説明

経路作成装置

【課題】経路中の冠水領域を考慮する場合において、より最適な経路を作成することのできる経路作成装置を提供する。
【解決手段】経路作成装置1は、車両Mの周辺の冠水に関する情報を取得し、取得された冠水情報に基づいて、二次電池15による駆動によって冠水の可能性のある冠水領域を車両Mが通行できるか否かの判定を行い、当該判定結果に基づいて経路の作成を行う。これによって、車両Mは、冠水しているものの二次電池15によるモータ走行で通行可能な経路も走行することができる。このように、経路作成装置1は、二次電池15の駆動による通行可能性も考慮した判定を行うため、必要以上に遠回りな経路を作成することを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の経路を作成する経路作成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の経路作成装置として、特許文献1に示すものが知られている。この経路作成装置は、車両などの移動体が走行する経路を作成することができる。更に、経路作成装置は、ナビゲーションシステム及び冠水センサに基づいて、経路中における冠水道路を検知することができる。経路作成装置は、冠水する可能性がある道路を経路上に検出した場合、冠水道路を避けるような経路を作成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−341795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の経路作成装置は、冠水道路を避けるような経路を作成しつつも、大きく迂回しすぎることのない経路を作成することも求められていた。すなわち、従来の経路作成装置は、安全性を確保すると同時に、迅速性も確保することのできる最適な経路を作成することが求められていた。
【0005】
従って、本発明は、経路中の冠水領域を考慮する場合において、より最適な経路を作成することのできる経路作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る経路作成装置は、二次電池により駆動する駆動手段を備える移動体の経路を作成する経路作成装置であって、冠水の可能性に関する情報を取得する冠水情報取得手段と、冠水情報取得手段で取得された冠水情報に基づいて、二次電池による駆動によって、冠水の可能性のある冠水領域を移動体が通行できるか否かの判定を行う通行判定手段と、通行判定手段の判定結果に基づいて、経路を作成する経路作成手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る経路作成装置は、冠水情報取得手段によって経路中の冠水情報を取得することができると共に、経路作成手段によって冠水情報を考慮した経路を作成することができる。ここで、例えば、エンジンなどのように外気との吸・排気系を必要とする駆動手段のみを有する移動体は、冠水領域を移動することはできない。一方、二次電池による駆動手段を備える移動体は、外気との吸・排気系をバルブや弁などで密閉しておくことで、冠水領域を移動することができる。本発明に係る経路作成装置の通行判定手段は、所定の領域が冠水しているとの情報を得たとしても、二次電池による駆動によって移動体が当該冠水領域を通行可能であるか否かの判定を行うことができる。通行判定手段を備えていない経路作成装置は、経路中に冠水の可能性がある領域が存在するか否かのみを判定し、冠水の可能性がない経路のみを選択する。この場合、大きく遠回りになる経路が作成される可能性がある。一方、本発明に係る経路作成装置は、二次電池の駆動による通行可能性も考慮した判定を行うため、必要以上に遠回りな経路を作成することを抑制することができる。以上により、本発明に係る経路作成装置は、より最適な経路を作成することができる。
【0008】
また、本発明に係る経路作成装置において、経路作成手段は、経路の候補となる候補経路を複数作成すると共に、候補経路をそれぞれ評価することによって経路を作成し、経路作成手段は、通行判定手段によって通行可能であると判定された冠水領域を通行する経路を候補経路として作成し評価することが好ましい。経路作成装置は、冠水領域が二次電池による駆動で通行可能と判定された場合、当該冠水領域を通行する経路も候補経路として評価することができる。これによって、経路作成装置は、他の評価項目(例えば、距離や右左折の多さなど)に冠水リスクも評価項目として入れることができる。これによって、経路作成装置は、冠水リスクや他の評価項目を総合的に評価して、最も最適な経路を作成することができる。
【0009】
また、本発明に係る経路作成装置において、通行判定手段は、冠水領域の通行に対する二次電池のバッテリー性能、あるいはバッテリー状態に基づいて、判定を行うことが好ましい。これによって、経路作成装置は、移動体が冠水領域を走行している途中にバッテリー切れとなることを確実に防止することができる。また、経路作成装置は、二次電池のバッテリー性能やバッテリー状態に基づいて判定することで、冠水領域の通行可能性の判定をより詳細に行うことができる。以上より、経路作成装置は、一層最適な経路を作成することができる。
【0010】
また、本発明に係る経路作成装置において、冠水情報取得手段は、移動体の停止中に、停止位置における冠水情報を取得することが好ましい。これによって、経路作成装置は、移動体の停止中(例えば、車両が駐車中である場合など)であっても停止位置における冠水状況を所定のタイミングで監視することができる。従って、停止位置で冠水が発生した場合に、移動体が自動的に避難することができる。これによって、移動体は、停止中であっても冠水から逃げ遅れることなく、安全な場所へ避難することができる。
【0011】
また、本発明に係る経路作成装置において、経路作成手段は、冠水情報取得手段で取得された冠水情報に基づいて、停止位置から避難する避難経路を作成し、避難経路は、避難先のリスクの評価、あるいは停止位置と避難先との間の経路のリスクの評価に基づいて作成されることが好ましい。評価を行うことなく移動体を避難させる経路作成装置は、移動体を避難先まで到達させることができない可能性もある。しかしながら、本発明に係る経路作成装置は、取得した冠水情報に基づいて、避難先や経路のリスクの評価を行うことによって、確実に車両Mを避難させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、経路中の冠水を考慮する場合において、より最適な経路を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る経路作成装置のブロック構成を示す図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る経路作成装置の制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図3】経路作成の内容の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る経路作成装置の詳細なブロック構成を示す図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る経路作成装置の制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第三実施形態に係る経路作成装置の制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第四実施形態に係る経路作成装置の制御処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る経路作成装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態に係る経路作成装置1のブロック構成を説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る経路作成装置1のブロック構成を示す図である。