説明

結合性が改良された回路材料およびその製造方法と製造物品

導電層と、熱硬化性組成物から形成される誘電体層であって、前記熱硬化性組成物は、その全質量に対して、ポリブタジエンまたはポリイソプレン樹脂と、約1000ppm未満のイオン性汚染物質を有する約30〜約70質量%の水酸化マグネシウムと、少なくとも約15質量%の窒素を含む約5〜約15質量%の窒素含有化合物と、を含む誘電体層と、前記導電層と前記誘電体層間に配置されてそれらに密接に接触する接着剤層と、を備え、前記接着剤はポリ(アリーレンエーテル)を含んでおり、前記回路部品組立体のUL−94等級は少なくともV−1であることを特徴とする回路部品組立体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広くは、回路部品組立体とその製造方法、およびそれから製造される、回路および多層回路を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で用いられるように、回路部品組立体は、回路および多層回路の製造に用いられる物品であり、回路積層板、パッケージ基板積層板、ビルドアップ材料、ボンドプライ、樹脂コート導電層およびカバーフィルムを含む。回路積層板は、誘電体基板層に固定的に貼付された、銅などの導電層を有する回路部品組立体の1種である。ダブルクラッド積層板は2つの導電層を有しており、それぞれが誘電体層の各面に設けられている。例えば、エッチングによる積層板導電層をパターニングすることにより回路が得られる。多層回路は、少なくとも1つが導電性配線パターンを含む複数の導電層を備える。多層回路は通常、ボンドプライを用いて1つまたは複数の回路層を互いに積層することにより形成され、一部の例では、熱およびまたは圧力を用いて適切に配列された樹脂コート導電層が積層される。積層による多層回路の形成後、既知のホール形成技術とメッキ技術を用いて導電層間に有用な電気経路を形成できる。
【0003】
歴史的には、回路部品組立体誘電体は、ガラス繊維強化エポキシ樹脂で作られてきた。比較的極性のエポキシ材料は、銅箔などの金属表面に比較的良好に結合する。しかしながら、エポキシ樹脂中の極性基は、比較的高い誘電率と高散逸率をもたらす。高周波数で作動する電子デバイスでは、低誘電率と低散逸率とを有する回路誘電材料を使用することが求められる。良好な電気性能は、ポリブタジエン、ポリイソプレまたはポリフェニレン酸化物ポリマー系をベースにしたものなどの、比較的非極性の樹脂系を使用することによって実現される。これらの樹脂が低極性であることからもたらされる望ましくない結果は、金属表面への結合性が本来的に低いことである。
【0004】
また、電子デバイスやその上の機構が小型化するにつれて、高密度回路レイアウトの製造は、高ガラス転移温度を有する回路誘電体材料を用いることによって促進されてきた。しかしながら、低誘電率、低散逸率および高ガラス転移温度の誘電体基板を用いると、導電層と誘電体基板層間の接着が低下し得る。導電層が、粗さが小さいあるいは粗さが非常に小さい銅箔(ロープロファイル銅箔)の場合には、接着はさらに大幅に低下し得る。こうした銅箔は好適には、高密度回路設計で用いられてエッチ範囲を向上させたり、高周波用途で用いられて粗さによる導体損失を低減させる。
【0005】
誘電体回路基板と導電層表面との結合を向上させるために多くの努力が行われてきた。例えば、種々の特定のポリマー組成物の使用が開示されている。HolmanのPCT出願第99/57949号には、分子量が約4,500を超えるエポキシまたはフェノキシ樹脂を用いて回路積層板の剥離強度を向上させることが開示されている。また、Poutasseの米国特許第6,132,851号には、回路基板への接着向上手段として、フェノールレゾール樹脂/エポキシ樹脂組成物をコーティングした金属箔の使用が開示されている。Kohmの米国特許第4,954,185号には、プリント回路板積層板のコーティング金属箔を製造する二段階プロセスであって、第1のプロセスは、金属基板表面に金属酸化物層を形成する化学的プロセスであり、第2のプロセスは、ポリ(ビニルアセタール)/熱硬化性フェノール組成物の塗布である、二段階プロセスが開示されている。米国特許第5,194,307号でGardeskiは、1つまたは複数のエポキシ組成物と高分子量ポリエステル組成物を有する接着剤組成物を開示している。該硬化接着剤層はフレキシブルであり、金属箔のフレキシブルな回路基板(例えば、ポリイミド膜)への接合に使用できる。米国特許第5,569,545号でYokonoらは、樹脂と架橋し銅に化学的に結合していると推定される各種の硫黄含有化合物を用いて得られる、銅クラッド回路積層板における接着性の向上について開示している。腐食の傾向が高まるために、硫黄含有化合物の存在は好ましくないものであり得る。Landiらの米国特許種出願第2005/0208278号には、非硫黄硬化剤を含む接着促進エラストマ層の使用が開示されている。しかしながら、実際には、該エラストマ接着促進層は軟表面に成り得るために、加工時の取り扱い損傷の可能性が高まることが判った。最後に、米国特許第5,622,782号でPoutasseとKovacsは、多成分系のオルガノシラン層を用いて他の基板に対する箔接着を向上させることを開示している。銅箔メーカは、最終製造工程として銅箔にシラン処理を適用することができ、多くの場合特許品であるシラン組成物は通常、顧客の基板に適合するように選択される。
【0006】
米国特許第5,629,098号でPoutasseらが述べているように、金属と基板に良好な接着を与える(剥離強度で測定して)接着剤は通常、十分な高温安定性を有していない(耐ハンダブリスタ試験で測定して)。逆に、良好な高温安定性が得られる接着剤は通常、十分な接着性を有していない。従って、導電性金属と回路基板との、特に、誘電率と散逸率が低く高ガラス転移温度を有する、薄くて剛体の熱硬化性基板との接合を向上させ、高温での接着性を維持する方法がこの分野では求められている。接着剤がB−ステージを必要とせず、およびまたは、接着剤の使用が出来上がった回路材料の電気的、機械的特性に悪影響を与えないものであれば好都合であろう。
【0007】
また、回路基板材料には、炭素と多くの場合高含有量の水素とを有する合成有機材料が含まれ得るため、それらは可燃性となり、建設、電気、輸送、鉱業および自動車産業などの種々の製造部門で義務付けられている難燃性要件を満たすことが多くの用途で求められている。これらの規定を満たすために、種々の方法で燃焼の化学的発熱連鎖を妨げる添加剤が使用されている。
【0008】
電気回路部品組立体組成物は通常、ハロゲン化、特に臭素化難燃剤を用いて必要な難燃性レベルを実現している。最近、臭素化難燃剤が健康や環境問題に及ぼす可能性について調査されており、そのために、効果的ではありながら、ハロゲン、特に臭素や塩素を含まない難燃剤を含有する回路部品組立体を有することが望まれている。
【0009】
ハロゲンを含まないポリマー用のよく使用される代替難燃剤は、回路部品組立体に使用されると、それらの本来的な特性のためか、あるいは難燃剤として効果的でないために、重大な欠点を有している。前者による欠点は、電気特性の悪化、熱安定性の低下および吸水性の上昇に繋がり得る。後者による欠点は高含有量とすることで克服され得るが、この場合には多孔性と物性低下に繋がり得る。通常の代替難燃剤におけるこれらの問題は、可燃性の高い樹脂系と共に用いられると増幅される。こうした問題を生じる代替難燃剤としては、難燃性リン化合物、三水和アルミナおよびホウ酸塩などが挙げられる。
【0010】
従って、電気特性や吸湿特性などの物性を損なうことなく所望の難燃性が得られる、非ハロゲン含有難燃熱硬化性組成物が求められている。良好な難燃特性を有すると共に、導電性金属材料との接合が向上した剛体のハロゲンフリーな回路部品組立体を提供することは同様に望ましいことであろう。
【発明の開示】
【0011】
ある実施形態では、回路部品組立体は、導電層と、熱硬化性組成物から形成される誘電体層であって、前記熱硬化性組成物は、その全質量に対して、ポリブタジエンまたはポリイソプレン樹脂と、約1000ppm未満のイオン性汚染物質を有する約30〜約70質量%の水酸化マグネシウムと、少なくとも約15質量%の窒素を含む約5〜約15質量%の窒素含有化合物と、を含む誘電体層と、前記導電層と前記誘電体層間に配置されてそれらに密接に接触する接着剤層と、を備え、前記接着剤はポリ(アリーレンエーテル)を含んでおり、前記回路部品組立体のUL−94等級は少なくともV−1である。ある実施形態では、前記接着剤はさらに、ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマー、好適にはカルボキシ官能化ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーと、選択的にエラストマと、を含む。
【0012】
別の実施形態では、回路部品組立体は、導電層と、熱硬化性組成物から形成される誘電体層であって、前記熱硬化性組成物は、その全質量に対して、ポリブタジエンまたはポリイソプレン樹脂と、約1000ppm未満のイオン性汚染物質を有する約30〜約70質量%の水酸化マグネシウムと、少なくとも約15質量%の窒素を含む約5〜約15質量%の窒素含有化合物と、を含む誘電体層と、を備え、前記回路部品組立体のUL−94等級は少なくともV−1である。
【0013】
さらに別の実施形態では、回路部品組立体は、導電層と、熱硬化性組成物から形成される誘電体層であって、前記熱硬化性組成物は、その全質量に対して、ポリブタジエンまたはポリイソプレン樹脂と、約1000ppm未満のイオン性汚染物質を有する約50〜約80質量%の水酸化マグネシウムと、を含む誘電体層と、前記導電層と前記誘電体層間に配置されてそれらに密接に接触する接着剤層と、を備え、前記接着剤層はポリ(アリーレンエーテル)を含んでおり、前記回路材料のUL−94等級は少なくともV−1である。ある実施形態では、前記接着剤はさらに、ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマー、好適にはカルボキシ官能化ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーと、選択的にエラストマと、を含む。
【0014】
別の代替実施形態では、回路部品組立体は、導電層と、熱硬化性組成物から形成される誘電体層であって、前記熱硬化性組成物は、その全質量に対して、ポリブタジエンまたはポリイソプレン樹脂と、約1000ppm未満のイオン性汚染物質を有する約50〜約80質量%の水酸化マグネシウムと、を含む誘電体層と、を備え、前記回路材料のUL−94等級は少なくともV−1である。
【0015】
さらに別の実施形態は、熱硬化性組成物から形成される誘電体層であって、前記熱硬化性組成物は、その全質量に対して、ポリブタジエンまたはポリイソプレン樹脂と、約1000ppm未満のイオン性汚染物質を有する約30〜約70質量%の水酸化マグネシウムと、少なくとも約15質量%の窒素を含む約5〜約15質量%の窒素含有化合物と、を含む誘電体層を備え、前記回路部品組立体のUL−94等級は少なくともV−1であることを特徴とする回路部品組立体である。
【0016】
以下の図面、詳細な記述および実施例により本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下、典型的な図面を参照するが、ここでは同様な要素には同じ参照番号を付している。
【0018】
【図1】導電層(例えば銅箔)上に配置された接着剤層を有する典型的な回路部品組立体を示す。
【図2】誘電体基板層上に配置された接着剤層を有する典型的な回路部品組立体を示す。
【図3】接着剤層を備えた典型的な回路積層板を示す。
【図4】2つの接着剤層を備えた典型的なダブルクラッド回路積層板を示す。
【図5】2つの接着剤層を備えた典型的なダブルクラッド回路を示す。
【図6】3つの接着剤層を備えた典型的な多層回路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で開示される回路部品組立体は、現代の多くの用途で望まれている顕著な電気特性を有しながらも、高度に可燃性で、また導電性金属に対する接着性が悪いポリマー系に基づくものである。過去には、高度に可燃性であることの問題は、ポリマー系に臭素化有機難燃剤を添加することで対応されてきた。これらの臭素化化合物は、難燃性を向上させるために他の回路材料で使用される種類と同様なものである。しかしながら、最近、これらの臭素化化合物の燃焼時あるいは埋め立て時に有毒な、発癌性でもある副産物を生成する可能性があるとされていることから、こうした臭素化化合物に関して世界的な健康懸念と環境懸念が高まってきている。
【0020】
こうした懸念によって、ハロゲン類、特に臭素と塩素を使用せずに、UL−94難燃性等級がV−1以上である「ハロゲンフリー」の回路材料への要望に拍車が掛かった。一部の政府および団体は、回路材料中の「ハロゲンフリー」の規定を、臭素、塩素あるいはこれらの組合せを900ppm未満とすることを提案している。
【0021】
本明細書に開示された回路部品組立体は好都合に、ハロゲンフリーの添加剤を有する非極性ポリマー系を含んでおり、従来の回路製造に使用されて、良好な電気特性、低吸水性、導電性金属に対する良好な接着性および、特に高酸性溶剤と溶液に対して優れた耐溶剤性と耐溶液性を与えながら、V−1以上の難燃性を実現する。これらの特性はすべて、高周波数でのあるいは高回路密度での応用に使用される回路部品組立体に強く求められているものである。
【0022】
米国特許第7,022,404号には、難燃剤を組み合わせて、特に水酸化マグネシウムとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を組み合わせて、臭素や塩素を添加せずに、該発明の可燃性樹脂系でUL−94等級がV−1以上を実現することが開示されている。しかしながら、この組み合わせには、少なくとも部分的には、所望の難燃性のために必要となる高含有量の添加剤によって生じる欠点、特に、所望のレベルを超える吸水性、所望のレベルを下回る耐酸性と導電性金属への接着性を有し得る。
【0023】
本開示は、V−1以上のUL−94等級を実現しながら、これらの欠点を解決するものである。これは、回路誘電体と導電性金属間の結合性向上接着剤組成物を使用するとともに、窒素含有量が少なくとも約15質量%である窒素含有化合物またはこれらの化合物の組み合わせを添加することにより、水酸化マグネシウムの量を低減することで実現される。出来た回路部品組立体は、すべてハロゲンフリーでありながら、等級V−1以上、低吸水性、良好な電気特性、強い耐酸性および優れた導電性金属接着という、予想外の望ましい特性の組み合わせを有する。
【0024】
従って、結合性向上接着剤層組成物を組み込み可能なハロゲンフリー誘電体金属組成物を備えた回路部品組立体がここに記述される。
【0025】
前記結合性向上接着剤組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)と、選択的にポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマー、好適にはカルボキシル化ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーを含むポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーと、選択的に、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンから誘導される単位を含むエラストマブロック共重合体と、を含む。該ポリ(アリーレンエーテル)も選択的にカルボキシ官能化できる。これらの成分の組み合わせによって、導電性金属層と回路基板間の接着性が高められると共に、難燃性も向上できる。向上した接着強度は、ハンダ取り扱い時に直面するような高温(例えば、550Fahrehheitすなわち288℃)で有利に維持される。特に有利な特徴は、該接着剤組成物を使用しても、低誘電率、低散逸率、低吸水性および向上した絶縁破壊強度などの、出来上がった回路積層板の電気特性に著しい悪影響を与えないことである。
【0026】
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、ホモポリマーの形態でも、グラフトやブロック共重合体を含む共重合体の形態でもよい。種々の形態の組み合わせが用いられる。ポリ(アリーレンエーテル)類は、式(1)の構造単位を複数含む。
【化1】

