結晶性1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−5−アミン,7−[5−[(シクロヘキシルメチルアミノ)−メチル]−1H−インドール−2−イル]−2−メチル,硫酸塩(1:1),三水和物およびその医薬的使用
本発明は、結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物、E6070、その調製方法、およびその治療的使用に関する。結晶性E6070および医薬的に許容しうる担体を含む医薬組成物は、本発明の一態様である。本発明はまた、それを必要とする患者に、治療的に有効な量の結晶性E6070を投与する処置を含む、炎症性疾患、自己免疫疾患、または増殖性疾患の治療方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶フォームの、1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物、(E6070)に関する。IKKβプロテインキナーゼの阻害により、NF-KB活性化を阻害する性能を有するE6070は、炎症性、自己免疫性および増殖性の疾病および疾患の治療のための強力な治療薬である。
【背景技術】
【0002】
炎症は、傷害または感染の部位での血管の拡張および透過性の亢進から生じるプロセスである。該部位で放出されたケモカインおよびサイトカインは、内皮細胞の細胞表面タンパク質の発現を増加し、循環白血球を血管壁に粘着し、および組織内の傷害/感染部位に移動させる。これらの細胞表面タンパク質は、“細胞接着分子”と呼ばれ、白血球および内皮細胞間に相互作用し、および白血球の組織への移動を媒介する。さらに、細胞接着分子は、炎症反応および免疫応答における多くの細胞間相互作用に必要である。3つの接着分子のクラス: セレクチン、インテグリンおよび免疫グロブリン-関連タンパク質があり、白血球および内皮細胞で発現しうる。E-セレクチンおよびICAMを含む接着分子のいくつかは、IL-1およびTNFのようなサイトカインにより誘導され、およびそれらの発現は、転写因子、NF-KBにより媒介される。
【0003】
持続性のまたは不適切な接着分子の発現は、炎症性または自己免疫性の疾患を引き起こしうる。E-セレクチンおよび/またはICAMの過剰発現は、慢性炎症を引き起こし、および様々な炎症性または自己免疫性の疾患に関連する。それ故、細胞接着分子の阻害剤は、これらの疾患の治療に有用となりうる。
【0004】
炎症性および自己免疫性の疾患は、現在の治療ではうまく管理できておらず、より良い薬物の開発が広く行われている。例えば、関節リウマチは、軟骨および骨の破壊を特徴とする関節内の慢性炎症の状態である。関節リウマチのような炎症性または自己免疫性の疾患の従来の治療には、非ステロイド系の抗-炎症性薬剤およびサリチル酸塩、金化合物、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、副腎皮質ステロイド、経口ペニシラミン、および細胞傷害性または免疫抑制性の薬剤が含まれる。しかし、これらの治療の多くは必ずしも十分に効果的でなく、および重大な副作用をもたらす。さらに最近では、関節リウマチおよびクローン病の治療のための、TNFα中和タンパク質の注射剤が、成功裏に市販されている。しかし、これらの炎症性または自己免疫性の疾患のための、経口投与が可能な阻害剤は、未だ開発されていない。
【0005】
IKKβプロテインキナーゼを阻害してNF-KB活性化を阻害することが可能な1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル(ER-807447)は、強力な抗-サイトカイン/抗-炎症性薬である。PCT出願公開W0 2004/06336 A2および米国出願公開2004/0186127 A1は、ER-807447を、抗炎症性/抗自己免疫および抗増殖性作用を有するデアザプリン治療薬の新規な群の一つとして、開示する(これら出願公開は共に、参照することで本明細書に引用する)。これらのデアザプリン治療薬は、経口投与が可能であり、および重大な副作用はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
治療効果は、治療薬における一番の関心事であるが、薬物候補の該塩および結晶フォームは、その開発に必須となり得る。薬物候補の各塩または各結晶フォーム(多形体)は、異なる物理的および化学的性質、例えば、溶解性、安定性、または再現能を有しうる。これらの性質は、最高の医薬投与剤型、製造方法の最適化、および体内での吸収に影響しうる。さらに、更なる薬剤開発のために、最も適切なフォームを発見することで、その開発の期間およびコストを減らすことが可能である。
【0007】
純粋な結晶フォームを得ることは、薬剤開発において非常に有用である。それは、該薬物候補の化学的および物理的性質のより良好な特性化をもたらす。該結晶フォームは、非晶フォームに比べて、より好ましい薬理を有することができ、またはより加工し易く、さらに、より良好な保存安定性を有することができる。
【0008】
薬物候補の固体状態の物理的性質は、その医薬有効成分としての選択、およびその医薬組成物のための剤型の選定に影響する。該物理的性質の一つは、例えば、製粉前後の該固体の流動性である。流動性は、医薬組成物への加工の間の該物質の扱い安さに影響する。粉末化した化合物の粒子が互いに容易に流れすぎない場合、製剤化の専門家は、タブレットまたはカプセル製剤の開発において、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、スターチまたは第三リン酸カルシウムのような流動促進剤の使用を必要としうることを考慮しなければならない。別の重要な医薬化合物の固体状態の性質は、水溶液中でのその溶解速度である。患者の胃腸液での有効成分の溶解速度は、経口投与された有効成分が、患者の血流に達しうる速度に影響するため、治療において重要である。
【0009】
これらの特定の物理的性質は、結晶性化合物の単位格子における分子の立体構造および配置の影響を受ける。該結晶(または多形)フォームはしばしば、非晶質物質または他の多形体とは異なる、さまざまな異なる熱挙動を有する。熱挙動を、実験室で、キャピラリー融点測定、熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)のような技術により測定し、およびある多形相と他を区別するのに使用してもよい。結晶フォームまたは特定の多形相は通常、他の技術の中で、粉末X-線回折(XRD)、単結晶X-線結晶学、および赤外分光光度法により検出可能な、明確な結晶学的および分光学的特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
【0011】
本発明は、結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物、E6070、その製造、およびその治療的使用に関する。従って、結晶性E6070および医薬的に許容しうる担体を含む医薬組成物は、本発明の一態様である。本発明はまた、それを必要とする患者に治療的に有効な量の結晶性E6070を投与する処置を含む、炎症性疾患、自己免疫疾患、または増殖性疾患の治療方法に関する。該結晶性E6070は、そのままでまたは本発明の医薬組成物として投与してもよい。
【0012】
本発明の詳細な説明
【0013】
E6070、1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物は、ER-807447の三水和硫酸塩である。E6070は、化学構造(I)および分子式: C23H36N6O7S(CAS登録番号: 532391-43-8)である。
【化1】
【0014】
E6070は、ER-807447と同じIKKβプロテインキナーゼの阻害によりNF-KB活性化を阻害する性能を有し、関節リウマチおよび他の炎症性疾患または自己免疫性疾患さらには増殖性疾患の治療用の薬物として有用である。E6070は、これらに制限されないが、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎/クローン病、多発性硬化症のような中枢神経系疾患(CNS)、全身性エリテマトーデス、ぜんそく、同種移植片拒絶/移植片対宿主病(GVHD)、乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹、じんま疹、アレルギー性鼻炎、重症筋無力症、糖尿病、特発性血小板減少性紫斑病、糸球体腎炎、循環器疾患、および癌を含む、疾病および疾患の治療に使用することができる。本発明は、結晶性E6070、並びに該疾病および疾患を治療するための治療薬としてのその使用に関する。
【0015】
結晶性E6070の調製
【0016】
本発明はまた、以下の反応による結晶性E6070の調製方法に関する。:
【化2】
【0017】
該方法に従い、ER807447をまず水に懸濁して、水性懸濁液を得る。硫酸を、該溶液の内部温度を25℃より低く維持しながら、該水性懸濁液に加え、溶液を得る。該溶液は概して黄色である。該溶液を任意にろ過して、該溶液から微粒子を除去する。遠心分離などの当該技術分野において既知の、他の微粒子の除去技術を、該ろ過方法として使用してもよい。該溶液をその後、E6070が溶液から結晶化するまで、ゆっくり加温する。該溶液を、約100℃に加温してもよい。概して、結晶の形成は、約70℃の温度で起こる。好ましい加温速度は、概して約30分から5時間の範囲である。より長いまたはより短い時間であってもよく、特にバッチサイズに依存する。E6070は、高度に希釈した溶液からは直ちに結晶化しない。
【0018】
結晶性E6070の該調製方法において結晶化を高めるため、または結晶性E6070を再結晶化するため、貧溶媒を使用してもよい。該再結晶化方法は実施例5に記載される。該上記方法において、該貧溶媒は、硫酸添加前の該水性懸濁液に、または硫酸添加後および任意のろ過処理後の該溶液に、加えてもよい。使用可能な貧溶媒およびそれらの使用は、当該技術分野において既知である。代表的な貧溶媒には、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトンおよびそれらの混合のような、水-混和性貧溶媒が含まれる。貧溶媒を使用する場合、該溶液は濁っていても良い。該溶液を、水溶液を単に使用する時と同じ温度の高さに加温することは、概して必須ではない。
【0019】
結晶性E6070は、以下の方法に従い、ER807747の硫酸塩を形成することにより調製してもよい。: ER807447(1 重量部)を水(10 容量部)に懸濁し、および攪拌する。内部温度を25℃より低く維持しながら1M H2SO4(1 eq.、2.6 容量部)を加える。直ちに黄色の溶液が得られる。該溶液をろ過し、および該ろ液を水(10 容量部)と共に反応器に移す。種結晶(0.01 重量部)を加える。ゆっくりと2.5時間かけて70℃に加温する。温度が上昇するに従い、E6070は溶液から結晶化し始める。70℃で30分間攪拌し、その後ゆっくりと2時間をかけてRTに冷却する。紙(P5)でろ過し、および水(2×10 容量部)で洗浄する。N2/真空下で乾燥し、E6070を黄色自由流動性結晶粉末(1.2 重量部、91%)として得る。
