説明

組織を測定するための高波数ラマン分光法の使用

本発明は、レーザー、ラマン・シグナルを測定するためのシグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを含む機器の使用であって、前記光ファイバー・プローブは、前記組織にレーザー光を向けるための、および前記組織によって分散される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導くための1つまたは複数の光ファイバーを含み、前記ファイバーは、コア、クラッディング、および選択的にコーティングを含み、光を集めるための前記ファイバーまたはファイバー群は、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さず、前記検出ユニッストは、前記スペクトル領域の組織によって散乱されたラマン・シグナルを記録する使用に関する。本発明により、エキソビボ、インビトロ、インビボでのアテローム硬化型プラークの解析および診断、並びに腫瘍組織の検出が可能となり、当該技術分野の技術の現在の水準を超える利点を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織のラマン・シグナルを測定するための、レーザー、シグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを含む機器およびこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アテローム性動脈硬化症は、世界の大部分における重要な死因である。従って、血管内に発生するプラークについての情報を得るための多くの技術が開発されてきた。血管造影法、磁気共鳴映像法、血管内超音波、および光学的干渉性断層撮影法などの撮像技術は、プラークまたは血管閉塞の位置に関し、およびプラークの形態または内部構造についての情報をもたらす。しかし、これらでは、プラークの分子組成の詳細な生体内分析はできない。プラークの分子組成についての知識は、たとえば急性の心臓イベントの危険度を決定するために重要である。いわゆる安定なプラークと脆弱なプラークは、区別されており、脆弱なプラークは、このような急性の、たいてい致命的なイベントを生じ得ると考えられている。このようなイベントは、プラークの薄い線維性被膜が破裂して、プラークの脂質プールの内容物が血流と接触して、動脈の血栓形成および閉塞に至ることによって誘発される。
【0003】
蛍光に基づいた方法により、インビトロで正常な動脈壁とアテローム硬化型のプラークを区別することができることが示された。しかし、蛍光スペクトルは、組織および血中の光を吸収する分子によって容易に分解され、その適用性が制限される。
【0004】
アテローム硬化型のプラーク組成物に関する情報を得るための全ての方法であって、原則としてインビボで適用することができる方法のうち、血管内ラマン分光法が、最も詳細な情報を提供する。ラマン分光法では、調査される試料上に起こりやすい光と、試料によって非弾性的に散乱する光との間のストークスシフトを相対的波数(λ(波長)をメートルで、Δcm-1=(1/λin-1/λscattered)10-2)で現す。この情報を得るために、約400〜2000cmの間の波数領域(いわゆる指紋領域)のラマンスペクトルが使用される。この領域のスペクトルは、多くのバンドを含み、これらは識別することができ、かつ組織の分子組成に関する情報を得るために個々に、および/または組み合わせて使用することができる。
【0005】
アテローム性動脈硬化症の分野の研究は、指紋領域が解析または診断に非常に有益であるために、このスペクトル領域に関連するものだけである。このような研究の例は、たとえば複数のファイバー・プローブを使用し、400〜1800cm-1領域で測定する血管内のラマン分光法によって動脈壁の分子組成のインビボでの決定について論議するH.P. Busebman, E.T. Marple, M.L. Wach, B. Bennett, T.C. Selsut, H.A. Bruining, A.V. Bruschke, A. van der Learse and G.J. Puppels, Anal.Chem. 72 (2000), 3771-3775;心血管組織における、また指紋領域における、石灰化されたアテローム硬化型の病変のレーザーラマン分光法について論議するR.H. Clarke, EB. Hanlon, J.M tuner, H. Brody, AppI. Optics 26(1987), 3175-3177;および指紋領域のラマン分光法によるヒト冠動脈組成の決定を扱うJ.F. Brennan, T.J. Romer, R.S. Lees, A.M. Tercyak, JR. Kramer, MS. Feld, Circulation 96 (1997), 99-105の論文に見いだされる。
【0006】
ほとんどの場合のラマン分光法のインビボでの適用には、小さな直径の屈曲性の、光を導く装置を使用することが必要である。これは、例えば動脈の内腔に導入することができる。これは、アテローム硬化型の病変を有する位置に達して、指令を送ることができなければならない。また、これは、内視鏡の作業通路において、または生検針もしくは生検鉗子内部で使用することもできる。光ファイバー・プローブ(1つまたは複数の光ファイバーを含む)は、調査下で組織に光を導き、組織によって散乱する光を集め、この集めた光を組織からスペクトル分析装置の方へ移送しなくてはならない。
【0007】
残念なことに、400〜2000cm-1のスペクトル領域では、光ファイバーの材料自体がラマン・シグナルを生じ、強力なシグナル・バックグラウンドを生じてしまう。そのうえ、ファイバーの屈曲は、コア、クラッディング、およびコーティング材料から得られるシグナルの量に変化を生じさせ、シグナル検出およびシグナル解析をさらに複雑にしてしまう。これにより、組織ラマン・シグナルが検出することができるシグナル-対-ノイズを劣化させ、更に他にもシグナル解析を複雑にし、したがって臨床的な有用性にネガティブな影響をあたえてしまう。従って、検出された組織ラマン・シグナルに対するバックグラウンド・シグナルの寄与を抑制するために、光ファイバー・プローブの遠位端で、またはその近くで光学フィルターを使用し、これにより組織に接触し、または非常に近接する必要がある。しかし、これも、次にレーザー光を組織に導くために、および組織から散乱された光を集めて導くために、別々の光ファイバーを使用することを必要とする。さらに、レーザー光によって照らされた組織の量とラマン・シグナルを制御することができる組織の量との間で所望の重複を得るために、光ファイバー・プローブの遠位端で、光線を進める装置またはレンズもしくはレンズ類の使用が必要なことが多い。従って、ラマン分光法のための光ファイバー・プローブは、複雑である。ラマン分光法のための光ファイバー・プローブを小型にすること、およびこれらの可動性に保つことは、例えば血管内の使用のために、および内視鏡の補助チャネルに使用するために必要であるが、これは困難である。また、複雑であることにより、これらを病院で使い捨てとして使用することができる価格でこのようなプローブを生産する障害となる。さらに、400〜2000cm-1のシグナル強度は低く、比較的長いシグナル積分時間を必要とし、おそらく臨床での使用には非実用的である。上述した全ての問題および不利な点は、一般的に臨床的な診断目的のために、および、特に血管内での使用のためにラマン分光法を実際に実施する妨げとなっている。
【0008】
光は、光ファイバーを介して、いわゆる結合した様式(bound mode)で導かれる。これらの結合した様式では、電磁場は、主に光ファイバーの中心に位置しており、わずかな部分がクラッディングに及んでいる。低次モードでは、高次モードよりも中心に限定される。
【0009】
光ファイバーによって導かれる光の強度は、減衰される。これは、吸収によって、光散乱(レイリー散乱、より大きく不均質性の部位またはファイバー材料が損傷を受けた部位で)によって、およびミクロ及びマクロな屈曲による減少によって引き起こされる。
【0010】
散乱現象によって減少されるレーザー光は、ファイバーのコアを離れて、コーティング(および緩衝)層を通過する。コーティング層およびバッファ層は、通常シリコーン、またはプラスチックもしくは高分子物質でできている。
【0011】
US 5,293,872は、正常な動脈組織、石灰化されたアテローム硬化型プラーク、および線維性のアテローム硬化型プラークを区別するための、近赤外(NIR)のレーザー光で励起されるラマン分光法の使用を教示する。700〜1900cm-1領域でのインビボ測定のために、光ファイバーの束の使用が論議されている。これでは、たとえばノイズに関して上記のものと同じ不利な点を生じる。
【0012】
US 5,194,913は、複数の光ファイバーの問題を認識しているが、単一のファイバーの使用でも、光ファイバーに生じるバックグラウンド・ラマン・シグナルが最も短いファイバー以外の全てについて高いという事実によって妨げられている点に留意されたい。光ファイバーからのバックグラウンド・ラマン発光を減少させるために、2つの逆のファイバーを使用し、かつ光学フィルターを使用する光ファイバー装置を開示する。この文献は、一般のファイバーにおけるシグナルの問題に関連しており、US 5,194,913に、すなわち軸の配置によって提供される解決は、インビボでの測定のために容易に使用することができないことが明らかである。
【0013】
JF. Aust, KS. Booksh and M.L. Myrick, Applied Spectroscopy 50 (1996), 382-386の論文では、重合体からのシグナル強度を生物組織から得られるであろうよりも高いレベルまで増大するために、試料から得られたシグナルが比較的強い(重合体の)場合、または試料-ラマン・シグナルが得られる測定体積を増加するなどの特別な測定がされた場合について論議している。本論文では、本方法の組織への適用性について何ら論議していないが、良好なシグナルのためには、良好なシグナルを得るために、重合体で満たされた4cmまでの特別なテフロン(登録商標)・チューブを光学プローブの先端で使用しなければならないことを教示する。このような方法は、通常は組織に適用できず、特にインビボ測定の場合は適用できない。
【0014】
次に、アテローム性動脈硬化症の癌は、重大な健康問題でもある。上で遭遇するのと同じ問題は、光ファイバーを経てラマン分光法によって腫瘍細胞を決定するためにもあてはまる。US 5,261,410は、ファイバーの束の使用および指紋領域の測定を教示する。このような使用も、満足なシグナル対ノイズ比には至らない。
【0015】
上記から、上述した問題を有さない組織のラマン・シグナルを測定するための機器が必要であることは、明白である。
【発明の開示】
【0016】
発明の概要
本発明は、レーザー、ラマン・シグナルを測定するためのシグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを含む機器であって、前記光ファイバー・プローブは、前記組織にレーザー光を向けるための、および前記組織によって分散される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導くための1つまたは複数の光ファイバーを含み、前記ファイバーは、コア、クラッディング、および選択的にコーティングを含み、光を集めるための前記ファイバーまたはファイバー群は、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さず、前記検出ユニッストは、前記スペクトル領域の組織によって散乱されたラマン・シグナルを記録する装置および機器の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明のな説明
本発明は、レーザー、ラマン・シグナルを測定するためのシグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを含む機器の使用であって、前記光ファイバー・プローブは、前記組織にレーザー光を向けるための、および前記組織によって分散される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導くための1つまたは複数の光ファイバーを含み、前記ファイバーは、コア、クラッディング、および選択的にコーティングを含み、光を集めるための前記ファイバーまたはファイバー群は、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さず、前記検出ユニッストは、前記スペクトル領域の組織によって散乱されたラマン・シグナルを記録する使用に関する。
【0018】
この装置を使用する利点は、迅速なインビボおよびエキソビボでの組織、および患部組織、たとえばアテローム硬化型プラーク、腫瘍、前癌性の組織、および良性組織病変のラマン分光計での特性付けがが可能になること、並びに十分なシグナル対ノイズ比を有するラマン・スペクトルを得るために必要とされるシグナル収集回時間を減少することである。さらなる利点は、光ガイドのスペクトル・スループットを制限する余分な手段、たとえば濾過などを必要としないので、ラマン測定は、蛍光測定、近赤外吸収の測定、および光学撮像技術などのその他の有益な技術と容易に組み合わせることができ、これにより組織に光を導くため、並びに蛍光または近赤外の検出ユニットのそれぞれへこれを導き戻すための両方のために光ガイドを使用して、またはこれらのために別々の光ガイドを使用して、同じ光導体の使用を作製することができる。
【0019】
本明細書に記載されている本発明は、薄い組織横断面のラマン・スペクトルを、そのラマン・スペクトルの2500〜3700cm-1領域だけを使用して記録し、解析することによって、アテローム硬化型プラークの組成および組成の不均一性に関する非常に詳細な情報を得ることができ、脳腫瘍組織を正常な脳組織から、および頭蓋骨組織から区別することができ、かつ壊死性の脳(腫瘍)組織を生きた腫瘍組織から区別することができるという驚くべき知見に基づく。
