説明

組立式物品陳列什器

【課題】連結杆の軸線方向への移動が制限されている場合においても、連結杆を横杆に簡単かつ迅速に連結できるようにする。
【解決手段】左右方向を向く連結杆2の一端を、前後方向を向く横杆4の中間部に連結する連結杆の連結構造において、先端に上向き係合片11が形成された係合用連結部材5を、横杆4の下部より連結杆2に向かって突設し、連結杆2の端部下面に設けた係合孔12を係合片11に上方より係合し、連結杆2の端部と係合用連結部材5とを、止めねじ15により固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管材または棒材よりなる連結杆と横杆とを互いにT字状に連結する連結構造、およびそれを用いて構成される、衣料品や日用雑貨等を陳列するための組立式物品陳列什器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管材または棒材(以下管材等という)からなる脚杆、支柱、連結杆等を組立てて構成される組立式ハンガーラックがある(例えば、特許文献1参照)。
また、管材等からなる方形の側面部材を左右に配置し、この側面部材同士を連結杆で連結し、この連結杆上に棚板を載置するようにした組立式物品陳列什器も知られている。
【特許文献1】実開昭49−129838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
管材等を使用する組立式の什器においては、管材等を連結等するため、特許文献1に示されているように、嵌合挿着、突き当て、ねじ止め、継ぎ材止め等の連結手段が用いられている。上記のように、方形の側面部材を左右対称に配置し、この側面部材同士を連結杆で連結する組立式物品陳列什器においても、このような連結手段が用いられている。ところが、特に大型の組立式物品陳列什器においては、左右の側面部材が相当に離れているため、従来の連結手段を使用した構造では1人で組立作業を行うことが困難であるという問題がある。
【0004】
特に、管材等からなる連結杆を横杆に連結する際に、連結杆の軸線方向の移動が制限されており、連結杆を横杆に設けた孔や筒部に嵌合できないような場合がある。
【0005】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、連結杆の軸線方向への移動が制限されている場合においても、連結杆を横杆に簡単かつ迅速に連結することができるようにした連結杆の連結構造、およびそれを用いることにより、1人でも簡単に組み立てることができるようにした組立式物品陳列什器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)左右方向を向く連結杆の一端を、前後方向を向く横杆の中間部に連結する連結杆の連結構造において、先端に上向き係合片が形成された係合用連結部材を、前記横杆の下部より連結杆に向かって突設し、前記連結杆の端部下面に設けた係合孔を前記係合片に上方より係合し、前記連結杆の端部と係合用連結部材とを、止めねじにより固定する。
【0007】
(2)上記(1)項において、連結杆の先端上部に、丸棒状とした横杆の外周面に密接する湾曲面を形成する。
【0008】
(3)前後方向を向く複数の横杆を有する側面部材を左右に配置し、この側面部材の横杆に設けた連結部材により、左右方向を向く複数の連結杆の両端を固定することにより、前記側面部材同士を連結した組立式物品陳列什器において、先端に上向き係合片が形成された係合用連結部材を前記横杆の下部より内側方に向けて突設し、前記連結杆の端部下面に設けた係合孔を、前記係合片に上方より係合し、前記連結杆の端部と係合用連結部材とを、止めねじにより固定する。
【0009】
(4)上記(3)項において、左右の側面部材のうち、一方の側面部材の一横杆には、係合用連結部材と、横杆に突設されて連結杆先端に嵌合可能な挿着用連結部材とを、前後方向に間隔を隔てて設け、他方の側面部材の対向する横杆には、前記一方の側面部材の係合用連結部材と相対向する箇所に、前記挿着用連結部材を、前記一方の側面部材の挿着用連結部材と相対向する箇所に前記係合用連結部材を設けて、各連結杆の両端部で異なる連結部材により横杆に連結する。
【0010】
