説明

経肛門的洗浄用カテーテル

本発明は、患者の直腸内に導入されるために十分に剛性を有する遠位部分(1)であり、曲線的な先端部(3)を設けられている、遠位部分(1)と、洗浄液源に連結されることを目的とする近位部分(2)と、遠位部分(1)の遠位先端(3)に近接している少なくとも1つの開口部(6)を介して開いている、洗浄液用の導管路(5)とを含む経肛門的洗浄用カテーテルに関する。該カテーテルは、カテーテルの遠位部分(1)に、直腸の内側に配置されることを目的とする膨張可能な遠位バルーン(7)および膨張可能な近位バルーン(8)が設けられていることを特徴とする。カテーテルには、さらに、その遠位部分(1)に、近位部分との接合部に近接して、カテーテルの導入を容易にしかつ直腸内へのカテーテルの導入の最大限度を患者に示すマークが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、経肛門的洗浄用カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]経肛門的洗浄は、例えば、腸管における消化器の外科的介入の前に、腸を清浄化し完全に空にするために実施される。経肛門的洗浄はまた、便秘または便失禁(anal incontinence)の場合に管理された方法で腸を空にするために、すなわち、より一般的には、大腸の機能障害の治療のために用いられてもよい。これを行うために、カテーテルが肛門内に導入され、体温に近い温度で結腸内に水が注入される。成人患者では、1リットル以上の体積が注入されることがある。
【0003】
[0003]洗浄液の点滴注入中、この液体の肛門を経由する漏れの問題が起こる。実際には、健康な患者では、糞便自制が肛門括約筋により確実にされる。さらに具体的には、糞便自制は、外括約筋および最も重要なことには内括約筋により確実にされ、そのどちらも、自発的に比較的強い収縮状態に入り、肛門管内に約40mmHgの圧力を生じる。この圧力は、いかなる不随意の糞便物質の漏出も防止するのに十分である。
【0004】
[0004]対照的に、直腸膨大部の内部の静止圧が、僅か2から3mmHg程度と、通常は非常に低い。直腸内圧の急上昇の場合には、第1の直腸肛門反射が内肛門括約筋の弛緩を引き起し、同時に、第2の直腸肛門反射が、何か不随意の糞便物質の漏出を防止するために、外肛門括約筋の収縮を引き起こす。
【0005】
[0005]洗浄液を投与する装置の肛門管内への導入は、括約筋の機能にとって異質な不活性物体であるという単純な事実により、肛門禁制(anal continence)を弱めるのに十分である。さらに、経肛門的洗浄は、結腸、直腸および肛門の正常な機能が混乱しており、その結果として多くの場合は肛門禁制も混乱している患者に用いられる。したがって、洗浄液の投与に簡単な管または簡単なカテーテルを使用することは、使用中の液体の大量漏れおよび非常に低い快適度の原因になることが考えられるので、不十分であると考えられる。
【0006】
[0006]液体の経肛門的注入のための装置が、長年の間既知であり、例えば、巨大な注射器状物体による直腸内への浣腸剤液の注入の実践は、「浣腸」の名で知られており、それには多数の変形形態が存在した。より最近(1970年)、若干異なる場合では、例えば直腸バルーンカテーテル(米国特許第3,509,884)を用いた造影液の経肛門的注入用カテーテルに関する提案がなされた。このカテーテルは、注射器状物体を使用して空気でバルーンが膨張すると、肛門管を通って直腸内に導入される。主バルーンの2または3cm下方にカテーテル上に互いに対向して配置されている、2つの小さい付加的なバルーンが、内部バルーンと同時に膨張し、カテーテルが深く導入され過ぎないように施術者にマーカを提供する。しかし、腸内への造影液の注入は分離した施術であり、漏れを最小限にしかつ生み出されたものを難なく処理するようにカテーテルおよび造影液を取り扱うことができる治療奉仕者により実施される。しかし、経肛門的洗浄は、大抵の場合、長期間に亘って、患者自身により週に2から3回の洗浄の割合で定期的に実施されなければならない施術である。さらに、これらの患者は、神経学的欠陥(延髄病変、多発性硬化症)に起因して、手先の器用さが低下していることが非常に多く、これら患者に可能な限り簡潔な点滴注入手順を与えることおよび洗浄液の点滴注入段階中の漏れを最大限に回避することが必要不可欠である。直腸内バルーンだけでは、この水密効果を確実にするのは不十分と思われる。