【0020】
以前には、これらの組織の種類を検出するためにラマン・フィンガープリント領域が使用された(たとえば、US 5,293,872;US 5,261,410;Anal.Chem. 72 (2000), 3771-3775; AppI. Optics 26 (1987), 3175-3t77; Circulation 96 (1997), 99-105を参照されたい)が、これは、上述した組織がこのようなより高い波数領域に特徴的かつ特有なラマン・シグナルを有することが既知であり、または示唆するものではなかった。この領域を選択することは、大きな利点を有する。ラマン・スペクトルの指紋領域の測定のためには、特別な光学フルターで弾性力をもって散乱したレーザー光の強度を抑制し、これをレーザー波長の近くの波長に高い透過を有する弾性力をもって散乱するレーザー光の強度の深い減衰と組み合わせることが必要である。しかし、本発明では、生じやすいレーザー光と高波数領域のラマン散乱光との間に大きな波長シフトが存在する。これにより、たとえばカラー・ガラス濾過器などの弾性力をもって散乱するレーザー光の強度の抑制のためのシグナル検出経路に、非常に単純かつ安価な吸収フィルターの使用が可能になる。
【0021】
一般に、組織のラマン・シグナルの強度は、400〜2000cm-1領域(指紋)よりも、この高い波数領域において有意に高く(約5倍以上に)、また、シグナル収集時間を、たとえば約5倍以上に減少できる。
【0022】
この領域を選択するもう一つの利点は、これにより、組織を照らすために、および組織からのラマン・シグナルを集めるために、単一の光ファイバーを使用して、組織ラマン・シグナルの記録が可能になり、組織ラマン・シグナルが、光ファイバーに生じたバックグラウンド・シグナルのものに相当する強度またはより高い強度であるということである。いくつかのファイバーは、この波長領域のファイバー自体のラマン散乱が組織のシグナルと比較して低いか、または無視できるため、これらの種類の測定に非常に適している。これは、同じ配置において、数メートルの長さのファイバーを使用する実用的な状況で、光ファイバーのシグナル・バックグラウンドが、通常は組織のラマン・シグナルよりも1桁以上高い強度を有する指紋領域とは異なる。
【0023】
加えて、2500〜3700cm-1領域のある種の光ファイバーからのバックグラウンド・シグナルは、波数変化の関数として強度の変化が組織ラマン・シグナルと比較して非常に小さいシグナルからなり、従って、組織ラマン・シグナルから容易に区別すること、および/またはシグナル解析の根拠とすることができる。指紋領域では、ファイバーからのバックグラウンド・シグナルは、鋭い特徴を有するほど、より高度なシグナル解析を生じる。それ故、本発明の波数領域のシグナル対バックグラウンド比は、指紋領域よりも高い。これは、より高い波数領域ではファイバーのラマン・シグナルがないか、または強力に減衰されるが、指紋領域では、従来技術に用いられているように、ファイバーがラマン・シグナルを生じ、組織または試料のラマン・シグナルを妨げるか、または打ち勝つことさえあるという知見による。
【0024】
特にラマン・スペクトルの2700〜3100cm-1領域は、上述した組織に有益である。従って、本発明の好ましい態様において、機器の検出ユニットは、2700〜3100cm-1のスペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを記録する。従って、さらなる利点は、今では、少しの波数領域のシグナルを記録する必要があるだけであり、わずかなチャネルを有する多チャネルの光検出器を使用することができることである。2700〜3100cm-1のスペクトル領域を通じて、組織、好ましくはアテローム硬化型プラークおよび癌性または前癌性の組織の疾患の検出、解析、および診断のために特に有益な領域であり、本発明は、付加的情報を得るために、言及したスペクトル領域の外側で測定することを除外しない。また、本発明は、ある態様において、2700〜3100cm-1の領域に加えて、その他のスペクトル領域(たとえば指紋領域)のラマン・シグナルを収集することを含む。
【0025】
ラマンの生成および検出機器を使用する利点は、試料の測定(特に、(インビボでの)組織の測定)、特性付け、および/または組織分類のためのラマン分光計の複雑さが、より高い波数のスペクトル領域を使用して、レーザー光を組織に導くための、並びに組織によって散乱される離れる光を導くための、両方のために役立つ光ガイドを慎重に選択することによって減少されることである。それ故、本発明は、光ファイバー・プローブが、組織上へレーザー光を向けるだけでなく、組織によって散乱される光を収集し、組織からシグナル検出ユニットの方へ離れる光を集める光ファイバーを含む装置の使用を含む。また、この態様も、レーザー光を組織に導くために、並びに組織によって散乱される離れる光を導くために、両者に役立つ多くのファイバーを有する光ファイバー・プローブを含む。プローブ中のこのようなファイバーの1つ、いくつか、または全てをこうすることができるので、光ファイバー・プローブの次元は、組織の特徴付けのための当該分野の光ファイバー・プローブの状態(これは、レーザー光を試料へ導くため、およびラマン・シグナルを検出するための異なるファイバーを含む)と比較して減少することができる。
【0026】
さらなる利点は、インビボで血管内の使用のためのラマン・カテーテルのサイズを1つの単一の光ファイバーだけに最小限にすることさえできるということである。これは、たとえば血管内の光ファイバー・プローブの直径を最大限減少させることができ、最大の光ファイバー・プローブ柔軟性を達成することができることを意味し、これらは、血管内使用のためのカテーテルのたいへん望ましい性質でもある。また、小さな光ファイバー・プローブが望ましいその他の適用のために、本機器を使用することができる。
【0027】
複雑さの有意な減少および続く光ファイバーの生産コストの減少は、もう一つの利点である。ファイバーを使い捨てとして使用することさえでき、臨床用途の血管内カテーテルにはたいへん望ましい。
【0028】
本発明のもう一つの態様において、ラマン測定は、蛍光および/または近赤外の吸収測定と組み合わせることができる。それ故、検出ユニットは、また、測定蛍光のために検出器および/または近赤外の吸収のための検出器を含む。この態様では、たとえばファイバーを利用する蛍光および/または近赤外の吸収測定も、ラマン・シグナルを得る際に使用することができる。
【0029】
さらなる態様において、1つの単一の光ファイバーのみを、組織にレーザー光(および(N)IR光)を向けるために、並びに組織によって散乱されるラマン・シグナルを集めるために、蛍光および/または近赤外シグナルを集めるために、および組織から、それぞれの検出器を含むシグナル検出ユニットの方へ集められた光を導くために使用する。
【0030】
もう1つの態様において、増強されたシグナルを得るために、複数のファイバーを使用することができる。また、この態様は、ラマン測定を蛍光および/または近赤外の吸収測定と組み合わせることができ、かつ検出ユニットが蛍光測定のための検出器および/または近赤外の吸収のための検出器を含む機器の使用を含む。もう1つの態様において、ファイバーを利用する蛍光および/または近赤外の吸収測定を、ラマン・シグナルを得る際にも使用したときは、プローブの次元をさらに減少することができる。ここで、「ファイバー」は、1つまたは複数のファイバーを含む。ファイバーのこのような束を、組織領域を測定し、および/または走査するために使用することができる。本利点は、測定位置を当該技術分野の光ファイバー・プローブの状態よりも間近にして、解像度を上げることができることである。
【0031】
小さな直径および高い柔軟性により、ラマン・プローブをその他の検知様式(たとえば、血管内使用のための血管内超音波および腫瘍学的な適用のための内視鏡内への組み込み)と共に組織試料を得るための機器(微細な針で吸引を得るための組織診鉗子または機器など)に組み込むために、または治療様式(たとえば、腫瘍組織などの組織を凝固させるために加熱を使用する装置または手術器具)と組みあわせるための最高の可能性を提供する。それ故、本発明は、ファイバーの一部が組織についての付加的情報を提供するカテーテルに組み込まれた、もしくは組み合わせた、または組織試料を得るための手段、組織を治療するための手段、および/または外科的手技に使用される手段と組み合わせた機器を含む。
【0032】
これらの全ての利点により、非常に簡略化された機器となる。従って、機器は、アテローム硬化型プラークのエキソビボ、インビトロ、およびインビボでの解析並びに診断、並びに現在の最高水準の技術以上に優れた利点を有する腫瘍組織の検出を可能にする。
【0033】
本発明の前後関係において、「組織」は、ヒト、動物、または植物起源の組織をいうが、特にヒトまたは動物組織を意味する。組織は、ヒトまたは動物体の生物学的な細胞もしくは細胞群、器官、もしくは一部、またはヒトおよび動物から、もしくはこれらの一部(たとえば、骨、血液、または脳であることができる)から抽出された物質を含む。組織試料は、正確に計ることができ、すなわち、インビトロまたはインビボでレーザーによって放射される光で照明することによって誘発されるラマン・シグナルを測定することができる。組織は、1つまたは複数の特長(形態学的、化学的、遺伝的な特徴を含むであろうが、これに限定されない)を有する場合、特定の臨床診断の分類に属すると考えられる。これらは、特定の病状に典型的であり得る。
【0034】
ファイバーの先端は、組織内、または上にあることができるが、近くに近接、例えば2、3mm内にあることができる。しかし、レンズを使用して組織上のイメージにファイバーの遠位端をイメージするときは、近接は、より広範であることもできる。場合によっては、たとえば試料を、たとえばガラスを介して測定するときは、先端は試料上にあることができない。このような場合、近接は、2、3センチメートル以上であることもできる。本発明の近接は、前述のオプションの両方を含む。
【0035】
本発明のレーザーは、レーザー様の、十分なスペクトル解像度を有する試料の所望のラマン・シグナルを測定することができるほどの十分に狭い線幅を有する任意の単色光供与源である。線幅は、ほとんどの場合、好ましくは5cm-1以下である。このような供与源の光線をファイバーに結合させて、光を試料にあてる。このような試料のラマン・シグナルは、このようなレーザー源からの光でこれを照射することによって生じさせてもよいが、試料は、入射光のラマン散乱に関与しうる分子振動モードを有する分子を含むことを条件とする。好ましくは、組織のラマン測定のためには、このような方法では、組織における入射レーザー光の吸収が最小であり、また、組織の自己蛍光も最小になるので、レーザーまたは供与源は、約600nm以上の発光を有する。自己蛍光は、ラマン・スペクトルに対するバックグラウンド・シグナルを引き起こす可能性があり、これがラマン・シグナルが検出されるシグナル対ノイズを悪化させる。供与源の例は、たとえばダイオードレーザ、ヘリウム‐ネオンレーザTi-サファイヤ・レーザーなどである。
【0036】
本発明の「機器」は、ラマン・シグナルを生じさせるためのレーザー、光ファイバー、およびシグナル検出ユニットの組み合わせを含む分光計を意味する。
【0037】
分光計は、レーザー光と同じ波長を有する分光計へ導かれる光の成分の強度を抑制するフィルターを含んでいてもよい。このフィルターは、好ましくは8桁以上までこの強度を抑制するが、関心対照の波数領域のラマン散乱光の強度を好ましくは10%未満に抑制するべきである。より高い波数のスペクトル領域を使用することは、レーザー光と関心対象の波数領域との間が大きな波長間隔であることを意味するので、これは、たとえばSchottからのRG780カラー・ガラスなどの単純なカラー・ガラス吸収フィルターであってもよい。一連の3mmの厚みのこのようなフィルターのうちの2つ(両方とも商業上に入手可能)は、725nm以下のレーザー光を10桁以上まで抑制するが、ガラスと空気の界面での反射損失以外の関心対象のラマン・シグナルの有意な減弱を引き起こさない。好ましくは、フィルターの入口および出口は、ガラスと空気の界面での反射損失を最小にするために、関心対象の波数領域に最適化した反射防止コーティングでコートされる。そのような方法で、90%以上のラマン・シグナルのスループットを容易に達成することができる。分光計は、好ましくは可動部分を持たず、NIRのスループットに最適化されており、好ましくは少なくとも8cm-1の解像度を有する。
【0038】
しかし、いくつかの場合では、蛍光は、組織の特徴づけのための情報の供与源として、並びに同時にまたは経時的に1つまたはいくつかのファイバーのいずれかと共に、試料のラマン・シグナルおよび蛍光を測定することが要求される(上記を参照)。このような態様では、蛍光興奮光は、600nm以下、たとえば青またはUVの波長を有していてもよい。
【0039】
シグナル検出ユニットは、好ましくは、NIRの光検出のために最適化された多チャネルのCCD-検出器様の検出器を含む。このような検出器の例は、Anddor-technology (Belfast, Northern-Ireland)からの超消耗背面照明CCD-カメラ(deep-depleted back-illuminated CCD-camera)(DU4OI-BRDD)である。関心対象のスペクトル領域は、たとえば格子またはプリズムによって選択することができる。記録されたスペクトルは、好ましくは専用のソフトウェアおよびパソコンによってリアルタイムで示され、および/または解析される。
【0040】
本発明の前後関係において、光ファイバーは、近端部および遠位端を有し、近端部から遠位端へ光を導くことができる装置として定義される。「ファイバー」の用語は、1つまたは複数のファイバーを含む。「光ファイバー・プローブ」の用語は、1つの光ファイバーまたは束の光ファイバーを含む。
【0041】
