説明

経粘膜剤形の投与のための貯蔵および投与デバイス

投薬デバイスを用いて対象に小容量スフェンタニル含有剤形を経口腔粘膜投与するための組成物、方法およびシステムが開示される。本投薬デバイスは、一回一用量の複数用量投与を提供することができ、または単回用量アプリケータ(SDA)であり得る。本発明は、生体接着性の小容量スフェンタニル含有薬物剤形を、デバイスを用いて対象に経口腔粘膜、例えば、舌下投与するための投薬デバイス、方法、システムおよびキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2007年10月30日に出願された米国特許出願第11/980,216号;2007年7月3日に出願された米国特許出願11/825,212号;およびどちらも2007年1月5日に出願された米国特許出願第11/650,174号および同11/650,230号の一部係属出願であり、これらの各々はその全体を本明細書により参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、対象に小容量の薬物剤形を経粘膜投与するための投薬デバイス、方法およびシステムに関し、該薬物剤形は、痛みの処置のためのスフェンタニルを備える。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
経口剤形は、市場におけるすべての薬物剤形のおよそ80パーセントを占める。経口剤形は非侵襲で、投与が容易であり患者コンプライアンスが高い。
【0004】
経口投与された治療薬は、胃および小腸に迅速に輸送され、胃腸(GI:gastrointesinal)粘膜を通して血液中に吸収される。経口投与後の薬物の吸収効率は、GI管内の代謝および肝臓内の初回通過代謝の故に低いことがあり、その結果として作用発現時間が相対的に長いか、または吸収特性が不規則であり、急性障害を制御するのにはあまり適しない。市場における経口剤形は、大多数がGI送達用に設計されている。口腔粘膜を通して送達するための経口剤形は、比較的わずかしか設計されていない。
【0005】
しかしながら、経口腔粘膜送達は、特に親油性薬物に対して、最高血漿中濃度(Cmax)に到達する作用発現時間が経口送達より短くできることで多くの利益を提供する。これは、薬物が、血管が高度に発達した粘膜組織の上皮を直接かつ効率的に通過して迅速に血漿に至るからであり、かくして迅速に血液循環に到達することになり、同時により緩やかで往々にして非効率的で変動しやすいGI摂取が回避される。それ故に、迅速な作用発現、並びに一貫性のあるCmaxおよびTmaxが有益なときには、口腔粘膜を通して(例えば、舌下経路により)薬物を送達するのが有利である。
【0006】
経口腔粘膜の薬物送達を行うとき、薬物は、口腔の上皮膜を通して吸収される。しかしながら、往々にして、経口腔粘膜送達に関わる重要なリスクは、唾液の絶え間ない生成、逆流および嚥下によって医薬が嚥下される可能性が高まることである。これは、用られる剤形が、顕著な唾液反応を引き起こすほど十分大きいときに著しいリスクとなり、次には薬物が嚥下される、および/または剤形が口腔粘膜から排除されることにつながる。
【0007】
口腔粘膜組織を経由して薬物を送達するために、舌下タブレット、トローチ、薬用キャンディ、串付き薬用キャンディ、チューインガム、および頬パッチのような、様々な固体剤形が用いられてきた。薬物、例えば、ニトログリセリン舌下タブレットの経口腔粘膜送達のためには、薬用キャンディおよびタブレットのような固体剤形が用いられてきた。
【0008】
これと関連する技術は、薬物剤形を口腔粘膜、例えば、舌下隙に送達するための投与デバイス、すなわち薬物剤形を適切に置くことを容易にするデバイスについては記述していない。
【0009】
再現性があって有効な薬物送達技術、特に、オピオイドのような規制物質に応用される技術が、活発な研究分野になっている。アクセス制御された経口腔粘膜投薬システムは、経口および静脈内経路のような従来の薬物投与手段に比べて多く利益を提供するが、そのうちで最も重要なのは安全性の向上であり、付加的な利益として、迅速でかつ一貫性のある作用発現、現在利用できる剤形に比べて一貫性があって予測可能な血漿中濃度、および高くて一貫性のあるバイオアベイラビリティが挙げられる。
【0010】
これは、特に痛み、より具体的には急性痛、間欠痛、および突出痛の治療にとって意義がある。
【0011】
それ故に、痛みの処置のために、(例えば、患者制御の投与により)オピオイドのような規制物質を投与するために使用することができて、デバイスが薬物の乱用および/または転用の可能性を最小限に抑えると同時に安全で制御された口腔粘膜経由の送達を提供する、デバイスおよびシステムが必要とされている。
【0012】
本発明は、これらのニーズに取り組む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の摘要)
本発明は、生体接着性の小容量スフェンタニル含有薬物剤形を、デバイスを用いて対象に経口腔粘膜、例えば、舌下投与するための投薬デバイス、方法、システムおよびキットを提供する。
【0014】
本デバイスはハンドヘルドでポータブルとすることができ、1つまたはそれ以上(典型的に1から約200まで)の薬物剤形を含むカートリッジを備える。
【0015】
各々の剤形は、5mcg、10mcg、15mcg、20mcg、30mcg、40mcg、50mcg、60mcg、70mcg、80mcgまたは100mcgのスフェンタニルを備え、100マイクロリットルより小さい容量または100mgより小さい質量をもつ。
【0016】
本デバイスを用いるとき、デバイスの投与端が対象の口内に挿入され、剤形は、対象の口腔粘膜上(例えば、舌下隙内)に置かれるように投与される。
【0017】
デバイスの投与端は、剤形を置くためにシュラウドを備えた口吻部を有し、該シュラウドは、剤形が口腔粘膜上に置かれる前に乾燥しているように、唾液および他の水分がデバイスに進入するのを防ぐか、または遅らせるための手段を含む。
【0018】
デバイスは、ロックアウト時間を設定するためのロックアウト機能をさらに備えており、該ロックアウト時間中にデバイスは剤形を投与することができない。ロックアウト時間は、一定のロックアウト間隔、所定のロックアウト間隔、所定の可変ロックアウト間隔、アルゴリズムによって決定されるロックアウト間隔、或いは遠隔コンピュータ、ドッキング・ステーションまたは他のデバイスからデバイスに通信される可変ロックアウト間隔であってもよい。
【0019】
カートリッジは、1つまたはそれ以上の配送タブレットを備えることができ、少なくとも1つの配送タブレットは、剤形の投与に先立って投与される。
【0020】
カートリッジは、カートリッジ上の物理的な鍵機能、光学的に検出される凹凸形状またはパターン、カートリッジ上のバーコード、カートリッジ上の磁気タグ、カートリッジ上のRFIDタグ、カートリッジ上の電子マイクロチップ、またはそれらの組み合わせを備えるスマート・カートリッジ認識システムを備えることができる。
【0021】
投与デバイスは、ユーザ識別手段をさらに備え、該ユーザ識別手段は、識別されるべき患者につけたマッチングRFIDタグと接続するように設定された無線周波識別(RFID:radio frequency identification)リーダであり、投与デバイス上のRFIDリーダが、患者につけたマッチングRFIDタグを検出したとき、投与デバイスはロック解除されるか、または使用可能になる。
【0022】
投与デバイスは、投薬、使用履歴または両方を単独にまたは組み合わせて記録するための手段も、投薬および/または使用履歴を閲覧またはダウンロードする手段とともに備えることができる。
【0023】
対象の口腔粘膜上からの投与量を置いた後、剤形の侵食は、約30秒から約30分のうちに完了する。
【0024】
本方法を実行したとき、対象への剤形の単回舌下投与は、少なくとも50%のバイオアベイラビリティ、40%より小さい変動係数をもつAUC、40%より小さい変動係数をもつTmaxをもたらし、対象への剤形の繰り返し舌下投与は、対象への単回舌下投与後のバイオアベイラビリティより大きいバイオアベイラビリティをもたらし、繰り返し舌下投与後のTmaxおよび事前の舌下投与時間は、対象への単回舌下投与後のTmaxより短い。
【0025】
生体接着性の小容量スフェンタニル含有薬物剤形が、デバイスを用いて対象の舌下腔に投与されたとき、剤形中の総薬物量の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、および少なくとも99%からなる群から選択される薬物量が、舌下経路によって吸収される。
【0026】
投薬防氷を用いたスフェンタニル含有薬物剤形の投与は、患者制御によることができ、対象の痛みを処置するために使用できて、剤形投与後に痛みの緩和があきらかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】治療下にある患者の口腔粘膜に薬物剤形を送達するように設計された、例となる投与デバイスの概略図を示す。
【図1B】治療下にある患者の口腔粘膜に薬物剤形を送達するように設計された、例となる投与デバイスの概略図を示す。
【図1C】治療下にある患者の口腔粘膜に薬物剤形を送達するように設計された、例となる投与デバイスの概略図を示す。
【図1D】治療下にある患者の口腔粘膜に薬物剤形を送達するように設計された、例となる投与デバイスの概略図を示す。
【図1E】治療下にある患者の口腔粘膜に薬物剤形を送達するように設計された、例となる投与デバイスの概略図を示す。
【図2】唾液および水分の進入を阻止するか、または遅らせるように設計された特徴が図示した、例となる投与デバイスの概略図である。
【図3A】投与チップの例となる幾何学的形状の概略図である。
【図3B】投与チップの例となる幾何学的形状の概略図である。
【図4A】投与デバイスの例となる口吻部の概略図である。
【図4B】投与デバイスの例となる口吻部の概略図である。
【図4C】投与デバイスの例となる口吻部の概略図である。
【図4D】投与デバイスの例となる口吻部の概略図である。
【図5−1】図5Aおよび図5Bは、例となるデバイスの使用に関する一連のフローダイアグラムにおいて、デバイス使用中のプッシュロッド/タブレット相互作用の一段階である搭載機能を示す。
【図5−2】図5Cおよび図5Dは、例となるデバイスの使用に関する一連のフローダイアグラムにおいて、デバイス使用中のプッシュロッド/タブレット相互作用の一段階である投与機能を示す。
【図6】デバイス使用中のプッシュロッド/タブレット相互作用の段階を示す、例となるデバイスの概略図である。
【図7】投薬デバイスまたはシステムに含むことができる様々な構成部分を説明する図式的な構造接続図である。
【図8】図8Aは、RFIDタグ、投薬デバイス、基地局/ドックおよび医療提供者のパーソナルコンピュータを含む投薬システムにおける通信の一様態を示すブロック図である。図8Bは、RFIDタグ、投薬デバイス、ポータブル・ドッキングFOB、基地局および医療提供者のパーソナルコンピュータを含む投薬システムにおける通信のまた別の様態を示すブロック図である。
【図9】健康なヒトボランティアへの静脈内投薬(n=12)、または3つの異なった力価のスフェンタニル剤形の舌下単回投与後におけるの血漿中スフェンタニル濃度のグラフを示す。
【図10】健康で意識のあるビーグル犬モデルへのスフェンタニル製剤#44(ヒト#47製剤に相当;n=3)の舌下投与後における血漿中スフェンタニル濃度を静脈内スフェンタニル投与(n=3)と比較してグラフに示す。誤差バーは、平均の周りの標準誤差(SEM)を表す。
【図11】健康で意識のあるビーグル犬モデルへのスフェンタニル溶液の舌下投与(n=6)後、またはスフェンタニルの口腔摂取(n=6)後におけるスフェンタニルの血漿中濃度を、スフェンタニルの静脈内投与(n=3)と比較してグラフに示す。誤差バーは、平均の周りの±標準誤差(SEM)を表す。
【図12】健康で意識のあるビーグル犬モデルへのアルフェンタニルNanoTab(登録商標)の舌下投与(n=2)後のアルフェンタニルの血漿中濃度を、静脈内アルフェンタニル投与(n=3)と比較してグラフに示す。誤差バーは、平均の周りの±標準誤差(SEM)を表す。
【図13】例となる経口腔粘膜製剤からのスフェンタニルの溶解動態に対するpHの効果をグラフに示す。
【図14A】例となる単回用量アプリケータの概略図である。
【図14B】例となる単回用量アプリケータの概略図である。
【図15A】一タイプの単回用量アプリケータ、および対象への剤形の送達におけるその使用法の説明図を示す。
【図15B】一タイプの単回用量アプリケータ、および対象への剤形の送達におけるその使用法の説明図を示す。
【図15C】一タイプの単回用量アプリケータ、および対象への剤形の送達におけるその使用法の説明図を示す。
【図16A】6つの付加的な単回用量アプリケータの説明図を示す。
【図16B】6つの付加的な単回用量アプリケータの説明図を示す。
【図16C】6つの付加的な単回用量アプリケータの説明図を示す。
【図16D】6つの付加的な単回用量アプリケータの説明図を示す。
【図16E】6つの付加的な単回用量アプリケータの説明図を示す。
【図16F】6つの付加的な単回用量アプリケータの説明図を示す。
【図17】複数の単回用量アプリケータが使用前に貯蔵される、複数回用量アプリケータの説明図を示す。
【図18A】付加的な単回用量アプリケータおよび複数回アプリケータの実施形態の説明図を示す。
【図18B】付加的な単回用量アプリケータおよび複数回アプリケータの実施形態の説明図を示す。
【図18C】付加的な単回用量アプリケータおよび複数回アプリケータの実施形態の説明図を示す。
【図19A】一実施形態の単回用量アプリケータを使用する2つの段階の説明図を示す。
【図19B】一実施形態の単回用量アプリケータを使用する2つの段階の説明図を示す。
【図20A】単回用量アプリケータ(SDA:single dose applicator)の付加的な例の概略図である。
【図20B】単回用量アプリケータ(SDA)の付加的な例の概略図である。
【図20C】単回用量アプリケータ(SDA)の付加的な例の概略図である。
【図20D】単回用量アプリケータ(SDA)の付加的な例の概略図である。
【図21A】使用前に複数のSDAを貯蔵すること、および薬物剤形を舌下投与するためにSDAを使用することを提供する複数回用量アプリケータまたは容器の概略図を示す。
【図21B】使用前に複数のSDAを貯蔵すること、および薬物剤形を舌下投与するためにSDAを使用することを提供する複数回用量アプリケータまたは容器の概略図を示す。
【図21C】使用前に複数のSDAを貯蔵すること、および薬物剤形を舌下投与するためにSDAを使用することを提供する複数回用量アプリケータまたは容器の概略図を示す。
【図21D】使用前に複数のSDAを貯蔵すること、および薬物剤形を舌下投与するためにSDAを使用することを提供する複数回用量アプリケータまたは容器の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(詳細な説明)
I.はじめに
デバイスを用いて、小容量オピオイド含有剤形を経口腔粘膜投与するための組成物、方法、システム、キットが提供される。本剤形の経口腔粘膜投与においては、唾液反応が最小限に抑えられ、従って薬物の大部分が口腔粘膜を通して送達されるほど、GI管への薬物送達は最小限に抑えられる。本小容量剤形は、口腔粘膜への接着を容易にする生体接着特性を有し、かくして嚥下による経口摂取および非効率的な送達のリスクを最小限に抑える。
【0029】
以下の開示は、本発明を構成する剤形、デバイス、方法、システムおよびキットについて記載される。本明細書に記載される特定の剤形、デバイス、方法論、システム、キットまたは医学的状態は、もちろん変化し得るので、本発明は、これらには限定されない。当然のことながら、本明細書に用いられる用語法は、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、本発明の範囲を限定する意図はもたない。
【0030】
本明細書および添付の請求項に用いられるように、単数形「1つの(a)」、「および(and)」並びに「該(前記の)(the)」は、文脈が明確に逆を指示しない限り、複数の参照を含むことに留意すべきである。従って、例えば、「1つの薬物製剤」は、複数のかかる製剤を含み、「1つの薬物送達デバイス」への言及は、薬物剤形、およびかかる剤形の格納、貯蔵、および送達のための送達デバイスデバイスを備えるシステムを含む。
【0031】
別に定義されない限り、本明細書に用いられるすべての技術的および具体的用語は、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解されるのと一般的に同じ意味をもつ。本発明の実行またはテストにおいて、本明細書に記載されるのと同様または等価な任意の方法、デバイスおよび物質を用いることができるが、好ましい方法、デバイスおよび物質は、以下に記載される。
【0032】
本明細書で議論される出版物は、ひとえにそれらの公開が本出願の出願日に先立つ故に示される。本記載のいずれも、先行発明の故に本発明がかかる公開に先行する権利なしと認めるものとして解釈されるべきではない。
【0033】
II.定義
用語「活性薬剤」または「活性な」は、本明細書では用語「薬物」と同義で用いることができ、任意の治療用活性薬剤を指す意図をもつ。
【0034】
用語「接着する」は、本明細書では、粘膜表面のような表面に接触していて、外力の適用なしに該表面に保持される、薬物剤形または製剤に関して用いられる。用語「接着する」は、特定の固着または結合度合を示唆する意図をもたず、永続性の度合を示唆する意図ももたない。
【0035】
本明細書に用いられる用語「鎮痛薬」は、スフェンタニル、またはアルフェンタニル、フェンタニル、ロフェンタニル、カルフェンタニル、レミフェンタニル、トレフェンタニル、またはミルフェンタニルのようなスェンタニル同族体、並びに1つまたはそれ以上の治療用化合物を備える製剤を含む。語句「スフェンタニルまたは同族体」を用いることは、これらの選択されたオピオイド化合物のうちのただ1つだけの使用、またはただ1つだけを備える製剤に限定する意図をもたない。さらに、スフェンタニルのみ、または選択されたスフェンタニル同族体のみへの言及、例えば、「アルフェンタニル」への言及は、本発明の方法による送達に適した薬物を単に例示すると理解されるべきであり、いかなる意味においても限定的となる意図はもたない。
【0036】
本明細書に用いられる用語「AUC」は、薬物の血漿中濃度対時間プロットにおける「曲線下面積」を意味する。AUCは、典型的にはゼロから無限大までの時間間隔に対して与えられるが、しかし明らかに一患者に対して血漿中薬物濃度を「永久に」測定することはできず、数学的なアプローチを用いて、限られた数の濃度測定からAUCが見積もられる。実質的な意味合いにおいて、AUC(ゼロから無限大)は、吸収速度によらず、からだによって吸収された総薬物量を表わす。これは、用量が同じ2つの製剤が、同じ薬物用量をからだに放出したかどうか決定しようと試みるときに役立つ。経粘膜剤形のAUCと静脈内投与された同じ投与量のAUCとの比較は、バイオアベイラビリティを測定する根拠を与える役割を果たす。
【0037】
本明細書に用いられる用語「生体接着」は、粘膜を含めて生体表面への接着を指す。
【0038】
本明細書に用いられる用語「バイオアベイラビリティ」または「F」は、「パーセント・バイオアベイラビリティ」を意味し、静脈内投与されたときの薬物に対する被検物から吸収された同じ薬物の割合を表わす。これは、被検物に関する意図された経路による送達後のAUCvs.静脈内投与後の同じ薬物に対するAUCから計算される。これは、次式から計算される:バイオアベイラビリティ(%)=AUC(被検物)/AUC(静脈内経路/論文)。
【0039】
本明細書に用いられる用語「突出痛」は、別のやり方で制御された痛みのバックグラウンドの上に生じる、中程度から激しい強さの一時的に激発する痛みである。「突出痛」は短い期間激しく、1ないし2分と短いこともあり、或いは30分またはそれ以上と長いこともある。
【0040】
用語「カートリッジ」は、本明細書では、1つまたはそれ以上の薬物剤形、典型的に200までの薬物剤形を保持するように構成された、交換可能で、一回使用のディスポーザブルなカートリッジに関して用いられる。カートリッジは、通常、カートリッジ上の物理的鍵機能、カートリッジ上のバーコード、カートリッジ上の磁気タグ、カートリッジ上のRFIDタグ、カートリッジ上の電子マイクロチップ、またはそれらの組み合わせをもつスマート・カートリッジ認識システムを備える。カートリッジは、1つまたはそれ以上の配送タブレットを備えることができ、少なくても1つの配送タブレットは、剤形の投与に先立って投与される。
【0041】
本明細書に用いられる用語「Cmax」は、薬物投与後に観測される最高血漿中濃度を意味する。
【0042】
本明細書に用いられる用語「同族体」は、共通の化学構造の多くの変異形または配置のうちの1つを指す。
【0043】
用語「崩壊」は、本明細書において「侵食」と同義で用いられて、剤形が壊れる物理的過程を意味し、剤形の物理的完全性のみに関わる。これは、小片に壊れて究極的に大小微粒子になること、或いは代わりに、外側から中へ剤形が浸食されて消失することを含む、多くの異なった仕方で生じることができる。
【0044】
本明細書に用いられる用語「溶解」は、活性成分が、インビトロの溶媒、またはインビボの生理的流体、例えば、唾液が存在するところで、放出、拡散、侵食、または侵食および拡散の組み合わせのメカニズムに関わらず、タブレットから溶出する過程を意味する。
【0045】
