説明

結合金具

【課題】衝撃や内部負圧が作用した場合における、がたつきや不所望な結合解除を防止する結合金具を提供することである。
【解決手段】一対の本体の夫々の嵌合突部8の先端面と相手側の本体の嵌合凹部7の奥壁面とは、鉤部9の係合面9aの係合中に相互接触し一対の本体の軸方向における相互接近を規制し、また上記本体が鉤部の相互係合方向に相対的に回動した場合、これら上記本体を軸方向における相互離間方向に付勢するよう傾斜したカム面30,31である。上記先端面のカム面は、嵌合突部において鉤部が形成されていない側面8a側の端から鉤部の突出端側の端に向かうにつれて嵌合突部の根元に向かうよう傾斜し、上記係合面は、上記カム面と同様に傾斜し、周方向に対する上記カム面の傾斜角度bは相互に同じであり上記周方向に対する上記係合面の傾斜角度aより大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防ホース等のホースを相互に接続、またはホースとポンプその他の機器の配管要素とを接続するための結合金具に関する。さらに特定すれば、本発明は雌雄の区別のない一対の同一の構造の結合金具本体から構成されたホースの結合金具であって、衝撃が作用した場合や、負圧が作用した場合のがたつきや遊び、および不所望な結合解除を防止した結合金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホースたとえば消防ホースの結合金具には差し込み形のものがあり、このような差し込み形の結合金具は一対の結合金具本体が互いに軸方向に嵌合して係止結合される構造のものである。このような差し込み形の結合金具は、たとえば日本工業規格 JIS B 9911 に規定されているものあり、このような結合金具は「町野式金具」と称されて汎用されている。
【0003】
このような差し込み形の結合金具は、簡単な装置で結合および結合解除ができ、操作の迅速性と確実性を要求される消防ホースの結合金具としては好ましい特性を有している。
【0004】
しかし、従来の差し込み形の結合金具は、結合される一対の結合金具本体に雌雄の区別があり、一方が雄金具、他方が雌金具として構成されており、雄金具同志、雌金具同志は結合できない。このため、たとえば消火作業の際に、複数の消防ホースを延ばして互いに結合する際に、誤って雄金具同志、または雌金具同志が対応するように消防ホースを延ばしてしまう可能性があり、消火作業の迅速性、確実性の点からこのような可能性を排除することが好ましい。また、従来の結合金具は、構造の相違する雄金具と雌金具の2種類の金具を製造しなければならず、製造コストが高くなる不具合があった。
【0005】
このような不具合を解消するために、雌雄の区別のない同一の形状の一対の結合金具本体からなるホースの結合金具が開発された。この結合金具は、本願の出願人と同じ出願人の特許出願、特願平7−275835号(特開平9−119577号公報…特許文献1)、特願平8−94340号(特開平9−280454号公報…特許文献2)、特願平8−94341号(特開平9−280453号公報…特許文献3)等に開示されている。
【0006】
このような結合金具は、互いに相補形に嵌合する一対の結合金具本体を備えており、これらの結合金具本体からは前方に向けて複数の嵌合突部が形成され、これらの嵌合突部の間は嵌合凹部に形成されている。そして、これら嵌合突部は、互いに相手方の結合金具本体の嵌合凹部内に軸方向に嵌合する。
【0007】
また、これらの嵌合突部の一側面には、それぞれ係止鉤部が形成されており、これらの係止鉤部は結合金具本体が相対的に回動することにより、周方向に互いに係合し、これらの結合金具本体が軸方向に離間する方向の移動を規制してこれら結合金具本体を結合する。
【0008】
