説明

組織液収集方法並びに該方法に用いる組織液収集キット及び組織液収集シート

【課題】使用者の負担を軽減しつつ、組織液を抽出するための収集体を簡単に皮膚に形成された微細孔形成領域に位置決めすることができる組織液収集キットを提供する。
【解決手段】皮膚に形成された微細孔を介して抽出される組織液を収集するための組織液収集キットであって、粘着面を有し、微細孔が形成される領域を画定する目印シートと、粘着面を有する透明な保持シートと、この保持シートの粘着面の一部によって保持され、皮膚から抽出される組織液を収集する収集体とを備えたことを特徴とする組織液収集キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の皮膚に形成された微細孔から抽出される組織液を収集する方法、並びに該方法に用いる組織液収集キット及び組織液収集シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体の皮膚に微細孔を形成し、当該微細孔を介して生体成分を収集して測定する方法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1には、皮膚に粒子を衝突させて皮膚に微小経路を形成した後、当該微少経路が形成された処理領域に、アナライトを収集するためのゲルを備えた閉塞包帯を付着させることによって、微小経路を介してゲルにアナライトを収集する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、組織液を収集する抽出カートリッジを装着することができる本体部と、皮膚に微細孔を形成する穿刺具の位置決めを行う受け部と、この受け部を使用者の腕に取り付けるためのベルト部とを備えた血糖値分析装置が開示されている。
【0005】
特許文献2における受け部は、使用者の皮膚を露出させるための開口部を有しており、穿刺具により微細孔が形成された皮膚の処理領域が当該開口部から露出するように構成されている。また、本体部は、ヒンジによって前記受け部に回動可能に取り付けられており、受け部に対して回動されることによって、当該本体部に装着された抽出カートリッジが皮膚の処理領域上に配置されるように構成されている。これにより、処理領域に対して抽出カートリッジが位置決めされる。そして、ベルト部によって受け部が腕に取り付けられた状態で抽出カートリッジにより組織液の抽出が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2005−513428号公報
【特許文献2】特開2007−236844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
組織液の正確な抽出が行われるためには、当該組織液を抽出する媒体が皮膚の微細孔が形成された領域に正しく位置決めされる必要があるが、特許文献1には、処理領域に対する閉塞包帯の位置決めについては、何ら記載されていない。
【0008】
一方、特許文献2記載の装置によれば、抽出カートリッジが装着される本体部を、処理領域が露出される開口部を有する受け部に対し回動可能な構成にすることによって、処理領域に抽出カートリッジを位置決めすることができるものの、組織液を抽出する間はベルト部によって受け部を腕に取り付けておく必要がある。したがって、長時間にわたって組織液を抽出する場合には、ベルトを腕に装着し続ける必要がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、使用者に負担をかけることなく、組織液を抽出するための媒体を簡単に皮膚の処理領域に位置決めすることができる組織液収集方法並びに該方法に用いる組織液収集キット及び組織液収集シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に係る組織液収集方法(以下、単に「方法」ともいう)は、粘着面を有し、微細孔が形成される領域を画定する目印シートを皮膚に貼付する工程と、
皮膚に貼付された目印シートにより画定された領域に微細孔を形成する工程と、
粘着面を有する透明な保持シートと、この保持シートの粘着面の一部により保持され、皮膚から抽出された組織液を収集する収集体と、を備えた組織液収集シートを、皮膚に貼付された目印シートを目印として、前記収集体が前記領域に配置されるように、前記保持シートの粘着面によって皮膚に貼付する工程と、
微細孔を介して皮膚から前記収集体に組織液を収集する工程と
を含むことを特徴としている。
【0011】
本発明の方法では、皮膚に貼付される目印シートにより微細孔形成領域が画定されており、また、組織液を収集する収集体を保持する保持シートが透明であるので、前記目印シートを目印にすることによって、簡単に収集体を微細孔形成領域に配置することができる。そして、組織液の抽出に際しては、シート(目印シート、組織液収集シート)を皮膚に貼り付けるだけでよく、長時間にわたって組織液を抽出する場合であっても、ベルトなどの補助具を腕に装着し続ける必要がないため、使用者への負担は少ない。
【0012】
また、収集体は保持シートの粘着面の一部に保持されているが、製造上、粘着面における収集体の位置にはばらつきが生じることがある。このような場合には、組織液収集シートの外形を基準にして当該組織液収集シートを皮膚の所定領域に貼付しても、収集体の貼付位置にばらつきが生じてしまう。しかしながら、本発明では、保持シートが透明であるので、保持シートにおける収集体の位置にばらつきが生じている場合でも、目視により収集体の位置を確認しながら、当該収集体が目印シートにより画定される領域内に位置するように組織液収集シートを皮膚に貼付することができる。これにより、保持シートにおける収集体の位置のばらつきにもかかわらず、収集体を微細孔形成領域に配置することができる。
【0013】
