説明

経口投与のためのミルナシプランの多粒子状組成物

経口投与のための多粒子状ミルナシプラン組成物が、開発された。この処方物は、小さな粒子(代表的には、150マイクロメートル未満)の形態のイオン交換樹脂とミルナシプランを複合体化することにより、作製される。多粒子状処方物は、最終投薬形態に処方された、以下のタイプの粒子のうちの任意の一つ以上であり得る:即時放出粒子;腸溶性粒子;長時間放出粒子;腸溶性長時間放出粒子;遅延放出粒子。上に記載された種々の薬物含有粒子は、数多くの異なる最終投薬形態にさらに処方され得、これらの最終投薬形態
としては、液剤、液体懸濁剤、ゲル剤、カプセル剤、軟質ゼラチンカプセル剤、錠剤、チュアブル錠剤、粉砕可能錠剤、即時溶解錠剤または再構成のためのサシェもしくはカプセル剤の使用単位が挙げられるが、これらに限定されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、経口投与のための新規多粒子状ミルナシプラン組成物に関する。
【0002】
この出願は、2003年1月28日に出願されたU.S.S.N.60/443,237;2003年1月29日に出願されたU.S.S.N.60/443,618;2003年3月28日に出願されたU.S.S.N.60/458,993;2003年5月6日に出願されたU.S.S.N.60/468,470;および2003年7月24日に出願されたU.S.S.N.60/490,060に対する米国特許法119条の下での優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
経口処方物は、固体投薬形態か液剤投薬形態かのどちらかとして利用可能である。錠剤もしくはカプセル剤のような固体投薬形態は、経口投与のための最も一般的に行われていて、かつ最も便利な形態である。代表的な、薬物の慣用的放出処方物、長時間放出処方物、および改変放出処方物は、単一の単位投薬形態(固体錠剤もしくはコーティングされた錠剤)またはカプセル剤中に含有された小顆粒からなる多粒子状投薬形態(小顆粒の各々は、直径が0.5ミリメートル以上である)であり、このカプセル剤は、全体を嚥下されなければならない。残念なことに、このような処方物は、嚥下することが困難な患者または脳卒中、癌もしくは精神障害により嚥下し得ない患者に投与することは困難である。高齢患者においては、例えば、錠剤を粉砕し、液体もしくは半固体のビヒクル中で投与することは、一般的である。これは、しばしば、液剤投薬形態が利用不可能であり、かつ薬物が鼻胃腸管もしくは空腸フィステル形成管を介して投与される必要がある場合の事例である。この実施は、錠剤マトリックスの完全性が一度損なわれたら、薬物用量全てが「ダンピングされる」か、もしくは即座に放出され、処方物が正しく投与された場合に達成される血液血漿レベルよりも実質的に高い血液血漿レベルを引き起こす従来の長時間放出処方物に関しては、潜在的に危険である。さらに、敏感な患者には、薬物の一日用量を、最終的な所望される用量で投与されるまで時間をかけてゆっくりと上昇させる、治療の開始時の滴定を必要とする者もいる。このような患者のためには、投与される用量が容易に滴定され得る液体処方物が理想的である。液体処方物は、薬物が、鼻胃腸管もしくは空腸フィステル形成管を介して、意識がない患者もしくは嚥下することが完全に不可能な患者に投与される必要がある場合に、特に役立つ。
【0004】
しかし、特定の場合において、薬物の不愉快な味覚は、従来の液体処方物(すなわち、薬学的に受容可能なビヒクルに溶解されている薬物)を実行不可能にする。その強力な苦味を有するミルナシプランは、このような薬物の申し分の無い例である。ミルナシプランは、ノルエピネフリン(NE)およびセロトニン(5−HT)の再取り込みインヒビター(NSRI)であり、2:1に等しいNE対5−HT比を有する(Moretら、1985、Neuropharmacology、24:1211−1219;Palmierら、1989、Eur.J.Clin.Pharmacol.、37:235−238)。ミルナシプランは、うつ病の患者を処置するために、1996年に欧州で承認された。その即時放出固体処方物(カプセル剤)は、商品名Ixel(登録商標)(Pierre Fabre)の下で入手可能である。ミルナシプランにコーティングされたノンパレイユを含有するミルナシプランの長時間放出多粒子状処方物は、WO98/08495に記載された。このような多粒子状処方物が半固体の食物にわたって散在され得、そして従って、嚥下することが困難な患者についての問題をいくらか改善する一方で、便利な用量滴定、味覚のマスキング、もしくは受容可能な口当たりは提供されていない。固体処方物(即時放出と改変放出の両方)に下手に手を加えると、不十分な用量制御をもたらして、医薬の不正確な用量の投与を引き起こし得る、ということに注意することが重要である。
【0005】
投与および/もしくは嚥下が容易な、任意の数の最終投薬形態に処方され得るミルナシプランの多粒子状処方物が必要とされており、これらのミルナシプランの多粒子状処方物としては、患者のコンプライアンスを改善し、そして患者もしくは介護提供者による便利で融通の利く用量滴定を可能にするための、液剤、液体懸濁剤、ゲル剤、カプセル剤、軟質ゼラチンカプセル剤、錠剤、チュアブル錠剤、粉砕可能錠剤、即時溶解錠剤、または再構成のためのサシェもしくはカプセル剤の使用単位が挙げられる。
【0006】
近年、ミルナシプランは、好結果の抗うつ剤であることに加えて、うつ病に関連する疼痛およびうつ病に非依存的な疼痛(例えば、慢性疲労症候群に関連する疼痛、線維筋痛症)の両方の軽減、ならびに他の障害の処置において効果的であることが示されている(Briley M.、2003、Curr.Opin.Investig.Drugs、4:42−45;Cypress Bioscience Inc.、Cypress Bioscience Inc.Announces Final Results of Milnacipran Phase II Clinical Trial in Fibromyalgia、Media Release、2003年3月21日)。また、2003年8月5日に発行された米国特許第6,602,911号および2003年10月21日に発行された同第6,635,675号を参照のこと。
【0007】
残念なことに、ミルナシプランは、ヒト臨床試験において、用量の上昇に伴って許容可能性が低下する多くの有害な反応を示している(Puech A.ら、1997、Int.Clin.Psychopharm.、12:99−108)。二重盲検の、無作為的な、複数の施設における臨床研究において、一日二回、100mg/日のミルナシプランに対する最も頻繁な自発的に報告された有害事象は、腹痛(13%)、便秘(10%)、および頭痛(9%)であった。興味深いことに、同じ研究においてミルナシプランを一日二回、200mg/日与えた場合、有害な反応に関連する疼痛は、(頭痛は8%に、そして腹痛は7%に)減少したが、吐き気および嘔吐は、より著しい副作用であり、そして患者の7%で報告された(Guelfi J.D.、1998、Int.Clin.Psychopharm.、13:121−128)。219人の高齢のうつ病患者を含む二重盲検比較研究において、TCAイミプラミンレシピエントよりもミルナシプランレシピエントに対してより頻繁に報告された唯一の有害事象は、吐き気であった。患者は、8週間の間、一日二回、75mg/日〜100mg/日のミルナシプランかイミプラミンかのどちらかを受けた(Tignol J.ら、1998、Acta Psychiatrica Scandinavica、97:157−165)。ミルナシプランを10人の患者に静脈内投与した場合、これらのうちの5人が一時的な吐き気を報告することもまた、観察された。吐き気は、ミルナシプラン血漿レベルのピーク時に最初に報告された(Caron J.ら、1993、Eur.Neuropsychopharmacol.、3:493−500)。この研究は、吐き気がミルナシプラン血液血漿濃度と直接関連していることを明白に証明している。さらに、これは、この研究で薬物は静脈内に与えられているので、この吐き気が、中枢的に媒介される副作用であり得ることを強く示唆している。他の研究からのデータは、ミルナシプランがまた、胃の刺激を介して局所的に媒介される吐き気を誘導し得ることを示唆している(吐き気の迅速な開始は、ピーク血漿レベルに達する前でさえ観察された)。
【0008】
プラセボ−コントロール臨床試験において自発的に報告されたミルナシプランの有害な体験の発生率を、表1に示す(ミルナシプラン100mg/日の群において頻度が2%よりも多い場合に、有害な効果を列挙する)。表1に示されたデータから明らかに見られ得るように、特定の有害事象の発生率は投与量に伴って上昇し、これらとしては、吐き気、嘔吐、発汗、顔面潮紅、動悸、振せん、不安、排尿障害、および不眠が挙げられる。
【0009】
【表1】

初期のうつ病試験の一つにおいて、副作用を軽減するために用いられたミルナシプラン用量の段階的拡大の一週間後でさえ、有害な効果による処置の不継続の最も一般的に報告された理由は、吐き気および嘔吐であったことに注目することは重要である(Leinonen E.、1997、Acta Psychiatr.Scand.、96:497−504)。ミルナシプラン副作用を軽減し、そして患者の耐性を上昇させるために実行された長時間の用量の段階的拡大期間(4週間)を伴う最近の線維筋痛症の臨床試験において、患者により報告された最も一般的な用量に関連する副作用は、吐き気であった(Cypress Bioscience Inc.、Cypress Bioscience Inc.Announces Final Results of Milnacipran Phase II Clinical Trial in Fibromyalgia、Media Release、2003年3月21日)。
【0010】
表1に示されたデータは、不十分な患者の耐性を引き起こす処置発現副作用の高い発生率により、一日一回か一日二回かのどちらかで与えられる100mg/日以上のミルナシプラン用量を必要とする健康状態の処置のためには、ミルナシプランの現在利用可能な即時放出処方物は理想的ではないことを証明している。重篤なうつ病および他の関連する障害の処置においては、より高用量が必要である。初期の抗うつ薬臨床試験の一つにおいて示されるように、200mg/日のミルナシプラン投与量は、より低い用量よりも優れていた(Von Frenckell Rら、1990、Int.Clin.Psychopharmacology 5:49−56)。線維筋痛症の処置のために、100mg/日〜250mg/日のミルナシプラン投与レジメンが近年報告された(米国特許第6,602,911号)。用量に関連する処置発現副作用および必要とされる用量に達すための長時間にわたる滴定の必要性により、現在利用可能な即時放出処方物を用いて用量範囲の上限に達するのは、非常に困難である。
【0011】
さらに、ミルナシプランの比較的短い、約8時間の半減期により、ミルナシプランの即時放出処方物は、うつ病の処置のための一日一回の投与レジメのためには適切でないかもしれない(Ansseau M.ら、1994、Psychopharmacology 114:131−137)。ミルナシプランの半減期はまた、線維筋痛症試験における即時放出処方物の一日二回の投与が、(一日二回に対して)プラセボ処置よりも、統計的に優れた疼痛の改善をもたらしたという事実の原因であり得る(Cypress Bioscience Inc.、Cypress Bioscience Inc.Announces Final Results of Milnacipran Phase II Clinical Trial in Fibromyalgia、Media Release、2003年3月21日)。