用語「投与デバイス」、「投薬デバイス」、「ディスペンサー」、「薬物ディスペンサー」、「薬物投与ディスペンサー」、「デバイス」および「薬物送達ドラッグデバイス」は、本明細書において同義で用いられ、薬物剤形を投与するデバイスを指す。投与デバイスは、剤形に製剤された医薬活性物質(例えば、スフェンタニルのようなオピオイド)の制御された安全な送達を提供する。デバイスは、薬用キャンディ、丸薬、タブレット、カプセル、膜、細片、液体、パッチ、フィルム、ゲル、スプレーまたは他の形態のような、剤形の貯蔵および/または送達に適合させることができる。
【0046】
デバイスに関連して本明細書に用いられる用語「投与端」は、対象の口腔粘膜に薬物剤形を送達する機能を果たす口吻部およびシュラウドを備える、デバイスの部分を意味する。
【0047】
用語「薬物」、「医薬」、「薬理作用のある活性薬剤」、「治療薬」などは、本明細書で同義で用いられ、動物の生理機能を変化させ、かつ経口腔粘膜経路によって効果的に投与することができる、任意の物質を一般に指す。
【0048】
用語「侵食時間」は、固体の剤形が壊れて消失するまでに要する時間を意味する。
【0049】
用語「FOB」は、小さい、ポータブル・ハンドヘルドで電力供給されるドッキング式電子デバイスを指し、このデバイスは、データのアップロード、データのダウンロード、投薬デバイスへの制御されたアクセス、薬物剤形への制御されたアクセスを行うため、または投薬デバイスのユーザ・インターフェースを強化、或いは変更するために、投薬デバイスと連繋して用いることができる。FOBは、投薬デバイスと有線または無線いずれかの方法で通信およびドッキングすることができる。FOBは、特に病院環境において、医者または介護人のような医療専門家が首から掛けられるように、ひもに取り付ける改造を行ってもよい。投薬デバイスは、FOB経由で医者または介護人と通信することができる。
【0050】
本明細書で用いられる用語「製剤」および「薬物製剤」は、対象に送達するための多くの剤形のいずれかの中に提供されることができる、少なくとも1つの医薬活性物質を含む物理的組成物を指す。剤形は、薬用キャンディ、丸薬、カプセル、膜、細片、液体、パッチ、フィルム、ガム、ゲル、スプレーまたは他の形態で患者に提供されることができる。
【0051】
用語「ヒドロゲルを形成する調合剤」は、水溶液、例えば体液、特に口腔粘膜のものと接触すると、その場で水和ゲルが形成されるように水を吸収する、概ね水を欠いた固体製剤を意味する。ゲルが形成されるとユニークな崩壊(または侵食)反応を辿り、その間に治療薬が時間とともに徐放されることが可能になる。加えて、用語「ヒドロゲルを形成する調合物」は、体液、特に口腔における体液と接触すると薬物を放出するフィルムにかたちを変える、概ね水を欠いた固体製剤を表す。かかるフィルムは、薬物の放出および吸収に利用できる表面積を増加させ、かくして薬物のより速い吸収を可能にする。
【0052】
用語「ロックアウト機能」は、本明細書では、「ロックアウト時間」を提供するデバイス機能に関して用いられる。
【0053】
用語「ロックアウト時間」は、本明細書では、デバイスが薬物のアクセスを許可しない、すなわち、「ロックアウト時間」中は剤形が投与されることができない、期間に関して用いられる。「ロックアウト時間」は、プログラム可能であってもよく、一定の時間間隔、所定の間隔、所定の可変間隔、アルゴリズムによって決定される間隔、或いはリモート・コンピュータまたはドッキング・ステーションからデバイスに通信される可変間隔であってもよい。
【0054】
本明細書で用いられる用語「Log P」は、オクタノールと水との間の、イオン化していない化合物の平衡濃度比の対数を意味する。Pは、「オクタノール・水分配係数」とも呼ばれて、与えられた薬物の疎水性または親油性、化学的特性を数量化する手段として役立つ。
【0055】
用語「粘膜接着」は、本明細書では、口腔におけるような、粘液によって覆われた粘膜への接着を指すために用いられ、ここでは任意の生体表面への接着を指す用語「生体接着」と同義で用いることができる。
【0056】
用語「粘膜」は、粘液で覆われた体内の生体膜のいずれかを一般に指す。口腔の粘膜を通しての吸収は、特に興味深い。従って、口腔粘膜吸収、すなわち、頬側、舌下、歯肉および口蓋の吸収が特に熟考される。
【0057】
用語「粘膜デポー」は、本明細書では、最も広い意味で粘膜の中または直下における医薬活性物質の蓄積または堆積を指すために用いられる。
【0058】
用語「秩序化していない微粒子混合物」または「秩序化していない混合物」は、本明細書では、混合物が、医薬活性物質および生体接着物質または生体接着促進剤、或いは他の製剤成分に関して秩序化していない、製剤に言及して用いられる。加えて、この用語は、本明細書では、薬物粒子が、より大きいキャリア粒子の表面を覆って一様には分布しない乾式混合を伴う工程によって調合される、任意の製剤に言及して用いられる。かかる「秩序化していない」混合は、特定の添加剤を薬物、生体接着物質または生体接着促進剤および/または崩壊剤に添加/混合する順序について必要条件のない、秩序化していない方法で粒子を乾式混合することを含んでもよい。さらに、秩序化していない混合工程では薬物粒子のサイズには制限がない。薬物粒子は、25μmより大きくてもよい。加えて、「秩序化していない混合物」は、一次キャリア粒子が崩壊剤を中に取り込まない任意の混合工程を含む。最後に、「秩序化していない混合物」は、任意の「湿式混合」工程、すなわち溶媒または非溶媒が混合工程の間に加えられる工程、または薬物が溶液または懸濁液のかたちで加えられる任意の混合工程、によって調合されることができる。
【0059】
本明細書で用いられる用語「動作可能なように接続された」は、構成部分が、目標を達成するために意図通り機能するように、デバイス中に提供されることを意味する。例えば、放出メカニズムに動作可能なように接続されたCPUに、動作可能なようにさらに接続されたメモリデバイスは、作動すると、CPUがメモリデバイスと通信して薬物送達の状況または履歴をチェックし、次にさらに、放出メカニズムと(例えば、ソレノイドおよびスイッチを経由して)通信して薬物を放出および投薬することを示唆する意図をもってもよい。
【0060】
用語「経口腔粘膜剤形」および「薬物剤形」は、本明細書において同義で用いることができ、医薬活性物質、例えば、スフェンタニルのような薬物を備える剤形を指す。経口剤形は、医薬活性物質を口腔粘膜経由で血液循環に送達するために用いられ、典型的に「舌下剤形」であるが、しかしある場合には他の経口腔粘膜経路を用いてもよい。本剤形は、医薬活性物質を、嚥下とそれに続くGI吸収によるのではなく、口腔粘膜を通しての送達を提供し、製剤を制御することによって、医薬活性物質を放出するためのタイミングを達成することができる。本剤形は、医薬として許容される添加剤を備え、米国特許出願第11/650,174号に詳述されるようにNanoTab(商標)と呼んでもよい。本剤形は、発泡性でもなく、キャリア粒子表面に付着した薬物微粒子の実質的に水のない秩序化した混合物も備えない製剤を備え、キャリア粒子は薬物微粒子より実質的に大きい。
【0061】
本明細書で用いられる用語「経口腔粘膜薬物送達」および「経口腔粘膜投与」は、嚥下とそれに続くGI吸収によるのではなく、経口腔粘膜経路によって実質的に生じる薬物送達を指す。これは、頬側、舌下および歯茎の経粘膜領域を経由する送達を含む。
【0062】
用語「口吻部」は、「投与チップ」「送達チップ」と同義で用いられ、剤形を口腔粘膜(例えば、舌下隙)に送達する薬物剤形ディスペンサーの投与および/または位置決めチップを指す。
【0063】
用語「無線周波識別装置」または「RFID」は、RFIDタグと呼ばれるデバイスを用いたデータの蓄積および遠隔読み出しに依存する自動識別方法に関して用いられ、RFIDタグは、電波を用いた識別目的のために製品、または個人に取り付けられるか、または組み込まれる。いくつかのタグは、数メートル離れて、かつリーダの視野を越えて読み込まれることができる。
【0064】
用語「交換可能なカートリッジ」または「ディスポーザブルなカートリッジ」は、典型的に200までの薬物剤形を保持するように構成された、薬物剤形を収納するためのカートリッジに関して用いられ、該カートリッジは使い捨て用に設計される。
【0065】
用語「配送タブレット」は、本明細書では、薬物含有剤形と同じサイズおよび形状であるが医薬活性物質を含まない、「初期化」または「配送」タブレットに関して用いられる。「配送タブレット」は、医薬活性物質を含まないプラシーボ剤形を備えてもよく、或いはプラスチックまたは他の物質でできていてもよい。これは、投与デバイスに新しいカートリッジが挿入された後に、そこから投与される最初のものである。デバイスは、配送タブレットと医薬活性物質を含む剤形とを区別するための手段をもつ。
【0066】
用語「シュラウド」は、デバイスの投与端における部分的または完全な覆いを記述するために用いられる。該覆いは、口腔の唾液または他の水分との接触から送達ポートを保護して、デバイスと口腔粘膜および舌との間に障壁を成し、剤形を送達するための起伏、および唾液の進入または水分の進入を最小限に抑えるか、またはなくす機能を果たす疎水性または親水性の内部を有する。「シュラウド」は、口腔粘膜がバルブ領域および剤形に接触するのを防ぐ障壁となって剤形が投与されるのを助け、かつ剤形がシュラウドに付着するのを防ぐ。シュラウドは、剤形がシュラウド付着するのを阻止するために丸い内部表面または他の幾何形状をもつとよい。シュラウドは、舌または口腔粘膜が剤形の投与領域に接触する能力を制限し、それによって唾液の接触と進入を抑制する。シュラウドは、舌および他の粘膜からの水分および唾液の進入からバルブを遮蔽し、剤形が、濡れた遠位バルブまたはシュラウド領域に「付着すること」なしにデバイスから送出されるための領域を提供する。シュラウドは、デバイスが口腔空間から取り出されるときに、剤形が引きずられることを軽減するために、切り欠き/起伏も備える。剤形の送達を助けるのみならず、唾液および水分の進入を抑制するために、シュラウドとともにバルブが機能する。
【0067】
用語「対象」は、任意の対象、一般に疾患の治療が望まれる哺乳類(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、馬、牛、有蹄動物など)、成人または子供を含む。用語「対象」および「患者」は、本明細書において同義で用いることができる。
【0068】
本明細書で用いられる、用語「薬物剤形および投与デバイスを含むシステム」は、薬物投与の送達および/またはモニタリングのための投薬システムを指す。本システムは、医薬活性物質、例えば、スフェンタニルのようなオピオイドをモニターおよび送達するために用いることができて、送達される薬物量、それに対応した効能および安全性が、現在入手可能なシステムより向上するシステムである。本システムは、貯蔵薬物への無認可アクセスを防ぐ安全機能、投薬ロックアウト機能、薬物へのアクセス制御のための個人ユーザ識別手段、用量カウント機能、用量送達に関する情報を保管するための記憶手段、およびユーザ、薬物カートリッジ、またコンピュータのような別のデバイスとの双方向情報交換のためのインターフェースを含めて、現在入手可能なシステムを超える安全性の向上と使い易さとを提供する、1つまたはそれ以上の機能をもつことができる。
【0069】
用語「小容量薬物剤形」または「小容量剤形」は、本明細書では100μlより小さい容量および100mgより小さい質量をもつ小容量剤形に関して用いられる。より具体的には、本剤形は、100mg、90mg、80mg、l70mg、60mg、50mg、40mg、30mg、29mg、28mg、27mg、26mg、25mg、24mg、23mg、22mg、21mg、20mg、19mg、18mg、17mg、16mg、15mg、14mg、13mg、12mg、11mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mgまたは5mgより小さい質量、または100μl、90μl、80μl、70μl、60μl、50μl、40μl、30μl、29μl、28μl、27μl、26μl、25μl、24μl、23μl、22μl、21μl、20μl、19μl、18μl、17μl、16μl、15μl、14μl、13μl、12μl、11μl、10μl、9μl、8μl、7μl、6μl、または5μlより小さい容量をもつ。本「剤形」は、生体接着特性を持っても持たなくてもよく、水溶液と接触するとヒドロゲルを形成することができる。
【0070】
本「剤形」は、本剤形の小さいサイズによる投与が適する量、すなわち0.25μgから99.9mgまで、1μgから50mgまで、または1μgから10mgまでの量で投与することができる任意の薬物を、経口腔粘膜経路により送達するために用いることができる。
【0071】
用語「小容量スフェンタニル含有薬物剤形」は、本明細書では約2マイクログラム(mcg)から約200mcgまでのスフェンタニル、例えば、5mcg、10mcg、15mcg、20mcg、30mcg、40mcg、50mcg、60mcg、70mcg、80mcgまたは100mcgのスフェンタニルから選択されるスフェンタニルの用量を含む小容量剤形に関して用いられる。
【0072】
用語「固体剤形」または「固体薬物剤形」は、本明細書では、固体、例えば、薬用キャンディ、丸薬、タブレット、膜または細片の小容量剤形に関して用いられる。
【0073】
用語「舌下」は、文字通り「舌の下」を意味し、医薬活性物質が消化管経由よりむしろ舌下血管を経由して迅速に吸収されるようなやり方で、口を経由して剤形を投与することを指す。吸収は、血管が高度に発達した舌下粘膜を経由して生じ、医薬活性物質がより直接的に血液循環にアクセスすることを可能として、GI管の影響を受けない直接的な全身投与を提供する。
【0074】
用語「治療時間比」または「TTR」は、薬物が治療レベルにある平均時間を示し、薬物の血漿中濃度がCmaxの50%以上に維持される時間を、薬物の消失半減期で正規化した時間として定義され、次式によって計算される:TTR=(Cmaxの50%以上での消費時間)/(薬物の静脈内終末消失半減期)。最後の項は、然るべき種における注目する薬物の文献データから得られる。
【0075】
本明細書で用いられる用語「Tmax」は、最高血漿中濃度が観測された時点を意味する。
【0076】
本明細書に用いられる用語「Tonset」は、観察された「作用発現時間」を意味し、血漿中薬物濃度が、観測された最高血漿中濃度Cmaxの50%に達するのに要した時間を表わす。
【0077】
用語「治療有効量」は、痛みの緩和のような所望の治療効果を促進するのに有効な治療薬の量、または治療薬の送達速度(例えば、時間で割った量)を意味する。所望される正確な治療効果(例えば、痛みの緩和の度合、および緩和された痛みの原因など)は、治療される状態、対象の耐薬性、薬物および/または投与される薬物製剤(例えば、治療剤(薬物)の効能、製剤における薬物の濃度など)、および当業者によって認識される様々な他の要因によって変化するであろう。
【0078】
III.薬物剤形
本請求項の小容量経口腔粘膜薬物剤形は、口腔における薬物送達を意図したより大きい従来の剤形と比較して、唾液応答の低減をもたらす。本剤形は、医薬活性物質を含み、口腔粘膜を通じての該医薬活性物質の高い吸収速度、および胃腸管経由の摂取低減を可能にすることによって、一貫性および再現性のより高い薬物動態的およびそれに付随した薬力学的プロフィルを提供する。
【0079】
本剤形は、典型的に「舌下剤形」であるが、しかしある場合には他の経口腔粘膜経路を用いることもできる。本剤形は、1つまたはそれ以上の活性薬物を、医薬として許容される添加剤とともに備える実質的に均質な組成物である。
【0080】
経口腔粘膜薬物送達のための好ましい部位は、ある実施形態において剤形を頬内に置くこと、または口蓋または歯茎に接着させることが有利なこともあるとはいえ、舌下領域である。
【0081】
本剤形は、従来の経口剤形および他の経口腔粘膜剤形と比較して、口腔粘膜経由による薬物送達の割合(および量)を増加させ、それに付随して胃腸(GI)管経由の送達を減少させる。
【0082】
一般的には、本剤形は、薬物送達の間および薬物がほぼすべて剤形から口腔粘膜に送達されてしまうまで、口腔粘膜に接着する(すなわち、生体接着性である)ように適合される。
【0083】
本請求項の剤形は、100mgより小さい質量および100mlより小さい容量をもつ。より具体的には、本剤形は、100mg、90mg、80mg、l70mg、60mg、50mg、40mg、30mg、29mg、28mg、27mg、26mg、25mg、24mg、23mg、22mg、21mg、20mg、19mg、18mg、17mg、16mg、15mg、14mg、13mg、12mg、11mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mgまたは5mgより小さい質量、または100μl、90μl、80μl、70μl、60μl、50μl、40μl、30μl、29μl、28μl、27μl、26μl、25μl、24μl、23μl、22μl、21μl、20μl、19μl、18μl、17μl、16μl、15μl、14μl、13μl、12μl、11μl、10μl、9μl、8μl、7μl、6μl、または5μlより小さい容量をもつ。本剤形は、典型的に生体接着特性を有し、水溶液と接触するとヒドロゲルを形成することができる。
【0084】
本剤形は、典型的に30秒から5分まで、10分まで、15分まで、または30分までの侵食時間をもつ。
【0085】
一般に、対象の口腔粘膜に投与された剤形における医薬活性物質の総量のうち、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%が経口腔粘膜経路により吸収される。
【0086】
本剤形は、本質的に任意の形状をもつことができ、例として平、凸または凹面をもつ円形ディスク、楕円形状、球形状、3つまたはそれ以上の稜と平、凸または凹面とをもつ多角形を含む。本剤形は、対称でも非対称でもよく、制御性があり、便利でかつ容易な、貯蔵、取り扱い、包装または投薬を可能にする特徴または幾何学的形状をもつことができる。
【0087】
経口腔粘膜薬物送達は、簡単かつ非侵襲であり、介護人または患者によって最小限の不快感で投与されることができる。経口腔粘膜送達のための剤形は、固体でも非固体でもよい。好ましい一実施形態において、からの投与量は、唾液と接触した後にヒドロゲルに変わる固体である。好ましいまた別の実施形態において、からの投与量は、唾液との接触後にヒドロゲルを形成することなく侵食される固体である。
【0088】
一般に、医薬活性物質の経口腔粘膜送達は、薬用キャンディまたはタブレットのような固体剤形を用いて達成されるが、しかし液体、スプレー、ゲル、ガム、粉末およびフィルムなども用いることもできる。
【0089】
GI管経由ではバイオアベイラビリティに乏しいある種の薬物、例えば、スフェンタニルおよびアルフェンタニルのような親油性オピオイド類に対して、経口腔粘膜送達は、GI送達より有効な送達経路である。かかる親油性薬物に対して、経口腔粘膜送達は、作用発現時間(すなわち、投与から治療効果までの時間)が経口GI送達より短く、より良好なバイオアベイラビリティおよびより一貫性のある薬物動態を提供する。
【0090】
本請求項の薬物剤形は、唾液応答を低減するように設計かつ適合されており、かくして嚥下される薬物量が低減されることにより、薬物の相当量が口腔粘膜経由で対象に送達される。本請求項の薬物剤形は、口腔粘膜経由による有効な薬物送達、および一貫性のある治療域内の血漿中レベルを提供する。
【0091】
本請求項の剤形は、少なくとも0.001%重量百分率の医薬活性物質を、医薬として許容される添加剤とともに含む実質的に均質な製剤を備える。典型的には、本請求項の剤形は、0.01〜99%または約0.25μgから99.9mg、約1μgから50mgまたは約1μgから10mgw/wまでの医薬活性物質を備える。
【0092】
本請求項の剤形を調合するための製剤およびそれらを作製する方法は、米国特許出願第11/825,251号および第11/650,227号に記載される。例となる製剤は、生体接着性であって約0.0004%から約0.04%までのスフェンタニル、例えば、0.0005%、0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.006%、0.008%、0.01%、0.012%、0.014%または0.016%のスフェンタニルを備える。一般に、本製剤は、(a)薬物の医薬活性量の秩序化していない混合物;(b)対象の口腔粘膜への接着性を与える生体接着性物質;および(c)ステアリン酸を備え、本製剤を備える剤形の溶解は、例えば、約4から8までのpH域にわたってpHに依存しない。
【0093】
本発明の製剤に用いるための医薬活性物質は、0.006と3.382との間のオクタノール・水分配係数の対数(LogP)によって特徴づけられる。
【0094】
経口腔粘膜送達のための本発明の医薬剤形は、固体でも非固体でもよい。好ましい一実施形態において、からの投与量は、唾液との接触後にヒドロゲルにかたちを変える固体である。また別の好ましい実施形態において、本剤形は、唾液と接触すると生体接着性フィルムにかたちを変える固体である。
【0095】
好ましい実施形態において、かかる製剤は、タブレットの崩壊後に目に見えるフィルムを形成するように設計される。口腔粘膜上に置かれたとき、本剤形は、十分に水和するとすぐに粘膜表面に広がり、かくして活性薬剤を含む生体接着性フィルムにかたちを変えるほど水分を吸収する。この変形は、薬物放出に利用できる表面積を著しく増加させ、かくして薬物の剤形からの拡散および放出を加速する。より大きい接触表面積の故に薬物の吸収が迅速に生じ、速い作用発現がもたらされる。
【0096】
