組織検知およびアブレーション機器ならびにチューナを作動させる機器および方法
この発明は、組織を分類し、かつ/または除去するための機器に関する。プローブ(5)を通じて組織(6)にマイクロ波放射を方向付け、かつ、反射されてプローブを通じて戻る放射と基準信号との大きさおよび位相を検知することにより、組織タイプを分類することができる。磁歪材料(800)によって作動するインピーダンスチューナもまた開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
この発明は、組織を検知し、1つ以上のタイプもしくは状態に分類して、かつ/または組織を除去するために、マイクロ波放射を用いる機器に関する。またこの発明は、このような機器で用いられるチューナを作動させる作動装置と方法とに関する。この明細書では、マイクロ波とは5GHz以上60GHz以下の周波数範囲を意味する。好ましくは14GHz−15GHzが用いられるが、この発明は、このより狭い範囲に限定されるわけではない。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
2003年11月27日に出願された国際出願PCT第/GB2003/005166号は、組織への効率的なエネルギ伝達を実行し、かつ機器の加熱を最小限にするために、除去されている組織のインピーダンスと機器のインピーダンスとを整合するための同調回路を有する、組織アブレーション機器を開示した。その機器の1つのバージョンは図1に示される。
【0003】
図1に示されるように、機器は、マイクロ波放射を組織に方向付けるために、調整可能なインピーダンスを有する3スタブチューナ50を介してアブレーションプローブ5に接続される、マイクロ波放射の安定した源1を有する。機器は、アブレーションプローブ5を通じて反射して戻り、方向性結合器200によって検知構成220、240、270に方向付けられる信号から検知される位相および大きさに基づいて3スタブチューナ50のインピーダンスを変えることによって、インピーダンス整合を達成した。正確なインピーダンス調整を行うことができるよう、反射された信号の大きさおよび位相の両方を検知することが必要であった。これは、ヘテロダイン検知によって検知器240において位相および大きさが与えられ得るよう、反射された信号を局部発振器270からの信号とミキサ220において混合することにより達成された。次いでプロセッサ101が、チューナ50のインピーダンスの適切な調整を行うためにアクチュエータ1130を制御し、その結果、インピーダンス整合が達成された。(源からプローブへ)順方向に向けられた信号の位相および大きさは、検知システム230、260、280によって測定することもでき、インピーダンス調整の決定に際して考慮に入れられた。
【0004】
PCT/GB2003/005166は、例えば図3に示されたフィードバックループ構成を用いることによって(図1における)マイクロ波放射の源1を位相ロックすることが望ましいことを教示している。図3において、源はVCOであり、その周波数は周波数分割器によって減じられ、安定した(例えば結晶の)局部発振器の信号と位相比較器において比較され、位相比較器は、増幅器およびフィルタ構成1010を介して信号を出力してVCOを制御し、それによりその周波数が安定に保たれる。代替として、図4に示されるように、狭帯域フィルタ1140と広帯域源1030とを組合わせることが可能である。図3および図4に示される構成の目的は、源の周波数における変動が信号検知を妨害しないよう、マイクロ波放射の安定した源を与えることである。
【0005】
要するに、PCT/GB2003/005166は、プローブから反射された信号を検知し、その信号の中の情報を回路の同調素子のインピーダンス調整に用いることを教示している。除去されている組織のインピーダンスと整合するようインピーダンスを調整することによって、機器のエネルギ効率を達成することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の概要
しかしながら、発明者らは、プローブと組織とのインピーダンス整合を達成するためのみならず、プローブの端部で組織の特性を検知するためにも、反射された放射を用いることができることを認識した。例えば、反射された放射の分析によって、組織タイプを判断することが可能であろう。例えば癌組織と健康な組織とを区別するなど、異なる組織のタイプまたは状態を区別することもできるはずである。これにより、機器のオペレータが、除去する必要がある癌組織にプローブがいつ到達するかがわかり、健康な組織を偶然に除去するのを防ぐことができるようにし、さらに癌組織を完全に除去し終えるとオペレータに通知して、その結果アブレーション動作を停止できるようにしてもよい。アブレーションシステムのコンテキスト以外でも、例えばスタンドアロンの組織測定または分類システムとしてこの発明を用いることもできる。発明者らは、この目的のためには絶対量の測定だけでは十分ではないと認識した。複素インピーダンスの実成分および虚成分を考慮に入れる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、この発明の第1の局面は、所与の周波数を有するマイクロ波放射の源を含む組織分類機器であって、
マイクロ波放射を組織に方向付けるためのプローブと、
反射されて前記プローブを通じて戻るマイクロ波放射を含む反射された信号の大きさおよび位相と、基準信号の大きさおよび位相とを検知するための検知器と、
前記検知器によって検知された信号の大きさおよび位相に基づいて組織タイプまたは組織状態に組織を分類するための組織分類器とを含む、組織分類器を与える。
【0008】
この発明の第1の局面による機器は、人間または動物の体内組織の生体内測定を行うのに適する。プローブは組織に挿入されるよう設計される。この機器は、上記の構成によって、プローブの遠端の端部にいかなる種類の組織(例えば骨、脂肪、筋肉、腫物)があるかを判断することができる。プローブの遠端は中央導体を有してもよく、それは導電的にまたは容量的に搭載される。
【0009】
基準信号はマイクロ波放射の源から得られてもよい(例えば方向性結合器によって検知器にそらされた、順方向に向けられた信号の部分)。代替的には、基準信号は、別個の源(例えば独立した局部発振器)から得られてもよい。反射された信号および基準信号を検知器に多重伝送するために、スイッチが用いられてもよい。さらに、いくつかのあり得る(例えば、源とプローブとの間の信号経路上の異なる場所から取られた)基準信号およびそれらの間で多重化するスイッチがあってもよい。検知器は、位相比較器と、ベクトルネットワークアナライザと、入力信号を分析するためのプロセッサと、および/または、局部発振器およびミキサを用いるヘテロダイン検知構成とを含んでもよい。
【0010】
好ましくは、組織分類は、反射された信号および基準信号の大きさおよび位相から計算された(実成分および虚成分の両方を有する)複素インピーダンスと、1つ以上の組織タイプの複素インピーダンスについての既知の値または理論値に関連する第1のデータの組とに基づいて実行される。これらの値または組織タイプの理論的な複素インピーダンスを計算することができるデータは、「組織の物理的性質(Physical Properties of Tissue)」などの書物で見つけることができる。フランシス・A・ダック(Francis A Duck)による、1990年アカデミックプレスロンドン(Academic Press London)発行の「総合参考書(A Comprehensive Reference Book)ISBN 0−12−222800−6によれば、この本の第6章は、伝導率および比誘電率を含む組織の電気的性質について、具体
的な情報をもたらす。
【0011】
これらの書物は、例えば絶縁された保持カセット内など、制御された生体外条件下で測定された、単一の均質な組織サンプルについての理論値および既知の値を与える。生体内で測定した実際の値は、血流、複数の組織層、および他の条件のために異なることが予想されるが、依然これらの既知の値に関連するであろう。
【0012】
好ましくは、組織分類は、前記第1のデータの組の値と、機器によって測定された(またはこの発明による別の機器によって以前に測定された)既知の組織タイプの複素インピーダンスに関する第2のデータの組の値との、予め定められた関係を考慮に入れる。このように、この機器で行われたいくつかの測定値が、他の組織タイプについての期待値を与えるために外挿することができる。
【0013】
代替的には、組織分類器は、測定された複素インピーダンスと、予め定められた値または値の範囲を様々な組織タイプ(または状態)に割当てる表における値とを比較することにより、組織を分類することができる。
【0014】
好ましくは、機器は、プローブの遠端で、例えば空気または好適な既知の材料など、既知のインピーダンスについて複素インピーダンスを(反射された信号および基準信号の位相および大きさから)測定することにより、較正される。将来の測定値はこの較正値を参照することができる。プローブの遠端は(空気ではない場合)較正材料によって囲まれてもよい。較正が必要なのは、様々なプローブの種類およびケーブルの設定によって測定される複素インピーダンスが変わるからである。例えば長さが付加される度に位相が回転し、プローブケーブル誘電体および導体損失によって大きさが減少する。較正は、単一の既知の複素インピーダンスに関して実行されてもよいが、好ましくは、異なる複素インピーダンスを有する2つの(あるいはより多くの)異なる材料が用いられる(例えば、空気、毛髪、または誘電率が固定された1片の泡)。空気およびインピーダンスが固定された1片の材料が用いられる場合は、プローブの先端はインピーダンスが固定された材料によって囲まれる。
【0015】
好ましくは、源とプローブとの間にインピーダンスチューナがある。これはスタブチューナでもよく、最も好ましくは3スタブチューナである。チューナがあることにより、組織測定を実行するための最大の感度を与えるよう機器の回路インピーダンスを調整することができる。インピーダンスチューナがある場合、較正におけるこれらの既知の材料の測定されたインピーダンスが、期待された(既知の)インピーダンスと等しくなるまで、インピーダンスチューナの複素インピーダンスを調整することにより、較正が実行されてもよい。較正の他の方法は当業者には明らかである。例えば、スタブチューナが用いられる場合、1つの既知の位置(例えばそれに限定はされないが50オーム+j0)が得られるまでスタブを調整することができ、それはプローブの端部で見られるものとの比較のために用いられる。
【0016】
機器が調整可能なインピーダンスチューナを有する場合、機器が組織を分類している間、チューナのインピーダンスは好ましくは一定に保たれる(例えばそれがスタブチューナである場合、スタブは静止状態に保たれる)。これは、測定を正確かつ反復可能にするのを助ける。組織分類中に用いられるチューナの複素インピーダンスは、較正中に用いられる複素インピーダンスと同じでなければならない。インピーダンスチューナは、いかなる適切な作動手段、例えばステッピングモータ、リニアモータ、圧電アクチュエータ、可動コイル、または磁歪アクチュエータ)によって制御されてもよい。磁歪アクチュエータが特に有利であって、後により詳細に説明される。
【0017】
スタブチューナが用いられる場合、スタブ位置は、プローブが様々な組織層に挿入されるとき、またはアブレーション中に組織状態に変化がある場合に、位相と大きさとの間の変化が最大となることができるよう最初に設定することができる。
【0018】
機器は、マイクロ波放射をプローブに流すために、好ましくは可撓性のあるケーブルを含む。このケーブルは導波管または同軸ケーブルであってもよい。ケーブルは、マイクロ波放射の源および検知器に結合され、通常はケーブルとマイクロ波放射源との間に1つ以上の中間構成素子(例えば増幅器、サーキュレータ、インピーダンスチューナなど)がある。ケーブルはインピーダンス調整器の出力に接続されてもよい。好ましくは、プローブは可撓性のあるケーブルと一体になっている(その場合には、プローブは剛性または半剛性の部分であり、ケーブルは可撓性のある部分である)。
【0019】
好ましくは、ケーブルは、曲げられた状態で高い位相安定性を有する。これは、組織を分類するのに位相測定が必要なので有利であるが、プローブがオペレータによって操作されるにつれてケーブルは曲がる(例えばねじれたり回転したりする)。ケーブルの曲がりにより位相がシフトする場合、情報が失われる。
【0020】
好ましくは、曲がったケーブルの位相安定性は、プローブに伝えられるマイクロ波放射の周波数(すなわちマイクロ波放射の源の周波数)において±5°以下である。これは、ケーブルを通じて進むマイクロ波放射が経る位相シフトが、ケーブルの曲がりに起因して、位相の±5°以下であることを意味する。より好ましくは±3°以下、さらにより好ましくは±2°以下である。
【0021】
曲がった状態のケーブルの位相安定性を測定するための標準的方法は、ケーブルを+90°だけ、次いで−90°だけ曲げ、100,000回繰り返し、曲げている間にケーブルを通過した信号における位相シフトを測定することである。±90°の曲げは、4インチ(101.6mm)の直径を有するマンドレルのまわりで行われる。このテスト中に測定された最大の位相シフトは、曲がった状態のケーブルの位相安定性として特定される位相シフトである。
【0022】
位相安定性は信号の周波数に応じて異なる。上記の好ましい位相安定性は、機器が使用されている時にケーブルが実際に用いられる周波数について特定される。しかしながら、位相安定性は周波数が増加するにつれて減少することに注意するべきである。すなわち、ケーブルが40GHzで必要な位相安定性を有するとすると、より低い周波数では曲げに伴う位相の変化はより少ないので、14GHzでは必要な位相安定性を確実に有することとなる。
【0023】
ケーブルが曲がった状態で振幅安定性を有することも望ましい。好ましくは、曲がった状態での振幅安定性は、2.8dB以下である(ケーブルの曲げによって信号振幅で最大2.8dBが失われることを意味する)。より好ましくは1.5dB以下、さらにより好ましくは1.2dB以下、最も好ましくは1dB以下である。曲がった状態での振幅安定性は、上記の位相安定性に関するやり方と(位相の変化の代わりに振幅の変化が測定されるという点を除いて)同じやり方で測定することができる。
【0024】
異なる周波数を有するマイクロ波放射の2つの異なる源(下記に説明されるように、1つはアブレーション用、1つは組織分類用)がある場合、ケーブルは、組織分類に用いられる周波数において必要な位相および振幅安定性を有しなければならない。好ましくは、ケーブルは、両方の周波数について位相および振幅安定性を有する。
【0025】
マイクロ波放射の源は、好ましくは単一の安定した周波数を出力するよう構成される。
単一の安定した周波数とは、一定の負荷において、その出力周波数が機器の動作温度範囲(通常22°Cから60°C)の対して±5MHzより多くは変動しないことを意味する。より好ましくは、周波数は±1MHzより多くは変動せず、さらに好ましくは±500kHz、±5OkHz、±10kHz以上は変動せず、または動作温度範囲より僅かに±1kHzしか変動しないことが好ましい。
【0026】
単一の周波数の源を有することの利点は、多くのマイクロ波成分が周波数依存特性を有することである。例えば、方向性結合器、導波管部分、チューナキャビティ、Eフィールドランチャ、ケーブルアセンブリ、アダプタ、プローブアセンブリおよび減衰パッドを含む多くのマイクロ波成分が、周波数依存する挿入損および/またはインピーダンスを示す。後者は、インピーダンス整合/不整合および電圧定在波比において周波数依存する変化を引き起こす場合がある。これらの要因は、機器から抽出されるマイクロ波測定情報を変更する。例えば、反射された信号(および、さらにそれがマイクロ波放射の源から得られる場合は、基準信号)は、結合器によって一般に検知器へそらされ、したがって、指向性(順方向信号と反射された信号とを区別する能力)および結合器の結合係数(そらされた主要信号の部分)の関数になり、その両方は周波数依存する。したがって、源の周波数における変動はシステム特性に変化をもたらし、それはノイズまたはシステム感度の低下として現われて、測定感度の低下およびある組織タイプを区別する能力の制限につながる。例えば、基準信号測定と反射された信号測定との間の期間中の源の周波数の変化は、(組織の相互作用によって引き起こされた何らかの変化に加えて)基準信号と反射された信号との間のパワーおよび位相の変化をもたらし、このような望まれない変化は、認識して補うのが困難である。源が上記に規定されるような単一の安定した周波数を出力する場合、これらの問題は回避される。
【0027】
好ましくは、マイクロ波放射の源は単一の周波数に位相ロックされている。源は、この源がロックされる単一の周波数をユーザが変えることができるように構成されてもよい(例えばユーザは、13.75GHzから14.75GHzの範囲の周波数を選択することができてもよい)。好ましくは、マイクロ波放射の源は水晶発振器に位相ロックされる。最も好ましくは、水晶発振器はそれ自体別の水晶発振器に位相ロックされる。この二重位相ロック構成は、出力信号の安定性をさらに保証する助けとなる。
【0028】
代替的には、源は狭帯域フィルタに結合された広帯域の源でもよい。
検知器はアナログ検知器を含んでもよいが、好ましくは、プロセッサ、位相比較器、ベクトルネットワークアナライザ、または入力信号の位相および大きさを測定するよう構成される他の電子装置を含む。現在の電子装置は比較的低周波を要求する傾向があり、したがって反射された信号の周波数、および通常は基準信号の周波数も、検知器に入力される前に減じられる必要がある。これは周波数分割器を用いることにより達成されてもよいが、それはシステムにノイズを加える。
【0029】
したがって、別の手法は、反射された信号を異なる周波数のミキシングダウン信号と組合わせることにより、ミキサで混合することである。するとミキサからの出力は、次に検知器が受取ることのできる、より低い周波数になる。ミキシングダウン信号の周波数は、それが反射された信号および/または基準信号と混合して検知器への入力に適した周波数を生成するよう選択され得る。通常は、前記ミキサの出力と(電子)検知器との間に、望まれない周波数をフィルタするための1つ以上のフィルタおよびデジタルからアナログへの変換器を与えることが望ましい。
【0030】
ミキシングダウン信号は、局部発振器(例えばマイクロ波放射の源に対して異なる周波数を有する局部発振器)によって与えられてもよい。しかしながらその場合、局部発振器およびマイクロ波放射の源の位相および周波数は分かれてドリフトし、これは行われる測
定値の精度を減じる。したがって、ミキシングダウン信号がマイクロ波放射の源から得られることが好ましい。
【0031】
したがって、機器は、第1の入力および第2の入力ならびに出力を有するミキサを好ましくは含み、第1の入力は前記反射された信号をミキサに伝えるための経路に結合され、第2の入力はミキシングダウン信号をミキサに伝えるための経路に結合され、かつ出力は検知器に結合される。
【0032】
好ましくは、ミキシングダウン信号はマイクロ波放射の源から得られる。
好ましくは、ミキシングダウン信号を前記ミキサに届けるための経路は、マイクロ波放射の源の周波数に基づいてミキシングダウン信号の周波数を制御するための位相ロックループを含む。これは、さもなければ不正確な測定の原因となり得るミキシングダウン信号のドリフトを減じるか、または防ぐことを助ける。
【0033】
上記に説明したように、検知器は、基準信号および反射された信号に基づいて組織を分類する。しかしながら、検知器は2つ以上の基準信号を用いてもよい。すなわち、機器が第1および第2の基準信号の源を有し、それらが検知器(または2つの別個の検知器)へそれぞれの信号を入力することは有利になり得る。
【0034】
1つの実施例では、第1の基準信号は源から得られ、独立した局部発振器は第2の基準信号を生成する。代替的には、第2の基準信号はマイクロ波放射の源から得られ、局部発振器を用いて混合されて異なる周波数を与えてもよい。第1および第2の基準信号は異なる周波数を有しなければならない。すると組織分類器は、反射された信号ならびに第1および第2の基準信号の位相と大きさとに基づいて、組織を分類することができる。第2の基準信号を有することの利点は、位相と大きさとの測定値からより多くの情報を抽出することができることであり、これによってより正確に組織を特徴付ける(かつその複素インピーダンスを測定する)ことができる。システムに多くのノイズまたは系統誤差がある場合にも、第2の基準信号は有用である。
【0035】
好ましくは、プローブは、測定部分が異なる組織タイプの接合部と交差しないよう、分類されている組織の中心に挿入される。これにより、組織の界面効果を無視することが可能になる。
【0036】
検知機器は、マイクロ波放射を用いて組織を除去するための機器の一体的な部分であってもよい。単一のシステム内にこれらの2つの機能を組合わせるのは便利である。したがって、機器は、組織を除去し、かつ組織をいくつかの組織タイプの1つに分類することの両方ができることが好ましい。
【0037】
この発明の第2の局面は、この発明の第1の局面による機器を含む組織を除去するための機器を与え、そこでプローブは、前記組織を除去するために組織にマイクロ波放射を届けるよう適合される。機器はさらに、調整可能な複素インピーダンスを有するインピーダンス調整器(例えばチューナ)を好ましくは含み、前記調整器は前記源と前記プローブとの間に位置する。
【0038】
このようにして、インピーダンス調整器(チューナ)は、前記検知器によって検知された信号に基づいてその複素インピーダンスを調整させることができる(この目的のためにコントローラが与えられてもよい)。第1の局面で説明されたように、任意の適切なアクチュエータが用いられてもよい。このように、プローブと組織とのインピーダンス整合が達成でき、そのためマイクロ波放射の組織への効率的な伝達が確実になり、かつ機器の加熱が最小限になる。さらに、使用において、機器は、プローブが接触している組織の種類
を検知することができ、したがってオペレータは、除去するべきか否かを決定することができる。
【0039】
好ましくは、機器は組織を分類し、かつ除去することの両方ができる。これは、例えばマイクロ波放射を用いて組織を除去し、反射された信号(および別個の基準信号)に基づいてそれを分類することにより、同時に行われてもよい。しかしながら、機器は別個のアブレーションモードおよび組織分類モードを有するのが好ましい。例えば、オペレータは、組織のアブレーションのためのアブレーションモードと、組織の分類のための組織特徴付けモードとに、機器を切換えることができる。組織特徴付けモードにおいて、チューナのインピーダンスは好ましくは一定に保たれる。その結果、反射された信号は、第1の局面で説明されたように一定の基準と比較することができる。アブレーションモードにおいて、チューナのインピーダンスは、除去されている組織のインピーダンスと整合するために、好ましくはコントローラによって変えられる。一般に、分類モードにおいてプローブを通じて方向付けられたマイクロ波放射のパワーは、組織を測定することができるが破損することはないように、アブレーションモードにおけるパワーよりも著しく小さい。
【0040】
アブレーションモードおよび分類モードにおける信号強度間には大きな振幅の差があり得、これは、反射されたアブレーション信号および反射された組織分類信号の両方を検知し分析するために同じ機器が用いられる場合、信号検知に障害を引き起こすかもしれない。これは特に、反射された周波数を検知器に入力される前にミキシングダウンするためにミキサが用いられる場合に生じる。なぜならばミキサは通常、限定されたダイナミックレンジでしか作動しないからである。したがって、機器は、(i)機器が組織分類モードである場合、反射されたマイクロ波放射を、それが検知器に到達する前に増幅するための可変増幅器、および/または、(ii)機器が組織アブレーションモードである場合、反射されたマイクロ波放射を、それが検知器に到達する前に減衰させるための可変減衰器を、好ましくは含む。このようにして信号強度を、それが検知器またはミキサに達する前に調整することができる。この情報がコントローラに記憶され、またはオペレータに渡されることができるように、増幅または減衰の前に元の信号強度をチェックするために別個の検知器が用いられてもよい。
【0041】
機器は、アブレーションモードにある場合、マイクロ波放射の第1の周波数をプローブに方向付けるように、かつ、組織分類モードにある場合は、マイクロ波放射の第1の周波数とは異なる第2の周波数をプローブに方向付けるように構成されてもよい。例えば、機器は、組織を除去するために用いられる、第1の周波数を有するマイクロ波放射の第1の源と、組織を分類するために用いられる、第2の周波数を有するマイクロ波放射の第2の源とを有し得る。前記第2の周波数は前記第1の周波数とは異なり、組織測定および分類目的に用いられる。その利点は、ある周波数においてはある組織タイプが特に強い応答を示し、これらの周波数が組織分類に適する一方で、アブレーションには異なる周波数の方が適することである。
【0042】
マイクロ波放射の第2の源はプローブに結合され、プローブは、第2の周波数の反射された放射を伝えるために戻り経路によって検知器に結合される。好ましくはマイクロ波放射の第2の源から得られた第2の基準信号が、第2の周波数の反射されたマイクロ波放射のために基準として与えられる。次に組織分類を上述されたように実行することができる。
【0043】
第1の周波数が第2の周波数のために確保された検知器の入力に達すること、またはその逆を、防ぐか最小限にするために、1つ以上のフィルタが与えられてもよい。これにより、例えば組織アブレーションおよび分類を同時に実行することができるよう、マイクロ波放射の両方の源に同時にスイッチが入ることが可能となる。
【0044】
プローブという用語は、マイクロ波放射を組織に届け、かつ組織によって反射されたマイクロ波放射を受取ることができるいかなる装置をも意味する。プローブは例えば同軸または導波管でもよい。好ましくは、導波管は低損失誘電体および/または磁性材料を搭載する。これは、導波管キャビティのサイズを減じることができるようにするためである。プローブは組織内に挿入するのに適し、侵襲的な手順で用いるのに適していなければならない。好ましくはプローブは、組織に貫通することができるように設計されている。例えば、プローブは、内視鏡またはトロカールの助けなしに組織に挿入され得るよう、剛性のケーシングを有することが好ましい。しかしながら、プローブは半剛性または可撓性であってもよく、トロカール、内視鏡、カニューレまたは他の管によって人体に挿入される。プローブは、その遠端がテーパ状であるか、尖っているか、または円錐形であるのが好ましい。これは、プローブが組織に貫通するのを助け、さらにマイクロ波放射の焦点を合わせる。しかしながら、特に内視鏡または他の管を通して組織に挿入されるよう設計されている場合、プローブが円錐形であったり、尖っていたり、またはテーパ状である必要はない。いかなる場合も、手順は侵襲的であることが好ましい。すなわち、まずプローブが組織に直接に、または管を通して挿入され、次いでマイクロ波エネルギがアブレーションまたは組織分類の目的のために届けられる。
【0045】
好ましくはプローブは、外部導体と、内部導体と、その2つの間に誘電体とを有し、構造の遠端に円錐体が取付けられる。好ましくは、円錐体は低損失(GHz周波数において低損失)誘電体を含む。好ましくは、内部導体はプローブの遠端で露出される。好ましくは内部導体は円錐体を通って延在し、最も好ましくは円錐体の遠端で露出される。これが最適の測定感度を与えることが判明している。
【0046】
好ましくは、プローブは(例えばチューナ出力に接続され得る)可撓性のあるケーブルに組込まれる。これによりケーブルおよびプローブアセンブリを共に殺菌することができ、オペレータにとって便利である。
【0047】
この発明の第2の局面の機器は、上述の第1の局面の特徴のうちいずれかを有していてもよい。
【0048】
PCT/GB2003/005166は、チューナのインピーダンスの調整によるインピーダンス整合を記載する。しかしながら、インピーダンスを調整するための機構は詳細には説明されない。組織の弛緩時間がミリ秒のオーダで非常に短いので、チューナの作動が組織の複素インピーダンスの変化に遅れずについていかねばならない場合、それは同等に迅速である必要がある。最も一般的には、この発明の第3の局面は、アクチュエータに磁歪材料を用いることを提案する。磁歪材料は、磁界にさらされた場合にその寸法が変化する。これは磁界の変化に極めて素早く応答し、したがって、インピーダンスの迅速な調整を達成することができる。
【0049】
したがって、この発明の第3の局面は、調整可能な長さまたは位置の1つ以上のチューナ素子(例えばチューナロッド)を有するマイクロ波回路で使用するためのチューナを与えることができ、その結果、前記素子の調整によって、チューナのインピーダンスを変えることができる。さらに、前記磁歪材料の長さの変化が前記同調素子の有効長さを動かすかまたは変化させるよう、前記同調素子のうちの1つに結合されたある長さの磁歪材料を含む、少なくとも1つのアクチュエータを与え、さらに、前記磁歪材料の少なくとも一部を囲む1つ以上のコイル巻線に接続された電流の1つ以上の源を与える。次に電流源は、コイル巻線を介して磁界を生成し、かつ磁歪材料の長さを変えるために用いられ得る。
【0050】
その、または各々の同調素子は、それぞれの磁歪アクチュエータに組込まれていてもよ
い。しかしながら、ほとんどの磁歪材料はチューナの信号損失を引き起こすので、アクチュエータおよび同調素子が別個の構成要素であることが望ましい。低損失材料、例えば銀および銅が同調素子に特に適する。同調素子とアクチュエータとが1つの一体型構成素子である場合、チューナの損失を回避するため、その構成素子の同調端が低損失材料でコーティングされることが好ましい。この場合、コーティングの厚さは、電磁界がコーティング素子インタフェースでゼロまたはゼロに近い状態であることが好ましい。
【0051】
通常、各アクチュエータは、その磁歪材料を囲むいくつかのコイル巻線またはコイル巻線の組を有する。好ましくは複数の電流源があり、その各々はそれぞれの個別のコイル巻線またはコイル巻線の組に接続される。このようにして、各電流源に結合された巻線の数を少なく保つことができ、応答時間が短く保たれる。別の利点は、誘発されたemfのレベルが最小限になることである。各電流源は、FPGA/DSP、または各電流巻線に向けられた電流を制御するための他の制御回路に接続された、それぞれの増幅器の形をとってもよい。高い出力電圧および高いスルーレートを有する高速の増幅器が好ましい。