【0012】
処方物に下手に手を加えることなく、ミルナシプランの一日用量を嚥下する患者の能力は、改変放出の処方物に関しては特に重大となる。なぜなら、これらの処方物の性能は、投与時の投薬形態の完全性に依存するからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そのため、投与および/もしくは嚥下の容易な投薬形態に処方され得る多粒子状ミルナシプラン処方物を提供することが、本発明の目的であり、これらの投薬形態としては、液剤、液体懸濁剤、ゲル剤、カプセル剤、軟質ゼラチンカプセル剤、錠剤、チュアブル錠剤、粉砕可能錠剤、即時溶解錠剤、または再構成のためのサシェもしくはカプセル剤の使用投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
嚥下および/もしくは投与の容易な、味覚をマスクされ、かつ受容可能な口当たりを有するミルナシプラン処方物を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0015】
個々の患者の体重もしくは医薬必要性のために必要とされる調整によって、より低い用量もしくはより高い用量への、便利で融通の利く用量滴定を可能にするミルナシプラン多粒子状処方物を提供することは、本発明のさらに別の目的である。
【0016】
より低いもしくは減少した投与頻度を伴う代替の薬物動態学的放出プロファイルを提供し、かつ、特に、より高い投与量において一般的な、所望されない副作用を排除もしくは軽減するミルナシプランの多粒子状処方物を提供することは、本発明のさらに別の目的である。
【0017】
必要な患者に投与した場合に、約24時間にわたる治療効果を生じるミルナシプラン多粒子状処方物を提供することは、本発明の別の目的であり、ここで、その放出比および投与量は、うつ病、線維筋痛症候群、慢性疲労症候群、疼痛、注意欠陥/過活動性障害、ならびに内臓痛症候群(VPS)(例えば、刺激性腸症候群(IBS)、非心性胸痛(NCCP)、機能性消化不良、間質性膀胱炎、本態性外陰痛(essential vulvodynia)、尿道症、精巣痛)ならびに情動障害(うつ障害(大うつ病性障害、気分変調、異型うつ病)および不安障害(全般性不安障害、恐怖症、強迫性障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害)を含む)、月経前不快気分障害、顎関節症、異型顔面痛、片頭痛、ならびに緊張性頭痛からなる群より選択される少なくとも一つの障害の軽減を提供するために効果的であり、即時放出処方物について報告された一般的ミルナシプラン副作用の発生率の減少および強度の低下を伴う。
【0018】
5mgと500mgとの間の一日用量を可能にし、かつ朝夕の投与の融通を提供する処方物を提供することは、本発明のさらに別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
経口投与のための多粒子状放出ミルナシプラン組成物を開発した。この処方物は、ミルナシプランを小さな粒子の形態(代表的には、150マイクロメートル未満)のイオン交換樹脂と複合体化することにより作製される。多粒子状処方物を調製するために、以下のタイプの粒子のうちの一つ以上が、最終投薬形態に処方される:
(a)即時放出粒子であり、この粒子は、薬物含有粒子をポリマーによりコーティングすることにより調製され、このポリマーは、唾液という中性媒体においては不溶性であるが、胃の酸性環境においては溶解する;
(b)腸溶性粒子であり、この粒子は、薬物含有粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、このポリマーは、胃の酸性環境においては不溶性であるが、小腸の中性環境においては溶解する;
(c)長時間放出粒子であり、この粒子は、薬物含有粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、このポリマーは、水不溶性であるが水透過性の膜を形成する;
(d)腸溶性長時間放出粒子であり、この粒子は、長時間放出薬物粒子を腸溶性コーティングでコーティングすることにより調製される;
(e)遅延放出性粒子であり、この粒子は、薬物含有粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、このポリマーは、胃の酸性環境および小腸上部の環境においては不溶性であるが、小腸下部もしくは大腸上部においては溶解する。
【0020】
上に記載された種々の薬物含有粒子は、数多くの異なる最終投薬形態にさらに処方され得、これらの最終投薬形態としては、液剤、液体懸濁剤、ゲル剤、カプセル剤、軟質ゼラチンカプセル剤、錠剤、チュアブル錠剤、粉砕可能錠剤、即時溶解錠剤、または再構成のためのサシェもしくはカプセル剤の使用単位が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
改変放出の多粒子状ミルナシプラン処方物が、開発された。改変放出組成物は、必要な患者に投与した場合、ミルナシプランの遅延放出もしくは長時間放出を提供して、約24時間にわたる治療効果を生じ、睡眠障害、吐き気、嘔吐、頭痛、震え、不安、パニック発作、動悸、尿閉、起立性低血圧、発汗、胸痛、発疹、体重増加、背部痛、便秘、めまい、発汗増加、動揺、顔面潮紅、振せん、疲労、傾眠、消化不良、排尿障害(dysoria)、神経質、口内乾燥、腹痛、被刺激性、および不眠のような一般的なミルナシプランの副作用の発生率の減少および強度の低下をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
(定義)
改変放出形態:改変放出投薬形態は、時間経過および/もしくは位置の薬物放出の特徴が、選択されて、液剤、軟膏、もしくは迅速に溶解する投薬形態のような従来の投薬形態によっては提供されない治療目的もしくは便宜目的を達成するものである。遅延放出投薬形態、長時間放出投薬形態、および拍動性放出投薬形態ならびにそれらの組み合わせは、改変放出投薬形態のタイプである。
【0023】
遅延放出投薬形態:遅延放出投薬形態は、投与後、迅速である以外の時点で薬物を放出するものである。
【0024】
長時間放出投薬形態:長時間放出投薬形態は、従来の投薬形態(例えば、液剤もしくは迅速に薬物放出する従来の固体投薬形態)として存在する薬物と比較した投与頻度の、少なくとも2倍の減少を可能にするものである。
【0025】
拍動性放出投薬形態:拍動性放出投薬形態は、繰り返して投与することなく、複数の投与プロファイルを模倣し、かつ従来の投薬形態(例えば、液剤もしくは迅速に薬物放出する従来の固体投薬形態)として存在する薬物と比較した投与頻度の、少なくとも2倍の減少を可能にするものである。
【0026】
(ミルナシプラン)
ミルナシプランおよびその合成のための方法は、米国特許第4,478,836号に記載されている。ミルナシプラン(ミダルシプラン(midalcipran)、ミダシプラン(midacipran)、F 2207)は、ノルエピネフリン(NE)とセロトニン(5−HT)の両方の取り込みを阻害し、2:1のNEの対5−HT比を伴うが(Moretら、1985、Neuropharmacology、24:1211−1219;Palmierら、1989、Eur.J.Clin.Pharmacol.、37:235−238)、ドパミンの取り込みには影響しない。ミルナシプランは、αもしくはβアドレナリンレセプター、ムスカリンレセプター、ヒスタミン作用性レセプター、およびドパミン作用性レセプターに対する親和性は有さない。これは、ミルナシプランが、抗コリン作用性効果、鎮静効果、および興奮性効果を生じる低い可能性を有することを示唆する。ミルナシプランは、慢性投与後のラット皮質におけるβアドレナリン作用性レセプターの数には影響しない(Briley M.ら、Int.Clin.Psychopharmac.、1996、11:10−14)。ミルナシプランに関するさらなる情報は、Merck Index、第12版、エントリー6281において見出され得る。
【0027】
本明細書中で使用される場合、別に示されなければ、「ミルナシプラン」はまた、ミルナシプランの個々のエナンチオマー(右旋性エナンチオマーおよび左旋性エナンチオマー)の両方を含む薬学的に受容可能で薬理学的に活性なミルナシプランの誘導体およびそれらの薬学的に受容可能な塩、ミルナシプランエナンチオマーの混合物およびそれらの薬学的に受容可能な塩、ならびにミルナシプランの活性な代謝産物およびそれらの薬学的に受容可能な塩も含む。いくつかの場合に、エナンチオマー、誘導体、および代謝産物の投与量は、ミルナシプランのラセミ混合物の相対的な活性に基づいて調整される必要があり得ることが理解される。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に受容可能な塩」とは、その酸性塩もしくは塩基性塩を作ることによって親化合物が改変される、開示された化合物の誘導体をいう。薬学的に受容可能な塩の例としては、アミンのような塩基性残基の鉱酸塩もしくは有機酸塩;カルボン酸のような酸性残基のアルカリもしくは有機塩が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に受容可能な塩としては、従来の無毒性塩または例えば、無毒性の無機塩もしくは有機塩から形成される親化合物の4級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、このような従来の無毒性塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などのような無機酸由来の塩;ならびに酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸(pamoic)、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸のような有機酸から調製される塩が挙げられる。
【0029】
この化合物の薬学的に受容可能な塩は、塩基性部分もしくは酸性部分を含む親化合物から、従来の化学的方法により合成され得る。一般的に、このような塩は、水もしくは有機溶媒中での、またはそれらの混合物中でのこれらの化合物の遊離の酸もしくは塩基の形態と化学量論量の適切な塩基もしくは酸との反応により、調製され得る;一般的には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、もしくはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。適切な塩の列挙は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、Lippincott Williams&Wilkins、Baltimore、MD、2000、704頁に見出される。
【0030】