式中、各構造単位に対して、RおよびR’はそれぞれ独立に、水素、第一級または第二級C1−7アルキル、フェニル、C1−7アミノアルキル、C1−7アルケニルアルキル、C1−7アルキニルアルキル、C1−7アルコキシ、C6−10アリールおよびC6−10アリールオキシである。一部の実施形態では、各Rは独立に、C1−7アルキルまたはフェニル、例えばC1−4アルキルであり、各R’は独立に、水素またはメチルである。
【0027】
典型的なポリ(アリーレンエーテル)類には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−アリル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(ジ−tert−ブチル−ジメトキシ−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジブロモメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジ(2−クロロエチル)−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジトリル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)およびポリ(2,5−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が含まれる。有用なポリ(アリーレンエーテル)は、選択的に2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と組み合わせられた2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位を含む。
【0028】
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、導電性金属層と回路基板層間の接着を高める官能基を提供するために官能化され得る。官能化は、(i)炭素−炭素二重結合あるいは炭素−炭素三重結合、(ii)カルボン酸、無水物、アミド、エステルあるいは酸ハロゲン化物を含む1つまたは複数のカルボキシ基、の両方を分子内に有する多官能化合物を用いて実現される。ある実施形態では、該官能基はカルボン酸またはエステル基である。カルボン酸官能基を提供できる多官能化合物としては、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸およびクエン酸が挙げられる。
【0029】
特に、好適な官能化ポリ(アリーレンエーテル)類には、ポリ(アリーレンエーテル)と環式カルボン酸無水物の反応生成物が含まれる。好適な環式無水物としては、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、アジピン酸無水物およびフタル酸無水物が挙げられ、より具体的には、マレイン酸無水物である。マレイン化ポリ(アリーレンエーテル類)などの改質ポリ(アリーレンエーテル類)は、米国特許第5,310,820号に記載されている方法によって製造でき、あるいは市販されている。市販されている好適な改質および未改質ポリ(アリーレンエーテル類)としては、Asahi社のPPE−MA(マレイン化ポリ(アリーレンエーテル))およびChemtura社のBlendex HPP820(未改質ポリ(アリーレンエーテル))などがある。
【0030】
一部の実施形態では、前記接着剤はさらに、ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーを含む。特定の実施形態では、2種類以上のポリブタジエンおよびまたはポリイソプレンポリマーを含む組み合わせが用いられる。ここで使用されるように、「ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマー」は、ブタジエン由来のポモポリマー、イソプレン由来のホモポリマー、およびブタジエンおよびまたはイソプレンおよびまたはブタジエンおよびまたはイソプレンと共硬化可能な50質量%未満のモノマーから誘導される共重合体を含む。すなわち、ブタジエンおよびまたはイソプレンの共重合体は、50質量%を超えるブタジエン、50質量%を超えるイソプレンあるいは50質量%を超える(ブタジエン+イソプレン)を有するポリマーを含む。ブタジエンおよびまたはイソプレンと共硬化可能な好適なモノマーとしては、アクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、β−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリル、C1−6アルキル(メタ)アクリレート類(例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレートおよびイソプロピル(メタ)アクリレート)、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、スチレン、以下に記載するようなアルケニル芳香族化合物類などのモノエチレン系不飽和化合物類およびこれらのモノエチレン系不飽和モノマー類を少なくとも1つ含む組み合わせが挙げられる。
【0031】
別の有利な実施形態では、前記ポリブタジエンポリマーは、共硬化可能なモノマーを有さないシンジオタクチックポリブタジエンホモポリマーを含む。該シンジオタクチックポリブタジエンホモポリマーは多くの場合、違ったポリブタジエンポリマー、ポリイソプレンポリマーあるいはこれらの組み合わせと共に用いられる。
【0032】
前記接着剤組成物に使用される前記ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーは、ポリ(アリーレンエーテル)と共硬化できる。ある実施形態では、該ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーはカルボキシ官能化されている。官能化は、ブタジエンまたはイソプレンと共硬化可能な多官能モノマーであって、(i)炭素−炭素二重結合あるいは炭素−炭素三重結合、(ii)カルボン酸、無水物、アミド、エステルあるいは酸ハロゲン化物を含む1つまたは複数のカルボキシ基、の両方を分子内に有する多官能モノマーを用いて実現できる。好適なカルボキシ基はカルボン酸またはエステルである。カルボン酸官能基を提供できる多官能化合物としては、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸およびクエン酸が挙げられる。特に、マレイン酸無水物で付加されたポリブタジエンは該接着剤組成物に使用できる。好適なマレイン化ポリブタジエンポリマー類は市販されており、例えばSartomer社から、RICON130MA8、RICON130MA13、RICON130MA20、RICON131MA5、RICON131MA10、RICON131MA17、RICON131MA20およびRICON156MA17の商標名で販売されている。好適なマレイン化ポリブタジエン−スチレン共重合体類は市販されており、例えばSartomer社からRICON184MA6の商標名で販売されている。RICON184MA6は、スチレン含有量が17〜27質量%、数平均分子量(Mn)が約9,900g/モルのマレイン酸無水物で付加されたブタジエン−スチレン共重合体である。特定の実施形態では、シンジオタクチックポリブタジエンホモポリマーは、カルボキシ官能化ポリブタジエン、より具体的にはマレイン化ポリブタジエンホモポリマーまたは共重合体、例えばマレイン化ポリブタジエン−スチレンと共に用いられる。
【0033】
さらに別の実施形態では、前記接着剤はさらに、エラストマポリマーを含む。該エラストマポリマーは、該ポリ(アリーレンエーテル)およびまたは該ポリブタジエンまたはイソプレン樹脂と共硬化可能である。好適なエラストマとしては、アルケニル芳香族化合物由来のブロック(A)と、共役ジエン由来のブロック(B)と、を含むエラストマブロック共重合体類が挙げられる。ブロック(A)と(B)の配置には、分枝鎖を有するラジアルテレブロック構造を含む直鎖およびグラフト構造が含まれる。直鎖構造には、ジブロック構造(A−B)、トリブロック構造(A−B−AまたはB−A−B)、テトラブロック構造(A−B−A−B)、ペンタブロック構造(A−B−A−B−AまたはB−A−B−A−B)およびAとBを合計で6ブロック以上含む構造が含まれる。特定のブロック構造は、ジブロック、トリブロックおよびテトラブロック構造を含み、具体的にはA−BジブロックおよびA−B−Aトリブロック構造を含む。
【0034】
ブロック(A)を提供するアルケニル芳香族化合物は、式(2)で表される。
【化2】