【0007】
[0007]より最近、さらに別の場合(慢性便失禁を患う患者からの液状便の収集)では、ダブルバルーンシステムにより水密効果が得られる装置が開発されており、該システムでは、第1のバルーン室が、直腸内に導入されるカテーテルの一部上に見られ、第2のバルーン室が、カテーテルの導入深さを制限するために該室が肛門の外側に配置されているように、第1のバルーン室に対して配置されている。この種の装置は、例えば、国際公開第2008/103788(A1)号文献に記載されている。この種の装置の欠点は、便排出管が便の吸引中に詰まることを回避するために、該管の直径が必然的に非常に大きいことである。このため、この装置の配置は難しく、それをより容易にするために、特別な挿入付属品を使用することが推奨される。
【0008】
[0008]本発明による経肛門的洗浄カテーテルが予定されている患者人口を考慮すると、特別な挿入装置の使用は不可能である。さらに、本発明によるカテーテルの直径は、導入を容易にしかつ洗浄液の点滴注入段階中の装着を可能な限り快適にするために、可能な限り小さくあるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0009]本発明の目的は、患者に優れた快適さももたらすと同時に、相当量の液体を用いた経肛門的洗浄のための十分な水密効果を有する経肛門的洗浄用カテーテルを作り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0010]本発明に基づき、以下に記載されている特徴を有するカテーテルを用いれば、この目的は達成される。
[0011]本発明に基づき、経肛門的洗浄用カテーテルは、
−患者の直腸内に導入されるために十分に剛性を有する遠位部分であり、曲線的な先端部を設けられている、遠位部分と、
−洗浄液源に連結されることを目的とする近位部分と、
−遠位部分の遠位先端部に近接している少なくとも1つの開口部を介して開いている、洗浄液を導く管路と
を含む。
【0011】
[0012]本発明によるカテーテルは、カテーテルの遠位部分に、膨張可能な遠位バルーンと膨張可能な近位バルーンとが設けられており、そのどちらもが患者の直腸の内側に配置されることを目的とすることを特徴とする。遠位バルーン(または直腸バルーン)はより大きな拡張性を有し、したがって、等圧で、近位バルーン(または肛門バルーン)より大きい直径を有することが好ましい。さらに、カテーテルは、その遠位部分上に、近位部分との接合部に近接して、カテーテルの導入を容易にしかつ直腸内へのカテーテルの導入の最大限度を患者に示すマークを有する。このことは、もはや肛門領域に感覚がなく、カテーテルの適切な導入深さを別の方法で判断することができないと考えられる対まひ患者に特に重要である。
【0012】
[0013]本発明によるカテーテルは、最先端技術と比較して、2つの膨張可能なバルーンが直腸(肛門管および直腸膨大部)内に導入されるカテーテルの一部に配置されているという特殊性を示す。前述の既知のカテーテルでは、カテーテルは、単に、遠位バルーンにより直腸膨大部内に留められており、2つの外付けバルーンは、単に、深すぎる導入を防止する誘導装置としての機能を果たすに過ぎないか、または、カテーテルは、2つのバルーンにより固定され、一方は直腸内に配置され、他方は肛門の外側に配置され、カテーテルは、このように肛門括約筋の辺りに固定される。
【0013】
[0014]直腸の内部構造および生理学的機能または生理病理学的機能は、異なる拡張性および等圧で異なる大きさを有する2つのバルーンを収容するのに適している。実際、直腸内への液体の点滴注入中に肛門を経由する洗浄液の漏れを防止するために、カテーテルと直腸および括約筋(肛門管)の壁との間の接合は、可能な限り水密にされていなければならない。この水密効果は、本発明によれば、直腸の内部に配置されるカテーテルのやはり遠位部分上に配置されている第2のバルーンにより得られる。この第2のバルーンは、第1のバルーンに対して近位位置に、したがって、直腸の末端領域内にすなわち肛門管内に見られ、該バルーンは遠位バルーンの拡張性より低い拡張性を有することが好ましい。