熟語「薬学的に受容可能な」は、正常な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アルギー応答、または妥当な利益/危険性の比につり合った他の問題もしくは合併症なしで、ヒトおよび動物の組織との接触における使用のために適切な、それらの化合物、物質、組成物、および/もしくは投薬形態をいうために本明細書中で用いられる。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「立体異性体」とは、同じ結合により結合された同じ原子から作られるが、相互変換不可能な異なる空間構造を有する化合物をいう。三次構造は、立体配置と呼ばれる。本明細書中で使用される場合、用語「エナンチオマー」は、その分子が、重ね合わせることの不可能な互いの鏡像である、二つの立体異性体をいう。本明細書中で使用される場合、用語「光学異性体」は、用語「エナンチオマー」と等価である。用語「ラセミ化合物」、「ラセミ混合物」もしくは「ラセミ改変物」とは、等しい部数のエナンチオマーの混合物をいう。用語「キラル中心」とは、4つの異なる基が結合されている炭素原子をいう。用語「鏡像異性体の豊化」とは、本明細書中で使用される場合、他方と比較した一方のエナンチオマーの量の上昇をいう。鏡像異性体の豊化は、キラルカラムによるガスクロマトグラフィーもしくは高速液体クロマトグラフィーのような標準的な技術および手順を用いて、当業者により容易に決定される。鏡像異性体対の効果的な分離を行うために必要な、適切なキラルカラム、溶離液、および条件の選択は、J.Jacquesら、「Enantiomers,Racemates,and Resolutions」、John Wiley and Sons,Inc.、1981により記載されるような、当該分野で周知の標準的な技術を用いて、当業者の知識内で申し分ない。分割の例としては、ジアステレオマーの塩/誘導体の再結晶もしくは分取キラルクロマトグラフィーが挙げられる。
【0032】
(I.多粒子状ミルナシプラン組成物)
本明細書中で記載されている多粒子状薬物組成物は、いくつかのタイプの放出プロファイルを示す。多粒子状薬物組成物は、薬物と薬学的に受容可能なイオン交換樹脂とを複合体化し、そしてこのような複合体をコーティングすることにより得られる。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「味覚をマスクするコーティング」とは、口内においては不溶性であるが、胃の酸性pHにおいては溶解する、pH依存性のコーティングをいう。本明細書中で使用される場合、用語「長時間放出コーティング」とは、そのコア複合体からの胃腸流体への薬物の拡散を制御するためのバリアとして作用する、pH非依存性の物質をいう。本明細書中で使用される場合、用語「腸溶性コーティング」とは、胃の酸性環境においては実質的に完全なままであるが、腸の環境においては溶解する、コーティング物質をいう。本明細書中で使用される場合、用語「遅延放出コーティング」とは、胃の酸性pH、小腸上部内のpHにおいては不溶性であるが、小腸下部もしくは大腸上部内では溶解する、pH依存性のコーティングをいう。
【0034】
(A.複合体化剤としてのイオン交換樹脂)
薬物複合体は、一般的に、薬物と薬学的に受容可能なイオン交換樹脂との複合体化により調製される。この複合体は、薬物の官能基と、イオン交換樹脂上の官能基との反応により形成される。ミルナシプランについては、塩基性アミノ基は、スルフェート基もしくはカルボキシレート基のような酸性基を有するイオン交換樹脂と複合体化し得る。薬物は、胃腸管内で適切に電荷を帯びたイオンと交換することにより放出される。
【0035】
イオン交換樹脂は、ポリマー鎖上の繰り返し位置に共有結合された塩形成基を含む水不溶性の架橋ポリマーである。これらの調製における使用のために適切なイオン交換樹脂は、薬理学的に不活性な有機マトリックスもしくは無機マトリックスからなる。この有機マトリックスは、合成され得るか(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、スルホン化スチレン、スルホン化ジビニルベンゼンのポリマーもしくはコポリマー)、または部分的に合成され得る(例えば、改変されたセルロースおよびデキストラン)。この無機マトリックスはまた、例えば、イオン性の基の付加により改変されたシリカゲルであり得る。共有結合された塩形成基は、強酸性であり得るか(例えば、スルホン酸もしくは硫酸)、もしくは弱酸性であり得る(例えば、カルボン酸)。一般的に、イオン交換クロマトグラフィーにおける使用ならびに水の脱イオン化のような適用のために適切なイオン交換体のタイプは、これらの放出制御薬物調製物における使用のために適切である。このようなイオン交換体は、H.F.Waltonによる「Principles of Ion Exchange」(312頁−343頁)および「Techniques and Applications of Ion−Exchange Chromatography」(344頁−361頁)in Chromatography.(E.Heftmann、編)、Van Nostrand Reinhold Company、New York(1975)において記載され、これは、本明細書中で参考として援用される。
【0036】
本発明における使用のために適切な樹脂としては、Amberlite IRP−69(Rohm and Haas)、INDION 224、INDION 244、およびINDION 254(Ion Exchange(India)Ltd.)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの樹脂は、ジビニルベンゼンにより架橋されたポリスチレンから構成されるスルホン化ポリマーである。現在利用可能な任意のイオン交換樹脂および将来、薬学的に受容可能かつ利用可能となるに違いないイオン交換樹脂がまた、使用され得る。薬学的に受容可能であるか、もしくは将来、薬学的に受容可能となり得るかのどちらかのイオン交換樹脂の商業的供給源としては、Rohm and Haas、The Dow Chemical Company、およびIon Exchange(India)Ltd.が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
イオン交換粒子の大きさは、約2ミリメートル未満、より好ましくは約1000マイクロメートル未満、より好ましくは約500マイクロメートル未満、そして最も好ましくは約150マイクロメートル未満であるべきである。商業的に入手可能なイオン交換樹脂(Amberlite IRP−69、INDION 244およびINDION 254)は、150マイクロメートル未満の範囲の粒子の大きさを有する。
【0038】
薬物は、バッチプロセスもしくは連続的なプロセス(例えば、クロマトグラフィーカラムにおいて)を介する溶液中において、この樹脂を薬物に曝すことによりこの樹脂に結合される。このようにして形成された薬物−樹脂複合体は、濾過により収集され、そして適切な溶媒により洗浄されて、あらゆる結合されていない薬物もしくは副生成物の除去をも確実にする。この複合体は、一般的に、トレーにおいて風乾される。このようなプロセスは、例えば、米国特許第4,221,778号、同第4,894,239号、および同第4,996,047号に記載されている。
【0039】
樹脂への薬物の結合は、4種の一般的な反応により達成され得る。塩基性薬物の場合、これらは以下である:(a)樹脂(Na形態)と薬物(塩形態);(b)樹脂(Na形態)と薬物(遊離の塩基として);(c)樹脂(H形態)と薬物(塩形態);(d)樹脂(H形態)と薬物(遊離の塩基として)。(d)を除くこれらの反応の全ては、カチオン性副生成物を有し、そしてこれらの副生成物は、樹脂上の結合部位をカチオン性薬物と競合することにより、平衡時の結合された薬物の量を減少させる。塩基性薬物については、樹脂への薬物の化学量論的な結合は、反応(d)によってのみ達成される。
【0040】
(B.味覚をマスクするコーティング)
ミルナシプランコーティング樹脂粒子は、味覚をマスクするコーティングによりコーティングされ得る。味覚をマスクするコーティングは、口内での薬物の放出を防止し、そしてこの投薬形態を消費する患者が不快な苦味を経験しないことを確実にする。
【0041】
カチオン性ポリマーEudragit(登録商標)E 100(Rohm Pharma)は、アミノ基を有する。そのため、その薄膜は、唾液の中性媒体においては不溶性であるが、胃の酸性環境においては塩形成により溶解する。約10マイクロメートルの厚さのこのような薄膜コーティングは、苦味もしくは不快を催させる味を有する医薬が、摂取に際してか、もしくは嚥下の間に、口内で溶解することを防止する。保護薄膜は、胃においてすぐに溶解し、活性成分が放出されることを可能にする。糖コーティングは、コーティングが100倍より厚い厚さでなければならず、そしてこれらのより大きな粒子は、喉をむずむずさせるかもしくは刺激する結果をもたらし得るにもかかわらず、同様の味覚をマスクする効果を達成するために使用され得る。
【0042】
(C.腸溶性コーティング)
いくつかの実施形態において、薬物−樹脂複合体は、胃の酸性環境においては不溶性であり、かつ胃腸管のより塩基性な環境においては溶解する、pH感受性ポリマーによりコーティングされる。従って、外側のコーティングは、腸溶性コーティングである;このような投薬形態は、胃における薬物放出を防止するように設計される。胃における薬物放出を防止することは、胃粘膜の刺激に関連する副作用を軽減する利益を有する。胃内での放出を回避することは、当該分野で公知の腸溶性コーティングを用いて達成され得る。この腸溶性処方物は、胃において完全なままであるか、もしくは実質的に完全なままであるが、一度この処方物が小腸に到達すると、この腸溶性コーティングは溶解し、そして薬物含有イオン交換樹脂粒子か長時間放出コーティングによりコーティングされた薬物含有イオン交換樹脂粒子かのどちらかを露出する。
【0043】
腸溶性粒子は、「Pharmaceutical dosage form tablets」、Libermanら編(New York、Marcel Dekker,Inc.、1989)、「Remington−The science and practice of pharmacy」、第20版、Lippincott Williams&Wilkins、Baltimore、MD、2000、および「Pharmaceutical dosage forms and drug delivery systems」、第6版、Anselら、(Media、PA:WilliamsおよびWilkins、1995)のような参考文献に記載されるように調製され得る。適切なコーティング物質の例としては、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび酢酸コハク酸メチルセルロースのようなセルロースポリマー;酢酸フタル酸ポリビニル、アクリル酸のポリマーおよびコポリマー、ならびに商品名Eudragit(登録商標)(Rohm Pharma)の下で商業的に入手可能なメタクリル樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、コーティング物質は、可塑剤、色素、着色剤、流動促進剤(glidant)、安定化剤、および界面活性剤のような従来のキャリアを含有し得る。
【0044】
(D.長時間放出コーティング)
長時間放出薬学的組成物は、ミルナシプランと薬学的に受容可能なイオン交換樹脂とを複合体化させ、そしてこのような複合体を、そのコア複合体からの胃腸流体への薬物の拡散を制御するためのバリアとして作用する物質によりコーティングすることにより得られる。
【0045】