なお、本明細書における「透明」には、無色透明及び有色透明が含まれる。また、完全な透明に限定されるものではなく、保持シートを介して収集体の位置が確認できる程度の透明性がある限り、「半透明」も含まれる。例えば、収集体が保持されている部分とその周囲数ミリメートルの部分が透明であり、その他の部分が不透明である形態も、本明細書における「透明」に含まれる。また、例えば格子状の模様が保持シートに付されており、模様の部分が不透明となっている形態であっても、模様以外の透明な部分を介して収集体の位置が確認できる限り、本明細書における「透明」に含まれる。
【0014】
また、本発明の第2の観点に係る組織液収集キットは、皮膚に形成された微細孔を介して抽出される組織液を収集するための組織液収集キットであって、
粘着面を有し、微細孔が形成される領域を画定する目印シートと、
粘着面を有する透明な保持シートと、
この保持シートの粘着面の一部によって保持され、皮膚から抽出される組織液を収集する収集体と
を備えたことを特徴としている。
【0015】
本発明の組織液収集シートにおいても、前記方法と同じく、皮膚に貼付される目印シートにより微細孔形成領域が画定されており、また、組織液を収集する収集体を保持する保持シートが透明であるので、前記目印シートを目印にすることによって、簡単に収集体を微細孔形成領域に配置することができる。そして、組織液の抽出に際しては、シート(目印シート、組織液収集シート)を皮膚に貼り付けるだけでよく、長時間にわたって組織液を抽出する場合であっても、ベルトのような補助具を腕に装着し続ける必要がないため、使用者への負担は少ない。
【0016】
また、収集体は保持シートの粘着面の一部に保持されているが、製造上、粘着面における収集体の位置にはばらつきが生じることがある。このような場合には、組織液収集シートの外形を基準にして当該組織液収集シートを皮膚の所定領域に貼付しても、収集体の貼付位置にばらつきが生じてしまう。しかしながら、本発明では、保持シートが透明であるので、保持シートにおける収集体の位置にばらつきが生じている場合でも、目視により収集体の位置を確認しながら、当該収集体が目印シートにより画定される領域内に位置するように組織液収集シートを皮膚に貼付することができる。これにより、保持シートにおける収集体の位置のばらつきにもかかわらず、収集体を微細孔形成領域に配置することができる。
【0017】
また、前記組織液収集キットにおいて、目印シートが、前記領域を画定する開口を有する枠状のシートであることが好ましい。
【0018】
また、前記組織液収集キットにおいて、前記目印シートが複数の小片からなり、これら複数の小片により前記領域が画定されることが好ましい。
【0019】
また、前記組織液収集キットにおいて、前記収集体がゲルであることが好ましい。この場合、さらに、前記ゲルが着色されていることが好ましい。
【0020】
また、前記組織液収集キットにおいて、前記収集体が、目印シートの開口よりも小さいことが好ましい。
【0021】
また、前記組織液収集キットにおいて、前記目印シートが有色であることが好ましい。
【0022】
また、前記組織液収集キットにおいて、前記目印シートは、微細孔を形成する微細孔形成具が皮膚に当接する側に有する鍔部に設けられた位置合わせマークに対応する位置合わせマークを有することが好ましい。
【0023】
また、前記組織液収集キットにおいて、前記目印シートの粘着面の背面に第1の粘着力によって貼着する第1粘着面を有し、当該目印シートを第1粘着面に保持する目印保持シートをさらに備え、目印シートの粘着面は、第1の粘着力よりも大きい第2の粘着力を有することが好ましい。さらに、この場合、前記目印保持シートは、微細孔を形成する微細孔形成具が皮膚に当接する側に有する鍔部に設けられた位置合わせマークに対応する位置合わせマークを有することが好ましい。
【0024】
また、前記組織液収集キットにおいて、前記保持シートの粘着面が、目印シートの皮膚に対する粘着力よりも小さい粘着力で、当該目印シートの粘着面の背面に貼付されることが好ましい。
【0025】
さらに、本発明の第3の観点に係る組織液収集シートは、皮膚に貼付される目印シートにより画定される領域に形成される微細孔を介して抽出される組織液を収集する組織液収集シートであって、
粘着面を有する透明な保持シートと、
この保持シートの粘着面の一部によって保持され、皮膚から抽出される組織液を収集する収集体と
を備えたことを特徴としている。
【0026】
また、前記組織液収集シートにおいて、前記保持シートの粘着面が、目印シートの皮膚に対する粘着力よりも小さい粘着力で、当該目印シートの粘着面の背面に貼付されることが好ましい。
【0027】
また、前記組織液収集シートにおいて、前記収集体がゲルであることが好ましい。
【0028】
また、前記組織液収集シートにおいて、前記ゲル自体を着色するか、又は着色された中間層を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の組織液収集方法並びに該方法に用いる組織液収集キット及び組織液収集シートによれば、使用者に負担をかけることなく、組織液を抽出するための媒体を簡単に皮膚の処理領域に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態の組織液収集方法に用いられる穿刺具の一例の斜視説明図である。
【図2】図1に示される穿刺具に装着される微細針チップの斜視図である。
【図3】穿刺具によって微細孔が形成された皮膚の断面説明図である。
【図4】目印保持シートによって保持された目印シートの斜視説明図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】目印シートの斜視説明図である。
【図7】組織液収集シートの斜視説明図である。
【図8】図7のB−B線断面図である。
【図9】不透明の保持シートを用いた場合の説明図である。
【図10】透明の保持シートを用いた場合の説明図である。
【図11】組織液収集方法の工程を示す図である。
【図12】生体成分分析装置の外観を示す斜視説明図である。
