが接続される訳でなく、踏切器具箱内の終止点用踏切制御子50の筐体の中に可変容量部57(第2調整部)が設けられている(図1(b)参照)。長さが極端に異なる第1接続線A1,B1と第2接続線A2,B2に対して、調整器25a(第1調整部)のみで照査用発振信号のレベルを調整する構成では、長い接続線に対する出力を1桁ほど増大させる必要があり、現実的ではない。例えば、第1接続線A1,B1が好ましいとされる15m以下になっているのに対し、必要な列車検知長を確保するために第2接続線A2,B2が100mほどになったとすると、照査用発振信号のレベルが、第1接続線については10Wで済むのに対し、第2接続線については100Wほどになる。
【0048】
終止点用踏切制御子50は(図1(b)参照)、例えば金属製箱体からなる筐体にて一ユニットに纏められており、その筐体の内外を貫く第1接続端子51と第2接続端子52と第3接続端子53と接続端子58と、上記筐体に内蔵されている発振有無検出部25とリレー駆動部26と制御子内配線AA,BBと分岐配線aa,bbと切替制御部55と切替回路部56と可変容量部57とを具えている。それらのうち、発振有無検出部25とリレー駆動部26と制御子内配線AA,BBは、既述した終止点用踏切制御子24のものがそのまま引き継がれている。
【0049】
発振有無検出部25に調整器25a(第1調整部)が設けられていることも、照査用発振信号を伝送する制御子内配線AA,BBが一端を発振有無検出部25に接続され他端を第1接続端子51に接続されていることも、リレー駆動部26の終止Rリレーの接点が接続端子58までの制御子内配線および接続端子58からの踏切器具箱内配線にて踏切制御装置31の入力ユニットに接続されていることも、終止点用踏切制御子24から終止点用踏切制御子50にそのまま引き継がれている。
【0050】
第1接続端子51は、踏切8と下り始動点ADCとの間に設定された上り終止点DDCのところで線路10に第1接続線A1,B1を介して外部接続するための接続端子であり、具体的には踏切器具箱内配線27と配線端子盤28の端子とを介して第1接続線A1,B1の他端が接続されるようになっている。
第2接続端子52は、踏切8と上り始動点CDCとの間に設定された下り終止点BDCのところで線路10に第2接続線A2,B2を介して外部接続するための接続端子であり、具体的には踏切器具箱内配線27でなく他の踏切器具箱内配線42と配線端子盤28の他の端子とを介して第2接続線A2,B2の他端が接続されるようになっている。
【0051】
第3接続端子53は、列車運転方向指示を伝える第3接続線を外部接続するための接続端子であり、線路10を走行して踏切8に接近して来た列車の上り下りを判別する列車方向判別手段として既述の踏切制御装置31を活用するとともに踏切制御装置31の出力する警報R及び下りSRを列車運転方向指示として活用するために、踏切制御装置31の警報Rリレー及び下りSRリレーの出力線の分岐線か又は予備の出力線からなる踏切器具箱内配線43が第3接続線として接続されるようになっている。
これらの接続端子51〜53は、例えばネジ止めやロック付きピンジャック等にて、接続確立後は長期に亘って安定な接続状態が維持されるようになっている。
【0052】
切替制御部55は、例えば下り終止Rリレーを主体としたリレー回路で具現化されており、踏切制御装置31から入力する既述の下りSRリレー及び警報Rリレーの接点とで構成されている。そして、切替制御部55の主体の下り終止Rリレーは、上り列車と下り列車が何れもそれぞれの踏切警報区間に在線していないとき、及び上り列車が上りの踏切警報区間に在線しているときには、無励磁(落下)状態であり、下り列車が下りの踏切警報区間に進入したときに踏切制御装置31からの下りSRリレー及び警報Rリレーの無励磁(落下)接点が構成することにより励磁(動作)状態となる。下り列車が下りの踏切制御区間を進出した時点で警報Rが励磁(動作)状態となることにより、回路が絶たれ下り終止Rリレーが無励磁(落下)状態となる。
【0053】
なお、詳細は割愛するが、踏切制御装置31が電子踏切制御装置の場合と、踏切制御論理をリレーロジックで構成した場合とでは、下りSRリレーが励磁(動作)するタイミングが異なり、電子踏切装置の場合には下り終止Rリレーを用いた回路は必須ではなく、下りSRリレーの出力を入力して直ちに又は必要であれば信号波形整形等を行ってからそれを切替回路部56の制御に供することで切替制御部55の機能が実現されるが、電子踏切制御装置の場合と、踏切制御論理をリレーロジックで構成した場合の両方に対応できるようにするために、ここでは下り終止Rリレーを用いた回路を標準として設けた。なお、下りSRリレーは既述したように列車運転方向が下りの場合に踏切制御装置31から無励磁(落下)に出力されるリレーで、下り終止Rリレーは次に述べるように切替回路部56の切替状態を規定するものなので、切替制御部55は、踏切制御装置31の列車運転方向指示に応じて切替回路部56に第1切替状態と第2切替状態とのうち何れか一方の切替状態を択一的にとらせるものとなっている。
【0054】
切替回路部56は、これも切替制御部55と同様にリレー回路で具現化されていて、発振有無検出部25と第1接続端子51とを接続する上述の制御子内配線AA,BBと、制御子内配線AA,BBから分岐して第2接続端子52に接続された分岐配線aa,bbと、制御子内配線AA,BBのうち分岐配線aa,bbの分岐点より第1接続端子51に寄っている部分の配線に介挿して直列接続された下り終止Rリレーの無励磁(落下)接点と、分岐配線aa,bbに介挿して直列接続された下り終止Rリレーの励磁(動作)接点と、後者の分岐配線aa,bbに介挿して直列接続された可変容量部57(第2調整部)とを具えている。この例では可変容量部57が分岐配線aaにだけ接続されている。
【0055】
可変容量部57(第2調整部)は、分岐配線aa,bbの接続先の第2接続線A2,B2が長くなってそのインダクタンスが増加したことによる影響を相殺することができれば、単一のバリアブルコンデンサでも良く、複数のコンデンサの組み合わせ回路からなるものでも良いが、コンデンサの開放故障時のインピーダンスの変化を最小限に抑えるには、複数のコンデンサを並列に接続して回路を構成することが、稼動性の維持・向上につながる。更に並列接続の場合、例えば固定容量のコンデンサと可変容量のコンデンサとを接続して大容量の確保と容量値の安定と可変範囲の適度な限定とを図るのも良い。
【0056】
そして、このような切替回路部56は、下り終止Rリレーが励磁されていない第1切替状態では、発振有無検出部25の照査用発振信号の出力端子と第1接続端子51とを接続して、その先の第1接続線A1,B1及び上り終止点DDCの接続線取付箇所14へ照査用発振信号を送出させる一方、発振有無検出部25の照査用発振信号の出力端子と第2接続端子52とを切断して、その先の第2接続線A2,B2及び下り終止点BDCの接続線取付箇所15へは照査用発振信号を送出させないようになっている。
