説明

結合体化されたβ−1,3−結合グルカン

β−1,3結合を排他的に、または主として有するグルカンを免疫原として使用する。該グルカンは、β−1,3−結合グルコース残基を含む。任意選択で、該グルカンはβ−1,6−結合グルコース残基を含んでいてもよいが、β−1,6−結合残基に対するβ−1,3−結合残基の比が少なくとも8:1である、および/またはβ−1,3結合のみによって他の残基に連結された少なくとも5つの隣接する非末端残基の配列が1つ以上存在するものとする。グルカンは、通常、結合体化された形態で使用する。好ましいグルカン供給源はカードランであり、これは、結合体化前に、適当な形態に加水分解されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2007年11月26日に出願された米国仮出願第61/004,333号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
本発明は、ワクチン、より詳細には、真菌感染および疾患に対するワクチンに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
真菌感染は、いくつかの臨床場面において、特に、免疫無防備状態の患者において流行する。このような真菌に対する治療用および予防用ワクチン接種において、抗真菌薬、特にアゾール系のものに対する耐性の発現への関心が高まっている[1(非特許文献1)]。真菌病原体の中でも、Candida albicansは、最も流行性のものの1つである。この生物体は、ヒトにおいて広く見られる日和見感染症の主要因子の1つであり、カンジダ症(これは、通常患者および免疫無防備状態の患者の両方に見られる状態)を引き起こす。抗カンジダワクチンを提供する試みが数例行なわれた。
【0004】
グルカンは、とりわけ、真菌の細胞壁に見られるグルコース含有多糖類である。α−グルカンは、グルコースサブユニット間に1つ以上のα−結合を含むものであり、β−グルカンは、グルコースサブユニット間に1つ以上のβ−結合を含むものである。典型的な真菌の細胞壁には、β−1,3−グルカン細線維が互いに絡み合っており、キチン細線維と架橋して内部骨格層を形成しており、一方、外部層は、キチンとβ−1,3−グルカンとによって該内部層に結合されたβ−1,6−グルカンおよびマンノタンパク質からなる。
【0005】
C.albicansは、細胞壁の50〜70%がβ−1,3−グルカンおよびβ−1,6−グルカンで構成されている。抗真菌ワクチンとしてのβ−グルカンの使用は参考文献2(非特許文献2)に概説されている。C.albicansのβ−1,6−グルカンに対する防御的抗体をマウスにおいて生成させた[3(特許文献1),4(非特許文献3)]。マンノタンパク質枯渇C.albicans細胞のワクチン接種によって抗β−1,6−グルカン抗体を生成させたマウスは、C.albicansによる全身性抗原刺激に対してある程度の防御を有することが示された。さらに、このような抗β−1,6−グルカン抗体で受動免疫処置したマウスは、C.albicansに対する防御レベルの上昇を示した。同様に、抗β−1,3−グルカン抗体はC.albicansに対して防御的であることがわかっており、β−1,3−グルカンに結合するモノクローナル抗体は、播種性実験的カンジダ症を防御することができた[5(非特許文献4)]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/030318号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Deepe、Clin. Microbiol. Rev.(1997)10:585〜596
【非特許文献2】CassoneおよびTorosantucci、Expert Rev Vaccines(2006)5:859〜67
【非特許文献3】Torosantucciら、J Exp Med(2005)202:597〜606
【非特許文献4】Pangら、Biosci Biotechnol Biochem(2005)69:553〜8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、感染、特に真菌感染に対して防御的および/または治療的免疫応答を誘導するためのさらなる良好なグルカン抗原を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、医薬における使用のためのグルカンに関する。本発明のグルカンは、(i)排他的にβ−1,3−結合グルコース残基を有するか、または(ii)β−1,3−結合グルコース残基およびβ−1,6−結合グルコース残基の両方を含むかのいずれかであり得る、ただし、β−1,6−結合残基に対するβ−1,3−結合残基の比が少なくとも8:1である、および/またはβ−1,3結合のみによって他の残基に連結された少なくとも5つの隣接する非末端残基の配列が1つ以上存在するものとする。特に、グルカンは、(i)排他的にβ−1,3−結合グルコース残基を有するか、または(ii)β−1,3−結合グルコース残基およびβ−1,6−結合グルコース残基の両方を含むかのいずれかであり得る、ただし、β−1,6−結合残基に対するβ−1,3−結合残基の比が少なくとも8:1であるものとする。一実施形態において、グルカンは、排他的に1,3結合を有する線状β−D−グルコピラノースである。グルカンは、カードラン、パラミロン(paramylon)、またはその断片であり得る。グルカンは、カードランの加水分解断片であり得る。特定の実施形態において、グルカンは、2〜60個のグルコース単糖単位を有する。グルカンは、免疫原としての使用のためのものであり得る。特に、グルカンは、例えば、C.albicansに対する防御的抗体応答の提供における使用のためのものであり得る。
【0010】
また、本発明は、担体分子に連結された本発明のグルカンを含む結合体にも関する。担体分子は、細菌毒素またはその非毒性誘導体であり得る。特定の一実施形態において、担体はCRM197である。
【0011】
また、本発明は、本発明のグルカンまたは結合体を、薬学的に許容され得る担体とのとの組み合わせで含む医薬組成物に関する。
【0012】
さらに、本発明は、本発明のグルカン、結合体または医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における免疫応答を惹起するための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、糖および結合体のSDS−PAGEを示す。レーンは:(1)CRM197;(2)CRM197に結合体化したラミナリン;(3)CRM197に結合体化させた水解型カードラン;(4)破傷風トキソイド単量体、Tt;(5)Ttに結合体化させたラミナリン;(6)Ttに結合体化させた水解型カードランである。
【図2】図2は、結合体のSEC−HPLCプロフィールを示す。図2Aは、CRM197結合体のプロフィールを示し、図2Bは、Tt結合体のプロフィールを示す。両方の場合において、最も右側のピークは、結合体化されていない担体のプロフィールである。最小ピークはカードラン結合体である。第3のピークはラミナリン結合体である。
【図3】図3は、合成グルカンの結合体化の概要である。
【図4】図4は、合成グルカンの結合体のSDS−PAGE解析を示す。
【図5】図5は、種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせて腹腔内投与によって投与した、CRM197または破傷風トキソイドのいずれかに結合体化させたラミナリンに対するIgG GMTを示す。
【図6】図6は、種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせて皮下投与によって投与した、CRM197または破傷風トキソイドのいずれかに結合体化させたラミナリンに対するIgG GMTを示す。
【図7】図7は、種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせて腹腔内投与によって投与した、CRM197または破傷風トキソイドのいずれかに結合体化させたカードランに対するIgG GMTを示す。
【図8】図8は、種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせて皮下投与によって投与した、CRM197または破傷風トキソイドのいずれかに結合体化させたカードランに対するIgG GMTを示す。
【図9】図9は、種々の糖用量のラミナリン結合体に対するIgG GMTを示す。
【図10】図10は、種々の糖用量のカードラン結合体単独または個々のアジュバントと合わせたカードラン結合体に対するIgG GMTを示す。
【図11】図11は、種々の糖用量のラミナリン結合体単独または個々のアジュバントと合わせたラミナリン結合体に対するIgG GMT(抗GGZymおよび抗ラミナリン)を示す。
【図12】図12は、腹腔内投与によって投与した、合成グルカンおよびラミナリン結合体単独または種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせラミナリン結合体に対するIgG GMT(抗ラミナリン)を示す。
【図13】図13は、C.albicansでの抗原刺激前の、MF59と合わせたCRM197に結合体化したラミナリンまたはCRM197およびMF59単独で処置したマウスの生存率を示す。
【図14】図14は、C.albicansでの抗原刺激前の、MF59と合わせたCRM197に結合体化したカードランまたはMF59単独で処置したマウスの生存率を示す。
【図15】図15は、C.albicansでの抗原刺激前の、MF59と合わせた2種類の合成グルカン結合体またはMF59単独で処置したマウスの生存率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
参考文献3および5で使用されている市販のβ−グルカンは、ラミナリンおよびプスツランであった。ラミナリンは、褐藻類および海草類に見られ、一部β−1,6分枝を有するβ−1,3グルカンである。β(1−3):β(1−6)比は、供給源が異なると異なり、例えば、Eisenia bicyclisのラミナリンでは3:2と小さいが、Laminaria digititataのラミナリンでは7:1と大きい[6]。プスツランは、Umbilicaria papullosa由来の非真菌線状β−1,6−結合グルカンである。スクレログルカン(Sclerotinia sclerotiorum)およびスキゾフィランなどの他のグルカンは、3:1のβ(1−3):β(1−6)比を有する。(参考文献7の表2参照)。他の天然の混合型β−グルカンとしては、レンチナンおよびソニフィランが挙げられる。
【0015】
本発明によれば、β−1,3結合を排他的に、または主として有するグルカンが、免疫原として使用される。本発明者らは、このようなグルカンは、他の結合を含むグルカン、特に、β−1,3結合を含み、β−1,6結合の割合が大きいグルカンよりも免疫原性が高い場合があり得ることを見出した。本発明のグルカンは、β−1,3−結合グルコース残基を含むものである。任意選択で、本グルカンはβ−1,6−結合グルコース残基含んでいてもよい、ただし、β−1,6−結合残基に対するβ−1,3−結合残基の比が少なくとも8:1である、および/またはβ−1,3結合のみによって他の残基に連結された少なくとも5つの隣接する非末端残基の配列が1つ以上存在するものとする。本発明者らは、β−1,3結合のみによって他の残基に連結された5つの隣接する非末端残基の存在により、例えば、C.albicansに対する防御的抗体応答がもたらされ得ることを見出した。グルカンは、通常、結合体化された形態で使用される。
【0016】
したがって、本発明は、医薬における使用のためのグルカンを提供し、これは(i)排他的にβ−1,3−結合グルコース残基を有するか、または(ii)β−1,3−結合グルコース残基およびβ−1,6−結合グルコース残基の両方を含むかのいずれかである、ただし、β−1,6−結合残基に対するβ−1,3−結合残基の比が少なくとも8:1である、および/またはβ−1,3結合のみによって他の残基に連結された少なくとも5つの隣接する非末端残基の配列が1つ以上存在する。したがって、特定の実施形態では、本発明は、医薬における使用のためのグルカンを提供し、これは、(i)排他的にβ−1,3−結合グルコース残基を有するか、または(ii)β−1,3−結合グルコース残基およびβ−1,6−結合グルコース残基の両方を含むかのいずれかである、ただし、β−1,6−結合残基に対するβ−1,3−結合残基の比が少なくとも8:1である。
【0017】
また、本発明は、担体分子に連結されたグルカンを含む結合体を提供し、このグルカンは、(i)排他的にβ−1,3−結合グルコース残基を有するか、または(ii)β−1,3−結合グルコース残基およびβ−1,6−結合グルコース残基の両方を含むかのいずれかである、ただし、β−1,6−結合残基に対するβ−1,3−結合残基の比が少なくとも8:1である、および/またはβ−1,3結合のみによって他の残基に連結された少なくとも5つの隣接する非末端残基の配列が1つ以上存在する。したがって、特定の実施形態では、本発明は、担体分子に連結されたグルカンを含む結合体を提供し、このグルカンは、(i)排他的にβ−1,3−結合グルコース残基を有するか、または(ii)β−1,3−結合グルコース残基およびβ−1,6−結合グルコース残基の両方を含むかのいずれかである、ただし、β−1,6−結合残基に対するβ−1,3−結合残基の比が少なくとも8:1である。
【0018】
好ましいグルカンは、排他的に1,3結合を有する線状β−D−グルコピラノースである。
【0019】
グルカン
本発明では、D−グルコース残基間にβ−1,3結合を排他的に、または主として有するグルカンが使用される。グルカンは、好ましくは線状である。
【0020】
したがって、グルカンは、β−1,3−結合グルコース残基のみで構成されたものであってもよい。とはいえ、任意選択で、グルカンは、β−1,3−結合グルコース残基ではない単糖残基を含むものであってもよい(例えば、β−1,6−結合グルコース残基を含むものであってもよい)が、このような他の残基に対するβ−1,3−結合グルコース残基の比は、少なくとも8:1(例えば、≧9:1、≧10:1、≧11:1、≧12:1、≧13:1、≧14:1、≧15:1、≧16:1、≧17:1、≧18:1、≧19:1、≧20:1、≧25:1、≧30:1、≧35:1、≧40:1、≧45:1、≧50:1、≧75:1、≧100:1など)である、および/またはβ−1,3結合のみによって他の残基に連結された少なくとも5つ(例えば、≧5、≧6、≧7、≧8、≧9、≧10、≧11、≧12、≧13、≧14、≧15、≧16、≧17、≧18、≧19、≧20、≧30、≧40、≧50、≧60など)の隣接する非末端残基の配列が1つ以上(例えば、≧1、≧2、≧3、≧4、≧5、≧6、≧7、≧8、≧9、≧10、≧11、≧12など)存在するものとする。「非末端」により、該残基が、グルカンの遊離端に存在しているものではないことを意図する。一部の実施形態において、隣接する非末端残基は、担体分子、リンカーまたは他のスペーサー(後述)にカップリングされた残基を全く含まないものであってもよい。
【0021】
対照的に、L.digitata由来のラミナリンのβ−1,6結合グルコースに対するβ−1,3−結合グルコースの比は、反復構造が以下のとおりであるため7:1である:
【0022】
【化1】