また、上記の嵌合突部の他側面には、付勢機構、たとえばスプリングにより突出方向に付勢された鋼球等を備えたプランジャ機構が設けられている。そして、上記の嵌合突部が相手方の嵌合凹部内に軸方向に嵌合した場合には、これらのプランジャ機構が互いに当接して押圧し、これらの結合金具本体を互いに回動方向に付勢し、上記の係止鉤部を互いに周方向に係合させ、かつこれら係止鉤部の係合状態を維持する。
【0009】
ところで、このような結合金具本体を互いに嵌合、係合させるためには、各部にある程度の遊びが必要である。たとえば、上記の係止鉤部を互いに係合させるには、それらの係合面にある程度の隙間が必要であり、よって嵌合突部はこれら係止鉤部の係合面が一致した位置より、さらに前進する必要がある。このため、上記の係止鉤部が互いに係合した状態において、嵌合突部の先端面と相手側の嵌合凹部の奥壁面との間には、遊びすなわち隙間が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−119577号公報
【特許文献2】特開平9−280454号公報
【特許文献3】特開平9−280453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
通常の場合には、上記の係止鉤部は前記の付勢機構により互いに係合した状態に維持されているが、衝撃等が作用した場合には、付勢機構の付勢力に抗して結合金具本体が上記の隙間分だけ互いに近接する方向に移動して係止鉤部の係合面が離れ、がたつきを生じる。
【0012】
また、上記の係止鉤部の係合面は、その先端縁が嵌合突部の基端側に位置するようにオーバーハング状に形成されることが好ましい。このようにオーバーハング状に形成することにより、ホース内に水圧が作用してこれら結合金具本体に軸方向に引き離すような力が作用した場合に、これら係止鉤部の係合面が互いに噛み合い、不所望な結合解除を防止する。
【0013】
しかし、このように係止鉤部の係合面をオーバーハング状に形成した場合には、このオーバーハング分だけ上記の嵌合突部の先端面と嵌合凹部の奥壁面との間の隙間を大きくしなければならず、上記のがたつきが大きくなる。
【0014】
このようながたつきは、この結合金具の使用の際に異音を発生するばかりでなく、上記のように係止鉤部の係合面が離れた状態でこれら結合金具本体に回動方向の荷重が作用すると、これら結合金具本体の結合が不所望に解除される可能性がある。
【0015】
また、この結合金具をたとえば消防車の吸込み側のホースすなわち吸管の継手として使用した場合等には、当然ながら負圧が作用する。このように負圧が作用すると、これら結合金具本体が互いに近接するような軸方向の荷重が作用する。
【0016】
このため、嵌合突部の係止鉤部の係合面が互いに離れ、これらの係合が解除されてしまう可能性もある。
【0017】
本発明は以上の事情に基づいてなされたもので、前述のようなホース等の結合金具において、衝撃が作用した場合のがたつきや、負圧が作用した場合の不所望な結合解除等を防止することができる結合金具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載の発明に従った結合金具は:
配管要素を結合する結合金具であって、円筒状をなす一対の結合金具本体と、これらの結合金具本体の前端面に形成され互いに軸方向に衝合されるシール面と、上記の結合金具本体から上記のシール面を囲んで周方向に配列され軸方向に突設した複数の嵌合突部とこれらの間に形成された嵌合凹部とを備え、上記一対の結合金具本体の嵌合突部と嵌合凹部は互いに相手側の結合金具本体の嵌合凹部と嵌合突部に軸方向に嵌合し、またこれら嵌合突部には相手側の結合金具本体の嵌合突部に周方向に係止して軸方向の移動を規制しこれら一対の結合金具本体を軸方向に係止する係止鉤部が形成されているものにおいて、
上記一対の結合金具本体の夫々の上記の嵌合突部の先端面と、相手側の結合金具本体の上記の嵌合凹部の奥壁面とは、上記の係止鉤部の係合状態において相互に接触し上記の一対の結合金具本体が軸方向に互いに近接する方向の相対的な移動を規制するカム面として形成されていて、