【0020】
結晶性E6070
【0021】
その結晶フォームにおいて、E6070は、粒径に依存して黄色からオレンジ-黄または桃色の固体である。結晶性E6070は、粒径が小さいほどより黄色となる。大きい粒径では、結晶性E6070は、オレンジ-黄または桃色を呈する。大きい結晶性E6070粒子を製粉すると、黄色を呈するより小さな粒子となるが、E6070の結晶フォームに変化はない。
【0022】
結晶性E6070の水含量は約10%であり、E6070はER-807447の硫酸塩の3-水和物と同定された。上記の結晶性E6070の調製において記載するように、溶液を加熱したとき、該結晶性生成物は沈殿し始める。加温溶液からの結晶の沈殿は、注目すべきであり、ありふれたことではない。結晶性E6070の溶解性が低いのとは対照的に、非晶質E6070は水に大変溶けやすく、結晶性E6070の10-倍より高く溶けやすい。結晶性E6070は、その水和する3つの水を有し、水にそれほど溶けず、およびまた、吸湿性は大変低い。これらの特性により、結晶性E6070は、その非晶フォームと比較してより安定となる。結晶性E6070はまた、非晶フォームを水に溶解しおよび該溶液を徐々に加熱して結晶性E6070を沈殿させることにより、または該E6070水溶液に貧溶媒を加えることにより、その非晶フォームから調製してもよい。
【0023】
結晶性E6070はまた、様々な溶媒系から調製しうる。実施例4に記載されるように、E6070の19ロットを、様々な溶媒系から結晶化した。分析した17ロットの全てが、同一の結晶フォームを示した。さらに、分析した17ロット間に、水含量および硫酸イオン含量の有意な差は無かった。
【0024】
下記の実施例に記載されおよび図に示されるように、結晶性E6070を、赤外(IR)分光法、X-線粉末回折(XRD)、単結晶X-線回折、熱分析、吸湿性測定、および固体13C NMR 分光法により、特徴づけた。該結晶性E6070三水和物は、非-吸湿性だが、150℃に加熱したとき、脱水和(全て水を失う)する。該可変温度X-線粉末回折(XRD)パターンは、水分喪失により可逆的非晶となり、および該脱水和E6070は、大気中水分に曝露すると、安定な結晶状態であるその水和物に戻ることが可能であることを示す。図9および10参照。
【0025】
医薬組成物
【0026】
本発明は、治療的に有効な量の結晶性E6070、および医薬的に許容しうる担体、(また医薬的に許容しうる賦形剤として知られる)を含む、医薬組成物に関する。上述のように、E6070は、それを炎症性、自己免疫性、および/または増殖性の疾病および疾患の治療に有用とする生物学的特性を有する。それらの疾病および障害の治療のための医薬組成物は、該特定の疾病および障害を持つ患者の治療に適するような、治療的に有効な量の結晶性E6070を含む。
【0027】
結晶性E6070の“治療的に有効な量”(本発明にかかる、医薬組成物に関してここに、および治療方法に関して以下に記載する)は、炎症性もしくは自己免疫性の反応もしくは疾患の作用を減らすのに十分であり、または腫瘍細胞の成長を予防し、止め、もしくは阻害するのに十分な量をいう。いずれか特定の患者の治療に実際に必要な量は、治療される疾患およびその重症度; 使用する特定の医薬組成物; 該患者の年齢、体重、全体的な健康、性およびダイエット; 投与方法; 投与回数; 投与手段;およびE6070の排泄速度; 該治療の持続時間; 該使用する特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用する薬物;および医学技術分野において既知の他のファクターを含む、あらゆるファクターに依存する。これらのファクターは、(GoodmanおよびGilmanの“The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Tenth Edition, A. Gilman, J.Hardman and L. Limbird, eds., McGraw-Hill Press, 155-173, 2001)に記載され、これらは参照することで本明細書に引用する。
【0028】
本発明の医薬組成物は、E6070の結晶フォームを保持するいずれかの医薬製剤形であってよい。該医薬組成物は、固体製剤、懸濁液、注射組成物、局所製剤、または経皮製剤であってもよい。これらの製剤は、PCT出願公開W0 2004/06336 A2および米国出願公開2004/0186127 A1に開示され、これらは参照することで本明細書に引用する。
【0029】
医薬組成物のタイプに依存して、医薬的に許容しうる担体は、当該技術分野において既知の担体のいずれか1つまたは組み合わせから選択してもよい。医薬的に許容しうる担体の選定は、用いられる医薬製剤形および所望の投与方法に依存する。結晶性E6070を含む、本発明の医薬組成物において、担体は、結晶性E6070を維持するものを選定すべきである。つまり、該担体は、実質的にE6070の結晶フォームを変化させるべきでなく、例えば、結晶性E6070を溶解する液体担体は使用すべきでない。該担体は、望ましくない生物学影響、または医薬組成物の他の成分との有害な様式での他の相互作用が生じるような、他の点でもE6070と相性が悪いものであってはならない。
【0030】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、投与のし易さおよび投与量の均一性のために、投薬単位で処方される。“投薬単位”とは、治療を受ける患者に適当な、物理的に個別の治療薬の単位をいう。しかし、当然のことながら、本発明にかかるE6070およびその医薬組成物の1日の全投与量は、妥当な医学的判断の範囲内において、担当医により決定される。
【0031】
E6070の結晶フォームは、それらの調製の間、より容易に保持されるので、固体製剤は、本発明の医薬組成物として好ましい剤型である。カプセル、タブレット、丸剤、粉剤、および顆粒を含む、経口投与の固体製剤は、特に好ましい。該固体製剤において、該活性化合物を、少なくとも1つの、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウムのような不活性で医薬的に許容しうる担体と混合する。該固体製剤はまた、1以上の: a) スターチ、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸のような充てん剤または増量剤; b) 例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアラビアゴム(acacia)のような結合剤; c) グリセロールのような湿潤剤; d) 寒天、炭酸カルシウム、ポテトまたはタピオカスターチ、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムのような崩壊剤; e) パラフィンのような溶解遅延剤; f) 四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤; g) 例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートのような湿潤剤; h) カオリンおよびベントナイト粘土のような吸収剤; およびi) タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムのような滑沢剤を含んでもよい。該固体製剤はまた、緩衝剤を含んでもよい。それらはまた、適宜、乳白剤を含んでもよく、また、有効成分を、腸管の特定部分でのみ、または優先的にその部分で遅延して放出するようにした組成物であってもよい。Remington’s Pharmaceutical Sciences, Sixteenth Edition, E. W. Martin (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1980)に、医薬組成物の処方に使用される様々な担体、およびその調製の既知の技術が開示される。本発明の医薬組成物の固体製剤はまた、腸溶コーティングおよび該医薬製剤の技術分野において既知の他のコーティングのような、コーティングおよび殻で調製しうる。
【0032】
結晶性E6070は、上述のような1以上の担体とともに、固体ミクロ-カプセル剤中にあってもよい。結晶性E6070のミクロ-カプセル剤はまた、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤、さらに高分子量ポリエチレングリコールなどと共に、ソフトおよびハードゼラチンカプセル中で、使用される。
【0033】
本発明の好ましい固体医薬組成物は、7mm-直径、円形、両凸黄色フィルム-でコートしたタブレットであり、有効医薬成分として結晶性E6070を1、10、または50mg含む。全ての長所は、湿式造粒方法で得られる。これらの好ましい医薬組成物中の該担体(または賦形剤)には、: マンニトール、スターチ、クロスポビドン、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、タルク、ポリエチレングリコール8000、二酸化チタン、および酸化鉄(黄色)が含まれる。
【0034】
結晶性E6070を使用した治療方法
【0035】
本発明はまた、炎症性または自己免疫性の疾患の治療、増殖性疾患の治療方法を提供する。上述したように、特定の理論にとらわれることなく、E6070は、炎症性サイトカイン刺激により誘導される内皮細胞表面のE-セレクチンおよびICAM-1のような接着分子の発現を阻害する。該細胞表面分子は、炎症性反応および免疫応答内の炎症性細胞浸潤および細胞間相互作用において重要な役割を果たす。E6070はまた、転写因子NF-KBの活性化を減らし、および、炎症性サイトカインシグナル経路での転写活性化を阻害し、あらゆる炎症性疾患の病理に関与するIL-1およびTNFのような多くの遺伝子を制御する。さらに一般的に、炎症の発症機序におけるキープレーヤーとしてのNF-KBの同定により、NF-KB標的治療法は、炎症性および免疫性の疾患に有効であり得る(参照、generally, NF-KB in Defense and Disease, J. Clin. Investig. 2001, 107, 7)。
【0036】
炎症性、自己免疫性または増殖性の疾病および疾患の治療のために、結晶性E6070およびそれを含む医薬組成物は、本発明に従い、治療に有効ないずれかの量、いずれかの医薬組成物の剤型、およびいずれかの投与手段を用いて、投与される。言い換えれば、結晶性E6070を含む適当な医薬組成物は、適当な医薬的に許容しうる担体とともに所望の投与量に製剤化した後、患者に、経口、経直腸、非経口、大槽内、膣内、腹腔内、局所(パウダー、軟膏、またはドロップなどにて)、口腔内に、口腔または鼻腔用スプレーなどとして、投与され得る。
【0037】