無毒で医薬として許容される多数の適切な経口剤形に用いるためのキャリアは、「Remington’s Pharmaceutical Science」第17版、1985年に見い出すことができる。
【0097】
当然のことながら、本製剤は、直接圧縮、湿式造粒法などのような当業者によって日常的に採用される手順を用いて、対象に送達するための剤形に変換される。本剤形を調合するための工程は、投薬内容物の高い均一性を達成するために各々の製剤に対して最適化される。
【0098】
理論に縛られることは望ましくないが、例となる一実施形態において、薬物剤形は、舌下腔に、好ましくは舌小帯のいずれか側の舌下に置かれたとき、接触するとすぐに接着する。本剤形は舌下隙の水分に曝されるにつれて水を吸収し、その結果として本剤形が侵食されて、活性薬物が対象の血液循環に放出される。
【0099】
IV.スフェンタニル
オピオイド類は、痛みの処置のために広く用いられており、一般に静脈内、経口、硬膜外、経皮、直腸内および筋肉内に送達される。モルヒネおよびその類似体は、一般に静脈内に送達され、激痛、慢性痛、および急性痛に対して有効である。しかし、これらは、適切に用いないと激しい呼吸抑制作用をもつこともあり、さらに乱用される可能性が高い難点がある。純粋にオピオイドの過剰摂取からくる罹患率および死亡率の主な原因は、呼吸器合併症によるものである。
【0100】
本請求項の薬物剤形の一つの例となる使用法は、痛みの緩和への適用である。本請求項の薬物剤形は、痛みの処置に用いられるとき、オピオイドまたはオピオイド・アゴニストのような薬物を備え、中程度から激しい強さの急性痛および慢性痛の両方を治療するために利用される。
【0101】
かかる薬物剤形における活性薬剤は、スフェンタニルまたはスェンタニル同族体、例えば、アルフェンタニル、フェンタニル、ロフェンタニル、カルフェンタニル、レミフェンタニル、トレフェンタニルまたは、ミルフェンタニルである。好ましい実施形態においては、スフェンタニルが活性薬剤である。スフェンタニルは、クエン酸スフェンタニル、スフェンタニル塩基、またはそれらの組み合わせとして提供されることができる。
【0102】
好ましいまた別の実施形態は、活性薬剤としてスフェンタニル同族体を利用する。さらにまた別の好ましい実施形態は、鎮痛治療のために、活性薬剤としてスフェンタニルおよび少なくとも1つの付加的な薬剤の組み合わせ、例えば、スフェンタニルとアルフェンタニルとの組み合わせを利用する。様々なオピオイド薬物は、薬物動態プロフィルが異なり、μオピオイド受容体のスプライス変異体との相互作用も異なるため、治療効果を高めるために組み合わせて用いることができる。
【0103】
スフェンタニル(N‐[(4‐(メトキシメチル‐l‐(2‐(2-チエニル)エチル)-4-ピペリジニル)]‐N‐フェニルプロパンアミド)は、心臓外科手術においてバランス全身麻酔をもたらすため、陣痛および出産の間の硬膜外投与のための主な麻酔薬として用いられており、実験的には鼻腔内および液体経口製剤が投与されきた。IV送達のために用いられるスフェンタニルの市販形態は、SUFENTA FORTE(登録商標)製剤である。この液体製剤は、0.075mg/mlのクエン酸スフェンタニル(スフェンタニル塩基0.05mgに相当)および9.0mg/mlの塩化ナトリウムを水に含む。これは、148分の血漿中消失半減期をもち、投与用量の80%は24時間のうちに排泄される。
【0104】
薬用キャンディ(例えば、Actiq(登録商標))を用いたフェンタニルの頬側投与後に、Actiq(登録商標)200mcgの投与量に対するTmaxは20〜120分の範囲にはあるとはいえ、フェンタニルのうちの75%は嚥下されるという事実(Actiq(登録商標)の添付資料)による不安定なGI摂取の結果として、バイオアベイラビリティは50%である。ActiqのTmaxに関するより最近の出版物は、これらのもとの時間が作用開始を速める方に歪曲されていたことを示唆する(Fentoraの添付書類は、ActiqのTmaxの範囲が240分にまで及ぶことを示唆する)。Fentora(フェンタニル・バッカル錠)は、報告によれば薬物の50%が嚥下され、バイオアベイラビリティは65%を示す。本請求項の剤形とは対照的に、Actiq(登録商標)およびFentoraは両方ともに、薬用キャンディで投与されるフェンタニルの相当量が、患者によって嚥下されるという不利益を抱える。
【0105】
スフェンタニルおよびフェンタニルは、強力なμオピオイド受容体アゴニストとして多くの類似性をもつが、しかし多くの鍵となる点で異なることが示されている。複数の研究は、スフェンタニルがフェンタニルより7〜24倍の範囲でより強力なことを実証した(SUFENTA(登録商標)添付書類;Paix A,et al.Pain,63:263‐69,1995;Reynolds L,et al.,Pain,110:182‐188,2004)。それ故に、スフェンタニルはより小さい剤形を用いて投与できるので、より大きい剤形における唾液応答の増加を回避することができ、その結果として嚥下される薬物量が最小限に抑えられる。これは、最小限のGI摂取につながる。
【0106】
加えて、フェンタニルおよび他のオピエート・アゴニストには、呼吸抑制、吐き気、嘔吐および便秘を含む有害な副作用の可能性がある。フェンタニルは、GI経路から30%のバイオアベイラビリティを有するので、嚥下された薬物は有意な程度にCmaxの血漿中レベルに寄付することができ、その結果としてこれらの製品では不規則なCmaxおよびTmaxが観測されることになる。
【0107】
さらに、スフェンタニルの脂溶性(オクタノール・水分配係数)(1778:1)は、フェンタニル(816:1)より大きい。スフェンタニルのタンパク質結合(91〜93%)は、フェンタニル(80〜85%)と比較して増加を示す(それぞれ、SUFENTA(登録商標)およびActiq(登録商標)の添付書類)。スフェンタニルは8.01のpKaをもち、一方でフェンタニルのpKaは8.43である(Paradis et al.,Therapeutic Drug Monitoring,24:768-74、2002)。これらの相違は、様々な薬物動態パラメータに影響を与えることができ、例えば、スフェンタニルは、フェンタニルより速い作用発現および、早い回復時間をもつことが示されている(Sanford et al.,Anesthesia and Analgesia,65:259-66,1986)。フェンタニルと比較して、スフェンタニルを用いると、より迅速に痛みが緩和されるとともに、効果に応じて用量を調整して過剰投薬を回避することが可能になる。
【0108】
重要なこととして、スフェンタニルは、フェンタニルより80,000倍もより強力にμオピオイド受容体のエンドサイトーシスをもたらすことが示されている(Koch et al.,Molecular Pharmacology,67:280-87,2005)。この受容体の内在化の結果として、ニューロンは、フェンタニルよりもスフェンタニルと長期間にわたって着実に反応し続けることになり、スフェンタニルの繰り返し投薬に伴う耐性の進行が、フェンタニルと比較して臨床的に少ないことを示唆する。
【0109】
臨床上のスフェンタニルの使用は、手術室または集中治療室におけるIV投与に主として限られてきた。低用量の鼻腔内投与のための液体スフェンタニル調合剤の使用に関する2,3の研究がなされている(Helmers et al.,1989;Jackson K,et al.,J Pain Symptom Management 2002:23(6)450‐452)、および液体スフェンタニル調合剤の舌下送達の症例報告(Gardner‐Nix J.,J Pain Symptom Management.2001 Aug:22(2)627‐30;Kunz KM,Theisen JA,Schroeder ME,Journal of Pain and Symptom Management,8:189‐190,1993)。これらの研究の大部分において、オピオイド・ナイーブな患者では、成人におけるスフェンタニルの最少投薬量は5mcgであった。口腔および鼻粘膜に投与された液剤は、本明細書に記載される動物実験(舌下液体)、および文献(nasal liquid drops‐Helmers et al.,1989)によって実証されたように、バイオアベイラビリティがより低く、たぶん作用持続時間もより短い難点がある。Gardner‐Nixは、液剤舌下スフェンタニルから生成された鎮痛データ(薬物動態データではない)を提示し、6分以内に起こる液剤舌下スフェンタニルの鎮痛作用発現について記載しているが、痛みの緩和の持続時間はおよそ30分しか続かなかった。
【0110】
本発明者の研究に先立って、舌下スフェンタニルに関するいかなる形態の薬物動態データも公開されていなかった。
【0111】
本請求項の薬物剤形は、経口腔粘膜送達のために剤形当たり約0.25から約200mcgまでのスフェンタニルを含む。例となる一実施形態において、各々の剤形は、約0.25から約200mcgまでのスフェンタニルを単独で、或いは1つまたはそれ以上の他の治療薬または薬物と組み合わせて含む。
【0112】
子供(小児患者)に投与するための例となる薬物剤形は、剤形当たり約0.25から約120mcgのスフェンタニルを含む。例えば、子供に投与するための薬物剤形は、経口腔粘膜送達のために約0.25、約0.5、約1、約2.5、約4、約5、約6、約8、約10、約15、約20、約40、約60または約120mcgのスフェンタニルを含むことができる。小児患者に対して、例となる用量の範囲は、好ましい範囲を約0.05から約0.3mcg/kgまでとして、少なくとも約0.02mcg/kgから約0.5mcg/kgまでと言うことになる。
【0113】
成人に投与するための例となる薬物剤形は、剤形当たり約2.5から約200mcgまでのスフェンタニルを含む。例えば、成人に投与するための薬物剤形は、経口腔粘膜送達のために約2.5、約3、約5、約7.5、約10、約15、約20、約40、約60、約80、約100、約120、約140、約180または約200mcg、或いはそれ以上のスフェンタニルを含むことができる。
【0114】
好ましくは、スフェンタニル含有剤形は、約2から約200マイクログラム(mcg)までのスフェンタニル、例えば、5mcg、10mcg、15mcg、20mcg、30mcg、40mcg、50mcg、60mcg、70mcg、80mcgまたは100mcgのスフェンタニルを備える。
【0115】
当業者によって理解されるであろうように、用量は、子供では範囲の下限、成人では体重によって、特にオピオイド耐性の成人に長期間投与するときには、範囲の上限となるであろう。本発明者の研究に先立って、スフェンタニルの小容量経口腔粘膜薬物送達剤形は、記述されていなかった。
【0116】
様々な実施形態において、本請求項の剤形は、子供、オピオイドに耐性があるか、またはナイーブなすべての年齢の成人、および非ヒト哺乳動物を含むすべてのタイプの患者に有効な痛みの緩和を提供する。本発明は、入院患者および外来患者の両環境、並びに戦場において有用性が見出される。
【0117】
V.スフェンタニル同族体
スフェンタニルの同族体は、本明細書に記載される組成物、方法およびシステムに用途が見出され、例としてレミフェンタニルおよびアルフェンタニルが含まれる。
【0118】
ある実施形態において、剤形は、少なくとも重量で0.005%から多ければ99.9%までのアルフェンタニル、ロフェンタニル、カルフェンタニル、レミフェンタニル、トレフェンタニルまたはミルフェンタルを備える。活性成分(単数または複数)の百分率は、口腔粘膜経路による送達を最大限にするために最適化される剤形のサイズと活性成分(単数または複数)の特質とによって変わることになる。いくつかの様態において、単一の剤形に1つより多い活性成分を含むことができる。
【0119】
レミフェンタニルは、フェンタニルまたはスフェンタニルよりずっと迅速に代謝される強力なスフェンタニル同族体であるが、しかし徐放性製剤で送達されるときに、急性痛の治療に適する可能性がある。レミフェンタニル含有剤形は、典型的に約0.25mcgから99.9mgまでのレミフェンタニルを備える。レミフェンタニル製剤の用量の範囲は、例えば、成人および小児患者の両方に対し、20分間にわたって0.1mcg/kgから50mcg/kgまでを含むことができる。これらの投与量は、フェンタニルまたはスフェンタニルに対する時間間隔より短くなりうる然るべき時間間隔で繰り返すことができる。
【0120】
アルフェンタニルも、迅速に代謝される強力なスフェンタニル同族体であるが、しかし徐放性製剤に用いるのに適している可能性がある。本剤形は、経口腔粘膜送達のために剤形当たり約10から約10000mcgまでのアルフェンタニルを含むことができる。当業者によって理解されるであろうように、用量は、子供では範囲の下限、成人では体重によって、特にオピオイド耐性の成人に長期間投与されるときに範囲の上限になるであろう。
【0121】
子供(小児患者)に投与するための例となる剤形は、剤形当たり約10から約6300mcgまでのアルフェンタニルを含む。例えば、子供に投与するための剤形は、経口腔粘膜送達のために約10、約25、約50、約130、約210、約280、約310、約420、約600、約780、約1050、約2100、約3000または約6300mcgのアルフェンタニルを含むことができる。
【0122】
成人に投与するための例となる剤形は、剤形当たり約70から約10000mcgまでのアルフェンタニルを含む。例えば、成人に投与するための剤形は、経口腔粘膜送達のために約70、約140、約160、約210、約280、約310、約420、約600、約780、約1050、約2100、約3000、約6300または約10000mcg或いはそれ以上のアルフェンタニルを含むことができる。
【0123】
スェンタニル‐、アルフェンタニル‐、またはレミフェンタニル‐含有剤形の単回用量をヒト対象に送達した後に、スフェンタニル、アルフェンタニルまたはレミフェンタニルの血漿中レベルは、投与後60分以内、例えば、5分と50分との間、10分と40分との間に最高レベルに達することができる。
【0124】
VI.痛みの処置
慢性的に痛い状態に苦しむ患者は、痛みが間欠的に悪化して、ベースラインの慢性痛に対する作用発現の遅い徐放性オピオイド類に加えて、即効性のブレークスルー・オピオイド類を緊急に用いる必要が生じることがありうる。
【0125】
突出痛または処置痛は、1ないし2分と短いことも或いは30分またはそれ以上と長いこともあるが、激しい期間は短く、それ故に、有効期間により一貫性があり予測可能であるともに、臨床的に有効な血漿中レベルをより迅速につくり出し、同時に短期間の痛み事象に対して過度のオピオイド投薬を避けるために限られた半減期をもつ、オピオイド製剤を提供することは大きな利益であろう。
【0126】
オピオイド類は、依然として最も強力な鎮痛薬からであるが、しかし、改善された形態、すなわち、副作用が最小限であって、患者による使用を医師が容易に追跡できるやり方で提供しうる形態が必要とされている。
【0127】
最新の治療法により、患者が制御する患者制御鎮痛法(PCA:patient−controlled analgesia)、硬膜外持続点滴(CEI:continuous epidural infusion)、他のタイプの急性痛制御、緩和ケアと痛みの制御、および在宅患者の痛み制御を一般に含む多くの治療介入を用いて、痛みの制御が試みられている。これらの方法が収める成功の度合は、制御の持続期間、治療の容易さ、および安全性対副作用の観点から様々である。
【0128】
急性痛の迅速な治療の必要性は、術後回復、関節リウマチ、フェイルドバック(failed back)、末期がん(すなわち、突出痛)などを含む、多くの異なった臨床状況で生じる。例えば手術後に、患者は初めの数日は激痛に苦しみ、その後は軽度から中程度の痛みの日々が続く。
【0129】
中程度から激しい術後痛を治療するために用いられる最も一般的な鎮痛薬は、IVモルヒネである。これは、「必要に応じて」看護師によってIV注入で患者に送達されるか、或いは一般的にはPCAポンプ中にモルヒネ注射器が置かれて、患者は、ロックアウト機能をもつボタンを押すことによってオピオイドを自己投与する。ヒドロモルフォンおよびフェンタニルのような他のオピオイド類も、このやり方で用いられることができる。
【0130】
急性痛の治療は、外来患者環境においても同様に必要である。例えば、多くの患者が慢性痛に苦しみ、痛みを処置するために、週または日に一度の頻度でオピオイド類を使用する必要がある。彼らは、慢性的な根底レベルの痛みを処置するために、長時間作用性の経口または経皮オピオイド調合剤をもつことができる一方で、厳しいレベルの突出痛を治療するために、しばしば短時間作用性のオピオイド類を必要とする。
【0131】
急性痛の治療は、多分に次善の条件下にある「戦場において」も同様に必要である。医療補助員または軍医は、しばしば、IVまたはIM投与に用いる注射針が不慮の針刺し、感染リスクなどを招きかねない、無消毒状態で激しい急性痛を治療することが求められる。経口オピオイド・タブレットは、緩和をもたらすのにしばしば60分かかり、これは激痛にあるヒトにとってあまりにも長い。
【0132】
多くの臨床環境において、用量を調整できて、安全で使いやすく、かつ非侵襲のやり方で有効に痛みを緩和し、然るべき期間にわたって急性痛、激痛、突出痛または間欠痛の緩和をもたらす薬物を投与するための、改善された手段が明らかに必要である。
【0133】
本請求項の方法およびシステムは、痛み(急性痛、間欠痛または突出痛)の治療に有効なスフェンタニルのような医薬活性物質を備える剤形を、ロックアウト、薬物投与に先立つユーザ識別手段、および中に貯蔵された剤形の保護手段のような機能を含む投与デバイスを用いて投与することに依存する。本請求項の方法およびシステムは、その結果として、安全性および有効性の両方の観点から、現在利用可能な治療様式に比べて大きな利益を提供する。
【0134】
VI.投与デバイス
小容量薬物剤形を経口腔粘膜投与するため投与デバイス、方法およびシステムが提供される。本投与デバイスは、典型的にハンドヘルドかつポータブルで、投与端をもつハウジングを備えており、一般に該投与端は、唾液の進入阻止または遅延および/または水分制御のための手段を提供するシュラウドのついた口吻部を有する。本投与デバイスは、ロックアウト手段およびユーザ識別手段のような安全機能をさらに提供する。
【0135】
本請求項の投与デバイス、方法およびシステムは、小容量剤形の口腔粘膜への送達を備える。本明細書に詳述される特定のデバイス、システム、方法論および剤形は、もちろん変化しうるので、本発明はそれらには限定されない。当然のことながら、本明細書に用いられる用語は、特定の実施形態のみを記載することを目的としており、本発明の範囲を限定する意図をもたない。
【0136】
唾液および水分進入の阻止/遅延
いくつかの実施形態において、本請求項の投与デバイスは、投与デバイス中への唾液の進入および水分の進入を最小限に抑えるか、またはなくすための手段を備える:(1)中にある剤形を濡らすのを回避すること;(2)中にある剤形の乾燥を保つように、投与デバイスに入るいかなる唾液も分離すること;(3)剤形が乾燥を保つように、投与デバイスに入るいかなる唾液も吸収または吸着すること;(4)剤形を気相および液相の水分から保護するために、唾液および水分がデバイスに入るのを阻止すること、または(5)それらの任意の組み合わせ。
【0137】
本投与デバイスは、デバイスの外側の周囲条件に起因する湿度の進入を防ぐおよび/または制御するための手段をもつことができる。
【0138】
唾液の進入を最小限に抑えるかまたはなくす、或いは他の水分が投与デバイスに入るのを防ぐための手段は、限定されることなしに、1つまたはそれ以上のフレキシブルまたは硬いシール、1つまたはそれ以上のフレキシブルまたは硬いワイパー、乾燥剤またはパッドのような1つまたはそれ以上の吸収物質成分の使用、手動または自動で開閉されるドアまたはラッチ、多段階送達システム、正の空気圧および気流、或いは剤形送達オリフィスと唾液を輸送できる口内粘膜組織との間に維持されたエアギャップまたは既定の間隔ないしバリア/シュラウドを含む。シュラウドは、舌または口腔粘膜が剤形の投与領域に接触する能力を制限し、それにより唾液の接触および進入を制御する。シュラウド内部およびバルブ/シール表面の「湿気」を抑制するか、またはなくすことによって、剤形とシュラウドまたはバルブ/シールとの間に付着を生じることなく剤形が投与される。
【0139】
湿度、唾液の進入、または他の水性液体への不慮の暴露のいずれかによる水分への暴露から薬物剤形を保護するために、本投与デバイス、および剤形をデバイス内に収納する容器またはカートリッジは、乾燥剤を含む。
【0140】
もし唾液または水分がデバイスに入った場合に、それらを捕捉するか或いは分離するための手段は、限定されることなしに、親水性のウィッキング物質または構成部分、吸収ないし吸着物質または構成部分、乾燥物質または構成部分、水分を集める別のトラックまたはチャンネル、水分を吸収剤または吸着剤に伝える別のチャンネル、或いはそれらの物質または構成部分の任意の組み合わせを含む。
【0141】