ファイバー・プローブの遠位端は、特定の照明方向および/または角度で到達するように、および/または特定の光収集の方向および/または角度で到達するように、および/または照射される試料表面を決定するために、および/またはラマン・シグナルが優先して検出される試料体積のサイズおよび/または位置を決定するために、これに物理的に付着されたミクロ光学成分と共に形づくられても、または装着されてもよい。ラマン分光法で組織を測定する技術分野において、これらのプローブは、(ラマン)シグナルを検出器に導くために、通常励起のための1つのファイバーおよび少なくとも1つのファイバー、しかし通常は多くのファイバーを含む。
【0042】
光ファイバーは、コアおよびクラッディングおよび通常1つまたは複数の保護コーティングの層からなる。このようなコーティング(1つまたは複数のコーティングを含む)は、厚みを広範に変更することができる。文献では、「コーティング」または「緩衝剤」として光ファイバーのクラッディングを囲む保護層に言及している。本発明の前後関係において、光ファイバーのクラッディングを囲む材料の一つまたは複数の全ての層をファイバーコーティングと称する。さらに機械強度を付加するために、または、ファイバーがあまりに堅すぎて屈曲しないのを防止するために、時にジャケットが適用される。ジャケットは、光ファイバー(または、ファイバー群)が挿入される強固または柔軟なチューブとして定義され、ファイバー(または、ファイバー群)のさらなる保護をもたらす。
【0043】
この波長領域のファイバー自体のラマン散乱は、試料のシグナルと比較して低いか、またはごくわずかであるので、いくつかのファイバーは、これらの種の測定に非常に適していることが判明した。それ故、本機器は、実質的にラマン・シグナルが見いだされるスペクトル領域にラマン・シグナルを有しないファイバーを含む。
【0044】
本発明の前後関係において、「実質的に」シグナルがない、および同様の句は、このようなシグナルが、機器によって測定される組織のシグナルと同じかまたはより小さな強度であり、組織のシグナルから識別可能であることにより、その他のシグナルから識別可能であることを意味する。たとえば、このようなシグナルは、実質的に存在しないか、またはたとえば1桁より小さい。
【0045】
好ましいファイバーの例は、たとえばCeramoptec Industries IncからのWF200/220A光ファイバーもしくは3M Company からのFG-200-LCR光ファイバー、または同等のファイバー様のような、溶融シリカ・コアおよび溶融シリカクラッディングを有するファイバーである。たとえばCeramoptec Industries IncからのWF200/220N光ファイバーまたは3M Company からのFT-200-EMR光ファイバーのような、いくつかのファイバーは、関心対象のスペクトル領域に大きなバックグラウンド・シグナルを有するように見え、あまり好ましくない。
【0046】
良好な結果は、光ファイバー・プローブが、低OH-溶融シリカ・コアを有する少なくとも1つのファイバーを含む光ファイバー・プローブで得られる。このような光ファイバーは、非常に低量のOH-を含むことにより、スペクトルの近赤外領域でのファイバーの光吸収(これは、組織のラマン測定のために好ましいスペクトル領域である)を最小にする。これは、たとえば溶融シリカ・コアおよび溶融シリカまたはテフロン(登録商標)もしくはTECSクラッディング(これらは、近赤外で高い透過を有する)を有する少なくとも1つの光ファイバーを含む光ファイバー・プローブ、また2500〜3700cm-1の波数間隔において本質的にほとんどまたは実質的に全くシグナルを生じないコーティング材料を使用することにより、もしくはコーティング・シグナルの生成および/または検出を最小にする測定を適用することによって、あるいは両方ともによって、コーティングからの低いバックグラウンド・シグナルの寄与が得られる光ファイバーであってもよい。
【0047】
本発明の具体的な態様において、本発明は、レーザー、ラマン・シグナルを測定するためのシグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを含む機器であって、前記機器は、レーザー、ラマン・シグナルを測定するためのシグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを含み、前記光ファイバー・プローブは、前記組織にレーザー光を向けるための、および前記組織によって分散される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導くための1つまたは複数の光ファイバーを含み、前記ファイバーは、コア、クラッディング、および選択的にコーティングを含み、光を集めるための前記ファイバーまたはファイバー群は、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さず、前記検出ユニットは、前記スペクトル領域の組織によって散乱されたラマン・シグナルを記録し、並びに前記検出ユニットは、組織以外のその他の供与源によって生じたラマン・シグナルを実質的に測定しない機器に向けられる。このような供与源は、光ファイバー・プローブ、例えばコア、クラッディング、またはこのような光ファイバー・プローブの、もしくはその中の光ファイバーのファイバー層であってもよい。「ラマン・シグナルを測定しない」の句は、検出ユニットがこのようなシグナルを受けないか、もしくはこのようなシグナルを検出しないか、または両方とものいずれかを意味する。
【0048】
この態様のバリエーションにおいて、本発明は、レーザー、ラマン・シグナルを測定するためのシグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを含む機器であって、前記光ファイバー・プローブは、前記組織にレーザー光を向けるための、および前記組織によって散乱される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導くための1つまたは複数の光ファイバーを含み、前記ファイバーは、コア、クラッディング、および選択的にコーティングを含み、光を集めるための前記ファイバーまたはファイバー群は、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さず、前記検出ユニットは、前記スペクトル領域の組織によって散乱されたラマン・シグナルを記録し、前記検出ユニットは、組織以外のその他の供与源によって生じたラマン・シグナルを実質的に測定せず、並びに検出ユニットは、組織以外のその他の供与源によって生じた蛍光を実質的に測定しない機器に向けられる。本明細書において、蛍光は、たとえば、コア、クラッディング、またはコーティング材料によるたとえば蛍光であってもよい。
【0049】
たとえば、ポリイミドコーティング(たとえば、Stirling, New Jersey, USAによって販売される、SPS200/210/233RTFファイバーに適用される)は、組織から得られるラマン・シグナルと比較したときに、720nmレーザー光および2mの長さを有する光ファイバーを使用するときに、強い蛍光バックグラウンドを引き起こすことが見いだされた。もう一つの例は、WF200/220P(Ceramoptecから)であり、これは、溶融シリカ・コア、溶融シリカクラッディング、およびポリイミドコーティングを有するファイバーであり、また、強力な蛍光バックグラウンドを示す。このために、ポリイミド・コートしたファイバーは、本発明にあまり適していない。
【0050】
一つの態様において、検出ユニットが実質的に、組織以外のその他の供与源によって生じたラマン・シグナルを実質的に測定しないという特徴は、たとえば実質的に2500〜3700cm-1のスペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さない光を集するためのファイバーまたはファイバー群を用いて得ることができる。適切なコアおよびクラディング材料の例は、溶融シリカおよび種々の形態の不純物を注入した溶融シリカである。不適当な材料の例は、ZBLAN(たとえば、ファイバー型ZlOOFJ、ZIOOFV、Zl2OAIに使用される、INO、Sainte-Foy、Quebec、Canadaによって販売)(赤外線または近赤外線レーザ光(たとえば720nm)がこれを進むときに、比較的強い蛍光を示す)、PMMA(ポリメチルメタクレート)またはポリスチレンその他でできているものなどのプラスチック光ファイバー、および高波数領域で強いラマン・シグナルを示すその他のものである。シリカのように、テフロン(登録商標)は、高波数領域のラマン・シグナルを示さないので、溶融シリカ・コア材料およびテフロン(登録商標)・クラッディングからなるファイバー(Polysnicro, Phoenix Arizona, USAによって販売されるFLU型ファイバーなど)が適している。サファイアに基づいたファイバーは、通常クロムの混入があり、これがスペクトルの赤外および近赤外領域に発光を生じ得るために、あまり適していない。このようなファイバーは、ファイバー材料の蛍光が良好な組織のラマン・スペクトルを得ることができるほど十分に低いかどうかを決定するための試験をすることが必要である。
【0051】
好ましくは、光ファイバーのクラッディングに適用されるコーティング材料は、高波数領域のラマン・シグナルを有さない。例は、光ファイバーのコーティングが一つ以上のテフロン(登録商標)コーティングおよび金属コーティング(アルミニウム、銅、または金など)を含む態様である。金属コートされたファイバーは、たとえばFiberguide Industries(Stirling, New Jersey, USA)およびOxford Electronics (Four Marks, United Kingdom)から商業的に入手可能である。
【0052】
前述したその他のコーティング材料の使用も可能であるが、このようなコーティング材料に生じるバックグラウンド・ラマン・シグナルの強度を最小にするためには、一般に余分な手段が必要である。このような測定は、結合されたファイバーモードを離れてコーティング材料に入り、かつ横切り、そこでコーティングのラマン・シグナルを生じる光の量を最小にしなければならず、また、ファイバーのコアから現れ、かつ光ファイバーの口径数内に現れる光だけがラマン検出器に到達することを確実にしなければならない。これ故、さらなる態様において、検出ユニットが実質的に組織以外のその他の供与源によって生じたラマン・シグナルを測定にしないという特徴は、たとえば検出ユニットが実質的に光ファイバーのコアから得ることができるシグナルのみを測定する検出ユニットを使用することによって得ることができる。
【0053】
たとえば、これは、本発明に従った機器であって、レーザー光は、光プローブのコアの中心部分(のみ)に、できる限り小さな口径数下で結合されている機器を使用して達成してもよい。このような方法では、レーザー光は、主に最も損失の少ないファイバーの低順位モードにおいて結合し、したがって、レーザー光に対するコーティング材料の曝露を最少にして、その結果最少のコーティング・ラマン・シグナルの生成を最小にする。
【0054】
もう一つの態様において、顕微鏡でみえる表面欠陥が残らないように表面欠陥を最小にするために、レーザー光を光ファイバー内に結合する光ファイバーの端面が研磨されている機器が使用される。これは、一般に既知の商業的に入手できるファイバー研摩装置の適用によって達成することができる。これにより、レーザー光を結合モードで導くことができない向きへファイバーの端面表面でレーザー光が散乱するのを最小にし、これによりレーザー光に対するコーティング材料の曝露を最小にする。
【0055】
さらなる態様において、測定は、第2のコーティング層であって、ファイバーは、クラッディングのコーティングとしての第1のコーティングおよび第1のコーティングのコーティングとしての第2のコーティングを含み、第2のコーティングは、レーザー光を吸収する材料を含む第2のコーティング層に適用される。なおさらなる態様において、本発明は、このような第2のコーティングであって、ファイバーは、クラッディングのコーティングとしての第1のコーティングおよび第1のコーティングのコーティングとしての第2のコーティングを含み、第1のコーティング材層としてのアクリレートと第2のコーティング層としてのブラック・ナイロンの組み合わせ(FiberTech, Berlin, Germanyによって製造されるAS2OO/22O/IRANファイバーに適用)など、第2のコーティングは、第1のコーティング材料よりも高い屈折率を有する材料を含む第2のコーティング層に適用される。この測定は、第1のコーティング層と空気の間の接点におけるレーザー光の多重反射を抑制する。その代わりに、光は、主にこれが吸収される第2のコーティング層に入る。これにより、コーティング材料を通るレーザー光のパス長が制限され、これにより生じるコーティング・ラマン・シグナルの量を制限する。
【0056】
さらなる測定では、ファイバーを屈曲に供しないように、特に製造業者によって指定された最小限の屈曲角度半径の近くに、またはそれ以下に曲げないように注意する。屈曲は、光の結合モードの洩出を引き起こし、これは周知の現象であるが、本発明のためには、コーティング・ラマン・シグナルを生成するというさらなる有害作用を有する。ファイバーの最小限の屈曲を達成するために、機械的に屈曲を制限する強固なまたは柔軟な管、たとえばステンレス鋼モノコイル(Fiberguide industries, Sterling, New Jersey, USA)にこれを挿入することができる。このような管を適用する可能性は、特定の組織診断法の適用によって要求される潜在的な制限に当然依存的である。
【0057】
シグナル検出は、シグナル検出ユニットが、光ファイバーのコアから、かつファイバーの口径数内の角度下で現れるシグナルを実質的に検出するというような方法で最適に実行される。これは、イメージングシステムを使用して、これが検出される前に、絞りに対してファイバー端面のイメージを生じる、いわゆる空間的フィルタリングによって達成することができる。絞りのサイズは、ファイバーコアのイメージのサイズより小さいか、または同等でなければならない。このような方法で、ファイバーのコアを通ってファイバー端面に残る光だけが、絞りを通って伝達される。第2の絞りをファイバー端面と第1のイメージングエレメントの間に配置してもよく、これを光ファイバー口径数に対するイメージングシステムの口径数を制限するために使用してもよい。