本発明の該方法において、治療的に有効な量の結晶性E6070を投与する。概して、所望の治療効果を得るため、結晶性E6070を、1日あたり約0.001mg/kg(患者の体重)から約50mg/kg、約0.01mg/kgから約25mg/kg、または約0.1mg/kgから約10mg/kg、1日あたり1回以上、の投与量レベルで、投与してもよい。0.001mg/kgより少ない、または50mg/kg(例えば 50-100mg/kg)より多い投与量をまた、治療を受ける患者に投与してもよい。
【0038】
結晶性E6070の調製および特定解析
【実施例】
【0039】
実施例1: 結晶性E6070の調製
【0040】
結晶性E6070を、上記のおよび図1に示される方法を用いて、合成した。使用した溶媒は特級であった。他の化学薬品の全ては、分析グレードであった。
元素分析: E6070の炭素、水素、窒素、および硫黄含有量を、Quantitative Technologies、Inc.(QTI)、Whitehouse NJ、USA. で測定した。C、H、およびNを、2400 パーキン-エルマーCHN元素分析計を用いて燃焼分析により測定した。硫黄含量を、燃焼分析を行い、過塩素酸バリウム滴定を行って測定した。QTIで測定したC、H、N、およびSの元素組成値のパーセントは、E6070の分子式C23H36N6O7Sに一致する。該実験値は全て、理論値の±0.3%内であった。該理論値および実験値はともに、該薬物分子に1つの硫酸分子および3つ水分子を足したものから成る。
【表1】
【0041】
実施例2: 結晶性E6070の赤外線スペクトル
【0042】
DuraSamplIR II Diamond-ATR サンプリング付属物(SensIR Technologies, Danbury CT)を組み込んだNicolet Magna-IR 550フーリエ変換赤外分光計でニート粉末を測定し、E6070のIR吸収スペクトルを記録した。結晶性E6070のIR吸収スペクトルは図2に示される。特有の吸収バンドのアサイメント(結合)は、表2に示される結晶性E6070の割り当てられた構造と一致した。好ましくは、結晶性E6070は、1656、1620、1549、1136、1085、および1033cm-1から選ばれるニート試料の赤外線スペクトルにおいて、少なくとも2つの吸収バンドを有することを特徴とする。
【表2】
【0043】
実施例3: 結晶性E6070の粉末X-線回折パターン
【0044】
結晶性E6070をX-線粉末回折計(RINT-2000、理学製、日本)の試料台に設置し、および表3に示される条件で分析した。図3に、結晶性E6070の粉末X-線回折(XRD)パターンが示される。
【表3】
【0045】
実施例4: 結晶性E6070の単結晶X-線回折分析および計算値XRDパターン
【0046】
約1.8mgのE6070を、AT250天秤(メトラー、スイス)を用いて量り、および3.0mLのアセトン(1.5mL)および水(1.5mL)の混合液に加熱して溶解した。この溶液を、室温、デシケーター中で保存した。この溶液を3日間保存した後、小さいプリズム状の結晶が生じた。
【0047】
おおよその寸法が0.10×0.10×0.05mmのE6070の結晶が、グラスファイバーに付着した。回折データをω軸振動法(振動範囲: -100°から100°;ステップ: 10°)で波長0.75Åを用いて、R-AXIS Vイメージングプレート検出器システム(理学製、日本)で収集した。全ての測定は、スプリング-エイト(Super Photon ring-8 GeV)の創薬産業ビームラインBL32B2で行った。該収集データを、構造解析のためにクリスタルクリア(CrystalClear)を用いて処理した。
【0048】
該結晶構造を、最終R因子0.072で解析した。E6070結晶のデータ収集および結晶解析の結果は、表4に要約される。
【表4】
番号付けしたX-線結晶解析のダイアグラムおよびORTEP図は、図4および5にそれぞれ示される。図5において、該熱振動楕円体は、50%の確率水準で示される。
【0049】
該結晶構造により、該非対称ユニット中の、該有効成分のプロトン化したN-メチルアミン(N6)およびイミダゾピリジン環(N3)、1つのSO42-イオン、および3つの水分子が示される。E6070は、図6に示されるように、水分子の水素-結合ネットワークにより、H2SO4塩を構成する。ORTEP図(図5)中、シクロヘキサン環の2つの炭素原子の乱れが認められた。この挙動は、その部分における立体構造変化に起因しうる。上記に基づき、E6070の構造を上記の図5に示すように決定した。
【0050】
図7に、単結晶データから計算したX-線粉末回折データが示される。該粉末回折パターン(計算値)は、結晶性E6070のXRDパターンと一致する(例えば、図3に匹敵)。これは、E6070の単結晶は、E6070結晶粉末と同形であることを示す。
【0051】
実施例5: さまざまな溶媒からの結晶化の効果
【0052】
結晶化溶媒の性質は、有機化合物の様々な多形体の単離における既知のファクターであるため、E6070を約100mgスケールで、表5に示される19の溶媒系から結晶化した。水に試料を溶かし、適当な貧溶媒を加えて、再結晶したE6070を調製した。下記の表5に、使用した貧溶媒を示す。貧溶媒が示されていない場合は、該水溶液を100℃に加温し、その後室温に冷却して、E6070を再結晶化した。図8に示されるように、2つのロット、すなわち(ロット2)および(ロット5)は、他のロット(データは示されていない)よりXRD強度が低く、これらのみを除いては、結晶化物質のXRDパターンに有意な差はなかった。また、全てのロットで、ほとんど同一の水含量および硫酸イオン含量(表6)が示された。これらの結果から、E6070は、安定な結晶フォームで存在することが示された。
【表5】
【表6】
N.T.: 試験なし
*: 少量の試料を上記測定に使用した。
【0053】
実施例6: 可変温度粉末X-線回折法
【0054】
結晶性E6070をサンプルホルダーに詰め、およびその後、X-線回折計、RINT-2000(理学製、日本)の台に設置した。様々な温度でのE6070薬物のXRDパターンは、図9に示される。該装置を表7に示される条件で操作した。特徴的なXRDピークは、表8および図9に特定される。好ましくは、結晶性E6070を特徴づけおよび同定するのに使用されるピークには、8.3±0.2°2θ、10.1±0.2°2θ、14.3±0.2°2θ、15.3±0.2°2θ、18.1±0.2°2θ、21.1±0.2°2θ、24.1±0.2°2θ、および29.2±0.2°2θが含まれる。これらのピークの任意の組み合わせは、結晶性E6070を特徴づけるのに有用である。該薬物を30℃から160℃まで段階的な方法で加熱したとき、おそらく水分喪失に起因する結晶転移を示す新しい回折パターンが、90℃で認められた。該ピーク強度は徐々に減少し、および160℃より上で完全に消失した。従って、結晶性E6070の水分喪失は、結晶転移および実質的な格子欠陥の両方をもたらした。
【表7】
【表8】
【0055】
図10に示されるように、結晶性E6070は、その非晶フォームに可逆転移しうる。図10のPXRDパターン(1)は、周囲条件(25℃、60%相対湿度)下の結晶性E6070を示す。100℃に加熱したとき、水和する水分の喪失を伴って、PXRDパターン(3)は、結晶化度の喪失示す。冷却して周囲条件へ戻すことで、E6070は、その結晶フォームへ戻り、PXRDパターン(2)に示されるように再水和する。本実験は、上述の回折計を用いて行った。
【0056】
実施例7: 結晶性E6070の熱特性および吸湿特性の評価
【0057】
熱分析: 理学サーモフレックス(Thermoflex) TAS200 TG8101D(理学製、東京、日本)を用いて、熱重量示差熱分析(TG-DTA)を、表9の測定条件下に行った。該温度軸および該容器定数をインジウムで調整した。該固体試料(1-5mg)を開放アルミニウム皿に正確に量り、およびその後加熱した。
【表9】
【0058】
吸湿性測定: 試料を25℃で、自動調整-雰囲気微量天秤、MB-300W(VTI Corporation, FL, USA)を用いて、様々な相対湿度(RH)条件に曝露した。このシステムにおいて、試料を、25℃で等温室に維持し、および乾燥した(0%RH)および湿った(100%RH)の窒素の相対的流量を調節することによって、該RHを5%から95%に調節した。該試料の重量を2分毎に該微量天秤で量った。該平衡とする該重量安定性の基準は、各測定の最大重量変化が0.2%(w/w)より少ないことである。
【0059】
結晶性E6070は約10%の水を含むが、これは三水和物の水含量にほとんど等しく、それを25℃において様々な調節された湿度、0%から93%RHに曝露したとき、水分の吸収または喪失は認められなかった。この試験の吸着/脱着等温線は、図11に示される。該TG-DTAサ−モグラムにおいて、該DTA曲線は、2つのブロードな吸熱ピークを示し(図12)、約10%の質量減量が、90℃から150℃の温度範囲で認められた。該質量減量がその水含量に匹敵するため、これらの吸熱ピークにより、E6070の脱水挙動が暗示された。
【0060】
実施例8: 結晶性E6070の物理的安定性
【0061】
結晶性E6070の物理的安定性を以下の2つの条件下で評価した: 60℃、1箇月、および40℃/75%RH(開放)1箇月。結果として、いずれの苛酷条件においてもXRDパターンに変化はなかった(図13)。また、両苛酷条件試料は、イニシャルと同一のTG-DTAサ−モグラムを示した(図14)。従って、結晶性E6070は固体の状態で物理的に安定であることが示された。
【0062】
実施例9: E6070の結晶化 −−1g−スケールのバッチ
【0063】
1gスケールの結晶性E6070を、該スケールアップの結晶フォームおよびサイズを調べるため、機械的攪拌を用いて調製した。このロットのXRDパターンは先のロットと同一であり、および該TGサ−モグラムは、該水含量が三水和物の理論値、すなわち10.0%と一致することを示した。これによりグラムスケールで調製した結晶性E6070は、上述の実施例で記載したそれらと同一の結晶フォームであることが示された。図15は、この1gスケールの結晶化からのE6070結晶フォームの顕微鏡写真である。最大の結晶サイズは100μmより小さいようであった。
【0064】
実施例10: 結晶性E6070の粉末化
【0065】
結晶性E6070の色は、その粒径に依存して変化する。これは、E6070の単一ロットをホサカワミクロンパウダーシステムで、粉末化工程を経て、微粉末化したとき、明らかとなった。表9(“d(0.5)”は試料の50%が、その粒径またはそれより小さいことを示し、および“d(0.9)は、試料の90%がその粒径またはそれより小さいことを示す。)に示されるように、5回のテストランを粉末化した。これらのランにおいて、ラン2および3とラン4および5の間に明らかな差があり、1-5において平均粒径が減少するに従い、試料の黄色調が増加した。
【表10】
【0066】
実施例11: 結晶性E6070の固体13C NMRスペクトル
【0067】