【0057】
また、切替回路部56は、下り終止Rリレーが励磁されている第2切替状態では、発振有無検出部25の照査用発振信号の出力端子と第1接続端子51とを切断して、その先の第1接続線A1,B1及び上り終止点DDCの接続線取付箇所14へは照査用発振信号を送出させない一方、発振有無検出部25の照査用発振信号の出力端子と第2接続端子52とを接続して、その先の第2接続線A2,B2及び下り終止点BDCの接続線取付箇所15へ照査用発振信号を送出させるようになっている。
【0058】
そのため、第1接続線A1,B1を介して上り終止点DDCで線路10に接続されるとともに第2接続線A2,B2を介して下り終止点BDCで線路10に接続された終止点用踏切制御子50は、列車運転方向指示に応じた切替回路部56の切替状態に依存して第1接続線A1,B1と第2接続線A2,B2とのうち何れか一方に対して択一的に接続が確立され延いては上り終止点DDCの接続線取付箇所14と下り終止点BDCの接続線取付箇所15とのうち何れか一方の所で線路10に対して照査用発振信号が送出されるようになっている。そして、このような接続線切替機能の付いた終止点用踏切制御子50は、上り列車到来時の第1切替状態では下り終止点BDCでの列車検知を行わないで上り終止点DDCで列車検知を行い、下り列車到来時の第2切替状態では上り終止点DDCでの列車検知を行わないで下り終止点BDCで列車検知を行うものとなっている。
【0059】
この実施例1の終止点用踏切制御子50を組み込んだ踏切保安装置40の設置手順を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が踏切保安装置40の配線接続状態を示し、(b)が終止点用踏切制御子50の配線接続状態を示している。
終止点用踏切制御子50だけでなくそれを含む踏切保安装置40を総て新設する場合や更新する場合は、構成について上述した通りに、各機器を設置して、機器間接続を行うとともに、各機器と線路10との接続も行う。
【0060】
これに対し、既存の踏切保安装置(図8(a)参照)について終止点用踏切制御子24(図7参照)を終止点用踏切制御子50(図1参照)で置き換える一部更新によって踏切保安装置40(図1(a)参照)を実現する場合は、上り終止点DDCで線路10に一端部が接続されている踏切器具箱内配線27の他端部を終止点用踏切制御子24から外して終止点用踏切制御子50の第1接続端子51に接続し直すとともに、一端部が踏切制御装置31に繋がっている終止R信号出力線の他端部を終止点用踏切制御子24から外して終止点用踏切制御子50の接続端子58に接続し直す。これにより、先ずは、終止点用踏切制御子50が終止点用踏切制御子24の役目を代行できるようになる。
【0061】
また、踏切保安装置が既に設置されている線路10に対し、第2接続線A2,B2の一端部を溶接にて接続する(図1(a)参照)。線路10における第2接続線A2,B2の接続線取付箇所15は、始動点用踏切制御子23の接続先の上り始動点CDCと踏切8との間であって、仮に終止点用踏切制御子22が設置されるとすればその接続先となる下り終止点BDCの設定箇所である(図8(b)参照)。第2接続線A2,B2の他端部は、踏切器具箱の配線端子盤28の空き端子に接続し(図1(b)参照)、更にその端子と踏切制御切替装置50の接続端子52とを踏切器具箱内配線42にて接続する。
【0062】
これにより、終止点用踏切制御子50が第2接続線A2,B2を介して下り終止点BDCの所で線路10に接続されるので、終止点用踏切制御子50が終止点用踏切制御子22の役目まで果たせるようになる。
さらに、両制御子22,24の役目を同時には果たせないので双方の役目を適切な時分割にて果たすために、踏切制御装置31の警報Rリレー及び下りSRリレー(下りの列車運転方向指示)を伝送する踏切器具箱内配線43(第3接続線)を第3接続端子53に接続する。これで、接続が完了するので、踏切制御切替装置50は踏切器具箱内に格納する。
【0063】
なお、第2接続線A2,B2の接続作業や踏切器具箱内配線42の接続作業は、踏切保安装置の動作を阻害しないので、列車運行の停止後に行えるのはもちろんのこと、列車運行の合間を縫って行うことも可能である。同時並行的に行っても良く、逆順で行っても良い。これに対し、終止点用踏切制御子24を外す作業や、それに接続されていた配線を終止点用踏切制御子50に接続し直す作業は、踏切保安装置の動作に影響するので、夜間など列車運行の停止を確認してから行う。また、終止点用踏切制御子24から終止点用踏切制御子50への配線接続変更作業と、第2接続線A2,B2及び踏切器具箱内配線42の配線接続追加作業についても、同時並行的に行っても良く、逆順で行っても良い。さらに、接続端子53への踏切器具箱内配線43の接続は後述の調整後まで遅らせても良い。
【0064】
この実施例1の終止点用踏切制御子50及びそれを組み込んだ踏切保安装置40について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図2は、(a)が踏切保安装置40に組み込んだ終止点用踏切制御子50の調整状況を示す概略図、(b)が上り列車到来時の踏切保安装置40および終止点用踏切制御子50の動作状態を示す概略図、(c)が下り列車到来時の踏切保安装置40および終止点用踏切制御子50の動作状態を示す概略図である。
【0065】
本格運用に先立って列車検知長の調整を行う必要があるが、終止点用踏切制御子50以外は従来装置なので従来通り行えば良い。終止点用踏切制御子50については(図2(a)参照)、終止点用踏切制御子50の筐体の接続端子51〜53のうち踏切制御装置31に対する接続端子53に模擬装置を仮接続し、この模擬装置を操作することで、接続端子53を介して終止点用踏切制御子50の切替制御部55に列車運転方向指示の模擬信号を与える。模擬装置は、警報Rの模擬信号を出すリレーと、下りSRの模擬信号を出すリレーと、それらのリレーの励磁状態を切り替える手動スイッチとを具えた簡便な調整治具で足りる。そして、それで、切替回路部56の切替状態を選択しながら終止点用踏切制御子50による列車検知の動作状態を調整する。
【0066】