【図13】目印シートの他の例の斜視説明図である。
【図14】目印シートの他の例の平面図である。
【図15】目印シートの他の例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しつつ、本実施形態における組織液収集方法並びに該方法に用いる組織液収集キット及び組織液収集シートの実施の形態を詳細に説明する。
本実施形態における方法等は、皮膚に形成された微細孔から組織液を収集する技術に係るものであるが、まず、このような微細孔を形成する穿刺具について説明する。
【0032】
〔穿刺具〕
図1は、本実施形態の組織液収集方法に用いられる穿刺具200の一例の斜視説明図であり、図2は、図1に示される穿刺具200に装着される微細針チップ300の斜視図であり、図3は、穿刺具200によって微細孔が形成された皮膚の断面説明図である。
【0033】
図1〜3に示されるように、穿刺具200は、滅菌処理された微細針チップ300を装着して、当該微細針チップ300の微細針301を生体の表皮(被験者の皮膚400)に当接させることによって、被験者の皮膚400に組織液の抽出孔(微細孔401)を形成する装置である。微細針チップ300の微細針301は、穿刺具200により微細孔401を形成した場合に、当該微細孔401が皮膚400の表皮内にとどまり真皮までは到達しないような大きさを有する。
【0034】
図1に示されるように、穿刺具200は、筐体201と、この筐体201の表面に設けられたリリースボタン202と、筐体201の内部に設けられたアレイチャック203及びバネ部材204とを備えている。筐体201の下部201aの下端面(皮膚に当接する面)には、前記微細針チップ300が通過可能な開口(図示せず)が形成されている。バネ部材204はアレイチャック203を穿刺方向に付勢する機能を有する。アレイチャック203は下端に微細針チップ300を装着することができる。微細針チップ300の下面には、複数の微細針301が形成されている。微細針チップ300の下面は、10mm(長辺)×5mm(短辺)の大きさからなる。また、穿刺具200は、アレイチャック203をバネ部材204の付勢力に逆らって上方(反穿刺方向)に押し上げた状態で固定する固定機構(図示せず)を有しており、使用者(被験者)がリリースボタン202を押下することにより、当該固定機構によるアレイチャック203の固定が解除され、バネ部材204の付勢力によって当該アレイチャック203が穿刺方向に移動し、前記開口から突出した微細針チップ300の微細針301が皮膚を穿刺するように構成されている。
【0035】
また、筐体201には、図1に斜線で示すように鍔部205が形成されている。鍔部205には、後述する位置合わせマークとしての切り欠き206が形成されている。図1には、1つの切り欠きしか図示されていないが、図面奥側の鍔部205にも、手前の切り欠き206と同様のものが形成されている。
【0036】
〔組織液収集キット〕
つぎに組織液収集キットについて説明する。組織液収集キットは、前述したような穿刺具を用いて皮膚に形成された微細孔を介して抽出される組織液を収集するのに用いられ、目印シートと、目印シートを保持する目印保持シートと、皮膚から抽出される組織液を収集する収集体と、この収集体を保持するための保持シートと、を備えている。以下、各要素について順に説明する。
【0037】
図4は、目印保持シート1によって保持された目印シート2の斜視説明図であり、図5は、図4のA−A線断面図であり、図6は、目印シートの斜視説明図である。なお、図4〜6、及び後出する図7〜9においては、分かりやすくするために、シートなどの厚さを誇張して描いている。
【0038】
目印シート2は、シート本体2aと、このシート本体2aの片面に形成された粘着剤層2bとで構成されており、前記粘着剤層2bが形成された側の面が粘着面とされている。目印シート2は開口3を有する枠状のシートであり、この開口3が、微細孔が形成される領域を画定する。すなわち、後述するように、前記開口3内に穿刺具200の微細針チップ300が当接して微細孔を形成し、さらに、当該開口3内に収集体が配置されて微細孔からの組織液が抽出される。目印シート2のシート本体2aは、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルムの他、発泡体、編布、織布、不織布等を使用することもでき、その厚さは、特に限定されないが、概ね0.025〜0.5mm程度である。また、目印シートと保持シートの相対的な大きさは適宜変更可能であるが、目印シートのシート本体2aが発泡体や不織布等で組織液収集時における収集体の乾燥が懸念される場合は、目印シートを保持シートより小さくすることが望ましい。
【0039】
目印シート2は、台紙としても機能する小判形状の剥離シート4に貼付されており、当該目印シート2を覆うように、同じく小判形状の目印保持シート1が剥離シート4に貼付されている。目印保持シート1は、目印シート2の開口3と同じ大きさの開口5を有しており、この開口5が目印シート2の開口3と一致するように、剥離シート4に貼付されている。目印保持シート1のシート本体1aは、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルムなどが好ましく、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、及びポリウレタンフィルムがより好ましい。また、フィルムの他、発泡体、編布、織布、不織布等を使用することもできる。その厚さは、特に限定されないが、概ね0.025〜2.0mm程度である。また、剥離シート4は、例えばシリコーン樹脂などの離型剤で処理した上質紙、グラシン紙などの紙基材、又はポリエステルフィルムなどのシートが挙げられ、その厚さは、特に限定されないが、概ね0.025〜0.5mm程度である。
【0040】
