説明

組立式ワゴン

【課題】組立式のワゴンであって、天板と底板との間に棚板を容易に付設でき、また棚板の位置変更が容易なワゴンを提供する。
【解決手段】4本の支柱と、天板と底板と棚板と係止具とキャスターとからなるワゴンであって、支柱を横断面L形の外板と横断面船底形の内板とで構成し、内板に係止孔を穿設し、内板と外板とをダボにより一体にし、棚板は四隅を斜めに切り落とし、切り落とした斜め部分を係止孔に係止した係止具により支持して棚板を付設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、組立式ワゴンに関するものである。とくに、この発明は棚板の位置変更が容易な金属製の組立式ワゴンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製の組立式ワゴンは公知である。公知の組立式ワゴンは支柱の構造によって2つに大別される。その1つは、支柱を4本に分離できるものであり、他の1つは2本の支柱が一体となった逆U字状又は門型の支柱を用いるものである。
【0003】
逆U字状の支柱を用いるものは、例えば特開2000−153761号公報に記載されている。この公報は、逆U字状の支柱2個を対抗させて置き、対抗する支柱の下部を連結パイプで連結して四角枠を作り、枠の上部には平皿をさし渡し固定して枠体を構成し、こうして構成した枠体の各支柱の下端にキャスターを付設してワゴンとすることを記載している。この形式のワゴンは、重量の大きい物品を載せるには適していない。
【0004】
分離された4本の支柱を用いる組立ワゴンは、例えば特開2006−122191号公報に記載されている。この公報は、支柱を山形鋼で作り、天板、底板及び棚板を何れも直角四辺形の浅い箱状にして、箱のかどに位置する側壁を山形鋼の内側にボルトで固定して枠体を作り、各支柱の下端にキャスターを付設してワゴンとすることを記載している。この形式のワゴンは重量の大きい物品を載せることができる。
【0005】
分離された4本の支柱を用いる形式のワゴンでは、各支柱を専ら山形鋼、すなわちアングル材で作り、棚板を専ら直角四辺形の浅い箱状体としてきた。従って、棚板を支柱に固定するには、天板や底板と同様に、ボルトとナットによる締め付けが行われた。その締め付けは1つの棚板について四隅にある2つの側壁を別々にアングルの各片に固定する必要があり、従って合計8個のボルトを締め付ける必要があった。そのため、棚板の付設には手間と時間がかかった。また棚板の位置変更には、8個のボルトを外し、さらに8個のボルトを締め付けなければならないことになり、従って一層煩瑣となった。そこで、この煩瑣を解消する必要があった。
【0006】
他方、ワゴンではないが、棚板の付設と位置変更を容易にしたスチール棚が知られている。このスチール棚は、例えば実開平7−5442号公報に記載されている。この公報はスチール棚の支柱を横断面がL形の外板と、横断面が船底形の内板で構成している。詳しく言えば、その内板は、帯状板を長手方向に延びる2本の折線に沿って折曲して、中央片と中央片から135度の角度をなして起立する2つの側片で構成している。断面L形の外板は内板の外側から内板を被覆し、内板の側片から食み出した両側縁を内板に沿って折り返し、被覆して一体としたものを支柱としている。
【0007】
この支柱では、内板の中央片に係止孔とビス挿通孔とを穿設し、係止孔に複雑な構造の棚板取付金具を係止し、棚板取付金具上に棚板を載せて棚板を付設することとしている。この構造では棚板取付金具を係止させるだけで棚板を付設することができるので、棚板の付設と位置変更が容易である。
【0008】
実開平7−5442号公報は、支柱の長手方向の端から端まで上述の外板と内板とで構成することとしている。従って、この公報によれば、支柱の端に位置する天板も底板も同じ棚板取付金具で固定することとなる。しかし、こうして作られたスチール棚は、形状が安定しなくて、横方向の力が加えられるとグラグラするものとなる。従って、このスチール棚はこれにキャスターを付設してワゴンとするに適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−153761号公報
【特許文献2】特開2006−122191号公報
【特許文献3】実開平7−5442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、上述のように分離された4本の支柱を用いる形式の組立ワゴンにおいて、棚板の付設及び位置変更を容易にしようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、ワゴンにおいて天板と底板とを支柱に固定する手段は、従来通りボルトの締め付けによることとし、天板と底板との間に付設される棚板だけを、実開平7−5442号公報が提案している支柱によって固定することとした。