薬物−樹脂複合体からの薬物の放出の制御は、薬物−樹脂複合体粒子上の拡散バリアコーティングの使用により可能である。薬物が充填された樹脂粒子への長時間放出コーティングを達成するためのいくつかの処理方法が、記載されている(例えば、米国特許第4,996,047号、同第4,221,778号、および同第4,894,239号を参照のこと);これらのうちのいずれもが、長時間放出ミルナシプラン組成物を得るために使用され得る。長時間放出コーティングされたミルナシプラン−樹脂複合体はまた、含浸剤を使用することなく、調製され得る。
【0046】
一般的に、粒子の重大な凝集なしに薬物−樹脂複合体の各粒子への連続的なコーティングを提供する任意のコーティング手順が、使用され得る。薬学的分野において公知のコーティング手順としては、流体床コーティングプロセスが挙げられるが、これらに限定されず、そして、マイクロカプセル化(microcapsulation)は、適切なコーティングを得るために使用され得る。このコーティング物質は、単独で、互いに混合物して、ならびに可塑剤(例えば、Durkex 500植物油)、色素およびコーティングの特徴を変化させる他の物質と混合物して使用される任意の非常に多くの天然薄膜形成物質もしくは合成薄膜形成物質であり得る。一般的に、コーティングの主な成分は、水不溶性であり、かつ水透過性であるべきである。しかし、メチルセルロースのような水溶性物質を組み込んで、コーティングの透過性を変化させることが所望され得る。このコーティング物質は、水性流体中の懸濁物としてもしくは有機溶媒中の溶液として適用され得る。水透過性拡散バリアは、エチルセルロース、メチルセルロースおよびそれらの混合物からなり得る。水透過性拡散バリアはまた、Eudragit RS、Eudragit RL、Eudragit NEおよびそれらの混合物のような商品名Eudragit(登録商標)(Rohm Pharma)の下で販売されている水不溶性の合成ポリマーからなり得る。このようなコーティング物質の他の例は、the Handbook of Pharmaceutical Excipients、A.WadeおよびP.J.Weller編、(1994)において見出され得る。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語 水透過性は、消化管の流体が、薄膜もしくは薄膜の一部を溶解するかまたは溶解することなく、コーティング薄膜を透過するかもしくは浸透することを示すために使用される。選択したコーティング(ポリマーもしくはポリマー混合物)の透過性もしくは溶解性に依存して、より軽いもしくはより重度のその適用が、所望の放出率を得るために必要とされる。
【0048】
Raghunathanに対する米国特許第4,221,778号は、薬物充填樹脂の膨張を軽減し、そして長時間放出コーティングの破砕を防止するために、ポリエチレングリコールのような溶媒和剤の系への添加を記載する。溶媒和剤は、樹脂薬物複合体化の工程において一つの成分として添加され得るか、もしくはより好ましくは、粒子は、複合体化の後に溶媒和剤により処理され得る。この処理は、粒子がそれらの構造を維持するのを助けることが見出されているだけでなく、このような粒子へのエチルセルロースのような拡散バリアコーティングの効果的な適用を可能にする。他の効果的な溶媒和(含浸)剤候補物としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、ラクトンおよびメチルセルロースが挙げられる。100重量部の樹脂に対して、約30重量部(通常は、10〜25部)までの溶媒和剤が、効果的であることが見出されている。EP 171,528、EP 254,811、およびEP 254,822は全て、樹脂複合体のコーティング可能性を改善するための同様の含浸処理を開示する。
【0049】
薬物−樹脂複合体からの薬物の放出の制御は、含浸剤の非存在下、このような複合体の粒子に対するエチルセルロース拡散バリアコーティングの直接の適用により達成されており、ただし、複合体の薬物含量は、臨界値よりも上であった。米国特許第4,996,047号、Kelleherらは、長時間放出コーティング薬物−樹脂複合体を開示しており、ここで、この薬物は、約38重量%(ふぞろいな形状の粒子について)よりも多い乾燥した薬物−樹脂複合体を含有する(薬物の遊離の酸もしくは塩基に基づく)。この比較的高い充填を達成するために、薬物と樹脂とを複合体化する方法が提供され、それによって、薬物は、その塩基性形態で、その酸性形態の樹脂と結合される(もしくはその逆で)。非イオン性副生成物は、このような反応において形成されないので、非常に高い充填レベルが達成される。同様のスキームが、Nonomuraらに対する米国特許第4,894,239号において開示され、薬物の遊離形態は、連続するプロセスの一部として形成された。米国特許第4,894,239号は、最終的な薬物−樹脂複合体において安定なコーティングを生成するためには、薬物−樹脂複合体が、理論的なイオン吸着量の少なくとも80%を含有すべきであり、より好ましくは、理論的なイオン吸着量の約85%〜100%を含有すべきであると述べている。
【0050】
米国特許第5,186,930号、Koganらは、第一の蝋の内側コーティングおよび長時間放出を達成するための第二のポリマーの外側コーティングによりコーティングされた薬物−樹脂粒子を開示している。内側の蝋コーティングは、樹脂の膨張、そしてその後の長時間放出ポリマーコーティングの破壊を防止する。
【0051】
安定な長時間放出コーティングを得るための、薬物充填樹脂を処理する公知の方法に加えて、KelleherらおよびNonomuraらにより記載されているように、薬物充填が、薬物の遊離塩基とその酸性形態の樹脂との結合によるよりも、薬物の塩形態と樹脂の塩形態との結合により実施される場合でさえ、含浸剤を使用することなく、アクリルポリマーベースのコーティング(Eudragit RS)を用いたミルナシプランが充填されたイオン交換樹脂のコーティングが、安定な長時間放出組成物をもたらすことが見出された。薬物の塩形態と樹脂の塩形態との結合により得られたミルナシプラン−樹脂複合体は、KelleherらおよびNonomuraらが、含浸剤を使用することなく安定な長時間放出コーティングを得るために必要であると報告したよりも、低い薬物充填を有する。
【0052】
(E.遅延放出コーティング)
いくつかの実施形態において、薬物−樹脂複合体は、pH感受性ポリマーによりコーティングされ、このポリマーは、胃の酸性環境においては不溶性であり、小腸の環境においては不溶性であり、そして小腸下部内もしくは大腸上部内の条件(例えば、pH7.0よりも上)において可溶性である。このような遅延放出形態は、胃腸(GI)管の上部における薬物放出を防止するために設計されている。
【0053】
遅延放出粒子は、薬物含有微粒子を選択されたコーティング物質によりコーティングすることにより調製され得る。好ましいコーティング物質は、生物侵食性ポリマー、徐々に加水分解性され得るポリマー、徐々に水溶性のポリマー、および/もしくは酵素分解性ポリマーから構成され、そして従来の「腸溶性」ポリマーであり得る。腸溶性ポリマーは、当業者に理解されるように、下部胃腸管のより高いpH環境において可溶性になるか、もしくは投薬形態が胃腸管を通り過ぎるのにつれて、ゆっくりと侵食し、一方で、酵素分解性ポリマーは、下部胃腸管(特に、結腸)に存在する細菌酵素により分解される。遅延放出をもたらすために適切なコーティング物質としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロースポリマー;好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよび/もしくはメタクリル酸エチル、ならびにEudragit.RTM.L30D−55およびL100−55(pH5.5以上で可溶性)、Eudragit.RTM.L−100(pH6.0以上で可溶性)、Eudragit.RTM.S(pH7.0以上で可溶性、より高い程度のエステル化の結果として)、ならびにEudragit.RTM.NE、RLおよびRS(異なる程度の透過性および膨張性を有する水不溶性ポリマー)を含む、商品名Eudragit.RTM.(Rohm Pharma;Westerstadt、Germany)の下で商業的に入手可能な他のメタクリル樹脂から形成される、アクリル酸のポリマーおよびコポリマー;ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、酢酸フタル酸ビニル、酢酸ビニルクロトン酸コポリマー、およびエチレン−酢酸ビニルコポリマーのようなビニルポリマーおよびビニルコポリマー;アゾポリマー、ペクチン、キトサン、アミロースおよびグアーガムのような酵素分解性ポリマー;ならびにシェラックが挙げられるが、これらに限定されない。異なるコーティング物質の組み合わせもまた、使用され得る。異なるポリマーを用いた多層コーティングもまた、適用され得る。
【0054】
特定のコーティング物質のための好ましいコーティング重量は、異なる量の種々のコーティング物質を有するイオン交換樹脂に充填された薬物についての個々の放出プロファイルを評価することにより、当業者によって容易に決定され得る。
【0055】
コーティング組成物は、可塑剤、色素、着色剤、安定化剤、流動促進剤などのような従来の添加物を含み得る。可塑剤は、通常、コーティングのもろさを減少するために存在し、一般的に、ポリマーの乾燥重量に対して、約10重量%〜50重量%を示す。代表的な可塑剤の例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチルアセチル、ヒマシ油およびアセチル化モノグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。安定化剤は、好ましくは、分散物中の粒子を安定化するために使用される。代表的な安定化剤は、ソルビタンエステル、ポリソルベート、およびポリビニルピロリドンのような非イオン性乳化剤である。流動促進剤は、薄膜の形成および乾燥の間の粘着効果を軽減するために推奨され、そして一般的に、コーティング溶液においてポリマー重量の約25重量%〜100重量%を示す。一つの効果的な流動促進剤は、タルクである。ステアリン酸マグネシウムおよびモノステアリン酸グリセロールのような他の流動促進剤もまた、使用され得る。二酸化チタンのような色素もまた、使用され得る。少量のシリコン(例えば、シメチコン)のような消泡剤もまた、コーティング組成物に添加され得る。
【0056】
遅延放出コーティング粒子は、薬物の即時放出用量と同時に投与され得る。このような組み合わせは、「拍動性放出」として呼ばれる改変放出プロファイルを生じる。「拍動性」により、薬物用量が、時間間隔をあけて放出されることを意味する。一般的に、投薬形態の摂取に際し、初期用量の放出は、実質的に即時的である(すなわち、第一の薬物放出の「パルス」は、摂取の約1時間のうちに生じる)。この初期パルスに、第一の時間間隔(遅延時間)が続き、この間に、非常に少ない薬物が投薬形態から放出されるかもしくは薬物は放出されず、その後、続いて第二の用量が放出される。必要に応じて、第二のパルスに、第二の時間間隔(遅延時間)が続き、この間に、非常に少ない薬物が投薬形態から放出されるかもしくは薬物は放出されず、その後、続いて第三の用量が放出される。
【0057】
拍動放出組成物の第一のパルスは、未改変薬物、非コーティング薬物−樹脂粒子、味覚をマスクされたコーティング薬物−樹脂粒子、もしくは、いくつかの場合においては、第二のパルスを提供する遅延放出コーティング粒子とともに腸溶性薬物−樹脂粒子を投与することにより得られ得る。