前記のカム面は、前記の結合金具本体が前記の係止鉤部が互いに係合する方向に相対的に回動した場合に、これらの結合金具本体を互いに軸方向に離間する方向に付勢するように傾斜したテーパカム面であり、
上記の嵌合突部の先端面のテーパカム面は、上記の嵌合突部において上記の係止鉤部が形成されていない側の側面側の端から上記の係止鉤部の突出端側の端に向かうにつれて上記の嵌合突部の根元に向かうよう傾斜し、
上記の係止鉤部の係合面は、上記の係止鉤部が形成されている上記の嵌合突部の先端面のテーパカム面と同様に傾斜しており、
上記の嵌合突部が嵌合される相手側の結合金具本体の上記の嵌合凹部の奥壁面のテーパカム面は上記の係止鉤部の係合状態において上記の嵌合突部の先端面のテーパカム面と相互に接触するよう傾斜しており、
上記の周方向に対する嵌合突部の先端面の上記のテーパカム面及び上記の周方向に対する上記の嵌合凹部の上記の奥壁面のテーパカム面の夫々の傾斜角度は相互に同じであるとともに上記の周方向に対する上記の係止鉤部の係合面の傾斜角度よりも大きい、
ことを特徴としている。
【0019】
このような嵌合突部の先端面の上記のテーパカム面及び嵌合凹部の奥壁面の上記のテーパカム面は、これら係止鉤部の係合状態において、一対の結合金具本体が互いに近接するように軸方向に移動するのを規制し、がたつきを防止し、また負圧が作用した場合においても、これら結合金具本体が互いに近接して係止鉤部の係合面が離れ、これら結合金具本体の結合が不所望に解除されてしまうのを確実に防止できる。
【0020】
また、このような嵌合突部の先端面の上記のテーパカム面及び嵌合凹部の奥壁面の上記のテーパカム面は、前記の結合金具本体が前記の係止鉤部が互いに係合する方向に相対的に回動した場合に、これらの結合金具本体を互いに軸方向に離間する方向に付勢するので、上記の係止鉤部の係合面を互いに係合状態に押圧し、がたつきを完全に除去することができる。
【0021】
さらに、このような嵌合突部の先端面の上記のテーパカム面及び嵌合凹部の奥壁面の上記のテーパカム面は、周方向に対する夫々の傾斜角度が相互に同じであるとともに上記の周方向に対する上記の係止鉤部の係合面の傾斜角度よりも大きいので、係止鉤部の係合面にオーバーハングが付いているにもかかわらず、係止鉤部の係合面を互いに係合状態に押圧し、がたつきを完全に除去することができる。
【発明の効果】
【0022】
上述の如く本発明によれば、係止鉤部の係合状態において、結合金具本体が互いに近接するように軸方向に移動するのが規制され、がたつきを防止し、また負圧が作用した場合においても、これら結合金具本体が互いに近接して係止鉤部の係合面が離れ、これら結合金具本体の結合が不所望に解除されてしまうのを確実に防止できる等、その効果は大である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、第1の実施形態の結合金具の斜視図。
【図2】図2は、図1の結合金具の一方の結合金具本体を断面で示す側面図。
【図3】図3は、図1の結合金具の嵌合突部と嵌合凹部との嵌合状態の平面図。
【図4】図4は、第1の実施形態の結合金具の嵌合状態の嵌合突部と係止鉤部の部分を模式的に示す平面図。
【図5】図5は、第1の実施形態の結合金具の嵌合途中の状態の嵌合突部と係止鉤部の部分を模式的に示す平面図。
【図6】図6は、第2の実施形態の結合金具の嵌合状態の嵌合突部と係止鉤部の部分を模式的に示す平面図。
【図7】図7は、第3の実施形態の結合金具の嵌合状態の嵌合突部と係止鉤部の部分を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1ないし図5を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。この実施形態はこの結合金具を消防ホースの結合金具に適用した場合のものである。この結合金具は、同一の構造の一対の結合金具本体1a,1bから構成されており、これら結合金具本体1a,1bにはそれぞれ消防ホース2a,2bが接続されている。
