説明

組立式デッキ

【課題】温度変化によりデッキ材が熱伸縮した場合にもデッキ面の平面性を確保できる組立式デッキを提供すること。
【解決手段】この組立式デッキ1は、複数のデッキ材2が連結されて成ると共に、取付対象10に取り付けられて設置される。また、この組立式デッキ1では、デッキ材2がその長手方向に延在する溝21と、この溝21に沿ってスライド可能に設置される取付部材3とを含み構成される。そして、取付部材3が取付対象10を保持することによりデッキ材2が取付対象10に対して固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、組立式デッキに関し、さらに詳しくは、温度変化によりデッキ材が熱伸縮した場合にもデッキ面の平面性を確保できる組立式デッキに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、簡易に設置できて汎用性に優れる組立式デッキに対するニーズが拡大している。かかる組立式デッキは、複数のデッキ材が嵌め合わされて成り、単一の平面構造物を構成する。組立式デッキは、例えば、仮設橋、簡易ヘリポート、渡り廊下などに広く用いられている。このような組立式デッキには、例えば、特許文献1に記載される技術が知られている。
【0003】
【特許文献1】実開昭52−11913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の組立式デッキでは、その設置時にて各デッキ材が取付対象に対してボルト等で固定されるため、温度変化によりデッキ材が熱伸縮したときに、デッキ材が曲げ変形してデッキ面に歪みや凹凸が発生するという課題がある。
【0005】
そこで、この発明は、上記に鑑みてされたものであって、温度変化によりデッキ材が熱伸縮した場合にもデッキ面の平面性を確保できる組立式デッキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明にかかる組立式デッキは、複数のデッキ材が連結されて成ると共に取付対象に取り付けられて設置される組立式デッキであって、前記デッキ材がその長手方向に延在する溝と前記溝に沿ってスライド可能に設置される取付部材とを含み、且つ、前記取付部材が取付対象を保持することにより前記デッキ材が前記取付対象に固定されることを特徴とする。
【0007】
この組立式デッキでは、気温の変化などによりデッキ材が熱伸縮したときに、取付部材が溝に沿ってデッキ材の長手方向にスライドする。すなわち、デッキ材が長手方向に熱伸縮できるので、その曲げ変形が低減される。これにより、温度変化によりデッキ材が熱伸縮した場合にも、デッキ面の平面性が確保される利点がある。
【0008】
また、この発明にかかる組立式デッキは、前記取付部材が、前記溝にスライド可能に挿入される第一取付金具と前記第一取付金具に結合される第二取付金具とを有すると共に、前記第一取付金具および前記第二取付金具間に取付対象を挟み込んで保持する。
【0009】
この組立式デッキでは、簡易な構成にて、デッキ材の長手方向への熱伸縮を可能としつつデッキ材を取付対象に固定できる点で好ましい。
【0010】
また、この発明にかかる組立式デッキは、仮設橋、簡易ヘリポート、その他の屋外構造物に適用される。
【0011】
この組立式デッキ1では、上記のように温度変化によりデッキ材が熱伸縮したときにデッキ材の曲げ変形が低減されるので、デッキ面の歪み或いは凹凸が発生し難い。したがって、この組立式デッキが仮設橋や簡易ヘリポートなどの屋外構造物に適用されることにより、温度変化時の平面安定性に優れた仮設橋あるいは簡易ヘリポートが提供される利点がある。
【発明の効果】
【0012】
この発明にかかる組立式デッキでは、気温の変化などによりデッキ材が熱伸縮したときに、取付部材が溝に沿ってデッキ材の長手方向にスライドする。すなわち、デッキ材が長手方向に熱伸縮できるので、その曲げ変形が低減される。これにより、温度変化によりデッキ材が熱伸縮した場合にも、デッキ面の平面性が確保される利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施例の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的同一のものが含まれる。また、この実施例に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【実施例】
【0014】