【0052】
磁歪材料は好ましくはテルフェノール(terfenol)を含み、最も好ましくはテルフェノール−D(terfenol−D)を含む。例えばニッケル、アイロンおよびパーマロイ(Nickel, Iron & Permalloy)などの他の磁歪材料を用いることもできる。テルフェノールDは極めて嵩高の飽和歪み(2000X10−6)を有し、したがって、非常に高速な作動を与えることができるので、好ましい。
【0053】
1つの実施例では、ある長さの磁歪材料はロッドであり、その一方端は同調素子に取付けられる。
【0054】
好ましくはある長さの磁歪材料は、非磁性のハウジング、例えば非磁性金属またはプラスチック材料の中空のシリンダに収容される。コイル巻線はハウジングの外部に与えることができる。
【0055】
好ましくはハウジングは、磁歪材料との締りばめを有する(すなわちきつく嵌合する)。すなわちハウジングはアクチュエータを握持する。そのため、アクチュエータ(例えば磁歪材料のロッド)はハウジングのボアに沿って動くことができる。電流が1つ以上のコイルを通ってパルスにされる度に磁界が生成され、アクチュエータが拡張する。パルスが通過した後は材料が緩み、アクチュエータは収縮する。
【0056】
その効果は、アクチュエータがボアに沿って動けることである。パルスが第1の極性を有する場合、アクチュエータは、同調素子をチューナにさらに押し込むために、ボアの第1の端部に向って拡張する。パルスが通過した後は、磁歪材料はハウジングによって握持される「前方の」端部を緩め、(拡張方向と反対の)後方の端部は収縮して、新たな位置まで引き上げられる。このようにして、アクチュエータはボアに沿って進む。極性が変更されると、拡張と緩和とは反対方向になり、同調素子は後退することができる。
【0057】
したがってアクチュエータは、好ましくはロッド磁歪材料の形の可動アクチュエータであって、磁界をパルスにすることによって、締りばめを有するハウジングのボアに沿って可動である。この構成により、アクチュエータの一方端がハウジングの固定位置に固定された場合の状況と比較して、相当程度の動きが可能になる。
【0058】
各電流源(およびコイルまたはコイルの組)を独立して活性化することによって、磁歪ロッドの各連続する断面が延長し、磁界が取除かれると収縮し、その結果、ロッドがハウジングのボアに沿って徐行するようにすることができる。
【0059】
好ましくは同調素子はスタブチューナの同調ロッドであり、最も好ましくは3スタブチューナである。各同調ロッドまたは素子は、それぞれの磁歪アクチュエータに結合される。
【0060】
この発明の第3の局面のチューナおよび作動構成は、組織アブレーション機器もしくは組織分類機器のいずれか、または組織分類およびアブレーションの両方ができる機器と共に用いられてもよい。例えば、それはこの発明の第1または第2の局面による機器と共に用いられてもよい。
【0061】
この発明の第3の局面によるチューナは組織アブレーション機器の中で用いることができ、この機器は、マイクロ波放射の源と、除去されるべき組織にマイクロ波放射を方向付けるためのプローブと、反射されてプローブを通して戻るマイクロ波放射の大きさおよび位相を検知するための検知器と、プローブおよび源の間のインピーダンスチューナとを含む。次いで、反射されたマイクロ波放射の検知された位相および大きさに基づいてチューナのインピーダンスを調整するために、コントローラがアクチュエータを制御することができる。このようにして機器のインピーダンスは、組織の複素インピーダンスが急速に変化しても、除去されている組織と整合することができる。検知器は位相比較器またはベクトルネットワークアナライザであってもよい。検知器は、ミキサと、マイクロ波放射の源の周波数とは異なる周波数の局部発振器とを含む、ヘテロダイン検知構成でもよい。
【0062】
この発明の第4の局面は、組織アブレーションまたは測定機器を与え、機器は、マイクロ波放射の源と、除去されるべき組織にマイクロ波放射を方向付けるためのプローブと、プローブを通じて反射されて戻るマイクロ波放射の位相および大きさを検知するための検知器と、プローブと源との間のインピーダンスチューナとを含み、そこでインピーダンスチューナは1つ以上のロッドを含み、ロッドは磁歪材料を含む1つ以上のアクチュエータによって作動される。
【0063】
好ましくはインピーダンスチューナは、この発明の第3の局面によるチューナである。
この発明の第5の局面は組織を分類する方法であって、a)分類されるべき組織にプローブを挿入するステップと、b)前記プローブを通じてマイクロ波放射を組織に方向付けるステップと、c)前記組織により反射されて前記プローブを通じて戻るマイクロ波放射の振幅および位相と、基準信号の振幅および位相とに基づいて、組織タイプまたは組織状態を分類するステップとを含む。方法は、この発明の第1の局面による機器を用いてもよい。
【0064】
プローブは組織を貫通するよう構成され、組織に直接挿入されてもよい。代替的には、トロカールまたは内視鏡などの管を介して挿入されてもよい。
【0065】
プローブの遠端は、分類されるべき組織において位置決めされなければならない。
この発明の第6の局面は方法を与えることができ、方法は、まずこの発明の第5の局面のステップを実行することによって組織を分類するステップと、次に前記組織に挿入された同じプローブまたは別のプローブまでマイクロ波放射を方向付けることにより組織を除去するステップとを含む。
【0066】
このようにして、アブレーションを開始する前に、除去されるべき特定の組織タイプを見つけるため(例えば腫瘍または癌組織を見つけるため)に、この機器を用いることができる。
【0067】
この方法が応用され得る適用例は下記を含む。脳神経外科、脳腫瘍の処置、肝細胞癌の治療などの肝臓の手術、デスモイド腫瘍の治療、食道癌、肺癌および乳癌の治療である。
各症例において、機器によって癌組織を見つけてその後除去することができる。
【0068】
この発明の第5の局面による機器を用いることにより癌組織を見つけ、次に、組織を取除いたり破壊したりする他の従来の外科的方法を用いることも可能である。
【0069】
他の適用例は、神経経路の特定およびアブレーションによって苦痛を和らげることである。例えば、神経(plexii)に侵入するまで発達した進行性の悪性腫瘍を持つ患者の慢性的難治性疼痛を和らげることが可能である。神経の選択的なアブレーションは神経経路を破壊する。このような治療は患者の寿命を延ばすわけではないが、苦痛の緩和によって潜在的に患者のクオリティーオブライフを向上させることができる。
【0070】
好ましくは、組織分類はマイクロ波放射の第1のパワーで実行され、アブレーションは前記第1のパワーより大きいマイクロ波放射の第2のパワーで実行される。
【0071】
方法は、除去するのが望ましい(例えば癌)組織のすべてが除去されたか否かをチェックするために、一定の期間アブレーションが実行された後に組織を分類するステップをさらに含んでもよい。この組織分類は、例えば設定されたアブレーション期間後などに、例えばアブレーションを中止して分類モードに切換えることなどにより、周期的に実行されてもよい。代替的には、組織アブレーションおよび分類に異なる周波数が用いられる場合、アブレーションと同時に連続的に実行されてもよい。
【0072】
オペレータは、所望の(例えば癌)組織がすべて除去されたことが検知された後、癌組織が残っていないことを確認するため、もとの腫瘍のまわりに安全域を確立するために、アブレーションを続けてもよい。
【0073】
この発明の第6の局面は、この発明の第2の局面による機器を用いて実行されてもよい。
この発明の第7の局面は、この発明の第3の局面で上述されたような磁歪材料を用いたインピーダンスチューナを作動させる方法である。これは、上述の第5および第6の局面と組合わされてもよい。
【0074】
アブレーションまたは組織分類用機器における反射された信号および/または基準信号のミキシングダウンに関する、この発明の別の局面がここで説明される。以前に述べたように、PCT/GB2003/005166は、図1に示されるヘテロダイン検知システムの代わりに、図2に示されるような大きさ/位相比較器65を用いることが可能であることを開示する。図2の方向性結合器250、200は、順方向の反射された信号の部分を検知器構成に方向付け、それは、位相を測定するための位相比較器65とともに、信号の大きさを測定するための振幅センサ61、63を含む。現在入手可能な位相比較器が比較的低い周波数しか扱うことができないので、結合器200からの反射された信号の周波数は、電子周波数分割器64を用いることによって減じることが必要である。
【0075】
しかしながら、用いられる分周比が大きい場合(および、サーマルノイズと接点ノイズなどの他のランダムノイズが入る場合)、電子周波数分割器は著しい量の位相ノイズを入れるので、情報が失われる。したがって発明者らは、周波数を減じるために、電子周波数分割器の代わりに混合構成を用いるシステムを工夫した。このシステムでは、反射されたマイクロ波放射は、検知器で用いるためのより低い周波数の信号をミキサが出力するように、局部発振器からの異なる周波数の第2のマイクロ波信号と混合される。局部発振器の位相および周波数、ならびにマイクロ波放射の源がドリフトし、それによって、行われる測定の精度が減じられることに困難性がある。
【0076】
したがって、この発明のある局面は、マイクロ波放射の源から第2の信号(「ミキシングダウン」信号と呼ばれ得る)が得られ、かつ好ましくはマイクロ波放射の源に位相ロックされることを提案する。このようにして測定は正確に保たれる。なぜならば、位相のいかなる差も、(独立した局部発振器によってミキシングダウン信号が与えられた場合に起こり得る)2つの異なる発振器間の一時的な偏差によるものではなく、組織との相互作用によることになるからである。さらに、周波数分割器が用いられると情報が失われるので、この態様でミキシングダウンすると、より有用な情報を与える。
【0077】
したがって、この発明の第8の局面は、組織アブレーションまたは測定機器を提案し、機器は、
マイクロ波放射の源と、
除去および/または測定されるべき組織に前記マイクロ波放射を届けるためのプローブと、
前記源から前記プローブへマイクロ波放射を伝えるための第1の経路と、
第1および第2の入力ならびに出力を有する第1のミキサと、
前記源から得られた信号を前記第1のミキサの前記第1の入力に届けるための第2の経路と、
前記第1の経路からマイクロ波放射の一部をそらすための第3の経路とを含み、前記そらされた放射は、前記第1の経路に沿って前記源から前記プローブまで進む順方向放射か、または前記プローブを通じて反射されて戻るマイクロ波放射のいずれかであって、第3の経路は、前記そらされた放射またはそらされた放射から得られる信号を前記第1のミキサの前記第2の入力まで届け、さらに、
前記第1の経路からそらされた前記順方向放射または反射された放射の振幅および位相を計算するよう構成されたプロセッサへ信号を送信するよう構成されたミキサの出力を含み、
前記第2の経路は、マイクロ波放射の源の周波数に基づいて第1のミキサの第1の入力に送信された信号の周波数を制御するための位相ロックループを含む。
【0078】
この発明のこの局面は、組織アブレーション機器、組織分類機器、または組織を分類しかつ除去することができる機器に適用され得る。
【0079】
一般に、第1のミキサの第1の入力への信号入力は、ミキサの第2の入力への信号入力とは周波数において異なるはずである。なぜならば、ミキサは2つの入力周波数の差および和を出力し、後者は好ましくはローパスフィルタでフィルタされるからである。前記第2の経路は、通常、マイクロ波放射の源の周波数とは異なる周波数を有する信号を前記第1のミキサの前記第1の入力に届けるように構成される。第1のミキサの第2の入力への信号入力は、通常、マイクロ波放射の源と同じ周波数である。2つの信号の周波数の差は、プロセッサへの直接またはADCを介した入力として許容可能でなければならない。本質的には、第2の経路はミキシングダウン信号を第1のミキサに届け、そこでこの信号は、第1の経路からそらされた反射された信号または基準信号と混合される。
【0080】
好ましくは、位相ロックループは、順方向経路およびフィードバック経路を含む。好ましくは、順方向経路は、マイクロ波放射の前記源に結合される第1の入力と、第2のミキサから前記第1のミキサの前記第1の入力に向って順方向経路に沿って信号を出力するための出力とを有する前記第2のミキサを含み、フィードバック経路は、前記第1のミキサの第1の入力に送られた信号の一部を前記第2のミキサの第2の入力へとそらすよう構成される。
【0081】
換言すれば、第2の経路は、マイクロ波放射の源に結合されて、マイクロ波放射の源と第1のミキサとの間に第2のミキサを有し、第1のミキサの第1の入力を第2のミキサの
第2の入力に結合する第4の経路があるのが好ましい。この第4の経路は、事実上、上述の(第2の経路の位相ロックループの一部としての)フィードバック経路である。これは位相ロックループを実現する便利な方法である。これは第1のミキサの第1の入力に安定した周波数を与え、前記第1の周波数の基準となる。
【0082】
好ましくは、順方向経路は位相検知器と電圧制御発振器とを含む。これらは、第1のミキサと第2のミキサと間に便利に置かれてもよい。位相検知器は局部発振器に接続されるか、これを含み、第2のミキサからの信号出力の位相と局部発振器の位相とを比較するよう構成されてもよい。位相検知器は、次にこの比較に基づいて制御信号を電圧制御発振器(VCO)に届けることができ、電圧制御発振器は前記第1のミキサの第1の入力に信号を出力するよう構成される。
【0083】
このようにして、VCOの適切な制御によって、第1のミキサの第1の入力に送られる周波数を制御し、マイクロ波放射の源に対してドリフトすることを防ぐことができる。局部発振器は、高精度の温度補償水晶発振器(例えば50MHz以下)でもよく、このような水晶発振器はほとんどのマイクロ波周波数発振器よりもさらに安定した信号を与えるので、マイクロ波放射の源の周波数のいかなる変動も、追跡され、第1のミキサの第1の入力に送られる信号に反映されることができる。すなわち前記第1のミキサの出力における中間周波数(If)が一定に保たれ得る。
【0084】
電圧制御発振器は、好ましくはマイクロ波領域の周波数を、最も好ましくはマイクロ波放射の源の周波数に接近した周波数を出力するよう構成される。具体的には、第3の経路からの信号と第1のミキサにおいて混合されて、ADCまたは他の信号処理装置によって受取られる信号を生成する周波数である。通常これは、MHz範囲(例えば最大250MHz、より一般には50MHz以下であるがこれらのいずれにも限定されない)にある。
【0085】
好ましくは、第2のミキサと位相検知器との間にローパスフィルタが与えられる。これは、第2のミキサに生成されたいかなる高周波成分もフィルタし(例えば2つの入力周波数の和をフィルタし、差が通過することを可能にする)、和周波数が第1のミキサの周波数帯の外にある場合には、ローパスフィルタは必要ではないことがある。
【0086】
好ましくは、位相検知器と電圧制御発振器との間にループフィルタが与えられる。これにより、必要であれば、位相検知器からの信号がフィルタされオフセットされることを確実にし、電圧制御発振器が受取ることができる制御信号を与える。
【0087】
好ましくは、第1のミキサの出力とプロセッサとの間にアナログからデジタルへの変換器(ADC)がある。これにより、第1のミキサからのアナログ信号をプロセッサによって処理することが可能になる。ADCは、FDGA、DSPまたは他の形式のプロセッサに組込まれてもよい。
【0088】
マイクロ波放射の源自体がその固有の位相ロックループによって好ましくは安定に保たれることに注意するべきである。すなわち、マイクロ波放射の源の位相と安定した(例えば温度補償結晶の)局部発振器の位相との差についてのフィードバックに基づいて制御される。別の可能性として、狭帯域フィルタによってフィルタされた広帯域の源を有し、安定した出力を与えることもできる。安定した単一の周波数のマイクロ波放射の源を達成するために、この発明の第1の局面で説明されたものと同じ手法が用いられてもよい。
【0089】
好ましくは、第1の経路上にサーキュレータがあり、マイクロ波放射の源と、一方では第2の経路との間、他方ではプローブとの間に位置決めされる。アブレーションシステムでは、第1の経路上の源とプローブとの間に通常は電力増幅器もあり、これは、一般に大
きなレベルの反射されたパワーが電力増幅器の出力段を損うのを防ぐために、サーキュレータの源側に置かれる。
【0090】
好ましくは、第3の経路は複数のチャネルを含み、チャネルの各々は第1の経路上の異なる点またはプローブに結合され、かつ、前記チャネルのうち一度に1つのみから第1のミキサの第2の入力に放射を方向付けるよう構成される切換装置に接続される。
【0091】
このように、切換装置によって回路の点の選択が可能になり、そこから反射されたか、または順方向に向けられた放射が得られる。好ましくはコントローラは検知器と関連して切換装置を制御し、様々なチャネルから連続した読取値を得る。換言すれば、時分割システムが用いられる。代替的には、周波数多重化または別の多重化システムを用いることができる。
【0092】
このように、いくつかのチャネルがあるので、組織の複素インピーダンスを分析するためのより多くの情報が利用可能である。一般に、チャネルのうちのいくつかは、順方向結合器によって第1の経路に接続されて順方向に向けられた放射を伝え、他のチャネルは逆方向結合器によって接続されて、反射した放射を流す。順方向に向けられた放射は、反射された放射のための基準信号として作用することができ、それによって組織を分類することができる。
【0093】
時分割の代わりに、例えば第1の経路からの放射をそらすために5つのチャネルがあった場合、10個のミキサおよび5つのフィードバックループなどの、各チャネルについて第1および第2のミキサを含む個別のフィードバックループを有することが可能である。しかしながら、そうすると、各ミキサから独立したノイズまたは誤差が生じる。したがって、切換装置を用いた多重化が好ましい。
【0094】
サーキュレータがある場合、反射された放射を流すチャネルは、第1の経路上の前記サーキュレータとプローブとの間の点において、または直接プローブ自体に結合される。第1の経路上の源とプローブとの間に電力増幅器がある場合、第3の経路上の順方向に向けられた放射を流すためのチャネルが、第1の経路上の電力増幅器の出力とプローブとの間に結合することが好ましい。これは、電力増幅器で位相変化が生じ得るからであり、組織の特徴付け(以下を参照)およびアブレーション整合の目的のために、プローブの方へ送られた、増幅された順方向に向けられた信号と、プローブを通じて戻された反射された信号とを比較する方がより有益になり得るからである。
【0095】
この発明の第8の局面の機器は、インピーダンス整合もしくは組織測定および組織分類、またはその両方に用いられてもよい。好ましくは、機器は組織を分類することができ、前記検知器に基準信号を伝えるためのチャネルと、前記検知器によって検知されるような反射された放射および基準信号の大きさおよび位相に基づいて組織を組織タイプまたは組織状態に分類するための組織分類器とを含む。基準信号は独立した局部発振器から、またはマイクロ波放射の源から得られ、しかしながらそれは前記第2の経路からは分離している。好ましくは、上記に説明されるようないずれかの電力増幅器から通常得られるのは、源からプローブまで移動する放射に基づいた順方向に向けられた信号である。そのような基準信号もインピーダンス整合に用いることができる。
【0096】
機器が、人間または動物の体内で組織の生体内測定を行うのに適しているように、プローブは、組織に挿入されるために設計される。上記の構成によって、機器は、プローブの遠端の端部にいかなる種類の組織(例えば骨、脂肪、筋肉、腫瘍)があるかを判断することができる。プローブの遠端は、その中央導体を導電的または容量的に搭載することにより、非常に短くなり得る。
【0097】
好ましくは、機器は、基準信号の大きさおよび位相、ならびにプローブを通して組織によって反射されて戻る放射の大きさおよび位相に基づいて、組織の複素インピーダンスを測定するよう構成される。
【0098】
組織を除去する際、インピーダンス整合、および組織を分類する目的のための組織測定の両方ともが、反射されたマイクロ波放射(または反射されたマイクロ波放射に基づく信号)の振幅および位相を測定することを伴う。
【0099】
この発明の第8の局面は、組織アブレーション機器または組織測定機器のいずれかに適用することができる。機器は好ましくは2重機能を有し、組織を除去することも分類することもできる。しかしながらこれは強制的ではなく、この発明は、(例えば高出力の増幅器がないなど)除去しない組織測定機器、または組織を分類するための計算能力を有さない組織アブレーション機器に適用されてもよい。
【0100】
組織アブレーションおよび組織分類の両方ができるシステムは、一般に少なくとも2つの運転モードを有する。組織アブレーションモードおよび組織分類モードである。アブレーションモードにおけるプローブから出力される(そして組織に送られる)マイクロ波放射のパワーは、組織分類モードで用いられるパワーより典型的にははるかに高い。このようにして、(例えば組織分類の実行中に発見された)任意の健康な組織への損傷を最小限にすることができる。さらにそれは、高用量の非電離放射が癌組織のみに当たることを確実にするのを助ける。
【0101】
しかしながら、反射された放射を、デジタルプロセッサによって受取ることができるより低周波数の信号に変換するためにミキサが用いられる場合、これらの2つのモード間に問題が生じる。典型的には、ミキサは、限定されたダイナミックレンジの入力パワーでしか作動することができない。例えば−10dBから+10dBまでのダイナミックレンジが典型的である。
【0102】
したがって、この発明の別の局面は、最も一般的には、可変減衰器および/または可変増幅器を用いて、ミキサに方向付けられた信号の振幅を増加させるか、または減少させることを提案する。
【0103】
したがって、この発明の第9の局面は組織分類およびアブレーション機器を与え、機器はマイクロ波放射の源と、
除去または測定されるべき組織に前記マイクロ波放射を届けるためのプローブと、
前記源から前記プローブにマイクロ波放射を伝えるための第1の経路と、
第1および第2の入力ならびに前記プロセッサに信号を方向付けるための出力を有する第1のミキサと、
前記第1のミキサの前記第1の入力に信号源を届けるための第2の経路とを含み、前記信号は、プローブを通じて届けられるマイクロ波放射の周波数とは異なる周波数を有し、さらに、
前記第1の経路からマイクロ波放射の部分をそらすための第3の経路を含み、前記そらされた放射は、前記第1の経路に沿って前記源から前記プローブまで進む順方向に向けられた放射、または反射して前記プローブを通じて戻る、反射されたマイクロ波放射のいずれかであって、第3の経路は、前記そらされた放射またはそらされた放射から得られた信号を前記第1のミキサの前記第2の入力に届け、さらに、
前記第1の経路からそらされた前記順方向に向けられた放射または反射された放射の振幅および位相を計算するよう構成されるプロセッサに信号を送信するよう構成されるミキサの出力と、
反射されたマイクロ波放射を、それが前記第1のミキサの第2の入力に到達する前に、反射されたマイクロ波放射を減衰または増幅させるための、前記第3の経路上の可変減衰器および/または可変増幅器とを含む。
【0104】
第1のミキサの第1の入力に送られる信号は、第1のミキサが2つの入力信号間の差を出力することができるよう、第1のミキサの第2の入力に入力された周波数とは異なっているべきである。通常これは、第3の経路からの放射がマイクロ波放射の源と通常は同じ周波数を有するので、前記源と異なる周波数を届けるよう第2の経路を構成することによって達成される。しかしながら、第3の経路上に、周波数分割器またはミキシングダウン構成を有することが、原則として可能である。この発明のこの第2の局面では、第1のミキサの第1の入力に届けられる、第2の経路からの信号は、マイクロ波放射の源または個別の独立した発振器から得ることができる。
【0105】
好ましくは可変減衰器は少なくとも第1の減衰レベルまたは範囲、および第2の減衰レベルまたは範囲を有し、かつ機器は、分類モードにおいては第1の減衰レベルまたは範囲を、アブレーションモードにおいては第2の(より高い)減衰レベルまたは範囲を利用するよう構成される。
【0106】
可変増幅器についても、入力信号がより弱い分類モードにおいてより大きな利得を用いるように構成されるという点を除いて、同じことが言える。
【0107】
一般に、第1の経路上の源とプローブとの間に電力増幅器がある。この電力増幅器は、アブレーションモードおよび組織特徴付けモードについて少なくとも2つの異なる信号パワーを与えるために、スイッチがオンもしくはオフにされ、または好ましくは可変利得を有し、もしくは可変利得増幅器に接続される。代替的にまたは追加的に、マイクロ波放射の源と前記増幅器との間に可変減衰器を与えることができる。2つの異なるモードについて第1および第2のパワーレベルを機器に与える他の方法は、当業者には明らかである。
【0108】
好ましくは、電力増幅器とプローブとの間にサーキュレータが与えられる。
好ましくは、可変減衰器は連続的に変動する減衰を有する(すなわち2つの離散的レベルの減衰に限定されない)。1つの実施例では、可変減衰器はピンダイオードである。
【0109】
好ましくは、第3の経路に結合された、反射された信号の振幅を検知するための振幅検知器がある。振幅検知器は、例えば対数タイプまたは単純なダイオードタイプであって、前者は大きなダイナミックレンジを与え、他の可能性は当業者には明らかである。振幅検知器は、検知された振幅に基づいて可変減衰器の減衰または可変減衰器の利得を制御するために信号を送信するよう構成される。このように、振幅検知器が大きな信号を検知した場合、第1のミキサの第2の入力への信号入力が予め定められた範囲内にあるように、可変減衰器を制御して減衰を増加させることができる。非常に低い信号が検知された場合は、可変増幅器が制御されて、第1のミキサの第2の入力に受取られ得るレベルの信号に信号を増幅することができ、(存在する場合は)減衰器が制御されて、減衰しないように、または減衰を最小限にするようにすることができる。
【0110】
振幅検知器は、振幅検知器信号に基づいて可変減衰器および/または可変増幅器を制御するよう構成される、FPGAなどのコントローラに接続されてもよい。
【0111】
機器は、好ましくは、第1の経路上の源とプローブとの間にインピーダンスチューナを有する(そこにはサーキュレータが存在し、前記インピーダンスチューナはサーキュレータのプローブ側にある)に。インピーダンスチューナの複素インピーダンスは、プロセッサおよび/または第2の振幅検知器によって検知されるような、反射されたマイクロ波放
射の振幅および位相に基づいて、コントローラによって調整可能である。好ましくは、チューナは3スタブチューナである。
【0112】
この発明の第9の局面で用いられる機器が用いられてもよく、またはこの発明の他の局面のいずれと組み合わせてもよい。
【0113】
この発明の実施例が、例としてのみ、添付の図面を参照してここで説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0114】
発明の詳細な説明
図5に概略的に示される組織分類機器は、マイクロ波放射を分類すべき組織に方向付けるよう構成されたプローブ5に接続された、マイクロ波放射の安定した位相ロックされた源1を有する。プローブ5は、測定される組織がプローブの遠端5aにくるかまたは当該遠端5aを囲むように組織に挿入されるよう適合される。すなわち、使用の際に、プローブと組織6とが物理的に接触する。
【0115】
マイクロ波放射の源1は、電圧制御発振器(VCO)、誘電共振発振器(DRO)、弾性表面波発振器(SAW)、ガンダイオード発振器、または当業者に公知の他のいかなる適切な発振器であってもよい。当該源は、周波数制御素子として作用するよう構成された微小電気機械(MEM)装置を含み得る。MEM装置は、実質的には寄生のない受動素子であり、このため、ノイズおよびこれに伴って起こる周波数変動、たとえばジッタがさらに低減され得るという利点を有する。
【0116】
マイクロ波放射の源は、単一の安定した周波数を出力するように位相ロックされている。たとえば、図3において用いられる構成が用いられてもよい。この実施例においては、マイクロ波放射の源は、13.75GHz〜14.75GHzの周波数を出力し、14.5GHzの単一の周波数を生成するよう位相ロックされる。マイクロ波放射の源についての好適な選択肢は、たとえば、動作温度範囲に1.5GHz/℃のドリフトを有するヒッタイト社(Hittite)のHMC398QS16G VCOであり得る。位相ロック構成を用いて、出力周波数のドリフトを摂氏20〜60度の動作範囲で5KHz/摂氏度未満に維持する。
【0117】
代替的には、マイクロ波放射の源は、それ自体が別の安定した水晶発振器に位相ロックされた安定した水晶発振器に位相ロックされてもよい(このため、この構成はマイクロ波発振器と2つの水晶発振器とを有している)。この二重位相ロック構成は、ドリフトをさらにできるだけ小さくすることを容易にする。ドリフトをできるだけ小さくすることが重要である。というのも、これにより、システムにおける(周波数依存であり得る)ノイズの補償が容易になり、測定感度がより正確になるからである。水晶発振器のうちの1つはTXCO(温度補償水晶発振器)であり、もう一方はVXCO(電圧制御水晶発振器)であり得る。好適なTXCOの一例として、13MHzで動作するゴレッジ・エレクトロニクス社(Golledge Electronics Limited)のGTXO−580V/Gが挙げられる(が、この発明はこれに限定されない)。
【0118】
図20に示される一例は、二重位相ロックされた構成であり、これは、マイクロ波放射の源として機能するDRO(誘電共振発振器)1001と、第1の水晶発振器として機能するTXCO1020と、第2の水晶発振器として機能するVXCO1030とを含む。
【0119】
