説明

組電池の状態判定装置及び状態判定方法

【課題】直列に接続された複数の単電池からなる組電池の状態を判定する技術を提供する。
【解決手段】BMS20は、充電中又は放電中に、組電池12の異なる位置に配置された単電池50の温度差を測定し、当該温度差から組電池12の状態を判定する。充電中又は放電中における単電池50の温度差は、これら単電池50の内部抵抗のばらつきを反映している。このBMS20によれば、組電池12内の異なる位置に配置された単電池50の温度差を用いて単電池50の内部抵抗変化を評価することができ、これによって組電池12の状態を判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列に接続された複数の単電池からなる組電池の状態を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、繰り返し使用可能な二次電池が用いられている。二次電池は、充電と放電を繰り返すことで何度も使用することができ、充電不能な電池に比べて環境に優しく、電気自動車など現在その使用分野を広げている。
【0003】
二次電池は、使用回数が増えるに従って劣化により内部抵抗が増加し、容量が低下する。二次電池の内部抵抗の増加や容量低下が起こると、最大電圧や最大電力など電池に求められている性能を実現することができないため、従来から、二次電池の劣化等の状態を判定する技術が開発されている。また、二次電池は、一般的に、その複数個が直列に接続された組電池として用いられており、組電池の状態を判定する技術も知られている(例えば、引用文献1)。この技術では、組電池に含まれる二次電池のうち、使用により最も温度の高くなる位置に配置された二次電池を選出し、当該二次電池の内部抵抗を測定した結果に基づいて組電池の状態を判定する。この技術によれば、組電池に含まれる全ての二次電池の内部抵抗を個別に測定する必要がなく、組電池の状態を容易に判定することができるという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−309651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、組電池では当該組電池に含まれる各単電池の内部抵抗の上昇が問題となることがある。組電池では、各単電池の内部抵抗の上昇の差により単電池間の内部抵抗の差(内部抵抗変化)が大きくなると、個々の単電池の容量を最大限に引き出すことができず、組電池に求められている性能を実現することができない。
【0006】
本発明は、直列に接続された複数の単電池からなる組電池の状態を判定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、直列に接続された複数の単電池からなる組電池の状態を判定する組電池の状態判定装置であって、充電中又は放電中に、前記組電池の異なる位置に配置された単電池の温度差を測定する温度測定部と、前記温度差から前記組電池の状態を判定する状態判定部と、を備える。
【0008】
同一の単電池であっても異なる温度環境に置かれている場合には、劣化等の進み具合が異なり、結局、単電池間の内部抵抗のばらつきの原因となる。また、複数の単電池が直列接続されていて同一の充電電流又は放電電流が流れる場合でも、それらの単電池の劣化度合い等が異なっていると、単電池毎の発熱量が相違し、単電池毎の温度の相違として現れる。すなわち、充電中又は放電中における単電池の温度差は、これら単電池の劣化度合い等の電池の内部抵抗を反映しているといえる。この組電池の状態判定装置によれば、組電池内の異なる位置に配置された単電池の温度差を用いて単電池の内部抵抗変化を評価することができ、これによって組電池の状態を判定することができる。
【0009】
上記の状態判定装置では、前記状態判定部は、前記温度差が基準温度差よりも大きい場合に、前記組電池を異常と判定することが好ましい。これにより、単電池の内部抵抗変化が基準温度差に対応する内部抵抗差を超えてばらついているかどうかを評価することができ、組電池の状態を判定することができる。
【0010】
上記の状態判定装置では、前記温度測定部は、前記単電池の各々の温度を計測した結果から前記温度差を算出し、前記状態判定部は、充放電開始時に前記温度測定部が測定した少なくとも1つの前記単電池の温度に基づいて前記基準温度差を決定することが好ましい。
【0011】
単電池に流れる電流は、組電池が配置される場所の環境温度による各単電池の内部抵抗の変動に伴って変化し、環境温度が低い場合、一定の規定電圧範囲等の制限から単電池に電流を流しにくく、温度差が生じにくい。一方、環境温度が高い場合、単電池に電流を流しやすく、温度差が生じやすい。この組電池の状態判定装置によれば、充放電開始時の単電池の温度、つまり環境温度に応じて基準温度差を決定するので、環境温度によらず組電池の状態を判定することができる。