特定の比率および/または配列を有する混合型β−1,3/β−1,6グルカンは、天然に見られるものであってもよく、人工的に作製したものであってもよい。例えば、該グルカンは、全部または一部が化学合成によって作製されたものであり得る。β−1,3/β−1,6グルカンの化学合成のための方法は、参考文献8〜18により当該技術分野でよく知られている。また、特定の比率および任意選択の配列を有する混合型β−1,3/β−1,6グルカンも、上記のL.digitata ラミナリン(7:1の比を有する)から出発して、β−1,6−グルカナーゼ(グルカンエンド−1,6−β−グルコシダーゼ、1,6−β−D−グルカングルカノヒドロラーゼなどとしても知られている;EC 3.2.1.75)で、所望の比率および/または配列に達するまで処理することにより作製され得る。
【0023】
β−1,3−結合グルコースのみを含むグルカンが所望される場合、β−1,6−グルカナーゼが純粋なβ−1,3−グルカンを最終的に生成するように、このプロセスを最後まで遂行してもよい。しかしながら、より簡便には、純粋なβ−1,3−グルカンを使用するのがよい。これは、例えば、(1→3)−β−D−グルカンシンターゼ(そのいくつかは既知であり、多くの生物体(例えば、細菌、酵母、植物および真菌)に由来のものである)を使用し、化学的および/または酵素的合成による合成によって作製され得る。β−1,3グルカンの化学合成のための方法は、例えば参考文献19〜22により当該技術分野でよく知られている。合成の有用な代替的方法として、天然のβ−1,3−グルカン、例えば、カードラン(以前はAlcaligenes faecalis var.myxogenesとして知られていたアグロバクテリウム属由来の線状β−1,3−グルカン;例えば、Sigma−Aldrichから市販(カタログC7821))またはパラミロン(ユーグレナ属由来のβ−1,3−グルカン)などが使用され得る。高レベルのβ−1,3−グルカンをもたらす生物体は当該技術分野で知られており、例えば、参考文献23および24のアグロバクテリウム属、または参考文献25のEuglena gracilisである。
【0024】
本発明での使用のためのβ−1,3−結合グルカンの好ましい供給源は、カードランである。カードランは、典型的には、少なくとも100kDaの分子量および少なくとも約450単位のDP(重合度)で入手される。カードランは、グルコース6分子で1らせんの平行で同相の右巻き三重らせんを形成しており、これにより水に不溶性である。したがって、天然形態では、カードランは、免疫処置にあまり適していない。したがって、本発明では、カードラン水解物を使用してもよい。カードランの酸加水分解により、主鎖が分解されて平均分子量が減少され得、その結果、可溶性となり、化学的および物理的操作を受けやすくなる。理想的には、本発明では、以下に示す範囲の平均分子量を有するカードラン水解物が使用される。加水分解を使用するのではなく、酵素による消化を使用してもよい(例えば、β−1,3−グルカナーゼなどのグルカナーゼにより)。消化は、カードランが以下に示す範囲の平均分子量を有するまで進行させてもよい。
【0025】
天然カードランは非常に高い分子量を有するが、本発明で使用されるグルカンは、水性媒体中での可溶性を改善するために低分子量を有するもの、特に、60個以下の単糖単位(例えば、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40 39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4個)を含むものである。2〜60の範囲の数のグルコース単糖、例えば、10〜50個または20〜40個のグルコース単位を有するグルカンが使用され得る。25〜30個のグルコース単糖単位を有するグルカンが特に有用である。11〜19個、例えば13〜17個、特に15個のグルコース単糖単位を有するグルカンも有用である。したがって、下記の構造:
【0026】
【化2】