経路作成装置1は、車両などの移動体の移動経路を作成する機能を有している。また、経路作成装置1は、作成した経路に従って車両を制御する機能を有している。経路作成装置1は、駆動手段としてエンジン及び二次電池によるモータを備えるFC/HVシステム等を搭載した自動運転車両Mに適用される。図1に示すように、経路作成装置1は、車両制御コンピュータ群(冠水情報取得手段、通行判定手段、経路作成手段)2、車両アクチュエータ群3、車載センサ4、通信器5、位置センサ6、防水装置7を備えている。
【0016】
車両制御コンピュータ群2は、車両Mの経路を作成すると共に、走行に関する制御を行う機能を有している。車両制御コンピュータ群2は、各種センサや通信器から情報を取得し、それらの情報に基づいて経路を作成することができる。車両制御コンピュータ群2は、作成した経路を車両Mが走行するように、車両アクチュエータ群3へ制御信号を出力する機能を有している。車両アクチュエータ群2は、車両Mに水が浸入することを防止するために、防水装置7へ制御信号を出力する機能を有している。本実施形態では、車両制御コンピュータ群2は、現在位置に冠水の可能性があることを判定した場合や、経路中に冠水の可能性があることを判定した場合に、経路の再設定をする機能を有している。また、車両制御コンピュータ群2は、複数の候補経路を作成すると共に、各候補経路について冠水のリスクを算出することができる。車両制御コンピュータ群2は、候補経路内の所定の領域について、冠水により通行できるか否かを判定することができる。更に、車両制御コンピュータ群2は、冠水の可能性の高い冠水領域があっても、二次電池によるモータ走行によって車両Mが当該冠水領域を通行できるか否かを判定することができる。また、車両制御コンピュータ群2は、判定結果に基づいて、各候補経路を評価すると共に選択し、走行すべき経路を作成する機能を有している。
【0017】
車両アクチュエータ群3は、車両制御コンピュータ群2からの制御信号に基づいて、車両Mの加減速や操舵を行う機能を有している。具体的には、車両アクチュエータ群3は、ブレーキ11、エンジン12、モータ13、操舵ACT14、二次電池15などを備えている。車両アクチュエータ群3は、エンジン12を駆動手段とすることができ、モータ13を駆動手段とすることができる。モータ13による走行モードに設定されているとき、モータ13は、二次電池15の電力を使用する。一方、エンジン12による走行モードに設定されているとき、エンジン12は、二次電池15の充電を行うことができる。
【0018】
車載センサ4は、車両Mの現在位置における冠水情報を検知する機能を有している。具体的に、車載センサ4は、車両Mに搭載された冠水検知センサや水位検知センサによって構成されている。車載センサ4は、車両Mの現在位置における冠水の有無や水位を検知することができる。車載センサ4は、取得した冠水情報を車両制御コンピュータ群2へ出力する。通信器5は、車両Mの周りの広範囲にわたる冠水情報を取得する機能を有している。具体的に、通信器5は、路車間通信器や車車間通信器などによって構成されている。また、通信器5は、ナビゲーションシステムなどから得られる情報も取得することができる。通信器5は、降雨情報、天気予報などの冠水を引き起こしうる要因に関する情報を取得することができる。更に、通信器5は、道路地図や地形情報などの道路情報、低地やガードや河川などの冠水リスク情報を取得することができる。また、通信器5は、冠水の可能性がない場所に関する情報も取得することができ、例えば、避難場所に関する情報を広範囲にわたって取得することができる。通信器5は、取得した冠水情報を車両制御コンピュータ群2へ出力する。位置センサ6は、車両Mの現在位置を取得する機能を有している。位置センサ6は、取得した現在位置に関する情報を車両制御コンピュータ群2へ出力する機能を有している。車載センサ4、通信器5及び位置センサ6は、経路中の所定の領域における冠水の可能性に関する情報、すなわち冠水情報を取得して車両制御コンピュータ群2へ出力するものとして機能する。
【0019】
防水装置7は、冠水経路を車両Mが走行する際に、車両M内に水が入りこむことを防止する機能を有するものである。防水装置7は、具体的には、エンジン12の吸気系や排気系、あるいはエアコンの外気系に対して設けられたバルブや弁によって構成されている。防水装置7は、車両制御コンピュータ群2から出力された制御信号に基づいて作動する。
【0020】
次に、図2及び図3を参照して、本発明の第一実施形態に係る経路作成装置1の制御処理の内容について説明する。図2は、本発明の第一実施形態に係る経路作成装置1の制御処理の内容を示すフローチャートである。図3は、経路作成の内容の一例を示す図である。なお、図2の制御処理は、経路作成装置1が既に経路を作成しており、車両Mが当該経路に従って走行している場合の処理である。
【0021】
図2に示すように、車両制御コンピュータ群2は、車載センサ4、通信器5、及び位置センサ6から各種情報を取得する(ステップS100)。具体的に、車両制御コンピュータ群2は、現在位置における冠水情報、広範囲にわたる冠水情報、及び車両Mの現在位置に関する情報を取得する。次に、車両制御コンピュータ群2は、S100で取得した情報に基づいて、現在位置において冠水が発生するか否かの判定、及び現在走行している経路における冠水情報に変化があったか否かを判定する(ステップS110)。冠水情報の変化とは、経路作成時には経路中の冠水のリスクがなかったのに、時間の経過により道路に水がたまり、経路中の冠水のリスクが生じるような状況である。
【0022】
車両制御コンピュータ群2は、S110において、現在位置で冠水が発生していると判定し、あるいは、冠水情報に変化があると判定した場合、経路の再検索を行う(ステップS120)。車両制御コンピュータ群2は、経路の候補となる複数の候補経路を設定する。図3に示す例は、車両Mが現在位置から目的地OBまで移動する場合に作成される経路を示している。初期状態においては、経路作成装置1は、目的地OBへの最短距離である経路L1を設定していた。このとき、降雨により経路L1におけるガード下の領域W1が冠水したとする。このとき、車両制御コンピュータ群2は、現在の経路における冠水情報に変化があったと判定し、S120に移行する。S120では、車両制御コンピュータ群2は、候補となる経路として、候補経路L1、候補経路L2、候補経路L3を設定する。候補経路L1は、最も短距離で目的地OBへ到達できるが、大きな冠水領域W1を有している。候補経路L2は、候補経路L1より遠回りになるが、冠水領域W1より小さい冠水領域W2を有している。候補経路L3は、最も遠回りになるが、冠水領域を有していない。
