説明

組成物

i)表面コーティング材料、ii)顔料、およびiii)ナタマイシンを含む塗料組成物が提供される。一つの実施形態において、本発明は、i)表面コーティング材料、ii)顔料、およびiii)ナタマイシンを含む塗料組成物で表面をコーティングするステップを含む、表面上の微生物の増殖を防止する方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、塗料組成物の成分をナタマイシンと接触させるステップを含む、塗料組成物における微生物の増殖を防止する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、その製造方法、およびその製造における抗菌剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に論じられているように、多くの様々な環境において、家庭用塗料における抗真菌剤、淡水用殺藻剤、ならびに海水、植物および動物に曝される海洋構造物のための防汚剤などの殺生物剤が必要とされている。公知のように、うどん粉病または真菌は、家庭用塗料等で増殖することができ、栄養物として塗料媒体、またはいくつかの場合、栄養物として木などの下層基材を利用する。このことは、明白な理由で塗装表面の損傷および/または塗装表面の外観の劣化を引き起こす恐れがある。殺生物剤は塗料に取り込むことができ、真菌の菌糸および子実体が塗膜に接触または浸透し、したがって膜中の殺生物剤と密接する場合、その真菌は死滅する。
【0003】
しかし、かかる有機殺生物剤の使用の環境作用については懸念が高まっている。例えば、広く使用されている従来の殺生物剤であるトリブチル酸化スズは、中程度から高度の急性内分泌撹乱化学物質であり、これはパシフィックオイスターおよびヨーロッパチヂミボラの生殖障害および個体群減少などの悪影響を有することが示されている。さらに、さらなる環境上の懸念が、塗料における溶媒濃度を低減する動きに至っている。
【0004】
塗料の配合に関して高まりつつある環境上の懸念に対処するために、該産業は全体として、溶媒濃度がかなり低減された水性塗料に移行しつつある。これらの塗料は、それらすべてが塗料の損傷をもたらす真菌、藻類、および細菌の増殖に対して、はるかに高い許容状態にある。微生物汚染および増殖の結果として製造直後に高い損傷率を伴う塗料の劣化および損傷は、塗料業界では主要課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5071479号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、塗料における微生物の増殖の問題に対処する一助になると同時に、当技術分野で一般に使用されている殺生物剤の環境上の悪影響をもたらさない解決策を提供する。したがって本発明は、塗料組成物、塗料組成物の製造方法、および塗料組成物の製造における特定の抗菌剤の使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、i)表面コーティング材料、ii)顔料、およびiii)ナタマイシンを含む塗料組成物を提供する。
【0008】
さらなる一態様では、本発明は、i)表面コーティング材料、ii)顔料、およびiii)ナタマイシンを接触させるステップを含む、塗料組成物の調製方法を提供する。
【0009】
さらなる一態様では、本発明は、i)表面コーティング材料、ii)顔料、およびiii)ナタマイシンを含む塗料組成物で表面をコーティングするステップを含む、表面上の微生物の増殖を防止する方法を提供する。
【0010】
さらなる一態様では、本発明は、塗料組成物の成分をナタマイシンと接触させるステップを含む、塗料組成物における微生物の増殖を防止する方法を提供する。
【0011】
さらなる一態様では、本発明は、塗料組成物に抗菌作用をもたらすためのナタマイシンの使用を提供する。好ましくは、塗料組成物は、i)表面コーティング材料、ii)顔料、およびiii)ナタマイシンを含む。
【0012】
本発明の利点は、処理される表面に対して抗菌作用をもたらすと同時に、環境に潜在的に有害な抗菌性材料の必要を低減し、または完全にそれを回避する塗料組成物を提供し得ることである。本発明は、食品として安全な抗菌性材料が提供される系を提供する。結果として該塗料は、毒性に関して高い安全性レベルが必要とされる場合に、例えば子どもが利用できる物体への適用に使用することができる。
【0013】
本発明のまたさらなる一利点または別の利点は、保存における抗菌性増殖の抑制に対する保護に関して、保護材料を使用して、または環境に有害なまたは有毒な保護材料の使用を低減してもたらされる塗料組成物を提供し得ることである。本発明の塗料組成物のナタマイシン抗菌剤は、食品として安全であり、したがって本発明は、従来技術分野の系で保存されるものよりも毒性が低い塗料を提供することができる。さらに、塗料の他の成分の中では、それらが食品として安全であるようなものが選択され、それ自体食品として安全な塗料組成物が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