目印保持シート1も、目印シート2と同様に、シート本体1と、このシート本体1aの片面に形成された粘着剤層1bとで構成されており、前記粘着剤層1bが形成された側の面が粘着面とされている。目印保持シート1の周縁部には、開口5を挟んで対向する位置に半円状の切り欠き6が形成されている。この切り欠き6に、前記穿刺具200の鍔部205の切り欠き206を合せることで、穿刺具200を所定の穿刺位置に配置することができる。
【0041】
目印シート2の粘着面の粘着力(第2の粘着力)は、目印保持シート1の粘着面の粘着力(第1の粘着力)よりも大きくなるように、当該目印シート2の粘着剤層2b及び目印保持シート1の粘着剤層1bの各粘着力が調整されている。この調整は、例えば、粘着剤の種類を変えたり、又は、粘着剤に含有させる粘着付与剤の量や含有させるタイミングを調整したりするなど、公知の手法によって行うことができる。また、目印保持シート1の粘着剤層1bが当接する目印シート2のシート本体2aの表面にコーティングを施したり、シート本体2aの表面に微細な凹凸加工を施すなど、被粘着面を加工することでも行うことができる。
【0042】
このように、目印シート2の粘着面の粘着力を目印保持シート1のそれよりも大きくすることで、目印保持シート1に保持された状態の目印シート2を皮膚に貼付した後、目印保持シート1を皮膚から剥がす際に、粘着力の弱い目印保持シート1と目印シート2との付着だけが解除されて、目印シート2だけを皮膚に残存させることができる。これにより、枠形状の目印シート2を容易に皮膚に貼付することができる。
【0043】
図6は、皮膚に貼付された目印シート2の斜視説明図である。目印シート2は、前述したように開口3を有する枠形状を呈しており、当該開口3の大きさは、開口内に配置される収集体の大きさにより異なるが、通常、1〜20mm×1〜20mm程度の大きさであり、本実施形態では8mm×14mmの大きさである。開口の大きさは、後述する収集体12が収まる大きさとなっている。目印シート2は、微細孔が形成される領域を画定するとともに、収集体を微細孔形成領域に配置するための目印となるものである。このため、目印シート2には、生体の皮膚の色と区分けし易い、例えば青、赤、あるいは緑などの色で着色しておくのが好ましい。着色されていると、容易に且つ正確に収集体を開口3内に配置することができる。
【0044】
図7は、保持シート11と、この保持シート11の保持された収集体12とを備えた組織液収集シート10の斜視説明図であり、図8は、図7のB−B線断面図である。
収集体12は、被験者の皮膚から抽出した組織液を保持可能な保水性を有するゲルからなっており、抽出媒体としての純水を含有している。このゲルは、組織液を収集することが可能で本発明の目的を達成できるものであれば特に限定されないが、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも一種の親水性ポリマーから形成されたゲルが好ましい。ゲルを形成する親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール単独またはポリビニルピロリドン単独であってもよく、両者の混合物であってもよく、ポリビニルアルコール単独またはポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの混合物であることがより好ましい。
【0045】
ゲルは、親水性ポリマーを水溶液中で架橋する方法により形成することができる。ゲルは、親水性ポリマーの水溶液を基材上に塗工して塗膜を形成し、該塗膜中に含まれる親水性ポリマーを架橋する方法により形成することができる。親水性ポリマーの架橋法としては、化学架橋法や放射線架橋法などがあるが、ゲル中に各種化学物質が不純物として混入し難い点で、放射線架橋法を採用することが望ましい。
【0046】
収集体12は、本実施形態においては直方体形状を呈しており、皮膚と当接する面のサイズは7mm×12mmであり、前記目印シート2の開口3のサイズよりも小さくされている。このため、収集体12を開口3からはみだすことなく、当該開口3内に配置させることができる。これにより、収集体12が微細孔形成領域と接触する面積割合を大きくすることができ、微細孔を介して抽出される組織液を効率的に収集することができる。また、収集体12のサイズは微細針チップの微細針が形成された面よりも僅かに大きくされている。これにより、微細孔形成領域を余すことなく利用して組織液を収集することができ、被験者に余分な負担を課すことがない。
【0047】
収集体12を構成するゲルは、前記目印シート2と同じく、当該収集体12を容易に且つ正確に目印シート2の開口3内に配置するためにゲル自体を着色するか、又は着色された中間層を用いることが好ましい。中間層は、ゲルの粘着面への投錨性を改善する目的で用いられ、粘着剤層の表面に直接配置される。中間層としてはポリエチレンテレフタレート(PET)不織布とPETフィルムとのラミネート品やポリエチレンフィルムが好ましい。中間層は、ゲルの皮膚への配置面積と同面積とされるのが好ましい。
【0048】
保持シート11は、小判形状のシート本体11aと、このシート本体11aの片面に形成された粘着剤層11bとで構成されており、前記粘着剤層11bが形成された側の面が粘着面とされている。収集体12は、同じく小判形状の、台紙としても機能する剥離シート13のほぼ中央に配設されており、この収集体13を覆うように前記保持シート11が剥離シート13に貼付されている。収集体12は、保持シート11の粘着面の一部によって当該保持シート11に保持されている。保持シート11の面積は、組織液収集時における収集体12の乾燥を防ぐために、収集体12を覆うことが可能な大きさを有している。すなわち、保持シート11によって収集体12を覆うことにより、組織液収集時に皮膚と保持シート11との間を気密に保つことができ、組織液収集時に収集体12に含まれる水分の蒸発を抑制することができる。本実施形態では、保持シート11の面積は、収集体12を十分に覆うことができるように、目印シート2の面積よりも大きく形成されている(図10参照)。