【0058】
いくつかの場合において、薬物(例えば、未改変薬物、非コーティング薬物−樹脂粒子、もしくは味覚をマスクされたコーティング薬物−樹脂粒子)の即時放出用量と腸溶性薬物−樹脂粒子とを組み合わせて、拍動性プロファイルを生じることは、有益であり得る。この場合において、第一のパルスは、実質的に即時的に生じ、そして第二のパルスは、一度、腸溶性コーティングが溶解(小腸上部において)したら、生じる。
【0059】
三つのパルスを有する最終的な投薬形態を生じるために、薬物(例えば、未改変薬物、非コーティング薬物−樹脂粒子、もしくは味覚をマスクされたコーティング薬物−樹脂粒子)の即時放出用量は、腸溶性コーティング薬物−樹脂粒子および遅延放出コーティング薬物樹脂粒子と組み合わされ得る。
【0060】
(II.多粒子状ミルナシプラン組成物を含有する処方物)
安全かつ効果的であると見なされ、そして所望されない生物学的な副作用も所望されない相互作用も引き起こすことなく、個体に投与され得る物質から構成される薬学的に受容可能な「キャリア」を用いて、処方物が調製される。この「キャリア」は、薬学的処方物に存在する活性成分以外の全ての成分である。
【0061】
(A.液体懸濁剤)
代表的に、液体処方物中のキャリアとしては、水および/もしくはエタノール、矯味矯臭剤(小児での使用のためには、風船ガムが人気である)ならびに着色剤(赤、オレンジ、および紫が人気である)が挙げられる。
【0062】
コーティング薬物−樹脂粒子は、本質的に水性のビヒクルにおける懸濁のために適切であり、その組成に対する制限は、以下のみである;(i)イオン性成分の非存在もしくは非常に低いレベル、ならびに(ii)アルコールのような水混和性有機溶媒の濃度ならびに拡散バリアおよび腸溶性コーティングの溶解を引き起こさないレベルまでのpHについての制限。液体経口投薬形態としては、水性および非水性の液剤、乳剤、懸濁剤、ならびに適切な溶媒、乳化剤、懸濁化剤、希釈剤、甘味剤、着色剤、および矯味矯臭剤を含む、非泡沫顆粒から再構成された液剤および/もしくは懸濁剤が挙げられる。保存剤は、液体経口投薬形態に添加されてもされなくてもよい。経口投薬形態を処方するために使用され得る薬学的に受容可能なキャリアおよび賦形剤の特定の例は、Robertに対する米国特許第3,903,297号に記載されている。
液体経口投薬形態の調製において、薬物−樹脂複合体は、従来の薬学的な実施と一致する水性ベースの経口的に受容可能な薬学的キャリアに組み込まれる。「水性ベースの経口的に受容可能な薬学的キャリア」は、溶媒内容物の全体もしくは大部分が、水であるものである。代表的なキャリアとしては、単純な水性の液剤、シロップ剤、分散剤および懸濁剤、ならびに水中油タイプのような水性ベースの乳剤が挙げられる。最も好ましいキャリアは、適切な懸濁化剤を含有する水性ビヒクル中の薬学的組成物の懸濁剤である。適切な懸濁化剤としては、Avicel RC−591(FMCから入手可能な微結晶性セルロース/カルボキシメチルセルロースナトリウム混合物)、グアーガムなどが挙げられる。このような懸濁化剤は、当業者に周知である。
【0063】
水自体は、キャリア全体を構成し得るが、代表的な液体処方物は、好ましくは、共溶媒(例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール溶液)を含み、矯味矯臭油などのような水不溶性成分の組成物への可溶化および組み込みを援助する。
【0064】
(B.チュアブル錠剤、粉砕可能錠剤、もしくは即時溶解錠剤)
いくつかの実施形態において、コーティング薬物−樹脂複合体は、チュアブル錠剤、粉砕可能錠剤、もしくは口内で即座に溶解する錠剤に組み込まれる。コーティング粒子を含有するチュアブル錠剤処方物は、薬学的分野において公知である(例えば、教科書「Pharmaceutical dosage form−−tablets」Vol.1 H A Liebermanら編、Marcel Dekker、Inc.(1989) を参照のこと)。粉砕可能錠剤は、それらの物理的完全性に関わらず、同様のインビトロおよびインビボでの性能を有する従来の錠剤である(すなわち、錠剤は、粉砕され得、そして例えば、アップルソースにおいて粉末として投与され得るかまたは水と混合され、そして鼻胃腸管もしくは空腸フィステル形成(jujunostomy)管に注入され得る)。粉砕可能錠剤は、薬学的分野において公知の錠剤製造方法を用いて調製され得る。コーティング粒子を含有する即時溶解錠剤は、例えば、米国特許第6,596,311号において記載されている。
【0065】
(C.ゲル剤)
いくつかの実施形態において、コーティング薬物−樹脂複合体は、ゲル中に組み込まれる。ゲル組成物を含有するイオン交換樹脂は、当該分野において公知である。例えば、米国特許第4,837,255号を参照のこと。
【0066】
(D.再構成可能投薬単位)
コーティング薬物−樹脂複合体は、粒状物質に処方され得、そして単位用量のサシェ、カプセルもしくは他の適切なパッケージングにパッケージングされ得る。このような粒状物質は、使用時に、水のような適切なビヒクルに再構成され得る。この粒状物質は、水中の粒子の分散を容易にする賦形剤を含有し得る。このタイプの処方物は、米国特許第6,077,532号において開示されている。
【0067】
薬学的分野に周知の他の任意の成分もまた、これらの成分について一般的に公知の量で含まれ得、これらの成分としては、例えば、口に合い、かつ快い見た目の最終生成物を提供するための天然もしくは人工の甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤など、抗酸化剤(例えば、ブチル化ヒドロキシアニソールもしくはブチル化ヒドロキシトルエン)、ならびに貯蔵寿命を延長および促進するための保存剤(例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベンまたは安息香酸ナトリウム)が挙げられる。
【0068】
(III.他の活性化合物との組み合わせ)
他の薬物は、同じ投薬形態もしくは別々の投薬形態において同時に投与され得るか、および/または別々に投与され得る。酸性薬物もしくは塩基性薬物は、イオン交換樹脂との複合体としてか、結合されていない化合物としてかのどちらかで投与され得る。薬物含有イオン交換粒子は、そのコア複合体から胃腸管流体への薬物の拡散を制御するためのバリアとして作用する物質により、コーティングされ得、および/もしくは必要に応じて、胃の酸性環境においては不溶性であり、かつ下部胃腸管の塩基性環境においては溶解するポリマーの薄膜により、コーティングされ得る。
【0069】
ミルナシプランは、鎮痛薬、抗炎症薬、解熱薬、抗うつ薬、抗痙攣薬、抗ヒスタミン薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、抗精神病薬、気管支拡張薬、喘息治療薬、心臓血管薬、コルチコステロイド、ドパミン作用薬、電解質、胃腸薬、筋弛緩薬、栄養剤、ビタミン、副交感神経作用薬、興奮薬、食欲抑制薬および抗睡眠薬のような他の活性化合物とともに補助的に投与され得る。
【0070】
ミルナシプランとともに補助的に投与され得る化合物の特定の例としては、アセクロフェナク、アセトアミノフェン、アドメキセチン、アルモトリプタン、アルプラゾラム、アマンタジン、アムシノニド、アミノシクロプロパン、アミトリプチリン、アモロジピン、アモキサピン、アンフェタミン、アリピプラゾール、アスピリン、アトモキセチン、アザセトロン、アザタジン、ベクロメタゾン、ベナクチジン、ベノキサプロフェン、ベルモプロフェン、ベタメタゾン、ビシファジン、ブロモクリプチン、ブデソニド、ブプレノルフィン、ブプロピオン、ブスピロン、ブトルファノール、ブトリプチリン、カフェイン、カルバマゼピン、カルビドパ、カリソプロドール、セレコキシブ、クロルジアゼポキシド、クロルプロマジン、サリチル酸コリン、シタロプラム、クロミプラミン、クロナゼパム、クロニジン、クロニタゼン、クロラゼペート、クロチアゼパム、クロキサゾラム、クロザピン、コデイン、コルチコステロン、コルチゾン、シクロベンザプリン、シプロヘプタジン、ダポキセチン、デメキシプチリン、デシプラミン、デソモルヒネ、デキサメタゾン、デキサナビノール、硫酸デキストロアンフェタミン、デキストロモルアミド、デキストロプロポキシフェン、デゾシン、ジアゼパム、ジベンゼピン、ジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、ジヒドロコデイン、ジヒドロエルゴタミン、ジヒドロモルヒネ、ジメタクリン、ジバルプロックス(divalproxex)、ジザトリプタン、ドラセトロン、ドネペジル、ドチエピン、ドキセピン、デュロキセチン、エルゴタミン、エスシタロプラム、エスタゾラム、エトスクシミド、エトドラク、フェモキセチン、フェナメート、フェノプロフェン、フェンタニール、フルジアゼパム、フルオキセチン、フルフェナジン、フルラゼパム、フルルビプロフェン、フルタゾラム、フルボキサミン、フロバトリプタン、ガバペンチン、ガランタミン、ジェピロン、イチョウ(ginko bilboa)、グラニセトロン、ハロペリドール、ヒューペルジンA、ヒドロコドン、ヒドロコルチゾン、ヒドロモルホン、ヒドロキシジン、イブプロフェン、イミプラミン、インジプロン、インドメタシン、インドプロフェン、イプリンドール、イプサピロン、ケタセリン、ケトプロフェン、ケトロラク、レソピトロン、レボドパ、リパーゼ、ロフェプラミン、ロラゼパム、ロクサピン、マプロチリン、マチンドール、メフェナム酸、メラトニン、メリトラセン、メマンチン、メペリジン、メプロバメート、メサラミン、メタプラミン、メタキサロン、メタドン、メタドン、メタンフェタミン、メトカルバモール、メチルドパ、メチルフェニデート、メチルサリチレート、メチセルジド、メトクロプラミド、ミアンセリン、ミフェプリストン、ミルナシプラン、ミナプリン、ミルタザピン、モクロベマイド、モダフィニル(抗睡眠薬)、モリンドン、モルヒネ、塩酸モルヒネ、ナブメトン、ナドロール、ナプロキセン、ナラトリプタン、ネファゾドン、ニューロンチン、ノミフェンシン、ノルトリプチリン、オランザピン、オルサラジン、オンダンセトロン、オピプラモール、オルフェナドリン、オキサフロザン、オキサプラジン、オキサゼパム、オキシトリプタン、オキシコドン、オキシモルホン、パンクレリパーゼ、パレコキシブ、パロキセチン、ペモリン、ペンタゾシン、ペプシン、パーフェナジン、フェナセチン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、フェニルブタゾン、フェニトイン、ホスファチジルセリン、ピモジド、ピルリンドール、ピロキシカム、ピゾチフェン、ピゾチリン、プラミペキソール、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレガバリン、プロパノロール、プロピゼピン、プロポキシフェン、プロトリプチリン、クアゼパム、キヌプラミン、レボキシチン、レセルピン、リスペリドン、リタンセリン、リバスチグミン、リザトリプタン、ロフェコキシブ、ロピニロール、ロチゴチン、サルサラート、セルトラリン、シブトラミン、シルデナフィル、スルファサラジン、スリンダク、スマトリプタン、タクリン、テマゼパム、テトラベノジン、サイアザイド、チオリダジン、チオチキセン、チアプリド、チアシピロン、チザニジン、トフェナシン、トルメチン、トロキサトン、トピラメート、トラマドール、トラゾドン、トリアゾラム、トリフルオペラジン、トリメトベンズアミド、トリミプラミン、トロピセトロン、バルデコキシブ、バルプロ酸、ベンラファキシン、ヴィロキサジン、ビタミンE、ジメルジン、ジプラシドン、ゾルミトリプタン、ゾルピデム、ゾピクロン、ならびにそれらの異性体、塩およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