容易に参照できるように、ここで本発明のこれらの態様およびさらなる態様を、適切な各部分の見出しの下に論じる。しかし各部分における教示は、特定の各部分に必ずしも限定されるものではない。
【0015】
ナタマイシン
ここに論じられる通り、本発明の塗料組成物はナタマイシンを含む。ナタマイシンは、細菌Streptomyces natalensisの発酵によって生成されるポリエンマクロライド系の天然抗真菌剤である。ナタマイシン(以前はピマリシンとして公知)は、非常に広範な一般的な食品の汚染酵母およびカビに対して極めて有効で選択的な作用機序を有しており、ほとんどの株は、1〜15ppmの濃度のナタマイシンによって阻害される。
【0016】
ナタマイシンは、特にチーズおよび乾燥発酵ソーセージの表面処理に、食品保存剤として受け入れられており、世界的に使用されている。ナタマイシンは、食品保存剤として、広い活性スペクトル、低濃度での有効性、抵抗性の欠如、および広いpH範囲にわたる活性を含むいくつかの利点を含む。
【0017】
ナタマイシンの一般的な説明および現在のその使用は、Encyclopedia of Food Sciences and Nutrition.Eds.B.Caballero、L.Trugo、およびP.Finglas、4109〜4115頁、Elsevier Science LtdのThomas,L.V.およびDelves−Broughton,J.、2003年、Natamycinに見ることができる。
【0018】
本発明において使用するためのナタマイシンは、任意の適切な方法に従って生成することができる。例えばナタマイシンは、前述のように細菌Streptomyces natalensisの発酵によって調製することができる。一代替としてのナタマイシンは、ナタマイシンを発現するように改変された有機体から調製することができる。
【0019】
ナタマイシンは、デンマーク、Danisco A/SからNatamax(登録商標)として利用可能である。
【0020】
ナタマイシンは、所望の効果を実現する任意の適切な量で存在することができる。
【0021】
一態様では、ナタマイシンは、塗料組成物に抗真菌効果(殺真菌効果または静真菌効果など)をもたらす量で存在する。一態様では、ナタマイシンは、塗料組成物でコーティングされた表面上に抗真菌効果(殺真菌効果または静真菌効果など)をもたらす量で存在する。
【0022】
一態様では、ナタマイシンは、塗料組成物に抗菌効果(殺菌効果または静菌効果など)をもたらす量で存在する。一態様では、ナタマイシンは、塗料組成物でコーティングされた表面上に抗菌効果(殺菌効果または静菌効果など)をもたらす量で存在する。
【0023】
一態様では、ナタマイシンは、塗料組成物に抗藻(antialgal)効果(殺藻効果または静藻(algistatic)効果など)をもたらす量で存在する。一態様では、ナタマイシンは、塗料組成物でコーティングされた表面上に抗藻効果(殺藻効果または静藻効果など)をもたらす量で存在する。
【0024】
一態様では、ナタマイシンは、塗料組成物に殺ウィルス効果をもたらす量で存在する。一態様では、ナタマイシンは、塗料組成物でコーティングされた表面上に殺ウィルスをもたらす量で存在する。
【0025】
一態様では、ナタマイシンは、塗料組成物に殺胞子効果をもたらす量で存在する。一態様では、ナタマイシンは、塗料組成物でコーティングされた表面上に殺胞子をもたらす量で存在する。
【0026】
一態様では、ナタマイシンは、塗料組成物に対して少なくとも10ppmの量で存在する。好ましくは、ナタマイシンは、塗料組成物に対して少なくとも20ppmの量で存在する。好ましくは、ナタマイシンは、塗料組成物に対して少なくとも50ppmの量で存在する。例えばナタマイシンは、塗料組成物に対して少なくとも100ppmの量で存在することができる。
【0027】
一態様では、ナタマイシンは、塗料組成物に対して0.1〜100ppmなど、塗料組成物に対して0.2〜100ppmなど、塗料組成物に対して0.5〜80ppmなど、塗料組成物に対して1〜50ppmなど、塗料組成物に対して5〜10ppmなど、塗料組成物に対して10〜200ppmなど、塗料組成物に対して10〜100ppm、塗料組成物に対して20〜200ppm、塗料組成物に対して50〜200ppm、塗料組成物に対して20〜80ppm、塗料組成物に対して30〜70ppm、塗料組成物に対して50〜100ppm、または塗料組成物に対して100〜200ppmなど、塗料組成物に対して0.1〜200ppmの量で存在する。
【0028】
一態様では、ナタマイシンは、カプセル化またはマイクロカプセル化されている。