【0012】
上記の状態判定装置では、前記温度測定部は、前記組電池の放熱効率が最も高い第1位置に配置された第1の単電池に対する放熱効率が最も低い第2位置に配置された第2の単電池の温度差を測定しており、前記状態判定部は、前記温度差が負(つまり、第2の単電池温度<第1の単電池温度)である場合に、前記組電池を異常と判定するすることが好ましい。
【0013】
この組電池の状態判定装置によれば、測定された温度差が負となり、最も温度が高くなることが予想される第2の単電池の温度が、最も温度が低くなることが予想される第1の単電池の温度よりも低くなった場合に、第1の単電池に接続不良等による異常発熱が発生した等の突発的な異常が発生したことを検知することができ、これによって、組電池の状態を判定することができる。
【0014】
上記の状態判定装置では、前記組電池の充放電電流を測定する電流測定部を更に備え、前記状態判定部は、充放電を開始してから前記電流測定部が測定した前記充放電電流の積算電流量が基準電流量を超えた場合に、前記組電池の状態を判定することが好ましい。
【0015】
この組電池の状態判定装置によれば、組電池に基準電流量を超える充放電電流が流れ、単電池間に内部抵抗のばらつきに起因する温度差が生じた場合に組電池の状態を判定するので、同一条件下における組電池の状態を判定することができる。
【0016】
本発明は、組電池の状態判定方法にも具現化される。本発明の組電池の状態判定方法は、直列に接続された複数の単電池からなる組電池の状態を判定する組電池の状態判定方法であって、充電中又は放電中に、前記組電池の異なる位置に配置された単電池の温度差を測定する温度測定工程と、前記温度差から前記組電池の状態を判定する状態判定工程と、を備える。
【0017】
この組電池の状態判定方法によれば、組電池内の異なる位置に配置された単電池の温度差を用いて単電池の内部抵抗変化を評価することができ、これによって組電池の状態を判定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、直列に接続された複数の単電池からなる組電池の状態を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電池システムのブロック図
【図2】組電池の概略図
【図3】実施形態1の状態判定処理を示すフローチャート
【図4】充電中の単電池の温度測定結果を示す図
【図5】充電中の単電池の温度測定結果を示す図
【図6】充電中の単電池の温度測定結果を示す図
【図7】実施形態2の状態判定処理を示すフローチャート
【図8】電池システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1について、図1ないし図6を用いて説明する。
1.状態判定装置の構成
図1は、本実施形態における電池システム10の構成を示す図である。電池システム10は、組電池12と電池管理装置(状態判定装置の一例であり、以下、BMS)20を備えている。以下では、組電池12を構成する複数の二次電池を、単電池50と称す。電池システム10では、組電池12が接続端子16を介して装置外部の充電部(負荷)18と接続されることで組電池12が充電(放電)され、BMS20は、組電池12の充放電を制御するとともに、その状態を判定する。
【0021】
(組電池)
図2に示すように、組電池12には5個の単電池50A、50B、・・・50Eが一列に並んで収容されている。各単電池50には、お互いに異なる一対の電極端子56A、56Bが形成されている。各単電池50は、隣り合う単電池50の電極端子22の極性が交互に逆向きになるように配置されている。組電池12では、隣り合う単電池50のお互いに異なる電極端子を導電性を有する板部材であるバスバー58で接続することで、5個の単電池50が直列に接続されている。
【0022】
(BMS)
図1に示すように、BMS20は、中央処理装置(以下、CPU)30と電流センサ(電流想定部の一例)22と電圧測定回路24と温度センサ(温度測定部の一例)28を含む。
CPU30は、ROMやRAMなどのメモリ32を内在しており、メモリ32には、電池システム10の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されている。CPU30は、メモリ32から読み出したプログラムに従って、状態判定部42、温度差算出部(電流測定部の一例)44等として機能し、BMS20内の各部の制御を行うとともに、充電部18に信号を送信する。また、CPU30は、アナログ−デジタル変換機(以下、ADC)34を内蔵している。
