説明

経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルム及びその製造方法

【課題】経時剥離力安定性に優れたポリエステル粘着フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエステル基材フィルムと、前記基材フィルムの一面にコーティングされるシリコン離型液として、ヘキセニルポリシロキサン又はビニールポリシロキサン、ハイドロジェンポリシロキサン、ロジウム触媒及び残量の水とウェット剤からなるシリコン離型液でコーティングされたシリコン離型層と、前記基材フィルムの他面にアクリル粘着剤でコーティングされた粘着剤層からなる粘着フィルムであり、ポリエステル基材フィルムのインラインコーティング工程によりコロナ処理されたポリエステル基材フィルムの一面に前記シリコン離型液をコーティングしてシリコン離型層を形成し、また前記ポリエステル基材フィルムの他面に前記アクリル粘着剤をコーティングして粘着剤層を共に形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルム及びその製造方法に関し、さらに詳細には、シリコン離型層が経時剥離力安定性を確保することができ、これにより、シリコン離型層と粘着剤層を同時にコーティング可能にして、ポリエステルフィルムの一面にはシリコン離型層を、他面には粘着剤層を有するフィルムを製造することができる経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シリコン離型剤は、シリコン主鎖、シリコン硬化剤、触媒などからなっているが、シリコン主鎖は、ビニールポリシロキサン又はビニル基を含むヘキセニルポリシロキサンであり、シリコン硬化剤は、ハイドロジェンポリシロキサンであり、触媒は、白金触媒である。
【0003】
前記シリコン離型剤は、プラスチックフィルムやシート、紙又は不織布などの基材に塗布してシリコン離型層を得ることができる。下記の特許文献1〜4などによりシリコン調液を基材、すなわちプラスチックフィルム又はセルロース、そして紙の上にシリコン層を塗布する技術が発表されている。
【0004】
また、従来のポリエステル粘着ラベルなどは、図2に示すように、基材とシリコン離型層とからなるフィルムと、基材と粘着層とからなる他のフィルムとをラミネートして製造する。このように、既存のオフライン(Off−Line)で別々にシリコン離型層とアクリル粘着剤層とを製造してラミネートする場合、オフラインの諸費用が多く消費され、アクリルコーティングとシリコンコーティングとを2回にわたって塗布するとき、異物混入の可能性が多い問題点と製造工程が煩わしいという問題点があった。
【0005】
一方、シリコン離型剤がアクリル粘着剤保護用として用いられるとき、シリコンの未硬化物質、特に硬化剤であるハイドロジェンシロキサンの機能基とアクリルのアクリル酸とが反応して、離型層の剥離力が上昇する原因となると判断している。これは、シリコン層のビニールあるいはヘキセニル機能基を含有する主鎖とハイドロジェンシロキサンとの一般的な当量比が1:1.5〜3程度に充分な硬化が起きるとしても、未反応の硬化剤含量が残存せざるを得ない。また、白金触媒が反応するとき、シリコン被膜を作る時に直接的な反応をするようになる。このとき、白金触媒は、低い温度でも反応できるが、大規模のシリコン調液を調製してシリコンをコーティングする場合、調液の粘度上昇と不安全な剥離力を起こすという問題点を有する。次の反応模式図は、剥離力の経時変化の主要因として残留ハイドロジェンポリシロキサンとアクリル酸との反応模式図である。
【0006】
【化1】