乾燥剤は、水に親和性をもつ固体、液体、またはゲルの形態の吸着剤であり、周囲から水分を吸収または吸着し、かくして身近な環境における水分を制御する。任意の市販の乾燥剤を用いることができる。市販の乾燥剤は、典型的にペレット、キャニスター、パケット、カプセル、粉末、固体物質、ペーパー、ボード、タブレット、粘着パッチ、およびフィルムの形態をとり、射出成形プラスチックを含めて、特定用途のために形成することができる。シリカゲル(けい酸ナトリウム、固体でゲルではない)、アルミノけい酸塩、活性アルミナ、ゼオライト、モレキュラーシーブ、モンモリロナイト粘土、酸化カルシウムおよび硫酸カルシウムなどを含む、多くの種類の固体乾燥剤があり、それらのいずれも本請求項の投与デバイスに用いることができる。異なった乾燥剤は、水分または他の物質に対して異なった親和性、並びに吸収または吸着に関する異なった能力、および速度を有する。同様に、異なった種類の乾燥剤は、異なった相対湿度で身近な周囲と平衡状態に達することになる。剤形および投与デバイス内部を水分から保護するための手段として、1つまたはそれ以上の乾燥剤を、口吻部に;剤形内または近傍に;送達ルート内または近傍に;剤形、タブレット・マガジンないしカートリッジ内または近傍に;投与デバイスの他の構成部分内または近傍に;用いることができる。該乾燥剤は、射出成形された投与デバイス構成部分として形成することができ、位置に圧入された圧縮乾燥剤、またはデバイス内外の任意の他の位置に存在する乾燥剤とすることができる。
【0142】
好ましい一実施形態において、乾燥剤は、カートリッジ側面の空洞に嵌め込まれる。乾燥剤の空洞には剤形スタックにつながる孔があり、剤形を乾燥剤に曝して乾燥状態に保つ。
【0143】
本請求項の投与デバイスは、剤形投与の間の投与デバイスへの唾液の進入または水分を最小減に抑えるか、またはなくすために、バルブ、パッド、シール、プッシュロッド休止ポジション、口吻部デザインおよびシュラウドを利用する。
【0144】
本請求項のデバイスに用いるためのバルブは、唾液および/または水分がデバイスに入るのを避けるのに十分なシール力を提供する、典型的にドーム/外套針タイプのバルブであり、投与中および剤形が投与された後に遠位オリフィスを閉じることによって、唾液の進入または水分を最小限に抑えるか、またはなくす機能を果たす。
【0145】
本請求項のデバイスに用いるためのパッドは、プッシュロッド表面から液体を除去するためにプッシュロッドに接触するか、または繋がるのに役立つ、様々な幾何学的形状を有する。かかるパッドは、典型的に親水特性を含み、液体をトラックおよびプッシュロッドから運び去ることによって唾液の進入または水分の進入を最小限に抑えるか、またはなくす機能を果たす。
【0146】
本請求項のデバイスに用いるためのシールおよびワイパーは、送達の間に薬物剤形およびプッシュロッドの周りに均一なシールを維持するように設計されており、これらは、投与の前、中および後にオリフィスおよびプッシュロッドのシールおよび拭き取りを行うことにより剤形およびプッシュロッドの周りをシールして、唾液の進入または水分を最小限に抑えるか、またはなくす機能を果たすフレキシブルな物質により特徴づけられる。
【0147】
本請求項のデバイスにおけるプッシュロッドの休止ポジションは、プッシュロッドを、カートリッジ出口から遠位にあり、かつ遠位の投与オリフィスから近位にある中間位置に置くことによって特徴づけられ、該休止ポジションは、投薬合間の休止時にプッシュロッドを乾燥剤、吸収剤を含む位置、すなわちプッシュロッドを乾燥させるチャンネルに存在させることによって、唾液の進入または水分を最小限に抑えるか、またはなくす機能を果たす。
【0148】
本請求項のデバイスに用いるための口吻部のデザインは、デバイスの使用および/または対象の口腔粘膜上へのチップの配置を助ける遠位のデバイス形状、典型的にS字型によって特性づけられる。本形状は、典型的にデバイスを適切に使用して、対象の口腔粘膜上、例えば舌下隙に剤形を置くことができるような曲線、角度、および幾何学的形状をもつ。
【0149】
本請求項のデバイスにおけるシュラウドは、デバイスと口腔粘膜および舌との間にバリアを形成する幾何学的形状、剤形送達のための起伏、および疎水性または親水性の内部をもち、口腔粘膜をバルブ領域および剤形に接触させないバリアをつくることによって、唾液の進入または水分の進入を最小限に抑えるか、またはなくす機能を果たし、剤形の投与を助け、かつ剤形のシュラウドへの付着を妨げる。本シュラウドは、剤形のシュラウドへの付着を抑制するために、丸い内部表面または他の幾何学的形状をもつことができる。本シュラウドは、舌または口腔粘膜が剤形の投与領域に接触する能力を制限し、それによって唾液の接触および進入を抑制する。
【0150】
図1A〜Eは、経口腔粘膜送達のために複数の剤形を保持するように構築された、投薬デバイスの一実施形態の様々な様態の概略図を示す。図1Aは、完全に組み立てられた、または一体化した本発明の投与デバイス11の概略図である;図1Bにおいて、投与デバイス11は、再利用可能なヘッド13およびディスポーザブルなボディー15を含む;図1Cにおいて、投与デバイス11は、カートリッジ17をさらに含む;図1Dにおいて、投与デバイス11は、バルブ33、口吻部31、掛け金ボタン19、パワートレイン・カップリング25、ハブロック21および投与ボタン23を含む;さらに図1Eは、再組み立てされた完全な投与デバイス11の概略図である。
【0151】
図2は、投与チップが、拭き取り/シールバルブ37、吸収剤パッド39、薬物乾燥チャンバ/水分伝達チャンネル43、チャンネル中の乾燥剤45、剤形67を含むカートリッジ17およびカートリッジ中の乾燥剤47の1つまたはそれ以上をもつシュラウド29を備える、例となる投与デバイスの概略図を示す。
【0152】
図3Aおよび3Bは、1つまたはそれ以上のシール33、35が、シュラウド29を通して、口腔粘膜の湿った、または濡れた表面と接触するのを防ぐ投与チップのための例となる幾何学的配置の概略図である。
【0153】
図4A〜4Dは、投与デバイス11の例となる口吻部31の概略図であり、該口吻部31は、シュラウド29、剤形67を投与するためのバルブ33、並びに剤形67を口腔粘膜に対して置き、投与後にデバイス11を取り出すときにこれを動かさないための切り欠き/起伏55を備える。
【0154】
デバイスへの唾液の進入および水分を最小限に抑えるための本請求項の手段は、貯蔵の間、例えば、経口腔粘膜投与の前または間に、剤形の完全性を維持するために重要である。
【0155】
本請求項の投与デバイスは、水分および/または湿度に敏感な薬物剤形を投与するために用いることができる。かかる場合に、薬物剤形のカートリッジは、湿度、液体水分、唾液、粘液などを含む気相および液相水分から薬物剤形を保護する機能を果たす。本カートリッジは、円筒状、ディスク状、らせん状、直線状であっても、秩序化していなくてもよく、または投与デバイスが制御されたやり方で投与できる薬物剤形の任意の集合形態であってもよい。未使用の薬物剤形が水分を吸収したり、或いは使用前に別なやり方で水分に曝されるのを防ぐために、カートリッジは、水分への暴露から薬物剤形をシールする手段を提供することができる。これは、1つの薬物剤形をカートリッジから投与したときに残された剤形を保護するシールが壊れずに残るように、個々の剤形が薄い不透水性の箔または不透水性物質で分離された、個別包装の薬物剤形を含むカートリッジを用いることによって達成することができる。代わりに、各々が分離されたシール区分に2つまたはそれ以上の剤形を一緒に包装するようなやり方で、カートリッジ内に剤形を包装してもよい。いくつかの実施形態において、カートリッジ内のすべての剤形を、箔シールされた一区分に一緒に包装してもよい。
【0156】
小容量薬物剤形を投与デバイス内に収納する薬物カートリッジは、隔膜、エラストマーシールまたはバルブ、スライド式、移動式、ヒンジ付きドアまたはバルブを用いて、或いは投薬デバイスに搭載されたときに別の構成部分からシールすることによって、水分をシールすることが可能である。このように、単一の再シール可能なシールは、単独に或いは剤形をカートリッジ外に送出するときに開くことができる。剤形がカートリッジから送出された時点で、水分または他の汚染物質がカートリッジ内に残された薬物剤形に損傷を与えるのを防ぐために、カートリッジ上の再シール可能なシールを再シールすることができる。カートリッジは、投薬デバイスに搭載されたとき、またはカートリッジから最初の剤形が送出された時点で壊れる、再シール可能でないシールをさらに有してもよい。
【0157】
他の実施形態において、カートリッジは、使用前または通常使用中のいずれかにカートリッジに浸入する水分を吸収または吸着するための乾燥剤または他の吸収剤ないし吸着材を含む。請求項の投与デバイスに用いるためのカートリッジは、個別にシールされた剤形、多重にシールされた剤形、再シール可能なシール、再シール可能でないシール、乾燥剤、吸収剤、または吸着剤の任意の組み合わせを含むことができる。一実施形態において、投与デバイス中に用いるためのカートリッジは、1〜5日間の治療に十分な薬物剤形、例えば、40剤形または48から72時間の治療に供するのに十分な薬物剤形を保持する。
【0158】
プッシュロッドのデザイン
図5A〜Dは、例となる投与デバイスを使用するための一連のフローダイアグラムであり、プッシャー・ロジックが示されている。図5Aは、搭載機能を示す;図5Bは、デバイス・キャリブレーションのロジックフローを示す。図6に関して、プッシュロッド51は、ポジション65から進んで、ポジション63で配送タブレット69を拾い上げ、さらにポジション61に進む。ポジション61において、デバイスは、配送タブレット69および/またはプッシュロッド51の存在を検出する。そうすることで、デバイスは、キャリブレーションされて、組み立て誤差、プッシュロッド長およびプッシュロッド端状態の変動に関わらず、配送タブレット69および/またはプッシュロッド51端の位置を知る。このキャリブレーションに続いて、プッシュロッド51は、配送タブレット69をポジション61から、配送タブレット69がデバイスから投与されるポジション57に進める。この動作の間に、デバイスは、配送タブレット69、プッシュロッド51、および薬物剤形67を識別することができる。配送タブレットは、デバイス・セットアップの間に新しいカートリッジから投与される最初のタブレットなので、この識別によってデバイスは、カートリッジが未使用なことをデバイス・セットアップ中に確認することができる。配送タブレット、プッシュロッド、および薬物剤形67を識別するための手段を提供する機能は、光学的、物理的、RF、電子的(抵抗性、容量性など)または磁気的であってもよい。先述のポジション65およびポジション57からのプッシュロッド51の前進は、連続的または断続的であってもよく、ポジション61で物理的に停止する必要はない。プッシュロッド51は、次にポジション57からポジション59まで退いて、デバイス11を準備完了ポジションに置くとともに、プッシュロッド51は残された剤形の下側に留まる。この位置で、プッシュロッド51は、剤形67がデバイス11から不用意に落下することを防ぐ。
【0159】
図5Cは、デバイスの投与ロジックフローを示す。図6を参照して、投薬コマンドに続いて、プッシュロッド51は、ポジション59からポジション65まで退いて、剤形67がプッシュロッド・トラック中に進むことを可能にする。プッシュロッド51は、次にポジション65から進んで、ポジション63で剤形を拾い上げ、その後ポジション57でデバイスから剤形67を投与する。ポジション63および57間のポジション61で、位置センサによって剤形67の存在が検出/確認される。プッシュロッドは、次にポジション57からポジション59まで退いて、それを準備完了のポジションに置くとともに、プッシュロッド51は残された剤形67の下側に留まる。この位置で、プッシュロッド51は、次の剤形67の投与前に乾燥することができると同時に、剤形67がデバイス11から不用意に落下することを防ぐ。
【0160】
図5Dは、デバイスの分解ロジックフローを示す。「分解」コマンドの後に、プッシュロッド51はポジション65に移動する。これは、任意の残された剤形67をプッシュロッドの干渉なしに取り出すことを可能にする。
【0161】
図6は、デバイス使用の間のプッシュロッド/剤形相互作用の段階を示す例となる投与デバイスの概略図である。図6にプッシュロッド51、剤形67、配送タブレット69、スプリング73および位置センサ71が示される。使用の間に、プッシュロッド51は、図6にも示され、図5A〜Dにさらに詳細に示されるように、ポジション57、59、61、63および65の間を移動する。
【0162】
投薬履歴/フィードバック
本デバイスのさらなる実施形態は、使用履歴情報を蓄積する能力、およびかかる情報を伝達する能力を含む。本デバイスは、一方向(ダウンロード)または双方向に情報伝達することができる。例えば、USBまたは任意の他の通信接続のような物理的接続インターフェースを通じて蓄積情報をコンピュータにダウンロードすることにより、情報交換を達成することができる。代わりに、ワイヤレスシステムを用いて情報通信してもよい。
【0163】
また別の実施形態において、本投与デバイスは、薬物使用の履歴をモニターして蓄積する用量カウント機能をもつ。かかる情報は、使用履歴情報、例えば、貯蔵および投与された剤形数および投与時間を含むことができる。
【0164】
キャリブレーション
本投与デバイスは、投与メカニズムの自己キャリブレーションが可能であってもよく、または該デバイスは、手動でキャリブレーションできてもよい。このプロセスに薬物剤形またはプッシュロッドと物理的に区別される1つまたは複数の特徴をもつ配送タブレットを用いることができる。これらの特徴は、デバイスのキャリブレーション精度が、剤形またはプッシュロッドを用いて達成できるのと比べて向上するように設計することができる。区別される特徴は、物理的、光学的、無線周波数(RF)、電子的または磁気的であってもよい。
【0165】
ユーザ識別機能
一様態において、投与デバイスは、指紋リーダ、光学的網膜リーダ、音声認識システム、顔認識システム、歯インプリント認識システム、視覚認識システム、またはDNAリーダのようなユーザ識別のための検出手段を備える。投与デバイスは、投与リクエストが認可または無認可いずれのやり方でなされたものかシステムが決定することを可能にする、ユーザを識別するための1つまたはそれ以上の手段を用いることができる。可能性をもつ多くの薬物および薬物剤形を有効に送達するためには、投与デバイスが、無認可の個人によって偶発的または意図的に使用されないことを確実にして薬物の偶発的または意図的な転用を防ぐことが重要である。かかるユーザ識別システムは、一人またはそれ以上のユーザを認識することが可能であり、例えば、入院患者の病院環境において、それが処方された患者並びに看護師および医師のような認可された医療提供者を認識するように、投与デバイスをプログラムすることができる。例えば、外来患者の家庭環境において、投与デバイスは、それが処方された患者にのみ応答することができる。
【0166】
本投与デバイスは、指紋識別、能動的または受動的RFIDタグであって、ブレスレット、ネックレス、クリップ、ベルト、ストラップ、粘着パッチ、インプラント、または位置を決めてタグを取り付ける手段につけたRFIDタグ、を用いたRFID検出、網膜識別、DNA鑑定、音声認識、パスワードまたはコード入力、物理的キー、電子または磁気キー、データまたは信号管路として人体または衣類を利用するパーソナル・エリアネットワーク識別、光学スキャナまたは顔認識、音波、亜音波または超音波識別、或いは個人を識別して身元を照合する任意の他の手段を含む任意のユーザ識別手段を用いることができる。
【0167】
ユーザ識別の一方法は、ブレスレット、ネックレス、粘着パッチ、衣類タグ、口腔取付具、例えば、歯科矯正固定具、ベルト、ストラップ、これらのいくつかの組み合わせ、または別の位置に取り付けた近距離(「近距離場」)の受動的RFIDを用いることである。RFIDタグを受信信号波長の約16%と概ね定義される「近距離場」で用いるとき、該タグは、リーダおよびタグアンテナ間を磁気的に結合する誘導動作モードで振舞う。近距離場は、少なくとも2つのことで特徴づけられる:第一は距離に伴う電界強度の急速な減少であり、第二は信号の強い指向性である。近距離場の信号強度は、10倍の距離当たり信号強度損失がおよそ60dBと非常に急速に落ち込む。送信機アンテナとRFIDタグアンテナとを良好に誘導結合させるために、各々のアンテナ中心を通る軸を近接近させて、2つのアンテナを平行面内に配置する。デバイスがRFIDタグに極めて近いときに強い信号強度(ロバストなユーザ識別)が与えられる。同時に、デバイスがタグから遠く離れていると与えられる信号が非常に弱いために、デバイスの使用を企てる患者以外の誰かが無認可でデバイスを使用するのを防ぐのに役立つ。この近距離場域で、アンテナを良好に位置合せして動作させることが望ましい。さらに、もしデバイスがRFIDタグに対して適正な向きで近接していなければ信号の受信が非常に難しいことから、確実な識別のために、信号が十分に強いごく短距離で動作させることが好ましい。アンテナ間の距離を近付けて適切に位置合わせするために、投与デバイスは、該デバイスに取り付けたRFIDリーダンテナが、例えば、リストバンドまたはブレスレット、ないし衿上の衣類タグ、或いは手、腕、頬、または他のところの粘着パッチに取り付けたRFIDタグアンテナに近接して適正に配置されるように、設計することができる。さらに、リストバンドまたはブレスレット上のRFIDタグアンテナは、ブレスレットが手首の上で移動または回転するのを防ぐ小さい粘着パッチを用いて、適切に位置合わせして保持することができる。
【0168】
また別の実施形態において、本投与デバイスは、入院患者(病院、クリニックなど)環境で用いるための13.56MHz振動数帯上またはその付近で動作する高周波RFIDリーダを用い、患者は、ディスポーザブルなブレスレットまたはリストバンドであって、もし該ブレスレットまたはリストバンドが外されるとRFIDタグ、アンテナ或いは関連回路の別の構成部分が損傷を受けるか、または破壊されて機能しなくなるように設計された、ブレスレットまたはリストバンド上にマッチングIDタグおよびアンテナを装着する。一例において、RFID通信の範囲は短く、好ましくは0インチと10インチとの間、より好ましくは0インチと5インチとの間、最も好ましくは0インチと3インチとの間であり、付加的に方向性であってもよく、意図された患者が適正に使用することは、容易で信頼性が高いが、一方で同時に、別の個人が無認可で使用することは、困難、非常に困難、または不可能にすることができる。
【0169】
ロックアウト
本投与デバイスは、ロックアウトを提供し、患者は、次の一定期間デバイスをロック解除するために医師または他の認可された介護人と通信することを要求される。このように、デバイスおよびドックは、より十分な医師の監督およびケアマネジメントによって安全な薬物投与を提供する。
【0170】
本投与デバイスは、ロックアウト時間のみならず、最初の用量およびその後の用量の両方を調整するための手段を提供する。最初の用量およびロックアウト時間は、患者の反応、治療の持続期間などに依存して後に調整することができる。
【0171】
一請求項の投与デバイスに対する、時間を定めた最初のロックアウト期間は、典型的に約1分から約60分まで、3分から40分まで、または約5分から約30分までであり、特別な場合に1分から60分までの任意の1分間隔、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59または60分に設定される。
【0172】
ある場合に、投与デバイスは、投薬の合間に一定のロックアウトをもち一定期間後にシャットダウンを示すことができる。他の場合に、ロックアウト時間は、プログラム可能なロックアウト時間である。ロックアウト時間は、一定時間のロックアウト間隔、所定のロックアウト間隔、所定の可変ロックアウト間隔、アルゴリズムによって決定されるロックアウト間隔、或いは遠隔コンピュータまたはドッキング・ステーションからデバイスに通信される可変ロックアウト間隔とすることができる。
【0173】
付加的な機能
本投与デバイスは、機械的、光学的(例えば、バーコード)、電子的(例えば、マイクロチップ)、磁気的、無線周波数、化学的、またはカートリッジを検出して識別する他の手段によって、特定のカートリッジを認識する能力を提供することができる。例となる一実施形態において、薬物を含むカートリッジは、本投与デバイスの1つのセンサまたはスイッチ、或いは一連のセンサまたはスイッチによって物理的に検出される、カートリッジ上の物理的キー入力細部を含む。さらに、本投与デバイスは、情報交換するためにカートリッジと一方向または双方向に通信することができる。かかる情報は、薬物名、投与力価、使用情報、ロックアウト期間、製造ロット番号、使用の適用、副作用、薬物間相互作用、製造日、有効期限、シリアルナンバー、カートリッジ内の用量数、または任意の他の関連情報を含むことができる。本投与デバイスは、使用日、医療提供者または他のユーザ識別、使用済み用量数などの情報を、読み取るのに加えてカートリッジに書き込むことができる。
【0174】
本投与デバイスは、中に含まれる剤形に機械的保護を提供して破壊、かけ、水和などを防ぐことができ、それによって中に含まれる無損傷の剤形を投与することが可能である。これは、小さい、脆くて砕けやすい剤形にとって特に重要である。
【0175】
本投薬デバイスは、電池、キャパシタ、燃料電池、または他の電源によって電力供給することができ、または電力を必要としないが、しかし手動で作動させてもよい。
【0176】
いくつかの実施形態において、本投与デバイスは、機能上または安全上の問題が生じたとき、アラームまたは他の通知を発することができる。アラームまたは他の通知は、投与デバイス、ドックまたは他の周辺デバイス、コンピュータ上の、或いは有線または無線ネットワークによる警報を始動させるか、ないしは他の遠隔デバイスに警報することができる。アラームまたは通知は、聞こえても、触れても、見えてもよく、或いは1人またはそれ以上の個人に通知する他の手段を用いてもよい。
【0177】
ドッキング・ステーション
ある実施形態において、本デバイスは、ポータブルまたは固定のドッキング・ステーションであって、デバイスに問い合わせて、投薬の合間にそれをリセットし、適正にアクセスされていないときにはそれをロックして投薬法を制御することができる、ドッキング・ステーションを含む。本投薬デバイスは、医師または介護人と、ドックを通じて、或いは有線または無線の通信手段によって通信することができる。
