組織修復のための混合細胞集団および細胞処理のための単離技術
本発明は、流体交換細胞培養技術およびこれらの方法から製造された組織修復細胞、ならびにこれらの細胞を使用する方法を提供する。本方法は、本発明のTRCの組織修復特性を増大させる新規洗浄ステップを含む。この洗浄ステップにより、より大きな組織修復能および抗炎症能を有するTRC集団の製造が可能となる。本発明の実施形態は、好ましくは、不要の残存培養成分を除去するための洗浄過程、容積減少過程および培養細胞を回収するための回収過程のステップを含む、培養細胞のための培養後過程を含む。最終組成物は、実質的に精製され、さらなる洗浄、容積減少または加工を伴わない、ヒトにおける即時使用に適した生理溶液に懸濁された濃縮細胞混合物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2006年11月3日に出願された米国仮特許出願第60/856,504号および2007年6月1日に出願された米国仮特許出願第60/932,702号の利益を請求する。これらの内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、混合細胞集団の組成物、組織修復のためのそれらのin vivoでのその後の使用、混合細胞集団の調製のための方法、装置およびシステムに関する。本発明の方法はまた、含有する液体または溶液からの、任意の細胞の種類(接着、非接着またはそれらの混合物)または小粒子(例えば、細胞の大きさの)の分離で適用可能である。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
再生医療は、臨床上標的とされる方法で、再生存細胞、例えば、幹細胞および/または前駆細胞(すなわち、身体の特殊化していない万能細胞)の、自身を無制限に再生し、成熟した特殊化した細胞に発達する能力を利用している。幹細胞は、発達の初期段階の間、胚中に、胎児組織中に、いくつかの成体臓器および組織中に見られる。胚性幹細胞(本明細書において以下、「ESC」と呼ばれる)は、身体の、全部ではないが多数の細胞および組織種になることがわかっている。ESCは、個体のすべての遺伝情報を含むだけでなく、身体の200+の細胞および組織のいずれかになる発生期の能力も含む。したがって、これらの細胞は、再生医療にとって驚異的な可能性を有する。例えば、ESCは、心臓、肺または腎臓などの特定の組織になることができ、次いで、これらを用いて損傷を受けた、および病的な臓器を修復することができる。しかし、組織由来のESCは、臨床的な制限を有する。ESCは、必然的に別の個体、すなわち、胚に由来するので、レシピエントの免疫系が新規生体物質を拒絶するというリスクがある。このような拒絶を防ぐための免疫抑制薬が利用可能であるが、このような薬剤はまた、細菌感染およびウイルスに対するものなどの望ましい免疫応答を阻止することがわかっている。
【0004】
さらに、ESCの供給源、すなわち、胚についての倫理をめぐる議論は、十分に記録に留められており、さらなる、そして、おそらくは、当面の間は打ち勝ちがたい障害を示している。
【0005】
成体幹細胞(本明細書では以下、同義的に、「ASC」と呼ばれる)は、ESCの使用に代わるものに相当する。ASCは、多数の非胚性組織中に静かに存在しており、おそらくは、外傷またはその他の破壊的疾患過程に応答し、その結果、それらが損傷を受けた組織を治癒できるよう待機している。特に、新たな科学的証拠は、各個体は、全部ではないが多数の細胞および組織種になる能力をESCと共有し得るASCのプールを保持しているということを示す。したがって、ASCは、ESC同様、再生医療の臨床適用にとって驚異的な可能性を有する。
【0006】
ASC集団は、骨髄、皮膚、筋肉、肝臓および脳のうち1種以上の中に存在することがわかっている。しかし、これらの組織中のASCの頻度は低い。例えば、骨髄における間葉系幹細胞頻度は、100,000につき1〜1,000,000個の有核細胞につき1の間と推定されている。したがって、このような組織に由来するASCの任意の提案されている臨床適用は、細胞精製および細胞培養の方法によって、細胞数、純度および成熟度を高めることを必要とする。
【0007】
細胞培養ステップは、細胞数、純度および成熟度の増大を提供し得るが、そうするには代償が払われる。この代償は、以下の技術的問題点のうち1以上を含み得る:細胞老化による細胞機能の喪失、有用な細胞集団である可能性の喪失、患者への細胞の適用の可能性の遅れ、金銭上の費用の増大、培養の間の環境微生物での細胞の汚染のリスクの増大および回収された細胞とともに含まれる培養材料を枯渇させるためのさらなる培養後処理の必要。
【0008】
より具体的には、すべての最終細胞製品は、連邦医薬品局(Federal Drug Administration)(FDA)によって課せられた厳格な必要条件に適合しなくてはならない。FDAは、すべての最終細胞製品は、ヒト被験体においてアレルギー効果を生じ得る「外来性」タンパク質を最小にしなくてはならない、ならびに汚染リスクを最小にしなくてはならないということを要求している。さらに、FDAは、70%の最小細胞生存率また、いずれの過程もこの最小必要条件を一貫して超えなければならないと求めている。
【0009】
細胞を、不要な溶解した培養成分から分離するための既存の方法および器具があり、現在、種々の器具が臨床に用いられているが、このような方法および器具は、重大な問題を抱えている−例えば、細胞の生存率および生物学的機能の低下および遊離細胞DNAおよび壊死組織片の増加によって示される、分離過程の間にかけられる機械力によって引き起こされる細胞損傷。さらに、分離器具中にすべての細胞を移すことができないこと、ならびに器具からすべての細胞を取り出すことができないことの両方のために細胞の相当な喪失が起こり得る。さらに、混合細胞集団については、これらの方法および器具は、大きな、より壊れやすい亜集団の優先的な喪失のために細胞プロフィールの変化を起こし得る。
【0010】
したがって、組織修復、組織再生および組織工学などの細胞治療の分野には、実質的に高い生存率および機能性をともなって、また、細胞の培養および回収に必要とされた材料が実質的に枯渇している、直接患者に投与する準備ができている細胞組成物が必要である。さらに、これらの組成物の細胞治療製品としての臨床実施および大規模商業化に適しているこれらの組成物の製造を可能にする、信頼性のある方法および装置が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、組織修復のための組成物および方法を提供する。本組成物は、虚血状態(例えば、肢虚血、うっ血性心不全、心虚血、腎虚血およびESRD、卒中および眼の虚血)、臓器および組織再生を必要とする状態(例えば、肝臓、膵臓、肺、唾液腺、血管、骨、皮膚、軟骨、腱、靭帯、脳、毛、腎臓、筋肉、心筋、神経および肢の再生)、炎症性疾患(例えば、心疾患、糖尿病、脊髄損傷、関節リウマチ、変形性関節症、人工股関節置換術または修正による炎症、クローン病および移植片対宿主病)および自己免疫疾患(例えば、1型糖尿病、乾癬、全身性エリテマトーデスおよび多発性硬化症)などの種々の疾患および障害を治療するのに有用である。
【0012】
一態様では、本発明は、細胞の混合集団を含有する組織修復のための単離細胞組成物を提供する。細胞は、ヒト投与に適した製薬等級電解質溶液中にある。細胞は、単核細胞に由来する。例えば、細胞は、骨髄、末梢血、臍帯血または胎児肝臓に由来する。細胞は、造血、間葉および内皮系統のものである。細胞の生存率は、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い。組成物中の生存細胞の総数は、3千5百万〜3億であり、25ml、20ml、15ml、10ml、7.5ml、5ml未満またはそれより少ない容積である。組成物中の生存細胞の少なくとも5%は、CD90+である。例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%またはそれより多くがCD90+である。いくつかの態様では、CD90+の少なくとも5%、10%、15%、20%、50%またはそれより多くは、CD15を同時発現する。細胞は、約5〜75%が生存CD90+であり、組成物中の残りの細胞がCD45+であることが好ましい。CD45+細胞として、CD14+、CD34+またはVEGFRl+がある。
【0013】
細胞は、少なくとも1種、2種、3種、4種、5種またはそれより多くの抗炎症性サイトカインまたは血管新生因子を産生する。抗炎症性サイトカインとして、例えば、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト、インターロイキン−6、TGF−β、インターロイキン−8、インターロイキン10または単球走化性タンパク質−1が挙げられる。血管新生因子として、例えば、血管内皮増殖因子、アンギオポエチン(angiopoeitin)1、アンギオポエチン(angiopoeitin)2または肝細胞増殖因子が挙げられる。さらに、細胞は、105個細胞あたり24時間あたり50pg/mL、40pg/mL、30pg/mL、20pg/mL、10pg/mL、5pg/mL、2pg/mLまたは1pg/mL未満の、1種以上の炎症促進性サイトカイン、例えば、インターロイキン−1α、インターロイキン−1β、インターフェロンγまたはインターロイキン−12を産生する。細胞はまた、インドールアミン2,3,ジオキシゲナーゼ、PD−L1または両方を発現する。
【0014】
本組成物は、細胞組成物の製造の間に用いられる成分、例えば、ウシ血清アルブミン、ウマ血清、胎仔ウシ血清、酵素的に活性な回収試薬(例えば、トリプシン)などの細胞培養成分を実質的に含まず、また、マイコプラズマ、内毒素および微生物汚染を実質的に含まない。本組成物は、10、5、4、3、2、1、0.1、0.05μg/mlまたはそれより少ないウシ血清アルブミンおよび5、4、3、2、1、0.1、0.05μg/mlの酵素的に活性な回収試薬を含むことが好ましい。
【0015】
場合により、本組成物は、生体適合性マトリックス、例えば、脱石灰化骨粒子、石灰化骨粒子、リン酸カルシウムファミリーの合成セラミック(例えば、αトリリン酸カルシウム、βトリリン酸カルシウムおよびヒドロキシアパタイト)、コラーゲン、多糖ベースの材料(例えば、ヒアルロナンおよびアルギン酸)、合成生分解性ポリマー材料(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリフマル酸およびポリエチレングリコール)およびそれらの混合物、組み合わせまたはブレンドなどをさらに含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、培養混合細胞組成物を患者に投与し、ここで、培養細胞組成物が、少なくとも1種のサイトカイン、例えば、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−10、血管内皮増殖因子、単球走化性タンパク質−1アンギオポエチン(angiopoeitin)1、アンギオポエチン(angiopoeitin)2および肝細胞増殖因子を産生することによって、患者において免疫応答、炎症反応または血管新生を調節する方法を提供する。場合により、細胞組成物は、2種、3種、4種、5種またはそれより多くのサイトカインを産生する。本組成物は、10ng/mL未満のインターロイキン−1α、インターフェロンγまたはインターロイキン−12を産生することが好ましい。例えば、細胞組成物は、0.1%〜10%のCD4+CD24+T−細胞、1〜50%のCD45+CD14+単球:および5%〜75%のCD45−CD90+骨髄間質細胞を含む。細胞組成物は、上記の細胞組成物であることが好ましい。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、培養細胞を処理する方法を提供する。本方法は、細胞集団の5%より多くがCD90+である混合細胞集団を製造する。本方法は以下を含む:細胞を培養するためのバイオチャンバーを提供すること、バイオチャンバーで細胞を培養するための培養培地を提供すること、バイオチャンバーに細胞を播種すること。細胞を培養し、所定の培養時間で、バイオチャンバーから培養培地を生体適合性の第1のすすぎ溶液で移しかえ、続いて、第1のすすぎ溶液を細胞回収酵素溶液と取り換え、バイオチャンバーの内容物を、インキュベーションの間に、酵素が、細胞を互いにおよび/またはバイオチャンバー表面から少なくとも分離するような所定の期間インキュベートする。酵素溶液を第2のすすぎ溶液で移しかえる。チャンバーを、実質的に第2のすすぎ溶液で満たす。第2のすすぎ溶液は、ヒトに注射可能である溶液であることが好ましい。場合により、本方法は、第2のすすぎ溶液の一部をガスで移しかえて、チャンバー中に所定の減少した液量を得ること、チャンバーを撹拌して、定着した細胞を懸濁液中に入れることおよび懸濁細胞を含む溶液を細胞回収容器に流し入れることをはじめとする1以上のさらなるステップをさらに含む。溶液を細胞回収容器に流し入れた後、バイオチャンバーにさらなる量の第2の溶液を加え、バイオチャンバーを撹拌して残存する細胞をすすぐ。
【0018】
また、本発明には、培養細胞および本発明の方法によって製造された培養細胞を含有する組成物も含まれる。
【0019】
別の態様では、本発明は、培養細胞を回収する方法を提供する。本方法は、バイオチャンバーから培養培地を生体適合性の第1のすすぎ溶液で移しかえるステップ;続いて、第1のすすぎ溶液を細胞回収酵素溶液と取り換えるステップおよびバイオチャンバーの内容物を酵素溶液とともに所定の期間インキュベートするステップを含む。インキュベーションの間、酵素は、細胞を互いにおよび/またはバイオチャンバー表面から少なくとも分離する。酵素溶液を第2のすすぎ溶液で移しかえる。チャンバーを、実質的に第2のすすぎ溶液で満たす。
場合により、本方法は、以下のステップのうち1以上をさらに含む:第2のすすぎ溶液の一部をガスで移しかえて、チャンバー中に所定の減少した液量を得ること、チャンバーを撹拌して、定着した細胞を懸濁液に入れること、懸濁細胞を含む溶液を細胞回収容器に流し入れること。溶液を細胞回収容器に流し入れた後、バイオチャンバーにさらなる量の第2の溶液を加え、バイオチャンバーを撹拌して残存する細胞をすすぐ。
【0020】
細胞は、単核細胞に由来し、例えば、単核細胞は、骨髄、末梢血、臍帯血または胎児肝臓である。
【0021】
なおさらなる態様では、本発明は、少なくとも1回、第2の液体/溶液をチャンバー内に入れ、第1の含有する液体を置換し、ここで、チャンバーの形状によって液体が栓流に従ってチャンバーを流れることが可能となり、第2の液体が実質的にチャンバーの容積を置き換えることによって、所定の容積および形状を有するチャンバー中に提供される、含有する液体または溶液から微粒子を分離する方法を提供する。場合により、栓流を確立する速度でガスを導入し、ここで、ガスは、チャンバーに含まれる液体/溶液を置き換え、液体/溶液の容積を低減し、それによって、粒子をチャンバー中の液体/溶液内に濃縮する。本方法はまた、チャンバーを撹拌して、定着している粒子を、チャンバー中に含まれる液体/溶液にもたらすことおよびこの溶液を回収容器に流し入れることを含む。
【0022】
記載される方法のいずれかの、バイオチャンバーに加えられる溶液および/またはガスを導入する流量は、約0.03容積交換/分と約1.0容積交換/分の間である。バイオチャンバーに加えられる溶液および/またはガスを導入する流量は、0.50容積交換/分と0.75容積交換/分の間である。場合により、放射状の栓流にしたがってバイオチャンバーに液体/溶液またはガスを導入する。
【0023】
第2の液体またはその後の液体/溶液は、ヒトに注射可能であり得る。
【0024】
他に規定されない限り、本明細書に用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野において当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料も、本発明の実施または試験において使用できるが、適した方法および材料は、以下に記載されている。本明細書に記載されるすべての刊行物、特許出願、特許およびその他の参照文献は、参照によりその全文が組み込まれる。対立する場合には、定義を含む本明細書が支配する。さらに、材料、方法および実施例は、単に、例示であり、制限であるよう意図されるものではない。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の種々のその他の目的、特徴および付随する利益は、添付の図面に関連して考えられる場合に、以下の詳細な説明からより理解されるので、それらはより十分に理解され、添付の図面では、同様の参照文字はいくつかの図を通じて同様または対応する部分を指定する。
【図1】本発明の細胞製造システムの主要な構成要素を示す図である。
【図2】図1のシステム全体の一実施形態の概略例である。
【図3】図1のシステム全体の別の実施形態を示す概略図である。
【図4A】本発明の細胞カセットの概略上面図および側面図である。
【図4B】本発明の細胞カセットの概略上面図および側面図である。
【図5】図4Aおよび4Bの細胞カセットの分解図である。
【図6】本発明の一実施形態の細胞カセットにおける流体管経路を示す概略図である。
【図7】本発明の一実施形態の細胞カセットのバイオチャンバー部分の概略断面図である。
【図8A】本発明の一実施形態のバイオチャンバーカバーの上面図および断面図である。
【図8B】本発明の一実施形態のバイオチャンバーカバーの上面図および断面図である。
【図9A】本発明の一実施形態のバイオチャンバー細胞床ディスクの上面図および断面図である。
【図9B】本発明の一実施形態のバイオチャンバー細胞床ディスクの上面図および断面図である。
【図10A】本発明の一実施形態のバイオチャンバー基部の上面図および断面図である。
【図10B】本発明の一実施形態のバイオチャンバー基部の上面図および断面図である。
【図11】洗浄後、濃縮後および貯蔵後細胞生存%、CD90%、CD14auto%+、VegfR1+%、CFU−FおよびCFU−GM頻度および残存ウシ血清アルブミン(BSA)についての、洗浄−回収/CYTOMATE(登録商標)洗浄結果の比率を示す棒グラフである。
【図12】総生存CD90+細胞、総生存CD14+auto+細胞、総生存VEGFR1+細胞、総CFU−Fおよび総CFU−GMについての、洗浄−回収/CYTOMATE(登録商標)洗浄結果の比率を示す棒グラフである。
【図13】CFU−F頻度、(洗浄−回収)/(CYTOMATE(登録商標)洗浄)を示す棒グラフである。
【図14】TRCの用量あたりのCFU−Fを示す棒グラフである。ヌクレオカウンター(Nucleocounter)によって測定される総洗浄後生存細胞数を用いて、CFU−F/用量を算出した(ただし、利用可能でなく、トリパンブルーデータを用いた場合は除く(サンプル106−70および106−72))。各サンプルの各対の棒について、左の棒は、CYTOMATE(登録商標)洗浄を用いた結果を示し、右の棒は、洗浄−回収を用いた結果を示す。
【図15】CFU−GM頻度の比率、(洗浄−回収)/(CYTOMATE(登録商標)洗浄)を示す棒グラフである。
【図16】TRCの用量あたりのCFU−GMを示す棒グラフである。ヌクレオカウンターによって測定された総洗浄後生存細胞数を用いて、CFU−GM/用量を算出した(ただし、利用可能でない場合は、トリパンブルーデータを用いた(サンプル106−70および106−72)。各サンプルの棒の各対について、左の棒は、CYTOMATE(登録商標)洗浄を用いた結果を示し、右の棒は、洗浄−回収を用いた結果を示す。
【図17】洗浄−回収を受けた後の、ヌクレオカウンターによって測定された、ニードルによって送達した後のTRCの総生存率を示す棒グラフである。各実験について、左側の棒は、対照を表し、中央の棒は、25ゲージニードルを表し、右の棒は30ゲージニードルを表す。
【図18】CYTOMATE(登録商標)洗浄を受けた後の、ヌクレオカウンターによって測定された、ニードルによって送達した後のTRCの総生存率を示す棒グラフである。各実験について、左側の棒は、対照を表し、中央の棒は、25ゲージニードルを表し、右の棒は30ゲージニードルを表す。
【図19】24時間貯蔵し、ニードル送達した後のCFU−Fを示す棒グラフである。各サンプルの各棒の対について、左の棒は、CYTOMATE(登録商標)洗浄を用いた結果を示し、右の棒は、洗浄−回収を用いた結果を示す。
【図20】TRCでのいくつかのサイトカインについて、正規化した洗浄−回収/CYTOMATE(登録商標)洗浄サイトカイン用量を示す棒グラフである。
【図21】CYTOMATE(登録商標)洗浄TRCおよび洗浄−回収TRCの骨形成能を示す棒グラフである。
【図22A】TRCおよび間葉系幹細胞(MSC)の、プレーティングされたCD90+細胞あたりの産生されたカルシウム量を示す棒グラフである。
【図22B】TRCおよび間葉系幹細胞(MSC)の、CD90+細胞あたりの産生されたアルカリホスファターゼの量を示す棒グラフである。
【図23A】無関係のアイソタイプに対応させた対照モノクローナル抗体(mAb)(IgG1、IgG2a)を用いて2色分析のために染色された、洗浄−回収を用いて製造されたTRCのフローサイトメトリー分析を示す図である。
【図23B】特異的蛍光色素がコンジュゲートしている抗CD25および抗CD4モノクローナル抗体(mAb)を用いて染色された、洗浄−回収を用いて製造されたTRCのフローサイトメトリー分析を示す図である。
【図23C】OKT3と呼ばれる抗CD3モノクローナル抗体(mAb)を用いる特異的活性化後のTRC混合物内のT細胞のサイトカイン分泌プロフィールを示す棒グラフである。このモノクローナル抗体は、CD3−T細胞受容体(TCR)細胞表面複合体を架橋し、ひいては、T細胞によるサイトカイン放出を誘発する。Luminex(登録商標)分析を用いて、OKT3 mAbを用いるT細胞活性の48時間後に回収した上清液へのIL−2、IFNγおよびIL−10放出を評価した。
【図24】定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって定量された、IFNγ誘導性TRCにおいて発現されたインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)メッセージの相対量を示す棒グラフである。各定量の三連のサンプルの平均が示されている。
【図25】IFNγ誘導性TRCにおけるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼタンパク質の発現を示すウエスタンブロットである。
【図26】TRCによるHGF産生を示す棒グラフである。
【図27】フローサイトメトリーによって求められた、IFNγ誘導性TRCにおけるIDO陽性細胞のパーセントを示す棒グラフである。
【図28】フローサイトメトリー分析によって求められた、IFNγ誘導性TRCにおけるPDL1陽性細胞のパーセントを示す棒グラフである。
【図29A】TRCと比較した、同種T細胞および樹状細胞の存在下での同種混合白血球反応(MLR)における3H−チミジン組み込みを示すグラフである。
【図29B】TRCと比較した、同種T細胞および樹状細胞の存在下での同種混合白血球反応(MLR)における3H−チミジン組み込みを示すグラフである。
【図30】IFNγに対する曝露を伴わない(非誘導)または伴う(誘導)、TRCの用量を漸増した、同種T細胞の存在下での同種混合白血球反応(MLR)における3H−チミジン組み込みを示す棒グラフである。
【図31】足場から落ち、両脛骨の骨折のためにTRCで治療されたた患者のX線である。
【図32A】治癒しつつある仮骨における新生骨の顕微鏡写真による組織学的検査スライドである。
【図32B】同種移植片を貫通している血管および新生骨の明視野顕微鏡写真による組織学的検査スライドである。
【図32C】同種移植片を貫通している血管および新生骨の偏光顕微鏡写真による組織学的検査スライドである。
【図33A】自己血漿と結合している埋め込み型TRC/脱石灰化骨マトリックス(DBM)混合物の写真である。
【図33B】4×での、TRC/DBM混合物の24時間の生存/死滅染色の顕微鏡写真である。
【図34A】RC/DBM同種移植片中のTRCが、混合した後に生存可能であり、2週間にわたって増殖することを示すグラフである。
【図34B】4×での、TRC/DBM混合物の14日の生存/死滅染色の顕微鏡写真である。
【図35】TRCが、TRC/DBM混合物における2週間の培養を通じてオステオカルシン、IL−6、オステオプロテグリン(osteoprotegrin)およびVEGFの分泌を維持することを示すグラフである。
【図36】TRCで治療された69歳の男性患者のつま先を示す写真である。治療前(左)治癒していない創傷が観察された。44週間の治療後(右)、完全な治癒が観察された。患者は、冠動脈心疾患、慢性心不全、高血圧および脂質異常症をはじめ、多数の併存症を患っていた。
【図37】TRCで治療された69歳の男性患者の足のMR血管造影を示す写真である。この患者は、右足にTRC注入を受けた。治療前(左パネル)、極めて微小さな側枝形成が観察された。48週間の治療後(右パネル)、治療された足に相当多い側枝が観察できる。患者は、冠動脈心疾患、高血圧および高脂血症をはじめ、多数の併存症を患っていた。
【図38】BM MNCと比較した、TRCにおける特定の細胞型の増加または減少を示す棒グラフである。
【図39】BM MNCおよびTRCにおける造血および間葉エレメントの頻度を示す説明図である。
【図40】同一のドナーに由来するBM MNCおよびTRC間でサイトカイン産生プロフィールが大幅に異なることを示す棒グラフである。
【図41A】MSCおよびTRC培養におけるCD90およびCFU−fの頻度を示す一連の棒グラフである。MSCおよびTRCは、材料および方法において記載される自動バイオリアクターシステムにおいて作製した。産出培養物中のCD90およびCFU−fの頻度がAおよびBにそれぞれ示されている。次いで、CFU−f頻度を、各生成物中のCD90細胞の数に基づいて算出した。結果はCに示されている。濃いバーは、TRC培養物を表し、中抜きバーは、MSC培養物を表す。二人の無関係の正常なドナーが示されている。
【図41B】MSCおよびTRC培養におけるCD90およびCFU−fの頻度を示す一連の棒グラフである。MSCおよびTRCは、材料および方法において記載される自動バイオリアクターシステムにおいて作製した。産出培養物中のCD90およびCFU−fの頻度がAおよびBにそれぞれ示されている。次いで、CFU−f頻度を、各生成物中のCD90細胞の数に基づいて算出した。結果はCに示されている。濃いバーは、TRC培養物を表し、中抜きバーは、MSC培養物を表す。二人の無関係の正常なドナーが示されている。
【図41C】MSCおよびTRC培養におけるCD90およびCFU−fの頻度を示す一連の棒グラフである。MSCおよびTRCは、材料および方法において記載される自動バイオリアクターシステムにおいて作製した。産出培養物中のCD90およびCFU−fの頻度がAおよびBにそれぞれ示されている。次いで、CFU−f頻度を、各生成物中のCD90細胞の数に基づいて算出した。結果はCに示されている。濃いバーは、TRC培養物を表し、中抜きバーは、MSC培養物を表す。二人の無関係の正常なドナーが示されている。
【図42】異所性マウスモデルにおけるin vivoでの骨形成の比較を示す線グラフである。MSCおよびTRC培養物由来の各ローディング細胞密度の骨スコアを調べた。グラフは、各培養物由来のCD90+細胞の算出されたローディング用量を示す。示される結果は、一人の正常なドナーに由来する代表的な実験である。この実験では、MRCは68%CD90+であり、TRCは22%cCD0+であった。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、細胞治療のための細胞を製造する組成物および方法の発見に基づいている。本組成物は、組織修復、組織再生および組織工学のためのヒト投与に唯一適している幹細胞および前駆細胞が増強されている細胞の混合集団である。これらの細胞は本明細書において「組織修復細胞」または「TRC」と呼ばれる。
【0028】
したがって、一態様では、本発明は、造血、間葉および内皮系統の細胞の混合集団を含有する組成物を提供する。本組成物は、治療的使用のためのヒトへの投与に適している。TRCは、in vitro培養過程から製造される。培養過程が完了すると、培養成分(例えば、培養培地、細胞の剥離および回収のために用いられる)を、細胞から分離しなければならず、その後、それらは組織再生を必要とする被験体に安全に投与され得る。この分離は、従来、培養後細胞洗浄ステップにおいて実施されている。しかし、このステップに関連する重大な問題として、例えば、細胞の生存率および生物学的機能の低下および遊離細胞DNAおよび壊死組織片の増加によって示される、これらの過程の間にかけられる機械力によって引き起こされる細胞損傷がある。生存率および機能のこの損失は、細胞製造に対する直接影響を有するだけでなく、細胞の有効期間および凍結保存の可能性にも大きな影響を有する。さらに、洗浄器具中にすべての細胞を移すことができないこと、ならびに器具からすべての細胞を取り出すことができないことの両方のために細胞の相当な喪失が起こり得る。
【0029】
したがって、別の態様では、本発明は、細胞洗浄手順を提供する。以下のTRCの製造方法において記載される本発明の細胞洗浄技術は、驚くべきことに、現在の培養後洗浄手順と比較して、細胞生存率および収率を大幅に増強し、一方で、患者に細胞を安全に投与するために十分に低い培養成分の残存レベルを有する細胞組成物を提供した。
組織修復細胞(TRC)
組織修復細胞(TRC)は、傷害組織を修復するための高機能を有する細胞および分子組成物を提供する。さらに、TRCは、抗炎症作用を有することがわかっている。TRCは、単核細胞から製造される造血、間葉および内皮細胞系統の細胞の混合物を含む。単核細胞は、成体、若年、胎児または胚組織から単離される。例えば、単核細胞は、骨髄、末梢血、臍帯血または胎児肝臓組織に由来する。TRCは、単核細胞から、例えば、出発材料として用いられた単核細胞集団と比較して、表現型および機能両方の相違を有する、独特の細胞組成物をもたらすin vitro培養過程によって製造される。さらに、本発明のTRCは、高い生存率およびその製造の際に用いられる成分の低い残存レベルの両方を有する。
【0030】
TRCの生存率は、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれを超える。生存率は、トリパンブルー排除などの当技術分野で公知の方法によって測定される。TRC集団は、この増強された生存率によって、組織修復において、より有効となり、ならびに、最終細胞製品の有効期間および凍結保存の可能性を増強する。
【0031】
製造の際に用いられた成分とは、それだけには限らないが、培養培地成分、例えば、ウマ血清、胎仔ウシ血清および細胞回収のための酵素溶液を意味する。酵素溶液は、トリプシン(動物由来、微生物由来または組換え)、種々のコラゲナーゼ、代替微生物由来酵素、解離剤、一般プロテアーゼまたはこれらの混合物を含む。これらの成分を除去することで、TRCの、それを必要とする被験体への安全な投与が提供される。
【0032】
本発明のTRC組成物は、10、5、4、3、2、1μg/ml未満のウシ血清アルブミン、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5μg/ml未満の回収酵素(酵素活性によって決定される)を含み、マイコプラズマ、内毒素および微生物(例えば、好気性、嫌気性および真菌)汚染を実質的に含まないことが好ましい。
【0033】
内毒素を実質的に含まないとは、1日あたり5EU/体重1kgの総内毒素であり、平均70kgの人に対して、TRC総用量あたり350EUである、生物製剤についてFDAによって認められるものよりも少ないTRCの用量あたりの内毒素しかないことを意味する。
【0034】
マイコプラズマおよび微生物汚染を実質的に含まないとは、当業者に公知の一般に許容される試験についての陰性の読み取りを意味する。例えば、マイコプラズマ汚染は、適当な陽性および陰性対照とともに、TRC製品サンプルをブロス培地で継代培養し、37℃で1、3、7および14日目に寒天プレート上に分配することによって判定する。製品サンプル外観は、陽性および陰性対照のものと、100×で顕微鏡によって比較する。さらに、指標細胞培養の播種を、3および5日間インキュベートし、DNA結合性蛍光色素を用いる落射蛍光顕微鏡によって600×でマイコプラズマの存在を調べる。製品は、寒天および/またはブロス培地手順および指標細胞培養手順が、マイコプラズマ汚染の証拠を示さない場合に良好と考えられる。
【0035】
製品が微生物汚染を含まないことを証明するための無菌試験は、米国薬局方ダイレクト・トランスファー・メソッド(Direct Transfer Method)に基づいている。この手順は、回収前培地溶出物および濃縮前サンプルを、トリプシンダイズブロス培地および液体チオグリコレート培地を含有する試験管に播種することを必要とする。これらの試験管を、濁った外観(濁度(turpidity))について、14日のインキュベーションの間、定期的に観察する。いずれかの培地におけるいずれの日の濁った外観も、汚染を示し、透明な外観(増殖なし)は汚染を実質的に含まないことを試験する。
【0036】
TRC内の細胞の、クローン原性コロニーを形成する能力を、BM−MNCと比較して調べた。造血(CFU−GM)および間葉(CFU−F)コロニーの両方をモニターした(表1)。表1に示されるように、培養することによって、CFU−Fは280倍増加したが、CFU−GMはわずかに減少した。
【0037】
(表1)
【0038】
【表1】
結果は、8回の臨床規模実験から得られた平均±SEMである。
【0039】
TRC組成物の細胞を、細胞表面マーカー発現によって特性決定した。表2は、開始BM MNCおよびTRCについてフローサイトメトリーによって測定された典型的な表現型を示す。(表2参照のこと)。これらの表現型の相違および機能の相違によって、TRCは単核細胞出発組成物と高度に区別される。
【0040】
(表2)
【0041】
【表2】
M=間葉系統、H=造血系統、E=内皮系統。結果は、4回の臨床規模の実験の平均である。
【0042】
造血、間葉および内皮系統のマーカーを調べた。出発BM MNCおよびTRCを比較する4実験から得た平均結果は、図38に示されている。CD11b骨髄性、CD14auto−単球、CD34前駆細胞およびCD3リンパ系をはじめとする、ほとんどの造血系統細胞は、わずかに減少するのに対し、CD14auto+マクロファージは81倍増殖する。CD90+およびCD105+/166+/45−/14−によって定義される間葉細胞は、最大373倍の増殖を有する。成熟血管内皮細胞(CD144/146)およびCXCR4/VEGFR1+支持細胞をはじめとする血管新生に関与し得る細胞は、6〜21倍増殖する。
【0043】
ほとんどの造血系統細胞は、これらの培養において増殖しないが、最終製品は依然として、80%近くのCD45+造血細胞および約20%のCD90+間葉細胞を含む(図39)。
【0044】
TRCは、それらが由来する単核細胞集団と比較して、CD90+細胞について高度に濃縮されている。TRC組成物中の細胞は、少なくとも5%、10%、25%、50%、75%の、またはそれより多いCD90+である。TRC組成物中の残りの細胞は、CD45+である。TRC組成物中の細胞は、約5〜75%の生存CD90+であることが好ましい。種々の態様では、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%の、またはそれより多いCD90+はまた、CD15+である。(表3参照)さらに、CD90+はまた、CD105+である。
【0045】
(表3)
【0046】
【表3】
対照的に、骨髄単核細胞(BMMNC)中のCD90集団は、通常、1%未満であり、得られたCD45+は、BMMNC中の有核細胞の99%より多くを構成する。したがって、出発単核細胞集団と比較して、TRC組成物では成熟造血細胞の多くの大幅な減少がある。(表2参照のこと)
造血、間葉および内皮幹細胞のこの独特の組み合わせは、単核細胞と異なっているだけでなく、現在、細胞治療に用いられているその他の細胞集団とも異なっている。表4は、間葉系幹細胞および脂肪由来幹細胞と比較した、TRCの細胞表面マーカープロフィールを示す。(Deans RJ、Moseley AB.2000年。Exp.Hematol.28:875〜884頁;Devine SM.2002年。J 細胞 Biochem Supp38:73〜79頁;Katz AJら2005年。Stem 細胞.23:412〜423頁;Gronthos Sら2001年。J 細胞 Physiol189:54〜63頁;Zuk PAら2002年.MoI Biol 細胞.13:4279〜95頁。)
例えば、間葉系幹細胞(MSC)は、CD90+について高度に精製されており(95%を超えるCD90+)、極めて低いパーセンテージのCD45+(もしあれば)しか含まない。脂肪由来幹細胞は、より可変性であるが、通常、95%を超えるCD90+を有し、組成物の一部としてCD45+血液細胞はほとんどない。また、BMMNCから培養され、CD49を同時発現するMSCとは異なる純粋なCD90集団をもたらす、Multi−Potent成体前駆細胞(MAPC)もある。用いられているその他の幹細胞は、CD34+細胞、AC133+細胞および+CD34+lin−細胞を含む高度に精製された細胞種であり、天然には、組成物の一部としてCD90+細胞をほとんど有さない、ないしまったく有さず、従って、TRCとは実質的に異なる。
【0047】
細胞マーカー分析はまた、本発明の方法にしたがって単離されたTRCは、CD14+auto、CD34+およびVEGFR+細胞の、より高いパーセンテージを有するということを実証した。
【0048】
(表4)
【0049】
【表4】
TRC集団中に存在する細胞種の各々は、種々の免疫調節性特性を有する。単球/マクロファージ(CD45+、CD14+)は、T細胞活性化を阻害し、ならびに、マクロファージによるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)発現を示す(Munn D.H.およびMellor A.L.、Curr Pharm Des.、9:257〜264頁(2003年);Munn D.H.らJ Exp Med.、189:1363〜1372頁(1999年);Mellor A.L.およびMunn D.H.、J. Immunol.、170:5809〜5813頁(2003年);Munn D H.ら、J.Immunol.、156:523〜532頁(1996年))。単球およびマクロファージは、炎症および組織修復を調節する。(Duffield J.S.、Clin Sci(Lond)、104:27〜38頁(2003年);Gordon、S.;Nat.Rev.Immunol.、3:23〜35頁(2003年);Mosser、D.M.、J.Leukoc.Biol.、73:209〜212頁(2003年);Philippidis P.ら、Circ.Res.、94:119〜126頁(2004年)。これらの細胞はまた、耐性および移植片免疫抑制を誘導する(Fandrich Fら、Hum. Immunol.、63:805〜812頁(2002年))。調節性T細胞(CD45+CD4+CD25+)は、傷害後の自然炎症反応を調節する。(Murphy T.J.ら、J.Immunol.、174:2957〜2963頁(2005年))。T細胞はまた、自己寛容の維持ならびに自己免疫疾患の予防および抑制に関与している。(Sakaguchi S.ら、Immunol.Rev.、182:18〜32頁(2001年);Tang Q.ら、J.Exp.Med.、199:1455〜1465頁(2004年))T細胞はまた、移植片寛容を誘導および維持し(Kingsley C.I.らJ.Immunol.、168:1080〜1086頁(2002年);Graca L.ら、J.Immunol.、168:5558〜5565頁(2002年))、移植片対宿主病を阻害する(Ermann J.ら、Blood、105:2220〜2226頁(2005年);Hoffmann P.ら、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、293:265〜285頁(2005年);Taylor P.A.ら、Blood、104:3804〜3812頁(2004年)。間葉系幹細胞(CD45+CD90+CD105+)は、IDOを発現し、T細胞活性化を阻害し(Meisel R.ら、Blood、103:4619〜4621頁(2004年);Krampera M.ら、Stem Cells、(2005年))、ならびに抗炎症活性を誘導する(Aggarwal S.およびPittenger M.F.、Blood、105:1815〜1822頁(2005年))。
【0050】
TRCはまた、プログラム死リガンド1(PDLl)の発現の増大を示す。PDL1の発現の増大は、抗炎症性サイトカインIL−10の産生と関連している。PDL1発現は、非炎症状態と関連している。TRCは、炎症誘導に応じたPDL1発現の増大を有し、このことは、TRCの抗炎症性の別の態様を示す。
【0051】
TRCはまた、BM MNCとは対照的に、少なくとも5種の別個のサイトカインおよび1種の調節性酵素を産生し、創傷修復および炎症のダウンレギュレーションの制御の両方に対して強力な活性を有する。(図40)。詳しくは、TRCは、1)インターロイキン−6(IL−6)、2)インターロイキン−10(IL−10)、3)血管内皮増殖因子(VEGF)、4)単球走化性タンパク質−1(MCP−I)および5)インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)を産生する。これら5種のサイトカインの特徴は、以下の表5に要約されている。
【0052】
【表5】