【0049】
保持シート11のシート本体11aは、無色透明又は有色透明であり、当該シート本体11aの表面側(粘着剤層11bと反対側の面)から、保持シート11に保持されている収集体12を目視にて容易に確認することができる。シート本体11aは、組織液の蒸発や収集体の乾燥を防ぐため透湿性が低いものが好ましい。例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルムなどが挙げられ、その中でもポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルムが好ましく、厚さは、特に限定されないが、概ね0.025〜0.5mm程度である。
【0050】
組織液収集シート10は、収集体12が前記目印シート2の開口3内の微細孔形成領域に配置されるように、保持シート11の粘着面によって皮膚に貼付される。その際、収集体12を保持する保持シートが透明であるので、前記目印シート2を目印にすることによって、簡単に収集体12を微細孔形成領域に配置することができる。
【0051】
また、収集体12は保持シート11の粘着面の一部に保持されているが、製造上、粘着面における収集体12の位置にはばらつきが生じることがある。このような場合には、組織液収集シート10の外形を基準にして当該組織液収集シート10を皮膚の所定領域に貼付しても、収集体12の貼付位置にばらつきが生じてしまい、測定精度が低下する要因ともなる。しかしながら、本実施形態では、保持シート11が透明であるので、保持シート1における収集体12の位置にばらつきが生じている場合でも、目視により収集体12の位置を確認しながら、当該収集体12が目印シート2により画定される領域内に位置するように組織液収集シート10を皮膚に貼付することができる。これにより、保持シート11における収集体12の位置のばらつきにもかかわらず、収集体12を微細孔形成領域に配置することができる。
【0052】
本実施形態による組織液収集方法の利点について、図面を参照しながら説明する。図9は、不透明の保持シートを用いた場合の説明図であり、図9(a)は、保持シートの中央に収集体が保持されている状態を示し、図9(b)は、保持シートの中央から右側にずれた位置に収集体が保持されている状態を示している。図10は、透明の保持シートを用いた場合の説明図であり、図10(a)は、保持シートの中央に収集体が保持されている状態を示し、図10(b)は、保持シートの中央から右側にずれた位置に収集体が保持されている状態を示している。図9および図10においては、目視できるものについては実線で、目視できないものについては破線で示している。
【0053】
図9では、目印シートとほぼ同じ大きさの保持シートの中央に収集体を保持させ、目印シートの外郭に保持シートの外郭を位置合わせする構成を例示して説明する。図9(a)に示すように、保持シートの中央に収集体が保持されている場合、つまり収集体の位置にばらつきが生じていない場合には、保持シートが不透明であっても、収集体の位置を確認することなく保持シートを目印シートの外郭に合せることで収集体を微細孔形成領域に配置することができる。しかしながら、図9(b)に示すように、収集体が保持シートの中央からずれた位置に保持されている場合、つまり収集体の位置にばらつきが生じた場合には、目印シートの外郭に保持シートの外郭を合わせて保持シートを貼り付けても、収集体は微細孔形成領域に配置されない。そこで、収集体の位置を確認しながら保持シートを貼り付けることが必要となるが、保持シートが不透明であるために、収集体の位置を目視にて確認することができず、微細孔形成領域に正確に収集体を配置することができない。
【0054】
これに対して、図10(a)および(b)では、保持シートが透明であるため、実線で示されるように保持シートを介して収集体および目印シートを目視で確認できる。したがって、図10(a)に示すように収集体が保持シートの中央に保持されている場合、および図10(b)に示すように収集体が保持シートの中央からずれた位置に保持されている場合のいずれであっても、収集体の位置を目視にて確認しながら、収集体を目印シートによって画定される領域に正確に配置することができる。このように、保持シートが透明であることにより、保持シートにおける収集体の保持位置のばらつきにかかわらず、収集体を微細孔形成領域に正確に配置することができる。
【0055】
なお、図9において例示した形態では保持シートは不透明であるため、目印シートの外郭と保持シートの外郭とを合わせるためには、目印シートと保持シートとをほぼ同じ大きさとすることが必須であり、保持シートと皮膚との粘着面積を十分に確保することができない。一方、保持シートを透明とした場合には目印シートに対する保持シートの大きさは制限されないため、図10に示すように、保持シートの大きさは目印シートに対して十分に大きくすることができる。ゆえに、皮膚と保持シートとの粘着面積を大きくすることができ、保持シートによる収集体の保持強度を強くすることができる。
【0056】
保持シート11の粘着面は、目印シート2の皮膚に対する粘着力よりも小さい粘着力で当該目印シート2の粘着面の背面に貼付される。これにより、組織液の収集が完了した後に、保持シート11を皮膚から剥がしたときに、目印シート2が保持シート11とともに皮膚から剥がれることがない。その結果、目印シート2に付着した角質層の成分が、収集体12に収集された組織液とともに測定されることを防ぐことができ、測定精度を向上させることができる。なお、保持シート11の粘着剤層11bの粘着力の調整は、前記目印シート2及び目印保持シート1の粘着剤層の粘着力の調整と同様にして行うことができる。粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などが挙げられる。本実施形態の組織液収集シート10は、比較的長時間にわたって皮膚の表面に貼付されることが多いため、これらの粘着剤は、皮膚刺激性の少ないものが好ましい。皮膚刺激性が少ない点で、アクリル系粘着剤及びゴム系粘着剤が好ましく、アクリル系粘着剤がより好ましい。