式中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、C−Cアルキル、ブロモあるいはクロロであり、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、C−C12アルキル、C−C12シクロアルキル、C−C12アーリル、C−C12アラルキル、C−C12アルカリル、C−C12アルコキシ、C−C12シクロアルコキシ、C−C12アリールオキシ、クロロ、ブロモ、あるいはヒドロキシである。典型的なアルケニル芳香族化合物としては、スチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、α−クロロスチレン、α−ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、tetra−クロロスチレンなど、およびこれらの化合物の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。スチレンおよびまたはα−メチルスチレンは頻繁に使用される。
【0035】
ブロック(B)の提供に使用される前記共役ジエン類の具体的な例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンおよび1,3−ペンタジエンが挙げられ、具体的には1,3−ブタジエンおよびイソプレンが挙げられる。共役ジエン類の組み合わせも使用できる。共役ジエン由来のブロック(B)は選択的に、部分的あるいは完全に水素化されている。
【0036】
アルケニル芳香族化合物由来のブロック(A)と、共役ジエン由来のブロック(B)と、を含む典型的なブロック共重合体には、スチレン−ブタジエンジブロック共重合体(SB)、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレンジブロック共重合体(SI)、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)、スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレントリブロック共重合体(SBS)、スチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレントリブロック共重合体(SEPS)およびスチレン−(エチレン−ブチレン)ジブロック共重合体(SEB)が含まれる。このようなポリマーは市販されており、例えばShell Chemical社から、KRATON D−1101、KRATON D−1102、KRATON D−1107、KRATON D−1111、KRATON D−1116、KRATON D−1117、KRATON D−1118、KRATON D−1119、KRATON D−1122、KRATON D−1135X、KRATON D−1184、KRATON D−1144X、KRATON D−1300X、KRATON D−4141、KRATON D−4158、KRATON G1726およびKRATON G−1652の商標名で販売されている。KRATON D−1118は固体のSB−SBS共重合体である。この共重合体は、約20%のSBSトリブロックと約80%のSBジブロックを有する、ポリスチレン末端ブロックとゴム状ポリブタジエン中央ブロックを有する。この共重合体は、低弾性率、低凝集力の軟質ゴムである。
【0037】
前記ポリ(アリーレンエーテル)類、前記ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーおよび前記エラストマブロック共重合体の相対量は、使用される特定の基板材料、回路材料と回路積層板の所望特性および同様の検討に依存するであろう。ポリ(アリーレンエーテル)を用いると、導電性金属層、特に銅と、比較的非極性の誘電体基板材料間の結合強度が上昇することが分かった。ポリ(アリーレンエーテル)類そのものは非極性であるため、この結果は特に驚くべきものである。ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーの使用によって、積層板の耐熱性はさらに上昇し、特に、これらのポリマーをカルボキシ官能化すると上昇する。エラストマブロック共重合体の使用によって、該接着剤成分に適合するように機能する。各成分の適切量は余分な実験を行うことなく、本明細書に記載のガイダンスを用いて決定できる。
【0038】
ある実施形態では、前記接着剤組成物は、100質量%までのポリ(アリーレン)エーテル、具体的には前記カルボキシ官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含む。別の実施形態では、該接着剤組成物は、100質量%までのポリ(アリーレン)エーテル、具体的にはカルボキシ官能化ポリ(アリーレン)エーテルから本質的に構成される。さらに別の実施形態では、該接着剤組成物は、100質量%までのポリ(アリーレン)エーテル、具体的にはカルボキシ官能化ポリ(アリーレン)エーテルで構成される。
【0039】
あるいは、前記接着剤組成物は、そのポリマー部分の全質量に対して、約20〜約99質量%の、具体的には約30〜約80質量%の、より具体的には約40〜約60質量%のポリ(アリーレンエーテル)、好適にはカルボキシ官能化ポリ(アリーレンエーテル)と、約1〜約80質量%の、具体的には約20〜約70質量%の、より具体的には約40〜約60質量%のポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマー、好適にはカルボキシ官能化ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーを含むポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーと、を含む。
【0040】
さらに別の実施形態では、前記接着剤組成物は、そのポリマー部分の全質量に対して、約20〜約98質量%の、具体的には約25〜約75質量%の、より具体的には約30〜約50質量%のポリ(アリーレンエーテル)、好適にはカルボキシ官能化ポリ(アリーレンエーテル)と、約1〜約79質量%の、具体的には約10〜約60質量%の、より具体的には約20〜約40質量%の共硬化可能なポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマー、好適にはカルボキシ官能化ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーを含むポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーと、約1〜約79質量%の具体的には約10〜約60質量%の、より具体的には約20〜約40質量%のエラストマブロック共重合体と、を含む。
【0041】
前記接着剤組成物は、上記のポリマーの1つまたは複数に加えてさらに、硬化剤、架橋剤、粘度調整剤、カップリング剤、湿潤剤、難燃剤、充填材および酸化防止剤などの添加剤を選択的に含むことができる。添加剤は、導電層および回路基板組成物の性質に依存して特定的に選択され、導電層と回路基板間の接着や、誘電率、散逸率、吸水性、難燃性およびまたは回路材料の他の所望の特性を向上させるかあるいは実質的に悪影響を与えないように選択される。
【0042】
前記接着剤組成物に使用される好適な充填材には、二酸化チタン(ルチルおよびアナターゼ)、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、溶融アモルファスシリカを含むシリカ、コランダム、珪灰石、アラミド繊維類(例えばDuPont社のKEVLAR(登録商標))、ガラス繊維、BaTi20ガラス球、石英、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化ベリリウム、アルミナ、マグネシア、水酸化マグネシウム、雲母、タルク、ナノクレイ、アルミノケイ酸塩(天然および合成)および溶融二酸化ケイ素(例えばCabot社から市販されているCab−O−Sil)などがあり、これらは単独で用いられても組み合わせて用いられてもよい。充填材は、固体粒子、多孔質粒子または中空粒子のいずれの形態であってもよい。特定的な充填材としては、ルチル型二酸化チタンとアモルファスシリカが挙げられる。充填材とポリマー間の接着を向上させるために、シラン、ジルコン酸塩またはチタン酸塩などのカップリング剤の1種または複数種で充填材を処理することができる。充填材を用いた場合その存在量は通常、該接着剤組成物の全質量に対して、約15〜60体積%、具体的には約20〜50体積%である。
【0043】
好適な硬化剤は、接着剤組成物中のポリマー類の硬化開始に有用なものを含む。その例としてはこれに限定されないが、アジド、過酸化物、硫黄および硫黄誘導体が挙げられる。ラジカル開始剤は硬化開始剤として特に望ましい。ラジカル開始剤としては、過酸化物、ヒドロパーオキサイド、および2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンなどの非過酸化物開始剤がある。過酸化物硬化剤としては、ジクミルパーオキサイド、α−ジ(t−ブチルパーオキシ)−m,p−ジイソプロピレンベンゼン2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3およびこれらの硬化開始剤の1つまたは複数を含む混合物などがある。硬化開始剤を用いた場合その存在量は通常、該接着組成物の全質量に対して約0.25体積%〜約15体積%である。
【0044】
架橋剤は、接着剤の硬化時に架橋密度を上げる反応性モノマーまたはポリマーである。ある実施形態では、こうした反応性モノマーまたはポリマーは、接着剤組成物中のポリマーおよび回路基板組成物中のポリマーと共反応できる。好適な反応性モノマーとしては、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニールトルエン、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレートおよび多官能性アクリレートモノマー類(Sartomer社から販売されているSartomer化合物など)などがあり、他の反応性モノマーの中で、これらのすべては市販されている。架橋剤の有用な量は、該接着剤組成物の全質量に対して、約0.1〜約50質量%である。
【0045】
好適な酸化防止剤は、ラジカルスカベンジャと金属不活性剤を含む。ラジカルスカベンジャの限定しない例は、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペルジル)イミノ]]であり、Ciba Chemicals社からChimmasorb944の商標名で販売されている。金属不活性剤の限定しない例は、2,2−オキサリルジアミノビス[エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]であり、Uniroyal Chemical社(Middlebury,CT)からNaugard XL−1の商標名で販売されている。酸化防止剤は、単独でもあるいは2つ以上の混合物でも用いられる。酸化防止剤の存在量は通常、該接着剤組成物の全質量に対して、約3質量%まで、具体的には約0.5〜約2.0質量%である。
【0046】
カップリング剤は、金属表面または充填材表面とポリマーを結合する共有結合の形成促進、あるいは共有結合への参画のために使用される。典型的なカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランと3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとがある。カップリングが用いられる場合その存在量は、該接着剤組成物の全質量に対して、約0.1〜約1質量%とすることができる。
【0047】
上記の接着剤組成物は、誘電体回路基板および導電層と共に用いられて回路材料、回路積層板、回路および多層回路を製造する。好適な導電層としては、例えば電着銅箔などの、回路形成に現在使用されている銅箔などの導電性金属薄層が含まれる。有用な銅箔の厚みは通常、約9〜約180μmである。
【0048】
前記銅箔は、硫酸銅浴から回転するステンレス製ドラム上に電着(ED)させる方法、あるいはまたは固体銅帯を圧延する方法のいずれかの方法で製造される。ED銅箔を用いる場合、箔メッキ工程において、基材箔の初期粗さが該箔の「浴側」(すなわちマット側)に作られる。その後の粗さは第2のメッキ工程で作られる。圧延箔が使用される場合、最初は平滑で光沢のある箔に第2のメッキ工程で粗さが与えられる。
【0049】
この機械的な粗さからいくつかの欠点が生じ得る。Bristら(Gary Brist,Stephen Hall,Sidney ClouserおよびTao Liang,「Non−classical conductor losses due to copper foil roughness and treatment」,26ページ,Circuitree,can2005、)およびOgawaら(N.Ogawa,H.Onozeki,N.Moriike,T.Tanabe,T.Kumakura,「Profile−free foil for high−density packaging substrates and high−frequency applications」,457ページ,Proceedings of the 2005 Electronic Components and Technology Conference,IEEE)が詳細に記載するように、導体表面上の粗さは、高周波における導体ロスの実質的な上昇を生じ、粗い導体では、平滑な導体と比較して最高2倍の導体ロスを生じる。Ogawaはまた、正確な回路製造の限界、最も顕著には、導体粗さによって生じる微細線と空間の正確なエッチングの限界についても記載している。
【0050】
銅箔の粗さは一般に、接触形状測定法または光干渉法によって特徴付けられる。接触形状測定システムが長い間使用されてきたことから、ほとんどの箔メーカは接触形状測定器を用いて粗さを測定している。本明細書で引用したほとんどの値は、白色光干渉計の方法を用いたVeeco Instruments WYCO Optical Profilerで測定したものである。粗さはいくつかの違った目盛上に存在し、固定基準面からの距離が異なる多くの山・谷から構成されるために、表面粗さを数値的に特徴付ける方法には多くの異なる方法がある。頻繁に報告される2つの量は、RMS粗さ値:Rqと最高最低差粗さ:Rzであり、両方とも長さ寸法で報告される。
【0051】
回路産業用に製造されてきた従来のED銅箔は、WYCO Optical Profilerで測定すると、処理面のRz値は(Rq値が約1.2〜4μmであるのに対応して)7〜20μmである。接触形状測定器は、測定を行うにつれて針が銅処理を変形させるために値が低くなる傾向がある。圧延銅箔の処理面のRz値は、(Rq値が0.45〜0.9μmであるのに対応して)3.5〜5.5μmである。Oak−Mitsui社のMLS−TOC−500などの「裏面処理」ED箔も圧延箔と同等のRq価値を示し得る。現在のロープロファイルED箔のRz値は2〜3μmである。WYCO測定による圧延箔光沢面のRz値は約0.7μmであり、対応するRq値は約0.1μmである。
【0052】
最近になって、他の種類のロープロファイルED箔が市販されるようになってきた。この中にはOak Mitsui社製の、WYCOで測定したRq値が0.7μmのSQ−VLPや、同じRq値が0.47μmのMQ−VLPなどがある。
【0053】
回路産業用に特別処理された圧延箔およびED箔が多くのメーカから販売されている。例えば、ロープロファイル銅箔は、Oak Mitsui社から「TOC−500」、「TOC−500−MLS」および「TOC−500−LZ」の商標名で、日本電界株式会社から「USLP」の商標名で、また、古河電気工業株式会社から「F1WS」の商標名で販売されている。ハイプロファイル銅箔はCircuit Foil社から「TWS」の商標名で販売されている。
【0054】
好適な誘電体回路基板は、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(エーテルイミド)(PEI)、ポリブタジエン−ポリイソプレン共重合体類およびポリ(フェニレンエーテル)樹脂類などの熱硬化性樹脂をベースにしたものや、アリル化ポリ(フェニレンエーテル)樹脂類などをベースにしたもの、などを含む低極性、低誘電体率および低損失率樹脂を含む。これらの材料は低誘電率および低損失率を示しながら、銅剥離強度も低い。こうした材料の銅剥離強度は、本発明を利用することによって著しく改善され得る。さらに、回路基板上にハンダ付けされた部品の再加工すなわち除去と取り換えができるように、剥離強度が高温でも比較的高く維持されることも重要である。エポキシとポリ(フェニレンエーテル)、エポキシとポリ(エーテルイミド)、シアン酸エステルとポリ(フェニレンエーテル)および1,2−ポリブタジエンとポリエチレンなどの限定しない例などの、低極性樹脂と高極性樹脂との組み合わせも用いられる。ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびまたはブタジエン含有およびイソプレン含有共重合体類を含む組成物は特に有用である。
【0055】
特に好適な回路基板は、熱硬化性ポリブタジエンおよびまたはポリイソプレン樹脂を含む熱硬化性組成物である。本明細書で用いられるように、用語「熱硬化性ポリブタジエンおよびまたはポリイソプレン樹脂」には、ブタジエン、イソプレンあるいはこれらの混合物から誘導される単位を含むホモポリマー類および共重合体類が含まれる。他の共重合可能なモノマーから誘導される単位も樹脂中に、例えばグラフトの形態で存在し得る。典型的な共重合可能なモノマーには、これに限定されないが、ビニル芳香族モノマー類、例えば、スチレン、3−メチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン、p−メトキシスチレン、α−クロロスチレン、α−ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、tetra−クロロスチレンなどの、置換および未置換モノビニル芳香族モノマー類と、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエンなどの置換および未置換ジビニル芳香族モノマー類と、が含まれる。前述の共重合可能なモノマー類の少なくとも1つを含む組み合わせも用いられる。典型的な熱硬化性ポリブタジエンおよびまたはポリイソプレン樹脂類には、これに限定されないが、ブタジエンホモポリマー類、イソプレンホモポリマー類、ブタジエン−スチレンなどのブタジエン−ビニル芳香族共重合体類、イソプレン−スチレン共重合体類などのイソプレン−ビニル芳香族共重合体類などが含まれる。
【0056】
前記熱硬化性ポリブタジエンおよびまたはポリイソプレン樹脂類は改質されていてもよく、例えば、ヒドロキシル末端化、メタクリレート末端化およびカルボキシレート末端化され得る。エポキシ改質、マレイン酸無水物改質あるいはウレタン改質ブタジエンまたはイソプレン樹脂類などの反応終了後樹脂は使用され得る。例えばジニルベンゼン架橋ポリブタジエン−スチレンのように、例えばジビニルベンゼンなどのジビニル芳香族化合物などを用いて、該樹脂を架橋することもできる。好適な樹脂は、例えば日本曹達株式会社(東京、日本)やSartomer社(Exton,PA)などのメーカにより、広くは「ポリブタジエン類」として分類されている。樹脂の混合物も使用でき、例えば、ポリブタジエンホモポリマーとポリ(ブタジエン−イソプレン)共重合体の混合物も使用され得る。シンジオタクチックポリブタジエンを含む組み合わせも有用であり得る。
【0057】
前記熱硬化性ポリブタジエンおよびまたはポリイソプレン樹脂は、室温で液体または固体であり得る。好適な液体樹脂の数平均分子量は約5,000を超え得るが、一般的には約5,000未満(より好適には約1,000〜約3,000)である。少なくとも90質量%の1,2添加を有するポリブタジエンおよびまたはポリイソプレン樹脂類は、架橋に利用可能な多数の垂下ビニル基により硬化時に最大の架橋密度を呈することから、好適である。
【0058】
前記ポリブタジエンおよびまたはポリイソプレン樹脂の樹脂系における存在量は最高100質量%であり、具体的には全樹脂系に対して約60質量%であり、より具体的には約10〜約55質量%であり、さらにより具体的には約15〜約45質量%である。
【0059】
前記熱硬化性ポリブタジエンおよびまたはポリイソプレン樹脂と共硬化可能な他のポリマーを、特定の特性または加工改良のために添加することができる。例えば電気基板材料の絶縁耐力および機械的特性の経時安定性を向上するために、低分子量エチレンプロピレンエラストマを該樹脂に使用できる。本明細書に用いられているように、エチレンプロピレンエラストマは、主としてエチレンおよびプロピレンを含む共重合体、三元共重合体あるいは他のポリマーである。エチレンプロピレンエラストマ類はさらに、EPM共重合体類(すなわちエチレンとプロピレンモノマー類の共重合体)あるいはEPDM三元共重合体類(すなわちエチレン、プロピレンおよびジエンモノマー類の三元共重合体)として分類される。エチレンプロピレンジエン三元共重合体ゴム類は特に、容易に架橋する不飽和を遠ざけた主鎖を有する。該ジエンがジシクロペンタジエンである液体のエチレンプロピレンジエン三元共重合体ゴムは好適である。
【0060】
前記エチレンプロピレンゴム類の有用な分子量は、粘度平均分子量が10,000未満である。好適なエチレンプロピレンゴム類には、Uniroyal Chemical社(Middlebury, CT)からTrilene CP8の商標名で販売されている粘度平均分子量(MV)が約7,200のエチレンプロピレンゴムと、同社からTrilene65の商標名で販売されている、分子量が約7,000の液体エチレンプロピレンジシクロペンタジエン三元共重合体ゴムと、同社からTrilene67の商標名で販売されている、分子量が約7,500の液体エチレンプロピレンエチリデンノルボネン三元共重合体と、が含まれる。
【0061】
前記エチレンプロピレンゴムの存在量は好適には、基板材料の特性、特に絶縁耐力および機械的特性の経時安定性の維持に有効な量である。その量は通常、樹脂系の全質量に対して最高約20質量%であり、より具体的には約4〜約20質量%であり、さらに具体的には約6〜約12質量%である。
【0062】
別の種類の共硬化可能なポリマーは、不飽和ポリブタジエン含有またはポリイソプレン含有エラストマである。この成分は、例えば、スチレンまたはα−メチルスチレンなどのビニル芳香族化合物や、メチルメタクリレートまたはアクリロニトリルなどのアクリレートまたはメタクリレートなどの、エチレン性不飽和モノマーを有する主に1,3−添加ブタジエンまたはイソプレンのランダムまたはブロック共重合体であり得る。該エラストマは好適には、ポリブタジエンまたはポリイソプレンブロックを有する直鎖またはグラフトタイプブロック共重合体と、好適にはスチレンまたはα−メチルスチレンなどのモノビニル芳香族モノマーから誘導された熱可塑性ブロックと、を含む液体上の熱可塑性エラストマである。この種の好適なブロック共重合体類には、例えばDexco Polymers社(Houston,TX)からVector8508Mの商標名で販売されているものや、Enichem Elastomers America社(Houston,TX)からSol−T−6302の商標名で販売されているもの、およびFina Oil and Chemical社(Dallas,TX)からFinaprene401の商標名で販売されているスチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体類と、スチレン−ブタジエンジブロック共重合体類と、例えばShell Chemical社(Houston,TX)からKraton D1118の商標名で販売されているトリブロックおよびジブロック混合共重合体類と、が含まれる。Kraton D1118は、スチレンの含有量が30体積%の、ジブロック/トリブロック混合と、スチレンおよびブタジエンを含有する共重合体である。
【0063】
選択的に用いられる前記ポリブタジエンまたはポリイソプレン含有エラストマは、ポリブタジエンまたはポリイソプレンブロックが水素化されていることを除いて、上記のブロック共重合体と同様の第2のブロック共重合体をさらに含んでおり、これによって、ポリエチレンブロック(ポリブタジエンの場合)あるいはエチレン−プロピレン共重合体ブロック(ポリイソプレンの場合)を形成する。上記共重合体と共に用いると、より大きな靭性を有する材料が製造できる。この種の第2のブロック共重合体の典型的な例としては、スチレン−高1,2−ブタジエン−スチレンブロック共重合体とスチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレンブロック共重合体との混合物と考えられるKraton GX1855(Shell Chemical社から販売)がある。別の典型的なブロック共重合体は、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンのマレイン酸無水物改質ブロック共重合体であるKraton G(同じくShell Chemical社から販売)である。
【0064】
前記不飽和ポリブタジエンまたはポリイソプレン含有エラストマ成分の樹脂系中での存在量は、樹脂系の全質量に対して、約10〜約60質量%であり、より具体的には約20〜約50質量%、さらにより具体的には約25〜約40質量%である。
【0065】
特定の特性または加工改良のために添加できるさらに他の硬化可能なポリマーとしては、これに限定されないが、ポリエチレンまたはエチレン酸化物共重合体類などのエチレンホモポリマーまたは共重合体、天然ゴム、ポリジシクロペンタジエンなどのノルボルネンポリマー類、水素化スチレン−イソプレン−スチレン共重合体類およびブタジエン−アクリロニトリル共重合体類、不飽和ポリエステル類などが挙げられる。これらの共重合体類の濃度は通常、樹脂系の全質量の50体積%未満である。
【0066】
樹脂の架橋密度を上げるために、架橋剤を選択的に添加できる。架橋剤としては、限定なしに、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、多官能化アクリレートモノマー類(例えばArco Specialty Chemicals社から販売されているSartomer樹脂)およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。熱硬化性組成物中の架橋剤含有量は、該組成物の所望の難燃性、他の構成成分の量および最終製品に求められる他の特性に応じて、当業者によって容易に決定される。(海上)保険会社実験所可燃性試験であるUL−94では、HB、V−2、V−1およびV−0の4つの等級が設けられている。V−0が最も獲得の困難な等級であり、材料の5本の棒が液だれすることなく、平均消炎時間5秒以内で自己消火することが求められる。架橋剤の量はより特定的には、水酸化マグネシウムの含有量、熱硬化性組成物中の他の成分の量、および獲得する優れた難燃性に依存し、それらのすべてを以下に更に詳細に示す。架橋密度を増加させるために使用する場合、効果的な量は熱硬化性組成物の全質量に対して、約0.5質量%以上であり、具体的には約1質量%以上であり、より具体的には約5質量%以上である。効果的な量は、約10質量%未満、具体的には約10質量%、より具体的には約7質量%未満とすることができる。
【0067】
前記熱硬化性組成物には、選択的に微粒子フッ素ポリマーが含まれ得る。典型的な微粒子フッ素ポリマーには、回路部品組立体で使用される当分野で既知のものが含まれ、これに限定されないが、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素化ホモポリマー類と、例えば、テトラフロオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレンまたはパーフルオロオクチルビニルエーテルなどのパーフルオロアルキルビニルエーテル類とのフッ素化共重合体類、あるいはテトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体類などのフッ素化共重合体類と、が含まれる。フッ素化ポリマー類、共重合体および三元共重合体のブレンドも使用できる。フッ素ポリマー類は、通常粒径が約400〜約500μmであり、分散製造されたPTFEを凝固、乾燥させて作られた微粒子(または「凝固分散」)PTFEと、通常2つの異なる粒径範囲(標準製品用の粒径中央値である約30〜約40μmと、高かさ密度製品用の約400〜約500μm)を有する、懸濁重合で製造された粒状PTFEと、およびまたは粒状PTFE、FEPまたはPFAと、を含む微粒子形態、分散形態または粒径形態であり得る。該粒径フッ素ポリマー類を低温で粉砕して、粒径中央値を約100μm未満とすることができる。
【0068】
微粒子フッ素化ポリマーが存在する場合、熱硬化性組成物中のその含有量は、該組成物の所望の難燃性、他の成分の量および最終製品に求められる他の特性に応じて、当分野の当業者により容易に決定される。該フッ素化組成物の量はより特定的には、水酸化マグネシウムの含有量および熱硬化性組成物中の他の難燃剤の量に依存する。一般に、効果的な有効な量は、他の熱硬化性ポリマー成分100質量部当たり約1以上〜約90質量部(phr)であり、具体的には、熱可塑性樹脂組成物の全質量100質量部当たり、約5〜約75phrであり、より具体的には約10〜約50phrである。
【0069】
オレフィン反応部位を有するポリエンの硬化反応を促進するために、前記樹脂系に硬化剤を添加できる。具体的に有用な硬化剤は、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α−ジ−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などの有機過酸化物であり、これらのすべては市販されている。これらの過酸化物は単独でもあるいは組み合わせて用いてもよい。硬化剤の典型的な量は、前記樹脂組成物の全質量に対して約1.5〜約10質量%である。
【0070】
前記回路基板材料は選択的に微粒子充填材を含むことができる。好適な充填材の例としては、二酸化チタン(ルチルおよびアナターゼ)、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、溶融アモルファスシリカを含むシリカ(微粒子および中空球)、コランダム、珪灰石、アラミド繊維類(例えばKEVLAR)、ガラス繊維、BaTi20、ガラス球、石英、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化ベリリウム、アルミナ、マグネシア、雲母、タルク、ナノクレイ、アルミノケイ酸塩(天然および合成)および水酸化マグネシウムなどが挙げられる。充填材の組み合わせも用いられる。より具体的には、ルチル型二酸化チタンとアモルファスシリカが特に好適なものとして挙げられる。なぜなら、この2つの充填材はそれぞれ高い誘電体率と低い誘電体率とを有しており、組成物中でこの2つの量をそれぞれ調整することによって、最終硬化製品において低散逸率と共に広範囲の誘電率を実現できる。これらの充填材は単独でもあるいは組み合わせて用いてもよい。
【0071】
前記回路基板はさらに、板ガラスまたは密編みガラス繊維あるいは高温ポリエステル繊維(例えばEastman Kodak社のKODEL)を含む好適な繊維、特にガラス(E、SおよびDガラス)を熱安定的に織った織布を選択的に含むことができる。こうした熱安定性繊維強化材により、回路積層板硬化時の面内収縮調整手段が得られる。さらに、織布強化材の使用により、比較的高い機械的強度を有する回路基板が得られる。
【0072】
ガラス繊維織布の例を表1に示す。
【表1】