TRCのさらなる特徴として、TH1炎症経路を活性化することがわかっている特定の中心的なメディエーター、例えば、インターロイキン−α(IL−1α)、インターロイキン−β(IL−1β)インターフェロン−γ(IFNγ)および最も顕著にはインターロイキン−12(IL−12)を自発的に産生できないか、または極めて低レベルの産生が挙げられる。TRCが、培地交換または灌流培養の間も、既知炎症刺激、例えば、細菌リポ多糖(LPS)を用いた意図的な誘導後のいずれでも、これらの後者のTH1型サイトカインを自発的に産生しないことは重要である。TRCは、唯一、抗CD3mAbによるT細胞誘発後に低レベルのIFNγを産生した。最後に、現方法によって製造されたTRCは、より多くの抗炎症性サイトカインIL−6およびIL−10を産生し、より少ない炎症性サイトカインIL−12を産生する。
【0053】
さらに、TRCは、インドールアミン−2,−3ジオキシゲナーゼ(IDO)と表される重要な免疫抑制酵素の発現について誘導可能である。本発明のTRCは、インターフェロンγを用いた誘導で高レベルのIDOを発現する。IDOは、動物モデルおよびヒトにおいて発生期の、および進行中の炎症反応の両方をダウンレギュレートすることが実証されている(Meisel R.ら、Blood、103:4619〜4621頁(2004年);Munn D.H.ら、J.Immunol.、156:523〜532頁(1996年);Munn D.H.ら.J.Exp.Med.189:1363〜1372頁(1999年);Munn D.H.およびMellor A.L.、Curr.Pharm.Des.、9:257〜264頁(2003年);Mellor A.L.およびMunn D.H.、J.Immunol.、170:5809〜5813頁(2003年))。
【0054】
合わせると、本発明のTRCのこれらの独特の特徴は、組織修復のための、より抗炎症性環境を作製し、したがって、組織修復のための、より有効な治療である。
【0055】
上記で論じたように、TRCは、CD90およびCD15を同時発現する細胞の集団について高度に濃縮されている。
【0056】
CD90は、多系統に分化し得る幹細胞および前駆細胞上に存在する。これらの細胞は、おそらく、分化の異なる状態にある細胞の不均一な集団である。細胞マーカーは、細胞の幹細胞状態を規定する胚起源または胎児起源の幹細胞上で同定されている。これらのマーカーの1種、SSEA−1はまた、CD15とも呼ばれる。CD15は、マウス胚性幹細胞上に見られるが、ヒト胚性幹細胞では発現されない。しかし、マウスおよびヒト両方由来の神経幹細胞においては検出されている。CD15はまた、ヒト骨髄または脂肪組織に由来する精製間葉系幹細胞では発現されない(表6参照のこと)。したがって、CD90およびCD15の両方を同時発現するTRC中の細胞集団は、独特な細胞集団であり、CD90成体由来細胞の幹様状態を規定し得る。
【0057】
したがって、本発明の別の態様では、CD90およびCD15の両方を発現する細胞集団をさらに濃縮することができる。さらに濃縮されたとは、細胞組成物が、5%、10%、25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98% 99%または100%のCD90+CD15+細胞を含むことを意味する。TRCは、当技術分野で公知の方法、例えば、細胞表面マーカーに対する抗体を用いる陽性または陰性選抜によってCD90+CD15+細胞についてさらに濃縮され得る。CD90+CD15+細胞についてさらに濃縮されているTRCは、骨修復および再生において特に有用である。
【0058】
(表6)
【0059】
【表6】
CD90+CD15+のCFU−Fおよび骨形成能を評価した。CD90+細胞を除去すると、すべてのCFU−Fおよびin vitro骨形成能が枯渇した。驚くべきことに、CD90およびCFU−Fの全体的な頻度は、MSC培養(CD90はCD15を発現しない)においてよりも高かったが、CD90細胞あたりのCFU−Fの相対数は、TRCにおいて著しく高かった(図41)。このことは、CD90細胞は精製細胞集団として増殖した場合にTRCにおいて、かなりより強力であるということを実証する。
【0060】
骨形成能は、in vitroおよびin vivoの両方で測定した。やはり、細胞がCD15を発現している状態(TRC)では、骨形成能は、間葉細胞において見られるものよりも高かった(図42)。
治療法
組織修復細胞(TRC)は、組織修復、組織再生および組織工学をはじめとする種々の治療方法にとって有用である。例えば、TRCは、骨再生、心臓再生、血管再生、神経再生および虚血性障害の治療において有用である。虚血状態としては、それだけには限らないが、肢虚血、うっ血性心不全、心虚血、腎虚血およびESRD、卒中および眼の虚血が挙げられる。さらに、TRCはまた、TRCによって産生される免疫調節性サイトカインのために種々の免疫性および炎症性疾患の治療においても有用である。免疫性および炎症性疾患として、例えば、糖尿病(I型およびII型)、炎症性腸疾患(IBD)、移植片対宿主病(GVHD)、乾癬、同種細胞、組織または臓器の拒絶(耐性誘導)、心疾患、脊髄損傷、関節リウマチ、変形性関節症、人工股関節置換術または修正による炎症、クローン病、自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)および多発性硬化症(MS)が挙げられる。本発明の別の態様では、TRCはまた、血管新生を誘導するのに有用である。
【0061】
TRCは、組織修復または再生を達成するために、哺乳類被験体、例えば、ヒトに投与される。TRCは、同種的にまたは自家的に投与される。
【0062】
TRCの独特な性質は、宿主反応を、炎症の組織破壊的経路から離れ、傷害組織の迅速な治癒による創傷修復に向けて強力に偏向する。さらに、一部の細胞は、組織特異的に分化でき(例えば、骨へのCD90+)、組織再生をさらに補助する。したがって、TRCは、広範な疾患において組織修復を誘導するのに有効である。
薬剤投与および投与形
記載されるTRCは、生理学上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含有する製薬上または生理学上許容される製剤または組成物として投与でき、注目するレシピエント生物、例えば、ヒトおよび非ヒト動物の組織に投与できる。TRC含有組成物は、滅菌生理食塩水またはその他の生理学上許容される注射用水性液体などの適した液体または溶液に細胞を再懸濁することによって調製できる。このような組成物中に使用される成分の量は、当業者によって日常的に決定され得る。
【0063】
TRCまたはその組成物は、TRC懸濁液を吸収性または接着性材料、すなわち、コラーゲンスポンジマトリックス上に留置することおよびTRC含有材料を注目する部位の中または上に挿入することによって投与できる。あるいは、TRCは、皮下、静脈内、筋肉内および胸骨内をはじめとする、注射の非経口経路によって投与してもよい。その他の投与様式として、それだけには限らないが、鼻腔内、くも膜下腔内、皮内、経皮的、腸内および舌下が挙げられる。本発明の一実施形態では、TRCの投与は、内視鏡手術によって媒介され得る。
【0064】
注射用投与には、本組成物は、滅菌溶液もしくは懸濁液中にあるか、または製薬上および生理学上許容される水性もしくは油性ビヒクルに再懸濁されていてもよく、これは保存料、安定剤および溶液または懸濁液を、レシピエントの体液(すなわち、血液)と等張にする材料を含み得る。使用に適した賦形剤の限定されない例として、水、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4、0.15M 塩化ナトリウム水溶液、デキストロース、グリコール、希エタノールなどおよびそれらの混合物が挙げられる。例示的安定剤として、ポリエチレングリコール、タンパク質、サッカリド、アミノ酸、無機酸および有機酸があり、これらは、それらだけで、または混合物としてのいずれで用いてもよい。用いる量または質ならびに投与経路は、個人レベルで決定され、当業者に公知の同様の種類の適用または適応症において用いられる量に対応する。
【0065】
本発明と一致して、TRCは、肝臓、膵臓、肺、唾液腺、血管、骨、皮膚、軟骨、腱,靭帯、脳、毛、腎臓、筋肉、心筋、神経、骨格筋、関節および肢をはじめとする身体組織に投与できる。
【0066】
TRC懸濁液中の細胞数および投与様式は、治療される部位および状態に応じて変わり得る。限定されない例として、本発明に一致して約35〜300×l06個のTRCを注射して組織修復を達成する。本明細書に開示される実施例と一致して、当業者は、TRCベースの治療の量および方法を、各場合について決定される必要条件、制限および/または最適化に応じて調節できる。
【0067】
好ましい実施形態では、TRC薬剤組成物は、約8から54%の間のCD90+細胞と、約46から92%の間のCD45+細胞を含む。TRC薬剤組成物は、約35×106個から300×106個の生存有核細胞と、約7×106から75×106個の生存CD90+細胞を含むことが好ましい。TRC薬剤組成物は、0.5EU/ml未満の内毒素しか有さず、細菌または真菌増殖がないことが好ましい。好ましい実施形態では、TRCの投与形は、4.7〜7.3mL内の製薬上許容される水性担体からなる。好ましい懸濁液溶液として、Multiple Electrolyte Injection Type 1(USP/EP)がある。各100mLのMultiple Electrolyte Injection Type 1は、234mgの塩化ナトリウム、USP(NaCl);128mgの酢酸カリウム、USP(C2H3KO2);および32mgの酢酸マグネシウム四酢酸(Mg(C2H3O2)2・4H2O)を含む。抗菌剤を含まない。pHは、塩酸で調整する。pHは、5.5(4.0〜8.0)である。Multiple Electrolyte Injection Type 1は、0.5%ヒト血清アルブミン(USP/EP)が補給されていることが好ましい。TRC薬剤組成物は、0〜12℃で、未凍結で保存する。
【0068】
TRCの適応症および送達様式
TRCは、記載される方法を用いて患者に送達するために製造および加工でき、ここでは、最終製剤が、すべての培養成分がFDAによって安全と見なされるレベルに実質的に除去されているTRCである。70%を超える最終生存率を有することは細胞にとって重要であるが、最終細胞懸濁液の生存率が高いほど、最終細胞用量はより強力で有効となり、壊死組織片(死細胞に由来する細胞膜、オルガネラおよび遊離核酸)が少なく、そのため、実質的に低い培養および回収成分を維持しながら、閉鎖無菌処理システムを維持しながら、細胞生存率を増強する方法が高度に望ましい。
【0069】
肢虚血
骨髄由来細胞は、重篤な肢虚血、末梢血管疾患またはバージャー症候群(Burger’s syndrome)を有する患者における血管再生に用いられることが実証されている。虚血肢を有する患者に送達されるTRCは、血管再生を増強することがわかった。TRCは、細胞懸濁液を作製することおよび中に送達されている供給バッグまたはバイアルからTRCを移動させることによって患者に送達される。TRC懸濁液を移動させるためにシリンジが用いられ、次いで、より少ない0.25ml〜1mlの個々の注入容積が、メインシリンジからシリンジアダプターを用いて入れられ、次いで、数回の個々の注入容積が、血管形成が必要とされる肢虚血の部位への筋肉内注射によって送達される。TRCは、最小の侵襲的手順のために、16ゲージニードルから極めて小さい30ゲージニードル、ならびに極めて長い28ゲージカテーテルの広範なニードルサイズによって送達してよい。あるいは、TRCはまた、血管内に送達し、虚血の部位へ進ませ、局所組織再生を駆動させてもよい。
心臓再生
心臓組織再生を駆動するための種々の送達様式がある。TRCは、血管内に送達され、再生の部位に進まされる。あるいは、TRCはまた、心外膜にまたは心内膜にのいずれかで、ならびに経血管的に心筋中に直接的に送達される。TRCは、開胸手順の間に、または最小の侵襲手順によって、例えば、カテーテルによる送達を用いて送達してよい。TRCは、細胞懸濁液を作製することおよび中に送達されている供給バッグまたはバイアルからTRCを移動させることによってこれらの患者に送達される。TRC懸濁液を移動させるためにシリンジが用いられ、次いで、より少ない0.25ml〜1mlの個々の注入容積が、メインシリンジからシリンジアダプターを用いて入れられ、次いで、数回の個々の注入容積が、血管形成が必要とされる心虚血の部位への筋肉内注射によって送達される。TRCは、最小の侵襲的手順のために、16ゲージニードルから極めて小さい30ゲージニードル、ならびに極めて長い28ゲージカテーテルの広範なニードルサイズによって送達してよい。
【0070】
脊髄再生
TRCが脊髄損傷(SCI)後の再生のために用いられる種々の方法がある。TRCは、SCIの部位中に直接的に注入してよく、マトリックス(以下の骨再生のための一覧から選択される)上に播種してもよく、また、切除された脊髄中に播種してもよく、または、TRCが傷害部位に移動し得るような部位に単に置くだけでもよい。あるいは、TRCを、血管内に送達し、傷害の部位に進ませ、局所組織再生を駆動させる。
【0071】
TRCを、直接注射、局所的に送達されるマトリックス上に播種することによって組織に局所的に送達してもよいし、またはTRCを傷害または疾患の部位に進ませる血管系を介して送達してもよい、種々のその他の適用がある。これらの疾患として、肢虚血、うっ血性心不全、心虚血、腎虚血および末期腎疾患、卒中および眼の虚血がある。
【0072】
骨再生のための整形外科的適応症
TRCは、ヒトにおける骨再生適用において上手く用いられてきた。任意選択で、TRCは、骨再生が必要とされる部位での送達および局在化を増強するために3Dマトリックスと混合されてもよい。三次元マトリックスは、さまざまな物理的および化学的形状となり、ハンドリング特性および送達特性を補助するよう、粘稠性またはゲル化結合材料を加えてもよい。
【0073】
三次元マトリックスとして、例えば、脱石灰化骨粒子、石灰化骨粒子、リン酸カルシウムファミリーの合成セラミック、例えば、αトリリン酸カルシウム(TCP)、βTCP、ヒドロキシアパタイトおよびこれらの材料の複雑な混合物がある。その他のマトリックスとして、例えば、コラーゲンベースのスポンジ、多糖ベースの材料、例えば、ヒアルロナンおよびアルギン酸、合成生分解性ポリマー材料、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリフマル酸、ポリエチレングリコール、これらならびに当技術分野で公知のその他の材料の共重合体が挙げられる。
【0074】
TRCとともに用いられるマトリックスはいずれも、組織再生適用のために当技術分野ではよく見られる種々の物理的形状に加工してよい。これらの物理的形状として、オープンおよびクローズドポアフォームおよびスポンジ、線維ベースの織物または不織メッシュまたはナノ粒子〜ミクロンサイズの粒子の範囲の(1マイクロメーター〜1000マイクロメーター)小粒子およびミリメーターサイズ規模のマクロ粒子がある。小粒子はまた、開放気孔率を有することが多く、ナノポアは栄養分および代謝産物輸送において役立ち、ミクロポアは細胞播種および組織組み込みを促進するよう十分に大きい孔を提供する。
【0075】
細胞送達のために用いられるマトリックスが、創傷部位に送達される小粒子である場合には、時々、粒子を結合するために粘稠性材料またはゲルが用いられ、これは材料ハンドリングおよび送達に役立ち、ならびに、粒子および細胞を、留置後にその部位に局在させつづけるのに役立つ。粘稠性結合材料として、例えば、ソフトまたはハードヒドロゲルへの粘稠性液体の形のいずれかで、ヒアルロナン、アルギン酸、コラーゲン、ポリエチレングリコール、ポリフマル酸、血栓およびフィブリンベースの血餅ならびにこれらの材料の混合物が挙げられる。その他の粘稠性材料およびヒドロゲルは当技術分野では公知である。
【0076】
種々の実施形態では、TRCは、具体的な適用に応じて、TCP、脱石灰化骨および200μメートル〜5ミリメートルの範囲の大きさの石灰化骨粒子とともに送達される。場合により、これらの材料は、患者から得た自己の新しく調製した血漿から作製されたフィブリンベースの血餅と結合していてもよい。その他のフィブリン血餅または種々のヒドロゲルまたは一般的なマトリックス材料も使用してよい。
【0077】
一般に、TRCは、骨再生のために用いられる場合、手術の直前にマトリックスと混合される。長期の骨再生のためには、通常、骨癒着不能の領域は、外科医によって開けられ、壊死骨は取り除かれる。癒着不能な骨または骨が必要とされる領域は、その部位での出血を可能にするよう外科医によって皮質が剥離されてもよいし、されなくてもよいが、その地点に、外科医によって再生が起こる骨の間にTRC−マトリックス混合物が留置される。TRCおよびマトリックスのこの混合物は、骨再生の位置を誘導する物理的マトリックスおよび血管新生、創傷治癒および骨再生を駆動するための組織修復刺激を提供するTRCを用いて組織再生を駆動する。残りのTRC/マトリックス混合物は、場合により、プレート、ロッド、スクリューまたはネイルなどの任意の整形外科的ハードウェアが留置された後に骨折線の周囲に留置してもよい。
TRCの製造方法
TRCは、骨髄単核細胞(BM MNC)含む任意の哺乳類組織から単離される。BM MNCの適した供給源として、末梢血、骨髄、臍帯血または胎児肝臓がある。血液は、この組織が容易に得られるためによく用いられる。哺乳類として、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマまたはブタが挙げられる。
【0078】
TRCを作製するための培養方法は、従来の細胞分画法を用いて赤血球および多核細胞(polynucleated cell)を除去することによる出発材料(例えば、組織)からのBM MNCの濃縮で始まる。例えば、細胞は、FICOLL(登録商標)密度勾配分離を用いることによって分画される。培養を開始するのに十分な量の細胞を提供するために、培養に必要とされる出発材料の容積は、通常少なく、例えば、40〜50mLである。しかし、任意の容積の出発材料を使用してよい。
【0079】
次いで、自動化細胞カウンターを用いて有核細胞濃度を評価し、出発材料の濃縮された画分をバイオチャンバー(細胞培養容器)に播種する。バイオチャンバー中に播種される細胞数は、その容積に応じて変わる。本発明と一致して使用してよいTRC培養は、104〜109個細胞/1mlの培養物の細胞密度で実施される。Aastrom Replicellバイオチャンバーが用いられる場合には、2〜3×108個の総細胞が、約280mLの容積に播種される。
【0080】
播種に先立って、バイオチャンバーは、培養培地で準備刺激を受ける。例示的に、本発明に従って用いられる培地は、3種の基本的成分を含む。第1の成分は、IMDM、MEM、DMEM、RPMI1640、α培地またはマッコイ培地または同等の既知培養培地成分からなる培地成分である。第2は、少なくともウマ血清またはヒト血清を含んでなり、胎仔ウシ血清、新生仔ウシ血清および/またはウシ血清をさらに含む血清成分である。場合により、当技術分野で公知の血清不含培養培地を用いてもよい。第3の成分は、コルチコステロイド、例えば、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ソルメドロールまたはこれらの組み合わせ、好ましくは、ヒドロコルチゾンである。Aastrom Replicellバイオチャンバーが用いられる場合には、培養培地は、IMDM、約10%胎仔ウシ血清、約10%ウマ血清、約5μMヒドロコルチゾンおよび4mM L−グルタミンからなる。次いで、培養過程の間、細胞および培地を、制御勾配灌流スケジュールでバイオチャンバーに入れる。細胞を2、4、6、8、10、12、14、16日またはそれより長くの間培養する。細胞は12日間培養されるのが好ましい。例えば、培養は、Aastrom Replicellシステム細胞カセットとともに用いられる場合には、37℃で5%CO2および20%O2とともに維持される。
【0081】
これらの培養は、通常、ほぼ生理学的である、すなわち、6.9〜7.6であるpHで実施される。培地は、1〜20体積割合、好ましくは、3〜12体積割合の酸素を含む酸素含有大気に対応する酸素濃度で維持される。O2濃度の好ましい範囲とは、細胞に近いO2の濃度を指し、必ずしも、培地表面またはメンブランを介してであり得るO2誘導の点ではない。
【0082】
標準培養スケジュールは、培地および血清について、毎週実施される単回交換または週に2回実施される1/2培地および血清交換のいずれかとして、毎週交換されることを求める。培養の栄養培地は、2×106個〜1×107個細胞/mlの密度で培養された細胞につき、約1ml/1mlの培養/24〜48時間の速度で、連続的にまたは周期的にいずれかで、交換される、好ましくは灌流されることが好ましい。1×104個〜2×106個細胞/mlの細胞密度のために、同一培地交換速度を用いてもよい。したがって、107個細胞/mlの細胞密度について、本培地交換速度は、1mlの培地/107個細胞/約24〜約48時間として表される。107個細胞/mlより高い細胞密度については、培地交換速度は、単位時間あたり細胞あたり一定の培地および血清流動が達成するよう割合を高めてよい。
【0083】
骨髄細胞を培養する方法は、Lundellら、「Clinical Scale Expansion of Cryopreserved Small Volume Whole Bone Marrow Aspirates Produces Sufficient Cells for Clinical Use」、J.Hematotherapy(1999年)8:115〜127頁(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。骨髄(BM)吸引液は、等張緩衝生理食塩水(希釈剤2、Stephens Scientific、Riverdale、NJ)で希釈し、有核細胞を、Coulter ZM細胞カウンター(Coulter Electronics、Hialeah、FL)を用いて計数する。赤血球(非有核)を、Manual Lyse(Stephens Scientific)を用いて溶解し、単核細胞(MNC)を、密度勾配遠心分離(Ficoll−Paque(登録商標)Plus、Pharmacia Biotech、Uppsala、Sweden)(比重1.077)によって、300gで20分間、25℃で分離する。BM MNCを、4mM L−グルタミン9GIBCO BRL、Grand Island、NY)、10% 胎仔ウシ血清(FBS)、(Bio−Whittaker、Walkersville、MD)、10%ウマ血清(GIBCO BRL)、20μg/mlのバンコマイシン(Vancocin(登録商標)HCl、Lilly、Indianapolis、IN)、5μg/mlのゲンタマイシン(Fujisawa USA、Inc.、Deerfield、IL)および5μMヒドロコルチゾン(Solu−Cortef(登録商標)、Upjohn、Kalamazoo、MI)で補給されたイスコブ改変ダルベッコ培地(IMDM)である長期BM培養培地(LTBMC)で2回洗浄し、その後培養する。
細胞貯蔵
培養した後、例えば、トリプシンを用いて細胞を回収し、洗浄して増殖培地を除去する。細胞は、製薬等級電解質溶液、例えば、血清アルブミンを補給したIsolyte(B.Braun Medical Inc.、Bethlehem、PA)に再懸濁する。あるいは、細胞をバイオチャンバー中で洗浄し、次いで、以下に記載される洗浄回収手順を用いて回収する。場合により、回収後に、細胞を濃縮し、生体適合性容器、例えば、250mlのcryocyte凍結容器(Baxter Healthcare Corporation、Irvine、CA)中で、解凍の間の細胞凝集を阻害するために、10%DMSO(Cryoserv、Research Industries、Salt Lake City、UT)、10% HSA(Michigan Department of Public Health、Lansing、MI)および200μg/mlの組換えヒトDNアーゼ(Pulmozyme(登録商標)、Genentech、Inc.、South San Francisco、CA)を含有する凍結保護保存溶液を用いて低温保存してもよい。cryocyte凍結容器を、予冷したカセットに移し、速度制御凍結(Model 1010、Forma Scientific、Marietta、OH)を用いて凍結保存する。凍結された細胞を、液体窒素フリーザー(CMS−86、Forma Scientific)に直ちに移し、液相中で保存する。濃縮培養物の好ましい容積は、約5mL〜約15mlの範囲である。より好ましくは、細胞は7.5mLの容積に濃縮する。
培養後
バイオチャンバーから回収すると、細胞は、細胞の培養を支持するのに必要とされる種々の溶解成分ならびに培養の間に細胞によって産生された溶解成分からなる溶液中に存在する。これらの成分のうち多数が、患者の投与にとって安全でないか、そうでなければ不適当である。したがって、ヒトにおける治療的使用に対して準備のできた細胞を作製するためには、培養溶液を、所望の組成を有する、例えば、細胞治療適用における細胞の保存およびヒト投与に適した、製薬等級の、注射用、電解溶液などの新規溶液で置換することによって溶解成分を細胞から分離することが必要である。
【0084】
多数の分離過程に付随する重大な問題は、例えば、細胞の生存率および生物学的機能の低下および遊離細胞DNAおよび壊死組織片の増加によって示される、これらの過程の間にかけられる機械力によって引き起こされる細胞の損傷である。さらに、分離器具中にすべての細胞を移すことができないこと、ならびに器具からすべての細胞を取り出すことができないことの両方のために細胞の相当な喪失が起こり得る。
【0085】
分離戦略は通常、遠心分離または濾過のいずれかの使用に基づいている。遠心分離の一例として、COBE2991Cell プロセッサ(COBE BCT)があり、濾過分離の一例としてCYTOMATE(登録商標)Cell Washer(Baxter Corp)がある(表7)。両方とも、溶解培養成分を回収細胞から分離(洗浄)するために使用できる市販の最先端の自動化分離装置である。表7に見られるように、これらの装置は、細胞生存率の大幅な低下、細胞総量の減少および大きな、より壊れやすいTRCのCD14+auto+亜集団の優先的な喪失による細胞プロフィールの変化をもたらす。
【0086】
【表7】
当技術分野におけるこれらの制限は、ヒト使用に適した細胞集団を作製するための製造および生産過程の実施における問題である。分離過程にとって、細胞に対する損傷を最小にし、それによって不要な溶解成分が除去され、一方で、高い生存率および生物学的機能を保持し、細胞の喪失が最小である細胞溶液をもたらすことが望ましい。さらに、安全でない最終製品をもたらす微生物汚染を取り込むリスクを最小にすることが重要である。少ない細胞の操作および移動は、このリスクを本質的に低減する。
【0087】
この開示内容に記載される本発明は、機械力に対する細胞の曝露を最小にし、回収され得ない細胞の捕捉を最小にする分離過程を実施して細胞を洗浄することによって、現在の技術分野におけるこれらの制限のすべてを克服する。結果として、依然として不要な溶解培養成分を効率的に分離しながら、細胞に対する損傷(例えば、生存率または機能の低減)、細胞の喪失および細胞プロフィールの変化はすべて最小化される。好ましい実施では、分離は、細胞が培養される同一装置内で実施され、これでは、別の器具を用いる移動および分離による汚染のリスクが加えられることが排除される。本発明の洗浄過程は以下に記載される。
【0088】
洗浄回収
細胞がバイオチャンバーから回収され(removed)(回収され(harvested))、続いて、細胞を培養材料から分離(洗浄)するために別の器具に移動される従来の培養過程とは対照的に、洗浄−回収技術は順序を逆転させ、すべての分離(洗浄)ステップを完了し、次いで、細胞をバイオチャンバーから回収するための独特の手段を提供する。
【0089】
培養材料を細胞から分離するために、所望の組成の新規液体(またはガス)を、好ましくは、バイオチャンバーの中心に、好ましくは、所定の制御された流量で取り入れることができる。この結果、液体が移しかえられ、バイオチャンバーの周辺に沿って、例えば、開口部48を通って排出され、廃棄物バッグ76中に回収され得る。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態では、バイオチャンバー中の液体空間の直径は、約33cmであり、液体空間の高さは、約0.33cmであり、バイオチャンバーにすすぎおよび/または回収液を加える流量は、約0.03〜1.0容積交換(VE)/分であり、好ましくは、0.50〜約0.75VE/分である。これは、約8.4〜約280mL/分に実質的に相当し、好ましくは、140〜約210ml/分である。いくつかの実施形態によれば、流量および流速は、培養細胞の大部分がバイオチャンバー中に保持され、廃棄物バッグへと失われないことおよびこの過程を完了するために過度に長期間が必要とされないことを確実にするのに役立つ。一般に、チャンバー中の細胞の量は、104〜108個細胞/mLの範囲であり得る。TRCについては、量は、上記のバイオチャンバー容量に対して、3千万〜3億個の総細胞に相当する105〜106個細胞/mLの範囲であり得る。もちろん、当業者ならば、細胞量は、バイオチャンバー容量の変化に応じて変化することは理解するであろう。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、培養細胞のバイオチャンバーからの回収では、以下の過程をたどればよく、以下の表3に広く概説されている。バイオチャンバーに入れられる溶液は、バイオチャンバーの中心に加えられる。廃棄培地バッグ76は、液体またはガスがバイオチャンバー中に入れられる各ステップの後に移しかえられた対応する流体を収集し得る。したがって、細胞が培養された後に、バイオチャンバーは、条件培養培地(例えば、IMDM、10% FBS、10%ウマ血清、培養の間に細胞によって分泌された代謝産物)で満たされ、約3千万〜約3億個の細胞を含む。次いで、バイオチャンバー中に0.9%NaCl溶液(「すすぎ溶液」)を約140〜210mL/分で、約1.5〜約2.0リットルの総容積がバイオチャンバーから排出されるまで入れてよい(ステップ1)。
【0092】
新規または異なる液体をバイオチャンバー内に入れるための単回容積交換は、バイオチャンバー内の前の液体を大幅に減少させるが、前の液体のいくらかの量は残る。したがって、新規/異なる液体のさらなる容積交換は、前の液体を大幅に枯渇させる。
【0093】
注目する細胞が、TRCなどの接着細胞である場合には、場合により、すすぎ溶液を回収溶液と取り換えてもよい。回収溶液は、通常、培養表面に接着した細胞の剥離を可能にする酵素溶液である。回収溶液は、例えば、0.9%NaCl中、0.4%トリプシン/EDTAを含み、これは、約140〜210mL/分で、約400〜約550mlの総容積が送達されるまでバイオチャンバー中に入れてもよい(ステップ2)。その後、バイオチャンバーの培養表面に接着した細胞の酵素的剥離が可能となるのに所定の期間が経過する(ステップ3)。
【0094】
0.5%HSAを補給したIsolyte(B Braun)を、約140〜210mL/分で、約2〜約3リットルの総容積が送達されるまで入れて、酵素溶液を移しかえてもよい(ステップ4)。
【0095】
この時点で、不要な溶液(培養培地、酵素溶液)の細胞からの分離は実質的に完了している。
【0096】
集められた容積を減らすために、Isolyte溶液の一部を、開示される流量でバイオチャンバー中に入れられるガス(例えば、空気)を用いて移しかえることが好ましい(ステップ5)。これを用いて、バイオチャンバーの存在している溶積の約200〜250ccを移しかえることができる。
【0097】
次いで、バイオチャンバーを撹拌して、定着していた細胞を溶液にしてよい(ステップ6)。次いで、この細胞懸濁液を、細胞回収バッグ70(またはその他の容器)に流し入れてもよい(ステップ7)。バイオチャンバーにさらなる量の第2の溶液を加えてもよく、任意のその他の残存する細胞をすすぎ出すために第2の撹拌を起こしてもよい(ステップ8と9)。次いで、この最終すすぎ物を回収バッグ70に加えてもよい(ステップ10)。
【0098】
【表8−1】
【表8−2】
培養後洗浄のための従来法(例えば、CYTOMATE(登録商標))を用いて製造されたTRCと比較して、洗浄−回収法を用いて製造されたTRCは、製品あたり、高い、より一貫性のある洗浄後生存率、高い保存後生存率、高い総生存細胞数、高い総生存CD90+細胞数、わずかに低い残存BSAおよび高く、より一貫性のあるCFU−FおよびCFU−GMを示す。洗浄後生存率は、新規洗浄法を用いて一貫性があり、CYTOMATE(登録商標)洗浄法の10%と比較して2%の標準偏差を有する。洗浄−回収を用いて製造されたTRCはまた、高いパーセンテージのCD90+細胞を有し、このことはTRC中に高いパーセンテージの骨髄間質細胞ならびにCD14+細胞があることを意味し、このことは、TRC中に高いパーセンテージの単球/マクロファージ細胞があることを意味する。VEGFR1の存在もまた、洗浄−回収TRCにおいて高められた。新規洗浄法を用いると最終生存総細胞数は高いが、新規洗浄製品は、より多くの生存細胞の分離されていない凝集塊を含み、これは、壊死細胞片による凝集塊−CYTOMATE(登録商標)洗浄製品において、24時間保存した後に時々見られる大きな細胞集塊の供給源とみられるものから分離しなければならない。これらの分離していない凝集塊は、細胞製品保存または送達を干渉しないと思われる。
分離法
上記の洗浄−回収法はまた、溶解成分を含む溶液を、溶液内に含まれる粒子と分離するのに有用である。本発明の洗浄−回収法は、粒子はフローによって移動されず、粒子を含まない流出溶液が回収されるような、水平表面に定着した粒子上の溶液の制御流を生じる予期しない能力に基づく。
【0099】
この方法は、例えば、水平に配向され、空のチャンバーに入れられる溶液が、水平に流れる前に高さを満たすよう十分に小さい高さを有する薄い円柱状のチャンバーを使用する。チャンバーの直径は、分離されるべき粒子の量を収容するよう十分に大きく、通常、チャンバーの高さの数倍である。
【0100】
通常、チャンバーは、約0.4cmの高さを含み、細胞の培養のためのチャンバーの使用にとって望まれる高さに対応するが、約0.2〜約1.0(またはより高い)の範囲であってもよい。チャンバーの直径は、約33cmであり得るが、約10cm〜約50cm(またはより長い)の範囲を含み得る。したがって、いくつかの実施形態に従う、好ましいチャンバー容積は、約280ccであり得るが、このような容積は(もちろん)チャンバー直径および高さの範囲に対応する。
【0101】
分離法の開始前に、粒子を含有する第1の溶液でチャンバー容積を完全に満たす。粒子は、溶液よりも高比重のものであり、チャンバーの底の円形表面上に重力によって定着するか、接着する。チャンバー中の粒子の積み重なり全高は、底表面の全域の粒子の均一な分布によって最小にすることができるが、これはチャンバーの全高のごくわずかである。分離を実施するために、所望の新規組成物の第2の溶液をチャンバーの中心に制御流量で入れ、この溶液がチャンバーの周辺に向かって対照的に流れ、周辺でチャンバーから流れ出、共通の収集点に向かうチャンバー中の第1の溶液を移し変える。形状の結果として、フローの直線速度が中心からの距離に比例して減少し、その結果、直線速度は、チャンバーの周辺を出るところで最も遅い。流量は、直線速度が、定着された粒子がチャンバーから出て移動するのを妨げるほど十分に低いが、中の液体は移動させるよう制御されることが好ましい。本明細書に記載されるバイオチャンバーの比較的低い高さによって、半径方向の栓流が可能となり、移しかえられる溶液を新規溶液と混合するのを最小にすることが好ましい。したがって、これによって、第2の溶液で、第1の溶液の高いパーセンテージがバイオチャンバーから移しかえられることが可能となる。第2の溶液を用いる、1回以上のさらなる容積交換を実施して、チャンバー内の第1の溶液の残存レベルをさらに低下させることができる。
【0102】
粒子をチャンバーから移しかえるのに先立つ代替運転様式として、第1の溶液はまた、チャンバーの中心に、第2の溶液の導入について記載されるものと同一流量内で入れられる大気などのガスによって移しかえることができる。これは、依然として粒子を残しながら、チャンバー内の液体の容積の制御された減少をもたらす。次いで、チャンバーより少量のすすぎ溶液を、担体として入れ、粒子をチャンバーから減少した溶液容積に移動および回収することができる。
【0103】
含有される粒子と適合している種々の溶液−例えば、細胞に対しては、任意の培養培地、任意の生理学的バッファー、任意の製薬等級の注射物質を、交換液体として使用してよい。
【0104】
接着された細胞を剥離および回収するために、細胞培養において従来用いられている任意の酵素溶液を使用してよい。本発明の方法によれば、接着細胞を含む培養培地を、酵素を含有するバッファーと取り換える。細胞を接着細胞がもはや接着しないような時間、酵素に曝露させる。次いで、酵素バッファーを、細胞を中で保存されるか使用される別の液体と取り換える。次いで、チャンバーを撹拌し、細胞を液体に懸濁させ、この液体を生体適合性の容器に集める。例えば、液体が、−80℃での保存のための抗凍結剤または患者の投与のための製薬上許容される担体であり得る。細胞回収のための酵素溶液は、トリプシン(動物由来、微生物由来または組換え)、種々のコラゲナーゼ、代替微生物由来酵素、解離剤、一般プロテアーゼまたはこれらの混合物を含む。いくつかの市販の回収酵素溶液の一覧は以下に列挙されている:
【0105】
【化1】
バイオリアクターシステム
本発明のいくつかの実施形態は、治療的使用に適した培養後細胞組成物を作製するための方法および/または装置を含み、米国特許第6,326,198号および同6,048,721号に開示される方法および装置/システムに関し得る。
【0106】
例えば、米国特許第6,048,721号(’721特許)に開示されるバイオリアクターシステムを用いて、本発明のいくつかの実施形態に従う方法を実施してもよい。本発明の実施形態を実施するためのシステムを説明するこの開示内容の一部が、以下に記載されている。
【0107】
図1に示されるように、バイオリアクターシステムは、細胞の成長および増殖が起こるディスポーザブルの細胞カセット100、ハードウェアインキュベーターユニット200およびコンパニオンハードウェア、増殖過程の間に生物学的および物理学的環境を制御するシステムマネージャー300および細胞の充填、処理および播種ならびに増殖過程の完了時の細胞の最終回収のうち少なくも1つを容易にするプロセッサユニット400を含む。
【0108】
哺乳類幹細胞および造血前駆細胞の成長および増殖を目的として、骨髄を模擬実験することは、通常、中でも、培養されているすべての細胞に液体を灌流して、均一な酸素濃度および栄養分の均一な供給を実施することを必要とする。細胞カセット100の主な機能は、含有されるバイオチャンバーの酸素供給および培地灌流を支持する無菌的な閉鎖環境を提供することである。
【0109】
図5を参照すると、細胞カセットの主な要素は、好ましい円形外周を有する円板状バイオリアクター培養チャンバー10(「バイオチャンバー」)である。バイオチャンバーは、4つの主要な構成要素:最上部20、基部30、細胞床ディスク40およびガス透過性液体不浸透性膜50から形成され得る。
【0110】
図7に図式的に示されるように、バイオチャンバーの最上部20は、例えば、局部的なエネルギーをかけること(または複数のねじなどのその他の固定手段)によって、2つの要素を1つにまとめることによって、基部30に(好ましくは、液体密封方法で)、その半径方向の外周で固定されている。メンブラン50は、最上部と基部の間に固定されており、バイオチャンバーの内容積を上部および下部に分離するようしっかりと伸ばされている。
【0111】
細胞床ディスク40は、バイオチャンバーの内部の下部内に位置する。通常、半径方向の外周に上方へ伸びる環状のへり42を含むディスクの形状を有する。出発細胞を播種した後、細胞増殖が、ディスク40の上面、メンブラン50の下面と、環状のへり42の間に規定される細胞増殖床25中で起こる。環状のへり42の上面Aは、ディスク40が基部に取り付けられた時に、メンブラン50がへり42と協同して細胞増殖床25を密閉するよう、基部30のフランジ30Aの上面と同一平面上にあることが好ましい。
【0112】
細胞床のディスク40は、半径方向の中心増殖培地供給ポート44を有し、これは基部30を通ってバイオチャンバーの外部へと下方に伸びる。あるいは、増殖培地供給ポートは、細胞床のディスク40の上の半径方向の中心点に位置し、高くなった中央ポート28を通ってバイオチャンバーの外部へと上方に伸びてもよい(示されていない)。また、細胞床の半径方向の外側限界近くに、すなわち、へり42のすぐ内側に、少なくとも1つの回収ポート46を有する(また、複数の回収ポートを含んでもよい)。ポート46もまた、基部を通ってバイオチャンバーの外部へと伸びる。あるいは、1以上の回収ポートが、基部の半径方向の外側限界近くに、すなわち、細胞床の周辺のすぐ内側に位置し、基部からバイオチャンバーの外側へと伸びてもよい(示されていない)。最後に、複数の、例えば、24の廃棄培地排出開口部48が、ディスク40の周辺に位置し、ディスクの上に設置される細胞床区画とディクスの下に設置される廃棄区画間の流体連絡を可能にする。開口部48は、へり42にすぐ隣接する、ディスク40の半径方向の外周の周囲に等しく間隔があいているのが好ましい。
【0113】
栄養の豊富な増殖培地は、培地供給ポート44に供給される。増殖培地は、当技術分野で周知の標準増側培地であり得、胎仔ウシ血清、ウマ血清またはヒト血清などの血清添加を有し得る。また、血清不含であってもよい。増殖因子およびグルタミンなどの試薬もまた、必要に応じて加えてもよい。増殖培地は予混バッグ中に供給されてもよいし、その場で改変されてもよい。
【0114】
増殖培地は、培地供給ポートから、細胞床25に入り、ディスク40の半径周辺に向かって半径方向に外側に流れる。そのようにして、栄養を供給し、それか廃棄生成物を移動させ、その中で細胞が培養される。図7中、矢印によって示される、複数の開口部48を通る流れによって、細胞床から廃棄培地として排出される。