【0057】
〔組織液収集方法〕
つぎに前述した組織液収集キットを用いた組織液収集方法について説明する。
図11は、前述した組織液収集キットを用いた組織液収集方法の工程説明図である。
まず、被験者の皮膚400をアルコールなどを用いて洗浄し、測定結果の攪乱要因となる物質(汗、塵など)を除去した後に、被験者の皮膚の所定箇所に目印保持シート1に保持された目印シート2を貼付する(工程(a))。
【0058】
ついで、微細針チップ300を装着した穿刺具200により皮膚に微細孔を形成する
(工程(b))。具体的には、穿刺具200下端の鍔部205に形成された切り欠き206を、目印保持シート1の切り欠き6に合せることで、穿刺具200の位置を設定する。これにより、筐体201の下部201aの下端面に形成された開口と、目印シート2の開口3との位置合わせが行われる。この状態でリリースボタン202を押下すると、固定機構によるアレイチャック203の固定が解除されるとともに、アレイチャック203がバネ部材204の付勢力によって皮膚側に移動する。そして、アレイチャック203の下端に装着された微細針チップ300が前記筐体201の下部201aの下端面に形成された開口を通過し、目印シート2により画定された被験者の皮膚領域に当接する。これにより、被験者の皮膚の表皮部分に微細孔401が形成される。
【0059】
ついで、穿刺具200を被験者の皮膚から離し、さらに目印保持シート1を被験者の皮膚から引き剥がす(工程(c))。その際、前述したように、目印保持シート1の粘着面の粘着力は、目印シート2の粘着面の粘着力よりも小さいので、目印シート2が目印保持シート1とともに剥がされることはなく、目印シート2は、被験者の皮膚に貼付されたままである。
【0060】
ついで、目印シート2を目印として、収集体12が当該目印シート2の開口3内に配置されるように、組織液収集シート10を被験者の皮膚に貼付する(工程(d))。この場合、本実施形態では、保持シート11が透明であるので、目視により収集体12の位置を確認しながら、当該収集体12が目印シート2により画定される領域内に位置するように組織液収集シート10を皮膚に貼付することができる。
【0061】
収集体12を微細孔形成領域に配置した状態で所定時間、例えば60分以上、好ましくは180分以上放置することにより、微細孔を介して抽出される組織液を収集体12に収集する(工程(e))。本実施形態においては、収集体を保持する保持シートを皮膚に貼付するように構成していることから、60分〜180分間という長時間にわたって組織液を収集する場合にも、ベルトのような補助具を腕に装着する必要がないため、使用者への負担は少ない。
【0062】
収集体12を微細孔形成領域に配置してから所定時間が経過した後に、組織液収集シート10を被験者の皮膚から引き剥がす(工程(f))。その際、保持シート11の粘着面は、目印シート2の皮膚に対する粘着力よりも小さい粘着力で当該目印シート2の粘着面の背面に貼付されるので、目印シート2が保持シート11とともに皮膚から剥がれることがない。
【0063】
収集体12に収集された組織液は、例えば図12に示される分析装置を用いて成分の分析が行われる。
【0064】
図12は、生体成分分析装置の外観を示す斜視説明図である。この生体成分分析装置20は、収集体12に収集された組織液に含まれるグルコース濃度およびナトリウムイオン濃度を取得するためのものである。生体成分分析装置20は、次のようにして使用される。まず、図12において、一点鎖線で示されるように、被験者の皮膚から取り外された組織液収集シート10は分析用カートリッジ40に貼り付けられ、この分析用カートリッジ40が生体成分分析装置20のカートリッジ配置部22に配置される。生体成分分析装置20は、カートリッジ配置部22に配置された分析用カートリッジ40及びこれに貼付された組織液収集シート10に対する所定の分析処理を実行し、当該組織液収集シート10に収集された組織液中のグルコース濃度およびナトリウムイオン濃度を取得する。
【0065】
生体成分分析装置20は、厚みのある直方体形状の筐体を備えており、筐体上面の天板には凹部21が形成されている。凹部21には、当該凹部21よりもさらに深く形成された凹部からなるカートリッジ配置部22が設けられている。さらに凹部21には、当該凹部21の側壁の高さとほぼ同じ厚みを有する可動天板23が連結されている。可動天板23は、支軸23aを中心に折り畳むことによって、図12に示される状態から凹部21内に収納し、又は凹部21に収納された状態から図12に示されるように起立させることができる。カートリッジ配置部22は、後述する分析用カートリッジ40を収納することができる大きさを有している。
【0066】
可動天板23は、凹部21に収納される方向に付勢されるように、支軸に支持されている。したがって、カートリッジ配置部22に配置された分析用カートリッジ40は、可動天板23によって上方から押さえつけられる。
【0067】
生体成分分析装置20は、その内部に送液部24及び廃液部25を備えている。送液部24は、カートリッジ配置部22に配置された分析用カートリッジ40に液体を送液するための機構であり、ニップル24aを介して、カートリッジ配置部22に配置された分析用カートリッジ40に液体を注入する。廃液部25は、送液部24によって分析用カートリッジ40に送液された液体が排出される機構であり、ニップル25aを介して、分析用カートリッジ40に注入された液体を排出する。
【0068】
さらに生体成分分析装置20は、グルコース検出部31と、ナトリウムイオン検出部31と、表示部33と、操作部34と、制御部35とを備えている。
【0069】