【0007】
一方、触媒と関連して、ロジウム触媒を使用して、下記の特許文献5において高温条件で硬化可能なシリコンエラストマー製造関連特許が記載されており、下記の特許文献6には、粘度安定性関連内容が記載されている。
【特許文献1】米国特許US3,076,726
【特許文献2】米国特許US3,169,884
【特許文献3】米国特許US3,427,270
【特許文献4】米国特許US3,900,617
【特許文献5】米国特許USP2004/0022978
【特許文献6】米国特許US4,123,604
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、シリコン離型層が経時剥離力安定性を確保することができる経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムと優れた経時安定性を確保することにより、シリコン離型層と粘着剤層を同時にコーティング可能にして、ポリエステルフィルムの一面にはシリコン離型層を、他面には粘着剤層を有するフィルムを製造することができる経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムの製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の上記及び他の目的と利点は、添付図面を参照して好ましい実施例を説明した下記の説明からより明確になるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成すべく、本発明の一実施例に係る経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムは、ポリエステル基材フィルムと、前記基材フィルムの一面にコーティングされるシリコン離型液として、ヘキセニルポリシロキサン又はビニールポリシロキサン、ハイドロジェンポリシロキサン、ロジウム触媒及び残量の水とウェット剤からなるシリコン離型液でコーティングされたシリコン離型層と、前記基材フィルムの他面にアクリル粘着剤でコーティングされた粘着剤層と、を含むことを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記シリコン離型液は、ヘキセニルポリシロキサン又はビニールポリシロキサン固型剤4〜30重量%、ハイドロジェンポリシロキサン0.3〜3重量%、ロジウム触媒0.0015〜0.0030重量%及び残量の水からなるシリコン離型液であることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記ヘキセニルポリシロキサン又はビニールポリシロキサンは、次の式1の構造式であり、前記ハイドロジェンポリシロキサンは、次の式2の構造式であって、
【0013】
【化2】

【0014】
は、CH=CHであり、Rは、CH−CH−CH−CH−CH=CH,CHである。
【0015】
【化3】

【0016】
前記m、n、p及びqは、ポリマー構造を有する0以上の整数であり、p/mは、1.1<p/m<2.5の範囲を有することを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記粘着剤層は、乾燥後のコーティングの厚さが3〜15μmの範囲であることを特徴とする。
【0018】
また、上記の目的を達成すべく、本発明の他の実施例に係る経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムの製造方法は、前記経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムは、ポリエステル基材フィルムのインラインコーティング工程によりコロナ処理されたポリエステル基材フィルムの一面に前記シリコン離型液をコーティングしてシリコン離型層を形成し、また前記ポリエステル基材フィルムの他面に前記アクリル粘着剤をコーティングして粘着剤層を共に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルム及びその製造方法によれば、シリコン離型層が経時剥離力安定性を確保することによって、MLCC製造時に用いられるキャリア離型及び偏光板離型、偏光板保護離型(Separator)、衣料用離型、電機電子ディスプレイ保護離型などに用いられることができ、また優れた経時安定性を確保することによって、シリコン離型層と粘着剤層を同時にコーティング可能にして、ポリエステルフィルムの一面にはシリコン離型層を、他面には粘着剤層を有するフィルムを製造することができる等の効果がある。
【0020】
また、既存のオフラインで生産していたシリコン離型層とアクリル粘着剤層をポリエステルフィルムの製造工程中(In−Line)にシリコン離型液とアクリル粘着剤層を塗布することによって、オフラインの諸費用を大幅に減らすことができ、オフラインでアクリルコーティングとシリコンコーティングを2回にわたって塗布するときに発生し得る異物混入の可能性を減らすことができ、製造工程の煩わしさを減少させることができる等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例と図面を参照して、本発明を詳細に説明する。これらの本発明の実施例は、単に本発明をより具体的に説明するために例示的に提示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないというのは、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって自明であるはずである。
【0022】
上述のとおり、白金触媒が反応する際にシリコン被膜を作るとき、直接的に反応するようになるが、このとき、白金触媒は低い温度でも反応できるが、大規模シリコン調液(以下、離型液とする)を調製して、シリコンコーティング時に調液の粘度上昇と不安全な剥離力を起こすという問題点を有する。そのため、本発明では、白金触媒の代わりに他の触媒を探すようになり、その結果、ロジウム触媒を使用して調液の安定性とシリコン離型層の経時剥離力安定性を改善することができた。
【0023】
本発明に係る経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムの基材フィルムは、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニール、ナイロン、ポリカーボネート、前記プラスチックの積層素材のフィルム;クラフトペーパー;不織布、布等の上に直接塗布されることができ、好ましくは、ポリエステルである。
【0024】
本発明に係る経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムのシリコン離型層は、前記基材フィルムの一面にコーティングされるが、ヘキセニルポリシロキサン又はビニールポリシロキサン固型剤4〜30重量%、ハイドロジェンポリシロキサン0.3〜3重量%、ロジウム触媒0.0015〜0.0030重量%及び残量の水とウェット剤とからなるシリコン離型液でコーティングされることが好ましい。前記シリコン離型液は、全体固形分含量が4〜30重量%、さらに好ましくは、6〜20重量%である。4重量%未満は、離型液の粘度が低くいから均一なコーティング(Coverage)に問題があり、離型剥離物性に不安定で固形分含量が30重量%を超過するときは粘度が高いから、コーティング時にコーティングの外観欠点、不均一なコーティングが引き起こされる。
【0025】
また、前記ヘキセニルポリシロキサン又はビニールポリシロキサンの平均粒子大きさは、0.01〜1μmであることが好ましい。
【0026】
本発明に係るシリコン離型液のうち、前記ヘキセニルポリシロキサン又はビニールポリシロキサンは、次の式1の構造式であり、前記ハイドロジェンポリシロキサンは、次の式2の構造式である。
【0027】
【化4】