【0025】
これらの結合金具本体1a,1bは、それぞれ筒本体3を備えており、これら筒本体3は略円筒形をなし、その内周面には鋸歯状の凹凸を有するホース取り付け部4が形成されている。そして、このホース取り付け部4に消防ホース2a,2bの端部が挿入され、これらホースの内周面からかしめリング(図示せず)によってこのホースの外周面をこのホース取り付け部4に押圧してこの消防ホースを取り付ける。
【0026】
また、この筒本体3の前端部の内周面には、円筒状のシール面部材5が螺装され、このシール面部材5の前端面はシール面として形成され、このシール面にはゴムパッキン等のシール部材6が取り付けられている。したがって、これらの結合金具本体1a,1bが互いに軸方向に嵌合して結合された場合には、これらのシール部材6が互いに衝合され、これらの筒本体3の内部を連通するとともにシール性を維持する。
【0027】
そして、上記の筒本体3の前端部には、それぞれ複数、たとえば6個の嵌合突部8が一体に突設されている。これらの嵌合突部8は、周方向に等間隔に配列され、上記のシール面部材5のシール面に対して軸方向に突出している。また、これらの嵌合突部8の間は、嵌合凹部7として形成されており、これらの結合金具本体1a,1bが軸方向に衝合された場合には、一方の結合金具本体1aの嵌合突部8が他方の結合金具本体1bの嵌合凹部7内に嵌合し、また他方の結合金具本体1bの嵌合突部8が一方の結合金具本体1aの嵌合凹部7内に嵌合し、互いに相補形に嵌合する。
【0028】
なお、このものでは、上記の嵌合凹部7の幅は上記の嵌合突部8の幅よりやや広く形成されている。したがって、これら嵌合突部8はこれらの嵌合凹部7内に軸方向に嵌合するとともに、周方向にも所定の量だけ回動自在である。
【0029】
そして、上記の嵌合突部8の一方の側面8aには段形鉤状の係止鉤部9がそれぞれ形成されており、これらは互いに相手側の嵌合突部の係止鉤部と周方向に係合するように構成されている。したがって、これらの嵌合突部8が相手側の嵌合凹部7内に軸方向に嵌合した状態で、これら結合金具本体1a,1bを互いに回動させてこれら嵌合突部8の一方の側面8aが互いに近接すると、これらの係止鉤部9が図3に示すように互いに係合して軸方向の係止をなし、これら結合金具本体1a,1bが互いに結合される。なお。これらの係止鉤部9の根元部には、この部分の応力集中を防止するための湾曲部11が形成されている。また、これらの嵌合突部の他方の側面の先端角部は円弧状に形成されてガイド部12が形成されており、これらが嵌合する際には、これらのガイド部12が互いに当接するように構成されている。
【0030】
また、これらの係止鉤部9の係合面9aは、その先端縁が嵌合突部8の基端部側に位置するように、所定の角度aだけオーバーハング状に傾斜しており、これらが嵌合した状態で内部の水圧等によりこれら結合金具本体1a,1bを互いに引き離す方向の荷重が作用した場合には、これらの係止鉤部11はより強く嵌合し、この結合金具本体1a,1bの抜け等を確実に防止するように構成されている。
【0031】
なお、上記の嵌合突部8や嵌合凹部7、係止鉤部9等の構成は、前述のようにがたつきや不所望な結合解除を防止するために、特別の構成となっているが、この点については後に詳述する。
【0032】
また、これらの嵌合突部8の他方の側面8bは、これらの結合金具本体1a,1bの軸方向に対して傾斜している。したがって、この嵌合突部8は、その先端部にゆくに従って周方向の幅が狭くなるようなテーパ状に形成され、また嵌合凹部7も同様にその奥部にゆくに従ってその周方向の幅が狭くなるようなテーパ状に形成されている。これにより、これらの嵌合突部8と嵌合凹部7の嵌合が容易となる。なお、上記の係止鉤部9が形成されている一方の側面は、この結合金具本体1a,1bの軸方向と略平行に形成されている。
【0033】