具体的には、先に第1切替状態を選択して発振有無検出部25を制御子内配線AA,BB経由で接続線A1,B1に接続させ、この状態を維持しておいて、線路10の接続線取付箇所14の所でレール11,12を車軸模擬部材にて短絡させて開電路を一時的に閉じさせたり車軸模擬部材を外して開電路を開状態に戻したりしながら、上り終止点DDCで列車検知長が所要の約30mになっていることを確認する。第1接続線A1,B1が既に接続されていた上り終止点DDCでの列車検知長は、終止点用踏切制御子50を導入してもほとんど変化しないが、それでも調整したいときには、発振有無検出部25に内蔵されている調整器25aを利用して既存設備の調整と同様の操作を行って、照査用発振信号の振幅レベルを加減して、上り終止点DDCでの列車検知長を調整する。
【0067】
次に、再び模擬装置を操作して第2切替状態を選択させて発振有無検出部25を制御子内配線AA,BB及び分岐配線aa,bb経由で第2接続線A2,B2に接続させ、この状態を維持しておいて、線路10の接続線取付箇所15の所でレール11,12を車軸模擬部材にて短絡させて開電路を一時的に閉じさせたり車軸模擬部材を外して開電路を開状態に戻したりしながら、可変容量部57を操作してその容量を変えることで、照査用発振信号の振幅レベルを加減して、下り終止点BDCで列車検知長が所要の約30mになるようにする。こうして調整が済んだら、終止点用踏切制御子50から模擬装置を取り外し、その後は(図1参照)、踏切制御装置31の警報Rリレー及び下りSRリレーの出力を踏切器具箱内配線43にて終止点用踏切制御子50の接続端子53に接続する。
【0068】
終止点用踏切制御子50及び踏切保安装置40の調整が済んで列車運行が始まり、踏切保安装置40の設置された線路10を上り列車が終点側から踏切8に向かって走行して来て上り始動点CDCの列車検知長の区間に進入すると(図2(b)参照)、始動点用踏切制御子23が上り列車を検知して、始動点用踏切制御子23の始動Rリレーが無励磁になる。線路10が単線なので上り列車と同時には下り列車が来ないため、この時点では始動点用踏切制御子21も終止点用踏切制御子50も列車を検知せず、始動点用踏切制御子21の始動Rリレーは励磁状態を維持し、終止点用踏切制御子50の終止Rリレーは無励磁状態を維持する。
【0069】
そして、踏切制御装置31では、それらのリレー状態に基づいて上り列車到来の判定が出され、それに応じて上りSRリレーと警報Rリレーが無励磁になる。一方、下りSRリレーは励磁状態を維持する。この状態では、終止点用踏切制御子50の切替制御部55及び切替回路部56が第1切替状態のままなので、終止点用踏切制御子50の発振有無検出部25は、制御子内配線AA,BBと第1接続線A1,B1とを介して接続線取付箇所14に接続されている。この状態が維持されるので、上りの踏切制御区間は、上り始動点CDCから上り終止点DDCまでを占め、踏切8を区間内に収めたものとなる。
【0070】
また(図2(c)参照)、踏切保安装置40の設置された線路10を下り列車が起点側から踏切8に向かって走行して来て下り始動点ADCの列車検知長の区間に進入すると、始動点用踏切制御子21が下り列車を検知して、始動点用踏切制御子21の始動Rリレーが無励磁になる。線路10が単線なので下り列車と同時には上り列車が来ないため、この時点では始動点用踏切制御子23も終止点用踏切制御子50も列車を検知せず、始動点用踏切制御子23の始動Rリレーは励磁状態を維持し、終止点用踏切制御子50の終止Rリレーは無励磁状態を維持する。そして、踏切制御装置31では、それらのリレー状態に基づいて下り列車到来の判定が出され、それに応じて下りSRリレーと警報Rリレーが無励磁とされる。
【0071】
すると、それに応動して終止点用踏切制御子50の切替制御部55及び切替回路部56が第2切替状態になるため、終止点用踏切制御子50の発振有無検出部25は、上り終止点DDCの接続線取付箇所14から切り離されて、制御子内配線AA,BBの一部と分岐配線aa,bbと第2接続線A2,B2とを介して接続線取付箇所15に接続される。接続線取付箇所15が線路10のうち下り終止点BDCの所になっているうえ、そこを下り列車が通過し終えて踏切制御装置31が警報Rリレーを励磁するまで終止点用踏切制御子50が第2切替状態を維持するため、下りの踏切制御区間は、下り始動点ADCから下り終止点BDCまでを占め、やはり踏切8を区間内に収めたものとなる。
【0072】
このように、終止点用踏切制御子50を組み込んだ踏切保安装置40にあっては、上りの踏切制御区間ばかりか下りの踏切制御区間にも踏切8が属することから、既述した理想状態(図8(b)参照)と同様、上り列車であれ、下り列車であれ、列車速度の如何に拘わらず、列車が完全に踏切道を通過し終わったことを検知できるので、所期の目的が達成される。しかも、既述した理想構成(図8(b)参照)では終止点用に二台の踏切制御子22,24を設置するのに対し、終止点用踏切制御子50を採用した踏切保安装置40では、終止点用踏切制御子50を一台だけ設置すれば良い。新規な切替制御部55及び切替回路部56は、終止点用踏切制御子22,24の何れより簡素で安価なものである。
【実施例2】
【0073】
本発明の終止点用踏切制御子の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図3は、(a)が終止点用踏切制御子60の回路図、(b)が終止点用踏切制御子60の調整状況を示す図である。
【0074】
この終止点用踏切制御子60が上述した実施例1の終止点用踏切制御子50と相違するのは、第2接続線A2,B2の接続線取付箇所15(線路10に設定された下り終止点BDC)の列車検知長に係る可変容量部57(第2調整部)での調整を自動化する手段61〜66が追加されている点である。
すなわち、筐体に操作ピン挿通用の小孔61が貫通形成され、その直ぐ内側で操作ピンの届くところにスイッチ62が配設され、スイッチ62が操作されると自動調整を実行する自動調整回路63〜65と、小型モータや減速ギヤ等からなり可変容量部57を操作してその容量を増加または減少させる容量操作部66とが内蔵されている。
【0075】
自動調整回路63〜65は、レベル検出回路63とセレクタ64とマイクロプロセッサ65(MPU,調整制御手段)とを具えている。
レベル検出回路63は、例えば包絡線検波回路やローパスフィルタ等からなり、発振有無検出部25から出力された照査用発振信号を制御子内配線AA,BBから入力して照査用発振信号のレベルを検出し、そのレベル検出値をマイクロプロセッサ65に送出するようになっている。
【0076】
セレクタ64は、2入力1出力のものであるが、第3接続端子53と切替制御部55とを接続する制御子内配線に割り込む形で設けられていて、各入力端子も、出力端子も、警報Rと下りSRとを伝送するために、各端子組に2ライン以上が属している。そして、二組の入力端子のうち一方の入力端子が第3接続端子53に接続され、二組の入力端子のうち他方の入力端子がマイクロプロセッサ65の出力端子に接続され、一組の出力端子が切替制御部55に接続され、制御端子がマイクロプロセッサ65(MPU,調整制御手段)の出力端子に接続されている。