第1の水晶発振器1020は、(典型的にはMHzの範囲の設定された安定した周波数で)信号を位相比較器1015bに出力する。位相比較器1019は、ループフィルタ1019を介して、マイクロ波放射の源1001の第1の入力1050に出力する。マイク
ロ波放射の源は、機器の残りの部分において用いるための位相ロックされたマイクロ波信号を出力する。この信号の一部は、マイクロ波信号の周波数を分割する(すなわち低減させる)周波数分割器1006に(たとえば、結合器によって)そらされるので、第1の水晶発振器1020の周波数と同じかまたは類似の周波数となり、この分割された信号が位相比較器1015bに入力される。こうして、位相比較器の出力は、マイクロ波放射の源1001の出力と第1の水晶発振器1020との間の位相の差に依存する。このように、マイクロ波放射の源の出力周波数は、それが第1の水晶発振器1020に比べて増大するかのように安定して維持され、マイクロ波放射の源の入力1050に送信される信号がこれに従って調整されることにより、マイクロ波放射出力信号の周波数が下げられる。逆の場合もまた同様である。マイクロ波放射の源1001はまた、第1の水晶発振器1020に位相ロックされた第2の水晶発振器1030から得られ、入力1040において受信される信号によって制御される。第1の水晶発振器1020からの信号の一部が第2の位相比較器1015aに入力され、これが、ループフィルタ1017を介して、電圧制御された第2の水晶発振器1030に出力する。第2の水晶発振器1030の出力は周波数分割器1005に送られ、これが、信号周波数を低減させ、位相ロック構成である位相比較器1015aのもう一方の入力に出力し、これにより、第2の水晶発振器1030の出力が安定して維持される。周波数分割器1005を省き、VXCO1030を用いてTXCO1020の出力周波数を中心とする信号を出力することが好ましいだろう。この代替的な構成においては、VXCO1030からの出力は、位相比較器1015aの第1の入力に直接フィードバックされる。第2の水晶発振器1030はまた、ループフィルタ1018を介してマイクロ波放射の源1040の第2の入力1040に出力する。このようにして、2つの位相ロック入力1040および1050から、マイクロ波放射の源の周波数が、1つの水晶発振器だけに位相ロックされていた場合よりもさらに安定して維持される。
【0120】
位相ロックではなく別の方策を用いて、図3に図示のとおり、狭帯域フィルタとともに広帯域源を用い得る。
【0121】
源1とプローブ5との間には、1つ以上の増幅器2と、(反射されたパワーが増幅器に損傷を与えるのを防ぐために)増幅器2からプローブ5を絶縁するための、サーキュレータの形をしたアイソレータ40と、インピーダンスチューナ50と、ケーブルアセンブリ4とが設けられる。ケーブルアセンブリ4は調節可能な長さを有し、チューナ50の出力とプローブの端部との間に4分の1波長の積分値を与えるよう調節可能であり、これは、プローブの端部で測定されるインピーダンスをより計算しやすくするので望ましいものである。この実施例においては、インピーダンスチューナは3スタブチューナであり、そのインピーダンスは、(従来どおりに)3つの同調素子がチューナキャビティの内外へと動くことによって変化する。同調素子は、コントローラ101によって制御されるアクチュエータ1130によって動かされる。コントローラは好適ないかなる形態であってもよく、図1に示されるマイクロプロセッサシステム101と同じであってもよい。
【0122】
当該機器を用いて、マイクロ波放射をプローブを通じてプローブ5の端部における組織6に方向付けると、組織6は、マイクロ波放射の一部を反射させプローブを通じて源1の方に戻すだろう。方向性結合器200は、この信号の一部を検知器100の入力Bにそらす。検知器に方向付けられた反射された信号は、図5において参照番号210で示される。検知器100はまた、基準信号255から入力Aを得る。この実施例においては、反射された信号は、インピーダンスチューナの出力のすぐ後の位置から得られ、他の位置(図19を参照)から得られてもよいが、この位置の方が好ましい。というのも、一般にさほどノイズを被らないからである。この実施例においては、基準信号はマイクロ波放射の源1から得られるが、方向性結合器250によって増幅器2の前でそらされている。図19の実施例を参照して後に述べられるように、他の位置から放射をそらすことによって基準信号を供給することができるだろう。実際には、好ましい位置は、チューナ50への出力
にあるかまたはチューナ50への出力のすぐ後ろにある。というのも、その位置から得られる測定値が被る、システムの他の構成要素によって生成されるノイズが少なくなるからである。たとえば、増幅器の歪みおよび/または増幅器による位相シフト、サーキュレータによる位相シフトおよび/またはチューナによる位相シフトがある。さらなる代替的な実施例においては、基準信号255は、マイクロ波放射の源1から独立した別個の局部発振器によって生成され得る。
【0123】
検知器100は、反射された信号210および基準信号255の両方の大きさおよび位相を検知する。次いで、この情報が組織分類器150に出力され、当該組織分類器150が特定の組織タイプ(たとえば、筋肉、脂肪、癌性腫瘍)として組織6を分類し、組織タイプを表示するディスプレイ160にその結果を出力する。
【0124】
検知器100は、プロセッサ、ベクトルネットワークアナライザ、位相比較器、および/または、1つ以上のミキサおよび局部発振器を含むヘテロダイン検知構成を含み得る。基準信号および反射された信号のそれぞれのための2つの別個の検知器ユニットを備えることも可能であり、各々は、図5に示される単一の検知器100ではなく、組織分類器に出力し得る。検知器100の1つの実現可能な構成が図5aに示される。スイッチ600は、検知器の入力Aまたは入力Bから信号を取得するよう切換可能である。スイッチ600は、コントローラ101からの信号610によって制御され、各信号から最新情報を得るために2つの位置の間で素早く切換えられ得る(すなわち、スイッチが信号を多重化する)。スイッチ600は、反射された信号210または基準信号255をミキサ620に出力し、ここで、基準信号255および反射された信号210の周波数とは異なる(このため、通常、マイクロ波放射の源1の周波数とは異なる)周波数を有する信号630と混合される。信号630は、図5aにおいて検知器100の一部として示される局部発振器640から得られてもよいが、通常、検知器100に入力する外部の源から得られる。好ましい構成においては、ミキシングダウン信号630はマイクロ波放射の源1から得られる(これは図5には図示されないが、図18および図19の実施例を参照して後に説明される)。信号630の周波数は、反射された信号210および当該基準信号255と混ざってデジタル信号プロセッサ680(たとえば、ベクトルネットワークアナライザまたは位相比較器)に出力され得る低周波数信号を生成するように選択される。ミキサ620の出力とデジタル信号プロセッサ680との間には、ミキサからの高い周波数をいずれもなくすためのローパスフィルタ640、増幅器650およびアナログ−デジタル変換器660が配置される。デジタル信号プロセッサが受取ることのできる中間周波数を生成するために信号630とともにミキサ620を用いる場合、信号精度を維持することができ、ノイズレベルを比較的低く保つことができるという利点がある。代替例では周波数分割器が用いられるが、これは、より多くのノイズを回路に発生させるので、さほど好ましいオプションではない。デジタル信号プロセッサ680は、入力された反射された信号および基準信号に基づいて(実成分および虚成分をともに有する)複素インピーダンスを計算する。検知器100は、この情報をコントローラ101および組織分類器150に出力する。
【0125】
図5においては、デジタル信号プロセッサ680が検知器100の一部として示されるが、組織分類器150は別個の構成要素である。しかしながら、これらは、単一の構成要素、たとえば、専用のチップ、または、コンピュータ、マイクロプロセッサもしくはロジックDSPもしくはマイクロプロセッサを含み得るFPGA上で実行されるプログラム、に組合されてもよい。この場合、この組合された機能構成要素はコントローラ101に出力し得る。
【0126】
組織分類器150は、組織6を複数の異なる組織タイプ(たとえば、脂肪、筋肉、癌性腫瘍)のうちの1つに分類し、さらに、検知器100によって出力される複素インピーダンス値(図5aの実施例においては、検知器の一部であるデジタル信号プロセッサ680
によって出力される値)に基づいて、いつプローブが空気中にあり、組織に接触していないかを検知することができる。
【0127】
組織分類器150は、(プローブの端部における組織6を表わす)上述の複素インピーダンス値を、複素インピーダンスまたはその範囲を特定の組織タイプに割当てる予め定められた値の表と比較することによって組織を分類する。これらの予め定められた値は、制御された条件下でex-vitroで測定された組織タイプの既知のインピーダンスに基づいて理論的に計算され得るかまたは経験的に決定され得る。1990年にアカデミックプレスロンドンによって発行されたフランシス・A・ダックによる「組織の物理的性質;総合参考書」は、6章において、このような理論値を計算することのできるデータを提供する。
【0128】
制御された条件下で行なわれた組織のex-vitroの測定値は、血流、機器の性質などのために、生体内での測定によって実際に得られる値とは異なることが予想される。しかしながら、理論的な値と実際に測定された値との間に関係があることが予想される。このため、組織分類器は、上述の書物などの参考文献からの既知の値または理論値を含むデータの第1の組と、当該機器またはこの発明に従った別の同様の機器によって実際に測定された実際の複素インピーダンスを含む値の第2の組との間の経験的関係に基づいて、組織タイプを決定し得る。ほんの数回測定が行われると、この所定の関係をいずれの機器においても用いることが可能となる。
【0129】
当該機器は、使用前に、プローブの遠端5aにおいて既知のインピーダンスを測定することによって較正される(これはたとえば空気であり得る)。この測定された複素インピーダンスが(たとえば、第2のデータの組または上述の表における)予想される値と比較され、将来の測定値についてはこの較正測定値が参照される。好ましくは、既知の複素インピーダンスのうちの少なくとも2つの物質が較正のために用いられる(たとえば、既知の複素インピーダンスを有する空気および泡、較正中のプローブの先端を囲む泡)。
【0130】
図7は、この発明に従った機器によってもたらされる(プローブの端部における)空気、ラード、油、ゼリー、卵、豚肉、肝臓および水の複素インピーダンス測定値を示す。これらの材料は、順々に積重ねられて互いに接触していた。測定値は、プローブが横方向に当該材料を貫通するように、順次、当該材料を通してプローブを挿入することによって得られた。プローブが各材料に到達すると、マイクロ波放射がプローブを通って投入され、プローブの遠端がその材料の中にあるときにその材料の複素インピーダンスが基準信号および反射された信号から計算された。
【0131】
図21は、積重ねられ互いに接触している4つの異なる材料2001、2002、2003および2004の例を示す。プローブ5は、順次材料を貫通するように、矢印2010によって示される方向に横方向に材料に挿入される。マイクロ波放射は、プローブの遠端5aにおける材料に(たとえば、プローブが図21に示される位置にある場合、材料2002の中に)届けられ、その材料が測定される。このようにして、各材料が順に測定され、オペレータは、その測定値から、どのような種類の材料がプローブの遠端にあるか、それが除去するのに安全かつ適切であるか否か(たとえば、プローブの遠端が癌組織の中にあるか否か)を見分けることができる。
【0132】
この実験においては、材料が互いから分離されていなかったとしても、各材料タイプについて繰返しインピーダンス測定値を得ることがなおも可能であることが分かった。その測定値は、従来の複素インピーダンスフォーマット(R+Jxohms)、大きさおよび位相を与える極座標ならびにデカルト座標で提供される。さまざまな材料が、a)空気を含む、b)ラードおよび油(脂肪分が高い)を含む、c)ゼリーを含む、ならびに、卵白、豚肉、肝臓および水を含むグループに分けられている。これらの異なるグループの物質のうち
の測定された複素インピーダンスは広く間隔をあけて配置されて、それらの間の明確な区別が可能であることを示している。2組の測定値が得られ、表Aおよび表Bにそれぞれ示される。表Aおよび表Bにおける特定の値は異なっている。というのも、異なるチューナ設定や異なるプローブが用いられたが、位相の分散が類似しており、このため、当該システムを較正することによってその差が容易に補償され得るからである。
【0133】
一般に、当該システムが最適な位相および振幅感度を有するようにインピーダンスチューナ設定を調整することが必要である(いくつかのチューナ設定では、検知器は位相ではなく振幅を決定することができ、他の設定は位相に適しており、その目的は、位相および振幅の両方の測定に適した設定を得ることである)。最適な設定はプローブごとに異なるだろう。したがって、当該機器は、当該プローブが自動的に較正され、当該プローブが機器に取付けられるときに最適なチューナ設定が決定される較正ルーチンを有する。既知の負荷(たとえば、空気および/またはプローブ上に置かれた泡のキャップ)に対して異なるチューナ設定で測定を行なうことによって較正を実行してもよい。
【0134】
図7の表Aの値は、図8のスミスチャート上に示される。スミスチャートはマイクロ波工学において広く用いられている。図8におけるスミスチャート上の値は、50オームに標準化されているが、当業者に理解されるように、異なる値に標準化することができるだろう。ラード、油、空気、ゼリーおよび豚肉についての測定値は広く間隔が空けられていることが分かるだろう。図9は、図8のスミスチャートの一部の拡大図であり、グループd)における値の分散をより明確に示す。図10は、同じ機器であるが異なるプローブおよびチューナ設定を用いて得られた同じ物質の測定値を示す。図10は図7の表Bにおける値に対応する。図10のスミスチャートにおける値は50オームに標準化されるが、当業者に理解されるように、異なる値に標準化することができる。図8と同様に、異なるグループの材料間における著しい差が容易に明らかになる。図11は、図10のスミスチャートの一部の拡大図である。
【0135】
図12は、さらに別のプローブで測定された複素インピーダンス値を提供する表Cを示す。そのフォーマットは図7の表におけるのと同じである。図13は、図12の複素インピーダンス値がプロットされているスミスチャートの一部である。水、肝臓、豚肉および卵についての複素インピーダンス値がこのチャート上で明確に区別されることが分かるだろう。図14は、この発明に従った機器で得られた測定値の別の組を有する表Dを含む。そのフォーマットは図7におけるのと同じである。図15は、図14の複素インピーダンス値がプロットされているスミスチャートの一部を示す。ここでも、水、肝臓、豚肉および卵についてのチャートから複素インピーダンス値間の分離が見られるだろう。
【0136】
図6は、図5の第1の実施例に類似しているこの発明の第2の実施例を示す。同様の参照番号は同様の部分を示し、その違いだけをここで説明する。主な違いは、マイクロ波放射のさまざまな周波数が、アブレーションおよび組織測定/分類に用いられることである。
【0137】
こうして、マイクロ波放射の第1の源1の周波数f1とは異なる周波数f2を有するマイクロ波放射の第2の源700が配置される。このマイクロ波放射の第2の源は特定の周波数に位相ロックされてもよい。周波数f1は組織のアブレーションに用いられる。周波数f2は組織を測定または分類するのに用いられる。一般に、マイクロ波放射の第2の源700は、組織を除去するのではなく、単に測定するよう組織と相互作用するはずであるので、(第1の源1に比べて)パワーが比較的低いだろう。
【0138】
マイクロ波放射の第2の源700からの信号はf2の周波数を有し、増幅器740によって増幅され、次に、双方向結合器200aを介してサーキュレータ750および帯域フ
ィルタ730を通ってプローブ4に送られる。この信号は、反射されプローブ4を通り結合器200a、帯域阻止フィルタ720および狭帯域結合器730を介して検知器100の第3の入力Cに戻される。狭帯域結合器720は高品質の逆方向結合器であってもよい。その目的は、(マイクロ波放射の第1の源1からの)周波数f1の信号が、検知器100の第3の入力Cおよび第4の入力Dに到達するのを防ぐことである。
【0139】
順方向結合器780は、マイクロ波放射の第2の源700からの信号の一部を経路755に沿って検知器100の第4の入力Dにそらす。検知器100の入力CおよびDに送信される反射された信号710および基準信号755を用いて、図5の実施例における入力AおよびBと同様に組織タイプを分類する。回路の残りの部分は、マイクロ波放射の第1の源1からの放射がアブレーションのためにだけ用いられ、検知器100の入力AおよびBにおける基準信号および反射された信号が、インピーダンス調整器50の適切な同調を決定するためにだけ用いられることを除いて、図5に類似している。
【0140】
図6に示される主要な構成においては、増幅器740と第2の源700との間に結合器780が位置決めされる。代替的には、結合器は、図6において点線765で示されるようにサーキュレータ750の出力付近に位置決めされ、入力Dに基準信号755を供給するのに用いられ得る。これは、当該信号が、増幅器740によってもたらされる歪みおよび位相シフトと、サーキュレータ750のポート1からポート2までの信号の通路によってもたらされる付加的な位相シフトを被らないという利点を有する。サーキュレータ750は、第2の周波数f2における反射された信号が増幅器740に送り返され、増幅器の出力段にダメージを及ぼすことを防ぐ。結合器200aは双方向素子としての役割を果たし、これにより、当該第2の周波数がプローブ5aの遠端に伝搬し、さらに、プローブからの反射信号を検知することを可能にする。チューナ760は、プローブの測定感度を最適化することのできるインピーダンス調整を可能にするために、サーキュレータ750と帯域阻止フィルタ720との間に設けられてもよい。
【0141】
図6の構成においては、マイクロ波放射の源1、700のうちの1つだけが常にオンに切換えられることが予想される。このため、第1の源1がオンに切換えられると、当該機器はアブレーションモードになり、第2の源700がオンに切換えられると、当該機器は測定または組織分類モードになる。しかしながら、アブレーションが実行されている場合でも、測定を継続的に実行できるようにするために、第2の源700を常にオンに切換えておくことができる。この場合、周波数f2が入力Bに到達するのを防ぐために、周波数f2の通路を妨げるよう構成された帯域阻止フィルタ770をチューナ50の出力と検知器100の第2の入力Bとの間に位置決めしておくことが望ましい。
【0142】
当然、マイクロ波放射の単一の源と、組織分類レベル間における信号振幅を変えるのに用いられる可変増幅器または減衰器とを備えたアブレーションおよび組織分類機器を有することも可能である。しかしながら、図6の実施例は、組織アブレーションおよび組織分類のために異なる周波数を用いることができるという利点を有する。これにより、探し求められている組織の特徴のために最適な応答を与えることとなる(いくつかの組織は或る周波数でピーク応答を与える)、組織分類のための特定の周波数を選択することが可能となる。これにより、アブレーションおよび分類を同時に実行することも可能となるが、これは、それぞれのために異なる周波数が用いられるからである。
【0143】
図18および図19の組織分類システムはまた、組織アブレーションシステムおよび組織分類システムとしての役割を果たし得る。
【0144】
この場合、当該機器は、組織分類モードおよび組織アブレーションモードを有する。組織アブレーションモードでは、組織を除去するのに十分な振幅を有する信号がプローブ5
を通じて方向付けられ、コントローラ101およびアクチュエータ1130を用いて、除去されている組織6に当該機器のインピーダンスを動的に整合させ、こうして、システムに戻ってくるエネルギ反射を最小限にするようにする。組織分類モードでは、より低出力の信号がプローブ5を通じて方向付けられ、インピーダンスチューナ50のインピーダンスが、複素インピーダンス測定を行うことのできる安定した基準点をもたらすよう固定される。当該機器は、組織アブレーションモードと組織分類モードとの間で迅速に切換えることができる。チューナを作動させるために、好適ないかなる作動方法が用いられてもよく、たとえば、リニアモータ、可動コイル構成、ステッピングモータ、圧電アクチュエータまたは磁歪アクチュエータが用いられてもよい。このリストは網羅的なものではなく、他の可能性も当業者に明らかとなるだろう。磁歪作動はそれ自体に進歩性があり、このことがここでより詳細に説明される。
【0145】
図16は、マイクロ波放射のためにインピーダンスチューナの作動を必要とするいずれかの装置の、または上述の、組織分類システムおよび/またはアブレーションシステムとともに用いることのできるインピーダンスチューナのための作動システムを示す。これは、医療用機器または非医療用機器において用いられてもよい。
【0146】
図16に示されるインピーダンスチューナは3スタブチューナであり、3つの同調ロッド820、825、830がさまざまな程度に延在可能な同調キャビティ835を含む筐体831を含む。この実施例においては同調ロッド820、825、830は真鍮からできているが、当業者には他の好適な材料が明らかになるだろう。インピーダンスチューナ50の複素インピーダンスは、同調ロッド820、825、830のいずれかまたはすべてが同調キャビティ835に延在している度合いを変えることによって変化する。当該作動システムが3スタブチューナだけでなく、作動可能な素子を有する他の種類のインピーダンスチューナにも適用可能であることが当業者に明らかとなるだろう。
【0147】
作動システムは磁歪材料のロッド800を含み、当該磁歪材料のロッド800は、少なくとも部分的にハウジング810の内部に位置決めされ、その一方の端部が同調ロッド820のうちの1つに結合される。磁歪ロッド800は好ましくはテルフェノール−Dでできている。ハウジング810は、非磁性金属材料またはプラスチック材料でできており、磁歪ロッド800を受け、当該磁歪ロッド800との密な締りばめを形成する内部ボアを有する。
【0148】
ハウジング810および磁歪ロッド800の外部の周りに、全体で参照番号860で示される複数の電流巻線C1〜Cnが設けられている(これらのうちの最初の6個と最後のものだけが図13に示されている)。電流巻線C1、C2などの各組は、それぞれの電流源840、841、842、843、844、845、…850に接続されている。この実施例においては、電流源は、作動コントローラ1130によって制御される高速増幅器の形を取る。作動コントローラ1130は、それぞれの電流源を介して磁歪ロッド800を好適に作動させるよう構成またはプログラミングされた電子ハードウェアまたはFPGAの形を取り得る。
【0149】
図15には図示されないが、他のロッド825および830は各々、同調ロッド820のための上記および下記のシステムと同一であるそれら自体のそれぞれの作動システムに結合されている。
【0150】
使用の際に、コントローラ1130は、電流源がそれぞれのコイル巻線860のうちの1つ以上を通る電流をパルスにするようにする。巻線を通るこれらの電流パルスは磁界を発生させて、ロッド800における磁歪材料を長手方向に伸ばし、結果として、同調ロッド820がさらに同調キャビティ835へと移動できるようになる。他の同調ロッド85
2および830はまた、コントローラ1130にリンクされたそれぞれの電流源によって同様の態様で制御されるが、分かりやすくするために、これは図16には図示されない。
【0151】
各々の巻線C1、C2などのための別個の電流源を有する利点は、電流の変化率が制限され、このため応答時間が短く保たれ、各電流源のために少数の巻線を備えることによってもインダクタンスが小さく維持され、このため、コイルを通じてより速く電流を切換えることが可能となり、誘導電圧が制限されることである。
【0152】
ハウジング810は、磁歪ロッド800との密な締りばめグリップを形成するが、ロッド800は、電流(磁気)パルスによって広げられると、ハウジング内で移動することができる。こうして、磁歪ロッド800は、ハウジング内で前後に「徐行する」ことができる。これは、図17(a)〜図17(e)を参照して説明される。
【0153】
ハウジング810において最初の位置にある磁歪ロッド800が図17(a)に示される。同調素子820は、図16と同様に磁歪ロッド800の端部に装着される。図17(b)は、磁歪ロッド800を囲む巻線860のうちの1つ以上を通る電流パルスが、矢印870によって示される方向に当該磁歪ロッド800を広げる磁界を発生させる際の状況を示す。したがって、同調ロッド820は、同調キャビティ835(図17には図示せず)にさらに押込まれる。図17(c)は、パルスが通過し、磁歪材料800が緩んで以前の長さに戻った後の状況を示す。ロッド800aの前部はハウジング810によって堅く把持されている。ロッドのこの端部における把持は後方端部800bにおける把持よりも堅い。というのも、ロッドがこの方向に広がっているからである。したがって、磁歪ロッド800がその元の長さに戻ると、ロッド800bの後部が、矢印875によって示されるようにハウジング810のチューナ端部に向かって前進する。こうして、磁歪ロッド800をハウジング810内で前進させる。このプロセスを続けることによって、磁歪ロッド800(アクチュエータ)が比較的短くても、同調ロッド820を大幅に移動させることができる。
【0154】
電流パルスの極性を反転させる(したがって、発生させた磁界の極性を反転させる)ことにより、磁歪ロッド800を逆方向に広げることができる。これは図17(d)に示される。この場合、ロッド800の後端部800bは、磁界が加えられる場合、ハウジング810において、矢印880によって示される方向にチューナ50から離れるように後退する。次いで、パルスが通過すると、磁歪ロッド800が以前の長さにまで緩み、後端部800bが堅く把持されると、前方端部800aが、ハウジング810において、矢印885によって示される方向にチューナ50から離れるように後退する。このようにして、同調キャビティ835に延在する同調ロッド820の長さを短くすることができる。この動作を繰返すことによって、磁歪素子800自体の長さが比較的短くても、同調ロッド820を比較的長い距離にわたって移動させることができる。
【0155】
上述の作動方法が、3スタブチューナだけでなく、2または1スタブチューナ、移相器、および、他の種類のインピーダンスチューナ、特に、インピーダンスを変えるために直線的に移動させられる1つ以上の作動可能な素子を有するインピーダンスチューナにも適用可能であることが当業者には明らかとなるだろう。
【0156】
ここで、この発明の別の実施例を図18および図19を参照して説明する。これは、ミキシングダウン信号がマイクロ波放射の源から得られる点を除いて、図5の実施例に類似している。いくらかより複雑な追加が回路になされ、これにより、より多種多様な反射された信号および基準信号がもたらされ、それに基づいて組織の複素インピーダンスが計算される。さらに、当該機器が組織分類モードおよび組織アブレーションモードの両方で効率的に動作することを可能にする他の構成要素がある。
【0157】
図18は、この発明のこの実施例に従った組織アブレーションおよび分類機器の簡略化されたシステム図である。当該機器は、第1の経路100に沿ってプローブ5に接続されたマイクロ波放射の安定した源1を含む。当該源は、例えば、これまでに記載され図3、図4または図5に示されたものであってもよい。当該経路は、源とプローブ5との間に増幅器回路2、サーキュレータ40およびインピーダンスチューナ50をこの順序で備える。プローブ5aの遠端は、分類または除去されるべき組織6に挿入することができる。プローブ5は、機器の残りの部分、例えばインピーダンスチューナ50への取付けのための可撓性のあるケーブルアセンブリ5bを有する。第2の経路110は源1に結合され、第1のミキサ150の第1の入力151に信号を届ける。第2の経路110は、概して箱110aで示されるさまざまな電子構成要素を備える。第3の経路130は、第2の経路からミキサ150の第2の入力152にそらされた順方向および/または反射されたマイクロ波放射の一部を伝達する。順方向に向けられた放射は上記源から上記プローブ5へと移動する放射であり、反射された放射は、組織6によって反射されプローブ5を通って戻る放射である。ミキサ150の第1の入力151および第2の入力152に入力されるマイクロ波周波数が異なっているので、第1のミキサ150の出力153からの結果として得られる周波数はより低くなり、例えば、第1のミキサ150の出力に接続されたデジタルプロセッサ65が受取ることのできるMHz範囲、例えば10〜250MHzとなるだろう。プロセッサ65は、入力信号の大きさおよび位相をともに決定することができ、概して図5の実施例の検知器100に対応する。当該機器がアブレーションモードである場合、コントローラ101が入力信号の大きさおよび位相に関する情報を用いて、除去されている組織6のインピーダンスに当該機器のインピーダンスを整合させるようにインピーダンスチューナ50の複素インピーダンスの適切な調整を決定することができる。
【0158】
位相ロックループが、第1のミキサに入力された信号の周波数を源1の周波数にロックするために源と第1のミキサとの間の第2の経路上に形成される。このループは、マイクロ波放射の源1に結合された第1の入力221と、第1のミキサ150の第1の入力151に至る位相ロックループの順方向経路への出力223とを有する第2のミキサ22を含む。位相ロックループのフィードバック経路は、第1のミキサの第1の入力151から第2のミキサの第2の入力222へと放射の一部をそらす第4の経路140によって形成される。位相ロックループは、後により詳細に説明される。
【0159】
反射された放射は、プローブ5を通り、チャネルAおよびB、スイッチボックス36ならびに可変減衰器42(および/または、可変利得増幅器については図18に図示されない)を含む第3の経路130に至り、第1のミキサ150の第2の入力152へと進む。