(式中、n+2は、2〜60、例えば10〜50または20〜40の範囲である。好ましくは、n+2は、25〜30または11〜19、例えば13〜17の範囲である。本発明者らは、n+2=15が好適であることを見い出した)
を有するグルカンが、本発明における使用に具体的に想定される。
【0027】
排他的にまたは主にβ−1,3−結合を有するグルカン(上記に規定)は、好ましくは単一の分子種である。この実施形態において、グルカン分子はすべて、配列に関して同一である。したがって、グルカン分子はすべて、その構造的特性(例えば、分子量など)に関して同一である。典型的には、この形態のグルカンは、例えば、上記の方法を用いて化学合成によって得られる。例えば、参考文献20には、単一のβ−1,3結合種の合成が記載されている。あるいはまた、他の実施形態では、グルカンは、天然グルカンから、例えば、上記のようなL.digitata、アグロバクテリウム属またはユーグレナ属由来のグルカンから、必要とされる単一の分子種が得られるまでグルカンを精製して得られるものであり得る。このようにして精製された天然グルカンは市販されている。単一の分子種であるグルカンは、グルカン試料の多分散性(Mw/Mn)を測定することにより確認され得る。このパラメーターは、SEC−MALLSによって、例えば参考文献26に記載のようにして簡便に測定され得る。本発明のこの実施形態における使用に好適なグルカンは、約1の(例えば、1.01またはそれより小さい)多分散性を有するものである。本発明者らは、特にアジュバントをさらに含む組成物中で使用される場合に、単一の分子種であるグルカンが、より多分散の(polydisperse)グルカンよりも免疫原性であり得ることを見出した。
【0028】
カードランの溶解度は、イオン性基を導入することにより増大させることができる(例えば硫酸化によって、特にカードランのO−6に)。かかる修飾を本発明で使用してもよいが、分子の抗原性が改変されることがあり得るので、理想的には回避する。
【0029】
β−1,3結合を排他的に、または主として有するグルカン(上記に規定)を含むことに加え、本発明の組成物は、第2のグルカンを含んでいてもよく、該第2のグルカンは、β−1,6−結合グルコース残基に対するβ−1,3−結合グルコース残基の比が7:1以下のものであり得る。例えば、組成物は、ラミナリングルカンおよびカードラングルカンの両方を含むものであり得る。
【0030】
結合体
純粋なβ−グルカンは免疫原として不充分である。したがって、防御的有効性のため、β−グルカンは、グルカン−担体結合体として免疫系に提示され得る。炭水化物抗原の免疫原性を高めるための担体タンパク質との結合体化の使用は、よく知られており[例えば、参考文献27〜35などに概説]、特に、小児科用ワクチンに使用される[36]。
【0031】
本発明は、(i)上記規定のグルカンと(ii)担体分子との結合体を提供する。
【0032】
担体分子はグルカンに、直接またはリンカーを介して共有結合により結合体化され得る。任意の適当な結合体化反応が使用され得、所望される場合に任意の適当なリンカーが使用され得る。
【0033】
担体に対するグルカン抗原の結合は、好ましくは、例えば、担体タンパク質のリジン残基の側鎖内、またはアルギニン残基の側鎖内の−NH基によるものである。グルカンが遊離アルデヒド基を有する場合、これは該担体内のアミンと反応し、還元的アミノ化によって結合体が形成され得る。また、担体に対する結合は、例えば、システイン残基の側鎖内の−SH基によるものであってもよい。あるいはまた、グルカン抗原は担体に、リンカー分子を介して結合され得る。
【0034】
グルカンは、典型的には、結合体化前に活性化または官能性付与させる。活性化は、例えば、シアニル化試薬(CDAP(例えば、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート[37,38など])など)を伴うものであり得る。他の適当な手法は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシンイミド、S−NHS、EDC、TSTU(参考文献33の序論も参照のこと)を使用するものである。
【0035】
タンパク質との直接結合は、例えば、参考文献39および40に記載のような、グルカンの酸化、続いてタンパク質の還元的アミノ化を含み得る。
【0036】
リンカー基を介した結合は、任意の既知の手順(例えば、参考文献41および42に記載の手順)を用いて行なわれ得る。典型的には、リンカーは、グルカンのアノマー炭素を介して結合される。好ましい型の結合はアジピン酸リンカーであり、これは、遊離−NH基(例えば、アミノ化によってグルカンに導入)にアジピン酸をカップリングさせ(例えば、ジイミド活性化を使用)、次いで、得られた糖−アジピン酸中間体にタンパク質をカップリングさせることにより形成され得る[35,43,44]。同様に好ましい型の結合はグルタル酸リンカーであり、これは、遊離−NH基にグルタル酸を同様にしてカップリングさせることにより形成され得る。また、アジピン酸(Adipid)およびグルタル酸リンカーは、グルカンとの直接カップリングによって、すなわち、事前に遊離基(例えば、遊離−NH基)をグルカンに導入せずに、続けて、得られた糖−アジピン酸/グルタル酸中間体にタンパク質をカップリングさせることによっても形成され得る。別の好ましい型の結合はカルボニルリンカーであり、これは、修飾グルカンの遊離ヒドロキシル基とCDIとの反応[45,46]後、タンパク質との反応によってカルバメート結合を形成することによっても形成され得る。他のリンカーとしては、β−プロピオンアミド[47]、ニトロフェニルエチルアミン[48]、ハロゲン化ハロアシル[49]、グリコシド結合[50]、6−アミノカプロン酸[51]、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(SPDP)[52]、アジピン酸ジヒドラジド ADH[53]、C〜C12部分[54]などが挙げられる。また、カルボジイミド縮合を使用することもできる[55]。
【0037】
二官能性リンカーを使用し、グルカン内のアミン基(例えば、アミノ化によってグルカンに導入)にカップリングさせるための第1の基と、担体にカップリングさせる(典型的には、担体内のアミンにカップリングさせる)ための第2の基を提供してもよい。あるいはまた、第1の基は、グルカンに直接(すなわち、事前に基(例えば、アミン基)をグルカンに導入せずに)カップリングできるものである。
【0038】
一部の実施形態において、二官能性リンカー内の第1の基は、このように、グルカン上のアミン基(−NH)と反応できるものである。この反応は、典型的にはアミン水素の求電子性置換を伴う。他の実施形態において、二官能性リンカー内の第1の基は、グルカンと直接反応できるものである。どちらの組の実施形態も、二官能性リンカー内の第2の基は、典型的には、担体上のアミン基と反応できるものである。この場合も、この反応は、典型的にはアミンの求電子性置換を伴う。
【0039】
グルカンと担体の反応がともにアミンを伴う場合、二官能性リンカーを使用することが好ましい。例えば、式X−L−Xであって、式中、2つのX基は、互いに同じであり、アミンと反応することができ、Lは、リンカー内の連結部分であるホモ二官能性リンカーが使用され得る。同様に、式X−L−Xであって、式中、2つのX基は異なっており、アミンと反応することができ、Lは、リンカー内の連結部分であるヘテロ二官能性リンカーが使用され得る。好ましいX基はN−オキシスクシンイミドである。Lは、好ましくは、式L’−L−L’(式中L’はカルボニルである)を有するものである。好ましいL基は、1〜10個の炭素原子(例えば、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10)を有する直鎖アルキル、例えば、−(CH−または−(CHである。
【0040】
同様に、グルカンとの反応が直接カップリングを伴い、担体との反応がアミンを伴う場合も、二官能性リンカーを使用することが好ましい。例えば、式X−L−Xであって、式中、2つのX基は、互いに同じであり、グルカン/アミンと反応することができ、Lは、リンカー内の連結部分であるホモ二官能性リンカーが使用され得る。同様に、式X−L−Xであって、式中、2つのX基は異なっており、一方はグルカンと反応でき、他方はアミンとでき、Lは、リンカー内の連結部分であるヘテロ二官能性リンカーが使用され得る。好ましいX基はN−オキシスクシンイミドである。Lは、好ましくは、式L’−L−L’(式中L’はカルボニルである)を有するものである。好ましいL基は、1〜10個の炭素原子(例えば、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10)を有する直鎖アルキル、例えば、−(CH−または−(CH−である。
【0041】
先の2つの段落で記載した二官能性リンカーにおける使用のための他のX基は、HO−L−OHと結合させるとエステルを形成するもの、例えば、ノルボラン、p−ニトロ安息香酸、およびスルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドである。
【0042】
本発明での使用のためのさらなる二官能性リンカーとしては、アクリロイルハロゲン化物(例えば、塩化物)およびハロアシルハライドが挙げられる。
【0043】
リンカーは、一般的に、グルカンとのカップリング中に、グルカンに対してモル過剰で添加する。
【0044】
好ましい担体タンパク質は、細菌毒素(ジフテリアあるいは破傷風毒素など)もしくはトキソイドまたはその変異体である。これらは、結合体ワクチンに一般的に使用されている。CRM197ジフテリア毒素変異体が特に好ましい[56]。
【0045】
他の適当な担体タンパク質としては、N.meningitidis外膜タンパク質複合体[57]、合成ペプチド[58,59]、熱ショックタンパク質[60,61]、百日咳タンパク質[62,63]、サイトカイン[64]、リンホカイン[64]、ホルモン[64]、増殖因子[64]、種々の病原体由来の抗原由来の多数のヒトCD4 T細胞エピトープを含む人工タンパク質[65](N19[66]など)、H.influenzae由来のプロテインD[67〜69]、ニューモリシン[70]またはその非毒性誘導体[71]、肺炎球菌表面タンパク質PspA[72]、鉄分取込みタンパク質[73]、C.difficile由来の毒素AまたはB[74]、組換え緑膿菌エキソプロテインA(rEPA)[75]などが挙げられる。担体タンパク質の混合物を使用することも可能である。単一の担体タンパク質が多数の異なるグルカンを担持していてもよい[76]。
【0046】
結合体は、過剰の担体(w/w)または過剰のグルカン(w/w)を有するもの、例えば、1:5〜5:1の比で有し得る。過剰の担体タンパク質を有する結合体が典型的であり、例えば、0.2:1〜0.9:1の範囲であるか、または等重量である。結合体には、少量の遊離(すなわち、結合体化されていない)担体が含まれていてもよい。所与の担体タンパク質が本発明の組成物中に、遊離形態と結合体化形態の両方で存在する場合、結合体化されていない形態は、好ましくは、組成物全体の担体タンパク質の総量の5%以下であり、より好ましくは2%未満(重量基準)で存在する。
【0047】
結合体が本発明の免疫原性組成物のグルカン成分を構成する場合、該組成物に、免疫原として遊離担体タンパク質も含まれることがあり得る[77]。
【0048】
結合体化後、遊離グルカンと結合体化グルカンを分離してもよい。多くの適当な方法があり、例えば、疎水性クロマトグラフィー、タンジェンシャル限外濾過(tangential ultrafiltration)、ダイアフィルトレーション(diafiltration)などがある[参考文献78,79などもまた参照のこと]。タンジェンシャルフロー限外濾過が好ましい。
【0049】
結合体内のグルカン部分は、好ましくは、上記規定の低分子量グルカンまたはオリゴ糖である。オリゴ糖は、典型的には、結合体化前にサイズ調整する。
【0050】
タンパク質−グルカン結合体は、好ましくは、水および/または生理学的緩衝液に可溶性である。
【0051】
本発明者らは、グルカンと担体タンパク質間にスペーサーが存在させると、免疫原性が改善され得ることを見い出した。これに関連して、「スペーサー」は、単一の共有結合よりも長い部分である。このスペーサーは、上記のようなリンカーであってもよい。あるいはまた、これは、グルカンとリンカーの間に共有結合された部分であってもよい。典型的には、該部分はグルカンに、リンカーまたは担体とのカップリング前に共有結合させる。例えば、スペーサーは、1〜10個の炭素原子(例えば、C、C、C3、C、C、C、C、C、C、C10)、典型的には1〜6個の炭素原子(例えば、C、C、C、C、C、C)を有する直鎖アルキルを含むY部分である。本発明者らは、6個の炭素原子を有する直鎖アルキル(すなわち、−(CH)が特に好適であり、短鎖(例えば、−(CH)のものよりも大きな免疫原性がもたらされ得ることを見い出した。典型的には、Yはグルカンのアノマー炭素に、通常、−O-結合を介して結合される。しかしながら、Yは、グルカンの他の部分に連結されていてもよい、および/または他の結合を介して連結されていてもよい。Yの他端は、任意の適当な結合によってリンカーに結合させる。典型的には、Yは、上記のような二官能性リンカーに対する結合が容易になるようにアミン基で終結させたものである。したがって、このような実施形態では、Yはリンカーに−NH−結合によって結合される。したがって、下記の構造:
【0052】
【化3】