【0029】
カプセル化材料は、親水コロイド、セラック、ゼイン、任意の合成もしくは天然の水溶性ポリマー、二酸化シリコーン、二酸化チタンなどの任意の非水溶性微粒子、合成もしくは天然の食品用ポリマービーズまたは適切な寸法を有する任意の非水溶性固体粒子、およびそれらの混合物を含む群から選択することができる。
【0030】
好ましくは、親水コロイドは、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ジェランガム、デンプン、加工デンプン、グアーガム、寒天ガム、ペクチン、アミド化ペクチン、カラギナン、ゼラチン、キトサン、メスキートガム、ヒアルロン酸、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース誘導体、Eudragit(登録商標)などのメチルアクリルコポリマー、オオバコ、タマリンド、キサンタン、ローカストビーンガム、キサンタン/ローカストビーンガム混合物、乳漿タンパク質、大豆タンパク質、カゼイン酸ナトリウム、任意の食品用タンパク質、およびそれらの混合物から選択される。
【0031】
塗料
本明細書で論じるように、塗料組成物は、少なくともi)表面コーティング材料、ii)顔料、およびiii)ナタマイシンを含有するべきである。塗料組成物は、これに加えていくつかの材料を含有することができる(または含有することができる)。
【0032】
本発明は特に、含水塗料または高い割合の水との併用に有利である。塗料は、微生物の増殖にとって魅力的な環境を提供する傾向がある。かかる水性塗料は、長期保存される場合、微生物の増殖および特に真菌の増殖が原因でしばしば劣化する。したがって好ましい一態様では、本発明の塗料組成物は水性である。
【0033】
好ましくは、塗料組成物は、塗料組成物に対して10〜90重量%の量の水を含有する。塗料組成物は、塗料組成物に対して20〜60重量%など、塗料組成物に対して30〜70重量%など、塗料組成物に対して40〜80重量%など、塗料組成物に対して50〜80重量%など、塗料組成物に対して30〜60重量%など、塗料組成物に対して40〜70重量%など、または塗料組成物に対して50〜70重量%など、塗料組成物に対して20〜80重量%の量の水を含有することができる。
【0034】
任意の追加成分を塗料組成物に添加して、例えば塗料組成物に所望の特性をもたらすことができる。例えば、塗料組成物はさらに、ナタマイシンに加えて1つまたは複数の抗菌剤を含むことができる。
【0035】
販売承認済みのコーティング材料の例は、溶剤型系中のポリ塩化ビニル樹脂、溶剤型系中の塩化ゴム、溶剤型系または水性系中のアクリル樹脂およびメタクリル樹脂、水分散液または溶剤型系としての塩化ビニル酢酸ビニルコポリマー系、ブタジエンスチレンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴムおよびブタジエンスチレンアクリロニトリルゴムなどのブタジエンコポリマー、アマニ油などの乾性油、アルキド樹脂、アスファルト、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、それらの誘導体および混合物である。
【0036】
顔料の例は、二酸化チタン、酸化鉄、シリカ、タルク、またはカオリンなどの無機顔料、カーボンブラックまたは色素などの有機顔料、それらの誘導体および混合物である。
【0037】
本発明の文脈において「抗菌」という用語は、殺菌および/または静菌効果、ならびに/あるいは殺藻および/または「静藻」効果、ならびに/あるいは殺真菌および/または静真菌効果、ならびに/あるいは殺ウィルス効果、ならびに/あるいは殺胞子効果があることを意味するものであり、ここで殺菌静菌、殺真菌、静真菌、殺ウィルスおよび殺胞子は、本明細書に定義の通りである。
【0038】
「殺菌」という用語は、細菌細胞を殺すことができると理解されるべきである。
【0039】
「静菌」という用語は、細菌の増殖を阻害する、即ち増殖する細菌細胞を阻害できると理解されるべきである。
【0040】
「殺藻」という用語は、藻類を殺すことができると理解されるべきである。
【0041】
「静藻」という用語は、藻類の増殖を阻害する、即ち増殖する藻類を阻害できると理解されるべきである。
【0042】
「殺真菌」という用語は、真菌細胞を殺すことができると理解されるべきである。
【0043】
「静真菌」という用語は、真菌の増殖を阻害することができる、即ち増殖する真菌細胞を阻害できると理解されるべきである。
【0044】
「殺ウィルス」という用語は、ウィルスを不活化できると理解されるべきである。
【0045】
「殺胞子」という用語は、胞子を不活化できると理解されるべきである。
【0046】
「微生物」という用語は、細菌細胞もしくは真菌細胞、または細菌もしくは真菌を意味する。
【0047】