結晶性E6070の固体13C NMRスペクトルを得るため、7.5-mmローターに結晶性E6070粉末を詰めた。13Cについて、75.3 MHzで操作し、ケマグネティック(Chemagnetics) CMX-II 300 NMR スペクトロメータ−で該スペクトルを記録した。該13C NMRスペクトルを、CPMAS(交差分極マジック角回転)および全サイドバンド抑制法(total side band suppression)(TOSS)を用いて得た。該ローターを、該マジック角で、4kHzの速度で回転した。また可変振幅交差分極法(Variable-amplitude cross polarization)(VACP)および2-パルス位相変調(two-pulse phase modulation)(TPPM)を、該スペクトルを得るために使用した。1H 90°パルス幅は4.2μs、および13C 180°パルス幅は8.4 μsであった。データ収集時間68msに相当する30.03kHzのスペクトル幅を用いて、2048点を得た。コンタクト時間 1ms、およびのパルス繰り返し時間 5s間を用いて、該スペクトルを得た。16384トランジェントの全てを平均して、該スペクトルを得た。化学シフトを、ヘキサメチルベンゼンのメチルピークを外部基準として使用し、化学シフト値17.35ppmを有するメチルピークで割り当てた。結晶性E6070の固体13C NMRスペクトルは、図16に示される。該スペクトルに示されるように、結晶性E6070の特徴的なピークは、16.1; 25.5; 37.8; 57.1; 67.2; 67.4; 100.2; 109.9; 114.8; 115.9; 121.9; 126.2; 128.3; 131.7; 138.8; 146.9; 152.3;および158.0ppmに認められる。化学シフトが、±0.3ppm内であると報告された。
【0068】
結晶性E6070を同定するのに好ましい特徴的なピークは、約120-160ppmの部分に認められる。概して、これらの好ましいピークは、他のピークと有意な重なりの無い、無処理のタブレットの固体13C NMRスペクトル中に認められうる。該理由は、多くの一般的な賦形剤(該成分を医薬有効成分(API)に加え、医薬タブレット組成物を調製する)もまた、該固体13C NMR スペクトルに現れるからである。得られたそれらの化学的性質から、これらの賦形剤の共鳴は、通常13CNMR スペクトルの50および110 ppmの間に現れる。タブレット組成物の大半が賦形剤であれば、該賦形剤ピークは、APIのピークのと比べ、著しく強くなりうる。加えて、賦形剤ピークはまた、脂肪族部(0-50 ppm)およびカルボニル部(160-190 ppm) 領域に現れうる。しかしながら、賦形剤ピークが、120-160ppmの間に位置するのは希である。従って、有効成分のピークを同定し、および比較するのに好ましい固体13C NMRスペクトルの範囲は、120-160 ppmである。本発明にかかる結晶性E6070は、好ましくは、固体13C NMRスペクトル中に、121.9±0.3 ppm; 126.2±0.3 ppm; 128.3±0.3 ppm; 131.7±0.3 ppm; 138.8±0.3 ppm; 146.9±0.3 ppm; 152.3±0.3 ppm;および158.0±0.3 ppmから選ばれる、少なくとも2つのピークを有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、好ましい結晶性E6070の調製を示す。
【0070】
【図2】図2は、結晶性E6070の赤外線スペクトルである。
【0071】
【図3】図3は、結晶性E6070の粉末X-線回折パターンを示す。
【0072】
【図4】図4は、E6070単結晶解析の番号付けしたダイアグラムである。
【0073】
【図5】図5は、E6070結晶のその非対称ユニットのORTEP図である。
【0074】
【図6】図6は、結晶性E6070の水素結合ネットワークおよびその分子間接触を示す。
【0075】
【図7】図7は、E6070の単結晶デ−タからの計算値のX-線回折パターンを示す。
【0076】
【図8】図8は、様々な溶媒系から再結晶化した結晶性E6070の17ロットのXRDパターンを示す。
【0077】
【図9】図9は、様々な温度での結晶性E6070のXRDパターンを示す。
【0078】
【図10】図10は、水和および脱水和E6070の可逆的なXRDパターンを示す。
【0079】
【図11】図11は、結晶性E6070の吸着/脱着等温線を示す。
【0080】
【図12】図12は、開放皿中、加熱速度10℃/分での、結晶性E6070のTG-DTAサ−モグラムを示す。
【0081】
【図13】図13は、結晶性E6070のXRDパターンを示す:(1) イニシャル、(2) 40℃/75%RH(1M)、および(3) 60℃(1M)。
【0082】
【図14】図14は、結晶性E6070のTG-DTAサ−モグラムを示す。:(1) イニシャル、(2) 40℃/75%RH(1M)、および(3) 60℃(1M)。
【0083】
【図15】図15は、E6070 結晶の顕微鏡写真である。
【0084】
【図16】図16は、結晶性E6070の固体13C NMRスペクトルである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶フォームの、1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物、(E6070)に関する。IKKβプロテインキナーゼの阻害により、NF-KB活性化を阻害する性能を有するE6070は、炎症性、自己免疫性および増殖性の疾病および疾患の治療のための強力な治療薬である。
【背景技術】
【0002】
炎症は、傷害または感染の部位での血管の拡張および透過性の亢進から生じるプロセスである。該部位で放出されたケモカインおよびサイトカインは、内皮細胞の細胞表面タンパク質の発現を増加し、循環白血球を血管壁に粘着し、および組織内の傷害/感染部位に移動させる。これらの細胞表面タンパク質は、“細胞接着分子”と呼ばれ、白血球および内皮細胞間に相互作用し、および白血球の組織への移動を媒介する。さらに、細胞接着分子は、炎症反応および免疫応答における多くの細胞間相互作用に必要である。3つの接着分子のクラス: セレクチン、インテグリンおよび免疫グロブリン-関連タンパク質があり、白血球および内皮細胞で発現しうる。E-セレクチンおよびICAMを含む接着分子のいくつかは、IL-1およびTNFのようなサイトカインにより誘導され、およびそれらの発現は、転写因子、NF-KBにより媒介される。
【0003】
持続性のまたは不適切な接着分子の発現は、炎症性または自己免疫性の疾患を引き起こしうる。E-セレクチンおよび/またはICAMの過剰発現は、慢性炎症を引き起こし、および様々な炎症性または自己免疫性の疾患に関連する。それ故、細胞接着分子の阻害剤は、これらの疾患の治療に有用となりうる。
【0004】
炎症性および自己免疫性の疾患は、現在の治療ではうまく管理できておらず、より良い薬物の開発が広く行われている。例えば、関節リウマチは、軟骨および骨の破壊を特徴とする関節内の慢性炎症の状態である。関節リウマチのような炎症性または自己免疫性の疾患の従来の治療には、非ステロイド系の抗-炎症性薬剤およびサリチル酸塩、金化合物、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、副腎皮質ステロイド、経口ペニシラミン、および細胞傷害性または免疫抑制性の薬剤が含まれる。しかし、これらの治療の多くは必ずしも十分に効果的でなく、および重大な副作用をもたらす。さらに最近では、関節リウマチおよびクローン病の治療のための、TNFα中和タンパク質の注射剤が、成功裏に市販されている。しかし、これらの炎症性または自己免疫性の疾患のための、経口投与が可能な阻害剤は、未だ開発されていない。
【0005】
IKKβプロテインキナーゼを阻害してNF-KB活性化を阻害することが可能な1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル(ER-807447)は、強力な抗-サイトカイン/抗-炎症性薬である。PCT出願公開W0 2004/06336 A2および米国出願公開2004/0186127 A1は、ER-807447を、抗炎症性/抗自己免疫および抗増殖性作用を有するデアザプリン治療薬の新規な群の一つとして、開示する(これら出願公開は共に、参照することで本明細書に引用する)。これらのデアザプリン治療薬は、経口投与が可能であり、および重大な副作用はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
治療効果は、治療薬における一番の関心事であるが、薬物候補の該塩および結晶フォームは、その開発に必須となり得る。薬物候補の各塩または各結晶フォーム(多形体)は、異なる物理的および化学的性質、例えば、溶解性、安定性、または再現能を有しうる。これらの性質は、最高の医薬投与剤型、製造方法の最適化、および体内での吸収に影響しうる。さらに、更なる薬剤開発のために、最も適切なフォームを発見することで、その開発の期間およびコストを減らすことが可能である。
【0007】
純粋な結晶フォームを得ることは、薬剤開発において非常に有用である。それは、該薬物候補の化学的および物理的性質のより良好な特性化をもたらす。該結晶フォームは、非晶フォームに比べて、より好ましい薬理を有することができ、またはより加工し易く、さらに、より良好な保存安定性を有することができる。
【0008】
薬物候補の固体状態の物理的性質は、その医薬有効成分としての選択、およびその医薬組成物のための剤型の選定に影響する。該物理的性質の一つは、例えば、製粉前後の該固体の流動性である。流動性は、医薬組成物への加工の間の該物質の扱い安さに影響する。粉末化した化合物の粒子が互いに容易に流れすぎない場合、製剤化の専門家は、タブレットまたはカプセル製剤の開発において、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、スターチまたは第三リン酸カルシウムのような流動促進剤の使用を必要としうることを考慮しなければならない。別の重要な医薬化合物の固体状態の性質は、水溶液中でのその溶解速度である。患者の胃腸液での有効成分の溶解速度は、経口投与された有効成分が、患者の血流に達しうる速度に影響するため、治療において重要である。
【0009】
これらの特定の物理的性質は、結晶性化合物の単位格子における分子の立体構造および配置の影響を受ける。該結晶(または多形)フォームはしばしば、非晶質物質または他の多形体とは異なる、さまざまな異なる熱挙動を有する。熱挙動を、実験室で、キャピラリー融点測定、熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)のような技術により測定し、およびある多形相と他を区別するのに使用してもよい。結晶フォームまたは特定の多形相は通常、他の技術の中で、粉末X-線回折(XRD)、単結晶X-線結晶学、および赤外分光光度法により検出可能な、明確な結晶学的および分光学的特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
【0011】