図1は、この発明の実施例にかかる組立式デッキを示す斜視図である。図2および図3は、図1に記載した組立式デッキの取付構造を示す斜視図(図2)およびA−A視断面図(図3)である。図4は、図1に記載した組立式デッキの取付部材を示す説明図である。図5および図6は、図1に記載した組立式デッキの取付構造の変形例を示す説明図である。図7および図8は、図1に記載した組立式デッキの適用例を示す説明図である。
【0015】
この組立式デッキ1は、複数のデッキ材2が平面方向に連結(嵌合)されて構成され、梁などの取付対象10に取り付けられて設置される(図1参照)。デッキ材2は、例えば、アルミニウム製であり、長尺かつ略矩形の板状構造を有する。また、各デッキ材2は、その側部に嵌合部(凸部あるいは凹部)23を有し、この嵌合部23を嵌め合わせることにより、幅方向に隣り合うデッキ材2に対して連結される。また、各デッキ材2は、中空構造を有し、その中空部に挿入されたロッド(図示省略)により、長手方向に隣り合うデッキ材に対して連結される。
【0016】
ここで、組立式デッキ1は、以下の取付構造により取付対象10に取り付けられて設置される(図2〜図4参照)。まず、デッキ材2の平面(取付対象10に対する取付面)に、デッキ材2の長手方向に沿って延在する溝21が形成される。この溝21は、デッキ材2の成形時にて、押出加工により一時に成形される。また、一のデッキ材2に対して複数本の溝21が形成されている。また、溝21の開口部には、溝幅方向内側に突出する係止部22が形成される(図3参照)。このデッキ材2の溝21には、取付部材3が溝長さ方向にスライド可能に配置される。この取付部材3は、板状形状を有する第一取付金具31および一対の第二取付金具32、32と、これらの取付金具31、32を固定するためのボルト33、33およびナット34、34とを有する(図4参照)。
【0017】
組立式デッキ1の設置状態では、取付部材3がデッキ材2の溝21にスライド可能に挿入され、この取付部材3により取付対象10が保持されて、デッキ材2が取付対象10に固定される(図2および図3参照)。具体的には、取付部材3の第一取付金具31がデッキ材2の溝21にスライド可能に挿入される。このとき、第一取付金具31が、溝21の開口部に形成された係止部22により溝21内に係止されて保持される。そして、この第一取付金具31と第二取付金具32、32との間に取付対象10(例えば、H鋼の裾部)が挟み込まれて配置され、これらの第一取付金具31および第二取付金具32、32がボルト33、33およびナット34、34により締結されて固定される。これにより、デッキ材2が取付部材3を介して取付対象10に固定される。なお、取付部材3は、各デッキ材2の要所にそれぞれ設置される。
【0018】
この組立式デッキ1では、デッキ材2がその長手方向(温度変化による熱伸縮が大きい方向)に延在する溝21を有し、この溝21に沿って取付部材3がスライド可能に設置され、この取付部材3を介してデッキ材2が取付対象10に固定される(図2および図3参照)。かかる構成では、気温の変化などによりデッキ材2が熱伸縮したときに、取付部材3が溝21に沿ってデッキ材2の長手方向にスライドする。すなわち、デッキ材2が長手方向に熱伸縮できるので、その曲げ変形が低減される。これにより、温度変化によりデッキ材が熱伸縮した場合にも、組立式デッキ1の平面性が確保される利点がある。
【0019】
また、かかる構成では、デッキ材2と取付対象10と或いは取付部材3と取付対象10とが直接的にボルト結合される構成と比較して、取付対象10にボルト孔を加工する必要が無い。したがって、既存の取付対象10に対して簡易にデッキ材2を固定できる点で好ましい。
【0020】
また、この組立式デッキ1では、取付部材3が、デッキ材2の溝21にスライド可能に挿入される第一取付金具31と、この第一取付金具31に結合(ボルト33、33およびナット34、34による結合)される第二取付金具32とを有する(図4参照)。そして、これらの第一取付金具31および第二取付金具32間に取付対象10が挟み込まれて保持されることにより、デッキ材2が取付対象10に固定される(図2および図3参照)。かかる構成では、簡易な構成にて、デッキ材2の長手方向への熱伸縮を可能としつつデッキ材2を取付対象10に固定できる点で好ましい。
【0021】
[変形例1]