【0023】
車両制御コンピュータ群2は、S120において再検索された候補経路について、通行判定を行う(ステップS130)。車両制御コンピュータ群2は、取得した冠水情報に基づいて、車両Mが各候補経路を通行可能か否かの判定を行う。車両制御コンピュータ群2は、候補経路中の所定の領域に対して判定を行い、判定結果に応じて当該候補経路に対してリスク付けを行う。本実施形態では、車両制御コンピュータ群2は、三段階に分けて判定することができ、判定条件(I)、判定条件(II)、判定条件(III)を判定することができる。判定条件(I)は、「冠水や水没などによって通行不能」である。判定条件(II)は、「冠水しているが、二次電池によるモータ走行により通行可能」である。判定条件(III)は、「冠水していない」である。車両制御コンピュータ群2は、判定条件(I)を満たす領域に対して最も高くリスク付けし、判定条件(III)を満たす領域に対して最も低くリスク付けする。図3に示す例において、候補経路L1の冠水領域W1は、モータ走行によっても通行することはできない。従って、車両制御コンピュータ群2は、冠水領域W1が判定条件(I)を満たしていると判定する。候補経路L2の冠水領域W2は、冠水しているものの、モータ走行によって通行可能である。従って、車両制御コンピュータ群2は、冠水領域W2が判定条件(II)を満たしていると判定する。候補経路L3は、冠水領域を有していない。従って、車両制御コンピュータ群2は、候補経路L3の全領域が判定条件(III)を満たしていると判定する。
【0024】
車両制御コンピュータ群2は、S130の判定結果に基づき、候補経路の評価を行うと共に、各候補経路の中から一つ選択し、経路を作成する(ステップS140)。車両制御コンピュータ群2は、S130における各候補経路のリスクも評価対象に加え、各候補経路の評価を行う。車両制御コンピュータ群2は、評価結果に基づいて、最も評価の高い(つまりリスクの低い)候補経路を選択し、経路を作成する。図3に示す例では、候補経路L2は、二次電池を使用することにより冠水領域W2を通行可能であると共に、候補経路L3よりも短い距離で目的地へいける経路である。従って、車両制御コンピュータ群2は、候補経路L2を選択することができる。
【0025】
車両制御コンピュータ群2は、初期の経路では冠水の可能性があった旨を運転者に通知すると共に、新たに作成された経路を案内する(ステップS150)。更に、車両制御コンピュータ群2は、車両アクチュエータ群3へ制御信号を出力し、車両Mが作成した経路に従って走行するように、当該車両Mを制御する(ステップS160)。次に、車両制御コンピュータ群2は、車両Mが目的地に到着したか否かを判定する(ステップS170)。車両制御コンピュータ群2がS170において到着したと判定すると、図2に示される制御処理が終了する。一方、車両制御コンピュータ群2は、S170において到着していないと判定すると、S100から再び処理を繰り返す。
【0026】
初期に設定した経路において冠水情報に変化がない場合、車両制御コンピュータ群2は、S110において、冠水情報に変化なしと判定する。車両制御コンピュータ群2は、引き続き既に設定している経路に従って車両Mを制御する(ステップS160)。また、車両制御コンピュータ群2は、車両Mが目的地に到着したか否かを判定する(ステップS170)。車両制御コンピュータ群2がS170において到着したと判定すると、図2に示される制御処理が終了する。一方、車両制御コンピュータ群2は、S170において到着していないと判定すると、S100から再び処理を繰り返す。
【0027】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る経路作成装置1のより具体的な構成及び動作内容について説明する。図4は、本発明の第一実施形態に係る経路作成装置1の詳細なブロック構成を示す図である。図4に示すように、経路作成装置1を搭載する車両Mは、エンジン101、モータ102、バッテリー103を備えている。また、経路作成装置1は、車両M内に、車両制御コンピュータ群として機能する各種ECUを備えている。具体的には、経路作成装置1は、HVECU104、ブレーキECU105、操舵ECU107、自動運転ECU(冠水情報取得手段、通行判定手段、経路作成手段)110を備えている。また、経路作成装置1は、避難先などをオーナーへ伝達するための携帯端末108を備えている。また、経路作成装置1は、降雨情報を検知する雨滴センサ202、及び冠水を検知する冠水センサ204を備えている。これによって、車両M自身で、道路の冠水、降雨情報を検知することができる。また、経路作成装置1は、車両M周辺の冠水情報を広域にわたって取得することのできる通信器201を備えている。この通信器201は、路車間通信、車車間通信、多重放送などの通信器である。通信器201は、降雨情報、天気予報など、冠水に関連するあらゆる情報を、冠水の可能性情報300として取得することができる。経路作成装置1は、車両Mの現在位置情報304を取得することのできる現在位置センサ203を備えている。現在位置センサ203は、GPSなどによって構成されている。経路作成装置1は、各種情報を含んだ地図情報200を保持している。地図情報200には、道路情報301、冠水リスク情報302、避難先情報303が含まれている。道路情報301は、道路の形状や地形など、経路の算出に用いられる情報を有している。冠水リスク情報302は、低地、ガード、河川の氾濫など、車両周辺において冠水のリスクがある領域に関する情報を有している。避難先情報303は、駐車場所が冠水する場合に避難すべき避難先に関する情報を有している。車両Mは、冠水領域を通行するときに水が入り込む可能性のある箇所として、エアコン220のエアコン外気系221、エンジン101の吸気系230、及びエンジン101の排気系232を備えている。本実施形態に係る経路作成装置1を搭載した車両Mは、車内に水が入らないように、エアコン外気系221に設けられたバルブ222、吸気系230に設けられたバルブ231、及び排気系232に設けられたバルブ233を備えている。
【0028】
図4に示す経路作成装置1の自動運転ECU110は、地図情報200、通信器201で取得される冠水可能性情報300、現在位置情報304、及び冠水センサ204や雨滴センサ202などの情報に基づいて、現在位置における冠水リスクや経路内における冠水リスクを判定する機能を有している。また、自動運転ECU110は、HVECU104、ブレーキECU105、操舵ECU107を制御して自動運転を行う機能を有している。本実施形態では、自動運転ECU110は、HVECU104を制御することによって、モータ102のみによるモータ走行と、エンジン101兼用のHV走行を切り替えることができる。自動運転ECU110は、冠水時に、バルブ222,231,233を制御することによって、車両Mに水が浸入することを防止する機能を有している。