【0160】
第3の経路は、第1の経路からスイッチボックス36に繋がる2つの別個のチャネルAおよびBを第1の部分に含む。チャネルAは、第1の経路100からスイッチボックス36への当該順方向に向けられた放射を流す(この例においては、放射はサーキュレータ40の前で捉えられる)。順方向に向けられた放射は、サーキュレータの後かつチューナの前またはチューナの後において測定されてもよい。好ましい位置はチューナの後である。スイッチボックス36は、経路Aまたは反射された放射Bからの順方向に向けられた放射を、スイッチボックス出力37を通じ可変減衰器42を介して第1のミキサ150の第2の入力152に方向付けるよう(例えば、プロセッサ65が両方から情報を受取ることができるように時分割多重化により)、コントローラ101によって制御される。これらの両方の経路からの情報を用いることにより、経路Aは、実際に、反射された信号の経路Bと比較するための基準信号を供給し、組織分類器66は組織6を複数の組織タイプのうちの1つに分類することができる。第2の入力152に送られた放射は、順方向に向けられた放射であろうと反射された放射であろうと、出力信号153がADC(図3に図示せず)を介しプロセッサ65によって読取り可能なより低い周波数となるように、第2の経路
110からの信号と混合される。可変減衰器42(および/または、図3に図示されない可変利得増幅器)は、必要に応じて第1のミキサ150が受取ることのできるレベルに制御される。
【0161】
ここで、図19を参照して当該機器をより詳細に説明する。
この実施例においては、マイクロ波放射の源1は、局部発振器3、位相ロックループ集積回路4およびループフィルタ7を含む位相ロックループによって制御される電圧制御発振器を含む。位相ロックループを用いて、電圧制御発振器1aから安定した出力周波数を供給する。この実施例においては、電圧制御発振器(VCO)は14.5GHzの固定された周波数を出力するよう制御されるが、他のマイクロ波周波数が選択可能であるかまたは位相ロックループおよびVCOが異なる周波数を与えるよう同調可能であり得ることを当業者は理解するだろう。マイクロ波放射の源1からの放射は、第1の経路100に沿ってプローブ5に送られ、そこで、組織6を有する患者へと方向付けられる。第1の経路に沿って、第1の減衰器8、第1の前置増幅器9、順方向結合器10、第2の減衰器11、可変利得増幅器12、第3の減衰器13、第2の前置増幅器14および電力増幅器15が設けられている。これによりシステムの増幅部分が構築される。第1の経路上においても、前述の増幅構成要素とプローブ5との間に、絶縁装置40(例えばサーキュレータ)と可変複素インピーダンスを有するインピーダンスチューナ50とが設けられている。絶縁装置40は、反射された放射が回路の増幅部分に入るのを防ぐよう機能し、反射された放射をいずれもダンプロード41に方向付け直す。インピーダンスチューナ50は、ミキサ150から受取られプロセッサ65によって処理される信号に基づきコントローラ101によって変えることのできるインピーダンスを有する。コントローラ101は、当該機器の複素インピーダンスが、除去されている組織6の複素インピーダンスと整合するように、インピーダンスチューナ50を制御するよう構成される。このインピーダンス整合は、組織6の複素インピーダンスが変化する場合でも、エネルギの反射を最小限にするよう動的に実行することができる。
【0162】
第2の経路110をここで説明する。第2の経路110は、第2のミキサ22と第1のミキサ150との間にある。第2のミキサ22は、上記第1の順方向に向けられた結合器10および減衰器21を介してマイクロ波放射の源1に結合されている第1の入力221を備える。ミキサ22はまた、第2の入力222および出力223を備える。当該機器は、第2の入力222に入力された周波数が概して異なるように構成される。この実施例においては、一例として14.45GHzがマイクロ波放射の源の周波数に与えられる。その結果、より低い周波数、この実施例では50MHzが、第2のミキサの出力223から、第1のミキサ150の第1の入力151に繋がる位相ロックループの順方向経路110に沿って出力される。
【0163】
混合プロセスからいかなる高周波成分、例えば和周波数、をも除去するために、第2のミキサ22の出力223からの信号がローパスフィルタ23を通して送られる。次いで、当該信号は位相検知器24の入力に進む。位相検知器は、例えばEXORゲートであってもよいが、当業者には他の可能性も明らかとなるだろう。位相検知器24は、入力信号の位相を安定した局部発振器25の位相と比較する。局部発振器25は、この実施例においては、低ドリフト(例えば温度で1pmm)の温度補償水晶発振器である。この実施例においては、その周波数は50MHzであるが、他の周波数が用いられてもよい。位相検知器24は、ループフィルタ26およびDCオフセット調整器を介して電圧制御発振器27に制御信号を出力する。ループフィルタおよびDCオフセット調整器は、電圧制御発振器27の出力を調整し、電圧制御発振器27を制御するのに用いることができる信号を供給するのに必要ならば入力電圧をVCO27に追加および/またはオフセットし得る。制御信号は、電圧制御発振器27から所望の周波数を発生させるために電圧制御発振器27が安定した水晶発振器25とミキサ22の出力との間の位相差に基づいてその出力を調整す
るようなものである。電圧制御発振器の出力は、減衰器28および増幅器29を介して第1のミキサ150の第1の入力151に出力される。第1の入力151に送られた信号のいくらかは、第2のミキサ22の第2の入力222に繋がるフィードバック経路140に沿って結合器30によってそらされる。フィードバック経路140は、結合器30と第2のミキサ22との間に減衰器41、増幅器42および減衰器43を有する。
【0164】
第1のミキサ150の第1の入力151に入力された信号が、マイクロ波放射の源1にロックされると、当該源における周波数のいかなる変化も上記第1のミキサの第1の入力に入力される周波数に変化をもたらし、このため、これら2つの間の差と、これによりミキサから出力された中間周波数とが一定になるだろう。
【0165】
第3の経路130は、第1の経路上のそれぞれの順方向および逆方向に向けられた結合器16、17、18、19および20から切換装置36のそれぞれの端子に繋がる複数のチャネルA、B、C、DおよびEと、当該切換装置から第1のミキサ150の第2の入力152までの経路とを含む。経路A〜Eは各々、それぞれの減衰器31、32、33、34、35を有する。切換装置36は、チャネルA〜Eのうちの1つからの信号を出力37を通じて第1のミキサ150の第2の入力152に方向付けるようコントローラ101によって制御される。結合器16、17および19は順方向結合器であり、このため、チャネルA、BおよびDは、順方向に向けられた放射を第1の経路から切換装置36に流す。結合器18および20は逆方向結合器であり、チャネルCおよびEは、反射された放射を切換装置36に流す。通常、コントローラ101は、一度に1つの信号を分析(すなわち、時分割多重化)することができるように入力A〜Eを順序付けるよう切換装置36を制御するだろう。プロセッサ65が、最初の応答のために、チャネルの切換えおよび位相測定に必要とされるので、FPGAが好ましい。順方向に向けられた放射チャネルが供給する基準信号を、反射された放射のチャネルからの1つ以上の反射された放射の信号とともに用いて、プローブの遠端の端部における負荷または組織の複素インピーダンスを決定し、および/または、組織を分類することができる。これは以下により詳細に説明される。
【0166】
切換装置36の出力37を通じて送信される信号は、第1のミキサ150の第2の入力152に到達する前に、結合器38、可変減衰器42、可変増幅器43および(固定値)減衰器44を通過する。結合器38は、信号の一部を大きさ(振幅)検知器39に方向付け、これが、可変減衰器42の減衰のレベルまたは可変増幅器43の増幅のレベルを制御するために制御信号をコントローラ101に出力する。制御信号は緩衝増幅器41を介してコントローラ101に送信されてもよい。制御信号は、単に、検知された大きさに関する情報であってもよい。次いで、ミキサ150の第2の入力152に入力される信号が、第1のミキサ150によって受取り可能な所定のパワーバンド内にくるように、コントローラ101が、振幅検知器39からの上記制御信号に基づいて可変減衰器42の減衰または可変増幅器43の利得を制御する。これが必要とされるのは、そうでなければ、当該機器がアブレーションモード(増幅器12において高出力、低減衰)である場合と組織分類モード(低出力)である場合との間で、第1のミキサに入力される信号が大幅に変動する可能性があるからである。減衰器42が絶えず可変であるので、出力信号は、必要に応じて一定のパワーに維持することができる。
【0167】
アナログ−デジタル変換器640は、第1のミキサ150の出力153とプロセッサ65との間に設けられる。プロセッサ65は、(経路A〜Eおよび第1のミキサ150からの)入力信号に基づいて組織6の複素インピーダンスを決定するよう構成され、この情報をコントローラ101に伝達する。当該コントローラ101が、この情報に基づいてインピーダンスチューナ50および/または回路の他の素子を制御する。プロセッサ65はまた、この情報を組織分類器66に出力し、当該組織分類器66は検知された複素インピーダンスを用いて、組織を組織タイプに分類する。好ましくは、組織分類器66はプロセッ
サ65の一部である。プロセッサ65、コントローラ101および組織分類器66は図3および図4に別個の構成要素として図示されているが、これらが単一の構成要素、例えば、コンピュータ、マイクロプロセッサ、またはロジックDSPもしくはマイクロプロセッサを含み得るFPGA上で実行されるプログラムに組合され得ることが理解されるだろう。
【0168】
より具体的には、組織分類器66は、組織6を複数の異なる組織タイプ(例えば、脂肪、筋肉、癌性腫瘍)のうちの1つに分類し、さらに、プロセッサ65によって出力される複素インピーダンス値に基づいて、いつプローブが空気中にあり、組織と接触していないかを検知することもできる。
【0169】
好ましい構成では、プロセッサ65は、基準信号(チャネルA、BまたはD)および反射された信号(チャネルCまたはE)の振幅および位相に基づいて、プローブの端部における組織6を表わす複素インピーダンス値を計算する。組織分類器66は、この計算された複素インピーダンス値を、複素インピーダンスまたはその範囲を特定の組織タイプに割当てる予め定められた値の表と比較することにより、プローブの端部における組織6を分類する。基準信号および反射された信号がそれぞれ1つずつしか必要とされないが、より多くのチャネルを導入することにより、当該機器の複素インピーダンス特性の測定が可能となり、このため、この情報を用いて、より正確な組織測定および分類情報を与えることができる。予め定められた値は、制御された条件下でex-vitroで測定された組織タイプの既知のインピーダンスに基づいて理論的に計算され得るかまたは経験的に決定され得る。1990年にアカデミックプレスロンドンによって発行されたフランシス・A・ダックによる「組織の物理的性質;総合参考書」(ISBN 0-12-222800-6)は、6章において、このような理論値を計算することのできるデータを提供する。検知された複素インピーダンスに基づく組織分類は、図5〜図15を参照して上述された分類と同じである。
【0170】
プローブアセンブリ5、5aの実現可能な構成をここでより詳細に説明する。組織に放射を届け、反射された放射を受取ることのできるプローブをこの発明とともに用いることができることが理解されるべきである。加えて、プローブは、組織に(直接または管を介して)挿入できなければならない。したがって、以下の構成は例示としてのみ与えられ、この発明を限定することを意図するものではない。代替的な構成が、添付の特許請求の範囲内で当業者に明らかになるだろう。
【0171】
図22(a)は、プローブ5のための好ましい構造を示す。プローブ5は同軸である。当該プローブ5は、トロカールまたは挿入管を必要とすることなく組織層を通じてプローブを押込むことを可能にする剛性を与えるために、好ましくはステンレス鋼でできた外側ジャケットまたはケーシング505を有する。この例においては、外側ジャケット505の直径510は、3mm以下(8フレンチ(French)以下)であり、その長さは20mm〜200mm、好ましくは120mmである。この実施例においては、外側ジャケットは金属でできており、外部導体の役割を果たす。内部導体は、適切な材料、例えば、ステンレス鋼、銀でコーティングされたステンレス鋼または銀でコーティングされた銅でできている。誘電体530は、外部導体505から内部導体515を隔てる。好ましくは、誘電体は(GHz周波数では)低損失材料である。誘電体530は、固定された特性インピーダンス(例えば、50Ω)が同軸構造全体にわたって維持されることを確実にし、かつ、内部導体および外部導体がともに短絡し得ないことを確実にするのに用いられる。特性インピーダンスの値は、外部導体505の内径510と内部導体515の外径525との比率、および、上記導体間の誘電材料530の比誘電率の値によって管理される。誘電材料530はまた、当該構造の電圧破壊能力を増大させる。比誘電率が低い低損失誘電材料を用いることが好ましく、好適な材料には、低密度PTFE、拡張されたPTFEおよびテープが巻付けられたPTFEが含まれる。
【0172】
円錐体520はプローブの遠端に取付けられる。これにより、プローブが比較的容易に組織層を通して押込まれることが可能となる。円錐体520は、14.5GHzで低損失係数を有する剛性の誘電材料でできている。円錐体に好適な材料はマイクロ波セラミックスを含み、この例においては、エマーソン・カミング・マイクロウェーブ・プロダクツ(Emerson and Cumming Microwave Products)から入手可能でありECCOSTOCK HiK500Fとして公知である高温低損失プラスチックが用いられる。好ましくは、円錐体材料は、3〜30の比誘電率を示す。
【0173】
図22に示される実施例においては、内部導体515は円錐体520の端部から突出る。この特徴は、この発明が治療および測定に用いられるべき場合、特に有利である。というのも、内部導体を露出することにより最適な測定感度がもたらされることが判明しているからである。他の実現可能な構成には、円錐体内部でHフィールドループとして形成される内部導体、および、完全に円錐体内部にある内部導体が含まれる。
【0174】
円錐体520および外側ジャケット505の端部は、プローブ内の流体または組織の侵入を防ぐようコーティングされる。このコーティングは、いかなる好適な材料であってもよく、この実施例においてはパリレン(Parylene)C材料が用いられる。
【0175】
プローブ5は、図22(b)に図示のとおり、コネクタ535、例えばSMAシリーズのマイクロ波コネクタを用いて同軸ケーブル540のアセンブリに接続される。代替的には、プローブ5は、図22(c)に図示のとおり、ケーブルアセンブリに一体化されてもよい。図22(a)は、図22(b)および図22(c)のうちの点線で囲まれた部分を示す拡大された詳細図である。
【0176】
上述の剛性のプローブではなく半剛性のプローブを用いることも可能であるだろう。このようなプローブは、人体に挿入される内視鏡管、カニューレ、トロカールまたは他の管にまで挿入することができる。これらはまた、場合によっては、生物学的システムに直接、または、物理的な抵抗が全くないかまたは殆どない組織を通じて挿入され得る。その詳細は、プローブがさほど剛性でなく、このため、異なる材料を用いることができ、例えば、外側ジャケットがアルミニウムから作られ、内部導体が銀でコーティングされた銅線から作られ、誘電体がテープが巻付けられたT−PTFEから作られていることを除いて、上述の詳細に類似している。
【0177】
この適用例において説明された機器についての典型的な応用例は、胸部、脳および肝臓の腫瘍の治療および検知を含む。これは、何らかの心臓手術、ならびにデスモイド腫瘍(人体全体にわたる筋腱膜構造に起因する良性の繊維性腫瘍)の検知および治療にも用いることができる。当業者には他の可能性が明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】既に説明された、プローブの端部にある組織とのインピーダンス整合が可能なアブレーション機器の図である。
【図2】既に説明された、図1に示されたようなアブレーション機器とともに使用するための、位相比較器を有する代替的検知構成を示す図である。
【図3】既に説明された、マイクロ波放射の安定した源の達成のためのフィードバックループを示す図である。
【図4】既に説明された、マイクロ波放射の安定した源の達成のための代替的構成を示す図である。
【図5】この発明の第1の実施例による組織分類機器を示す図である。
【図6】この発明の第2の実施例による組織分類システムを示す図である。
【図7】この発明による機器を用いて行われた複素インピーダンス測定の結果表を示す図である。
【図8】図7の表Bからの結果を図形的に示すスミスチャートである。
【図9】図8の部分の拡大図である。
【図10】図7の表Bからの結果を図形的に示すスミスチャートである。
【図11】図10の部分の拡大図である。
【図12】別の結果表である。
【図13】図12の結果を図形的に表示するスミスチャートの部分を示す図である。
【図14】別の結果表である。
【図15】図14の結果を図形的に表示するスミスチャートの部分を示す図である。
【図16】この発明の第3の実施例によるチューナおよび作動構成を示す概略図である。
【図17】(a)から(e)は、図12の磁歪アクチュエータのハウジング内の動きを示す図である。
【図18】この発明の1つの実施例による、アブレーションおよび組織特徴付け機器の簡略化された図である。
【図19】この発明の実施例のより詳細なシステム図である。
【図20】マイクロ波放射の源のための二重位相ロック構成の例の図である。
【図21】サンプル材料に挿入されて貫通するプローブの図である。
【図22(a)】この発明と共に用いられ得る、ある型のプローブの断面図である。
【図22(b)】可撓性のあるケーブルアセンブリに取付けられた場合の、図22(a)のプローブの図である。
【図22(c)】可撓性のあるケーブルアセンブリに組み込まれて形成される場合の、図22(a)のプローブの図である。
【技術分野】
【0001】
技術分野
この発明は、組織を検知し、1つ以上のタイプもしくは状態に分類して、かつ/または組織を除去するために、マイクロ波放射を用いる機器に関する。またこの発明は、このような機器で用いられるチューナを作動させる作動装置と方法とに関する。この明細書では、マイクロ波とは5GHz以上60GHz以下の周波数範囲を意味する。好ましくは14GHz−15GHzが用いられるが、この発明は、このより狭い範囲に限定されるわけではない。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
2003年11月27日に出願された国際出願PCT第/GB2003/005166号は、組織への効率的なエネルギ伝達を実行し、かつ機器の加熱を最小限にするために、除去されている組織のインピーダンスと機器のインピーダンスとを整合するための同調回路を有する、組織アブレーション機器を開示した。その機器の1つのバージョンは図1に示される。
【0003】
図1に示されるように、機器は、マイクロ波放射を組織に方向付けるために、調整可能なインピーダンスを有する3スタブチューナ50を介してアブレーションプローブ5に接続される、マイクロ波放射の安定した源1を有する。機器は、アブレーションプローブ5を通じて反射して戻り、方向性結合器200によって検知構成220、240、270に方向付けられる信号から検知される位相および大きさに基づいて3スタブチューナ50のインピーダンスを変えることによって、インピーダンス整合を達成した。正確なインピーダンス調整を行うことができるよう、反射された信号の大きさおよび位相の両方を検知することが必要であった。これは、ヘテロダイン検知によって検知器240において位相および大きさが与えられ得るよう、反射された信号を局部発振器270からの信号とミキサ220において混合することにより達成された。次いでプロセッサ101が、チューナ50のインピーダンスの適切な調整を行うためにアクチュエータ1130を制御し、その結果、インピーダンス整合が達成された。(源からプローブへ)順方向に向けられた信号の位相および大きさは、検知システム230、260、280によって測定することもでき、インピーダンス調整の決定に際して考慮に入れられた。
【0004】
PCT/GB2003/005166は、例えば図3に示されたフィードバックループ構成を用いることによって(図1における)マイクロ波放射の源1を位相ロックすることが望ましいことを教示している。図3において、源はVCOであり、その周波数は周波数分割器によって減じられ、安定した(例えば結晶の)局部発振器の信号と位相比較器において比較され、位相比較器は、増幅器およびフィルタ構成1010を介して信号を出力してVCOを制御し、それによりその周波数が安定に保たれる。代替として、図4に示されるように、狭帯域フィルタ1140と広帯域源1030とを組合わせることが可能である。図3および図4に示される構成の目的は、源の周波数における変動が信号検知を妨害しないよう、マイクロ波放射の安定した源を与えることである。
【0005】
要するに、PCT/GB2003/005166は、プローブから反射された信号を検知し、その信号の中の情報を回路の同調素子のインピーダンス調整に用いることを教示している。除去されている組織のインピーダンスと整合するようインピーダンスを調整することによって、機器のエネルギ効率を達成することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の概要
しかしながら、発明者らは、プローブと組織とのインピーダンス整合を達成するためのみならず、プローブの端部で組織の特性を検知するためにも、反射された放射を用いることができることを認識した。例えば、反射された放射の分析によって、組織タイプを判断することが可能であろう。例えば癌組織と健康な組織とを区別するなど、異なる組織のタイプまたは状態を区別することもできるはずである。これにより、機器のオペレータが、除去する必要がある癌組織にプローブがいつ到達するかがわかり、健康な組織を偶然に除去するのを防ぐことができるようにし、さらに癌組織を完全に除去し終えるとオペレータに通知して、その結果アブレーション動作を停止できるようにしてもよい。アブレーションシステムのコンテキスト以外でも、例えばスタンドアロンの組織測定または分類システムとしてこの発明を用いることもできる。発明者らは、この目的のためには絶対量の測定だけでは十分ではないと認識した。複素インピーダンスの実成分および虚成分を考慮に入れる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、この発明の第1の局面は、所与の周波数を有するマイクロ波放射の源を含む組織分類機器であって、
マイクロ波放射を組織に方向付けるためのプローブと、
反射されて前記プローブを通じて戻るマイクロ波放射を含む反射された信号の大きさおよび位相と、基準信号の大きさおよび位相とを検知するための検知器と、
前記検知器によって検知された信号の大きさおよび位相に基づいて組織タイプまたは組織状態に組織を分類するための組織分類器とを含む、組織分類器を与える。
【0008】
この発明の第1の局面による機器は、人間または動物の体内組織の生体内測定を行うのに適する。プローブは組織に挿入されるよう設計される。この機器は、上記の構成によって、プローブの遠端の端部にいかなる種類の組織(例えば骨、脂肪、筋肉、腫物)があるかを判断することができる。プローブの遠端は中央導体を有してもよく、それは導電的にまたは容量的に搭載される。
【0009】
基準信号はマイクロ波放射の源から得られてもよい(例えば方向性結合器によって検知器にそらされた、順方向に向けられた信号の部分)。代替的には、基準信号は、別個の源(例えば独立した局部発振器)から得られてもよい。反射された信号および基準信号を検知器に多重伝送するために、スイッチが用いられてもよい。さらに、いくつかのあり得る(例えば、源とプローブとの間の信号経路上の異なる場所から取られた)基準信号およびそれらの間で多重化するスイッチがあってもよい。検知器は、位相比較器と、ベクトルネットワークアナライザと、入力信号を分析するためのプロセッサと、および/または、局部発振器およびミキサを用いるヘテロダイン検知構成とを含んでもよい。
【0010】
好ましくは、組織分類は、反射された信号および基準信号の大きさおよび位相から計算された(実成分および虚成分の両方を有する)複素インピーダンスと、1つ以上の組織タイプの複素インピーダンスについての既知の値または理論値に関連する第1のデータの組とに基づいて実行される。これらの値または組織タイプの理論的な複素インピーダンスを計算することができるデータは、「組織の物理的性質(Physical Properties of Tissue)」などの書物で見つけることができる。フランシス・A・ダック(Francis A Duck)による、1990年アカデミックプレスロンドン(Academic Press London)発行の「総合参考書(A Comprehensive Reference Book)ISBN 0−12−222800−6によれば、この本の第6章は、伝導率および比誘電率を含む組織の電気的性質について、具体
的な情報をもたらす。
【0011】
これらの書物は、例えば絶縁された保持カセット内など、制御された生体外条件下で測定された、単一の均質な組織サンプルについての理論値および既知の値を与える。生体内で測定した実際の値は、血流、複数の組織層、および他の条件のために異なることが予想されるが、依然これらの既知の値に関連するであろう。
【0012】
好ましくは、組織分類は、前記第1のデータの組の値と、機器によって測定された(またはこの発明による別の機器によって以前に測定された)既知の組織タイプの複素インピーダンスに関する第2のデータの組の値との、予め定められた関係を考慮に入れる。このように、この機器で行われたいくつかの測定値が、他の組織タイプについての期待値を与えるために外挿することができる。
【0013】
代替的には、組織分類器は、測定された複素インピーダンスと、予め定められた値または値の範囲を様々な組織タイプ(または状態)に割当てる表における値とを比較することにより、組織を分類することができる。
【0014】
好ましくは、機器は、プローブの遠端で、例えば空気または好適な既知の材料など、既知のインピーダンスについて複素インピーダンスを(反射された信号および基準信号の位相および大きさから)測定することにより、較正される。将来の測定値はこの較正値を参照することができる。プローブの遠端は(空気ではない場合)較正材料によって囲まれてもよい。較正が必要なのは、様々なプローブの種類およびケーブルの設定によって測定される複素インピーダンスが変わるからである。例えば長さが付加される度に位相が回転し、プローブケーブル誘電体および導体損失によって大きさが減少する。較正は、単一の既知の複素インピーダンスに関して実行されてもよいが、好ましくは、異なる複素インピーダンスを有する2つの(あるいはより多くの)異なる材料が用いられる(例えば、空気、毛髪、または誘電率が固定された1片の泡)。空気およびインピーダンスが固定された1片の材料が用いられる場合は、プローブの先端はインピーダンスが固定された材料によって囲まれる。
【0015】
好ましくは、源とプローブとの間にインピーダンスチューナがある。これはスタブチューナでもよく、最も好ましくは3スタブチューナである。チューナがあることにより、組織測定を実行するための最大の感度を与えるよう機器の回路インピーダンスを調整することができる。インピーダンスチューナがある場合、較正におけるこれらの既知の材料の測定されたインピーダンスが、期待された(既知の)インピーダンスと等しくなるまで、インピーダンスチューナの複素インピーダンスを調整することにより、較正が実行されてもよい。較正の他の方法は当業者には明らかである。例えば、スタブチューナが用いられる場合、1つの既知の位置(例えばそれに限定はされないが50オーム+j0)が得られるまでスタブを調整することができ、それはプローブの端部で見られるものとの比較のために用いられる。
【0016】
機器が調整可能なインピーダンスチューナを有する場合、機器が組織を分類している間、チューナのインピーダンスは好ましくは一定に保たれる(例えばそれがスタブチューナである場合、スタブは静止状態に保たれる)。これは、測定を正確かつ反復可能にするのを助ける。組織分類中に用いられるチューナの複素インピーダンスは、較正中に用いられる複素インピーダンスと同じでなければならない。インピーダンスチューナは、いかなる適切な作動手段、例えばステッピングモータ、リニアモータ、圧電アクチュエータ、可動コイル、または磁歪アクチュエータ)によって制御されてもよい。磁歪アクチュエータが特に有利であって、後により詳細に説明される。
【0017】
スタブチューナが用いられる場合、スタブ位置は、プローブが様々な組織層に挿入されるとき、またはアブレーション中に組織状態に変化がある場合に、位相と大きさとの間の変化が最大となることができるよう最初に設定することができる。
【0018】
機器は、マイクロ波放射をプローブに流すために、好ましくは可撓性のあるケーブルを含む。このケーブルは導波管または同軸ケーブルであってもよい。ケーブルは、マイクロ波放射の源および検知器に結合され、通常はケーブルとマイクロ波放射源との間に1つ以上の中間構成素子(例えば増幅器、サーキュレータ、インピーダンスチューナなど)がある。ケーブルはインピーダンス調整器の出力に接続されてもよい。好ましくは、プローブは可撓性のあるケーブルと一体になっている(その場合には、プローブは剛性または半剛性の部分であり、ケーブルは可撓性のある部分である)。
【0019】
好ましくは、ケーブルは、曲げられた状態で高い位相安定性を有する。これは、組織を分類するのに位相測定が必要なので有利であるが、プローブがオペレータによって操作されるにつれてケーブルは曲がる(例えばねじれたり回転したりする)。ケーブルの曲がりにより位相がシフトする場合、情報が失われる。
【0020】