本発明の塗料組成物は、コーティング、ラッカー、染料、エナメル等として配合され得るが、以下これを一般に「コーティング(複数可)」と呼ぶ。
【0048】
したがって一態様では、本発明は、先に定義の組成物からなるコーティングを提供する。
【0049】
好ましくは、塗料組成物は、屋内および屋外表面、特に屋内の壁および表面から選択される表面の処理のために配合される。好ましくは、塗料組成物は、屋内表面、特に屋内の壁の塗装に適している。
【0050】
塗料組成物は、該組成物の成分を溶解または懸濁するための液体溶媒(溶剤)を含むことができる。
【0051】
液体溶媒は、該組成物の任意の必須成分の活性を妨げない任意の液体から選択することができる。適切な液体溶媒はUS−A−5071479に開示されており、それには、キシレン、トルエン、100〜320℃、好ましくは150〜230℃の沸点を有する脂肪族および芳香族炭化水素の混合物などの脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素を含む水および有機溶剤;高い芳香性の石油蒸留物、例えば溶剤としてのナフサ、蒸留済みタール油およびそれらの混合物;ブタノール、オクタノールおよびグリコールなどのアルコール;植物油および鉱油;アセトンなどのケトン;ミネラルスピリッツおよび灯油、塩素化炭化水素、グリコールエステル、グリコールエステルエーテル、それらの誘導体および混合物などの石油留分が含まれる。
【0052】
液体溶媒は、水などの少なくとも1つの極性溶剤を、一般にミネラルスピリッツとも呼ばれるホワイトスピリッツに見られる芳香族および脂肪族溶剤の混合物など、油性または油に類似の低揮発性有機溶剤との混合物として含有することができる。
【0053】
溶媒は一般に、希釈剤、乳化剤、湿潤剤、分散剤または他の表面活性剤の少なくとも1つを含有することができる。適切な乳化剤の例はUS−A−5071479に開示されており、それには脂肪酸のノニルフェノール−エチレンオキシドエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールエステルまたはポリオキシエチレンソルビタンエステル、それらの誘導体および混合物が含まれる。
【0054】
任意の適切な表面コーティング材料を、本発明の組成物および/またはコーティングに取り込むことができる。販売承認済みのコーティング材料の例は、溶剤型系中のポリ塩化ビニル樹脂、溶剤型系中の塩化ゴム、溶剤型系または水性系中のアクリル樹脂およびメタクリル樹脂、水分散液または溶剤型系としての塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー系、ブタジエン−スチレンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴムおよびブタジエン−スチレン−アクリロニトリルゴムなどのブタジエンコポリマー、アマニ油などの乾性油、アルキド樹脂、アスファルト、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、それらの誘導体および混合物である。
【0055】
本発明の組成物および/またはコーティングは、可塑剤、レオロジー特性改質剤、他の従来の成分およびそれらの混合物を含有することができる。
【0056】
本発明の組成物および/またはコーティング、特にコーティングはさらに、水中環境に曝される保護材料のために使用される組成物中に従来使用されている助剤を含む。これらの助剤は、追加の殺真菌剤、補助溶剤、脱泡剤、固定剤、可塑剤、UV安定剤または安定性強化剤などの処理用添加剤、水溶性または非水溶性染料、着色顔料、乾燥剤、腐食防止剤、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸などの増粘剤または沈下防止剤、皮張り防止剤、それらの誘導体および混合物から選択することができる。
【0057】
本発明の組成物および/またはコーティングに使用される追加の殺真菌剤(複数可)は、好ましくは液体溶媒に可溶性である。
【0058】
本発明の組成物は、使用準備完了製品としてまたは濃縮物として提供することができる。使用準備完了製品は、水溶液、水分散液、油性溶液、油分散液、乳液またはエアロゾル調製物の形態であってよい。濃縮物は、例えばコーティングの添加剤として使用することができ、または追加の溶剤もしくは懸濁化剤と併用する前に希釈することができる。
【0059】
本発明のエアロゾル調製物は、適切な溶剤を含む、またはそれに溶解もしくは懸濁した本発明の組成物を、通常のやり方で、推進剤、例えば商標「Freon」の下で市販されているメタンおよびエタンの塩素およびフッ素誘導体の混合物または圧縮空気としての使用に適した揮発性の液体に取り込むことによって得ることができる。
【0060】