【0073】
電気回路材料用の基板として特定的な実用性を有する前記熱硬化性組成物はさらに、該組成物の全質量に対して、約50〜約80質量%の、イオン含有量が低い水酸化マグネシウムを含む。本発明者は、イオン含有量が低い水酸化マグネシウムを難燃剤として用いると、回路基板は、低誘電体損失と良好な熱安定性を維持しながら、ハロゲン化難燃剤特に臭素化難燃剤の存在なしに、UL−94等級が少なくともV−1という所望の難燃性等級を実現できることを見出した。
【0074】
例えばAlbemarle社からMAGNIFIN(登録商標)の商標名で販売されているものなどの、市販の水酸化マグネシウムの多くが本熱硬化性組成物に好適に使用できる。MAGNIFIN(登録商標)H5IVおよび同H10IVは製品資料によれば、イオン含有量が低い水酸化マグネシウムであり、アミノシランで処理(コーティング)されている。本明細書においてイオン含有量が低いとは、塩化物イオンなどのイオン性汚染物質を約1,000質量ppm未満、具体的には約500質量ppm未満含有するものとして定義される。さらに、典型的な実施形態では、該水酸化マグネシウムの全金属含有量は低い。本明細書において全金属含有量が低いとは、鉄、アルミニウム、クロム、マンガン、銅などの金属汚染物質が約500質量ppm未満、具体的には約400質量ppm未満、より具体的には約300質量ppm未満であるとして定義される。特定の実施形態では、酸化鉄の量は、約100ppm未満に、好適には約50ppm未満に制限される。他の好適な水酸化マグネシウムは、堺化学工業株式会社(日本)からMGZ−6Rの商標名で販売されているものや、J.M.Huber Engineering materials社からZEROGENとして、またDead Sea Bromine GroupからFR20として販売されている。
【0075】
また、前記水酸化マグネシウムの微粒子粒径は、基板材料の電気的特性および難燃特性に影響を与え得る。該水酸化マグネシウムの平均表面積(BET)は約2〜約12m/gであり、具体的には約5〜約10m/gであり、また、平均粒径は約0.1〜約2μmである。該水酸化マグネシウムは、全熱硬化性組成物の約50〜約80質量%(すなわち該樹脂系は下記のように、硬化剤、架橋剤および水酸化マグネシウムは含むが、いかなるガラス織布または充填材も含まない)を含む。
【0076】
ある選択的な実施形態では、前記水酸化マグネシウムをコーティングすなわち表面処理できる。コーティング水酸化マグネシウムの例としては、シランコーティング水酸化マグネシウム、シリカコーティング水酸化マグネシウム、アルミナコーティング水酸化マグネシウムおよびこれらの組み合わせなどが挙げられ、具体的にはシリカ−メチル水素ポリシロキサンコーティング水酸化マグネシウムが挙げられる。シリカ、アルミナおよびまたはシランコーティングの形成に使用できる表面処理剤としては、限定することなしに、Advanced Polymers社のAPS−219やDow Corning社のMH1107Fluidなどのメチル水素ポリシロキサンと、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤と、が含まれ得る。典型的なシリカコーティング水酸化マグネシウムは、堺化学工業株式会社(日本)からMGZ−6Rの商標名で販売されている、平均粒径が1.5〜2.5μm、表面積が約3〜約10m/gのシリカコーティング水酸化マグネシウムである。典型的なシランコーティング水酸化マグネシウムは、Kisuma Chemicals社(日本)からKisuma8SNの商標名で販売されている、粒径が約2.25μm、表面積が約3〜4m/gのシランコーティング水酸化マグネシウムである。水酸化マグネシウム粒子用の他の特徴的なコーティングとしては、脂肪酸、水酸化亜鉛、およびこれらとシランまたはシリカとの組み合わせなどがある。他のコーティング水酸化マグネシウムとしては、Kyowa Chemical社のKisuma5Nおよび5J、Knoshima Chemical社のMagseeds EP1−AおよびEN1およびTatebo Industries社のEcomag PZ−1EXおよびZ−10などが挙げられる。
【0077】
上記のように、水酸化マグネシウムの使用によって、ハロゲン化難燃剤を使用する必要性がなくなり得る。しかしながら、回路部品組立体用の十分な非可燃性を得るには、多量の水酸化マグネシウムを前記熱硬化性樹脂に添加しなければならず、回路の他の特性を低下させ得る結果をもたらす。極端には、水酸化マグネシウムの高含有量の結果、多孔性になり得る。このように水酸化マグネシウムを高含有量とすることで、電気特性に悪影響を及ぼす吸水率の上昇、細線の導電体パターン形成能を低下させる耐酸性の低下、および、出来た回路の電気特性や他の性能問題を生じ得る、溶剤と他の回路製造溶液の吸液性上昇、などの問題を生じ得る。
【0078】
ある選択的な実施形態では、前記回路部品組立体はさらに、1つまたは複数の他の添加剤を含むことができる。これらの他の添加剤によって、ハロゲンを使用せずに少なくともV−1のUL94等級を依然として実現しながら、水酸化マグネシウムの使用量を低減することができ、またある場合には、回路部品組立体中の添加剤全体の含有量を低減できる。重要なことは、使用量を低減した水酸化マグネシウムと他の添加剤との組み合わせによって、重要な回路材料の特性である吸水性、吸溶媒性、耐酸性および回路基板と導電性金属間の接着性などが著しく向上し得ることである。
【0079】
水酸化マグネシウムと共に使用する他の効果的な添加剤は、分子構造中に高割合の窒素を含有する化合物である。具体的には、他の効果的な添加剤は約20%を超える窒素を含有する化合物であり得る。水酸化マグネシウムと高窒素含有化合物は難燃性に関して相乗的に作用し、結果的に他の特性の予想外の向上をもたらす。違った添加剤の組み合わせにより、水酸化マグネシウム単独の場合より良好に分散し充填することもあり得る。
【0080】
こうした窒素含有化合物としては、制限することなく、トリアジン類、グアニジン類、シアヌレート類、イソシアヌレート類、ポリリン酸アンモニウム類、ホスファゼン、シラザンおよびそのポリマー、メラミン系樹脂類など、およびこれらの混合物が挙げられる。トリアジン類としては、メラミン、メラム、メレム、メロン、アンメリン、アンメリド、ウレイドメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどが挙げられる。トリアジン類にはさらに、これらの化合物とホウ酸、リン酸との塩および付加物が含まれ得る。リン酸メラミン、ピロリン酸メラミンおよびポリリン酸メラミンも含まれる。グアニジン化合物類には、グアニジン、アミノグアニジンなどと、ホウ酸、炭酸、リン酸、硝酸、硫酸などとの塩および付加物と、これらの混合物と、が含まれる。シアヌレートおよびイソシアヌレート化合物には、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレートおよびヒドロキシルエチルイソシアヌレートトリアクリレートなどの、トリアジン化合物とシアヌル酸およびイソシアヌル酸との塩および付加物が含まれる。前記窒素含有化合物は、その調製方法と同様、当分野では既知でありその多くが市販されている。
【0081】
上記の通り、高窒素含有化合物を添加して水酸化マグネシウムの一部を置き換えることによって、優れた特性が組み合わされた本開示のハロゲンフリー回路部品組立体がもたらされる。
【0082】
1つの顕著な向上は耐酸性である。この向上は酸質量損失で測定される。この向上の重要性は、無電解ニッケル金メッキ(ENIG)処理中の耐分解性を向上させたことである。別の領域における向上は、低溶剤吸収性および低孔隙率である。この向上はキシレン吸収で測定される。さらに他の向上は、基板の誘電体とロープロファイル銅箔導電層間の接合上昇である。
【0083】
前記選択的な窒素含有化合物は一般に、約15〜約65質量%の窒素を含む。これらの化合物は、好適には水酸化マグネシウムの質量に対して約4〜約25%の濃度で、水酸化マグネシウムと組み合わせて用いられる。濃度が約4%未満の場合には所望の難燃性の実現には効果がなく、約25%超の場合には多孔性が過剰になり散逸率も上昇する。
【0084】
ある選択的および典型的な実施形態では、前記回路部品組立体の熱硬化性樹脂組成物は、メラミンシアヌレートまたはポリリン酸メラミン窒素含有添加剤を含むことができる。典型的なメラミンシアヌレート化合物の窒素含有量は約40質量%以上であり、Ciba Specialty Chemicals社(Basel,Switzerland)からMC−15の商標名で販売されている。典型的なポリリン酸メラミン化合物の窒素含有量は約40質量%以上であり、同社からMelapur2000の商標名で販売されている。
【0085】
前記水酸化マグネシウム難燃剤と同様に、前記窒素化合物もシリカ、脂肪酸、シラン、シリカ−シラン、アルミナ、アルミナ−シリカ、アルミナ−シリカ−シランなどでコーティングできる。典型的なコーティングポリリン酸メラミンの窒素含有量は40質量%以上であり、Flame Chk社からBudit3141CAの商標名で販売されている。こうした典型的な窒素含有化合物を使用することによって、所望の難燃特性を維持しながら、前記熱硬化性組成物から約20〜約40質量%の水酸化マグネシウムを減らすことができる。
【0086】
前記熱硬化性組成物中に窒素含有化合物が存在する場合、その量は、該熱硬化性組成物の全質量に対して約4〜約20質量%とすることができる。該窒素含有化合物の典型的な質量%範囲は約5〜約15%であり、具体的には約6〜約12%である。
【0087】
ある実施形態では、前記組成物は水酸化マグネシウム難燃剤と前記窒素含有化合物を含む。この実施形態では、水酸化マグネシウム難燃剤と窒素含有化合物との質量比は約3:1〜約25:1であり、具体的には約4:1〜約15:1であり、より具体的には約5:1〜約10:1である。
【0088】
前記回路部品組立体の製造方法に移ると、前記接着剤組成物をコーティングとして(十分に低粘度である場合)あるいは溶解または懸濁させて、すなわち溶液の形態で導電層または誘電体基板層に直接塗布できる。溶液を用いる場合、塗布前に該接着剤組成物を好適な溶剤に溶解させる。該溶剤は、該接着剤組成物を溶解しコーティングの塗布と乾燥に好都合な蒸発速度を有するものが選択される。非限定の可能な溶剤としては、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、およびヘプタン、オクタン、ノナンなどの高級液体直鎖アルカン類、シクロヘキサン、イソホロン、および種々のテルペン系溶剤類などが挙げられる。好適な溶剤として具体的には、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびヘキサンが挙げられ、さらにより具体的にはキシレンとトルエンが挙げられる。該接着剤組成物の溶液中での濃度は重要ではなく、接着剤組成物の溶解度、塗布方法およびその他の要因に依存するであろう。一般に、該溶液は、該接着剤溶液の全質量に対して、1〜約50質量%の接着剤組成物を、より具体的には約5〜約20質量%の接着剤組成物を含む。
【0089】
前記接着剤または接着剤溶液を、例えば浸漬法や、スプレー法、洗浄法または他の好適なコーティング方法などの当分野で既知の方法を用いて、導電層または誘電体回路基板材料(例えばプリプレグまたはB−ステージ材)の表面に塗布できる。コーティング中または乾燥中に該接着剤溶液が相分離する場合は、溶液温度を上げることによって均一性を向上させられる。溶剤がある場合は、該接着剤溶液を周囲環境条件下あるいは強制換気または熱風で乾燥させて接着促進層を形成することができる。典型的には、該接着促進層を塗布してコーティング重量を約2g/m〜約15g/mに、具体的には約3g/m〜約8g/mにする。該乾燥プロセスでは、接着促進層を未硬化または部分硬化にでき、あるいは必要であれば、乾燥後に部分硬化または完全硬化することができる。
【0090】
前記接着剤コーティングを塗布後、コーティング導電層またはコーティング回路基板を保存または直接使用して回路積層板を形成できる。該積層板は当分野で既知の手段で形成できる。ある実施形態では、前記積層プロセスは、1層または複層のコーティングまたは未コーティンング基板を、1枚または2枚のコーティングまたは未コーティング導電層間に配置する(接着剤層が少なくとも1つの導電層および少なくとも1つの誘電体基板層間に配置されるとして)ステップを伴う。その後、積層された材料を積層・硬化前に保存するか、部分的に硬化後保存するか、あるいはスタック後に積層・硬化することができる。積層・硬化は、例えば真空プレスなどの一段階プロセスを用いて、あるいは多段プロセスを用いて行うことができる。ある典型的な多段プロセスでは、約150℃〜約200℃の温度で従来の過酸化物硬化ステップを行い、部分的に硬化したスタックを次に、高エネルギー電子線放射による硬化(E−ビーム硬化)または不活性雰囲気下での高温硬化ステップにかける。二段階硬化を用いることにより、生成する積層板に異常に高度の架橋密度を付与できる。第2の段階での使用温度は通常約250℃〜約300℃であり、あるいは該樹脂の分解温度以下である。この高温硬化はオーブン中で行えるが、プレス機内でも、すなわち最初の積層・硬化ステップの継続として行うこともできる。特定の積層温度と圧力は、特定の接着剤組成と基板組成物に依存するものであり、余分な実験を行うことなく当業者には容易に確認できるものである。
【0091】
種々の特定の実施形態に従って、図1は、導電層、例えば銅箔12上に配置された接着剤層14を含む典型的な回路材料10を示す。本明細書に用いられているように、「配置された」とは、導電層銅箔と接着剤間の少なくとも部分的な密接接触を指す。本明細書に記載された実施形態のすべてにおいて、種々の層が完全にまたは部分的に互いを被覆でき、追加の銅箔層、パターン化された回路層誘電体層も存在できることが理解される。接着剤層14は未硬化であっても部分的に硬化していてもよい。
【0092】
図2は、誘電体回路基板22上に配置された接着剤層24を含む典型的な回路材料20を示す。接着剤層24は未硬化であっても部分的に硬化していてもよく、基板22は未硬化であっても、部分的に硬化していてもあるいは完全硬化していてもよい。
【0093】
図3は、誘電体回路基板32と導電層36例えば銅箔間に配置された接着剤層34を含む典型的な回路積層板30を示す。接着剤層34は未硬化であっても部分的に硬化していてもよく、基板32は未硬化であっても、部分的に硬化していてもあるいは完全硬化していてもよい。
【0094】
図4は、第1の導電層44と誘電体回路基板45の第1の側との間に配置された第1の接着剤層42を含む典型的なダブルクラッド回路積層板40を示す。第2の接着剤層46は、第2の導電層48と回路基板45の第2の側との間に配置されている。前記第1および第2の接着剤層42および46は、同じかまたは異なるポリマー組成物を含むことができ、第1および第2の導電層44および48は、同じかまたは異なる種類の導電層、例えば銅箔を含むことができる。接着剤層42および46の内の1つだけを使用することも、あるいは接着剤層42および43の1つを、当分野で知られるように、ボンドプライで置き換えることも可能である。
【0095】
図5は、第1の導電層54と誘電体回路基板55の第1の側との間に配置された第1の接着剤層52を含む典型的なダブルクラッド回路40を示す。第2の接着剤層56は、パターン化された(例えばエッチングされた)回路層58と誘電体回路基板55の第2の側との間に配置されている。前記第1および第2の接着剤層52および56は、同じかまたは異なるポリマー組成物を含むことができる。接着剤層52および56内の1つだけを使用することも、あるいは接着剤層52および56の1つを、当分野で知られるように、ボンドプライ(図示せず)で置き換えることも可能である。
【0096】
図6は、図5で説明したような回路材料50を含む典型的な回路60を示す。ボンドプライ62は、接着剤層56と反対側のパターン化された回路58側に配置でき、ボンドプライ62上に配置された銅箔64を含む樹脂コート導電層は、パターン化回路と反対側上に配置される。図6に示されるように、第3の接着剤層66が、ボンドプライ62と銅箔64間に選択的に配置される。前記第1、第2および第3の接着剤層52,56および62は、同じかまたは異なるポリマー組成物を含むことができ、第1および第2の導電層54,64は、同じかまたは異なる種類の、例えば銅箔を含むことができる。
【0097】
ハロゲンフリーで接合向上性のコーティングを有する回路部品組立体を組み合わせると、多くの長所を有する回路材料が得られる。該部品組立品のUL94等級は、臭素化難燃剤を使用せずに少なくともV−1である。さらに、これらの部品組立品の吸水性は低く、一般的には約0.5%未満であり、具体的には約0.3%未満である。ロープロファイル銅箔のコーティング回路部品組立体への接合強度は、一般的には約5.0ポンド/リニアインチ(pli)より大きい。酸と回路製造に用いられる他の溶液への耐性は高い。さらに、電気的および熱的特性は、現代の電気的・電子的用途用の回路に所望される特性と整合しており、特に散逸率は約0.006未満である。
【0098】
以下の限定しない実施例で本発明をさらに説明する。
実施例
【0099】
以下の実施例では表2にリストアップした材料を用いた。
【表2】