補助的な投与は、同じ投薬形態の化合物の同時の投与、別々の投薬形態の同時の投与、および化合物の別々の投与を意味する。
【0072】
(IV.投与方法)
処方物は、それを必要とする任意の患者に投与され得る。好ましい患者はヒトであるが、代表的には、イヌ、ネコ、およびウマのような家庭用動物を含む任意の哺乳動物もまた、処置され得る。
【0073】
投与される活性成分の量は、症状の軽減もしくは状態の処置のために、そのような処置を必要とする患者に所望の用量を提供する量に基づいて選択される。
【0074】
ミルナシプランは、約400,000人の患者において抗うつ薬として使用されており、そしてヒトにおいて非毒性であることが公知である。薬物動態学的研究は、ミルナシプランの経口用量が、即座に吸収され、そして1〜2時間以内に身体に広く分布することを示している。最大血漿レベルは、すぐに達せられ、ヒトにおける半減期は約8時間である。肝臓における代謝は、10種の化学的に同定された代謝産物の形成をもたらす。しかし、これらの代謝産物は、親薬物の濃度のほんの約10%を示す。ヒトにおいて、親薬物の90%は、腎臓により変化されずに排出される。この薬物動態学的プロファイルは、ミルナシプランに、血漿レベルにおける個体間の小さい変動、薬物相互作用の低い可能性、および肝臓チトクロムP−450系に対する限定された影響のような特定の薬物動態学的な利点を与える。これらの薬物動態学的な特性は、ほとんどの他の抗うつ薬からミルナシプランを区別し、そしてミルナシプランの良好な安全性プロファイルに寄与する(Puozzo C.ら、1996、Int.Clin.Psychopharmacol.、11:15−27;Caccia S.、1998、Clin.Pharmacokinet.、34:281−302;Puozzo C.ら、1998、Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.、23:280−286)。
【0075】
ミルナシプランは、うつ病の処置、線維筋痛症候群、慢性疲労症候群、疼痛、注意欠陥/過活動性障害、ならびに内臓痛症候群(VPS)(例えば、刺激性腸症候群(IBS)、非心性胸痛(NCCP)、機能性消化不良、間質性膀胱炎、本態性外陰痛、尿道症、精巣痛)ならびに情動障害(うつ障害(大うつ障害、気分変調、異型うつ病)および不安障害(全身性不安障害、恐怖症、強迫性障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害)を含む)、月経前不快気分障害、顎関節症、異型顔面痛、片頭痛、ならびに緊張性頭痛のために投与され得る。
【0076】
ミルナシプランの経口投与に対する有害な反応は、代表的に、以下のうちの少なくとも一つを含む:吐き気、嘔吐、頭痛、消化不良、腹痛、不眠、震え、不安、パニック発作、動悸、尿閉、起立性低血圧、発汗、胸痛、発疹、体重増加、背部痛、便秘、めまい、発汗増加、動揺、顔面潮紅、振せん、疲労、傾眠、排尿障害(dysoria)、神経質、口内乾燥および被刺激性。
【0077】
嘔吐反射は、腸の壁の収縮と拡張の両方および物理的傷害により達成される、胃腸管上部における化学受容器および胃腸管壁における機械的受容器の刺激により引き起こされる。中枢神経系の調整中心は、催吐応答を制御している。この中心は、脳の外側延髄領域の小細胞(parvicellular)網様体に位置する。嘔吐中心への求心性神経は、腹部内臓神経および迷走神経、前庭−内耳レセプター、大脳皮質および化学受容器引き金帯(CTZ)から生じる。CTZは、最後野に近接して存在しており、そして血液と大脳皮質流体との両方のサンプルとなる化学受容器を含む。催吐中心とCTZとの間には、直接の結合が存在する。CTZは、内因性起源の催吐刺激および薬物のような外因性起源の刺激に曝される。脳神経の遠心性側枝V、VII、およびIXのならびに迷走神経ならびに交感神経幹は、筋収縮、心臓血管応答、および嘔吐を特徴付ける逆ぜん動の一連の複雑な共同作用を生成する。最後野は、ドパミンレセプターおよび5−ヒドロキシトリプタミン(5HT)レセプターが豊富である。
【0078】
組成物が腸溶性コーティングを含む場合、このような組成物は、0.05時間〜2時間の遅延時間により特徴付けられる放出プロファイルをもたらし、この間に、ミルナシプランの総用量の20%未満が胃に放出される。
【実施例】
【0079】
(例示)
本発明は、以下の非限定的な実施例の参照により、さらに理解される。
【0080】
(分析手順および製造手順)
非コーティング薬物−樹脂複合体を、以下の様式で薬物含量について分析した。正確に秤量されたサンプル(非コーティング複合体については約300mgもしくはコーティング複合体については500mg)を、10mLのDI水、4.1gの酢酸ナトリウム、および85mLの無水エタノールの混合物中で、3時間還流した。還流に続いて、この混合物を冷却し、DI水を用いて100mLの容量測定フラスコに移し、そして水で容量を100mLに合わせた。結果として生じた溶液を、HPLCにより、薬物含量について分析した。
【0081】
薬物−樹脂複合体からの薬物放出の決定を、125rpmで回転するパドルを備えたDistek Dissolution Apparatusを用いて実施した。全ての場合において、放出媒体を37℃に維持した。種々の時点で得られたサンプルを、HPLCにより分析した。
【0082】
コーティングは、流動床コーティング装置GPCG−1(Glatt Air Techniques、Inc.)において実行した。
【0083】
(実施例1:ミルナシプラン充填イオン交換樹脂の調製)
ロット1:
(A.Amberlite IRP−69(Na形態)へのミルナシプラン(HCl塩)の充填)
【0084】
【表2】

手順:
Amberlite IRP−69 Resinを、4LのDI水で3回前もって洗浄した。洗浄は、樹脂−水スラリーを5分間混合し、この樹脂を30分間沈降させ、そして上清をデカンテーションすることにより実施した。3リットル(3L)のDI水を、この前もって洗浄した樹脂粒子に添加し、そしてプロペラ羽根を有するLightning Mixerを用いて、300rpmで攪拌し続けた。ミルナシプランHClを、混合しながらこの樹脂スラリーに添加した。混合を、2時間続けた。この樹脂を30分間沈降させた後、結果として生じた混合物からの上清を、デカンテーションして除いた。次に、この薬物充填樹脂粒子を、4LのDI水で2回洗浄した;洗浄は、水−樹脂スラリーを5分間混合し、この樹脂を30分間沈降させ、そして上清をデカンテーションすることにより実施した。結果として生じた薬物−樹脂複合体を、(110℃で、Mettler Toledo Moisture Analyzerにより測定したところ)乾燥時の減りが10%未満となるまで、45℃の強制ドラフトオーブンにおいて乾燥した。
【0085】
結果として生じたミルナシプラン−樹脂複合体は、以下の特性を有していた:
【0086】
【表3】

(B.非コーティング複合体からのミルナシプランの放出)
500mgの非コーティング薬物−樹脂複合体を、125rpmで回転するパドルを備えた溶解容器中の0.1M塩化ナトリウムを添加した900mLの0.05Mリン酸緩衝液、pH6.8に添加することにより、37℃で薬物放出を決定した。
【0087】
以下の放出データが得られた。これは、非コーティング複合体がいかなる長時間放出特性も有しないことを証明している:
【0088】
【表4】

(C.Amberlite IRP−69(H形態)へのミルナシプラン(遊離の塩基)の充填)
ロット2:
簡単に言えば、フリッターディスクを備えたガラスカラムにおいて、ナトリウム形態の樹脂の床を通して4N HClを浸透させることにより、Amberlite IRP−69イオン交換樹脂の水素形態を生成した。酸による浸透に続いて、この樹脂を、水、そして最終的にイソプロピルアルコールにより洗浄した。樹脂を乾燥して一定の重量にした。
【0089】
【表5】

手順:
攪拌しながら、DI水に徐々に樹脂を添加した。ミルナシプラン塩基を、このスラリーに添加し、そして攪拌を約24時間続けた。結果として生じたスラリーを濾過し、そしてイソプロピルアルコールにより洗浄した。この複合体を、強制ドラフトオーブンにおいて45℃で乾燥した。
【0090】
結果として生じたミルナシプラン−樹脂複合体は、以下の特性を有していた:
【0091】
【表6】

(実施例2:長時間放出コーティング複合体)
(A.長時間放出コーティング複合体の調製)
ロット3:
コーティング組成物:
【0092】
【表7】

コーティング薬物−樹脂複合体を、実施例1(ロット1)の非コーティング薬物樹脂−複合体をコーティングすることにより調製した。コーティング懸濁液を、上の表の成分を合わせることにより調製した。この懸濁液を、♯100メッシュスクリーンを通して濾過し、そしてコーティング手順の間、一定の攪拌下に維持した。コーティングを、Wurster Column(GPCG−1、Glatt Air Techniques、Inc.)を備える流体床コーティング装置において実行した。コーティングに続いて、この生成物を、流動床において簡単に乾燥した(15分間、30℃)。最後に、このコーティング粒子を、強制ドラフトオーブンにおいて24時間、40℃で硬化した。コーティング手順のための条件は、以下のとおりであった:
コーティングパラメーター:
【0093】
【表8】

(B.長時間放出コーティング複合体からのミルナシプランの放出)
500mgの長時間放出コーティング薬物−樹脂複合体を、125rpmで回転するパドルを備えた溶解容器中の0.1M塩化ナトリウムを添加した900mLの0.05Mリン酸緩衝液、pH6.8に添加することにより、37℃で薬物放出を決定した。
【0094】
以下の放出データが得られた。これは、ミルナシプラン−樹脂複合体に適用されたコーティングが、薬物の放出を制御可能であることを証明している:
【0095】
【表9】

(実施例3:遅延放出コーティング複合体および長時間放出コーティング複合体)
(A.遅延放出コーティング複合体および長時間放出コーティング複合体の調製)
ロット4:
コーティング組成物:
【0096】
【表10】

遅延放出コーティング複合体および長時間放出コーティング複合体を、実施例2(ロット3)の長時間放出薬物樹脂−複合体をコーティングすることにより調製した。コーティング懸濁液を、上の表の成分を合わせることにより調製した。この懸濁液を、♯100メッシュスクリーンを通して濾過し、そしてコーティング手順の間、一定の攪拌下に維持した。コーティングは、Wurster Column(GPCG−1、Glatt Air Techniques、Inc.)を備える流体床コーティング装置において実行した。コーティング手順に続いて、この生成物コーティングを、強制ドラフトオーブンにおいて6時間、40℃で硬化した。コーティング手順のための条件は、以下のとおりであった:
コーティングパラメーター:
【0097】
【表11】

(B.遅延放出コーティング複合体および長時間放出コーティング複合体からのミルナシプランの放出)