【0115】
灌流液体の半径方向の外側へのフローおよび排水開口部48の配置のために、細胞培養床内の細胞は、栄養が均一に灌流される。例えば、複数の円周方向等間隔の排出開口部への灌流液の半径方向のフローは、注入口から、細胞床を越えて細胞床の周辺上の周辺排出位置への均一な流量を促進する。
【0116】
基部30は、例えば、開口部とポートの間のシール(示されていない)を介して、ポート44および46が流体密封方法で伸びることができる開口部32および34を有する。あるいは、開口部は、ポート44が中央ポート28を通って上方に伸び、ポート46が基部から直接伸びる場合には必要でない(示されていない)。基部はまた、廃棄液体がバイオチャンバーから移し変えられるための、ほぼ中央に位置する排出ポート36を含む。排気液は、ディスク40の底面と、基部30の上面の間の空間を通って開口部48から半径方向の内側に、ポート36へと流れ、それによってバイオチャンバーから排出される。ポート36は、同軸であり得るが、培地注入ポート44の開口部32に適合するよう基部30の半径の中心からわずかに補正されてもよい。あるいは、開口部は、ポート44が中央ポート28を通って上方に伸びる場合には必要でない(示されていない)。
【0117】
上記のように、バイオチャンバー最上部20は、基部30に流体密封方法で固定され、その間にメンブラン50がある。上部20から内側に伸びて、細胞床中の灌流液の液圧による歪みに対してメンブラン50を支持するリブの同心のラビリンス経路が含まれてもよい。リブ22は、ディスク40の上面と、メンブラン50の底面の間の正確な間隔、すなわち、細胞増殖床の正確な厚みを維持する。この厚みは、細胞増殖床内の細胞の適切な酸素供給を確実にするために約4mmであり得る。あるいは、最上部20から下方に伸びる一連の周期的支持体およびメンブラン40が積層されている薄い多孔性のディスクを用いて、メンブランの位置を維持し、細胞増殖床の正確な厚みを提供してもよい(示されていない)。
【0118】
リブ22はまた、それを通って大気などの酸素供給液が流れて、酸素を供給できるラビリンス様ガスチャンバーを形成し、酸素は、メンブランを通って細胞床中に散気される。ラビリンスの2つの末端は、酸素供給大気がガス注入ポート24に供給され、ガス排出ポート26を通って排出され得るよう互いに隣接し得る。あるいは、リブの同心ラビリンス経路の代わりに周期的支持体が用いられる場合には、ガス注入ポートおよび排出ポートは、酸素供給大気がガス注入ポートに供給され、ガス排出ポートを通って排出され得るよう、互いに180°反対の最上部の周囲近くに位置し得る(示されていない)。
【0119】
ベル様に高くなった中央ポート28は、最上部20の半径中心に形成され、メンブランに対して環状リブ29ベアリングによって密閉されたチャンバーを形成する。細胞は、中央ポート隔壁28Aを介して細胞増殖チャンバー中に播種できる。このために、非ラテックスニードル隔壁が、細胞滞留領域との直接接続のために、気密バンドを用いてポート機構に固定されていてもよい。あるいは、管ラインが、中央ポートから伸び、これを無菌管溶接機を用いて外部容器と接続してもよい(示されていない)。
【0120】
図8〜10中に示されるバイオチャンバー最上部、基部および細胞床ディスクの詳細な例示を参照すると、バイオチャンバー最上部20は図8Aおよび8Bに示されている。最上部20は、射出成形された、透明な、非反応性プラスチック、例えば、ポリスチレンまたはPETGから形成されることが好ましい。フランジ20Bによって、その半径方向の外周に結合している、ほぼディスク様の主要部分20Aを有する。フランジ20Bは、等間隔の複数のボルト孔20Cを有し、最上部20を基部30に固定するために、それを通ってボルト(示されていない)が通る。あるいは、最上部を基部に固定するのに、EMA(電−磁気)溶接を用いてもよい(示されていない)。
【0121】
高くなった中央ポート28は、ほぼベル型で、中央隔壁28Aを有する。隔壁は、採取される場合には、注射ニードルによって穿孔され得、セルフシールする、ガスおよび液体不浸透性のバリアである。あるいは、管ラインが、中央ポートから伸び、これを無菌管溶接機を用いて外部容器と接続してもよい(示されていない)。等間隔の複数の半径方向の補強リブ20Dは、中央ポート28と、リム20Bに隣接する環状補強リブ20Eの間の主要部分20Aから伸びる。
【0122】
リブ22は、通常、環状方向にあり、図8Aに点線によって示されるようなラビリンス20Fを形成する。ラビリンスは、酸素供給ガスが、細胞増殖床全体の上に規定されるガスチャンバーを通って流れることができるよう回旋状であり得る。ラビリンスの反対の末端は、主要部分20Aの半径方向に外側の末端で互いに隣接することが好ましい。注入ポート24および排出ポート26は、ラビリンスの反対の末端と連絡する。あるいは、リブの同心ラビリンス経路の代わりに、周期的な支持体が用いられている場合には、ガス注入ポートおよび排出ポートは、酸素供給大気がガス注入ポートに供給され、ガス排出ポートを通って排出され得るよう、互いに180°反対側の最上部の周囲近くに位置してもよい(示されていない)。
【0123】
半径方向に最も内側のリブ29は、連続環であり得、これが、メンブラン50と協同して、中央ポート28の内側からラビリンスによって規定されるガスチャンバーを密閉する。半径方向に最も外側の連続リブ20Fは、ラビリンスの最も外側の限界を規定する。リブ20F、22および29のすべての先端は、バイオチャンバーが組み立てられると、リブがメンブラン50に対して密閉するようフランジ20Bの底面と同一平面上にある。あるいは、リブの同心ラビリンス経路の代わりに周期的支持体が用いられている場合は、すべての支持体の先端は、メンブラン50の位置が制御されるよう、フランジ20Bの底面と同一平面上にある(示されていない)。
【0124】
図9Aおよび9Bを参照して、細胞床ディスク40はまた、射出成形された、透明な、非反応性プラスチック、例えば、ポリスチレンまたはPETGから形成されることが好ましい。環状へり42によって半径方向の外周に結合している、ほぼディスク様主要部分40Aを有する。主要部分の上面は、通常、平坦で、遮るものがなく、培養されている細胞コロニーの接着面を形成する。
【0125】
図10Aおよび10Bを参照して、基部30はまた、射出成形された、透明な、非反応性プラスチック、例えば、ポリスチレンまたはPETGから形成されることが好ましい。また、上面30Bおよびボルト孔30Cを有する高くなった周囲フランジ30Aによって結合されているディスク様主要部分30Aを有する。あるいは、ボルト孔を、機構で取り換えて、EMA溶接を実施し、基部を上部と固定する(示されていない)。組み立てられると、ディスク40は、周囲フランジ30Aの範囲内に完全に適合し、表面Aは密接に隣接し、表面30Bと同一平面上にある。周囲のへり30Dは、フランジ30Bの半径方向の外縁から上方に伸び、メンブラン50をバイオチャンバーの組み立て中に保持する。
【0126】
主要部分30Aの上面は、ディスク40の底面を支持する複数の高くなった領域30Eを有し、ディスク40と基部30の間の分離を維持し、それによって、廃棄培地の、中央排出ポート34へのリターンフローの流体管路を規定する。凹部30Fおよび30Gは開口部32および34の各々を取り囲み、開口部を密閉するための弾性要素を収容し得る。あるいは、ポート44が、中央ポート28を通って上方に伸び、ポート46が基部から直接伸びる場合には、開口部は必要ではない(示されていない)。
【0127】
複数の半径方向の支持リブ30Hは、基部の底面から伸び、環状の支持リブ30Iおよび30Jの間を伸びる。環状の補強増補30K、30Lおよび30Mは、開口部32、34および36をそれぞれ取り囲む。
【0128】
バイオチャンバーの組み立てでは、図7に図式的に示されるように、適当なシールが開口部32および34に配置され、ディスク40が基部30内に配置され、ポート44および46のニップルが、それぞれの開口部を通って密閉的に伸びる。あるいは、ポート44が中央ポート28を通って上方に伸び、ポート46が基部から直接伸びる場合には、開口部および関連シールは必要ではない(示されていない)。次いで、メンブラン50をディスク40およびフランジ30A上に置き、リップ30D内に保持しておく。あるいは、メンブラン50を、多孔性ディスクに積層して、さらなる機械的安定性を提供し、その後、ディスク40上に置く(示されていない)。次いで、最上部20を基部上に置き、ボルト孔20Cおよび30Cを一直線上にし、ボルトをボルト孔を通して通し、堅く締めて、バイオチャンバーを一体化する。あるいは、EMA溶接を用いて最上部を基部につなぎ合わせる(示されていない)。この時点で、外側環リブ20Fは、表面30Bの半径方向に最も内側の部分に対してメンブラン50を固定し、バイオチャンバーの内部を密閉する。
【0129】
概略図5および6を参照して、バイオチャンバー10を、細胞カセット100のケーシング内に入れ、組み立て済みのディスポーザブルユニットを形成する。バイオチャンバーは、カセットケーシングのカセット基部60に固定する。例示されるシステムでは、基部60は、支持フランジ62を有し、中央開口部は複数の孔を有する。最上部を、バイオチャンバー10の基部に固定するために用いられるボルトはまた、カセット基部60へのバイオチャンバーの固定のために、これらの孔を通って伸び得る。あるいは、基部へのバイオチャンバーの固定のために、取り付けクリップを基部に、3箇所以上の等間隔の周囲位置に取り付けてもよい(示されていない)。カセット基部は、最上部64によって上部から、トレイ66によって下から閉じ、増殖培地をバイオチャンバーに供給するために、培地供給容器68を、カセット基部60の前面に取り付ける。培地供給容器68に、バイオチャンバーの培地注入ポート44と連結している培地供給ライン68Aを提供する。エアポンプからの圧搾空気を、ライン68Bを介して培地供給容器中、培地の上空に供給し、このようにして、増殖培地を、一定流量の培地をバイオチャンバーの細胞増殖床25に提供するために加圧する。さらなる増殖培地を、培地容器供給管路68Cを介して容器に供給する。
【0130】
細胞回収バッグ70(またはその他の細胞回収収集装置)を、管路72および回収バルブ74を介してバイオチャンバーの回収ポート46に接続してもよい。
【0131】
廃棄液体バッグ76は、バイオチャンバーの下に位置し、細胞カセットのトレイ66上にある。細胞カセットの後部のバルブプレート80に取り付けられたドリップチャンバー装置78を介してバイオチャンバーから廃棄液体を受け取る。ドリップチャンバーは、バイオチャンバー内で正確に制御された低圧を可能にするようサイフォンブレークを含む。ドリップカウンター(示されていない)がドリップチャンバー装置と関連している場合もある。廃棄液体の液滴を計数して流量を検出する。
【0132】
廃棄液体は、廃棄バルブ82を介してドリップチャンバー装置に達する。バイオチャンバーの中央ポート28でのガス圧を用いて、中央ポートバルブ84およびライン84Aを介してドリップチャンバーを通るフローを調節する。
【0133】
エアポンプ供給ライン68B、バイオチャンバーに新鮮な酸素供給ガスを供給し、バイオチャンバーから使用済み酸素供給ガスを排出するためのガス出入りポート88および90、培地容器送達ライン68Aと接続された培地供給バルブ92、HBSSバルブ94およびトリプシンバルブ96を介して培地供給容器に圧搾空気を定圧で供給するためのエアポンプ供給ポート86もバルブプレートに取り付けられていてもよい。あるいは、バルブ94およびバルブ96は、広範な試薬、例えば、HBSSおよびトリプシンを添加するための単一のバルブと取り換えてもよい(示されていない)。
【0134】
各カセットはまた、「キー」含有非揮発性記憶装置および時計を含み得る。使用前に、システムマネージャー300を介して、追跡データ、プロトコールコマンドおよび実時間を用いてカセットのキーを初期化する。キーは、細胞製造過程の間にシステムエレクトロニクスによって用いられ、関連データを記録し、ならびに、プロトコールコマンドにアクセスする。
【0135】
使用においては、保護包装中の、無菌単回使用ディスポーザブル細胞カセット100が供給される。培地供給リザーバー68、培地フロー制御(示されていない)、バイオチャンバー10、廃棄リザーバー76、回収リザーバー70、キーおよび成分を相互に連結させ、支持するための必要な配管、弁調節および包装を含む。あるいは、回収リザーバーは、分離成分として提供され、次いで、無菌管溶接機を用いて回収時にカセットに接続されてもよい。
【0136】
運転では、まず、システムマネージャーによってキーが初期化される。キーが初期化されると、プロセッサ400に移される。プロセッサは、多軸ジャイレーター(「ウォブレーター(wobbulator)」)410を含む。ウォブレーターは、上にカセットが固定され得る支持テーブル412を含む。ウォブレーターは、支持テーブル412を、2つの直行水平軸の周囲を旋回させるための機械的結合414を有する。
【0137】
細胞カセットが、プロセッサ400中に位置し、支持テーブル410上に固定され、キーが播種が必要であることを示す場合には、プロセッサは播種操作の自動シークエンスを提供する。例えば、播種シークエンスは、以下のステップからなり得る。第1に、ウォブレーターテーブル412を水平定位置にもってくる。次いで、細胞カセット100を、リザーバー68からの培地の重力送りを用いて、増殖培地で必要とされる容積まで準備刺激する。あるいは、リザーバーに圧力をかけて培地の移動を促進してもよい。この時間の間に、回収バルブ74を閉じ、廃棄バルブ82をあけ、その結果、バイオチャンバー25中の培地が開口部48を通って、回収ポート46を通らずに流れ得る。次いで、細胞カセットを傾斜させ、細胞の分配において用いられる気泡を作製する。次いで、バイオチャンバーに細胞を播種する。これは、中央ポート隔壁およびメンブランを貫通する皮下注射器を介して行ってもよい。あるいは、無菌管溶接機を用いて、細胞を含む容器を、中央ポートから伸びる管ラインに接続し、次いで、重力または圧力を用いて細胞を播種してもよい(示されていない)。次いで、ウォブレーターは、細胞をディスク40の上面に分配するための所定のプログラムに従って、細胞カセットを振動させる(すなわち、中の内容物を撹拌する)。この時点で、気泡が、バイオチャンバー内の細胞の分配にさえも役立つ。次いで、残存する空気を、中央ポートを通してパージし、カセットをプロセッサから取り外す。次いで、カセットは、インキュベーションの準備が整う。
【0138】
バイオチャンバー10は、増殖培地で実質的に満たされる(好ましくは、完全に満たされる)ことができ、これが播種の際に細胞によって置き換えられ得る。例えば、バイオチャンバーは、増殖培地で約80%の総容積まで満たされ得る。細胞は、播種の際に、同一増殖培地または異なる液体/培地に懸濁され得る。播種の際に、バイオチャンバーは完全未満(例えば、90%総容積)に満たされ、その結果、細胞が、撹拌の際にバイオチャンバーの内部中で均一に分配され得る。播種後、バイオチャンバーは実質的に満たされる(好ましくは、完全に満たされる)ことが好ましい。
【0139】
次いで、カセットを、細胞が重力によってバイオチャンバーの底面上に定着し、そこで細胞が培養の間中、とどまるのを可能にするようバイオチャンバーが水平位置に維持されているインキュベーター200に入れる。インキュベーターとは、細胞生成のための細胞カセットを受け入れることができる機器である。複数のカセットが取り付けられているラック210の形をとり得る。カセットと一緒になって、カセット内の培養環境の管理を提供する。また、システムマネージャー300と、およびインキュベーション開始時間を保存するためのキーおよびキーの日付と接続され、インキュベーションデータは、インキュベーションシークエンスの間、キーに連続的に提供される。キーはまた、異常な事象、例えば、アラームまたは電源異常、用いられる培地の量およびインキュベーター同定に関する情報を受け取る。インキュベーターは、増殖チャンバーを通る培地のフロー、増殖培地リザーバー68の温度およびバイオチャンバー中のガスチャンバーに送達されるガスの濃度および流量を、キーに保存された制御設定に基づいて管理する。インキュベーターはまた、種々の安全/警報パラメータをモニターして、細胞製造法が予想通りに進むことを確実にする。これは、システムマネージャーコンピューターによって、または独立したインキュベーターコンピュータの使用によって、いくつかのインキュベーターに対して行うことができる。
【0140】
培養の完了後、カセットをインキュベーターから取り外し、プロセッサ中に戻し、そこで、記載される回収洗浄過程を実施する。
【0141】
本発明は、以下の限定されない実施例において、さらに例示される。
【実施例】
【0142】
実施例1 組織修復細胞(TRC)培養および洗浄技術プロトコール
TRC培養
FICOLL(登録商標)によって正常ドナーの血液から単離された、新鮮な骨髄単核細胞(BM MNC)をPoietics Inc.(Gaithersburg、MD)から購入した。あるいは吸引した骨髄(BM)を、患者から臨床試料として受け取り、FICOLL(登録商標)によって分離して単核細胞調製物を作製した。細胞濃度は、自動化細胞カウンターを用いて評価し、上記のLundellらの方法によってBM MNCを培養した。播種に先立って、培養チャンバーを、IMDM、10%胎仔ウシ血清、10%ウマ血清、5μM ヒドロコルチゾンおよび4mM L−グルタミンからなる培養培地を用いて準備刺激した。12日間の培養過程の間、培地を培養チャンバーに制御勾配灌流スケジュールで通した。培養は、37℃で、5%CO2および20%O2を用いて維持した。
CYTOMATE(登録商標)洗浄方法
CYTOMATE(登録商標)は、白血球製品を洗浄および濃縮するために設計された、十分に自動化されたシステムである。電気−機械機器および処理されるべき細胞の各バッチに洗浄回路を提供する使い捨ての予め滅菌されたディスポーザブルセットを含む。細胞による過剰のフィルターローディングを防ぐための接線流作用を提供するスピニングメンブラン技術を取り入れている。
【0143】
セットアップ
1.洗浄回路セットをCYTOMATE(登録商標)機器に取り付ける。
【0144】
2.バッグを接続する:
−培養過程から回収された細胞(800〜1000mLの容積の培養過程液、例えば、培養培地、回収酵素溶液中のTRC)のバッグ。
【0145】
−バッファー溶液(2000〜3000mL、0.5% HSAを補給したIsolyte)。
【0146】
−洗浄された細胞のための収集バッグ(120mL〜180mLの収集容積)。
【0147】
−上清バッグ(細胞を含んで収集されていない、2600〜3900mLの廃棄液体)。
【0148】
CYTOMATE(登録商標)手順:
1)バッファー溶液を用いて洗浄回路を準備刺激し、再循環を開始する
2)細胞を回収バッグから、洗浄回路に移し、洗浄回路中のフィルターを通して液体を除去しながら、洗浄回路を通して細胞を再循環することによって液体容積を減少させる(フィルターは、接線流効果を提供し、フィルター目詰まりを防ぐために回転している)。除去された液体は、上清バッグ中に集められる。
【0149】
3)バッファーを使用して、残存する細胞を回収バッグから洗浄回路にすすぎ入れる。
【0150】
4)細胞を洗浄回路を通して再循環させ、同時に、スピンニングフィルターを通して液体を上清バッグ中に除去し、容積を維持するために必要に応じてバッファー溶液を加えることによって細胞を洗浄する。
【0151】
5)戦場された細胞を収集バッグ中に移す。
【0152】
6)バッファーを使用して、残存する細胞を洗浄回路から収集バッグ中にすすぎ入れる。
【0153】
洗浄回収方法
洗浄−回収過程は、培養チャンバーからの培養培地を、生体適合性すすぎ溶液で移しかえることによって始まる(ステップ1、表8、上記)。次いで、すすぎ溶液(生理食塩水またはその他の等張溶液)を、当節の大部分でブタトリプシンが用いられる細胞回収酵素溶液と取り換える(ステップ2、表8)。その他の非動物由来回収試薬、例えば、TRYPLE(商標)(Invitrogen、Carlsbad、CA)およびTRYPZEAN(商標)(Sigma、St. Loius、MO)も上手く用いられている。酵素が細胞を互いに、また培養表面から分離するよう働くので、培養チャンバーを、一定期間(5〜60分、好ましくは、15分間、ブタトリプシンとともに)インキュベートさせておく(ステップ3、表8)。酵素インキュベーションが完了した時点で、第2の、通常、注射剤等級の、すすぎ溶液(IsolyteまたはNormasol)が、酵素溶液に取って代わる(ステップ4、表8)。この時点で、チャンバーは、剥離された細胞を含み、剥離された細胞は細胞表面に定着されたままであり、注射剤等級の溶液に懸濁する。最終回収細胞濃度を増大させ、最終容積を減少させるために、このすすぎ溶液の部分を空気に移し変える(ステップ5、表8)。培養チャンバーにおいて最終液体容積(100〜350mL)が達成されると、チャンバーを撹拌して定着している細胞を溶液にもたらす(ステップ6、表8)。この細胞懸濁液を細胞収集容器中に流し入れる(ステップ7、表8)。必要に応じて、さらなる量の注射剤等級の溶液を細胞培養チャンバーに加えてもよく、第2の撹拌を起こして、残存する細胞をすすぎ出してもよい(ステップ8と9、表8)。次いで、この最終すすぎ物を細胞収集容器に加える(ステップ10、表8)。
Cytomate対洗浄回収の比較
回収当日、TRCを2つの培養物に分けた。第1の培養物を、標準CYTOMATE(登録商標)法によって回収、濃縮した。第1の培養物中のTRCをトリプシン処理(0.9%塩化ナトリウム中、0.025%トリプシン)によって回収し、CYTMATE(登録商標)(Baxter International、Inc.)細胞プロセッサを用い、製造業者の使用説明書によって洗浄して培養材料を枯渇させた。細胞産物を、0.5% HSAを補給した製薬等級電解質溶液で洗浄し、150mLの容積にし、そのまま用いるか、または生体適合性バッグ中15mLまたは5mLの容積に濃縮した。TRCの第2の培養物は、組み合わせた洗浄−回収ARSプロセッサシークエンスのドラフトおよびさらなる希釈ステップを含む、残存物をさらに低減するよう設計された改変濃縮法を用いて回収した。
【0154】
濃縮TRC懸濁液を作製するために、各洗浄から収集された細胞を20mlの容積に遠心分離し、Cryocyteバッグなどのより小さいバッグに移した。最終容器に入れると、第2の遠心分離ステップを実施して、4.7〜20mlの間の最終容積に濃縮し、6ml±1.3mlであるが、最終適用に応じて最大20mlの注射剤等級の溶液中、3千5百万〜3億個細胞の範囲の細胞の用量を作製する。
【0155】
実施例2 洗浄回収は、TRC品質を、CYTOMATE(登録商標)洗浄を上回って高めた。
【0156】
洗浄回収を用いて単離したTRCは、より高い細胞生存率、より高い細胞収率、より少ない残存BSA、より高い前駆細胞、幹細胞、免疫細胞および内皮細胞マーカーの総数、コロニーを形成するための高められた能力、ニードル通過後に匹敵する生存率、より高いレベルの抗炎症性サイトカインおよびより高いレベルのインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)を有していた。新規洗浄回収法の使用によるTRC集団におけるこれらの改良点により、この集団が、当技術分野の方法の現状と比較した場合に、より有効な組織修復治療薬として使用されることが可能となる。
材料および方法
細胞カウント/生存率
細胞カウントおよび生存率は、ヌクレオカウンターまたはトリパンブルー排除によって測定した。ヌクレオカウンターを用いる細胞計数には製造業者のプロトコールを用いた。手短には、細胞懸濁液を、100,000〜10,000,000個細胞/mlの間に希釈し、ヌクレオカセット(nucleocassett)によって細胞懸濁液を吸引した。ヌクレオカセットを、細胞計数および生存率を含む自動化ヨウ化プロピジウム染色のためにヌクレオカウンター中に入れる。ヌクレオカウンターデータが利用可能でない場合は、トリパンブルー排除および血球計数器(手動計数)を用いて、細胞数および生存率を数え上げた。27のサンプル分析にわたって、ヌクレオカウンター細胞計数は、トリパンブルー計数の13%内であり、生存率は4%内であった。
【0157】
これらの実験の間、培養後処理相での産物サンプリングは、細胞のアッセイおよびその他の使用に応じて変わった。データから最も正確な総生存細胞数を得るために以下の戦略を用いた。採取した各サンプルの総細胞数を算出し、次いで、その数に、次の処理ステップの生存率を乗じ、次いで、そのステップでの生存細胞数に加える。例えば、10×106個総細胞数のサンプルを洗浄した産物から取り出し、濃縮後の細胞の生存率が80%であり、濃縮産物の総生存数に8×106個の生存細胞を加えた場合には、どれだけあったかを表すには、非標準サンプリングは存在しなかった。サンプリングされていない合計を算出すると、各洗浄された産物総細胞数から29mLの真の製造サンプル容積を差し引いた。
残存レベル
最終TRC濃縮過程から得られた上清を用いて、残存BSA(ELISAによって)およびトリプシン活性(Quanticleaveアッセイによって)のレベルを測定した。BSA ELISAアッセイを用いて、培養培地に由来する残存BSAのレベルを測定し、比較した。
【0158】
濃縮プロトコール
濃縮懸濁液を作製するために、収集された細胞を遠心分離して20mlの容積とし、Cryocyteバッグなどのより小さいバッグに移した。最終容器に入れると、第2の遠心分離ステップを実施して、4.7〜20mlの間の最終容積に濃縮し、6ml±1.3mlであるが、最終適用に応じて最大20mlの注射剤等級の溶液中、3千5百万〜3億個細胞の範囲の細胞の用量を作製する。濃縮培養物にとって好ましい容積は、6ml±1.3mlである。TRCを貯蔵庫から取り出す場合には、培養物を37℃の循環水浴中で解凍した。
【0159】
細胞、生存率およびCD90+%
細胞生存率およびCD90+細胞%を、フローサイトメトリーによって測定した。細胞を洗浄し、1%ウシ血清アルブミンを含有する1×ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(PBS;Gibco)に再懸濁した。0.5ml中、106個の細胞を含有する試験管を、氷上で、蛍光がコンジュゲートしているモノクローナル抗体の種々の組み合わせを用いて染色した。生存率を7−アミノ−アクチノマイシンD(7AAD)(Beckman Coulter)によって測定した。7AADは、膜が損なわれた細胞にのみ入り、DNAと結合する。細胞は、PC5がコンジュゲートしている抗CD90(Thy1)抗体およびFITCがコンジュゲートしている抗CD14(Beckman Coulter)を用いて染色した。15分後、細胞を洗浄し、Epics XL−MCL(Beckman Coulter)フローサイトメーターでの分析のために0.5mlのPBS/BSAに再懸濁した。
【0160】
フローサイトメトリーによる細胞内サイトカイン分析
洗浄回収法を用いて製造されたTRCによるサイトカイン発現を、2色細胞内フローサイトメトリー分析によって定量的に調べた。手短には、TRCを、ブレフェルジンAの存在下で、細菌リポ多糖(LPS)とともに、または伴わずに一晩インキュベートして、サイトカイン分泌を妨げながら、ゴルジ体における細胞内サイトカイン蓄積を増強した。TRCを、FITCまたはCy5PEがコンジュゲートしているモノクローナル抗体(mAbs)(抗CD14、CD66b、CD90または対照mAb)とともにインキュベートすることによって細胞表面マーカーについて染色した。リンパ球亜集団を、前方光散乱(FSC)に基づいた細胞の大きさおよび側方(90°)光散乱(SSC)に基づいた粒度でゲート開閉することによって規定した。実質的には、続いて、細胞をパラホルムアルデヒドを用いて固定し、サポニン中で透過処理し、その後、表4の左の列に示されるように、サイトカイン特異的PEがコンジュゲートしているモノクローナル抗体(IL−6、IL−10、IL−12または無関係な対照)を用いて染色した。2色分析のデータは、Becton Dickinson FC500フローサイトメーターで得た。
【0161】
CFU頻度分析
コロニー形成単位−線維芽細胞(CFU−F)アッセイのために、1mlのLTBMC中の細胞を、35mm組織培養処理ディッシュにプレーティングした。TRCについては、ディッシュあたり500個および1,000個の細胞をプレーティングした。培養物を、大気中5%CO2の十分に加湿した雰囲気中、37℃で8日間維持した。次いで、CFU−Fコロニーを、Wright−Giemsaを用いて染色し、20個を超える細胞を含むコロニーをCFU−Fとして数えた。
【0162】
コロニー形成単位−顆粒球/マクロファージ(CFU−GM)アッセイのために、細胞を、0.9%メチルセルロース(Sigma)、30% FBS、1% BSA、100μMの2−メルカプトエタノール(Sigma)、2mM L−グルタミン(Gibco)、5ng/mlのPIXY321、5ng/mlのG−CSF(Amgen)および10U/mlのEpoを含有するコロニーアッセイ培地に播種した。TRCを、1,500個細胞および3,000個細胞/mlでプレーティングした。培養物は14日間維持し、50個を越える細胞のコロニーを、CFU−GMとして数えた。
【0163】
ニードルを通して細胞送達
TRC細胞数、および生存率に対するニードル送達の効果を試験するために、サンプルをWashHarvest製品のうち5つおよびCYTOMATE(登録商標)洗浄製品から3つ実施した。これらの送達実験は、保存された細胞の、25ゲージニードルを通した後に生存率または濃度を喪失することなく患者に送達される能力を試験した。
【0164】
4℃で24時間保存した後、TRCを含有するcryocyteバッグを冷蔵庫から取り出し、サンプリングのためにマッサージして再懸濁し、TRCを均質化した。2つの0.5mLのサンプルを、3mLのシリンジによって収集し、「TRC」と表示した試験管に入れた。その後、2つのさらなる3mLシリンジを、三方活栓バルブ上に置き、さらなるシリンジあたり0.5mlを採取した。次いで、25ゲージニードル(1 1/2インチ、BD)をこれらのさらなる2つのシリンジ(3mL)にねじ込み、「TRC、25ゲージ、1 1/2インチニードル」と指定した。その後、残りのTRCサンプルを測定し、容積を記録した。これらの3mLシリンジ上に、25ゲージニードル(1 1/2インチ)を、2つのシリンジに加え、25ゲージニードル(3インチ、脊髄ニードル)をその他の2つのシリンジに加えた。ニードルを伴う3mLシリンジ内の全0.5mlニードルサンプルを、シリンジポンプ(Harvard Apparatus、Holliston MA)を、2.5mL/分すなわち12秒で0.5mLの速度で用いて、ポリスチレン丸底試験管中に分配した。ニードルを通した細胞送達後、すべてのサンプルを、ヌクレオカウンターを用いて細胞数について評価した。
【0165】
IDO発現のウエスタン分析
TRCは、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)と表される誘導性免疫調節性酵素を発現し、これは、炎症反応のダウンレギュレーションと関連している。組織修復細胞(TRC)は、本発明に記載される新規洗浄−回収法を用いて導いた。回収後、TRCを培地単独または1000ユニット/mlの組換えヒトインターフェロン−γ(EFN−γ)を含有する培地で24時間インキュベートした。全細胞溶解物から得たタンパク質抽出物を、10%SDSポリアクリルアミドゲルで分離し、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)メンブランにトランスファーし、マウス抗ヒトIDO特異的モノクローナル抗体を用いて探索した。その後の化学発光による可視化のために、ヤギ抗マウスホースラディッシュペルオキシダーゼがコンジュゲートしている第2段階抗体を用いた。この実験によって、IFN−γでの誘導後のTRCによるIDOタンパク質の発現に特異的に対応する特徴的な44キロダルトン(kd)のバンドが実証される。
【0166】
結果
総生存細胞数
図11は、洗浄回収が、29mLの製造サンプルを差し引いた後に、CYTOMATE(登録商標)洗浄が用いられた場合よりも多数の洗浄後総生存細胞を繰り返し産生したことを示す。図11に要約されたデータは、同一ドナーに由来する、CYTOMATE(登録商標)洗浄をハイブリダイゼーション洗浄と比較した9回の製造に由来するものであった。これらの製造のうち9種すべてにおいて、Aastrom回収試薬(ブタトリプシン)を用いた。CYTOMATE(登録商標)洗浄の平均洗浄後総生存細胞収率は、66.5×106±36.8×106個生存細胞であるのに対し、ハイブリダイゼーション洗浄の平均洗浄後総生存細胞収率は、144×106±50.9×106個生存細胞であった。総収率における変動は、ドナー依存性であると思われる。
【0167】
生存率
図11はまた、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄が用いられる場合よりも高い洗浄後細胞生存率を繰り返しもたらしたことを示す。生存率パーセントは、上記の同一の9種のドナーから単離された細胞で実施された。洗浄−回収産物は、より一貫した生存率を示し、標準偏差は、10%のCYTOMATE(登録商標)洗浄生存率標準偏差と比較して、2%であった。
【0168】
24時間保存後の数および生存率
図11はまた、洗浄回収は、4℃で24時間保存した後であっても、CYTOMATE(登録商標)洗浄が用いられる場合よりも高い細胞生存率を繰り返しもたらしたことを示す。4℃で24時間保存した後の生存率パーセントは、5人のドナーから得た細胞から測定した。
【0169】
洗浄後BSA濃度
図11はまた、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄が用いられる場合よりも低い、TRCの培養から使い残された残存BSAの濃度をもたらしたことを示す。低いBSAレベルは、ヒトに投与するのに適切な医薬品を作製するのに必要である。
【0170】
フローによる細胞、生存率およびCD90+%
図11は、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄が非濃縮細胞において用いられる場合よりも高い、CD90+TRCのパーセンテージをもたらしたこと示す。CD90+細胞は、幹細胞/前駆細胞特性を有し、種々の組織種を修復するのに有用である骨髄間質細胞を表す。
【0171】
図12は、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄が用いられる場合よりも高い、生存CD90+TRCの総数を繰り返しもたらしたこと示す。洗浄−回収最終製品における平均総生存CD90+細胞は、42.4×106±16.5×106個であった。CYTOMATE(登録商標)洗浄最終製品における平均総生存CD90+細胞は、19.1×106±10.8×106個であった。
【0172】
CD14+Auto+%
図12および13は、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄が用いられる場合よりも高い、CD14+Auto+TRCのパーセンテージおよび総数を繰り返しもたらしたことを示す。これらの6人のドナーにわたる新規洗浄濃縮産物における平均総生存CD14+Auto+細胞は、34.8×106±9.08×106個である。これらの6人のドナーにわたるCYTOMATE(登録商標)洗浄濃縮産物における平均総生存CD14+Auto+細胞は、16.5×106±5.37×106個であった。
【0173】
VEGFR1+%
図12および13は、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄が濃縮細胞において用いられる場合よりも高い、VEGFRl+TRCの総数およびパーセンテージを繰り返しもたらしたことを示し、これは、より多くの内皮細胞が最終混合物中にあることを実証する。これが測定された5回の実験の各々において、CYTOMATE(登録商標)対照と比較して、洗浄回収産物において、より多数の生存VEGF−R1+細胞が見られた。これらの5人のドナーにわたる、CYTOMATE(登録商標)洗浄濃縮産物における平均総生存VEGF R1+細胞は、16.5×106±5.37×106個であった。
【0174】
CFU−F頻度
図12および14は、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄と比較して、匹敵するCFU−F頻度をもたらしたことを示す。CFU−F頻度比の平均は、1.03であった。
図13および15は、洗浄回収は、用量あたり、CYTOMATE(登録商標)洗浄よりも多数のCFU−Fをもたらしたことを示す。用量あたりの総CFU−Fは、細胞あたりのCFU−Fに、洗浄後総生存細胞数を乗じることによって算出した。これらの8実験にわたる新規洗浄法の用量あたりの平均CFU−Fは、7.26×106±5.22×106個である。これらの8実験にわたるCYTOMATE(登録商標)洗浄法の用量あたりの平均CFU−Fは、3.01×106±1.37×106個である。
【0175】
CFU−GM頻度
図12および16は、ほとんどどの場合においても、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄と同等または高い、用量あたりのCFU−GMの頻度をもたらしたことを示す。CFU−GM頻度比の平均は、1.37である。
【0176】
図13および17は、ほとんどどの場合においても、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄よりも多いCFU−GMの総数をもたらしたことを示す。用量あたりの総CFU−GMは、細胞あたりのCFU−GMの頻度に、洗浄後総生存細胞数を乗じることによって算出した。これらの6実験にわたる新規洗浄法の用量あたりの平均CFU−GMは、0.42×106±0.19×106個であった。これらの6実験にわたるCYTOMATE(登録商標)洗浄法の用量あたりの平均CFU−GMは、0.17×106±0.11×106個であった。
【0177】
ニードル送達
図17は、洗浄回収産物の細胞生存率が、25および30ゲージニードルを通した送達後に実質的な変化を示さないことを示す。図18は、CYTOMATE(登録商標)洗浄された産物から得た同様のデータを示す。
【0178】
CFU−Fは、実験QTRC107000021から得たニードル送達後細胞で試験した。図19は、3種の条件の、100個の細胞あたりのCFU−Fを示す。洗浄回収から得たTRCは、CYTOMATE(登録商標)洗浄から得たTRCよりもわずかに高い生存率を有していた。
【0179】
このデータは、方法間の、処理の最後に、実質的な細胞生存率を失うことなく、小ゲージニードルによる移行後に細胞を送達する能力に関する比較可能性を実証する。
【0180】
サイトカイン分泌
CYTOMATE(登録商標)洗浄から得たTRCによるサイトカイン分泌プロフィールは、洗浄−回収について評価されたほとんどすべてのサイトカインに関して細胞ベースで匹敵する。しかし、単位用量ベース(すべての細胞が方法からきている)では、用量あたりの総サイトカイン分泌は、概して、洗浄−回収由来で高く(図20)、したがって、濃縮された組成物であるほど、細胞集団は、先の集団よりもかなり機能的である。
【0181】
表9.TRCおよびTRC亜集団の、細胞内サイトカイン発現についてのフローサイトメトリー分析
【0182】
【表9】
IL−6、IL−10およびIL−12を産生する細胞の頻度を評価するための細胞内フローサイトメトリー分析を、洗浄−回収を用いて産生されたTRCで実施した。N=2実験の、サイトカイン陽性細胞の平均パーセンテージが、表9に示されている。これらの観察結果は、有意な頻度のTRCが、IL−6またはIL−10のいずれかを産生することを実証する。対照的に、TRCまたはTRC亜集団による細胞内IL−12産生は、無関係な対照抗体について観察された染色のバックグラウンドレベルを上回って検出され得なかった。IL−12は、細菌リポ多糖(LPS)などの炎症性メディエーターを用いた刺激に関わらず、バックグラウンドレベルを上回って検出され得なかった。全体的に、これらのデータは、TRC上清のLuminexおよびELISA分析によって規定されるサイトカイン分泌プロフィールと高度に一致し(図20)、これは、検出可能なIL−12、中心的な炎症促進性メディエーターの完全な不在下での複数の血管新生性および免疫調節性サイトカインの高分泌を実証する。
【0183】
IDO発現
インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼすなわちIDOは、免疫調節性酵素である。TRCは、IFNγに対する曝露に応じて高レベルのIDO mRNAを産生する(図24)。TRCはまた、IFNγに対する曝露に応じて多量のIDOタンパク質を産生する(図25)。
【0184】
PDL1発現
TRCは、炎症誘導に応じて高レベルのPD−L1を発現する(図31)。TRCを、1000単位/mlのインターフェロン−γを伴わず(非誘導)またはインターフェロン−γとともに(誘導)24時間インキュベートし、その後、フローサイトメトリー分析のために、蛍光色素がコンジュゲートしているアイソタイプ対照、または抗PD−L1モノクローナル抗体を用いて染色した。これらの観察結果は、TRCがPD−L1(>75%発現)、免疫および炎症反応のダウンレギュレーションに関わる重要な阻害性受容体をアップレギュレートすることを実証する。
【0185】
概要
洗浄回収は、各段階(洗浄後、濃縮後および24時間保存後)で、CYTOMATE(登録商標)洗浄と比較した場合に、より健全な(p<0.05)、ならびに残存血清タンパク質がより少ない(p<0.05)細胞産物を作製する(図11)。CD90+、CD14+auto+、またはVegfRl+細胞のパーセンテージには、またはFもしくはGMコロニー形成能には統計的な差異はない。したがって、細胞産物は、プロフィールにおいては匹敵するが、かなりより健全であり純粋である。
【0186】
【表10−1】
【表10−2】