【0023】
温度センサ28は、接触式あるいは非接触式で組電池12に含まれる各単電池50の温度TA、TB、・・・TEを所定期間毎に測定し、測定したこれらの温度をCPU30のメモリ32に記憶する。電流センサ22は、接続端子16と組電池12を接続する配線52を流れる電流、すなわち組電池12の充放電電流を所定期間毎に測定し、測定した電流値IをADC34(CPU30内)に送信する。
【0024】
電圧測定回路24は、配線54を介して各単電池50の両極間の電圧値VA、VB、・・・VEを各々測定する。電圧測定回路24は、測定したこれらの電圧値VをADC34(CPU30内)に送信する。また、電圧測定回路24には、各単電池50を個別に放電する放電回路26が設けられている。電圧測定回路24は、各単電池50の電圧値Vを測定し、各単電池50の電池容量がばらつく虞がある場合には、放電回路26を用いて各単電池50を個別に放電し、各単電池50の容量ばらつきを調整する。
【0025】
ADC34(CPU30内)は、電流センサ22及び電圧測定回路24から送信されるアナログデータの電流値I及び電圧値Vを、デジタルデータの電流値I及び電圧値Vに変換し、変換後の電流値I及び電圧値VをCPU30のメモリ32に記憶する。
【0026】
2.状態判定処理
図3ないし図6を用いて、組電池12の充電時に、BMS20で行われる状態判定処理を説明する。図3に、BMS20のCPU30で実行される状態判定処理のフローチャートを示す。この状態判定処理では、充電中の組電池12に発生する単電池50の温度差に基づいて、組電池12の状態を判定する。
【0027】
CPU30は、ユーザによって電池システム10が起動された後に、電池システム10が充電部18に接続されると、充電部18から組電池12への電力供給を開始し、これに伴って状態判定処理を開始する。CPU30は、状態判定処理を開始すると、各単電池50の温度T及び電圧値Vの測定を開始するとともに、充電電流の電流値Iの測定を開始する。
【0028】
CPU30は、状態判定処理の開始後初めて測定された各単電池50の温度T1の平均温度T1ave(つまり、各単電池50に電流が流れる前に測定された平均温度)を算出し、メモリ32に記憶された第1基準温度P1と比較する。CPU30は、平均温度T1aveが第1基準温度P1以下の場合(S2:NO)、温度低下による単電池50の抵抗増加により、単電池50の温度差から組電池12の状態を精度良く判定することができないことから、状態判定処理を停止する。
【0029】
また、CPU30は、平均温度T1aveが第1基準温度P1よりも大きい場合(S2:YES)、温度T1の最大温度差ΔT1maxを算出し、メモリ32に記憶された第1基準温度差Q1と比較する。CPU30は、最大温度差ΔT1maxが第1基準温度差Q1よりも大きい場合(S4:NO)、後述する単電池50の温度差ΔT2が充電電流が流れたことにより発生したものなのか、外部からの熱の伝導等によるものなのかを判別することができないことから、状態判定処理を停止する。
【0030】
また、CPU30は、最大温度差ΔT1maxが第1基準温度差Q1以下の場合(S4:YES)、状態判定処理の開始後に測定された充電電流の電流値Iを積算して積算電流量SIを算出する。CPU30は、積算電流量SIがメモリ32に記憶された基準電流量KIに到達するまで待機し、積算電流量SIが基準電流量KIに到達すると(S6)、到達時の各単電池50の温度T2を用いて組電池12の状態を判定する。
【0031】
図2に示すように、組電池12には5個の単電池50が一列に並んで収容されているため、その中央部に配置された単電池50Cは放熱効率が最も低く、逆に、その端部に配置された単電池50A、Eは放電効率が最も高くなる。そのため、組電池12に基準電流量KI以上の電流が流れると、図4ないし図6に示すように、単電池50に温度差が生じる。
【0032】
温度差算出部44として機能するCPU30は、各単電池50の温度T2のうち、放熱効率が最も低い中央部に配置された単電池50Cの温度T2Cから放熱効率が最も高い端部に配置された単電池50Aの温度T2Aを引いて温度差ΔT2を算出し、メモリ32に記憶された第2基準温度差(基準温度差の一例)Q2と比較する。CPU30は、図4のT2’に示すように、温度差ΔT2’が第2基準温度差Q2よりも大きい場合(S8:NO)、単電池50Aと単電池50Cの内部抵抗が第2基準温度差Q2に相当する内部抵抗差を超えてばらついていることを検知する。これにより、状態判定部42として機能するCPU30は、組電池12が劣化により異常状態に達していると判定し(S16)、表示部(図示されていない)等を用いて判定結果をユーザに報知し、処理を終了する。
【0033】