500mgの二重コーティング薬物−樹脂複合体を、0.1N塩化ナトリウムを添加した750mLの0.1N HClに添加し、そして2時間インキュベートすることにより、37℃で薬物放出を決定した。2時間後、37℃に平衡化されている0.1N塩化ナトリウムを添加した250mLの0.20M三塩基性リン酸ナトリウムを、pHを6.8に変化させるために容器に添加した。次に、インキューベーションを、pH6.8で合計16時間続けた。
【0098】
以下の放出データは、(1)0.1N HCl中で2時間インキュベートした場合、外側の腸溶性コーティングが、合計薬物充填量の10%未満の放出をもたらすこと、さらに(2)一旦外側の腸溶性コーティングがpH6.8で溶解したら、内側の長時間放出コーティングが、薬物の放出を制御することを証明している。
【0099】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂と複合体化されたミルナシプランからなる粒子を含有する、経口投与のための多粒子状ミルナシプラン組成物。
【請求項2】
前記イオン交換樹脂粒子が、直径約2ミリメートル未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂粒子が、直径約500マイクロメートル未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記イオン交換樹脂粒子が、直径約150マイクロメートル未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、味覚をマスクされた即時放出粒子であり、該粒子が、薬物含有粒子をポリマーによりコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、唾液の中性環境においては不溶性であるが、胃の酸性環境においては溶解する、組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、腸溶性粒子であり、該粒子が、薬物含有粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、胃の酸性環境においては不溶性であるが、小腸の中性環境においては溶解する、組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、長時間放出粒子であり、該粒子が、薬物含有粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、水不溶性であるが水透過性の膜を形成する、組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、腸溶性長時間放出粒子であり、該粒子が、長時間放出薬物粒子を腸溶性コーティングでコーティングすることにより調製される、組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、味覚をマスクされた長時間放出粒子であり、該粒子が、長時間放出薬物粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、唾液の中性環境においては不溶性であるが、胃の酸性環境においては溶解する、組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、遅延放出性粒子であり、該粒子が、薬物含有粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、胃の酸性環境および小腸上部の環境においては不溶性のままであるが、小腸下部もしくは大腸上部においては溶解する、組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物であって、該組成物が、ゲル剤、カプセル剤、軟質ゼラチンカプセル剤、錠剤、チュアブル錠剤、粉砕可能錠剤、即時溶解錠剤、および再構成のためのサシェもしくはカプセル剤の使用単位からなる群より選択される投薬形態に処方される、組成物。
【請求項12】
液剤もしくは液体懸濁剤に処方される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
ミルナシプランの拍動性放出を提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
液剤投薬形態の請求項1に記載の組成物であって、該液剤投薬形態が、必要な患者に投与した場合、ミルナシプランの遅延放出もしくは長時間放出を提供して約24時間にわたる治療効果を生じ、これが、即時放出ミルナシプランの一つ以上の副作用に対する発生数の減少および強度の低下を伴う、組成物。
【請求項15】
前記副作用が、吐き気である、請求項14に記載のミルナシプラン組成物。
【請求項16】
請求項14に記載のミルナシプラン組成物であって、前記副作用が、嘔吐、頭痛、震え、不安、パニック発作、動悸、尿閉、起立性低血圧、発汗、胸痛、発疹、体重増加、背部痛、便秘、めまい、発汗増加、動揺、顔面潮紅、振せん、疲労、傾眠、消化不良、排尿障害、神経質、口内乾燥、腹痛、被刺激性および不眠からなる群より選択される、ミルナシプラン組成物。
【請求項17】
請求項14に記載のミルナシプラン組成物であって、該組成物が、2時間までの時間にわたる全用量の約20%未満の放出、その後のゆっくりとしたもしくは長時間の薬物放出により特徴付けられるミルナシプラン放出プロファイルを有する、組成物。
【請求項18】
請求項17に記載のミルナシプラン組成物であって、前記規定の時間が、約4時間と約24時間との間である、組成物。
【請求項19】
一つ以上のさらなる活性成分をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の組成物であって、前記活性成分が、鎮痛薬、抗炎症薬、解熱薬、抗うつ薬、抗痙攣薬、抗ヒスタミン薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、抗精神病薬、気管支拡張薬、喘息治療薬、心臓血管薬、コルチコステロイド、ドパミン作用薬、電解質、胃腸薬、筋弛緩薬、栄養剤、ビタミン、副交感神経作用薬、興奮薬、食欲抑制薬および抗睡眠薬からなる群より選択される、組成物。
【請求項21】
5mgと500mgとの間のミルナシプランと等価な投与量を送達する投薬形態の、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
100mgと400mgとの間のミルナシプランと等価な投与量を送達する投薬形態の、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1に記載のミルナシプラン組成物であって、前記ミルナシプランが、該ミルナシプランの右旋性エナンチオマーもしくは左旋性エナンチオマーのいずれかの治療上等価な用量の形態にある、組成物。
【請求項24】
請求項1に記載のミルナシプラン組成物であって、前記ミルナシプランが、ミルナシプランエナンチオマーの混合物の治療上等価な用量の形態にある、組成物。
【請求項25】
請求項1に記載のミルナシプラン組成物であって、前記ミルナシプランが、ミルナシプランの活性な代謝産物の治療上等価な用量の形態にある、組成物。
【請求項26】
請求項1に記載のミルナシプラン組成物であって、前記ミルナシプランが、パラ−ヒドロキシ−ミルナシプラン(F2782)の治療上等価な用量の形態にある、組成物。
【請求項27】
処置が必要な患者を処置する方法であって、該方法が、該患者に請求項1〜26のいずれか1項に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項28】
請求項1〜26のいずれか1項により規定されるとおりのミルナシプランの経口処方物を作製する方法であって、該方法が、ミルナシプランをイオン交換樹脂粒子と複合体化させる工程、および、必要に応じて、該薬物粒子を、一つ以上のポリマー層によりコーティングする工程を包含する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂と複合体化されたミルナシプランからなる粒子を含有する、経口投与のための多粒子状ミルナシプラン組成物であって、そして該粒子が、該ミルナシプランの放出を改変するための物質によりコーティングされる、組成物。
【請求項2】
前記イオン交換樹脂粒子が、直径約2ミリメートル未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂粒子が、直径約500マイクロメートル未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記イオン交換樹脂粒子が、直径約150マイクロメートル未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、味覚をマスクするコーティングをさらに含有し、該粒子が、薬物含有粒子をポリマーによりコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、唾液の中性環境においては不溶性であるが、胃の酸性環境においては溶解する、組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、腸溶性粒子であり、該粒子が、薬物含有粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、胃の酸性環境においては不溶性であるが、小腸の中性環境においては溶解する、組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、長時間放出粒子であり、該粒子が、薬物含有粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、水不溶性であるが水透過性の膜を形成する、組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、腸溶性長時間放出粒子であり、該粒子が、長時間放出薬物粒子を腸溶性コーティングでコーティングすることにより調製される、組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、味覚をマスクされた長時間放出粒子であり、該粒子が、長時間放出薬物粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、唾液の中性環境においては不溶性であるが、胃の酸性環境においては溶解する、組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、遅延放出性粒子であり、該粒子が、薬物含有粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、胃の酸性環境および小腸上部の環境においては不溶性のままであるが、小腸下部もしくは大腸上部においては溶解する、組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物であって、該組成物が、ゲル剤、カプセル剤、軟質ゼラチンカプセル剤、錠剤、チュアブル錠剤、粉砕可能錠剤、即時溶解錠剤、および再構成のためのサシェもしくはカプセル剤の使用単位からなる群より選択される投薬形態に処方される、組成物。
【請求項12】
液剤もしくは液体懸濁剤に処方される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
ミルナシプランの拍動性放出を提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
