説明

結晶質および非晶質のアトルバスタチンナトリウム

結晶質アトルバスタチンナトリウム、それを含む組成物およびその生産方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶質アトルバスタチンナトリウム、それを含む組成物およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳血管疾患は、しばしば、ヒトの健康に対する最大の脅威の1つであると考えられる。ある調査によれば、中国では毎年300万人より多くの人がこの疾患で死亡し、この疾患はすべての死亡の50%を占める。生存者の75%は、彼らの作業能力を種々の程度に失い、そして4%はひどく影響を受ける。さらに、30歳以上の成人の80%は、その形態の1つ(例えば、高脂血症、高血圧症、冠状動脈性心疾患(CHD)、および脳卒中)の脳血管疾患を有し得る。
【0003】
アテローム性動脈硬化症は、虚血性脳血管疾患(ICVD)の病理学的基礎である。中枢脳に関連する冠状動脈性心疾患および脳血管疾患による死亡率は最近増加している。したがって、アテローム性動脈硬化症に対する治療の研究はますます重要になっている。
【0004】
アテローム性動脈硬化症は、動脈内皮での血液成分の堆積作用、平滑筋細胞および膠原繊維の過形成である。動脈壁の内皮および平滑筋への種々の形態の傷害に対する過度の炎症性−線維増殖性応答から生じる病変は、大きい弾力性がある動脈(例えば、大動脈およびその第1分枝)ならびに中程度の筋動脈(例えば、脳動脈、冠状動脈、腎動脈および四肢の動脈の動脈枝)に影響を及ぼす。病変は、通常、容易に損傷を受ける管内皮枝の開口部で見出される。病変はプラーク状に分布し、そして管をより硬く狭くし、または室をブロックし、次いで組織および器官で血液の不在を生じる。したがって、最も起こり得る影響は、心筋梗塞および脳梗塞である。アテローム性動脈硬化症の原因は、この疾患に関与する多くの複雑な因子のため、完全には理解されていない。一般に、2つの主な因子の型があり、第1は、年齢、性および家系遺伝因子などの体質的因子であり、そして第2は、高脂血症、高血圧症、過度の喫煙、糖尿病および過度の肥満などの獲得因子である。これらのすべては、その集団的多因子性作用によってアテローム性動脈硬化症に影響を及ぼし、そして増大させる。
【0005】
数種類の抗アテローム性動脈硬化症薬物、例えば、脂質調節剤、抗酸化剤、脂肪酸希釈剤および動脈内皮保護剤がある。HMG−CoA還元酵素インヒビターは脂質調節剤であり、そしてスタチンファミリーの薬物、例えば、メバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチンおよびアトルバスタチンが挙げられ、これらは利用可能な最良のコレステロール低減スタチン医薬であると考えられる。すべてが、原発性高脂血症、異型接合体家族性高脂血症、高リポタンパク質(III)、糖尿病および腎性高脂血症のような疾患を治療するための第一選択薬である。多数の科学者がこれらの種類の医薬を研究し、そして多くの技術的方法をすでに報告している。例えば、中国特許出願9981076.0に開示されるように、高純度のHMG−CoA還元酵素インヒビターを得る能力は、HMG−CoA還元酵素インヒビターを分離するための「色スペクトルの置換」に依存する。
【0006】
この方法により、高収率、低コストおよび生態学的バランスに対する最小の影響を有する、高純度のHMG−CoA還元酵素インヒビターが得られるが、クロマトグラフィーのカラムを利用すると同時に「色スペクトルの置換」技術を適用する。この原理は、従来の層分析であり、これは常に、実行に長時間かかり、それを操作するために専門研究者の技術を必要とする。さらに、大規模な自動化生産で行うことは困難である。
【0007】
したがって、この方法は、少量のHMG−CoA還元酵素インヒビターを実験室規模のみで精製するために用いられる。これは、クロマトグラフィーのカラムの再生が困難であるため、アトルバスタチンを精製するためには用いられない。アトルバスタチンは、スタチンファミリーの新世代の抗高脂血症剤であり、特に、通常の高脂血症、または増大した血液コレステロールから主に生じる混合性高脂血症に対して用いられる。これは、特に他の医薬に無応答性の患者に有用である。
【0008】
スタチンファミリー医薬のいくつかは、他の抗高脂血症薬物と一緒に用いられる場合に良好な有効性を有すると考えられる。しかし、アトルバスタチンは単独で投与される場合に十分な有効性を有することが示された。したがって、アトルバスタチンの売上高は劇的に増大しているため、現在市場で最もよく売れているスタチンファミリー医薬である。