また、これらの嵌合突部8の他方の側面8bには、それぞれ付勢機構10が設けられている。これらの付勢機構10は、円筒形のケース部材14内に突没自在に収容された付勢部材たとえば鋼球15と、この鋼球15を突出方向に付勢するスプリング16とから構成されており、これらの付勢機構10はこれら嵌合突部8の他方の側面に埋め込まれている。したがって、これらの嵌合突部8が図3に示すように相手側の嵌合凹部7内に嵌合されると、上記の鋼球15が互いに当接して互いに押圧付勢し、これら嵌合突部8の他方の側面を互いに離反するように付勢し、この結果これら嵌合突部8の一方の側面8aは互いに近接するように付勢され、上述のようにこれらの一方の側面の係止鉤部9が互いに係合するように付勢される。
【0034】
また、これらの結合金具本体1a,1bの外周面には、複数の工具溝20が形成されている。これらの工具溝20は、たとえばレンチ等の工具と嵌合可能な形状に形成されており、万一これらの結合金具本体1a,1bの結合が砂等の噛み込みにより結合解除できなくなった場合には、これらの工具溝20にレンチ等の工具を嵌合してこれら結合金具本体1a,1bを強制的に回動させることにより、結合を解除することができる。
【0035】
次に、図3ないし図5を参照して上記の嵌合突部8や係止鉤部9の部分の構成について説明する。これらの図に示すように、上記の嵌合突部8の先端面およびこれが対向する相手方の結合金具本体の嵌合凹部7の奥壁部は、それぞれテーパカム面30,31として形成されている。
【0036】
これらのテーパカム面30,31は、この結合金具本体1a,1bが上記の係止鉤部9が係合する方向に相対的に回動した場合に、これらの結合金具本体を互いに離間する方向、すなわち係止鉤部9の係合面9aがさらに噛み合うような方向に付勢するように傾斜している。
【0037】
そして、このテーパカム面30,31の周方向に対する傾斜角度bは、前記の係止鉤部9の係合面9aの周方向に対するオーバーハング角度aより大きく設定されている。なお、図3ないし図5においては、理解を容易にするために、これらの角度は実際より大きく描かれているが、実際の製品では、これらの角度は数°程度で十分である。
【0038】
次に、上記のテーパカム面等の作用を説明する。まず、これらの結合金具本体1a,1bを軸方向に嵌合すると、嵌合突部8は相手方の嵌合凹部7内に嵌合し、付勢機構10に押圧され、嵌合突部8の一方の側面8aが互いに摺動する。そして、この一方の側面8aの係止鉤部9の先端が互いに乗り越えると、上記の付勢機構10の付勢力により、結合金具本体1a,1bが互いに周方向に回動し、係止鉤部9の係合面9aが係合する。
【0039】
この場合に、図5に示すように、嵌合突部8のテーパカム面30と嵌合凹部7のテーパカム面31とが当接し、これらが周方向に相対的に移動することにより、結合金具本体1a,1bは図5の矢印の方向、すなわちこれらテーパカム面30,31の方向に沿って移動する。これらのテーパカム面30,31の角度bは、係止鉤部9の係合面9aのオーバーハング角度aより大きいので、これら係合面9aは図4に示すように密着して噛み合い、かつこの状態で上記のテーパカム面30,31も密着する。
【0040】
したがって、この状態では、これらは軸方向に遊びなく嵌合するので、衝撃等によりがたつきが生じることはなく、また係合面9aが離れることがないので、これら結合金具本体1a,1bの結合が不所望に解除されることもない。また、上記の消防ホースに負圧が作用した場合には、これらの結合金具本体1a,1bに互いに近接するような軸方向の荷重が作用する。しかし、上記のように、嵌合突部8の先端部と嵌合凹部7の奥壁部のテーパカム面30,31が密着しているので、テーパカム面30,31の傾斜角度bがこの面の摩擦角ψ(摩擦係数μ=tanψ)より小さい限り、これら結合金具本体1a,1bが互いに近接するように相対的に移動することはなく、よって係止鉤部9の係合面9aが離れることはなく、これら結合金具本体1a,1bの結合が不所望に解除されることはない。