US−A−5071479に論じられているように、本発明の組成物および/またはコーティングは、保存剤および/またはコーティングにおいて有用であることが公知の追加の成分を含むことができる。かかる成分には、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、パラフィンなどの固定剤、エチレングリコールアセテートおよびメトキシプロピルアセテートなどの共溶剤、安息香酸エステルおよびフタル酸エステルなどの可塑剤、例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルおよびフタル酸ジドデシル、それらの誘導体および混合物が含まれる。任意選択で、色素、着色顔料、腐食防止剤、化学安定剤、またはオクチル酸コバルトおよびナフテン酸コバルトなどの乾燥剤(ドライヤー)も、特定の用途に応じて含めることができる。
【0061】
一態様では、塗料組成物は、油性塗料、特にアマニ油塗料である。
【0062】
油性塗料:油性塗料は、アマニ油から製造することができ、または木タールもしくは魚油をベースにすることができる。アマニ油は、一般に木の上に使用され、油性塗料は、沸騰させたアマニ油(アマニワニス)または原料のアマニ油であってよいアマニ油、顔料を含有し、必要ならば該塗料は、ドライヤーまたは乾燥剤を含有することもできる。
【0063】
アマニ油塗料は、沸騰させたアマニ油1リットルを、顔料約500グラムに添加することによって製造することができ、顔料の量は、その色および油によって決まる。粘度が高いペーストを混合し、その後油性塗料が表面上に塗装できる粘稠度を有するまで、さらなるアマニ油を添加する。必要に応じて、最大7パーセントのドライヤーまたは乾燥剤を添加して、乾燥期間を短縮することができる。沸騰させたアマニ油は、原料のアマニ油で置き換えることができる。ナタマイシンを、混合過程中および/または混合後に添加して、塗料容器の上面を保存することできる。
【0064】
本発明の組成物および/またはコーティングは、はけ塗り、吹き付け、ロールコーティング、浸漬およびそれらの組合せを含む当技術分野で公知の技術のいずれかによって適用することができる。
【0065】
本発明の組成物は、それらが悪影響を受けない温度で、様々な成分を単に混合することによって調製することができる。調製条件は重要ではない。コーティングおよび類似の組成物の製造に従来使用されている装置および方法を、有利に使用することができる。真菌などの微生物は容器内の塗料の表面上で増殖することができるため、塗料の真菌汚染などの微生物汚染は、塗料の、特に水性塗料または油性塗料の貯蔵期間を短縮する恐れがある。ナタマイシンは、塗料に混合することができ、または容器を閉める前に塗料の最上部に添加することができる。
【0066】
本明細書で論じるように、本発明の塗料組成物は、一般に顔料を含有する。しかし本発明の組成物は、壁などの表面上に所望の抗菌効果を達成するために、顔料の存在を必要とせずに塗料と同じように使用できることが見出されている。例えば本発明は、浴室の壁などの表面を処理して、藻類の増殖などの微生物の増殖を防止/抑制するために使用することができる。したがってさらなる一態様では、本発明は、
・ i)表面コーティング材料およびii)ナタマイシンを含む組成物、
・ i)表面コーティング材料およびii)ナタマイシンを接触させるステップを含む、組成物の調製方法、
・ i)表面コーティング材料およびii)ナタマイシンを含む組成物で表面をコーティングするステップを含む、表面上の微生物の増殖を防止する方法、
・ 組成物の成分をナタマイシンと接触させるステップを含む、組成物における微生物の増殖を防止する方法
を提供する。
【0067】
顔料を含有する組成物に関してここに記載の本発明の特徴のそれぞれを、同じく本発明の先の態様に適用する。
【0068】
本発明を、ここに以下の実施例において例示目的のみで記載する。
【実施例】
【0069】
(実施例1)
ベース塗料組成物を、WO00/68324の教示に従って調製する。ベース塗料組成物は、以下の成分を含有する。
【0070】
【表1】

4つの組成物を調製し試験する。それらは、保護剤を含有しない対照と、ナタマイシン10ppm、25ppmおよび50ppmを含有する本発明の組成物である。ナタマイシンは、デンマーク、Danisco A/Sから利用可能なNatamaxである。
【0071】
塗料490gを、4つの小さいプラスチック製容器に分けて入れ、それぞれ120gにする。次いで、異なる濃度のナタマイシンを塗料に添加し、混合する。ナタマイシンは対照には添加しない。
【0072】
4つの容器に、以下に記載のカビのプールを接種する。各容器から塗料約2gで、3つの木製合板(9.5cm×9.5cm)を塗装する。
【0073】
サンプル
以下のサンプルを、容器内および合板上で調製する(2通り)。
【0074】
【表2】

接種/汚染:
指示菌株:
以下の指示菌株を試験する。選択された種は、塗料および浴室の両方において増殖することが見出されている。