【0058】
他の測定では、ファイバー端面を覆うマスクが適用され、ファイバーコアを覆われないままにしておくだけである。
【0059】
さらなる測定では、レーザー光が約5mm以上の長さ以上のファイバー内に結合されたファイバー端面の近くのコーティング材料を除去し、クラッディングを黒いエポキシ(たとえば、Epotek, Billerica, Massachussetts, USA)でおおう。これは、シグナル検出ユニットの方向にファイバーのコーティング内を進むあらゆる光を、ファイバー端面に達する前に吸収する。それ故、ある態様において、本発明は、また、光ファイバーがレーザー光を吸収する末端コーティングを含み、該末端がシグナル検出ユニットに向けられている機器およびこれらの使用に向けられる。
【0060】
その具体的な態様において、本ファイバーを連結して(connectorized)(たとえば、FC型光コネクタによって)、レーザーを結合させる(incoupling)光学系およびシグナル検出光学系にファイバーを結合することができる。これにより、系の再編成を伴わずにファイバーを簡単に交換することができる。ファイバーの簡単な交換並びに低コストにより、使い捨て商品として高波数のラマン分光学組織診断法のために光ファイバー・プローブを適用することが容易になる。これは、プローブを滅菌してパックし、組織の特徴付けに適用する直前に取り出すことができるという利点を有する。調査後、プローブを廃棄することにより、次の使用前に再滅菌が不十分になることによるいずれのリスクも除かれる。
【0061】
光ファイバーのコアおよびクラッド材料内でのレーザー光のレイリー散乱のために、レーザー光に対するコーティング材料の曝露は、完全に防止することができない。また、上記したコーティング材料がレーザー光に曝露される機構は、コーティング材料内で生じるわずかなラマン・シグナルが、ファイバーの導かれたモードに再び入る可能性があり、その部位では、調査下で組織のラマン・シグナルとともに、もはやこのファイバーのバックグラウンド・ラマン・シグナルの検出を回避することができない。
【0062】
従って、一般に、前述の金属コートされたファイバー内などの、高波数領域でラマン・シグナルを生じることができないコーティング材料が好ましい。
【0063】
上記したさらなる測定のいくつかまたは全てについて、適所にその他のコーティング材料を使用することができる。たとえば、光ファイバーのコーティングがアクリレート、Tefzel、TECS、またはシリコーンを含む機器である。そのような方法で、アクリレートでコートしたファイバー(FiberTech, Berlin, Germanyによって製造されるAS200/22OI IRANファイバーおよびFiberguide industries, Sterling, New Jersey, USAによって販売されるAF5200/220 Yファイバーなど)のファイバー・バックグラウンド・ラマン・シグナルは、720nmの波長および100mWのレーザー力を有するレーザーを放射するレーザー光、並びに10秒までのシグナル収集時間を使用して、検出レベル以下に減少させることができる。
【0064】
このようなレーザー力およびシグナル収集時間は、ファイバーによって放射されるラマン・シグナルが25%以上のシグナル・スループットを有するラマン分光計(これは多くの会社から商業的に入手可能であり、ラマン・シグナル検出のために近赤外に最適化された電荷結合素子(CCD)-検出器を使用する(Andor Technologies, Belfast, UKから入手可能な背面照明超消耗CCD-カメラ(back-illuminated deep-depleted CCD-camera)など)につないだときに、高品位の組織の高波数ラマン・スペクトルを得るのに十分である。
【0065】
適切なファイバーのその他の非限定の例は、FG-200-LCR(これは、溶融シリカ・コア(直径200ミクロン)、直径240ミクロンの溶融シリカクラッディング、直径260ミクロンのTECSコーティング、および400ミクロンのTefzel緩衝を有するファイバーである)、TECSでできたクラッディングを有する光ファイバーであるFT-200-EMT(また、3M Companyから)、およびアクリレートコーティングを有する溶融シリカ・コア/溶融シリカクラッディングファイバーであるWF200/240A(Ceramoptecから)である。
【0066】
シリコーン・コートしたファイバーは、あまり好ましくない。いくつかのシリコーン・コートしたファイバーを試験した。シリコーン・バックグラウンド・シグナルを低レベルに減少させることができるが、いくつかのシリコーン・バックグラウンド・シグナルが残ったままである。これは、組織のラマン・スペクトルの非常に小さな相違に依存する適用の際の適用性を制限するであろう。2500〜3700cm-1のスペクトル間隔において好ましくないなバックグラウンド・シグナルを与えるファイバーの例は、WF200/240BNおよびWF200/240BTであり、これらは、溶融シリカ・コアおよび溶融シリカ・クラッディングおよび黒いナイロンそれぞれ黒いTefzelコーティング(Ceramoptec)を伴うシリコーン緩衝剤を有するファイバーである。
【0067】
それ故、本発明に従って、実質的に、2500〜3700cm-1のスペクトル領域の1つまたは複数の部分にラマン・シグナルを有していない光を集めるためのファイバーまたはファイバー群を提供することは、光ファイバー・プローブが少なくとも1つのファイバーを含むか、もしくは光ファイバー・プローブが溶融シリカ・コアおよび溶融シリカまたはテフロン(登録商標)またはTECSクラッディングを含むか、または2500〜3700cm-1の波数間隔に本質的にほとんど、または実質的に全くシグナルを生じないコーティング材料を使用することによるか、または光ファイバーのコーティングが1つまたは複数のテフロン(登録商標)コーティングおよび金属コーティングを含むか、または検出ユニットが実質的に光ファイバーのコアから得られるシグナルだけを含むか、またはファイバーが、クラッディングのコーティングとしての第1のコーティングおよび第1のコーティングのコーティングとしての第2のコーティングを含み、第2のコーティングは、レーザー光を吸収する材料を含むか、またはファイバーがクラッディングのコーティングとしての第1のコーティングおよび第1のコーティングのコーティングとしての第2のコーティングを含み、第2のコーティングは、第1のコーティング材料よりも高い屈折率を有する材料を含むか、または光ファイバーがレーザー光を吸収する末端コーティングを含むか、またはレーザー光が光ファイバー内で連結される光ファイバーの端面が、磨かれているか、これらの組み合わせの機器で行ってもよい。
【0068】
また、ファイバーは、レーザー光を、および関心対象のラマン・シグナルを十分に伝達することが明らかである。好ましいファイバーは、少なくとも50%の、より好ましくは90%以上のレーザー光およびラマン・シグナルの波長を伝達する。光伝達を増大するために、好ましくは、レーザー光がファイバーに結合される近位のファイバー末端は、レーザー波長およびラマン・シグナルを測定する波長を含む波長領域に最適化された反射防止コーティングでコートされている。
【0069】
また、光ファイバー・プローブは、ファイバーがコーティングを有さないファイバーの束を含んでいてもよい。ファイバーは、1つの光ファイバー・プローブ内に密にパックしてもよい。
【0070】
もう一つの態様において、本機器は、照射される試料および/またはその散乱光が集められる試料の位置および/または体積を定義するための光ファイバー・プローブの遠位端に光学エレメントを含む機器である。
【0071】
本発明においてプラークまたはアテローム硬化型プラークは、動脈の裏打ちにおける脂肪質の増強を含む病的状態を意味する。これは、体のいずれの動脈にも、最も頻繁には、冠動脈、頸動脈、大動脈、腎動脈、脚の末端動脈に存在するであろう。組織内および/または組織上のプラークまたはアテローム硬化型プラークは、2500〜3700cm-1の領域の1つまたは複数の特徴的なラマン・シグナルを示す。このようなラマン・シグナルは、特に2700〜3100cm-1の間のスペクトル領域の周辺に見いだされる。
【0072】
好ましい態様において、本機器は、実質的にアテローム硬化型プラークに対する特徴であるラマン・シグナルが見いだされるスペクトル領域のラマン・シグナルを有しないファイバーを含む。このようなラマン・シグナルは、特に2700〜3100cm-1のスペクトル領域に見いだされる。また、これは、ファイバーが、脂質プール、線維性被膜、および/またはマクロファージもしくはその中のコレステロールの存在の群の1つまたは複数に特徴であるラマン・シグナルが見いだされるスペクトル領域にラマン・シグナルを実質的に有さない機器を含む。これらの化合物のラマン・シグナルの位置は、健康な組織、並びに影響を受け、および/またはこのような化合物を含む組織のラマン・スペクトルを比較することによって、当業者が導き出すことができる。実質的に「スペクトル領域の1つまたは複数の部分にラマン・シグナルがない」とは、ファイバーに生じた検出されるバックグラウンド・シグナルの強度が、特徴づけるラマン・シグナルが見いだされるスペクトル間隔の少なくとも一部において、調査下での試料のラマン・シグナルと同じ程度か、またはそれより低いこと、並びに試料のラマン・シグナルをこのバックグラウンド・シグナルから容易に区別することができることを意味する。本機器は、2500〜3700cm-1、好ましくは2700〜3100cm-1の間の全スペクトル領域で測定することができるが、測定および解析および/または診断のために、このスペクトル領域の一部または複数部分を選択することもできる。
【0073】
一つの態様において、本機器は、実質的に、癌組織または前癌組織、特に脳の癌に特徴的であるラマン・シグナルが見いだされるスペクトル領域のラマン・シグナルを有さないファイバーを有する。このようなラマン・シグナルは、2500〜3700cm-1のスペクトル領域に、特に2700〜3100cm-1の間のスペクトル領域に見いだされる。「癌組織」とは、癌細胞を含む組織を意味する。前癌組織は、癌組織の前駆組織である異常組織である組織であると理解されている。
【0074】
通常、迅速な解析および/または自動解析を可能にするために、機器は、記録されたラマン・シグナルを解析するシグナル解析ユニットをさらに含む。解析は、たとえば試料の分子組成および/または試料が属する臨床的な診断の分類に関するデータを出力するアルゴリズムを含む。
【0075】
たとえば、血管壁またはアテローム硬化型プラークの分子組成の決定は、たとえば測定されたスペクトルを血管壁またはプラークに潜在的に存在することが知られている一組の化合物のスペクトルに適合させる最少2乗フィット法(a least squares fit procedure)よって達成される。次いで、分子組成に関する定量的情報をフィット係数から得る。あるいは、たとえば、部分的な最小2乗アルゴリズムを開発して、分子組成を非常に正確に決定してもよい。癌組織の検出のために、線形判別分析および人工神経回路網などの種々の周知の多変量解析および/またはニューラル・ネットワーク分析法を使用することができる。これらの解析法および/または診断法は、当該技術分野において既知であるが、具体的なパラメーターは、調査下でのそれぞれの組織または試料に適応させる。
【0076】
シグナル分析ユニットを含むこのような機器は、アテローム硬化型プラークおよび/または癌組織もしくは前癌組織のような疾患の診断に使用するために非常に適している。本シグナル解析ユニットは、正常およびアテローム硬化型の血管壁の分子組成、アテローム硬化型の病変の臨床的な診断分類、線維性被膜厚、線維性被膜内のマクロファージの存在、脂質プールの存在、サイズ、および/または組織、コレステロール(エステル)の存在、癌または前癌組織の存在、生きた腫瘍または壊死についての情報を提供することができ、並びに、それぞれの1つまたは複数に対して特異的なシグナルを提供することができる。
【0077】
また、本発明は、ヒトもしくは動物の体からこれが切除され、もしくは生検される(biopted)まえに、または切除され、生検され(biopted)、もしくは採取されたすぐ後に、組織試料のラマン・シグナルを測定するための機器の使用に向けられる。もう一つの側面において、生検または切除のための組織を選択するために使用される。
【0078】
本発明のもう一つの側面において、組織のラマン・シグナルを測定するための機器であって、前記機器は、レーザー、ラマン・シグナルを測定するためのシグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを含み、前記光ファイバー・プローブは、前記組織にレーザー光を向けるための、および前記組織によって分散される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導くための1つまたは複数の光ファイバーを含み、前記ファイバーは、コア、クラッディング、および選択的にコーティングを含み、光を集めるための前記ファイバーまたはファイバー群は、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さず、前記検出ユニットは、前記スペクトル領域の組織によって散乱されたラマン・シグナルを記録することができる機器を含む。
【0079】
1つの態様において、光ファイバー・プローブは、組織にレーザー光を向け、および組織によって分散される光を集めて、この集めた光をシグナル検出ユニットの方へ組織から導く光ファイバーを含み、ファイバーは、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分にラマン・シグナルを有さない。