【0012】
しかし、実開平7−5442号公報が提案する支柱は、内板から食み出している外板部分を折り返して、折り返し部分が内板内面を被覆するようにしただけで、内板と外板とを一体にしているから、外板内で内板がズレやすいものとなっている。このため、この支柱に棚板取付金具を付設して、棚板上に物品を載せると、棚板が傾いたり、落下したりするおそれがある。
そこで、この発明では、内板の2つの側片にダボ突起を付設し、他方外板の折り返し部分にはダボ孔を設け、ダボ突起をダボ孔に嵌入させて、内板と外板とのズレを防ぐこととした。
【0013】
こうして、この発明では実開平7−5442号公報が提案するように、外板と内板とで支柱を構成することとするが、その間にダボ突起とダボ孔とを設け、それらの嵌合によって内板と外板との間のズレを防ぐとともに、支柱が天板及び底板と接続する部分では内板を無くし、外板を直接天板及び底板にボルトで締め付けてワゴンの枠体を構成することとした。このようにすると、堅固なワゴンが作れるとともに、棚板の付設及び位置変更が容易となることが確認された。この発明はこのような知見に基づいて完成されたものである。
【0014】
この発明は、金属製の支柱、天板、底板、棚板、係止具及びキャスターからなる組立式ワゴンを提供するものであって、天板と底板と棚板は何れも同形同大の直角四辺形の浅い箱状体で構成し、そのうち棚板だけは箱状体の四隅を斜めに切り落とした構造とし、支柱は横断面L形の外板と横断面が船底形の内板とで構成し、船底形の内板は平らな中央片とこれから135度の角度をなして両側に起立する側片とからなり、中央片には係止具係止用の係止孔が穿設され、両側片にはダボ突起が付設されており、外板は内板の外面を覆って幅方向でも長手方向でも内板より食み出しており、幅方向の食み出し部はダボ孔を備えていて折り返されてダボ孔内に内板のダボ突起を嵌入させて内板と一体となっており、長手方向の食み出し部には天板と底板とに連結するためのボルト孔を備えて支柱が構成され、底板にはキャスターが固定可能とされていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
一般にワゴンは嵩張るものであるところ、この発明ではワゴンを組立式としたので、不使用時には分解しておくことができ、使用時に組み立てて使用することができるので、収納に便利である。とくに、このワゴンは4本の支柱、天板、底板、棚板、係止具、及びキャスターに分解できるので、嵩を小さくすることができ、従ってとくに収納に便利である。また、天板、底板及び棚板を同形同大の浅い箱状体としたから、これらは軽量で強度が大きく、また経済的に製造することができる。
【0016】
また、この発明では、支柱を断面L字形の外板と、断面船底形の内板とで構成し、外板を内板から食み出させて、幅方向の食み出し部にダボ孔を設け、他方、内板の側片にダボ突起を設けたから、食み出し部を折り返して内板に重ねたとき、ダボ突起をダボ孔内に嵌入させることができ、これによって、内板が外板内でズレるのを防ぐことができる。従って、内板の係止孔に係止具を係止させて、係止具上に棚板を載せた時、棚板上に重量の大きい物品を載せても、棚板が傾いたり落下したりすることがない。
【0017】
また、支柱は外板と内板との一体により構成されているため、強度が大きく、外板が内板の外面を覆っているため、外部からは外板だけが見えることとなり、従って見栄えがよい。また、支柱の上端と下端には内板を無くしたので、天板と底板とを直接ボルトで外板に連結させることができ、従って、組み立てたときワゴンの枠体を強固にすることができる。
【0018】
また、支柱の長手方向の中央部にだけ内板を設けることとし、内板の中央片に係止孔を穿設したので、係止孔に係止具を差し込むだけで棚受けを付設することができる。他方、棚板は直角四辺形の浅い箱状体の四隅を斜めに切り落とした形状にしたから、四隅に付設した棚受けの棚板を容易に且つ確実に載せることができ、また載せただけで棚板を安定な状態に維持することができる。従って、棚板の設置と、位置の変更が容易である。
この発明はこのような利点をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明で用いる支柱を構成する内板の斜視図である。
【図2】この発明で用いる支柱を構成する外板の斜視図である。
【図3】この発明で用いる支柱の斜視図である。
【図4】この発明で用いる係止具の拡大斜視図である。
【図5】この発明において、支柱が棚板を支える機構を説明する説明図である。
【図6】この発明で用いる箱状体の斜視図である。
【図7】この発明で用いることができる天板と底板の斜視図である。