好ましくは、曲がったケーブルの位相安定性は、プローブに伝えられるマイクロ波放射の周波数(すなわちマイクロ波放射の源の周波数)において±5°以下である。これは、ケーブルを通じて進むマイクロ波放射が経る位相シフトが、ケーブルの曲がりに起因して、位相の±5°以下であることを意味する。より好ましくは±3°以下、さらにより好ましくは±2°以下である。
【0021】
曲がった状態のケーブルの位相安定性を測定するための標準的方法は、ケーブルを+90°だけ、次いで−90°だけ曲げ、100,000回繰り返し、曲げている間にケーブルを通過した信号における位相シフトを測定することである。±90°の曲げは、4インチ(101.6mm)の直径を有するマンドレルのまわりで行われる。このテスト中に測定された最大の位相シフトは、曲がった状態のケーブルの位相安定性として特定される位相シフトである。
【0022】
位相安定性は信号の周波数に応じて異なる。上記の好ましい位相安定性は、機器が使用されている時にケーブルが実際に用いられる周波数について特定される。しかしながら、位相安定性は周波数が増加するにつれて減少することに注意するべきである。すなわち、ケーブルが40GHzで必要な位相安定性を有するとすると、より低い周波数では曲げに伴う位相の変化はより少ないので、14GHzでは必要な位相安定性を確実に有することとなる。
【0023】
ケーブルが曲がった状態で振幅安定性を有することも望ましい。好ましくは、曲がった状態での振幅安定性は、2.8dB以下である(ケーブルの曲げによって信号振幅で最大2.8dBが失われることを意味する)。より好ましくは1.5dB以下、さらにより好ましくは1.2dB以下、最も好ましくは1dB以下である。曲がった状態での振幅安定性は、上記の位相安定性に関するやり方と(位相の変化の代わりに振幅の変化が測定されるという点を除いて)同じやり方で測定することができる。
【0024】
異なる周波数を有するマイクロ波放射の2つの異なる源(下記に説明されるように、1つはアブレーション用、1つは組織分類用)がある場合、ケーブルは、組織分類に用いられる周波数において必要な位相および振幅安定性を有しなければならない。好ましくは、ケーブルは、両方の周波数について位相および振幅安定性を有する。
【0025】
マイクロ波放射の源は、好ましくは単一の安定した周波数を出力するよう構成される。
単一の安定した周波数とは、一定の負荷において、その出力周波数が機器の動作温度範囲(通常22°Cから60°C)の対して±5MHzより多くは変動しないことを意味する。より好ましくは、周波数は±1MHzより多くは変動せず、さらに好ましくは±500kHz、±5OkHz、±10kHz以上は変動せず、または動作温度範囲より僅かに±1kHzしか変動しないことが好ましい。
【0026】
単一の周波数の源を有することの利点は、多くのマイクロ波成分が周波数依存特性を有することである。例えば、方向性結合器、導波管部分、チューナキャビティ、Eフィールドランチャ、ケーブルアセンブリ、アダプタ、プローブアセンブリおよび減衰パッドを含む多くのマイクロ波成分が、周波数依存する挿入損および/またはインピーダンスを示す。後者は、インピーダンス整合/不整合および電圧定在波比において周波数依存する変化を引き起こす場合がある。これらの要因は、機器から抽出されるマイクロ波測定情報を変更する。例えば、反射された信号(および、さらにそれがマイクロ波放射の源から得られる場合は、基準信号)は、結合器によって一般に検知器へそらされ、したがって、指向性(順方向信号と反射された信号とを区別する能力)および結合器の結合係数(そらされた主要信号の部分)の関数になり、その両方は周波数依存する。したがって、源の周波数における変動はシステム特性に変化をもたらし、それはノイズまたはシステム感度の低下として現われて、測定感度の低下およびある組織タイプを区別する能力の制限につながる。例えば、基準信号測定と反射された信号測定との間の期間中の源の周波数の変化は、(組織の相互作用によって引き起こされた何らかの変化に加えて)基準信号と反射された信号との間のパワーおよび位相の変化をもたらし、このような望まれない変化は、認識して補うのが困難である。源が上記に規定されるような単一の安定した周波数を出力する場合、これらの問題は回避される。
【0027】
好ましくは、マイクロ波放射の源は単一の周波数に位相ロックされている。源は、この源がロックされる単一の周波数をユーザが変えることができるように構成されてもよい(例えばユーザは、13.75GHzから14.75GHzの範囲の周波数を選択することができてもよい)。好ましくは、マイクロ波放射の源は水晶発振器に位相ロックされる。最も好ましくは、水晶発振器はそれ自体別の水晶発振器に位相ロックされる。この二重位相ロック構成は、出力信号の安定性をさらに保証する助けとなる。
【0028】
代替的には、源は狭帯域フィルタに結合された広帯域の源でもよい。
検知器はアナログ検知器を含んでもよいが、好ましくは、プロセッサ、位相比較器、ベクトルネットワークアナライザ、または入力信号の位相および大きさを測定するよう構成される他の電子装置を含む。現在の電子装置は比較的低周波を要求する傾向があり、したがって反射された信号の周波数、および通常は基準信号の周波数も、検知器に入力される前に減じられる必要がある。これは周波数分割器を用いることにより達成されてもよいが、それはシステムにノイズを加える。
【0029】
したがって、別の手法は、反射された信号を異なる周波数のミキシングダウン信号と組合わせることにより、ミキサで混合することである。するとミキサからの出力は、次に検知器が受取ることのできる、より低い周波数になる。ミキシングダウン信号の周波数は、それが反射された信号および/または基準信号と混合して検知器への入力に適した周波数を生成するよう選択され得る。通常は、前記ミキサの出力と(電子)検知器との間に、望まれない周波数をフィルタするための1つ以上のフィルタおよびデジタルからアナログへの変換器を与えることが望ましい。
【0030】
ミキシングダウン信号は、局部発振器(例えばマイクロ波放射の源に対して異なる周波数を有する局部発振器)によって与えられてもよい。しかしながらその場合、局部発振器およびマイクロ波放射の源の位相および周波数は分かれてドリフトし、これは行われる測
定値の精度を減じる。したがって、ミキシングダウン信号がマイクロ波放射の源から得られることが好ましい。
【0031】
したがって、機器は、第1の入力および第2の入力ならびに出力を有するミキサを好ましくは含み、第1の入力は前記反射された信号をミキサに伝えるための経路に結合され、第2の入力はミキシングダウン信号をミキサに伝えるための経路に結合され、かつ出力は検知器に結合される。
【0032】
好ましくは、ミキシングダウン信号はマイクロ波放射の源から得られる。
好ましくは、ミキシングダウン信号を前記ミキサに届けるための経路は、マイクロ波放射の源の周波数に基づいてミキシングダウン信号の周波数を制御するための位相ロックループを含む。これは、さもなければ不正確な測定の原因となり得るミキシングダウン信号のドリフトを減じるか、または防ぐことを助ける。
【0033】
上記に説明したように、検知器は、基準信号および反射された信号に基づいて組織を分類する。しかしながら、検知器は2つ以上の基準信号を用いてもよい。すなわち、機器が第1および第2の基準信号の源を有し、それらが検知器(または2つの別個の検知器)へそれぞれの信号を入力することは有利になり得る。
【0034】
1つの実施例では、第1の基準信号は源から得られ、独立した局部発振器は第2の基準信号を生成する。代替的には、第2の基準信号はマイクロ波放射の源から得られ、局部発振器を用いて混合されて異なる周波数を与えてもよい。第1および第2の基準信号は異なる周波数を有しなければならない。すると組織分類器は、反射された信号ならびに第1および第2の基準信号の位相と大きさとに基づいて、組織を分類することができる。第2の基準信号を有することの利点は、位相と大きさとの測定値からより多くの情報を抽出することができることであり、これによってより正確に組織を特徴付ける(かつその複素インピーダンスを測定する)ことができる。システムに多くのノイズまたは系統誤差がある場合にも、第2の基準信号は有用である。
【0035】
好ましくは、プローブは、測定部分が異なる組織タイプの接合部と交差しないよう、分類されている組織の中心に挿入される。これにより、組織の界面効果を無視することが可能になる。
【0036】
検知機器は、マイクロ波放射を用いて組織を除去するための機器の一体的な部分であってもよい。単一のシステム内にこれらの2つの機能を組合わせるのは便利である。したがって、機器は、組織を除去し、かつ組織をいくつかの組織タイプの1つに分類することの両方ができることが好ましい。
【0037】
この発明の第2の局面は、この発明の第1の局面による機器を含む組織を除去するための機器を与え、そこでプローブは、前記組織を除去するために組織にマイクロ波放射を届けるよう適合される。機器はさらに、調整可能な複素インピーダンスを有するインピーダンス調整器(例えばチューナ)を好ましくは含み、前記調整器は前記源と前記プローブとの間に位置する。
【0038】
このようにして、インピーダンス調整器(チューナ)は、前記検知器によって検知された信号に基づいてその複素インピーダンスを調整させることができる(この目的のためにコントローラが与えられてもよい)。第1の局面で説明されたように、任意の適切なアクチュエータが用いられてもよい。このように、プローブと組織とのインピーダンス整合が達成でき、そのためマイクロ波放射の組織への効率的な伝達が確実になり、かつ機器の加熱が最小限になる。さらに、使用において、機器は、プローブが接触している組織の種類
を検知することができ、したがってオペレータは、除去するべきか否かを決定することができる。
【0039】
好ましくは、機器は組織を分類し、かつ除去することの両方ができる。これは、例えばマイクロ波放射を用いて組織を除去し、反射された信号(および別個の基準信号)に基づいてそれを分類することにより、同時に行われてもよい。しかしながら、機器は別個のアブレーションモードおよび組織分類モードを有するのが好ましい。例えば、オペレータは、組織のアブレーションのためのアブレーションモードと、組織の分類のための組織特徴付けモードとに、機器を切換えることができる。組織特徴付けモードにおいて、チューナのインピーダンスは好ましくは一定に保たれる。その結果、反射された信号は、第1の局面で説明されたように一定の基準と比較することができる。アブレーションモードにおいて、チューナのインピーダンスは、除去されている組織のインピーダンスと整合するために、好ましくはコントローラによって変えられる。一般に、分類モードにおいてプローブを通じて方向付けられたマイクロ波放射のパワーは、組織を測定することができるが破損することはないように、アブレーションモードにおけるパワーよりも著しく小さい。
【0040】
アブレーションモードおよび分類モードにおける信号強度間には大きな振幅の差があり得、これは、反射されたアブレーション信号および反射された組織分類信号の両方を検知し分析するために同じ機器が用いられる場合、信号検知に障害を引き起こすかもしれない。これは特に、反射された周波数を検知器に入力される前にミキシングダウンするためにミキサが用いられる場合に生じる。なぜならばミキサは通常、限定されたダイナミックレンジでしか作動しないからである。したがって、機器は、(i)機器が組織分類モードである場合、反射されたマイクロ波放射を、それが検知器に到達する前に増幅するための可変増幅器、および/または、(ii)機器が組織アブレーションモードである場合、反射されたマイクロ波放射を、それが検知器に到達する前に減衰させるための可変減衰器を、好ましくは含む。このようにして信号強度を、それが検知器またはミキサに達する前に調整することができる。この情報がコントローラに記憶され、またはオペレータに渡されることができるように、増幅または減衰の前に元の信号強度をチェックするために別個の検知器が用いられてもよい。
【0041】
機器は、アブレーションモードにある場合、マイクロ波放射の第1の周波数をプローブに方向付けるように、かつ、組織分類モードにある場合は、マイクロ波放射の第1の周波数とは異なる第2の周波数をプローブに方向付けるように構成されてもよい。例えば、機器は、組織を除去するために用いられる、第1の周波数を有するマイクロ波放射の第1の源と、組織を分類するために用いられる、第2の周波数を有するマイクロ波放射の第2の源とを有し得る。前記第2の周波数は前記第1の周波数とは異なり、組織測定および分類目的に用いられる。その利点は、ある周波数においてはある組織タイプが特に強い応答を示し、これらの周波数が組織分類に適する一方で、アブレーションには異なる周波数の方が適することである。
【0042】
マイクロ波放射の第2の源はプローブに結合され、プローブは、第2の周波数の反射された放射を伝えるために戻り経路によって検知器に結合される。好ましくはマイクロ波放射の第2の源から得られた第2の基準信号が、第2の周波数の反射されたマイクロ波放射のために基準として与えられる。次に組織分類を上述されたように実行することができる。
【0043】
第1の周波数が第2の周波数のために確保された検知器の入力に達すること、またはその逆を、防ぐか最小限にするために、1つ以上のフィルタが与えられてもよい。これにより、例えば組織アブレーションおよび分類を同時に実行することができるよう、マイクロ波放射の両方の源に同時にスイッチが入ることが可能となる。
【0044】
プローブという用語は、マイクロ波放射を組織に届け、かつ組織によって反射されたマイクロ波放射を受取ることができるいかなる装置をも意味する。プローブは例えば同軸または導波管でもよい。好ましくは、導波管は低損失誘電体および/または磁性材料を搭載する。これは、導波管キャビティのサイズを減じることができるようにするためである。プローブは組織内に挿入するのに適し、侵襲的な手順で用いるのに適していなければならない。好ましくはプローブは、組織に貫通することができるように設計されている。例えば、プローブは、内視鏡またはトロカールの助けなしに組織に挿入され得るよう、剛性のケーシングを有することが好ましい。しかしながら、プローブは半剛性または可撓性であってもよく、トロカール、内視鏡、カニューレまたは他の管によって人体に挿入される。プローブは、その遠端がテーパ状であるか、尖っているか、または円錐形であるのが好ましい。これは、プローブが組織に貫通するのを助け、さらにマイクロ波放射の焦点を合わせる。しかしながら、特に内視鏡または他の管を通して組織に挿入されるよう設計されている場合、プローブが円錐形であったり、尖っていたり、またはテーパ状である必要はない。いかなる場合も、手順は侵襲的であることが好ましい。すなわち、まずプローブが組織に直接に、または管を通して挿入され、次いでマイクロ波エネルギがアブレーションまたは組織分類の目的のために届けられる。
【0045】
好ましくはプローブは、外部導体と、内部導体と、その2つの間に誘電体とを有し、構造の遠端に円錐体が取付けられる。好ましくは、円錐体は低損失(GHz周波数において低損失)誘電体を含む。好ましくは、内部導体はプローブの遠端で露出される。好ましくは内部導体は円錐体を通って延在し、最も好ましくは円錐体の遠端で露出される。これが最適の測定感度を与えることが判明している。
【0046】
好ましくは、プローブは(例えばチューナ出力に接続され得る)可撓性のあるケーブルに組込まれる。これによりケーブルおよびプローブアセンブリを共に殺菌することができ、オペレータにとって便利である。
【0047】
この発明の第2の局面の機器は、上述の第1の局面の特徴のうちいずれかを有していてもよい。
【0048】
PCT/GB2003/005166は、チューナのインピーダンスの調整によるインピーダンス整合を記載する。しかしながら、インピーダンスを調整するための機構は詳細には説明されない。組織の弛緩時間がミリ秒のオーダで非常に短いので、チューナの作動が組織の複素インピーダンスの変化に遅れずについていかねばならない場合、それは同等に迅速である必要がある。最も一般的には、この発明の第3の局面は、アクチュエータに磁歪材料を用いることを提案する。磁歪材料は、磁界にさらされた場合にその寸法が変化する。これは磁界の変化に極めて素早く応答し、したがって、インピーダンスの迅速な調整を達成することができる。
【0049】
したがって、この発明の第3の局面は、調整可能な長さまたは位置の1つ以上のチューナ素子(例えばチューナロッド)を有するマイクロ波回路で使用するためのチューナを与えることができ、その結果、前記素子の調整によって、チューナのインピーダンスを変えることができる。さらに、前記磁歪材料の長さの変化が前記同調素子の有効長さを動かすかまたは変化させるよう、前記同調素子のうちの1つに結合されたある長さの磁歪材料を含む、少なくとも1つのアクチュエータを与え、さらに、前記磁歪材料の少なくとも一部を囲む1つ以上のコイル巻線に接続された電流の1つ以上の源を与える。次に電流源は、コイル巻線を介して磁界を生成し、かつ磁歪材料の長さを変えるために用いられ得る。
【0050】
その、または各々の同調素子は、それぞれの磁歪アクチュエータに組込まれていてもよ
い。しかしながら、ほとんどの磁歪材料はチューナの信号損失を引き起こすので、アクチュエータおよび同調素子が別個の構成要素であることが望ましい。低損失材料、例えば銀および銅が同調素子に特に適する。同調素子とアクチュエータとが1つの一体型構成素子である場合、チューナの損失を回避するため、その構成素子の同調端が低損失材料でコーティングされることが好ましい。この場合、コーティングの厚さは、電磁界がコーティング素子インタフェースでゼロまたはゼロに近い状態であることが好ましい。
【0051】
通常、各アクチュエータは、その磁歪材料を囲むいくつかのコイル巻線またはコイル巻線の組を有する。好ましくは複数の電流源があり、その各々はそれぞれの個別のコイル巻線またはコイル巻線の組に接続される。このようにして、各電流源に結合された巻線の数を少なく保つことができ、応答時間が短く保たれる。別の利点は、誘発されたemfのレベルが最小限になることである。各電流源は、FPGA/DSP、または各電流巻線に向けられた電流を制御するための他の制御回路に接続された、それぞれの増幅器の形をとってもよい。高い出力電圧および高いスルーレートを有する高速の増幅器が好ましい。
【0052】
磁歪材料は好ましくはテルフェノール(terfenol)を含み、最も好ましくはテルフェノール−D(terfenol−D)を含む。例えばニッケル、アイロンおよびパーマロイ(Nickel, Iron & Permalloy)などの他の磁歪材料を用いることもできる。テルフェノールDは極めて嵩高の飽和歪み(2000X10−6)を有し、したがって、非常に高速な作動を与えることができるので、好ましい。
【0053】
1つの実施例では、ある長さの磁歪材料はロッドであり、その一方端は同調素子に取付けられる。
【0054】
好ましくはある長さの磁歪材料は、非磁性のハウジング、例えば非磁性金属またはプラスチック材料の中空のシリンダに収容される。コイル巻線はハウジングの外部に与えることができる。
【0055】
好ましくはハウジングは、磁歪材料との締りばめを有する(すなわちきつく嵌合する)。すなわちハウジングはアクチュエータを握持する。そのため、アクチュエータ(例えば磁歪材料のロッド)はハウジングのボアに沿って動くことができる。電流が1つ以上のコイルを通ってパルスにされる度に磁界が生成され、アクチュエータが拡張する。パルスが通過した後は材料が緩み、アクチュエータは収縮する。
【0056】
その効果は、アクチュエータがボアに沿って動けることである。パルスが第1の極性を有する場合、アクチュエータは、同調素子をチューナにさらに押し込むために、ボアの第1の端部に向って拡張する。パルスが通過した後は、磁歪材料はハウジングによって握持される「前方の」端部を緩め、(拡張方向と反対の)後方の端部は収縮して、新たな位置まで引き上げられる。このようにして、アクチュエータはボアに沿って進む。極性が変更されると、拡張と緩和とは反対方向になり、同調素子は後退することができる。
【0057】
したがってアクチュエータは、好ましくはロッド磁歪材料の形の可動アクチュエータであって、磁界をパルスにすることによって、締りばめを有するハウジングのボアに沿って可動である。この構成により、アクチュエータの一方端がハウジングの固定位置に固定された場合の状況と比較して、相当程度の動きが可能になる。
【0058】
各電流源(およびコイルまたはコイルの組)を独立して活性化することによって、磁歪ロッドの各連続する断面が延長し、磁界が取除かれると収縮し、その結果、ロッドがハウジングのボアに沿って徐行するようにすることができる。
【0059】
好ましくは同調素子はスタブチューナの同調ロッドであり、最も好ましくは3スタブチューナである。各同調ロッドまたは素子は、それぞれの磁歪アクチュエータに結合される。
【0060】
この発明の第3の局面のチューナおよび作動構成は、組織アブレーション機器もしくは組織分類機器のいずれか、または組織分類およびアブレーションの両方ができる機器と共に用いられてもよい。例えば、それはこの発明の第1または第2の局面による機器と共に用いられてもよい。
【0061】
この発明の第3の局面によるチューナは組織アブレーション機器の中で用いることができ、この機器は、マイクロ波放射の源と、除去されるべき組織にマイクロ波放射を方向付けるためのプローブと、反射されてプローブを通して戻るマイクロ波放射の大きさおよび位相を検知するための検知器と、プローブおよび源の間のインピーダンスチューナとを含む。次いで、反射されたマイクロ波放射の検知された位相および大きさに基づいてチューナのインピーダンスを調整するために、コントローラがアクチュエータを制御することができる。このようにして機器のインピーダンスは、組織の複素インピーダンスが急速に変化しても、除去されている組織と整合することができる。検知器は位相比較器またはベクトルネットワークアナライザであってもよい。検知器は、ミキサと、マイクロ波放射の源の周波数とは異なる周波数の局部発振器とを含む、ヘテロダイン検知構成でもよい。
【0062】
この発明の第4の局面は、組織アブレーションまたは測定機器を与え、機器は、マイクロ波放射の源と、除去されるべき組織にマイクロ波放射を方向付けるためのプローブと、プローブを通じて反射されて戻るマイクロ波放射の位相および大きさを検知するための検知器と、プローブと源との間のインピーダンスチューナとを含み、そこでインピーダンスチューナは1つ以上のロッドを含み、ロッドは磁歪材料を含む1つ以上のアクチュエータによって作動される。
【0063】
好ましくはインピーダンスチューナは、この発明の第3の局面によるチューナである。
この発明の第5の局面は組織を分類する方法であって、a)分類されるべき組織にプローブを挿入するステップと、b)前記プローブを通じてマイクロ波放射を組織に方向付けるステップと、c)前記組織により反射されて前記プローブを通じて戻るマイクロ波放射の振幅および位相と、基準信号の振幅および位相とに基づいて、組織タイプまたは組織状態を分類するステップとを含む。方法は、この発明の第1の局面による機器を用いてもよい。
【0064】
プローブは組織を貫通するよう構成され、組織に直接挿入されてもよい。代替的には、トロカールまたは内視鏡などの管を介して挿入されてもよい。
【0065】
プローブの遠端は、分類されるべき組織において位置決めされなければならない。
この発明の第6の局面は方法を与えることができ、方法は、まずこの発明の第5の局面のステップを実行することによって組織を分類するステップと、次に前記組織に挿入された同じプローブまたは別のプローブまでマイクロ波放射を方向付けることにより組織を除去するステップとを含む。
【0066】
このようにして、アブレーションを開始する前に、除去されるべき特定の組織タイプを見つけるため(例えば腫瘍または癌組織を見つけるため)に、この機器を用いることができる。
【0067】
この方法が応用され得る適用例は下記を含む。脳神経外科、脳腫瘍の処置、肝細胞癌の治療などの肝臓の手術、デスモイド腫瘍の治療、食道癌、肺癌および乳癌の治療である。
各症例において、機器によって癌組織を見つけてその後除去することができる。
【0068】
この発明の第5の局面による機器を用いることにより癌組織を見つけ、次に、組織を取除いたり破壊したりする他の従来の外科的方法を用いることも可能である。
【0069】
他の適用例は、神経経路の特定およびアブレーションによって苦痛を和らげることである。例えば、神経(plexii)に侵入するまで発達した進行性の悪性腫瘍を持つ患者の慢性的難治性疼痛を和らげることが可能である。神経の選択的なアブレーションは神経経路を破壊する。このような治療は患者の寿命を延ばすわけではないが、苦痛の緩和によって潜在的に患者のクオリティーオブライフを向上させることができる。
【0070】
好ましくは、組織分類はマイクロ波放射の第1のパワーで実行され、アブレーションは前記第1のパワーより大きいマイクロ波放射の第2のパワーで実行される。
【0071】
方法は、除去するのが望ましい(例えば癌)組織のすべてが除去されたか否かをチェックするために、一定の期間アブレーションが実行された後に組織を分類するステップをさらに含んでもよい。この組織分類は、例えば設定されたアブレーション期間後などに、例えばアブレーションを中止して分類モードに切換えることなどにより、周期的に実行されてもよい。代替的には、組織アブレーションおよび分類に異なる周波数が用いられる場合、アブレーションと同時に連続的に実行されてもよい。
【0072】
オペレータは、所望の(例えば癌)組織がすべて除去されたことが検知された後、癌組織が残っていないことを確認するため、もとの腫瘍のまわりに安全域を確立するために、アブレーションを続けてもよい。
【0073】
この発明の第6の局面は、この発明の第2の局面による機器を用いて実行されてもよい。
この発明の第7の局面は、この発明の第3の局面で上述されたような磁歪材料を用いたインピーダンスチューナを作動させる方法である。これは、上述の第5および第6の局面と組合わされてもよい。
【0074】
アブレーションまたは組織分類用機器における反射された信号および/または基準信号のミキシングダウンに関する、この発明の別の局面がここで説明される。以前に述べたように、PCT/GB2003/005166は、図1に示されるヘテロダイン検知システムの代わりに、図2に示されるような大きさ/位相比較器65を用いることが可能であることを開示する。図2の方向性結合器250、200は、順方向の反射された信号の部分を検知器構成に方向付け、それは、位相を測定するための位相比較器65とともに、信号の大きさを測定するための振幅センサ61、63を含む。現在入手可能な位相比較器が比較的低い周波数しか扱うことができないので、結合器200からの反射された信号の周波数は、電子周波数分割器64を用いることによって減じることが必要である。
【0075】
しかしながら、用いられる分周比が大きい場合(および、サーマルノイズと接点ノイズなどの他のランダムノイズが入る場合)、電子周波数分割器は著しい量の位相ノイズを入れるので、情報が失われる。したがって発明者らは、周波数を減じるために、電子周波数分割器の代わりに混合構成を用いるシステムを工夫した。このシステムでは、反射されたマイクロ波放射は、検知器で用いるためのより低い周波数の信号をミキサが出力するように、局部発振器からの異なる周波数の第2のマイクロ波信号と混合される。局部発振器の位相および周波数、ならびにマイクロ波放射の源がドリフトし、それによって、行われる測定の精度が減じられることに困難性がある。
【0076】
したがって、この発明のある局面は、マイクロ波放射の源から第2の信号(「ミキシングダウン」信号と呼ばれ得る)が得られ、かつ好ましくはマイクロ波放射の源に位相ロックされることを提案する。このようにして測定は正確に保たれる。なぜならば、位相のいかなる差も、(独立した局部発振器によってミキシングダウン信号が与えられた場合に起こり得る)2つの異なる発振器間の一時的な偏差によるものではなく、組織との相互作用によることになるからである。さらに、周波数分割器が用いられると情報が失われるので、この態様でミキシングダウンすると、より有用な情報を与える。
【0077】
したがって、この発明の第8の局面は、組織アブレーションまたは測定機器を提案し、機器は、
マイクロ波放射の源と、
除去および/または測定されるべき組織に前記マイクロ波放射を届けるためのプローブと、
前記源から前記プローブへマイクロ波放射を伝えるための第1の経路と、
第1および第2の入力ならびに出力を有する第1のミキサと、
前記源から得られた信号を前記第1のミキサの前記第1の入力に届けるための第2の経路と、
前記第1の経路からマイクロ波放射の一部をそらすための第3の経路とを含み、前記そらされた放射は、前記第1の経路に沿って前記源から前記プローブまで進む順方向放射か、または前記プローブを通じて反射されて戻るマイクロ波放射のいずれかであって、第3の経路は、前記そらされた放射またはそらされた放射から得られる信号を前記第1のミキサの前記第2の入力まで届け、さらに、
前記第1の経路からそらされた前記順方向放射または反射された放射の振幅および位相を計算するよう構成されたプロセッサへ信号を送信するよう構成されたミキサの出力を含み、
前記第2の経路は、マイクロ波放射の源の周波数に基づいて第1のミキサの第1の入力に送信された信号の周波数を制御するための位相ロックループを含む。
【0078】
この発明のこの局面は、組織アブレーション機器、組織分類機器、または組織を分類しかつ除去することができる機器に適用され得る。
【0079】
一般に、第1のミキサの第1の入力への信号入力は、ミキサの第2の入力への信号入力とは周波数において異なるはずである。なぜならば、ミキサは2つの入力周波数の差および和を出力し、後者は好ましくはローパスフィルタでフィルタされるからである。前記第2の経路は、通常、マイクロ波放射の源の周波数とは異なる周波数を有する信号を前記第1のミキサの前記第1の入力に届けるように構成される。第1のミキサの第2の入力への信号入力は、通常、マイクロ波放射の源と同じ周波数である。2つの信号の周波数の差は、プロセッサへの直接またはADCを介した入力として許容可能でなければならない。本質的には、第2の経路はミキシングダウン信号を第1のミキサに届け、そこでこの信号は、第1の経路からそらされた反射された信号または基準信号と混合される。
【0080】