【0077】
マイクロプロセッサ65(MPU,調整制御手段)は、論理演算とデータ記憶ができれば安価なもので良いので、いわゆる1チップマイコンが使い易いが、マルチチップでも良く、フェールセーフコンピュータでも良く、シーケンサやプログラマブルロジックアレイ等で代替できる場合はそうしても良い。スイッチ62のオンオフ状態とレベル検出回路63のレベル検出値とを入力してセレクタ64と容量操作部66とを制御することができるよう、各部62,63,64,66と制御子内配線にて接続されている。
【0078】
そして、スイッチ62が操作されない常態すなわち標準的な動作状態では(図3(a)参照)、セレクタ64を標準の選択状態のままにして、踏切制御装置31から送られてきた警報R及び下りSRが第3接続端子53を介して切替制御部55に伝達されるようにするとともに、容量操作部66も標準の停止状態のままにして、可変容量部57の容量値(第2調整部の調整値)が変わることなく以前の値に維持されるような制御を行う。
【0079】
これに対し、列車検知長の調整のためにスイッチ62が操作されると(図3(b)参照)、マイクロプロセッサ65(調整制御手段)は、先ずセレクタ64を制御して選択状態を切り替えさせ、第3接続端子53経由の警報R及び下りSRでなくマイクロプロセッサ65の出力する模擬信号が切替制御部55に入力されるようにし、次に模擬信号にて切替制御部55を制御することにより警報R及び下りSR(列車運転方向指示)の如何に拘わらず切替回路部56に第1切替状態をとらせる。これにより、発振有無検出部25から送出された照査用発振信号が制御子内配線AA,BB及び第1接続線A1,B1を介して線路10の接続線取付箇所14に伝送される状態になるので、その状態が安定するのに十分な時間が経過した頃、マイクロプロセッサ65は、レベル検出回路63の検出値を取得し、それをメモリに調整済みレベル値として記憶保持しておくようになっている。
【0080】
それから、更に、マイクロプロセッサ65は、模擬信号にて切替制御部55を再び制御することにより、警報R及び下りSR(列車運転方向指示)の如何に拘わらず、切替回路部56に第2切替状態をとらせる。今度は、発振有無検出部25から送出された照査用発振信号が制御子内配線AA,BBの一部と分岐配線aa,bbと分岐配線aa,bbとを介して線路10の接続線取付箇所15に伝送される状態になるので、その状態が安定するのに十分な時間が経過した頃、マイクロプロセッサ65は、レベル検出回路63の検出値がメモリの調整済みレベル値に一致するように容量操作部66(第2調整部)を作動させるようになっている。
【0081】
具体的には、可変容量部57の容量が小さいために不一致のうちは可変容量部57の容量が増すように容量操作部66の動作制御を行い、可変容量部57の容量が大きいために不一致のうちは可変容量部57の容量が減るように容量操作部66の動作制御を行い、レベル検出回路63の検出値がメモリの調整済みレベル値に一致したら、容量操作部66を停止させて可変容量部57の容量を固定させるとともに、セレクタ64を制御して選択状態を元の標準に戻すよう切り替えさせて、切替制御部55が第3接続端子53経由の警報R及び下りSRを入力する常態すなわち標準的な動作状態に戻すようになっている。
【0082】
この場合、スイッチ62が操作されない常態では、自動調整回路63〜65も容量操作部66も他の回路25,26,55,56の動作に何ら影響を及ぼさないので、スイッチ62を操作して自動調整を行うときは別として、終止点用踏切制御子60は、上述した終止点用踏切制御子50と同様に設置され調整され使用され動作する。スイッチ62を操作して自動調整されるのは可変容量部57(第2調整部)だけであり、その自動調整は、調整器25a(第1調整部)の調整結果を可変容量部57(第2調整部)に転写する如き手法で行われるので、例えば実施例1の終止点用踏切制御子50について上述したような手動操作等にて調整器25aの調整が済んでから実行される。
【0083】
調整時には上述したように車軸模擬部材16が用いられるが、それについて付言すると、車軸模擬部材16は約0.5Ω程度の抵抗値を示してレール11とレール12とを一時的に短絡するものであるが(図3(b)参照)、上り終止点DDCの列車検知長を設定する調整器25aの調整に際しては、線路10における第1接続線A1,B1の接続線取付箇所14の両側に位置する列車検知長の両端のうち起点側の端に設定したい所に、一個の車軸模擬部材16が置かれる。また、下り終止点BDCの列車検知長を設定する可変容量部57の調整に際しては、線路10における第2接続線A2,B2の接続線取付箇所15の両側に位置する列車検知長の両端のうち終点側の端に設定したい所に、もう一個の車軸模擬部材16が置かれる。
【0084】
そして、上述したような手動操作等にて調整器25aの調整が済んで、切替回路部56が第1切替状態になっているたときの照査用発振信号が適切なレベルになる状態が出来上がったら、後の調整は実施例1の終止点用踏切制御子50について上述したのと異なり、手動で行うのは、小孔61から操作ピンを挿し込んでスイッチ62を操作することだけである。そうすると、後は可変容量部57の調整が自動で行われる。
すなわち、先ず、セレクタ64の選択状態が切り替わって切替制御部55がマイクロプロセッサ65の制御下に入り、マイクロプロセッサ65の制御によって切替回路部56が第1切替状態になり、その状態で調整済みの照査用発振信号のレベルがレベル検出回路63によって検出されてからマイクロプロセッサ65によってメモリに一時記憶される。
【0085】
それから、マイクロプロセッサ65の制御によって切替回路部56が第2切替状態になり、その状態では未だ調整されていなかった照査用発振信号のレベルが、レベル検出回路63によって検出されるとともに、マイクロプロセッサ65に入力されて容量操作部66による可変容量部57の操作に供給される。これにより、切替回路部56が第2切替状態になって、照査用発振信号が分岐配線aa,bb及び第2接続線A2,B2を介して線路10の接続線取付箇所15に送出される状態でも、照査用発振信号が適切なレベルになる状態が出来上がる。これで可変容量部57の調整が済む。
【0086】
後は、容量操作部66が動作停止して可変容量部57の容量が固定されるとともに、セレクタ64の選択状態が切り替わって元の標準状態に戻り、切替制御部55が第3接続端子53経由の警報R及び下りSRを入力してそれに応動する常態に戻る。
こうして、終止点用踏切制御子60にあっては、分岐配線aa,bbにて伝送される照査用発振信号のレベルを加減調整する可変容量部57の調整が自動で行われる。