【0028】
は、CH=CHであり、Rは、CH−CH−CH−CH−CH=CH,CHである。
【0029】
【化5】

【0030】
ここで、前記m、n、p及びqは、ポリマー構造を有する0以上の整数であり、p/mは、1.1<p/m<2.5の範囲を有することが好ましい。
【0031】
本発明に係る経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムの粘着剤層は、前記基材フィルムの他面、すなわち基材フィルムを基準に前記シリコン離型層の反対面にコーティングされるが、アクリル粘着剤でコーティングされる。前記アクリル粘着剤には、メチルメタアクリレート、ポリアクリル酸などを含む水分散アクリルポリマーで粘着力が500g/in程度であることが好ましい。
【0032】
本発明に係る経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムの離型層の厚さは、延伸と乾燥工程後に0.1〜2μmの範囲であることが好ましく、シリコンをコーティングしたポリエステル基材フィルムの表面数平均粗度は0.01〜2μmの範囲が適しており、さらに好ましくは、0.01〜1.0μmの範囲である。乾燥後に離型層のコーティング厚さが2μmを超過するとき、シリコンコーティング面とコーティングしない面を一定の圧力で巻き取る(winding)。また、シリコンコーティングと同時あるいは順次コーティングを行うアクリルコーティングは、乾燥厚として2〜20μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、3〜15μmの範囲であることが好ましい。
【0033】
本発明に係る経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムの製造方法について説明する。図1は、本発明に係る経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムの製造方法に用いられる装置の構成図である。図1において、インラインコーター1は、シリコン離型コーティング(Silicone Release Coating)を行い、インラインコーター2は、アクリル粘着コーティング(Acrylic Pressure Sensitive Adhesive)を行う装置である。次に、巻取りロール(Winding Roll)は、粘着剤のスクラッチ及び異物混入の防止のために、表面張力の低いテフロンロールやナイロンロールを使用する。前記インラインコーター1とインラインコーター2は、順次コーティング又は同時コーティングが可能である。
【0034】
本発明に係る経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムの工程条件は、まず、ポリエステルを熱溶融した後、T−ダイ(Die)の上でキャストを行って、未結晶状態のポリエステルシートを作り、これを利用して長さ方向あるいは幅方向に2.5倍〜3倍延伸して、シリコン離型液と粘着剤をコーティングし、熱硬化乾燥と同時に延伸する工程条件としては、延伸は、2.5〜5倍にして乾燥及び熱硬化を同時に行うことができるように、温度条件は80℃〜250℃、風速は、8〜40m/s、そして乾燥器内の滞留時間は0.5秒〜10分であり、さらに好ましくは、1秒〜1分程度が適している。また、前記シリコン離型液とアクリル粘着液を使用してインライン適用後製造されたポリエステル離型フィルムの熱的安定性評価項目の中で熱収縮率測定においては、長さ方向の熱収縮率は0.5%〜1.5%、横方向の熱収縮率は−0.03%〜1.0%が好ましく、さらに好ましくは長さ方向の熱収縮は0.3%〜1%、横方向の熱収縮は−0.01%〜0.4%である。
【0035】