【0029】
次に、図4に示す経路作成装置1が図2に示す制御処理を行った場合における動作について説明する。なお、第一実施形態に係る制御処理においては、冠水センサ204、雨滴センサ202、携帯端末108は必須の構成ではない。車両Mは、初期状態において、所定の目的地に対して作成された経路に従い、自動運転によって走行している。図3に示す例では、経路L1が設定されている。自動運転ECU110は、毎周期ごとに、現在位置センサ203から現在位置情報304を取得すると共に、冠水センサ204により現在位置における冠水状況を取得し、通信器201によって広範囲にわたる冠水の可能性情報300を取得する。自動運転ECU110は、現在位置が冠水しているか否かの判定を行うと共に、どの程度冠水しているかの判定を行う。また、自動運転ECU110は、冠水の可能性情報300及び現在位置情報304に基づいて、現在予定している走行ルートに冠水のリスクが発生しているか否かを判定する。
【0030】
自動運転ECU110は、現在位置に冠水がないと判定した場合や、走行ルートに冠水のリスクがないと判定した場合や、予め予測していたリスクに変化がないと判定した場合、引き続き車両制御を行う。また、自動運転ECU110は、車両Mが目的地に到着したか否かの判定を行うと共に、到着した場合は運転者に通知し、制御を終了する。
【0031】
自動運転ECU110は、予め予測していたリスクと、新たに演算したリスクとを比較し、条件が規定値以上変化したと判定した場合、リルート設定を行う。このとき、自動運転ECU110は、候補経路における各冠水領域のリスクを、例えば上述の判定条件(I),(II),(III)に分類し、リスク付けを行う。自動運転ECU110は、判定条件(I)を満たす領域に対してはリスクを無限大としてリスク付けし、判定条件(II)を満たす領域に対してはリスクを所定の値Aとしてリスク付けし、判定条件(III)を満たす領域に対してはリスクを0としてリスク付けする。自動運転ECU110は、各候補経路に対してリスク判定を行うと共に、当該判定結果に基づいてリスク加算する。これによって、自動運転ECU110は、各候補経路に対するリスクを算出する。
【0032】
次に、自動運転ECU110は、各候補経路に対する評価関数に、算出したリスクを加える。自動運転ECU110は、例えば、(候補経路の評価値)=F(冠水リスク,道路のナビゲーションルートの評価値)という関数によって、候補経路の評価値を演算する。これによって、自動運転ECU110は、距離や右左折、道路等級などの評価対象と同様に、冠水リスクも評価対象に加えた状態で、各候補経路を評価することができる。自動運転ECU110は、最も評価の高い候補経路を選択し、新たな経路として設定する。図3に示す例では、自動運転ECU110は、候補経路L1は判定条件(I)を満たす冠水領域W1を有しているため、当該候補経路L1を低く評価する。また、自動運転制御ECU110は、候補経路L3は全ての領域で判定条件(III)を満たしているものの、大きく遠回りするという点で当該候補経路の評価を下げる。一方、自動運転制御ECU110は、候補経路L1は冠水領域W2を有するものの、当該冠水領域W2は判定条件(II)を満たすものであり、候補経路L3に比して走行距離が短くなるという点で候補経路L3を高く評価する。自動運転ECU110は、総合的に評価することにより、候補経路L2を選択することができる。自動運転ECU110は、冠水領域が見つかった旨、及びリルートする旨を運転者に案内するようにモニターなどに制御信号を出力し、新たな経路に従って走行制御を行う。次回の周期における判定においては、自動運転ECU110は、取得した冠水リスクが規定値以上変化していない限りは、同じ経路を用いて制御する。自動運転ECU110は、冠水リスクが大きく変化したと判定したときに、再度のリルート処理を行う。
【0033】
次に、第一実施形態に係る経路作成装置1の作用・効果について説明する。経路作成装置1は、経路中の冠水情報を取得することができると共に、冠水情報を考慮した経路を作成することができる。ここで、外気との吸・排気系を必要とするエンジン101のみを有する車両は、冠水領域を有する経路を移動することはできない。一方、二次電池により駆動するモータ102を備える車両Mは、外気との吸・排気系221,230,232をバルブ222,231,233で密閉しておくことで、冠水領域を移動することができる。図3に示す例では、経路作成装置1の自動運転ECU110は、冠水領域W1や冠水領域W2が冠水しているとの情報を得たとしても、バッテリー103による駆動によって車両Mが冠水領域W1,W2を通行可能であるか否かの判定を行うことができる。このような判定を行うことのできない従来の経路作成装置は、経路中に冠水の可能性があるか否かのみを判定し、冠水の可能性がない経路のみを選択する。すなわち、冠水領域W1を有する候補経路L1や冠水領域W2を有する候補経路L2は、経路として選択されない。一方、冠水領域を全く有していない候補経路L3のみが選択される。このように、従来の経路作成装置は、必要以上に大きく遠回りになる経路を作成する可能性がある。第一実施形態に係る経路作成装置1は、二次電池の駆動による通行可能性も考慮した判定を行うため、必要以上に遠回りな経路を作成することを抑制することができる。以上により、第一実施形態に係る経路作成装置1は、より最適な経路を作成することができる。
【0034】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る経路作成装置について、図1、図3及び図5を参照して詳細に説明する。第二実施形態に係る経路作成装置20は、二次電池のバッテリー性能やバッテリー状態に基づいて、車両Mが冠水領域を通行できるか否かを判定できる点で、第一実施形態に係る経路作成装置1と主に相違する。また、経路作成装置20は、冠水領域を通行するために、バッテリー残量が不足している場合に、当該冠水領域にたどり着くまでの充電計画を設定することができる点で、第一実施形態に係る経路作成装置1と主に相違する。図1に示すように、第二実施形態に係る経路作成装置20は、第一実施形態に係る経路作成装置1と同様な構成である。
【0035】
図5及び図3を参照して、本発明の第二実施形態に係る経路作成装置20の制御処理の内容について説明する。図5は、本発明の第二実施形態に係る経路作成装置20の制御処理の内容を示すフローチャートである。なお、図5の制御処理は、経路作成装置20が既に経路を作成しており、車両Mが当該経路に従って走行している場合の処理である。
【0036】