【0178】
本投与デバイスは、異なった種類の認可ユーザ、例えば患者、看護師、医師、薬剤師または他の認可された医療またはヘルスケア要員に対して、1つまたはそれ以上のレベルのインターフェースを用いることができる。これらの異なったインターフェースは、キーパッド、ボタン、グラフィック・アイコンおよびインストラクション、光、LED、モノクロまたはカラーグラフィックスまたはテキスト表示、タッチスクリーン、LCD、音、触覚フィードバック、音声認識インターフェース、および他の入出力デバイス並びに手段のような構成要素を含むことができる。ユーザ・インターフェースの活動またはモードは、投与デバイスの動作モードによって、パスワードまたはコード入力のようなユーザによるログインまたはアクセス活動によって、ドック、コンピュータ、またはネットワークからの投与デバイスの接続または切断によって、或いはキーおよび/またはRFIDタグないし同様の組み合わせのような認可されたアクセスキーの検出によって、決定されることができる。インターフェース・モードを変えると、上述の様々なインターフェース構成要素における機能性が活性化、不活性化、または変化いずれかして、デバイスの機能性を変化させることができる。付随する機能性が個々に異なる1つまたはそれ以上のインターフェース・モードをもつことによって、様々な用途に対してデバイスを最適化することができる。
【0179】
基地局
いくつかの実施形態において、本投薬システムは、使用の合間に投薬デバイスおよびポータブル・ドッキングFOBを再充電するための基地局を含む。この基地局は、多数の投与デバイスおよび/またはFOBの電池または燃料電池を同時に再充電することができる。投薬デバイスおよびFOBを再充電するのに加えて、基地局は、次の機能性の1つまたはそれ以上を提供することができる:周辺デバイス、コンピュータまたはネットワークへの無線または有線接続性;再充電しているデバイスの充電状態に関するフィードバック;投薬デバイスまたはFOBに関するデータを閲覧、追加、削除、または変更するためのインターフェース;多数の投薬デバイスおよび/またはFOB間のデータを同期させる手段;並びに投薬デバイスおよび/またはFOBに関する診断テストを行なうための手段。
【0180】
単回および複数回用量アプリケータ
本発明は、薬物が所定の送達部位(例えば口、舌下隙など)に送達されるように、スフェンタニルを備える剤形を患者の口腔粘膜に送達するためのディスポーザブルなアプリケータを提供する。
【0181】
本発明の一取り組みにおいて、剤形は、単回用量アプリケータ(SDA)を用いて口腔粘膜に送達される。本剤形は、チャイルド・レジスタントな投薬デバイスまたは包装の中に提供されて、例えば舌下腔に、送達される。本剤形は自己投与されてもよく、または代わりに、本剤形はデバイスの有無にかかわらず助けを得て投与されてもよい。
【0182】
一実施形態において、固体タブレット、液体カプセル、ゲルカプセル、液体、ゲル、粉末、フィルム、細片、リボン、スプレー、ミスト、パッチ、または任意の他の適切な薬物剤形として提供される薬物剤形に対して、SDAが用いられる。
【0183】
本SDAは、剤形を中に含んでもよく、付着または添付された薬物剤形を有してもよく、溶解した剤形を中に有してもよく、水分、湿度および光に対するシールを提供することができる。本単回用量アプリケータは、剤形を薬物送達のための然るべき部位に置くために、患者、医療提供者、または他のユーザが手で操作することができる。
【0184】
本発明を実践するとき、タブレットまたは他の剤形を手、口内、舌下に、または特定の薬物送達に必要な他の然るべき部位に送達するために、単回または複数回用量アプリケータ、或いは投薬デバイスを用いることができる。
【0185】
一実施形態において、単回または複数回用量アプリケータ、或いは投薬デバイスは、剤形を口腔粘膜、例えば、舌下隙に送達するために用いられる。
【0186】
本投与デバイス内の剤形は、投与に先立って乾燥が保たれ、投与時点で単一の剤形がデバイスから口内、例えば、舌下隙に投与されて患者の唾液がタブレットを濡らし、タブレットの崩壊/侵食および薬物送達を可能にする。
【0187】
本SDAは、鉗子、注射器、棒またはロッド、ストロー、パッド、カプセル、カップ、スプーン、細片、チューブ、アプリケータ、ドロッパ、パッチ、粘着パッド、粘着フィルム、噴霧器、アトマイザー、或いは対象の口腔粘膜、例えば、舌下隙における口腔粘膜に単一の薬物剤形を適用するのに適した任意の他の形態として提供することができる。当業者によって理解されるであろうように、本SDAのデザインは、投与の過程で薬物剤形の完全性が維持されるやり方で、タブレットのような薬物剤形を口腔粘膜上の所望の部位、例えば、舌下隙に置くのに有効でさえあれば、変化してもよい。本SDAは、使用後に投薬デバイスが唾液または他の汚染物質で汚染されるリスクをなくすために処分される。
【0188】
舌下投与のために、小容量剤形がSDAを用いて舌下、一般に舌小帯近傍に置かれることにより舌下投与される。
【0189】
本剤形は、剤形を置く窪み(「ブリスター」)を中にあり本明細書で「ブリスターパック」と呼ばれる、成型プラスチックまたは積層プラスチックからなる包装の中に提供することができる。成形部分をシールするために、カバー、通常は積層材または箔が用いられる。ブリスターパックは、プリフォームまたは成形部分を持っても持たなくてもよく、任意の種類のSDAを包装するために用いることができる。
【0190】
かかるブリスターパックは、チャイルド・レジスタントな複数薬物ディスペンサー(MDA)の中に提供されることができ、該ディスペンサーは、中に収納された剤形を投与する機能を果たすこともでき、或いは多数のSDAを貯蔵するために用いることもできる。
【0191】
図15A〜C、図16A〜F、図18A〜C、並びに図19AおよびBは、本発明のSDAの例となる実施形態の概略図である。
【0192】
一つの取り組みにおいて、本発明は、ハウジング内の薬物剤形67、およびハンドル131を含む、ブリスターパック151を備えるディスポーザブルな単回用量アプリケータであって、例えば、図16Bおよび16Dに示されるように、箔シール135のような裏張りが剤形67およびハンドル131を覆うアプリケータを提供する。
【0193】
一実施形態においては、ディスポーザブルな単回用量アプリケータ、ハウジングまたはチューブ129およびハンドル131の組み合わせがスプーンの形状をもつ。
【0194】
剤形67のためのハウジングまたはチューブ129は、対象に投与するための剤形67の単位用量を収容するブリスターパック151である。剤形67は、箔または他の種類のシール135によって、ブリスターパック151中にシールされる。
【0195】
いくつかの実施形態において、箔または他の種類のシール135は、剤形67の投与に先立って除去され、ハンドル131は、剤形67が口腔粘膜に接着するように、対象の口腔粘膜の然るべき部位に剤形67を置くために用いられる。例えば、図16B、16D、16Eおよび16Fを参照。他の実施形態において、箔または他の種類のシール135は、目打ちされていて、アプリケータ123の投与に先立って目打ち149で折り曲げることにより剤形67の投与前に除去され、剤形67は、ハンドル131が用いて対象の口腔粘膜の然るべき部位に置かれる。例えば、図19AおよびBを参照。これは、一回に1つの薬物剤形67のみの取り扱うことを可能にして、他の個別にシールされた薬物剤形67が唾液、湿度などに曝されることを防ぐ。
【0196】
ハンドル131を含むディスポーザブルなアプリケータ123の箔または他の種類のシール135は、積層プラスチック箔、ペーパー、プラスチックまたは他の覆いの単一片でできており、すなわちハウジングまたはチューブ129のみ、或いはハウジングまたはチューブ129およびハンドル131の両方の背面に跨るアプリケータタブ147が、ブリスターパック151または他の容器中の剤形67を効果的にシールする。
【0197】
ハンドル131は、剤形67に触れることなく、剤形67を適切に置くことを可能にする。
【0198】
裏当てで連結されるか、或いは複数回用量アプリケータ137に収容された個別の単回用量アプリケータの一組として、複数の単回用量アプリケータを提供することができる。
【0199】
図14Aおよび14Bは、薬物剤形を送達するための単回用量アプリケータ123投与デバイスの一実施形態を示す。図14Aの投与デバイスは、薬物剤形67を投与する準備のできた単回用量アプリケータ123を示す。この実施形態の一様態において、ユーザが単回用量アプリケータ125を抓むと図14Bに示されるようにアプリケータが開いて薬物剤形67が投与される。
【0200】
図15A〜Cは、チューブ129の形作られたアプリケータ、栓シール127、ハンドル131(例えば、人間工学的なハンドル)、および単一の剤形67からなる単回用量アプリケータ123の実施形態を示す。図15Aは、使用前のシールされた配置における単回用量アプリケータ123を示す。図15Bは、栓シール127が除去されて開口133を生じ、使用の準備ができた単回用量アプリケータ123を示す。図15Cは、剤形67を口腔粘膜上、例えば、舌下隙に投与するために傾けた単回用量アプリケータ123を示す。
【0201】
図16A〜Fは、単回用量アプリケータ123のいくつか代わりの実施形態を示す。これらすべての図では、アプリケータシール127が壊されて薬物剤形67が対象の口内、例えば、舌下の口腔粘膜近傍に落下して剤形が舌下に置かれるように、アプリケータが傾けられる。図16Aは、チューブ129下の軸方向に位置したハンドル131をもつチューブ状アプリケータ129を示す。図16Bは、剤形67を置くのに先立ってアプリケータ包装141を開けるために剥がされる箔シール135をもつ、サーモフォームまたはブリスター包装151として形成されたアプリケータを示す。図16Cは、剤形67を置くのに先立ってシールを破るために壊されるチューブ129であるアプリケータを示す。図16Dは、シール135を剥ぎ取った後に、薬物剤形67を口腔粘膜上に置くためにブリスターパック151を保持して傾けることができるようにハンドル131をもつ、ブリスターパック・チューブ151タイプの剤形141を示す。図16Eおよび16Fは、小児向けに設計された単回用量アプリケータ123用にそれぞれ花または動物のような形をしたハンドル131をもつ、ブリスターパック151タイプの包装を示す。他の単回用量アプリケータの形状は、漫画のキャラクター、動物、スーパーヒーローまたは小児用の他の然るべき形状を含むこともできるであろう。
【0202】
図23Aは、平坦で硬いアプリケータであって、剤形をもつアプリケータ端部が舌下に置かれたときに接着剤が溶けて、剤形67は舌下隙のような口腔粘膜上に置かれ、かつアプリケータは取り去ることができるように、例えば、速溶性で摂取可能な粘着性物質で付着させた剤形67を端部にもつ、アプリケータ123を示す。図18Bは、薬物が含浸されており、物質およびからの投与量マトリックスを形成する透水性物質でできたアプリケータ123を示す。このアプリケータ123の含浸された端部が口内の口腔粘膜上に置かれたときに、唾液の水分が薬物を溶解させて経粘膜的にそれを送達する。図18Cは、フィルム溶解型剤形145と、複数のフィルム溶解型剤形143を内部にもつ剤形包装とを示す。フィルム溶解型剤形143は、包装141から取り出されて口腔粘膜上、例えば、舌下隙内に置かれ、そこで溶解して薬物が経粘膜的に送達される。
【0203】
図19A〜Bは、単回用量アプリケータ123の一実施形態に用いられる2つの段階の説明図を示す。図19Aは、2つのアプリケータタブ147、2つの目打ち149、および剤形67を含むブリスターパック151をもつ使用前の配置のアプリケータ123を示す。剤形67を投与するために、2つのアプリケータタブ147を目打ち149で下向きに曲げてハンドル131を形成し、さらにシール135を剥がしてブリスターパック151を顕現させて、剤形67が口腔粘膜上、例えば、舌下隙に落下することを可能にする。
【0204】
また別の実施形態において、本発明の投薬デバイスは、カートリッジ中に、または個別包装された複数のSDAを含むことができ、患者、医療提供者、またはユーザが使用するために、単一の薬物剤形を含む単一のSDAを投与することができる。本投薬デバイスは、本発明に記載される単一の薬物剤形を投与するのに有益であろう同じ方法おなじ機能を用いて、単一のSDAを投与することができる。
【0205】
さらにまた別の実施形態において、複数回用量アプリケータ137は、1つまたはそれ以上の薬物剤形67または単回用量アプリケータ123、電池のようなポータブルな電力手段、プリント回路基板、データ接続性手段、およびユーザ・インターフェースを備えるデバイスである。この実施形態において、本投薬デバイスは、次の機能の1つまたはそれ以上を実行する能力を含むことができる:投薬履歴を記録する、指紋識別、RFID、音声認識などの手段によってユーザ識別チェックを行う、投薬履歴を別のデバイス、コンピュータまたはネットワークに転送することを可能にする、および/または用量投与間のロックアウト期間を提供する。
【0206】
図17は、各々が個別に単回用量アプリケータ123に包装された、投与薬物剤形67を送達するための例となる複数回用量アプリケータ137の概略図である。
【0207】
図20A〜Dは、単回投与アプリケータ(SDA)の付加的な例の概略図であり、以下のものを含む;掛け金19を解放したときに、SDAはもはや薬物剤形67を保持せずにユーザが口腔粘膜上に置くことができるように、薬物剤形67がSDA123の2つの側面153間に保持されたピンセットまたは逆ハサミ型SDA(25A);ユーザがスライダーあるいはピストン159を押した155ときに薬物剤形67がチャンネル端から押し出される、円形チャンネルをもつ注射器型SDA(25B);ユーザがスライダー159を押した155ときに薬物剤形67がチャンネル端から押し出される、長方形チャンネルをもつ押し出し型SDA(25C);または、薬物剤形67がポケット161中に保持され、ユーザがスライダー159を引いた157ときに薬物剤形67へアクセス可能になるスライダー型SDA(25D)。
【0208】
図21A〜21Dは、使用に先立って複数のSDA123を貯蔵するための複数回用量アプリケータ(MDA)137または容器の概略図を示し(図21A);例示される実施形態において、MDA137の上部カバーには、個別にSDA123を取り去るためのスロットがあり(図21B);各個別のSDA123は、薬物剤形67を備え(図21C);該SDA123は、薬物剤形67が舌下の舌下隙に置かれることを容易にする(図21D)。
【0209】
VII.デバイスを用いて小容量剤形を送達するための方法およびシステム
小容量剤形、例えば、スフェンタニル含有剤形を、デバイスを用いて送達するための方法およびシステムが提供される。図7は、小容量薬物剤形を投与するための投与デバイスまたはシステムに含むことができる様々な構成部分を図解する構造接続図を示し、分離したヘッド13、ボディー15およびカートリッジ17をもつデバイス、ポータブル・ドッキングfob113、患者RFID115および基地局117が含まれている。
【0210】
RFIDタグ、投薬デバイス、基地局/ドックおよび医療提供者のパーソナルコンピュータ・システムを含む投薬システムにおける通信であって、投薬デバイスがドック経由、或いは有線または無線の通信手段によって医師または介護人と通信することができる通信の一様態を説明するブロック・ダイヤグラムが図8Aに示される。
【0211】
RFIDタグ、投薬デバイス、ポータブル・ドッキングfob、基地局および医療提供者のパーソナルコンピュータを含む投薬システムにおける通信のまた別の様態を説明するブロック図が図8Bに示される。投薬デバイスは、一定間隔で医師に使用情報および患者の呼吸状態または血圧に関する情報を提供するために、有線または無線の通信方法によってFOB経由で医師または介護人と通信することができる。FOBは、医師または介護人の首から懸けられるようにひもに取り付ける改造を行うこともできる。
【0212】
本投与デバイスの例となる機能は、以下を含む。一実施形態において、ヘッド、ボディー、およびカートリッジは、デバイスのハンドヘルド部分を備える。このデバイスの組み立ては、ヘッドとボディーを切り離すための掛け金、および患者が用いるための投与ボタンを有する。本デバイスは、ロックアウト状態、エラー、および電力を示す光も有する。この実施形態において、薬物剤形を含むカートリッジおよびボディーはただ一回のみ使用される。
【0213】
本システムは、ハンドヘルドで患者のデバイスに依存せず、かつ医療専門家のみが用いるためのポータブル・ドックを備えることができる。ドックは、患者のデバイス使用に関するより詳細なクエリー、デバイスデータのアップロード能力、ヘッド/ボディーおよびテザーのロック解除、患者に投薬するためのロックアウト・オーバーライド、およびより大きい読み取り表示のような、より高レベルの機能を可能にすることができる。ドックは、患者のデバイスのセットアップおよび停止にも用いられる。
【0214】
本システムは、ドックによって活性化されるRFIDブレスレットも備えることができ、該ブレスレットは、患者によって装着され、正しい患者しかもその患者のみに対して投与を成立させて制御する。この機能によって他者によるデバイスの使用が禁じられる。
【0215】
本システムは、ドックおよびヘッドを充電するために用いられて、かつ新しいソフトウェアが利用可能になったとき、または新しいユーザがシステムにプログラムされるときにヘッドおよびドックをアップデートするためにも用いられる再充電拠点をさらに備えることができる。
【0216】
薬物剤形は、一般的に投与に先立ってデバイスに搭載される一回使用のディスポーザブルなカートリッジの中に提供される。
【0217】
例となるデバイスのためのセットアップ・インストラクションは、次のステップを含む:
デバイスヘッドおよびドックを再充電拠点で充電する。
【0218】
デバイスボディーおよびリストバンドを包装から取り出す。
【0219】
デバイスヘッドおよびドックを充電ステーションから取り外す。
【0220】
カートリッジが「カチッと鳴って」確かに所定の位置に固定されるようにデバイスボディーに挿入することによって、カートリッジを搭載する。
【0221】
(カートリッジをもつ)デバイスボディーをヘッドに取り付ける。
【0222】
組み立てられたデバイスのパワーボタンを押して、システムに電源を入れる。
【0223】
ドックのパワーボタンを押して、ドックに電源を入れる。
【0224】
組み立てられたデバイスをドックのプラグに差し込む。
【0225】
医療専門家が、ドックをロック解除するために彼らの指紋をスキャンするか、または固有のパスワードを入力する。
【0226】
デバイスはカートリッジ上のラベルを読み込み、ドックはセットアップ情報、例えば、薬物名、タブレット量、薬物濃度、プリセットされたロックアウト時間、使用持続期間(72時間)、およびヘッドの電池状態を表示する。
【0227】
カートリッジから情報が読み込まれてドック上に表示された後、医療専門家は、すべての情報が正しいことの確認を要請され、かつ情報を検証するための証人を必要とする。
【0228】
ドックは、患者のリストバンドがデバイスに近づけられることによって、リストバンドがデバイスとペアを成すことを必要とする。
【0229】
デバイスは、バンドを読み取って、バンド番号の確認;番号の選択および確認をリクエストする。
【0230】
患者ID、すなわち患者の医療記録番号がドックに入力される。
【0231】
リストバンドが患者の手に置かれて、デバイス動作のために用いられる。
【0232】
次に、ドックは、プラスチックの初期化タブレットまたは「配送タブレット」を投与する準備ができたことを示す。
【0233】
確認されると、デバイスは、プラスチックの初期化タブレットまたは「配送タブレット」を投与する。このステップは、投与メカニズムのキャリブレーション、および使用カートリッジの始動のためにデバイスによって用いられ、医療専門家が、適正な使用について検証して「配送」またはプラシーボ型タブレットを用いて患者をトレーニングすることを可能にする。
【0234】
プラスチックの初期化タブレットまたは「配送タブレット」が投与される時点で、ドックは、プラスチック・タブレットが投与されたことを確認する要求を医療専門家に行う。
【0235】
確認後に、デバイスの使用準備ができたことをディスプレイが示す。
【0236】
ある場合には、テザーをドック経由でデバイスに接続することができる。ドックは、必要に応じたテザーのロックおよびロック解除を医療専門家に許可する。
【0237】
もし患者が本デバイスを用いて薬物剤形を自己投与する場合、患者は使用に先立ってトレーニングを受ける。
【0238】
本請求項のデバイスおよびシステムの使用例が実施例6〜8に示される。
【0239】
VIII.ヒトに関するインビボ研究
本明細書は、スフェンタニルおよびアルフェンタニルが、本請求項の小容量剤形を用いて舌下経路により投与される研究に基づいて動物およびヒトで得られた薬物動態データを提供する。
【0240】
ヒトの臨床研究は、健康なヒトボランティアを用いて行った。以下の実施例1に詳述される研究は、12人の対象(6人の男性および6人の女性)について、
3.7mcg、7.5mcgまたは15mcgのクエン酸スフェンタニルにそれぞれ対応して2.5mcg、5mcgまたは10mcgいずれかのスフェンタニル塩基を含む舌下スフェンタニル剤形を用いて行った(表1を参照)。すべての添加剤は、「医薬として許容可能」(不活性)であり、GRSすなわち「一般に安全とし認められる」状態を有する。
【0241】