本発明に係る経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムの製造方法において最も大きな特徴は、ポリエステルフィルム製造工程中にインラインコーティングを適用してコロナ処理されたポリエステル基材フィルムの一面に前記シリコン離型液をコーティングすることによりシリコン離型層を形成し、またポリエステル基材フィルムの他面に前記アクリル粘着剤をコーティングして粘着剤層を共に形成することを特徴とする。シリコン離型液の経時安定性を確保した結果、フィルムの取り巻く時にフィルムの一層である粘着剤層と会うフィルムのさらに他の一層であるシリコン離型層を共に形成できるようになったのである。インラインコーティングは、グラビア(Gravure)、ワイヤー(Wire)バー、溝付き(Grooved)、コンマ(Comma)、MPG(Multi−Pressure−Gravure)5R/Oあるいは6R/Oコーティング方式などを適用するときにも問題がなかった。本発明と実施例に用いられた基材は、本発明者が開発したTORAY SAEHAN Inc.からMLCC離型キャリア用として市販されているXD500−23μm、30μm,38μm,50μm基材と類似の表面荒さ特性を有したものである。
【0036】
本発明による経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムは、図2とは異なり、図3に示されているように、ポリエステルをフィルムの製造工程中にインラインコーティングを適用することによって、ポリエステル基材フィルムの両面にシリコン離型層と粘着剤層がコーティングされることである。
【実施例】
【0037】
(実施例)
実施例1〜6は、下記の表1に示した組成比の成分を使用して、経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムを製造した。
【0038】
(比較例)
比較例1〜3は、下記の表1に示した組成比の成分を使用して、一般的なポリエステルフィルムを製造した。
【0039】
(評価試験)
剥離力測定と関連したことは、ChemInstrument社のAR1000モデルを使用しており、標準粘着テープは、TESA7475をシリコン離型フィルムの表面に2kgfの荷重で付けてラミネートさせて、循環オーブン器(Covection oven、Heraeus社、モデルHC 4033)利用して、熱熟成前後の剥離力を180度剥げ角度、剥げ速度分当り0.3mであり、幅は4cm×15cmのサンプルを利用して、測定大きさは、長さは100mm、幅は25.4mm、剥離力の単位はg/inであり、測定値は5回測定して平均値を算出した。
【0040】
(粘着テープの経時剥離力)
ポリエステル基材フィルムの一面上のシリコンコーティング処理面とさらに他の一面上に粘着剤が硬化されたフィルム上で巻き取って、2枚を2kgfの荷重で押さえた後、循環オーブン器(Covection oven、Heraeus社、モデルHC 4033)利用して、23℃、50%RHで24時間経過後と480時間経過後にChemInstrument社のAR1000モデルを使用して、180度剥げ角度で分当り0.3m速度でインチ当りの剥離力を比較測定した。これに対する結果は、表1に示した。
【0041】
(シリコン硬化特性の把握)
シリコン離型層と当接する粘着層のポリエステルフィルム層を除去した後、これを下記のようなテスト試薬をマイクロシリンジに一滴落として、試薬の斑点(SPOT)の大きさ程度によって硬化程度を判断する。このとき、前記テープの粘着剤に未反応のシリコンが脱着程度によって斑点の大きさが決定されるといえ、これは、一般的なテスト試薬が上記のテープのようなことに用いられるとき、斑点の大きさが大きいが、未反応のシリコンが付く場合、斑点の大きさは小さいしかない。この実験に対する模式図は、図4を参照する。斑点の相対的な大きさに応じて、偶数、良好、普通、未逹と表現した。これに対する結果は、表1に示した。
【0042】
・テスト試薬=IPA+紫色色素一定比。
・IPA=>シリコンコーティング面を溶かすことができない、粘着面を溶かす。
【0043】
【表1】