図5に示すように、経路作成装置20は、図2に示す第一実施形態に係る経路作成装置1と同様な処理であるステップS100〜S120を実行する。S120が終了すると、車両制御コンピュータ群2は、S120において再検索された候補経路について、通行判定を行う(ステップS200)。車両制御コンピュータ群2は、取得した冠水情報に基づいて、車両Mが各候補経路を通行可能か否かの判定を行う。車両制御コンピュータ群2は、候補経路中の所定の領域に対して判定を行い、判定結果に応じて当該候補経路に対してリスク付けを行う。本実施形態では、車両制御コンピュータ群2は、更に、二次電池15のバッテリー性能やバッテリー状態に基づいて判定を行うことができる。バッテリー性能を示すパラメータとして、二次電池15のバッテリー容量や、蓄電可能な最大の電力量や、最低充電量などを用いることができる。バッテリー状態を示すパラメータとして、二次電池15のバッテリー残量や、必要充電量などを用いることができる。本実施形態では、車両制御コンピュータ群2は、第一実施形態と同じく判定条件(I)、判定条件(II)、判定条件(III)を判定することができる。更に、車両制御コンピュータ群2は、判定条件(II)を満たす冠水領域に対し、二次電池15に蓄えられた電力量を考慮してリスク付けを行うことができる。具体的に、車両制御コンピュータ群2は、冠水領域を通行するのに必要な電力量を演算する(以下、必要電力量と称する)。車両制御コンピュータ群2は、必要電力量や、冠水領域での車両Mの停止の可能性などのマージン量を算出することができる。車両制御コンピュータ群2は、二次電池15が蓄電することのできる最大の電力量と、必要電力量とを比較することでリスク付けをすることができる。二次電池15の蓄電可能な最大の電力量は、二次電池15のバッテリー容量で決まるため、二次電池15は充電量を増やしたとしてもバッテリー容量を超える電力量を蓄電することはできない。車両制御コンピュータ群2は、必要電力量が二次電池15の蓄電可能な最大の電力量を超えている場合は、判定に係る冠水領域を通行不可として扱うことができる。車両制御コンピュータ群2は、現在位置から判定に係る冠水領域へ至るまでの間の二次電池15の充電量を考慮することもできる。例えば、車両制御コンピュータ群2は、現在におけるバッテリー残量が必要電力量を下回っていると判定したときであっても、充電により必要電力量を確保できる場合は、冠水領域を通行可能として扱うことができる。
【0037】
車両制御コンピュータ群2は、S200の判定結果に基づき、候補経路の評価を行うと共に、各候補経路の中から一つ選択し、経路を作成する(ステップS210)。車両制御コンピュータ群2は、S200における各候補経路のリスクも評価対象に加え、各候補経路の評価を行う。このとき、冠水リスクに加え、充電制御も評価対象に加えることができる。例えば、車両制御コンピュータ群2は、冠水領域を通過するための必要電力量を現在のバッテリー残量で十分補うことができる候補経路を、必要電力量を確保するために充電を必要とする候補経路に比して、高く評価することができる。車両制御コンピュータ群2は、充電制御に関する評価として、例えば、充電に要する時間や充電量を考慮することができる。車両制御コンピュータ群2は、評価結果に基づいて、最も評価の高い候補経路を選択し、経路を作成する。
【0038】
車両制御コンピュータ群2は、S200の判定結果に基づいて充電計画を算出する(ステップS220)。車両制御コンピュータ群2は、現在位置から冠水領域に至るまでの間において、どのように充電制御を行うかを計画する。車両制御コンピュータ群2は、必要に応じて既に設定されている充電計画を変更し、あるいは停止して充電制御を行うような計画を作成する。次に、車両制御コンピュータ群2は、初期の経路では冠水の可能性があった旨を運転者に通知すると共に、新たに作成された経路を案内する(ステップS150)。更に、車両制御コンピュータ群2は、車両アクチュエータ群3へ制御信号を出力し、車両Mが作成した経路に従って走行するように、当該車両Mを制御する(ステップS160)。
【0039】
次に、車両制御コンピュータ群2は、S210で作成した経路内に冠水領域、すなわち、S200において判定条件(II)を満たすと判定された領域が存在するか否かを判定する(ステップS230)。車両制御コンピュータ群2は、S230において冠水領域が存在しないと判定した場合、車両Mが目的地に到着したか否かを判定する(ステップS170)。一方、車両制御コンピュータ群2は、S230において冠水領域が存在すると判定した場合、充電制御を実行する(ステップS240)。S240の充電制御は、S220で計画された充電制御に基づいて実行される。車両制御コンピュータ群2は、S240を実行した後、S170を実行する。車両制御コンピュータ群2がS170において到着したと判定すると、図2に示される制御処理が終了する。一方、車両制御コンピュータ群2は、S170において到着していないと判定すると、S100から再び処理を繰り返す。
【0040】
次に、図4を参照して、第二実施形態に係る経路作成装置20のより具体的な構成及び動作内容について説明する。図4に示すように、経路作成装置20は、第一実施形態に係る経路作成装置1と同様な構成を有している。自動運転ECU110は、予め予測していたリスクと、新たに演算したリスクとを比較し、条件が規定値以上変化したと判定した場合、リルート設定を行う。このとき、自動運転ECU110は、候補経路における各危険領域のリスクを、例えば上述の判定条件(I),(II),(III)に分類し、リスク付けを行う。このとき、自動運転ECU110は、バッテリー103のバッテリー容量を考慮し、蓄電可能な最大の電力量に基づいて、判定条件(II)を更に判定条件(II−a)及び判定条件(II−b)に分類することができる。この判定は、候補経路内における冠水領域を通行するために必要とされる必要電力量と、バッテリー103の蓄電可能な最大の電力量とを比較することによって行われる。判定条件(II−a)は、「必要電力量>蓄電可能な最大の電力量」である。車両Mは、各バルブ222,231,233を密閉してモータ走行したとしても、判定条件(II−a)を満たす冠水領域を通行することはできない。車両Mは、バッテリー103の充電(必要充電量は無限大)に関わらず電力量不足となるからである。判定条件(II−b)は、「必要電力量<蓄電可能な最大の電力量」である。車両Mは、各バルブ222,231,233を密閉してモータ走行することにより、判定条件(II−b)を満たす冠水領域を通行することができる。当該冠水領域を通行するために必要な必要充電量は任意の値が設定される。必要充電量は、現時点におけるバッテリー103のバッテリー残量が多いほど少なくなり、バッテリー残量が少ないほど多くなる。自動運転ECU110は、判定条件(I)を満たす領域に対してはリスクを無限大としてリスク付けし、判定条件(III)を満たす領域に対してはリスクを0としてリスク付けする。また、自動運転ECU110は、判定条件(II−a),(II−b)を満たす領域に対してはリスクを所定の関数で得られる値Aとしてリスク付けする。冠水領域に対するリスクAは、冠水領域を通行するのにどの程度のエネルギーを要するかに基づいて求めることができ、例えば、A=f(必要電力量)やA=f(必要充電量)などによって算出することができる。自動運転ECU110は、各候補経路に対してリスク判定を行うと共に、当該判定結果に基づいてリスク加算する。これによって、自動運転ECU110は、各候補経路に対する冠水リスクを算出する。
【0041】
