説明

結合組織由来ポリペプチド

【課題】本発明は、軟骨の抗原性成分に対して個体を寛容化させることができ、且つ関節炎の症状の出現を防止する、30,000Da未満の分子量を有する1以上の結合組織由来ポリペプチドを含む組成物に関する。
【解決手段】本発明は、30,000Da未満の分子量を有し、且つ抗関節炎又は抗炎症性活性を有するポリペプチドを結合組織から回収するための方法を提供する。本発明はさらに、コラーゲンIX型アルファ(1)鎖NC4ドメイン又は抗関節炎若しくは抗炎症性活性及び30,000Da未満の分子量を有する生化学的活性断片を含むポリペプチドであって、軟骨の抗原性成分に対して個体を寛容化させることができ、且つ関節炎の症状の出現を防止するものを含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節炎及びその他の変性疾患を処置及び防止するための方法、並びに個体における軟骨の抗原性成分に対する寛容性を誘発することに関し、本発明はまた、結合組織由来ポリペプチドを調製及び回収するための新規方法、関節炎及びその他の変性疾患における結合組織の処置及び保護の方法におけるそれらの使用にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
1.一般的事項
本明細書及び請求項で使用される単数形「a」「an」及び「the」には、敢えてそうでないことを明言している場合を除き、複数の言及事項が含まれる。例えば、「a fungal pathogen(真菌性病原体)」の用語には、混合物も含めた、複数の「fungal pathogens(真菌性病原体)」が包含される。
【0003】
本明細書で使用される用語「derived from(に由来)」とは、特殊な供給源から特定の完全体が得られることを示すものとするが、必ずしもその供給源から直接得られなくてもよい。
【0004】
「composition(組成物)」とは、活性物質と、佐剤のような他の不活性(例えば、検出可能物質若しくはラベル)又は活性な別の化合物又は組成物との組み合わせを意味しようとするものである。
【0005】
文脈で他意が必要とされない限り、又は具体的に反対のことを述べていない限り、単数の完全体、工程、又は要素として本明細書で言及される本発明の完全体、工程、又は要素は、単数及び複数形の双方の完全体、工程、又は要素を明らかに包含する。
【0006】
単一の実施形態について本明細書に記載された本発明の実施形態には、本明細書に記載された本発明の他の実施形態のいずれをも準用するように措置が講じられるべきである。
【0007】
本明細書全体を通じ、文脈で他意が必要とされない限り、「comprise(含む)」の用語、又は「comprises」若しくは「comprising」などといったその変化形は、言及した工程若しくは要素若しくは完全体、又は工程若しくは要素若しくは完全体の群を含め、他の工程若しくは要素若しくは完全体又は要素若しくは完全体の群のいずれも排除しないことを含意することが理解されよう。
【0008】
当業者であれば、本明細書に記載された本発明は、具体的に記載されたもの以外の改変及び修飾を受けられることを認めるであろう。本発明には、かかる改変及び修飾のすべてが含まれることは理解されるべきである。本発明はまた、本明細書にて言及又は示唆された工程、特徴、組成物及び化合物のすべてを個々に又は合わせて含み、また、前記工程又は特徴の2以上のあらゆる組み合わせをすべて含む。
【0009】
本発明は、本明細書に記載される特定の例によってその範囲が限定されるべきではない。機能的に等価な産物、組成物及び方法が、本明細書に記載される本発明の範囲に明らかに入るものである。
【0010】
本発明は、敢えて別途に示さない限り、分子生物学、微生物学、ウイルス学、組換えDNAテクノロジー、溶液中でのペプチド合成、固相ペプチド合成、及び免疫学の従来の技術を用い、過度の実験を行わなくても実施される。かかる手法は、例えば、以下のテキストに記載されており、これらは引用することにより本願明細書に援用する。
【0011】
1. Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, Second Edition (1989), whole of Vols I, II, and III;
2. DNA Cloning: A Practical Approach, Vols. I and II (D. N. Glover, ed., 1985), IRL Press, Oxford, whole of text;
3. Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach (M. J. Gait, ed., 1984)IRL Press, Oxford, whole of text, and particularly the papers therein by Gait, pp 1−22; Atkinson et al., pp35−81; Sproat et al., pp 83−115; and Wu et al., pp 135−151;
4. Nucleic Acid Hybridization: A Practical Approach (B. D. Hames & S. J. Higgins, eds., 1985)IRL Press, Oxford, whole of text;
5. Perbal, B., A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);
6. Wiinsch, E., ed. (1974)Synthese von Peptiden in Houben−Weyls Metoden der Organischen Chemie (Miiler, E., ed.), vol. 15, 4th edn., Parts 1 and 2, 30 Thieme, Stuttgart.
7. Handbook of Experimental Immunology, Vols. I−IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986, Blackwell Scientific Publications)
本明細書に引用される文献の書誌的詳細は、記載の末尾にまとめられている。
【0012】
リウマチ様関節炎(RA)、骨関節炎(OA)、椎間板変性(DD)、及び骨粗鬆症(OP)などの筋骨格系の疾患は、全世界に渡る罹患率の主原因である。これらの疾患は、健康及び生活の質にかなりの影響を有し、保険制度に膨大な費用を負わせる。
【0013】
OAの病因は、加齢、機構性、ホルモン性及び遺伝因子による多因子的なものであり、すべての因子が様々な程度で寄与していると考えられている。OAはこれらの病因の決定因子が関節組織の損傷を充分にもたらして滑膜炎症と疼痛及び機能の障害の症状の出現を引き起こすと、臨床症候として現れる。
【0014】
RAは、遺伝的に過敏な個体における自己免疫応答の外的及び/又は内的標的化の結果として起こると考えられる。RA患者の免疫系の賦活化によってその関節に発症する侵攻的な炎症は、前炎症性サイトカイン、プロテイナーゼ及びフリーラジカルの放出によって顕在化される。これらメディエータのすべてが、軟骨、骨及び他の関節内接合部組織の破壊を促進する能力を有しており、関節機能のさらなる障害と疾患の進行をもたらす。OA及びRAの双方は、軟骨破壊及び滑膜炎症という共通の病理学的特徴を示すが、これらの事象の起点及び時間的来歴は明確に異なっている。それでも、関節軟骨の破壊はOA及びRAの双方に共通であり、そして、軟骨からのマトリックス成分の崩壊及び放出が、これらの疾患の慢性化に重要な役割を果たすことについての強力な証拠がある。
【0015】
軟骨は基本的に、プロテオグリカン(PG)に富む水和した細胞外マトリックスに埋没したIX及びXI型コラーゲンと共重合したII型コラーゲン原線維の三次元線維ネットワークで構成される等方性の生体材料としてとらえうる。II型コラーゲンは、成人軟骨の総コラーゲンの90%以上を占めており、一方IX型の含有量はわずか1〜2%に過ぎない。
【0016】
IX型コラーゲンは、3つの遺伝的に異なるアルファ鎖、α1(IX)、α2(IX)及びα3(IX)からなるヘテロポリマーであり、その分子構造及びアミノ酸配列は報告されている(Pihlajamaa T, et al. Characterisation of recombinant human type IX collagen, association of α chains into homotrimeric and heterotrimeric molecules(組換えヒトIX型コラーゲンの特徴、ホモトリマー及びヘテロトリマー分子へのα鎖の会合). J Biol Chem, 274: 22464−22468, 1999)(米国特許第6,127,523号、2000年10月3日)。IX型α−鎖は、3つの三重らせんドメイン、COL1、COL2及びCOL3、並びに4つの非コラーゲン性ドメイン、NC1、NC2、NC3及びNC4を含む。NC1及びNC3領域は、α鎖同士の分子内ジスルフィド結合を形成することができるシステイン残基を含む。α1(IX)鎖のみがNC4ドメインを含み(図1参照)、ニワトリ胸骨からの配列は、243アミノ酸残基からなり、分子量の計算値は27,139Daで、全体として陽性電荷を有することが示されている(Vasios G, Nishimura I, Konomi H, van der Rest M, Cartilage Type IX collagen−proteoglycan contains a large amino−terminal globular domain encoded by multiple exons(軟骨IX型コラーゲン−プロテオグリカンは、複数のエキソンによってコードされる、大きなアミノ末端球形ドメインを含む) J Biol Chem 263: 2324−2329, 1988)。
【0017】
IX型コラーゲンヘテロポリマーは、NC3ドメインがα1鎖のNC4領域を他の鎖から突出させるヒンジ様に働くことを除いては直鎖状になっている。興味深いことには、単一のコンドロイチン硫酸鎖がNC3ドメインに付着している。
【0018】
軟骨の微量成分にすぎないが、IX型コラーゲンは、体重がかかるこの組織の至適な身体機能にとって必須であるII型コラーゲン線維ネットワークアセンブリを維持する上で重要な役割を担う。IX型コラーゲンは、特にII型原線維ネットワークが交差する部位で、少なくとも2つの三価ピリジノリン架橋を介してそれが共有結合するII型コラーゲン原線維の表面上に存在している。II型コラーゲン原線維の架橋によって、IX型コラーゲンは捕捉された負に帯電したプロテオグリカン(PG)凝集体(本明細書中、アグリカンと称する)によって組織内に引き寄せられた水分子の吸収によって引き起こされる膨張を制限するようである。加えて、球形のNC4ドメイン上の、正に帯電した中心もまた、ポリアニオン系アグリカンに対する潜在的結合部位を提供する。
【0019】
軟骨のアグリカンはPGサブユニットの巨大分子凝集体であり、ヒアルロン酸鎖の長手に沿って非共有的に付着している。各アグリカンは、20〜50のPGサブユニットを含みうるものであり、HA骨格とのそれらの相互作用は、リンク蛋白質との三成分相互作用によって安定化される。PGサブユニットは、100以下のGAG鎖が共有結合された蛋白質コアからなる。PGの主たるGAG置換基は、コンドロイチン硫酸(ChS)及びケラタン硫酸である。
【0020】
コラーゲン及びプロテオグリカンに加えて、軟骨は非コラーゲン性蛋白質も多数含んでおり、最も大量にあるのが軟骨オリゴマー蛋白質(COMP)、軟骨マトリックス蛋白質(CMP)、及びトロンボスポンジンである。COMPは、IX型コラーゲンと相互作用し、またII型コラーゲン原線維の発生と構築において役割を果たすため、軟骨マトリックスの重要な構造成分であると考えられる(Holden P, et al. Cartilage oligomericmatrix protein interacts with type IX collagen and disruptions to these interactions identify a pathogenic mechanism in a bone displasia familly(軟骨オリゴマーマトリックス蛋白質はIX型コラーゲンと相互作用し、これらの相互作用の破壊で、骨異形成ファミリーにおける病因機構が同定される) J Biol Chem, 276: 6046−6055, 2001)。軟骨崩壊が増大する関節炎の初期段階において、PG類、IX型コラーゲン及びCOMP断片は、内在性プロテイナーゼの作用により滑液中に放出される第一マトリックス成分の一部である。軟骨崩壊によるこれらの産物は、抗原性を有することが示されており、また関節炎の接合部内での炎症反応を誘発しうるため、それによって疾患の進行速度に寄与するのである。
【0021】
関節炎疾患において、軟骨及び骨の過度な崩壊と、自己抗原の放出によって起こされる炎症性反応との同時誘起が、それらの慢性化の原因である。しかしながら、これらのマトリックス分子が自己抗原として作用することにより関節の疾患の発症の原因ともなりうることを示唆する証拠が蓄積されている。実際、佐剤と共にしたII型コラーゲン又は他のマトリックス成分の実験動物への全身投与が、関節炎疾患の動物モデルを作るために使用されている(Creamer MA, Rosloniec EF, Kang AH. The cartilage collagens: a review of their structure, organization and role in the pathogenesis of experimental arthritis in animals and human rheumatic disease(軟骨コラーゲン:それらの構造、組織化、並びに動物及びヒトリウマチ性疾患における実験的関節炎の病因論における役割の総括) J Mol Med, 76: 275−288, 1998)。
【0022】
軟骨コラーゲンの場合、この知見から、経口免疫寛容の考え方を用いることによりリウマチ性疾患を処置する手段の開発が導かれている(Weiner, HL, Komagata Y. Oral tolerance and the treatment of Rheumatoid Arthritis(経口免疫寛容及びリウマチ様関節炎の処置) Seminars Immunopath, 20: 289−308, 1998)。このように、動物モデルにおけるII型コラーゲン誘発関節炎の抑制は、低用量のII型コラーゲンの経口投与によって成し遂げるのが可能であることが示されている。II型コラーゲンの投与による関節炎患者の経口免疫寛容は、臨床的に有効であることも示されており、一日投与量を少量(100mg未満)としたII型コラーゲン抗原の治療効果が報告されている。リウマチ様及び若年性リウマチ様関節炎患者を用いた研究により、経口一日投与量を低量としたニワトリ胸骨由来II型コラーゲンの有効性と安全性が確認されている(Trentham D, et al. Effects of oral administration of type II collagen on rheumatoid arthritis(リウマチ様関節炎へのII型コラーゲンの経口投与).Science, 261: 1727−1730, 1993)(Barnett et al, A pilot study of oral type II collagen in the treatment of juvenile rheumatoid arthritis(若年性リウマチ様関節炎の処置における経口II型コラーゲンの試験的研究). Arthritis. Rheum. 39:623−628, 1996)。他の研究で、ウシを供給源として得た軟骨コラーゲンはニワトリ軟骨から調製したものより有効性が低いことが示されている。
【0023】