【0041】
また、この実施形態のものは、上記のように嵌合突部8の先端面および嵌合凹部7の奥壁部を上記のような形状としただけであり、特別な部品も不要であり、構造が簡単で製造コストも低い。
【0042】
なお、本発明は上記の実施形態には限定されない。たとえば図6には第2の実施形態を示す。このものは、嵌合突部8の他方の側面8b側において、嵌合凹部7の奥壁部の一部に第2のテーパカム面32を形成したものである。この第2のテーパカム面32の周方向に対する傾斜角度cは、係止鉤部9の係合面9aのオーバーハング角度aと略等しく設定されている。
【0043】
この実施形態のものは、結合金具本体1a,1bを嵌合する際に、嵌合突部8の先端部が最初にこの第2のテーパカム面32に当接し、その後にこの第2のテーパカム面32に沿って結合金具本体が回動し、次に嵌合突部8のテーパカム面30と嵌合凹部のテーパカム面31とが当接し、後は前記の第1の実施形態と同様にして係止鉤部9が係合する。
【0044】
この実施形態ものは、係止鉤部9の係合の初期においては、係止鉤部9が係合面9aのオーバーハング角度と等しい角度で周方向に移動するので、この初期の状態で係合面9aが互いに近接することがなく、これら係合面9aの先端縁の引っ掛かり等が発生する可能性が少なく、より円滑な係合が可能である。
【0045】
また、図7には第3の実施形態を示す。このものは、嵌合突部8の他方の側面8b側において、嵌合突部8の先端面と嵌合凹部7の奥壁部の一部に第3のテーパカム面33,34を形成したものである。この第3のテーパカム面33,34の周方向に対する傾斜角度dは、第1のテーパカム面30,31の傾斜角度bより大きく設定されている。
【0046】
この実施形態のものは、結合金具本体1a,1bを嵌合する際に、嵌合突部8の先端部が最初にこの第3のテーパカム面34に当接し、その後にこの第3のテーパカム面34に沿って結合金具本体が回動し、次に嵌合突部8のテーパカム面30と嵌合凹部のテーパカム面31とが当接し、後は前記の第1の実施形態と同様にして係止鉤部9が係合する。
【0047】
この実施形態ものは、係止鉤部9の係合の初期においては、上記の第2の実施形態と反対に、係止鉤部9が係合面9aのオーバーハング角度さらにより大きい角度で周方向に移動する。この場合の係合面9aの先端縁の引っ掛かり等を防止するには、この係合の初期における軸方向の遊びを与えておけばよい。
【0048】
この実施形態のものは、嵌合突部8の第3のテーパカム面33の部分が、第1のテーパカム面30の部分より突出している。よって、これら結合金具本体1a,1bを分離した状態でこの結合金具本体の嵌合突部8の先端が他の物に衝突した場合、傷や変形を受けるのは、この第3のテーパカム面33の部分である。そして、この第3のテーパカム面33の部分は、係止鉤部9の係合面9aが係合を開始する前しか作用せず、かつ前記のように軸方向の遊びを与えておくことができるので、これらの傷や変形の影響を受けることが少ない。
【0049】
なお、本発明は前述の実施形態には限定されない。たとえば、本発明は消防ホースの結合金具には限定されず、その他の各種の用途の配管要素を接続する結合金具一般に適用することができる。また、本発明の結合金具は、金属、合成樹脂、その他の複合材料等、任意の材料で形成することができる。
【符号の説明】
【0050】
1a,1b…結合金具本体、7…嵌合凹部、8…嵌合突部、9…係止鉤部、9a…係合面、10…付勢機構、30,31…テーパカム面、32…第2のテーパカム面、33,34…第3のテーパカム面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管要素を結合する結合金具であって、円筒状をなす一対の結合金具本体と、これらの結合金具本体の前端面に形成され互いに軸方向に衝合されるシール面と、上記の結合金具本体から上記のシール面を囲んで周方向に配列され軸方向に突設した複数の嵌合突部とこれらの間に形成された嵌合凹部とを備え、上記一対の結合金具本体の嵌合突部と嵌合凹部は互いに相手側の結合金具本体の嵌合凹部と嵌合突部に軸方向に嵌合し、またこれら嵌合突部には相手側の結合金具本体の嵌合突部に周方向に係止して軸方向の移動を規制しこれら一対の結合金具本体を軸方向に係止する係止鉤部が形成されているものにおいて、