【0100】
「金属製クラッド積層板の剥離強度」試験方法(IPC−TM−650 2.4.8)に準拠して、銅の剥離強度を測定した。
【0101】
前記積層板を温度288℃の溶融ハンダポット上に10秒間浮遊させて、ハンダフロート耐性を試験した。この方法を各サンプルにつき5回繰り返した。このハンダフロート試験における不合格品は、ブリスタまたは銅箔の積層板表面からの層間剥離が存在することを意味する。
実施例1〜4および比較実施例A〜D
【0102】
誘電体回路基板と銅箔間に配置した、表3に記載の接着剤組成物を用いて回路積層板を調製した。実施例1、1A〜4および比較実施例A〜Dの接着剤組成物は、100質量部のマレイン化ポリ(アリーレンエーテル)(98%トルエンと2%のキシレンの溶剤中の10質量%溶液)と、0.5質量部のVarox(過酸化物硬化開始)と、表示された量の官能化ポリブタジエンポリマーとエラストマブロック共重合体と、を含む。
【0103】
WYCO干渉計で測定して2μmより大きいRMS表面粗さを有する、1/2oz./ftのTWS銅箔上に前記接着剤をコーティングし乾燥させて、乾燥コーティングベース重量が5〜6g/mのコーティングを得た。345°F(174℃)まで急速に冷却してこの温度で15分間保持し、次に475°F(246℃)まで加熱してさらに1時間この温度で保持するプレスサイクルを用いて、2つの異なる誘電体基板のプリプレグシートを前記処理済みの銅箔に積層した。該サイクル中、圧力1000psi(70.3kg/cm)を維持した。
【0104】
前記サンプルをハンダフロート試験にかけ、合格したものを次に剥離強度試験にかけた。結果を表3に示す。
【表3】