本発明は、結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物、E6070、その製造、およびその治療的使用に関する。従って、結晶性E6070および医薬的に許容しうる担体を含む医薬組成物は、本発明の一態様である。本発明はまた、それを必要とする患者に治療的に有効な量の結晶性E6070を投与する処置を含む、炎症性疾患、自己免疫疾患、または増殖性疾患の治療方法に関する。該結晶性E6070は、そのままでまたは本発明の医薬組成物として投与してもよい。
【0012】
本発明の詳細な説明
【0013】
E6070、1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物は、ER-807447の三水和硫酸塩である。E6070は、化学構造(I)および分子式: C23H36N6O7S(CAS登録番号: 532391-43-8)である。
【化1】
【0014】
E6070は、ER-807447と同じIKKβプロテインキナーゼの阻害によりNF-KB活性化を阻害する性能を有し、関節リウマチおよび他の炎症性疾患または自己免疫性疾患さらには増殖性疾患の治療用の薬物として有用である。E6070は、これらに制限されないが、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎/クローン病、多発性硬化症のような中枢神経系疾患(CNS)、全身性エリテマトーデス、ぜんそく、同種移植片拒絶/移植片対宿主病(GVHD)、乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹、じんま疹、アレルギー性鼻炎、重症筋無力症、糖尿病、特発性血小板減少性紫斑病、糸球体腎炎、循環器疾患、および癌を含む、疾病および疾患の治療に使用することができる。本発明は、結晶性E6070、並びに該疾病および疾患を治療するための治療薬としてのその使用に関する。
【0015】
結晶性E6070の調製
【0016】
本発明はまた、以下の反応による結晶性E6070の調製方法に関する。:
【化2】
【0017】
該方法に従い、ER807447をまず水に懸濁して、水性懸濁液を得る。硫酸を、該溶液の内部温度を25℃より低く維持しながら、該水性懸濁液に加え、溶液を得る。該溶液は概して黄色である。該溶液を任意にろ過して、該溶液から微粒子を除去する。遠心分離などの当該技術分野において既知の、他の微粒子の除去技術を、該ろ過方法として使用してもよい。該溶液をその後、E6070が溶液から結晶化するまで、ゆっくり加温する。該溶液を、約100℃に加温してもよい。概して、結晶の形成は、約70℃の温度で起こる。好ましい加温速度は、概して約30分から5時間の範囲である。より長いまたはより短い時間であってもよく、特にバッチサイズに依存する。E6070は、高度に希釈した溶液からは直ちに結晶化しない。
【0018】
結晶性E6070の該調製方法において結晶化を高めるため、または結晶性E6070を再結晶化するため、貧溶媒を使用してもよい。該再結晶化方法は実施例5に記載される。該上記方法において、該貧溶媒は、硫酸添加前の該水性懸濁液に、または硫酸添加後および任意のろ過処理後の該溶液に、加えてもよい。使用可能な貧溶媒およびそれらの使用は、当該技術分野において既知である。代表的な貧溶媒には、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトンおよびそれらの混合のような、水-混和性貧溶媒が含まれる。貧溶媒を使用する場合、該溶液は濁っていても良い。該溶液を、水溶液を単に使用する時と同じ温度の高さに加温することは、概して必須ではない。
【0019】
結晶性E6070は、以下の方法に従い、ER807747の硫酸塩を形成することにより調製してもよい。: ER807447(1 重量部)を水(10 容量部)に懸濁し、および攪拌する。内部温度を25℃より低く維持しながら1M H2SO4(1 eq.、2.6 容量部)を加える。直ちに黄色の溶液が得られる。該溶液をろ過し、および該ろ液を水(10 容量部)と共に反応器に移す。種結晶(0.01 重量部)を加える。ゆっくりと2.5時間かけて70℃に加温する。温度が上昇するに従い、E6070は溶液から結晶化し始める。70℃で30分間攪拌し、その後ゆっくりと2時間をかけてRTに冷却する。紙(P5)でろ過し、および水(2×10 容量部)で洗浄する。N2/真空下で乾燥し、E6070を黄色自由流動性結晶粉末(1.2 重量部、91%)として得る。
【0020】
結晶性E6070
【0021】
その結晶フォームにおいて、E6070は、粒径に依存して黄色からオレンジ-黄または桃色の固体である。結晶性E6070は、粒径が小さいほどより黄色となる。大きい粒径では、結晶性E6070は、オレンジ-黄または桃色を呈する。大きい結晶性E6070粒子を製粉すると、黄色を呈するより小さな粒子となるが、E6070の結晶フォームに変化はない。
【0022】
結晶性E6070の水含量は約10%であり、E6070はER-807447の硫酸塩の3-水和物と同定された。上記の結晶性E6070の調製において記載するように、溶液を加熱したとき、該結晶性生成物は沈殿し始める。加温溶液からの結晶の沈殿は、注目すべきであり、ありふれたことではない。結晶性E6070の溶解性が低いのとは対照的に、非晶質E6070は水に大変溶けやすく、結晶性E6070の10-倍より高く溶けやすい。結晶性E6070は、その水和する3つの水を有し、水にそれほど溶けず、およびまた、吸湿性は大変低い。これらの特性により、結晶性E6070は、その非晶フォームと比較してより安定となる。結晶性E6070はまた、非晶フォームを水に溶解しおよび該溶液を徐々に加熱して結晶性E6070を沈殿させることにより、または該E6070水溶液に貧溶媒を加えることにより、その非晶フォームから調製してもよい。
【0023】
結晶性E6070はまた、様々な溶媒系から調製しうる。実施例4に記載されるように、E6070の19ロットを、様々な溶媒系から結晶化した。分析した17ロットの全てが、同一の結晶フォームを示した。さらに、分析した17ロット間に、水含量および硫酸イオン含量の有意な差は無かった。
【0024】
下記の実施例に記載されおよび図に示されるように、結晶性E6070を、赤外(IR)分光法、X-線粉末回折(XRD)、単結晶X-線回折、熱分析、吸湿性測定、および固体13C NMR 分光法により、特徴づけた。該結晶性E6070三水和物は、非-吸湿性だが、150℃に加熱したとき、脱水和(全て水を失う)する。該可変温度X-線粉末回折(XRD)パターンは、水分喪失により可逆的非晶となり、および該脱水和E6070は、大気中水分に曝露すると、安定な結晶状態であるその水和物に戻ることが可能であることを示す。図9および10参照。
【0025】
医薬組成物
【0026】
本発明は、治療的に有効な量の結晶性E6070、および医薬的に許容しうる担体、(また医薬的に許容しうる賦形剤として知られる)を含む、医薬組成物に関する。上述のように、E6070は、それを炎症性、自己免疫性、および/または増殖性の疾病および疾患の治療に有用とする生物学的特性を有する。それらの疾病および障害の治療のための医薬組成物は、該特定の疾病および障害を持つ患者の治療に適するような、治療的に有効な量の結晶性E6070を含む。
【0027】
結晶性E6070の“治療的に有効な量”(本発明にかかる、医薬組成物に関してここに、および治療方法に関して以下に記載する)は、炎症性もしくは自己免疫性の反応もしくは疾患の作用を減らすのに十分であり、または腫瘍細胞の成長を予防し、止め、もしくは阻害するのに十分な量をいう。いずれか特定の患者の治療に実際に必要な量は、治療される疾患およびその重症度; 使用する特定の医薬組成物; 該患者の年齢、体重、全体的な健康、性およびダイエット; 投与方法; 投与回数; 投与手段;およびE6070の排泄速度; 該治療の持続時間; 該使用する特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用する薬物;および医学技術分野において既知の他のファクターを含む、あらゆるファクターに依存する。これらのファクターは、(GoodmanおよびGilmanの“The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Tenth Edition, A. Gilman, J.Hardman and L. Limbird, eds., McGraw-Hill Press, 155-173, 2001)に記載され、これらは参照することで本明細書に引用する。
【0028】
本発明の医薬組成物は、E6070の結晶フォームを保持するいずれかの医薬製剤形であってよい。該医薬組成物は、固体製剤、懸濁液、注射組成物、局所製剤、または経皮製剤であってもよい。これらの製剤は、PCT出願公開W0 2004/06336 A2および米国出願公開2004/0186127 A1に開示され、これらは参照することで本明細書に引用する。
【0029】
医薬組成物のタイプに依存して、医薬的に許容しうる担体は、当該技術分野において既知の担体のいずれか1つまたは組み合わせから選択してもよい。医薬的に許容しうる担体の選定は、用いられる医薬製剤形および所望の投与方法に依存する。結晶性E6070を含む、本発明の医薬組成物において、担体は、結晶性E6070を維持するものを選定すべきである。つまり、該担体は、実質的にE6070の結晶フォームを変化させるべきでなく、例えば、結晶性E6070を溶解する液体担体は使用すべきでない。該担体は、望ましくない生物学影響、または医薬組成物の他の成分との有害な様式での他の相互作用が生じるような、他の点でもE6070と相性が悪いものであってはならない。
【0030】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、投与のし易さおよび投与量の均一性のために、投薬単位で処方される。“投薬単位”とは、治療を受ける患者に適当な、物理的に個別の治療薬の単位をいう。しかし、当然のことながら、本発明にかかるE6070およびその医薬組成物の1日の全投与量は、妥当な医学的判断の範囲内において、担当医により決定される。
【0031】