しかも、調整器25a(第1調整部)の加減調整が済んでいれば、模擬装置を用いなくても、踏切器具箱内配線43を第3接続端子53から外さなくても、可変容量部57(第2調整部)の加減調整を行うことができる。
【実施例3】
【0087】
本発明の終止点用踏切制御子の実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図4は、(a)が終止点用踏切制御子70の回路図、(b)が調整治具80を用いて終止点用踏切制御子70を調整している状況を示す図である。
【0088】
この終止点用踏切制御子70が上述した実施例1の終止点用踏切制御子50と相違するのは、可変容量部71(第1調整部)と係合部74と係合部75とが追加されている点である。また、終止点用踏切制御子70が上述した実施例2の終止点用踏切制御子60と相違するのは、可変容量部57(第2調整部)での調整を自動化する手段61〜66が削除されている点と、その代わりに可変容量部71(第1調整部)と係合部74と係合部75とが追加されている点である。さらに、筐体外面のうち係合部74,75の取り付けられている部位が蓋76で覆われている点と、調整時には、調整治具80が一時的に装着されて、調整治具80の制御下で自動調整が行われるようになった点でも、この終止点用踏切制御子70は終止点用踏切制御子50とも終止点用踏切制御子60とも相違している。
【0089】
先ず、終止点用踏切制御子70の新規な部分を説明すると、可変容量部71は、上述した可変容量部57と同じく筐体に内蔵されているが、介挿先が分岐配線aa,bbでなく制御子内配線AA,BBになっており、特に制御子内配線AA,BBのうち分岐配線aa,bbの分岐点と第1接続端子51との間の部分に介挿されている。この例では可変容量部71が制御子内配線AA,BBのうち制御子内配線AAにだけ接続されている。可変容量部71も、可変容量部57と同様、制御子内配線AA,BBの接続先の第1接続線A1,B1のインダクタンスの増減の影響を相殺することができれば、単一のバリアブルコンデンサでも良く、複数のコンデンサを組み合わせた回路からなるものでも良い。
【0090】
この可変容量部71は、調整器25aと同様に制御子内配線AA,BBにて伝送される照査用発振信号のレベルを加減調整する第1調整部として機能するものであるが、調整器25aは分岐点より上流に位置しているため制御子内配線AA,BBにて伝送される照査用発振信号のレベルだけでなく分岐配線aa,bbにて伝送される照査用発振信号のレベルまでも一緒に加減してしまうので、そのような連立性の無い所である分岐点より下流に設けられていて、制御子内配線AA,BBと第1接続端子51と第1接続線A1,B1にて線路10の接続線取付箇所14まで伝送される照査用発振信号のレベルだけを分岐配線aa,bbの照査用発振信号のレベルから独立して調整しうるものとなっている。
【0091】
係合部74,75は、何れも、例えばボスや六角ボルトのような着脱式の受動部材であり、可変容量部71,57に付設して筐体に内蔵されているが、受動部・被駆動部だけは筐体外面に露出しており、外部から例えばスプライン軸や六角レンチのような着脱式の駆動部材にて例えば回転駆動されると、その運動を内部の可変容量部71,57に伝達する伝道部材でもある。係合部74は駆動に応じて可変容量部71に容量を加減させ、係合部75は駆動に応じて可変容量部57に容量を加減させるようになっている。
蓋76は、係合部74,75の保護用のものであり、開閉式か着脱式になっている。
【0092】
調整治具80は、可変容量部71(第1調整部)での調整に加えて可変容量部57(第2調整部)での調整も自動化する手段81〜83を別体に纏めた着脱式のものであり、調整時だけ、調整対象の終止点用踏切制御子70から蓋76を外して又は蓋76を開けて、そこに調整治具80を一時装着することで、調整治具として動作し使用されるので、複数・多数の終止点用踏切制御子70に共用しうるものとなっている。上記の自動化手段81〜83として容量操作部81と容量操作部82とマイクロプロセッサ83(MPU)とが設けられており、図示しない位置決めピンで位置合わせ等をしながら調整治具80を終止点用踏切制御子70に仮装着して図示しないフック等で一時的に固定させると、終止点用踏切制御子70と調整治具80とが協動して自動調整を行えるよう、係合や接続が随伴して確立するようになっている。
【0093】
具体的には、小型モータや減速ギヤ等に加えて着脱式の駆動部材を具備した容量操作部82とそれに対応した着脱式の受動部材を具備した係合部75とが係合して、上述した容量操作部66のようにマイクロプロセッサ83の制御に従って可変容量部57を操作することで可変容量部57の容量を増加または減少させることができる状態が整うとともに、やはり小型モータや減速ギヤ等に加えて着脱式の駆動部材を具備した容量操作部81とそれに対応した着脱式の受動部材を具備した係合部74とが係合して、上述の容量操作部66のようにマイクロプロセッサ83の制御に従って可変容量部71を操作することで可変容量部71の容量を増加または減少させることができる状態が整うようになっている。
【0094】
また、それに加えて更に、調整治具80では、調整治具80の内部配線のうちマイクロプロセッサ83の信号入力線になっている配線の露出端部が終止点用踏切制御子70の接続端子58に一時接続されて、リレー駆動部26の終止Rリレーの出力が接続端子58を介してマイクロプロセッサ83に伝達されるとともに、調整治具80の内部配線のうちマイクロプロセッサ83の信号出力線になっている配線の露出端部が終止点用踏切制御子70の第3接続端子53に一時接続されて、マイクロプロセッサ83から送出された模擬信号(警報R及び下りSR相当)が第3接続端子53を介して切替制御部55に伝達される状態が整うようにもなっている。
【0095】
マイクロプロセッサ83(MPU,調整制御手段)は、論理演算とデータ記憶ができれば上述したマイクロプロセッサ65と同様なハードウェアで良いが、ソフトウェアは以下のようになっている。すなわち、調整治具80が終止点用踏切制御子70に対して上述のように一時装着されていることと、上述した車軸模擬部材16が線路10の接続線取付箇所14及び接続線取付箇所15の双方の列車検知長の外側限界位置に仮置きされていることを前提として、マイクロプロセッサ83は、容量操作部81を制御して可変容量部71の容量を加減調整することと、容量操作部82を制御して可変容量部57の容量を加減調整することを行うようになっている。両加減調整は独立しているので先後は問わない。
【0096】