舌下使用のために設計されたスフェンタニル剤形を、持続点滴としてIVカテーテルを通じて10分間にわたって投与したIVスフェンタニルと比較した。血漿サンプルは、離れた部位で異なったIVカテーテルから抽出した。検査は、高、中、および低品質管理サンプル濃度において良好な日間精度を示した。
【0242】
この研究のための剤形は、すべての対象において10〜30分の間に浸食された。各々のスフェンタニル剤形を12人の健康なボランティアの舌下腔に置いた後、非常に一貫性のある薬物動態プロフィルが得られた(図9および表2を参照)。3つすべての投与量の単回投与に対して、IV投与と比較したバイオアベイラビリティは平均して91%であり、市販のフェンタニル経粘膜調合剤ActiqおよびFentora(それぞれ47%および65%‐Fentora添付文書)に対する測定値よりはるかに優れている。この高いバイオアベイラビリティは、侵食時間を含むがそれには限らない多くの要因がありうるとはいえ、小さいサイズの剤形が唾液の生成をなくして薬物の嚥下を制限し、GI経路による薬物吸収に特有の低いバイオアベイラビリティが回避されると思われる。FentoraおよびActiq両方の添付文書は、それぞれ薬物用量の少なくとも50%および75%が唾液によって嚥下されると主張しており、両方ともに本請求項の剤形より低いバイオアベイラビリティを示す。
【0243】
本臨床研究に用いた剤形は、ActiqまたはFentora薬用キャンディのごく一部に当たるおよそ5マイクロリットルの容量(5.5〜5.85mgの質量)をもつ。実施例4に記載のイヌに関する研究は、スフェンタニルが非常に低いGIバイオアベイラビリティ(12%)をもつことを実証しており、それ故に、経口腔粘膜経路によって投薬されるスフェンタニル剤形のバイオアベイラビリティの高さに鑑みて、本データは、薬物の75%以上が経粘膜的に吸収されるという結論を支持する。それ故に、薬物のうち嚥下されるのは25%以下であり、FentoraまたはActiqの嚥下の割合よりはるかに低い。
【0244】
重要なことに、このバイオアベイラビリティは、患者に送達される全薬物の一貫性とも関係する。例えば、スフェンタニル剤形10mcgに対する血漿中薬物の全曲線下面積(AUC0‐無限大)は、0.0705±0.0194hr*ng/ml(平均±標準偏差(SD))であった。このSDは、全AUCの27.5%でしかない。フェンタニル製品の変動係数、Fentora(AUCは45%)およびActiq(AUCは41%;Fentora添付資料)、一方で本請求項の舌下スフェンタニル剤形に対する変動係数は40%より小さい。それ故に、スフェンタニル剤形は、対象に送達された全用量のバイオアベイラビリティがより高いのみならず、より一貫性がある。
【0245】
スフェンタニル舌下剤形は、投与後早期における一貫性のある血漿中薬物レベルの観点からもより優れている。10mcgのスフェンタニル剤形で得られたCmaxは、27.5+7.7pg/mlであった。Cmaxの変動係数は、それ故に28%でしかなかった。FentoraおよびActiqのCmaxは、薬物のGI摂取における変動性の影響を受ける。Fentoraは、1.02±0.42ng/mlのCmaxを報告しており、それ故にCmaxの変動係数は41%である。Fentoraの様々な用量に対する変動係数の範囲は、41%から56%である(添付文書)。ActiqのCmaxの変動係数は、33%と報告されている(Fentora添付文書)。
【0246】
急性痛の治療には、迅速かつ一貫性のある痛みの緩和の作用発現が重要なので、優れたバイオアベイラビリティおよび血漿中濃度の一貫性に加えて、Cmaxまでの時間、Tmaxとも呼ばれる、が重要である。10mcgのスフェンタニル剤形に対するTmaxは40.8±13.2分(範囲19.8〜60分)であった。Fentoraに対して報告された平均のTmaxは46.8分で範囲は20〜240分である。ActiqのTmaxは90.8分、範囲は35〜240分である(Fentora添付文書)。それ故に、スフェンタニル剤形における鎮痛作用発現の一貫性は、FentoraおよびActiqより著しく改善されており、Tmaxの最も遅い作用発現について400%低減された。
【0247】
急性痛、特に急性の突出痛の治療において重要なのは、一貫性があって相対的に短い薬物半減期である。10mcgのスフェンタニル剤形の血漿中消失半減期は1.71±0.4時間であり、これは、痛みの様々なレベルに合わせて薬物用量を調整することを可能にする。もし突出痛事象が1.5時間より長く続くならば、そのときに患者は、もう一つの剤形を投与することができる。ActiqおよびFentoraの血漿中消失半減期は、最低用量に対してそれぞれ3.2時間および2.63時間である。より高い用量における半減期は、これらの薬物で実質的に増加し、その結果としてこれらの薬物における用量調整の可能性は制限される。
【0248】
まだ開発中であるとはいえ、公開データが、本明細書に提示されるスフェンタニルの薬物動態データを速溶性のフェンタニル舌下薬用キャンディであるRapinylと比較することを可能にする。上述のように、本請求項のスフェンタニル剤形に対して観測されたバイオアベイラビリティは平均91%であり、これと比較してRapinylについて公開されたバイオアベイラビリティは、およそ70%である(Bredenberg,New Concepts in Administration of Drugs in Tablet Form(タブレット形態の薬物投与における新しいコンセプト),Acta Universitatis Upsaliensis,Uppsala,2003)。Rapinylに関するAUC(0-無限大)の変動係数は、用量に依存して25〜42%の範囲にあるが、一方で本請求項の10mcgのスフェンタニル剤形の変動係数は27.5%である。この高いバイオアベイラビリティは、本スフェンタニル剤形が、用量に関わらず一貫して低いAUCの変動係数をもち、Rapinylではそれが正しくないことが示唆される。事実、本明細書に例示されるスフェンタニルの3つすべての用量(2、5、および10mcg)に対するAUCの変動係数は、平均して28.6%であり、観察された低い変動係数が用量に依存でないことを実証する。
【0249】
RapinylのCmaxの変動係数は、用量に依存して34〜58%の範囲で変化する。本明細書に提示されたデータが示すように、10mcgのスフェンタニル剤形を投与した結果として得られるCmaxは、変動係数が28%でしかなく、2、5、および10mcgの用量に対するCmaxの平均変動係数は、29.4%であり、用量による変動性がごく少ないことを示唆した。同様に、Rapinylに関するTmaxの変動係数は、用量に依存して43〜54%の範囲にあり、一方で本発明者のスフェンタニル剤形ではTmaxに関するこの変動係数が、3つすべての投与力価にわたって平均して29%でしかない。舌下スフェンタニル剤形で達成されるこの一貫性のある作用発現では、血漿中レベルが上昇する時間幅がより限られるので、3つの対照薬のいずれと比較しても、より安全な再投薬範囲が可能である。
【0250】
加えて、Rapinylは、FentoraおよびActiqと同様に、本請求項のスフェンタニル剤形より長い血漿中消失半減期(用量により、5.4〜6.3時間)を示す。スフェンタニル剤形の血漿中消失半減期は、ヒトに単回経口腔粘膜投与した後に1.5〜2時間の範囲にあり(表2)、このことから用量の調整、および過量投与の回避が可能になる。当業者に理解されるであろうように、例示された剤形について本明細書に記載される半減期は、所与の剤形をつくるのに用いる製剤中の成分および添加剤の相対量を変更することにより調整することができる。このヒトの研究では、舌下スフェンタニル剤形の繰り返し用量投薬によって血漿中レベルを高めるための用量調整能力についてもテストした。
【0251】
5mcgの剤形を10分毎に4回繰り返して投薬した結果として、96%のバイオアベイラビリティが得られ、血漿中レベルを高めるための繰り返し投薬は、高いバイオアベイラビリティをなお維持しつつ、可能なことを示した。術後痛またはがんの突出痛のいずれを治療するにせよ個人特有の痛みの緩和レベルに合わせて、効率的に投与量を調整できることが重要である。
【0252】
舌下スフェンタニル剤形が生成するPK曲線のまた別の様態は、安全性および有効性の両方にとって重要な一貫性のある血漿中レベルを、ある期間にわたって可能にするプラトー相である。IVボーラス投与(動物実験 実施例2〜5を参照)または本発明者のヒトの研究における10分のIV点滴(実施例1および図9)のいずれと比較しても、スフェンタニル剤形のPKプロフィルは明らかにより安全である。急速で高いCmax血漿中レベルが回避されている。呼吸抑制を発生させるオピオイド類の能力に鑑みて、PKプロフィルにおけるこれらの高いピークを避けることは有益である。
【0253】
剤形の投与後に測定された血液中スフェンタニルレベルにおける持続的プラトー相を明らかにする重要な数学的比率は、Cmaxの50%以上での消費時間を、その薬物に関する既知のIV終末消失半減期で除したものである:
【0254】
【化1】

消失半減期は、分子固有の特性であり、舌下経路における継続的な薬物摂取からの汚染を避けるために、IV経路を用いて最も信頼性高く測定される。本発明者のヒトの研究における5mcgのスフェンタニルのIV消失半減期は、これら低用量の測定での検出限界のために71.4分であった。さらにより高い用量のスフェンタニルについて公開されたIV消失半減期は、再分布に関係する急速なα消失メカニズム、および代謝および排泄による長い消失β相が両方ともに検出されたため148分である。この公開された消失半減期は、より正確であり上記の式に用いるのにより適している。Cmaxの50%以上での消費時間は、2.5、5および10mcgの投与力価の12人のボランティアに対して、それぞれ平均して110分、111分および106分であった。それ故に、これらの具体的なスフェンタニル剤形に関する治療時間比は、0.72〜0.75の範囲にあった。剤形の製剤が変化すると、剤形の侵食時間が増減することもあり、スフェンタニルの治療時間比はおよそ0.2〜2.0の範囲になるであろう。
【0255】
治療時間比は、短時間作用性の薬物が、いかに首尾よく製剤されて治療時間の増加を生み出し、かつ血漿中Cmaxの高ピーク濃度を回避して安全性を向上させるかに関する評価基準である。例えば、比較として、ヒトの研究におけるスフェンタニルIV治療群は、10分/148分=0.067の治療時間比を示した。IV治療群におけるこの低い比率は、従ってスフェンタニルのIV点滴が高いピークを与える尺度であり、この製剤が有意なプラトー相を生成しないことを実証する。表1(ヒトの研究に用いた剤形)に挙げたスフェンタニル製剤は、IVスフェンタニルに比較して治療時間比が10倍高く、これらの製剤の治療プロフィルが持続的なプラトーをもつことを示唆する。
【0256】
小容量薬物剤形による経粘膜医薬の摂取は、薬物の大部分がGI経路で摂取される現在入手可能な経口腔粘膜剤形と比べて、個々の投与量間および個々の患者間の一貫性がより高い薬物送達を提供する。
【0257】
本明細書に記載される方法およびシステムは、口腔固有の環境で有効に機能するように設計され、現在入手可能なシステムよりも高いレベルの薬物吸収および痛みの緩和を提供する。本請求項の方法およびシステムは、舌下粘膜を経由して血液循環に導入することによって、静脈内投与における高いピーク血漿中レベルを回避するように設計される。
【0258】
本請求項の方法およびシステムは、生体接着、剤形の崩壊(浸食)および薬物の徐放を独立して制御すること、並びに安全な送達プロフィルを得るためにデバイスを用いて投与することをさらに提供する。デバイスが経口腔粘膜剤形を投与することで、規定量の活性薬剤(例えば、スフェンタニル)を含む用量が個別に繰り返して提供され、患者または介護人は、薬物の送達量を正確に増減させて、安全かつ有効なやり方で然るべき量に調整することができる。投与デバイスのロックアウト機能は、薬物送達プロフィルの安全性を向上させる。
【0259】
本明細書の経口腔粘膜剤形の利点は、それらが高くて一貫性のあるバイオアベイラビリティを示し、痛みの処置に現在入手可能な医薬またはシステムに比べて、より長期間にわたり、かつ著しくより小さい変動で血漿中薬物濃度を目標とする治療域内に維持できることである。血漿中レベルのピークは、IV剤形では典型的に高く観測されるが、スフェンタニル含有剤形の投与後は鈍化している。加えて、剤形の侵食時間またはそれ以上の長さにわたって絶えず薬物が口腔から血流に通じているので、血漿中レベルの急速な減衰は回避され、その結果、プラトー相がIV経路の投与と比較して長く持続する血漿中薬物動態が提供される。さらに、本請求項の方法およびシステムを用いた治療は、現在入手可能な痛みの処置のための医薬またはシステムにありがちな、血漿における薬物動態のピークおよびトラフに伴う潜在的に有害な副作用を最小限に抑えることによって安全性の改善をもたらす。
【0260】
舌下または鼻腔内いずれかの投与のための様々な液剤形態に対する、本請求項の舌下剤形の優位性は、鼻腔または口腔/GI経路いずれかによる液体薬物の嚥下が最小限に抑えられ、薬物が、剤形から局所的に時間をかけて放出されることを含む。鼻腔内スフェンタニル液剤(15mcg)のヒトへの投与後について公開された薬物動態データは、78%のバイオアベイラビリティを示す(Helmers et al.,Canadian Journal of Anesthesia 36:494-497,1989)。ビーグル犬に舌下液剤スフェンタニル(5mcg)を投与した結果(以下の実施例4を参照)、40%のバイオアベイラビリティが得られた。前述のバイオアベイラビリティ・データは、小容量剤形の形態の舌下投与スフェンタニルを用いてヒトボランティアで得られた91%平均のバイオアベイラビリティより小さい(以下の実施例1を参照)。
【0261】
経口腔粘膜剤形はサイズが小さいので、長期間にわたって繰り返して舌下腔に置くことができる。サイズが小さいために、唾液の生成が最小限に抑えられ、物理的不快感も最小限になるので、数日、数週から数ヶ月にわたって繰り返して投薬することができる。舌下腔の脂質プロフィルを前提として、舌下経路は、スフェンタニルのようなある種の薬物を血漿中によりゆっくりと放出させることもできるが、これは頬側送達と比較して血漿中レベルをさらに安定させることになる「デポー」効果の利用によるものであろう。
【0262】
経口腔粘膜剤形は、米国特許第6,759,059号(Rapinyl)に記載される先行技術の製剤に見られるような、血漿中レベルにおける即座のピークおよびそれに続く顕著な低下を回避することを目的として、薬物形態が十分ゆっくりと浸食されるように舌下に楽にフィットする設計がなされる。上述の特許では、400mcgのフェンタニルを含むタブレットによってフェンタニルが投与され、血漿中濃度は、2.5ng/mlのピークに続いて即座に低下する結果となった。Fentora(フェンタニル・バッカル錠)も同様にプラトー相を欠く難点があるが、むしろ血漿中レベルは、Cmaxまで急勾配で上昇し、続いて顕著に低下する(Fentora添付文書)。
【0263】
動物に関する研究
小容量経口腔粘膜剤形の特性をさらに十分に明らかにするために、様々な薬物および製剤を用いて、意識清明なビーグル犬における一連の実験を行った。本請求項のスフェンタニル経口腔粘膜投与システムと、液剤舌下スフェンタニルの投与またはスフェンタニル剤形の嚥下との比較を行い、本薬物剤形の様々な特質を評価した。この結果は、本発明の小、容量薬物剤形が、(覚醒犬に用いて実証されたように)舌下の耐容性が良好であり、滴下液剤を含めた他の経口腔粘膜剤形に比べて、より高いバイオアベイラビリティ、およびより一貫性のある薬物動態データをもたらすという主張を支持する。
【0264】
以下の実施例2にさらに十分に記載されるように、5mcgの舌下スフェンタニル剤形をIVスフェンタニルと比較するために、ビーグル犬に関する第1の実験を行った。全部で3匹のビーグル犬について実験を行い、結果を図10のグラフおよび表3に示した。舌下スフェンタニル剤形のバイオアベイラビリティは、IVと比較して75%であった。それ故に、イヌにおけるこのバイオアベイラビリティのデータは、ヒトのデータと同様に、本剤形がより大きい剤形を上回る優れた特質を確認するものである。その上に、ヒトのデータと同様に、AUCの変動係数は、他の市販の経粘膜剤形の変動と比較して低く、14%であった。(イヌにおけるスフェンタニルについて公開されたIV消失半減期139分を用いると、)舌下スフェンタニル剤形の治療時間比は0.28であり、一方でIVスフェンタニルに対する比率は0.05である。従って、ヒトと同様にイヌでも、表1における5mcgの剤形がIVスフェンタニルと比較してずっと高い(5.6倍の)治療時間比を与えた。
【0265】
付加的な実験において、製剤を変えることが薬物動態プロフィルに与える効果について測定した。この実験は、以下の実施例3においてさらに十分に説明される。剤形の侵食時間を延ばすことによって、血漿中半減期が(実施例2における)媒質崩壊型製剤に対する33分から205分に延長された。治療時間比は、0.28から崩壊の遅い剤形に対する1.13まで増加した。この実験は、小容量剤形のフレキシビリティ、および添加剤の選択に基づいて薬物のPKを変更する能力を例証する。このフレキシビリティは、剤形のサイズが小さい故に可能であり、剤形が、離脱することも或いは薬物を尚早にGI管に流し込んでしまう過剰な唾液を発生させることもなく、舌下粘膜と短時間かまたは持続的に接触することを可能にする。
【0266】
舌下液剤投与に対する舌下剤形の利点を評価するために、ビーグル犬で別の実験を行った。この実験は、以下の実施例4にさらに十分に記載される。結果は、以下のことを示す。滴下液剤形態のスフェンタニル(5mcg)は、舌下腔への送達が速いTmaxをもたらすとはいえ、この投薬方法で得られるバイオアベイラビリティ(40%)は、舌下スフェンタニル剤形(75%)と比較して極めて低い。これは、おそらく液剤の嚥下によるものあろう。さらに、AUCは、高い変動係数(82%)が示すように極めて変動しやすい。Cmaxも同様に、この投薬方法ではたいへん変化しやすく、72%の変動係数を示す。舌下滴下液剤スフェンタニルに対する治療時間比は0.06と計算され、この研究で0.03の比率を示したIVスフェンタニル治療群と極めて近かった。それ故に、この舌下滴下液剤のプロフィルは、舌下剤形で観測される治療に有利なプラトーはもたらさない。これらの知見は、異なった製剤で観測される高い舌下のバイオアベイラビリティが、分子に固有ではなく、むしろ剤形および製剤に固有の設計からの直接的な結果であることを支持する。小さい剤形が舌下腔の口腔粘膜に強く接着することで、溶液の場合のような吸収に利用できる表面積の変動が最小限に抑えられ、その結果として分子の体循環への送達が改善される。加えて、固有の設計および小さい寸法の故に、本剤形は、著しい唾液の生成を引き起こさず、かくして放出された薬物が摂取される可能性が低減される。両方の要因が、舌下腔からのより高くてより均一な薬物吸収に寄与する。
【0267】
実施例4におけるこの実験の付加的な部分は、嚥下されたスフェンタニル剤形のバイオアベイラビリティの測定であった。スフェンタニルのGIのバイオアベイラビリティに関するデータが文献にほとんど皆無なので、この投与経路の低いバイオアベイラビリティをさらに評価して、舌下剤形からの薬物は嚥下されることができず、高いバイオアベイラビリティを維持するという所見をさらに支援することが重要であった。表7のPK解析データに示されるように、嚥下された剤形からのスフェンタニルの口腔のバイオアベイラビリティは非常に低く、およそ12%である。加えて、フェンタニルについて知られた不規則なGI摂取から予測されることであるが、嚥下された剤形は、表7に示されるように、薬物吸収量(AUC)および吸収に関する薬物動態(Cmax、Tmax)の両方ともに極めて高い変動性を示した。これらのデータは、生体接着性の舌下剤形が、離脱しないように強く舌下腔に接着することによって口腔摂取を回避し、GI経由の薬物吸収にありがちな血漿中レベルの高い変動性を回避するという結論を支持する。
【0268】
小容量剤形に製剤されたアルフェンタニルを評価する付加的な実験をビーグル犬で行なった。以下の実施例5にさらに十分に記載される。
【0269】
アルフェンタニル剤形は、バイオアベイラビリティがIVアルフェンタニルと比較して94%、変動係数がAUCに対して5%、Cmaxに対して7%、およびTmaxに対して28%という結果が得られた。治療時間比は、この実験におけるIVアルフェンタニル治療群に関する(イヌにおけるアルフェンタニルについて公開されたIV消失半減期104分を用いて計算した)0.04に比べて、0.33と計算された。それ故に、アルフェンタニル製剤は、(実施例5に記載されるように)IVアルフェンタニル治療群として、8倍改善された治療時間比を提供する。この製剤の高いバイオアベイラビリティは、本剤形を用いることにより薬物の嚥下が最小限に抑えられるという主張をかさねて支持する。
【0270】
VIII.小容量経口腔粘膜剤形の有用性
本請求項の剤形は、経口腔粘膜経路によって投与される任意の薬物の送達に有用性を見い出す。小容量経口腔粘膜剤形は、高いバイオアベイラビリティ、Tmaxの低い変動性、Cmaxの低い変動性、およびAUCの低い変動性を提供する。本剤形は、治療域内の持続的血漿中レベルも提供する。
【0271】
本明細書に詳述される、例となる一実施形態において、本剤形は、特定できるか、またはできない様々な病因のいずれかに関係し得る痛みに苦しむ対象の治療に有用性を見出す。この実施形態において、本剤形は、痛みの抑制または軽減に有用性を見出す。痛みの「治療」または「管理」の用語は、例えば痛みスコアによって測定されるように、対象をより快適にするための痛みの後退、抑制または軽減を一般的に記述するためにここで用いられる。