好ましくは、位相ロックループは、順方向経路およびフィードバック経路を含む。好ましくは、順方向経路は、マイクロ波放射の前記源に結合される第1の入力と、第2のミキサから前記第1のミキサの前記第1の入力に向って順方向経路に沿って信号を出力するための出力とを有する前記第2のミキサを含み、フィードバック経路は、前記第1のミキサの第1の入力に送られた信号の一部を前記第2のミキサの第2の入力へとそらすよう構成される。
【0081】
換言すれば、第2の経路は、マイクロ波放射の源に結合されて、マイクロ波放射の源と第1のミキサとの間に第2のミキサを有し、第1のミキサの第1の入力を第2のミキサの
第2の入力に結合する第4の経路があるのが好ましい。この第4の経路は、事実上、上述の(第2の経路の位相ロックループの一部としての)フィードバック経路である。これは位相ロックループを実現する便利な方法である。これは第1のミキサの第1の入力に安定した周波数を与え、前記第1の周波数の基準となる。
【0082】
好ましくは、順方向経路は位相検知器と電圧制御発振器とを含む。これらは、第1のミキサと第2のミキサと間に便利に置かれてもよい。位相検知器は局部発振器に接続されるか、これを含み、第2のミキサからの信号出力の位相と局部発振器の位相とを比較するよう構成されてもよい。位相検知器は、次にこの比較に基づいて制御信号を電圧制御発振器(VCO)に届けることができ、電圧制御発振器は前記第1のミキサの第1の入力に信号を出力するよう構成される。
【0083】
このようにして、VCOの適切な制御によって、第1のミキサの第1の入力に送られる周波数を制御し、マイクロ波放射の源に対してドリフトすることを防ぐことができる。局部発振器は、高精度の温度補償水晶発振器(例えば50MHz以下)でもよく、このような水晶発振器はほとんどのマイクロ波周波数発振器よりもさらに安定した信号を与えるので、マイクロ波放射の源の周波数のいかなる変動も、追跡され、第1のミキサの第1の入力に送られる信号に反映されることができる。すなわち前記第1のミキサの出力における中間周波数(If)が一定に保たれ得る。
【0084】
電圧制御発振器は、好ましくはマイクロ波領域の周波数を、最も好ましくはマイクロ波放射の源の周波数に接近した周波数を出力するよう構成される。具体的には、第3の経路からの信号と第1のミキサにおいて混合されて、ADCまたは他の信号処理装置によって受取られる信号を生成する周波数である。通常これは、MHz範囲(例えば最大250MHz、より一般には50MHz以下であるがこれらのいずれにも限定されない)にある。
【0085】
好ましくは、第2のミキサと位相検知器との間にローパスフィルタが与えられる。これは、第2のミキサに生成されたいかなる高周波成分もフィルタし(例えば2つの入力周波数の和をフィルタし、差が通過することを可能にする)、和周波数が第1のミキサの周波数帯の外にある場合には、ローパスフィルタは必要ではないことがある。
【0086】
好ましくは、位相検知器と電圧制御発振器との間にループフィルタが与えられる。これにより、必要であれば、位相検知器からの信号がフィルタされオフセットされることを確実にし、電圧制御発振器が受取ることができる制御信号を与える。
【0087】
好ましくは、第1のミキサの出力とプロセッサとの間にアナログからデジタルへの変換器(ADC)がある。これにより、第1のミキサからのアナログ信号をプロセッサによって処理することが可能になる。ADCは、FDGA、DSPまたは他の形式のプロセッサに組込まれてもよい。
【0088】
マイクロ波放射の源自体がその固有の位相ロックループによって好ましくは安定に保たれることに注意するべきである。すなわち、マイクロ波放射の源の位相と安定した(例えば温度補償結晶の)局部発振器の位相との差についてのフィードバックに基づいて制御される。別の可能性として、狭帯域フィルタによってフィルタされた広帯域の源を有し、安定した出力を与えることもできる。安定した単一の周波数のマイクロ波放射の源を達成するために、この発明の第1の局面で説明されたものと同じ手法が用いられてもよい。
【0089】
好ましくは、第1の経路上にサーキュレータがあり、マイクロ波放射の源と、一方では第2の経路との間、他方ではプローブとの間に位置決めされる。アブレーションシステムでは、第1の経路上の源とプローブとの間に通常は電力増幅器もあり、これは、一般に大
きなレベルの反射されたパワーが電力増幅器の出力段を損うのを防ぐために、サーキュレータの源側に置かれる。
【0090】
好ましくは、第3の経路は複数のチャネルを含み、チャネルの各々は第1の経路上の異なる点またはプローブに結合され、かつ、前記チャネルのうち一度に1つのみから第1のミキサの第2の入力に放射を方向付けるよう構成される切換装置に接続される。
【0091】
このように、切換装置によって回路の点の選択が可能になり、そこから反射されたか、または順方向に向けられた放射が得られる。好ましくはコントローラは検知器と関連して切換装置を制御し、様々なチャネルから連続した読取値を得る。換言すれば、時分割システムが用いられる。代替的には、周波数多重化または別の多重化システムを用いることができる。
【0092】
このように、いくつかのチャネルがあるので、組織の複素インピーダンスを分析するためのより多くの情報が利用可能である。一般に、チャネルのうちのいくつかは、順方向結合器によって第1の経路に接続されて順方向に向けられた放射を伝え、他のチャネルは逆方向結合器によって接続されて、反射した放射を流す。順方向に向けられた放射は、反射された放射のための基準信号として作用することができ、それによって組織を分類することができる。
【0093】
時分割の代わりに、例えば第1の経路からの放射をそらすために5つのチャネルがあった場合、10個のミキサおよび5つのフィードバックループなどの、各チャネルについて第1および第2のミキサを含む個別のフィードバックループを有することが可能である。しかしながら、そうすると、各ミキサから独立したノイズまたは誤差が生じる。したがって、切換装置を用いた多重化が好ましい。
【0094】
サーキュレータがある場合、反射された放射を流すチャネルは、第1の経路上の前記サーキュレータとプローブとの間の点において、または直接プローブ自体に結合される。第1の経路上の源とプローブとの間に電力増幅器がある場合、第3の経路上の順方向に向けられた放射を流すためのチャネルが、第1の経路上の電力増幅器の出力とプローブとの間に結合することが好ましい。これは、電力増幅器で位相変化が生じ得るからであり、組織の特徴付け(以下を参照)およびアブレーション整合の目的のために、プローブの方へ送られた、増幅された順方向に向けられた信号と、プローブを通じて戻された反射された信号とを比較する方がより有益になり得るからである。
【0095】
この発明の第8の局面の機器は、インピーダンス整合もしくは組織測定および組織分類、またはその両方に用いられてもよい。好ましくは、機器は組織を分類することができ、前記検知器に基準信号を伝えるためのチャネルと、前記検知器によって検知されるような反射された放射および基準信号の大きさおよび位相に基づいて組織を組織タイプまたは組織状態に分類するための組織分類器とを含む。基準信号は独立した局部発振器から、またはマイクロ波放射の源から得られ、しかしながらそれは前記第2の経路からは分離している。好ましくは、上記に説明されるようないずれかの電力増幅器から通常得られるのは、源からプローブまで移動する放射に基づいた順方向に向けられた信号である。そのような基準信号もインピーダンス整合に用いることができる。
【0096】
機器が、人間または動物の体内で組織の生体内測定を行うのに適しているように、プローブは、組織に挿入されるために設計される。上記の構成によって、機器は、プローブの遠端の端部にいかなる種類の組織(例えば骨、脂肪、筋肉、腫瘍)があるかを判断することができる。プローブの遠端は、その中央導体を導電的または容量的に搭載することにより、非常に短くなり得る。
【0097】
好ましくは、機器は、基準信号の大きさおよび位相、ならびにプローブを通して組織によって反射されて戻る放射の大きさおよび位相に基づいて、組織の複素インピーダンスを測定するよう構成される。
【0098】
組織を除去する際、インピーダンス整合、および組織を分類する目的のための組織測定の両方ともが、反射されたマイクロ波放射(または反射されたマイクロ波放射に基づく信号)の振幅および位相を測定することを伴う。
【0099】
この発明の第8の局面は、組織アブレーション機器または組織測定機器のいずれかに適用することができる。機器は好ましくは2重機能を有し、組織を除去することも分類することもできる。しかしながらこれは強制的ではなく、この発明は、(例えば高出力の増幅器がないなど)除去しない組織測定機器、または組織を分類するための計算能力を有さない組織アブレーション機器に適用されてもよい。
【0100】
組織アブレーションおよび組織分類の両方ができるシステムは、一般に少なくとも2つの運転モードを有する。組織アブレーションモードおよび組織分類モードである。アブレーションモードにおけるプローブから出力される(そして組織に送られる)マイクロ波放射のパワーは、組織分類モードで用いられるパワーより典型的にははるかに高い。このようにして、(例えば組織分類の実行中に発見された)任意の健康な組織への損傷を最小限にすることができる。さらにそれは、高用量の非電離放射が癌組織のみに当たることを確実にするのを助ける。
【0101】
しかしながら、反射された放射を、デジタルプロセッサによって受取ることができるより低周波数の信号に変換するためにミキサが用いられる場合、これらの2つのモード間に問題が生じる。典型的には、ミキサは、限定されたダイナミックレンジの入力パワーでしか作動することができない。例えば−10dBから+10dBまでのダイナミックレンジが典型的である。
【0102】
したがって、この発明の別の局面は、最も一般的には、可変減衰器および/または可変増幅器を用いて、ミキサに方向付けられた信号の振幅を増加させるか、または減少させることを提案する。
【0103】
したがって、この発明の第9の局面は組織分類およびアブレーション機器を与え、機器はマイクロ波放射の源と、
除去または測定されるべき組織に前記マイクロ波放射を届けるためのプローブと、
前記源から前記プローブにマイクロ波放射を伝えるための第1の経路と、
第1および第2の入力ならびに前記プロセッサに信号を方向付けるための出力を有する第1のミキサと、
前記第1のミキサの前記第1の入力に信号源を届けるための第2の経路とを含み、前記信号は、プローブを通じて届けられるマイクロ波放射の周波数とは異なる周波数を有し、さらに、
前記第1の経路からマイクロ波放射の部分をそらすための第3の経路を含み、前記そらされた放射は、前記第1の経路に沿って前記源から前記プローブまで進む順方向に向けられた放射、または反射して前記プローブを通じて戻る、反射されたマイクロ波放射のいずれかであって、第3の経路は、前記そらされた放射またはそらされた放射から得られた信号を前記第1のミキサの前記第2の入力に届け、さらに、
前記第1の経路からそらされた前記順方向に向けられた放射または反射された放射の振幅および位相を計算するよう構成されるプロセッサに信号を送信するよう構成されるミキサの出力と、
反射されたマイクロ波放射を、それが前記第1のミキサの第2の入力に到達する前に、反射されたマイクロ波放射を減衰または増幅させるための、前記第3の経路上の可変減衰器および/または可変増幅器とを含む。
【0104】
第1のミキサの第1の入力に送られる信号は、第1のミキサが2つの入力信号間の差を出力することができるよう、第1のミキサの第2の入力に入力された周波数とは異なっているべきである。通常これは、第3の経路からの放射がマイクロ波放射の源と通常は同じ周波数を有するので、前記源と異なる周波数を届けるよう第2の経路を構成することによって達成される。しかしながら、第3の経路上に、周波数分割器またはミキシングダウン構成を有することが、原則として可能である。この発明のこの第2の局面では、第1のミキサの第1の入力に届けられる、第2の経路からの信号は、マイクロ波放射の源または個別の独立した発振器から得ることができる。
【0105】
好ましくは可変減衰器は少なくとも第1の減衰レベルまたは範囲、および第2の減衰レベルまたは範囲を有し、かつ機器は、分類モードにおいては第1の減衰レベルまたは範囲を、アブレーションモードにおいては第2の(より高い)減衰レベルまたは範囲を利用するよう構成される。
【0106】
可変増幅器についても、入力信号がより弱い分類モードにおいてより大きな利得を用いるように構成されるという点を除いて、同じことが言える。
【0107】
一般に、第1の経路上の源とプローブとの間に電力増幅器がある。この電力増幅器は、アブレーションモードおよび組織特徴付けモードについて少なくとも2つの異なる信号パワーを与えるために、スイッチがオンもしくはオフにされ、または好ましくは可変利得を有し、もしくは可変利得増幅器に接続される。代替的にまたは追加的に、マイクロ波放射の源と前記増幅器との間に可変減衰器を与えることができる。2つの異なるモードについて第1および第2のパワーレベルを機器に与える他の方法は、当業者には明らかである。
【0108】
好ましくは、電力増幅器とプローブとの間にサーキュレータが与えられる。
好ましくは、可変減衰器は連続的に変動する減衰を有する(すなわち2つの離散的レベルの減衰に限定されない)。1つの実施例では、可変減衰器はピンダイオードである。
【0109】
好ましくは、第3の経路に結合された、反射された信号の振幅を検知するための振幅検知器がある。振幅検知器は、例えば対数タイプまたは単純なダイオードタイプであって、前者は大きなダイナミックレンジを与え、他の可能性は当業者には明らかである。振幅検知器は、検知された振幅に基づいて可変減衰器の減衰または可変減衰器の利得を制御するために信号を送信するよう構成される。このように、振幅検知器が大きな信号を検知した場合、第1のミキサの第2の入力への信号入力が予め定められた範囲内にあるように、可変減衰器を制御して減衰を増加させることができる。非常に低い信号が検知された場合は、可変増幅器が制御されて、第1のミキサの第2の入力に受取られ得るレベルの信号に信号を増幅することができ、(存在する場合は)減衰器が制御されて、減衰しないように、または減衰を最小限にするようにすることができる。
【0110】
振幅検知器は、振幅検知器信号に基づいて可変減衰器および/または可変増幅器を制御するよう構成される、FPGAなどのコントローラに接続されてもよい。
【0111】
機器は、好ましくは、第1の経路上の源とプローブとの間にインピーダンスチューナを有する(そこにはサーキュレータが存在し、前記インピーダンスチューナはサーキュレータのプローブ側にある)に。インピーダンスチューナの複素インピーダンスは、プロセッサおよび/または第2の振幅検知器によって検知されるような、反射されたマイクロ波放
射の振幅および位相に基づいて、コントローラによって調整可能である。好ましくは、チューナは3スタブチューナである。
【0112】
この発明の第9の局面で用いられる機器が用いられてもよく、またはこの発明の他の局面のいずれと組み合わせてもよい。
【0113】
この発明の実施例が、例としてのみ、添付の図面を参照してここで説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0114】
発明の詳細な説明
図5に概略的に示される組織分類機器は、マイクロ波放射を分類すべき組織に方向付けるよう構成されたプローブ5に接続された、マイクロ波放射の安定した位相ロックされた源1を有する。プローブ5は、測定される組織がプローブの遠端5aにくるかまたは当該遠端5aを囲むように組織に挿入されるよう適合される。すなわち、使用の際に、プローブと組織6とが物理的に接触する。
【0115】
マイクロ波放射の源1は、電圧制御発振器(VCO)、誘電共振発振器(DRO)、弾性表面波発振器(SAW)、ガンダイオード発振器、または当業者に公知の他のいかなる適切な発振器であってもよい。当該源は、周波数制御素子として作用するよう構成された微小電気機械(MEM)装置を含み得る。MEM装置は、実質的には寄生のない受動素子であり、このため、ノイズおよびこれに伴って起こる周波数変動、たとえばジッタがさらに低減され得るという利点を有する。
【0116】
マイクロ波放射の源は、単一の安定した周波数を出力するように位相ロックされている。たとえば、図3において用いられる構成が用いられてもよい。この実施例においては、マイクロ波放射の源は、13.75GHz〜14.75GHzの周波数を出力し、14.5GHzの単一の周波数を生成するよう位相ロックされる。マイクロ波放射の源についての好適な選択肢は、たとえば、動作温度範囲に1.5GHz/℃のドリフトを有するヒッタイト社(Hittite)のHMC398QS16G VCOであり得る。位相ロック構成を用いて、出力周波数のドリフトを摂氏20〜60度の動作範囲で5KHz/摂氏度未満に維持する。
【0117】
代替的には、マイクロ波放射の源は、それ自体が別の安定した水晶発振器に位相ロックされた安定した水晶発振器に位相ロックされてもよい(このため、この構成はマイクロ波発振器と2つの水晶発振器とを有している)。この二重位相ロック構成は、ドリフトをさらにできるだけ小さくすることを容易にする。ドリフトをできるだけ小さくすることが重要である。というのも、これにより、システムにおける(周波数依存であり得る)ノイズの補償が容易になり、測定感度がより正確になるからである。水晶発振器のうちの1つはTXCO(温度補償水晶発振器)であり、もう一方はVXCO(電圧制御水晶発振器)であり得る。好適なTXCOの一例として、13MHzで動作するゴレッジ・エレクトロニクス社(Golledge Electronics Limited)のGTXO−580V/Gが挙げられる(が、この発明はこれに限定されない)。
【0118】
図20に示される一例は、二重位相ロックされた構成であり、これは、マイクロ波放射の源として機能するDRO(誘電共振発振器)1001と、第1の水晶発振器として機能するTXCO1020と、第2の水晶発振器として機能するVXCO1030とを含む。
【0119】
第1の水晶発振器1020は、(典型的にはMHzの範囲の設定された安定した周波数で)信号を位相比較器1015bに出力する。位相比較器1019は、ループフィルタ1019を介して、マイクロ波放射の源1001の第1の入力1050に出力する。マイク
ロ波放射の源は、機器の残りの部分において用いるための位相ロックされたマイクロ波信号を出力する。この信号の一部は、マイクロ波信号の周波数を分割する(すなわち低減させる)周波数分割器1006に(たとえば、結合器によって)そらされるので、第1の水晶発振器1020の周波数と同じかまたは類似の周波数となり、この分割された信号が位相比較器1015bに入力される。こうして、位相比較器の出力は、マイクロ波放射の源1001の出力と第1の水晶発振器1020との間の位相の差に依存する。このように、マイクロ波放射の源の出力周波数は、それが第1の水晶発振器1020に比べて増大するかのように安定して維持され、マイクロ波放射の源の入力1050に送信される信号がこれに従って調整されることにより、マイクロ波放射出力信号の周波数が下げられる。逆の場合もまた同様である。マイクロ波放射の源1001はまた、第1の水晶発振器1020に位相ロックされた第2の水晶発振器1030から得られ、入力1040において受信される信号によって制御される。第1の水晶発振器1020からの信号の一部が第2の位相比較器1015aに入力され、これが、ループフィルタ1017を介して、電圧制御された第2の水晶発振器1030に出力する。第2の水晶発振器1030の出力は周波数分割器1005に送られ、これが、信号周波数を低減させ、位相ロック構成である位相比較器1015aのもう一方の入力に出力し、これにより、第2の水晶発振器1030の出力が安定して維持される。周波数分割器1005を省き、VXCO1030を用いてTXCO1020の出力周波数を中心とする信号を出力することが好ましいだろう。この代替的な構成においては、VXCO1030からの出力は、位相比較器1015aの第1の入力に直接フィードバックされる。第2の水晶発振器1030はまた、ループフィルタ1018を介してマイクロ波放射の源1040の第2の入力1040に出力する。このようにして、2つの位相ロック入力1040および1050から、マイクロ波放射の源の周波数が、1つの水晶発振器だけに位相ロックされていた場合よりもさらに安定して維持される。
【0120】
位相ロックではなく別の方策を用いて、図3に図示のとおり、狭帯域フィルタとともに広帯域源を用い得る。
【0121】
源1とプローブ5との間には、1つ以上の増幅器2と、(反射されたパワーが増幅器に損傷を与えるのを防ぐために)増幅器2からプローブ5を絶縁するための、サーキュレータの形をしたアイソレータ40と、インピーダンスチューナ50と、ケーブルアセンブリ4とが設けられる。ケーブルアセンブリ4は調節可能な長さを有し、チューナ50の出力とプローブの端部との間に4分の1波長の積分値を与えるよう調節可能であり、これは、プローブの端部で測定されるインピーダンスをより計算しやすくするので望ましいものである。この実施例においては、インピーダンスチューナは3スタブチューナであり、そのインピーダンスは、(従来どおりに)3つの同調素子がチューナキャビティの内外へと動くことによって変化する。同調素子は、コントローラ101によって制御されるアクチュエータ1130によって動かされる。コントローラは好適ないかなる形態であってもよく、図1に示されるマイクロプロセッサシステム101と同じであってもよい。
【0122】
当該機器を用いて、マイクロ波放射をプローブを通じてプローブ5の端部における組織6に方向付けると、組織6は、マイクロ波放射の一部を反射させプローブを通じて源1の方に戻すだろう。方向性結合器200は、この信号の一部を検知器100の入力Bにそらす。検知器に方向付けられた反射された信号は、図5において参照番号210で示される。検知器100はまた、基準信号255から入力Aを得る。この実施例においては、反射された信号は、インピーダンスチューナの出力のすぐ後の位置から得られ、他の位置(図19を参照)から得られてもよいが、この位置の方が好ましい。というのも、一般にさほどノイズを被らないからである。この実施例においては、基準信号はマイクロ波放射の源1から得られるが、方向性結合器250によって増幅器2の前でそらされている。図19の実施例を参照して後に述べられるように、他の位置から放射をそらすことによって基準信号を供給することができるだろう。実際には、好ましい位置は、チューナ50への出力
にあるかまたはチューナ50への出力のすぐ後ろにある。というのも、その位置から得られる測定値が被る、システムの他の構成要素によって生成されるノイズが少なくなるからである。たとえば、増幅器の歪みおよび/または増幅器による位相シフト、サーキュレータによる位相シフトおよび/またはチューナによる位相シフトがある。さらなる代替的な実施例においては、基準信号255は、マイクロ波放射の源1から独立した別個の局部発振器によって生成され得る。
【0123】
検知器100は、反射された信号210および基準信号255の両方の大きさおよび位相を検知する。次いで、この情報が組織分類器150に出力され、当該組織分類器150が特定の組織タイプ(たとえば、筋肉、脂肪、癌性腫瘍)として組織6を分類し、組織タイプを表示するディスプレイ160にその結果を出力する。
【0124】
検知器100は、プロセッサ、ベクトルネットワークアナライザ、位相比較器、および/または、1つ以上のミキサおよび局部発振器を含むヘテロダイン検知構成を含み得る。基準信号および反射された信号のそれぞれのための2つの別個の検知器ユニットを備えることも可能であり、各々は、図5に示される単一の検知器100ではなく、組織分類器に出力し得る。検知器100の1つの実現可能な構成が図5aに示される。スイッチ600は、検知器の入力Aまたは入力Bから信号を取得するよう切換可能である。スイッチ600は、コントローラ101からの信号610によって制御され、各信号から最新情報を得るために2つの位置の間で素早く切換えられ得る(すなわち、スイッチが信号を多重化する)。スイッチ600は、反射された信号210または基準信号255をミキサ620に出力し、ここで、基準信号255および反射された信号210の周波数とは異なる(このため、通常、マイクロ波放射の源1の周波数とは異なる)周波数を有する信号630と混合される。信号630は、図5aにおいて検知器100の一部として示される局部発振器640から得られてもよいが、通常、検知器100に入力する外部の源から得られる。好ましい構成においては、ミキシングダウン信号630はマイクロ波放射の源1から得られる(これは図5には図示されないが、図18および図19の実施例を参照して後に説明される)。信号630の周波数は、反射された信号210および当該基準信号255と混ざってデジタル信号プロセッサ680(たとえば、ベクトルネットワークアナライザまたは位相比較器)に出力され得る低周波数信号を生成するように選択される。ミキサ620の出力とデジタル信号プロセッサ680との間には、ミキサからの高い周波数をいずれもなくすためのローパスフィルタ640、増幅器650およびアナログ−デジタル変換器660が配置される。デジタル信号プロセッサが受取ることのできる中間周波数を生成するために信号630とともにミキサ620を用いる場合、信号精度を維持することができ、ノイズレベルを比較的低く保つことができるという利点がある。代替例では周波数分割器が用いられるが、これは、より多くのノイズを回路に発生させるので、さほど好ましいオプションではない。デジタル信号プロセッサ680は、入力された反射された信号および基準信号に基づいて(実成分および虚成分をともに有する)複素インピーダンスを計算する。検知器100は、この情報をコントローラ101および組織分類器150に出力する。
【0125】
図5においては、デジタル信号プロセッサ680が検知器100の一部として示されるが、組織分類器150は別個の構成要素である。しかしながら、これらは、単一の構成要素、たとえば、専用のチップ、または、コンピュータ、マイクロプロセッサもしくはロジックDSPもしくはマイクロプロセッサを含み得るFPGA上で実行されるプログラム、に組合されてもよい。この場合、この組合された機能構成要素はコントローラ101に出力し得る。
【0126】
組織分類器150は、組織6を複数の異なる組織タイプ(たとえば、脂肪、筋肉、癌性腫瘍)のうちの1つに分類し、さらに、検知器100によって出力される複素インピーダンス値(図5aの実施例においては、検知器の一部であるデジタル信号プロセッサ680
によって出力される値)に基づいて、いつプローブが空気中にあり、組織に接触していないかを検知することができる。
【0127】
組織分類器150は、(プローブの端部における組織6を表わす)上述の複素インピーダンス値を、複素インピーダンスまたはその範囲を特定の組織タイプに割当てる予め定められた値の表と比較することによって組織を分類する。これらの予め定められた値は、制御された条件下でex-vitroで測定された組織タイプの既知のインピーダンスに基づいて理論的に計算され得るかまたは経験的に決定され得る。1990年にアカデミックプレスロンドンによって発行されたフランシス・A・ダックによる「組織の物理的性質;総合参考書」は、6章において、このような理論値を計算することのできるデータを提供する。
【0128】
制御された条件下で行なわれた組織のex-vitroの測定値は、血流、機器の性質などのために、生体内での測定によって実際に得られる値とは異なることが予想される。しかしながら、理論的な値と実際に測定された値との間に関係があることが予想される。このため、組織分類器は、上述の書物などの参考文献からの既知の値または理論値を含むデータの第1の組と、当該機器またはこの発明に従った別の同様の機器によって実際に測定された実際の複素インピーダンスを含む値の第2の組との間の経験的関係に基づいて、組織タイプを決定し得る。ほんの数回測定が行われると、この所定の関係をいずれの機器においても用いることが可能となる。
【0129】
当該機器は、使用前に、プローブの遠端5aにおいて既知のインピーダンスを測定することによって較正される(これはたとえば空気であり得る)。この測定された複素インピーダンスが(たとえば、第2のデータの組または上述の表における)予想される値と比較され、将来の測定値についてはこの較正測定値が参照される。好ましくは、既知の複素インピーダンスのうちの少なくとも2つの物質が較正のために用いられる(たとえば、既知の複素インピーダンスを有する空気および泡、較正中のプローブの先端を囲む泡)。
【0130】
図7は、この発明に従った機器によってもたらされる(プローブの端部における)空気、ラード、油、ゼリー、卵、豚肉、肝臓および水の複素インピーダンス測定値を示す。これらの材料は、順々に積重ねられて互いに接触していた。測定値は、プローブが横方向に当該材料を貫通するように、順次、当該材料を通してプローブを挿入することによって得られた。プローブが各材料に到達すると、マイクロ波放射がプローブを通って投入され、プローブの遠端がその材料の中にあるときにその材料の複素インピーダンスが基準信号および反射された信号から計算された。
【0131】
図21は、積重ねられ互いに接触している4つの異なる材料2001、2002、2003および2004の例を示す。プローブ5は、順次材料を貫通するように、矢印2010によって示される方向に横方向に材料に挿入される。マイクロ波放射は、プローブの遠端5aにおける材料に(たとえば、プローブが図21に示される位置にある場合、材料2002の中に)届けられ、その材料が測定される。このようにして、各材料が順に測定され、オペレータは、その測定値から、どのような種類の材料がプローブの遠端にあるか、それが除去するのに安全かつ適切であるか否か(たとえば、プローブの遠端が癌組織の中にあるか否か)を見分けることができる。
【0132】
この実験においては、材料が互いから分離されていなかったとしても、各材料タイプについて繰返しインピーダンス測定値を得ることがなおも可能であることが分かった。その測定値は、従来の複素インピーダンスフォーマット(R+Jxohms)、大きさおよび位相を与える極座標ならびにデカルト座標で提供される。さまざまな材料が、a)空気を含む、b)ラードおよび油(脂肪分が高い)を含む、c)ゼリーを含む、ならびに、卵白、豚肉、肝臓および水を含むグループに分けられている。これらの異なるグループの物質のうち