グルコース検出部31は、可動天板23の裏面、すなわち可動天板23が凹部21に収納されたときにカートリッジ配置部22と対向する側の面に設けられている。グルコース検出部31は、光を照射するための光源31aと、この光源31aによって照射された光の反射光を受光するための受光部31bとを備えている。これにより、グルコース検出部31は、カートリッジ配置部22に配置された分析用カートリッジ40に対して光を照射するとともに、照射された分析用カートリッジ40からの反射光を受光できるように構成されている。分析用カートリッジ40は、生体から収集された組織液中のグルコースと化学反応して変色し得るグルコース反応体41を含んでいる。グルコース検出部31は、このようなグルコースによる吸光度の変化を反射光に基づいて検出し、得られた反射光からグルコースを定量することが可能である。
【0070】
ナトリウムイオン検出部32は、カートリッジ位置部22の底面に設けられている。ナトリウムイオン検出部32は、カートリッジ配置部22の底面に設けられた長方形状を有する板状の部材を備え、この板状部材の略中央には一対のナトリウムイオン濃度測定用電極が設けられている。ナトリウムイオン濃度測定用電極は、ナトリウムイオン選択膜を備えた銀/塩化銀からなるナトリウムイオン選択性電極と、対電極である銀/塩化銀電極を含んでいる。
【0071】
制御部35は、生体成分分析装置20の内部に設けられており、CPU、ROM、RAMなどを含んでいる。CPUは、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の動作を制御する。RAMは、ROMに記憶されたプログラムが実行される際のプログラムの展開領域として利用される。
【0072】
つぎに、かかる構成を備えた生体成分分析装置20の動作について詳細に説明する。
組織液の収集が終了した組織液収集シート10が、分析用カートリッジ40の収容部に収容される。ついで、分析用カートリッジ40が、カートリッジ配置部22に配置される。
【0073】
測定の実行が指示されると、送液部24がニップル24aを介して分析用カートリッジ40の収容部に液体を注入し、収容部に液体が満たされる。この状態で所定時間放置されることにより、収集体12から液体へ、組織液中の成分が拡散する。前述のとおり、保持シート11が皮膚から剥がされるときに、目印シート2が保持シート11とともに皮膚から剥がれることがないため、目印シート2に付着した角質層の成分が液体に溶け出すことはなく、角質層の成分が測定精度の影響を及ぼすことはない。
【0074】
所定時間が経過したら、送液部24は収容部に向けて空気を送り込む。空気が送り込まれると、収容部を満たしていた液体が、分析用カートリッジ40の下面に設けられた流路に送られ、さらに流路を介してグルコース反応体41に送られる。流路に送られた液体はナトリウムイオン検出部32と接触する。グルコース反応体41に送られた液体は、当該グルコース反応体41と反応し、グルコース反応体を変色させる。
【0075】
制御部35は、ナトリウムイオン濃度測定用電極に一定電圧を印加して電流値を取得し、得られた電流値と予め制御部35に記憶されている検量線とに基づいてナトリウムイオン濃度を取得する。
制御部35は、発色色素の発色前における受光部31bの受光量と、発色色素の発色後における受光部31bの受光量との変化量に基づいてグルコース濃度を取得する。
【0076】
〔他の変形例〕
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、前述した実施の形態では、目印シートが目印保持シートに保持されており、目印保持シートを用いて目印シートを皮膚に貼付しているが、かかる目印保持シートを省略することもできる。
【0077】
図13は、このような目印シート102の斜視説明図である。この目印シート102は小判形状を呈しており、シート本体102aと、粘着剤層102bとで構成されている。目印シート102は、剥離シート104に貼付されており、また、中央に開口105を有している。さらに、開口105を挟んで対向する周縁部には、穿刺具の鍔部に形成された切り欠きに対応する形状の切り欠き106が4箇所に形成されている。
【0078】
この目印シート102は、剥離シート104を剥がしてから被験者の皮膚に貼付される。そして、前記切り欠き106と、鍔部に形成された切り欠きを利用して、穿刺具の位置合わせが行われ、ついで穿刺具によって前記開口105内に微細孔が形成される。
【0079】
微細孔が形成された後、組織液収集シートの収集体が前記開口105内に位置するように、当該組織液収集シートを被験者の皮膚に貼付する。組織液の抽出が終了すると、組織液収集シートを皮膚から剥がして、前述した測定が実行される。
【0080】
また、目印シートは単一のシートに限定されるものではなく、微細孔が形成される領域を画定することができ、また、収集体を配設する際の目印となることができる限り、複数の小片により構成することができる。図14は、ほぼL字状の4つの小片302aからなる目印シート302を示している。また、図15は、2本の短いストリップ402aと、2本の長いストリップ402bとからなる目印シート402を示している。図14〜15に示される目印シートの場合は、小片毎に皮膚に貼付するのは面倒であり、また、正確に所定位置に貼付するのも難しいので、目印保持シートに複数の小片からなる目印シートを保持させておき、この目印保持シートを皮膚の所定箇所に貼付し、穿刺後に目印保持シートを剥がすのが好ましい。
【0081】
また、別の変形例としては、目印シートの背面の周辺に粘着剤層を形成することにより、皮膚に微細孔を形成することとほぼ同時に目印シートを皮膚に貼付することも可能である。具体的には、穿刺具の鍔部の形状と目印シートの切り欠きとを合わせた状態で、目印シートの背面に形成した粘着剤を鍔部に貼付する。
【0082】