(5)上記(4)項において、各側面部材における一係合用連結部材の上下に隣接する部分に、挿着用連結部材が位置するような配置とする。
【0011】
(6)上記(3)〜(5)項のいずれかにおいて、係合用連結部材を横杆と別体に形成し、この係合用連結部材を横杆に止めねじにより固着する。
【0012】
(7)上記(3)〜(6)項のいずれかにおいて、連結杆の先端上部に、丸棒状とした横杆の上部の外周面に密接する湾曲面を形成する。
【0013】
(8)上記(3)〜(7)項のいずれかにおいて、連結杆上に棚板を載置する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
(a)請求項1記載の発明によると、横杆およびそれに固着された係合用連結部材に対して、連結杆の端部を、その係合孔が係合片に嵌合するようにして下降し、その後連結杆の端部と係合用連結部材とを止めねじにより固定することによって、連結杆の端部を、軸線方向に移動させることなく、横杆に簡単かつ迅速に取付けることができる。
したがって、連結杆の他端が他物に当接している場合のように、連結杆の軸線方向への移動が制限されている場合でも、連結杆を横杆に難なく取付けることができる。
【0015】
(b)請求項2記載の発明によると、連結杆の先端の湾曲面を、横杆に載置することにより、係合孔が係合片に対して位置決めされるとともに、止めねじによるねじ止め作業が楽に行なえる。また、横杆に対する連結杆のがたつきを防止することができる。
【0016】
(c)請求項3記載の発明によると、連結杆の端部外周に形成した係合孔を上向きの係合片に上から係合させることにより、連結杆を装着することができるので、側面部材を立てて固定した状態で連結杆を係合用連結部材に載せることにより、簡単に取り付けることができ、したがって、1人でも組立作業を行うことができる。
また、連結杆を、その軸線方向に移動させることなく、横杆に連結できるので、複数の連結杆を、間隔が規制された左右の側面部材に、1本ずつ連結することができる。
【0017】
(d)請求項4記載の発明によると、連結杆の両端部で片方は挿着用連結部材、もう片方は係合用連結部材で連結することにより、挿着用連結部材に水平方向から連結杆を挿着した状態で、連結杆を長手方向に移動させることなく係合用連結部材に上から係合させることができ、したがって、連結杆の両端の連結を別々に行うことができるため、1人での組立作業が簡単に行える。
【0018】
(e)請求項5記載の発明によると、各側面部材における係合用連結部材と挿着用連結部材との配置が、上下方向および前後方向にそれぞれ交互になるようにしたので、連結部材の相互による結合強度等の相違がバランスよく分散され、全体としての結合強度が均一になる。
【0019】
(f)請求項6記載の発明によると、係合用連結部材を別体に形成することにより、任意の間隔で側面部材に取り付け、連結杆の個数や間隔を任意に増減することができる。
【0020】
(g)請求項7記載の発明によると、連結杆の先端の湾曲面を、横杆に載置することにより、係合孔が係合片に対して位置決めされるとともに、止めねじによるねじ止め作業が楽に行なえる。また、横杆に対する連結杆のがたつきを防止することができる。
【0021】
(h)請求項8記載の発明によると、連結杆上に棚板を載置することにより、物品を陳列する陳列棚を簡単に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の組立式物品陳列什器の一実施形態の側面図、図2は、図1のII−II線断面図である。
同図に示すように、物品陳列什器は、図1における右と左に配置されたの側面部材(1A)(1B)と、この側面部材(1A)(1B)を互いに連結する複数の連結杆(2)とを有している。
【0023】
図3は、図1における右側の側面部材(1A)の斜視図である。
同図に示すように、右側の側面部材(1A)は、上下方向を向く前後1対の縦杆(3)(3)と、この脚杆(3)(3)の上端部、中間の2箇所、および最下部同士をそれぞれ連結する前後方向を向く4本の横杆(4)とにより構成されている。横杆(4)の各端部は、溶接により縦杆(3)に固着されている。
【0024】