次に、自動運転ECU110は、各候補経路に対する評価関数に、算出した冠水リスクを加える。自動運転ECU110は、例えば、(候補経路の評価値)=F(冠水リスク,道路のナビゲーションルートの評価値)という関数によって、候補経路の評価値を演算する。これによって、自動運転ECU110は、距離や右左折、道路等級などの評価対象と同様に、冠水リスクも評価対象に加えた状態で、各候補経路を評価することができる。更に、第二実施形態に係る経路作成装置20は、バッテリー103のバッテリー残量や蓄電可能な最大の電力量も考慮した評価を行うことができる。自動運転ECU110は、最も評価の高い候補経路を選択し、新たな経路として設定する。
【0042】
更に、第二実施形態に係る経路作成装置20は、次のような動作をすることもできる。すなわち、自動運転ECU110は、バッテリー103が蓄電可能な最大の電力量、及び充電量に基づいて、判定条件(II)を更に判定条件(II−a)、判定条件(II−b)、判定条件(II−c)、判定条件(II−d)に分類することができる。判定条件(II−a)は、「必要電力量>蓄電可能な最大の電力量」である。車両Mは、各バルブ222,231,233を密閉してモータ走行したとしても、判定条件(II−a)を満たす冠水領域を通行することはできない。車両Mは、バッテリー103の充電(必要充電量は無限大)に関わらず電力量不足となるからである。判定条件(II−b)は、「必要電力量<蓄電可能な最大の電力量」である。車両Mは、各バルブ222,231,233を密閉してモータ走行することにより、判定条件(II−b)を満たす冠水領域を通行することができる。当該冠水領域を通行するために必要な必要充電量は任意の値γが設定される。判定条件(II−c)は、「必要電力量<当該冠水領域に到達した時点で想定される充電量」である。すなわち、車両Mが通常通りの走行制御によって冠水領域に到達した時点におけるバッテリー残量と、必要電力量とが比較される。車両Mは、各バルブ222,231,233を密閉してモータ走行することにより、判定条件(II−c)を満たす冠水領域を通行することができる。当該冠水領域を通行するために必要な必要充電量は任意の値βが設定される。判定条件(II−d)は、「必要電力量<車両Mの最低充電量」である。車両Mは、各バルブ222,231,233を密閉してモータ走行することにより、判定条件(II−d)を満たす冠水領域を通行することができる。当該冠水領域を通行するために必要な必要充電量は任意の値αが設定される。なお、α<β<γとなる。自動運転ECU110は、判定条件(I)を満たす領域に対してはリスクを無限大としてリスク付けし、判定条件(III)を満たす領域に対してはリスクを0としてリスク付けする。また、自動運転ECU110は、判定条件(II−a),(II−b),(II−c),(II−d)を満たす領域に対してはリスクを所定の関数で得られる値Aとしてリスク付けする。リスクAは、各判定条件に設定された固定値を設定することができ、あるいは各判定条件を満たす場合の必要充電量に基づいて設定することができる。リスクAは、判定条件(II−a),(II−b),(II−c),(II−d)の順で低くなる。自動運転ECU110は、各候補経路に対してリスク判定を行うと共に、当該判定結果に基づいてリスク加算する。これによって、自動運転ECU110は、各候補経路に対する冠水リスクを算出する。
【0043】
次に、自動運転ECU110は、各候補経路に対する評価関数に、算出した冠水リスクを加える。自動運転ECU110は、例えば、(候補経路の評価値)=F(冠水リスク,必要充電量,冠水領域に到達した時点で想定される充電量,道路のナビゲーションルートの評価値)という関数によって、候補経路の評価値を演算する。これによって、自動運転ECU110は、距離や右左折、道路等級などの評価対象と同様に、冠水リスクも評価対象に加えた状態で、各候補経路を評価することができる。更に、第二実施形態に係る経路作成装置20は、バッテリー103の蓄電可能な電力量や、充電量も考慮した評価を行うことができる。自動運転ECU110は、最も評価の高い候補経路を選択し、新たな経路として設定する。
【0044】
自動運転ECU110は、冠水領域が見つかった旨、及びリルートする旨を運転者に案内するようにモニターなどに制御信号を出力し、新たな経路に従って走行制御を行う。更に、自動運転ECU110は、走行制御に加えて充電制御も必要な場合は、充電を優先させた制御を行う。次回の周期における判定においては、自動運転ECU110は、取得した冠水リスクが規定値以上変化していない限りは、同じ経路を用いて制御する。自動運転ECU110は、冠水リスクが大きく変化したと判定したときに、再度のリルート処理を行う。
【0045】
以上によって、第二実施形態に係る経路作成装置20は、二次電池15のバッテリー残量や蓄電可能な最大の電力量に基づいて、冠水領域の判定を行うことができる。これによって、経路作成装置20は、冠水領域を走行している途中にバッテリー切れとなることを確実に防止することができる。経路作成装置20は、二次電池15の電力量に基づいて判定することで、冠水領域のリスク付けをより詳細に行うことができる。更に、経路作成装置20は、現時点におけるバッテリー残量が十分でない場合であっても、冠水領域へ到達するまでの充電制御も考慮して判定を行うことができる。これによって、選択できる候補経路を更に増やし、一層最適な経路を作成できる。また、経路作成装置20は、充電制御も計画することができるため、冠水領域を通行するのに必要な電力量を確実に確保することができる。以上より、経路作成装置20は、一層最適な経路を作成することができる。
【0046】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る経路作成装置について、図1、図3及び図6を参照して詳細に説明する。第三実施形態に係る経路作成装置30は、第一実施形態及び第二実施形態に係る経路作成装置の機能に加え、車両Mの駐車中に冠水を検知すると共に車両Mを避難させる機能を有している。図1に示すように、第三実施形態に係る経路作成装置30は、第一実施形態に係る経路作成装置1と同様な構成である。
【0047】
図6及び図3を参照して、本発明の第三実施形態に係る経路作成装置30の制御処理の内容について説明する。図6は、本発明の第三実施形態に係る経路作成装置30の制御処理の内容を示すフローチャートである。なお、図6の制御処理は、車両Mが所定の駐車場所に駐車されている場合の処理である。
【0048】
図6に示すように、車両制御コンピュータ群2は、車載センサ4、通信器5、及び位置センサ6から各種情報を取得する(ステップS300)。具体的に、車両制御コンピュータ群2は、現在位置における冠水情報、広範囲にわたる冠水情報、及び車両Mの現在位置に関する情報を取得する。次に、車両制御コンピュータ群2は、S300で取得した情報に基づいて、現在位置において冠水が発生するか否かの判定をする(ステップS310)。車両制御コンピュータ群2は、S310において冠水が発生しないと判定した場合、一時休止するための定期タイマの設定をする(ステップS320)。その後、車両制御コンピュータ群2は、設定したタイマにしたがって休止状態(Sleep)に入り、設定時間が経過した後、再び起動(Wake Up)する(ステップS320〜S350)。これによって、経路作成装置30は、駐車中に定期的に起動し、駐車場所における冠水を監視することができる。