最終製品(方法から出た最終用量)において総細胞を調べると、統計的に多い数の総生存細胞、総生存CD90+およびCD14+auto+(免疫調節性サイトカインを分泌する2種の細胞)がある。
【0187】
【表11】
洗浄回収は、細胞培養物から高い生存率および低い残存レベルを有するTRCを製造した。これによって、各培養物から多数のTRCが回収されることが可能となる。
【0188】
さらに、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄を用いて単離したTRCと比較した場合に、CD90+、CD14+Auto+およびVEGFRl+細胞のパーセンテージが増大したTRCを製造した。また、洗浄回収は、細胞用量あたり、より多くの抗炎症性サイトカイン、例えば、IL−1ra、IL−10およびIL−6ならびにIDOおよびPDL1のような抗炎症性効果を有するタンパク質を分泌するTRCを製造した。さらに、TRCは、IL−12のような極めて重要な炎症促進性サイトカインを発現しない。このことは、洗浄回収法によって単離されたTRCは、より大きなパーセンテージの骨髄間質細胞、内皮細胞および単球/マクロファージ細胞のためにより大きな組織修復の可能性および抗炎症の可能性を有することを示す。
【0189】
また、洗浄回収技術は、CYTOMATE(登録商標)洗浄技術よりも高いCFUを一貫してもたらした。このことは、洗浄回収技術によって製造されたTRCは、CYTOMATE(登録商標)洗浄技術によって製造されたTRCよりも多い数の前駆細胞および幹細胞を有することを示す。
【0190】
さらに、洗浄回収は、治療的投与にとって必要であり得る、25または30ゲージニードルを通るときに、実質的な生存率を低下させないTRCを製造する。洗浄回収TRCは、CYTOMATE(登録商標)洗浄を用いて製造されたTRCとほぼ同程度か、そうでなければ、わずかに良好に機能した。
【0191】
実施例3 CD90+細胞数の増大に基づく、洗浄−回収から得たTRCの骨修復の可能性の増強
増殖していない骨髄単核細胞(BM MNC)およびTRCの骨形成能(bone−forming potential)または骨形成能(osteogenic potential)を、in vitro骨分化アッセイを用いて評価した。手短には、洗浄−回収法を用いて単離したTRCを、対照(OS−)培地(10%FBSを含むDMEM)または骨形成性(OS+)培地(10%FBS、100nMデキサメタゾン、10mM β−グリセロリン酸および0.05mM L−アスコルビン酸−2−リン酸を含有するDMEM)のいずれかを含有する35mmディッシュ中で、10,000〜20,000細胞/cm2の濃度で最大3週間培養した。骨形成性分化は、細胞形態、アルカリホスファターゼ(AP)の発現およびカルシウム沈着による石灰化マトリックスの形成によって評価した。分化した培養物中に存在するAP活性を、AttoPhosキット(Promega)、AttoPhos基質のリン酸型のBBTへの酵素によって触媒される変換および435nmおよび555nmでの吸光度の測定を用いて定量した。酵素活性は、AP活性のユニットとして表される。カルシウムは、カルシウム定量キット(Pointe Scientific Inc.、Canton、MI)に提供される手順に従って定量した。手短には、骨形成性培養物を0.5N HClを用いて溶解し、溶解物を微小遠心管中に集めた。渦攪拌処理した後、各サンプルを、500rpm、4℃で4時間振盪した。微量遠心機で1,000×gで遠心分離した後、上清を集め、570nmでの吸光度を測定することによってカルシウムの存在についてアッセイした。
別の実験では、Epics Altra(Beckman Coulter)を用いてCD90+細胞をTRC産物から選別し、上記の骨形成能のためにプレーティングした。各細胞集団の3実験から得られた平均カルシウム沈着±SEMが示されている。
【0192】
CD90細胞、CD15細胞の頻度およびin vitro骨形成能を、CYTOMATE(登録商標)、本発明の洗浄−回収手順から得られたTRCについて、および同一骨髄ドナーから得られた間葉系幹細胞(MSC)について測定した。MSCは、10% FBSを含むDMEM培地で培養した。重要なことに、MSC培養は、培養の開始近くの、非接着性補助細胞の除去およびその後の培養およびプラスチック接着性集団の継代を含む。次いで、MSCおよびTRCを、骨形成性誘導培地で最大3週間(各実験内で常に同じ日数)培養する。カルシウム沈着およびアルカリホスファターゼ活性を定量した。この研究では、本発明者らは、TRCと比較した初代および第1継代MSCの骨形成能を評価した。
【0193】
CYTOMATE(登録商標)TRCを用いたこれまでの研究は、1)TRCの骨形成能はBM MNCよりもかなり高い、2)TRCの骨形成能は、細胞のCD90+画分に存在するということを示した(表12)。
【0194】
表12.増殖していないおよび増殖した骨髄における骨形成能
【0195】
【表12】
次いで、CYTOMATEおよび本発明の洗浄回収技術から得たTRCを、骨形成能について直接比較した。カルシウム沈着を測定することによって、結果は、平均して、骨形成能が、洗浄−回収TRC用量由来が2倍高かったことを示す(表13、図21)。
【0196】
表13.単位用量あたりの骨形成能は、新規洗浄−回収由来が高い。
【0197】
【表13】
TRCの骨形成能を、文献において骨形成能を有するとわかっている別の細胞種、MSCの能力と比較した。MSCを、補助細胞の不在下で培養し、かなりより精製された細胞種とする。これまでに、TRCは、CD90細胞ベースでMSCよりも高い骨形成能を有するということがわかった。その後の実験を実施して、新規洗浄−回収TRCが、同じ傾向を示すことを確認した。本明細書に示される1つの代表的な実験では、TRC中のCD90+細胞の全体的な頻度(16%)は、MSC(99%)と比較してかなり低かった。しかし、CD15+CD90+二重陽性細胞の頻度(表9)および骨形成能(表9、図22)は、TRCにおいてかなり高い。骨形成能は、カルシウム(Ca)沈着(図22A)およびアルカリホスファターゼ(AP)活性(図22B)によって測定し、CD90細胞ベースで、初代MSC(PO)と比較してTRCにおいてほぼ2倍高かった。MSCのさらなる継代が、さらに低い活性をもたらした。これらの結果は、過去の実験と一致する。
【0198】
このデータは、洗浄−回収を用いて製造されたTRC組成物、詳しくは、CD90+細胞は、骨形成能についてMSCよりも強力であることを実証する。TRC CD90+細胞はまた、CD15マーカーを、MSC CD90+細胞より高い程度に発現する。
【0199】
表14.TRCおよびMSCの比較:表現型および機能
【0200】
【表14】
n.d.=測定せず。
CYTOMATE(登録商標)洗浄TRCに対立するものとして洗浄−回収TRCの直接比較データは、洗浄−回収TRC産物は、より大きな骨形成能を有することを示した。CD90+細胞上のCD15の存在は、TRCをその他の精製細胞産物(例えば、MSC)と区別し、CD90の増強された骨形成能と相関する。
【0201】
実施例4 臨床試験:CYTOMATE(登録商標)洗浄を用いて単離されたTRCでの、炎症を伴わない骨治癒。長骨骨折−スペイン
2つの長骨骨折研究を、倫理委員会の承認の下、スペインのセンターで実施した。Hospital General de l’Hospitalet、Centro Medico TeknonおよびHospital de Barcelona−SCIASで実施された第I相臨床試験は5人の患者を登録し、その長骨骨癒着不能骨折を治療した。5人の患者全員が合計6箇所の治療された骨折を有し、第三者の独立批評者によってX線画像(図35)を用いて、または臨床的観察によって治癒したと報告された。
【0202】
図35は、足場から落ち、両脛骨を骨折した患者の臨床結果を示す。最初の手術後、いずれの骨においても治癒は起きなかった。TRCおよびセラミックマトリックス担体を利用して第2の手術を実施した。6ヵ月後、骨折線および一部のマトリックスがX線下で見える。12ヵ月後、骨折線は消失し、患者は、一部の残存マトリックス材料が依然として観察され得るものの治癒した。18ヶ月後、(示されていない)マトリックスは十分に再吸収され、患者は採石場での重労働に戻った。
【0203】
TRCが関連する有害事象は観察されなかった。この初期の研究では、TRC製品が使用された。患者は、TRC細胞と混合され、ハンドリング特性を増強するために自己血漿と結合しているCALCIBON(登録商標)(リン酸カルシウム顆粒)マトリックス材料が埋め込まれた。これは、ハンドリングを増強するためにマトリックス粒子を結合するために血漿が使用された最初の研究であった。
【0204】
第I相後、治験薬概要書(Investigational Medicinal Product Dossier)(IMPD)−臨床試験のために欧州連合(EU)において必要な出願−を出願し、スペイン医薬品局(Spanish Drug Agency)(AEMPS)から、スペインにおいて第II相癒着不能骨折試験を開始する許可を得た。この研究は10人の患者全員のTRC治療を完了した。
【0205】
この研究には本発明のTRCが使用された。患者は、TRCと混合され、ハンドリングを容易にするために血漿と結合しているVITOSS(登録商標)(β−TCP)マトリックス粒子を埋め込まれた。
【0206】
全体で、34人の患者が、6ヶ月の治療後フォローアップを完了し、33人が12ヶ月のフォローアップを完了した。12ヶ月間フォローされた33人の患者は、91%の全治癒率を示したことが、放射線画像またはコンピュータ断層撮影を用いて観察された骨架橋によって決定される。最終結果は、91%(23のうち21)の脛骨骨折、100%(3のうち3)の上腕骨骨折および86%(7のうち6)の大腿骨骨折において治癒成功を示した。12ヶ月後に観察された91%の治癒率に加え、6ヶ月での結果は、85%(34のうち29)の患者において骨架橋が上手く生じたことおよび97%(34のうち33)の患者において初期治癒の徴候(仮骨形成)が存在したことを示した。3人の患者は、必要なフォローアップ来診を完了できなかった。これら3人の患者からは最終データは集められなかったが、2人は18週までに治癒を示した。細胞が関連する有害事象は報告されなかった。結果は、TRCは、困難な長骨癒着不能骨折の治療にとって有効であり、骨再生のための強力な新規ツールになる、および重症骨折の管理を改善する可能性を有することを示唆する。
【0207】
顎顔面再構築:
デンタルインプラントが入れられるようにサイナスリフト手順を必要とする重篤な骨量減少を患う全歯欠損患者に対して、スペイン、バルセロナにおいて顎骨(上顎骨)再生臨床可能性対照試験を完了した。この可能性試験は、標準骨移植手順と比較したTRCに起因する骨再生の評価のために、標的とされる5人の患者を登録した。患者は、TRCと混合され、自己血漿と結合しているBIOOSS(登録商標)(bovine bone)マトリックス粒子を埋め込まれた。細胞治療の4ヶ月後、TRCを含めた治療は膨潤を低減し、移植領域において骨の相当な高さの増加がX線画像で調べられた。移植された領域に隣接する組織切片で行われた組織学的観察によって、骨ターンオーバーの刺激と、新規結合組織の誘導と一致する変化が示された。
【0208】
TRC処理した患者における炎症の減少
癒着不能長骨骨折および顎骨再構築の治癒についてTRCを評価するための初期第I/II相臨床試験は、術後24時間以内の術後膨潤、疼痛、発赤および炎症の減少を伴う有意な骨修復を実証した。これは、試験の範囲外の予期しない観察結果であり、TRC治療を受けている患者においてバルセロナおよび複数の米国部位で記録された。
【0209】
この観察結果は、TRC混合物の免疫調節性または抗炎症性機能の特性決定に焦点を当てるさらなる前臨床研究につながった。これらの研究の結果は、TRCは、最適組織再生のために免疫調節性プロフィールを発現し、最小の炎症しか伴わずに修復することを示す。より具体的には、TRCは、組織再生および免疫調節性活性を発現する細胞種、例えば、選択的に活性化されたマクロファージ(CD45+CD14+IL−10+)、間葉系幹細胞(CD45−CD90+CD105+)、調節性T細胞(CD45+CD4+CD25+)およびその他のリンパ球の混合物を含む。特に、CD3+リンパ球は、T細胞受容体−CD3複合体を介した誘導後に、高レベルのIL−10、免疫調節性サイトカインを産生する(図23−C)。TRCはまた、数種の強力な免疫調節性サイトカイン、例えば、HGF、IL−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)、IL−6、IL−10、TGF−βおよびMCP−1を、遺伝子およびタンパク質の両レベルで発現する。TRCは、極めて重要な炎症促進性メディエーター、例えば、IL−1、IFNγ、TNFαおよび最も顕著には、IL−12を、遺伝子およびタンパク質の両レベルで発現しない、または極めて低レベルで発現する。TRCは、インドールアミン−2,−3ジオキシゲナーゼ(IDO)と表される重要な免疫調節性酵素の発現について誘導可能である。IDOは、発生期の、および進行中の炎症反応のダウンレギュレーションにおいて機構的に関与してきた。また、TRCは、同種混合リンパ球反応(MLR)における刺激活性の、専門抗原提示細胞と比較した10〜50倍の低下を実証し、適応応答またはT細胞媒介性炎症反応の活性化の可能性を評価した。
【0210】
まとめて、これらの観察結果は、TRCは、宿主反応を、組織破壊的炎症から離れ、傷害組織のより迅速な治癒による創傷修復に向けて強力に偏向する、または偏らせるという仮説と一致する。
骨治癒の間の、初期骨誘導および血管新生の増強の証拠
米国試験では1人の癒着不能骨折患者は、不適合であり、3ヶ月で、喫煙および治癒足への時期尚早の体重負荷が、内固定および新規仮骨の破壊をもたらした。プレートが取り換えられるときに、中央の仮骨から生検をとり、固定し、メチルメタクリル酸包埋のために処理し、切片を石灰化し染色した。定性的組織学的検査によって、仮骨外側に線維性骨が示される。内部では、同種移植片マトリックス粒子の表面上に層板骨が見られた、または同種移植片を置換している(図32)。骨髄は、線維性であり、成熟動脈および細静脈類洞様血管を含み極めて十分に血管新生化されている。一部の小血管が、同種移植片粒子を通過すると思われた。骨リモデリングを示す破骨細胞が、このような領域ではまれに、骨表面上に見られた。ほとんどの表面は、骨芽細胞および類骨のシートで覆われていた。偏光顕微鏡によって、残留同種移植片のコアが示されたが、驚くべき量の移植片が、層板骨によって置換されている。これらの結果は、骨誘導、骨伝導および骨の組み込みの証拠を提供するが、仮骨中の新規骨はまだ成熟しておらず、十分に石灰化されていない。この場合は、極めて初期の骨誘導および治癒を示したが、仮骨は、生体力学的強度を取り戻すための石灰化する時間を依然として必要としている。
【0211】
図32は、治癒仮骨の組織学的検査を示す。図32Aは、骨芽細胞および類骨のような新規骨がほとんどの骨および同種移植片表面を覆っていることを示す。血管および線維性骨髄を注記する。同一切片の明視野(図32B)および偏光(図32C)顕微鏡写真は、同種移植片DBM(平行層板)中に貫通する血管ならびに表面上の、および内部からの同種移植片を置換する新規線維性骨を示す。十分に血管新生化された線維性間質および多量の骨芽細胞を注記する。
【0212】
臨床血管再生
TRCは、小さい血管を形成する能力を有するというAastromの観察結果に基づいて、末梢血管疾患のための骨髄細胞の使用に関わる第3者試験、解放創および重篤な肢虚血を有する糖尿病患者の治療におけるTRCの安全性および有効性を評価するための試験を開始した。Aastromは、Bad Oeynhausen、ドイツに位置するHeart & Diabetes Centerと臨床試験協定を結び、解放創および重篤な肢虚血を有する糖尿病患者において末梢循環を改善するためのTRCの安全性および有効性の可能性を評価するためのパイロット試験を実施した。患者は、治癒していない、登録前の少なくとも6週間、治癒する傾向を示さない解放創を有する場合に登録された。最大30人までの患者登録は、進行中である。研究者は、TRCで治療された患者は、その治癒していない解放創が、それぞれ48および44週において治癒したということを報告し(図32)、側枝血管形成における改善を示した(図33)。この試験の現在の標準治療アームは、解放創の治癒を示さなかった。
【0213】
処理の12ヶ月後、中間分析において、TRCを用いて処理されたすべての患者が、大切断術がないこと、細胞に関連する有害事象がないこと、すべての解放創の治癒を報告した。創部のケア(細胞なし)のみを受けた2人の標準治療患者については、1人の患者は大切断術を受け、1人の患者は12ヶ月後に創部治癒における改善を経験しなかった。
骨修復
骨壊死の治療におけるTRCの安全性および有効性を評価するための試験を開始した。Aastromは、Bad Oeynhausen、ドイツに位置する、整形外科協会、ドイツ、Wurburg大学のKonig−Ludwig−Hausと臨床試験協定を結び、大腿骨頭の骨壊死を有する患者において骨を修復するためのTRCの安全性および有効性の可能性を評価するためのパイロット試験を実施した。大腿骨頭内の骨壊死は、大腿骨頭内の骨および髄中の細胞の死を巻き込み、多数の場合には、総人工股関節置換術につながる。最初の研究では4人の患者をTRCで治療した。すべての患者が、手順に十分に耐用性を示し、MRIおよびX線によって調べられるように、疾患進行の徴候のない股関節痛の減少が報告されており、治療後6ヶ月内に仕事を再開した。さらに、細胞と関連する有害事象は観察されず、これらの患者のうち人工股関節置換術を要求した患者は1人もいなかった。
臨床において、TRCおよび脱石灰化骨マトリックス(DBM)を混合する
外科医は、TRC細胞懸濁液のバッグを受け取り、供給混合ディッシュ中の予め測定した量のDBMにこの溶液を加える。次いで、TRC/DBMミックスを、患者の血漿と結合させて、ハンドリング特性の増強された固体インプラント(図33A)を作製する。Aastromは、この手順を適格とするために、広範な製剤およびプロセス開発を行い、この混合プロセスの間、細胞は生存しており、機能性であるままであることを確信している(以下の図33Bおよび34B)。
【0214】
図33Aは、自己血漿と結合している埋め込み型TRC/DBM混合物を示す。TRCは、混合物内で生存したままであると、24時間生存/死滅染色4×顕微鏡写真において見ることができる(図33B)。
【0215】
図34AおよびBは、同種移植片/血漿混合物内のTRCは、2週間に及ぶ代謝産物の増大によってわかるように、混合後生存しており、広範な増殖が可能であることを示す。1日目(図29B)〜14日目(図34B)(両方とも×4)から得た顕微鏡写真での細胞密度の莫大な増大を注記する。
【0216】
図35は、2週間の培養期間にわたって、TRCがDBM/血漿構築物内で機能性のままであり、重要なサイトカイン分泌を維持することを示す。
【0217】
一緒に考えると、Cytomate(登録商標)洗浄したTRCを用いた臨床データのセットは、TRCの混合細胞製品の骨形成性/血管新生および抗炎症/免疫調節性態様を実証する。統計上高い生存率および数の細胞を提供する物質の新規組成物、特に、幹/前駆細胞/内皮系統のものが、より機能的な臨床製品をもたらす。新規洗浄回収TRCは、製造可能性および機能について最適化されており、これまでに用いられた臨床細胞製品に優る組織修復特性を有する。
【0218】
実施例5 洗浄−回収法を用いて単離されたTRCは、抗炎症性サイトカインIL−10を分泌する調節性T細胞を含む。
【0219】
洗浄−回収法を用いて製造された組織修復細胞を、フローサイトメトリーによって評価した。回収された細胞を、無関係のアイソタイプに対応させた対照mAb(IgG1、IgG2a)(図23A)または特異的蛍光色素がコンジュゲートしている抗CD25および抗CD4mAb(図23B)を用いる2色の分析のために染色した。図23B(象限B2)に示されるように、リンパ球の別個の集団(2%)が、CD4+およびCD25+マーカー、調節性T細胞と関連している表面表現型を同時発現する。
【0220】
TRC混合物内のT細胞によるサイトカイン産生を評価するための同様の実験が図23Cに示されている。TRCを単独で、またはT細胞活性化のためのポリクローナル刺激物質としての、プラスチックが固定された抗CD3mAbの存在下でインキュベートした。48時間上清液中のサイトカイン濃度を、Luminexマルチプレックス分析によって調べた。興味深いことに、これらの結果は、IL−10が、抗CD3モノクローナル抗体による活性化後にTRC混合物内のT細胞によって産生される主サイトカイン(>14,669pg/ml)であることを実証した。IL−10は、調節性T細胞および免疫調節性マクロファージによって特徴的に産生される免疫調節性サイトカインである。
【0221】
実施例6 TRCはHGF、免疫調節性および血管新生サイトカインを放出する
肝細胞増殖因子(HGF)は、血管形成、エンドセリアリゼーション(endothelialization)および血管成熟、例えば、血管周囲細胞、例えば、平滑筋細胞およびペリサイトの遊走および補充を媒介する、極めて重要な間葉由来免疫調節性および血管新生サイトカインである。HGFは、組織傷害後の線維症を抑制する。このサイトカインは、単球の分化を免疫調節性および免疫寛容誘発性補助細胞機能に向けて駆動する。HGFはまた、急性および慢性同種移植片拒絶を低減するとわかり、このことは、強力な抗炎症機構を示唆する。
【0222】
TRCによるHGF製造を、12日目の培養で、細胞製造システム(図1〜10参照のこと)の廃棄ポートから培養上清を獲得することによって評価した。これらの培養物は、中程度の灌流条件下で、または静止培養として臨床規模で培地交換せずに維持した。同一骨髄ドナーから得た間葉系幹細胞(MSC)を、HGF分泌を制御する陽性対照としての比較のために、組織培養フラスコ(T型フラスコ)中で、反復継代することによって並行して導いた。TRCおよびMSCのこれらの培養物から得た培養上清液を、ELISAによってHGFについて評価した。n=6実験の平均値(pg/ml)が図26に示されている。これらのデータは、TRCは、従来的に導かれたMSCと比較した場合に、培地灌流の速度に関わらず、高レベルのHGF、強力な血管形成および免疫調節性メディエーターを一貫して分泌することを実証する。
【0223】
TRCを、適応応答およびまたはT細胞媒介性炎症性応答の活性化の可能性を調べる手段として同種混合白血球反応(alloMLR)において評価した(図30)。炎症性メディエーター、例えば、インターフェロン−γ(IFN−γ)は、免疫調節性酵素、例えば、IDO(図24、25、27)およびその他の免疫阻害性リガンド、例えば、PD−L1(図28)のTRCによる高発現を誘導する。したがって、TRCは、1000ユニット/mlの組換えヒトインターフェロンとともに(誘導)または組換えヒトインターフェロンを伴わずに(非誘導)24時間インキュベートし、その後MLRを加えた。IFN−γに対して曝露した後、TRCを照射し(2000Rads)、MLR中で、2,000、10,000または50,000個TRCからなる広範な細胞用量にわたって、三連培養でマイクロウェルあたり固定用量の105個の応答同種T細胞と一緒にインキュベートした。T細胞増殖を、6日目の培養での分あたりのカウント(cpm)によって測定される3H−チミジン取り込みによって評価した。図30に示されるように、TRCは、炎症性メディエーター、例えば、IFN−γに対して短時間曝露した後、T細胞刺激活性のバックグラウンドレベルに対して著しい減少を実証した。これらのデータは、T細胞媒介性炎症反応に対するTRCによる活性の低下または潜在的に阻害性の活性を示す。
その他の実施形態
本発明は、その詳細な説明とともに説明したが、上記の説明は、例示するよう意図されるものであって、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。その他の態様、利点および改変は、特許請求の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2006年11月3日に出願された米国仮特許出願第60/856,504号および2007年6月1日に出願された米国仮特許出願第60/932,702号の利益を請求する。これらの内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、混合細胞集団の組成物、組織修復のためのそれらのin vivoでのその後の使用、混合細胞集団の調製のための方法、装置およびシステムに関する。本発明の方法はまた、含有する液体または溶液からの、任意の細胞の種類(接着、非接着またはそれらの混合物)または小粒子(例えば、細胞の大きさの)の分離で適用可能である。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
再生医療は、臨床上標的とされる方法で、再生存細胞、例えば、幹細胞および/または前駆細胞(すなわち、身体の特殊化していない万能細胞)の、自身を無制限に再生し、成熟した特殊化した細胞に発達する能力を利用している。幹細胞は、発達の初期段階の間、胚中に、胎児組織中に、いくつかの成体臓器および組織中に見られる。胚性幹細胞(本明細書において以下、「ESC」と呼ばれる)は、身体の、全部ではないが多数の細胞および組織種になることがわかっている。ESCは、個体のすべての遺伝情報を含むだけでなく、身体の200+の細胞および組織のいずれかになる発生期の能力も含む。したがって、これらの細胞は、再生医療にとって驚異的な可能性を有する。例えば、ESCは、心臓、肺または腎臓などの特定の組織になることができ、次いで、これらを用いて損傷を受けた、および病的な臓器を修復することができる。しかし、組織由来のESCは、臨床的な制限を有する。ESCは、必然的に別の個体、すなわち、胚に由来するので、レシピエントの免疫系が新規生体物質を拒絶するというリスクがある。このような拒絶を防ぐための免疫抑制薬が利用可能であるが、このような薬剤はまた、細菌感染およびウイルスに対するものなどの望ましい免疫応答を阻止することがわかっている。
【0004】
さらに、ESCの供給源、すなわち、胚についての倫理をめぐる議論は、十分に記録に留められており、さらなる、そして、おそらくは、当面の間は打ち勝ちがたい障害を示している。
【0005】
成体幹細胞(本明細書では以下、同義的に、「ASC」と呼ばれる)は、ESCの使用に代わるものに相当する。ASCは、多数の非胚性組織中に静かに存在しており、おそらくは、外傷またはその他の破壊的疾患過程に応答し、その結果、それらが損傷を受けた組織を治癒できるよう待機している。特に、新たな科学的証拠は、各個体は、全部ではないが多数の細胞および組織種になる能力をESCと共有し得るASCのプールを保持しているということを示す。したがって、ASCは、ESC同様、再生医療の臨床適用にとって驚異的な可能性を有する。
【0006】
ASC集団は、骨髄、皮膚、筋肉、肝臓および脳のうち1種以上の中に存在することがわかっている。しかし、これらの組織中のASCの頻度は低い。例えば、骨髄における間葉系幹細胞頻度は、100,000につき1〜1,000,000個の有核細胞につき1の間と推定されている。したがって、このような組織に由来するASCの任意の提案されている臨床適用は、細胞精製および細胞培養の方法によって、細胞数、純度および成熟度を高めることを必要とする。
【0007】
細胞培養ステップは、細胞数、純度および成熟度の増大を提供し得るが、そうするには代償が払われる。この代償は、以下の技術的問題点のうち1以上を含み得る:細胞老化による細胞機能の喪失、有用な細胞集団である可能性の喪失、患者への細胞の適用の可能性の遅れ、金銭上の費用の増大、培養の間の環境微生物での細胞の汚染のリスクの増大および回収された細胞とともに含まれる培養材料を枯渇させるためのさらなる培養後処理の必要。
【0008】
より具体的には、すべての最終細胞製品は、連邦医薬品局(Federal Drug Administration)(FDA)によって課せられた厳格な必要条件に適合しなくてはならない。FDAは、すべての最終細胞製品は、ヒト被験体においてアレルギー効果を生じ得る「外来性」タンパク質を最小にしなくてはならない、ならびに汚染リスクを最小にしなくてはならないということを要求している。さらに、FDAは、70%の最小細胞生存率また、いずれの過程もこの最小必要条件を一貫して超えなければならないと求めている。
【0009】
細胞を、不要な溶解した培養成分から分離するための既存の方法および器具があり、現在、種々の器具が臨床に用いられているが、このような方法および器具は、重大な問題を抱えている−例えば、細胞の生存率および生物学的機能の低下および遊離細胞DNAおよび壊死組織片の増加によって示される、分離過程の間にかけられる機械力によって引き起こされる細胞損傷。さらに、分離器具中にすべての細胞を移すことができないこと、ならびに器具からすべての細胞を取り出すことができないことの両方のために細胞の相当な喪失が起こり得る。さらに、混合細胞集団については、これらの方法および器具は、大きな、より壊れやすい亜集団の優先的な喪失のために細胞プロフィールの変化を起こし得る。
【0010】
したがって、組織修復、組織再生および組織工学などの細胞治療の分野には、実質的に高い生存率および機能性をともなって、また、細胞の培養および回収に必要とされた材料が実質的に枯渇している、直接患者に投与する準備ができている細胞組成物が必要である。さらに、これらの組成物の細胞治療製品としての臨床実施および大規模商業化に適しているこれらの組成物の製造を可能にする、信頼性のある方法および装置が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、組織修復のための組成物および方法を提供する。本組成物は、虚血状態(例えば、肢虚血、うっ血性心不全、心虚血、腎虚血およびESRD、卒中および眼の虚血)、臓器および組織再生を必要とする状態(例えば、肝臓、膵臓、肺、唾液腺、血管、骨、皮膚、軟骨、腱、靭帯、脳、毛、腎臓、筋肉、心筋、神経および肢の再生)、炎症性疾患(例えば、心疾患、糖尿病、脊髄損傷、関節リウマチ、変形性関節症、人工股関節置換術または修正による炎症、クローン病および移植片対宿主病)および自己免疫疾患(例えば、1型糖尿病、乾癬、全身性エリテマトーデスおよび多発性硬化症)などの種々の疾患および障害を治療するのに有用である。
【0012】
一態様では、本発明は、細胞の混合集団を含有する組織修復のための単離細胞組成物を提供する。細胞は、ヒト投与に適した製薬等級電解質溶液中にある。細胞は、単核細胞に由来する。例えば、細胞は、骨髄、末梢血、臍帯血または胎児肝臓に由来する。細胞は、造血、間葉および内皮系統のものである。細胞の生存率は、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い。組成物中の生存細胞の総数は、3千5百万〜3億であり、25ml、20ml、15ml、10ml、7.5ml、5ml未満またはそれより少ない容積である。組成物中の生存細胞の少なくとも5%は、CD90+である。例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%またはそれより多くがCD90+である。いくつかの態様では、CD90+の少なくとも5%、10%、15%、20%、50%またはそれより多くは、CD15を同時発現する。細胞は、約5〜75%が生存CD90+であり、組成物中の残りの細胞がCD45+であることが好ましい。CD45+細胞として、CD14+、CD34+またはVEGFRl+がある。
【0013】
細胞は、少なくとも1種、2種、3種、4種、5種またはそれより多くの抗炎症性サイトカインまたは血管新生因子を産生する。抗炎症性サイトカインとして、例えば、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト、インターロイキン−6、TGF−β、インターロイキン−8、インターロイキン10または単球走化性タンパク質−1が挙げられる。血管新生因子として、例えば、血管内皮増殖因子、アンギオポエチン(angiopoeitin)1、アンギオポエチン(angiopoeitin)2または肝細胞増殖因子が挙げられる。さらに、細胞は、105個細胞あたり24時間あたり50pg/mL、40pg/mL、30pg/mL、20pg/mL、10pg/mL、5pg/mL、2pg/mLまたは1pg/mL未満の、1種以上の炎症促進性サイトカイン、例えば、インターロイキン−1α、インターロイキン−1β、インターフェロンγまたはインターロイキン−12を産生する。細胞はまた、インドールアミン2,3,ジオキシゲナーゼ、PD−L1または両方を発現する。
【0014】
本組成物は、細胞組成物の製造の間に用いられる成分、例えば、ウシ血清アルブミン、ウマ血清、胎仔ウシ血清、酵素的に活性な回収試薬(例えば、トリプシン)などの細胞培養成分を実質的に含まず、また、マイコプラズマ、内毒素および微生物汚染を実質的に含まない。本組成物は、10、5、4、3、2、1、0.1、0.05μg/mlまたはそれより少ないウシ血清アルブミンおよび5、4、3、2、1、0.1、0.05μg/mlの酵素的に活性な回収試薬を含むことが好ましい。
【0015】
場合により、本組成物は、生体適合性マトリックス、例えば、脱石灰化骨粒子、石灰化骨粒子、リン酸カルシウムファミリーの合成セラミック(例えば、αトリリン酸カルシウム、βトリリン酸カルシウムおよびヒドロキシアパタイト)、コラーゲン、多糖ベースの材料(例えば、ヒアルロナンおよびアルギン酸)、合成生分解性ポリマー材料(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリフマル酸およびポリエチレングリコール)およびそれらの混合物、組み合わせまたはブレンドなどをさらに含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、培養混合細胞組成物を患者に投与し、ここで、培養細胞組成物が、少なくとも1種のサイトカイン、例えば、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−10、血管内皮増殖因子、単球走化性タンパク質−1アンギオポエチン(angiopoeitin)1、アンギオポエチン(angiopoeitin)2および肝細胞増殖因子を産生することによって、患者において免疫応答、炎症反応または血管新生を調節する方法を提供する。場合により、細胞組成物は、2種、3種、4種、5種またはそれより多くのサイトカインを産生する。本組成物は、10ng/mL未満のインターロイキン−1α、インターフェロンγまたはインターロイキン−12を産生することが好ましい。例えば、細胞組成物は、0.1%〜10%のCD4+CD24+T−細胞、1〜50%のCD45+CD14+単球:および5%〜75%のCD45−CD90+骨髄間質細胞を含む。細胞組成物は、上記の細胞組成物であることが好ましい。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、培養細胞を処理する方法を提供する。本方法は、細胞集団の5%より多くがCD90+である混合細胞集団を製造する。本方法は以下を含む:細胞を培養するためのバイオチャンバーを提供すること、バイオチャンバーで細胞を培養するための培養培地を提供すること、バイオチャンバーに細胞を播種すること。細胞を培養し、所定の培養時間で、バイオチャンバーから培養培地を生体適合性の第1のすすぎ溶液で移しかえ、続いて、第1のすすぎ溶液を細胞回収酵素溶液と取り換え、バイオチャンバーの内容物を、インキュベーションの間に、酵素が、細胞を互いにおよび/またはバイオチャンバー表面から少なくとも分離するような所定の期間インキュベートする。酵素溶液を第2のすすぎ溶液で移しかえる。チャンバーを、実質的に第2のすすぎ溶液で満たす。第2のすすぎ溶液は、ヒトに注射可能である溶液であることが好ましい。場合により、本方法は、第2のすすぎ溶液の一部をガスで移しかえて、チャンバー中に所定の減少した液量を得ること、チャンバーを撹拌して、定着した細胞を懸濁液中に入れることおよび懸濁細胞を含む溶液を細胞回収容器に流し入れることをはじめとする1以上のさらなるステップをさらに含む。溶液を細胞回収容器に流し入れた後、バイオチャンバーにさらなる量の第2の溶液を加え、バイオチャンバーを撹拌して残存する細胞をすすぐ。
【0018】
また、本発明には、培養細胞および本発明の方法によって製造された培養細胞を含有する組成物も含まれる。
【0019】
別の態様では、本発明は、培養細胞を回収する方法を提供する。本方法は、バイオチャンバーから培養培地を生体適合性の第1のすすぎ溶液で移しかえるステップ;続いて、第1のすすぎ溶液を細胞回収酵素溶液と取り換えるステップおよびバイオチャンバーの内容物を酵素溶液とともに所定の期間インキュベートするステップを含む。インキュベーションの間、酵素は、細胞を互いにおよび/またはバイオチャンバー表面から少なくとも分離する。酵素溶液を第2のすすぎ溶液で移しかえる。チャンバーを、実質的に第2のすすぎ溶液で満たす。
場合により、本方法は、以下のステップのうち1以上をさらに含む:第2のすすぎ溶液の一部をガスで移しかえて、チャンバー中に所定の減少した液量を得ること、チャンバーを撹拌して、定着した細胞を懸濁液に入れること、懸濁細胞を含む溶液を細胞回収容器に流し入れること。溶液を細胞回収容器に流し入れた後、バイオチャンバーにさらなる量の第2の溶液を加え、バイオチャンバーを撹拌して残存する細胞をすすぐ。
【0020】
細胞は、単核細胞に由来し、例えば、単核細胞は、骨髄、末梢血、臍帯血または胎児肝臓である。
【0021】
なおさらなる態様では、本発明は、少なくとも1回、第2の液体/溶液をチャンバー内に入れ、第1の含有する液体を置換し、ここで、チャンバーの形状によって液体が栓流に従ってチャンバーを流れることが可能となり、第2の液体が実質的にチャンバーの容積を置き換えることによって、所定の容積および形状を有するチャンバー中に提供される、含有する液体または溶液から微粒子を分離する方法を提供する。場合により、栓流を確立する速度でガスを導入し、ここで、ガスは、チャンバーに含まれる液体/溶液を置き換え、液体/溶液の容積を低減し、それによって、粒子をチャンバー中の液体/溶液内に濃縮する。本方法はまた、チャンバーを撹拌して、定着している粒子を、チャンバー中に含まれる液体/溶液にもたらすことおよびこの溶液を回収容器に流し入れることを含む。
【0022】
記載される方法のいずれかの、バイオチャンバーに加えられる溶液および/またはガスを導入する流量は、約0.03容積交換/分と約1.0容積交換/分の間である。バイオチャンバーに加えられる溶液および/またはガスを導入する流量は、0.50容積交換/分と0.75容積交換/分の間である。場合により、放射状の栓流にしたがってバイオチャンバーに液体/溶液またはガスを導入する。
【0023】
第2の液体またはその後の液体/溶液は、ヒトに注射可能であり得る。
【0024】
他に規定されない限り、本明細書に用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野において当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料も、本発明の実施または試験において使用できるが、適した方法および材料は、以下に記載されている。本明細書に記載されるすべての刊行物、特許出願、特許およびその他の参照文献は、参照によりその全文が組み込まれる。対立する場合には、定義を含む本明細書が支配する。さらに、材料、方法および実施例は、単に、例示であり、制限であるよう意図されるものではない。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の種々のその他の目的、特徴および付随する利益は、添付の図面に関連して考えられる場合に、以下の詳細な説明からより理解されるので、それらはより十分に理解され、添付の図面では、同様の参照文字はいくつかの図を通じて同様または対応する部分を指定する。
【図1】本発明の細胞製造システムの主要な構成要素を示す図である。
【図2】図1のシステム全体の一実施形態の概略例である。
【図3】図1のシステム全体の別の実施形態を示す概略図である。
【図4A】本発明の細胞カセットの概略上面図および側面図である。
【図4B】本発明の細胞カセットの概略上面図および側面図である。
【図5】図4Aおよび4Bの細胞カセットの分解図である。
【図6】本発明の一実施形態の細胞カセットにおける流体管経路を示す概略図である。
【図7】本発明の一実施形態の細胞カセットのバイオチャンバー部分の概略断面図である。
【図8A】本発明の一実施形態のバイオチャンバーカバーの上面図および断面図である。
【図8B】本発明の一実施形態のバイオチャンバーカバーの上面図および断面図である。
【図9A】本発明の一実施形態のバイオチャンバー細胞床ディスクの上面図および断面図である。
【図9B】本発明の一実施形態のバイオチャンバー細胞床ディスクの上面図および断面図である。
【図10A】本発明の一実施形態のバイオチャンバー基部の上面図および断面図である。
【図10B】本発明の一実施形態のバイオチャンバー基部の上面図および断面図である。
【図11】洗浄後、濃縮後および貯蔵後細胞生存%、CD90%、CD14auto%+、VegfR1+%、CFU−FおよびCFU−GM頻度および残存ウシ血清アルブミン(BSA)についての、洗浄−回収/CYTOMATE(登録商標)洗浄結果の比率を示す棒グラフである。
【図12】総生存CD90+細胞、総生存CD14+auto+細胞、総生存VEGFR1+細胞、総CFU−Fおよび総CFU−GMについての、洗浄−回収/CYTOMATE(登録商標)洗浄結果の比率を示す棒グラフである。
【図13】CFU−F頻度、(洗浄−回収)/(CYTOMATE(登録商標)洗浄)を示す棒グラフである。
【図14】TRCの用量あたりのCFU−Fを示す棒グラフである。ヌクレオカウンター(Nucleocounter)によって測定される総洗浄後生存細胞数を用いて、CFU−F/用量を算出した(ただし、利用可能でなく、トリパンブルーデータを用いた場合は除く(サンプル106−70および106−72))。各サンプルの各対の棒について、左の棒は、CYTOMATE(登録商標)洗浄を用いた結果を示し、右の棒は、洗浄−回収を用いた結果を示す。