上記一対の結合金具本体の夫々の上記の嵌合突部の先端面と、相手側の結合金具本体の上記の嵌合凹部の奥壁面とは、上記の係止鉤部の係合状態において相互に接触し上記の一対の結合金具本体が軸方向に互いに近接する方向の相対的な移動を規制するカム面として形成されていて、
前記のカム面は、前記の結合金具本体が前記の係止鉤部が互いに係合する方向に相対的に回動した場合に、これらの結合金具本体を互いに軸方向に離間する方向に付勢するように傾斜したテーパカム面であり、
上記の嵌合突部の先端面のテーパカム面は、上記の嵌合突部において上記の係止鉤部が形成されていない側の側面側の端から上記の係止鉤部の突出端側の端に向かうにつれて上記の嵌合突部の根元に向かうよう傾斜し、
上記の係止鉤部の係合面は、上記の係止鉤部が形成されている上記の嵌合突部の先端面のテーパカム面と同様に傾斜しており、
上記の嵌合突部が嵌合される相手側の結合金具本体の上記の嵌合凹部の奥壁面のテーパカム面は上記の係止鉤部の係合状態において上記の嵌合突部の先端面のテーパカム面と相互に接触するよう傾斜しており、
上記の周方向に対する嵌合突部の先端面の上記のテーパカム面及び上記の周方向に対する上記の嵌合凹部の奥壁面の上記のテーパカム面の夫々の傾斜角度は相互に同じであるとともに上記の周方向に対する上記の係止鉤部の係合面の傾斜角度よりも大きい、
ことを特徴とする結合金具。
【請求項2】
上記の周方向に対する嵌合突部の先端面の上記のテーパカム面及び上記の周方向に対する上記の嵌合凹部の奥壁面の上記のテーパカム面の夫々の傾斜角度は、上記のテーパカム面の摩擦角よりも小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の結合金具。
【請求項3】
上記の嵌合凹部の奥壁面のテーパカム面において上記の係止鉤部の係合面から遠い側の部分の上記の周方向に対する傾斜角度は上記の周方向に対する上記の係止鉤部の係合面の傾斜角度と等しく設定されており、
上記の嵌合凹部の奥壁面のテーパカム面において上記の係止鉤部の係合面から遠い側の上記の部分は、上記一対の結合金具本体の嵌合突部と嵌合凹部が互いに相手側の結合金具本体の嵌合凹部と嵌合突部に軸方向に嵌合し、さらに前記の結合金具本体が前記の係止鉤部が互いに係合する方向に相対的に回動しこれら嵌合突部の係止鉤部の係止面が相互に軸方向に係止された時に、一方の結合金具本体の嵌合突部において係止鉤部が突出していない側面と他方の結合金具本体の嵌合突部において係止鉤部が突出していない側面との間に生じる隙間に対応している、
ことを特徴とする請求項1に記載の結合金具。
【請求項4】
上記の嵌合凹部の奥壁面のテーパカム面において上記の係止鉤部の係合面に対向した部分は、上記の嵌合凹部の奥壁面において上記の係止鉤部の係合面に対向しない部分の延長線よりも上記軸方向において上記の係止鉤部の係合面から遠ざかる方向に凹んでいる、
ことを特徴とする請求項1に記載の結合金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−7335(P2011−7335A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199301(P2010−199301)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【分割の表示】特願2000−225643(P2000−225643)の分割
【原出願日】平成12年7月26日(2000.7.26)
【出願人】(391001169)櫻護謨株式会社 (40)
【Fターム(参考)】