それぞれの横杆(4)には、以下のように連結手段が設けられている。すなわち、連結手段は、係合用連結部材(5)および挿着用連結部材(6)とにより構成されたもので、係合用連結部材(5)および挿着用連結部材(6)が上下の横杆(4)で互い違いになるように設けられている。すなわち、図3に示すように、最上部の横杆(4a)では、前部に挿着用連結部材(6)、後部に係合用連結部材(5)がそれぞれ設けられ、次段の横杆(4b)では、前部に係合用連結部材(5)、後部に挿着用連結部材(6)がそれぞれ設けられ、3段目の横杆(4c)では、前部に挿着用連結部材(6)、後部に係合用連結部材(5)がそれぞれ設けられ、最下段の横杆(4d)では、前部に係合用連結部材(5)、後部に挿着用連結部材(6)がそれぞれ設けられている。
【0025】
図1における左側の側面部材(1B)においては、右側の側面部材(1A)の係合用連結部材(5)に対向する箇所には挿着用連結部材(6)が、挿着用連結部材(6)に対向する箇所には係合用連結部材(5)がそれぞれ設けられている。したがって、全ての連結杆(2)は、左右において異なった連結手段、すなわち、係合用連結部材(5)と挿着用連結部材(6)とにより、両端が左右の横杆(4)に連結されている。連結杆(2)上には棚板(7)が載置されている。
【0026】
図4は、図1のIV部分の拡大断面図、図5は、図1のV部分の拡大断面図、図6は、係合用連結部材(5)の斜視図である。
図4に示すように、挿着用連結部材(6)は、短い管材を横杆(4)から内方に向かって水平に突出するように溶接により固着したものである。図4における連結杆(2)の右方の端部は、横杆(4)に嵌合され、止めねじ(8)を連結杆(2)の下面に設けた孔(9)から、挿着用連結部材(6)の下面に設けたねじ孔(10)に螺締することにより、挿着用連結部材(6)に固定されている。
【0027】
図5および図6に示すように、係合用連結部材(5)は、横杆(4)の下面に溶接され、内方に向かって水平に延出し、かつ先端に上方に折曲された係合片(11)を有する板状片で構成されている。図5に示すように、連結杆(2)の先端上半部には、横杆(4)の外周面と補形をなす湾曲面(2a)が形成され、かつ、先端部に近い下面には、係合孔(12)が形成されている。湾曲面(2a)を横杆(4)の上部に当接させるとともに、係合孔(12)を係合片(11)に係合させ、係合用連結部材(5)の中間部に設けた孔(13)から、連結杆(2)の端部下面に設けたねじ孔(14)に止めねじ(15)を螺締することにより、連結杆(2)は、係合用連結部材(5)をもって横杆(4)に固定されている。
【0028】
物品陳列什器の組立てにおいては、左右の側面部材(1A)(1B)を立てておき(他の物体に立て掛けてもよい)、一方の側面部材(1A)の任意の挿着用連結部材(6)に、連結杆(2)の一端を挿入して、止めねじ(8)により固着し、次いでその連結杆(2)の他端の係合孔(12)を他方の側面部材(1B)の係合用連結部材(5)の係止片(11)に上から係合させて、止めねじ(15)により固定することによって、まず1本の(2)を連結する。
【0029】
次いで、同様にして、2本目以降の連結杆(2)を、先にその一方の端部を、挿着用連結部材(6)斜め上方より挿入して、ねじ止めし、その後他方の端部を上記と同様にしてねじ止めすることにより、順次連結する。
なお、複数本の連結杆(2)を、ねじ止めすることなく、その一端を装着用連結部材(6)に嵌合し、かつ他端の係合孔(12)を係合片(11)に係合させて仮組みし、その後連結杆(2)の各端部を、まとめてねじ止めしてもよい。
【0030】
図7は、係合用連結部材(5)の変形例である。この例では、横杆(4)と別体に形成した係合用連結部材(11)を、止めねじ(16)により横杆(4)に固着している。このように、係合用連結部材(11)を後付けで取り付けるようにすることにより、任意の間隔で任意の数だけ係合用連結部材(11)を取り付けることができ、必要に応じて連結杆(2)の間隔や個数を増減することができる。
【0031】
以上のように、係合用連結部材(5)では、連結杆(2)を上下方向に移動させて連結することができるので、側面部材(1A)(1B)を立てて固定したまま連結杆(2)を装着することができ、したがって、1人でも組立作業を行うことができる。