【0075】
Aureobasidium pullulans DSM 6402番
Phoma asicola DSM 62895番
Cladosporium herbarum CBS 134.31
(すべての株は、収集株DSMおよびCBSから利用可能である)
接種速度:
塗料1g当たり100CFU
カビのプール−全部で3種のカビの株を、塗料1g当たり100CFUの最終CFUに対して1/3で提供する。
【0076】
接種:
サンプル1〜4に、先に記載のカビのプールを接種する。
【0077】
他の120gと比較して、塗料100gのみを含むサンプル1に、1/6少ないCFUを接種する。
【0078】
保存:
缶内:25℃
壁の上:湿度>90%、温度25℃
検出
カビの増殖を、目視および写真によって視覚的に検出する。
【0079】
対照とNatamaxサンプルの増殖の差異を、
・ 増殖あり/増殖なし
・ カビの数(計数可能な場合)またはカビで覆われた面積
・ カビの色(カビの増殖を見るため)
に関して記載する。
【0080】
検出日数:
初日およびその後5日目から始めて週に3回。さらなるデータが生じない場合に観測を停止する。
【0081】
以下の標準も、塗料における真菌の増殖に対する耐性を決定するために利用することができる。
【0082】
BS3900−G6(英国標準)
VdL−RL06(Verband der Lackindustrie)。
【0083】
(実施例2)
木板上での試験
3つの異なる株を、ナタマイシンを含む塗料に添加し、全接種物は、塗料1g当たり約100CFUであった。塗料は、英国、ミドルセックス、ハンプトン、PRA Coatings Technology Centreから利用可能なPrimal CM219EFをベースとするアクリルエマルション塗料であった。各株は、全CFUの約1/3である。ナタマイシンは、DaniscoからNatamax製品番号104417として提供された。
【0084】
【表3】

1:1:1の比の株の混合物を提供することによって、以下の指示菌株を試験した。選択した種は、塗料および浴室の両方において増殖することが検出されている。
【0085】
Aureobasidium pullulans DSM 6402番
Phoma asicola DSM 62895番
Cladosporium herbarum CBS 134.31
(すべての株は、収集株DSMおよびCBSから利用可能である)
1:1:1の混合物を使用して、サンプルD1〜O4のそれぞれを接種した。接種物は実施例1に記載の通りであった。先に示したように、全接種物は塗料1g当たり約100CFUであった。したがって各株は、各サンプル中に塗料1g当たり約33CFUの量で存在していた。
【0086】
塗装済みの板を、25℃において少なくとも90%の湿度で保存した。塗装済みの板上の増殖を、目視で視覚的に検出し、コロニー数を計数した。
【0087】
木板からの結果:
【0088】
【表4】

全サンプルを、25℃において湿度>90%で3回試験した
**板は増殖で一杯だったが、対照およびブラインドよりもコロニーは小さかった
0:検出可能な増殖なし
1:板上に4個未満のコロニー
2:板上に9個未満のコロニー
3:板上に9個を超えるコロニー
4:板はカビで一杯だった。
【0089】
(実施例3)
塗料の缶における試験
【0090】
【表5】

全サンプルに、塗料1g当たり約100CFUのカビのプールを添加した。塗料は、英国、ミドルセックス、ハンプトン、PRA Coatings Technology Centreから利用可能なPrimal CM219EFをベースとするアクリルエマルション塗料であった。種類、量および接種物を含む株は、実施例2に記載の通りであった。
【0091】
水性塗料の保存の結果
結果を、缶内の塗料表面上のコロニー計数の平均数として示す。
【0092】
【表6】

ナタマイシンを添加していない対照は、1週後に既に真菌で汚染されていたが、ナタマイシンは、塗料表面上の増殖を著しく阻害した。
【0093】
先の明細書で言及したすべての刊行物は、参照によって本明細書に組み込まれる。本発明の記載の方法および系の様々な改変および変形は、本発明の範囲および精神から逸脱せずに当業者に明らかとなろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して記載してきたが、特許請求される本発明は、かかる特定の実施形態に過度に限定されるべきでないことを理解されたい。実際、化学または関連分野の技術者に明らかである、本発明を実施するための記載の態様の様々な改変は、以下の特許請求の範囲内にあることを企図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)表面コーティング材料、
ii)顔料、および
iii)ナタマイシン