(式中、n+2は、2〜60、例えば10〜50または20〜40の範囲である。好ましくは、n+2は、25〜30または11〜19、例えば13〜17の範囲である。本発明者らは、n+2=15が好適であることを見い出した。Yは、上記のとおりである。「LINKER」は、上記のような任意選択のリンカーであり、「CARRIER」は、上記のような担体分子である)
を有する結合体が、本発明における使用に具体的に想定される。
【0053】
医薬組成物
本発明は、(a)本発明のグルカンまたは結合体、(b)薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。かかる担体の充分な論考は、参考文献80において入手可能である。
【0054】
微生物感染症は、身体の種々の領域を侵すため、本発明の組成物は種々の形態で調製され得る。例えば、該組成物は注射用剤として、液状の液剤または懸濁剤のいずれかとして調製され得る。また、液状ビヒクル中の液剤または懸濁剤に適した注射前の固形形態を調製してもよい。該組成物は、局所投与のためには、例えば、軟膏、クリーム剤または粉末剤として調製され得る。該組成物は、経口投与のためには、例えば、錠剤もしくはカプセル剤として、またはシロップ剤(任意選択でフレーバーを添加)として調製され得る。該組成物は、肺内投与のためには、例えば、微粉末またはスプレーを使用し、吸入剤として調製され得る。該組成物は、坐剤または膣坐薬として調製され得る。該組成物は、経鼻、経耳または経眼投与のためには、例えば、滴剤、スプレー剤または粉末剤として調製され得る[例えば、81]。上記組成物は、うがい薬に含められ得る。上記組成物は、凍結乾燥され得る。
【0055】
医薬組成物は、好ましくは滅菌されたものである。好ましくは発熱物質を含まない。該組成物は、好ましくは、例えばpH6〜pH8、一般的にはpH7前後に緩衝化したものである。
【0056】
また、本発明は、本発明の医薬組成物を内包する送達デバイスを提供する。デバイスは、例えば、シリンジまたは吸入器であり得る。
【0057】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、免疫学的有効量のグルカン免疫原を含む免疫原性組成物である。「免疫学的有効量」により、単回用量または一連のものの一部としての個体への該量の投与が、処置または予防に有効であることを意図する。この量は、処置対象の個体の健康状態および体調、処置対象の個体(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)の年齢、分類群、個体の免疫機構が抗体を合成する能力、所望される防御の程度、ワクチンの配合、病状に対する処置担当医師の評価、ならびに他の関連要素に応じて異なる。この量は、常套的な治験によって決定され得る比較的広い範囲を含むことが予測される。投薬処置は、単回用量スケジュールまたは複数用量スケジュール(例えば、ブースター投与量を含む)であり得る。上記組成物は、他の免疫調節剤(immunoregulatory agent)と組み合わせて投与され得る。
【0058】
製剤化したら、本発明の組成物を被験体に直接投与してもよい。処置対象の被験体は動物であり得る;特に、ヒト被験体が処置され得る。
【0059】
本発明の免疫原性組成物は、治療的(すなわち、既に存在する感染を処置するため)または予防的(すなわち、将来的な感染を予防するため)に使用され得る。治療的免疫処置は、免疫無防備状態の被験体におけるカンジダ感染の処置に特に有用である。
【0060】
β−グルカンそれ自体がアジュバントであると報告されているが、免疫原性組成物は、この組成物を受ける患者において誘起される免疫応答(体液性および/または細胞性)を増強する機能を果たし得るさらなるアジュバントを含んでいてもよい。本発明で使用され得るアジュバントとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる。
【0061】
・無機質含有組成物、例えば、カルシウム塩およびアルミニウム塩(またはその混合物)。カルシウム塩としては、リン酸カルシウム(例えば、参考文献82に開示された「CAP」粒子)が挙げられる。アルミニウム塩としては、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられ、該塩には、任意の適当な形態(例えば、ゲル、結晶性、非晶質など)が採用される。このような塩への吸着が好ましい。また、無機質含有組成物は、金属塩の粒子として製剤化され得る[83]。水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムとして知られるアジュバントが使用され得る。これらの名称は慣用的であるが、便宜上のためだけに使用され、存在している実際の化合物の正確な記述でもない(例えば、参考文献166の第9章参照)。本発明では、アジュバントとして一般に使用されている任意の「水酸化物」または「リン酸塩」アジュバントが使用され得る。「水酸化アルミニウム」として知られているアジュバントは、典型的にはアルミニウムのオキシ水酸化物塩であり、これは、通常、少なくとも部分的に結晶性である。「リン酸アルミニウム」として知られているアジュバントは、典型的にはヒドロキシリン酸アルミニウムであり、多くの場合、少量の硫酸塩も含まれている(すなわち、ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸塩)。このアジュバントは、沈降によって得られ得、沈降時の反応条件および濃度は、該塩中のヒドロキシルのリン酸塩の置換の程度に影響を及ぼす。本発明では、水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムの混合物を使用してもよい。この場合、水酸化アルミニウムよりもリン酸アルミニウムを多く、例えば、少なくとも2:1、例えば≧5:1、≧6:1、≧7:1、≧8:1、≧9:1などの重量比で存在させるのがよい。患者に投与するための組成物中のAl+++の濃度は、好ましくは、10mg/ml未満、例えば、≦5mg/ml、≦4mg/ml、≦3mg/ml、≦2mg/ml、≦1mg/mlなどである。好ましい範囲は、0.3〜1mg/mlである。最大0.85mg/用量が好ましい。
【0062】
・サポニン[参考文献166の第22章]、これは、広範な植物種の樹皮、葉、茎、根、さらには花にも見られるステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種群である。Quillaia saponaria Molina樹木の樹皮由来のサポニンは、アジュバントとして広く研究されている。また、サポニンは、Smilax ornata(sarsaprilla)、Gypsophilla paniculata(brides veil)、およびSaponaria officianalis(soap root)から商業的に入手することもできる。サポニンアジュバント製剤としては、QS21などの精製製剤、ならびにISCOMなどの脂質製剤が挙げられる。QS21は、StimulonTMとして市販されている。サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを用いて精製されている。このような手法が使用された具体的な精製画分が同定されており、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられる。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の作製方法は、参考文献84に開示されている。サポニン製剤には、ステロール(コレステロールなど)が含まれることがあり得る[85]。サポニンとコレステロールの組合せは、免疫刺激複合体(ISCOM)と称される特殊な粒子を形成するために使用され得る[参考文献166の第23章]。また、ISCOMは、典型的にはリン脂質、例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンなどを含むものである。任意の既知のサポニンがISCOMに使用され得る。好ましくは、ISCOMは、QuilA、QHAおよびQHCの1種類以上を含むものである。ISCOMは、参考文献85〜87にさらに説明されている。任意選択で、ISCOMSは、さらなる洗剤を含まないものであり得る[88]。サポニン系アジュバントの開発の概説は、参考文献89と90を見るとよい。
【0063】
・細菌ADP−リボシル化毒素(例えば、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン「LT」、コレラ毒素「CT」、または百日咳毒素「PT」)およびその無毒化誘導体、例えば、LT−K63およびLT−R72[91]として知られている変異体毒素など。粘膜アジュバントとしての無毒化ADP−リボシル化毒素の使用は、参考文献92に記載されており、非経口アジュバントとしての使用は、参考文献93に記載されている。
【0064】
・生体接着剤および粘膜接着剤、例えば、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア[94]またはキトサンおよびその誘導体[95]など。
【0065】
・生分解性で非毒性である物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)で形成されたミクロ粒子(すなわち、約100nm〜約150μmの直径、より好ましくは約200nm〜約30μmの直径、または約500nm〜約10μmの直径の粒子)。ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)が好ましく、任意選択で処理して、負の電荷を有する表面(例えば、SDSで)または正の電荷を有する表面(例えば、CTABなどのカチオン性洗剤)を有するようにしたもの。
【0066】
・リポソーム(参考文献166の第13章および14章)。アジュバントとしての使用に適したリポソーム製剤の例は、参考文献96−98に記載されている。
【0067】
・ムラミルペプチド、例えば、N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(「thr−MDP」)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(ノル−MDP)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Al−D−イソglu−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド(「DTP−DPP」、または「TheramideTM」)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(「MTP−PE」)など。
【0068】
・ポリオキシドニウムポリマー[99,100]または他のN−酸化型ポリエチレン−ピペラジン誘導体。
【0069】
・メチルイノシン5’−モノリン酸塩(「MIMP」)[101]。
【0070】
・ポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物[102]、例えば、式:
【0071】
【化4】