【0032】
なお、係合用連結部材(5)を用いた連結杆(2)と横杆(4)との連結構造は、組立式物品陳列什器においてだけでなく、連結杆と横杆とをT字状に連結するあらゆる場合に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の組立式物品陳列什器の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】右方の側面部材を内方より見た斜視図である。
【図4】図1のIV部分の拡大縦断正面図である。
【図5】図1のV部分の拡大縦断正面図である。
【図6】図5の部分を下方より見た斜視図である。
【図7】係合用連結部材の変形例を示す図5と同様の部分の断面図である。
【符号の説明】
【0034】
(1A)(1B)側面部材
(2)棚板
(2a)湾曲面
(3)縦杆
(4)(4a)(4b)(4c)(4d)横杆
(5)係合用連結部材
(6)挿着用連結部材
(7)棚板
(8)止めねじ
(9)孔
(10)ねじ孔
(11)係合片
(12)係合孔
(13)孔
(14)ねじ孔
(15)止めねじ
(16)止めねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向を向く連結杆の一端を、前後方向を向く横杆の中間部に連結する連結杆の連結構造であって、
先端に上向き係合片が形成された係合用連結部材を、前記横杆の下部より連結杆に向かって突設し、前記連結杆の端部下面に設けた係合孔を前記係合片に上方より係合し、前記連結杆の端部と係合用連結部材とを、止めねじにより固定したことを特徴とする連結杆の連結構造。
【請求項2】
連結杆の先端上部に、丸棒状とした横杆の外周面に密接する湾曲面を形成した請求項1記載の連結杆の連結構造。
【請求項3】
前後方向を向く複数の横杆を有する側面部材を左右に配置し、この側面部材の横杆に設けた連結部材により、左右方向を向く複数の連結杆の両端を固定することにより、前記側面部材同士を連結した組立式物品陳列什器において、
先端に上向き係合片が形成された係合用連結部材を前記横杆の下部より内側方に向けて突設し、前記連結杆の端部下面に設けた係合孔を、前記係合片に上方より係合し、前記連結杆の端部と係合用連結部材とを、止めねじにより固定したことを特徴とする組立式物品陳列什器。
【請求項4】
左右の側面部材のうち、一方の側面部材の一横杆には、係合用連結部材と、横杆に突設されて連結杆先端に嵌合可能な挿着用連結部材とを、前後方向に間隔を隔てて設け、他方の側面部材の対向する横杆には、前記一方の側面部材の係合用連結部材と相対向する箇所に、前記挿着用連結部材を、前記一方の側面部材の挿着用連結部材と相対向する箇所に前記係合用連結部材を設けて、各連結杆の両端部で異なる連結部材により横杆に連結するようにしたことを特徴とする請求項3記載の組立式物品陳列什器。
【請求項5】
各側面部材における一係合用連結部材の上下に隣接する部分に、挿着用連結部材が位置するような配置とした請求項4記載の組立式物品陳列什器。
【請求項6】
係合用連結部材を横杆と別体に形成し、この係合用連結部材を横杆に止めねじにより固着したことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の組立式物品陳列什器。
【請求項7】
連結杆の先端上部に、丸棒状とした横杆の上部の外周面に密接する湾曲面を形成したことを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の組立式物品陳列什器。
【請求項8】
連結杆上に棚板を載置したことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の組立式物品陳列什器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−132567(P2006−132567A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319034(P2004−319034)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】