【0009】
中国特許出願番号第02815070.8号は、結晶質アトルバスタチンカルシウムの生産方法を開示している。それは、[R−(R<>,R<>)]−2−(4−フルオロフェニル)−ベータ,デルタ−ジヒドロキシ−5−(l−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸カルシウム塩の2つの結晶質形態であるVIおよびVIIを開示している。この方法によれば、9つの工程が、形態VIを単離するために必要とされ、そして5つの工程が、形態VIIを単離するために必要とされる。生産された結晶質アトルバスタチンカルシウムはHPLCによって99.0%より高い純度である。しかし、複雑な精製プロセスのため、用いられる方法は非常に高価である。この方法はまた、精製剤としてニトリルの使用を必要とし、これは環境に有害であるのみでなく関与する作業者にも有害である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的はこれらの問題を軽減することを探求することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のさらなる目的は、種々の多形形態の結晶質アトルバスタチンナトリウムおよびその調製のためのプロセスを提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の第1の局面によれば、結晶質アトルバスタチンナトリウムが提供される。
【0013】
本発明のさらなる局面によれば、2シータが約3.36±0.2、8.3±0.2、8.81±0.2、9.69±0.2、19.48±0.2、20.86±0.2および22.88±0.2°で表されるピークを含むX線回折パターンを示す結晶質アトルバスタチンナトリウムが提供される。
【0014】
本発明の別の局面によれば、2シータが約3.36±0.2、4.8±0.2、5.59±0.2、7.41±0.2、8.3±0.2、8.81±0.2、9.69±0.2、10.24±0.2、11.13±0.2、11.21±0.2、12.22±0.2、12.8±0.2、13.85±0.2、15.99±0.2、16.40±0.2、16.95±0.2、17.82±0.2、18.15±0.2、18.46±0.2、19.48±0.2、20.86±0.2、21.82±0.2、22.88±0.2、23.98±0.2、28.34±0.2、32.27±0.2および33.40±0.2°で表されるピークを含むX線回折パターンを示す結晶質アトルバスタチンナトリウムが提供される。
【0015】
また、本発明によって、図2に示されるものと実質的に同一であるX線回折パターンを示す結晶質アトルバスタチンナトリウムが提供される。
【0016】
本発明のさらなる局面によれば、結晶質アトルバスタチンナトリウムの調製方法が提供され、該方法は、
(a)非晶質アトルバスタチンナトリウムを第1の有機溶媒に添加して第1の溶液を形成する工程;
(b)第2の有機溶媒を該第1の溶液に添加して第2の溶液を形成する工程;
(c)アトルバスタチンナトリウムを該溶液から晶出させる工程;および
(d)該結晶化したアトルバスタチンナトリウムを回収する工程
を含む。
【0017】
好ましくは、第1の有機溶媒はアルコールであり、より好ましくは直鎖または分岐のC〜Cアルコールであり、さらに好ましくはエタノールである。
【0018】
好ましい実施態様では、第2の有機溶媒はケトンであり、より好ましくはアセトンである。
【0019】
好ましくは、非晶質アトルバスタチンナトリウムは、第1の有機溶媒に、約40g〜100gの第1の有機溶媒について約8〜10gの非晶質アトルバスタチンの割合で添加される。
【0020】
好ましくは、第2の有機溶媒は、第1の溶液に、工程(a)で用いた約8〜10gの非晶質アトルバスタチンについて約50〜100gの第2の有機溶媒の割合で添加される。
【0021】
第1の有機溶媒は、好ましくは溶液中に少なくとも約75%の有機溶媒を含む。好ましくは、結晶化したアトルバスタチンナトリウムは、濾過によって回収される。回収された結晶化したアトルバスタチンナトリウムは、乾燥されることが好ましく、より好ましくは真空下で乾燥される。
【0022】
本発明のさらなる実施態様では、この方法は、工程(a)での使用のための非晶質アトルバスタチンナトリウムの調製のための以下の追加工程を含む:
(i)アトルバスタチンナトリウムを含む第3の溶液を調製する工程;
(ii)該第3の溶液のpHを酸性のpHに調整する工程;
(iii)第3の有機溶媒を添加して第4の溶液を形成する工程;
(iv)有機層を単離する工程;
(v)該有機層のpHをアルカリ性のpHに調整する工程;
(vi)沈殿した非晶質アトルバスタチンナトリウムを回収する工程。
【0023】
好ましくは、第3の溶液は、約5%のアトルバスタチンナトリウムを含む。
【0024】
好ましくは、第3の溶液のpHは、塩酸の添加によって調整され、好ましくは約15〜30%、より好ましくは約15〜20%の濃度を有する塩酸の添加によって調整される。好ましい実施態様では、第3の溶液のpHは、約1と4との間に調整される。
【0025】
好ましくは、第3の有機溶媒は、ハロゲンで置換されたC〜C炭化水素であり、より好ましくはジクロロメタンである。
【0026】
第3の有機溶媒は、第3の溶液に、第3の溶液中の約10gのアトルバスタチンナトリウムについて約100〜200gの第3の有機溶媒の割合で添加される。
【0027】
好ましくは、有機層のpHは、水酸化ナトリウム溶液の添加によって調整され、好ましくは約20〜50%の濃度を有する水酸化ナトリウム溶液の添加によって調整される。好ましい実施態様では、有機層のpHは、約9と10との間に調整される。
【0028】
好ましくは、沈殿した非晶質アトルバスタチンナトリウムは、濾過によって回収される。
【0029】
好ましくは、沈殿した非晶質アトルバスタチンナトリウムは、乾燥され、より好ましくは真空下で乾燥される。
【0030】
好ましい実施態様によれば、沈殿した非晶質アトルバスタチンナトリウムは、図1に示されるものと実質的に同一であるX線回折パターンを示す。
【0031】
別の実施態様によれば、沈殿した非晶質アトルバスタチンナトリウムは、好ましくは2シータが約7.87±0.2、18.18±0.2、18.87±0.2および22.88±0.2°で表されるピークを含むX線回折パターンを示す。
【0032】
さらなる実施態様によれば、沈殿した非晶質アトルバスタチンナトリウムは、好ましくは2シータが約5.45±0.2、7.87±0.2、9.52±0.2、11.02±0.2、14.2±0.2、16.4±0.2、18.18±0.2、18.87±0.2、19.76±0.2、22.88±0.2、32.27±0.2、33.35±0.2、37.86±0.2、39.99±0.2、41.13±0.2および44.95±0.2°で表されるピークを含むX線回折パターンを示す。
【0033】
本発明のさらなる局面は、非晶質アトルバスタチンナトリウムに関する。
【0034】
本発明の別の局面によれば、2シータが約7.87±0.2、18.18±0.2、18.87±0.2および22.88±0.2°で表されるピークを含むX線回折パターンを示す非晶質アトルバスタチンナトリウムが提供される。
【0035】
本発明のさらなる局面によれば、2シータが約5.45±0.2、7.87±0.2、9.52±0.2、11.02±0.2、14.2±0.2、16.4±0.2、18.18±0.2、18.87±0.2、19.76±0.2、22.88±0.2、32.27±0.2、33.35±0.2、37.86±0.2、39.99±0.2、41.13±0.2および44.95±0.2°で表されるピークを含むX線回折パターンを示す非晶質アトルバスタチンナトリウムが提供される。
【0036】
また、本発明によって、図1に示されるものと実質的に同一であるX線回折パターンを示す非晶質アトルバスタチンナトリウムが提供される。
【0037】
さらに、本発明によって、本明細書に記載の任意の方法によって生産される非晶質アトルバスタチンナトリウムが提供される。
【0038】
本発明はまた、本明細書に記載の任意の方法によって生産される結晶質アトルバスタチンナトリウムに関する。
【0039】
好ましくは、結晶質アトルバスタチンナトリウムは、少なくとも95%の純度を有し、より好ましくは少なくとも98%、さらに好ましくは少なくとも99%の純度を有する。
【0040】
好ましくは、非晶質アトルバスタチンナトリウムは、少なくとも90%の純度を有し、より好ましくは少なくとも93%、さらに好ましくは少なくとも96%、なお好ましくは少なくとも98%の純度を有する。
【0041】
したがって、本発明は、新規な結晶質形態のアトルバスタチンナトリウム、新規な非晶質形態のアトルバスタチンナトリウムおよびそれらの調製のためのプロセスを記載する。
【0042】