を含む塗料組成物。
【請求項2】
前記ナタマイシンが、前記塗料組成物に対して少なくとも10ppmの量で存在する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記ナタマイシンが、前記塗料組成物に対して少なくとも20ppmの量で存在する、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記ナタマイシンが、前記塗料組成物に対して少なくとも50ppmの量で存在する、請求項1、2または3に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記ナタマイシンが、前記塗料組成物に対して少なくとも100ppmの量で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記ナタマイシンが、前記塗料組成物に対して10〜100ppmの量で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記ナタマイシンが、カプセル化またはマイクロカプセル化されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項8】
前記ナタマイシンが、抗真菌効果をもたらす量で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項9】
前記ナタマイシンに加えて、1つまたは複数の抗菌剤をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項10】
前記塗料組成物が水性である、請求項1から9のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項11】
前記塗料組成物に対して10〜90重量%の量の水を含有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項12】
前記塗料組成物に対して20〜80重量%の量の水を含有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項13】
木製の表面の塗装に適している、請求項1から12のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項14】
i)表面コーティング材料、
ii)顔料、および
iii)ナタマイシン
を接触させるステップを含む、塗料組成物の調製方法。
【請求項15】
請求項2から13のいずれか一項に記載の特徴により特徴付けられる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
表面上の微生物の増殖を防止する方法であって、
i)表面コーティング材料、
ii)顔料、および
iii)ナタマイシン
を含む塗料組成物で該表面をコーティングするステップを含む、方法。
【請求項17】
請求項2から13のいずれか一項の特徴により特徴付けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
塗料組成物における微生物の増殖を防止する方法であって、該塗料組成物の成分をナタマイシンと接触させるステップを含む、方法。
【請求項19】
請求項2から13のいずれか一項の特徴により特徴付けられる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
塗料組成物に抗菌作用をもたらすための、ナタマイシンの使用。
【請求項21】
前記塗料組成物が、
i)表面コーティング材料、
ii)顔料、および
iii)ナタマイシン
を含む、請求項18に記載の使用。
【請求項22】
請求項2から13のいずれか一項の特徴により特徴付けられる、請求項20または21に記載の使用。
【請求項23】
実質的に本明細書に記載の塗料組成物。
【請求項24】
実質的に本明細書に記載の塗料組成物の調製方法。
【請求項25】
実質的に本明細書に記載の、表面上の微生物の増殖を防止する方法。
【請求項26】
実質的に本明細書に記載の、塗料組成物における微生物の増殖を防止する方法。
【請求項27】
実質的に本明細書に記載の抗菌作用をもたらすためのナタマイシンの使用。

【公表番号】特表2010−522796(P2010−522796A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500385(P2010−500385)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001351
【国際公開番号】WO2008/117176
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(397060588)ダニスコ エイ/エス (67)
【Fターム(参考)】