容量操作部81を制御して可変容量部71の容量を加減調整する手順を詳述すると、マイクロプロセッサ83(調整制御手段)は、警報R及び下りSRの模擬信号にて切替制御部55を制御することにより本物の警報R及び下りSR(列車運転方向指示)の如何に拘わらず切替回路部56に第1切替状態をとらせる。これにより、発振有無検出部25から送出された照査用発振信号が制御子内配線AA,BB及び第1接続線A1,B1を介して線路10の接続線取付箇所14に伝送される状態になる。また、マイクロプロセッサ83は容量操作部81を制御して可変容量部71(第1調整部)の容量を一旦は最小か最大の何れかにさせ、その状態が安定するのに十分な時間が経過するのを待つ。
【0097】
そして、状態が安定した頃、マイクロプロセッサ83は、容量操作部81を制御して可変容量部71の容量を最小から始めたときには最大へ向けて最大から始めたときには最小へ向けてゆっくり単調に変化させることにより、照査用発振信号のレベルを単調に漸増または漸減させるとともに、そうしながらリレー駆動部26の終止Rリレーの励磁状態を監視し続ける。そして、終止Rリレーの励磁状態が励磁から無励磁へ又は無励磁から励磁へと変化したらその時点で容量操作部81を介して可変容量部71の容量を変化させるのを止め可変容量部71の容量を固定させる。そのような制御を可変容量部71の容量の加減調整時に行うようになっているのがマイクロプロセッサ83である。
【0098】
また、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、マイクロプロセッサ83は、可変容量部57の容量の加減調整も同様に行うものであり、列車運転方向指示の如何に拘わらず切替制御部55を介して切替回路部56に第2切替状態をとらせたうえで、容量操作部82を介して可変容量部57(第2調整部)を作動させて、分岐配線aa,bbを伝送される照査用発振信号のレベルを単調に漸増または漸減させながら発振有無検出部25の終止Rリレーの励磁状態を監視し、その励磁状態が変化したら可変容量部57(第2調整部)の作動を停止させるようになっている。
【0099】
この場合、終止点用踏切制御子70は、調整治具80が装着されない常態では、係合部74も、係合部75も、蓋76で覆われて、外部から不所望に操作されることが無いように保護されていることから、可変容量部71と可変容量部57の容量が固定されるので、上述した終止点用踏切制御子50,60の常態時と同様に動作し使用される。また、常態になる前に、切替回路部56の切替状態を第1切替状態と第2切替状態に切り替えながら各状態で照査用発振信号のレベルの調整が行われることも、終止点用踏切制御子50,60と同様であるが、何れの調整も調整治具80を用いて自動で行われることが異なる。
【0100】
すなわち、終止点用踏切制御子70では、可変容量部57(第2調整部)だけでなく可変容量部71(第1調整部)も自動調整されるうえ、その順番は何れが先であっても良い。また、第1調整部として可変容量部71が設けられたことから、やはり第1調整部として機能する調整器25aは、必須でなくなっているので、製造時に設計値に設定しておく等のことで足り、現場設置時には調整していけない訳ではないが調整するまでもないものとなっている。さらに、調整前には、上述した調整前準備と同じように二つの車軸模擬部材16が線路10の上に仮置きされ、線路10における第1接続線A1,B1の接続線取付箇所14の両側に位置する上り終止点DDCの列車検知長の両端のうち起点側の端に設定したい所と、線路10における第2接続線A2,B2の接続線取付箇所15の両側に位置する下り終止点BDCの列車検知長の両端のうち終点側の端に設定したい所で、レール11,12が約0.5Ωの車軸模擬部材16によって短絡される。
【0101】
そのような準備が済むとともに、蓋76に代えて調整治具80が終止点用踏切制御子70に一時装着されると、切替制御部55ひいては切替回路部56の状態切替がマイクロプロセッサ83の制御下に入るとともに、可変容量部71と可変容量部57も容量操作部81,82や係合部74,75を介してマイクロプロセッサ83の制御下に入り、後はマイクロプロセッサ83の制御に従って自動で照査用発振信号のレベルが調整される。
その調整時には、マイクロプロセッサ83の制御によって切替回路部56が第1,第2切替状態の何れかに切り替えられるが、ここでは第1切替状態が先行するとする。
【0102】
切替回路部56が第1切替状態になると、後は制御主体の明記を省くがやはりマイクロプロセッサ83の制御によって、可変容量部71の容量が最小か最大の何れかになるが、ここでは最小になるとする。それから、一旦は最小になった可変容量部71の容量が、後戻りすることなく、最大へ向けてゆっくり増加するが、終止Rリレーの励磁状態が変化すると、その時点で可変容量部71の容量が固定される。こうして、発振有無検出部25から送出されて制御子内配線AA,BB及び第1接続線A1,B1を介して線路10の接続線取付箇所14に伝送される照査用発振信号のレベルが自動調整されて、上り終止点DDCの列車検知長が適正な長さに設定される。
【0103】
次に、切替回路部56が第2切替状態に切り替わり、今度は可変容量部57の容量が最小か最大の何れかになるが、ここでも最小になるとする。それから、やはり、一旦は最小になった可変容量部57の容量が、後戻りすることなく、最大へ向けてゆっくり増加するが、終止Rリレーの励磁状態が変化すると、その時点で可変容量部57の容量が固定される。こうして、発振有無検出部25から送出されて制御子内配線AA,BBの一部と分岐配線aa,bbと第2接続線A2,B2とを介して線路10の接続線取付箇所15に伝送される照査用発振信号のレベルが自動調整されて、下り終止点BDCの列車検知長が適正な長さに設定される。
【0104】
これで、上り終止点DDCの列車検知長に不所望な変動を招く第1接続線A1,B1の長さ等の影響を解消するために可変容量部71(第1調整部)で行われる照査用発振信号レベルの加減調整と、下り終止点BDCの列車検知長に不所望な変動を招く第2接続線A2,B2の長さ等の影響を解消するために可変容量部57(第2調整部)で行われる照査用発振信号レベルの加減調整が、何れも完了するので、後は、調整治具80が終止点用踏切制御子70から外され、終止点用踏切制御子70の蓋76が閉められる。
こうして、終止点用踏切制御子70は、迅速かつ的確に調整が済み、常態での使用に適うものとなる。
【実施例4】
【0105】
本発明の終止点用踏切制御子の実施例4について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図5は、(a)が終止点用踏切制御子90の回路図、(b)が調整治具100を用いて終止点用踏切制御子90を調整している状況を示す図である。
【0106】