【0014】
[0015]2つのバルーンは、互いに有利に空気連通していることが好ましい。このことにより、直腸の2つの各領域(直腸膨大部および肛門管)の圧力変化に厳密に基づいて、洗浄液の点滴注入段階中に膨張空気が2つのバルーンの各々を膨張させることが可能になり、その結果、2つのバルーンの膨張圧が肛門管の閉鎖圧より依然として低いので、さらに肛門管を膨張させることなく、特に肛門管の壁と近位バルーンの表面との間に最適な接合を得る。詳細には、洗浄液の点滴注入中、直腸膨大部における圧力の増大は、反射により内肛門括約筋の弛緩を引き起こす可能性があり、次いで、2つのバルーン間の連通は、遠位バルーン内の空気が近位バルーンの方へ移動することを可能にし、その結果、(内括約筋が膨張するので)体積が若干増大し、したがって、肛門管の壁との密封を維持することができる。
【0015】
[0016]カテーテルの近位部分は、少なくとも部分的に可撓性であることが好ましい。このことにより、より優れた使用快適性が可能になる。患者は、自身にとって最も快適な位置にカテーテルを導入することができ、洗浄液源がカテーテルと容易に連結可能であり得るように、手で触れることができるカテーテルの近位部分を曲げることができる。カテーテルの近位部分は、遠位部分とひと続きの状態にあるが、例えばカテーテルをトイレに座った姿勢でより容易に使用できるようにするために、真っ直ぐな連結部または角度付き連結部のどちらかにより遠位部分に連結され得る。
【0016】
[0017]バルーンを膨張させるために、手動送風機が設けられることが可能であると考えられる。また、バルーンを膨張させる任意の他の手段が使用され得ると考えられる。バルーンを膨張させるために必要な圧力は、2つのバルーンが前述の目的を達成するのに必要な体積および形状を示すように調節される。
【0017】
[0018]カテーテルの遠位部分上のマークは、環状の出っ張り部またはカラー、特に円錐形カラー、の形をとり、直腸内へのカテーテルの最大導入範囲を患者に示すことが有利である。
【0018】
[0019]本発明によるカテーテルの遠位部分は、潤滑ジェルで覆われており、かつプラスチック薄膜から作製された防護皮膜を設けられていることが好ましい。この皮膜は、遠位端においてカテーテルの導入の直前に開いていることが好ましく、該皮膜は、直腸内へのその導入中に近位端の方向に折り畳まれることまたは完全に除去されることのどちらかが可能である。したがって、カテーテルは、包装され使用の準備ができた状態で配達される場合がある。患者は、もはやカテーテルを潤滑ジェルで覆う必要はないが、単に包装を解く必要があり、カテーテルを直ちに使用することができる。カテーテルは殺菌されていることが好ましい。
【0019】
[0020]本発明の一実施形態が、添付の図の助けを以て、以下にさらに詳細に例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による肛門カテーテルの概略平面図である。
【図2】導入状態にある、本発明による肛門カテーテルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0021]図1は、本発明による経肛門的洗浄用カテーテルの概略平面図を示す。該カテーテルは、遠位部分1と近位部分2とを含む。遠位部分1は、患者の直腸内に導入されるために十分に剛性を有する。該遠位部分には、曲線的な先端部3が設けられている。近位部分には、洗浄液源への連結のためのコネクタ4が設けられている。カテーテルは、さらに、洗浄液のための導管5を有し、前記導管は、遠位部分1の曲線的な先端部3に近接している少なくとも1つの開口部6内に開いている。
【0022】
[0022]カテーテルの遠位部分には、直腸の内側に配置されることを目的とする2つの膨張可能なバルーン7、8が設けられている。該バルーンは、手動ポンプ20により膨張することができる。
【0023】
[0023]図では、バルーン7、8は、膨張した状態で示されている。それらは、同時に膨張することが好ましい。
[0024]さらに、カテーテルの遠位部分1は、前記遠位部分が近位部分2に連結されるその近位端に、円錐形カラー9を有することに留意すべきである。このカラー9は、直腸内にカテーテルを導入するべき深さを患者に示す。次いで、カテーテルのバルーンは膨張することができ、カテーテルは、この位置に固定される。