【0105】
これらの実施例から、本発明に準じた接着剤は、比較的ハイプロファイルな箔を有する回路積層板の銅剥離強度を向上させることが実証されている。また、高周波積層板であるRO4350B以外の基板組成物に対する接着性の向上に、該コーティングが有効であることも実証されている。さらに、該接着剤コーティングの耐熱性向上に、マレイン化ポリブタジエンが重要であることも実証されている。
【0106】
比較実施例AおよびDは、ここで使用した接着剤組成物の3つの成分について、銅剥離強度を向上させ、同時に高温ハンダフロート試験に合格させるには3つの成分がすべて必要であることを示している。特に、エラストマブロック共重合体がない場合(比較実施例D)およびまたはカルボキシル化ポリブタジエンポリマーがない場合(比較実施例A〜D)は、ハンダフロート試験で不合格となる。ビニル末端化ブタジエンポリマーの置換(比較実施例B)あるいはウレタン官能化ブタジエンポリマーの置換(比較実施例C)も、ハンダフロート試験で不合格となる。
【0107】
実施例1〜4は、少量のカルボキシル化ブタジエンポリマー(実施例1)ではわずかなハンダ挙動しか示さないが、カルボキシル化ブタジエンポリマーの含有量が増えるに従って、満足なハンダ挙動と結合性の向上の両方が得られた(実施例2および4)ことを示す。さらに、カルボキシル化ブタジエンポリマーの上昇(実施例2の7.5部から実施例3の10.0部)によって、銅剥離強度がわずかに低下(実施例2の5.3pli対実施例3の4.0pli)した。これらの実施例から、RO4350B回路基板以外の材料に対するこのコーティングの有用性が実証されている。
【0108】
Sethumadhavanらの米国特許第7,022,404号に記載されているハロゲンフリー難燃剤Mg(OH)充填材料に、実施例2〜4を積層した。実施例2〜4から、RO4350B回路基板以外の材料に対する該コーティングの有用性が実証されている。比較として、いなかる接着剤もない場合、ハロゲンフリー系との接合強度はわずか1.9pliであり、RO4350B回路基板とのそれは約3.5pliである。
【0109】
2種類の比較的ロープロファイルの電着銅箔(Oak Mitsui社製SQ−VLPおよびTQ−VLP)上に、実施例2の接着剤組成物もコーティングし、上記のようにRO4350Bプリプレグに積層した。以下に示すように、2種類の箔の結合は該コーティングの使用によって実質的に上昇した。以下の通り、両方のサンプル共288℃ハンダフロート試験に合格した。
銅箔種 剥離強度(接着剤なし) 接着剤ありでの剥離強度
SQ−VLP 2.2pli 4.5pli
TQ−VLP 2.3pli 4.2pli
【0110】
この実施例から、該コーティングが広範な種類の銅箔に対する結合性の向上に有効であることが実証されている。
実施例5〜6および比較実施例E
【0111】
実施例5および6において、10質量部のマレイン化ポリ(アリーレンエーテル)溶液(98%トルエンと2%キシレンの溶液中の10質量%)と、マレイン化ポリブタジエン(7.5質量部)と、エラストマブロック共重合体(7.5質量部)と、を用いて接着剤溶液を製造した。該接着剤溶液を用いて、RO4350Bプリプレグ(6層)とロープロファイルの0.5oz銅箔(MLS TOC−500LZ)で調製した積層板を製造した。該銅箔の低亜鉛処理を有する側を前記接着剤層に接して配置した。
【0112】
345°F(174℃)まで急速に冷却してこの温度で15分間保持し、次に475°F(246℃)まで加熱してさらに1時間この温度で保持する真空プレスで、該材料をすべて積層した。このサイクル中、圧力1000psi(70.3kg/cm)を維持した。
【0113】
これらのサンプルを、結合強度、ハンダフロート、誘電率および散逸率測定試験にかけた。結果を表4に示す。
【表4】

【0114】
表4の結果から、亜鉛コーティングされたロープロファイル銅箔(実施例5および6)上の接着剤で実現された銅剥離強度は、該接着剤のないもの(比較実施例E)に比べて50%以上高かったことが示されている。さらに実施例5、6および比較実施例Eの結果から、接着剤コーティングを使用しても、積層板の高温ハンダ濡れ性、誘電率あるいは散逸率に悪影響を与えないことが示されている。
実施例8〜10および比較実施例G
【0115】
実施例8〜10において、10質量部のマレイン化ポリ(アリーレンエーテル)(98%トルエンと2%キシレンの溶液中の10質量%)と、7.5質量部のマレイン化ポリブタジエンと、7.5質量部のエラストマブロック共重合体と、を含む接着剤溶液を、RO4233プリプレグ(3層)とRMSが0.4μmのロープロファイル銅箔(MLS TOC−500LZ、0.5oz)とで調製した積層板の接着剤として用いた。該銅箔の亜鉛処理側を該接着剤層に接して配置した。実施例8〜10ではコーティング厚みを変えた(示されている量は乾燥重量ベースである)。比較実施例Gでは、接着剤処方は使用しなかった。
【0116】
該サンプルを上記のように積層した。試験結果を表5に示す。
【表5】

【0117】
実施例8〜10から、広範囲のコーティング重量(3.0gsm(実施例8)〜5.0gsm(実施例9)〜10.0gsm(実施例10))において銅剥離強度が向上していることがわかる。該コーティング重量範囲では高温ハンダ耐性に悪影響を及ぼさなかった。
【0118】
銅引張強度を測定することにより、実施例9および比較実施例Gの銅箔接着性についてさらに試験した。直径が0.090インチ(0.2286cm)のパッドに銅線をハンダ付けし、引張試験機で該線を該積層板の表面に垂直に引張ることにより、該パッド上の引張強度を測定した。引張強度は、記録された最大引張力を該パッドの面積で除して算出される。各材料について4回の引張の結果をpsi単位で表して表6に示す。
【表6】

【0119】
これらのデータから、本発明の接着剤を用いた積層板における引張強度は、接着剤のないものよりはるかに高いことが示されている。これらの結果から、接着剤コーティングは、コーティングされていない材料と比較してコーティングされたサンプルの引張強度を向上させることが示唆されている。
実施例11〜16および比較実施例H〜Q
【0120】
以下の実施例から、前記接着剤組成物は、ロープロファイル銅箔との銅剥離強度向上に有用であることが実証される。さらに、ポリブタジエンおよびまたはポリイソプレン誘電体基板への接着向上に、該コーティングが有効であることが実証される。
【0121】
従って、回路基板と銅箔間に配置された接着剤組成物を用いて回路積層板を調製した。該接着剤組成物は以下の表7に記載されている。実施例11〜15および比較実施例J〜Lの接着剤組成物は、100質量部のマレイン化ポリ(アリーレンエーテル)(98%トルエンと2%キシレンの溶液中の10質量%)と、0.5質量部のVarox(過酸化物硬化開始剤)と、表示された量の官能化ポリブタジエンポリマーとエラストマブロック共重合体と、を含んでいる。実施例16では、Chemtura社から販売されている未改質ポリ(アリーレンエーテル)であるBlendex HPP820を該マレイン化ポリ(アリーレンエーテル)に代用した。比較実施例Nでは、日本曹達株式会社から販売されているマレイン化ポリブタジエンであるBN1015をRICON184MA6に代用した。
【0122】
WYCO干渉計で測定して約0.4μmのRMS表面粗さの1/2−oz./ftMLS TOC−500−LZ銅箔上に、前記接着剤を#28マイヤーロッドを用いて、乾燥重量ベースで約5g/m(gsm)となるようにコーティングし、フード内で空気乾燥させた。比較実施例Qでは、銅箔のコーティングは行わなかった。
【0123】
RO4350回路基板の0.0033インチ(0.00838cm)厚みのプリプレグシート6枚を、表示された乾燥コーティング銅サンプルに上記の積層サイクルを用いて積層し、0.020インチ(0.0508cm)厚みの積層板を製造した。該積層板をハンダフロート試験にかけた。結果を表7に示す。
【0124】
実施例11−16から、ポリ(アリーレンエーテル)を含むすべての実施例の銅剥離強度は、比較実施例Qの未コーティング対照より少なくとも40%高いことが示されている。比較的平滑な銅だけの接着におけるこの向上は、これらの回路基板の実用において著しい向上である。比較実施例H、I、MおよびNから、マレイン化ポリ(アリーレンエーテル)の存在により、剥離強度もまた向上することが実証されている。コーティング処方に他の成分を含むが、マレイン化ポリ(アリーレンエーテル)ポリマーを含まないこれらの4つのケースの銅剥離強度はいずれも3.5pliを超えない。
【0125】
比較実施例JおよびKから、これらの最終積層板の高温ハンダ耐性を向上させることにより、マレイン化ポリブタジエンの存在により該コーティングの実用性がさらに向上することが実証されている。マレイン化または非マレイン化ポリ(アリーレンエーテル)を含有し、さらにマレイン化ポリブタジエンを含むすべての実施例は、銅剥離強度が増加し288℃ハンダフロート試験に合格することが表7からわかる。理論に拘束されることなしに、マレイン化ポリブタジエンポリマーの極性上昇により銅箔の極性表面とより強固に作用しあうことで、銅箔の積層板への高温接着性の向上が促進されたものと考えられる。
【0126】
比較実施例Lから、ポリ(アリーレンエーテル)とマレイン化ポリブタジエンが存在する場合、平滑で均一なコーティングの提供にスチレン−ブタジエンブロック共重合体が有用であることが実証されている。Kraton1118を含まない比較実施例Lでは、コーティングが「粒状」、すなわち巨視的な粒径スケールで不均一であると認められた。該スチレン−ブタジエン共重合体は、少なくとも巨視的なスケールで、ポリ(アリーレンエーテル)ポリマーとマレイン化ポリブタジエンポリマー類を相溶化するように作用するものと仮定される。
【表7】