残念ながら、既に示されているように、この軟骨由来抗原は関節炎促進物質(arthritogen)でもあるので、高用量のII型コラーゲンは実際に疾患を増悪させうることが見出されており、この抗原がどの程度の量で関節炎プロセスに対して有効であるか又は有害であるかを正確に判定するのは困難である。他の軟骨コラーゲンに関し、X、XI型は関節炎促進性(arthritogenic)であり、またIX型コラーゲンはいくつかの動物関節炎モデルにおいて、寛容性物質としてII型コラーゲンほど有効でないことが報告されている(Lu S et al, Different therapeutic and bystander effects by intranasal administration of homologous type II and type IX collagens on the collagen−induced arthritis and Pristane−induced arthritis in rats(ラットにおけるコラーゲン誘発関節炎及びプリスタン誘発関節炎に対する、相同性II型及びIX型コラーゲンの鼻腔内投与による、異なる治療効果及びバイスタンダー効果). Clin Immunol. 90:119−127, 1999)。
【0024】
組換えにより生産した完全型の未変性IX型コラーゲンを使用した別の研究において、これをB10類似遺伝子型マウスに経口的に与えた場合、このコラーゲンは、II型コラーゲンを予め接種することにより引き起こした関節炎(コラーゲン誘発関節炎、CIA)を寛解できることが見出された。組換えIX型コラーゲンも他のマウスモデルにおける免疫原性について試験すると、II型コラーゲンとは異なり、この蛋白質で免疫付与したマウスにおける顕性関節炎を誘発することはなかった(Myers L K et al, Immunogenicity of recombinant Type IX collagen in murine collagen−induced arthritis(マウスのコラーゲン誘発関節炎における組換えIX型コラーゲンの免疫原性) Arthritis Rheum. 46: 1086−1093, 2002)。
【0025】
Luら(1999)とMyersら(2002)との間の矛盾点は、IX型コラーゲン製剤の純度と分子サイズの差によって説明されうる。IX型コラーゲンはII型コラーゲン原線維に共有結合しており、蛋白質分解を使用しなければ軟骨マトリックスから少量しか抽出することができないため、組換え技術が、純粋な未変性IX型コラーゲンを得る唯一の手段であると考えられる。IX型コラーゲンを軟骨から抽出するのに使用される最も一般的なプロテイナーゼは、ブタの胃粘膜に通常由来する市販の調製品たるペプシンである。ペプシンは軟骨には存在していない。この酵素は、IX型分子の非コラーゲン性ドメインを加水分解して、未変性COL1、COL2、及びCOL3の三重らせんセグメントを放出し、これらは、部分的に分解された非らせんNCドメインを溶液中に残すよう沈殿することによって混合物から単離される。
【0026】
軟骨組織中のIX型コラーゲンの正常な代謝回転に関与する内在性プロテイナーゼは、現在のところ知られていない。しかしながら、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリーである、セリンプロテイナーゼ及びシステインプロテイナーゼはすべて、らせん(COL)及び非らせん(NC)ドメインの双方にて、IX型コラーゲンをインビトロで分解することがわかっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明をなすに至った研究において、本発明者は抗関節炎又は抗炎症性活性を有する結合組織由来ポリペプチドを回収しようとした。本発明者は、結合組織の自己溶解によって生産され30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドが抗関節炎又は抗炎症性活性を有することを見出した。
【0028】
本発明者はまた、30,000Da未満の分子量を有する、1以上の結合組織由来ポリペプチドを含む組成物の投与により、軟骨の抗原性成分に対して個体が寛容化され、且つ関節炎の症状の発生が防止されることも見出した。
【0029】
プロテオミクス技術を用いてポリペプチドを解析することにより、トリプシン消化によって生産されるポリペプチドの断片はコラーゲンIX型アルファ1鎖のNC4ドメインと強い一致度を有することが示された。
【課題を解決するための手段】
【0030】
従って、本発明はコラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメイン又は、抗関節炎若しくは抗炎症性活性を有するその生化学的活性断片を含むポリペプチドの、個体における関節炎又は筋骨格系のその他の変性疾患の処置又は防止のための使用に関する。
【0031】
第一の態様において、本発明は個体における関節炎又はその他の変性疾患を処置又は防止するための医薬組成物であって、前記組成物は、コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメイン又は、抗関節炎若しくは抗炎症性活性を有するその生化学的活性断片を含むポリペプチドを、薬剤的に容認できる担体と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。好ましい実施形態において、ポリペプチドは30,000Da未満の分子量及び/又は250アミノ酸未満のアミノ酸長を有している。さらに好ましい実施形態において、ポリペプチド又はその生化学的活性断片は哺乳動物から由来する。
【0032】
別の態様において、本発明は、個体において、軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する寛容性を誘発するための医薬組成物を提供するものであり、前記組成物はコラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメイン又は、抗関節炎若しくは抗炎症性活性を有するその生化学的活性断片を含むポリペプチドを薬剤的に容認できる担体と組み合わせて含んでいる。好ましい実施形態において、コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメインポリペプチドは30,000Da未満の分子量又は250アミノ酸未満のアミノ酸長を有している。
【0033】
一つの例において、コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメインは
(i)配列番号1、配列番号14、配列番号16、若しくは配列番号18で示されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号1、配列番号14、配列番号16、若しくは配列番号18のいずれかと少なくとも70%一致するアミノ酸配列、又は
(iii)(i)若しくは(ii)の生化学的活性断片を含む。
【0034】
好ましくは、コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメインは、配列番号1、配列番号14、配列番号16、若しくは配列番号18のいずれか1つと、少なくとも75%、好ましくは80%、85%、90%又は95%一致するアミノ酸配列を含む。
【0035】
一つの例において、コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメインは、
(i)配列番号1の残基21〜182;配列番号1の残基60〜181;配列番号1の残基72〜181、配列番号1の残基98〜182、若しくは配列番号1の残基123〜182;又は
(ii)配列番号14の残基24〜268、配列番号14の残基29〜268、配列番号14の残基29〜215、配列番号14の残基29〜209、配列番号14の残基29〜208、配列番号14の残基29〜96、若しくは配列番号14の残基108〜208で示されるアミノ酸配列を含む。
【0036】
別の例において、コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメインは、配列番号2〜11の少なくとも1つを含む。
【0037】
好ましい実施形態において、個体における寛容性の誘発は、その個体における関節炎又はその他の筋骨格の変性状態の少なくとも1つの症状を防止する。
【0038】
本明細書において使用する場合、「少なくとも1つの症状を防止する」とは、本発明のポリペプチドを含む医薬組成物を投与しない場合に比べて、症状を防御又は阻止すること、症状の出現を遅延させること、症状の発現の重症度を低減すること、及び/又は個体に見舞われる症状の数若しくは型を低減することをいう。従って、本明細書の記載全体にわたって、本発明の処置に従い、筋骨格の変性状態の症状の一つでも、何らかの臨床的又は統計的に有意な減弱がなされることが本発明の範囲に含まれることは理解されるであろう。
【0039】
本発明はまた、本発明の第一の態様にかかる医薬組成物の有効量を個体に投与することを含む、個体において軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する寛容性を誘発する方法も提供する。
【0040】
好ましくは、個体において寛容性を誘発する方法は、筋骨格の変性状態の発症を防止する。
【0041】
従って、本発明は、本発明の第一の態様にかかる組成物の医薬的に有効な量を投与することを含む、個体における筋骨格の変性状態を防止するための方法を提供する。
【0042】
さらに、本発明は、本発明の第一の態様にかかる組成物を個体に投与することを含む、軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する自己免疫応答を防止するための方法を提供する。
【0043】
関連する態様において、本発明はさらに、個体において軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する寛容性を誘発するため、又は筋骨格の変性状態を防止するための医薬の製造における、コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメイン又は、抗関節炎若しくは抗炎症性活性を有する生化学的活性断片を含むポリペプチドの、薬剤的に容認できる担体と組み合わせた使用を提供する。
【0044】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、ナイーブ(naive)個体に投与された場合、関節炎の少なくとも1つの症状、例えば炎症、関節圧痛、関節腫脹、関節硬直、運動制限、又は強度低下などを防止するものである。
【0045】
一つの例において、個体はナイーブ個体である。「ナイーブ個体」とは、好ましくは個体が2以上の筋骨格の変性状態の症状を呈していないこと、より好ましくは個体が筋骨格の変性状態の症状を呈していないことを意味する。これは、筋骨格の疾患の経過の前又は途中又後であってよい。
【0046】
さらなる態様において、本発明は、結合組織から30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを回収するための方法であって、グリコサミノグリカンペプチド及びポリペプチドの混合物が結合組織片から自己溶解媒体中に放出されるように、結合組織片を自己溶解媒体の存在下に自己溶解に付す方法を提供する。自己溶解を誘発する方法は、PCT/AU03/00061(本出願人の名で)に以前に報告されており、これは引用することにより本明細書に援用する。本発明によれば、ポリペプチドは媒体から回収され、サイズに従って分離される。本発明はまた、回収されたポリペプチドをサイズ及び電荷に従って分離及び同定するための方法も提供する。
【0047】
従って、一つの例において、抗関節炎又は抗炎症性活性を有するポリペプチドを調製するための方法は、GAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を結合組織から自己溶解によって単離し、ポリペプチドからGAG−ペプチドを分離し、そしてポリペプチドを回収することを含む。
【0048】
関連する例において、本発明は、抗関節炎又は抗炎症性活性を有するポリペプチドを調製するための方法を提供するものであり、この方法は
(i)約pH2.5から約pH8.5の間に緩衝されたpH範囲を提供する自己溶解媒体中で、GAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを放出するのに充分な時間及び条件下で結合組織をインキュベートし、
(ii)GAG−ペプチド及びポリペプチドを含む混合物を自己溶解媒体から回収し;
(iii)GAG−ペプチドからポリペプチドを分離し;及び
(iv)30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを回収することを含む。
【0049】
例えば、クロマトグラフィー、イオン交換技術、ゲル濾過(例えば、ダイアフィルトレーション若しくは限外濾過)、ゲル電気泳動(例えば、一次元若しくは二次元)のような公知技術又はサイズ及び分子量に従ってポリペプチドを分離及び/若しくは回収するその他の方法、又はこれらの組み合わせなどを、混合物からポリペプチドを回収するために使用することができる。
【0050】
同じかまたは類似の技術の組み合わせを使用してもよいし、繰り返してもよい。このようにして、異なる分子量範囲のポリペプチドの画分が得られ、且つ個々のポリペプチドを回収することもできる。
【0051】
本発明の方法によって回収されるポリペプチドは、結合組織由来ポリペプチドである。本発明では明らかに、回収したポリペプチドが、ポリペプチドの混合物又は個々のポリペプチドを含んでよいことが意図される。
【0052】
本発明者は、回収されたポリペプチド及びその混合物が、GAG−ペプチド/ポリペプチド混合物よりも増強された及び/又は異なる薬理活性を有することを見出している。本発明にかかるポリペプチドは、それらの抗関節炎又は抗炎症性活性を有する結合組織由来のポリペプチドである。一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、コラーゲン誘発関節炎のラットにおける後足の炎症を軽減する。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、コラーゲン誘発関節炎のラットにおける尾部の炎症を軽減する。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、コラーゲン誘発関節炎のラットにおける前足の炎症を軽減する。さらに別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、コラーゲン誘発関節炎のラットにおける体重減少を軽減する。
【0053】
従って、本発明の別の例は、本発明の方法によって得ることができる、30,000Da未満の分子量を有し、抗関節炎又は抗炎症性活性を有する結合組織由来ポリペプチドを提供する。
【0054】
例えば、本発明は、
(i)約pH2.5から約pH8.5の間に緩衝されたpH範囲を提供する自己溶解媒体中で、GAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを放出するのに充分な時間及び条件下で結合組織をインキュベートし、
(ii)GAG−ペプチド及びポリペプチドを含む混合物を自己溶解媒体から回収し;
(iii)GAG−ペプチドからポリペプチドを分離し;及び
(iv)30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを回収することによって得ることができる、30,000Da未満の分子量を有する結合組織由来ポリペプチドを提供する。
【0055】
一つの例において、回収されたポリペプチドは、コラーゲンIX型α1鎖の非コラーゲン性領域−4(NC4)、又はその生化学的活性断片を含む。
【発明の効果】
【0056】
コラーゲン誘発関節炎のラットに対して本発明のポリペプチドで観察される効果によって、あらゆる動物における、リウマチ様関節炎及び骨関節炎などの炎症性及び変性組織疾患での結合組織の処置、保護及び修復でのポリペプチドの適用も提供される。好ましくは、本発明のポリペプチドは、動物において抗原により惹起される自己免疫疾患を防止する。別の好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、動物において抗原により惹起される自己免疫疾患に伴う症状を軽減する。