本明細書で開示された結晶質形態のアトルバスタチンナトリウムと非晶質形態のアトルバスタチンナトリウムとの両方とも、脂質調節剤の投与によって予防、改善または除去される種々の疾患の治療に有用であり得ることが予測される。このような疾患の例としては、高脂血症、原発性高脂血症、異型接合体家族性高脂血症、腎性高脂血症、混合性高脂血症、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、冠状動脈性心疾患、脳卒中および虚血性脳血管疾患が挙げられる。
【0043】
したがって、本発明の別の局面によれば、本明細書に記載のような結晶質アトルバスタチンナトリウムまたは非晶質アトルバスタチンナトリウムを含む薬学的組成物が提供される。
【0044】
本発明のさらなる局面によれば、脂質調節剤の投与によって予防、改善または除去される疾患を治療するための組成物が提供され、該組成物は、本明細書に記載のような結晶質アトルバスタチンナトリウムまたは非晶質アトルバスタチンナトリウムを含む。
【0045】
好ましくは、疾患は、高脂血症、原発性高脂血症、異型接合体家族性高脂血症、腎性高脂血症、混合性高脂血症、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、冠状動脈性心疾患、脳卒中および虚血性脳血管疾患から選択される。
【0046】
また、本発明によって、脂質調節剤の投与によって予防、改善または除去される疾患を治療する方法が提供され、該方法は、患者に、本明細書に記載のような、治療的有効量の結晶質アトルバスタチンナトリウム、非晶質アトルバスタチンナトリウム、または薬学的組成物を投与する工程を含む。
【0047】
好ましくは、疾患は、高脂血症、原発性高脂血症、異型接合体家族性高脂血症、腎性高脂血症、混合性高脂血症、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、冠状動脈性心疾患、脳卒中および虚血性脳血管疾患から選択される。
【0048】
治療的有効量は、本明細書で記載した疾患を予防し、改善しまたは除去することが可能である量を意味する。
【0049】
結晶質アトルバスタチンナトリウムまたは非晶質アトルバスタチンナトリウムは、そのための担体、希釈剤または賦形剤と混合され得、これらはすべて、当該技術分野で周知である。例えば、適切な担体としては、丸剤、粉剤、トローチ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、溶液剤、シロップ剤、エアロゾル剤、軟膏剤、軟および硬ゼラチンカプセル剤、坐剤、滅菌注射溶液剤および滅菌包装粉剤が挙げられ得る。
【0050】
本発明のさらなる局面によれば、高純度の結晶質形態のアトルバスタチンナトリウムを調製するためのプロセスが提供され、該方法は、以下の工程を含む:
(a)非晶質アトルバスタチンナトリウムの調製:アトルバスタチンナトリウム溶液から始め、pHを酸性溶液で約1〜4に調整し、有機溶媒で抽出し、有機層中のpHを約9〜10に調整し、そして沈殿物を濾過によって回収する。真空下での乾燥後、非晶質アトルバスタチンナトリウムを得る。
(b)結晶質アトルバスタチンナトリウムの調製:得られた非晶質アトルバスタチンナトリウムを水性アルコール溶媒に溶解し、アセトンを添加し、アトルバスタチンナトリウムを低温で晶出させる。結晶質材料を濾過によって回収し、次いで真空下で乾燥する。
【0051】
好ましくは、用いられる酸性溶液は、約15%〜30%の範囲の濃度を有する塩酸である。好ましくは、用いられる塩基性溶液は、約20%〜50%の範囲の濃度を有する水酸化ナトリウム溶液である。好ましい実施態様では、用いられる有機溶媒は、ジクロロメタンであり、これは、溶液中で、アトルバスタチンナトリウムの量に対して約10〜20:1の質量比である。用いられる水性アルコール溶媒は、好ましくはエタノールであり、用いられるエタノールの量は、好ましくは溶液中で、アトルバスタチンナトリウムの量に対して約4〜10:1の質量比である。用いられるケトン溶媒は、好ましくはアセトンであり、用いられるアセトンの量は、好ましくは溶液中で、アトルバスタチンナトリウムの量に対して約5〜10:1の質量比である。
【0052】
したがって、本発明は、高純度の結晶質形態のアトルバスタチンナトリウムを提供する。アトルバスタチンカルシウムを調製するための通常の操作は、通常、アトルバスタチンナトリウムが単離されることなく中間体としてのみ働く溶液中での、ナトリウムのカルシウムとの置換を含む。したがって、単離されたカルシウム塩の質は、純度の点で満足ではない。本発明は、高純度の結晶質アトルバスタチンナトリウムを調製するための結晶化プロセスを提供し、これは、薬学的成分として用いられ得るか、あるいは高純度のアトルバスタチンカルシウムに変換され得る。