の測定された複素インピーダンスは広く間隔をあけて配置されて、それらの間の明確な区別が可能であることを示している。2組の測定値が得られ、表Aおよび表Bにそれぞれ示される。表Aおよび表Bにおける特定の値は異なっている。というのも、異なるチューナ設定や異なるプローブが用いられたが、位相の分散が類似しており、このため、当該システムを較正することによってその差が容易に補償され得るからである。
【0133】
一般に、当該システムが最適な位相および振幅感度を有するようにインピーダンスチューナ設定を調整することが必要である(いくつかのチューナ設定では、検知器は位相ではなく振幅を決定することができ、他の設定は位相に適しており、その目的は、位相および振幅の両方の測定に適した設定を得ることである)。最適な設定はプローブごとに異なるだろう。したがって、当該機器は、当該プローブが自動的に較正され、当該プローブが機器に取付けられるときに最適なチューナ設定が決定される較正ルーチンを有する。既知の負荷(たとえば、空気および/またはプローブ上に置かれた泡のキャップ)に対して異なるチューナ設定で測定を行なうことによって較正を実行してもよい。
【0134】
図7の表Aの値は、図8のスミスチャート上に示される。スミスチャートはマイクロ波工学において広く用いられている。図8におけるスミスチャート上の値は、50オームに標準化されているが、当業者に理解されるように、異なる値に標準化することができるだろう。ラード、油、空気、ゼリーおよび豚肉についての測定値は広く間隔が空けられていることが分かるだろう。図9は、図8のスミスチャートの一部の拡大図であり、グループd)における値の分散をより明確に示す。図10は、同じ機器であるが異なるプローブおよびチューナ設定を用いて得られた同じ物質の測定値を示す。図10は図7の表Bにおける値に対応する。図10のスミスチャートにおける値は50オームに標準化されるが、当業者に理解されるように、異なる値に標準化することができる。図8と同様に、異なるグループの材料間における著しい差が容易に明らかになる。図11は、図10のスミスチャートの一部の拡大図である。
【0135】
図12は、さらに別のプローブで測定された複素インピーダンス値を提供する表Cを示す。そのフォーマットは図7の表におけるのと同じである。図13は、図12の複素インピーダンス値がプロットされているスミスチャートの一部である。水、肝臓、豚肉および卵についての複素インピーダンス値がこのチャート上で明確に区別されることが分かるだろう。図14は、この発明に従った機器で得られた測定値の別の組を有する表Dを含む。そのフォーマットは図7におけるのと同じである。図15は、図14の複素インピーダンス値がプロットされているスミスチャートの一部を示す。ここでも、水、肝臓、豚肉および卵についてのチャートから複素インピーダンス値間の分離が見られるだろう。
【0136】
図6は、図5の第1の実施例に類似しているこの発明の第2の実施例を示す。同様の参照番号は同様の部分を示し、その違いだけをここで説明する。主な違いは、マイクロ波放射のさまざまな周波数が、アブレーションおよび組織測定/分類に用いられることである。
【0137】
こうして、マイクロ波放射の第1の源1の周波数f1とは異なる周波数f2を有するマイクロ波放射の第2の源700が配置される。このマイクロ波放射の第2の源は特定の周波数に位相ロックされてもよい。周波数f1は組織のアブレーションに用いられる。周波数f2は組織を測定または分類するのに用いられる。一般に、マイクロ波放射の第2の源700は、組織を除去するのではなく、単に測定するよう組織と相互作用するはずであるので、(第1の源1に比べて)パワーが比較的低いだろう。
【0138】
マイクロ波放射の第2の源700からの信号はf2の周波数を有し、増幅器740によって増幅され、次に、双方向結合器200aを介してサーキュレータ750および帯域フ
ィルタ730を通ってプローブ4に送られる。この信号は、反射されプローブ4を通り結合器200a、帯域阻止フィルタ720および狭帯域結合器730を介して検知器100の第3の入力Cに戻される。狭帯域結合器720は高品質の逆方向結合器であってもよい。その目的は、(マイクロ波放射の第1の源1からの)周波数f1の信号が、検知器100の第3の入力Cおよび第4の入力Dに到達するのを防ぐことである。
【0139】
順方向結合器780は、マイクロ波放射の第2の源700からの信号の一部を経路755に沿って検知器100の第4の入力Dにそらす。検知器100の入力CおよびDに送信される反射された信号710および基準信号755を用いて、図5の実施例における入力AおよびBと同様に組織タイプを分類する。回路の残りの部分は、マイクロ波放射の第1の源1からの放射がアブレーションのためにだけ用いられ、検知器100の入力AおよびBにおける基準信号および反射された信号が、インピーダンス調整器50の適切な同調を決定するためにだけ用いられることを除いて、図5に類似している。
【0140】
図6に示される主要な構成においては、増幅器740と第2の源700との間に結合器780が位置決めされる。代替的には、結合器は、図6において点線765で示されるようにサーキュレータ750の出力付近に位置決めされ、入力Dに基準信号755を供給するのに用いられ得る。これは、当該信号が、増幅器740によってもたらされる歪みおよび位相シフトと、サーキュレータ750のポート1からポート2までの信号の通路によってもたらされる付加的な位相シフトを被らないという利点を有する。サーキュレータ750は、第2の周波数f2における反射された信号が増幅器740に送り返され、増幅器の出力段にダメージを及ぼすことを防ぐ。結合器200aは双方向素子としての役割を果たし、これにより、当該第2の周波数がプローブ5aの遠端に伝搬し、さらに、プローブからの反射信号を検知することを可能にする。チューナ760は、プローブの測定感度を最適化することのできるインピーダンス調整を可能にするために、サーキュレータ750と帯域阻止フィルタ720との間に設けられてもよい。
【0141】
図6の構成においては、マイクロ波放射の源1、700のうちの1つだけが常にオンに切換えられることが予想される。このため、第1の源1がオンに切換えられると、当該機器はアブレーションモードになり、第2の源700がオンに切換えられると、当該機器は測定または組織分類モードになる。しかしながら、アブレーションが実行されている場合でも、測定を継続的に実行できるようにするために、第2の源700を常にオンに切換えておくことができる。この場合、周波数f2が入力Bに到達するのを防ぐために、周波数f2の通路を妨げるよう構成された帯域阻止フィルタ770をチューナ50の出力と検知器100の第2の入力Bとの間に位置決めしておくことが望ましい。
【0142】
当然、マイクロ波放射の単一の源と、組織分類レベル間における信号振幅を変えるのに用いられる可変増幅器または減衰器とを備えたアブレーションおよび組織分類機器を有することも可能である。しかしながら、図6の実施例は、組織アブレーションおよび組織分類のために異なる周波数を用いることができるという利点を有する。これにより、探し求められている組織の特徴のために最適な応答を与えることとなる(いくつかの組織は或る周波数でピーク応答を与える)、組織分類のための特定の周波数を選択することが可能となる。これにより、アブレーションおよび分類を同時に実行することも可能となるが、これは、それぞれのために異なる周波数が用いられるからである。
【0143】
図18および図19の組織分類システムはまた、組織アブレーションシステムおよび組織分類システムとしての役割を果たし得る。
【0144】
この場合、当該機器は、組織分類モードおよび組織アブレーションモードを有する。組織アブレーションモードでは、組織を除去するのに十分な振幅を有する信号がプローブ5
を通じて方向付けられ、コントローラ101およびアクチュエータ1130を用いて、除去されている組織6に当該機器のインピーダンスを動的に整合させ、こうして、システムに戻ってくるエネルギ反射を最小限にするようにする。組織分類モードでは、より低出力の信号がプローブ5を通じて方向付けられ、インピーダンスチューナ50のインピーダンスが、複素インピーダンス測定を行うことのできる安定した基準点をもたらすよう固定される。当該機器は、組織アブレーションモードと組織分類モードとの間で迅速に切換えることができる。チューナを作動させるために、好適ないかなる作動方法が用いられてもよく、たとえば、リニアモータ、可動コイル構成、ステッピングモータ、圧電アクチュエータまたは磁歪アクチュエータが用いられてもよい。このリストは網羅的なものではなく、他の可能性も当業者に明らかとなるだろう。磁歪作動はそれ自体に進歩性があり、このことがここでより詳細に説明される。
【0145】
図16は、マイクロ波放射のためにインピーダンスチューナの作動を必要とするいずれかの装置の、または上述の、組織分類システムおよび/またはアブレーションシステムとともに用いることのできるインピーダンスチューナのための作動システムを示す。これは、医療用機器または非医療用機器において用いられてもよい。
【0146】
図16に示されるインピーダンスチューナは3スタブチューナであり、3つの同調ロッド820、825、830がさまざまな程度に延在可能な同調キャビティ835を含む筐体831を含む。この実施例においては同調ロッド820、825、830は真鍮からできているが、当業者には他の好適な材料が明らかになるだろう。インピーダンスチューナ50の複素インピーダンスは、同調ロッド820、825、830のいずれかまたはすべてが同調キャビティ835に延在している度合いを変えることによって変化する。当該作動システムが3スタブチューナだけでなく、作動可能な素子を有する他の種類のインピーダンスチューナにも適用可能であることが当業者に明らかとなるだろう。
【0147】
作動システムは磁歪材料のロッド800を含み、当該磁歪材料のロッド800は、少なくとも部分的にハウジング810の内部に位置決めされ、その一方の端部が同調ロッド820のうちの1つに結合される。磁歪ロッド800は好ましくはテルフェノール−Dでできている。ハウジング810は、非磁性金属材料またはプラスチック材料でできており、磁歪ロッド800を受け、当該磁歪ロッド800との密な締りばめを形成する内部ボアを有する。
【0148】
ハウジング810および磁歪ロッド800の外部の周りに、全体で参照番号860で示される複数の電流巻線C1〜Cnが設けられている(これらのうちの最初の6個と最後のものだけが図13に示されている)。電流巻線C1、C2などの各組は、それぞれの電流源840、841、842、843、844、845、…850に接続されている。この実施例においては、電流源は、作動コントローラ1130によって制御される高速増幅器の形を取る。作動コントローラ1130は、それぞれの電流源を介して磁歪ロッド800を好適に作動させるよう構成またはプログラミングされた電子ハードウェアまたはFPGAの形を取り得る。
【0149】
図15には図示されないが、他のロッド825および830は各々、同調ロッド820のための上記および下記のシステムと同一であるそれら自体のそれぞれの作動システムに結合されている。
【0150】
使用の際に、コントローラ1130は、電流源がそれぞれのコイル巻線860のうちの1つ以上を通る電流をパルスにするようにする。巻線を通るこれらの電流パルスは磁界を発生させて、ロッド800における磁歪材料を長手方向に伸ばし、結果として、同調ロッド820がさらに同調キャビティ835へと移動できるようになる。他の同調ロッド85
2および830はまた、コントローラ1130にリンクされたそれぞれの電流源によって同様の態様で制御されるが、分かりやすくするために、これは図16には図示されない。
【0151】
各々の巻線C1、C2などのための別個の電流源を有する利点は、電流の変化率が制限され、このため応答時間が短く保たれ、各電流源のために少数の巻線を備えることによってもインダクタンスが小さく維持され、このため、コイルを通じてより速く電流を切換えることが可能となり、誘導電圧が制限されることである。
【0152】
ハウジング810は、磁歪ロッド800との密な締りばめグリップを形成するが、ロッド800は、電流(磁気)パルスによって広げられると、ハウジング内で移動することができる。こうして、磁歪ロッド800は、ハウジング内で前後に「徐行する」ことができる。これは、図17(a)〜図17(e)を参照して説明される。
【0153】
ハウジング810において最初の位置にある磁歪ロッド800が図17(a)に示される。同調素子820は、図16と同様に磁歪ロッド800の端部に装着される。図17(b)は、磁歪ロッド800を囲む巻線860のうちの1つ以上を通る電流パルスが、矢印870によって示される方向に当該磁歪ロッド800を広げる磁界を発生させる際の状況を示す。したがって、同調ロッド820は、同調キャビティ835(図17には図示せず)にさらに押込まれる。図17(c)は、パルスが通過し、磁歪材料800が緩んで以前の長さに戻った後の状況を示す。ロッド800aの前部はハウジング810によって堅く把持されている。ロッドのこの端部における把持は後方端部800bにおける把持よりも堅い。というのも、ロッドがこの方向に広がっているからである。したがって、磁歪ロッド800がその元の長さに戻ると、ロッド800bの後部が、矢印875によって示されるようにハウジング810のチューナ端部に向かって前進する。こうして、磁歪ロッド800をハウジング810内で前進させる。このプロセスを続けることによって、磁歪ロッド800(アクチュエータ)が比較的短くても、同調ロッド820を大幅に移動させることができる。
【0154】
電流パルスの極性を反転させる(したがって、発生させた磁界の極性を反転させる)ことにより、磁歪ロッド800を逆方向に広げることができる。これは図17(d)に示される。この場合、ロッド800の後端部800bは、磁界が加えられる場合、ハウジング810において、矢印880によって示される方向にチューナ50から離れるように後退する。次いで、パルスが通過すると、磁歪ロッド800が以前の長さにまで緩み、後端部800bが堅く把持されると、前方端部800aが、ハウジング810において、矢印885によって示される方向にチューナ50から離れるように後退する。このようにして、同調キャビティ835に延在する同調ロッド820の長さを短くすることができる。この動作を繰返すことによって、磁歪素子800自体の長さが比較的短くても、同調ロッド820を比較的長い距離にわたって移動させることができる。
【0155】
上述の作動方法が、3スタブチューナだけでなく、2または1スタブチューナ、移相器、および、他の種類のインピーダンスチューナ、特に、インピーダンスを変えるために直線的に移動させられる1つ以上の作動可能な素子を有するインピーダンスチューナにも適用可能であることが当業者には明らかとなるだろう。
【0156】
ここで、この発明の別の実施例を図18および図19を参照して説明する。これは、ミキシングダウン信号がマイクロ波放射の源から得られる点を除いて、図5の実施例に類似している。いくらかより複雑な追加が回路になされ、これにより、より多種多様な反射された信号および基準信号がもたらされ、それに基づいて組織の複素インピーダンスが計算される。さらに、当該機器が組織分類モードおよび組織アブレーションモードの両方で効率的に動作することを可能にする他の構成要素がある。
【0157】
図18は、この発明のこの実施例に従った組織アブレーションおよび分類機器の簡略化されたシステム図である。当該機器は、第1の経路100に沿ってプローブ5に接続されたマイクロ波放射の安定した源1を含む。当該源は、例えば、これまでに記載され図3、図4または図5に示されたものであってもよい。当該経路は、源とプローブ5との間に増幅器回路2、サーキュレータ40およびインピーダンスチューナ50をこの順序で備える。プローブ5aの遠端は、分類または除去されるべき組織6に挿入することができる。プローブ5は、機器の残りの部分、例えばインピーダンスチューナ50への取付けのための可撓性のあるケーブルアセンブリ5bを有する。第2の経路110は源1に結合され、第1のミキサ150の第1の入力151に信号を届ける。第2の経路110は、概して箱110aで示されるさまざまな電子構成要素を備える。第3の経路130は、第2の経路からミキサ150の第2の入力152にそらされた順方向および/または反射されたマイクロ波放射の一部を伝達する。順方向に向けられた放射は上記源から上記プローブ5へと移動する放射であり、反射された放射は、組織6によって反射されプローブ5を通って戻る放射である。ミキサ150の第1の入力151および第2の入力152に入力されるマイクロ波周波数が異なっているので、第1のミキサ150の出力153からの結果として得られる周波数はより低くなり、例えば、第1のミキサ150の出力に接続されたデジタルプロセッサ65が受取ることのできるMHz範囲、例えば10〜250MHzとなるだろう。プロセッサ65は、入力信号の大きさおよび位相をともに決定することができ、概して図5の実施例の検知器100に対応する。当該機器がアブレーションモードである場合、コントローラ101が入力信号の大きさおよび位相に関する情報を用いて、除去されている組織6のインピーダンスに当該機器のインピーダンスを整合させるようにインピーダンスチューナ50の複素インピーダンスの適切な調整を決定することができる。
【0158】
位相ロックループが、第1のミキサに入力された信号の周波数を源1の周波数にロックするために源と第1のミキサとの間の第2の経路上に形成される。このループは、マイクロ波放射の源1に結合された第1の入力221と、第1のミキサ150の第1の入力151に至る位相ロックループの順方向経路への出力223とを有する第2のミキサ22を含む。位相ロックループのフィードバック経路は、第1のミキサの第1の入力151から第2のミキサの第2の入力222へと放射の一部をそらす第4の経路140によって形成される。位相ロックループは、後により詳細に説明される。
【0159】
反射された放射は、プローブ5を通り、チャネルAおよびB、スイッチボックス36ならびに可変減衰器42(および/または、可変利得増幅器については図18に図示されない)を含む第3の経路130に至り、第1のミキサ150の第2の入力152へと進む。
【0160】
第3の経路は、第1の経路からスイッチボックス36に繋がる2つの別個のチャネルAおよびBを第1の部分に含む。チャネルAは、第1の経路100からスイッチボックス36への当該順方向に向けられた放射を流す(この例においては、放射はサーキュレータ40の前で捉えられる)。順方向に向けられた放射は、サーキュレータの後かつチューナの前またはチューナの後において測定されてもよい。好ましい位置はチューナの後である。スイッチボックス36は、経路Aまたは反射された放射Bからの順方向に向けられた放射を、スイッチボックス出力37を通じ可変減衰器42を介して第1のミキサ150の第2の入力152に方向付けるよう(例えば、プロセッサ65が両方から情報を受取ることができるように時分割多重化により)、コントローラ101によって制御される。これらの両方の経路からの情報を用いることにより、経路Aは、実際に、反射された信号の経路Bと比較するための基準信号を供給し、組織分類器66は組織6を複数の組織タイプのうちの1つに分類することができる。第2の入力152に送られた放射は、順方向に向けられた放射であろうと反射された放射であろうと、出力信号153がADC(図3に図示せず)を介しプロセッサ65によって読取り可能なより低い周波数となるように、第2の経路
110からの信号と混合される。可変減衰器42(および/または、図3に図示されない可変利得増幅器)は、必要に応じて第1のミキサ150が受取ることのできるレベルに制御される。
【0161】
ここで、図19を参照して当該機器をより詳細に説明する。
この実施例においては、マイクロ波放射の源1は、局部発振器3、位相ロックループ集積回路4およびループフィルタ7を含む位相ロックループによって制御される電圧制御発振器を含む。位相ロックループを用いて、電圧制御発振器1aから安定した出力周波数を供給する。この実施例においては、電圧制御発振器(VCO)は14.5GHzの固定された周波数を出力するよう制御されるが、他のマイクロ波周波数が選択可能であるかまたは位相ロックループおよびVCOが異なる周波数を与えるよう同調可能であり得ることを当業者は理解するだろう。マイクロ波放射の源1からの放射は、第1の経路100に沿ってプローブ5に送られ、そこで、組織6を有する患者へと方向付けられる。第1の経路に沿って、第1の減衰器8、第1の前置増幅器9、順方向結合器10、第2の減衰器11、可変利得増幅器12、第3の減衰器13、第2の前置増幅器14および電力増幅器15が設けられている。これによりシステムの増幅部分が構築される。第1の経路上においても、前述の増幅構成要素とプローブ5との間に、絶縁装置40(例えばサーキュレータ)と可変複素インピーダンスを有するインピーダンスチューナ50とが設けられている。絶縁装置40は、反射された放射が回路の増幅部分に入るのを防ぐよう機能し、反射された放射をいずれもダンプロード41に方向付け直す。インピーダンスチューナ50は、ミキサ150から受取られプロセッサ65によって処理される信号に基づきコントローラ101によって変えることのできるインピーダンスを有する。コントローラ101は、当該機器の複素インピーダンスが、除去されている組織6の複素インピーダンスと整合するように、インピーダンスチューナ50を制御するよう構成される。このインピーダンス整合は、組織6の複素インピーダンスが変化する場合でも、エネルギの反射を最小限にするよう動的に実行することができる。
【0162】
第2の経路110をここで説明する。第2の経路110は、第2のミキサ22と第1のミキサ150との間にある。第2のミキサ22は、上記第1の順方向に向けられた結合器10および減衰器21を介してマイクロ波放射の源1に結合されている第1の入力221を備える。ミキサ22はまた、第2の入力222および出力223を備える。当該機器は、第2の入力222に入力された周波数が概して異なるように構成される。この実施例においては、一例として14.45GHzがマイクロ波放射の源の周波数に与えられる。その結果、より低い周波数、この実施例では50MHzが、第2のミキサの出力223から、第1のミキサ150の第1の入力151に繋がる位相ロックループの順方向経路110に沿って出力される。
【0163】
混合プロセスからいかなる高周波成分、例えば和周波数、をも除去するために、第2のミキサ22の出力223からの信号がローパスフィルタ23を通して送られる。次いで、当該信号は位相検知器24の入力に進む。位相検知器は、例えばEXORゲートであってもよいが、当業者には他の可能性も明らかとなるだろう。位相検知器24は、入力信号の位相を安定した局部発振器25の位相と比較する。局部発振器25は、この実施例においては、低ドリフト(例えば温度で1pmm)の温度補償水晶発振器である。この実施例においては、その周波数は50MHzであるが、他の周波数が用いられてもよい。位相検知器24は、ループフィルタ26およびDCオフセット調整器を介して電圧制御発振器27に制御信号を出力する。ループフィルタおよびDCオフセット調整器は、電圧制御発振器27の出力を調整し、電圧制御発振器27を制御するのに用いることができる信号を供給するのに必要ならば入力電圧をVCO27に追加および/またはオフセットし得る。制御信号は、電圧制御発振器27から所望の周波数を発生させるために電圧制御発振器27が安定した水晶発振器25とミキサ22の出力との間の位相差に基づいてその出力を調整す
るようなものである。電圧制御発振器の出力は、減衰器28および増幅器29を介して第1のミキサ150の第1の入力151に出力される。第1の入力151に送られた信号のいくらかは、第2のミキサ22の第2の入力222に繋がるフィードバック経路140に沿って結合器30によってそらされる。フィードバック経路140は、結合器30と第2のミキサ22との間に減衰器41、増幅器42および減衰器43を有する。
【0164】
第1のミキサ150の第1の入力151に入力された信号が、マイクロ波放射の源1にロックされると、当該源における周波数のいかなる変化も上記第1のミキサの第1の入力に入力される周波数に変化をもたらし、このため、これら2つの間の差と、これによりミキサから出力された中間周波数とが一定になるだろう。
【0165】
第3の経路130は、第1の経路上のそれぞれの順方向および逆方向に向けられた結合器16、17、18、19および20から切換装置36のそれぞれの端子に繋がる複数のチャネルA、B、C、DおよびEと、当該切換装置から第1のミキサ150の第2の入力152までの経路とを含む。経路A〜Eは各々、それぞれの減衰器31、32、33、34、35を有する。切換装置36は、チャネルA〜Eのうちの1つからの信号を出力37を通じて第1のミキサ150の第2の入力152に方向付けるようコントローラ101によって制御される。結合器16、17および19は順方向結合器であり、このため、チャネルA、BおよびDは、順方向に向けられた放射を第1の経路から切換装置36に流す。結合器18および20は逆方向結合器であり、チャネルCおよびEは、反射された放射を切換装置36に流す。通常、コントローラ101は、一度に1つの信号を分析(すなわち、時分割多重化)することができるように入力A〜Eを順序付けるよう切換装置36を制御するだろう。プロセッサ65が、最初の応答のために、チャネルの切換えおよび位相測定に必要とされるので、FPGAが好ましい。順方向に向けられた放射チャネルが供給する基準信号を、反射された放射のチャネルからの1つ以上の反射された放射の信号とともに用いて、プローブの遠端の端部における負荷または組織の複素インピーダンスを決定し、および/または、組織を分類することができる。これは以下により詳細に説明される。
【0166】
切換装置36の出力37を通じて送信される信号は、第1のミキサ150の第2の入力152に到達する前に、結合器38、可変減衰器42、可変増幅器43および(固定値)減衰器44を通過する。結合器38は、信号の一部を大きさ(振幅)検知器39に方向付け、これが、可変減衰器42の減衰のレベルまたは可変増幅器43の増幅のレベルを制御するために制御信号をコントローラ101に出力する。制御信号は緩衝増幅器41を介してコントローラ101に送信されてもよい。制御信号は、単に、検知された大きさに関する情報であってもよい。次いで、ミキサ150の第2の入力152に入力される信号が、第1のミキサ150によって受取り可能な所定のパワーバンド内にくるように、コントローラ101が、振幅検知器39からの上記制御信号に基づいて可変減衰器42の減衰または可変増幅器43の利得を制御する。これが必要とされるのは、そうでなければ、当該機器がアブレーションモード(増幅器12において高出力、低減衰)である場合と組織分類モード(低出力)である場合との間で、第1のミキサに入力される信号が大幅に変動する可能性があるからである。減衰器42が絶えず可変であるので、出力信号は、必要に応じて一定のパワーに維持することができる。
【0167】
アナログ−デジタル変換器640は、第1のミキサ150の出力153とプロセッサ65との間に設けられる。プロセッサ65は、(経路A〜Eおよび第1のミキサ150からの)入力信号に基づいて組織6の複素インピーダンスを決定するよう構成され、この情報をコントローラ101に伝達する。当該コントローラ101が、この情報に基づいてインピーダンスチューナ50および/または回路の他の素子を制御する。プロセッサ65はまた、この情報を組織分類器66に出力し、当該組織分類器66は検知された複素インピーダンスを用いて、組織を組織タイプに分類する。好ましくは、組織分類器66はプロセッ
サ65の一部である。プロセッサ65、コントローラ101および組織分類器66は図3および図4に別個の構成要素として図示されているが、これらが単一の構成要素、例えば、コンピュータ、マイクロプロセッサ、またはロジックDSPもしくはマイクロプロセッサを含み得るFPGA上で実行されるプログラムに組合され得ることが理解されるだろう。
【0168】
より具体的には、組織分類器66は、組織6を複数の異なる組織タイプ(例えば、脂肪、筋肉、癌性腫瘍)のうちの1つに分類し、さらに、プロセッサ65によって出力される複素インピーダンス値に基づいて、いつプローブが空気中にあり、組織と接触していないかを検知することもできる。
【0169】
好ましい構成では、プロセッサ65は、基準信号(チャネルA、BまたはD)および反射された信号(チャネルCまたはE)の振幅および位相に基づいて、プローブの端部における組織6を表わす複素インピーダンス値を計算する。組織分類器66は、この計算された複素インピーダンス値を、複素インピーダンスまたはその範囲を特定の組織タイプに割当てる予め定められた値の表と比較することにより、プローブの端部における組織6を分類する。基準信号および反射された信号がそれぞれ1つずつしか必要とされないが、より多くのチャネルを導入することにより、当該機器の複素インピーダンス特性の測定が可能となり、このため、この情報を用いて、より正確な組織測定および分類情報を与えることができる。予め定められた値は、制御された条件下でex-vitroで測定された組織タイプの既知のインピーダンスに基づいて理論的に計算され得るかまたは経験的に決定され得る。1990年にアカデミックプレスロンドンによって発行されたフランシス・A・ダックによる「組織の物理的性質;総合参考書」(ISBN 0-12-222800-6)は、6章において、このような理論値を計算することのできるデータを提供する。検知された複素インピーダンスに基づく組織分類は、図5〜図15を参照して上述された分類と同じである。
【0170】
プローブアセンブリ5、5aの実現可能な構成をここでより詳細に説明する。組織に放射を届け、反射された放射を受取ることのできるプローブをこの発明とともに用いることができることが理解されるべきである。加えて、プローブは、組織に(直接または管を介して)挿入できなければならない。したがって、以下の構成は例示としてのみ与えられ、この発明を限定することを意図するものではない。代替的な構成が、添付の特許請求の範囲内で当業者に明らかになるだろう。
【0171】