【図15】CFU−GM頻度の比率、(洗浄−回収)/(CYTOMATE(登録商標)洗浄)を示す棒グラフである。
【図16】TRCの用量あたりのCFU−GMを示す棒グラフである。ヌクレオカウンターによって測定された総洗浄後生存細胞数を用いて、CFU−GM/用量を算出した(ただし、利用可能でない場合は、トリパンブルーデータを用いた(サンプル106−70および106−72)。各サンプルの棒の各対について、左の棒は、CYTOMATE(登録商標)洗浄を用いた結果を示し、右の棒は、洗浄−回収を用いた結果を示す。
【図17】洗浄−回収を受けた後の、ヌクレオカウンターによって測定された、ニードルによって送達した後のTRCの総生存率を示す棒グラフである。各実験について、左側の棒は、対照を表し、中央の棒は、25ゲージニードルを表し、右の棒は30ゲージニードルを表す。
【図18】CYTOMATE(登録商標)洗浄を受けた後の、ヌクレオカウンターによって測定された、ニードルによって送達した後のTRCの総生存率を示す棒グラフである。各実験について、左側の棒は、対照を表し、中央の棒は、25ゲージニードルを表し、右の棒は30ゲージニードルを表す。
【図19】24時間貯蔵し、ニードル送達した後のCFU−Fを示す棒グラフである。各サンプルの各棒の対について、左の棒は、CYTOMATE(登録商標)洗浄を用いた結果を示し、右の棒は、洗浄−回収を用いた結果を示す。
【図20】TRCでのいくつかのサイトカインについて、正規化した洗浄−回収/CYTOMATE(登録商標)洗浄サイトカイン用量を示す棒グラフである。
【図21】CYTOMATE(登録商標)洗浄TRCおよび洗浄−回収TRCの骨形成能を示す棒グラフである。
【図22A】TRCおよび間葉系幹細胞(MSC)の、プレーティングされたCD90+細胞あたりの産生されたカルシウム量を示す棒グラフである。
【図22B】TRCおよび間葉系幹細胞(MSC)の、CD90+細胞あたりの産生されたアルカリホスファターゼの量を示す棒グラフである。
【図23A】無関係のアイソタイプに対応させた対照モノクローナル抗体(mAb)(IgG1、IgG2a)を用いて2色分析のために染色された、洗浄−回収を用いて製造されたTRCのフローサイトメトリー分析を示す図である。
【図23B】特異的蛍光色素がコンジュゲートしている抗CD25および抗CD4モノクローナル抗体(mAb)を用いて染色された、洗浄−回収を用いて製造されたTRCのフローサイトメトリー分析を示す図である。
【図23C】OKT3と呼ばれる抗CD3モノクローナル抗体(mAb)を用いる特異的活性化後のTRC混合物内のT細胞のサイトカイン分泌プロフィールを示す棒グラフである。このモノクローナル抗体は、CD3−T細胞受容体(TCR)細胞表面複合体を架橋し、ひいては、T細胞によるサイトカイン放出を誘発する。Luminex(登録商標)分析を用いて、OKT3 mAbを用いるT細胞活性の48時間後に回収した上清液へのIL−2、IFNγおよびIL−10放出を評価した。
【図24】定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって定量された、IFNγ誘導性TRCにおいて発現されたインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)メッセージの相対量を示す棒グラフである。各定量の三連のサンプルの平均が示されている。
【図25】IFNγ誘導性TRCにおけるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼタンパク質の発現を示すウエスタンブロットである。
【図26】TRCによるHGF産生を示す棒グラフである。
【図27】フローサイトメトリーによって求められた、IFNγ誘導性TRCにおけるIDO陽性細胞のパーセントを示す棒グラフである。
【図28】フローサイトメトリー分析によって求められた、IFNγ誘導性TRCにおけるPDL1陽性細胞のパーセントを示す棒グラフである。
【図29A】TRCと比較した、同種T細胞および樹状細胞の存在下での同種混合白血球反応(MLR)における3H−チミジン組み込みを示すグラフである。
【図29B】TRCと比較した、同種T細胞および樹状細胞の存在下での同種混合白血球反応(MLR)における3H−チミジン組み込みを示すグラフである。
【図30】IFNγに対する曝露を伴わない(非誘導)または伴う(誘導)、TRCの用量を漸増した、同種T細胞の存在下での同種混合白血球反応(MLR)における3H−チミジン組み込みを示す棒グラフである。
【図31】足場から落ち、両脛骨の骨折のためにTRCで治療されたた患者のX線である。
【図32A】治癒しつつある仮骨における新生骨の顕微鏡写真による組織学的検査スライドである。
【図32B】同種移植片を貫通している血管および新生骨の明視野顕微鏡写真による組織学的検査スライドである。
【図32C】同種移植片を貫通している血管および新生骨の偏光顕微鏡写真による組織学的検査スライドである。
【図33A】自己血漿と結合している埋め込み型TRC/脱石灰化骨マトリックス(DBM)混合物の写真である。
【図33B】4×での、TRC/DBM混合物の24時間の生存/死滅染色の顕微鏡写真である。
【図34A】RC/DBM同種移植片中のTRCが、混合した後に生存可能であり、2週間にわたって増殖することを示すグラフである。
【図34B】4×での、TRC/DBM混合物の14日の生存/死滅染色の顕微鏡写真である。
【図35】TRCが、TRC/DBM混合物における2週間の培養を通じてオステオカルシン、IL−6、オステオプロテグリン(osteoprotegrin)およびVEGFの分泌を維持することを示すグラフである。
【図36】TRCで治療された69歳の男性患者のつま先を示す写真である。治療前(左)治癒していない創傷が観察された。44週間の治療後(右)、完全な治癒が観察された。患者は、冠動脈心疾患、慢性心不全、高血圧および脂質異常症をはじめ、多数の併存症を患っていた。
【図37】TRCで治療された69歳の男性患者の足のMR血管造影を示す写真である。この患者は、右足にTRC注入を受けた。治療前(左パネル)、極めて微小さな側枝形成が観察された。48週間の治療後(右パネル)、治療された足に相当多い側枝が観察できる。患者は、冠動脈心疾患、高血圧および高脂血症をはじめ、多数の併存症を患っていた。
【図38】BM MNCと比較した、TRCにおける特定の細胞型の増加または減少を示す棒グラフである。
【図39】BM MNCおよびTRCにおける造血および間葉エレメントの頻度を示す説明図である。
【図40】同一のドナーに由来するBM MNCおよびTRC間でサイトカイン産生プロフィールが大幅に異なることを示す棒グラフである。
【図41A】MSCおよびTRC培養におけるCD90およびCFU−fの頻度を示す一連の棒グラフである。MSCおよびTRCは、材料および方法において記載される自動バイオリアクターシステムにおいて作製した。産出培養物中のCD90およびCFU−fの頻度がAおよびBにそれぞれ示されている。次いで、CFU−f頻度を、各生成物中のCD90細胞の数に基づいて算出した。結果はCに示されている。濃いバーは、TRC培養物を表し、中抜きバーは、MSC培養物を表す。二人の無関係の正常なドナーが示されている。
【図41B】MSCおよびTRC培養におけるCD90およびCFU−fの頻度を示す一連の棒グラフである。MSCおよびTRCは、材料および方法において記載される自動バイオリアクターシステムにおいて作製した。産出培養物中のCD90およびCFU−fの頻度がAおよびBにそれぞれ示されている。次いで、CFU−f頻度を、各生成物中のCD90細胞の数に基づいて算出した。結果はCに示されている。濃いバーは、TRC培養物を表し、中抜きバーは、MSC培養物を表す。二人の無関係の正常なドナーが示されている。
【図41C】MSCおよびTRC培養におけるCD90およびCFU−fの頻度を示す一連の棒グラフである。MSCおよびTRCは、材料および方法において記載される自動バイオリアクターシステムにおいて作製した。産出培養物中のCD90およびCFU−fの頻度がAおよびBにそれぞれ示されている。次いで、CFU−f頻度を、各生成物中のCD90細胞の数に基づいて算出した。結果はCに示されている。濃いバーは、TRC培養物を表し、中抜きバーは、MSC培養物を表す。二人の無関係の正常なドナーが示されている。
【図42】異所性マウスモデルにおけるin vivoでの骨形成の比較を示す線グラフである。MSCおよびTRC培養物由来の各ローディング細胞密度の骨スコアを調べた。グラフは、各培養物由来のCD90+細胞の算出されたローディング用量を示す。示される結果は、一人の正常なドナーに由来する代表的な実験である。この実験では、MRCは68%CD90+であり、TRCは22%cCD0+であった。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、細胞治療のための細胞を製造する組成物および方法の発見に基づいている。本組成物は、組織修復、組織再生および組織工学のためのヒト投与に唯一適している幹細胞および前駆細胞が増強されている細胞の混合集団である。これらの細胞は本明細書において「組織修復細胞」または「TRC」と呼ばれる。
【0028】
したがって、一態様では、本発明は、造血、間葉および内皮系統の細胞の混合集団を含有する組成物を提供する。本組成物は、治療的使用のためのヒトへの投与に適している。TRCは、in vitro培養過程から製造される。培養過程が完了すると、培養成分(例えば、培養培地、細胞の剥離および回収のために用いられる)を、細胞から分離しなければならず、その後、それらは組織再生を必要とする被験体に安全に投与され得る。この分離は、従来、培養後細胞洗浄ステップにおいて実施されている。しかし、このステップに関連する重大な問題として、例えば、細胞の生存率および生物学的機能の低下および遊離細胞DNAおよび壊死組織片の増加によって示される、これらの過程の間にかけられる機械力によって引き起こされる細胞損傷がある。生存率および機能のこの損失は、細胞製造に対する直接影響を有するだけでなく、細胞の有効期間および凍結保存の可能性にも大きな影響を有する。さらに、洗浄器具中にすべての細胞を移すことができないこと、ならびに器具からすべての細胞を取り出すことができないことの両方のために細胞の相当な喪失が起こり得る。
【0029】
したがって、別の態様では、本発明は、細胞洗浄手順を提供する。以下のTRCの製造方法において記載される本発明の細胞洗浄技術は、驚くべきことに、現在の培養後洗浄手順と比較して、細胞生存率および収率を大幅に増強し、一方で、患者に細胞を安全に投与するために十分に低い培養成分の残存レベルを有する細胞組成物を提供した。
組織修復細胞(TRC)
組織修復細胞(TRC)は、傷害組織を修復するための高機能を有する細胞および分子組成物を提供する。さらに、TRCは、抗炎症作用を有することがわかっている。TRCは、単核細胞から製造される造血、間葉および内皮細胞系統の細胞の混合物を含む。単核細胞は、成体、若年、胎児または胚組織から単離される。例えば、単核細胞は、骨髄、末梢血、臍帯血または胎児肝臓組織に由来する。TRCは、単核細胞から、例えば、出発材料として用いられた単核細胞集団と比較して、表現型および機能両方の相違を有する、独特の細胞組成物をもたらすin vitro培養過程によって製造される。さらに、本発明のTRCは、高い生存率およびその製造の際に用いられる成分の低い残存レベルの両方を有する。
【0030】
TRCの生存率は、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれを超える。生存率は、トリパンブルー排除などの当技術分野で公知の方法によって測定される。TRC集団は、この増強された生存率によって、組織修復において、より有効となり、ならびに、最終細胞製品の有効期間および凍結保存の可能性を増強する。
【0031】
製造の際に用いられた成分とは、それだけには限らないが、培養培地成分、例えば、ウマ血清、胎仔ウシ血清および細胞回収のための酵素溶液を意味する。酵素溶液は、トリプシン(動物由来、微生物由来または組換え)、種々のコラゲナーゼ、代替微生物由来酵素、解離剤、一般プロテアーゼまたはこれらの混合物を含む。これらの成分を除去することで、TRCの、それを必要とする被験体への安全な投与が提供される。
【0032】
本発明のTRC組成物は、10、5、4、3、2、1μg/ml未満のウシ血清アルブミン、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5μg/ml未満の回収酵素(酵素活性によって決定される)を含み、マイコプラズマ、内毒素および微生物(例えば、好気性、嫌気性および真菌)汚染を実質的に含まないことが好ましい。
【0033】
内毒素を実質的に含まないとは、1日あたり5EU/体重1kgの総内毒素であり、平均70kgの人に対して、TRC総用量あたり350EUである、生物製剤についてFDAによって認められるものよりも少ないTRCの用量あたりの内毒素しかないことを意味する。
【0034】
マイコプラズマおよび微生物汚染を実質的に含まないとは、当業者に公知の一般に許容される試験についての陰性の読み取りを意味する。例えば、マイコプラズマ汚染は、適当な陽性および陰性対照とともに、TRC製品サンプルをブロス培地で継代培養し、37℃で1、3、7および14日目に寒天プレート上に分配することによって判定する。製品サンプル外観は、陽性および陰性対照のものと、100×で顕微鏡によって比較する。さらに、指標細胞培養の播種を、3および5日間インキュベートし、DNA結合性蛍光色素を用いる落射蛍光顕微鏡によって600×でマイコプラズマの存在を調べる。製品は、寒天および/またはブロス培地手順および指標細胞培養手順が、マイコプラズマ汚染の証拠を示さない場合に良好と考えられる。
【0035】
製品が微生物汚染を含まないことを証明するための無菌試験は、米国薬局方ダイレクト・トランスファー・メソッド(Direct Transfer Method)に基づいている。この手順は、回収前培地溶出物および濃縮前サンプルを、トリプシンダイズブロス培地および液体チオグリコレート培地を含有する試験管に播種することを必要とする。これらの試験管を、濁った外観(濁度(turpidity))について、14日のインキュベーションの間、定期的に観察する。いずれかの培地におけるいずれの日の濁った外観も、汚染を示し、透明な外観(増殖なし)は汚染を実質的に含まないことを試験する。
【0036】
TRC内の細胞の、クローン原性コロニーを形成する能力を、BM−MNCと比較して調べた。造血(CFU−GM)および間葉(CFU−F)コロニーの両方をモニターした(表1)。表1に示されるように、培養することによって、CFU−Fは280倍増加したが、CFU−GMはわずかに減少した。
【0037】
(表1)
【0038】
【表1】
結果は、8回の臨床規模実験から得られた平均±SEMである。
【0039】
TRC組成物の細胞を、細胞表面マーカー発現によって特性決定した。表2は、開始BM MNCおよびTRCについてフローサイトメトリーによって測定された典型的な表現型を示す。(表2参照のこと)。これらの表現型の相違および機能の相違によって、TRCは単核細胞出発組成物と高度に区別される。
【0040】
(表2)
【0041】
【表2】
M=間葉系統、H=造血系統、E=内皮系統。結果は、4回の臨床規模の実験の平均である。
【0042】
造血、間葉および内皮系統のマーカーを調べた。出発BM MNCおよびTRCを比較する4実験から得た平均結果は、図38に示されている。CD11b骨髄性、CD14auto−単球、CD34前駆細胞およびCD3リンパ系をはじめとする、ほとんどの造血系統細胞は、わずかに減少するのに対し、CD14auto+マクロファージは81倍増殖する。CD90+およびCD105+/166+/45−/14−によって定義される間葉細胞は、最大373倍の増殖を有する。成熟血管内皮細胞(CD144/146)およびCXCR4/VEGFR1+支持細胞をはじめとする血管新生に関与し得る細胞は、6〜21倍増殖する。
【0043】
ほとんどの造血系統細胞は、これらの培養において増殖しないが、最終製品は依然として、80%近くのCD45+造血細胞および約20%のCD90+間葉細胞を含む(図39)。
【0044】
TRCは、それらが由来する単核細胞集団と比較して、CD90+細胞について高度に濃縮されている。TRC組成物中の細胞は、少なくとも5%、10%、25%、50%、75%の、またはそれより多いCD90+である。TRC組成物中の残りの細胞は、CD45+である。TRC組成物中の細胞は、約5〜75%の生存CD90+であることが好ましい。種々の態様では、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%の、またはそれより多いCD90+はまた、CD15+である。(表3参照)さらに、CD90+はまた、CD105+である。
【0045】
(表3)
【0046】
【表3】
対照的に、骨髄単核細胞(BMMNC)中のCD90集団は、通常、1%未満であり、得られたCD45+は、BMMNC中の有核細胞の99%より多くを構成する。したがって、出発単核細胞集団と比較して、TRC組成物では成熟造血細胞の多くの大幅な減少がある。(表2参照のこと)
造血、間葉および内皮幹細胞のこの独特の組み合わせは、単核細胞と異なっているだけでなく、現在、細胞治療に用いられているその他の細胞集団とも異なっている。表4は、間葉系幹細胞および脂肪由来幹細胞と比較した、TRCの細胞表面マーカープロフィールを示す。(Deans RJ、Moseley AB.2000年。Exp.Hematol.28:875〜884頁;Devine SM.2002年。J 細胞 Biochem Supp38:73〜79頁;Katz AJら2005年。Stem 細胞.23:412〜423頁;Gronthos Sら2001年。J 細胞 Physiol189:54〜63頁;Zuk PAら2002年.MoI Biol 細胞.13:4279〜95頁。)
例えば、間葉系幹細胞(MSC)は、CD90+について高度に精製されており(95%を超えるCD90+)、極めて低いパーセンテージのCD45+(もしあれば)しか含まない。脂肪由来幹細胞は、より可変性であるが、通常、95%を超えるCD90+を有し、組成物の一部としてCD45+血液細胞はほとんどない。また、BMMNCから培養され、CD49を同時発現するMSCとは異なる純粋なCD90集団をもたらす、Multi−Potent成体前駆細胞(MAPC)もある。用いられているその他の幹細胞は、CD34+細胞、AC133+細胞および+CD34+lin−細胞を含む高度に精製された細胞種であり、天然には、組成物の一部としてCD90+細胞をほとんど有さない、ないしまったく有さず、従って、TRCとは実質的に異なる。
【0047】
細胞マーカー分析はまた、本発明の方法にしたがって単離されたTRCは、CD14+auto、CD34+およびVEGFR+細胞の、より高いパーセンテージを有するということを実証した。
【0048】
(表4)
【0049】
【表4】
TRC集団中に存在する細胞種の各々は、種々の免疫調節性特性を有する。単球/マクロファージ(CD45+、CD14+)は、T細胞活性化を阻害し、ならびに、マクロファージによるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)発現を示す(Munn D.H.およびMellor A.L.、Curr Pharm Des.、9:257〜264頁(2003年);Munn D.H.らJ Exp Med.、189:1363〜1372頁(1999年);Mellor A.L.およびMunn D.H.、J. Immunol.、170:5809〜5813頁(2003年);Munn D H.ら、J.Immunol.、156:523〜532頁(1996年))。単球およびマクロファージは、炎症および組織修復を調節する。(Duffield J.S.、Clin Sci(Lond)、104:27〜38頁(2003年);Gordon、S.;Nat.Rev.Immunol.、3:23〜35頁(2003年);Mosser、D.M.、J.Leukoc.Biol.、73:209〜212頁(2003年);Philippidis P.ら、Circ.Res.、94:119〜126頁(2004年)。これらの細胞はまた、耐性および移植片免疫抑制を誘導する(Fandrich Fら、Hum. Immunol.、63:805〜812頁(2002年))。調節性T細胞(CD45+CD4+CD25+)は、傷害後の自然炎症反応を調節する。(Murphy T.J.ら、J.Immunol.、174:2957〜2963頁(2005年))。T細胞はまた、自己寛容の維持ならびに自己免疫疾患の予防および抑制に関与している。(Sakaguchi S.ら、Immunol.Rev.、182:18〜32頁(2001年);Tang Q.ら、J.Exp.Med.、199:1455〜1465頁(2004年))T細胞はまた、移植片寛容を誘導および維持し(Kingsley C.I.らJ.Immunol.、168:1080〜1086頁(2002年);Graca L.ら、J.Immunol.、168:5558〜5565頁(2002年))、移植片対宿主病を阻害する(Ermann J.ら、Blood、105:2220〜2226頁(2005年);Hoffmann P.ら、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、293:265〜285頁(2005年);Taylor P.A.ら、Blood、104:3804〜3812頁(2004年)。間葉系幹細胞(CD45+CD90+CD105+)は、IDOを発現し、T細胞活性化を阻害し(Meisel R.ら、Blood、103:4619〜4621頁(2004年);Krampera M.ら、Stem Cells、(2005年))、ならびに抗炎症活性を誘導する(Aggarwal S.およびPittenger M.F.、Blood、105:1815〜1822頁(2005年))。
【0050】
TRCはまた、プログラム死リガンド1(PDLl)の発現の増大を示す。PDL1の発現の増大は、抗炎症性サイトカインIL−10の産生と関連している。PDL1発現は、非炎症状態と関連している。TRCは、炎症誘導に応じたPDL1発現の増大を有し、このことは、TRCの抗炎症性の別の態様を示す。
【0051】
TRCはまた、BM MNCとは対照的に、少なくとも5種の別個のサイトカインおよび1種の調節性酵素を産生し、創傷修復および炎症のダウンレギュレーションの制御の両方に対して強力な活性を有する。(図40)。詳しくは、TRCは、1)インターロイキン−6(IL−6)、2)インターロイキン−10(IL−10)、3)血管内皮増殖因子(VEGF)、4)単球走化性タンパク質−1(MCP−I)および5)インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)を産生する。これら5種のサイトカインの特徴は、以下の表5に要約されている。
【0052】
【表5】
TRCのさらなる特徴として、TH1炎症経路を活性化することがわかっている特定の中心的なメディエーター、例えば、インターロイキン−α(IL−1α)、インターロイキン−β(IL−1β)インターフェロン−γ(IFNγ)および最も顕著にはインターロイキン−12(IL−12)を自発的に産生できないか、または極めて低レベルの産生が挙げられる。TRCが、培地交換または灌流培養の間も、既知炎症刺激、例えば、細菌リポ多糖(LPS)を用いた意図的な誘導後のいずれでも、これらの後者のTH1型サイトカインを自発的に産生しないことは重要である。TRCは、唯一、抗CD3mAbによるT細胞誘発後に低レベルのIFNγを産生した。最後に、現方法によって製造されたTRCは、より多くの抗炎症性サイトカインIL−6およびIL−10を産生し、より少ない炎症性サイトカインIL−12を産生する。
【0053】
さらに、TRCは、インドールアミン−2,−3ジオキシゲナーゼ(IDO)と表される重要な免疫抑制酵素の発現について誘導可能である。本発明のTRCは、インターフェロンγを用いた誘導で高レベルのIDOを発現する。IDOは、動物モデルおよびヒトにおいて発生期の、および進行中の炎症反応の両方をダウンレギュレートすることが実証されている(Meisel R.ら、Blood、103:4619〜4621頁(2004年);Munn D.H.ら、J.Immunol.、156:523〜532頁(1996年);Munn D.H.ら.J.Exp.Med.189:1363〜1372頁(1999年);Munn D.H.およびMellor A.L.、Curr.Pharm.Des.、9:257〜264頁(2003年);Mellor A.L.およびMunn D.H.、J.Immunol.、170:5809〜5813頁(2003年))。
【0054】
合わせると、本発明のTRCのこれらの独特の特徴は、組織修復のための、より抗炎症性環境を作製し、したがって、組織修復のための、より有効な治療である。
【0055】
上記で論じたように、TRCは、CD90およびCD15を同時発現する細胞の集団について高度に濃縮されている。
【0056】
CD90は、多系統に分化し得る幹細胞および前駆細胞上に存在する。これらの細胞は、おそらく、分化の異なる状態にある細胞の不均一な集団である。細胞マーカーは、細胞の幹細胞状態を規定する胚起源または胎児起源の幹細胞上で同定されている。これらのマーカーの1種、SSEA−1はまた、CD15とも呼ばれる。CD15は、マウス胚性幹細胞上に見られるが、ヒト胚性幹細胞では発現されない。しかし、マウスおよびヒト両方由来の神経幹細胞においては検出されている。CD15はまた、ヒト骨髄または脂肪組織に由来する精製間葉系幹細胞では発現されない(表6参照のこと)。したがって、CD90およびCD15の両方を同時発現するTRC中の細胞集団は、独特な細胞集団であり、CD90成体由来細胞の幹様状態を規定し得る。
【0057】
したがって、本発明の別の態様では、CD90およびCD15の両方を発現する細胞集団をさらに濃縮することができる。さらに濃縮されたとは、細胞組成物が、5%、10%、25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98% 99%または100%のCD90+CD15+細胞を含むことを意味する。TRCは、当技術分野で公知の方法、例えば、細胞表面マーカーに対する抗体を用いる陽性または陰性選抜によってCD90+CD15+細胞についてさらに濃縮され得る。CD90+CD15+細胞についてさらに濃縮されているTRCは、骨修復および再生において特に有用である。
【0058】
(表6)
【0059】
【表6】
CD90+CD15+のCFU−Fおよび骨形成能を評価した。CD90+細胞を除去すると、すべてのCFU−Fおよびin vitro骨形成能が枯渇した。驚くべきことに、CD90およびCFU−Fの全体的な頻度は、MSC培養(CD90はCD15を発現しない)においてよりも高かったが、CD90細胞あたりのCFU−Fの相対数は、TRCにおいて著しく高かった(図41)。このことは、CD90細胞は精製細胞集団として増殖した場合にTRCにおいて、かなりより強力であるということを実証する。
【0060】
骨形成能は、in vitroおよびin vivoの両方で測定した。やはり、細胞がCD15を発現している状態(TRC)では、骨形成能は、間葉細胞において見られるものよりも高かった(図42)。
治療法
組織修復細胞(TRC)は、組織修復、組織再生および組織工学をはじめとする種々の治療方法にとって有用である。例えば、TRCは、骨再生、心臓再生、血管再生、神経再生および虚血性障害の治療において有用である。虚血状態としては、それだけには限らないが、肢虚血、うっ血性心不全、心虚血、腎虚血およびESRD、卒中および眼の虚血が挙げられる。さらに、TRCはまた、TRCによって産生される免疫調節性サイトカインのために種々の免疫性および炎症性疾患の治療においても有用である。免疫性および炎症性疾患として、例えば、糖尿病(I型およびII型)、炎症性腸疾患(IBD)、移植片対宿主病(GVHD)、乾癬、同種細胞、組織または臓器の拒絶(耐性誘導)、心疾患、脊髄損傷、関節リウマチ、変形性関節症、人工股関節置換術または修正による炎症、クローン病、自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)および多発性硬化症(MS)が挙げられる。本発明の別の態様では、TRCはまた、血管新生を誘導するのに有用である。
【0061】
TRCは、組織修復または再生を達成するために、哺乳類被験体、例えば、ヒトに投与される。TRCは、同種的にまたは自家的に投与される。
【0062】
TRCの独特な性質は、宿主反応を、炎症の組織破壊的経路から離れ、傷害組織の迅速な治癒による創傷修復に向けて強力に偏向する。さらに、一部の細胞は、組織特異的に分化でき(例えば、骨へのCD90+)、組織再生をさらに補助する。したがって、TRCは、広範な疾患において組織修復を誘導するのに有効である。
薬剤投与および投与形
記載されるTRCは、生理学上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含有する製薬上または生理学上許容される製剤または組成物として投与でき、注目するレシピエント生物、例えば、ヒトおよび非ヒト動物の組織に投与できる。TRC含有組成物は、滅菌生理食塩水またはその他の生理学上許容される注射用水性液体などの適した液体または溶液に細胞を再懸濁することによって調製できる。このような組成物中に使用される成分の量は、当業者によって日常的に決定され得る。
【0063】
TRCまたはその組成物は、TRC懸濁液を吸収性または接着性材料、すなわち、コラーゲンスポンジマトリックス上に留置することおよびTRC含有材料を注目する部位の中または上に挿入することによって投与できる。あるいは、TRCは、皮下、静脈内、筋肉内および胸骨内をはじめとする、注射の非経口経路によって投与してもよい。その他の投与様式として、それだけには限らないが、鼻腔内、くも膜下腔内、皮内、経皮的、腸内および舌下が挙げられる。本発明の一実施形態では、TRCの投与は、内視鏡手術によって媒介され得る。
【0064】
注射用投与には、本組成物は、滅菌溶液もしくは懸濁液中にあるか、または製薬上および生理学上許容される水性もしくは油性ビヒクルに再懸濁されていてもよく、これは保存料、安定剤および溶液または懸濁液を、レシピエントの体液(すなわち、血液)と等張にする材料を含み得る。使用に適した賦形剤の限定されない例として、水、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4、0.15M 塩化ナトリウム水溶液、デキストロース、グリコール、希エタノールなどおよびそれらの混合物が挙げられる。例示的安定剤として、ポリエチレングリコール、タンパク質、サッカリド、アミノ酸、無機酸および有機酸があり、これらは、それらだけで、または混合物としてのいずれで用いてもよい。用いる量または質ならびに投与経路は、個人レベルで決定され、当業者に公知の同様の種類の適用または適応症において用いられる量に対応する。
【0065】
本発明と一致して、TRCは、肝臓、膵臓、肺、唾液腺、血管、骨、皮膚、軟骨、腱,靭帯、脳、毛、腎臓、筋肉、心筋、神経、骨格筋、関節および肢をはじめとする身体組織に投与できる。
【0066】
TRC懸濁液中の細胞数および投与様式は、治療される部位および状態に応じて変わり得る。限定されない例として、本発明に一致して約35〜300×l06個のTRCを注射して組織修復を達成する。本明細書に開示される実施例と一致して、当業者は、TRCベースの治療の量および方法を、各場合について決定される必要条件、制限および/または最適化に応じて調節できる。
【0067】
好ましい実施形態では、TRC薬剤組成物は、約8から54%の間のCD90+細胞と、約46から92%の間のCD45+細胞を含む。TRC薬剤組成物は、約35×106個から300×106個の生存有核細胞と、約7×106から75×106個の生存CD90+細胞を含むことが好ましい。TRC薬剤組成物は、0.5EU/ml未満の内毒素しか有さず、細菌または真菌増殖がないことが好ましい。好ましい実施形態では、TRCの投与形は、4.7〜7.3mL内の製薬上許容される水性担体からなる。好ましい懸濁液溶液として、Multiple Electrolyte Injection Type 1(USP/EP)がある。各100mLのMultiple Electrolyte Injection Type 1は、234mgの塩化ナトリウム、USP(NaCl);128mgの酢酸カリウム、USP(C2H3KO2);および32mgの酢酸マグネシウム四酢酸(Mg(C2H3O2)2・4H2O)を含む。抗菌剤を含まない。pHは、塩酸で調整する。pHは、5.5(4.0〜8.0)である。Multiple Electrolyte Injection Type 1は、0.5%ヒト血清アルブミン(USP/EP)が補給されていることが好ましい。TRC薬剤組成物は、0〜12℃で、未凍結で保存する。
【0068】
TRCの適応症および送達様式
TRCは、記載される方法を用いて患者に送達するために製造および加工でき、ここでは、最終製剤が、すべての培養成分がFDAによって安全と見なされるレベルに実質的に除去されているTRCである。70%を超える最終生存率を有することは細胞にとって重要であるが、最終細胞懸濁液の生存率が高いほど、最終細胞用量はより強力で有効となり、壊死組織片(死細胞に由来する細胞膜、オルガネラおよび遊離核酸)が少なく、そのため、実質的に低い培養および回収成分を維持しながら、閉鎖無菌処理システムを維持しながら、細胞生存率を増強する方法が高度に望ましい。
【0069】
肢虚血
骨髄由来細胞は、重篤な肢虚血、末梢血管疾患またはバージャー症候群(Burger’s syndrome)を有する患者における血管再生に用いられることが実証されている。虚血肢を有する患者に送達されるTRCは、血管再生を増強することがわかった。TRCは、細胞懸濁液を作製することおよび中に送達されている供給バッグまたはバイアルからTRCを移動させることによって患者に送達される。TRC懸濁液を移動させるためにシリンジが用いられ、次いで、より少ない0.25ml〜1mlの個々の注入容積が、メインシリンジからシリンジアダプターを用いて入れられ、次いで、数回の個々の注入容積が、血管形成が必要とされる肢虚血の部位への筋肉内注射によって送達される。TRCは、最小の侵襲的手順のために、16ゲージニードルから極めて小さい30ゲージニードル、ならびに極めて長い28ゲージカテーテルの広範なニードルサイズによって送達してよい。あるいは、TRCはまた、血管内に送達し、虚血の部位へ進ませ、局所組織再生を駆動させてもよい。
心臓再生
心臓組織再生を駆動するための種々の送達様式がある。TRCは、血管内に送達され、再生の部位に進まされる。あるいは、TRCはまた、心外膜にまたは心内膜にのいずれかで、ならびに経血管的に心筋中に直接的に送達される。TRCは、開胸手順の間に、または最小の侵襲手順によって、例えば、カテーテルによる送達を用いて送達してよい。TRCは、細胞懸濁液を作製することおよび中に送達されている供給バッグまたはバイアルからTRCを移動させることによってこれらの患者に送達される。TRC懸濁液を移動させるためにシリンジが用いられ、次いで、より少ない0.25ml〜1mlの個々の注入容積が、メインシリンジからシリンジアダプターを用いて入れられ、次いで、数回の個々の注入容積が、血管形成が必要とされる心虚血の部位への筋肉内注射によって送達される。TRCは、最小の侵襲的手順のために、16ゲージニードルから極めて小さい30ゲージニードル、ならびに極めて長い28ゲージカテーテルの広範なニードルサイズによって送達してよい。
【0070】
脊髄再生
TRCが脊髄損傷(SCI)後の再生のために用いられる種々の方法がある。TRCは、SCIの部位中に直接的に注入してよく、マトリックス(以下の骨再生のための一覧から選択される)上に播種してもよく、また、切除された脊髄中に播種してもよく、または、TRCが傷害部位に移動し得るような部位に単に置くだけでもよい。あるいは、TRCを、血管内に送達し、傷害の部位に進ませ、局所組織再生を駆動させる。
【0071】
TRCを、直接注射、局所的に送達されるマトリックス上に播種することによって組織に局所的に送達してもよいし、またはTRCを傷害または疾患の部位に進ませる血管系を介して送達してもよい、種々のその他の適用がある。これらの疾患として、肢虚血、うっ血性心不全、心虚血、腎虚血および末期腎疾患、卒中および眼の虚血がある。
【0072】
骨再生のための整形外科的適応症
TRCは、ヒトにおける骨再生適用において上手く用いられてきた。任意選択で、TRCは、骨再生が必要とされる部位での送達および局在化を増強するために3Dマトリックスと混合されてもよい。三次元マトリックスは、さまざまな物理的および化学的形状となり、ハンドリング特性および送達特性を補助するよう、粘稠性またはゲル化結合材料を加えてもよい。
【0073】
三次元マトリックスとして、例えば、脱石灰化骨粒子、石灰化骨粒子、リン酸カルシウムファミリーの合成セラミック、例えば、αトリリン酸カルシウム(TCP)、βTCP、ヒドロキシアパタイトおよびこれらの材料の複雑な混合物がある。その他のマトリックスとして、例えば、コラーゲンベースのスポンジ、多糖ベースの材料、例えば、ヒアルロナンおよびアルギン酸、合成生分解性ポリマー材料、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリフマル酸、ポリエチレングリコール、これらならびに当技術分野で公知のその他の材料の共重合体が挙げられる。
【0074】
TRCとともに用いられるマトリックスはいずれも、組織再生適用のために当技術分野ではよく見られる種々の物理的形状に加工してよい。これらの物理的形状として、オープンおよびクローズドポアフォームおよびスポンジ、線維ベースの織物または不織メッシュまたはナノ粒子〜ミクロンサイズの粒子の範囲の(1マイクロメーター〜1000マイクロメーター)小粒子およびミリメーターサイズ規模のマクロ粒子がある。小粒子はまた、開放気孔率を有することが多く、ナノポアは栄養分および代謝産物輸送において役立ち、ミクロポアは細胞播種および組織組み込みを促進するよう十分に大きい孔を提供する。
【0075】
細胞送達のために用いられるマトリックスが、創傷部位に送達される小粒子である場合には、時々、粒子を結合するために粘稠性材料またはゲルが用いられ、これは材料ハンドリングおよび送達に役立ち、ならびに、粒子および細胞を、留置後にその部位に局在させつづけるのに役立つ。粘稠性結合材料として、例えば、ソフトまたはハードヒドロゲルへの粘稠性液体の形のいずれかで、ヒアルロナン、アルギン酸、コラーゲン、ポリエチレングリコール、ポリフマル酸、血栓およびフィブリンベースの血餅ならびにこれらの材料の混合物が挙げられる。その他の粘稠性材料およびヒドロゲルは当技術分野では公知である。
【0076】
種々の実施形態では、TRCは、具体的な適用に応じて、TCP、脱石灰化骨および200μメートル〜5ミリメートルの範囲の大きさの石灰化骨粒子とともに送達される。場合により、これらの材料は、患者から得た自己の新しく調製した血漿から作製されたフィブリンベースの血餅と結合していてもよい。その他のフィブリン血餅または種々のヒドロゲルまたは一般的なマトリックス材料も使用してよい。
【0077】
一般に、TRCは、骨再生のために用いられる場合、手術の直前にマトリックスと混合される。長期の骨再生のためには、通常、骨癒着不能の領域は、外科医によって開けられ、壊死骨は取り除かれる。癒着不能な骨または骨が必要とされる領域は、その部位での出血を可能にするよう外科医によって皮質が剥離されてもよいし、されなくてもよいが、その地点に、外科医によって再生が起こる骨の間にTRC−マトリックス混合物が留置される。TRCおよびマトリックスのこの混合物は、骨再生の位置を誘導する物理的マトリックスおよび血管新生、創傷治癒および骨再生を駆動するための組織修復刺激を提供するTRCを用いて組織再生を駆動する。残りのTRC/マトリックス混合物は、場合により、プレート、ロッド、スクリューまたはネイルなどの任意の整形外科的ハードウェアが留置された後に骨折線の周囲に留置してもよい。
TRCの製造方法
TRCは、骨髄単核細胞(BM MNC)含む任意の哺乳類組織から単離される。BM MNCの適した供給源として、末梢血、骨髄、臍帯血または胎児肝臓がある。血液は、この組織が容易に得られるためによく用いられる。哺乳類として、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマまたはブタが挙げられる。
【0078】
TRCを作製するための培養方法は、従来の細胞分画法を用いて赤血球および多核細胞(polynucleated cell)を除去することによる出発材料(例えば、組織)からのBM MNCの濃縮で始まる。例えば、細胞は、FICOLL(登録商標)密度勾配分離を用いることによって分画される。培養を開始するのに十分な量の細胞を提供するために、培養に必要とされる出発材料の容積は、通常少なく、例えば、40〜50mLである。しかし、任意の容積の出発材料を使用してよい。
【0079】
次いで、自動化細胞カウンターを用いて有核細胞濃度を評価し、出発材料の濃縮された画分をバイオチャンバー(細胞培養容器)に播種する。バイオチャンバー中に播種される細胞数は、その容積に応じて変わる。本発明と一致して使用してよいTRC培養は、104〜109個細胞/1mlの培養物の細胞密度で実施される。Aastrom Replicellバイオチャンバーが用いられる場合には、2〜3×108個の総細胞が、約280mLの容積に播種される。
【0080】