(式中、Rは、水素、直鎖または分枝状の非置換または置換飽和または不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含む群から選択される)
を有するもの、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは誘導体。例としては、限定されないが、カスアリン、カスアリン−6−α−D−グルコピラノース、3−エピ−カスアリン、7−エピ−カスアリン、3,7−ジエピ−カスアリンなどが挙げられる。
【0072】
・CDldリガンド、例えば、α−グリコシルセラミド[103〜110](例えば、α−ガラクトシルセラミド)、フィトスフィンゴシン含有α−グリコシルセラミド、OCH、KRN7000[(2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−2−(N−ヘキサコサノイルアミノ)−1,3,4−オクタデカントリオール]、CRONY−101、3”−O−スルホ−ガラクトシルセラミドなど。
【0073】
・γイヌリン[111]またはその誘導体、例えば、アルガムリンなど。
【0074】
・水中油型乳剤。種々のかかる乳剤が知られており、典型的には、少なくとも1種類の油と、少なくとも1種類の界面活性剤を含むものであり、油類(1種類または複数種)および界面活性剤(1種類または複数種)は生分解性(代謝性)および生体適合性である。乳剤中の油滴は、一般的には5μm未満の直径であるが、さらにはサブミクロン直径を有するものであってもよい。このような小サイズは、マイクロフルイダイザーにより得られ、安定な乳剤が得られる。濾過滅菌に供することができるため、220nm未満のサイズを有する液滴が好ましい。
【0075】
・免疫刺激性オリゴヌクレオチド、例えば、CpGモチーフ(リン酸結合によってグアノシン残基に連結された非メチル化シトシン残基を含むジヌクレオチド配列)、またはCpIモチーフ(イノシンに連結されたシトシンを含むジヌクレオチド配列)、または二本鎖RNA、またはパリンドローム配列を含むオリゴヌクレオチド、またはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチドを含むものなど。免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド修飾/類似体(ホスホロチオエート修飾)を含むものであってもよく、二本鎖(RNAを除く)であっても、単鎖であってもよい。参考文献112、113および114には、可能な類似体置換(例えば、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンでのグアノシンの置換)が開示されている。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献115〜120にさらに論考されている。CpG配列はTLR9に対するものである(モチーフGTCGTTまたはTTCGTTなど)[121]。CpG配列は、Th1免疫応答の誘発に特異的であり得(CpG−A ODN(オリゴデオキシヌクレオチド)、あるいは、B細胞応答の誘発に対してより特異的であり得る(CpG−B ODNなど)。CpG−AおよびCpG−B ODNは、参考文献122〜124に論考されている。好ましくは、CpGはCpG−A ODNである。好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体の認識に利用可能となるように構築される。任意選択で、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列をその3’末端で結合させ「イムノマー」を形成してもよい。例えば、参考文献121および125〜127を参照のこと。有用なCpGアジュバントはCpG7909であり、ProMuneTM(Coley Pharmaceutical Group,Inc.)としても知られている。他には、CpG 1826がある。CpG配列の使用の代替法として、あるいはさらに、TpG配列が使用され得[128]、このオリゴヌクレオチドには、非メチル化CpGモチーフが含まれていないものであり得る。免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ピリミジンリッチであり得る。例えば、これは、1つより多くの連続チミジンヌクレオチドを含み得る(例えば、参考文献128に開示されたTTTT)、および/または>25%のチミジン(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)のヌクレオチド組成を有し得る。例えば、1つより多くの連続シトシンヌクレオチドを含み得る(例えば、参考文献128に開示されたCCCC)、および/または>25%のシトシン(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)のヌクレオチド組成を有し得る。このようなオリゴヌクレオチドは、非メチル化CpGモチーフが含まれていないものであり得る。免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、典型的には少なくとも20個のヌクレオチドを含む。これは、100個より少ないヌクレオチドを含むものであるのがよい。
【0076】
特に有用な免疫刺激性オリゴヌクレオチド系アジュバントは、IC31TM[129]として知られているものである。したがって、本発明で使用されるアジュバントは、(i)少なくとも1つ(好ましくは多数の)CpIモチーフを含むオリゴヌクレオチド(例えば、15〜40ヌクレオチド)と、(ii)少なくとも1つ(好ましくは多数の)Lys−Arg−Lysトリペプチド配列を含むポリカチオンポリマー、例えばオリゴペプチド(例えば、5〜20アミノ酸)の混合物を含み得る。オリゴヌクレオチドは、26mer配列5’−(IC)13−3’(配列番号1)を含むデオキシヌクレオチドであり得る。ポリカチオンポリマーは、11merアミノ酸配列KLKLLLLLKLK(配列番号2)を含むペプチドであり得る。
【0077】
・3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(「3dMPL」、「MPLTM」としても知られている)[130〜133]。水性条件では、3dMPLは、異なるサイズ(例えば、<150nmまたは>500nmの直径)を有するミセル状の凝集物または粒子を形成し得る。これらのいずれかまたは両方が本発明で使用され得、常套的なアッセイによって、良い方の粒子が選択され得る。より小さい粒子(例えば、3dMPLの透明な水性懸濁液が得られるのに充分に小さい)の方が、活性が優れるため、本発明による使用に好ましい[134]。好ましい粒子は220nm未満、より好ましくは200nm未満または150nm未満または120nm未満の平均直径を有するものであり、さらには、100nm未満の平均直径を有するものであってもよい。しかしながら、ほとんどの場合、平均直径は50nmより小さくない。
【0078】
・イミダゾキノリン化合物、例えば、イミキモド(「R−837」)[135,136]、レシキモド(「R−848」)[141]など、およびその類似体;ならびにその塩(例えば、塩酸塩)。免疫刺激性イミダゾキノリンに関するさらなる詳細は、参考文献138〜142を見るとよい。
【0079】
・チオセミカルバゾン化合物(参考文献143に開示されたものなど)。また、活性化合物の製剤化、製造およびスクリーニングのための方法も参考文献143に記載されている。チオセミカルバゾンは、TNF−αなどのサイトカイン生成のためのヒト末梢血単核球の刺激に特に有効である。
【0080】
・トリプタントリン化合物(参考文献144に開示されたものなど)。また、活性化合物の製剤化、製造およびスクリーニングのための方法も参考文献144に記載されている。チオセミカルバゾンは、TNF−αなどのサイトカイン生成のためのヒト末梢血単核球の刺激に特に有効である。
【0081】
・ヌクレオシド類似体、例えば:(a)イサトラビン(ANA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0082】
【化5】

およびそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)参考文献145〜147に開示された化合物ロキソリビン(7−アリル−8−オキソグアノシン)[148]など。
【0083】
・参考文献149に開示された化合物、例えば:アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドライソキノリン(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン化合物、アミノアザビニル化合物、アミノベンズイミダゾールキノリノン(ABIQ)化合物[150,151]、ヒドラフタルアミド化合物、ベンゾフェノン化合物、イソオキサゾール化合物、ステロール化合物、キナジリノン化合物、ピロール化合物[152]、アントラキノン化合物、キノキサリン化合物、トリアジン化合物、ピラザロピリミジン化合物、およびベンズアゾール化合物[153]。
【0084】
・アミノアルキルグルコサミニドリン酸塩誘導体(RC−529[154,155]など)。
【0085】
・ホスファゼン(例えば、参考文献156および157に記載のポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン](「PCPP」)など)
・置換型尿素あるいは式I、IIもしくはIIIの化合物、またはその塩:
【0086】
【化6】

(参考文献158に規定、「ER803058」、「ER803732」、「ER804053」、ER804058)、「ER804059」、「ER804442」、「ER804680」、「ER804764」、ER803022または「ER804057」など、例えば:
【0087】
【化7】

・OM−174などの大腸菌由来のリピドAの誘導体(参考文献159および160に記載)。
【0088】
・リン酸基含有非環式主鎖に連結された脂質を含む化合物(TLR4アンタゴニストE5564[161,162]:
【0089】
【化8】