E6070の結晶フォームは、それらの調製の間、より容易に保持されるので、固体製剤は、本発明の医薬組成物として好ましい剤型である。カプセル、タブレット、丸剤、粉剤、および顆粒を含む、経口投与の固体製剤は、特に好ましい。該固体製剤において、該活性化合物を、少なくとも1つの、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウムのような不活性で医薬的に許容しうる担体と混合する。該固体製剤はまた、1以上の: a) スターチ、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸のような充てん剤または増量剤; b) 例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアラビアゴム(acacia)のような結合剤; c) グリセロールのような湿潤剤; d) 寒天、炭酸カルシウム、ポテトまたはタピオカスターチ、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムのような崩壊剤; e) パラフィンのような溶解遅延剤; f) 四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤; g) 例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートのような湿潤剤; h) カオリンおよびベントナイト粘土のような吸収剤; およびi) タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムのような滑沢剤を含んでもよい。該固体製剤はまた、緩衝剤を含んでもよい。それらはまた、適宜、乳白剤を含んでもよく、また、有効成分を、腸管の特定部分でのみ、または優先的にその部分で遅延して放出するようにした組成物であってもよい。Remington’s Pharmaceutical Sciences, Sixteenth Edition, E. W. Martin (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1980)に、医薬組成物の処方に使用される様々な担体、およびその調製の既知の技術が開示される。本発明の医薬組成物の固体製剤はまた、腸溶コーティングおよび該医薬製剤の技術分野において既知の他のコーティングのような、コーティングおよび殻で調製しうる。
【0032】
結晶性E6070は、上述のような1以上の担体とともに、固体ミクロ-カプセル剤中にあってもよい。結晶性E6070のミクロ-カプセル剤はまた、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤、さらに高分子量ポリエチレングリコールなどと共に、ソフトおよびハードゼラチンカプセル中で、使用される。
【0033】
本発明の好ましい固体医薬組成物は、7mm-直径、円形、両凸黄色フィルム-でコートしたタブレットであり、有効医薬成分として結晶性E6070を1、10、または50mg含む。全ての長所は、湿式造粒方法で得られる。これらの好ましい医薬組成物中の該担体(または賦形剤)には、: マンニトール、スターチ、クロスポビドン、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、タルク、ポリエチレングリコール8000、二酸化チタン、および酸化鉄(黄色)が含まれる。
【0034】
結晶性E6070を使用した治療方法
【0035】
本発明はまた、炎症性または自己免疫性の疾患の治療、増殖性疾患の治療方法を提供する。上述したように、特定の理論にとらわれることなく、E6070は、炎症性サイトカイン刺激により誘導される内皮細胞表面のE-セレクチンおよびICAM-1のような接着分子の発現を阻害する。該細胞表面分子は、炎症性反応および免疫応答内の炎症性細胞浸潤および細胞間相互作用において重要な役割を果たす。E6070はまた、転写因子NF-KBの活性化を減らし、および、炎症性サイトカインシグナル経路での転写活性化を阻害し、あらゆる炎症性疾患の病理に関与するIL-1およびTNFのような多くの遺伝子を制御する。さらに一般的に、炎症の発症機序におけるキープレーヤーとしてのNF-KBの同定により、NF-KB標的治療法は、炎症性および免疫性の疾患に有効であり得る(参照、generally, NF-KB in Defense and Disease, J. Clin. Investig. 2001, 107, 7)。
【0036】
炎症性、自己免疫性または増殖性の疾病および疾患の治療のために、結晶性E6070およびそれを含む医薬組成物は、本発明に従い、治療に有効ないずれかの量、いずれかの医薬組成物の剤型、およびいずれかの投与手段を用いて、投与される。言い換えれば、結晶性E6070を含む適当な医薬組成物は、適当な医薬的に許容しうる担体とともに所望の投与量に製剤化した後、患者に、経口、経直腸、非経口、大槽内、膣内、腹腔内、局所(パウダー、軟膏、またはドロップなどにて)、口腔内に、口腔または鼻腔用スプレーなどとして、投与され得る。
【0037】
本発明の該方法において、治療的に有効な量の結晶性E6070を投与する。概して、所望の治療効果を得るため、結晶性E6070を、1日あたり約0.001mg/kg(患者の体重)から約50mg/kg、約0.01mg/kgから約25mg/kg、または約0.1mg/kgから約10mg/kg、1日あたり1回以上、の投与量レベルで、投与してもよい。0.001mg/kgより少ない、または50mg/kg(例えば 50-100mg/kg)より多い投与量をまた、治療を受ける患者に投与してもよい。
【0038】
結晶性E6070の調製および特定解析
【実施例】
【0039】
実施例1: 結晶性E6070の調製
【0040】
結晶性E6070を、上記のおよび図1に示される方法を用いて、合成した。使用した溶媒は特級であった。他の化学薬品の全ては、分析グレードであった。
元素分析: E6070の炭素、水素、窒素、および硫黄含有量を、Quantitative Technologies、Inc.(QTI)、Whitehouse NJ、USA. で測定した。C、H、およびNを、2400 パーキン-エルマーCHN元素分析計を用いて燃焼分析により測定した。硫黄含量を、燃焼分析を行い、過塩素酸バリウム滴定を行って測定した。QTIで測定したC、H、N、およびSの元素組成値のパーセントは、E6070の分子式C23H36N6O7Sに一致する。該実験値は全て、理論値の±0.3%内であった。該理論値および実験値はともに、該薬物分子に1つの硫酸分子および3つ水分子を足したものから成る。
【表1】
【0041】
実施例2: 結晶性E6070の赤外線スペクトル
【0042】
DuraSamplIR II Diamond-ATR サンプリング付属物(SensIR Technologies, Danbury CT)を組み込んだNicolet Magna-IR 550フーリエ変換赤外分光計でニート粉末を測定し、E6070のIR吸収スペクトルを記録した。結晶性E6070のIR吸収スペクトルは図2に示される。特有の吸収バンドのアサイメント(結合)は、表2に示される結晶性E6070の割り当てられた構造と一致した。好ましくは、結晶性E6070は、1656、1620、1549、1136、1085、および1033cm-1から選ばれるニート試料の赤外線スペクトルにおいて、少なくとも2つの吸収バンドを有することを特徴とする。
【表2】
【0043】
実施例3: 結晶性E6070の粉末X-線回折パターン
【0044】
結晶性E6070をX-線粉末回折計(RINT-2000、理学製、日本)の試料台に設置し、および表3に示される条件で分析した。図3に、結晶性E6070の粉末X-線回折(XRD)パターンが示される。
【表3】
【0045】
実施例4: 結晶性E6070の単結晶X-線回折分析および計算値XRDパターン
【0046】
約1.8mgのE6070を、AT250天秤(メトラー、スイス)を用いて量り、および3.0mLのアセトン(1.5mL)および水(1.5mL)の混合液に加熱して溶解した。この溶液を、室温、デシケーター中で保存した。この溶液を3日間保存した後、小さいプリズム状の結晶が生じた。
【0047】
おおよその寸法が0.10×0.10×0.05mmのE6070の結晶が、グラスファイバーに付着した。回折データをω軸振動法(振動範囲: -100°から100°;ステップ: 10°)で波長0.75Åを用いて、R-AXIS Vイメージングプレート検出器システム(理学製、日本)で収集した。全ての測定は、スプリング-エイト(Super Photon ring-8 GeV)の創薬産業ビームラインBL32B2で行った。該収集データを、構造解析のためにクリスタルクリア(CrystalClear)を用いて処理した。
【0048】
該結晶構造を、最終R因子0.072で解析した。E6070結晶のデータ収集および結晶解析の結果は、表4に要約される。
【表4】
番号付けしたX-線結晶解析のダイアグラムおよびORTEP図は、図4および5にそれぞれ示される。図5において、該熱振動楕円体は、50%の確率水準で示される。
【0049】
該結晶構造により、該非対称ユニット中の、該有効成分のプロトン化したN-メチルアミン(N6)およびイミダゾピリジン環(N3)、1つのSO42-イオン、および3つの水分子が示される。E6070は、図6に示されるように、水分子の水素-結合ネットワークにより、H2SO4塩を構成する。ORTEP図(図5)中、シクロヘキサン環の2つの炭素原子の乱れが認められた。この挙動は、その部分における立体構造変化に起因しうる。上記に基づき、E6070の構造を上記の図5に示すように決定した。
【0050】
図7に、単結晶データから計算したX-線粉末回折データが示される。該粉末回折パターン(計算値)は、結晶性E6070のXRDパターンと一致する(例えば、図3に匹敵)。これは、E6070の単結晶は、E6070結晶粉末と同形であることを示す。
【0051】
実施例5: さまざまな溶媒からの結晶化の効果
【0052】
結晶化溶媒の性質は、有機化合物の様々な多形体の単離における既知のファクターであるため、E6070を約100mgスケールで、表5に示される19の溶媒系から結晶化した。水に試料を溶かし、適当な貧溶媒を加えて、再結晶したE6070を調製した。下記の表5に、使用した貧溶媒を示す。貧溶媒が示されていない場合は、該水溶液を100℃に加温し、その後室温に冷却して、E6070を再結晶化した。図8に示されるように、2つのロット、すなわち(ロット2)および(ロット5)は、他のロット(データは示されていない)よりXRD強度が低く、これらのみを除いては、結晶化物質のXRDパターンに有意な差はなかった。また、全てのロットで、ほとんど同一の水含量および硫酸イオン含量(表6)が示された。これらの結果から、E6070は、安定な結晶フォームで存在することが示された。
【表5】
【表6】
N.T.: 試験なし
*: 少量の試料を上記測定に使用した。
【0053】
実施例6: 可変温度粉末X-線回折法
【0054】
結晶性E6070をサンプルホルダーに詰め、およびその後、X-線回折計、RINT-2000(理学製、日本)の台に設置した。様々な温度でのE6070薬物のXRDパターンは、図9に示される。該装置を表7に示される条件で操作した。特徴的なXRDピークは、表8および図9に特定される。好ましくは、結晶性E6070を特徴づけおよび同定するのに使用されるピークには、8.3±0.2°2θ、10.1±0.2°2θ、14.3±0.2°2θ、15.3±0.2°2θ、18.1±0.2°2θ、21.1±0.2°2θ、24.1±0.2°2θ、および29.2±0.2°2θが含まれる。これらのピークの任意の組み合わせは、結晶性E6070を特徴づけるのに有用である。該薬物を30℃から160℃まで段階的な方法で加熱したとき、おそらく水分喪失に起因する結晶転移を示す新しい回折パターンが、90℃で認められた。該ピーク強度は徐々に減少し、および160℃より上で完全に消失した。従って、結晶性E6070の水分喪失は、結晶転移および実質的な格子欠陥の両方をもたらした。
【表7】
【表8】