【実施例】
【0053】
本発明の実施例を、ここで、添付の図面を参照して説明する。
【0054】
結晶化
実施例1
10gのアトルバスタチンナトリウムを含む溶液(200g)を500mlの三首フラスコに添加した。pHを1に調整し、ジクロロメタン(100g)を添加し、次いで有機層のpHを、20%水酸化ナトリウム溶液で9に調整した。沈殿物を濾過によって回収し、次いで真空下で乾燥した。図1に示すX線粉末回折パターンを有する非晶質アトルバスタチンナトリウム(形態Iと呼ぶ)(8.6g)をこのようにして得た。
【0055】
非晶質アトルバスタチンナトリウム(8.6g)を80%エタノール溶液(40g)に溶解した。次いでアセトン(50g)を添加した。アトルバスタチンナトリウムは冷却の際に晶出した。結晶質アトルバスタチンナトリウムを濾過によって回収し、そして真空下で乾燥した(7.8g)。高純度の結晶質アトルバスタチンナトリウム(形態Iと呼ぶ)を得、これは99.3%のアッセイ純度であり、そして結晶形態は図2に示すXRDスペクトルを有した。
【0056】
実施例2
10gのアトルバスタチンナトリウムを含む溶液(200g)を500mlの三首フラスコに添加した。pHを1に調整し、ジクロロメタン(100g)を添加し、次いで有機層のpHを、20%水酸化ナトリウム溶液で9に調整した。沈殿物を濾過によって回収し、次いで真空下で乾燥した。図1に示すX線粉末回折パターンを有する非晶質アトルバスタチンナトリウム(形態Iと呼ぶ)(8.6g)をこのようにして得た。
【0057】
非晶質アトルバスタチンナトリウム(8.6g)を98%エタノール溶液(100g)に溶解した。次いでアセトン(100g)を添加した。アトルバスタチンナトリウムは冷却の際に晶出した。結晶質アトルバスタチンナトリウムを濾過によって回収し、そして真空下で乾燥した(7.8g)。高純度の結晶質アトルバスタチンナトリウム(形態Iと呼ぶ)を得、これは99.6%のアッセイ純度であり、そして結晶形態は図2に示すXRDスペクトルを有した。
【0058】
実施例3
15〜20%の濃度を有する塩酸を、アトルバスタチンナトリウムを含む溶液に添加し、そしてpHを1〜4に調整した。ジクロロメタンをこの溶液に添加し、そして有機層を20〜50%水酸化ナトリウム溶液と混合し、pHを9〜10にした。一般に、用いた水酸化ナトリウムの量は、用いたアトルバスタチンナトリウムの量の10〜20倍の割合であった。次いで、沈殿物を濾過によって回収し、そして真空下で乾燥した。図1に示すXRDスペクトルを有する非晶質アトルバスタチンナトリウム(形態Iと呼ぶ)をこのようにして得た。
【0059】
非晶質アトルバスタチンナトリウムを、用いたアトルバスタチンナトリウムの量の約4〜10倍の割合でエタノール溶液に溶解した。アセトンを、用いたアトルバスタチンナトリウムの量の約5〜10倍の割合でこの溶液に添加した。アトルバスタチンナトリウムを低温で晶出させ、濾過によって回収し、次いで真空下で乾燥した。図2に示すXRDスペクトルを有する高純度の結晶質アトルバスタチンナトリウム(形態Iと呼ぶ)を得た。
【0060】
実施例4
10gのアトルバスタチンナトリウムを含む溶液(200g)を500mlの三首フラスコに添加した。pHを1に調整し、ジクロロメタン(100g)を添加し、次いで有機層のpHを、20%水酸化ナトリウム溶液で9に調整した。沈殿物を濾過によって回収し、次いで真空下で乾燥した。図1に示すX線粉末回折パターンを有する非晶質アトルバスタチンナトリウム(形態Iと呼ぶ)(8.6g)をこのようにして得た。
【0061】
非晶質アトルバスタチンナトリウム(8.6g)を95%エタノール溶液(100g)に溶解した。次いでアセトン(100g)を添加した。アトルバスタチンナトリウムは冷却の際に晶出した。結晶質アトルバスタチンナトリウムを濾過によって回収し、そして真空下で乾燥した(7.2g)。高純度の結晶質アトルバスタチンナトリウム(形態Iと呼ぶ)を得、これは99.6%のアッセイ純度であり、そして結晶形態は図2に示すXRDスペクトルを有した。
【0062】
上記方法によって生産されたアトルバスタチンナトリウム塩は以下の構造を有していた:
【0063】
【化1】

【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】非晶質アトルバスタチンナトリウムについての粉末X線回折パターンである。