実施例17−23
【0127】
これらの実施例から、標準製造設備上での効果的、経済的なコーティングに対するこれらの接着剤処方の適切性、および銅剥離強度と耐熱性が向上する広範囲の処方の適切性が実証されている。
【0128】
ロール幅が25インチ(63.5cm)の銅箔を用いた商業規模のコーティング試作を、表8に示した処方(表示された量はg単位)を用いてスロットダイコータ上で行った。該6つの処方を用いて、Gould TWSハイプロファイル銅箔およびOak Mitsui MLS−TOC−500−LZ裏面処理(ロープロファイル)銅箔の両方をライン速度30feet/min(fpm)(9.14m/min)でコーティングした(実施例17〜実施例22)。より高速でのコーティングが可能であることを単に実証するために、処方20は60fpmでもコーティングした(実施例23)。コーティングベース重量は6〜8gsmであった。乾燥温度が100℃、125℃および150℃の3ゾーンインラインオーブン内で該サンプルを乾燥させた。各処方および銅箔種類に対して、使用可能な材料を約250直線feet(76.2直線m)に亘ってコーティングした。
【0129】
0.003インチ(0.0076cm)のRO4350Bプリプレグ6枚に、コーティングした銅箔の各サンプルを上記のプレスサイクルを用いて積層し、0.020インチ(0.0508cm)厚みの積層板を製造して試験を行った。
【0130】
室温剥離強度、熱油剥離強度およびハンダフロート試験のデータを表8に示す。
【表8】

【0131】
未コーティングTWS銅に対する剥離強度値は約3.5pli、未コーティングMLS−TOC−500銅に対するそれは2pli未満である(データは未表示)。上記の熱油剥離強度データは高温での十分な結合性を実証しており、強固な「再加工性」を可能にしている。CTE、誘電率および損失正接データから、該接着剤コーティングがこれらの特性に悪影響を与えないことが示されている。
【0132】
表9〜14の実施例から、水酸化マグネシウム含有組成物への窒素含有化合物の添加の有用性が実証されている。実施例24〜51に対して、これらの組成物は一般に以下のように加工した。最初に、樹脂、水酸化マグネシウムおよび他のすべての成分を従来の混合装置内で完全混合してスラリーを形成した。硬化剤(およびこうした早期硬化)の実質的分解が起こらないように混合温度を調整した。次に、従来のプリプレグ製造方法を用いた。織布を使用する場合、典型的には前記スラリーで含浸させて正確な厚みを測定した後、溶剤を除去した(蒸発させてプリプレグを形成した)。該積層プロセスでは、未コーティングまたは前記接着剤層で既にコーティング済みの2枚の銅箔(Oak Mitsui TOC500LZまたはCircuit Foil TWS)間に、6枚のプリプレグ層を積み重ねた。次に、この積み重ねを圧縮し、フラットベッド積層で硬化させた。典型的な硬化温度範囲は約325°F(163℃)〜約475°F(246℃)とし、圧力範囲は300〜1200psiとした。
【0133】
実施例24−51において、UL−94に準拠して難燃性を測定した。「不合格」の表示は、サンプルがV−1を達成しなかったことを示す。誘電率(DK)および散逸率(DF)は、1〜10Ghz周波数掃引で測定された誘電率および散逸率の平均である。前述のように、「金属製クラッド積層板の剥離強度」試験方法(IPC−TM−650 2.4.8)に準拠して、銅の剥離強度を測定した。IPC−TM−650 2.6.2.1(相対湿度50%、温度22℃に維持された環境中で1時間(水に浸漬前)調整)の試験方法に準拠して吸水率を測定した。
【0134】
キシレン吸収試験では、2インチ四方の積層板サンプル(2枚)を105℃×1時間乾燥させて、相対湿度50%、温度22℃に維持された環境中で1時間調整した。調整した各サンプルの重量を0.1mg単位まで測定した。次に、調整したサンプルを22℃のキシレンに24時間浸漬した。24時間終了時に、積層板サンプルを1度に1枚キシレンから取り出し、表面のキシレンを乾燥布で取り除き、その後直ちに重量を測定した。キシレン吸収率を以下により算出した。
【数1】

【0135】
酸重量損失試験では、2インチ四方の積層板サンプル(2枚)を105℃×1時間乾燥させて、相対湿度50%、温度72°Fに維持された環境中で1時間調整した。調整した各サンプルの重量を0.1mg単位まで測定した。次に、調整したサンプルを70℃の10質量%硫酸中に20分間浸漬した。20分終了時に、積層板サンプルを酸から取り出し、水で完全に洗浄し、乾燥させて調整した。調整した各サンプルの重量を0.1mg単位まで測定した。酸重量損失率を以下により算出した。
【数2】

各調製サンプルの組成と試験結果を表9〜14に示す。
【表9】

【0136】
表9の実施例24〜27から、回路材料の可燃性と電気特性に対する水酸化マグネシウム難燃剤の硬化が実証されている。実施例26および27から、同じ回路部品組立体の可燃性と電気特性に対する、異なる窒素化合物添加と水酸化マグネシウム難燃剤の量低減の効果が実証されている。表9の実施例24および25では、水酸化マグネシウムにより、UL−94等級がV0のハロゲンフリーのRO4350B熱硬化性基板組成物が製造できた。実施例26および27から、窒素含有化合物の添加により、ハロゲンフリーのRO4350B組成物の電気特性あるいは可燃性等級の何れも犠牲にすることなく、水酸化マグネシウム含有量を低減できることが実証されている。
【0137】
表10および11の実施例28〜37においてさらに、水酸化マグネシウム難燃剤含有回路部品組立体組成物の特性に対する異なる窒素化合物の効果を検討する。特に、該実施例における一部の窒素含有化合物によって、難燃特性を維持しながら、組成物に必要な水酸化マグネシウムの濃度を低減できる。
【0138】
窒素含有化合物のない実施例24の処方の、RO4350B樹脂(Kraton、TrileneおよびB3000)と水酸化マグネシウム(MGZ−6R)の重量比は1:3.57である。このオリジナルな処方の20mm積層板の比重は1.67であり、キシレン吸収率は7.0%以上であった。水酸化マグネシウムのない標準のRO4350B樹脂の算出比重およびキシレン吸収率は、それぞれ1.84および約1.5%である。試験では、水酸化マグネシウムを用いた該オリジナルな処方では、積層板の孔隙により、恐らくは高濃度のMGZ−6Rのために、無電解ニッケル金メッキ(ENIG)処理で約70%の結合損失が発生した。
【0139】
表10は、部品組立品中の水酸化マグネシウム含有量の低減の際に、2種類の窒素含有化合物(メラミンシアヌレートMC−15およびポリリン酸メラミンMelapur200)を用いたことを示す。各実施例で用いた処方では、MGZ−6Rの含有量は前記オリジナルな処方より25〜30質量%少なかった。
【表10】

【0140】
樹脂組成物へのメラミンシアヌレート(MC−15)またはポリリン酸メラミン(Melapur200)の添加によって、表10および11のすべての実施例での比重は1.77〜1.81に上昇した。可燃性レベルを維持するための窒素含有化合物の添加によって、水酸化マグネシウム量を25〜30%低減させることが可能となり、樹脂組成物の比重を、難燃剤のない樹脂組成物に望ましい比重レベルに近いものに戻すことができた。同じ効果がキシレン吸収率でも見られ、窒素含有化合物の添加と水酸化マグネシウムの低減によって、すべてのサンプルでの吸収率が減少した(1.00〜1.67%)。再度キシレン吸収に戻るが、この値は、ハロゲンフリーの難燃剤のない樹脂組成物に見られるキシレン吸収率をより密接に反映している。従って、窒素含有化合物を添加することによって、樹脂組成物中の水酸化マグネシウム濃度を有利に低減できる。その結果として、窒素含有化合物の添加によって、水酸化マグネシウム難燃剤含有量が高いことに関連して出現する孔隙や他の結合問題の解消を促進できる。
【表11】

【0141】
表11の実施例34〜37では、かさ密度がより高い(0.60g/cm)ハイグレード水酸化マグネシウム(MGZ−6R−2)が含まれている。このグレードを用いた実施例では散逸率が高くなるが、低かさ密度グレードの水酸化マグネシウム(MGZ−6R)に対して、比重またはキシレン吸収の顕著な向上は見られなかった。しかしながら、前記2つの異なる窒素含有添加剤によって、中間の可燃性等級(すなわちV1)を有する積層板の可能性が創出されることが示唆されているように思われる。それぞれ25gのMC−15を含有する実施例33および36のUL−94等級はV1であった。
【0142】
繰り返しになるが、実施例28〜37において、水酸化マグネシウム難燃剤含有回路部品組立体組成物の特性に対する、異なる窒素化合物の影響を検討する。特に、該実施例における一部の窒素含有化合物によって、難燃特性を維持し積層板に対する孔隙と結合損失の問題を防ぎながら、該組成物に必要な水酸化マグネシウムの濃度を低減できる。
【0143】
表12〜14の実施例から、新規の水酸化マグネシウム/窒素含有化合物混合と組み合わせて使用された時の、誘電体と銅箔間の特定の接着剤層の利点が実証されている。
【0144】
具体的には、表12の実施例38〜41から、可燃性、酸重量損失および結合に対する、水酸化マグネシウム、窒素含有化合物の組み合わせおよび接着材層の効果が実証されている。特に、実施例38、39および41から、接着剤層によって酸重量損失が低減されることが実証されている。また、実施例39および40と比較して実施例41は、該接着剤層と組み合わせた水酸化マグネシウム/窒素含有化合物混合物によって、良好な電気特性および低吸水率とキシレン吸収を維持しながら、低減された水酸化マグネシウム量で高い難燃性を実現できることが示している。
【表12】

【0145】
表13の実施例42〜45において、水酸化マグネシウム含有回路部品組立体組成物の特性に対する異なる窒素化合物の影響を検討する。その結果から、異なる窒素含有化合物のすべては、積層板が特定の接着剤層を備えていれば、難燃性以外について所望の性能特性を維持しながら所望のV−0難燃性が得られることが示されている。実施例38および39と比較すると、実施例42〜45は、3つの異なる窒素化合物を用いると、誘電体中の水酸化マグネシウム含有量を低減できることを明白に示している。具体的には、実施例42〜45の処方では、実施例38および39の処方より水酸化マグネシウムの量が約25%少なかった。
【表13】

【0146】
表14の実施例47〜51において、その製造時に用いられたコーティング技術において前述の実施例のMGZ−6Rとは異なると考えられる、2つの他の水酸化マグネシウムの効果について検討する。出来た積層板の特性に幾分軽微な差異があるものの、これらの異なる水酸化マグネシウムは、良好な接着接合強度と低酸重量損失を有するV−1以上の難燃性の実現において、水酸化マグネシウムと窒素含有化合物および特定の接着剤層の組み合わせの効果を示し続けている。
【表14】