【図8】この発明に係るワゴンの組立状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係る組立ワゴンは、支柱、天板、底板、棚板、係止具及びキャスターの6種のもので構成される。そのうち最大の特徴を持つものは支柱であるから、まず支柱の構造から説明する。支柱は横断面がL形の外板と、横断面が船底形の内板とで構成される。
【0021】
内板1は、図1に示したように、帯板を長手方向に延びる2本の折曲線に沿って折曲して、平らな中央片1aと、これから135度の角度をなして起立する2つの側片1bとで構成される。中央片1aには係止孔1cが多数一列に並び一様な間隔をおいて穿設されている。係止孔1cは後に述べる係止具を係止させるためのものである。また、中央片1aには係止孔1cに近接してビス孔1dが穿設されている。ビス孔1dは係止具が係止孔から外れるのを防ぐためのものである。
【0022】
また、内板1の2つの側片1bにはダボ突起1eが複数個適当な間隔を置いて突設される。2つの側片1bは、中央片1aに対して左右対称の形状となっている。従って、ダボ突起も左右対称に設けられる。複数のダボ突起のうち、長手方向の端に位置するダボ突起1eは、中央片1aの長手方向の端に位置するビス孔1dと、長手方向の端から等しい距離のところに設けられることが好ましい。なぜならば、このようにすると、内板1を外板2内に挿入し、外板2の食み出し部2cを内板に向かって折り返すとき、内板のビス孔1dが外板2のダボ孔2dと1つの直線上に並ぶようにして折り返せば、ダボ突起1eをダボ孔2d内に確実に嵌入させることができるからである。
【0023】
外板2は図2に示したように、横断面がL字状の長尺体であって、一般にアングル材と呼ばれるものである。外板2は長手方向の両端近くに天板と底板を固定するためのボルト2aと2bとを備えている。また、外板2は長手方向の両端を除く中央部分の両側に食み出し部分2cを備えている。なお、2eは取手をつけるためのボルト孔である。
【0024】
食み出し部分2cが存在する領域に、内板1を置き、食み出し部分2cを内側へ折り曲げて、内板の側片1b上に重ねる。このとき一般に外板2に対する内板1の位置関係を調整して、食み出し部分2cに設けたダボ孔2dが内板に設けダボ突起1eを嵌入させるようにする。こうして、図3に示したような支柱が作られる。
【0025】
この支柱では、複数個のダボ突起1eがダボ孔2d内に嵌入しているので、内板1と外板2との結合が強固である。従って、内板1が外板2内でズレることは全くなくなっている。なお、図3では係止孔1cの1つに係止具4が係止されている。
【0026】
図3に示した係止具4は、これを拡大して示すと図4に示したような構造のものである。係止具4は、金属板の小片において、一端を表面がわに垂直に折曲して棚受部41とし、裏面がわに断面L字状の引掛部42を突設し、その際、引掛部42におけるLの折曲線44を、棚受部41の折曲線43と平行に向わせて作られている。なお、図4では引掛部42を突設するのに、金属板にコの字状の切れ目を入れて、内部を裏面がわに押し出すことによって引掛部42を作っている。
【0027】
係止具42は、図5に示したように、棚受部41を下にして引掛部42を支柱の係止孔1c内に通してのち、降下させて支柱3に取り付けられている。こうして取り付けただけでは、係止具4はこれを上昇させると支柱から外れる。そこで、これを防ぐためにビス孔45にビスを挿入し、そのビスを支柱のビス孔1dに固定して係止具4の外れるのを防ぐ。このために、支柱3のビス孔1dには雌ねじが付設されている。
【0028】
この発明で用いられる天板と底板及び棚板は、何れも同形同大の直角四辺形の浅い箱状体で作られている。その箱状体は図6に示したようなものである。図6に示した箱状体5は、底51に高さの等しい4個の側壁52、53等を立設しただけのものである。箱状体5の四隅には支柱への固定のためのボルト孔50が付設されている。
【0029】
天板と底板とに用いるには、図6に示した形状のものでもよいが、特開2006−122191号公報が教えるように、箱状体の側壁外面に補強片を付設することが好ましい。すなわち、図7に示したように、各側壁の支柱に接する部分に補強片56を付設し、補強片の端面57を支柱の側面31に密接させるとともに、補強片56の外面を支柱外面と面一にすることが好ましい。このようにすると見栄えがよいだけでなく、枠のゆがみを確実に防止できる。なお、補強片56は側壁の長手方向全体に延びていなくて、支柱の側面に近いところだけに付設されていてもよい。
【0030】