播種に先立って、バイオチャンバーは、培養培地で準備刺激を受ける。例示的に、本発明に従って用いられる培地は、3種の基本的成分を含む。第1の成分は、IMDM、MEM、DMEM、RPMI1640、α培地またはマッコイ培地または同等の既知培養培地成分からなる培地成分である。第2は、少なくともウマ血清またはヒト血清を含んでなり、胎仔ウシ血清、新生仔ウシ血清および/またはウシ血清をさらに含む血清成分である。場合により、当技術分野で公知の血清不含培養培地を用いてもよい。第3の成分は、コルチコステロイド、例えば、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ソルメドロールまたはこれらの組み合わせ、好ましくは、ヒドロコルチゾンである。Aastrom Replicellバイオチャンバーが用いられる場合には、培養培地は、IMDM、約10%胎仔ウシ血清、約10%ウマ血清、約5μMヒドロコルチゾンおよび4mM L−グルタミンからなる。次いで、培養過程の間、細胞および培地を、制御勾配灌流スケジュールでバイオチャンバーに入れる。細胞を2、4、6、8、10、12、14、16日またはそれより長くの間培養する。細胞は12日間培養されるのが好ましい。例えば、培養は、Aastrom Replicellシステム細胞カセットとともに用いられる場合には、37℃で5%CO2および20%O2とともに維持される。
【0081】
これらの培養は、通常、ほぼ生理学的である、すなわち、6.9〜7.6であるpHで実施される。培地は、1〜20体積割合、好ましくは、3〜12体積割合の酸素を含む酸素含有大気に対応する酸素濃度で維持される。O2濃度の好ましい範囲とは、細胞に近いO2の濃度を指し、必ずしも、培地表面またはメンブランを介してであり得るO2誘導の点ではない。
【0082】
標準培養スケジュールは、培地および血清について、毎週実施される単回交換または週に2回実施される1/2培地および血清交換のいずれかとして、毎週交換されることを求める。培養の栄養培地は、2×106個〜1×107個細胞/mlの密度で培養された細胞につき、約1ml/1mlの培養/24〜48時間の速度で、連続的にまたは周期的にいずれかで、交換される、好ましくは灌流されることが好ましい。1×104個〜2×106個細胞/mlの細胞密度のために、同一培地交換速度を用いてもよい。したがって、107個細胞/mlの細胞密度について、本培地交換速度は、1mlの培地/107個細胞/約24〜約48時間として表される。107個細胞/mlより高い細胞密度については、培地交換速度は、単位時間あたり細胞あたり一定の培地および血清流動が達成するよう割合を高めてよい。
【0083】
骨髄細胞を培養する方法は、Lundellら、「Clinical Scale Expansion of Cryopreserved Small Volume Whole Bone Marrow Aspirates Produces Sufficient Cells for Clinical Use」、J.Hematotherapy(1999年)8:115〜127頁(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。骨髄(BM)吸引液は、等張緩衝生理食塩水(希釈剤2、Stephens Scientific、Riverdale、NJ)で希釈し、有核細胞を、Coulter ZM細胞カウンター(Coulter Electronics、Hialeah、FL)を用いて計数する。赤血球(非有核)を、Manual Lyse(Stephens Scientific)を用いて溶解し、単核細胞(MNC)を、密度勾配遠心分離(Ficoll−Paque(登録商標)Plus、Pharmacia Biotech、Uppsala、Sweden)(比重1.077)によって、300gで20分間、25℃で分離する。BM MNCを、4mM L−グルタミン9GIBCO BRL、Grand Island、NY)、10% 胎仔ウシ血清(FBS)、(Bio−Whittaker、Walkersville、MD)、10%ウマ血清(GIBCO BRL)、20μg/mlのバンコマイシン(Vancocin(登録商標)HCl、Lilly、Indianapolis、IN)、5μg/mlのゲンタマイシン(Fujisawa USA、Inc.、Deerfield、IL)および5μMヒドロコルチゾン(Solu−Cortef(登録商標)、Upjohn、Kalamazoo、MI)で補給されたイスコブ改変ダルベッコ培地(IMDM)である長期BM培養培地(LTBMC)で2回洗浄し、その後培養する。
細胞貯蔵
培養した後、例えば、トリプシンを用いて細胞を回収し、洗浄して増殖培地を除去する。細胞は、製薬等級電解質溶液、例えば、血清アルブミンを補給したIsolyte(B.Braun Medical Inc.、Bethlehem、PA)に再懸濁する。あるいは、細胞をバイオチャンバー中で洗浄し、次いで、以下に記載される洗浄回収手順を用いて回収する。場合により、回収後に、細胞を濃縮し、生体適合性容器、例えば、250mlのcryocyte凍結容器(Baxter Healthcare Corporation、Irvine、CA)中で、解凍の間の細胞凝集を阻害するために、10%DMSO(Cryoserv、Research Industries、Salt Lake City、UT)、10% HSA(Michigan Department of Public Health、Lansing、MI)および200μg/mlの組換えヒトDNアーゼ(Pulmozyme(登録商標)、Genentech、Inc.、South San Francisco、CA)を含有する凍結保護保存溶液を用いて低温保存してもよい。cryocyte凍結容器を、予冷したカセットに移し、速度制御凍結(Model 1010、Forma Scientific、Marietta、OH)を用いて凍結保存する。凍結された細胞を、液体窒素フリーザー(CMS−86、Forma Scientific)に直ちに移し、液相中で保存する。濃縮培養物の好ましい容積は、約5mL〜約15mlの範囲である。より好ましくは、細胞は7.5mLの容積に濃縮する。
培養後
バイオチャンバーから回収すると、細胞は、細胞の培養を支持するのに必要とされる種々の溶解成分ならびに培養の間に細胞によって産生された溶解成分からなる溶液中に存在する。これらの成分のうち多数が、患者の投与にとって安全でないか、そうでなければ不適当である。したがって、ヒトにおける治療的使用に対して準備のできた細胞を作製するためには、培養溶液を、所望の組成を有する、例えば、細胞治療適用における細胞の保存およびヒト投与に適した、製薬等級の、注射用、電解溶液などの新規溶液で置換することによって溶解成分を細胞から分離することが必要である。
【0084】
多数の分離過程に付随する重大な問題は、例えば、細胞の生存率および生物学的機能の低下および遊離細胞DNAおよび壊死組織片の増加によって示される、これらの過程の間にかけられる機械力によって引き起こされる細胞の損傷である。さらに、分離器具中にすべての細胞を移すことができないこと、ならびに器具からすべての細胞を取り出すことができないことの両方のために細胞の相当な喪失が起こり得る。
【0085】
分離戦略は通常、遠心分離または濾過のいずれかの使用に基づいている。遠心分離の一例として、COBE2991Cell プロセッサ(COBE BCT)があり、濾過分離の一例としてCYTOMATE(登録商標)Cell Washer(Baxter Corp)がある(表7)。両方とも、溶解培養成分を回収細胞から分離(洗浄)するために使用できる市販の最先端の自動化分離装置である。表7に見られるように、これらの装置は、細胞生存率の大幅な低下、細胞総量の減少および大きな、より壊れやすいTRCのCD14+auto+亜集団の優先的な喪失による細胞プロフィールの変化をもたらす。
【0086】
【表7】
当技術分野におけるこれらの制限は、ヒト使用に適した細胞集団を作製するための製造および生産過程の実施における問題である。分離過程にとって、細胞に対する損傷を最小にし、それによって不要な溶解成分が除去され、一方で、高い生存率および生物学的機能を保持し、細胞の喪失が最小である細胞溶液をもたらすことが望ましい。さらに、安全でない最終製品をもたらす微生物汚染を取り込むリスクを最小にすることが重要である。少ない細胞の操作および移動は、このリスクを本質的に低減する。
【0087】
この開示内容に記載される本発明は、機械力に対する細胞の曝露を最小にし、回収され得ない細胞の捕捉を最小にする分離過程を実施して細胞を洗浄することによって、現在の技術分野におけるこれらの制限のすべてを克服する。結果として、依然として不要な溶解培養成分を効率的に分離しながら、細胞に対する損傷(例えば、生存率または機能の低減)、細胞の喪失および細胞プロフィールの変化はすべて最小化される。好ましい実施では、分離は、細胞が培養される同一装置内で実施され、これでは、別の器具を用いる移動および分離による汚染のリスクが加えられることが排除される。本発明の洗浄過程は以下に記載される。
【0088】
洗浄回収
細胞がバイオチャンバーから回収され(removed)(回収され(harvested))、続いて、細胞を培養材料から分離(洗浄)するために別の器具に移動される従来の培養過程とは対照的に、洗浄−回収技術は順序を逆転させ、すべての分離(洗浄)ステップを完了し、次いで、細胞をバイオチャンバーから回収するための独特の手段を提供する。
【0089】
培養材料を細胞から分離するために、所望の組成の新規液体(またはガス)を、好ましくは、バイオチャンバーの中心に、好ましくは、所定の制御された流量で取り入れることができる。この結果、液体が移しかえられ、バイオチャンバーの周辺に沿って、例えば、開口部48を通って排出され、廃棄物バッグ76中に回収され得る。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態では、バイオチャンバー中の液体空間の直径は、約33cmであり、液体空間の高さは、約0.33cmであり、バイオチャンバーにすすぎおよび/または回収液を加える流量は、約0.03〜1.0容積交換(VE)/分であり、好ましくは、0.50〜約0.75VE/分である。これは、約8.4〜約280mL/分に実質的に相当し、好ましくは、140〜約210ml/分である。いくつかの実施形態によれば、流量および流速は、培養細胞の大部分がバイオチャンバー中に保持され、廃棄物バッグへと失われないことおよびこの過程を完了するために過度に長期間が必要とされないことを確実にするのに役立つ。一般に、チャンバー中の細胞の量は、104〜108個細胞/mLの範囲であり得る。TRCについては、量は、上記のバイオチャンバー容量に対して、3千万〜3億個の総細胞に相当する105〜106個細胞/mLの範囲であり得る。もちろん、当業者ならば、細胞量は、バイオチャンバー容量の変化に応じて変化することは理解するであろう。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、培養細胞のバイオチャンバーからの回収では、以下の過程をたどればよく、以下の表3に広く概説されている。バイオチャンバーに入れられる溶液は、バイオチャンバーの中心に加えられる。廃棄培地バッグ76は、液体またはガスがバイオチャンバー中に入れられる各ステップの後に移しかえられた対応する流体を収集し得る。したがって、細胞が培養された後に、バイオチャンバーは、条件培養培地(例えば、IMDM、10% FBS、10%ウマ血清、培養の間に細胞によって分泌された代謝産物)で満たされ、約3千万〜約3億個の細胞を含む。次いで、バイオチャンバー中に0.9%NaCl溶液(「すすぎ溶液」)を約140〜210mL/分で、約1.5〜約2.0リットルの総容積がバイオチャンバーから排出されるまで入れてよい(ステップ1)。
【0092】
新規または異なる液体をバイオチャンバー内に入れるための単回容積交換は、バイオチャンバー内の前の液体を大幅に減少させるが、前の液体のいくらかの量は残る。したがって、新規/異なる液体のさらなる容積交換は、前の液体を大幅に枯渇させる。
【0093】
注目する細胞が、TRCなどの接着細胞である場合には、場合により、すすぎ溶液を回収溶液と取り換えてもよい。回収溶液は、通常、培養表面に接着した細胞の剥離を可能にする酵素溶液である。回収溶液は、例えば、0.9%NaCl中、0.4%トリプシン/EDTAを含み、これは、約140〜210mL/分で、約400〜約550mlの総容積が送達されるまでバイオチャンバー中に入れてもよい(ステップ2)。その後、バイオチャンバーの培養表面に接着した細胞の酵素的剥離が可能となるのに所定の期間が経過する(ステップ3)。
【0094】
0.5%HSAを補給したIsolyte(B Braun)を、約140〜210mL/分で、約2〜約3リットルの総容積が送達されるまで入れて、酵素溶液を移しかえてもよい(ステップ4)。
【0095】
この時点で、不要な溶液(培養培地、酵素溶液)の細胞からの分離は実質的に完了している。
【0096】
集められた容積を減らすために、Isolyte溶液の一部を、開示される流量でバイオチャンバー中に入れられるガス(例えば、空気)を用いて移しかえることが好ましい(ステップ5)。これを用いて、バイオチャンバーの存在している溶積の約200〜250ccを移しかえることができる。
【0097】
次いで、バイオチャンバーを撹拌して、定着していた細胞を溶液にしてよい(ステップ6)。次いで、この細胞懸濁液を、細胞回収バッグ70(またはその他の容器)に流し入れてもよい(ステップ7)。バイオチャンバーにさらなる量の第2の溶液を加えてもよく、任意のその他の残存する細胞をすすぎ出すために第2の撹拌を起こしてもよい(ステップ8と9)。次いで、この最終すすぎ物を回収バッグ70に加えてもよい(ステップ10)。
【0098】
【表8−1】
【表8−2】
培養後洗浄のための従来法(例えば、CYTOMATE(登録商標))を用いて製造されたTRCと比較して、洗浄−回収法を用いて製造されたTRCは、製品あたり、高い、より一貫性のある洗浄後生存率、高い保存後生存率、高い総生存細胞数、高い総生存CD90+細胞数、わずかに低い残存BSAおよび高く、より一貫性のあるCFU−FおよびCFU−GMを示す。洗浄後生存率は、新規洗浄法を用いて一貫性があり、CYTOMATE(登録商標)洗浄法の10%と比較して2%の標準偏差を有する。洗浄−回収を用いて製造されたTRCはまた、高いパーセンテージのCD90+細胞を有し、このことはTRC中に高いパーセンテージの骨髄間質細胞ならびにCD14+細胞があることを意味し、このことは、TRC中に高いパーセンテージの単球/マクロファージ細胞があることを意味する。VEGFR1の存在もまた、洗浄−回収TRCにおいて高められた。新規洗浄法を用いると最終生存総細胞数は高いが、新規洗浄製品は、より多くの生存細胞の分離されていない凝集塊を含み、これは、壊死細胞片による凝集塊−CYTOMATE(登録商標)洗浄製品において、24時間保存した後に時々見られる大きな細胞集塊の供給源とみられるものから分離しなければならない。これらの分離していない凝集塊は、細胞製品保存または送達を干渉しないと思われる。
分離法
上記の洗浄−回収法はまた、溶解成分を含む溶液を、溶液内に含まれる粒子と分離するのに有用である。本発明の洗浄−回収法は、粒子はフローによって移動されず、粒子を含まない流出溶液が回収されるような、水平表面に定着した粒子上の溶液の制御流を生じる予期しない能力に基づく。
【0099】
この方法は、例えば、水平に配向され、空のチャンバーに入れられる溶液が、水平に流れる前に高さを満たすよう十分に小さい高さを有する薄い円柱状のチャンバーを使用する。チャンバーの直径は、分離されるべき粒子の量を収容するよう十分に大きく、通常、チャンバーの高さの数倍である。
【0100】
通常、チャンバーは、約0.4cmの高さを含み、細胞の培養のためのチャンバーの使用にとって望まれる高さに対応するが、約0.2〜約1.0(またはより高い)の範囲であってもよい。チャンバーの直径は、約33cmであり得るが、約10cm〜約50cm(またはより長い)の範囲を含み得る。したがって、いくつかの実施形態に従う、好ましいチャンバー容積は、約280ccであり得るが、このような容積は(もちろん)チャンバー直径および高さの範囲に対応する。
【0101】
分離法の開始前に、粒子を含有する第1の溶液でチャンバー容積を完全に満たす。粒子は、溶液よりも高比重のものであり、チャンバーの底の円形表面上に重力によって定着するか、接着する。チャンバー中の粒子の積み重なり全高は、底表面の全域の粒子の均一な分布によって最小にすることができるが、これはチャンバーの全高のごくわずかである。分離を実施するために、所望の新規組成物の第2の溶液をチャンバーの中心に制御流量で入れ、この溶液がチャンバーの周辺に向かって対照的に流れ、周辺でチャンバーから流れ出、共通の収集点に向かうチャンバー中の第1の溶液を移し変える。形状の結果として、フローの直線速度が中心からの距離に比例して減少し、その結果、直線速度は、チャンバーの周辺を出るところで最も遅い。流量は、直線速度が、定着された粒子がチャンバーから出て移動するのを妨げるほど十分に低いが、中の液体は移動させるよう制御されることが好ましい。本明細書に記載されるバイオチャンバーの比較的低い高さによって、半径方向の栓流が可能となり、移しかえられる溶液を新規溶液と混合するのを最小にすることが好ましい。したがって、これによって、第2の溶液で、第1の溶液の高いパーセンテージがバイオチャンバーから移しかえられることが可能となる。第2の溶液を用いる、1回以上のさらなる容積交換を実施して、チャンバー内の第1の溶液の残存レベルをさらに低下させることができる。
【0102】
粒子をチャンバーから移しかえるのに先立つ代替運転様式として、第1の溶液はまた、チャンバーの中心に、第2の溶液の導入について記載されるものと同一流量内で入れられる大気などのガスによって移しかえることができる。これは、依然として粒子を残しながら、チャンバー内の液体の容積の制御された減少をもたらす。次いで、チャンバーより少量のすすぎ溶液を、担体として入れ、粒子をチャンバーから減少した溶液容積に移動および回収することができる。
【0103】
含有される粒子と適合している種々の溶液−例えば、細胞に対しては、任意の培養培地、任意の生理学的バッファー、任意の製薬等級の注射物質を、交換液体として使用してよい。
【0104】
接着された細胞を剥離および回収するために、細胞培養において従来用いられている任意の酵素溶液を使用してよい。本発明の方法によれば、接着細胞を含む培養培地を、酵素を含有するバッファーと取り換える。細胞を接着細胞がもはや接着しないような時間、酵素に曝露させる。次いで、酵素バッファーを、細胞を中で保存されるか使用される別の液体と取り換える。次いで、チャンバーを撹拌し、細胞を液体に懸濁させ、この液体を生体適合性の容器に集める。例えば、液体が、−80℃での保存のための抗凍結剤または患者の投与のための製薬上許容される担体であり得る。細胞回収のための酵素溶液は、トリプシン(動物由来、微生物由来または組換え)、種々のコラゲナーゼ、代替微生物由来酵素、解離剤、一般プロテアーゼまたはこれらの混合物を含む。いくつかの市販の回収酵素溶液の一覧は以下に列挙されている:
【0105】
【化1】
バイオリアクターシステム
本発明のいくつかの実施形態は、治療的使用に適した培養後細胞組成物を作製するための方法および/または装置を含み、米国特許第6,326,198号および同6,048,721号に開示される方法および装置/システムに関し得る。
【0106】
例えば、米国特許第6,048,721号(’721特許)に開示されるバイオリアクターシステムを用いて、本発明のいくつかの実施形態に従う方法を実施してもよい。本発明の実施形態を実施するためのシステムを説明するこの開示内容の一部が、以下に記載されている。
【0107】
図1に示されるように、バイオリアクターシステムは、細胞の成長および増殖が起こるディスポーザブルの細胞カセット100、ハードウェアインキュベーターユニット200およびコンパニオンハードウェア、増殖過程の間に生物学的および物理学的環境を制御するシステムマネージャー300および細胞の充填、処理および播種ならびに増殖過程の完了時の細胞の最終回収のうち少なくも1つを容易にするプロセッサユニット400を含む。
【0108】
哺乳類幹細胞および造血前駆細胞の成長および増殖を目的として、骨髄を模擬実験することは、通常、中でも、培養されているすべての細胞に液体を灌流して、均一な酸素濃度および栄養分の均一な供給を実施することを必要とする。細胞カセット100の主な機能は、含有されるバイオチャンバーの酸素供給および培地灌流を支持する無菌的な閉鎖環境を提供することである。
【0109】
図5を参照すると、細胞カセットの主な要素は、好ましい円形外周を有する円板状バイオリアクター培養チャンバー10(「バイオチャンバー」)である。バイオチャンバーは、4つの主要な構成要素:最上部20、基部30、細胞床ディスク40およびガス透過性液体不浸透性膜50から形成され得る。
【0110】
図7に図式的に示されるように、バイオチャンバーの最上部20は、例えば、局部的なエネルギーをかけること(または複数のねじなどのその他の固定手段)によって、2つの要素を1つにまとめることによって、基部30に(好ましくは、液体密封方法で)、その半径方向の外周で固定されている。メンブラン50は、最上部と基部の間に固定されており、バイオチャンバーの内容積を上部および下部に分離するようしっかりと伸ばされている。
【0111】
細胞床ディスク40は、バイオチャンバーの内部の下部内に位置する。通常、半径方向の外周に上方へ伸びる環状のへり42を含むディスクの形状を有する。出発細胞を播種した後、細胞増殖が、ディスク40の上面、メンブラン50の下面と、環状のへり42の間に規定される細胞増殖床25中で起こる。環状のへり42の上面Aは、ディスク40が基部に取り付けられた時に、メンブラン50がへり42と協同して細胞増殖床25を密閉するよう、基部30のフランジ30Aの上面と同一平面上にあることが好ましい。
【0112】
細胞床のディスク40は、半径方向の中心増殖培地供給ポート44を有し、これは基部30を通ってバイオチャンバーの外部へと下方に伸びる。あるいは、増殖培地供給ポートは、細胞床のディスク40の上の半径方向の中心点に位置し、高くなった中央ポート28を通ってバイオチャンバーの外部へと上方に伸びてもよい(示されていない)。また、細胞床の半径方向の外側限界近くに、すなわち、へり42のすぐ内側に、少なくとも1つの回収ポート46を有する(また、複数の回収ポートを含んでもよい)。ポート46もまた、基部を通ってバイオチャンバーの外部へと伸びる。あるいは、1以上の回収ポートが、基部の半径方向の外側限界近くに、すなわち、細胞床の周辺のすぐ内側に位置し、基部からバイオチャンバーの外側へと伸びてもよい(示されていない)。最後に、複数の、例えば、24の廃棄培地排出開口部48が、ディスク40の周辺に位置し、ディスクの上に設置される細胞床区画とディクスの下に設置される廃棄区画間の流体連絡を可能にする。開口部48は、へり42にすぐ隣接する、ディスク40の半径方向の外周の周囲に等しく間隔があいているのが好ましい。
【0113】
栄養の豊富な増殖培地は、培地供給ポート44に供給される。増殖培地は、当技術分野で周知の標準増側培地であり得、胎仔ウシ血清、ウマ血清またはヒト血清などの血清添加を有し得る。また、血清不含であってもよい。増殖因子およびグルタミンなどの試薬もまた、必要に応じて加えてもよい。増殖培地は予混バッグ中に供給されてもよいし、その場で改変されてもよい。
【0114】
増殖培地は、培地供給ポートから、細胞床25に入り、ディスク40の半径周辺に向かって半径方向に外側に流れる。そのようにして、栄養を供給し、それか廃棄生成物を移動させ、その中で細胞が培養される。図7中、矢印によって示される、複数の開口部48を通る流れによって、細胞床から廃棄培地として排出される。
【0115】
灌流液体の半径方向の外側へのフローおよび排水開口部48の配置のために、細胞培養床内の細胞は、栄養が均一に灌流される。例えば、複数の円周方向等間隔の排出開口部への灌流液の半径方向のフローは、注入口から、細胞床を越えて細胞床の周辺上の周辺排出位置への均一な流量を促進する。
【0116】
基部30は、例えば、開口部とポートの間のシール(示されていない)を介して、ポート44および46が流体密封方法で伸びることができる開口部32および34を有する。あるいは、開口部は、ポート44が中央ポート28を通って上方に伸び、ポート46が基部から直接伸びる場合には必要でない(示されていない)。基部はまた、廃棄液体がバイオチャンバーから移し変えられるための、ほぼ中央に位置する排出ポート36を含む。排気液は、ディスク40の底面と、基部30の上面の間の空間を通って開口部48から半径方向の内側に、ポート36へと流れ、それによってバイオチャンバーから排出される。ポート36は、同軸であり得るが、培地注入ポート44の開口部32に適合するよう基部30の半径の中心からわずかに補正されてもよい。あるいは、開口部は、ポート44が中央ポート28を通って上方に伸びる場合には必要でない(示されていない)。
【0117】
上記のように、バイオチャンバー最上部20は、基部30に流体密封方法で固定され、その間にメンブラン50がある。上部20から内側に伸びて、細胞床中の灌流液の液圧による歪みに対してメンブラン50を支持するリブの同心のラビリンス経路が含まれてもよい。リブ22は、ディスク40の上面と、メンブラン50の底面の間の正確な間隔、すなわち、細胞増殖床の正確な厚みを維持する。この厚みは、細胞増殖床内の細胞の適切な酸素供給を確実にするために約4mmであり得る。あるいは、最上部20から下方に伸びる一連の周期的支持体およびメンブラン40が積層されている薄い多孔性のディスクを用いて、メンブランの位置を維持し、細胞増殖床の正確な厚みを提供してもよい(示されていない)。
【0118】
リブ22はまた、それを通って大気などの酸素供給液が流れて、酸素を供給できるラビリンス様ガスチャンバーを形成し、酸素は、メンブランを通って細胞床中に散気される。ラビリンスの2つの末端は、酸素供給大気がガス注入ポート24に供給され、ガス排出ポート26を通って排出され得るよう互いに隣接し得る。あるいは、リブの同心ラビリンス経路の代わりに周期的支持体が用いられる場合には、ガス注入ポートおよび排出ポートは、酸素供給大気がガス注入ポートに供給され、ガス排出ポートを通って排出され得るよう、互いに180°反対の最上部の周囲近くに位置し得る(示されていない)。
【0119】
ベル様に高くなった中央ポート28は、最上部20の半径中心に形成され、メンブランに対して環状リブ29ベアリングによって密閉されたチャンバーを形成する。細胞は、中央ポート隔壁28Aを介して細胞増殖チャンバー中に播種できる。このために、非ラテックスニードル隔壁が、細胞滞留領域との直接接続のために、気密バンドを用いてポート機構に固定されていてもよい。あるいは、管ラインが、中央ポートから伸び、これを無菌管溶接機を用いて外部容器と接続してもよい(示されていない)。
【0120】
図8〜10中に示されるバイオチャンバー最上部、基部および細胞床ディスクの詳細な例示を参照すると、バイオチャンバー最上部20は図8Aおよび8Bに示されている。最上部20は、射出成形された、透明な、非反応性プラスチック、例えば、ポリスチレンまたはPETGから形成されることが好ましい。フランジ20Bによって、その半径方向の外周に結合している、ほぼディスク様の主要部分20Aを有する。フランジ20Bは、等間隔の複数のボルト孔20Cを有し、最上部20を基部30に固定するために、それを通ってボルト(示されていない)が通る。あるいは、最上部を基部に固定するのに、EMA(電−磁気)溶接を用いてもよい(示されていない)。
【0121】
高くなった中央ポート28は、ほぼベル型で、中央隔壁28Aを有する。隔壁は、採取される場合には、注射ニードルによって穿孔され得、セルフシールする、ガスおよび液体不浸透性のバリアである。あるいは、管ラインが、中央ポートから伸び、これを無菌管溶接機を用いて外部容器と接続してもよい(示されていない)。等間隔の複数の半径方向の補強リブ20Dは、中央ポート28と、リム20Bに隣接する環状補強リブ20Eの間の主要部分20Aから伸びる。
【0122】
リブ22は、通常、環状方向にあり、図8Aに点線によって示されるようなラビリンス20Fを形成する。ラビリンスは、酸素供給ガスが、細胞増殖床全体の上に規定されるガスチャンバーを通って流れることができるよう回旋状であり得る。ラビリンスの反対の末端は、主要部分20Aの半径方向に外側の末端で互いに隣接することが好ましい。注入ポート24および排出ポート26は、ラビリンスの反対の末端と連絡する。あるいは、リブの同心ラビリンス経路の代わりに、周期的な支持体が用いられている場合には、ガス注入ポートおよび排出ポートは、酸素供給大気がガス注入ポートに供給され、ガス排出ポートを通って排出され得るよう、互いに180°反対側の最上部の周囲近くに位置してもよい(示されていない)。
【0123】
半径方向に最も内側のリブ29は、連続環であり得、これが、メンブラン50と協同して、中央ポート28の内側からラビリンスによって規定されるガスチャンバーを密閉する。半径方向に最も外側の連続リブ20Fは、ラビリンスの最も外側の限界を規定する。リブ20F、22および29のすべての先端は、バイオチャンバーが組み立てられると、リブがメンブラン50に対して密閉するようフランジ20Bの底面と同一平面上にある。あるいは、リブの同心ラビリンス経路の代わりに周期的支持体が用いられている場合は、すべての支持体の先端は、メンブラン50の位置が制御されるよう、フランジ20Bの底面と同一平面上にある(示されていない)。
【0124】
図9Aおよび9Bを参照して、細胞床ディスク40はまた、射出成形された、透明な、非反応性プラスチック、例えば、ポリスチレンまたはPETGから形成されることが好ましい。環状へり42によって半径方向の外周に結合している、ほぼディスク様主要部分40Aを有する。主要部分の上面は、通常、平坦で、遮るものがなく、培養されている細胞コロニーの接着面を形成する。
【0125】
図10Aおよび10Bを参照して、基部30はまた、射出成形された、透明な、非反応性プラスチック、例えば、ポリスチレンまたはPETGから形成されることが好ましい。また、上面30Bおよびボルト孔30Cを有する高くなった周囲フランジ30Aによって結合されているディスク様主要部分30Aを有する。あるいは、ボルト孔を、機構で取り換えて、EMA溶接を実施し、基部を上部と固定する(示されていない)。組み立てられると、ディスク40は、周囲フランジ30Aの範囲内に完全に適合し、表面Aは密接に隣接し、表面30Bと同一平面上にある。周囲のへり30Dは、フランジ30Bの半径方向の外縁から上方に伸び、メンブラン50をバイオチャンバーの組み立て中に保持する。
【0126】
主要部分30Aの上面は、ディスク40の底面を支持する複数の高くなった領域30Eを有し、ディスク40と基部30の間の分離を維持し、それによって、廃棄培地の、中央排出ポート34へのリターンフローの流体管路を規定する。凹部30Fおよび30Gは開口部32および34の各々を取り囲み、開口部を密閉するための弾性要素を収容し得る。あるいは、ポート44が、中央ポート28を通って上方に伸び、ポート46が基部から直接伸びる場合には、開口部は必要ではない(示されていない)。
【0127】
複数の半径方向の支持リブ30Hは、基部の底面から伸び、環状の支持リブ30Iおよび30Jの間を伸びる。環状の補強増補30K、30Lおよび30Mは、開口部32、34および36をそれぞれ取り囲む。
【0128】
バイオチャンバーの組み立てでは、図7に図式的に示されるように、適当なシールが開口部32および34に配置され、ディスク40が基部30内に配置され、ポート44および46のニップルが、それぞれの開口部を通って密閉的に伸びる。あるいは、ポート44が中央ポート28を通って上方に伸び、ポート46が基部から直接伸びる場合には、開口部および関連シールは必要ではない(示されていない)。次いで、メンブラン50をディスク40およびフランジ30A上に置き、リップ30D内に保持しておく。あるいは、メンブラン50を、多孔性ディスクに積層して、さらなる機械的安定性を提供し、その後、ディスク40上に置く(示されていない)。次いで、最上部20を基部上に置き、ボルト孔20Cおよび30Cを一直線上にし、ボルトをボルト孔を通して通し、堅く締めて、バイオチャンバーを一体化する。あるいは、EMA溶接を用いて最上部を基部につなぎ合わせる(示されていない)。この時点で、外側環リブ20Fは、表面30Bの半径方向に最も内側の部分に対してメンブラン50を固定し、バイオチャンバーの内部を密閉する。
【0129】
概略図5および6を参照して、バイオチャンバー10を、細胞カセット100のケーシング内に入れ、組み立て済みのディスポーザブルユニットを形成する。バイオチャンバーは、カセットケーシングのカセット基部60に固定する。例示されるシステムでは、基部60は、支持フランジ62を有し、中央開口部は複数の孔を有する。最上部を、バイオチャンバー10の基部に固定するために用いられるボルトはまた、カセット基部60へのバイオチャンバーの固定のために、これらの孔を通って伸び得る。あるいは、基部へのバイオチャンバーの固定のために、取り付けクリップを基部に、3箇所以上の等間隔の周囲位置に取り付けてもよい(示されていない)。カセット基部は、最上部64によって上部から、トレイ66によって下から閉じ、増殖培地をバイオチャンバーに供給するために、培地供給容器68を、カセット基部60の前面に取り付ける。培地供給容器68に、バイオチャンバーの培地注入ポート44と連結している培地供給ライン68Aを提供する。エアポンプからの圧搾空気を、ライン68Bを介して培地供給容器中、培地の上空に供給し、このようにして、増殖培地を、一定流量の培地をバイオチャンバーの細胞増殖床25に提供するために加圧する。さらなる増殖培地を、培地容器供給管路68Cを介して容器に供給する。
【0130】
細胞回収バッグ70(またはその他の細胞回収収集装置)を、管路72および回収バルブ74を介してバイオチャンバーの回収ポート46に接続してもよい。
【0131】
廃棄液体バッグ76は、バイオチャンバーの下に位置し、細胞カセットのトレイ66上にある。細胞カセットの後部のバルブプレート80に取り付けられたドリップチャンバー装置78を介してバイオチャンバーから廃棄液体を受け取る。ドリップチャンバーは、バイオチャンバー内で正確に制御された低圧を可能にするようサイフォンブレークを含む。ドリップカウンター(示されていない)がドリップチャンバー装置と関連している場合もある。廃棄液体の液滴を計数して流量を検出する。
【0132】
廃棄液体は、廃棄バルブ82を介してドリップチャンバー装置に達する。バイオチャンバーの中央ポート28でのガス圧を用いて、中央ポートバルブ84およびライン84Aを介してドリップチャンバーを通るフローを調節する。
【0133】
エアポンプ供給ライン68B、バイオチャンバーに新鮮な酸素供給ガスを供給し、バイオチャンバーから使用済み酸素供給ガスを排出するためのガス出入りポート88および90、培地容器送達ライン68Aと接続された培地供給バルブ92、HBSSバルブ94およびトリプシンバルブ96を介して培地供給容器に圧搾空気を定圧で供給するためのエアポンプ供給ポート86もバルブプレートに取り付けられていてもよい。あるいは、バルブ94およびバルブ96は、広範な試薬、例えば、HBSSおよびトリプシンを添加するための単一のバルブと取り換えてもよい(示されていない)。
【0134】
各カセットはまた、「キー」含有非揮発性記憶装置および時計を含み得る。使用前に、システムマネージャー300を介して、追跡データ、プロトコールコマンドおよび実時間を用いてカセットのキーを初期化する。キーは、細胞製造過程の間にシステムエレクトロニクスによって用いられ、関連データを記録し、ならびに、プロトコールコマンドにアクセスする。
【0135】
使用においては、保護包装中の、無菌単回使用ディスポーザブル細胞カセット100が供給される。培地供給リザーバー68、培地フロー制御(示されていない)、バイオチャンバー10、廃棄リザーバー76、回収リザーバー70、キーおよび成分を相互に連結させ、支持するための必要な配管、弁調節および包装を含む。あるいは、回収リザーバーは、分離成分として提供され、次いで、無菌管溶接機を用いて回収時にカセットに接続されてもよい。
【0136】
運転では、まず、システムマネージャーによってキーが初期化される。キーが初期化されると、プロセッサ400に移される。プロセッサは、多軸ジャイレーター(「ウォブレーター(wobbulator)」)410を含む。ウォブレーターは、上にカセットが固定され得る支持テーブル412を含む。ウォブレーターは、支持テーブル412を、2つの直行水平軸の周囲を旋回させるための機械的結合414を有する。
【0137】
細胞カセットが、プロセッサ400中に位置し、支持テーブル410上に固定され、キーが播種が必要であることを示す場合には、プロセッサは播種操作の自動シークエンスを提供する。例えば、播種シークエンスは、以下のステップからなり得る。第1に、ウォブレーターテーブル412を水平定位置にもってくる。次いで、細胞カセット100を、リザーバー68からの培地の重力送りを用いて、増殖培地で必要とされる容積まで準備刺激する。あるいは、リザーバーに圧力をかけて培地の移動を促進してもよい。この時間の間に、回収バルブ74を閉じ、廃棄バルブ82をあけ、その結果、バイオチャンバー25中の培地が開口部48を通って、回収ポート46を通らずに流れ得る。次いで、細胞カセットを傾斜させ、細胞の分配において用いられる気泡を作製する。次いで、バイオチャンバーに細胞を播種する。これは、中央ポート隔壁およびメンブランを貫通する皮下注射器を介して行ってもよい。あるいは、無菌管溶接機を用いて、細胞を含む容器を、中央ポートから伸びる管ラインに接続し、次いで、重力または圧力を用いて細胞を播種してもよい(示されていない)。次いで、ウォブレーターは、細胞をディスク40の上面に分配するための所定のプログラムに従って、細胞カセットを振動させる(すなわち、中の内容物を撹拌する)。この時点で、気泡が、バイオチャンバー内の細胞の分配にさえも役立つ。次いで、残存する空気を、中央ポートを通してパージし、カセットをプロセッサから取り外す。次いで、カセットは、インキュベーションの準備が整う。
【0138】
バイオチャンバー10は、増殖培地で実質的に満たされる(好ましくは、完全に満たされる)ことができ、これが播種の際に細胞によって置き換えられ得る。例えば、バイオチャンバーは、増殖培地で約80%の総容積まで満たされ得る。細胞は、播種の際に、同一増殖培地または異なる液体/培地に懸濁され得る。播種の際に、バイオチャンバーは完全未満(例えば、90%総容積)に満たされ、その結果、細胞が、撹拌の際にバイオチャンバーの内部中で均一に分配され得る。播種後、バイオチャンバーは実質的に満たされる(好ましくは、完全に満たされる)ことが好ましい。
【0139】
次いで、カセットを、細胞が重力によってバイオチャンバーの底面上に定着し、そこで細胞が培養の間中、とどまるのを可能にするようバイオチャンバーが水平位置に維持されているインキュベーター200に入れる。インキュベーターとは、細胞生成のための細胞カセットを受け入れることができる機器である。複数のカセットが取り付けられているラック210の形をとり得る。カセットと一緒になって、カセット内の培養環境の管理を提供する。また、システムマネージャー300と、およびインキュベーション開始時間を保存するためのキーおよびキーの日付と接続され、インキュベーションデータは、インキュベーションシークエンスの間、キーに連続的に提供される。キーはまた、異常な事象、例えば、アラームまたは電源異常、用いられる培地の量およびインキュベーター同定に関する情報を受け取る。インキュベーターは、増殖チャンバーを通る培地のフロー、増殖培地リザーバー68の温度およびバイオチャンバー中のガスチャンバーに送達されるガスの濃度および流量を、キーに保存された制御設定に基づいて管理する。インキュベーターはまた、種々の安全/警報パラメータをモニターして、細胞製造法が予想通りに進むことを確実にする。これは、システムマネージャーコンピューターによって、または独立したインキュベーターコンピュータの使用によって、いくつかのインキュベーターに対して行うことができる。
【0140】
培養の完了後、カセットをインキュベーターから取り外し、プロセッサ中に戻し、そこで、記載される回収洗浄過程を実施する。
【0141】
本発明は、以下の限定されない実施例において、さらに例示される。
【実施例】
【0142】
実施例1 組織修復細胞(TRC)培養および洗浄技術プロトコール
TRC培養
FICOLL(登録商標)によって正常ドナーの血液から単離された、新鮮な骨髄単核細胞(BM MNC)をPoietics Inc.(Gaithersburg、MD)から購入した。あるいは吸引した骨髄(BM)を、患者から臨床試料として受け取り、FICOLL(登録商標)によって分離して単核細胞調製物を作製した。細胞濃度は、自動化細胞カウンターを用いて評価し、上記のLundellらの方法によってBM MNCを培養した。播種に先立って、培養チャンバーを、IMDM、10%胎仔ウシ血清、10%ウマ血清、5μM ヒドロコルチゾンおよび4mM L−グルタミンからなる培養培地を用いて準備刺激した。12日間の培養過程の間、培地を培養チャンバーに制御勾配灌流スケジュールで通した。培養は、37℃で、5%CO2および20%O2を用いて維持した。
CYTOMATE(登録商標)洗浄方法
CYTOMATE(登録商標)は、白血球製品を洗浄および濃縮するために設計された、十分に自動化されたシステムである。電気−機械機器および処理されるべき細胞の各バッチに洗浄回路を提供する使い捨ての予め滅菌されたディスポーザブルセットを含む。細胞による過剰のフィルターローディングを防ぐための接線流作用を提供するスピニングメンブラン技術を取り入れている。
【0143】
セットアップ
1.洗浄回路セットをCYTOMATE(登録商標)機器に取り付ける。
【0144】
2.バッグを接続する:
−培養過程から回収された細胞(800〜1000mLの容積の培養過程液、例えば、培養培地、回収酵素溶液中のTRC)のバッグ。
【0145】
−バッファー溶液(2000〜3000mL、0.5% HSAを補給したIsolyte)。
【0146】
−洗浄された細胞のための収集バッグ(120mL〜180mLの収集容積)。
【0147】
−上清バッグ(細胞を含んで収集されていない、2600〜3900mLの廃棄液体)。
【0148】
CYTOMATE(登録商標)手順:
1)バッファー溶液を用いて洗浄回路を準備刺激し、再循環を開始する
2)細胞を回収バッグから、洗浄回路に移し、洗浄回路中のフィルターを通して液体を除去しながら、洗浄回路を通して細胞を再循環することによって液体容積を減少させる(フィルターは、接線流効果を提供し、フィルター目詰まりを防ぐために回転している)。除去された液体は、上清バッグ中に集められる。