【0057】
従って、以上の例は、本発明のあらゆる態様に準用されることは理解されるべきである。
【0058】
従って、本発明は、個体における関節炎又はその他の筋骨格の変性疾患を処置又は防止するための医薬組成物を提供するが、当該組成物は、抗関節炎又は抗炎症性を有する1以上の結合組織由来ポリペプチドを含み、当該ポリペプチドは、結合組織から自己溶解によってGAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を単離し、ポリペプチドからGAG−ペプチドを分離し、及びポリペプチドを回収することを含む方法によって得ることができる。
【0059】
本発明はまた、個体において、軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する寛容性を誘発するための医薬組成物も提供するが、当該組成物は抗関節炎又は抗炎症性を有する1以上の結合組織由来ポリペプチドを含み、当該ポリペプチドは、結合組織から自己溶解によってGAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を単離し、ポリペプチドからGAG−ペプチドを分離し、及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを回収することを含む方法によって得ることができる。
【0060】
好ましくは、個体における寛容性の誘発は、個体における筋骨格の変性疾患の少なくとも1つの症状を防止する。
【0061】
別の例において、本発明は、抗関節炎又は抗炎症性を有する1以上の結合組織由来ポリペプチドを含む医薬組成物の有効量を個体に投与することを含む、個体における筋骨格の変性状態を防止するための方法を提供するが、当該ポリペプチドは、結合組織から自己溶解によってGAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を単離し、ポリペプチドからGAG−ペプチドを分離し、及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを回収することを含む方法によって得ることができる。
【0062】
別の例において、本発明は、抗関節炎又は抗炎症性を有する1以上の結合組織由来ポリペプチドを含む医薬組成物の有効量を個体に投与することを含む、個体における、軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する自己免疫応答を防止するための方法を提供するが、当該ポリペプチドは、結合組織から自己溶解によってGAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を単離し、ポリペプチドからGAG−ペプチドを分離し、及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを回収することを含む方法によって得ることができる。
【0063】
本発明はさらに、抗関節炎又は抗炎症性活性を有する、本発明の結合組織由来ポリペプチドの有効量を個体に投与することを含む、個体における軟骨形成を誘発する方法を提供するが、当該ポリペプチドは、結合組織から自己溶解によってGAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を単離し、ポリペプチドからGAG−ペプチドを分離し、及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを回収することを含む方法によって得ることができる。
【0064】
別の関連する例において、本発明は、被験者における関節炎又はその他の筋骨格の疾患の処置又は防止のための医薬の調製での、抗関節炎又は抗炎症性を有する1以上の結合組織由来ポリペプチドの使用を提供するが、当該ポリペプチドは、結合組織から自己溶解によってGAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を単離し、ポリペプチドからGAG−ペプチドを分離し、及びポリペプチドを回収することを含む方法によって得ることができる。
【0065】
一つの例において、本発明は、軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対して個体を寛容化させるための医薬の調製での、抗関節炎又は抗炎症性を有する1以上の結合組織由来ポリペプチドの使用を提供するが、当該ポリペプチドは、結合組織から自己溶解によってGAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を単離し、ポリペプチドからGAG−ペプチドを分離し、及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを回収することを含む方法によって得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
特定の実施形態に示されるごとき本発明に、広く記載された本発明の範囲又は精神を逸脱することなく、多くの変更及び/又は修飾を行ってもよいことは当業者によって理解されるであろう。本実施形態は従って、すべての点で例示的且つ非限定的なものとして考慮されるべきである。
【0067】
1. 自己溶解
結合組織は、器官を支持し、それらの間の空間を埋め、且つ腱及び靭帯を形成する動物組織である。本明細書における「組織」の用語は、共通の機能を遂行する、同じ様に特殊化された細胞の群をいう。本明細書で使用する場合、組織には、特定の組織で構成される臓器、及び組織を構成する細胞を個々に又はまとめて含めることが意図される。
【0068】
一つの実施形態において、結合組織は軟骨である。別の実施形態において、結合組織は、非軟骨材料、例えば、肺、皮膚、骨、靭帯又は腱である。
【0069】
好ましくは、軟骨は気管、関節、耳介、鼻、胸骨、肋骨骨格、又は枝角の軟骨である。軟骨はしかしながら、どのような型の軟骨であってもよい。
【0070】
結合組織は、結合組織を有するいかなる動物から得られたものであってもよい。
【0071】
一つの実施形態において、結合組織は以下のもの:ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、トリ、シカ及びサカナの種、のいずれか1つから選択される。好ましくは、結合組織は、ウシ、ヒツジ、ブタ、シカ、サメ又はウマのものである。
【0072】
一つの実施形態において、若年動物、例えば子ウシからの組織が好ましい。代替の実施形態においては、より成熟した動物が好ましい。
【0073】
結合組織は、当該技術分野において知られた方法により必要に応じて処理及び洗浄し、付着している軟組織が除かれるとよい。一つの実施形態において、結合組織は小片サイズにまで小さくされる。代替の実施形態においては、結合組織が小片サイズにまで小さくされることはない。
【0074】
結合組織は、細切、角切、粉砕等を含めた手段によって小片サイズにまで小さくすることができるが、これらに限定されることはない。一つの実施形態において、小片径は約5mm未満、好ましくは約4mm未満、より好ましくは約3mm未満である。最も好ましくは、小片径は約0.1mm〜約3mmである。
【0075】
「インキュベート」又は「インキュベーティング」の用語は、特定の反応を促進するために、(化学的又は生化学的システムを)一定の条件下で維持することを意味する。
【0076】
本明細書において使用する場合、「自己溶解」の用語は、細胞死に続いて起こり組織の自己消化を引き起こすものであって、リソソームから放出されたか、又は細胞および細胞周囲マトリックスに会合された内在性の加水分解酵素及びプロテイナーゼによる細胞性成分の消化をいう。当業者であれば、pH、温度、濃度、組織型、組織小片サイズ及びインキュべーションの時間を含めた多くの因子により、自己溶解の速度が異なることは理解されるはずである。
【0077】
「バッファー」の用語は、通常は塩である化合物をいい、水性媒体中に溶解されると、溶液に水素イオンを添加、または溶液から水素イオンを除いた場合に溶液の遊離水素イオン濃度を所定のpH範囲内に維持するのに役立つものである。塩又は溶液は、「緩衝能」を有する、すなわちこの機能を奏する場合にかかる範囲にわたって溶液を緩衝化する、といわれる。一般的に、バッファーは、そのpKの±1のpH単位以内の範囲にわたって適切な緩衝能を有するであろう。
【0078】
一つの実施形態において、塩は一価の塩である。好ましくは、一価の塩は、水素、ナトリウム、カリウム、又はアンモニウムのいずれか1以上から選択される。代替の実施形態において、塩は一価の塩ではない。別の実施形態において、塩はカルシウム、マグネシウム、銅、又は亜鉛のいずれか1以上から選択される二価の塩である。最も好ましくは、塩はカルシウム又はマグネシウムである。
【0079】
一つの実施形態において、pHは約2.5〜約8.5、好ましくは約3.5〜約8.0、より好ましくは約4〜約7、そして最も好ましくは約4.5〜約7の範囲にある。
【0080】
「条件」の用語は、自己溶解の速度、効率及び量に影響を及ぼす他の因子、例えば温度及び時間などをいう。
【0081】
一つの実施形態において、自己溶解の工程を行うための温度条件は、約20℃〜約45℃、好ましくは約25℃〜約45℃、より好ましくは約32℃〜約45℃、より好ましくは約32℃〜約40℃の範囲、最も好ましくは約37℃である。
【0082】
一つの実施形態において、自己溶解には、48時間まで、好ましくは36時間まで、好ましくは24まで、好ましくは16時間まで、より好ましくは16〜24時間がかかる。
【0083】
一つの好ましい実施形態において、1〜3mmのサイズの軟骨小片が、4〜5のpHで32〜45℃の温度の水性媒体中で、16〜24時間の自己溶解に供される。
【0084】
グリコサミノグリカン(GAG)は、プロテオグリカンの多糖鎖で、グルクロン酸又はイズロン酸にグリコシド結合したアミノ糖(グルコサミン又はガラクトサミンのいずれか)の誘導体を含む二糖単位の反復で構成されるものをいう。最も一般的な誘導体は、N−アセチル化グルコサミン又はガラクトサミン環の4又は6位で置換されたO−硫酸エステルになっている。
【0085】
GAGの例としては、ヒアルロン酸(ヒアルロナン)(硫酸化されていないもの)、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸及びヘパラン硫酸が挙げられる。
【0086】
「蛋白質」、「ポリペプチド」、又は「ペプチド」の用語は、本明細書において使用される場合、相互に交換可能であり、あらゆる長さの多量体フォームにあるアミノ酸をいう。
【0087】
GAG−ペプチド及びポリペプチドは、よく知られた方法で自己溶解媒体から回収することができる。例えば、一つの実施形態において、残留組織片を自己溶解媒体から濾過によって除去し、そしてGAG−ペプチド複合体及びポリペプチドの混合物を上清から回収する。別の実施形態において、残留組織片は自己溶解媒体から除去されない。
【0088】
一つの実施形態において、上清はカチオンを含有するアルカリ溶液の添加によって中和される。
【0089】
一つの実施形態において、上清は凍結乾燥される。代替の実施形態においては、上清は凍結乾燥されない。
【0090】
あるいは、GAG−ペプチド及びポリペプチドの混合物は、過剰量のアセトン、又は例えばエタノール若しくはメタノールなどの脂肪族アルコールを用いた沈殿により、自己溶解媒体又は上清から回収される。別の実施形態において、GAG−ペプチド及びポリペプチドの混合物は、セチルピリジニウム、クロライドなどの四級アンモニウム塩と水不溶性複合体を形成することにより自己溶解媒体又は上清から回収される。別の実施形態においてGAG−ペプチド及びポリペプチドの混合物は、サイズ排他的な、若しくはイオン交換又は他の形式のカラムクロマトグラフィ又は膜濾過技術を用いた分離によって自己溶解媒体又は上清から回収される。
【0091】
2. 本発明のポリペプチドの分離及び回収
GAG−ペプチド及びポリペプチドの混合物の回収の後に、ポリペプチド及びGAG−ペプチドは、当該技術分野においてよく知られた方法によって分離することができる。
【0092】
好ましくは、GAG−ペプチド及びポリペプチドの混合物はイオン交換技術に付される。一つの実施形態において、GAG−ペプチド及びポリペプチドの混合物は、イオン交換固相媒体にさらされる。一つの実施形態において、固相媒体はDEAEセファロースである。好ましい実施形態において、固相媒体は予め膨潤したDEAE−セファロース−6Bである。
【0093】
ポリペプチドの回収では、よく知られた分離技術のいずれをも引用する。一つの実施形態において、例えば、クロマトグラフィー、イオン交換技術、ゲル濾過(例えば、ダイアフィルトレーション又は限外濾過)、ゲル電気泳動(例えば、一次元又は二次元)若しくはサイズ及び分子量に応じてポリペプチドを分離するその他の方法、又はそれらの組み合わせであって、30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを回収することのできるものによって、ポリペプチドを回収することができる。
【0094】
同じか又は類似する分離技術の組み合わせを使用しても、繰り返してもよい。このようにして、異なる分子量範囲のポリペプチドの画分が得られ、且つ個々のポリペプチドを回収することもできる。サイズ及び分子に応じたポリペプチドの分離はどのような順序で実施してもよいことは理解されるであろう。
【0095】
従って、一つの例において、回収されたポリペプチドは分離技術に供され、1,000Daより大きな分子量を有するポリペプチドが回収される。回収された1,000Daより大きな分子量を有するポリペプチドは、分離技術に供されて30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドが回収される。こうして、一つの例において、ポリペプチドは30,000Da未満且つ1,000Daを超える分子量を有する。
【0096】
別の例において、回収されたポリペプチドは分離技術に付されて1,000Daより大きな分子量を有するポリペプチドが回収され、次いで分離技術に付されて10,000Daより大きな分子量を有するポリペプチドが回収される。
【0097】
従って、本発明の例は、30,000Da未満、30,000Da未満且つ約1,000Daを超える、そして30,000未満且つ10,000を超える分子量を有するポリペプチドの回収に関する。
【0098】
さらなる実施形態において、本発明は回収された1以上のポリペプチドを分離して個々のポリペプチドを回収することを含む。分離は、例えばクロマトグラフィー、一次元ゲル電気泳動、二次元電気泳動等のよく知られた技術のいずれによっても実施することができる。
【0099】
本発明者らはさらに、本発明の方法によって分離された個々のポリペプチドを分析及び同定した。
【0100】
本発明の方法によって回収されるポリペプチドは、結合組織由来ポリペプチドである。本発明者らは、回収されたポリペプチド及びその混合物が、GAG−ペプチド/ポリペプチド混合物よりも増強された及び/又は異なる薬理活性を有することを見出している。
【0101】
従って、本発明は、抗関節炎又は抗炎症性活性を有する、本発明の方法によって取得可能な結合組織由来ポリペプチドを提供する。一つの実施形態において、本発明のポリペプチド及びその混合物は、コラーゲン誘発関節炎のラットにおける後足の炎症を軽減する。別の実施形態において、本発明のポリペプチド及びその混合物は、コラーゲン誘発関節炎のラットにおける尾部の炎症を軽減する。別の実施形態において、ポリペプチドはコラーゲン誘発関節炎のラットにおける前足の炎症を軽減する。さらに別の実施形態において、本発明のポリペプチド及びその混合物は、コラーゲン誘発関節炎のラットにおける体重減少を軽減する。
【0102】
本明細書で使用する場合、「由来」の用語は、特定の完全体が供給源から得られうる(必ずしもその供給源から直接でなくてもよい)ことを示唆するべきである。
【0103】