この終止点用踏切制御子90が上述した実施例3の終止点用踏切制御子70と相違するのは、筐体の内外を貫く接続端子91,92が蓋76のカバー範囲内に設けられている点と、制御子内配線AA,BBのうち分岐配線aa,bbの分岐点と発振有無検出部25との間に属する配線部分から分岐した制御子内配線が接続端子91,92に接続されている点と、可変容量部71,57の容量調整が調整治具80でなく調整治具80を改造した調整治具100で行われるようになっている点である。
また、調整治具100が上述した調整治具80と相違するのは、上述したレベル検出回路63が追加されている点と、マイクロプロセッサ83に代わるマイクロプロセッサ101がレベル検出回路63のレベル検出値を入力するように改造されている点である。
【0107】
レベル検出回路63は、調整治具100が終止点用踏切制御子90に一時装着されると、接続端子91,92を介して制御子内配線AA,BBから照査用発振信号を入力してそのレベル検出値をマイクロプロセッサ101に送出するようになっている。
マイクロプロセッサ101は、マイクロプロセッサ83と同じ遣り方で先に可変容量部71の容量調整を実行し、その後、マイクロプロセッサ65と同じ遣り方で可変容量部57の容量調整を実行するようになっている。なお、マイクロプロセッサ83,65相当の遣り方の先後が維持されていれば、可変容量部57,71は独立して調整できるので、可変容量部57と可変容量部71の調整順序を入れ替えても良い。
【0108】
これにより、調整制御手段としてのマイクロプロセッサ101は、可変容量部71(第1調整部)および可変容量部57(第2調整部)のうち何れか一方71についてリレー駆動部26の終止Rリレーの励磁状態の変化に基づく調整が済んだらレベル検出回路63の検出値を取得し、それを調整済みレベル値として記憶保持しておき、それから列車運転方向指示の如何に拘わらず切替回路部56に第1切替状態および第2切替状態のうちリレー駆動部26の終止Rリレーの励磁状態の変化に基づく調整のときの切替状態(第1切替状態)と異なる切替状態(第2切替状態)をとらせたうえでレベル検出回路63の検出値が一時記憶の調整済みレベル値に一致するように可変容量部71(第1調整部)および可変容量部57(第2調整部)のうち何れか他方57を作動させるものとなっている。
【0109】
この場合、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、線路10における接続線取付箇所14の所の上り終止点DDCの列車検知長を適正値に設定するために行う可変容量部71(第1調整部)の容量の加減調整は、実施例3の終止点用踏切制御子70と調整治具80との協動について上述したのと同様にして自動実行される。また、線路10における接続線取付箇所15の所の下り終止点BDCの列車検知長を適正値に設定するために行う可変容量部57(第2調整部)の容量の加減調整は、実施例2の終止点用踏切制御子60の動作について上述したのと同様にしてやはり自動実行される。そのため、終止点用踏切制御子90も、迅速かつ的確に調整が済み、速やかに常態での使用に適うものとなる。
【0110】
[その他]
上記実施例では、可変容量部57(第2調整部)や可変容量部71(第1調整部)が機械的操作によって加減調整されるようになっていたが、第1,第2調整部は、オペアンプ等を用いて照査用発振信号を増幅か減衰する電子回路・電気回路で具体化しても良く、その場合、増幅率等の調整結果値が不揮発性メモリ等に記憶保持されることになるので、容量操作部66,81,82がメモリアクセスの電子回路・電気回路で具体化される。
【0111】
上記実施例では、下り終止点BDCには終止点用踏切制御子が接続されておらず、上り終止点DDCが共用終止点とされて、そこの接続線取付箇所14に第1接続線A1,B1を介して終止点用踏切制御子24が接続されている踏切保安装置を更新して踏切保安装置40に改良する場合を詳述したが、上り終止点DDCには終止点用踏切制御子が接続されておらず、下り終止点BDCが共用終止点とされて、そこの接続線取付箇所15に接続線A2,B2を介して終止点用踏切制御子が接続されている踏切保安装置を更新して改良する場合も、接続線取付箇所14,15を入れ替えれば、ほぼ同様に行うことができる。
【0112】
上記実施例では、可変容量部57が、配線aa側にだけ設けられて、配線bb側には設けられていなかったが、可変容量部57は、配線aa側でなく配線bb側にだけ設けられていても良く、配線aa側と配線bb側との双方に設けられていても良い。コモンモードの雷サージに対する耐力を高めるためには、分岐配線aa,bbの両方に同じ容量のコンデンサーを介挿し回線を平衡させるのがベターである。
可変容量部71も、同様であり、上記実施例では、可変容量部71が、配線AA側にだけ設けられて、配線BB側には設けられていなかったが、可変容量部71は、配線AA側でなく配線BB側にだけ設けられていても良く、配線AA側と配線BB側との双方に設けられていても良い。
【0113】
上記実施例では、第1接続線A1,B1や第2接続線A2,B2を終止点用踏切制御子50の筐体の接続端子51や接続端子52に接続するに際して、第1接続線A1,B1や第2接続線A2,B2を配線端子盤28の端子に一旦接続しておき、その配線端子盤28から終止点用踏切制御子50までは踏切器具箱内配線27,42で延長するようになっていたが、踏切器具箱内への収納は必須でないので、また踏切器具箱内に収納する場合でも配線端子盤28の使用は必須でないので、第1接続線A1,B1や第2接続線A2,B2は接続端子51や接続端子52に直接接続しても良い。
【0114】
上記実施例では、踏切制御装置31の列車運転方向指示を終止点用踏切制御子50,60,70,90に取り込む際に下りSRリレーの接点出力を取り込むようになっていたが、踏切制御装置31の列車運転方向指示の終止点用踏切制御子50等への取り込みは、上りSRリレーの接点出力を取り込むことで行うようにしても良い。
上記実施例では、踏切8が第1種でそこに踏切遮断機33が設置されていたが、本発明の実施に踏切遮断機33は必須でないので、踏切8が第3種の場合は踏切遮断機33を省いても良い。
【符号の説明】
【0115】
8…踏切、10…線路、11,12…レール、
14,15…接続線取付箇所、16…車軸模擬部材、
21…始動点用踏切制御子(閉電路形踏切制御子)、
22…終止点用踏切制御子(開電路形踏切制御子)、
23…始動点用踏切制御子(閉電路形踏切制御子)、
24…終止点用踏切制御子(開電路形踏切制御子)、
25…発振有無検出部(電路開閉検出部)、25a…調整器(第1調整部)、
26…リレー駆動部、27…踏切器具箱内配線、28…配線端子盤、
31…踏切制御装置(列車方向判別手段)、32…警報灯、33…踏切遮断機、
40…踏切保安装置、