【0149】
3)バッファーを使用して、残存する細胞を回収バッグから洗浄回路にすすぎ入れる。
【0150】
4)細胞を洗浄回路を通して再循環させ、同時に、スピンニングフィルターを通して液体を上清バッグ中に除去し、容積を維持するために必要に応じてバッファー溶液を加えることによって細胞を洗浄する。
【0151】
5)戦場された細胞を収集バッグ中に移す。
【0152】
6)バッファーを使用して、残存する細胞を洗浄回路から収集バッグ中にすすぎ入れる。
【0153】
洗浄回収方法
洗浄−回収過程は、培養チャンバーからの培養培地を、生体適合性すすぎ溶液で移しかえることによって始まる(ステップ1、表8、上記)。次いで、すすぎ溶液(生理食塩水またはその他の等張溶液)を、当節の大部分でブタトリプシンが用いられる細胞回収酵素溶液と取り換える(ステップ2、表8)。その他の非動物由来回収試薬、例えば、TRYPLE(商標)(Invitrogen、Carlsbad、CA)およびTRYPZEAN(商標)(Sigma、St. Loius、MO)も上手く用いられている。酵素が細胞を互いに、また培養表面から分離するよう働くので、培養チャンバーを、一定期間(5〜60分、好ましくは、15分間、ブタトリプシンとともに)インキュベートさせておく(ステップ3、表8)。酵素インキュベーションが完了した時点で、第2の、通常、注射剤等級の、すすぎ溶液(IsolyteまたはNormasol)が、酵素溶液に取って代わる(ステップ4、表8)。この時点で、チャンバーは、剥離された細胞を含み、剥離された細胞は細胞表面に定着されたままであり、注射剤等級の溶液に懸濁する。最終回収細胞濃度を増大させ、最終容積を減少させるために、このすすぎ溶液の部分を空気に移し変える(ステップ5、表8)。培養チャンバーにおいて最終液体容積(100〜350mL)が達成されると、チャンバーを撹拌して定着している細胞を溶液にもたらす(ステップ6、表8)。この細胞懸濁液を細胞収集容器中に流し入れる(ステップ7、表8)。必要に応じて、さらなる量の注射剤等級の溶液を細胞培養チャンバーに加えてもよく、第2の撹拌を起こして、残存する細胞をすすぎ出してもよい(ステップ8と9、表8)。次いで、この最終すすぎ物を細胞収集容器に加える(ステップ10、表8)。
Cytomate対洗浄回収の比較
回収当日、TRCを2つの培養物に分けた。第1の培養物を、標準CYTOMATE(登録商標)法によって回収、濃縮した。第1の培養物中のTRCをトリプシン処理(0.9%塩化ナトリウム中、0.025%トリプシン)によって回収し、CYTMATE(登録商標)(Baxter International、Inc.)細胞プロセッサを用い、製造業者の使用説明書によって洗浄して培養材料を枯渇させた。細胞産物を、0.5% HSAを補給した製薬等級電解質溶液で洗浄し、150mLの容積にし、そのまま用いるか、または生体適合性バッグ中15mLまたは5mLの容積に濃縮した。TRCの第2の培養物は、組み合わせた洗浄−回収ARSプロセッサシークエンスのドラフトおよびさらなる希釈ステップを含む、残存物をさらに低減するよう設計された改変濃縮法を用いて回収した。
【0154】
濃縮TRC懸濁液を作製するために、各洗浄から収集された細胞を20mlの容積に遠心分離し、Cryocyteバッグなどのより小さいバッグに移した。最終容器に入れると、第2の遠心分離ステップを実施して、4.7〜20mlの間の最終容積に濃縮し、6ml±1.3mlであるが、最終適用に応じて最大20mlの注射剤等級の溶液中、3千5百万〜3億個細胞の範囲の細胞の用量を作製する。
【0155】
実施例2 洗浄回収は、TRC品質を、CYTOMATE(登録商標)洗浄を上回って高めた。
【0156】
洗浄回収を用いて単離したTRCは、より高い細胞生存率、より高い細胞収率、より少ない残存BSA、より高い前駆細胞、幹細胞、免疫細胞および内皮細胞マーカーの総数、コロニーを形成するための高められた能力、ニードル通過後に匹敵する生存率、より高いレベルの抗炎症性サイトカインおよびより高いレベルのインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)を有していた。新規洗浄回収法の使用によるTRC集団におけるこれらの改良点により、この集団が、当技術分野の方法の現状と比較した場合に、より有効な組織修復治療薬として使用されることが可能となる。
材料および方法
細胞カウント/生存率
細胞カウントおよび生存率は、ヌクレオカウンターまたはトリパンブルー排除によって測定した。ヌクレオカウンターを用いる細胞計数には製造業者のプロトコールを用いた。手短には、細胞懸濁液を、100,000〜10,000,000個細胞/mlの間に希釈し、ヌクレオカセット(nucleocassett)によって細胞懸濁液を吸引した。ヌクレオカセットを、細胞計数および生存率を含む自動化ヨウ化プロピジウム染色のためにヌクレオカウンター中に入れる。ヌクレオカウンターデータが利用可能でない場合は、トリパンブルー排除および血球計数器(手動計数)を用いて、細胞数および生存率を数え上げた。27のサンプル分析にわたって、ヌクレオカウンター細胞計数は、トリパンブルー計数の13%内であり、生存率は4%内であった。
【0157】
これらの実験の間、培養後処理相での産物サンプリングは、細胞のアッセイおよびその他の使用に応じて変わった。データから最も正確な総生存細胞数を得るために以下の戦略を用いた。採取した各サンプルの総細胞数を算出し、次いで、その数に、次の処理ステップの生存率を乗じ、次いで、そのステップでの生存細胞数に加える。例えば、10×106個総細胞数のサンプルを洗浄した産物から取り出し、濃縮後の細胞の生存率が80%であり、濃縮産物の総生存数に8×106個の生存細胞を加えた場合には、どれだけあったかを表すには、非標準サンプリングは存在しなかった。サンプリングされていない合計を算出すると、各洗浄された産物総細胞数から29mLの真の製造サンプル容積を差し引いた。
残存レベル
最終TRC濃縮過程から得られた上清を用いて、残存BSA(ELISAによって)およびトリプシン活性(Quanticleaveアッセイによって)のレベルを測定した。BSA ELISAアッセイを用いて、培養培地に由来する残存BSAのレベルを測定し、比較した。
【0158】
濃縮プロトコール
濃縮懸濁液を作製するために、収集された細胞を遠心分離して20mlの容積とし、Cryocyteバッグなどのより小さいバッグに移した。最終容器に入れると、第2の遠心分離ステップを実施して、4.7〜20mlの間の最終容積に濃縮し、6ml±1.3mlであるが、最終適用に応じて最大20mlの注射剤等級の溶液中、3千5百万〜3億個細胞の範囲の細胞の用量を作製する。濃縮培養物にとって好ましい容積は、6ml±1.3mlである。TRCを貯蔵庫から取り出す場合には、培養物を37℃の循環水浴中で解凍した。
【0159】
細胞、生存率およびCD90+%
細胞生存率およびCD90+細胞%を、フローサイトメトリーによって測定した。細胞を洗浄し、1%ウシ血清アルブミンを含有する1×ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(PBS;Gibco)に再懸濁した。0.5ml中、106個の細胞を含有する試験管を、氷上で、蛍光がコンジュゲートしているモノクローナル抗体の種々の組み合わせを用いて染色した。生存率を7−アミノ−アクチノマイシンD(7AAD)(Beckman Coulter)によって測定した。7AADは、膜が損なわれた細胞にのみ入り、DNAと結合する。細胞は、PC5がコンジュゲートしている抗CD90(Thy1)抗体およびFITCがコンジュゲートしている抗CD14(Beckman Coulter)を用いて染色した。15分後、細胞を洗浄し、Epics XL−MCL(Beckman Coulter)フローサイトメーターでの分析のために0.5mlのPBS/BSAに再懸濁した。
【0160】
フローサイトメトリーによる細胞内サイトカイン分析
洗浄回収法を用いて製造されたTRCによるサイトカイン発現を、2色細胞内フローサイトメトリー分析によって定量的に調べた。手短には、TRCを、ブレフェルジンAの存在下で、細菌リポ多糖(LPS)とともに、または伴わずに一晩インキュベートして、サイトカイン分泌を妨げながら、ゴルジ体における細胞内サイトカイン蓄積を増強した。TRCを、FITCまたはCy5PEがコンジュゲートしているモノクローナル抗体(mAbs)(抗CD14、CD66b、CD90または対照mAb)とともにインキュベートすることによって細胞表面マーカーについて染色した。リンパ球亜集団を、前方光散乱(FSC)に基づいた細胞の大きさおよび側方(90°)光散乱(SSC)に基づいた粒度でゲート開閉することによって規定した。実質的には、続いて、細胞をパラホルムアルデヒドを用いて固定し、サポニン中で透過処理し、その後、表4の左の列に示されるように、サイトカイン特異的PEがコンジュゲートしているモノクローナル抗体(IL−6、IL−10、IL−12または無関係な対照)を用いて染色した。2色分析のデータは、Becton Dickinson FC500フローサイトメーターで得た。
【0161】
CFU頻度分析
コロニー形成単位−線維芽細胞(CFU−F)アッセイのために、1mlのLTBMC中の細胞を、35mm組織培養処理ディッシュにプレーティングした。TRCについては、ディッシュあたり500個および1,000個の細胞をプレーティングした。培養物を、大気中5%CO2の十分に加湿した雰囲気中、37℃で8日間維持した。次いで、CFU−Fコロニーを、Wright−Giemsaを用いて染色し、20個を超える細胞を含むコロニーをCFU−Fとして数えた。
【0162】
コロニー形成単位−顆粒球/マクロファージ(CFU−GM)アッセイのために、細胞を、0.9%メチルセルロース(Sigma)、30% FBS、1% BSA、100μMの2−メルカプトエタノール(Sigma)、2mM L−グルタミン(Gibco)、5ng/mlのPIXY321、5ng/mlのG−CSF(Amgen)および10U/mlのEpoを含有するコロニーアッセイ培地に播種した。TRCを、1,500個細胞および3,000個細胞/mlでプレーティングした。培養物は14日間維持し、50個を越える細胞のコロニーを、CFU−GMとして数えた。
【0163】
ニードルを通して細胞送達
TRC細胞数、および生存率に対するニードル送達の効果を試験するために、サンプルをWashHarvest製品のうち5つおよびCYTOMATE(登録商標)洗浄製品から3つ実施した。これらの送達実験は、保存された細胞の、25ゲージニードルを通した後に生存率または濃度を喪失することなく患者に送達される能力を試験した。
【0164】
4℃で24時間保存した後、TRCを含有するcryocyteバッグを冷蔵庫から取り出し、サンプリングのためにマッサージして再懸濁し、TRCを均質化した。2つの0.5mLのサンプルを、3mLのシリンジによって収集し、「TRC」と表示した試験管に入れた。その後、2つのさらなる3mLシリンジを、三方活栓バルブ上に置き、さらなるシリンジあたり0.5mlを採取した。次いで、25ゲージニードル(1 1/2インチ、BD)をこれらのさらなる2つのシリンジ(3mL)にねじ込み、「TRC、25ゲージ、1 1/2インチニードル」と指定した。その後、残りのTRCサンプルを測定し、容積を記録した。これらの3mLシリンジ上に、25ゲージニードル(1 1/2インチ)を、2つのシリンジに加え、25ゲージニードル(3インチ、脊髄ニードル)をその他の2つのシリンジに加えた。ニードルを伴う3mLシリンジ内の全0.5mlニードルサンプルを、シリンジポンプ(Harvard Apparatus、Holliston MA)を、2.5mL/分すなわち12秒で0.5mLの速度で用いて、ポリスチレン丸底試験管中に分配した。ニードルを通した細胞送達後、すべてのサンプルを、ヌクレオカウンターを用いて細胞数について評価した。
【0165】
IDO発現のウエスタン分析
TRCは、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)と表される誘導性免疫調節性酵素を発現し、これは、炎症反応のダウンレギュレーションと関連している。組織修復細胞(TRC)は、本発明に記載される新規洗浄−回収法を用いて導いた。回収後、TRCを培地単独または1000ユニット/mlの組換えヒトインターフェロン−γ(EFN−γ)を含有する培地で24時間インキュベートした。全細胞溶解物から得たタンパク質抽出物を、10%SDSポリアクリルアミドゲルで分離し、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)メンブランにトランスファーし、マウス抗ヒトIDO特異的モノクローナル抗体を用いて探索した。その後の化学発光による可視化のために、ヤギ抗マウスホースラディッシュペルオキシダーゼがコンジュゲートしている第2段階抗体を用いた。この実験によって、IFN−γでの誘導後のTRCによるIDOタンパク質の発現に特異的に対応する特徴的な44キロダルトン(kd)のバンドが実証される。
【0166】
結果
総生存細胞数
図11は、洗浄回収が、29mLの製造サンプルを差し引いた後に、CYTOMATE(登録商標)洗浄が用いられた場合よりも多数の洗浄後総生存細胞を繰り返し産生したことを示す。図11に要約されたデータは、同一ドナーに由来する、CYTOMATE(登録商標)洗浄をハイブリダイゼーション洗浄と比較した9回の製造に由来するものであった。これらの製造のうち9種すべてにおいて、Aastrom回収試薬(ブタトリプシン)を用いた。CYTOMATE(登録商標)洗浄の平均洗浄後総生存細胞収率は、66.5×106±36.8×106個生存細胞であるのに対し、ハイブリダイゼーション洗浄の平均洗浄後総生存細胞収率は、144×106±50.9×106個生存細胞であった。総収率における変動は、ドナー依存性であると思われる。
【0167】
生存率
図11はまた、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄が用いられる場合よりも高い洗浄後細胞生存率を繰り返しもたらしたことを示す。生存率パーセントは、上記の同一の9種のドナーから単離された細胞で実施された。洗浄−回収産物は、より一貫した生存率を示し、標準偏差は、10%のCYTOMATE(登録商標)洗浄生存率標準偏差と比較して、2%であった。
【0168】
24時間保存後の数および生存率
図11はまた、洗浄回収は、4℃で24時間保存した後であっても、CYTOMATE(登録商標)洗浄が用いられる場合よりも高い細胞生存率を繰り返しもたらしたことを示す。4℃で24時間保存した後の生存率パーセントは、5人のドナーから得た細胞から測定した。
【0169】
洗浄後BSA濃度
図11はまた、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄が用いられる場合よりも低い、TRCの培養から使い残された残存BSAの濃度をもたらしたことを示す。低いBSAレベルは、ヒトに投与するのに適切な医薬品を作製するのに必要である。
【0170】
フローによる細胞、生存率およびCD90+%
図11は、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄が非濃縮細胞において用いられる場合よりも高い、CD90+TRCのパーセンテージをもたらしたこと示す。CD90+細胞は、幹細胞/前駆細胞特性を有し、種々の組織種を修復するのに有用である骨髄間質細胞を表す。
【0171】
図12は、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄が用いられる場合よりも高い、生存CD90+TRCの総数を繰り返しもたらしたこと示す。洗浄−回収最終製品における平均総生存CD90+細胞は、42.4×106±16.5×106個であった。CYTOMATE(登録商標)洗浄最終製品における平均総生存CD90+細胞は、19.1×106±10.8×106個であった。
【0172】
CD14+Auto+%
図12および13は、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄が用いられる場合よりも高い、CD14+Auto+TRCのパーセンテージおよび総数を繰り返しもたらしたことを示す。これらの6人のドナーにわたる新規洗浄濃縮産物における平均総生存CD14+Auto+細胞は、34.8×106±9.08×106個である。これらの6人のドナーにわたるCYTOMATE(登録商標)洗浄濃縮産物における平均総生存CD14+Auto+細胞は、16.5×106±5.37×106個であった。
【0173】
VEGFR1+%
図12および13は、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄が濃縮細胞において用いられる場合よりも高い、VEGFRl+TRCの総数およびパーセンテージを繰り返しもたらしたことを示し、これは、より多くの内皮細胞が最終混合物中にあることを実証する。これが測定された5回の実験の各々において、CYTOMATE(登録商標)対照と比較して、洗浄回収産物において、より多数の生存VEGF−R1+細胞が見られた。これらの5人のドナーにわたる、CYTOMATE(登録商標)洗浄濃縮産物における平均総生存VEGF R1+細胞は、16.5×106±5.37×106個であった。
【0174】
CFU−F頻度
図12および14は、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄と比較して、匹敵するCFU−F頻度をもたらしたことを示す。CFU−F頻度比の平均は、1.03であった。
図13および15は、洗浄回収は、用量あたり、CYTOMATE(登録商標)洗浄よりも多数のCFU−Fをもたらしたことを示す。用量あたりの総CFU−Fは、細胞あたりのCFU−Fに、洗浄後総生存細胞数を乗じることによって算出した。これらの8実験にわたる新規洗浄法の用量あたりの平均CFU−Fは、7.26×106±5.22×106個である。これらの8実験にわたるCYTOMATE(登録商標)洗浄法の用量あたりの平均CFU−Fは、3.01×106±1.37×106個である。
【0175】
CFU−GM頻度
図12および16は、ほとんどどの場合においても、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄と同等または高い、用量あたりのCFU−GMの頻度をもたらしたことを示す。CFU−GM頻度比の平均は、1.37である。
【0176】
図13および17は、ほとんどどの場合においても、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄よりも多いCFU−GMの総数をもたらしたことを示す。用量あたりの総CFU−GMは、細胞あたりのCFU−GMの頻度に、洗浄後総生存細胞数を乗じることによって算出した。これらの6実験にわたる新規洗浄法の用量あたりの平均CFU−GMは、0.42×106±0.19×106個であった。これらの6実験にわたるCYTOMATE(登録商標)洗浄法の用量あたりの平均CFU−GMは、0.17×106±0.11×106個であった。
【0177】
ニードル送達
図17は、洗浄回収産物の細胞生存率が、25および30ゲージニードルを通した送達後に実質的な変化を示さないことを示す。図18は、CYTOMATE(登録商標)洗浄された産物から得た同様のデータを示す。
【0178】
CFU−Fは、実験QTRC107000021から得たニードル送達後細胞で試験した。図19は、3種の条件の、100個の細胞あたりのCFU−Fを示す。洗浄回収から得たTRCは、CYTOMATE(登録商標)洗浄から得たTRCよりもわずかに高い生存率を有していた。
【0179】
このデータは、方法間の、処理の最後に、実質的な細胞生存率を失うことなく、小ゲージニードルによる移行後に細胞を送達する能力に関する比較可能性を実証する。
【0180】
サイトカイン分泌
CYTOMATE(登録商標)洗浄から得たTRCによるサイトカイン分泌プロフィールは、洗浄−回収について評価されたほとんどすべてのサイトカインに関して細胞ベースで匹敵する。しかし、単位用量ベース(すべての細胞が方法からきている)では、用量あたりの総サイトカイン分泌は、概して、洗浄−回収由来で高く(図20)、したがって、濃縮された組成物であるほど、細胞集団は、先の集団よりもかなり機能的である。
【0181】
表9.TRCおよびTRC亜集団の、細胞内サイトカイン発現についてのフローサイトメトリー分析
【0182】
【表9】
IL−6、IL−10およびIL−12を産生する細胞の頻度を評価するための細胞内フローサイトメトリー分析を、洗浄−回収を用いて産生されたTRCで実施した。N=2実験の、サイトカイン陽性細胞の平均パーセンテージが、表9に示されている。これらの観察結果は、有意な頻度のTRCが、IL−6またはIL−10のいずれかを産生することを実証する。対照的に、TRCまたはTRC亜集団による細胞内IL−12産生は、無関係な対照抗体について観察された染色のバックグラウンドレベルを上回って検出され得なかった。IL−12は、細菌リポ多糖(LPS)などの炎症性メディエーターを用いた刺激に関わらず、バックグラウンドレベルを上回って検出され得なかった。全体的に、これらのデータは、TRC上清のLuminexおよびELISA分析によって規定されるサイトカイン分泌プロフィールと高度に一致し(図20)、これは、検出可能なIL−12、中心的な炎症促進性メディエーターの完全な不在下での複数の血管新生性および免疫調節性サイトカインの高分泌を実証する。
【0183】
IDO発現
インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼすなわちIDOは、免疫調節性酵素である。TRCは、IFNγに対する曝露に応じて高レベルのIDO mRNAを産生する(図24)。TRCはまた、IFNγに対する曝露に応じて多量のIDOタンパク質を産生する(図25)。
【0184】
PDL1発現
TRCは、炎症誘導に応じて高レベルのPD−L1を発現する(図31)。TRCを、1000単位/mlのインターフェロン−γを伴わず(非誘導)またはインターフェロン−γとともに(誘導)24時間インキュベートし、その後、フローサイトメトリー分析のために、蛍光色素がコンジュゲートしているアイソタイプ対照、または抗PD−L1モノクローナル抗体を用いて染色した。これらの観察結果は、TRCがPD−L1(>75%発現)、免疫および炎症反応のダウンレギュレーションに関わる重要な阻害性受容体をアップレギュレートすることを実証する。
【0185】
概要
洗浄回収は、各段階(洗浄後、濃縮後および24時間保存後)で、CYTOMATE(登録商標)洗浄と比較した場合に、より健全な(p<0.05)、ならびに残存血清タンパク質がより少ない(p<0.05)細胞産物を作製する(図11)。CD90+、CD14+auto+、またはVegfRl+細胞のパーセンテージには、またはFもしくはGMコロニー形成能には統計的な差異はない。したがって、細胞産物は、プロフィールにおいては匹敵するが、かなりより健全であり純粋である。
【0186】
【表10−1】
【表10−2】
最終製品(方法から出た最終用量)において総細胞を調べると、統計的に多い数の総生存細胞、総生存CD90+およびCD14+auto+(免疫調節性サイトカインを分泌する2種の細胞)がある。
【0187】
【表11】
洗浄回収は、細胞培養物から高い生存率および低い残存レベルを有するTRCを製造した。これによって、各培養物から多数のTRCが回収されることが可能となる。
【0188】
さらに、洗浄回収は、CYTOMATE(登録商標)洗浄を用いて単離したTRCと比較した場合に、CD90+、CD14+Auto+およびVEGFRl+細胞のパーセンテージが増大したTRCを製造した。また、洗浄回収は、細胞用量あたり、より多くの抗炎症性サイトカイン、例えば、IL−1ra、IL−10およびIL−6ならびにIDOおよびPDL1のような抗炎症性効果を有するタンパク質を分泌するTRCを製造した。さらに、TRCは、IL−12のような極めて重要な炎症促進性サイトカインを発現しない。このことは、洗浄回収法によって単離されたTRCは、より大きなパーセンテージの骨髄間質細胞、内皮細胞および単球/マクロファージ細胞のためにより大きな組織修復の可能性および抗炎症の可能性を有することを示す。
【0189】
また、洗浄回収技術は、CYTOMATE(登録商標)洗浄技術よりも高いCFUを一貫してもたらした。このことは、洗浄回収技術によって製造されたTRCは、CYTOMATE(登録商標)洗浄技術によって製造されたTRCよりも多い数の前駆細胞および幹細胞を有することを示す。
【0190】
さらに、洗浄回収は、治療的投与にとって必要であり得る、25または30ゲージニードルを通るときに、実質的な生存率を低下させないTRCを製造する。洗浄回収TRCは、CYTOMATE(登録商標)洗浄を用いて製造されたTRCとほぼ同程度か、そうでなければ、わずかに良好に機能した。
【0191】
実施例3 CD90+細胞数の増大に基づく、洗浄−回収から得たTRCの骨修復の可能性の増強
増殖していない骨髄単核細胞(BM MNC)およびTRCの骨形成能(bone−forming potential)または骨形成能(osteogenic potential)を、in vitro骨分化アッセイを用いて評価した。手短には、洗浄−回収法を用いて単離したTRCを、対照(OS−)培地(10%FBSを含むDMEM)または骨形成性(OS+)培地(10%FBS、100nMデキサメタゾン、10mM β−グリセロリン酸および0.05mM L−アスコルビン酸−2−リン酸を含有するDMEM)のいずれかを含有する35mmディッシュ中で、10,000〜20,000細胞/cm2の濃度で最大3週間培養した。骨形成性分化は、細胞形態、アルカリホスファターゼ(AP)の発現およびカルシウム沈着による石灰化マトリックスの形成によって評価した。分化した培養物中に存在するAP活性を、AttoPhosキット(Promega)、AttoPhos基質のリン酸型のBBTへの酵素によって触媒される変換および435nmおよび555nmでの吸光度の測定を用いて定量した。酵素活性は、AP活性のユニットとして表される。カルシウムは、カルシウム定量キット(Pointe Scientific Inc.、Canton、MI)に提供される手順に従って定量した。手短には、骨形成性培養物を0.5N HClを用いて溶解し、溶解物を微小遠心管中に集めた。渦攪拌処理した後、各サンプルを、500rpm、4℃で4時間振盪した。微量遠心機で1,000×gで遠心分離した後、上清を集め、570nmでの吸光度を測定することによってカルシウムの存在についてアッセイした。
別の実験では、Epics Altra(Beckman Coulter)を用いてCD90+細胞をTRC産物から選別し、上記の骨形成能のためにプレーティングした。各細胞集団の3実験から得られた平均カルシウム沈着±SEMが示されている。
【0192】
CD90細胞、CD15細胞の頻度およびin vitro骨形成能を、CYTOMATE(登録商標)、本発明の洗浄−回収手順から得られたTRCについて、および同一骨髄ドナーから得られた間葉系幹細胞(MSC)について測定した。MSCは、10% FBSを含むDMEM培地で培養した。重要なことに、MSC培養は、培養の開始近くの、非接着性補助細胞の除去およびその後の培養およびプラスチック接着性集団の継代を含む。次いで、MSCおよびTRCを、骨形成性誘導培地で最大3週間(各実験内で常に同じ日数)培養する。カルシウム沈着およびアルカリホスファターゼ活性を定量した。この研究では、本発明者らは、TRCと比較した初代および第1継代MSCの骨形成能を評価した。
【0193】
CYTOMATE(登録商標)TRCを用いたこれまでの研究は、1)TRCの骨形成能はBM MNCよりもかなり高い、2)TRCの骨形成能は、細胞のCD90+画分に存在するということを示した(表12)。
【0194】
表12.増殖していないおよび増殖した骨髄における骨形成能
【0195】
【表12】
次いで、CYTOMATEおよび本発明の洗浄回収技術から得たTRCを、骨形成能について直接比較した。カルシウム沈着を測定することによって、結果は、平均して、骨形成能が、洗浄−回収TRC用量由来が2倍高かったことを示す(表13、図21)。
【0196】
表13.単位用量あたりの骨形成能は、新規洗浄−回収由来が高い。
【0197】
【表13】
TRCの骨形成能を、文献において骨形成能を有するとわかっている別の細胞種、MSCの能力と比較した。MSCを、補助細胞の不在下で培養し、かなりより精製された細胞種とする。これまでに、TRCは、CD90細胞ベースでMSCよりも高い骨形成能を有するということがわかった。その後の実験を実施して、新規洗浄−回収TRCが、同じ傾向を示すことを確認した。本明細書に示される1つの代表的な実験では、TRC中のCD90+細胞の全体的な頻度(16%)は、MSC(99%)と比較してかなり低かった。しかし、CD15+CD90+二重陽性細胞の頻度(表9)および骨形成能(表9、図22)は、TRCにおいてかなり高い。骨形成能は、カルシウム(Ca)沈着(図22A)およびアルカリホスファターゼ(AP)活性(図22B)によって測定し、CD90細胞ベースで、初代MSC(PO)と比較してTRCにおいてほぼ2倍高かった。MSCのさらなる継代が、さらに低い活性をもたらした。これらの結果は、過去の実験と一致する。
【0198】
このデータは、洗浄−回収を用いて製造されたTRC組成物、詳しくは、CD90+細胞は、骨形成能についてMSCよりも強力であることを実証する。TRC CD90+細胞はまた、CD15マーカーを、MSC CD90+細胞より高い程度に発現する。
【0199】
表14.TRCおよびMSCの比較:表現型および機能
【0200】
【表14】
n.d.=測定せず。
CYTOMATE(登録商標)洗浄TRCに対立するものとして洗浄−回収TRCの直接比較データは、洗浄−回収TRC産物は、より大きな骨形成能を有することを示した。CD90+細胞上のCD15の存在は、TRCをその他の精製細胞産物(例えば、MSC)と区別し、CD90の増強された骨形成能と相関する。
【0201】
実施例4 臨床試験:CYTOMATE(登録商標)洗浄を用いて単離されたTRCでの、炎症を伴わない骨治癒。長骨骨折−スペイン
2つの長骨骨折研究を、倫理委員会の承認の下、スペインのセンターで実施した。Hospital General de l’Hospitalet、Centro Medico TeknonおよびHospital de Barcelona−SCIASで実施された第I相臨床試験は5人の患者を登録し、その長骨骨癒着不能骨折を治療した。5人の患者全員が合計6箇所の治療された骨折を有し、第三者の独立批評者によってX線画像(図35)を用いて、または臨床的観察によって治癒したと報告された。
【0202】
図35は、足場から落ち、両脛骨を骨折した患者の臨床結果を示す。最初の手術後、いずれの骨においても治癒は起きなかった。TRCおよびセラミックマトリックス担体を利用して第2の手術を実施した。6ヵ月後、骨折線および一部のマトリックスがX線下で見える。12ヵ月後、骨折線は消失し、患者は、一部の残存マトリックス材料が依然として観察され得るものの治癒した。18ヶ月後、(示されていない)マトリックスは十分に再吸収され、患者は採石場での重労働に戻った。
【0203】
TRCが関連する有害事象は観察されなかった。この初期の研究では、TRC製品が使用された。患者は、TRC細胞と混合され、ハンドリング特性を増強するために自己血漿と結合しているCALCIBON(登録商標)(リン酸カルシウム顆粒)マトリックス材料が埋め込まれた。これは、ハンドリングを増強するためにマトリックス粒子を結合するために血漿が使用された最初の研究であった。
【0204】
第I相後、治験薬概要書(Investigational Medicinal Product Dossier)(IMPD)−臨床試験のために欧州連合(EU)において必要な出願−を出願し、スペイン医薬品局(Spanish Drug Agency)(AEMPS)から、スペインにおいて第II相癒着不能骨折試験を開始する許可を得た。この研究は10人の患者全員のTRC治療を完了した。
【0205】
この研究には本発明のTRCが使用された。患者は、TRCと混合され、ハンドリングを容易にするために血漿と結合しているVITOSS(登録商標)(β−TCP)マトリックス粒子を埋め込まれた。
【0206】
全体で、34人の患者が、6ヶ月の治療後フォローアップを完了し、33人が12ヶ月のフォローアップを完了した。12ヶ月間フォローされた33人の患者は、91%の全治癒率を示したことが、放射線画像またはコンピュータ断層撮影を用いて観察された骨架橋によって決定される。最終結果は、91%(23のうち21)の脛骨骨折、100%(3のうち3)の上腕骨骨折および86%(7のうち6)の大腿骨骨折において治癒成功を示した。12ヶ月後に観察された91%の治癒率に加え、6ヶ月での結果は、85%(34のうち29)の患者において骨架橋が上手く生じたことおよび97%(34のうち33)の患者において初期治癒の徴候(仮骨形成)が存在したことを示した。3人の患者は、必要なフォローアップ来診を完了できなかった。これら3人の患者からは最終データは集められなかったが、2人は18週までに治癒を示した。細胞が関連する有害事象は報告されなかった。結果は、TRCは、困難な長骨癒着不能骨折の治療にとって有効であり、骨再生のための強力な新規ツールになる、および重症骨折の管理を改善する可能性を有することを示唆する。
【0207】
顎顔面再構築:
デンタルインプラントが入れられるようにサイナスリフト手順を必要とする重篤な骨量減少を患う全歯欠損患者に対して、スペイン、バルセロナにおいて顎骨(上顎骨)再生臨床可能性対照試験を完了した。この可能性試験は、標準骨移植手順と比較したTRCに起因する骨再生の評価のために、標的とされる5人の患者を登録した。患者は、TRCと混合され、自己血漿と結合しているBIOOSS(登録商標)(bovine bone)マトリックス粒子を埋め込まれた。細胞治療の4ヶ月後、TRCを含めた治療は膨潤を低減し、移植領域において骨の相当な高さの増加がX線画像で調べられた。移植された領域に隣接する組織切片で行われた組織学的観察によって、骨ターンオーバーの刺激と、新規結合組織の誘導と一致する変化が示された。
【0208】
TRC処理した患者における炎症の減少
癒着不能長骨骨折および顎骨再構築の治癒についてTRCを評価するための初期第I/II相臨床試験は、術後24時間以内の術後膨潤、疼痛、発赤および炎症の減少を伴う有意な骨修復を実証した。これは、試験の範囲外の予期しない観察結果であり、TRC治療を受けている患者においてバルセロナおよび複数の米国部位で記録された。
【0209】
この観察結果は、TRC混合物の免疫調節性または抗炎症性機能の特性決定に焦点を当てるさらなる前臨床研究につながった。これらの研究の結果は、TRCは、最適組織再生のために免疫調節性プロフィールを発現し、最小の炎症しか伴わずに修復することを示す。より具体的には、TRCは、組織再生および免疫調節性活性を発現する細胞種、例えば、選択的に活性化されたマクロファージ(CD45+CD14+IL−10+)、間葉系幹細胞(CD45−CD90+CD105+)、調節性T細胞(CD45+CD4+CD25+)およびその他のリンパ球の混合物を含む。特に、CD3+リンパ球は、T細胞受容体−CD3複合体を介した誘導後に、高レベルのIL−10、免疫調節性サイトカインを産生する(図23−C)。TRCはまた、数種の強力な免疫調節性サイトカイン、例えば、HGF、IL−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)、IL−6、IL−10、TGF−βおよびMCP−1を、遺伝子およびタンパク質の両レベルで発現する。TRCは、極めて重要な炎症促進性メディエーター、例えば、IL−1、IFNγ、TNFαおよび最も顕著には、IL−12を、遺伝子およびタンパク質の両レベルで発現しない、または極めて低レベルで発現する。TRCは、インドールアミン−2,−3ジオキシゲナーゼ(IDO)と表される重要な免疫調節性酵素の発現について誘導可能である。IDOは、発生期の、および進行中の炎症反応のダウンレギュレーションにおいて機構的に関与してきた。また、TRCは、同種混合リンパ球反応(MLR)における刺激活性の、専門抗原提示細胞と比較した10〜50倍の低下を実証し、適応応答またはT細胞媒介性炎症反応の活性化の可能性を評価した。
【0210】
まとめて、これらの観察結果は、TRCは、宿主反応を、組織破壊的炎症から離れ、傷害組織のより迅速な治癒による創傷修復に向けて強力に偏向する、または偏らせるという仮説と一致する。
骨治癒の間の、初期骨誘導および血管新生の増強の証拠
米国試験では1人の癒着不能骨折患者は、不適合であり、3ヶ月で、喫煙および治癒足への時期尚早の体重負荷が、内固定および新規仮骨の破壊をもたらした。プレートが取り換えられるときに、中央の仮骨から生検をとり、固定し、メチルメタクリル酸包埋のために処理し、切片を石灰化し染色した。定性的組織学的検査によって、仮骨外側に線維性骨が示される。内部では、同種移植片マトリックス粒子の表面上に層板骨が見られた、または同種移植片を置換している(図32)。骨髄は、線維性であり、成熟動脈および細静脈類洞様血管を含み極めて十分に血管新生化されている。一部の小血管が、同種移植片粒子を通過すると思われた。骨リモデリングを示す破骨細胞が、このような領域ではまれに、骨表面上に見られた。ほとんどの表面は、骨芽細胞および類骨のシートで覆われていた。偏光顕微鏡によって、残留同種移植片のコアが示されたが、驚くべき量の移植片が、層板骨によって置換されている。これらの結果は、骨誘導、骨伝導および骨の組み込みの証拠を提供するが、仮骨中の新規骨はまだ成熟しておらず、十分に石灰化されていない。この場合は、極めて初期の骨誘導および治癒を示したが、仮骨は、生体力学的強度を取り戻すための石灰化する時間を依然として必要としている。
【0211】
図32は、治癒仮骨の組織学的検査を示す。図32Aは、骨芽細胞および類骨のような新規骨がほとんどの骨および同種移植片表面を覆っていることを示す。血管および線維性骨髄を注記する。同一切片の明視野(図32B)および偏光(図32C)顕微鏡写真は、同種移植片DBM(平行層板)中に貫通する血管ならびに表面上の、および内部からの同種移植片を置換する新規線維性骨を示す。十分に血管新生化された線維性間質および多量の骨芽細胞を注記する。
【0212】
臨床血管再生
TRCは、小さい血管を形成する能力を有するというAastromの観察結果に基づいて、末梢血管疾患のための骨髄細胞の使用に関わる第3者試験、解放創および重篤な肢虚血を有する糖尿病患者の治療におけるTRCの安全性および有効性を評価するための試験を開始した。Aastromは、Bad Oeynhausen、ドイツに位置するHeart & Diabetes Centerと臨床試験協定を結び、解放創および重篤な肢虚血を有する糖尿病患者において末梢循環を改善するためのTRCの安全性および有効性の可能性を評価するためのパイロット試験を実施した。患者は、治癒していない、登録前の少なくとも6週間、治癒する傾向を示さない解放創を有する場合に登録された。最大30人までの患者登録は、進行中である。研究者は、TRCで治療された患者は、その治癒していない解放創が、それぞれ48および44週において治癒したということを報告し(図32)、側枝血管形成における改善を示した(図33)。この試験の現在の標準治療アームは、解放創の治癒を示さなかった。
【0213】
処理の12ヶ月後、中間分析において、TRCを用いて処理されたすべての患者が、大切断術がないこと、細胞に関連する有害事象がないこと、すべての解放創の治癒を報告した。創部のケア(細胞なし)のみを受けた2人の標準治療患者については、1人の患者は大切断術を受け、1人の患者は12ヶ月後に創部治癒における改善を経験しなかった。
骨修復
骨壊死の治療におけるTRCの安全性および有効性を評価するための試験を開始した。Aastromは、Bad Oeynhausen、ドイツに位置する、整形外科協会、ドイツ、Wurburg大学のKonig−Ludwig−Hausと臨床試験協定を結び、大腿骨頭の骨壊死を有する患者において骨を修復するためのTRCの安全性および有効性の可能性を評価するためのパイロット試験を実施した。大腿骨頭内の骨壊死は、大腿骨頭内の骨および髄中の細胞の死を巻き込み、多数の場合には、総人工股関節置換術につながる。最初の研究では4人の患者をTRCで治療した。すべての患者が、手順に十分に耐用性を示し、MRIおよびX線によって調べられるように、疾患進行の徴候のない股関節痛の減少が報告されており、治療後6ヶ月内に仕事を再開した。さらに、細胞と関連する有害事象は観察されず、これらの患者のうち人工股関節置換術を要求した患者は1人もいなかった。
臨床において、TRCおよび脱石灰化骨マトリックス(DBM)を混合する
外科医は、TRC細胞懸濁液のバッグを受け取り、供給混合ディッシュ中の予め測定した量のDBMにこの溶液を加える。次いで、TRC/DBMミックスを、患者の血漿と結合させて、ハンドリング特性の増強された固体インプラント(図33A)を作製する。Aastromは、この手順を適格とするために、広範な製剤およびプロセス開発を行い、この混合プロセスの間、細胞は生存しており、機能性であるままであることを確信している(以下の図33Bおよび34B)。
【0214】
図33Aは、自己血漿と結合している埋め込み型TRC/DBM混合物を示す。TRCは、混合物内で生存したままであると、24時間生存/死滅染色4×顕微鏡写真において見ることができる(図33B)。
【0215】
図34AおよびBは、同種移植片/血漿混合物内のTRCは、2週間に及ぶ代謝産物の増大によってわかるように、混合後生存しており、広範な増殖が可能であることを示す。1日目(図29B)〜14日目(図34B)(両方とも×4)から得た顕微鏡写真での細胞密度の莫大な増大を注記する。
【0216】
図35は、2週間の培養期間にわたって、TRCがDBM/血漿構築物内で機能性のままであり、重要なサイトカイン分泌を維持することを示す。
【0217】