代替の実施形態において、本発明のポリペプチドは、本発明の方法によって取得可能であり、約30,000Da未満の範囲の分子量を有し、且つ抗関節炎又は抗炎症性を有する結合組織由来ポリペプチドである。
【0104】
代替の実施形態において、本発明のポリペプチドは、本発明の方法によって取得可能であり、約1,000Daから約30,000Daの範囲の分子量を有し、且つ抗関節炎又は抗炎症性を有する結合組織由来ポリペプチドである。
【0105】
代替の実施形態において、本発明のポリペプチドは、本発明の方法によって取得可能であり、約10,000Daから約30,000Daの範囲の分子量を有し、且つ抗関節炎又は抗炎症性を有する結合組織由来ポリペプチドである。
【0106】
別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、本発明の方法によって取得可能であり、約25,000Daから約30,000Daの範囲の分子量を有し、且つ抗関節炎又は抗炎症性を有する結合組織由来ポリペプチドである。
【0107】
所望の範囲の分子量を有するポリペプチドの混合物が、明らかに企図される。
【0108】
別の実施形態において、本発明の方法によって取得可能である、抗関節炎又は抗炎症性を有する個々のポリペプチドが企図される。一つの例において、本発明の結合組織由来ポリペプチドは約27,000Daの分子量を有する。
【0109】
好ましい例において、本発明は、約10,000Daから約30,000Daの範囲の分子量を有し、抗関節炎又は抗炎症性を有し、且つ、以下の群:
(a)約6〜約6.5の等電点(pI)を有し、より好ましくは等電点電気泳動で定量したpI値が約6.3である結合組織由来ポリペプチド、
(b)約6.5〜約7の等電点(pI)を有し、より好ましくは等電点電気泳動で定量したpI値が約6.8である結合組織由来ポリペプチド、
(c)約7.5〜約8.5の等電点(pI)を有し、より好ましくは等電点電気泳動で定量したpI値が約7.8である結合組織由来ポリペプチド、
(d)約8〜約8.5の等電点(pI)を有し、より好ましくは等電点電気泳動で定量したpI値が約8.2である結合組織由来ポリペプチド、
(e)約8〜約8.5の等電点(pI)を有し、より好ましくは等電点電気泳動で定量したpI値が約8.3である結合組織由来ポリペプチド、
(f)約8.3〜約8.8の等電点(pI)を有し、より好ましくは等電点電気泳動で定量したpI値が約8.6である結合組織由来ポリペプチド、
(g)約8.8〜約9.5の等電点(pI)を有し、より好ましくは等電点電気泳動で定量したpI値が約9.1である結合組織由来ポリペプチド、
(h)約6〜約6.5の等電点(pI)を有し、より好ましくは等電点電気泳動で定量したpI値が約6.2である結合組織由来ポリペプチド、
(i)約6.8〜約7.5の等電点(pI)を有し、より好ましくは等電点電気泳動で定量したpI値が約7.2である結合組織由来ポリペプチド、
からなる群より選択される結合組織由来ポリペプチドを提供する。
【0110】
本発明の個々のポリペプチドは、既知蛋白質の断片として同定されている。約30アミノ酸までのペプチドは、ポリペプチドをトリプシン消化に供することによって生産し、そしてその後マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)質量分析に付した。それらペプチドは、リファレンスデータベースに提供された既知蛋白質と比較されている。
【0111】
従って、別の実施形態において、本発明は、本発明の方法により取得可能な、図4に開示されるような既知蛋白質の配列と%一致度を有する、単離されたポリペプチドを提供するものであり、このポリペプチド又はポリペプチド断片は、抗関節炎又は抗炎症性を有する。
【0112】
好ましくは、上記(a)項の結合組織由来ポリペプチドは、トリプシン消化後に以下の配列の1以上を含む:
(K)LGNNV DFR(I)
(R)IESLP IKPR(G)
(R)HLYPN GLPEE YSFLT TFR(M)
(K)IMIGV ER(S)
(R)SSATL FVDCN R(I)。
【0113】
好ましくは、上記(b)項の結合組織由来ポリペプチドは、トリプシン消化後に以下の配列の1以上を含む:
(K)SVSFS YK(G)
(K)IMIGV ER(S)
(K)LGNNV DFR(I)
(R)IESLP IKPR(G)
(K)HWSIW QIQDS SGK(E)
(R)IGQDD LPGFD LISQF QIDK(A)
(R)HLYPN GLPEE YSFLT TFR(M)
(K)GLDGS LQTAA FSNLP SLFDS QWHK(I)
(K)IMIGV ER(S)
(R)SSATL FVDCN R(I)。
【0114】
好ましくは、上記(c)項の結合組織由来ポリペプチドは、トリプシン消化後に以下の配列の1以上を含む:
(K)SVSFS YK(G)
(K)IMIGV ER(S)
(K)LGNNV DFR(I)
(R)IESLP IKPR(G)
(K)HWSIW QIQDS SGK(E)
(R)IGQDD LPGFD LISQF QIDK(A)
(R)HLYPN GLPEE YSFLT TFR(M)
(K)GLDGS LQTAA FSNLP SLFDS QWHK(I)
(K)IMIGV ER(S)
(R)SSATL FVDCN R(I)。
【0115】
好ましくは、上記(d)項の結合組織由来ポリペプチドは、トリプシン消化後に以下の配列の1以上を含む:
(K)SVSFS YK(G)
(K)IMIGV ER(S)
(K)LGNNV DFR(I)
(R)IESLP IKPR(G)
(K)HWSIW QIQDS SGK(E)
(R)HLYPN GLPEE YSFLT TFR(M)
(K)GLDGS LQTAA FSNLP SLFDS QWHK(I)
(R)SSATL FVDCN R(I)。
【0116】
好ましくは、上記(e)項の結合組織由来ポリペプチドは、トリプシン消化後に以下の配列の1以上を含む:
(K)LGNNVDFR(I)
(R)IESLPIKPR(G)
(R)IGQDD LPGFD LISQF QIDK(A)
(R)HLYPN GLPEE YSFLT TFR(M)
(R)SSATL FVDCN R(I)。
【0117】
好ましくは、上記(f)項の結合組織由来ポリペプチドは、トリプシン消化後に以下の配列の1以上を含む:
(K)SVSFS YK(G)
(K)IMIGV ER(S)
(K)LGNNV DFR(I)
(R)IESLP IKPR(G)
(K)HWSIW QIQDS SGK(E)
(R)IGQDD LPGFD LISQF QIDK(A)
(R)HLYPN GLPEE YSFLT TFR(M)
(K)IMIGV ER(S)
(R)SSATL FVDCN R(I)。
【0118】
好ましくは、上記(g)項の結合組織由来ポリペプチドは、トリプシン消化後に以下の配列の1以上を含む:
(K)LGNNV DFR(I)
(R)IESLP IKPR(G)
(R)IGQDD LPGFD LISQF QIDK(A)
(R)HLYPN GLPEE YSFLT TFR(M)
(R)SSATL FVDCN R(I)。
【0119】
好ましくは、上記(h)項の結合組織由来ポリペプチドは、トリプシン消化後に以下の配列の1以上を含む:
(K)SVSFS YK(G)
(K)IMIGV ER(S)
(K)LGNNV DFR(I)
(R)IESLP IKPR(G)
(K)HWSIW QIQDS SGK(E)
(R)IGQDD LPGFD LISQF QIDK(A)
(R)HLYPN GLPEE YSFLT TFR(M)
(K)IMIGV ER(S)
(R)SSATL FVDCN R(I)。
【0120】
好ましくは、上記(i)項の結合組織由来ポリペプチドは、トリプシン消化後に以下の配列の1以上を含む:
(K)SVSFS YK(G)
(K)IMIGV ER(S)
(K)LGNNV DFR(I)
(R)IESLP IKPR(G)
(K)HWSIW QIQDS SGK(E)
(R)IGQDD LPGFD LISQF QIDK(A)
(R)HLYPN GLPEE YSFLT TFR(M)
(K)IMIGV ER(S)
(R)SSATL FVDCN R(I)。
【0121】
好ましくは、上記(a)〜(i)項の結合組織由来ポリペプチドは、図6に示すIX型コラーゲンアルファ1鎖NC4ドメイン又はその相同体若しくは誘導体の配列と実質的な一致度を有するアミノ酸配列を含む。
【0122】
3.ポリペプチド
本発明者らは、ウシ軟骨マトリックスの自己溶解処理の際に生産されるIX型コラーゲンアルファ1鎖ポリペプチドを実質的に精製して、同定を行なった。
【0123】
また、本明細書に組み込まれるのは、ヒト、ニワトリ及びラット結合組織由来のコラーゲンIX型アルファ1 NC4ドメインに対するアミノ配列である。ウシ−ニワトリNC4ドメインポリペプチド(図9参照)、及びウシ−ヒトNC4ドメインポリペプチド(図10参照)のアミノ酸配列の比較で、配列の重複が示されている。
【0124】
「実質的に精製されたポリペプチド」とは、もとの状態では結合状態にある脂質、核酸、その他のポリペプチド、及びその他の混入分子から少なくとも部分的に分離されているポリペプチドを意味する。好ましくは、実質的に精製されたポリペプチドは、本来それらと結合しているその他の成分を少なくとも60%含まず、好ましくは少なくとも75%含まず、最も好ましくは少なくとも90%含んでいない。さらに、「ポリペプチド」の用語は、本明細書において「蛋白質」の用語と交換可能に使用される。
【0125】
ポリペプチドの%一致度は、GAP作成ペナルティ(gap creation penalty)=5、及びGAP伸長ペナルティ(gap extension penalty)=0.3で、GAP(Needleman及びWunsch、1970)解析(GCGプログラム)によって求められる。別途に断らない限り、照会配列は少なくとも15アミノ酸の長さであり、GAP解析では少なくとも15アミノ酸の領域にわたり2つの配列の配列比較がなされる。より好ましくは、照会配列は少なくとも50アミノ酸の長さであり、GAP解析では少なくとも50アミノ酸の領域にわたり2つの配列の配列比較がなされる。さらにより好ましくは、照会配列は少なくとも100アミノ酸の長さであり、またGAP解析では少なくとも100アミノ酸の領域にわたり2つの配列の配列比較がなされる。
【0126】
規定されたポリペプチド/酵素につき、%一致度の数値は、前掲のものより高い数値が好ましい実施形態に包含されることは理解されよう。従って、適用可能な場合、最小の%一致度の数値を考慮し、ポリペプチドが、関連する所定の配列番号と、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも76%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、そしてさらにより好ましくは少なくとも99.9%一致するアミノ酸配列を含むことが好ましい。
【0127】
本明細書で使用する場合、「生化学的活性断片」の用語は、抗関節炎又は抗炎症性活性(どちらでも関連するもの)をなお維持している、規定されたポリペプチドの一部分をいう。かかる生化学的活性断片は、全長蛋白質の連続的な欠失と、その結果得られる断片の活性を試験をすることによって、容易に判定することができる。
【0128】
本明細書において規定されたポリペプチド/酵素のアミノ酸配列突然変異体/変異体は、そのポリペプチドをコードする核酸に適切なヌクレオチドの変化を導入する、又は所望のポリペプチドのインビトロ合成をすることによって調製できる。かかる突然変異体としては、例えば、アミノ酸配列内の残基の欠失、挿入又は置換が挙げられる。最終蛋白質産物が所望の特性を保有するという条件で、最終構築体に到達すべく、欠失、挿入及び置換を組み合わせることができる。
【0129】
アミノ酸配列突然変異体を設計するに際し、突然変異部位の位置及び突然変異の性質は、修飾すべき単数または複数の特性に依存するものとされよう。突然変異に対する部位は、例えば、(1)まず保存的なアミノ酸を選んで置換し、そしてその後、達成される結果に依存して、より極端な(radical)ものを選んで置換し、(2)標的残基を欠失させるか、又は(3)局在位置に隣接してその他の残基を挿入することにより、個々に又は連続して修飾することができる。
【0130】
アミノ酸配列欠失は一般的に、約1〜30残基、好ましくは約1〜10残基そして通常は約1〜5の隣接する残基の範囲にある。
【0131】
置換突然変異体では、ポリペプチド分子の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、且つその箇所に異なる残基が挿入されている。置換による突然変異に関して大いに重要な部位としては、活性部位又は結合部位(単数または複数)として同定される部位が挙げられる。その他の重要な部位は、様々な株又は種から得た特定の残基が一致する部位であるものである。これらの位置は、生化学的活性にとって重要であるかもしれない。これらの部位、特に少なくとも3つの、等しく保存されたその他の部位の配列内に入るものは、好ましくは比較的保存的に置換される。かかる保存的な置換を、表1に示す。
【0132】
さらに、必要に応じ、非天然アミノ酸又は化学的アミノ酸類似体を、本発明のポリペプチドへの置換物又は付加物として導入することができる。かかるアミノ酸としては、一般的なアミノ酸類のD−異性体、2,4−ジアミノ酪酸、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、2−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、フルオロアミノ酸類;β−メチルアミノ酸類、Cα−メチルアミノ酸類、Nα−メチルアミノ酸類などのデザイナーアミノ酸類;及びアミノ酸類似体が概して挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0133】
【表1】

【0134】
さらにまた、本発明の範囲に含まれるのは、例えば、ビオチニル化、ベンジル化、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロッキング基による誘導体化、蛋白質分解的切断、抗体分子又はその他の細胞性リガンドへの結合等によって、合成中または合成後に差次的に修飾される本発明のポリペプチドである。これらの修飾は、本発明者のポリペプチドの安定性及び/又は生物活性を増大するのに役立ちうる。
【0135】
本発明のポリペプチドは天然蛋白質の生産及び回収、組換え蛋白質の生産及び回収、並びに蛋白質の化学合成を含めた様々な方法で生産することができる。一つの実施形態において、本発明の単離されたポリペプチドは、そのポリペプチドを生産するのに有効な条件下でポリペプチドを発現することができる細胞を培養して、そのポリペプチドを回収することによって生産される。培養するのに好ましい細胞は、本発明の組換え細胞である。有効な培養条件には、有効培地、バイオリアクター、温度、pH及び蛋白質生産を許容する酸素状態が含まれるが、これらに限定されることはない。有効培地とは、細胞を培養して本発明のポリペプチドを生成するためのあらゆる培地をいう。かかる培地は通常は、同化炭素、窒素及びホスフェート源、並びに適切な塩、ミネラル、金属及びビタミンなどのその他の栄養素を備えた水性培地を含む。本発明の細胞は、従来の発酵バイオリアクター、振盪フラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュ、及びペトリ皿にて培養することができる。培養は、組換え細胞にとって適切な温度、pH及び酸素含有量で行うことができる。かかる培養条件は、当業者の専門知識内にある。
【0136】
4.医薬組成物の調製及び投与
本発明の組成物は1以上のポリペプチドから調製されうる。さらなるポリペプチド断片又はペプチドは、本明細書、請求項及び図面を参照し、ルーチン実験によって同定することができる。刺激活性を有するペプチド断片を同定するための方法は、例えば、米国特許第5,399342号に記載されている。
【0137】