【0049】
車両制御コンピュータ群2は、S310において、現在位置で冠水が発生していると判定した場合、システムの起動を行う(ステップS360)。車両制御コンピュータ群2は、冠水に関する各種情報を取得する(ステップS370)。S370で取得される情報には、車両Mの周辺の広範囲にわたる冠水情報や、避難先に関する情報や、道路マップや危険度に関するマップが含まれる。
【0050】
車両制御コンピュータ群2は、避難するための避難経路を算出する(ステップS380)。また、車両制御コンピュータ群2は、車両Mのオーナーに対して、避難する旨の通知を行う(ステップS390)。その後、車両制御コンピュータ群2は、作成した避難経路に従って避難するように走行制御を行う(ステップS400)。車両制御コンピュータ群2は、設定された避難先に到着したか否かの判定を行い(ステップS410)、到着していないと判定した場合は引き続きS400の車両制御を行う。車両制御コンピュータ群2は、S410において到着したと判定した場合は、避難完了の旨を車両Mのオーナーに通知し(ステップS420)、図6に示す制御処理を終了し、S320へ移行してタイマ設定を行い、休止状態へ入る。
【0051】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る経路作成装置30のより具体的な構成及び動作内容について説明する。図4に示すように、経路作成装置30は、第一実施形態に係る経路作成装置1と同様な構成を有している。経路作成装置30は、避難動作の初期状態においては、車両Mが駐車され、システムが停止している状態である。このとき、自動運転ECU110も通常停止しているが、定期的に起動され、冠水の監視を行っている。なお、自動運転ECU110は、冠水が検知されたときに、直接起動されてもよい。自動運転ECU110は、起動された後、冠水センサ204からの検知結果に基づいて、駐車場所が冠水しているか否か、及びどの程度冠水しているかの判定を行う。自動運転ECU110は、記憶しておいた情報、あるいは現在位置センサ203からの情報に基づいて現在位置を把握する。また、自動運転ECU110は、通信器201から冠水の可能性情報300を取得し、現在位置において冠水のリスクがあるか否かを判定する。自動運転ECU110は、冠水センサ204による検知結果、判定結果、及び冠水リスク情報302に基づいて、現在位置の冠水のリスクを総合的に判定することができる。
【0052】
自動運転ECU110は、冠水するリスクが無いと判定した場合は、次回の定期的起動の準備を行うと共に、システムを終了させ、休止状態に入る。一方、自動運転ECU110は、冠水するリスクがあると判定した場合は、車両Mのシステム全体を起動させ、避難のための走行制御の準備に入る。具体的には、自動運転ECU110は、通信器201から車両M周辺の広範囲にわたる冠水の可能性情報300を取得し、冠水リスク情報302、避難先情報303、及び道路情報301に基づいて、避難先に到達するための避難経路を算出する。次に、自動運転ECU110は、携帯端末108を用いて、オーナーへ避難する旨、及び避難先を連絡する。自動運転ECU110は、避難経路を走行するように制御量を算出すると共に、操舵ECU107、HVECU104、及びブレーキECU105へ制御信号を出力し、車両Mを制御する。自動運転ECU110は、避難先に到着後、オーナーへ到着の旨を通知すると共に、システムを終了し、休止状態に入る。
【0053】
以上によって、第三実施形態に係る経路作成装置30は、駐車中であっても定期的に起動することができる。これによって、経路作成装置30は、駐車場所における冠水を定期的に監視することができ、自動的に避難することができる。これによって、車両Mは、駐車中であっても冠水から逃げ遅れることなく、安全な場所へ避難することができる。
【0054】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る経路作成装置について、図1、図3及び図7を参照して詳細に説明する。第四実施形態に係る経路作成装置40は、第一実施形態及び第二実施形態に係る経路作成装置の機能に加え、車両Mの駐車中に冠水を検知すると共に車両Mを避難させる機能を有している。更に、第四実施形態に係る経路作成装置40は、避難先及び避難経路の評価を行うことができる点で、第三実施形態に係る経路作成装置30と主に相違している。図1に示すように、第四実施形態に係る経路作成装置40は、第一実施形態に係る経路作成装置1と同様な構成である。
【0055】
図7及び図3を参照して、本発明の第四実施形態に係る経路作成装置40の制御処理の内容について説明する。図7は、本発明の第四実施形態に係る経路作成装置40の制御処理の内容を示すフローチャートである。なお、図7の制御処理は、車両Mが所定の駐車場所に駐車されている場合の処理である。
【0056】
図7に示すように、経路作成装置40は、S300〜S380までは第三実施形態に係る経路作成装置30と同様な処理を行う。ただし、S380の避難経路の算出において、自動運転ECU110は、指定された複数の避難先に対して、複数の候補経路を設定する。避難先の例としては、(a)登録されたオーナーの場所、(b)事前に指定された避難場所、(c)近隣の広域避難所、あるいは(d)近隣の冠水リスクが低い場所(立体駐車場の高層階など)が挙げられる。自動運転ECU110は、これらの避難先に対して複数の候補経路を設定する。自動運転ECU110は、候補となる各避難経路、及び避難先の評価を行う。自動運転ECU110は、「避難先に入れるか?(満車になっていないか、冠水していないか)」や、「当該避難先に到達する経路があるか?」などについて避難先の判定を行う。自動運転ECU110は、判定条件を満たす避難先に対する避難経路の評価を行う。次に、自動運転ECU110は、S430の評価結果に基づいて避難経路の選択を行う(ステップS440)。自動運転ECU110は、リスク値に対して優先順位を係数として加算すると共に、最もリスク値が低い避難経路を選択する。あるいは、自動運転ECU110は、最もリスクが低い避難経路におけるリスク値が所定の閾値以下の場合に、該当する避難経路を選択する。なお、避難先に対する候補経路の設定や各候補経路の評価は、第一実施形態及び第二実施形態に係る経路作成装置で説明された方法によって、行われる。なお、自動運転ECU110は、避難先のうち(a)、(b)、(c)への避難経路が見つからない場合、(d)へ移動するリスクと現在位置にとどまるリスクを比較することで、移動するか否かを決定してもよい。自動運転ECU110は、避難経路を作成した後、第三実施形態に係る経路作成装置30と同様なS390〜S420の処理を実行する。
【0057】