【0080】
本発明の更なる態様において、組織試料のラマン・シグナルを測定するための方法であって、本発明による機器が機器を使用し、組織試料は、測定する前にヒトまたは動物の体から切除され、生検され(biopted)、もしくは採取され、またはラマン・スペクトルは、切除もしくは生検の直後の組織で得られる方法を含む。
【0081】
また、本発明は、ラマン・シグナルを生成し、測定するための方法であって、光ファイバーを介してレーザー光を送ることと、光ファイバーを介してラマン・シグナルを受けることと、シグナル検出ユニットによってラマン・シグナルを検出することとを含み、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分にラマン・シグナルを有さない本方法のための光ファイバーを使用して、ラマン・シグナルを受けるものと同じ光ファイバーによってレーザー光を送ることによって特徴づけられ、シグナル検出ユニットは、前記スペクトル領域のラマン・シグナルを測定することを含む方法を含む。試料にレーザー光を照らすために使用される前記光ファイバーの末端は、前記試料内に持ってくるか、または組織と接触させるか、または組織に近接させることができる。ラマン活性である試料は、ラマン・シグナルを生成するために用いたものと同じファイバーを経て検出することができるラマン・シグナルを与える。
【0082】
もう一つの態様において、本発明は、また、組織のラマン・シグナルを生成し、および測定するための方法であって、レーザー、ラマン・シグナルを測定するためのシグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを提供することと、ここで前記光ファイバー・プローブは、前記組織にレーザー光を向けるための、および前記組織によって分散される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導くための1つまたは複数の光ファイバーを含み、前記ファイバーは、コア、クラッディング、および選択的にコーティングを含み、1つまたは複数の光ファイバーを介してレーザー光を送ることと、1つまたは複数の光ファイバーを介して前記組織からのラマン・シグナルを受けることと、およびシグナル検出ユニットによって前記ラマン・シグナルを検出することとを含み、光を集めるための前記ファイバーまたはファイバー群は、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さず、前記検出ユニッストは、前記スペクトル領域の組織によって散乱されたラマン・シグナルを記録することを含む方法に向けられる。この態様のバリエーションにおいて、本発明は、実質的に2500〜3700cm-1のスペクトル領域の1つまたは複数の部分にラマン・シグナルを有さないこの方法のための光ファイバーを使用して、ラマン・シグナルを受けるものと同じ光ファイバーによってレーザー光を送ることもさらに含む方法に向けられる。
【0083】
具体的な態様において、上述した方法は、ラマン・シグナルを測定することによって組織を解析するための方法であり、光ファイバーの一端を介してレーザー光を送ることと、前記光ファイバーの他端を関心対象の組織内に持ってくるか、または組織と接触させるか、または組織に近接させることと、光ファイバーを通って試料によって散乱されたラマン・シグナルを受けることと、およびシグナル検出ユニットによってラマン・シグナルを検出することとを含み、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分にラマン・シグナルを有さない本方法のための光ファイバーを使用して、ラマン・シグナルを受けるものと同じ光ファイバーによってレーザー光を送ることによって特徴づけられる方法である。必要に応じて、たとえばシグナル対ノイズ比を改善するために、調査下で組織の複数のラマン測定を行う。
【0084】
本発明の方法のもう1つの態様において、検出ユニットのシグナルは、記録されたラマン・シグナルを解析するシグナル解析ユニットであって、該シグナル解析ユニットは、に送られ、試料の分子組成および/または試料が属する臨床的な診断の分類に関するデータを出力するアルゴリズムを含む解析ユニットに送信する。
【0085】
解析し、または診断を行うために、いくつかの方法を使用して情報を引き出すことができる。たとえば、本発明は、関心対象の組織領域の測定を得る前に、関心対象で通常遭遇される組織の測定を行う方法を含む。しかし、関心対象の組織領域を走査する前に、関心対象の組織領域において、および同じスペクトル領域またはこの領域の一部または複数部部において、検出すべき特異的疾患によって影響を受ける組織または組織群の測定を行う。それ故、関心対象の組織領域から得られるラマン・シグナルの評価のための方法であって、このようなラマン・シグナルが正常組織から、または患部組織から得られたかどうかを決定するための方法を含む。
【0086】
また、本発明は、組織のラマン・シグナルを測定するためのファイバーのタイプの適合性を評価するための方法であって、
-本発明に従った機器を使用することと、
-ファイバーの遠位端で、組織がない状態で測定を行うことと、
-ファイバーの遠位端で、組織がある状態で測定を行うことと、
-ファイバーが組織のラマン・シグナルを測定するために適していることを結論づけることと、
を含む方法に向けられる。
【0087】
組織のラマン・シグナルがファイバーのラマン・シグナルから識別可能であるときは(このようなファイバーのラマン・シグナルが存在するときは)、ファイバーは適している。
【0088】
本発明のもう一つの態様において、本発明は、組織のラマン・シグナルを測定するためのファイバーのタイプの適合性を評価するための方法であって、組織試料は、測定する前にヒトまたは動物の体から切除され、生検され(biopted)、または採取され、前記光ファイバーのラマン・シグナルは、試料のものとブランクのものを特定し、試料のものと前記ブランクのもののラマン・シグナルを比較する方法に向けられる。
【0089】
本発明の方法は、ヒトまたは動物の血管壁組織を診断するために、異形成の存在についてヒトまたは動物組織を診断するために、正常およびアテローム硬化型の血管壁の分子組成を決定するために、アテローム硬化型の病変、の組成物の臨床的な診断の分類、線維性被膜厚、線維性被膜におけるマクロファージの存在、脂質プールの存在、サイズ、および/または組成、コレステロール(エステル)の存在、異常の存在、癌組織もしくは前癌組織、生きた腫瘍、またはは壊死を決定するために使用することができる。
【0090】
また、本発明の方法は、病気にかかった、または健康な組織に対する薬物、食品もしくは食物食品、または治療の効果を評価するために使用することができる。
【0091】
また、本発明の方法および本発明の機器は、皮膚診断、および客観的な皮膚分類法のような皮膚分類法に使用することができる。老化した皮膚、若者皮膚、およびアトピー性の皮膚の高波数ラマン・スペクトルの間には、有意な相違が存在する。これらの相違は、タンパク質、脂質、および水の相対濃度の相違に起因する。従って、光ファイバー高波数ラマン分光法は、異なる皮膚タイプおよび皮膚状態の間を客観的な方法で識別する可能性を有する。この情報は、個人看護製品および局所的に適用される薬学的製品の開発および制御されたテスト、並びにこのような製品の個体の顧客または患者に最適化した選択のために価値がある。異なる皮膚タイプは、このような製品に対して異なった反応をするであろうし、または所望の効果を得るためには異なった製剤が必要であろうためである。
【0092】
本発明において、「組織によって散乱される光」は、組織によるラマン散乱をいう。これは、組織がレーザー光励起によって蛍光を示すことを除外しない。
【0093】
本機器の使用の結果は、一般に、直ちに決定することおよび/または診断を結論づけることができる結果とはならない。また、本発明の使用および方法は、診断のために必要とされる全ての工程を含まず、主に暫定的な結果またはのみを提供する。それ故、本発明の診断は、診断を直ちにすることができない解析、またはこのような診断を直ちに行うことができる解析を意味するであろう。
【実施例】
【0094】
実施例1:アテローム硬化型の動脈のラマン・マッピング
この実験は、アテローム硬化型プラークを研究するための、本発明のスペクトル領域におけるラマン分光法の可能性を記載してある。
【0095】
図1に示したラマン・マップを作製するために使用したヒト冠動脈試料は、剖検時(死後24時間未満)に得た。これを液体窒素中で素早く凍結させて、使用まで-80℃で保存した。ラマン測定のために、20μMの厚さの凍結切片をフッ化カルシウム(CaFs)ウインドウ(Crystran UK)に配置し、室温に達するように受動的に暖めた。ラマン測定後、標準的なヘマトキシリンおよびエオシン染色手順でこれを染色した。
【0096】
ラマン・スペクトルを集めるために、アルゴン-イオンをポンプしたチタン:サファイヤ・レーザシステム(Spectra Physics, Mountain View, CA)からの719μmのレーザー光を使用した。使用したラマン・ミクロ分光計系は、Van de Poll SWE, Bskker Schut TC, Van der Laarse A, Puppels GJ "In Situ Investigation of the Chemical Composition of Ceroid in Human atherosclerosis by Roman Spectroscopy" J. Raman spectrosc. 33:544-551 (2002)に詳述されている。80×NIR最適化した対物レンズ(Olympus MIR-plan 80X0.75、Japan)を約1.6mmの作動距離で使用して、レーザー光を動脈の切片に焦点を合わせて、組織試料によって散乱される光を集めた。組織切片の自動スキャンのために、顕微鏡には、自動化したコンピュータ制御の試料載物台を備え付けた。全てのピクセルの平均ラマン・スペクトルを得るために、それぞれの測定の間に両側方向のレーザー焦点によってピクセル領域を走査した。ラマン・スペクトルの獲得および顕微鏡載物台の移動は、Grams/32 Spectral Notebase Software(Galactic industries Corp., Salem, NH)によって制御した。顕微鏡の対物レンズの下のレーザーのパワーは、約40mWであった。
【0097】
組織と共にCaF2ウインドウを顕微鏡の下に配置した。コンピュータ制御の試料載物台を二次元の格子上で移動し、ラマン・スペクトルを1グリッド点につき1秒の収集時間で得た。
【0098】
スペクトルの波数較正は、3つの既知のラマン較正標準(4-アセトアミドフェノール(Sigma)、ナフタレン、シクロヘキサン(ICN Biochemicals))並びにネオンおよびネオン-アルゴンランプに対する発光ラインを使用して行った。スペクトルを宇宙線に対して補正し、既知の温度の較正されたタングステン・バンド・ランプを使用する準備の波数依存的なシグナル検出効率に対して補正した。その後、レーザー光デリバリー経路の光学エレメントから生じるバックグラウンド・シグナルを減算した。
【0099】
ラマン・データの処理
全てのデータを処理するために、Matla b6.1 version R12(Mathworks Inc., Natick, MA)を使用した。
【0100】
K-平均法クラスター解析
主要成因分析(PCA)に続きK-平均法クラスター解析(KCA)を使用して、非主観的な方法で、かつ動脈試料の形態および組成についての事前の知識を想定することなく、それぞれの組織試料内のラマン・スペクトルの不均一性を決定した。このクラスター解析のアルゴリズムを使用して、同様のスペクトル特性(クラスター)を有するスペクトル群を見いだした。簡単には、ラマン・シグナルの絶対強度のバリエーションのあらゆる影響を減弱させるために、および組織からのわずかな自己蛍光によってわずかにゆっくりと変動するシグナル・バックグラウンドを補正するために、基準化した第1の誘導体のスペクトル(2700〜3100cm-1)に対して解析を行った。最初に、PCAをラマン・スペクトルで行い、スペクトル・データセットの相違を表すために必要なパラメーターの数を直交化し、かつ減少させた。最初の100の主成分を算出すると、典型的にはシグナル相違の99%までを占めた。それぞれのスペクトルについて得られたPCスコアをKCAのための入力として使用した。スペクトルがKCAによってグループ化されるクラスターの数は、使用者によって定義される。KCAの後、特定のグレートーン(grey-tone)をそれぞれのクラスターに割り当てた。次いで、ラマン・マップのそれぞれの格子エレメントには、そのスペクトルが属した特定のクラスターのグレートーンを割り当てた。このような方法で、同様のスペクトルを有する領域は同じグレートーンを有する凍結切片のグレートーン・イメージを作製した。最後に、それぞれのクラスターの平均したラマン・スペクトルを算出した。
【0101】
図1は、2.80×70ポイントの2次元グリッドにおいて、未定のヒト・アテローム硬化型の動脈の薄い組織切片のスペクトルを得たラマン・マッピング実験の結果を示す。データのK-平均法クラスター分析で決定されたとおり、同等のグレートーンを有する格子位置から得られたスペクトルの相違は、異なるグレートーンを有する格子位置から得たスペクトルよりも小さかった。従って、同等のグレートーンを有する組織格子位置は、同様の分子組成を有する
異なるグレートーンを有する組織格子の位置は、分子組成に有意な相違を示す。
【0102】
A)4つのクラスターのK-平均法クラスター解析の結果。クラスター1は、外膜の脂肪と一致する。クラスター2は、動脈壁と一致する。クラスター3および4は、アテローム硬化型の病変と一致する。
【0103】
B)クラスター1、2、3、および4についてのクラスターを平均化したラマン・スペクトル。
【0104】