医薬組成物は、ヒト及び動物薬にて、ヒト又は動物用のものであってよく、通常は1以上の薬剤的に容認できる希釈剤、担体又は賦形剤の1以上を含むものとされよう。治療用途のための容認できる担体又は希釈剤は、医薬技術においてよく知られており、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences Mack Publishing Co.(A.R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。医薬用担体、賦形剤又は希釈剤の選択については、意図される投与経路及び標準的な医薬実務に鑑みて選択することができる。医薬組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤で、又はそれに加えて、いかなる好適な結合剤、滑沢剤、懸濁剤、コーティング剤、又は可溶化剤も含みうる。
【0138】
当該技術分野においてよく知られている。異なる送達システムによって、異なる組成物/剤形の要件がありうる。
【0139】
本発明によれば、非侵襲的剤形が特に好ましい。適当な場合、医薬組成物は経口若しくは鼻腔内吸入で、坐剤若しくは腟坐薬の形態で、ローション、液剤、クリーム、軟膏、若しくは散布剤の形態で局所的に、皮膚用パッチ剤の使用によって、デンプン若しくは乳糖などの賦形剤を含有する錠剤の形態で、又は単独で若しくは賦形剤との混合物でのカプセル剤、咀嚼剤若しくは腟坐薬にて、又は香味剤若しくは着色剤を含有するエリキシル剤、液剤、シロップ剤若しくは懸濁剤形態で経口的に投与することができる。
【0140】
口腔内又は舌下投与のために、従来の方法で製剤化することができる、例えば錠剤またはトローチ剤の形態で、組成物を投与してもよい。
【0141】
経口製剤には、例えば、医薬等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの通常用いられる賦形剤が含まれる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤又は散剤の形態をとり、10%〜95%、好ましくは25%〜70%の有効成分を含有する。
【0142】
患者への経口投与用のカプセル剤、錠剤及び丸剤は、例えば、ユードラジット(Eudragit)「S」、ユードラジット「L」、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む腸溶コーティングで提供されてもよい。
【0143】
鼻腔内製剤は、報告されており、ラースリティック(larthrytic)コラーゲンII型及びラースリティックコラーゲンIX型の投与は、例えばLuら(1999)、「ラットにおけるコラーゲン誘発関節炎及びプリスタン誘発関節炎に対する、相同性II型及びIX型コラーゲンの鼻腔内投与による、異なる治療効果及びバイスタンダー効果」、Clinical Immunology、90巻119−127頁(1999)に記載されている。
【0144】
別の例において、本発明の医薬組成物は、例えば鼻内噴霧又は吸入用エアロゾル又は経口摂取用液剤を調製し、ミニポンプ又は粘膜経路を使用して送達してもよい。
【0145】
薬剤が胃腸粘膜を通じて経粘膜的に送達される場合、胃腸管を通過する間は、ずっと安定なままであることができるべきであり;例えば、それは蛋白質分解、安定な制酸剤、pHに耐性であり、また胆汁の界面活性効果に耐性であるべきである。
【0146】
好ましくは、本発明の組成物は、非侵襲的経路によって投与される。好ましくは、非侵襲的経路には、経口投与、又は経腸投与、鼻内投与又は吸入による投与が含まれる。
【0147】
代替の実施形態において、本発明の組成物は非経口的に、例えば静脈内、粘膜内又は皮下に注射することができる。
【0148】
非経口的投与のためには、組成物は、その他の物質、例えば血液と等張な溶液を作製するのに充分な塩又は単糖類などを含有しうる滅菌水性溶液の形態で使用するのが最もよい。製剤は乳化されていても、又はリポソーム内に封入されていてもよい。
【0149】
調製の後に、免疫保護組成物は、滅菌容器の中に入れてその後密封し、そして例えば4℃の低温で保存してもよく、又は凍結乾燥してもよい。凍結乾燥により、安定な形での長期間保存が可能となる。
【0150】
5.個体の処置及び保護
ラットにおける炎症及びコラーゲン誘発関節炎に対してポリペプチドで観察される効果によって、関節炎及びその他の変性疾患に対する個体の処置及び保護における、ポリペプチド及びその混合物の適用ももたらされる。さらに、それらの観察された効果により、軟骨成分の抗原性効果に対する個体の寛容化における、ポリペプチドの適用がもたらされる。さらに、前記知見により、特にリウマチ様関節炎及び骨関節炎などの炎症性及び変性組織疾患における結合組織の修復方法への適用がもたらされる。
【0151】
抗炎症性及び/又は抗関節炎活性を有することが示されている、本発明にかかるポリペプチドはさらに、その他の動物モデルにおける安全性及び有効性について試験をし、その後必要に応じてヒトにおける臨床試験に進むことができる。当然、動物への適用には、ヒトでの臨床試験は必要とされない。動物又はヒトにおいて安全且つ有効なそれらのポリペプチドは、結合組織疾患を処置するために、あるいは寛容化のプロセスによって結合組織疾患に対する保護を行うために、適切な被験者に投与することができる。
【0152】
結合組織疾患の齧歯類モデルは、良く知られている。例えば、コラーゲン誘発関節炎及びプリスタン誘発関節炎ラットに対するラットモデルは、Luら(1999)(前出)に記載されている。マウスの関節炎のコラーゲン誘発モデルは、Myersら(2002)(前出)にも記載されている。
【0153】
コラーゲンII型蛋白質全体又はコラーゲンII型の生物学的活性ペプチド断片の、経口、経腸、又は吸入での投与による、ヒトを含めた哺乳動物における自己免疫関節炎及び動物モデルの処置のための方法及び医薬製剤が、米国特許第5,399347号(Trenthamら)に記載されている。さらに、若年性リウマチ様関節炎(JRA)の処置における経口II型コラーゲンの有効性を評価するための方法及び製剤が、Barnettら(1996)(前出)に記載されている。
【0154】
鼻腔内製剤は、報告されており、ラースリティックコラーゲンII型及びラースリティックコラーゲンIX型の投与が、Luら(1999)(前出)に記載されている。
【0155】
本発明は、動物、好ましくは哺乳動物、そしてより好ましくはヒトにおける関節炎又はその他の変性疾患の処置の方法を提供する。
【0156】
「処置及び保護」には、結合組織疾患の発症及び出現を防止するため、さらには自己免疫疾患に関わる身体自身の組織に対する異常な免疫応答の発症及び出現を防止するための予防的及び治療的手段の双方が含まれる。この用語はまた、身体自身のコラーゲン又はより一般的には軟骨に対する異常な(細胞及び/又は液性)の免疫応答の抑制又は鎮静化、さらには自己免疫疾患の発症(すなわち、臨床的徴候)後の臨床的症状の緩和又は排除も包含する。
【0157】
「自己免疫疾患」は、免疫系が哺乳動物内の異物及び/又は自己組織若しくは物質を識別し損ない、その結果、自己組織及び物質をあたかもそれらが異物であるかのように扱って、それらに対して免疫応答を起こす、哺乳動物の免疫系の機能不全と規定される。
【0158】
寛容性
本発明は、軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対し、個体において寛容性を誘発するための方法を提供する。
【0159】
本明細書で使用する場合、「寛容性」とは、予め抗原に曝露することにより誘発される、特異的免疫無応答性が働いている状態をいう。実験的に誘発された寛容性は、普通は免疫原性であるはずの抗原に対して動物が応答し損なう状態として規定されうる。免疫寛容性は、単に免疫応答がないことを示すのではなく、抗原特異性及び記憶−何らかの免疫応答の特徴を呈する免疫系の活性応答を示す。実験的に誘発された寛容性では、外来抗原が免疫賦活化よりもむしろ寛容性の状態を促進する、一定の条件下に投与される。抗原構造、用量及び投与の経路は各々、免疫系の応答が免疫性又は寛容性につながるか否かを部分的に左右する。これらの因子の役割を立証する実験的証拠は、J.Kuby、Immunology、第2版、WH Freeman and Company、1994、16章に示されている。
【0160】
本明細書において使用する場合、「免疫療法」及び「寛容性療法」の用語は、寛容性又は免疫学的予防をもたらす一般的な方法をいう。生体内で、これらの療法は通常、長期間に亘る免疫原性材料の一連の非経口又は経口投与を伴う。一つの実施形態において、「寛容性療法」とは免疫応答のダウンレギュレーションのための方法、例えば自己抗原に対する炎症反応の抑制をいう。
【0161】
抗原の経口投与は、末梢T細胞寛容性を誘発するのに有効な方法である。この事象は、経口寛容性といわれることが多く、脳脊髄炎、ブドウ膜炎、糖尿病、重症筋無力症、及び関節炎を含めた、動物における自己免疫疾患の様々なモデルにおいてよく研究されている。しかしながら、寛容性を誘発するための機構は完全には理解されていない。クローンアネルギー、クローン除去、及びIL−4、IL−10、又はTGF−ベータにより媒介される活性抑制による調節を含む、寛容性誘発に対する既知の機構はすべて、経口寛容性においてある役割を有しうる。一般的に、高い用量の抗原はアネルギー又はクローン除去を誘発することが報告されており、一方低い用量ではサイトカイン調節及び活性抑制が誘発される。
【0162】
活性抑制は、一つのリンパ球サブセットの、別のリンパ球サブセットによる抗原特異的な調節をいう。抗原及び疾患状態に応じて、サプレッサー細胞はCD4+及び/又はCD8+Tリンパ球でありえ、これらは脾臓及び抹消リンパ節などの末梢リンパ組織から、疾患活性部位に移動する。これらの細胞のナイーブ受容体への養子免疫伝達によって、オボアルブミン誘発過敏症の齧歯類モデル、及び多発性硬化症での活性抑制における、これらの細胞の役割が確認されている。動物由来の寛容化されたリンパ球がトランスウェル細胞培養系を通してその他の抗原特異的Tリンパ球の増殖を抑制できることを示すデータにより、活性抑制のインビトロでの証拠が立証されている(Faria and Weiner, “Oral tolerance: mechanisms and therapeutic applications(経口寛容性:機構及び治療への応用)” Adv. Immunol., 73:153−264, 1999)。
【0163】
クローンアネルギーとは、抗原特異的Tリンパ球の無応答性をいい、これは抗原への曝露後の増殖低減によって特徴付けられ、様々な動物モデルでの経口寛容性に関わっている。アネルギーは、CD4+若しくはCD8+Tリンパ球自体、局所の環境にあるその他のTリンパ球若しくは細胞による可溶性抑制因子の生産の結果であるか、又は適当な共刺激分子の発現の低下の結果である可能性がある。クローン除去とは、抗原特異的Tリンパ球の排除をいうが、抗原に対する経口寛容性の機構としてはまれであることが報告されている(Chen, Inobe, Marks, Gonnella, Kuchroo, Weiner, “Peripheral deletion of antigen−reactive T cells in oral tolerance(経口寛容性における抗原反応性T細胞の抹消除去)” Nature, 376:177−180, 1995)。
【0164】
経口寛容性の際に免疫応答を抑制する可溶性メディエータは、主として調節又はサプレッサーTリンパ球に由来する(Faria及びWeiner 1999、前出)。産生するサイトカインによって表される、4種の型のTリンパ球、すなわち:インターロイキン−2(IL−2)及びガンマインターフェロン(γFN)を産生するTh1型;IL−4及びIL−10を産生するTh2型;単独で、又は非常に低レベルのIL−4、IL−10、若しくはγIFNと共に高レベルのトランスフォーミング成長因子ベータ(TGF−β)を産生するTh3型;並びに低レベルのTGF−βと共に高レベルのIL−10を産生するTr1細胞がある。Th3、Th2、及びTr1−Tリンパ球は、経口寛容性により誘発される活性抑制の主要メディエータであることが示されているので、TGF−β、IL−4及びIL−10が、このプロセスにおける重要なサイトカインであると考えられる。これらのサイトカインがない場合に経口寛容性の誘発が起こったことを示すさらなる報告により、その他のメディエータ又は細胞が、免疫応答を抑制する可能性があることが示唆されている。
【0165】
寛容性の研究では、Tリンパ球機能に対する寛容化抗原の効果、及び免疫賦活化の抑制におけるTリンパ球の役割に、主に焦点が当てられている。しかしながら、何れの抗原に対する免疫応答も、APCとTリンパ球との相互作用を必要とし、またTリンパ球はAPC機能に影響を及ぼしうる。従って、寛容化された宿主からのAPCによる、ダウンレギュレーションを受けた抗原の提示も、サプレッサーTリンパ球との相互作用の結果により間接的に、又はおそらくは寛容化抗原のAPCに対する直接的な効果の結果、のいずれかで寛容性の誘発に寄与する可能性がある。
【0166】
本明細書において使用する場合、「変性疾患」、「変性状態」又は「変性障害」とは、生物組織、より詳細には結合組織の崩壊によって特徴付けられる状態を言及すべく、交換可能に用いられる。結合組織とは、器官を支持し、それらの間の空間を埋め、又は筋肉を骨に繋げる(腱及び靭帯)、若しくは関節軟骨にあるような低摩擦荷重面をもたらす、などの機械的機能を果たすそれらの動物組織をいう。結合組織は、それらの比較的無血管性のマトリックスと低細胞密度であることによって特徴付けられる。最も豊富にある結合組織は、網状基質、筋肉、脂肪組織、軟骨及び骨である。
【0167】
本明細書において用いる場合、「組織」の用語は、共通の機能を遂行する、同様に特殊化された細胞を含むマトリックスをいう。本明細書で使用する場合、組織には、特定の組織で構成される臓器、及び組織を構成する細胞を個々に又はまとめて含めることが意図される。
【0168】
本明細書において用いる場合、「自己免疫疾患」とは、自己抗原のエピトープに対する、液性(例えば、抗体により媒介される)、細胞性(例えば、細胞毒性Tリンパ球により媒介される)、又は双方の型の組み合わせの免疫応答により特徴付けられる疾患をいう。罹患した個体の免疫系は、それらの特異的自己抗原を提示する細胞及び組織を標的とする炎症性カスケードを活性化する。攻撃された抗原、組織、細胞型又は臓器の破壊は、疾患のさらなる症状を招来する。本発明の好ましい実施形態において、疾患はリウマチ様関節炎、骨関節炎、椎間板変性及び骨粗鬆症からなる群より選択される。
【0169】
自己抗原(self−antigens又はauto−antigens)の用語は、個体の生理機構に内在的な、その個体のシステムの細胞性成分(例えば、T細胞若しくはB細胞受容体)又は液性成分(抗体)のいずれかによって認識される抗原を言及するよう交換可能に使用される。
【0170】
1.実験プロトコル
ウシ、ヒツジ、シカ若しくはブタの気管支軟骨又は鼻軟骨、ニワトリ胸骨の軟骨、又はサメ骨格の軟骨又はシカ枝角の軟骨から、機械的に又は以前に報告された(米国特許第5,399,347号、1995年3月、米国特許第5,364,845号、1996年12月、米国特許第6,025,327号、2000年2月)ように、付着している軟組織を除いた。これら除去後の硝子質の軟骨を水ですすぎ、1mm又は3mmのサイズに細切し、凍結乾燥して−20℃で保存した。ウシ気管支コンドロイチン硫酸A(ChSA)は、シグマ社、米国から購入、又はBioiberica、バルセロナ、スペインより、供与品(バッチ1/0015、バッチ05/2001、バッチ18/11/99)として得られた。その他の化学薬品はすべて分析用等級であり、地元の供給業者から購入した。
【0171】
グリコサミノグリカンペプチド(GAG−ペプチド)複合体及びポリペプチドの軟骨粉からの放出