【0272】
本発明は、オピオイド・ナイーブ患者およびオピオイド耐性患者の両方の治療に有用性を見出す。
【0273】
用語「オピオイド・ナイーブな患者」は、本明細書では、数週から数ヶ月の期間にわたってオピオイド物質の繰り返し投与を受けなかった患者に関して用いられる。
【0274】
本明細書で用いられる用語「オピオイド耐性患者」は、長期投与に伴うオピオイド物質の効果(例えば、鎮痛、吐き気または鎮静)の減少によって特徴付けられる生理学的状態を意味する。オピオイド物質は、アヘンまたはその誘導体を含むものと同様に鎮痛性、無痛覚性、および/または麻薬性の効果をもつ薬物、ホルモン、または他の化学物質である。鎮痛耐性が進んだ場合、同水準の鎮痛をもたらすためのオピオイド物質の用量は増加する。この耐性は副作用に及んではならず、副作用は用量が増加するにつれ十分に耐えられなくなる。
【0275】
本剤形は、「戦場における」、すなわち多分に次善の条件下における、急性痛または他の症状の治療に特に有用性を見出す。医療補助員または軍医は、しばしば、IVまたはIM投与に用いる注射針が不慮な針刺し、感染リスクなどを招きかねない無消毒状態で激しい急性痛或いは他の負傷または症状を治療することを求められる。経口オピオイド・タブレットは、緩和をもたらすのにしばしば60分かかり、これは激しい痛みにあるヒトには長過ぎる。本請求項の剤形は、このニーズへの対処に有用性を見出す。
【0276】
剤形が痛みの処置に用いられるとき、本請求項の方法およびシステムは、小児および成人集団への薬物の投与、ヒトおよび非ヒト哺乳動物、並びにオピオイド耐性およびオピオイド・ナイーブ患者集団の治療に有用性を見出す。
【0277】
本請求項の方法およびシステムの応用は、いかなる特定の治療指標にも限定されない。かくして、本請求項の剤形は、小児および成人集団への薬物投与、およびヒトおよび非ヒト哺乳動物の治療に有用性を見出す。
【0278】
本剤形は、その快適で安全な特質から子供がこの治療方式を容易に受け入れることを可能にし、薬物を信頼性よく経粘膜的に送達することができるため、小児への応用に有用性を見出す。具体的な例は、限定されることなしに、IV経路が利用できないか、または不都合なときの小児の急性痛の治療、子供が投与の吸入経路を有効に使えないときの小児喘息の治療、子供が丸薬を飲めないか飲もうとしないときの吐き気の治療、子供がNPO(口腔摂取不可)であるか、またはより迅速な作用発現が必要とされるときの手術前鎮痛を含む。
【0279】
本剤形は、獣医学的な応用にさらなる有用性を見出す。具体的な例は、限定されることなしに、痛みの緩和、心配/ストレス緩和、手術前の鎮痛などのような、IV投与が容易に利用できないか、または不便な急性症状の任意の治療を含む。
【0280】
次の実施例は、本発明を例示するために示されるものであり、以上にまたは以下の請求項に記載される本発明のいかなる様態も限定する意図はもたない。
【0281】
上述の剤形のための剤形は、舌下投与後のヒトおよび適した動物モデルでインビボの薬物動態に関するテストを行うことができる。
【0282】
次の実施例は、本剤形が、ヒトボランティアおよび意識清明なビーグル犬モデルに舌下投与された後に、一貫性のあるクエン酸スフェンタニル吸収プロフィルを与える能力を実証する。
【実施例】
【0283】
(実施例1)
成人ヒトボランティアに舌下投与された舌下スフェンタニル剤形
【0284】
【表1−1】

【0285】
【表1−2】

健康なボランティアを用いてヒト臨床研究を行った。実験は、5μLの容量、およそ5.5mgの質量をもつように製造されて、すべての力価に対して一定のサイズをもつことが測定された、およそ3mmの直径および0.8mmの厚さの寸法の、スフェンタニル含有剤形(表1に示す製剤#46〜#48)を用いて、12人の対象(6人の男性および6人の女性)について行った。スフェンタニル剤形は、クエン酸スフェンタニルの3.7mcg、7.5mcgまたは15mcgにそれぞれ対応して、2.5mcg、5mcg、また10mcgのスフェンタニル塩基のいずれかを含んだ。すべての添加剤は、不活性でGRAS(「一般に安全と認められる」)状態を有した。スフェンタニル剤形を舌下使用についてテストした。研究スタッフが、個々の剤形を先端の丸い鉗子を用いて舌小帯の底部に直接に置くことによって、それらを対象に投与した。
【0286】
バイオアベイラビリティを計算するために、静脈内スフェンタニル5mcgを0.9%の生理食塩水で20mLの全容量まで希釈し、10分にわたる持続点滴としてIVカテーテルを通して投与した。血漿サンプルは、離れた部位で異なったIVカテーテルから抽出した。ヒトの試験は、高から低用量への移行の間にウォッシュアウト期間をもち、クロスオーバーデザインであった。オピオイド誘発性の副作用を回避するために、オピオイド・アンタゴニストのナルトレキソンで対象を日々遮断した。
● 第0日:IVスフェンタニル注入:
○ 17サンプルを採取した:
‐5.0(点滴開始前)、2.5、5、7.5、10、12.5、15、20、30、45、60、90、120、160、320、480および640分
● 第2日:2.5mcgの舌下スフェンタニル剤形;
○ 17サンプル:
‐5.0(剤形投与前)、2.5、5、7.5、10、12.5、15、20、30、45、60、90、120、160、320、480および640分
● 第3日:5.0mcgの舌下スフェンタニル剤形;
○ 17サンプル:
‐5.0(剤形投与前)、2.5、5、7.5、10、12.5、15、20、30、45、60、90、120、160、320、480および640分
● 第4日:10.0mcgの舌下スフェンタニル剤形;
○ 17サンプル:
‐5.0(剤形投与前)、2.5、5、7.5、10、12.5、15、20、30、45、60、90、120、160、320、480および640分
● 第7日:5.0mcgの舌下スフェンタニル剤形を10分間隔で4回繰り返した;
○ 23サンプル:
‐5.0(第1の剤形投与前)、5、7.5分
10(第2の剤形投与直前)、15、17.5分
20(第3の剤形投与直前)、25、27.5分
30(第4の剤形投与直前)、35、40歳、45、50、55、60、90、120、150、190、で350、510および670分
薬物動態サンプリングに必要な総血液量は、およそ455mLであった。
【0287】
血漿サンプル中のスフェンタニル濃度は、検証されたLC‐MS/MSスフェンタニルヒト血漿試験法を用いて測定した。試験は、高、中および低品質管理サンプル濃度において良好な日間精度を示した。
【0288】
この実験のための剤形は、すべての対象で10〜30分の間に浸食された。各々のスフェンタニル舌下剤形を12人の健康なボランティアの舌下腔に置いた後に、3つの剤形に対して際立って一貫性のある薬物動態プロフィルが得られた(図9)。
【0289】
【表2】

薬物が治療レベル(Cmaxの50%以上)を達成する相対的な時間を表わし、次式で計算される:TTR=(Cmaxの50%以上での消費時間)/(IV終末消失半減期)。分母は文献から得られ、ヒトにおけるスフェンタニルに対して148分である。
【0290】
(実施例2)
イヌモデルにおける舌下スフェンタニル剤形のインビボ評価
以下の実施例2〜5は、ビーグル犬モデルを用いており、すべての剤形に対する製剤は、全質量が5.5mgの剤形を用いている。上述の(イヌに対する製剤#44、ヒトの製剤#47と同じ)5mcgの剤形を舌下投与した後に、スフェンタニルに関するインビボの薬物動態(PK)を健康なビーグル犬モデルで評価した。簡潔には、上述した5mcgの単一の剤形を、完全に覚醒した健康なイヌの舌下腔に直接に置くことにより舌下投与した。全部で3匹のイヌを評価した。投与後に、舌下腔における剤形の位置を、投与後の5〜15分間隔で視覚的に観察した。舌下スフェンタニルのPKを、IV投与したスフェンタニルと同じ用量レベルで比較した。
【0291】
すべてのイヌは、血液を採取するために投薬後の2時間まで橈側皮静脈にカテーテルを挿入した。投薬後の2時間の血液採取を通じて、カテーテルが外れるのを妨ぐために、すべてのイヌに広いつばのある首輪を付けた。2時間の血液採取後にカテテールを外した。投薬後の4、8および24時間の血液採取は、橈側皮または他の適切な静脈から採取した。以下の時点で、EDTAカリウムを含む予冷チューブにおよそ2mlの血液を採取した:投薬前および投薬後のおよそ1、3、5、10、15、30分、1、2、4、8および24時間。サンプルは、イヌの血漿中におけるクエン酸スフェンタニル測定に対して然るべく検証されたLC/MS/MS法で分析した。スフェンタニルの血漿中濃度、および薬物動態の結果を図10および表3に示す。
【0292】
【表3】

薬物が治療レベル(Cmaxの50%以上)を達成する相対的な時間を表わし、次式で計算される:TTR=(Cmaxの50%以上での消費時間)/(IV終末消失半減期)。分母は文献から得られ、ビーグル犬におけるスフェンタニルに対して139分である。
【0293】
(実施例3)
薬物の放出およびインビボの薬物動態を制御するための例となるスフェンタニル剤形
説明のために、より遅い薬物の放出、およびより長時間作用性の剤形におけるインビボの薬物動態の評価を目的として、より長時間持続性の剤形(製剤#58)をクエン酸スフェンタニルを用いて調合した。この崩壊がより遅いスフェンタニル剤形は、表4に記載されるように、直接圧縮によって調合して上述のようにテストした。イヌにおける侵食時間の範囲は、35〜120分であり、プラシーボ製剤の生体接着性は、上述のように測定して0.18±0.08N/cmであった。
【0294】
サンプル分析は、イヌの血漿中におけるスフェンタニル分析に対して検証されたLC/MS/MS法を用いて行った。吸収に関するノンコンパートメント・モデルを用いて薬物動態解析を行った。限られたPK解析の結果を表5に示す。
【0295】
【表4】

【0296】
【表5】

薬物が治療レベル(Cmaxの50%以上)を達成する相対的な時間を表わし、次式で計算される:TTR=(Cmaxの50%以上での消費時間)/(IV終末消失半減期)。分母は文献から得られ、ビーグル犬におけるスフェンタニルに対して139分である)。
【0297】
(実施例4)
イヌモデルにおける舌下スフェンタニル溶液、およびスフェンタニル剤形の嚥下に関するインビボ研究
A.溶液剤形の舌下投与後におけるスフェンタニルのバイオアベイラビリティ評価
表6に示されるように、溶液から舌下投与した後のスフェンタニルのバイオアベイラビリティを、静脈内投与と比較して、健康で意識のあるビーグル犬の動物モデルで評価した。実験の両治療群において、クエン酸スフェンタニルの市販の製剤(Sufenta(登録商標)50μg/mL)を用い、スフェンタニル塩基5mcgの同じ用量を投薬した。静脈投与(群1)は、然るべきサイズの消毒針および注射器を用いた橈側皮静脈へのボーラス注入により、Sufenta(登録商標)50μg/mLの単回投与(n=3)を行った。舌下投与(群2)は、Sufenta(登録商標)50μg/mLを0.9% w/wでスフェンタニル塩基が5mcgの同じ最終用量に然るべく希釈することにより被検物質を調合し、各投薬は最短で2日のウォッシュアウトで分離して、2回舌下投与した(合計n=6)。消毒した注射器を通して用量を舌下の舌小帯近傍に徐々に適用した。血液サンプルは、投薬前、および投与後の約1、3、5、10、15、30分、1、2、4、8および24時間に頚静脈または他の適切な静脈から採取した。各時点毎におよそ2mLの血液をKEDTAを含む予冷チューブに採取した。サンプルを冷凍遠心器でおよそ10分間、3,000×gで遠心分離した。血漿は、およそ−70℃で20分以内の遠心分離で採取および凍結して、分析まで同じ温度で保存した。サンプル分析は、イヌの血漿におけるスフェンタニル分析に対して検証されたLC/MS/MS法を用いて行った。
【0298】
吸収に関するノンコンパートメント・モデルを用いて、薬物動態解析を行った。スフェンタニルの血漿中濃度を図11にグラフ化する。PK解析の結果を表7に示す。
【0299】
B.剤形を口腔摂取した後のスフェンタニルのバイオアベイラビリティ評価
5mcgのスフェンタニル剤形(製剤#44、上述のヒトの研究に用いた#47と同じ製剤)を摂取した後のスフェンタニルのバイオアベイラビリティを、静脈内スフェンタニル投与と比較して、前の実施形態に記載した健康で意識のあるビーグル犬の動物モデルで評価した。最短で2日のウォッシュアウトで各投薬を分離して、単一の5mcgの剤形を2回、合計n=6の経口投与を行った(表6)。剤形を手で喉のできるだけ奥に置き、動物の嚥下反応を促進するために水を注いだ。吸収に関するノンコンパートメント・モデルを用いて薬物動態解析を行った。スフェンタニルの血漿中濃度を図11にグラフ化する。PK解析の結果を表7に示す。
【0300】
【表6】

a=遊離塩基として表示。
b=群1から3まで同じ動物を用い、投薬間のウォッシュアウト期間は最短で2日とする。
c=群2&3の動物は、最短で2日のウォッシュアウト期間で2回、合計n=6の投薬を行った。
d=規定濃度(0.9w/w)の生理食塩水を用いて、被検物質(Sufenta(登録商標)50μg/mL)を所望の濃度に希釈した。
【0301】
【表7】

薬物が治療レベル(Cmaxの50%以上)を達成する相対的な時間を表わし、次式で計算される:TTR=(Cmaxの50%以上での消費時間)/(IV終末消失半減期)。分母は文献から得られ、ビーグル犬におけるスフェンタニルに対して139分である)。
【0302】
(実施例5)
イヌモデルにおける舌下アルフェンタニルHCl剤形のインビボ評価。
【0303】
また別の薬物への本剤形の使用について説明するために、本出願書に記載される剤形が、IV投与経路と比較して効果的にアルフェンタニルのPKを改善する能力を実証することを目的として、アルフェンタニルHClを用いた追加の剤形を調合した。製剤の組成、媒質崩壊剤形を表11に記載する。製剤#63のイヌにおける侵食時間は20分であり、生体接着性はプラシーボ製剤に対して0.056±0.01N/cmと測定された。
【0304】
この実験のための投薬パラメータを表12に示す。血漿中アルフェンタニル濃度を図12にグラフ化する。ノンコンパートメント吸収モデルを用いてPK解析を行った。PK解析の結果を表13に示す。血液のサンプリングおよび保存は、先述の条件を反映した。イヌの血漿中におけるアルフェンタニル測定に対して検証されたLC/MS/MS法を用いて試料分析を行った。
【0305】
【表11】

【0306】
【表12】

a=遊離塩基として表示。
b=群1および2に対して同じ動物を用い、最短2日の投薬間のウォッシュアウト期間とした。
【0307】
【表13】

薬物が治療レベル(Cmaxの50%以上)を達成する相対的な時間を表わし、次式で計算される:TTR=(Cmaxの50%以上での消費時間)/(IV終末消失半減期)。分母は文献から得られ、ビーグル犬において104分である。
【0308】
(実施例6)
デバイスを用いたスフェンタニル含有剤形の投与による外来患者環境での急性痛管理
薬剤師は、40スフェンタニル剤形を含む薬物カートリッジを投薬デバイスに搭載する。各々のカートリッジは、投与される最初の2つのタブレットとなるように配置されて、色のついた2つの初期化タブレット(「配送タブレット」と呼ばれる)をもつ。デバイスは、安全であって無認可ユーザにはアクセスできないポート、ハッチ、またはドアのいずれかのカートリッジ搭載手段を有する。薬剤師は、カートリッジをデバイスに搭載した時点で、デバイスのアクセス・ポート、ハッチ、またはドアをロックする。薬剤師は、次にパーソナルまたは他のコンピュータに接続されたドックに投与デバイスを、ドッキング・コネクターを用いて初めてドッキングさせ、続いてデバイスをプログラムする。プログラミングは、剤形の投与力価、デバイスに搭載された剤形数、処方された剤形使用頻度、一日に使用すべき剤形数、現在の日時、好ましい言語、患者識別のために有効な親指の指紋または他の身元証明、およびデバイスの紛失・発見に備えた医師の識別情報、をアップロードすることを含む。
【0309】
投与デバイスがプログラムされた時点で、薬剤師は、単一の配送タブレットを投与することによって適正に使用できることを実証し、デバイスをテストする。薬剤師は、次に投与デバイスを患者に与えて、患者が配送タブレットを投与するのを観察し、適正な使用と機能性とを確かめる。投与デバイスとともに、薬剤師は、投与デバイスの動作を可能とするためにデバイスのおよそ5インチ以内に存在する必要のある無線周波識別(RFID)タグを患者に提供する。
【0310】
患者が薬物の用量を投与したいとき、彼または彼女は投与デバイスを保持して任意のボタンを押し、デバイスをスリープ・モードから復帰させる。デバイスは、ユーザに親指の指紋読み込み、または暗証番号(PIN)のいずれかを問い合わせる。デバイスは、次に範囲内の有効なRFIDキーを検索する。これらの条件が満たされた時点で、投与デバイスは、現在の使用要求が薬剤師によってプログラムされた投与法に違反しないことを確かめるために、内部メモリおよびクロックに問い合わせる。この時点で、デバイスは、日時、残された用量数、前回の剤形使用日時、患者名などのようなステータス情報を表示し、薬剤師は、見えるおよび/または聴こえる信号によって、デバイスが剤形を投与する準備ができたことを患者に知らせる。
【0311】
患者は、デバイスの投与端を彼または彼女の舌下に保持して、投与レバーを押す。剤形が投与されるとき、音が鳴って剤形が適正に送達されたことを患者に知らせる。この時点でデバイスは、さらなる投与を防ぐために、プログラムされたロックアウト時間が経過するまでロックされ、その時点で再び使用準備ができた状態になる。
【0312】
(実施例7)
デバイスを用いたスフェンタニル含有剤形の投与による入院患者環境での急性痛管理
手術後の患者は、外科手術後の急性痛の治療を必要とする。外科医は、投薬デバイスを用いて投与するために経口腔粘膜スフェンタニルを処方する。担当看護師は、処方オーダーを薬剤師または自動薬剤在庫管理システム(例えば、Pyxis)に持ち込み、舌下送達のためのスフェンタニル含有薬物カートリッジを得る。カートリッジは、ラベルが付いており、薬物ラベル情報を含むRFID電子タグを装備している。カートリッジは、ラベルが付いており、薬物ラベル情報を含むRFID電子タグを装備している。
【0313】
看護師は、次に在庫から投薬デバイスのディスポーザブルな投与部分を入手して、基地局に進み、再充電サイクルを終えて使用準備ができた、再利用可能な投薬デバイス制御部分を得る。看護師は、薬物カートリッジをディスポーザブルな投与部分に挿入し、次に、これを投薬デバイスの再利用可能なコントローラ部分に固定させて、ディスポーザブルな部分を投薬デバイスの再利用可能な部分にロックさせる。この時点で、デバイスは、薬物カートリッジ上のRFIDタグを読み込み、薬物の種類、投与力価、プログラムされた投薬間ロックアウト期間などを含む然るべき薬物情報をアップロードする。看護師は、投薬デバイスが適正な薬物カートリッジ情報を読み込んだことを確認して、患者制御の鎮痛薬投与のために投薬デバイスを患者に与える。
【0314】
患者が鎮痛薬を必要とするとき、彼女は、投薬デバイスを彼女の手に取り、投与チップを彼女の口内、彼女の舌下に置いて投与ボタンを押す。投薬デバイスは、次に内部チェックを行って、前回の剤形投与から適正なロックアウト期間が経過したことを確かにする。この時点で、投薬デバイスは、剤形を患者の舌下に投与して、投薬に成功したことをフィードバックする。患者は、投薬デバイスを彼女の口から取り出して、舌下剤形が彼女の舌下で溶解することを可能にする。患者は、好きなだけ頻繁に投与を試みることができるが、しかし投薬デバイスは、然るべきロックアウト期間の経過後にのみ首尾よく投薬することを許すことになる。投薬デバイスは、投与の試みおよび成功した投与を投与履歴に電子的に記録する。
【0315】
看護師は、患者および投薬デバイスについて定期的にチェックする。かかるチェックの間に、看護師はエラーがないことを確かめるため、および投薬デバイスに残された剤形数をチェックするために投薬デバイスを点検して、それから患者に返却する。
【0316】
患者が退院するとき、看護師は、投薬デバイスを手に取り、再利用可能な部分をディスポーザブルな部分からロック解除して、投薬デバイスのカートリッジおよびディスポーザブルな部分を処分する。次に、看護師は、患者の医療記録にインプットするために、デバイスの再利用可能な部分をコンピュータに接続して、患者の使用情報を投薬デバイスからコンピュータにアップロードする。看護師は、再利用可能なコントローラ部分を清浄化して、再充電のために基地局に戻す。
【0317】
(実施例8)
デバイスおよびポータブル・ドックを用いたスフェンタニル含有剤形の投与による入院患者環境での急性痛管理
手術後の患者は、外科手術後に急性痛の治療を必要とする。外科医は、投薬デバイスを用いて投与するために経口腔粘膜スフェンタニルを処方する。担当看護師は、処方オーダーを薬剤師または自動薬剤在庫管理システム(例えば、Pyxis)に持ち込み、舌下送達のためのスフェンタニル含有薬物カートリッジを得る。カートリッジは、ラベルが付いており、薬物ラベル情報を含むRFID電子タグを装備している。カートリッジは、ラベルが付いており、薬物ラベル情報を含むRFID電子タグを装備している。カートリッジは、剤形スタックのうちの最初に送達される位置に配送タブレットまたは初期化タブレットを含む。
【0318】
看護師は、次に在庫から投薬デバイスのディスポーザブルな投与部分を入手して、基地局に進み、再充電サイクルを終えて使用準備ができた、再利用可能な投薬デバイス制御部分を得る。看護師は、薬物カートリッジをディスポーザブルな投与部分に挿入し、次に、これを投薬デバイスの再利用可能なコントローラ部分に固定させる。次に、看護師は、再充電していた基地局からポータブル・ドック(またはドッキングfob)を入手して、組み立てられた投薬デバイスをポータブル・ドックにドッキングさせる。ポータブル・ドックおよび組み立てられた投薬デバイスは、電子的に通信して、投薬デバイスをセットアップするためのセットアップメニューが、ポータブル・ドック上に現れる。