なお、この組立式デッキ1では、第一取付金具および第二取付金具がショートボルト33によりボルト結合される(図2〜図4参照)。このため、取付部材3は、取付対象10であるH鋼の裾部を挟み込んで保持する。かかる構成では、取付対象10の高さhが高い場合にも、取付対象10が取付部材3により適正に保持されてデッキ材2が取付対象10に固定される点で好ましい。
【0022】
しかし、これに限らず、第一取付金具および第二取付金具がロングボルト35によりボルト結合される構成が採用されても良い(図5および図6)。例えば、第一取付金具および第二取付金具が取付対象10の全体を挟み込んで保持する。かかる構成では、上記のショートボルト33が採用される構成と比較して、取付部材3の構造計算が容易である点で好ましい。
【0023】
[適用対象]
また、この組立式デッキ1は、仮設橋20として用いられることが好ましい(図7および図8参照)。例えば、震災などにより橋が破損して橋脚のみが残っている場合に、この橋脚上の梁に対して組立式デッキ1が設置されることにより仮設橋が構成される。また、この組立式デッキ1は、簡易ヘリポートして用いられることが好ましい(図示省略)。このような簡易ヘリポートは、例えば、建物屋上などに設置され、或いは、緊急発着場として臨時的に設置される。
【0024】
かかる構成において、この組立式デッキ1では、上記のように温度変化によりデッキ材が熱伸縮したときにデッキ材2の曲げ変形が低減されるので、デッキ面の歪み或いは凹凸が発生し難い。したがって、この組立式デッキ1が仮設橋20や簡易ヘリポートに適用されることにより、温度変化時の平面安定性に優れた仮設橋20あるいは簡易ヘリポートが提供される利点がある。特に、温度変化の激しい屋外に設置される仮設橋20や簡易ヘリポートでは、かかる利点は有益である。
【0025】
その他、この組立式デッキ1は、例えば、屋内に設置される渡り廊下や床材として用いられても良い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明にかかる組立式デッキは、温度変化によりデッキ材が熱伸縮した場合にもデッキ面の平面性を確保できる点で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の実施例にかかる組立式デッキを示す斜視図である。
【図2】図1に記載した組立式デッキの取付構造を示す斜視図である。
【図3】図1に記載した組立式デッキの取付構造を示すA−A視断面図である。
【図4】図1に記載した組立式デッキの取付部材を示す説明図である。
【図5】図1に記載した組立式デッキの取付構造の変形例を示す説明図である。
【図6】図1に記載した組立式デッキの取付構造の変形例を示す説明図である。
【図7】図1に記載した組立式デッキの適用例を示す説明図である。
【図8】図1に記載した組立式デッキの適用例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 組立式デッキ
2 デッキ材
21 溝
22 係止部
23 嵌合部
3 取付部材
31 第一取付金具
32 第二取付金具
10 取付対象
20 仮設橋
33 ショートボルト
34 ナット
35 ロングボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデッキ材が連結されて成ると共に取付対象に取り付けられて設置される組立式デッキであって、
前記デッキ材がその長手方向に延在する溝と前記溝に沿ってスライド可能に設置される取付部材とを含み、且つ、前記取付部材が取付対象を保持することにより前記デッキ材が前記取付対象に固定されることを特徴とする組立式デッキ。
【請求項2】
前記取付部材が、前記溝にスライド可能に挿入される第一取付金具と前記第一取付金具に結合される第二取付金具とを有すると共に、前記第一取付金具および前記第二取付金具間に取付対象を挟み込んで保持する請求項1に記載の組立式デッキ。
【請求項3】
仮設橋、簡易ヘリポート、その他の屋外構造物に適用される請求項1または2に記載の組立式デッキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−25194(P2008−25194A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198609(P2006−198609)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(597114384)エアロファシリティー株式会社 (4)
【Fターム(参考)】