など)。
【0090】
このようなおよび他のアジュバント活性物質は、参考文献166および167に、より詳細に論考されている。
【0091】
組成物中の抗原およびアジュバントは、代表的に混合物である。
【0092】
組成物は、上記アジュバントのうちの2つ以上を含み得る。例えば、それらは、有利に、水中油型乳剤および3dMPLなどの両方を含み得る。
【0093】
本発明で有用な具体的な水中油型乳剤アジュバントとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる。
【0094】
・スクアレン、Tween80およびSpan85のサブミクロン乳剤。この乳剤の組成は、容量基準で、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80および約0.5%のSpan85であり得る。重量の観点からは、これらの比は、4.3%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80および0.48%のSpan85となる。このアジュバントは、「MF59」として知られており[163〜165]、参考文献166の第10章および参考文献167の第12章に、より詳細に記載されている。MF59乳剤は、好都合には、クエン酸イオンを含むもの(例えば、10mMクエン酸ナトリウム緩衝液)である。
【0095】
・スクアレン、トコフェロールおよびTween80の乳剤。この乳剤は、リン酸緩衝生理食塩水を含み得る。また、これは、Span85(例えば、1%で)および/またはレシチンを含み得る。この乳剤は、2〜10%のスクアレン、2〜10%のトコフェロールおよび0.3〜3%のTween80を有し得、スクアレン:トコフェロールの重量比は、より安定な乳剤が得られるため、好ましくは≦1である。スクアレンおよびTween80は、約5:2の容量比で存在し得る。かかる乳剤の一例は、Tween80をPBSに溶解させて2%溶液を得、次いで、90mlのこの溶液を(5gのDL−α−トコフェロールと5mlのスクアレン)の混合物と混合し、次いでこの混合物を微小流動化することにより作製され得る。得られる乳剤は、例えば、100〜250nm、好ましくは約180nmの平均直径のサブミクロン油滴を有し得る。
【0096】
・スクアレン、トコフェロールおよびTriton洗剤(例えば、Triton X−100)の乳剤。この乳剤は、3d−MPL(下記参照)もまた含み得る。この乳剤は、リン酸緩衝液を含み得る。
【0097】
・ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、Triton洗剤(例えば、Triton X−100)およびトコフェロール(例えば、α−トコフェロールスクシネート)を含む乳剤。この乳剤は、これらの3種類の成分を、約75:11:10の質量比で含むもの(例えば、750μg/mlのポリソルベート80、110μg/mlのTriton X−100および100μg/mlのα−トコフェロールスクシネート)を含み得、これらの濃度は、抗原由来のこれらの成分の任意の寄与を含むはずである。また、この乳剤は、スクアレンを含み得る。また、この乳剤は、3d−MPL(下記参照)も含み得る。水相には、リン酸緩衝液が含まれ得る。
【0098】
・スクアラン、ポリソルベート80およびポロキサマー401(「PluronicTML121」)の乳剤。この乳剤は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で製剤化され得る。この乳剤は、ムラミルジペプチドのための有用な送達ビヒクルであり、トレオニル−MDPとともに「SAF−1」アジュバント[168](0.05〜1%のThr−MDP、5%のスクアラン、2.5%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)に使用されている。また、「AF」アジュバント[169](5%のスクアラン、1.25%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)の場合のように、Thr−MDPなしで使用することもできる。微小流動化が好ましい。
【0099】
・0.5〜50%の油類、0.1〜10%のリン脂質、および0.05〜5%の非イオン系界面活性剤を有する乳剤。参考文献170に記載のように、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロン液滴のサイズが好都合である。
【0100】
・非代謝性の油類(軽鉱油など)と、少なくとも1種類の界面活性剤(レシチン、Tween80またはSpan80など)とのサブミクロン水中油型乳剤。QuilAサポニン、コレステロール、サポニン脂肪親和性結合体(例えば、GPI−0100(参考文献171に記載、グルクロン酸のカルボキシル基を介したデスアシルサポニンへの脂肪族アミンの付加によって作製))、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミドおよび/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンなどの添加剤を含めてもよい。
【0101】
・サポニン(例えば、QuilAまたはQS21)とステロール(例えば、コレステロール)がらせん状ミセルとして会合している乳剤[172]。
【0102】
医療処置および用途
また、本発明は、医薬における使用のための、例えば、哺乳動物の抗体応答を惹起することにおける使用のための、本発明のグルカンまたは結合体を提供する。
【0103】
また、本発明は、本発明のグルカン、結合体または医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の免疫応答を惹起するための方法を提供する。
【0104】
また、本発明は、哺乳動物において微生物感染を予防または処置するための医薬の製造における本発明のグルカンまたは結合体の使用を提供する。
【0105】
これらの方法および使用によってもたらされる免疫応答としては、一般的に抗体応答、好ましくは防御的抗体応答が挙げられる。糖免疫処置後の抗体応答の評価方法は、当該分野で周知である。抗体応答は、好ましくはIgAまたはIgG応答である。免疫応答は、予防的および/または治療的であり得る。哺乳動物は、好ましくはヒトである。
【0106】
グルカン(特に、β−グルカン)は、ほぼすべての病原性真菌(特に、免疫無防備状態の被験体の感染症に関与するもの)、また細菌病原体および原生動物の必須かつ主要な多糖構成成分であるため、抗グルカン免疫は、広範な病原体および疾患に対して有効性を有し得る。例えば、S.cerevisiaeでの免疫処置に生成される抗グルカン血清は、C.albicansと交差反応性である。このようなヒト感染性真菌因子には化学療法が不充分であるため、抗真菌薬耐性が生じるため、ならびに予防用および治療用ワクチンの必要性の認識が増大しているため、広域スペクトル免疫は特に有用である。
【0107】
本発明の使用および方法は、カンジダ属種(C.albicansなど);クリプトコックス属種(C.neoformansなど);エンテロコッカス属種(E.faecalisなど);連鎖球菌属種(S.pneumoniae、S.mutans、S.agalactiaeおよびS.pyogenesなど);リーシュマニア属種(L.majorなど);アカントアメーバ属種(A.castellaniなど);アスペルギルス属種(A.fumigatusおよびA.flavusなど);ニューモシスティス属種(P.cariniiなど);ミコバクテリウム属種(M.tuberculosisなど);シュードモナス属種(P.aeruginosaなど);ブドウ球菌属種(S.aureusなど);サルモネラ属種(S.typhimuriumなど);コクシジオイデス属種(C.immitisなど);白癬菌属種(T.verrucosumなど);ブラストミセス属種(B.dermatidisなど);ヒストプラスマ属種(H.capsulatumなど);パラコクシジオイデス属種(P.brasiliensisなど);フィチウム属種(P.insidiosumなど);ならびにエシェリキア属種(大腸菌など)の感染症の処置/防御に特に有用である。
【0108】
該使用および方法は、限定されないが:カンジダ症(例えば、肝脾カンジダ症、浸潤性カンジダ症、慢性粘膜皮膚カンジダ症および播種性カンジダ症);カンジダ血症;アスペルギルス症、クリプトコックス症、皮膚真菌症、スポロトリクス症および他の皮下真菌症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ症、コクシジウム症、パラコクシジオイデス症、ニューモシスティス症、鵞口瘡、結核症、ミコバクテリア症、呼吸器系感染症、猩紅熱、肺炎、膿痂疹、リウマチ熱、セプシス、敗血症、皮膚および内臓リーシュマニア症、角膜アカントアメーバ症、嚢胞性線維症、腸チフス、胃腸炎ならびに溶血性尿毒症症候群などの疾患の予防/処置に特に有用である。抗C.albicans活性は、AIDS患者の感染症の処置に特に有用である。
【0109】
治療的処置の有効性は、本発明の組成物の投与後の微生物感染をモニタリングすることにより試験することができる。予防的処置の有効性は、該組成物の投与後のβ−グルカンに対する免疫応答(例えば、抗β−グルカン抗体)をモニタリングすることにより試験することができる。
【0110】
本発明の組成物は、一般的には患者に直接投与する。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、もしくは組織の間隙空間に)、または直腸内、経口、膣内、局所、経皮、皮内、経眼、経鼻、耳内もしくは肺内投与によって行なわれ得る。注射または鼻腔内投与が好ましい。
【0111】
本発明は、全身性および/または粘膜免疫を誘起するために使用され得る。
【0112】
本発明に従って調製されるワクチンは、小児および成人両方の処置に使用され得る。したがって、被験体は、1歳未満、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳、または少なくとも55歳であり得る。ワクチン接種に好ましい被験体は、高齢者(例えば、≧50歳、≧60歳、好ましくは≧65歳)、または若年齢者(例えば、≦5歳)である。ワクチンは、これらの群のみに適しているのではなく、集団において、より一般的に使用され得る。
【0113】
処置は、単回用量スケジュールであってもよく、複数用量スケジュールであってもよい。複数用量は、初回刺激免疫処置スケジュールおよび/または追加刺激免疫処置スケジュールにおいて使用され得る。複数用量スケジュールでは、種々の用量を同じ経路で与えてもよく、異なる経路で与えてもよく、例えば、非経口で初回免疫刺激し、経粘膜で追加免疫刺激する、経粘膜で初回免疫刺激し、非経口で追加免疫刺激するなどである。免疫未処置患者には1回より多くの投与(典型的には2回の投与)が特に有用である。複数用量は、典型的には少なくとも1週間空けて投与する(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約16週間など)。
【0114】
本発明の結合体を非グルカン抗原と併用し、多様な病原体に対する同時免疫処置のための単一の組成物にしてもよい。併用ワクチンの作製の代替法として、結合体を患者に、他のワクチンと実質的に同時(例えば、同じ医療診察中または健康管理従事者もしくはワクチン接種施設への訪問時)に投与してもよい。このような併用ワクチンにおける使用のため、または同時投与のための抗原としては、例えば、Streptococcus agalactiae、黄色ブドウ球菌および/または緑膿菌免疫原、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、髄膜炎菌(例えば、血清群A、C、W135および/またはYに対して、糖または結合体化糖)、肺炎連鎖球菌(例えば、糖または結合体化糖)などが挙げられる。
【0115】
本発明の組成物は、特に患者が既に感染している場合、抗真菌薬とともに使用され得る。抗真菌薬により即時性の治療効果がもたらされ、一方、免疫原性組成物により長期持続性効果がもたらされる。好適な抗真菌薬としては、限定されないが、アゾール(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール)、ポリエン(例えば、アンフォテリシンB)、フルシトシン、およびスクアレンエポキシダーゼインヒビター(例えば、テルビナフィン)が挙げられる[参考文献173も参照のこと]。抗真菌薬と免疫原性組成物は、別々に投与してもよく、併用して投与してもよい。別々に投与する場合、典型的には互いに7日以内に投与する。免疫原性組成物を最初に投与した後、抗真菌薬を1回より多く投与するのがよい。
【0116】
定義
用語「を含む(comprising)」は、「を含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、例えば、X「を含む」組成物は、排他的にXからなるものであってもよく、何か付加的なものを含むもの(例えば、X+Y)であってもよい。
【0117】
文言「実質的に」は「完全に」を除外せず、例えば、Yが「実質的にない」組成物は、Yが完全にないものであり得る。必要に応じて、文言「実質的に」は、本発明の定義で省略されていることがあり得る。
【0118】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0119】
特に記載のない限り、2つ以上の成分を混合する工程を含むプロセスは、なんら特定の混合順序を必要としない。したがって、成分は、任意の順序で混合され得る。3つの成分が存在する場合は、2つの成分を互いに合わせ、次いで、この組合せを第3の成分と合わせてもよいなどである。
【0120】
動物(特にウシ)由来の物質を細胞の培養に使用する場合、感染性海綿状脳症(TSE)のない、特にウシ海綿状脳症(BSE)のない供給源から得られたものであるべきである。全般的には、動物由来物質の完全非存在下で細胞を培養することが好ましい。
【0121】
化合物を身体に組成物の一部として投与する場合、該化合物を、代替的に、適当なプロドラッグに置き換えてもよい。
【実施例】
【0122】
発明を実施するための形態
カードラン結合体化(1)
>100kDaの初期MWを有するカードランを、DMSO中HCl(0.5M)を用いた酸加水分解により、85℃で10分間処理した。この加水分解生成物は、25単位前後のDPを有していた。
【0123】
加水分解された物質をリン酸ナトリウム緩衝液(400mM,pH6.8)で中和し、水で希釈して、出発物質の10:1希釈液を得た。最終濃度を1mg/mlとした。希釈後、一部沈降が検出され得た。この沈殿物は、おそらく高MW糖である。
【0124】
酢酸アンモニウムを添加し、次いでナトリウムシアノボロヒドリドを添加した。pHを7.0に調整した後、混合物を37℃で3〜5日間インキュベートした。この処理により、第1級アミノ基がカードラン断片の還元末端に導入された。次いで、このアミノ糖を、3kDaカットオフ膜を用いた限外濾過によって精製した。アミノ基をHabeeb法によって概算した。
【0125】
乾燥させたアミノオリゴ糖を蒸留水中で、40mMのアミノ基濃度で可溶化させ、次いで9容量のDMSOを添加した後、トリエチルアミンを200mMの最終濃度で添加した。得られた溶液に、アジピン酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステルを、480mMの最終濃度で添加した。このようにして生成したエステル基を、放出されたN−ヒドロキシスクシンイミド基の解析によって概算した。
【0126】
乾燥させた活性化オリゴ糖を、CRM197含有10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に添加した。反応液を攪拌下、室温で一晩維持した。最終物質は、タンパク質1molあたりのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルのmolに関して約50:1の比を有していた。
【0127】
次いで、この結合体を、30kDaカットオフ膜を用いた限外濾過によって精製した。結合体を、SDS−Page、SEC−HPLCおよびNMRによって特徴付けた。また、この糖(全体および結合体化されていない糖)ならびにタンパク質の含有量を概算した。
【0128】
担体としてCRM197の代わりに破傷風トキソイドを使用し、結合体を、同じ方法で調製した。
【0129】
調製した5種類の結合体のロットについて、糖:タンパク質の比は以下のとおりであった(過剰の担体):
【0130】
【数1】