次に、図4を参照して、第四実施形態に係る経路作成装置40のより具体的な構成及び動作内容について説明する。図4に示すように、経路作成装置40は、第一実施形態に係る経路作成装置1と同様な構成を有している。経路作成装置40は、避難する際に、複数の避難先の判定を行うと共に、避難先への候補となる避難経路の評価を行うことができる。自動運転ECU110は、避難先情報303に登録されている各避難先に対して候補となる避難経路を設定する。避難先としては、上述で説明したような(a)、(b)、(c)、(d)のような避難先が挙げられる。更に、自動運転ECU110は、第一実施形態あるいは第二実施形態で説明したような評価方法により、各避難経路を評価する。
【0058】
自動運転ECU110は、通信器201を介して、各避難先の情報を取得すると共に、各避難先が判定条件を満たすか否かを判定する。具体的には、自動運転ECU110は、「避難先に入れるか?」、「当該避難先に到達する経路があるか?」について判定する。自動運転ECU110は、避難先の水没状況(水没しているリスクが高いか)、あるいは避難先の満車状況を考慮することで、避難先に入れるか否かの判定を行う。自動運転ECU110は、判定条件を満たす避難先に対する避難経路のみ、評価を行う。避難先には、優先順位が予め設定されている。自動運転ECU110は、第一実施形態や第二実施形態で説明した評価関数に対し、避難先の優先順位も加味してリスク値を算出する。自動運転ECU110は、リスク値の最も低い避難経路を選択することができる。あるいは、自動運転ECU110は、各避難先を優先順位順に評価し、リスク値が基準値よりも低い避難経路が見つかった時点で、当該避難先に係る避難経路を選択することができる。ただし、自動運転ECU110は、例えば避難先(d)のように優先順位が最も低い避難先まで評価の順番が回ってきた場合、現在位置にとどまるリスクと当該避難先へ避難するリスクを比較する。このとき、自動運転ECU110は、現在位置にとどまるリスクの方が高いと判定した場合、当該避難先へ避難するリスク値が基準値よりも高かったとしても、当該避難先への避難経路を選択する。
【0059】
以上によって、第四実施形態に係る経路作成装置40は、避難先や避難経路の評価を行い、当該評価結果に基づいて避難を行うことができる。評価を行うことなく車両Mを避難させる経路作成装置は、避難先まで到達させることができない可能性もある。しかしながら、経路作成装置40は、取得した情報に基づいて、避難先や避難経路の評価を行うことによって、確実に車両Mを避難させることができる。
【0060】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態における移動体は、エンジン走行及びモータ走行が可能な車両であったが、二次電池による駆動手段を備えるものであればどのような移動体であってもよい。また、第二実施形態に係る経路作成装置20は、必要電力量や蓄電可能な最大の電力量を例にして判定を行っていたが、判定において比較されるパラメータは特に限定されない。所定の冠水領域を通行するのに必要であると推定される所定の推定量に対し、二次電池がどの程度のバッテリー性能を有しており、あるいはどのようなバッテリー状態であるかを比較できるものであれば、どのようなパラメータを用いてもよい。
【0061】
また、本発明に係る経路作成装置は、冠水を検知する機能に加えて、地震、火災、あるいは盗難を検知する機能を有していてもよい。地震を検知する機能を有する経路作成装置は、車載センサとして地震計を備え、広域情報として地震情報や道路の寸法などを取得する。また、当該経路作成装置は、冠水リスクに代えて道路強度、地盤強度などをパラメータとしてリスクの演算を行い、経路を作成する。このような経路作成装置は、第一実施形態や第二実施形態に係る制御処理によりリルートを行い、第三実施形態や第四実施形態に係る制御処理により避難走行を行うことができる。
【0062】
また、火災を検知する機能を有する経路作成装置は、車載センサとして周囲温度や煙を検知するセンサを備え、赤外線センサ画像や可視画像により火災を認識する周辺監視を行い、広域情報として火災情報を取得する。また、当該経路作成装置は、冠水リスクに代えて周辺の延焼や交通規制をパラメータとしてリスクの演算を行い、経路を作成する。このような経路作成装置は、第一実施形態や第二実施形態に係る制御処理によりリルートを行い、第三実施形態や第四実施形態に係る制御処理により避難走行を行うことができる。
【0063】
また、盗難を検知する機能を有する経路作成装置は、車載センサとして防犯センサを備え、赤外線センサ画像や可視画像により窃盗者を認識する周辺監視を行い、広域情報として警察のパトロール情報を取得する。また、当該経路作成装置は、冠水リスクに代えて警察官や交番などをパラメータとして、優先順位(リスクとは逆である)の演算を行い、経路を作成する。このような経路作成装置は、第三実施形態や第四実施形態に係る制御処理により窃盗からの避難走行を行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1,20,30,40…経路作成装置、2…車両制御コンピュータ群(冠水情報取得手段、通行判定手段、経路作成手段)、13…モータ(二次電池による駆動手段)、15…二次電池、102…モータ(二次電池による駆動手段)、103…バッテリー(二次電池)、110…自動運転ECU(冠水情報取得手段、通行判定手段、経路作成手段)、M…車両(移動体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池により駆動する駆動手段を備える移動体の経路を作成する経路作成装置であって、
冠水の可能性に関する情報を取得する冠水情報取得手段と、
前記冠水情報取得手段で取得された冠水情報に基づいて、前記二次電池による駆動によって、冠水の可能性のある冠水領域を前記移動体が通行できるか否かの判定を行う通行判定手段と、
前記通行判定手段の判定結果に基づいて、前記経路を作成する経路作成手段と、を備えることを特徴とする経路作成装置。
【請求項2】
前記経路作成手段は、前記経路の候補となる候補経路を複数作成すると共に、前記候補経路をそれぞれ評価することによって前記経路を作成し、
前記経路作成手段は、前記通行判定手段によって通行可能であると判定された前記冠水領域を通行する経路を前記候補経路として作成し評価する請求項1記載の経路作成装置。
【請求項3】
前記通行判定手段は、前記冠水領域の通行に対する前記二次電池のバッテリー性能、あるいはバッテリー状態に基づいて、判定を行う請求項1または2記載の経路作成装置。
【請求項4】
前記冠水情報取得手段は、前記移動体の停止中に、停止位置における前記冠水情報を取得する請求項1〜3のいずれか一項記載の経路作成装置。
【請求項5】
前記経路作成手段は、前記冠水情報取得手段で取得された前記冠水情報に基づいて、前記停止位置から避難する避難経路を作成し、
前記避難経路は、避難先のリスクの評価、あるいは前記停止位置と避難先との間の経路のリスクの評価に基づいて作成される請求項4記載の経路作成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−169856(P2011−169856A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36101(P2010−36101)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】