42…踏切器具箱内配線、43…踏切器具箱内配線(第3接続線)、
50…終止点用踏切制御子(接続線切替機能付き開電路形踏切制御子)、
51…第1接続端子、52…第2接続端子、53…第3接続端子、
55…切替制御部、56…切替回路部、
57…可変容量部(第2調整部)、58…接続端子、
60…終止点用踏切制御子(接続線切替機能付き開電路形踏切制御子)、
61…小孔、62…スイッチ(SW)、63…レベル検出回路、
64…セレクタ、65…マイクロプロセッサ(MPU)、66…容量操作部、
70…終止点用踏切制御子(接続線切替機能付き開電路形踏切制御子)、
71…可変容量部(第1調整部)、74,75…係合部、76…蓋、
80…調整治具、81,82…容量操作部、83…マイクロプロセッサ(MPU)、
90…終止点用踏切制御子(接続線切替機能付き開電路形踏切制御子)、
91,92…接続端子、100…調整治具、101…マイクロプロセッサ(MPU)、
AA,BB…制御子内配線、aa,bb…分岐配線、
A1,B1…接続線(第1接続線)、A2,B2…接続線(第2接続線)、
ADC…下り始動点、BDC…下り終止点、CDC…上り始動点、DDC…上り終止点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の単線区間の線路に設けられた踏切の両側のうち何れか一方で前記線路に第1接続線を介して外部接続するための第1接続端子と、前記第1接続端子に接続された制御子内配線を介して照査用発振信号の送出を試行して前記照査用発振信号の一巡伝送の状態を検出する発振有無検出部と、前記照査用発振信号の一巡伝送の検出の有無に応じて選択的に出力リレーを励磁するリレー駆動部とを備えた開電路形の終止点用踏切制御子において、前記踏切の両側のうち何れか他方で前記線路に第2接続線を介して外部接続するための第2接続端子と、前記線路を走行して前記踏切に接近して来た列車の上り下りを判別する列車方向判別手段から送出された列車運転方向指示を伝える第3接続線を外部接続するための第3接続端子と、前記制御子内配線から分岐して前記第2接続端子に接続された分岐配線および前記制御子内配線に割り込む形で介挿接続されていて第1切替状態では前記照査用発振信号の送出先を前記第1接続端子に切り替えるが第2切替状態では前記照査用発振信号の送出先を前記第2接続端子に切り替える切替回路部と、前記列車運転方向指示に応じて前記切替回路部に前記第1切替状態と前記第2切替状態とのうち何れか一方の切替状態をとらせる切替制御部とを設けたことを特徴とする終止点用踏切制御子。
【請求項2】
前記発振有無検出部または前記制御子内配線に配設されていて前記制御子内配線にて伝送される前記照査用発振信号のレベルを加減調整する第1調整部と、前記分岐配線に配設されていて前記分岐配線にて伝送される前記照査用発振信号のレベルを加減調整する第2調整部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の終止点用踏切制御子。
【請求項3】
前記発振有無検出部から出力された前記照査用発振信号のレベルを検出するレベル検出回路と、前記列車運転方向指示の如何に拘わらず前記切替回路部に前記第1切替状態をとらせたうえで前記レベル検出回路の検出値を取得しそれを調整済みレベル値として記憶保持しておきそれから前記切替回路部に前記第2切替状態をとらせたうえで前記レベル検出回路の検出値が前記調整済みレベル値に一致するように前記第2調整部を作動させる調整制御手段とを備えたことを特徴とする請求項2記載の終止点用踏切制御子。
【請求項4】
前記列車運転方向指示の如何に拘わらず前記切替回路部に前記第1切替状態をとらせたうえで前記第1調整部を作動させて前記照査用発振信号のレベルを単調に漸増または漸減させながら前記リレー駆動部の励磁状態を監視しその励磁状態が変化したら前記第1調整部の作動を停止させる調整制御手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の終止点用踏切制御子。
【請求項5】
前記列車運転方向指示の如何に拘わらず前記切替回路部に前記第2切替状態をとらせたうえで前記第2調整部を作動させて前記照査用発振信号のレベルを単調に漸増または漸減させながら前記リレー駆動部の励磁状態を監視しその励磁状態が変化したら前記第2調整部の作動を停止させる調整制御手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の終止点用踏切制御子。
【請求項6】
前記発振有無検出部から出力された前記照査用発振信号のレベルを検出するレベル検出回路を備え、前記調整制御手段が、前記第1調整部および前記第2調整部のうち何れか一方について前記リレー駆動部の励磁状態の変化に基づく調整が済んだら前記レベル検出回路の検出値を取得し、それを調整済みレベル値として記憶保持しておき、それから前記列車運転方向指示の如何に拘わらず前記切替回路部に前記第1切替状態および前記第2切替状態のうち前記リレー駆動部の励磁状態の変化に基づく調整のときの切替状態と異なる切替状態をとらせたうえで前記レベル検出回路の検出値が前記調整済みレベル値に一致するように前記第1調整部および前記第2調整部のうち何れか他方を作動させるようになっていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載された終止点用踏切制御子。
【請求項7】
前記調整制御手段が又は前記調整制御手段および前記レベル検出回路が、前記発振有無検出部と前記リレー駆動部と前記切替回路部と前記切替制御部とを内蔵している筐体とは別体の調整治具に納められていることを特徴とする請求項3乃至請求項6の何れか一項に記載された終止点用踏切制御子。
【請求項8】
請求項4又は請求項5に記載された終止点用踏切制御子の調整方法であって、前記線路における前記第1接続線および前記第2接続線の接続部位が属する列車検知長の端のところで前記線路が列車の車軸で短絡された状態を実際に又は模擬的に現出させてから、前記調整制御手段を作動させることにより、前記第1接続線を経由する照査用発振信号と前記第2接続線を経由する照査用発振信号とのレベルを整合させることを特徴とする終止点用踏切制御子の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−78963(P2013−78963A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218670(P2011−218670)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000207470)大同信号株式会社 (83)
【Fターム(参考)】