軟骨粉からのGAG−ペプチド及びポリペプチドの放出の動態の研究を、異なる緩衝液(例えば、酢酸ナトリウム又はカルシウム又は希酢酸)を用いて実施して本明細書中で「ペプタカン」と称する様々な産物を得て、種々の条件下に行った。これらの実験の目的は、自己溶解及び水相への産物の放出の速度に対する(i)小片サイズ:3mm、5mm、(ii)異なるpH、例えばpH範囲:3.5〜7.0、(iii)異なる温度:4℃、25℃及び37℃、並びに(iv)動物種及び組織局在の効果を判定することにある。すべての実験は攪拌下に実施し、硫酸化GAG及びポリペプチドの放出を24時間にわたってモニターした。最初に行った研究において、第一の観察では、pHが4.0〜7.0の範囲内、特に4.5で、好ましくは37℃に維持した水性緩衝液中で24時間まで軟骨の小片を自己溶解に供することで、具体的には総硫酸化グリコサミノグリカン(S−GAG)の80%より多くが溶液中に放出された。研究により、放出の速度が軟骨の小片サイズに依存し、より小さな調製物がより速やかな放出を行なうことも示された。しかしながら、24時間までに得られた収率は同じであった。pH及び温度は、放出の速度の重要な決定因子であることがわかり、放出プロセスが固体組織内に存在する内在性酵素によって媒介されることを示唆していた。この提起された機構は、特異的酵素インヒビターの非存在下及び存在下に自己溶解実験を行うことによって確認された。N−エチルマレイミドの添加で、GAG−ペプチド及びポリペプチドの水性媒体への放出の最も大幅な阻害が起こることが見出されたので、カテプシンなどのシステインクラスのプロテイナーゼ類が、自己溶解プロセスへの、主要であるが排他的ではない寄与物質であったと考える。
【0172】
濾過によって軟骨粉から水相を分離して、濾液を遠心分離して微小片を除去し、その後所望のカチオンを含有するアルカリ溶液の添加によってpH7.0に中和した。化学的分析後のこれらのペプタカン溶液を、凍結乾燥して、又は直接、薬理試験に使用した。凍結乾燥したペプタカンは、下記のように透析及び分画した調製物を調製するためのストック材料として使用した。
【0173】
あるいは、ペプタカンは、軟骨消化物より得られた水性溶液から、過剰量のアセトン、エタノール又はメタノールを用いた(通常は水性抽出物の3〜5倍の体積を添加することによる)沈殿によって単離することができよう。こうして得られた沈殿物は、無水エタノールで洗浄して、減圧下に乾燥し、次いで真空デシケーター中に保存されよう。
【0174】
本発明の方法は、基本的に非破壊的であり、組織のII型コラーゲンマトリックス及び細胞を完全なままにし、且つ自己溶解媒体中にDNAが含まれることはない。自己溶解プロセスの効率は、動物種及びその軟骨の由来する解剖学的位置や、使用した緩衝液の性質によっても影響を受けた。
【0175】
本明細書に記載のさらなる実験について、ウシ気管支軟骨を酢酸カルシウムバッファーを用いた自己溶解に供した後に、結果を得た。便宜上、このプロセスによって得られた産物を本明細書中ではカルシウムペプタカン(CaP)と称する。
【0176】
ペプタカン製剤中のポリペプチドからのグリコサミノグリカンペプチド(GAG−ペプチド)のイオン交換固相媒体による分離(図2に示す模式図参照)
トリス−HClでpH7.2に緩衝化した0.1M塩化カルシウム(アプリケーションバッファー)に、凍結乾燥されたペプタカンを溶解して、4.0mg/mlの試料濃度とした。これらの溶液に、予め膨潤させたDEAE−セファロース−6Bを添加し、イオン交換体の最終濃度を100mg/mLとした。この混合物を、栓をした5mLの遠心管中で16時間穏やかに撹拌しながら室温に維持した。遠心管はその後、1000rpmで5分間遠心分離し、遠心管を傾けて上清を移した。残りのペレットに1mLのアプリケーションバッファーを加えて、遠心管を穏やかに振盪し、再度遠心分離して、アプリケーションバッファー洗浄液を元の上清に添加した。上清及び洗浄液は、ペプタカン製剤中の蛋白質及びポリペプチドを含有している。
【0177】
ペプタカン蛋白質及びポリペプチドの分画
イオン交換プロセスからの上清及び洗浄液を、1000Daカットオフの限外濾過膜(例えば、YC10)又は類似のカットオフの横流限外濾過(TFF)カートリッジ(Millipore Australia Pty Ltd、シドニー、オーストラリア)を用いたダイアフィルトレーションに供して無機イオンを除去した。ダイアフィルトレーションされ脱塩されたポリペプチド溶液を、次いで凍結乾燥し、−20℃で保存した。これらのポリペプチドの水溶液を、異なる分子量カットオフのTFF膜を用いたさらなる分画に供することにより、所定の分子サイズのポリペプチドが得られた。例えば、30,000の排除サイズを有するPLTC再生セルロース膜(Millipore Australia Pty Ltd、シドニー、オーストラリア)の使用で、30,000Daより大きな分子量の保持物中に、ポリペプチドの混合物が得られた。これらの蛋白質及びポリペプチドは凍結乾燥し、その後の実験用にINR−307のコード番号を付けた。第一のTFFからの透析液は、30,000Da未満で1,000Daを超える分子量のポリペプチドを含有していた。この画分には、その後の実験用にコード番号INR−126を付けた。加えて、30,000DaのTFF工程からの透析液も、10,000Daの排除サイズで、分子量が10,000Daを超えるポリペプチドを含有する保持物を提供する、ポリエーテルスルホンらせん形カートリッジ(Millipore Australia Pty Ltd、シドニー、オーストラリア)を用いたTFFに供した。これらのポリペプチドには、その後の実験用にコード番号INR−195を付けた。これらのペプチドの前述の分子範囲への分離の効率は、図3及び4に示すものなどの既知分子量の蛋白質を標準物質として用い、SDS−PAGEによって確認した。
【0178】
ポリペプチド溶液のさらなる分画は、確立された方法を用い、例えば、ゲル濾過、限外濾過、SDS−PAGE電気泳動、二次元ゲル電気泳動、及び逆相HPLC(例えば、Eyre Dら、“Collagen type IX: evidence for covalent linkages to type II collagen in cartilage(コラーゲンIX型:軟骨におけるII型コラーゲンとの共有結合の証拠)”FEB 220:337−341、1987を参照されたい)などの技術のいずれか又はそれらの組み合わせを使用して成し遂げることができる。
【0179】
INR−195の調製の詳細
この手順において、DEAE−セファロースを用いたカルシウムペプタカンのイオン交換分離で得られたポリペプチド成分を含有する洗浄液及び上清を、10kD PLAC(PLシリーズセルロース又はポリスルホン0.93平方メートルのらせん状カートリッジ(Millipore Australia Pty Ltd)に連結したリザーバにペリスタポンプを介して移した。ペプチド含有溶液は次いで、リザーバに精製水を添加することにより、イオン交換工程に使用した小さい無機イオンや、膜のカットオフより小さい分子量のペプチドを透析除去する、接線流濾過に6時間供する。保持物は次いで、同じ装置でダイアフィルトレーションにより濃縮し、集めて、凍結乾燥により水を除去した。かかる手順において、この方法により得られる産物にINR−195の番号を付け、及び本明細書に記載のラットCIA実験に使用した。
【0180】
2. 生物活性
調製物中のコラーゲン又はコラーゲンペプチド含有量の、ヒドロキシプロリンに対するアッセイによる定量
イオン交換によって分離されたポリペプチドのコラーゲン含有量を、この蛋白質に特有のアミノ酸ヒドロキシプロリンの濃度を測定することによって概算した。各凍結乾燥試料をHOに直接溶解(10mg/ml)させ、その後5N HClで、110℃にて24時間加水分解した。加水分解された試料溶液は、希釈及び分析の前に中和してpH7とした。これらの溶液中のヒドロキシプロリン濃度をStegman及びStalderの方法(Stegman H及びStalder K. Determination of Hydroxyproline(ヒドロキシプロリンの定量). Clin. Chim. Acta 18:267−273、1967)で、L−ヒドロキシプロリンの標準を使用し、クロラミンT及びp−ジメチルジアミノベンズアルデヒドを添加して発色団を現像した後に562nmで吸光度を測定することにより定量した。ヒドロキシプロリン濃度に7.4を乗じて、コラーゲン含有量の概算値を求めた。
【0181】
ビシンコニン酸(BCA)アッセイによる製剤内容物の蛋白質含有量の定量
ポリペプチド試料の総蛋白質含有量は、BCAアッセイ(Smith PK,Krohn RI,Hermanson GT,Mallia AK,Gartner FH,Provenzano MD,Fujimoto EK,Goeke NM,Olson BJ及びKlenk DC. Anal. Biochem. 150、76−85、1985)を用いて定量した。凍結乾燥されたポリペプチド試料を直接HOに溶解させて2.0mg/ml溶液を準備し、各試料溶液20μlを96穴プレートのウェルに添加した。アッセイの直前に、試薬1(0.4% NaOH;1.7% NaCO;0.95% NaHCO;1.0% ビシンコニン酸;0.16% Na−酒石酸)の50部を試薬2(4% CuSO.5HO)と混合した。この作業試薬200μlを試料溶液に加えた。37℃で60分間インキュベートした後、吸光度A562を、Thermomaxミクロプレートリーダーを用いて読み取った。0〜10μg/wellのウシ血清アルブミン(BSA)又は高度精製ゼラチン(ギブコ)を使用して、標準曲線を構築した。
【0182】
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を用いたイオン交換により分離されたポリペプチドの分析
凍結乾燥されたポリペプチド試料をHOに溶解させ、その後、2x試料ローディングバッファー(0.07M TrisHCl、1.5%SDS、20%グリセロール、0.2M DTT及び0.1%BPB)と1:1で混合し、最終濃度を4.0〜20mg/mlとした。試料を水浴中で5分間沸騰させ、前記試料の20μlを、予め成型しておいた8〜16%のプレキャスト トリス−グリシンゲル(Norvex)に付した。シーブルーで予め染色された低分子量範囲の蛋白質マーカー(Norvex)を、ゲルの左側のウェルに付して、電気泳動を125Vで2時間実施した。ゲルをクーマシーブルーR250溶液(40%エタノール、10%酢酸及び0.2%クーマシーR250)にて30分間染色し、そして10%エタノール及び7.5%酢酸を含有する溶液で16時間脱色した。ゲルは、Bio−Radゲルエアドライヤーにて乾燥させた。
【0183】
イオン交換法によってGAG−ペプチドから分離したポリペプチドのSDS−PAGEは、数多くのバンドの存在を示し、そのうち最も大量にあるものは、36キロダルトン以下の分子量を有していた(図2)。
【0184】
二次元勾配SDS−PAGEを用いた、イオン交換によって分離されたポリペプチドの分析
凍結乾燥されたポリペプチド試料(6.5mg)をHO溶解させて、超音波処理した。試料は次いで20,000gにて10分間遠心分離し、その後、3〜10のpHにわたる11cmの勾配条片を使用し、等電点電気泳動(IEF)のためのゲル内再水和法でロードした。一次元目のフォーカシングは、35,000Vhで行った。二次元目では分離勾配8〜18%Tの基準形式の分離ポリアクリルアミドスラブゲルを使用した。この二次元目の電気泳動は、5mA/ゲルで1時間、及び15mA/ゲルで4時間流した。ゲルは、SYPRO Ruby蛍光染料を用いて染色し、その後走査してデジタル画像を得た。
【0185】
イオン交換法によってGAG−ペプチドから分離されたポリペプチドの二次元電気泳動により、少なくとも21ポリペプチドの存在が明らかになった(図4)。
【0186】
トリプシン消化及びマトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)質量分析
試料の二次元勾配SDS−PAGEの後、それらを37℃にて16時間、ゲル内でのトリプシン消化に供した。得られたペプチドを10%(容量/容量)アセトニトリル、1%(容量/容量)TFA溶液でゲルから抽出した。試料は次いで、ZipTipを用いて清浄化及び濃縮した。1μLのアリコートを各々、1μLのマトリックス(8mg/mLのa−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸を含有する70%容量/容量AcN、1%容量/容量TFA)と共に試料プレートにスポットして、風乾させた。その後、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)質量分析を、Micromass Maldi Time of Flight Mass Spectrometerを用いて実施した。窒素レーザ(337nm)を使用して、試料を照射した。750〜3500Daの質量範囲にあるリフレクトロンモードでスペクトルを得た。近点較正を適用した。
【0187】
この分析から得た、ペプチドのモノイソトピックピークのペプチド質量を、ProteinLynx on MassLynxを用いてウシに対して、及びPeptIdentExpasyを用いて哺乳動物データベースに対して検索した。
【0188】
ラットコラーゲン誘発関節炎(CIA)
図11に要約した二つのプロトコルを使用して、本発明で単離されたポリペプチドの抗関節炎活性を評価した。寛容原性プロトコルでは、水に溶解させたポリペプチドを、雌性ウィスターラット(160〜180グラム)に7日間、経口的に毎日与え、その後、250μgのウシ気管支II型コラーゲンを、6回に分けた尾部への注射として与える接種によって、関節炎を誘発させることが必要であった。治療/予防プロトコルにおいて、関節炎を誘発した日と同日とそれ以後毎日、そのラットにポリペプチドを経口投与した。
【0189】
以下の関節炎の徴候を、第11日目からそれ以降評価したが、記録は第15及び18日に各実験群につき実施した(図12及び13を参照のこと)。後足腫脹、前足腫脹(関節炎でない対照群と比較して、mm単位の変化として測定)並びに全体の炎症及びその他の疾患の徴候、例えば起毛、可動性の低下、毛繕いの低減等に基づいて求めたラット全体の関節炎スコア(0〜4+で評点)を、以前報告されたとおりに求めた(Lu Sら、Different therapeutic and bystander effects by intranasal administration of homologous type II and type IX collagens on the collagen− induced arthritis and Pristane−induced arthritis in rats(ラットでのコラーゲン誘発関節炎及びプリスタン誘発関節炎に対する相同性II型及びIX型コラーゲンの鼻腔内投与による、異なる治療及びバイスタンダー効果)、Clin Immunol. 90:119−127、1999)。
【0190】
ラットの関節の染色組織切片の調製
実験動物を屠殺した後、後及び前足の関節を外科的に取り出し、直ちに中性に緩衝化されたホルムアルデヒド中に入れて、H及びE及びトルイジンブルー染色組織切片を調製するための処理を、以前に報告されたように行った(Smith MM、Numata Y及びGhosh P、Effects of calcium pentosan polysulfate on joint inflammation and pouch fluid levels of leukocytes, nitric oxide and interleukin−6 in a rat model of arthritis(関節炎のラットモデルにおける、関節炎症並びに白血球、一酸化窒素及びインターロイキン−6の嚢液レベルに対するカルシウムペントサンポリ硫酸の効果)Current Therapeutic Research、60:561−576、1999)。
【0191】
3.議論
ポリペプチドのうち17の、陽性として同定されたものにつき、配列カバレージのパーセンテージ、MSスペクトルでの有意なピークに質量がどの程度一致しているか、切断ミスの数(切断ミスがあれば配列におけるそれらの位置は臨界的である)及び同定された蛋白質のMW及びpIがどの程度一致しているかを確かめた。これらの配列及び既知蛋白質とのそれらの%一致度を図5に示す。
【0192】