【0044】
前記の表1から確認できるように、実施例1から実施例4は、ロジウム触媒を0.0015から0.003重量%添加したシリコン離型液がポリエステルの表面にコーティングされることによって、離型物性の偶数さを確認することができ、経時剥離力安定性を確認することができる。実施例5のロジウム触媒0.001重量%添加時に硬化安定性が低下し、実施例6のロジウム触媒0.0035重量%追加時に、硬化性は偶数であるが、剥離力の上昇が起きることを確認することができた。すなわち、実施例のように、適したロジウム触媒含量が含有されたシリコン離型剤は、硬化後に残留シリコン層が粘着剤層に転移されず、後硬化が必要なしに硬化が十分に行われることを確認することができ、離型コーティング層の反対面の粘着剤層にも敏感でないことを確認することができる。これに対して、比較例1〜3の白金触媒含量別実験結果は、シリコン反対層の粘着剤層と残留シリコンとの反応により剥離力が上昇することを確認することができた。
【0045】
以上で確認できるように、本発明に係る経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルム及びその製造方法は、シリコン離型層がアクリル粘着剤層に対する経時安定性が極めて優秀であるから、ポリエステル基材フィルムの一面にはシリコン離型層を、他面にはアクリル粘着剤層を含む経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムをインライン製造工法により製造できるため、既存のポリエステル粘着テープをポリエステル製造工法により製造できるようになったのである。
【0046】
また、本発明は、シリコン離型層に一般的な白金触媒の代わりに、ロジウム(Rhodium)触媒を離型液コーティング時に添加することにより、白金触媒の使用時に問題になるアクリル粘着剤層と離型層との経時剥離力を改善することができた。一般的な白金触媒を使用するとき、シリコン離型層の後硬化が必ず必要であるから、離型コーティング直後のアクリル粘着コーティング時にシリコンコーティング層の剥離力が上昇せざるを得なかったが、本発明は、シリコンコーティング層の後硬化がさらに必要でないから、アクリルコーティングとシリコンコーティングを同時にすることができた。
【0047】
本発明によるシリコンコーティング層は、粘着ラベル、偏光板フィルム、MLCC(Multi−Layer−Ceramic Capacitor)製造時に用いられるキャリア離型、ソーラーコントロール粘着フィルムとラミネート可能であり、LCD保護離型フィルム、オーバーライネーション用途、衣料用療法、FPC保護フィルム、そして心電図保護フィルムなど、多様な分野に利用でき、シリコンコーティング層と粘着コーティング層を同時に有するテープ用途として、電子製品の表面スクラッチ保護用及び包装粘着テープにも使用可能である。
【0048】
上述した本発明の好ましい実施例は、例示の目的のために開示されたものであり、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で、様々な置換、変形、及び変更が可能であり、このような置換、変更などは、特許請求の範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムの製造方法に用いられる装置の構成図である。
【図2】従来のポリエステル粘着ラベルの断面図である。
【図3】本発明に係る経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムの製造方法により製造された経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムの断面図である。
【図4】シリコン硬化特性の把握のための実験模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムであって、
ポリエステル基材フィルムと、
前記基材フィルムの一面にコーティングされるシリコーン離型液として、ヘキセニルポリシロキサン又はビニルポリシロキサン、ハイドロジェンポリシロキサン、ロジウム触媒及び残量の水とウェット剤からなるシリコーン離型液でコーティングされたシリコーン離型層と、
前記基材フィルムの他面にアクリル粘着剤でコーティングされた粘着剤層と、を含むことを特徴とする、経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記シリコーン離型液は、ヘキセニルポリシロキサン又はビニルポリシロキサン固型剤4〜30重量%、ハイドロジェンポリシロキサン0.3〜3重量%、ロジウム触媒0.0015〜0.0030重量%及び残量の水からなるシリコーン離型液であることを特徴とする、請求項1に記載の経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記ヘキセニルポリシロキサン又はビニルポリシロキサンは、次の式1の構造式であり、前記ハイドロジェンポリシロキサンは、次の式2の構造式であって、
【化1】


[Rは、CH=CHであり、Rは、CH−CH−CH−CH−CH=CH,CHである。]
【化2】


[前記m、n、p及びqは、ポリマー構造を有する0以上の整数である。]
p/mは、1.1<p/m<2.5の範囲を有することを特徴とする、請求項1に記載の経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記粘着剤層は、乾燥後のコーティングの厚さが3〜15μmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの何れか1項に記載の経時剥離力安定性に優れたポリエステルフィルムの製造方法であって、ポリエステル基材フィルムのインラインコーティング工程によりコロナ処理されたポリエステル基材フィルムの一面に前記シリコーン離型液をコーティングしてシリコーン離型層を形成し、また前記ポリエステル基材フィルムの他面に前記アクリル粘着剤をコーティングして粘着剤層を共に形成することを特徴とする、製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−46647(P2009−46647A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255628(P2007−255628)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507325253)トウレ セハン インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】