【0319】
この時点で、デバイスは、再利用可能な部分とディスポーザブルな部分とを一緒にロックして、薬物カートリッジ上のRFIDタグを読み込み、薬物の種類、投与力価、投薬間のロックアウト期間などを含む、然るべき薬物情報をアップロードする。投与デバイスは、カートリッジ上のRFIDタグにコードを書き込み、これを使用済みカートリッジとして識別する。看護師は、セキュリティを維持してアクセスするために、彼女の指紋をポータブル・ドック上の指紋リーダに入力して、投薬デバイスを使用するためのセットアップに進む。セットアップ手順は、ユーザID、看護師IDを入力すること、デバイス上の適正な時間を確認すること、および適正な薬物カートリッジ情報を確認することを含む。次に、看護師がディスポーザブルなRFIDブレスレットを手に取ってこれを投薬デバイスの近くに置くとそこで投薬デバイスがタグを読み込み、看護師は、適正なブレスレット・タグが読み込まれたことを確認する。
【0320】
看護師は、次に一度投与ボタンを押すことによって、投薬デバイスの適正なセットアップを確認する。投薬デバイスが始動して、看護師の手中に配送タブレットの複製を投与し、適正な動作を確認する。投薬デバイスが配送タブレットの投与を検出することで、適正動作に関する内部システムチェック、および新しく組み立てられたシステムの内部キャリブーションが可能になる。もし内部の投与チェックがうまくいけば、ポータブル・ドックは、配送テーブルが適正に投与されたことを確認するために看護師に問い合わせを行い、看護師は、適正なセットアップを確認する。看護師は、次にポータブル・ドックから投薬デバイスを外して、セットアップの最終ステップのために患者のベッド脇に進む。
【0321】
看護師は、RFIDブレスレットを患者の手首に付け、防盗用テザーを患者のベッドに、および他端を投薬デバイスに固定する。看護師は、次に舌下投薬デバイスの適正な使用法について患者に指導し、患者制御によるスフェンタニル投与のために投薬デバイスを患者に与える。
【0322】
患者が鎮痛薬を必要とするとき、彼女は投薬デバイスを彼女の手に取り、投与チップを彼女の口内、彼女の舌下に置いて投与ボタンを押す。投薬デバイスは、次に内部チェックを行って、前回の剤形投与から適正なロックアウト期間が経過したこと、および患者のRFIDブレスレットが存在して読み込み可能なことを確かめる。この時点で、投薬デバイスは、剤形を患者の舌下に投与して、投薬に成功したことをフィードバックする。患者は、投薬デバイスを彼女の口から取り出して、舌下剤形が彼女の舌下で溶解することを可能にする。患者は好きなだけ頻繁に投与を試みることができるが、しかし投薬デバイスは、然るべきロックアウト期間の経過後にのみ、首尾よく投与することを許すことになる。投薬デバイスは、投与の試みおよび成功した投与を投薬履歴に電子的に記録する。
【0323】
看護師は、患者およびデバイスを定期的にチェックする。かかる患者のチェックの間に、看護師はポータブル・ドッキングFOBを持ち込んで、デバイスをFOBにドッキングさせる。電子接続によって、看護師が投薬デバイスからfobに情報をダウンロードすることが可能である。この情報は、使用履歴、薬物情報、残された剤形数、および最初のセットアップからの使用期間を含む。看護師は、次に情報および投薬デバイスにアクセスするために、彼女の指紋を指紋スキャナに入力する。患者は、ロックアウト期間が切れる前に追加の投薬を必要としているため、看護師は、ロックアウト期間を無効にして投薬デバイスを患者に返し、その時点で患者はまた別の用量を服用することができる。
【0324】
看護師はポータブル・ドッキングFOBを持って病室を退き、看護師室に戻って患者記録に投薬履歴を記録する。終わると、看護師はFOBを再充電するために基地局に返す。
【0325】
患者が投薬デバイスにおけるすべての剤形を使ってしまうと、看護師は、病室にポータブル・ドッキングfobを持ち込んで、投薬デバイスをFOBにドッキングさせる。看護師は、次に投薬デバイスにセキュリティを維持してアクセスするために、彼女の指紋をfob上の指紋スキャナに入力する。続いて、看護師は、セキュリティ・テザーをロック解除して、投薬デバイスをベッドから切り離す。彼女は、次に投薬デバイスをロック解除して分解するためにfobから取り外す。看護師は、再利用可能な部分からディスポーザブルな部分を切り離して、ディスポーザブルな部分からカートリッジを取り出す。看護師は、ディスポーザブルな部分およびカートリッジは処分し、再利用可能なコントローラ部分は、基地局に返す前に消毒ティッシュで拭き取って清浄化する。看護師は、再利用可能なコントローラ部分を基地局に返す必要があり、そこで再使用の準備ができるのに先立って、再充電および内部診断テストが行われる。
【0326】
看護師は、次に新しい投薬デバイスを上述のようにセットアップすることに進み、これを患者に提供する。
【0327】
前述の発明は、明確で理解しやすいように、説明および例を手段として幾分詳細に記載されたとはいえ、いくらかの変更および修正が行われ得ることは、当業者にとって明らかであろう。本発明の様々な様態は、一連の実験によって達成されたものであり、そのいくつかが非限定の例に記載されている。それ故に、その記載および例は、例となる実施形態の追加的記述によって描出された本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スフェンタニル含有薬物剤形を対象に経口腔粘膜投与するための投与デバイスであって、前記投与デバイスは、
前記対象の口内に投与するための投与端、および唾液または水分の進入を防ぐか、または遅らせる手段を備え、前記薬物剤形は、100マイクロリットルより小さい容量または100mgより小さい質量をもち、5mcg、10mcg、15mcg、20mcg、30mcg、40mcg、50mcg、60mcg、70mcg、80mcgおよび100mcgからなる群から選択されるスフェンタニルの用量を備える、
投与デバイス。
【請求項2】
前記投与デバイスはハンドヘルド・デバイスである、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項3】
前記経口腔粘膜投与は舌下投与である、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項4】
前記経口腔粘膜投与は頬側投与である、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項5】
前記薬物剤形は生体接着特性を有する、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項6】
前記唾液の進入を防ぐ、または遅らせる手段は口吻部を備える、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項7】
前記口吻部はシュラウドを備える、請求項6に記載の投与デバイス。
【請求項8】
前記シュラウドは、拭き取りシールまたはバルブ、吸着剤パッド、乾燥剤を備える乾燥チャンバ、および乾燥剤を備えるカートリッジの1つまたはそれ以上を備える、請求項7に記載の投与デバイス。
【請求項9】
前記デバイスはポータブルである、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項10】
前記デバイスは患者が制御する、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項11】
前記デバイスは、前記剤形を口腔粘膜上に置くのに有効である、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項12】
前記口腔粘膜は舌下膜である、請求項11に記載の投与デバイス。
【請求項13】
前記口腔粘膜は頬膜である、請求項11に記載の投与デバイス。
【請求項14】
前記デバイスはロックアウト機能をさらに備える、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項15】
前記ロックアウト機能は、ロックアウト時間を設定するのに有効であって、前記ロックアウト時間中には、剤形が前記デバイスから投与されることができない、請求項14に記載の投与デバイス。
【請求項16】
前記ロックアウト時間は、一定時間のロックアウト間隔、可変ロックアウト間隔、アルゴリズムによって決められるプログラム可能なロックアウト間隔、或いは遠隔コンピュータ、ドッキング・ステーションまたは他のデバイスから前記デバイスに通信されるロックアウト間隔である、請求項15に記載の投与デバイス。
【請求項17】
前記デバイスは、再利用可能なヘッドおよびディスポーザブルなボディーを備える、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項18】
前記デバイスは、交換可能なカートリッジをさらに備える、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項19】
前記カートリッジは、ディスポーザブルなカートリッジである、請求項18に記載の投与デバイス。
【請求項20】
前記カートリッジは、1つまたはそれ以上の配送タブレットを備える、請求項18に記載の投与デバイス。
【請求項21】
前記デバイスは、1つまたはそれ以上の配送タブレットが投与されたときを検出することができる、請求項20に記載の投与デバイス。
【請求項22】
前記カートリッジは、200までの薬物剤形を保持するように構成された、請求項18に記載の投与デバイス。
【請求項23】
前記カートリッジは、前記カートリッジ上の物理的鍵機能、光学的に検出される特徴またはパターン、前記カートリッジ上のバーコード、前記カートリッジ上の磁気タグ、前記カートリッジ上のRFIDタグ、前記カートリッジ上の電子マイクロチップ、およびそれらの組み合わせから選択される1つまたはそれ以上の機能を備えるスマート・カートリッジ認識システムを含む、請求項18に記載の投与デバイス。
【請求項24】
前記投与デバイスは、(i)投薬または使用履歴の記録、(ii)投薬および使用履歴の記録、(iii)投薬または使用履歴を閲覧またはダウンロードする手段、(v)投薬および使用履歴を閲覧またはダウンロードする手段、のための手段の1つまたはそれ以上をさらに備える、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項25】
剤形検出のための手段をさらに備える、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項26】
剤形検出のための前記手段は光学的である、請求項25に記載の投与デバイス。
【請求項27】
前記デバイスは、一回一用量で複数用量を投与するのに有効である、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項28】
前記デバイス全体はディスポーザブルである、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項29】
データ転送のための接続性手段をさらに備える、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項30】
前記投与デバイスはユーザ識別手段をさらに備える、請求項1に記載の投与デバイス。
【請求項31】
前記ユーザ識別手段は患者識別手段である、請求項30に記載の投与デバイス。
【請求項32】
前記患者識別手段は、識別されるべき患者につけたマッチングRFIDタグに接続するように構成された無線周波識別(RFID)リーダであって、前記投与デバイス上の前記RFIDリーダが患者につけたマッチングRFIDタグを検出したときに、前記投与デバイスがロック解除されるか、または使用可能になる、請求項31に記載の投与デバイス。
【請求項33】
前記ユーザ識別手段は医療従事者の識別手段を備える、請求項30に記載の投与デバイス。
【請求項34】
前記医療従事者の識別手段は無線周波識別(RFID)リーダである、請求項33に記載の投与デバイス。
【請求項35】
対象の口腔粘膜にスフェンタニル含有薬物剤形を投与するための単回用量アプリケータ(SDA)であって、前記薬物剤形は、100マイクロリットルより小さい容量または100mgより小さい質量をもち、5mcg、10mcg、15mcg、20mcg、30mcg、40mcg、50mcg、60mcg、70mcg、80mcgおよび100mcgからなる群から選択されるスフェンタニルの用量を備える、単回用量アプリケータ(SDA)。
【請求項36】
前記経口腔粘膜投与は舌下投与である、請求項35に記載のSDA。
【請求項37】
前記経口腔粘膜投与は頬側投与である、請求項35に記載のSDA。
【請求項38】
前記薬物剤形は生体接着特性を有する、請求項35に記載のSDA。
【請求項39】
投薬デバイスを用いて対象に生体接着性のスフェンタニル含有薬物剤形を経口腔粘膜投与するための方法であって、
(a)剤形の各々が5mcg、10mcg、15mcg、20mcg、30mcg、40mcg、50mcg、60mcg、70mcg、80mcgおよび100mcgからなる群から選択されるスフェンタニルの用量を備え、100マイクロリットルより小さい容量または100mgより小さい質量をもつ1つまたはそれ以上の前記薬物剤形を備える投薬デバイスを得ること;
(b)前記投薬デバイスの前記投与端を前記対象の前記口内に挿入すること;および
(c)前記デバイスの前記投与端を通して剤形を投与すること、
を備え、前記剤形は口腔粘膜上に置かれる、
方法。
【請求項40】
前記投薬デバイスは、ハンドヘルド・デバイスである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記口腔粘膜は舌下膜である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記口腔粘膜は頬膜である、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記デバイスの前記投与端は、唾液および他の水分の進入を防ぐか、または遅らせる手段を備え、前記剤形は、前記口腔粘膜上に置かれる前は乾燥している、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
唾液および他の水分の進入を防ぐか、または遅らせる前記手段は、シュラウドを有する口吻部を備える、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記デバイスは、ロックアウト時間を設定するためのロックアウト機能を備え、剤形は、前記ロックアウト時間中は前記デバイスから投与されることができない、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記ロックアウト時間は、一定時間のロックアウト間隔、所定のロックアウト間隔、所定の可変ロックアウト間隔、アルゴリズムによって決定されるロックアウト間隔、或いは遠隔コンピュータ、ドッキング・ステーションまたは他のデバイスから前記デバイスに通信される可変ロックアウト間隔である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記デバイスは、ロックアウト時間を設定するためのロックアウト機能をさらに備え、剤形は、前記ロックアウト時間中は前記デバイスから投与されることができない、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記ロックアウト時間は、一定時間のロックアウト間隔、所定のロックアウト間隔、所定の可変ロックアウト間隔、アルゴリズムによって決定されるロックアウト間隔、或いは遠隔コンピュータ、ドッキング・ステーションまたは他のデバイスから前記デバイスに通信される可変ロックアウト間隔である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ロックアウト機能は、スフェンタニルの繰り返し舌下投与を20分の最短間隔で提供する、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記投与デバイスは、1つまたはそれ以上の薬物剤形を保持するように構成されたディスポーザブルなカートリッジを備える、請求項39に記載の方法。
【請求項51】
前記カートリッジは、1つまたはそれ以上の配送タブレットを備え、少なくとも1つの配送タブレットは、剤形の投与に先立って投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記カートリッジは、前記カートリッジ上の物理的鍵機能、光学的に検出される特徴またはパターン、前記カートリッジ上のバーコード、前記カートリッジ上の磁気タグ、前記カートリッジ上のRFIDタグ、前記カートリッジ上の電子マイクロチップ、またはそれらの組み合わせを備えるスマート・カートリッジ認識システムを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記投与デバイスは、200までの薬物剤形を保持するように構成されたディスポーザブルなカートリッジを備える、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記投与デバイスは、(i)投薬または使用履歴の記録、(ii)投薬および使用履歴の記録、(iii)投薬または使用履歴を閲覧またはダウンロードする手段、(iv)投薬および使用履歴を閲覧またはダウンロードする手段、のための1つまたはそれ以上の手段をさらに備える、請求項39に記載の方法。
【請求項55】
前記投与デバイスは、ユーザ識別手段をさらに備える、請求項39に記載の方法。
【請求項56】
前記ユーザ識別手段は患者識別手段である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記患者識別手段は、識別されるべき患者につけたマッチングRFIDタグに接続するように構成された無線周波識別(RFID)リーダであって、前記投与デバイス上の前記RFIDリーダが患者につけたマッチングRFIDタグを検出したときに、前記投与デバイスがロック解除されるか、または使用可能になる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記ユーザ識別手段は医療従事者の識別手段を備える、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記医療従事者の識別手段は無線周波識別(RFID)リーダである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記剤形の浸食は、前記剤形を舌下膜上に投与した後、約30秒から約30分までに完了する、請求項41に記載の方法。
【請求項61】
対象への前記剤形の単回舌下投与は、少なくとも50%のバイオアベイラビリティをもたらす、請求項41に記載の方法。
【請求項62】
対象への前記剤形の繰り返し舌下投与は、前記対象への単回舌下投与後のバイオアベイラビリティより大きいバイオアベイラビリティをもたらす、請求項41に記載の方法。
【請求項63】
対象への前記剤形の単回舌下投与は、変動係数が40%より小さいAUCをもたらす、請求項41に記載の方法。
【請求項64】
対象への前記剤形の単回舌下投与は、変動係数が40%より小さいTmaxをもたらす、請求項41に記載の方法。
【請求項65】
繰り返し舌下投与後のTmaxと前回の舌下投与時のTmaxとの差は、前記対象への単回舌下投与後の前記Tmaxより短い、請求項41に記載の方法。
【請求項66】
前記剤形における前記総薬物量の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、および少なくとも99%からなる群から選択される薬物量は、前記舌下経路によって吸収される、請求項41に記載の方法。
【請求項67】
前記剤形の投与は患者が制御する、請求項39に記載の方法。
【請求項68】
前記方法は、対象における痛みの処置に対するものであり、前記剤形の投与後に前記患者における痛みの緩和が明らかである、請求項39に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図16E】
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【図16F】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20D】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図21D】
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【公表番号】特表2010−531153(P2010−531153A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544899(P2009−544899)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/089017
【国際公開番号】WO2008/085764
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(508202267)エーセルアールエックス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】