イオン交換法によってCaPから単離されたものに存在する最も大量のポリペプチド断片は、IX型コラーゲンα1鎖のNC4ドメイン[分子量:27,139Da、(Vasios G、Nishimura I、Konomi H、van der Rest M、Cartilage Type IX collagen−proteoglycan contains a large amino−terminal globular domain encoded by multiple exons(軟骨IX型コラーゲン−プロテオグリカンは複数エキソンによってコードされる大きなアミノ末端球形のドメインを含む).J Biol Chem 263:2324−2329、1988)]に由来するものであった。これは、図5にポリペプチド10、ポリペプチド13、ポリペプチド14、ポリペプチド15、ポリペプチド16、ポリペプチド17、ポリペプチド18、ポリペプチド20及びポリペプチド21について示す、トリプシンで生産された産物から得た配列を組み合わせ、そしてそれらを図8に示すα1(IX)鎖のウシNC4ドメインの一部に重ね合わせることによって明示される。この結論は、観察されたペプチド配列を、公開され(Vasios G、Nishimura I、Konomi H、van der Rest M、軟骨IX型コラーゲン−プロテオグリカンは複数エキソンによってコードされる大きなアミノ末端球形のドメインを含む。J Biol Chem 263:2324−2329、1988)、図9に示すニワトリ胸骨由来のα1(IX)鎖のNC4ドメインと比較することによっても支持される。さらに、図6に示す、ポリペプチド13、ポリペプチド14、ポリペプチド15、ポリペプチド16、ポリペプチド17、及びポリペプチド18の推定された分子量及び等電点は、約27,00Daの分子量及び9.7の等電点を有するα1(IX)鎖のNC4ドメインとしてのそれらの起源と矛盾しないものである。
【0193】
IX型コラーゲンα1鎖にある4つの非コラーゲン性ドメイン(NC1、2、3及び4、図1)は、幅広いプロテイナーゼによる蛋白質分解的切断に最も感受性のある領域であることが知られているが、NC4ドメインは、COL3ドメイン及びその他の2アルファ鎖と共にII型コラーゲン原線維の表面に位置する残りのアルファ鎖を超えた物理的伸長のために、これらの領域で最高である。以前に得られた結果から、プロテイナーゼの内在性カテプシンファミリーは、本明細書に記載の条件下での軟骨からのマトリックスペプチド断片の放出に大きく関与していたことも示唆されている。重要なのは、IX型コラーゲンアルファ1鎖のNC4ドメインが、カテプシンに対する好ましい切断部位の一部を構成するアルギニン残基に富むことである(Maciewicz RA 、Etherington DJ. A comparison of four cathepsins (B, L ,N and S)with collagenolytic activity from rabbit spleen(ウサギ脾臓由来コラーゲン分解活性についての4つのカテプシン(B,L,N及びS)の比較)、Biochem. J、256:433−4440、1988)。
【0194】
イオン交換上清からのポリペプチドにおけるウシ軟骨オリゴマーマトリックス蛋白質(COMP)(ペプチド2及び3)の断片(ポリペプチド2)の知見も、IX型コラーゲンアルファ1鎖のNC4ドメインの蛋白質分解的切断を支持するものである。COMPはC末端ドメインを通じてIX型コラーゲンアルファ1鎖の非コラーゲン性ドメイン(NC1〜4)と相互作用することが知られており、そしてこれら2つの蛋白質が軟骨の細胞外マトリックスの構築に強く関わり重要な構造上の役割を果たしているので、NC4ドメインはIX型コラーゲンアルファ−1鎖の残部から切り出された場合に酵素によるプロセッシングを受ける可能性がある。既に記載したとおり、IX型コラーゲンはII型コラーゲン原線維の表面に位置しており、ここで原線維とそれ自体との間の架橋単位として機能する。従って、単離されたポリペプチドで、II型コラーゲン分子に起源を有する何らかのペプチドを含むものは全くないとの知見は意外なものであり、自己溶解プロセスはIX型コラーゲン分子のNC4ドメインに特異的であることを示唆していた。
【0195】
ウシ血清アルブミンの断片(分子量:69294)(ポリペプチド7、ポリペプチド8、ポリペプチド9、ポリペプチド11、ポリペプチド12)も、CaPのポリペプチド画分に認められた(図5)。この蛋白質の断片の存在は、気管支軟骨に隣接する組織の血液にて利用可能な大きなリザーバに鑑みれば予想外ではなかった。
【0196】
好中球サイトゾル因子1(分子量:45346)(ポリペプチド1及びポリペプチド9)、匂い物質結合蛋白質(分子量:18503)(ポリペプチド19)が軟骨に存在することはこれまでに報告されておらず、あるとしてもそれらの機能は不明である。匂い物質結合蛋白質は、しかしながら、気管支と物理的に近接しているウシ鼻粘膜内皮で同定されている。この蛋白質が気管支軟骨に対して隔絶されている可能性があり、実際に、軟骨細胞の生合成産物ではない。ウシ匂い物質蛋白質は軟骨由来抗原ではないので、本願における抗関節炎活性を同定するために使用されるコラーゲン誘発関節炎モデルで有効であるとは期待されない。
【0197】
この点で、30,000Daを超える蛋白質カットオフのTFF膜を用いて保持されたポリペプチドがラットCIAモデルにおいて不活性であること(データは示さず)は、特筆すべきであった。他方、30,000Da未満の分子量を有する、透析液中に得られたそれらポリペプチド(INR−126及びINR−195)は双方とも、寛容性物質及び抗関節炎予防物質(図12〜15)として活性であった。さらに、INR−126(MW範囲:1000Da〜30,000Da)の抗関節炎活性は、CIAモデルにおいてINR−195(MW範囲:10,000Da〜30,000Da)よりも寛容性源物質としてわずかだけ活性が強いようなので、抗関節炎の活性の大部分は、ペプチド11、12、13、14、15、16、17、18、20、21(図6)に対応する、10,000〜30,000DaのMW範囲内のポリペプチドに存在していると推論されうる。
【0198】
α1(IX)鎖のNC4ドメインまたはそれに由来する断片が、抗関節炎活性を呈することはこれまでに報告されていない
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】ヘテロポリマーを構成する3つのα鎖並びにそれらのコラーゲン性(COL)及び非コラーゲン性(NC)ドメインを示す、ヒトIX型コラーゲン分子を示す模式図である。COL領域は三重らせん状であり、NCドメインは非らせん状である。NC3及びNC1領域におけるシステイン残基により、ジスルフィド結合の相互作用が許容される。NC4は、α1(IX鎖にのみ存在し、全体として正に帯電しており、これにより細胞外マトリックス中のポリアニオン系グリコサミノグリカンとの相互作用が可能になる。単一のコンドロイチン硫酸鎖が、未変性分子内のα2(IX)鎖のNC3領域にセリン残基を介して付着している。
【図2】イオン交換媒体を用いて、グリコサミノグリカンペプチド及びポリペプチド混合物(例えば、カルシウムペプタカン(CaP))を精製済GAG−ペプチド及びポリペプチドに分離及び再分画するために使用される方法を示す模式図である。
【図3】図2に示すイオン交換スキームを使用してグリコサミノグリカン−ペプチド及びポリペプチド混合物(CaP)から単離された蛋白質/ポリペプチドの一次元SDS−PAGE電気泳動の写真を示す図である。
【図4】図2に示すイオン交換スキームを使用してグリコサミノグリカン−ペプチド及びポリペプチド混合物(CaP)から単離された蛋白質/ポリペプチドの二次元SDS−PAGE電気泳動の写真を示す図である。この手法によって分離されたスポットの大半は単離され、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)を用いたトリプシン消化配列分析に付された。
【図5】トリプシン消化後の、二次元SDS−PAGE電気泳動によって分離されたポリペプチドの同定と、公表されたデータベースで入手可能な、対応するトリプシン消化断片との比較にて判定した、切断された断片のMALDI−MSを示す図である。
【図6】図4に示すイオン交換処理及び二次元電気泳動後のカルシウムペプタカンに認められる蛋白質断片ポリペプチドの物理的特性(MW及びpI)を示す表である。
【図7】(i)ウシの軟骨オリゴマーマトリックス蛋白質(断片)のアミノ酸配列を示す図、及び(ii)ExPASy TrEMBLデータベースから得られたウシのオデラント(oderant)結合蛋白質に対するアミノ酸配列を示す図であり、ゲルスポット2及び19の、ペプチド質量フィンガープリント法から得られたペプチド配列をそれぞれ、一致する箇所で重ね合わせて太字としたものである。
【図8】ExPASy TrEMBLデータベースから得られたIX型コラーゲンアルファ1鎖配列のウシNC4ドメインの部分配列のマップを示す図であり、ゲルスポット13(図4)のペプチド質量フィンガープリント法から得られたペプチド配列を、一致する箇所で重ね合わせて太字としたものである。スポット13に対する配列の一致度は62%であったが、図4から同定されたスポットのすべてが、ウシα1(IX)−NC4ドメインに存在する173〜181のペプチドを含んだコラーゲンα1(IX)−鎖と関連することが見出された。N末端に最も近いペプチドは、21〜39のペプチドである。10及び15を除き、IX型コラーゲン由来として同定されたすべてのスポットが、このペプチドを有していた。187位のC末端に一致する最も近いペプチド配列は、MALDI−MSによって同定されたα1(IX)−NC4のスポットのすべてに存在していたペプチド173〜181であった。
【図9】Vasiosら(J Biological Chem. 263, 2324−2329, 1998)により報告された、17日齡のニワトリ胚胸骨由来のIX型コラーゲンアルファ1鎖のNC4ドメインのアミノ酸配列を示す図であり、二次元電気泳動によって分離されたポリペプチドのMALDI−MS分析より同定されたアミノ酸配列を重ね合わせ、配列がどこで一致するかを太字と下線で示している。
【図10】Swiss−Prot&TrEMBLデータベース(2004年6月7日公開)より得られたIX型コラーゲンアルファ1鎖のヒトNC4ドメイン(配列24〜268)を示す図であり、二次元電気泳動によって分離されたポリペプチドのMALDI−MS分析より同定されたアミノ酸配列を重ね合わせ、配列がどこで一致するかを太字と下線で示している。配列1〜23は、IX型コラーゲンアルファ1鎖のヒトNC4ドメインに対するシグナル配列である。
【図11】ラットのコラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルにおける、ポリペプチドINR−195及びINR−126による抗関節炎の効果を評価するために使用した寛容原性及び予防/治療プロトコルの要約を示す図である。
【図12】ラットCIA−予防/治療プロトコルを用いて、ポリペプチド画分INR−126、INR−195、及び確立された抗リウマチ様関節炎薬である金チオリンゴ酸塩(ATM)の抗関節炎効果について得られた結果を示す図である。この動物モデルでは、INR−126及びINR−195は、20mg/kgで同様の抗関節炎活性を示すようであり、そして双方ともATMより優れていることに注意されたい。
【図13】ラットCIA−寛容原性プロトコルを用いて、ポリペプチド画分INR−126、INR−195の抗関節炎効果について得られた結果を示す図である。小さいMW画分のINR−126は、より高いMW画分のINR−195よりももっと長く続く寛容原性活性を呈するようであることに注意されたい。
【図14】正常及び未処置ラットコラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルからの後足関節の、18日目に標準法を用いて調製及び染色した、染色組織切片の代表的な顕微鏡写真を示す図であり、腱、軟骨及び骨の炎症性細胞浸潤及び破壊の程度を示すものである。
【図15】寛容原性又は予防/治療プロトコルを使用し、ポリペプチドINR−126(20mg/kg)及びINR195(20mg/kg)で経口処置した動物の、正常及びラットコラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルからの後足関節の、18日目に標準法を用いて調製及び染色した染色組織切片の代表的な顕微鏡写真を示す図である。図14に示す未処置群と比較して、腱、軟骨及び骨の炎症性細胞浸潤及び破壊が軽減されていることに注意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における関節炎又はその他の変性疾患を処置又は防止するための医薬組成物であって、該組成物は、コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメイン又は、抗関節炎若しくは抗炎症性活性を有する生化学的活性断片を含むポリペプチドを、薬剤的に容認できる担体と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項2】
個体において、軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する寛容性を誘発するための医薬組成物であって、該組成物はコラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメイン又は、抗関節炎若しくは抗炎症性活性を有する生化学的活性断片を含むポリペプチドを薬剤的に容認できる担体と組み合わせて含む組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、30,000Da未満の分子量を有する請求項1又は請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、250アミノ酸未満のアミノ酸長を有する請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメインが、
(i)配列番号1、配列番号14、配列番号16、若しくは配列番号18で示されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号1、配列番号14、配列番号16、若しくは配列番号18のいずれかと少なくとも70%一致するアミノ酸配列、又は
(iii)(i)若しくは(ii)の生化学的活性断片
を含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメインが、配列番号1、配列番号14、配列番号16、若しくは配列番号18のいずれか1つと、少なくとも90%一致するアミノ酸配列を含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメインが、
(i)配列番号1の残基21〜182;配列番号1の残基60〜181;配列番号1の残基72〜181、配列番号1の残基98〜182、若しくは配列番号1の残基123〜182;又は
(ii)配列番号14の残基24〜268、配列番号14の残基29〜268、配列番号14の残基29〜215、配列番号14の残基29〜209、配列番号14の残基29〜208、配列番号14の残基29〜96、若しくは配列番号14の残基108〜208で示されるアミノ酸配列
を含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメインが、配列番号2〜11の少なくとも1つを含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の医薬組成物の有効量を個体に投与することを含む、個体において軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する寛容性を誘発する方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物の医薬的に有効な量を投与することを含む、個体における筋骨格の変性状態を防止するための方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物を投与することを含む、軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する自己免疫応答を防止するための方法。
【請求項12】
軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する寛容性を誘発するための医薬の製造における、コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメイン又は、抗関節炎若しくは抗炎症性活性を有する生化学的活性断片を含むポリペプチドの、薬剤的に容認できる担体と組み合わせた使用。
【請求項13】
前記ポリペプチドが30,000Da未満の分子量を有する請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、250アミノ酸未満のアミノ酸長を有する請求項12又は13記載の使用。
【請求項15】
前記個体がナイーブ個体である請求項12記載の使用。
【請求項16】
個体における筋骨格の変性状態を防止するための医薬の製造における、コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメイン又は、抗関節炎若しくは抗炎症性活性を有する生化学的活性断片を含むポリペプチドの、薬剤的に容認できる担体と組み合わせた使用。
【請求項17】
前記ポリペプチドが30,000Da未満の分子量を有する請求項16記載の使用。
【請求項18】
前記ポリペプチドが、250アミノ酸未満のアミノ酸長を有する請求項16又は17記載の使用。
【請求項19】
抗関節炎又は抗炎症性活性を有するポリペプチドを回収するための方法であって、GAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を結合組織から自己溶解によって単離し、前記ポリペプチドから前記GAG−ペプチドを分離し、そして前記ポリペプチドを回収することを含む方法。
【請求項20】
抗関節炎又は抗炎症性活性を有するポリペプチドを調製するための方法であって、
(i)約pH2.5から約pH8.5の間に緩衝化されたpH範囲を提供する自己溶解媒体中で、GAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを放出するのに充分な時間及び条件下で結合組織をインキュベートし、
(ii)前記GAG−ペプチド及びポリペプチドを含む混合物を前記自己溶解媒体から回収し;
(iii)前記GAG−ペプチドから前記ポリペプチドを分離し;及び
(iv)30,000Da未満の分子量を有する前記ポリペプチドを回収することを含む方法。
【請求項21】
抗関節炎又は抗炎症性活性を有する結合組織由来ポリペプチドであって、
(i)約pH2.5から約pH8.5の間に緩衝化されたpH範囲を提供する自己溶解媒体中で、GAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを放出するのに充分な時間及び条件下で結合組織をインキュベートし、
(ii)前記GAG−ペプチド及びポリペプチドを含む混合物を前記自己溶解媒体から回収し;
(iii)前記GAG−ペプチドから前記ポリペプチドを分離し;及び
(iv)30,000Da未満の分子量を有する前記ポリペプチドを回収することによって得ることができる結合組織由来ポリペプチド。
【請求項22】
コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメイン又は生化学的活性断片を含む請求項21記載の結合組織由来ポリペプチド。
【請求項23】
抗関節炎又は抗炎症性を有する1以上の結合組織由来ポリペプチドを含む医薬組成物であって、該ポリペプチドは、結合組織から自己溶解によってGAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を単離し、前記ポリペプチドから前記GAG−ペプチドを分離し、及び前記ポリペプチドを回収することを含む方法によって得ることができるものである医薬組成物。
【請求項24】
個体における筋骨格の変性状態を防止するための方法であって、請求項23記載の医薬組成物の有効量を個体に投与することを含む方法。
【請求項25】
個体における、軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する自己免疫応答を防止するための方法であって、請求項23記載の医薬組成物の有効量を前記個体に投与することを含む方法。
【請求項26】
個体における軟骨形成を誘発する方法であって、請求項23記載の結合組織由来ポリペプチドの有効量を前記個体に投与することを含む方法。
【請求項27】
被験者における関節炎又はその他の筋骨格の疾患の処置又は防止のための医薬の調製での、抗関節炎又は抗炎症性を有する1以上の結合組織由来ポリペプチドの使用であって、該ポリペプチドは、結合組織から自己溶解によってGAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を単離し、前記ポリペプチドから前記GAG−ペプチドを分離し、及び前記ポリペプチドを回収することを含む方法によって得ることができるものである使用。
【請求項28】
軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対して個体を寛容化させるための医薬の調製での、抗関節炎又は抗炎症性を有する1以上の結合組織由来ポリペプチドの使用であって、該ポリペプチドは、結合組織から自己溶解によってGAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を単離し、前記ポリペプチドから前記GAG−ペプチドを分離し、及び30,000Da未満の分子量を有する前記ポリペプチドを回収することを含む方法によって得ることができるものである使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における関節炎又はその他の変性疾患を処置又は防止するための医薬組成物であって、該組成物は、コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメイン又はその生化学的活性断片を本質的に含む抗関節炎性若しくは抗炎症性のポリペプチドを、薬剤的に容認できる担体と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項2】
個体において、軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する寛容性を誘発するための医薬組成物であって、該組成物はコラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメイン又はその生化学的活性断片を本質的に含む抗関節炎性若しくは抗炎症性のポリペプチドを薬剤的に容認できる担体と組み合わせて含む組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、10,000Da以上30,000Da未満の分子量を有する請求項1又は請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、250アミノ酸未満のアミノ酸長を有する請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメインが、
(i)配列番号1、配列番号14、配列番号16、若しくは配列番号18で示されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号1、配列番号14、配列番号16、若しくは配列番号18のいずれかと少なくとも70%一致するアミノ酸配列、又は
(iii)(i)若しくは(ii)の生化学的活性断片
を含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメインが、配列番号1、配列番号14、配列番号16、若しくは配列番号18のいずれか1つと、少なくとも90%一致するアミノ酸配列を含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメインが、
(i)配列番号1の残基21〜182;配列番号1の残基60〜181;配列番号1の残基72〜181、配列番号1の残基98〜182、若しくは配列番号1の残基123〜182;又は
(ii)配列番号14の残基Ala1−Arg245、配列番号14の残基Pro6−Arg245、配列番号14の残基Pro6−Asp192、配列番号14の残基Pro6−Arg186、配列番号14の残基Pro6−Pro185、配列番号14の残基Pro6−Arg73、若しくは配列番号14の残基Pro85−Pro185で示されるアミノ酸配列
を含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメインが、配列番号2〜11の少なくとも1つを含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の医薬組成物の有効量を個体に投与することを含む、個体において軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する寛容性を誘発する方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物の医薬的に有効な量を投与することを含む、個体における筋骨格の変性状態を防止するための方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物を投与することを含む、軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する自己免疫応答を防止するための方法。
【請求項12】
軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する寛容性を誘発するための医薬の製造における、コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメイン又は、抗関節炎若しくは抗炎症性活性を有する生化学的活性断片を含むポリペプチドの、薬剤的に容認できる担体と組み合わせた使用。
【請求項13】
前記ポリペプチドが30,000Da未満の分子量を有する請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、250アミノ酸未満のアミノ酸長を有する請求項12又は13記載の使用。
【請求項15】
前記個体がナイーブ個体である請求項12記載の使用。
【請求項16】
個体における筋骨格の変性状態を防止するための医薬の製造における、コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメイン又は、抗関節炎若しくは抗炎症性活性を有する生化学的活性断片を含むポリペプチドの、薬剤的に容認できる担体と組み合わせた使用。
【請求項17】
前記ポリペプチドが10,000Da以上30,000Da未満の分子量を有する請求項16記載の使用。
【請求項18】
前記ポリペプチドが、250アミノ酸未満のアミノ酸長を有する請求項16又は17記載の使用。
【請求項19】
抗関節炎又は抗炎症性活性を有するポリペプチドを回収するための方法であって、GAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を結合組織から自己溶解によって単離し、前記ポリペプチドから前記GAG−ペプチドを分離し、そして前記ポリペプチドを回収することを含む方法。
【請求項20】
抗関節炎又は抗炎症性活性を有するポリペプチドを調製するための方法であって、
(i)約pH2.5から約pH8.5の間に緩衝化されたpH範囲を提供する自己溶解媒体中で、GAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを放出するのに充分な時間及び条件下で結合組織をインキュベートし、
(ii)前記GAG−ペプチド及びポリペプチドを含む混合物を前記自己溶解媒体から回収し;
(iii)前記GAG−ペプチドから前記ポリペプチドを分離し;及び
(iv)30,000Da未満の分子量を有する前記ポリペプチドを回収することを含む方法。
【請求項21】
抗関節炎又は抗炎症性活性を有する結合組織由来ポリペプチドであって、
(i)約pH2.5から約pH8.5の間に緩衝化されたpH範囲を提供する自己溶解媒体中で、GAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを放出するのに充分な時間及び条件下で結合組織をインキュベートし、
(ii)前記GAG−ペプチド及びポリペプチドを含む混合物を前記自己溶解媒体から回収し;
(iii)前記GAG−ペプチドから前記ポリペプチドを分離し;及び
(iv)30,000Da未満の分子量を有する前記ポリペプチドを回収することによって得ることができる結合組織由来ポリペプチド。
【請求項22】
コラーゲンIX型アルファ1鎖NC4ドメイン又は生化学的活性断片を含む請求項21記載の結合組織由来ポリペプチド。
【請求項23】
抗関節炎又は抗炎症性を有する1以上の結合組織由来ポリペプチドを含む医薬組成物であって、該ポリペプチドは、結合組織から自己溶解によってGAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を単離し、前記ポリペプチドから前記GAG−ペプチドを分離し、及び前記ポリペプチドを回収することを含む方法によって得ることができるものである医薬組成物。
【請求項24】
個体における筋骨格の変性状態を防止するための方法であって、請求項23記載の医薬組成物の有効量を個体に投与することを含む方法。
【請求項25】
個体における、軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対する自己免疫応答を防止するための方法であって、請求項23記載の医薬組成物の有効量を前記個体に投与することを含む方法。
【請求項26】
個体における軟骨形成を誘発する方法であって、請求項23記載の結合組織由来ポリペプチドの有効量を前記個体に投与することを含む方法。
【請求項27】
被験者における関節炎又はその他の筋骨格の疾患の処置又は防止のための医薬の調製での、抗関節炎又は抗炎症性を有する1以上の結合組織由来ポリペプチドの使用であって、該ポリペプチドは、結合組織から自己溶解によってGAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を単離し、前記ポリペプチドから前記GAG−ペプチドを分離し、及び前記ポリペプチドを回収することを含む方法によって得ることができるものである使用。
【請求項28】
軟骨の少なくとも1つの抗原性成分に対して個体を寛容化させるための医薬の調製での、抗関節炎又は抗炎症性を有する1以上の結合組織由来ポリペプチドの使用であって、該ポリペプチドは、結合組織から自己溶解によってGAG−ペプチド及び30,000Da未満の分子量を有するポリペプチドを含む混合物を単離し、前記ポリペプチドから前記GAG−ペプチドを分離し、及び30,000Da未満の分子量を有する前記ポリペプチドを回収することを含む方法によって得ることができるものである使用。


【図1】
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【図2】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図5J】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【図4】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2006−527701(P2006−527701A)
【公表日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515542(P2006−515542)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000788
【国際公開番号】WO2004/110475
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505461614)プロテオバイオアクティブス ピーティーワイ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】