【0055】
図10に示されるように、結晶性E6070は、その非晶フォームに可逆転移しうる。図10のPXRDパターン(1)は、周囲条件(25℃、60%相対湿度)下の結晶性E6070を示す。100℃に加熱したとき、水和する水分の喪失を伴って、PXRDパターン(3)は、結晶化度の喪失示す。冷却して周囲条件へ戻すことで、E6070は、その結晶フォームへ戻り、PXRDパターン(2)に示されるように再水和する。本実験は、上述の回折計を用いて行った。
【0056】
実施例7: 結晶性E6070の熱特性および吸湿特性の評価
【0057】
熱分析: 理学サーモフレックス(Thermoflex) TAS200 TG8101D(理学製、東京、日本)を用いて、熱重量示差熱分析(TG-DTA)を、表9の測定条件下に行った。該温度軸および該容器定数をインジウムで調整した。該固体試料(1-5mg)を開放アルミニウム皿に正確に量り、およびその後加熱した。
【表9】
【0058】
吸湿性測定: 試料を25℃で、自動調整-雰囲気微量天秤、MB-300W(VTI Corporation, FL, USA)を用いて、様々な相対湿度(RH)条件に曝露した。このシステムにおいて、試料を、25℃で等温室に維持し、および乾燥した(0%RH)および湿った(100%RH)の窒素の相対的流量を調節することによって、該RHを5%から95%に調節した。該試料の重量を2分毎に該微量天秤で量った。該平衡とする該重量安定性の基準は、各測定の最大重量変化が0.2%(w/w)より少ないことである。
【0059】
結晶性E6070は約10%の水を含むが、これは三水和物の水含量にほとんど等しく、それを25℃において様々な調節された湿度、0%から93%RHに曝露したとき、水分の吸収または喪失は認められなかった。この試験の吸着/脱着等温線は、図11に示される。該TG-DTAサ−モグラムにおいて、該DTA曲線は、2つのブロードな吸熱ピークを示し(図12)、約10%の質量減量が、90℃から150℃の温度範囲で認められた。該質量減量がその水含量に匹敵するため、これらの吸熱ピークにより、E6070の脱水挙動が暗示された。
【0060】
実施例8: 結晶性E6070の物理的安定性
【0061】
結晶性E6070の物理的安定性を以下の2つの条件下で評価した: 60℃、1箇月、および40℃/75%RH(開放)1箇月。結果として、いずれの苛酷条件においてもXRDパターンに変化はなかった(図13)。また、両苛酷条件試料は、イニシャルと同一のTG-DTAサ−モグラムを示した(図14)。従って、結晶性E6070は固体の状態で物理的に安定であることが示された。
【0062】
実施例9: E6070の結晶化 −−1g−スケールのバッチ
【0063】
1gスケールの結晶性E6070を、該スケールアップの結晶フォームおよびサイズを調べるため、機械的攪拌を用いて調製した。このロットのXRDパターンは先のロットと同一であり、および該TGサ−モグラムは、該水含量が三水和物の理論値、すなわち10.0%と一致することを示した。これによりグラムスケールで調製した結晶性E6070は、上述の実施例で記載したそれらと同一の結晶フォームであることが示された。図15は、この1gスケールの結晶化からのE6070結晶フォームの顕微鏡写真である。最大の結晶サイズは100μmより小さいようであった。
【0064】
実施例10: 結晶性E6070の粉末化
【0065】
結晶性E6070の色は、その粒径に依存して変化する。これは、E6070の単一ロットをホサカワミクロンパウダーシステムで、粉末化工程を経て、微粉末化したとき、明らかとなった。表9(“d(0.5)”は試料の50%が、その粒径またはそれより小さいことを示し、および“d(0.9)は、試料の90%がその粒径またはそれより小さいことを示す。)に示されるように、5回のテストランを粉末化した。これらのランにおいて、ラン2および3とラン4および5の間に明らかな差があり、1-5において平均粒径が減少するに従い、試料の黄色調が増加した。
【表10】
【0066】
実施例11: 結晶性E6070の固体13C NMRスペクトル
【0067】
結晶性E6070の固体13C NMRスペクトルを得るため、7.5-mmローターに結晶性E6070粉末を詰めた。13Cについて、75.3 MHzで操作し、ケマグネティック(Chemagnetics) CMX-II 300 NMR スペクトロメータ−で該スペクトルを記録した。該13C NMRスペクトルを、CPMAS(交差分極マジック角回転)および全サイドバンド抑制法(total side band suppression)(TOSS)を用いて得た。該ローターを、該マジック角で、4kHzの速度で回転した。また可変振幅交差分極法(Variable-amplitude cross polarization)(VACP)および2-パルス位相変調(two-pulse phase modulation)(TPPM)を、該スペクトルを得るために使用した。1H 90°パルス幅は4.2μs、および13C 180°パルス幅は8.4 μsであった。データ収集時間68msに相当する30.03kHzのスペクトル幅を用いて、2048点を得た。コンタクト時間 1ms、およびのパルス繰り返し時間 5s間を用いて、該スペクトルを得た。16384トランジェントの全てを平均して、該スペクトルを得た。化学シフトを、ヘキサメチルベンゼンのメチルピークを外部基準として使用し、化学シフト値17.35ppmを有するメチルピークで割り当てた。結晶性E6070の固体13C NMRスペクトルは、図16に示される。該スペクトルに示されるように、結晶性E6070の特徴的なピークは、16.1; 25.5; 37.8; 57.1; 67.2; 67.4; 100.2; 109.9; 114.8; 115.9; 121.9; 126.2; 128.3; 131.7; 138.8; 146.9; 152.3;および158.0ppmに認められる。化学シフトが、±0.3ppm内であると報告された。
【0068】
結晶性E6070を同定するのに好ましい特徴的なピークは、約120-160ppmの部分に認められる。概して、これらの好ましいピークは、他のピークと有意な重なりの無い、無処理のタブレットの固体13C NMRスペクトル中に認められうる。該理由は、多くの一般的な賦形剤(該成分を医薬有効成分(API)に加え、医薬タブレット組成物を調製する)もまた、該固体13C NMR スペクトルに現れるからである。得られたそれらの化学的性質から、これらの賦形剤の共鳴は、通常13CNMR スペクトルの50および110 ppmの間に現れる。タブレット組成物の大半が賦形剤であれば、該賦形剤ピークは、APIのピークのと比べ、著しく強くなりうる。加えて、賦形剤ピークはまた、脂肪族部(0-50 ppm)およびカルボニル部(160-190 ppm) 領域に現れうる。しかしながら、賦形剤ピークが、120-160ppmの間に位置するのは希である。従って、有効成分のピークを同定し、および比較するのに好ましい固体13C NMRスペクトルの範囲は、120-160 ppmである。本発明にかかる結晶性E6070は、好ましくは、固体13C NMRスペクトル中に、121.9±0.3 ppm; 126.2±0.3 ppm; 128.3±0.3 ppm; 131.7±0.3 ppm; 138.8±0.3 ppm; 146.9±0.3 ppm; 152.3±0.3 ppm;および158.0±0.3 ppmから選ばれる、少なくとも2つのピークを有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、好ましい結晶性E6070の調製を示す。
【0070】
【図2】図2は、結晶性E6070の赤外線スペクトルである。
【0071】
【図3】図3は、結晶性E6070の粉末X-線回折パターンを示す。
【0072】
【図4】図4は、E6070単結晶解析の番号付けしたダイアグラムである。
【0073】
【図5】図5は、E6070結晶のその非対称ユニットのORTEP図である。
【0074】
【図6】図6は、結晶性E6070の水素結合ネットワークおよびその分子間接触を示す。
【0075】
【図7】図7は、E6070の単結晶デ−タからの計算値のX-線回折パターンを示す。
【0076】
【図8】図8は、様々な溶媒系から再結晶化した結晶性E6070の17ロットのXRDパターンを示す。
【0077】
【図9】図9は、様々な温度での結晶性E6070のXRDパターンを示す。
【0078】
【図10】図10は、水和および脱水和E6070の可逆的なXRDパターンを示す。
【0079】
【図11】図11は、結晶性E6070の吸着/脱着等温線を示す。
【0080】
【図12】図12は、開放皿中、加熱速度10℃/分での、結晶性E6070のTG-DTAサ−モグラムを示す。
【0081】
【図13】図13は、結晶性E6070のXRDパターンを示す:(1) イニシャル、(2) 40℃/75%RH(1M)、および(3) 60℃(1M)。
【0082】
【図14】図14は、結晶性E6070のTG-DTAサ−モグラムを示す。:(1) イニシャル、(2) 40℃/75%RH(1M)、および(3) 60℃(1M)。
【0083】
【図15】図15は、E6070 結晶の顕微鏡写真である。
【0084】
【図16】図16は、結晶性E6070の固体13C NMRスペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物。
【請求項2】
粉末X-線回折パターン中に、8.3±0.2°2θ、10.1±0.2°2θ、14.3±0.2°2θ、15.3±0.2°2θ、および18.1±0.2°2θからなる群から選ばれる、少なくとも2つのピークを有することを特徴とする、請求項1の結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物。
【請求項3】
単斜晶系結晶系でP21/n 空間群を有する、請求項1の結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物。
【請求項4】
結晶格子パラメーター:
a=16.915(3) Å
b=12.384(2) Å
c=12.554(2) Å
β=97.089(8)°
V=2609.7(9) Å3
およびZ値=4を有することを特徴とする、請求項4の結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物。
【請求項5】
固体13C NMRスペクトル中に、121.9±0.3 ppm; 126.2±0.3 ppm; 128.3±0.3 ppm; 131.7±0.3 ppm; 138.8±0.3 ppm; 146.9±0.3 ppm; 152.3±0.3 ppm;および158.0±0.3 ppmからなる群から選ばれる、少なくとも2つのピークを有することを特徴とする、請求項1の結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物。
【請求項6】