【0147】
表15の実施例から、前記エラストマブロック共重合:Kraton1118の置き換えとして、代替の接着剤組成物、特に、シンジオタクチックポリブタジエンホモポリマー:JSR810である第2のポリブタジエンを使用したときの一定の利点が実証されている。同表で、実施例52A、52Bおよび52Cはその基板組成物中が実施例53A、53Bおよび53Cとは異なる。主な違いは充填材の種類と含有量にあり、53組成物は充填材含有量が著しく低い。
【0148】
さらに、表15では、「B」実施例は、該接着剤のエラストマブロック共重合体であるKraton1118Kの代わりに、シンジオタクチックポリブタジエンであるJSR810を使用している点において「A」実施例とは異なる。「C」実施例は、該接着剤に溶融シリカ充填材を使用している点において「B」実施例とは異なる。
【0149】
同じ基板組成物を有する実施例52Cと52Bを52Aと比較すると、接着剤組成物の変化は、出来あがった積層板の耐ハンダ性と銅接合には重要な影響は与えないが、実施例53の代替基板組成物では、接着剤組成物の変化によって、耐ハンダ性が著しく向上し銅接合が上昇している(53Bおよび53Cと53Aとの比較)。また、積層板の結果から、接着剤への充填材の添加によってZ軸CTE(熱膨張率)が著しく低下することが示されている。
【0150】
前記接着剤の改質として、53基板組成物をJSR810と組み合わせる別の利点は、53BのDK結果と52Aを比較すると分かるように、出来あがった積層板の誘電率が低減することである。最後に、表15の実施例はすべてUL94可燃性等級がV0であることは注目されるべきである。
【表15】

【0151】
文脈上別途明示がある場合を除き、単数表現は複数対象を含む。同じ特性または成分に関するすべての範囲の終点は、独立に組み合わせ可能であり、また引用された終点を含む。すべての引例は参照により本明細書に援用される。本明細書に用いられているように、「配置された」、「接触した」およびこれらの変形は、それぞれの材料、基板、層および膜などの間で完全にまたは部分的に、物理的に接触していることを指す。さらに、本明細書で用いられる「第1の」「第2の」などの用語は、いかなる順序や量あるいは重要度を表すものではなく、ある成分と他の成分とを区別するために用いるものである。
【0152】
特定の実施形態を示して説明したが、本発明の主旨と範囲を逸脱することなく、種々の修正および置換が可能である。従って、例証としてまた限定されないものとして本発明が記載されていることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層と、
熱硬化性組成物から形成される誘電体層であって、前記熱硬化性組成物は、その全質量に対して、ポリブタジエンまたはポリイソプレン樹脂と、約1000ppm未満のイオン性汚染物質を有する約30〜約70質量%の水酸化マグネシウムと、少なくとも約15質量%の窒素を含む約5〜約15質量%の窒素含有化合物と、を含む誘電体層と、
前記導電層と前記誘電体層間に配置されてそれらに密接に接触する接着剤層と、
を備え、前記接着剤はポリ(アリーレンエーテル)を含んでおり、前記回路部品組立体のUL−94等級は少なくともV−1であることを特徴とする回路部品組立体。
【請求項2】
前記窒素含有化合物は、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレートまたはこれらの化合物の少なくとも1つを含む組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の回路部品組立体。
【請求項3】
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、カルボキシ官能化されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回路部品組立体。
【請求項4】
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、ポリ(アリーレンエーテル)とマレイン酸無水物の反応生成物であることを特徴とする請求項3に記載の回路部品組立体。
【請求項5】
前記接着剤層はさらに、ポリブタジエンポリマー、ポリイソプレンポリマーまたはこれらのポリマー類の少なくとも1つを含む組み合わせであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の回路部品組立体。
【請求項6】
前記接着剤層中の前記ポリブタジエンポリマーまたはポリイソプレンポリマーは、カルボキシ官能化されていることを特徴とする請求項5に記載の回路部品組立体。
【請求項7】
前記接着剤層中の前記ポリブタジエンポリマーまたはポリイソプレンポリマーは、マレイン化ポリブタジエン−スチレン共重合体またはマレイン化ポリイソプレン−スチレン共重合体であることを特徴とする請求項6に記載の回路部品組立体。
【請求項8】
前記接着剤層は、シンジオタクチックポリブタジエンポリマー(選択的に、異なるポリブタジエンポリマーとともに)、ポリイソプレンポリマーまたはこれらのポリマー類の少なくとも1つを含む組み合わせを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の回路部品組立体。
【請求項9】
前記接着剤層はさらに、エラストマポリマーを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の回路部品組立体。
【請求項10】
前記エラストマポリマーは、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンから誘導される単位を含むブロック共重合体であることを特徴とする請求項9に記載の回路部品組立体。
【請求項11】
前記接着剤層はさらに、充填材を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の回路部品組立体。
【請求項12】
臭素と塩素の組み合わせ含有量が約900ppm未満であること、23℃の水に24時間浸漬後の吸水率が0.5%未満であること、大きさが2インチ×2インチ×20mmのサンプルを23℃のキシレンに24時間浸漬後のキシレン吸液率が2質量%未満であること、70℃の10質量%硫酸中に20分間浸漬後の酸重量損失が1.0%未満であること、の内の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の回路部品組立体。
前記導電層はパターン化されて回路を形成することを特徴とする請求項1に記載の回路部品組立体。
【請求項13】
導電層と、
熱硬化性組成物から形成される誘電体層であって、前記熱硬化性組成物は、その全質量に対して、ポリブタジエンまたはポリイソプレン樹脂と、約1000ppm未満のイオン性汚染物質を有する約30〜約70質量%の水酸化マグネシウムと、少なくとも約15質量%の窒素を含む約5〜約15質量%の窒素含有化合物と、を含む誘電体層と、
を備え、前記回路部品組立体のUL−94等級は少なくともV−1であることを特徴とする回路部品組立体。
【請求項14】
前記窒素含有化合物は、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレートまたはこれらの化合物の少なくとも1つを含む組み合わせであることを特徴とする請求項13に記載の回路部品組立体。
【請求項15】
臭素と塩素の組み合わせ含有量が約900ppm未満であること、23℃の水に24時間浸漬後の吸水率が0.5%未満であること、大きさが2インチ×2インチ×20mmのサンプルを23℃のキシレンに24時間浸漬後のキシレン吸液率が2質量%未満であること、70℃の10質量%硫酸中に20分間浸漬後の酸重量損失が1.0%未満であること、の内の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項13または請求項14に記載の回路部品組立体。
【請求項16】
前記導電層はパターン化されて回路を形成することを特徴とする請求項13乃至請求項15のいずれかに記載の回路部品組立体。
【請求項17】
導電層と、
熱硬化性組成物から形成される誘電体層であって、前記熱硬化性組成物は、その全質量に対して、ポリブタジエンまたはポリイソプレン樹脂と、約1000ppm未満のイオン性汚染物質を有する約50〜約80質量%の水酸化マグネシウムと、を含む誘電体層と、
前記導電層と前記誘電体層間に配置されてそれらに密接に接触する接着剤層と、
を備え、前記接着剤層はポリ(アリーレンエーテル)を含んでおり、前記回路材料のUL−94等級は少なくともV−1であることを特徴とする回路部品組立体。
【請求項18】
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、カルボキシ官能化されていることを特徴とする請求項17に記載の回路部品組立体。
【請求項19】
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、ポリ(アリーレンエーテル)とマレイン酸無水物の反応生成物であることを特徴とする請求項18に記載の回路部品組立体。
【請求項20】
前記接着剤層はさらに、ポリブタジエンポリマー、ポリイソプレンポリマーまたはこれらのポリマー類の少なくとも1つを含む組み合わせであることを特徴とする請求項17乃至請求項19のいずれかに記載の回路部品組立体。
【請求項21】
前記接着剤層中の前記ポリブタジエンポリマーまたはポリイソプレンポリマーは、カルボキシ官能化されていることを特徴とする請求項20に記載の回路部品組立体。
【請求項22】
前記接着剤層は、シンジオタクチックポリブタジエンポリマー(選択的に、異なるポリブタジエンポリマーとともに)、ポリイソプレンポリマーまたはこれらのポリマー類の少なくとも1つを含む組み合わせを含むことを特徴とする請求項17乃至請求項21のいずれかに記載の回路部品組立体。
【請求項23】
前記接着剤層はさらに、エラストマポリマーを含むことを特徴とする請求項20乃至請求項22いずれかに記載の回路部品組立体。
【請求項24】
前記エラストマポリマーは、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンから誘導される単位を含むブロック共重合体であることを特徴とする請求項23に記載の回路部品組立体。
【請求項25】
前記接着剤層はさらに、充填材を含むことを特徴とする請求項17乃至請求項24のいずれかに記載の回路部品組立体。
【請求項26】
臭素と塩素の組み合わせ含有量が約900ppm未満であること、23℃の水に24時間浸漬後の吸水率が0.5%未満であること、大きさが2インチ×2インチ×20mmのサンプルを23℃のキシレンに24時間浸漬後のキシレン吸液率が2質量%未満であること、70℃の10質量%硫酸中に20分間浸漬後の酸重量損失が1.0%未満であること、の内の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項17乃至請求項26のいずれかに記載の回路部品組立体。
【請求項27】
前記導電層はパターン化されて回路を形成することを特徴とする請求項17乃至請求項27のいずれかに記載の回路部品組立体。
【請求項28】
導電層と、
熱硬化性組成物から形成される誘電体層であって、前記熱硬化性組成物は、その全質量に対して、ポリブタジエンまたはポリイソプレン樹脂と、約1000ppm未満のイオン性汚染物質を有する約50〜約80質量%の水酸化マグネシウムと、を含む誘電体層と、
を備え、前記回路材料のUL−94等級は少なくともV−1であることを特徴とする回路部品組立体。
【請求項29】
臭素と塩素の組み合わせ含有量が約900ppm未満であること、23℃の水に24時間浸漬後の吸水率が0.5%未満であること、大きさが2インチ×2インチ×20mmのサンプルを23℃のキシレンに24時間浸漬後のキシレン吸液率が2質量%未満であること、70℃の10質量%硫酸中に20分間浸漬後の酸重量損失が1.0%未満であること、の内の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項28に記載の回路部品組立体。
【請求項30】
前記導電層はパターン化されて回路を形成することを特徴とする請求項28に記載の回路部品組立体。
【請求項31】
熱硬化性組成物から形成される誘電体層であって、前記熱硬化性組成物は、その全質量に対して、ポリブタジエンまたはポリイソプレン樹脂と、約1000ppm未満のイオン性汚染物質を有する約30〜約70質量%の水酸化マグネシウムと、少なくとも約15質量%の窒素を含む約5〜約15質量%の窒素含有化合物と、を含む誘電体層を備え、前記回路部品組立体のUL−94等級は少なくともV−1であることを特徴とする回路部品組立体。
【請求項32】
前記窒素含有化合物は、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレートまたはこれらの化合物の少なくとも1つを含む組み合わせであることを特徴とする請求項31に記載の回路部品組立体。
【請求項33】
臭素と塩素の組み合わせ含有量が約900ppm未満であること、23℃の水に24時間浸漬後の吸水率が0.5%未満であること、大きさが2インチ×2インチ×20mmのサンプルを23℃のキシレンに24時間浸漬後のキシレン吸液率が2質量%未満であること、70℃の10質量%硫酸中に20分間浸漬後の酸重量損失が1.0%未満であること、の内の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項31または請求項32に記載の回路部品組立体。
【請求項34】
熱硬化性組成物から形成される誘電体層であって、前記熱硬化性組成物は、その全質量に対して、ポリブタジエンまたはポリイソプレン樹脂と、約1000ppm未満のイオン性汚染物質を有する約50〜約80質量%の水酸化マグネシウムと、を含む誘電体層を備え、前記回路部品組立体のUL−94等級は少なくともV−1であることを特徴とする回路部品組立体。
【請求項35】
臭素と塩素の組み合わせ含有量が約900ppm未満であること、23℃の水に24時間浸漬後の吸水率が0.5%未満であること、大きさが2インチ×2インチ×20mmのサンプルを23℃のキシレンに24時間浸漬後のキシレン吸液率が2質量%未満であること、70℃の10質量%硫酸中に20分間浸漬後の酸重量損失が1.0%未満であること、の内の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項34に記載の回路部品組立体。
【請求項36】
請求項1乃至請求項35のいずれかに記載の成分を含む層を積層して回路組立品を提供するステップを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項35のいずれかに記載の回路部品組立体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−517112(P2011−517112A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504021(P2011−504021)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/034058
【国際公開番号】WO2009/126366
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(500105311)ワールド・プロパティーズ・インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】