【図2】本発明の結晶質アトルバスタチンナトリウムについての粉末X線回折パターンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項2】
2シータが約3.36±0.2、8.3±0.2、8.81±0.2、9.69±0.2、19.48±0.2、20.86±0.2および22.88±0.2°で表されるピークを含むX線回折パターンを示す、結晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項3】
2シータが約3.36±0.2、4.8±0.2、5.59±0.2、7.41±0.2、8.3±0.2、8.81±0.2、9.69±0.2、10.24±0.2、11.13±0.2、11.21±0.2、12.22±0.2、12.8±0.2、13.85±0.2、15.99±0.2、16.40±0.2、16.95±0.2、17.82±0.2、18.15±0.2、18.46±0.2、19.48±0.2、20.86±0.2、21.82±0.2、22.88±0.2、23.98±0.2、28.34±0.2、32.27±0.2および33.40±0.2°で表されるピークを含むX線回折パターンを示す、結晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項4】
図2に示されるものと実質的に同一であるX線回折パターンを示す、結晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項5】
少なくとも95%の純度を有する、前記いずれかの請求項に記載の結晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項6】
少なくとも98%の純度を有する、請求項5に記載の結晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項7】
少なくとも99%の純度を有する、請求項6に記載の結晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項8】
結晶質アトルバスタチンナトリウムの調製方法であって、
(a)非晶質アトルバスタチンナトリウムを第1の有機溶媒に添加して第1の溶液を形成する工程;
(b)第2の有機溶媒を該第1の溶液に添加して第2の溶液を形成する工程;
(c)アトルバスタチンナトリウムを該溶液から晶出させる工程;および
(d)該結晶化したアトルバスタチンナトリウムを回収する工程
を含む、方法。
【請求項9】
前記第1の有機溶媒がアルコールである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の有機溶媒がエタノールである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の有機溶媒がケトンである、請求項8から10のいずれかの項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の有機溶媒がアセトンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記非晶質アトルバスタチンナトリウムが、前記第1の有機溶媒に、約40g〜100gの第1の有機溶媒について約8〜10gの非晶質アトルバスタチンの割合で添加される、請求項8から12のいずれかの項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の有機溶媒が、前記第1の溶液に、前記工程(a)で用いた約8〜10gの非晶質アトルバスタチンについて約50〜100gの第2の有機溶媒の割合で添加される、請求項8から13のいずれかの項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の有機溶媒が、溶液中に少なくとも約75%の有機溶媒を含む、請求項8から14のいずれかの項に記載の方法。
【請求項16】
前記結晶化したアトルバスタチンナトリウムが、濾過によって回収される、請求項8から15のいずれかの項に記載の方法。
【請求項17】
前記回収された結晶化したアトルバスタチンナトリウムが、乾燥される、請求項8から16のいずれかの項に記載の方法。
【請求項18】
前記回収された結晶化したアトルバスタチンナトリウムが、真空下で乾燥される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記工程(a)での使用のための非晶質アトルバスタチンナトリウムの調製のための以下の追加工程:
(i)アトルバスタチンナトリウムを含む第3の溶液を調製する工程;
(ii)該第3の溶液のpHを酸性のpHに調整する工程;
(iii)第3の有機溶媒を添加して第4の溶液を形成する工程;
(iv)有機層を単離する工程;
(v)該有機層のpHをアルカリ性のpHに調整する工程;
(vi)沈殿した非晶質アトルバスタチンナトリウムを回収する工程
を含む、請求項8から18のいずれかの項に記載の方法。
【請求項20】
前記第3の溶液が、約5%のアトルバスタチンナトリウムを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第3の溶液のpHが、塩酸の添加によって調整される、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記塩酸が、約15〜20%の濃度を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第3の溶液のpHが、約1と4との間に調整される、請求項19から22のいずれかの項に記載の方法。
【請求項24】
前記第3の有機溶媒が、ハロゲンで置換されたC〜C炭化水素である、請求項19から23のいずれかの項に記載の方法。
【請求項25】
前記第3の有機溶媒が、ジクロロメタンである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第3の有機溶媒が、前記第3の溶液に、前記第3の溶液中の約10gのアトルバスタチンナトリウムについて約100〜200gの第3の有機溶媒の割合で添加される、請求項19から25のいずれかの項に記載の方法。
【請求項27】
前記有機層のpHが、水酸化ナトリウム溶液の添加によって調整される、請求項19から26のいずれかの項に記載の方法。
【請求項28】
前記水酸化ナトリウム溶液が、約20〜50%の濃度を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記有機層のpHが、約9と10との間に調整される、請求項19から28のいずれかの項に記載の方法。
【請求項30】
前記沈殿した非晶質アトルバスタチンナトリウムが、濾過によって回収される、請求項19から29のいずれかの項に記載の方法。
【請求項31】
前記沈殿した非晶質アトルバスタチンナトリウムが、乾燥される、請求項19から30のいずれかの項に記載の方法。
【請求項32】
前記沈殿した非晶質アトルバスタチンナトリウムが、真空下で乾燥される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記沈殿した非晶質アトルバスタチンナトリウムが、図1に示されるものと実質的に同一であるX線回折パターンを示す、請求項19から32のいずれかの項に記載の方法。
【請求項34】
前記沈殿した非晶質アトルバスタチンナトリウムが、2シータが約7.87±0.2、18.18±0.2、18.87±0.2および22.88±0.2°で表されるピークを含むX線回折パターンを示す、請求項19から32のいずれかの項に記載の方法。
【請求項35】
前記沈殿した非晶質アトルバスタチンナトリウムが、2シータが約5.45±0.2、7.87±0.2、9.52±0.2、11.02±0.2、14.2±0.2、16.4±0.2、18.18±0.2、18.87±0.2、19.76±0.2、22.88±0.2、32.27±0.2、33.35±0.2、37.86±0.2、39.99±0.2、41.13±0.2および44.95±0.2°で表されるピークを含むX線回折パターンを示す、請求項19から32のいずれかの項に記載の方法。
【請求項36】
非晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項37】
2シータが約7.87±0.2、18.18±0.2、18.87±0.2および22.88±0.2°で表されるピークを含むX線回折パターンを示す、非晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項38】
2シータが約5.45±0.2、7.87±0.2、9.52±0.2、11.02±0.2、14.2±0.2、16.4±0.2、18.18±0.2、18.87±0.2、19.76±0.2、22.88±0.2、32.27±0.2、33.35±0.2、37.86±0.2、39.99±0.2、41.13±0.2および44.95±0.2°で表されるピークを含むX線回折パターンを示す、非晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項39】