図1Bのスペクトルの相違、並びに非常に類似するスペクトルを有する(クラスターに属する)組織格子の高度に組織化された局在は、その分子組成に関して、アテローム硬化型のプラークの構造に対する高波数ラマン分光法の感受性を図示する。組織格子の分子組成に関するスペクトル情報から、たとえば古典的な最小2乗法フィッティング法(組織スペクトルを、たとえば組織に存在し得る単離された化合物のスペクトルとフィットさせる)によって推論することができる。
【0105】
図2は、このような化合物のスペクトルを示す:A:エラスチン、B:コレステリルリノリアート、C:コレステリルオリアート、D:コレステリルリノレナート、E:コレステリルパルミタート、F:コラーゲン1型、G:トリリノレイン(trilinoleine)、H:トリオレン(triolene)、I:トリパルミチン、J:コレステロール。この図は、アテローム硬化型プラークおよび動脈壁に存在し得るこれらの化合物が、関心対象のスペクトル領域に特徴的なランサン・シグナルを有することを示す。これらの化学物質のラマン・スペクトルは、図1に示した測定のために使用したものと同じラマン装置を使用して記録した。
【0106】
表1は、図2の純粋化合物スペクトルおよびわずかに傾斜したバックグラウンドを説明するための一次多項式で、図1Bのクラスターを平均したスペクトル1〜4の最小2乗法フィットの結果を示す。クラスターを平均したラマン・スペクトルを、負でない(これは、正のフィット係数だけが許容されることを意味する)線形最小2乗フィッティング・ルーチンを使用して、これらの純粋化合物のラマン・スペクトルのセットとフィットさせた。一次多項式をラマン・スペクトルのわずかな(蛍光)バックグラウンドを説明するためのフィットに含めた。化合物スペクトルの負でない最小2乗法フィット係数の合計は、100%にセットした。
【0107】
タンパク質、コレステロール、トリグリセリド、およびコレステロールエステルのスペクトルの相対的なシグナル係数に関して示した割合を図2に示した。異なるコレステロールエステルのシグナル係数を共に加え(表1の「総コレステロールエステル」)、異なるトリグリセリドのシグナル係数を供に加え(「総トリグリセリド」)、並びにコラーゲンおよびエラスチンのものも供に加えた(「総タンパク質」)。
【0108】
表1:アテローム硬化型の病変を含む動脈壁の異なる領域から得られるコレステロール、コレステロール-エステル、トリグリセリド、およびタンパク質の相対的なシグナルの寄与
【表1】

図3は、ラマン分光法によって、およびHPTLC(高性能薄層クロマトグラフィ)によって決定した、ヒト動脈セグメントの脂質組成の比較の結果を示す。ラマン・シグナルをより高い波数領域で収集すると共に、〜1cm2の58の動脈セグメントをラマン・マイクロ分光計下でスキャンた(図1及び2と同じ機器)。ラマン測定後、脂質を動脈セグメントから抽出し、HPTLCによって解析した。総脂質画分は、100%に基準化した。部分的な最小2乗法解析モデルを57のセグメントのラマンおよびHPTLCの結果に基づいて開発し、ラマン・スペクトルの58番目のセグメントに適用してその脂質組成を予測した。結果を58番目のセグメントのHPTLC解析と比較した。この1つを除外する評価(leave one out evaluation)を58のセグメントの各々について繰り返した。図3は、ヒト動脈での脂質組成の決定のための高波数ラマン法(インサイチュウ)と、コレステロール、総コレステロールエステル、および総トリグリセリドの相対的な重量分率のためのHPTLCの比較を示す。高い相関係数が得られた(コレステロールについてr=O.95、コレステリルエステルについてr=0.93、トリグリセリドについてr=0.96)。
【0109】
この実験は、本発明のスペクトル領域のラマン測定により、非常に良好な結果およびHPTLCに匹敵する情報を与え、アテローム硬化型プラークを研究するためのインビボの技術としてラマン分光法が可能になる。
【0110】
実施例2:癌組織のラマン・マッピング
この実験は、癌組織を研究するための、本発明のスペクトル領域におけるラマン分光法の可能性を記載してある。
【0111】
高波数領域は、種々の臨床的な腫瘍学適用にも都合よく使用することができる。例えば、図4Aは、離れて中で髄膜腫が浸潤したヒト硬膜の薄い組織切片で、図1Aのアテローム硬化型の病変のマップと同様の方法で得られたラマン・マップを示す。現在、良好に内部で操作できる(intra-opecative)切除縁の評価は、できない。しかし、背後に残された髄膜腫組織は、腫瘍の再発に至る可能性があることが知られている。図4Bは、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E染色)で染色後の隣接した組織切片の画像を示す。驚くべきことに、この切片の組織病理学的な評価およびそのラマン・マップとの比較では、ラマン・マップの明るいグレーの部分が硬膜に対応し、一方、ダークグレイの領域が髄膜腫(MG)に対応することを示す。
【0112】
この実験は、本発明のスペクトル領域のラマン測定が、脳の癌組織についての有益な情報に与え、組織を研究するためのインビボ技術としてラマン分光法が可能になることを示す。
【0113】
実施例3:癌組織のラマン・マッピング
この実験は、癌組織を研究するための、本発明のスペクトル領域におけるラマン分光法の可能性を記載してある。
【0114】
図5Aは、生きた腫瘍領域および壊死組織を有する領域の両方を有するヒト・グリア芽細胞腫の雨水切片のラマン・マップを示す。驚くべきことに、H&E染色された隣接した切片とラマン・マップの比較では、明るいグレーの領域が生きた腫瘍組織に対応し、一方でラマン・マップのダークグレイの領域が壊死に対応することを示す。
【0115】
この実験は、本発明のスペクトル領域のラマン測定が、脳の癌組織についての有益な情報に与え、生きた腫瘍組織とネクローシスとの間を識別するためにるこの実験は示す。および識別間に生命の腫瘍組織および壊死のためにラマン分光法が可能になることを示す。
【0116】
実施例4:ラマン分光計の概略図
図6は、以下を含む特徴的なラマン測定および解析のセットアップを図式的に示す:レーザー100、連結光学部品110(これにより第1の光路105に続いてレーザー光が光ファイバー・プローブ120に連結されており、これが調査下でレーザー光を組織130に導き、かつ組織によって散乱される光を集めて、これを連結光学部品110に導き戻す)、フィルター140(これは、組織130からのラマン散乱光の光路145を作製し、レーザー100からのレーザー光に関して波長がへんかされる)、光路145のレーザー光と同じ波長の残りの光を強力に減弱させるための充填材150、複数の波長でラマン散乱された光の強度を測定する測定ユニット160、測定ユニット160に電子的に連結され、かつ測定した強度を記憶するシグナル記憶装置170、並びにシグナル解析装置180(シグナル記憶装置170に物理的に連結していてもよく、もしくはしていなくてもよく、またはシグナル記憶装置170と一致していてもよく、かつ測定されたシグナルを解析して、例えば組織130の分子組成に関する情報を提供するか、または組織を分類すること、たとえば組織が属する臨床的な診断の分類を決定することができる)。系は、特定の組織に遭遇したときに、聞き取れるか、または目に見えるシグナルを与えるユニットを含むことができる。本発明は、この配置に限られず;当業者であれば、彼の知識に従って望ましい、または必要である成分を変更し、および/または選ぶことができる。
【0117】
実施例5:組織解析を成し遂げるための工程
この実験は、高波数-ラマン分光学を使用する組織解析を成し遂げるための工程を記載してある。本工程は、種々の方法で実行されるであろう(従って、下記の工程の詳細は、例証として与えられ、いかなる形であれ限定することは意味されない):
1)組織を光ファイバーによって照らし、組織によって散乱される光を同じ光ファイバーによって集める。
2)集めた光のラマン・スペクトルをシグナル強度、対、検出器チャンネル番号の形態で記録する。
3)測定されたスペクトルを最終的な解析の前に前処理し、この前処理工程は、検出器チャネルの波数の較正、波数依存的なシグナル検出効率を変化させるための補正、ラマン測定系のどこかで生じ、しかし調査下での組織によるものではないバックグラウンド・シグナルの寄与に対する測定されたスペクトルの補正を含んでもよい。
4)前処理スペクトルの解析。例として、古典的な最小2乗法解析(その際に測定されたスペクトルを、全体の組織スペクトルに対して検出可能な寄与を有するのに十分な量で組織に存在するであろうことが知られている化合物のスペクトルにフィットさせる)、たとえば試料中で励起された蛍光によるものであろう、ラマン・スペクトルに対するゆっくりと変化するバックグラウンドを考慮して至適にフィットさせることもできる係数を有する多項式を使用してもよい。化合物-スペクトルについて同量のこれらの化合物を含む試料のスペクトルのフィットから生じるフィット係数が同じであるような方法で組織スペクトルをフィッティングする前に化合物-スペクトルを強度計測すると、実際には異なる効率が異なる組織体積からのシグナルの収集のために適用されてもよく、また組織が分子組成において不均一であってもよいという事実とは別に、フィット係数の値は、組織が十分に均一である条件で組織に存在するそれぞれの化合物の重量百分率に直接的な関係がある。
【0118】
このような場合ではない場合、決定された組成は、なおも定性的には一致するであろうが、必ずしも本当の組成物と定量的には一致しないであろう。たとえば、動脈壁およびアテローム硬化型プラークは、分子組成において均一ではないので、またプローブ・ジオメトリーに応じて、ラマン・シグナルは、異なる組織体積から異なる効率で集められるので、また組織内でのシグナル減弱のために、潜在的に異なる分子組成を有する特定の組織の体積は、その他のものよりも効率的にシグナルに寄与すると考えられる。組織に存在する化合物の重量百分率は、調査された実際の情報を表すであろうし、またはこれらは、組織を分類してその臨床的な診断の分類を決定するために使用されるであろう。具体的な化合物または化合物群の決定重量百分率のための別のアプローチは、周知の部分的な最小2乗法解析を含む。また、組織の臨床的な診断の分類を決定するために、主成分解析、線形判別分析、ロジスティック回帰分析、またはたとえば人工神経回路網に基づく解析などのその他の多変量統計的シグナル解析アプローチを適用してもよい。
【0119】
5)目に見える、または聞き取れる形態で所望のデータを出力すること、並びにその他のデータ、たとえば、測定位置の座標またはラマン・スペクトルが測定された位置のイメージ、たとえば血管造影図または血管内超音波イメージなどと共に将来の評価および/または相互参照法のために適した参照をデータに貯蔵すること。
【0120】
実施例6:脂質測定
図7は、図6に従ってラマン・セットアップで測定した脂質の混合物のスペクトル(A)を示す。特には、レーザー100は、720μmでレーザー光を放射するti-サファイア-レーザー(model 3900S、SpectraPhysics、USA)であった。フィルター140は、カスタムメイドの誘電性のフィルター(Omitec, UKによって製造)であり、720μmのレーザー光を透過し、反射光は、850μm以上の波長を有する試料から戻される。入射レーザー光の方向およびフィルター表面に対して正常であるものには、15度の角度が含まれる。レンズ110は、近赤外(×20 PL-FL Nachet、口径数0.35)に使用される顕微鏡目的のものであった。光ファイバー120は、CeramoptecからのWF200/220A光ファイバーであった。フィルター150は、カラー・ガラス・フィルターRG 780(Schott)であった。フィルター150によって透過される光は、100ミクロンのコア直径を有する64の光ファイバーの円形の束に接続された1000ミクロンのコアを有する光ファイバー上にイメージされる。この束の遠位端で、ファイバーは、線形配列に配置され、光はこのような方法で分光計160に導かれている。分光計160は、多チャネルのシグナル検出のための超消耗CCD-カメラ(deep-depleted CCD-camera)を備えているisnagingするRenishaw system PA100イメージング分光計であった。また、光ファイバー・プローブ自体のスペクトル(B、光ファイバーの遠位端に試料が存在することなく得た)およびスペクトルA-Bの差異を示してあり、単一の特性の選択したフィルターを通していない光ファイバーで、アテローム硬化型の病変において遭遇するであろうものと同様の分子組成の試料の高品質スペクトルを得ることができることを図示している。
【0121】
図8は、正常な動脈壁(A)およびアテローム硬化型の動脈壁(B)のラマン・スペクトル(t)、図2に示した精製された化合物のスペクトルのセットとこれらのスペクトルの最小2乗フィッティングの結果(f)、およびフィットしたスペクトルのセットによって説明されない組織スペクトルに含まれるシグナルを表す残余(r)を示す。フィットした残余の低い強度から理解することができるとおり、組織スペクトルのフィットは、非常に正確であり、組織の分子組成に関して詳細な情報を得ることができる。この結果は、例証として示してある。例えば、組織スペクトルにフィットさせるために使用される化合物スペクトルのセットは、その他のスペクトルまたは異なる数のスペクトルで構成されていてもよい。
【0122】
表2は、動脈試料の化合物または化合物群の重量百分率で表を示し、最小2乗法フィット解析の結果から決定したそのスペクトルを図8Aおよび8Bに示してある。正常な動脈のスペクトルは、外膜の脂肪のシグナル寄与を表すトリグリセリドのシグナル寄与が優位を占め、コレステロールおよびコレステロールエステルからの有意なシグナル寄与を含むアテローム硬化型の動脈から得られたシグナルと対照的に、コレステロールおよびコレステロールエステルからのシグナル寄与は全く見いだされないか、または非常に微量なシグナル寄与が見いだされる。
【0123】
表2:スペクトルを図8Aおよび8Bに示してある動脈の試料の化合物または化合物群の重量分率
【表2】

この実験は、本発明の分光計がアテローム硬化型プラークを研究するためのインビボ技術としてラマン分光法をできるが、ここで上述したこの分光計の利益を有することを示す。