図22(a)は、プローブ5のための好ましい構造を示す。プローブ5は同軸である。当該プローブ5は、トロカールまたは挿入管を必要とすることなく組織層を通じてプローブを押込むことを可能にする剛性を与えるために、好ましくはステンレス鋼でできた外側ジャケットまたはケーシング505を有する。この例においては、外側ジャケット505の直径510は、3mm以下(8フレンチ(French)以下)であり、その長さは20mm〜200mm、好ましくは120mmである。この実施例においては、外側ジャケットは金属でできており、外部導体の役割を果たす。内部導体は、適切な材料、例えば、ステンレス鋼、銀でコーティングされたステンレス鋼または銀でコーティングされた銅でできている。誘電体530は、外部導体505から内部導体515を隔てる。好ましくは、誘電体は(GHz周波数では)低損失材料である。誘電体530は、固定された特性インピーダンス(例えば、50Ω)が同軸構造全体にわたって維持されることを確実にし、かつ、内部導体および外部導体がともに短絡し得ないことを確実にするのに用いられる。特性インピーダンスの値は、外部導体505の内径510と内部導体515の外径525との比率、および、上記導体間の誘電材料530の比誘電率の値によって管理される。誘電材料530はまた、当該構造の電圧破壊能力を増大させる。比誘電率が低い低損失誘電材料を用いることが好ましく、好適な材料には、低密度PTFE、拡張されたPTFEおよびテープが巻付けられたPTFEが含まれる。
【0172】
円錐体520はプローブの遠端に取付けられる。これにより、プローブが比較的容易に組織層を通して押込まれることが可能となる。円錐体520は、14.5GHzで低損失係数を有する剛性の誘電材料でできている。円錐体に好適な材料はマイクロ波セラミックスを含み、この例においては、エマーソン・カミング・マイクロウェーブ・プロダクツ(Emerson and Cumming Microwave Products)から入手可能でありECCOSTOCK HiK500Fとして公知である高温低損失プラスチックが用いられる。好ましくは、円錐体材料は、3〜30の比誘電率を示す。
【0173】
図22に示される実施例においては、内部導体515は円錐体520の端部から突出る。この特徴は、この発明が治療および測定に用いられるべき場合、特に有利である。というのも、内部導体を露出することにより最適な測定感度がもたらされることが判明しているからである。他の実現可能な構成には、円錐体内部でHフィールドループとして形成される内部導体、および、完全に円錐体内部にある内部導体が含まれる。
【0174】
円錐体520および外側ジャケット505の端部は、プローブ内の流体または組織の侵入を防ぐようコーティングされる。このコーティングは、いかなる好適な材料であってもよく、この実施例においてはパリレン(Parylene)C材料が用いられる。
【0175】
プローブ5は、図22(b)に図示のとおり、コネクタ535、例えばSMAシリーズのマイクロ波コネクタを用いて同軸ケーブル540のアセンブリに接続される。代替的には、プローブ5は、図22(c)に図示のとおり、ケーブルアセンブリに一体化されてもよい。図22(a)は、図22(b)および図22(c)のうちの点線で囲まれた部分を示す拡大された詳細図である。
【0176】
上述の剛性のプローブではなく半剛性のプローブを用いることも可能であるだろう。このようなプローブは、人体に挿入される内視鏡管、カニューレ、トロカールまたは他の管にまで挿入することができる。これらはまた、場合によっては、生物学的システムに直接、または、物理的な抵抗が全くないかまたは殆どない組織を通じて挿入され得る。その詳細は、プローブがさほど剛性でなく、このため、異なる材料を用いることができ、例えば、外側ジャケットがアルミニウムから作られ、内部導体が銀でコーティングされた銅線から作られ、誘電体がテープが巻付けられたT−PTFEから作られていることを除いて、上述の詳細に類似している。
【0177】
この適用例において説明された機器についての典型的な応用例は、胸部、脳および肝臓の腫瘍の治療および検知を含む。これは、何らかの心臓手術、ならびにデスモイド腫瘍(人体全体にわたる筋腱膜構造に起因する良性の繊維性腫瘍)の検知および治療にも用いることができる。当業者には他の可能性が明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】既に説明された、プローブの端部にある組織とのインピーダンス整合が可能なアブレーション機器の図である。
【図2】既に説明された、図1に示されたようなアブレーション機器とともに使用するための、位相比較器を有する代替的検知構成を示す図である。
【図3】既に説明された、マイクロ波放射の安定した源の達成のためのフィードバックループを示す図である。
【図4】既に説明された、マイクロ波放射の安定した源の達成のための代替的構成を示す図である。
【図5】この発明の第1の実施例による組織分類機器を示す図である。
【図6】この発明の第2の実施例による組織分類システムを示す図である。
【図7】この発明による機器を用いて行われた複素インピーダンス測定の結果表を示す図である。
【図8】図7の表Bからの結果を図形的に示すスミスチャートである。
【図9】図8の部分の拡大図である。
【図10】図7の表Bからの結果を図形的に示すスミスチャートである。
【図11】図10の部分の拡大図である。
【図12】別の結果表である。
【図13】図12の結果を図形的に表示するスミスチャートの部分を示す図である。
【図14】別の結果表である。
【図15】図14の結果を図形的に表示するスミスチャートの部分を示す図である。
【図16】この発明の第3の実施例によるチューナおよび作動構成を示す概略図である。
【図17】(a)から(e)は、図12の磁歪アクチュエータのハウジング内の動きを示す図である。
【図18】この発明の1つの実施例による、アブレーションおよび組織特徴付け機器の簡略化された図である。
【図19】この発明の実施例のより詳細なシステム図である。
【図20】マイクロ波放射の源のための二重位相ロック構成の例の図である。
【図21】サンプル材料に挿入されて貫通するプローブの図である。
【図22(a)】この発明と共に用いられ得る、ある型のプローブの断面図である。
【図22(b)】可撓性のあるケーブルアセンブリに取付けられた場合の、図22(a)のプローブの図である。
【図22(c)】可撓性のあるケーブルアセンブリに組み込まれて形成される場合の、図22(a)のプローブの図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の周波数を有するマイクロ波放射の源を含む組織分類機器であって、
マイクロ波放射を組織に方向付けるためのプローブと、
反射され前記プローブを通って戻るマイクロ波放射を含む反射された信号の大きさおよび位相と、基準信号の大きさおよび位相とを検知するための検知器と、
前記検知器によって検知された信号の大きさおよび位相に基づいて組織を組織タイプまたは組織状態に分類するための組織分類器とを含む、組織分類機器。
【請求項2】
プローブは、組織への挿入のために設計される、請求項1に記載の組織分類機器。
【請求項3】
基準信号はマイクロ波放射の源から得られる、請求項1または2に記載の組織分類機器。
【請求項4】
マイクロ波放射の源は単一の周波数に位相ロックされる、請求項1から3のいずれかに記載の組織分類機器。
【請求項5】
組織分類が、反射された信号および基準信号の大きさおよび位相から計算された複素インピーダンスと、1つ以上の組織タイプの複素インピーダンスについての既知の値または理論値に関するデータの第1の組とに基づいて実行される、請求項1から4のいずれかに記載の組織分類機器。
【請求項6】
組織分類器は、測定された複素インピーダンスを、予め定められた値または値の範囲を異なる組織タイプに割当てる表における値と比較することによって、組織を分類するよう構成される、請求項1から5のいずれかに記載の組織分類機器。
【請求項7】
第1および第2の入力ならびに出力を有するミキサをさらに含み、第1の入力は、前記反射された信号をミキサに伝達するための経路に結合され、第2の入力は、ミキシングダウン信号をミキサに伝達するための経路に結合され、出力は検知器に結合される、請求項1から6のいずれかに記載の組織分類機器。
【請求項8】
ミキシングダウン信号はマイクロ波放射の源から得られる、請求項1から7のいずれかに記載の組織分類機器。
【請求項9】
前記ミキサにミキシングダウン信号を届けるための経路は、マイクロ波放射の源の周波数に基づいてミキシングダウン信号の周波数を制御するための位相ロックループを含む、請求項1から8のいずれかに記載の組織分類機器。
【請求項10】
調整可能な複素インピーダンスを有するインピーダンス調整器をさらに含み、前記インピーダンス調整器は前記源と前記プローブとの間に位置する、請求項1から9のいずれかに記載の機器。
【請求項11】
プローブをマイクロ波放射の源および検知器に結合するケーブルがあり、前記ケーブルは、マイクロ波放射の源の周波数で+/−5度の位相安定性を有する、請求項1から10のいずれかに記載の機器。
【請求項12】
ケーブルは調整可能な複素インピーダンスを有するインピーダンス調整器に接続され、前記インピーダンス調整器は前記源と前記プローブとの間に位置する、請求項11に記載の機器。
【請求項13】
機器は、組織を除去し、組織を分類することができる、請求項12に記載の機器。
【請求項14】
機器は、組織を除去するためのアブレーションモードと組織を分類するための組織特徴付けモードとを有し、アブレーションモードの場合には、機器が、組織分類モードの場合よりも高いマイクロ波放射の振幅を組織に届けるように構成される、請求項13に記載の機器。
【請求項15】
(i)機器が組織分類モードである場合に、反射されたマイクロ波放射を、それが検知器に到達する前に増幅するための可変増幅器、および/または、(ii)機器が組織アブレーションモードである場合に、反射されたマイクロ波放射を、それが検知器に到達する前に減衰させるための可変減衰器をさらに含む、請求項14に記載の機器。
【請求項16】
機器が、アブレーションモードの場合に、マイクロ波放射の第1の周波数をプローブに方向付け、組織分類モードの場合に、第1の周波数とは異なるマイクロ波放射の第2の周波数をプローブに方向付けるよう構成される、請求項13から15のいずれかに記載の機器。
【請求項17】
マイクロ波放射の源および検知器にプローブを結合するケーブルがあり、前記ケーブルは、マイクロ波放射の第2の源の周波数で+/−5度の位相安定性を有する、請求項16に記載の機器。
【請求項18】
マイクロ波回路で用いるためのチューナであって、
調整可能な長さまたは位置の少なくとも1つのチューナ素子を含み、チューナのインピーダンスは、前記チューナ素子の長さまたは位置を調整することによって変動可能であり、前記チューナはさらに、
磁歪材料の一部の長さの変化が前記同調素子の有効長さを変化させるかまたは前記同調素子の位置を移動させるように前記少なくとも1つの同調素子に結合される前記磁歪材料の一部を含むアクチュエータと、
前記磁歪材料の長さの少なくとも一部を囲む1つ以上のコイル巻線に接続された電流の1つ以上の源とを含む、チューナ。
【請求項19】
アクチュエータおよび同調素子は別個の構成要素である、請求項18に記載のチューナ。
【請求項20】
前記(または各々の)アクチュエータは、コイル巻線の複数の組と複数の電流源とを有し、コイル巻線のそれぞれの組はそれぞれの電流源に接続される、請求項18または19に記載のチューナ。
【請求項21】
各々の電流源は、電流巻線の各組に方向付けられる電流を制御するための制御回路に接続されたそれぞれの増幅器の形を取る、請求項20のいずれかに記載のチューナ。
【請求項22】
前記磁歪材料はテルフェノールを含む、請求項18から21のいずれかに記載のチューナ。
【請求項23】
前記磁歪材料はテルフェノール−Dである、請求項22に記載のチューナ。
【請求項24】
前記磁歪材料の一部は非磁性ハウジングに収容される、請求項18から23のいずれかに記載のチューナ。
【請求項25】
ハウジングは、磁歪材料の長さとの締りばめを有する、請求項18から24のいずれか
に記載のチューナ。
【請求項26】
アクチュエータは、磁歪材料のロッドの形をした可動アクチュエータであり、磁界をパルスにすることにより、それとの締りばめを有するハウジングのボアに沿って移動可能である、請求項18から25のいずれかに記載のチューナ。
【請求項27】
同調素子はスタブチューナの同調ロッドであり、各々のロッドは、それぞれの磁歪アクチュエータに結合される、請求項18から26のいずれかに記載のチューナ。
【請求項28】
マイクロ波放射の源と、除去されるべき組織にマイクロ波放射を方向付けるためのプローブと、反射されプローブを通って戻るマイクロ波放射の大きさおよび位相を検知するための検知器と、プローブと源との間におけるインピーダンスチューナとを含む組織アブレーションまたは測定機器であって、
インピーダンスチューナは、磁歪材料を含む1つ以上のアクチュエータによって作動させられる1つ以上のロッドを含む、組織アブレーションまたは測定機器。
【請求項29】
インピーダンスチューナは、請求項18から27のいずれかに記載のチューナである、請求項28に記載の組織アブレーションまたは測定機器。
【請求項30】
反射されたマイクロ波放射の検知された位相および大きさに基づいてチューナのインピーダンスを調整するためにアクチュエータを調整するよう構成されたコントローラを有する、請求項28または29に記載の組織アブレーションまたは測定機器。
【請求項31】
組織を分類する方法であって、
a)分類すべき組織にプローブを挿入するステップと、b)前記プローブを通じてマイクロ波放射を組織に方向付けるステップと、c)前記組織によって反射され前記プローブを通って戻るマイクロ波放射の振幅および位相、ならびに、基準信号の振幅および位相に基づいて組織タイプまたは組織状態を分類するステップとを含む、方法。
【請求項32】
組織を除去する方法であって、組織を分類するために第1のパワーのマイクロ波放射で請求項31に記載のステップを実行し、次いで、前記第1のパワーよりも大きな第2のパワーのマイクロ波放射を前記組織に挿入された同じプローブまたは別のプローブにまで方向付けることによって組織を除去する、方法。
【請求項33】
組織アブレーションまたは測定機器であって、
マイクロ波放射の源と、
除去および/または測定すべき組織に前記マイクロ波放射を届けるためのプローブと、
前記源から前記プローブにマイクロ波放射を伝達するための第1の経路と、
第1および第2の入力ならびに出力を有する第1のミキサと、
得られた信号を前記源から前記第1のミキサの前記第1の入力に届けるための第2の経路と、
前記第1の経路からマイクロ波放射の一部をそらすための第3の経路とを含み、前記そらされた放射は、前記第1の経路に沿って前記源から前記プローブに進む順方向に向けられた放射、または、反射され前記プローブを通って戻る反射されたマイクロ波放射であり、前記第3の経路はさらに、前記そらされた放射、またはそらされた放射から得られる信号を前記第1のミキサの前記第2の入力に届け、
ミキサの出力は、前記第1の経路からそらされた前記順方向または反射された放射の振幅および位相を計算するよう構成されたプロセッサに信号を送信するよう構成され、
前記第2の経路は、マイクロ波放射の源の周波数に基づいて、第1のミキサの第1の入力に送信された信号の周波数を制御するための位相ロックループを含む、組織アブレーシ
ョンまたは測定機器。
【請求項34】
第2の経路は、マイクロ波放射の源に結合され、マイクロ波放射の源と第1のミキサとの間に第2のミキサを有し、第1のミキサの第1の入力を第2のミキサの第2の入力に結合する第4の経路がある、請求項32に記載の組織アブレーションまたは測定機器。
【請求項35】
第3の経路は複数のチャネルを含み、前記複数のチャネルは各々、第1の経路上の異なる点またはプローブに結合され、一度に前記チャネルのうちの1つのみから放射を第1のミキサの第2の入力に方向付けるよう構成される切換装置に接続される、請求項32または33に記載の組織アブレーションまたは測定機器。
【請求項36】
組織分類およびアブレーション機器であって、
マイクロ波放射の源と、
除去および/または測定すべき組織に前記マイクロ波放射を届けるためのプローブと、
前記源から前記プローブにマイクロ波放射を伝達するための第1の経路と、
第1および第2の入力、ならびに、信号を前記プロセッサに方向付けるための出力を有する第1のミキサと、
信号源を前記第1のミキサの前記第1の入力に届けるための第2の経路とを含み、前記信号は、プローブを通じて届けられるマイクロ波放射への周波数とは異なる周波数を有し、前記組織分類およびアブレーション機器はさらに、
マイクロ波放射の一部を前記第1の経路からそらすための第3の経路を含み、前記そらされた放射は、前記第1の経路に沿って前記源から前記プローブに進む順方向に向けられた放射、または、反射され前記プローブを通って戻る反射されたマイクロ波放射であり、前記第3の経路は、前記そらされた放射またはそらされた放射から得られる信号を前記第1のミキサの前記第2の入力に届け、前記組織分類およびアブレーション機器はさらに、
前記第1の経路からそらされた前記順方向または反射された放射の振幅および位相を計算するよう構成されたプロセッサに信号を送信するよう構成されたミキサの出力と、
反射されたマイクロ波放射を、それが前記第1のミキサの第2の入力に到達する前に、減衰または増幅させるための、前記第3の経路上の可変減衰器および/または可変増幅器とを含む、組織分類およびアブレーション機器。
【請求項37】
反射された信号の振幅を検知するための振幅検知器をさらに含み、振幅検知器は、第3の経路に結合され、検知された振幅に基づいて可変減衰器の減衰または可変増幅器の利得を制御するための信号を送信するよう構成される、請求項35に記載の組織分類およびアブレーション機器。
【請求項1】
所与の周波数を有するマイクロ波放射の源を含む組織分類機器であって、
マイクロ波放射を組織に方向付けるためのプローブと、
反射され前記プローブを通って戻るマイクロ波放射を含む反射された信号の大きさおよび位相と、基準信号の大きさおよび位相とを検知するための検知器と、
前記検知器によって検知された信号の大きさおよび位相に基づいて組織を組織タイプまたは組織状態に分類するための組織分類器とを含む、組織分類機器。
【請求項2】
プローブは、組織への挿入のために設計される、請求項1に記載の組織分類機器。
【請求項3】
基準信号はマイクロ波放射の源から得られる、請求項1または2に記載の組織分類機器。
【請求項4】
マイクロ波放射の源は単一の周波数に位相ロックされる、請求項1から3のいずれかに記載の組織分類機器。
【請求項5】
組織分類が、反射された信号および基準信号の大きさおよび位相から計算された複素インピーダンスと、1つ以上の組織タイプの複素インピーダンスについての既知の値または理論値に関するデータの第1の組とに基づいて実行される、請求項1から4のいずれかに記載の組織分類機器。
【請求項6】
組織分類器は、測定された複素インピーダンスを、予め定められた値または値の範囲を異なる組織タイプに割当てる表における値と比較することによって、組織を分類するよう構成される、請求項1から5のいずれかに記載の組織分類機器。
【請求項7】
第1および第2の入力ならびに出力を有するミキサをさらに含み、第1の入力は、前記反射された信号をミキサに伝達するための経路に結合され、第2の入力は、ミキシングダウン信号をミキサに伝達するための経路に結合され、出力は検知器に結合される、請求項1から6のいずれかに記載の組織分類機器。
【請求項8】
ミキシングダウン信号はマイクロ波放射の源から得られる、請求項1から7のいずれかに記載の組織分類機器。
【請求項9】
前記ミキサにミキシングダウン信号を届けるための経路は、マイクロ波放射の源の周波数に基づいてミキシングダウン信号の周波数を制御するための位相ロックループを含む、請求項1から8のいずれかに記載の組織分類機器。
【請求項10】
調整可能な複素インピーダンスを有するインピーダンス調整器をさらに含み、前記インピーダンス調整器は前記源と前記プローブとの間に位置する、請求項1から9のいずれかに記載の機器。
【請求項11】
プローブをマイクロ波放射の源および検知器に結合するケーブルがあり、前記ケーブルは、マイクロ波放射の源の周波数で+/−5度の位相安定性を有する、請求項1から10のいずれかに記載の機器。
【請求項12】
ケーブルは調整可能な複素インピーダンスを有するインピーダンス調整器に接続され、前記インピーダンス調整器は前記源と前記プローブとの間に位置する、請求項11に記載の機器。
【請求項13】
機器は、組織を除去し、組織を分類することができる、請求項12に記載の機器。
【請求項14】
機器は、組織を除去するためのアブレーションモードと組織を分類するための組織特徴付けモードとを有し、アブレーションモードの場合には、機器が、組織分類モードの場合よりも高いマイクロ波放射の振幅を組織に届けるように構成される、請求項13に記載の機器。
【請求項15】
(i)機器が組織分類モードである場合に、反射されたマイクロ波放射を、それが検知器に到達する前に増幅するための可変増幅器、および/または、(ii)機器が組織アブレーションモードである場合に、反射されたマイクロ波放射を、それが検知器に到達する前に減衰させるための可変減衰器をさらに含む、請求項14に記載の機器。
【請求項16】
機器が、アブレーションモードの場合に、マイクロ波放射の第1の周波数をプローブに方向付け、組織分類モードの場合に、第1の周波数とは異なるマイクロ波放射の第2の周波数をプローブに方向付けるよう構成される、請求項13から15のいずれかに記載の機器。
【請求項17】
マイクロ波放射の源および検知器にプローブを結合するケーブルがあり、前記ケーブルは、マイクロ波放射の第2の源の周波数で+/−5度の位相安定性を有する、請求項16に記載の機器。
【請求項18】
マイクロ波回路で用いるためのチューナであって、
調整可能な長さまたは位置の少なくとも1つのチューナ素子を含み、チューナのインピーダンスは、前記チューナ素子の長さまたは位置を調整することによって変動可能であり、前記チューナはさらに、
磁歪材料の一部の長さの変化が前記同調素子の有効長さを変化させるかまたは前記同調素子の位置を移動させるように前記少なくとも1つの同調素子に結合される前記磁歪材料の一部を含むアクチュエータと、
前記磁歪材料の長さの少なくとも一部を囲む1つ以上のコイル巻線に接続された電流の1つ以上の源とを含む、チューナ。
【請求項19】
アクチュエータおよび同調素子は別個の構成要素である、請求項18に記載のチューナ。
【請求項20】
前記(または各々の)アクチュエータは、コイル巻線の複数の組と複数の電流源とを有し、コイル巻線のそれぞれの組はそれぞれの電流源に接続される、請求項18または19に記載のチューナ。
【請求項21】
各々の電流源は、電流巻線の各組に方向付けられる電流を制御するための制御回路に接続されたそれぞれの増幅器の形を取る、請求項20のいずれかに記載のチューナ。
【請求項22】
前記磁歪材料はテルフェノールを含む、請求項18から21のいずれかに記載のチューナ。
【請求項23】
前記磁歪材料はテルフェノール−Dである、請求項22に記載のチューナ。
【請求項24】
前記磁歪材料の一部は非磁性ハウジングに収容される、請求項18から23のいずれかに記載のチューナ。
【請求項25】
ハウジングは、磁歪材料の長さとの締りばめを有する、請求項18から24のいずれか
に記載のチューナ。
【請求項26】
アクチュエータは、磁歪材料のロッドの形をした可動アクチュエータであり、磁界をパルスにすることにより、それとの締りばめを有するハウジングのボアに沿って移動可能である、請求項18から25のいずれかに記載のチューナ。
【請求項27】
同調素子はスタブチューナの同調ロッドであり、各々のロッドは、それぞれの磁歪アクチュエータに結合される、請求項18から26のいずれかに記載のチューナ。
【請求項28】
マイクロ波放射の源と、除去されるべき組織にマイクロ波放射を方向付けるためのプローブと、反射されプローブを通って戻るマイクロ波放射の大きさおよび位相を検知するための検知器と、プローブと源との間におけるインピーダンスチューナとを含む組織アブレーションまたは測定機器であって、
インピーダンスチューナは、磁歪材料を含む1つ以上のアクチュエータによって作動させられる1つ以上のロッドを含む、組織アブレーションまたは測定機器。
【請求項29】
インピーダンスチューナは、請求項18から27のいずれかに記載のチューナである、請求項28に記載の組織アブレーションまたは測定機器。
【請求項30】
反射されたマイクロ波放射の検知された位相および大きさに基づいてチューナのインピーダンスを調整するためにアクチュエータを調整するよう構成されたコントローラを有する、請求項28または29に記載の組織アブレーションまたは測定機器。
【請求項31】
組織を分類する方法であって、
a)分類すべき組織にプローブを挿入するステップと、b)前記プローブを通じてマイクロ波放射を組織に方向付けるステップと、c)前記組織によって反射され前記プローブを通って戻るマイクロ波放射の振幅および位相、ならびに、基準信号の振幅および位相に基づいて組織タイプまたは組織状態を分類するステップとを含む、方法。
【請求項32】
組織を除去する方法であって、組織を分類するために第1のパワーのマイクロ波放射で請求項31に記載のステップを実行し、次いで、前記第1のパワーよりも大きな第2のパワーのマイクロ波放射を前記組織に挿入された同じプローブまたは別のプローブにまで方向付けることによって組織を除去する、方法。
【請求項33】
組織アブレーションまたは測定機器であって、
マイクロ波放射の源と、
除去および/または測定すべき組織に前記マイクロ波放射を届けるためのプローブと、
前記源から前記プローブにマイクロ波放射を伝達するための第1の経路と、
第1および第2の入力ならびに出力を有する第1のミキサと、
得られた信号を前記源から前記第1のミキサの前記第1の入力に届けるための第2の経路と、
前記第1の経路からマイクロ波放射の一部をそらすための第3の経路とを含み、前記そらされた放射は、前記第1の経路に沿って前記源から前記プローブに進む順方向に向けられた放射、または、反射され前記プローブを通って戻る反射されたマイクロ波放射であり、前記第3の経路はさらに、前記そらされた放射、またはそらされた放射から得られる信号を前記第1のミキサの前記第2の入力に届け、
ミキサの出力は、前記第1の経路からそらされた前記順方向または反射された放射の振幅および位相を計算するよう構成されたプロセッサに信号を送信するよう構成され、
前記第2の経路は、マイクロ波放射の源の周波数に基づいて、第1のミキサの第1の入力に送信された信号の周波数を制御するための位相ロックループを含む、組織アブレーシ
ョンまたは測定機器。
【請求項34】
第2の経路は、マイクロ波放射の源に結合され、マイクロ波放射の源と第1のミキサとの間に第2のミキサを有し、第1のミキサの第1の入力を第2のミキサの第2の入力に結合する第4の経路がある、請求項32に記載の組織アブレーションまたは測定機器。
【請求項35】
第3の経路は複数のチャネルを含み、前記複数のチャネルは各々、第1の経路上の異なる点またはプローブに結合され、一度に前記チャネルのうちの1つのみから放射を第1のミキサの第2の入力に方向付けるよう構成される切換装置に接続される、請求項32または33に記載の組織アブレーションまたは測定機器。
【請求項36】
組織分類およびアブレーション機器であって、
マイクロ波放射の源と、
除去および/または測定すべき組織に前記マイクロ波放射を届けるためのプローブと、
前記源から前記プローブにマイクロ波放射を伝達するための第1の経路と、
第1および第2の入力、ならびに、信号を前記プロセッサに方向付けるための出力を有する第1のミキサと、
信号源を前記第1のミキサの前記第1の入力に届けるための第2の経路とを含み、前記信号は、プローブを通じて届けられるマイクロ波放射への周波数とは異なる周波数を有し、前記組織分類およびアブレーション機器はさらに、
マイクロ波放射の一部を前記第1の経路からそらすための第3の経路を含み、前記そらされた放射は、前記第1の経路に沿って前記源から前記プローブに進む順方向に向けられた放射、または、反射され前記プローブを通って戻る反射されたマイクロ波放射であり、前記第3の経路は、前記そらされた放射またはそらされた放射から得られる信号を前記第1のミキサの前記第2の入力に届け、前記組織分類およびアブレーション機器はさらに、
前記第1の経路からそらされた前記順方向または反射された放射の振幅および位相を計算するよう構成されたプロセッサに信号を送信するよう構成されたミキサの出力と、
反射されたマイクロ波放射を、それが前記第1のミキサの第2の入力に到達する前に、減衰または増幅させるための、前記第3の経路上の可変減衰器および/または可変増幅器とを含む、組織分類およびアブレーション機器。
【請求項37】
反射された信号の振幅を検知するための振幅検知器をさらに含み、振幅検知器は、第3の経路に結合され、検知された振幅に基づいて可変減衰器の減衰または可変増幅器の利得を制御するための信号を送信するよう構成される、請求項35に記載の組織分類およびアブレーション機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22a】
【図22b】
【図22c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22a】
【図22b】
【図22c】
【公表番号】特表2008−500087(P2008−500087A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514099(P2007−514099)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002085
【国際公開番号】WO2005/115235
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506390362)メディカル・デバイス・イノベーションズ・リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL DEVICE INNOVATIONS LIMITED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002085
【国際公開番号】WO2005/115235
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506390362)メディカル・デバイス・イノベーションズ・リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL DEVICE INNOVATIONS LIMITED
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]