この発明では、棚板は図6及び図7に示した形状そのままで用いるのではなくて、箱状体の四隅のかどを切り落とした形状にして用いる必要がある。すなわち、かどを底51に垂直で側壁52と53とに45度の角度で交わる平面で切断し、かどを切り落として、図5に符号6で示した構造のものとして用いる必要がある。このようにすると、棚板のかどは支柱3の内板1の内面に合う形となるので、支柱3に付設された係止具4の棚受部44に容易に載せることができる。
底板の底には、四隅に自在キャスターを付設するためのボルト孔が穿設されている。底板は天板と同様にかど部がボルトで支柱の外板に固定される。
【0031】
この発明に係るワゴンを組み立てるには次のようにする。支柱3としては、図3に示したように、内板1が外板2と既に一体にされたものを使用する。このような支柱3を4本用いて、図8に示したように底板7の四隅にボルト8で固定する。次いで支柱3の上端に天板9を同様にボルト8で固定する。こうしてワゴンの枠体を作る。
【0032】
次いで底板7にキャスターを付設し、支柱3の1つの係止孔1cに係止具4の引掛部42を挿入して係止具4を支柱3に係止し、さらに係止具4のビス孔45にビスを通して、係止具4を支柱3に固定する。こうして4個の係止具4が支柱3に固定されたあとで、4個の係止具4の各棚受部41上に棚板6を載せてワゴンとする。
【0033】
このワゴンの組み立ては容易である。こうして組み立てたワゴンにおいて、棚板の位置を変えるには、棚板を外し、ビスを抜いて係止具を外し、別の位置へ移動させてのちビス止めし、あとは係止具に棚板を載せるだけで足りるから、棚板の位置変更は容易である。逆に、組み立てたワゴンを分解するには、上述の組み立てと全く逆の順序で容易に行うことができる。従って、この発明に係るワゴンは、組み立ても分解も容易である。
なお、ワゴンに取手を付設する必要があるときは、支柱3に設けたボルト孔2eによって容易に取手を付設することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 内板
2 外板
3 支柱
4 係止具
5 箱状体
6 棚板
7 底板
8 ボルト
9 天板
10 取手
1a 中央片
1b 側片
1c 係止孔
1d、45 ビス孔
1e ダボ突起
2a、2b ボルト孔
2c 食み出し部分
2d ダボ孔
2e ボルト孔
31 支柱の側面
41 棚受部
42 引掛部
43、44 折曲線
51 底
52、53 側壁
56 補強片
57 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の支柱、天板、底板、棚板、係止具及びキャスターからなる組立式ワゴンであって、天板と底板と棚板は同形同大の直角四辺形の浅い箱状体で構成し、そのうち棚板だけは箱状体の四隅を斜めに切り落とした構造とし、支柱は横断面L形の外板と横断面が船底形の内板とで構成し、船底形の内板は平らな中央片とこれから135度の角度をなして両側に起立する側片とからなり、中央片には係止具係止用の係止孔が穿設され、両側片にはダボ突起が付設されており、外板は内板の外面を覆って幅方向でも長手方向でも内板より食み出しており、幅方向の食み出し部はダボ孔を備えていて折り返されてダボ孔内に内板のダボ突起を嵌入させて内板と一体になっており、長手方向の食み出し部には天板と底板と連結するためのボルト孔を備えて支柱が構成され、底板にはキャスターが固定可能とされていることを特徴とする組立式ワゴン。
【請求項2】
前記係止具が、金属板の小片の一端を表面がわに垂直に折曲して棚受部とし、金属板小片の裏面がわに断面L字状の引掛部を突設し、その際、引掛部におけるLの折曲線を棚受部の折曲線と平行に向かわせて作られていることを特徴とする、請求項1に記載の組立式ワゴン。
【請求項3】
前記内板では長手方向の端に位置するダボ突起が中央片の長手方向の端に位置するビス孔と長手方向の端から等しい距離に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組立式ワゴン。
【請求項4】
前記天板と底板とは、箱状体の側壁の支柱に接する部分に補強片を付設し、補強片の端面を支柱の側面に密接させるとともに、補強片の外面を支柱外面と面一にしたことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1つの項に記載の組立式ワゴン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−125602(P2011−125602A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288968(P2009−288968)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(593087248)株式会社アサヒ (13)
【Fターム(参考)】