【0124】
実施例7:蛍光およびまたはNIX吸収を測定するファイバーを有する機器
図9は、ラマン分光法を蛍光およびNlR吸収分光法と組み合わせた態様を図式的に示す。この態様は、図の左側に1つの単一ファイバーおよびファイバー内の反射器を経て連結された励起光を示す。同じかまたはもう一つの反射器を使用して、得られたシグナルから検出のための蛍光光をファイバーの外に切り離す。さらに右には、もう一つの反射器により、試料からのラマン・シグナルを生じさせるためのファイバーにレーザー光を連結する。同じかまたはもう一つの反射器を使用して、検出器に対してファイバーからラマン・シグナルを分離する。図の右側では、NIR供与源のNIR光をファイバーに連結し、同じファイバーによって導き戻されるNIRシグナルを適切な検出器によって測定する。測定は、経時的または同時にすることができる。また、示したファイバーは、ファイバーの束であることもできる。当業者であれば、光学部品、供与源、検出ユニット、その他を彼の目的、測定される組織、または要求される情報に適応させるであろう。
【0125】
本発明の具体的な態様を上記したが、本発明は、記載されているもの以外に実施されもよいことはいうまでもない。たとえば、本機器は、また、組織以外のその他の種において、たとえば、ミルク、油、その他の解析に使用するために、脂質のような生体分子、その他に使用することができる。本明細書および実施例は、本発明を限定することは企図されない。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】動脈組織の薄切片からのラマン・スペクトルが、より高い波数領域において得られ、異なる分子組成を有する組織領域の同定を可能にするラマン-マッピング実験の結果(図1A)および対応するラマン・スペクトル(図1B)を示す。
【図2】アテローム硬化型プラークおよび動脈壁に存在し得る脂質およびタンパク質のスペクトルを示す:A:エラスチン、B:コレステリルリノリアート、C:コレステリルオリアート、D:コレステリルリノレナート、E:コレステリルパルミタート、F:コラーゲン1型、G:トリリノレイン(trilinoleine)、H:トリオレン(triolene)、I:トリパルミチン、J:コレステロール。
【図3】ラマン分光法およびHPTLC(高速薄層クロマトグラフィー)によって決定したヒト動脈のセグメントの脂質組成の比較を提供する。
【図4】髄膜腫(MG)による浸潤のあるヒト硬膜の薄切片からのラマン・スペクトルが、より高い波数領域において得られ、これらの組織間の識別を可能にする、ラマン-マッピング実験の結果(図4A)および隣接したH&E(ヘマトキシリン‐エオジン)染色した切片(図4B)を示す。
【図5】ヒト・グリア芽細胞腫の薄切片からのラマン・スペクトルが、より高い波数領域において得られ、生きた腫瘍(V)領域の、および壊死(N)領域の同定を可能にするラマン-マッピング実験の結果(5A)を、隣接したH&E染色された切片を示す図5Bと比較した場合の結果を示す。
【図6】より高い波数領域でラマン・スペクトルを得るためのセットアップを図式的に示す。
【図7】図6に従ったラマン・セットアップで測定した脂質の混合物のスペクトル(A)を示す。また、光ファイバー・プローブ自体のスペクトル(B、光ファイバーの遠位端で試料が存在しないものから得た)および差スペクトルC(A-B)を示してある。
【図8】正常な動脈壁(A)およびアテローム硬化型動脈壁(B)のラマン・スペクトル(t)、図2に示した精製した化合物のスペクトルのセットでのこれらのスペクトルの最小2乗法フィッティングの結果(f)、およびフィット-スペクトルによって説明されない組織スペクトルに含まれるシグナルを表す残余(r)を示す。
【図9】ラマン分光法を蛍光およびNIR-吸収分光法と組み合わせた態様を図式的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織のラマン・シグナルを測定するための機器の使用であって、前記機器は、レーザー、ラマン・シグナルを測定するためのシグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを含み、前記光ファイバー・プローブは、前記組織にレーザー光を向けるための、および前記組織によって分散される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導くための1つまたは複数の光ファイバーを含み、前記ファイバーは、コア、クラッディング、および選択的にコーティングを含み、光を集めるための前記ファイバーまたはファイバー群は、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さず、前記検出ユニットは、前記スペクトル領域の組織によって散乱されたラマン・シグナルを記録し、並びに前記光ファイバー・プローブは、前記組織に光を向け、かつ前記組織によって散乱される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導く光ファイバーであって、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分にラマン・シグナルを有さない光ファイバーを含む使用。
【請求項2】
請求項1に記載の機器の使用であって、前記検出ユニットは、実質的に前記組織以外のその他の供与源によって発生する蛍光を測定しない使用。
【請求項3】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記光ファイバー・プローブは、低OH-溶融シリカ・コアを有する少なくとも1つのファイバーを含む使用。
【請求項4】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記光ファイバー・プローブは、溶融シリカ・コアおよび溶融シリカまたはテフロン(登録商標)もしくはTECSクラッディングを有する少なくとも1つの光ファイバーを含む使用。
【請求項5】
2500〜3700cm-1の波数間隔で、シグナルが本質的にほとんどないか、または実質的にないコーティング材料を使用することによる、前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用。
【請求項6】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記光ファイバーのコーティングは、一つまたは複数のテフロン(登録商標)コーティングおよび金属コーティングを含む使用。
【請求項7】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記検出ユニットは、実質的に光ファイバーのコアから得られるシグナルのみを測定する使用。
【請求項8】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記ファイバーは、クラッディングのコーティングとしての第1のコーティングおよび前記第1のコーティングのコーティングとしての第2のコーティングを含み、前記第2のコーティングは、レーザー光を吸収する材料を含む使用。
【請求項9】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記ファイバーは、クラッディングのコーティングとしての第1のコーティングおよび前記第1のコーティングのコーティングとしての第2のコーティングを含み、前記第2のコーティングは、前記第1のコーティング材料よりも高い屈折率を有する材料を含む使用。
【請求項10】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記光ファイバーは、レーザー光を吸収する末端コーティングを含む使用。
【請求項11】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記検出ユニットは、2700〜3100cm-1のスペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを記録する使用。
【請求項12】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記光ファイバー・プローブは、前記光ファイバーの遠位端に光学素子を含む使用。
【請求項13】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記記録されたラマン・シグナルを解析するシグナル分析ユニットを含み、前記解析は、前記組織の分子組成および/または前記組織が属する臨床的診断の分類に関するデータを出力するアルゴリズムを含む使用。
【請求項14】
アテローム硬化型プラークの解析および/または診断のための、前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用。
【請求項15】
癌性組織または前癌性組織の解析および/または診断のための、前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用。
【請求項16】
皮膚診断のための、前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用。
【請求項17】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記光ファイバー・プローブは、カテーテルと共に組み込まれているか、組み合わせられている使用。
【請求項18】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記ラマン測定は、蛍光および/または近赤外吸収の測定と組み合わせることができ、また、前記検出ユニットは、組織蛍光の強度および/またはスペクトルを測定するための検出ユニット、および/または近赤外吸収を測定するための検出ユニットを含む使用。
【請求項19】
前記蛍光および/または近赤外吸収の測定が、ラマン・シグナルを得る際にも使用されるファイバーを使用する、前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用。
【請求項20】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記光ファイバー・プローブは、組織領域を測定および/または走査するためのファイバーの束を含む使用。
【請求項21】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記光ファイバー・プローブは、1つの光ファイバーであって、実質的に2500〜3700cm-1のスペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さないファイバーを含む使用。
【請求項22】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記光ファイバー・プローブは、調査下で、組織内に持ってくるか、または組織と接触されるか、または組織に近接される使用。
【請求項23】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器の使用であって、前記組織は、測定する前にヒトまたは動物の体から切除され、生検され(biopted)、または採取される使用。
【請求項24】
組織のラマン・シグナルを測定するための機器であって、前記機器は、レーザー、ラマン・シグナルを測定するためのシグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを含み、前記光ファイバー・プローブは、前記組織にレーザー光を向けるための、および前記組織によって分散される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導くための1つまたは複数の光ファイバーを含み、前記ファイバーは、コア、クラッディング、および選択的にコーティングを含み、光を集めるための前記ファイバーまたはファイバー群は、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さず、前記検出ユニットは、前記スペクトル領域の組織によって散乱されたラマン・シグナルを記録し、並びに前記光ファイバー・プローブは、前記組織に光を向け、かつ前記組織によって散乱される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導く光ファイバーであって、実質的に2700〜3100cm-1のスペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さないファイバーを含む機器。
【請求項25】
請求項24に記載の機器であって、前記検出ユニットは、実質的に前記組織以外のその他の供与源によって発生する蛍光を測定しない機器。
【請求項26】
請求項24または25に記載の機器であって、前記光ファイバー・プローブは、少なくとも1つのファイバーを含む機器。
【請求項27】
請求項24〜26のいずれか1項に記載の機器であって、前記光ファイバー・プローブは、溶融シリカ・コアおよび溶融シリカまたはテフロン(登録商標)もしくはTECSクラッディングを有する少なくとも1つの光ファイバーを含む機器。
【請求項28】
2500〜3700cm-1の波数間隔に、本質的にシグナルがほとんどないか、または実質的にないコーティング材料を使用することによる、請求項24〜27のいずれか1項に記載の機器。
【請求項29】
請求項24〜28のいずれか1項に記載の機器であって、前記光ファイバーのコーティングは、一つまたは複数のテフロン(登録商標)コーティングおよび金属コーティングを含む機器。
【請求項30】
請求項24〜29のいずれか1項に記載の機器であって、前記検出ユニットは、実質的に光ファイバーのコアから得られるシグナルのみを測定する機器。
【請求項31】
請求項24〜30のいずれか1項に記載の機器であって、前記レーザー光は、前記ファイバーの中心のコア内でのみ連結される機器。
【請求項32】