図1は、実施例の結合体のSDS−PAGEを示し、図2は、そのSEC−HPLCプロフィールを示す。
【0131】
結合体化(2)
合成カードラン(15−mer)およびラミナリン(17−mer)結合体を、図3に記載の方法にしたがって調製した。簡単には、表示した合成オリゴ糖を蒸留水中で、40mMのアミノ基濃度で可溶化させた。次いで、9容量のDMSOを添加した後、トリエチルアミンを最終濃度200mMまで添加した。15mer−C6β(1−3)−CRM結合体では、グルタル酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステルを、最終濃度240mMまで添加した。15mer−C6β(1−3)−CRMおよび17mer−C6β(1−3)−CRMの結合体では、アジピン酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステルを、最終濃度480mMまで添加した。次いで、この活性化オリゴ糖を、80%v/vジオキサンを用いた沈降によって精製した。各反応で生成したエステル基の数を、放出されたNヒドロキシスクシンイミド基の量を測定することにより概算した。次いで、乾燥させた活性化オリゴ糖を、30mg/mLのCRM197溶液(10mMリン酸緩衝液(pH7.2)中)に添加した。反応液を攪拌下、室温で一晩維持した。最終物質は、タンパク質1molあたりのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルのmolに関して約50:1の比を有していた。
【0132】
次いで、結合体をSDS−PageおよびSEC−HPLCによって特徴付けた。糖およびタンパク質の含有量は、以下のとおりに概算された。
【0133】
【数2】

図4は、これらの結合体の7%tris−アセテートゲル(ウェルあたり20μgロードした)上でのSDS−PAGE解析を示す。
【0134】
免疫原性試験(1)
カードラン結合体化(1)に記載のようにして調製したカードラン結合体を免疫原性試験においてマウスに投与し、先行技術において報告されたようにして(例えば、参考文献174および175の場合のようにして)調製したラミナリン−CRM197結合体と比較した。カードラン結合体の2つ以上のロットを試験した。
【0135】
CD2F1マウス(4〜6週齢)を、10匹の18の群にて試験した。結合体を糖用量5μgで投薬容量150μlにて使用し、第1、7および21日目に腹腔内投与した。血液試料を第0、21および35日目に採取し、抗GGZym抗体レベルをELISA[3,4]によって評価した。結合体は、アジュバントなし、または以下のアジュバント:(a)水酸化アルミニウムアジュバント;(b)MF59水中油型乳剤アジュバント;(c)(a)と10μgのCpGオリゴデオキシヌクレオチドCpGとの併用;(d)(b)とCpGオリゴデオキシヌクレオチドの併用とともにのいずれかで投与した。
【0136】
抗グルカン抗体(GMT)および第35日目の応答マウス(%)の数を表1に報告する。
【0137】
【表1】

カードラン結合体は、概してラミナリン結合体よりも免疫原性が高い。
【0138】
免疫原性試験(2)
さらなる実験では、免疫原性試験(1)に記載のようにして調製したラミナリン結合体およびカードラン結合体に、アジュバントとしてα−ガラクトシルセラミド(100ng)またはLT−K63(2μg)もまた、単独または他のアジュバントとの併用のいずれかで加えた。また、CpGアジュバントも、3つの異なる用量(0.5μg、5μgおよび10μg)で試験した。詳細は、1群あたり8匹のマウスとしたこと以外は、先の免疫原性試験の場合と同様にした。結果を表2に示す。
【0139】
【表2】