また、CPU30は、図4のT2に示すように、温度差ΔT2が第2基準温度差Q2以下の場合(S8:YES)、温度差ΔT2が負であるか否かを確認する。CPU30は、図5のT2’に示すように、温度差ΔT2’が負の場合(S10:NO)、組電池12の構造から予想される温度T2Aと温度T2Cの関係と実際に測定された温度T2A’と温度T2C’との関係が異なることを検知する。これにより、CPU30は、例えばバスバー58と単電池50Aの接続不良により単電池50Aに異常発熱が発生している等の異常状態が発生していると判定し(S16)、判定結果をユーザに報知し、処理を終了する。
【0034】
また、CPU30は、図5のT2に示すように、温度差ΔT2が負でない場合(S10:YES)、温度T2の最大温度T2maxをメモリ32に記憶された第2基準温度P2と比較する。図6のT2’に示すように、CPU30は、単電池50Cの温度T2C’が第2基準温度P2以上の場合(S12:NO)、単電池50Cの内部抵抗が組電池12を構成する単電池50に必要とされる抵抗値の限度を超えて劣化していることを検知する。これにより、CPU30は、組電池12が劣化により異常状態に達していると判定し(S16)、判定結果をユーザに報知し、処理を終了する。
【0035】
一方、CPU30は、図4ないし図6のT2に示すように、温度差ΔT2が第2基準温度差Q2以下であり、温度差ΔT2が0または正であり、温度T2の全てが第2基準温度P2よりも小さい場合(S8、S10、S12:YES)、組電池12が正常であると判定し(S14)、処理を終了する。
【0036】
3.本実施形態の効果
(1)本実施形態の電池システム10では、BMS20が充電中の組電池12の各単電池50の温度T2を測定し、その温度差ΔT2を用いて組電池12の状態を判定する。通常、組電池12では、各単電池50の放熱効率が均一ではなく、そのため、これら複数の単電池50を直列に接続し、これらの単電池50に同一の充電電流が流れても単電池50に温度差が生じる。高温部に配置された単電池50は低温部に配置された単電池50に比べて劣化が進みやすく、内部抵抗が増加しやすい。そして、劣化の進んだ単電池50では、劣化の進んでいない単電池50に比べて、充電電流が流れることによる温度上昇が大きく、これにより更に劣化度合いの差が拡大する。すなわち、充電中の測定される単電池50の温度差は、これら単電池50の劣化度合いの差を反映している。
【0037】
この電池システム10によれば、組電池12の異なる位置に配置された単電池50Aと単電池50Cの温度差ΔT2を用いて単電池50の内部抵抗の差(内部抵抗変化)を評価することができ、これによって組電池12の状態を判定することができる。
【0038】
(2)本実施形態の電池システム10では、組電池12の各単電池50の温度T2を用いて組電池12の状態を判定する。そのため、組電池12の状態を判定するために、組電池12に一定の時間に亘って定電流を流す必要もなければ、組電池12の電圧値Vを組電池12に流れ込む電流値Iと同期して測定する必要もなく、これらを実現するための構成を必要としない。そのため、組電池12の状態判定を比較的簡易なシステムで実現することができる。
【0039】
また、この電池システム10では、充電開始時の組電池12の充電状態によらずに組電池12の状態を判定することができる。そのため、組電池12の状態を判定するために、組電池12の残容量の推定精度に依存することなく、劣化判定を実現できるので、比較的簡易なシステムで実現することができる。
【0040】
(3)本実施形態の電池システム10では、温度差ΔT2が第2基準温度差Q2よりも大きい場合に、組電池12を異常状態と判定するので、単電池50の内部抵抗変化が第2基準温度差Q2に対応する内部抵抗差を超えてばらついているかどうかを評価することができ、組電池12の状態を判定することができる。
【0041】
(4)本実施形態の電池システム10では、温度差ΔT2が負となり、放熱効率が低い中央部に配置された単電池50Cの温度T2Cが、放熱効率が高い端部に配置された単電池50Aの温度T2Aよりも低くなった場合に、組電池12を異常状態と判定するので、単電池50Aに接続不良等による異常発熱が発生した等の突発的な異常が発生したことを検知することができ、組電池12の状態を判定することができる。
【0042】
(5)本実施形態の電池システム10では、組電池12に基準電流量KIを超える充電電流が流れたときに状態判定処理が実行(許可)されるので、判定に至るまでの電流量を同一条件に設定でき,これにより判定精度が向上する。
【0043】