【0024】
[0025]図2は、図1の型のカテーテルの長手方向断面を示す。遠位部分1が示されており、該遠位部分は、曲線的な先端部3を有し、患者の直腸10内に導入されるために十分に剛性を有するように作製されている。曲線的な先端部3は、導管4を介して洗浄液源(図示せず)と接続されている出口開口部6を有する。遠位部分1には、さらに、互いに連通しておりかつ同時に膨張する2つのバルーン7、8が設けられている。カテーテルは、バルーンが膨張していない状態で患者の直腸内に導入され、次いで、バルーンは膨張させられる。2つのバルーン間の連通により、それらの各体積および形状が直腸の形態に最適であり、その結果、最適な水密効果が生じるが、患者の不快感覚を引き起こすことがないように、膨張空気は2つのバルーン間に送達される。
【0025】
[0026]本発明は、例示として前述されている。しかし、当業者が、本発明の範囲から逸脱することなく、経肛門的洗浄用カテーテルの異なる変形形態を実施することができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経肛門的洗浄用カテーテルであって、
患者の直腸内に導入されるために十分に剛性を有する遠位部分(1)であり、曲線的な先端部(3)を設けられている、遠位部分(1)と、
洗浄液源に連結されることを目的とする近位部分(2)と、
前記遠位部分(1)の前記遠位先端部(3)に近接している少なくとも1つの開口部(6)を介して開いている、洗浄液用の導管路(5)と
を含む、経肛門的洗浄用カテーテルにおいて、
前記カテーテルの前記遠位部分(1)には、前記直腸の内側に配置されることを目的とする膨張可能な遠位バルーン(7)および膨張可能な近位バルーン(8)が設けられており、
前記カテーテルの前記遠位部分(1)は、前記近位部分との接合部に近接しているマーク(9)を有する
ことを特徴とする、カテーテル。
【請求項2】
前記近位部分(2)は、少なくとも部分的に可撓性であることを特徴とする、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記2つのバルーン(7、8)は、同時に膨張可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記2つのバルーンの内部は空気連通していることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記遠位部分(1)上の前記マークは、環状の出っ張り部またはカラー(9)の形をとることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記遠位バルーン(7)は、前記近位バルーン(8)より大きな拡張性を有することを特徴とする、請求項1から5の一項に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記遠位部分(1)の表面は、潤滑ジェルで覆われており、開封後に折り返されることが可能である水密プラスチック薄膜のスリーブにより防護されていることを特徴とする、請求項1から6の一項に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記遠位部分(1)の表面は、潤滑ジェルで覆われており、水密で除去可能なプラスチック薄膜のスリーブにより防護されていることを特徴とする、請求項1から6の一項に記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−500751(P2013−500751A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522032(P2012−522032)
【出願日】平成22年7月31日(2010.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004691
【国際公開番号】WO2011/012323
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512025595)ビー.ブラウン・メディカル・ソシエテ・パール・アクシオンス・サンプリフィエ (2)
【Fターム(参考)】