図1に示されるものと実質的に同一であるX線回折パターンを示す、非晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項40】
少なくとも90%の純度を有する、請求項36から39のいずれかの項に記載の非晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項41】
少なくとも93%の純度を有する、請求項40に記載の非晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項42】
少なくとも96%の純度を有する、請求項41に記載の非晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項43】
少なくとも98%の純度を有する、請求項42に記載の非晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項44】
請求項19から32のいずれかの項に記載の方法によって生産される、非晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項45】
請求項8から35のいずれかの項に記載の方法によって生産される、結晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項46】
請求項1から7および45のいずれかの項に記載の結晶質アトルバスタチンナトリウムまたは請求項36から44のいずれかの項に記載の非晶質アトルバスタチンナトリウムを含む、薬学的組成物。
【請求項47】
脂質調節剤の投与によって予防、改善または除去される疾患を治療するための組成物であって、請求項1から7および45のいずれかの項に記載の結晶質アトルバスタチンナトリウムまたは請求項36から44のいずれかの項に記載の非晶質アトルバスタチンナトリウムを含む、組成物。
【請求項48】
前記疾患が、高脂血症、原発性高脂血症、異型接合体家族性高脂血症、腎性高脂血症、混合性高脂血症、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、冠状動脈性心疾患、脳卒中および虚血性脳血管疾患から選択される、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
脂質調節剤の投与によって予防、改善または除去される疾患を治療する方法であって、患者に、治療的有効量の請求項1から7および45のいずれかの項に記載の結晶質アトルバスタチンナトリウム、請求項36から44のいずれかの項に記載の非晶質アトルバスタチンナトリウム、または請求項46に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項50】
前記疾患が、高脂血症、原発性高脂血症、異型接合体家族性高脂血症、腎性高脂血症、混合性高脂血症、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、冠状動脈性心疾患、脳卒中および虚血性脳血管疾患から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
形態Iとして定義された、請求項1から7または45のいずれかの項に記載の結晶質アトルバスタチンナトリウム。
【請求項52】
形態Iとして定義された、請求項36から44のいずれかの項に記載の非晶質アトルバスタチンナトリウム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−542578(P2009−542578A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526538(P2008−526538)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003025
【国際公開番号】WO2007/020413
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(507382784)アロー インターナショナル リミテッド (8)
【出願人】(508047026)チョーチアン ネオ−ダンコン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】