(6)本実施形態の電池システム10では、組電池12の状態判定処理開始時の各単電池50の平均温度T1aveが第1基準温度P1以下の場合に組電池12の状態判定を停止する。通常、平均温度T1aveが低く、電流が流れる前の単電池50の温度が低くなると、単電池50の内部抵抗が指数関数的に増大する。そのため、測定された温度差ΔT2が第2基準温度差Q2を超え、単電池50の内部抵抗変化が検出された場合でも、その内部抵抗変化が劣化によるものか、電池温度によるものかを区別することが難しい。この電池システム10では、平均温度T1aveが第1基準温度P1以下の場合に組電池12の状態判定を停止するので、電池温度による内部抵抗変化を劣化による内部抵抗変化と誤判定してしまうことを抑制することができる。
【0044】
(7)本実施形態の電池システム10では、組電池12の状態判定処理開始時の各単電池50の最大温度差ΔT1maxが第1基準温度差Q1よりも大きい場合に組電池12の状態判定を停止するので、外部からの熱の伝導により充電中の単電池50の温度差ΔT2が増加し、正常状態の組電池12が異常状態と誤判定されることが防止される。
【0045】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を、図7を用いて説明する。図1に点線で示すように、本実施形態の電池システム10では、CPU30のメモリ32に、平均温度T1aveと第2基準温度差Q2が対応付けられた対応表が記憶されている点で実施形態1のシステムと異なる。以下の説明では、実施形態1と同一の内容については重複した記載を省略する。
【0046】
1.状態判定処理
図7に示すように、CPU30は、状態判定処理を開始すると、各単電池50の温度T1を測定し、平均温度T1aveを算出する。CPU30は、平均温度T1aveとメモリ32に記憶された対応表を比較し、平均温度T1aveに対応する第2基準温度差Q2を選出する(S22)。そして、CPU30は、S10において、単電池50の温度差ΔT2を第2基準温度差Q2と比較する際には、温度差ΔT2を平均温度T1aveを用いて選出された第2基準温度差Q2と比較する。
【0047】
2.本実施形態の効果
(1)本実施形態の電池システム10では、組電池12の状態判定処理開始時の各単電池50の温度T1を測定し、その平均温度T1aveから第2基準温度差Q2を決定する。この電池システム10によれば、充電開始時の各単電池50の温度T1(これは、組電池12の環境温度を反映)に応じて第2基準温度差Q2を決定することができ、環境温度によらず組電池12の状態を判定することができる。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、電池システム10が1つのBMS20を有し、状態判定部42、温度差算出部44等の機能をBMS20が有する1つのCPU30によって実行する例を用いて示したが、本発明はこれに限られない。例えば、お互いに異なるCPU、BMSなどによって各部が構成されても良ければ、これら各部が独立した機器等を用いて構成されていても良い。
【0049】
(2)上記実施形態では、5個の単電池50が収容された組電池12を用いて説明を行ったが、組電池12に収容される単電池50の数はこれに限定されない。また、充電中の単電池50の温度差ΔT2を測定する際に、放熱効率が最も高い場所を組電池12の中央部とし、放熱効率が最も低い場所を組電池12の端部とする例を用いて説明を行ったが、これは複数の単電池50が一列に並んで収容された場合の例であり、単電池50が他の形状、例えばコの字形に並んで収容されている場合には、その収容形状に合わせて放熱効率の高い場所と低い場所を決定すれば良い。
【0050】
(3)上記実施形態では、充電中の単電池50として、放熱効率が最も高い場所と最も低い場所とに配置された単電池50の温度差を算出する例を用いて説明を行ったが、これに限定されず、異なる位置に配置された単電池50の温度差が検出されれば、組電池12の状態を判定することができる。例えば、複数の単電池50が一列に並んで収容された組電池12の両端部に配置された単電池50の温度差を検出し、この温度差が所定値以上である場合に、組電池12が異常状態であると判断するようにしても良い。
【0051】
(4)また、温度を比較する単電池は2つに限られず、3つ以上であってよい。この場合、これらの単電池50の温度差が予め予定された大小関係と異なる場合に、組電池12が異常状態であると判断するようにしても良い。
【0052】
(5)上記実施形態では、単電池50の温度差が所定値以上であるときに異常状態と判断して警告を発するように構成したが、これに限らず、検出された温度差を組電池の劣化度合い、残り使用可能時間(寿命)等に置き換えて表示したり、信号を出力するようにしても良い。
【0053】
(6)上記実施形態では、充電中に組電池12の状態を判定する例を用いて説明を行ったが、放電中に組電池12の状態を判定しても良い。また、組電池12の充電状態と放電状態が短期間毎に複数回切り替えられる場合には、充放電中に組電池12の状態を判定しても良い。