この場合も、カードラン結合体は、概して、ラミナリン結合体よりも免疫原性が高い。
【0140】
免疫原性試験(3)
さらなる研究において、CRM197または破傷風トキソイドのいずれかに結合体化させたラミナリンまたはカードランを、種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせ、マウスに皮下または腹腔内投与によって投与した。結合体は、免疫原性試験(1)に記載のようにして調製した。
【0141】
CD2F1マウス(4〜6週齢)を、10匹の12の群にて試験した。結合体を糖用量5μgで投薬容量150μlにて使用し、第1、14および28日目に皮下または腹腔内投与によって投与した。血液試料を第0、28および42日目に採取し、抗GGZym抗体レベルをELISAによって評価した。
【0142】
第1群〜第3群には、それぞれ、3回の同一用量のCRM197に結合体化したラミナリンを、以下のアジュバント:(a)水酸化アルミニウムアジュバント(300μg);(b)(a)およびCpGオリゴデオキシヌクレオチドCpG 1826(10μg)の併用;ならびに(c)MF59水中油型乳剤アジュバント(75μl)とともに与えた。第4群〜第6群は、それぞれ、グルカンをラミナリンではなくカードランとしたこと以外は第1群〜第3群と同様に処置した。第7群〜第9群は、それぞれ、ラミナリンをCRM197ではなく破傷風トキソイドに結合体化させたこと以外は、第1群〜第3群と同様に処置した。同様に、第10群〜第12群は、それぞれ、カードランをCRM197ではなく破傷風トキソイドに結合体化させたこと以外は、第4群〜第6群と同様に処置した。
【0143】
マウスへのラミナリン結合体の腹腔内投与後、第42日目の抗グルカン抗体(GMT)を図5に示す。皮下投与後の対応する結果を図6に示す。結果は、概して結合体を皮下投与によって投与した場合の方が良好な応答が見られたことを示す。さらに、特に、結合体を皮下投与によって投与した場合、一般的に、CRM197を担体タンパク質として使用した方が良好な結果が得られた。
【0144】
同様に、カードラン結合体の腹腔内投与後、第42日目の抗グルカン抗体(GMT)を図7に示す。皮下投与後の対応する結果を図8に示す。CRM197を担体タンパク質として使用した場合、結合体を皮下投与によって投与した場合の方が良好な応答が見られた。
【0145】
免疫原性試験(4)
別の試験において、CRM197に結合体化したラミナリンまたはカードランを、異なる用量の糖を用いてマウスに投与した。結合体は、免疫原性試験(1)に記載のようにして調製した。
【0146】
CD2F1マウス(4〜6週齢)を、8匹の12の群にて試験した。結合体を糖用量10μg、5μg、1μgまたは0.1μgで投薬容量150μlにて使用し、第1、14および28日目に投与した。血液試料を第0、28および42日目に採取し、抗GGZym抗体レベルをELISAによって評価した。また、抗ラミナリン抗体レベルも、ELISAにおいてGG−Zymをラミナリンに置き換えることにより、参考文献175に記載のようにして測定した。
【0147】
第1群には、3回の同一用量のCRM197に結合体化したラミナリンを、アジュバントなし、および糖用量5μgで与えた。第2群には、3回の同一用量のCRM197に結合体化したラミナリンを、水酸化アルミニウムアジュバント(300μg)とともに糖用量5μgで与えた。この群に投与した結合体の精製時には、リン酸緩衝液を使用した。第3群〜第6群には、3回の同一用量のCRM197に結合体化したラミナリンを水酸化アルミニウムアジュバント(300μg)とともに、それぞれ、糖用量10μg、5μg、1μgまたは0.1μgで与えた。これらの群に投与した結合体の精製時には、参考文献176に記載のように、ヒスチジン緩衝液を使用した。
【0148】
第7群〜第12群は、グルカンをラミナリンではなくカードランとしたこと以外は、第1群〜第6群と同様に処置した。
【0149】
種々の糖用量のラミナリン結合体の投与後、第42日目の抗グルカン抗体(GMT)を図9に示す。結果は、すべての用量で応答が見られ、最良の応答は糖用量5μgで得られたことを示す。
【0150】
カードラン結合体の投与後、第42日目の抗グルカン抗体(GMT)を図10に示す。この場合も、結果は、すべての糖用量で応答が見られたことを示す。最良の応答は、糖用量10μgおよび5μgで得られた。
【0151】
ラミナリン結合体投与後、第42日目の抗グルカン抗体(GMT)を図11に示す。抗GGZym抗体ELISAを用いて得られた結果を、抗ラミナリン抗体ELISAのものと比較する。抗ラミナリン抗体ELISAを使用した方が高力価が観察された。
【0152】
免疫原性試験(5)
別の試験において、結合体化(2)に記載のようにして調製した結合体およびCRM197に結合体化したラミナリンを、種々の個々のアジュバントおよび併用アジュバントと合わせ、マウスに腹腔内投与によって投与した。CRM197に結合体化したラミナリンは、結合体化前にアミノ化工程なしで調製したCRM197に対するラミナリンの代替ロット(ロット11AD)以外は、免疫原性試験(1)に記載のようにして調製した。
【0153】
CD2F1マウス(4〜6週齢)を、16匹の11の群にて試験した。結合体を5μgの糖用量で投薬容量150μlにて使用し、腹腔内投与によって第1、14および28日目に投与した。血液試料を第0、28および42日目に採取し、抗ラミナリン抗体レベルをELISAによって評価した。
【0154】
第1群〜第3群には、それぞれ、3回の同一用量のa)17mer−C2β(1−3)−CRM結合体;b)15mer−C6β(1−3)−CRM結合体;またはc)15mer−C2β(1−3)−CRM結合体を、すべてアジュバントなしで与えた。第4群〜第6群には、それぞれ、3回の同一用量のa)17mer−C2β(1−3)−CRM結合体;b)15mer−C6β(1−3)−CRM結合体;またはc)15mer−C2β(1−3)−CRM結合体を、すべてMF59水中油型乳剤アジュバント(75μl)とともに与えた。第7群および第8群には、それぞれ、3回の同一用量のCRM197に結合体化したラミナリンを、a)アジュバントなし;またはb)MF59水中油型乳剤アジュバント(75μl)とともに与えた。第9群および第10群には、それぞれ、3回の同一用量のCRM197に結合体化したラミナリンを、a)高用量のIC31(1000nmol/mlを超えるオリゴデオキシヌクレオチドおよび40nmol/mlのペプチドを有する49.5μlの試料)と合わせたMF59水中油型乳剤アジュバント(75μl);またはb)水酸化アルミニウムアジュバント(300μg)とともに与えた。第11群には、3回の同一用量の異なるCRM197に結合体化したラミナリン調製物をMF59水中油型乳剤アジュバント(75μl)とともに与えた。
【0155】
結合体の投与後、第42日目の抗ラミナリン抗体(GMT)を図12に示す。結果は、合成カードランおよびラミナリンの結合体は、他の結合体と同様の免疫原性を有することを示す。アジュバントを存在させた場合、免疫原性は、関連するグルカンの合成型を使用することにより改善され得る(17mer−C2β(1−3)−CRM/MF59の投与後に見られた応答(バー4)を、CRM197に結合体化したラミナリン/MF59の投与後に見られた応答(バー7および11)と比較)。合成グルカンの免疫原性は、より長いスペーサーをグルカンと担体タンパク質との間に使用することにより改善され得る(15mer−C6β(1−3)−CRMおよび15mer−C6β(1−3)−CRM/MF59の投与後に見られた応答(バー2および5)を、15mer−C2β(1−3)−CRMおよび15mer−C2β(1−3)−CRM/MF59の投与後に見られた応答(バー3および6)と比較)。アジュバントの非存在下では、合成グルカンに対する免疫原性は、β−1,6−分枝を存在させないことによって改善され得る(15mer−C2β(1−3)−CRMの投与後に見られた応答(バー3)を、17mer−C2β(1−3)−CRMの投与後に見られた応答(バー1)と比較)。対照的に、アジュバントの存在下では、合成グルカンに対する免疫原性は、β−1,6−分枝を存在させることによって改善され得る(17mer−C2β(1−3)−CRM/MF59の投与後に見られた応答(バー4)を、15mer−C2β(1−3)−CRM/MF59の投与後に見られた応答(バー6)と比較)。CRM197に結合体化したラミナリンでは、結合体化前のアミノ化工程の省略によって免疫原性は妨害されなかった(バー8および11を比較)。
【0156】
能動防御試験(1)
別の試験において、MF59アジュバントと合わせたCRM197に結合体化されたグルカンを受けたマウスが、C.albicansでの抗原刺激に対して生存する能力を試験した。結合体は、免疫原性試験(1)に記載のようにして調製した。
【0157】
雌の4週齢のCD2F1マウス(Harlan)を、3回の用量にて、CRM197に結合体化したラミナリンまたはカードランで免疫処置した。各用量は、マウス1匹あたり10μgの多糖(0.2mlのPBS中):MF59(1:1 v/v)からなるものとした。
【0158】
免疫処置スケジュールは:
・第0日目−皮下投与による初回用量
・第14日目−腹腔内投与による2回目の用量
・第28日目−腹腔内投与による3回目の用量
・第35日目−採血
・第40日目−マウス1匹あたり、静脈内投与による5.0×l0(ラミナリン結合体での免疫処置後)または2.5×10(カードラン結合体での免疫処置後)のC.albicans菌株BP細胞(0.2mlのPBS中)の真菌抗原刺激
とした。
【0159】
防御エンドポイントを、死亡率(メジアン生存期間(MST)および死亡例/全抗原刺激マウスの比)に関して測定した。
【0160】
図13は、C.albicansでの抗原刺激前の、MF59と合わせたCRM197に結合体化したラミナリンまたはCRM197およびMF59単独で処置したマウスの生存率を示す。表3においても、MSTに関して、結合体で処置したマウスで、より長い生存が示されている。
【0161】
【表3】

図14は、C.albicansでの抗原刺激前の、MF59と合わせたCRM197に結合体化したカードランまたはMF59単独で処置したマウスの生存率を示す。表4においても、MSTに関して、結合体で処置したマウスで、より長い生存が示されている。
【0162】
【表4】

生存は、CRM197に結合体化したラミナリンを受けたマウスよりも、CRM197に結合体化したカードランを受けたマウスの方が長かった。
【0163】
能動防御試験(2)
同様の試験において、MF59アジュバントと合わせたCRM197に結合体化された合成グルカンを受けたマウスが、C.albicansでの抗原刺激に対して生存する能力を試験した。結合体は、結合体化(2)に記載のようにして調製した。この試験では、真菌抗原刺激は、5.0×l0細胞の静脈内投与によるものとした。
【0164】
図15は、C.albicansでの抗原刺激前の、MF59と合わせた15mer−C2β(1−3)−CRM、MF59と合わせた17mer−C2β(1−3)−CRMまたはMF59単独で処置したマウスの生存率を示す。表5においても、MSTに関して、15mer−C2β(1−3)−CRM結合体で処置したマウスで、より長い生存が示されている。
【0165】
【表5】

15mer−C2β(1−3)−CRMでの処置により生存が長くなったが、17mer−C2β(1−3)−CRMでの処置は、なんら効果を有しないようであった。この結果は、グルカン内の防御的抗体応答の誘導を担うエピトープが、β−1,3結合のみによって他の残基に連結された隣接する少なくとも5つの非末端残基を含むことを示唆する。理論に拘束されることを望まないが、この効果が、能動防御試験(1)において、CRM197に結合体化したラミナリンを受けたマウスよりもCRM197に結合体化したカードランを受けたマウスで見られた防御的抗体応答が大きかったことに寄与している可能性があると考えられる。CRM197に結合体化したカードラン(この場合、グルカンはβ−1,3−結合残基のみを含む)は、CRM197に結合体化したラミナリン(この場合、グルカンは、β−1,3−結合残基およびβ−1,6−結合残基を含む)よりも多くの割合の防御的エピトープを含んでいる可能性がある。
【0166】
本発明は、一例として説明したにすぎず、本発明の範囲および精神の範囲内で変形が行われ得ることは理解されよう。
【0167】
参考文献
【0168】
【数3】

【0169】
【数4】

【0170】
【数5】

【0171】
【数6】

【0172】
【数7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬における使用のためのグルカンであって、該グルカンは、(i)排他的にβ−1,3−結合グルコース残基を有するか、または(ii)β−1,3−結合グルコース残基およびβ−1,6−結合グルコース残基の両方を含むかのいずれかである、ただし、β−1,6−結合残基に対するβ−1,3−結合残基の比が少なくとも8:1である、および/またはβ−1,3結合のみによって他の残基に連結された少なくとも5つの隣接する非末端残基の配列が1つ以上存在する、グルカン。
【請求項2】
(i)排他的にβ−1,3−結合グルコース残基を有するか、または(ii)β−1,3−結合グルコース残基およびβ−1,6−結合グルコース残基の両方を含むかのいずれかである、ただし、β−1,6−結合残基に対するβ−1,3−結合残基の比が少なくとも8:1である、請求項1に記載のグルカン。
【請求項3】
前記グルカンが、排他的に1,3結合を有する線状β−D−グルコピラノース、請求項1または2に記載のグルカン。
【請求項4】
カードラン、パラミロン、またはその断片である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカン。
【請求項5】
カードランの加水分解断片である、請求項3に記載のグルカン。
【請求項6】
2〜60個のグルコース単糖単位を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のグルカン。
【請求項7】
単一の分子種である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のグルカン。
【請求項8】
下記の構造:
【化9】

を有し、式中、n+2は11〜19の範囲である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のグルカン。
【請求項9】
n+2=15である、請求項8に記載のグルカン。
【請求項10】
免疫原としての使用のためのものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載のグルカン。
【請求項11】
防御的抗体応答の提供における使用のためのものである、請求項1〜10のいずれか一項に記載のグルカン。
【請求項12】
担体分子に連結された請求項1〜11のいずれか一項に記載のグルカンを含む結合体。
【請求項13】
前記担体分子が細菌毒素またはその非毒性誘導体である、請求項12に記載の結合体。
【請求項14】
前記担体がCRM197である、請求項13に記載の結合体。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のグルカンまたは結合体を、薬学的に許容され得る担体との組み合わせで含む医薬組成物。
【請求項16】
免疫原性組成物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
アジュバントを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のグルカン、結合体または医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における免疫応答を惹起するための方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図11】
image rotate

【図3】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2011−504535(P2011−504535A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534566(P2010−534566)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003680
【国際公開番号】WO2009/068996
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】