請求項24〜31のいずれか1項に記載の機器であって、前記ファイバーは、クラッディングのコーティングとしての第1のコーティングおよび前記第1のコーティングのコーティングとしての第2のコーティングを含み、前記第2のコーティングは、レーザー光を吸収する材料を含む機器。
【請求項33】
請求項24〜32のいずれか1項に記載の機器であって、前記ファイバーは、クラッディングのコーティングとしての第1のコーティングおよび前記第1のコーティングのコーティングとしての第2のコーティングを含み、前記第2のコーティングは、前記第1のコーティング材料よりも高い屈折率を有する材料を含む機器。
【請求項34】
請求項24〜33のいずれか1項に記載の機器であって、前記検出ユニットは、蛍光を測定するための検出器および/または近赤外吸収を測定するための検出器も含む機器。
【請求項35】
請求項24〜34のいずれか1項に記載の機器であって、蛍光および/または近赤外吸収の測定は、ラマン・シグナルを得る際にも使用されるファイバーを使用し、さらに前記検出ユニットは、蛍光を測定するための検出器および/または近赤外吸収のための検出器も含む機器。
【請求項36】
請求項24〜35のいずれか1項に記載の機器であって、前記光ファイバー・プローブは、組織領域を測定および/または走査するためのファイバーの束を含む機器。
【請求項37】
請求項24〜36のいずれか1項に記載の機器であって、前記光ファイバー・プローブは、1つの光ファイバーであって、実質的に2500〜3700cm-1のスペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さないファイバーを含む機器。
【請求項38】
請求項24〜37のいずれか1項に記載の機器であって、前記光ファイバーは、レーザー光を吸収する末端コーティングを含む機器。
【請求項39】
請求項24〜38のいずれか1項に記載の機器であって、前記レーザー光が前記光ファイバー内で連結される前記光ファイバーの端面は、磨かれている機器。
【請求項40】
組織のラマン・シグナルを生成し、および測定するための方法であって、レーザー、ラマン・シグナルを測定するためのシグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを提供することと(ここで前記光ファイバー・プローブは、前記組織にレーザー光を向けるための、および前記組織によって分散される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導くための1つまたは複数の光ファイバーを含み、前記ファイバーは、コア、クラッディング、および選択的にコーティングを含み)、1つまたは複数の光ファイバーを介してレーザー光を送ることと、1つまたは複数の光ファイバーを介して前記組織からのラマン・シグナルを受けることと、およびシグナル検出ユニットによって前記ラマン・シグナルを検出することとを含み、光を集めるための前記ファイバーまたはファイバー群は、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さず、前記検出ユニッストは、前記スペクトル領域の組織によって散乱されたラマン・シグナルを記録し、並びに前記光ファイバー・プローブは、前記組織に光を向け、かつ前記組織によって散乱される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導く光ファイバーであって、実質的に2500〜3700cm-1のスペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さないファイバーを含む方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法であって、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分にラマン・シグナルを有さないこの方法のための光ファイバーを使用して、前記ラマン・シグナルを受けるものと同じ光ファイバーを介してレーザー光を送ることをさらに含む方法。
【請求項42】
組織試料のラマン・シグナルを測定するための方法であって、請求項24〜39のいずれか1項に記載の機器を使用し、前記組織試料は、測定する前にヒトまたは動物の体から切除され、生検され(biopted)、または採取される方法。
【請求項43】
組織のラマン・シグナルを測定するための光ファイバーを評価するための方法であって、請求項24〜39のいずれか1項に記載の機器を使用し、前記組織試料は、測定する前にヒトまたは動物の体から切除され、生検され(biopted)、または採取され、前記光ファイバーのラマン・シグナルは、試料のものとブランクのものを測定し、前記試料のものと前記ブランクのものの前記ラマン・シグナルを比較する方法。
【請求項44】
組織のラマン・シグナルを測定するためのファイバーのタイプの適合性を評価するための方法であって、
-請求項24〜39のいずれか1項に記載の機器を使用することと、
-前記ファイバーの遠位端で、組織がない状態で測定を行うことと、
-前記ファイバーの遠位端で、組織がある状態で測定を行うことと、
-前記ファイバーが組織のラマン・シグナルを測定するために適していることを結論づけることと、
を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織のラマン・シグナルを測定するための機器であって、前記機器は、レーザー、ラマン・シグナルを測定するためのシグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを含み、前記光ファイバー・プローブは、前記組織にレーザー光を向けるための、および前記組織によって分散される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導くための1つまたは複数の光ファイバーを含み、前記ファイバーまたはファイバー群は、コア、クラッディング、および選択的にコーティングを含み、光を集めるための前記ファイバーまたはファイバー群は、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分にラマン・シグナルを有さず、前記検出ユニットは、前記スペクトル領域の前記組織によって散乱されたラマン・シグナルを記録し、前記機器は、記録された2500〜3700cm-1のスペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを解析するシグナル分析ユニットをさらに含み、前記分析ユニットは、前記組織の分子組成および/または前記組織が属する臨床的診断の分類に関するデータを出力するアルゴリズムを含む機器。
【請求項2】
請求項1に記載の機器であって、前記光ファイバー・プローブは、前記組織にレーザー光を向け、および前記組織によって散乱される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導く光ファイバーを含む機器。
【請求項3】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器であって、前記光ファイバー・プローブは、低OH-溶融シリカ・コアを有する少なくとも1つのファイバーを含む機器。
【請求項4】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器であって、前記光ファイバー・プローブは、溶融シリカ・コアおよび溶融シリカまたはテフロン(登録商標)もしくはTECSクラッディングを有する少なくとも1つの光ファイバーを含む機器。
【請求項5】
2500〜3700cm-1の波数間隔に、本質的にシグナルがほとんどないか、または実質的にないコーティング材料を使用することによる、前述の請求項のいずれか1項に記載の機器。
【請求項6】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器であって、前記検出ユニットは、蛍光を測定するための検出器および/または近赤外吸収を測定するための検出器も含む機器。
【請求項7】
請求項6に記載の機器であって、蛍光および/または近赤外吸収の測定は、ラマン・シグナルを得る際にも使用されるファイバーを使用し、さらに前記検出ユニットは、蛍光を測定するための検出器および/または近赤外吸収のための検出器も含む機器。
【請求項8】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器であって、前記光ファイバー・プローブは、組織領域を測定および/または走査するためのファイバーの束を含む機器。
【請求項9】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器であって、前記光ファイバーの一部は、前記組織についての付加的情報を提供するカテーテルに組み込まれているか、もしくは組み合わせられているか、または組織試料を得るための手段、組織を治療するための手段、および/または外科的手技に使用される手段を含む機器。
【請求項10】
前述の請求項のいずれか1項に記載の機器であって、前記光ファイバー・プローブは、1つの単一の光ファイバーを含む機器。
【請求項11】
組織のラマン・シグナルを測定するための機器の使用であって、前記機器は、レーザー、ラマン・シグナルを測定するためのシグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを含み、前記光ファイバー・プローブは、前記組織にレーザー光を向けるための、および前記組織によって分散される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導くための1つまたは複数の光ファイバーを含み、前記ファイバーまたはファイバー群は、コア、クラッディング、および選択的にコーティングを含み、光を集めるための前記ファイバーまたはファイバー群は、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分にラマン・シグナルを有さず、前記検出ユニットは、前記スペクトル領域の前記組織によって散乱されたラマン・シグナルを記録し、前記機器は、記録された2500〜3700cm-1のスペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを解析するシグナル分析ユニットをさらに含み、前記分析は、前記組織の分子組成および/または前記組織が属する臨床的診断の分類に関するデータを出力するアルゴリズムを含む使用。
【請求項12】
請求項11に記載の機器の使用であって、前記組織は、測定する前にヒトまたは動物の体から切除され、生検され(biopted)、または採取される使用。
【請求項13】
組織試料のラマン・シグナルを、これを切除し、もしくは生検する(biopted)前に測定するための、または生検もしくは切除のための組織を選択するための、請求項11または12に記載の機器の使用。
【請求項14】
組織のラマン・シグナルを生成し、および測定するための方法であって、レーザー、ラマン・シグナルを測定するためのシグナル検出ユニット、および光ファイバー・プローブを提供することと(ここで前記光ファイバー・プローブは、前記組織にレーザー光を向けるための、および前記組織によって分散される光を集めて、前記集めた光を前記組織から前記シグナル検出ユニットの方へ導くための1つまたは複数の光ファイバーを含み、前記ファイバーまたはファイバー群は、コア、クラッディング、および選択的にコーティングを含み)、1つまたは複数の光ファイバーを介してレーザー光を送ることと、1つまたは複数の光ファイバーを介して前記組織からのラマン・シグナルを受けることと、およびシグナル検出ユニットによって前記ラマン・シグナルを検出することとを含み、光を集めるための前記ファイバーまたはファイバー群は、実質的に2500〜3700cm-1スペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを有さず、前記シグナル検出ユニットは、前記スペクトル領域の組織によって散乱されたラマン・シグナルを記録し、前記機器は、記録された2500〜3700cm-1のスペクトル領域の1つまたは複数の部分のラマン・シグナルを解析するシグナル分析ユニットをさらに含み、前記分析は、前記組織の分子組成および/または前記組織が属する臨床的診断の分類に関するデータを出力するアルゴリズムを含む方法。
【請求項15】
組織のラマン・シグナルを測定するための光ファイバーを評価するための方法であって、請求項1〜10のいずれか1項に記載の機器を使用し、前記組織試料は、測定する前にヒトまたは動物の体から切除され、生検され(biopted)、または採取され、前記光ファイバーのラマン・シグナルは、試料のものとブランクのものを測定し、前記試料のものと前記ブランクのものの前記ラマン・シグナルを比較する方法。
【請求項16】
組織のラマン・シグナルを測定するためのファイバーのタイプの適合性を評価するための方法であって、
-請求項1〜10のいずれか1項に記載の機器を使用することと、
-前記ファイバーの遠位端で、組織がない状態で測定を行うことと、
-前記ファイバーの遠位端で、組織がある状態で測定を行うことと、
-前記組織の存在下および不存在下で得られたスペクトルを比較することと、
-前記ファイバーが前記組織のラマン・シグナルを測定するために適していることを結論づけることと、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−508358(P2006−508358A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556982(P2004−556982)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000815
【国際公開番号】WO2004/051242
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(505205845)エラスムス・ウニベルジテート・ロッテルダム (1)
【Fターム(参考)】