一緒に考えると、Cytomate(登録商標)洗浄したTRCを用いた臨床データのセットは、TRCの混合細胞製品の骨形成性/血管新生および抗炎症/免疫調節性態様を実証する。統計上高い生存率および数の細胞を提供する物質の新規組成物、特に、幹/前駆細胞/内皮系統のものが、より機能的な臨床製品をもたらす。新規洗浄回収TRCは、製造可能性および機能について最適化されており、これまでに用いられた臨床細胞製品に優る組織修復特性を有する。
【0218】
実施例5 洗浄−回収法を用いて単離されたTRCは、抗炎症性サイトカインIL−10を分泌する調節性T細胞を含む。
【0219】
洗浄−回収法を用いて製造された組織修復細胞を、フローサイトメトリーによって評価した。回収された細胞を、無関係のアイソタイプに対応させた対照mAb(IgG1、IgG2a)(図23A)または特異的蛍光色素がコンジュゲートしている抗CD25および抗CD4mAb(図23B)を用いる2色の分析のために染色した。図23B(象限B2)に示されるように、リンパ球の別個の集団(2%)が、CD4+およびCD25+マーカー、調節性T細胞と関連している表面表現型を同時発現する。
【0220】
TRC混合物内のT細胞によるサイトカイン産生を評価するための同様の実験が図23Cに示されている。TRCを単独で、またはT細胞活性化のためのポリクローナル刺激物質としての、プラスチックが固定された抗CD3mAbの存在下でインキュベートした。48時間上清液中のサイトカイン濃度を、Luminexマルチプレックス分析によって調べた。興味深いことに、これらの結果は、IL−10が、抗CD3モノクローナル抗体による活性化後にTRC混合物内のT細胞によって産生される主サイトカイン(>14,669pg/ml)であることを実証した。IL−10は、調節性T細胞および免疫調節性マクロファージによって特徴的に産生される免疫調節性サイトカインである。
【0221】
実施例6 TRCはHGF、免疫調節性および血管新生サイトカインを放出する
肝細胞増殖因子(HGF)は、血管形成、エンドセリアリゼーション(endothelialization)および血管成熟、例えば、血管周囲細胞、例えば、平滑筋細胞およびペリサイトの遊走および補充を媒介する、極めて重要な間葉由来免疫調節性および血管新生サイトカインである。HGFは、組織傷害後の線維症を抑制する。このサイトカインは、単球の分化を免疫調節性および免疫寛容誘発性補助細胞機能に向けて駆動する。HGFはまた、急性および慢性同種移植片拒絶を低減するとわかり、このことは、強力な抗炎症機構を示唆する。
【0222】
TRCによるHGF製造を、12日目の培養で、細胞製造システム(図1〜10参照のこと)の廃棄ポートから培養上清を獲得することによって評価した。これらの培養物は、中程度の灌流条件下で、または静止培養として臨床規模で培地交換せずに維持した。同一骨髄ドナーから得た間葉系幹細胞(MSC)を、HGF分泌を制御する陽性対照としての比較のために、組織培養フラスコ(T型フラスコ)中で、反復継代することによって並行して導いた。TRCおよびMSCのこれらの培養物から得た培養上清液を、ELISAによってHGFについて評価した。n=6実験の平均値(pg/ml)が図26に示されている。これらのデータは、TRCは、従来的に導かれたMSCと比較した場合に、培地灌流の速度に関わらず、高レベルのHGF、強力な血管形成および免疫調節性メディエーターを一貫して分泌することを実証する。
【0223】
TRCを、適応応答およびまたはT細胞媒介性炎症性応答の活性化の可能性を調べる手段として同種混合白血球反応(alloMLR)において評価した(図30)。炎症性メディエーター、例えば、インターフェロン−γ(IFN−γ)は、免疫調節性酵素、例えば、IDO(図24、25、27)およびその他の免疫阻害性リガンド、例えば、PD−L1(図28)のTRCによる高発現を誘導する。したがって、TRCは、1000ユニット/mlの組換えヒトインターフェロンとともに(誘導)または組換えヒトインターフェロンを伴わずに(非誘導)24時間インキュベートし、その後MLRを加えた。IFN−γに対して曝露した後、TRCを照射し(2000Rads)、MLR中で、2,000、10,000または50,000個TRCからなる広範な細胞用量にわたって、三連培養でマイクロウェルあたり固定用量の105個の応答同種T細胞と一緒にインキュベートした。T細胞増殖を、6日目の培養での分あたりのカウント(cpm)によって測定される3H−チミジン取り込みによって評価した。図30に示されるように、TRCは、炎症性メディエーター、例えば、IFN−γに対して短時間曝露した後、T細胞刺激活性のバックグラウンドレベルに対して著しい減少を実証した。これらのデータは、T細胞媒介性炎症反応に対するTRCによる活性の低下または潜在的に阻害性の活性を示す。
その他の実施形態
本発明は、その詳細な説明とともに説明したが、上記の説明は、例示するよう意図されるものであって、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。その他の態様、利点および改変は、特許請求の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血、間葉および内皮系統の細胞の混合集団を含む組織修復のための単離細胞組成物であって、前記細胞の生存率が、少なくとも80%であり、前記組成物が、
a)約5〜75%の生存CD90+細胞およびCD45+である前記組成物中の残りの細胞と、
b)2μg/ml未満のウシ血清アルブミンと、
c)1μg/ml未満の酵素的に活性な回収試薬とを含み、
d)マイコプラズマ、内毒素および微生物汚染を実質的に含まない、単離細胞組成物。
【請求項2】
前記細胞が単核細胞に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記細胞が単核細胞であり、骨髄、末梢血、臍帯血または胎児肝臓に由来する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記細胞が、ヒト投与に適した製薬等級電解質溶液中にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記細胞が、少なくとも1種の抗炎症サイトカインまたは血管新生因子を産生する、請求項1に記載の細胞組成物。
【請求項6】
前記抗炎症性サイトカインが、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト、インターロイキン−6、TGF−β、インターロイキン−8、インターロイキン10または単球走化性タンパク質−1である、請求項5に記載の細胞組成物。
【請求項7】
前記血管新生因子が、血管内皮増殖因子、アンギオポエチン1、アンギオポエチン2または肝細胞増殖因子である、請求項5に記載の細胞組成物。
【請求項8】
前記細胞が、105個細胞あたり24時間あたり10pg/mL未満の1種以上の炎症促進性サイトカインを産生する、請求項1に記載の細胞組成物。
【請求項9】
前記炎症促進性サイトカインが、インターロイキン−1α、インターロイキン−1β、インターフェロンγまたはインターロイキン−12である、請求項8に記載の細胞組成物。
【請求項10】
前記細胞が、インドールアミン2,3、ジオキシゲナーゼまたはPD−L1を発現する、請求項1に記載の細胞組成物。
【請求項11】
前記CD90+の少なくとも10%が、CD15を同時発現する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記CD45+細胞が、CD14+、CD34+またはVEGFR1+である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、ウマ血清および/または胎仔ウシ血清を実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
生存細胞の総数が、3千5百万〜3億である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記細胞が、15ミリリットル未満の容積である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記細胞が、10ミリリットル未満の容積である、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記細胞が、7.5ミリリットル未満の容積である、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記細胞組成物が、虚血状態、臓器または組織再生を必要とする状態、炎症性疾患、および自己免疫疾患からなる群から選択される病態を治療するのに有用である、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記虚血状態が、肢虚血、うっ血性心不全、心虚血、腎虚血およびESRD、卒中および眼の虚血からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記臓器または組織再生が、肝臓、膵臓、肺、唾液腺、血管、骨、皮膚、軟骨、腱、靭帯、脳、毛、腎臓、筋肉、心筋、神経,および肢の再生からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記炎症性疾患が、心疾患、糖尿病、脊髄損傷、関節リウマチ、変形性関節症、人工股関節置換術または修正による炎症、クローン病および移植片対宿主病からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記自己免疫疾患が、1型糖尿病、乾癬、全身性エリテマトーデスおよび多発性硬化症からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
生体適合性マトリックスをさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項25】
前記生体適合性マトリックスが、脱石灰化骨粒子、石灰化骨粒子、リン酸カルシウムファミリーの合成セラミック、コラーゲン、多糖ベースの材料、合成生分解性ポリマー材料、およびそれらの混合物、組み合わせまたはブレンドからなる群から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記リン酸カルシウムファミリーの合成セラミックが、αトリリン酸カルシウム、βトリリン酸カルシウムおよびヒドロキシアパタイトからなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記多糖ベースの材料が、ヒアルロナンおよびアルギン酸からなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記合成生分解性ポリマー材料が、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリフマル酸およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1に記載の組成物を含む組織修復試薬。
【請求項30】
免疫応答、炎症反応または血管新生を、それを必要とする患者において調節する方法であって、前記患者に、培養混合細胞組成物を投与するステップを含み、前記培養細胞組成物が、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン10、血管内皮増殖因子、単球化学誘引物質タンパク質−1、アンギオポエチン1、アンギオポエチン2および肝細胞増殖因子からなる群から選択される少なくとも1種のサイトカインを産生する、方法。
【請求項31】
前記組成物が、10ng/mL未満のインターロイキン−1α、インターフェロンγおよびインターロイキン−12を産生する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、
a)0.1%〜10%のCD4+CD24+T細胞と、
b)1〜50%のCD45+CD14+単球と、
c)5%〜75%のCD45−CD90+骨髄間質細胞
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が、請求項1に記載の組成物である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が、インドールアミン2,3,ジオキシゲナーゼまたはPD−L1を発現する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
組織再生または修復を必要とする患者に、請求項1に記載の組成物を投与するステップを含む、組織再生または修復の方法。
【請求項36】
前記組織が、心臓組織、骨組織、神経組織、皮膚組織、肺組織、唾液腺組織、肝臓組織および膵臓組織からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
虚血性障害を治療する方法であって、それを必要とする患者に、請求項1に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項38】
組織において血管新生を誘導する方法であって、それを必要とする患者に、請求項1に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項39】
培養細胞を処理する方法であって、
細胞を培養するためのバイオチャンバーを提供するステップと、
バイオチャンバー内に細胞を培養するための培養培地を提供するステップと、
前記バイオチャンバーに細胞を播種するステップと、
前記細胞を培養するステップと、
所定の培養時間で、前記バイオチャンバーから前記培養培地を、生体適合性の第1のすすぎ溶液と移しかえるステップと、
前記第1のすすぎ溶液を、細胞回収酵素溶液と取り換えるステップと、
前記バイオチャンバーの内容物を、所定の期間インキュベートし、ここで、インキュベーションの間に、前記酵素が、前記細胞を互いにおよび/またはバイオチャンバー表面から少なくとも分離するステップと、
前記酵素溶液を第2のすすぎ溶液と移しかえ、ここで、酵素が移しかえられると、チャンバーが実質的に第2のすすぎ溶液で満たされるステップと、
を含む方法。
【請求項40】
前記第2のすすぎ溶液が、ヒトに注射可能である溶液を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記第2のすすぎ溶液の一部をガスと移しかえて、チャンバー中に所定の減少した液量を得るステップをさらに含む、請求項39に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項42】
前記チャンバーを撹拌して、定着した細胞を懸濁液に入れるステップをさらに含む、請求項39に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項43】
前記懸濁細胞を含む溶液を細胞回収容器に流し入れるステップをさらに含む、請求項39に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項44】
バイオチャンバーにさらなる量の前記第2の溶液を加え、前記バイオチャンバーを撹拌して残存する細胞をすすぎ出すステップをさらに含む、請求項41に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項45】
前記溶液を細胞回収容器に流し入れるステップをさらに含む、請求項44に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項46】
前記バイオチャンバーに加えられる溶液および/またはガスを導入する流量が、約0.03容積交換/分と約1.0容積交換/分の間である、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記バイオチャンバーに加えられる溶液および/またはガスを導入する流量が、0.50容積交換/分と0.75容積交換/分の間である、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
放射状の栓流にしたがって、バイオチャンバーに液体/溶液またはガスが導入される、請求項39に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞が単核細胞に由来する、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
前記単核細胞が、骨髄、末梢血、臍帯血または胎児肝臓である、請求項39に記載の方法。
【請求項51】
前記培養によって、細胞集団の5%より多くがCD90+である混合細胞集団が製造される、請求項39に記載の方法。
【請求項52】
請求項39に記載の方法にしたがって製造される培養細胞。
【請求項53】
請求項52に記載の培養細胞を含む組成物。
【請求項54】
培養細胞を回収する方法であって、
バイオチャンバーから培養培地を、生体適合性の第1のすすぎ溶液と移しかえるステップと、
前記第1のすすぎ溶液を、細胞回収酵素溶液と実質的に取り換えるステップと、
前記バイオチャンバーの内容物を、所定の期間インキュベートし、ここで、インキュベーションの間に、前記酵素が、前記細胞を互いにおよび/または前記バイオチャンバーの培養表面から少なくとも分離するステップと、
前記酵素溶液を第2のすすぎ溶液で移しかえ、ここで、前記酵素が移しかえられると、チャンバーが実質的に前記第2のすすぎ溶液で満たされるステップと、
を含む方法。
【請求項55】
前記第2のすすぎ溶液が、ヒトに注射可能である溶液を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記第2のすすぎ溶液の一部をガスで移しかえて、前記チャンバー中に所定の減少した液量を得るステップをさらに含む、請求項54に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項57】
前記チャンバーを撹拌して、定着した細胞を懸濁液に入れるステップをさらに含む、請求項54に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項58】
懸濁細胞を含む前記溶液を細胞回収容器に流し入れるステップをさらに含む、請求項57に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項59】
前記細胞バイオチャンバーにさらなる量の第2の溶液を加え、前記バイオチャンバーを撹拌して残存する細胞をすすぐステップをさらに含む、請求項57に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項60】
前記溶液を細胞回収容器に流し入れるステップをさらに含む、請求項59に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項61】
前記バイオチャンバーに加えられる溶液および/またはガスを導入する流量が、約0.03容積交換/分と約1.0容積交換/分の間である、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記バイオチャンバーに加えられる溶液および/またはガスを導入する流量が、0.50容積交換/分と0.75容積交換/分の間である、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
所定の容積および形状を有するチャンバー中に提供される、含有する液体または溶液から微粒子を分離する方法であって、第2の液体/溶液を前記チャンバー内に入れ、第1の前記含有する液体を移しかえ、ここで、前記チャンバーの形状によって液体が栓流に従って前記チャンバーを流れることが可能となることを含む方法。
【請求項64】
前記チャンバーに加えられる溶液および/またはガスを導入する流量が、約0.03容積交換/分と約1.0容積交換/分の間である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記チャンバーに加えられる溶液および/ガスを導入する流量が、0.50容積交換/分と0.75容積交換/分の間である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
少なくとも1回、第2の液体が、前記チャンバーの容積を実質的に移しかえる、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
栓流を確立する速度でガスを導入し、ここで、前記ガスが、前記チャンバー中に含まれる液体/溶液を移しかえて、前記チャンバー中の液体/溶液内の粒子を濃縮するステップをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記第2の液体またはその後の液体/溶液がヒトに注射可能である、請求項62に記載の方法。
【請求項69】
前記チャンバーを撹拌して、定着した粒子を、前記チャンバー中に含まれる液体/溶液に入れるステップをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項70】
前記溶液を回収容器に流し入れるステップをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項71】
少なくとも1%がCD90およびCD15細胞表面マーカーを同時発現する細胞の混合物を含む、組成物。
【請求項72】
前記混合物中の前記細胞の少なくとも20%が、CD90およびCD15細胞表面マーカーを同時発現する、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
前記混合物中の前記細胞の少なくとも50%が、CD90およびCD15細胞表面マーカーを同時発現する、請求項71に記載の組成物。
【請求項74】
前記混合物中の前記細胞の少なくとも75%が、CD90およびCD15細胞表面マーカーを同時発現する、請求項71に記載の組成物。
【請求項75】
前記混合物中の前記細胞の少なくとも95%が、CD90およびCD15細胞表面マーカーを同時発現する、請求項71に記載の組成物。
【請求項76】
前記細胞が単核細胞由来である、請求項71に記載の組成物。
【請求項77】
前記細胞が単核細胞であり、骨髄、末梢血、臍帯血または胎児肝臓に由来する、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
前記細胞が、ヒト投与に適した製薬等級電解質溶液中にある、請求項72に記載の組成物。
【請求項79】
生体適合性マトリックスをさらに含む、請求項78に記載の組成物。
【請求項80】
骨修復または再生する方法であって、それを必要とする患者に、請求項71に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項1】
造血、間葉および内皮系統の細胞の混合集団を含む組織修復のための単離細胞組成物であって、前記細胞の生存率が、少なくとも80%であり、前記組成物が、
a)約5〜75%の生存CD90+細胞およびCD45+である前記組成物中の残りの細胞と、
b)2μg/ml未満のウシ血清アルブミンと、
c)1μg/ml未満の酵素的に活性な回収試薬とを含み、
d)マイコプラズマ、内毒素および微生物汚染を実質的に含まない、単離細胞組成物。
【請求項2】
前記細胞が単核細胞に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記細胞が単核細胞であり、骨髄、末梢血、臍帯血または胎児肝臓に由来する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記細胞が、ヒト投与に適した製薬等級電解質溶液中にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記細胞が、少なくとも1種の抗炎症サイトカインまたは血管新生因子を産生する、請求項1に記載の細胞組成物。
【請求項6】
前記抗炎症性サイトカインが、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト、インターロイキン−6、TGF−β、インターロイキン−8、インターロイキン10または単球走化性タンパク質−1である、請求項5に記載の細胞組成物。
【請求項7】
前記血管新生因子が、血管内皮増殖因子、アンギオポエチン1、アンギオポエチン2または肝細胞増殖因子である、請求項5に記載の細胞組成物。
【請求項8】
前記細胞が、105個細胞あたり24時間あたり10pg/mL未満の1種以上の炎症促進性サイトカインを産生する、請求項1に記載の細胞組成物。
【請求項9】
前記炎症促進性サイトカインが、インターロイキン−1α、インターロイキン−1β、インターフェロンγまたはインターロイキン−12である、請求項8に記載の細胞組成物。
【請求項10】
前記細胞が、インドールアミン2,3、ジオキシゲナーゼまたはPD−L1を発現する、請求項1に記載の細胞組成物。
【請求項11】
前記CD90+の少なくとも10%が、CD15を同時発現する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記CD45+細胞が、CD14+、CD34+またはVEGFR1+である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、ウマ血清および/または胎仔ウシ血清を実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
生存細胞の総数が、3千5百万〜3億である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記細胞が、15ミリリットル未満の容積である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記細胞が、10ミリリットル未満の容積である、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記細胞が、7.5ミリリットル未満の容積である、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記細胞組成物が、虚血状態、臓器または組織再生を必要とする状態、炎症性疾患、および自己免疫疾患からなる群から選択される病態を治療するのに有用である、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記虚血状態が、肢虚血、うっ血性心不全、心虚血、腎虚血およびESRD、卒中および眼の虚血からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記臓器または組織再生が、肝臓、膵臓、肺、唾液腺、血管、骨、皮膚、軟骨、腱、靭帯、脳、毛、腎臓、筋肉、心筋、神経,および肢の再生からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記炎症性疾患が、心疾患、糖尿病、脊髄損傷、関節リウマチ、変形性関節症、人工股関節置換術または修正による炎症、クローン病および移植片対宿主病からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記自己免疫疾患が、1型糖尿病、乾癬、全身性エリテマトーデスおよび多発性硬化症からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
生体適合性マトリックスをさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項25】
前記生体適合性マトリックスが、脱石灰化骨粒子、石灰化骨粒子、リン酸カルシウムファミリーの合成セラミック、コラーゲン、多糖ベースの材料、合成生分解性ポリマー材料、およびそれらの混合物、組み合わせまたはブレンドからなる群から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記リン酸カルシウムファミリーの合成セラミックが、αトリリン酸カルシウム、βトリリン酸カルシウムおよびヒドロキシアパタイトからなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記多糖ベースの材料が、ヒアルロナンおよびアルギン酸からなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記合成生分解性ポリマー材料が、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリフマル酸およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1に記載の組成物を含む組織修復試薬。
【請求項30】
免疫応答、炎症反応または血管新生を、それを必要とする患者において調節する方法であって、前記患者に、培養混合細胞組成物を投与するステップを含み、前記培養細胞組成物が、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン10、血管内皮増殖因子、単球化学誘引物質タンパク質−1、アンギオポエチン1、アンギオポエチン2および肝細胞増殖因子からなる群から選択される少なくとも1種のサイトカインを産生する、方法。
【請求項31】
前記組成物が、10ng/mL未満のインターロイキン−1α、インターフェロンγおよびインターロイキン−12を産生する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、
a)0.1%〜10%のCD4+CD24+T細胞と、
b)1〜50%のCD45+CD14+単球と、
c)5%〜75%のCD45−CD90+骨髄間質細胞
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が、請求項1に記載の組成物である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が、インドールアミン2,3,ジオキシゲナーゼまたはPD−L1を発現する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
組織再生または修復を必要とする患者に、請求項1に記載の組成物を投与するステップを含む、組織再生または修復の方法。
【請求項36】
前記組織が、心臓組織、骨組織、神経組織、皮膚組織、肺組織、唾液腺組織、肝臓組織および膵臓組織からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
虚血性障害を治療する方法であって、それを必要とする患者に、請求項1に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項38】
組織において血管新生を誘導する方法であって、それを必要とする患者に、請求項1に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項39】
培養細胞を処理する方法であって、
細胞を培養するためのバイオチャンバーを提供するステップと、
バイオチャンバー内に細胞を培養するための培養培地を提供するステップと、
前記バイオチャンバーに細胞を播種するステップと、
前記細胞を培養するステップと、
所定の培養時間で、前記バイオチャンバーから前記培養培地を、生体適合性の第1のすすぎ溶液と移しかえるステップと、
前記第1のすすぎ溶液を、細胞回収酵素溶液と取り換えるステップと、
前記バイオチャンバーの内容物を、所定の期間インキュベートし、ここで、インキュベーションの間に、前記酵素が、前記細胞を互いにおよび/またはバイオチャンバー表面から少なくとも分離するステップと、
前記酵素溶液を第2のすすぎ溶液と移しかえ、ここで、酵素が移しかえられると、チャンバーが実質的に第2のすすぎ溶液で満たされるステップと、
を含む方法。
【請求項40】
前記第2のすすぎ溶液が、ヒトに注射可能である溶液を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記第2のすすぎ溶液の一部をガスと移しかえて、チャンバー中に所定の減少した液量を得るステップをさらに含む、請求項39に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項42】
前記チャンバーを撹拌して、定着した細胞を懸濁液に入れるステップをさらに含む、請求項39に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項43】
前記懸濁細胞を含む溶液を細胞回収容器に流し入れるステップをさらに含む、請求項39に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項44】
バイオチャンバーにさらなる量の前記第2の溶液を加え、前記バイオチャンバーを撹拌して残存する細胞をすすぎ出すステップをさらに含む、請求項41に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項45】
前記溶液を細胞回収容器に流し入れるステップをさらに含む、請求項44に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項46】
前記バイオチャンバーに加えられる溶液および/またはガスを導入する流量が、約0.03容積交換/分と約1.0容積交換/分の間である、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記バイオチャンバーに加えられる溶液および/またはガスを導入する流量が、0.50容積交換/分と0.75容積交換/分の間である、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
放射状の栓流にしたがって、バイオチャンバーに液体/溶液またはガスが導入される、請求項39に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞が単核細胞に由来する、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
前記単核細胞が、骨髄、末梢血、臍帯血または胎児肝臓である、請求項39に記載の方法。
【請求項51】
前記培養によって、細胞集団の5%より多くがCD90+である混合細胞集団が製造される、請求項39に記載の方法。
【請求項52】
請求項39に記載の方法にしたがって製造される培養細胞。
【請求項53】
請求項52に記載の培養細胞を含む組成物。
【請求項54】
培養細胞を回収する方法であって、
バイオチャンバーから培養培地を、生体適合性の第1のすすぎ溶液と移しかえるステップと、
前記第1のすすぎ溶液を、細胞回収酵素溶液と実質的に取り換えるステップと、
前記バイオチャンバーの内容物を、所定の期間インキュベートし、ここで、インキュベーションの間に、前記酵素が、前記細胞を互いにおよび/または前記バイオチャンバーの培養表面から少なくとも分離するステップと、
前記酵素溶液を第2のすすぎ溶液で移しかえ、ここで、前記酵素が移しかえられると、チャンバーが実質的に前記第2のすすぎ溶液で満たされるステップと、
を含む方法。
【請求項55】
前記第2のすすぎ溶液が、ヒトに注射可能である溶液を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記第2のすすぎ溶液の一部をガスで移しかえて、前記チャンバー中に所定の減少した液量を得るステップをさらに含む、請求項54に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項57】
前記チャンバーを撹拌して、定着した細胞を懸濁液に入れるステップをさらに含む、請求項54に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項58】
懸濁細胞を含む前記溶液を細胞回収容器に流し入れるステップをさらに含む、請求項57に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項59】
前記細胞バイオチャンバーにさらなる量の第2の溶液を加え、前記バイオチャンバーを撹拌して残存する細胞をすすぐステップをさらに含む、請求項57に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項60】
前記溶液を細胞回収容器に流し入れるステップをさらに含む、請求項59に記載の培養細胞を処理する方法。
【請求項61】
前記バイオチャンバーに加えられる溶液および/またはガスを導入する流量が、約0.03容積交換/分と約1.0容積交換/分の間である、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記バイオチャンバーに加えられる溶液および/またはガスを導入する流量が、0.50容積交換/分と0.75容積交換/分の間である、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
所定の容積および形状を有するチャンバー中に提供される、含有する液体または溶液から微粒子を分離する方法であって、第2の液体/溶液を前記チャンバー内に入れ、第1の前記含有する液体を移しかえ、ここで、前記チャンバーの形状によって液体が栓流に従って前記チャンバーを流れることが可能となることを含む方法。
【請求項64】
前記チャンバーに加えられる溶液および/またはガスを導入する流量が、約0.03容積交換/分と約1.0容積交換/分の間である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記チャンバーに加えられる溶液および/ガスを導入する流量が、0.50容積交換/分と0.75容積交換/分の間である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
少なくとも1回、第2の液体が、前記チャンバーの容積を実質的に移しかえる、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
栓流を確立する速度でガスを導入し、ここで、前記ガスが、前記チャンバー中に含まれる液体/溶液を移しかえて、前記チャンバー中の液体/溶液内の粒子を濃縮するステップをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記第2の液体またはその後の液体/溶液がヒトに注射可能である、請求項62に記載の方法。
【請求項69】
前記チャンバーを撹拌して、定着した粒子を、前記チャンバー中に含まれる液体/溶液に入れるステップをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項70】
前記溶液を回収容器に流し入れるステップをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項71】
少なくとも1%がCD90およびCD15細胞表面マーカーを同時発現する細胞の混合物を含む、組成物。
【請求項72】
前記混合物中の前記細胞の少なくとも20%が、CD90およびCD15細胞表面マーカーを同時発現する、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
前記混合物中の前記細胞の少なくとも50%が、CD90およびCD15細胞表面マーカーを同時発現する、請求項71に記載の組成物。
【請求項74】
前記混合物中の前記細胞の少なくとも75%が、CD90およびCD15細胞表面マーカーを同時発現する、請求項71に記載の組成物。
【請求項75】
前記混合物中の前記細胞の少なくとも95%が、CD90およびCD15細胞表面マーカーを同時発現する、請求項71に記載の組成物。
【請求項76】
前記細胞が単核細胞由来である、請求項71に記載の組成物。
【請求項77】
前記細胞が単核細胞であり、骨髄、末梢血、臍帯血または胎児肝臓に由来する、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
前記細胞が、ヒト投与に適した製薬等級電解質溶液中にある、請求項72に記載の組成物。
【請求項79】
生体適合性マトリックスをさらに含む、請求項78に記載の組成物。
【請求項80】
骨修復または再生する方法であって、それを必要とする患者に、請求項71に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図30】
【図31】
【図32A】
【図32B】
【図32C】
【図33A】
【図33B】
【図34A】
【図34B】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41A】
【図41B】
【図41C】
【図42】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図30】
【図31】
【図32A】
【図32B】
【図32C】
【図33A】
【図33B】
【図34A】
【図34B】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41A】
【図41B】
【図41C】
【図42】
【公表番号】特表2010−508818(P2010−508818A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535351(P2009−535351)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/023302
【国際公開番号】WO2008/054825
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(509125497)アストロム バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/023302
【国際公開番号】WO2008/054825
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(509125497)アストロム バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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