【0054】
(7)この発明では、ファン等の組電池12を強制的に冷却する機構が含まれていても良い。例えば、この強制的に冷却する機能の影響をふまえて第2基準温度差Q2を設定することで、このような機構を含む場合にも適用が可能である。
【0055】
(8)上記実施形態において、第2基準温度差Q2は、使用開始時(つまり、新品時)に測定された当該組電池12の基準温度差に基づいて設定されることが好ましい。これにより、組電池12の特性に応じた基準温度差を設定することができる。
【0056】
(9)この発明は、図8に示すように、複数個の組電池12を含んで構成される電池パック60にも有用である。電池パック60は、組電池12と電圧測定回路24及び温度センサ28が形成された基板であるセルセンサ(以下、CS)70とを含む複数個の電池モジュール62を有するとともに、これらの電池モジュール62を管理するバッテリ−マネージャー(以下、BM)64、及び電流センサ22を有する。BM64は、CPU30の他、電流センサ22を用いて直列に接続される組電池12の充放電電流を計測する電流計測部66を備える。各電池モジュール62のCS70とBM64は、通信ライン68を介して接続されており、通信ライン68を介して、各電池モジュール62で測定された電池電圧や電池温度の情報がBM64へと送られる。
【0057】
この電池パック60では、各電池モジュール62における単電池50の温度差ΔT2の測定結果から、各組電池12の劣化や異常等の状態を判定することができ、これにより電池パック60の劣化や異常等の状態を判定することができる。
【符号の説明】
【0058】
10:電池システム、12:組電池、22:電流センサ、24:電圧測定回路、28:温度センサ、30:CPU、32:メモリ、42:状態判定部、44:温度差算出部、50:単電池、KI:基準電流量、P1、P2:基準温度、Q1、Q2:基準温度差、SI:積算電流量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の単電池からなる組電池の状態を判定する組電池の状態判定装置であって、
充電中又は放電中に、前記組電池の異なる位置に配置された単電池の温度差を測定する温度測定部と、
前記温度差から前記組電池の状態を判定する状態判定部と、
を備える組電池の状態判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の組電池の状態判定装置であって、
前記状態判定部は、前記温度差が基準温度差よりも大きい場合に、前記組電池を異常と判定する、組電池の状態判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の組電池の状態判定装置であって、
前記温度測定部は、前記単電池の各々の温度を計測した結果から前記温度差を算出し、
前記状態判定部は、充放電開始時に前記温度測定部が測定した少なくとも1つの前記単電池の温度に基づいて前記基準温度差を決定する、組電池の状態判定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の組電池の状態判定装置であって、
前記温度測定部は、前記組電池の放熱効率が最も高い第1位置に配置された第1の単電池に対する放熱効率が最も低い第2位置に配置された第2の単電池の温度差を測定しており、
前記状態判定部は、前記温度差が負である場合に、前記組電池を異常と判定する、組電池の状態判定装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の状態判定装置であって、
前記組電池の充放電電流を測定する電流測定部を更に備え、
前記状態判定部は、充放電を開始してから前記電流測定部が測定した前記充放電電流の積算電流量が基準電流量を超えた場合に、前記組電池の状態を判定する、組電池の状態判定装置。
【請求項6】
直列に接続された複数の単電池からなる組電池の状態を判定する組電池の状態判定方法であって、
充電中又は放電中に、前記組電池の異なる位置に配置された単電池の温度差を測定する温度測定工程と、
前記温度差から前記組電池の状態を判定する状態判定工程と、
を備える組電池の状態判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−57542(P2013−57542A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194835(P2011−194835)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】