ニート試料の赤外線スペクトル中に、 1656、1620、1549、1136、1085、および1033 cm-1からなる群から選ばれる、少なくとも2つの吸収バンドを有することを特徴とする、請求項1の結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物。
【請求項7】
結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物、および医薬的に許容しうる担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
該結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物が、粉末X-線回折パターン中に、8.3±0.2°2θ、10.1±0.2°2θ、14.3±0.2°2θ、15.3±0.2°2θ、18.1±0.2°2θ、21.1±0.2°2θ、24.1±0.2°2θ、および29.2±0.2°2θからなる群から選ばれる、少なくとも2つのピークを有することを特徴とする、請求項7の医薬組成物。
【請求項9】
該結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物が、単斜晶系結晶系およびP21/n 空間群である、請求項7の医薬組成物。
【請求項10】
該結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物が、結晶格子パラメーター:
a=16.915(3) Å
b=12.384(2) Å
c=12.554(2) Å
β=97.089(8)°
V=2609.7(9) Å3
およびZ値=4を有することを特徴とする、請求項9の医薬組成物。
【請求項11】
該結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物が、固体13C NMRスペクトル中に、121.9±0.3 ppm; 126.2±0.3 ppm; 128.3±0.3 ppm; 131.7±0.3 ppm; 138.8±0.3 ppm; 146.9±0.3 ppm; 152.3±0.3 ppm;および158.0±0.3 ppmからなる群から選ばれる、少なくとも2つのピークを有することを特徴とする、請求項7の医薬組成物。
【請求項12】
該結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物が、ニート試料の赤外線スペクトル中に、1656、1620、1549、1136、1085、および1033 cm-1からなる群から選ばれる、少なくとも2つの吸収バンドを有することを特徴とする、請求項7の医薬組成物。
【請求項13】
治療的に許容される量の結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物を患者に投与することを特徴とする、炎症性疾患、自己免疫疾患、または増殖性疾患の治療方法。
【請求項14】
該結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物を、結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物、および医薬的に許容しうる担体を含む医薬組成物として投与する、請求項13の方法。
【請求項15】
ER807447を水に懸濁して、水性懸濁液を得る工程、
該水性懸濁液に、その内部温度を25℃より低く維持しながら、H2SO4を加えて溶液を調製する工程、
該溶液を適宜ろ過する工程、および
E6070が溶液から結晶化するまで該水溶液をゆっくりと加温する工程
からなる、下記式:
【化1】
で示される反応により、結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物、E6070を製造する方法。
【請求項16】
加温工程の前に、E6070の種結晶を該溶液に加える工程をさらに含む、請求項16の方法。
【請求項17】
該加温工程が、該溶液を約2.5時間かけて約70℃にゆっくり加温することを含む、請求項16の方法。
【請求項18】
該加温工程が、該溶液を約2.5時間かけて約70℃にゆっくり加温することを含む、請求項15の方法。
【請求項1】
結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物。
【請求項2】
粉末X-線回折パターン中に、8.3±0.2°2θ、10.1±0.2°2θ、14.3±0.2°2θ、15.3±0.2°2θ、および18.1±0.2°2θからなる群から選ばれる、少なくとも2つのピークを有することを特徴とする、請求項1の結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物。
【請求項3】
単斜晶系結晶系でP21/n 空間群を有する、請求項1の結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物。
【請求項4】
結晶格子パラメーター:
a=16.915(3) Å
b=12.384(2) Å
c=12.554(2) Å
β=97.089(8)°
V=2609.7(9) Å3
およびZ値=4を有することを特徴とする、請求項4の結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物。
【請求項5】
固体13C NMRスペクトル中に、121.9±0.3 ppm; 126.2±0.3 ppm; 128.3±0.3 ppm; 131.7±0.3 ppm; 138.8±0.3 ppm; 146.9±0.3 ppm; 152.3±0.3 ppm;および158.0±0.3 ppmからなる群から選ばれる、少なくとも2つのピークを有することを特徴とする、請求項1の結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物。
【請求項6】
ニート試料の赤外線スペクトル中に、 1656、1620、1549、1136、1085、および1033 cm-1からなる群から選ばれる、少なくとも2つの吸収バンドを有することを特徴とする、請求項1の結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物。
【請求項7】
結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物、および医薬的に許容しうる担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
該結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物が、粉末X-線回折パターン中に、8.3±0.2°2θ、10.1±0.2°2θ、14.3±0.2°2θ、15.3±0.2°2θ、18.1±0.2°2θ、21.1±0.2°2θ、24.1±0.2°2θ、および29.2±0.2°2θからなる群から選ばれる、少なくとも2つのピークを有することを特徴とする、請求項7の医薬組成物。
【請求項9】
該結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物が、単斜晶系結晶系およびP21/n 空間群である、請求項7の医薬組成物。
【請求項10】
該結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物が、結晶格子パラメーター:
a=16.915(3) Å
b=12.384(2) Å
c=12.554(2) Å
β=97.089(8)°
V=2609.7(9) Å3
およびZ値=4を有することを特徴とする、請求項9の医薬組成物。
【請求項11】
該結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物が、固体13C NMRスペクトル中に、121.9±0.3 ppm; 126.2±0.3 ppm; 128.3±0.3 ppm; 131.7±0.3 ppm; 138.8±0.3 ppm; 146.9±0.3 ppm; 152.3±0.3 ppm;および158.0±0.3 ppmからなる群から選ばれる、少なくとも2つのピークを有することを特徴とする、請求項7の医薬組成物。
【請求項12】
該結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物が、ニート試料の赤外線スペクトル中に、1656、1620、1549、1136、1085、および1033 cm-1からなる群から選ばれる、少なくとも2つの吸収バンドを有することを特徴とする、請求項7の医薬組成物。
【請求項13】
治療的に許容される量の結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物を患者に投与することを特徴とする、炎症性疾患、自己免疫疾患、または増殖性疾患の治療方法。
【請求項14】
該結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物を、結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物、および医薬的に許容しうる担体を含む医薬組成物として投与する、請求項13の方法。
【請求項15】
ER807447を水に懸濁して、水性懸濁液を得る工程、
該水性懸濁液に、その内部温度を25℃より低く維持しながら、H2SO4を加えて溶液を調製する工程、
該溶液を適宜ろ過する工程、および
E6070が溶液から結晶化するまで該水溶液をゆっくりと加温する工程
からなる、下記式:
【化1】
で示される反応により、結晶性1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-アミン, 7-[5-[(シクロヘキシルメチルアミノ)-メチル]-1H-インドール-2-イル]-2-メチル, 硫酸塩(1:1), 三水和物、E6070を製造する方法。
【請求項16】
加温工程の前に、E6070の種結晶を該溶液に加える工程をさらに含む、請求項16の方法。
【請求項17】
該加温工程が、該溶液を約2.5時間かけて約70℃にゆっくり加温することを含む、請求項16の方法。
【請求項18】
該加温工程が、該溶液を約2.5時間かけて約70℃にゆっくり加温することを含む、請求項15の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2008−528690(P2008−528690A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554170(P2007−554170)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/003463
【国際公開番号】WO2006/083908
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/003463
【国際公開番号】WO2006/083908
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】
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