また、位置合わせマークとしての切り欠きの形状は、半円形に限らず、三角形や矩形など他の形状を適宜採用することができる。複数の切り欠きを採用する場合、互いに異なる形状の切り欠きを採用することができる。この場合、穿刺具の鍔部にも、対応する互いに異なる形状の切り欠きを形成しておく。これにより、微細針チップが通過する開口が穿刺具の皮膚当接面の中央に配設されていない場合における、穿刺具の位置決めを容易に行うことができる。切り欠きの個数は2箇所以上であることが好ましく、特に好ましくは4箇所で、それぞれの辺の対称の位置の略中央部に1箇所ずつあることが好ましい。
【0083】
また、位置合わせマークの別の変形例としては、穿刺具の鍔部に穴をあけた場合は、その形状に合致する凸状とすることも可能である。その他の変形例としては、別途用意した粘着テープとした位置合わせマークを目印シートに貼り付けても良い。
【0084】
また、本実施形態では、収集体としてゲルを用いた例を示したが、抽出される組織液を収集できるものであればゲルに限られず、例えばメッシュや紙など吸水性のある材質を用いることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 目印保持シート
2 目印シート
3 開口
4 剥離シート
5 開口
6 切り欠き(位置合わせマーク)
10 組織液収集シート
11 保持シート
12 収集体
13 剥離シート
20 生体成分分析装置
40 分析用カートリッジ
41 グルコース反応体
200 穿刺具
202 リリースボタン
203 アレイチャック
204 バネ部材
205 鍔部
206 切り欠き
300 微細針チップ
301 微細孔
400 皮膚
401 微細孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着面を有し、微細孔が形成される領域を画定する目印シートを皮膚に貼付する工程と、
皮膚に貼付された目印シートにより画定された領域に微細孔を形成する工程と、
粘着面を有する透明な保持シートと、この保持シートの粘着面の一部により保持され、皮膚から抽出された組織液を収集する収集体と、を備えた組織液収集シートを、皮膚に貼付された目印シートを目印として、前記収集体が前記領域に配置されるように、前記保持シートの粘着面によって皮膚に貼付する工程と、
微細孔を介して皮膚から前記収集体に組織液を収集する工程と
を含むことを特徴とする組織液収集方法。
【請求項2】
皮膚に形成された微細孔を介して抽出される組織液を収集するための組織液収集キットであって、
粘着面を有し、微細孔が形成される領域を画定する目印シートと、
粘着面を有する透明な保持シートと、
この保持シートの粘着面の一部によって保持され、皮膚から抽出される組織液を収集する収集体と
を備えたことを特徴とする組織液収集キット。
【請求項3】
前記目印シートが、前記領域を画定する開口を有する枠状のシートである請求項2に記載の組織液収集キット。
【請求項4】
前記目印シートが複数の小片からなり、これら複数の小片により前記領域が画定される請求項2に記載の組織液収集キット。
【請求項5】
前記収集体がゲルである請求項2〜4のいずれかに記載の組織液収集キット。
【請求項6】
前記ゲルが着色されている、又は、前記組織液収集キットが前記保持シートと前記収集体との間に配置された着色された中間層を有する請求項5に記載の組織液収集キット。
【請求項7】
前記収集体が、目印シートの開口よりも小さい請求項3に記載の組織液収集キット。
【請求項8】
前記目印シートが有色である請求項2〜7のいずれかに記載の組織液収集キット。
【請求項9】
前記目印シートは、微細孔を形成する微細孔形成具が皮膚に当接する側に有する鍔部に設けられた位置合わせマークに対応する位置合わせマークを有する請求項2〜8のいずれかに記載の組織液収集キット。
【請求項10】
前記目印シートの粘着面の背面に第1の粘着力によって貼着する第1粘着面を有し、当該目印シートを第1粘着面に保持する目印保持シートをさらに備え、
目印シートの粘着面は、第1の粘着力よりも大きい第2の粘着力を有する請求項2〜9のいずれかに記載の組織液収集キット。
【請求項11】
前記目印保持シートは、微細孔を形成する微細孔形成具が皮膚に当接する側に有する鍔部に設けられた位置合わせマークに対応する位置合わせマークを有する請求項10に記載の組織液収集キット。
【請求項12】
前記保持シートの粘着面が、目印シートの皮膚に対する粘着力よりも小さい粘着力で、当該目印シートの粘着面の背面に貼付される請求項2〜11のいずれかに記載の組織液収集キット。
【請求項13】
皮膚に貼付される目印シートにより画定される領域に形成される微細孔を介して抽出される組織液を収集する組織液収集シートであって、
粘着面を有する透明な保持シートと、
この保持シートの粘着面の一部によって保持され、皮膚から抽出される組織液を収集する収集体と
を備えたことを特徴とする組織液収集シート。
【請求項14】
前記保持シートの粘着面が、目印シートの皮膚に対する粘着力よりも小さい粘着力で、当該目印シートの粘着面の背面に貼付される請求項13に記載の組織液収集シート。
【請求項15】
前記収集体がゲルである請求項13又は14に記載の組織液収集シート。
【請求項16】
前記ゲルが着色されている、又は、前記保持シートと前記収集体との間に配置された着色された中間層を有する請求項15に記載の組織液収集シート。
【請求項17】
前記目印シートは、微細孔を形成する微細孔形成具が皮膚に当接する側に有する鍔部に設けられた位置合わせマークに対応する切り欠きからなる位置合わせマークを有し、
前記目印シートの位置合わせマークが、前記目印シートの複数の辺のそれぞれに1つずつ配置された請求項2〜12のいずれかに記載の組織液収集キット。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−64542(P2011−64542A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214633(P2009−214633)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】