液剤投薬形態の請求項1に記載の組成物であって、該液剤投薬形態が、必要な患者に投与した場合、ミルナシプランの遅延放出もしくは長時間放出を提供して約24時間にわたる治療効果を生じ、これが、即時放出ミルナシプランの一つ以上の副作用に対する発生数の減少および強度の低下を伴う、組成物。
【請求項15】
前記副作用が、吐き気である、請求項14に記載のミルナシプラン組成物。
【請求項16】
請求項14に記載のミルナシプラン組成物であって、前記副作用が、嘔吐、頭痛、震え、不安、パニック発作、動悸、尿閉、起立性低血圧、発汗、胸痛、発疹、体重増加、背部痛、便秘、めまい、発汗増加、動揺、顔面潮紅、振せん、疲労、傾眠、消化不良、排尿障害、神経質、口内乾燥、腹痛、被刺激性および不眠からなる群より選択される、ミルナシプラン組成物。
【請求項17】
請求項14に記載のミルナシプラン組成物であって、該組成物が、2時間までの時間にわたる全用量の約20%未満の放出、その後のゆっくりとしたもしくは長時間の薬物放出により特徴付けられるミルナシプラン放出プロファイルを有する、組成物。
【請求項18】
請求項17に記載のミルナシプラン組成物であって、前記規定の時間が、約4時間と約24時間との間である、組成物。
【請求項19】
一つ以上のさらなる活性成分をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の組成物であって、前記活性成分が、鎮痛薬、抗炎症薬、解熱薬、抗うつ薬、抗痙攣薬、抗ヒスタミン薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、抗精神病薬、気管支拡張薬、喘息治療薬、心臓血管薬、コルチコステロイド、ドパミン作用薬、電解質、胃腸薬、筋弛緩薬、栄養剤、ビタミン、副交感神経作用薬、興奮薬、食欲抑制薬および抗睡眠薬からなる群より選択される、組成物。
【請求項21】
5mgと500mgとの間のミルナシプランと等価な投与量を送達する投薬形態の、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
100mgと400mgとの間のミルナシプランと等価な投与量を送達する投薬形態の、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1に記載のミルナシプラン組成物であって、前記ミルナシプランが、該ミルナシプランの右旋性エナンチオマーもしくは左旋性エナンチオマーのいずれかの治療上等価な用量の形態にある、組成物。
【請求項24】
請求項1に記載のミルナシプラン組成物であって、前記ミルナシプランが、ミルナシプランエナンチオマーの混合物の治療上等価な用量の形態にある、組成物。
【請求項25】
請求項1に記載のミルナシプラン組成物であって、前記ミルナシプランが、ミルナシプランの活性な代謝産物の治療上等価な用量の形態にある、組成物。
【請求項26】
請求項1に記載のミルナシプラン組成物であって、前記ミルナシプランが、パラ−ヒドロキシ−ミルナシプラン(F2782)の治療上等価な用量の形態にある、組成物。
【請求項27】
処置が必要な患者を処置する方法であって、該方法が、該患者に請求項1〜26のいずれか1項に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項28】
請求項1〜26のいずれか1項により規定されるとおりのミルナシプランの経口処方物を作製する方法であって、該方法が、ミルナシプランをイオン交換樹脂粒子と複合体化させる工程、および、必要に応じて、該薬物粒子を、一つ以上のポリマー層によりコーティングする工程を包含する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂と複合体化されたミルナシプランからなる粒子を含有する、経口投与のための多粒子状ミルナシプラン組成物であって、そして該粒子が、該ミルナシプランの放出を改変するための物質によりコーティングされる、組成物。
【請求項2】
前記イオン交換樹脂粒子が、直径約2ミリメートル未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂粒子が、直径約500マイクロメートル未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記イオン交換樹脂粒子が、直径約150マイクロメートル未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、味覚をマスクするコーティングをさらに含有し、該粒子が、薬物含有粒子をポリマーによりコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、唾液の中性環境においては不溶性であるが、胃の酸性環境においては溶解する、組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、腸溶性粒子であり、該粒子が、薬物含有粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、胃の酸性環境においては不溶性であるが、小腸の中性環境においては溶解する、組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、長時間放出粒子であり、該粒子が、薬物含有粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、水不溶性であるが水透過性の膜を形成する、組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、腸溶性長時間放出粒子であり、該粒子が、長時間放出薬物粒子を腸溶性コーティングでコーティングすることにより調製される、組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、味覚をマスクされた長時間放出粒子であり、該粒子が、長時間放出薬物粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、唾液の中性環境においては不溶性であるが、胃の酸性環境においては溶解する、組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物であって、前記粒子が、遅延放出性粒子であり、該粒子が、薬物含有粒子をポリマーでコーティングすることにより調製され、該ポリマーが、胃の酸性環境および小腸上部の環境においては不溶性のままであるが、小腸下部もしくは大腸上部においては溶解する、組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物であって、該組成物が、ゲル剤、カプセル剤、軟質ゼラチンカプセル剤、錠剤、チュアブル錠剤、粉砕可能錠剤、即時溶解錠剤、および再構成のためのサシェもしくはカプセル剤の使用単位からなる群より選択される投薬形態に処方される、組成物。
【請求項12】
液剤もしくは液体懸濁剤に処方される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
ミルナシプランの拍動性放出を提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
液剤投薬形態の請求項1に記載の組成物であって、該液剤投薬形態が、必要な患者に投与した場合、ミルナシプランの遅延放出もしくは長時間放出を提供して約24時間にわたる治療効果を生じ、これが、即時放出ミルナシプランの一つ以上の副作用に対する発生数の減少および強度の低下を伴う、組成物。
【請求項15】
前記副作用が、吐き気である、請求項14に記載のミルナシプラン組成物。
【請求項16】
請求項14に記載のミルナシプラン組成物であって、前記副作用が、嘔吐、頭痛、震え、不安、パニック発作、動悸、尿閉、起立性低血圧、発汗、胸痛、発疹、体重増加、背部痛、便秘、めまい、発汗増加、動揺、顔面潮紅、振せん、疲労、傾眠、消化不良、排尿障害、神経質、口内乾燥、腹痛、被刺激性および不眠からなる群より選択される、ミルナシプラン組成物。
【請求項17】
請求項14に記載のミルナシプラン組成物であって、該組成物が、2時間までの時間にわたる全用量の約20%未満の放出、その後のゆっくりとしたもしくは長時間の薬物放出により特徴付けられるミルナシプラン放出プロファイルを有する、組成物。
【請求項18】
請求項17に記載のミルナシプラン組成物であって、前記規定の時間が、約4時間と約24時間との間である、組成物。
【請求項19】
一つ以上のさらなる活性成分をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の組成物であって、前記活性成分が、鎮痛薬、抗炎症薬、解熱薬、抗うつ薬、抗痙攣薬、抗ヒスタミン薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、抗精神病薬、気管支拡張薬、喘息治療薬、心臓血管薬、コルチコステロイド、ドパミン作用薬、電解質、胃腸薬、筋弛緩薬、栄養剤、ビタミン、副交感神経作用薬、興奮薬、食欲抑制薬および抗睡眠薬からなる群より選択される、組成物。
【請求項21】
5mgと500mgとの間のミルナシプランと等価な投与量を送達する投薬形態の、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
100mgと400mgとの間のミルナシプランと等価な投与量を送達する投薬形態の、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1に記載のミルナシプラン組成物であって、前記ミルナシプランが、該ミルナシプランの右旋性エナンチオマーもしくは左旋性エナンチオマーのいずれかの治療上等価な用量の形態にある、組成物。
【請求項24】
請求項1に記載のミルナシプラン組成物であって、前記ミルナシプランが、ミルナシプランエナンチオマーの混合物の治療上等価な用量の形態にある、組成物。
【請求項25】
請求項1に記載のミルナシプラン組成物であって、前記ミルナシプランが、ミルナシプランの活性な代謝産物の治療上等価な用量の形態にある、組成物。
【請求項26】
請求項1に記載のミルナシプラン組成物であって、前記ミルナシプランが、パラ−ヒドロキシ−ミルナシプラン(F2782)の治療上等価な用量の形態にある、組成物。
【請求項27】
処置が必要な患者を処置するための薬学的組成物であって、該組成物、請求項1〜26のいずれか1項に記載の組成物を含む、組成物
【請求項28】
請求項1〜26のいずれか1項により規定されるとおりのミルナシプランの経口処方物を作製する方法であって、該方法が、ミルナシプランをイオン交換樹脂粒子と複合体化させる工程、および、必要に応じて、該薬物粒子を、一つ以上のポリマー層によりコーティングする工程を包含する、方法。

【公表番号】特表2006−515008(P2006−515008A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518478(P2005−518478)
【出願日】平成16年1月28日(2004.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/002346
【国際公開番号】WO2004/067039
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(505279226)コレギウム ファーマシューティカル, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】