説明

結核の免疫治療および診断のための化合物および方法

【課題】 結核に対する防御免疫を誘導するための化合物および方法を開示する。
【解決手段】 提供される化合物は、1つ以上のM.tuberculosisタンパク質の少なくとも1つの免疫原性部分を含有するポリペプチド、およびそのようなポリペプチドをコードするDNA分子を含む。このような化合物は、M.tuberculosis感染に対するワクチンおよび/または薬学的組成物に処方され得るか、または結核の診断のために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般に、Mycobacterium tuberculosis感染の検出、処置、および予防に関する。本発明は、より詳細には、Mycobacterium tuberculosis抗原、またはその部分もしくは他の変異体を含むポリペプチド、およびMycobacterium tuberculosis感染に対する診断およびワクチン接種のためのこのようなポリペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
結核は、慢性の、感染性疾患であり、一般にMycobacterium tuberculosisの感染により生じる。結核は発展途上国で主要な疾患であり、そして世界中の先進地域で問題が増大しており、毎年約8百万人が新たに発病し、そして3百万人が死亡する。感染はかなりの期間無症候性であり得るが、この疾患は、最も一般的には、発熱および空咳を生じる肺の急性炎症として発現する。処置しないでおくと、典型的には、重篤な合併症および死をもたらす。
【0003】
結核は一般には広範な抗生物質治療を用いて制御され得るが、このような処置はこの疾患の蔓延を妨げるには十分でない。感染した個体は無症候性であり得るが、かなり長い間、伝染性である。さらに、処置レジメに従うことが重要であるが、患者の行動を監視することは困難である。何人かの患者は処置過程を完了せず、これは効果のない処置および薬物耐性の発達に通じ得る。
【0004】
結核の蔓延を阻害するためには、有効なワクチン接種および疾患の正確な初期診断が必要である。現在、生細菌を用いるワクチン接種は、防御免疫を誘導するために最も有効な方法である。この目的のために用いられる最も一般的なMycobacteriumは、Mycobacterium bovisの無発病性株である、Bacillus Calmette-Guerin(BCG)である。しかし、BCGの安全性および効力は論争の源であり、そしてアメリカ合衆国のようないくつかの国は、一般大衆にワクチン接種をおこなわない。診断は、一般に、皮膚テストを用いて達成される。皮膚テストは、ツベルクリンPPD(精製されたタンパク質の誘導体)に対する皮内曝露に関与する。抗原特異的T細胞応答は、注射後48〜72時間で注射部位に測定可能な潜伏を生じ、これはマイコバクテリアの抗原への曝露を示す。しかし、感度および特異性についてはこのテストでは問題があり、そしてBCGをワクチン接種された個体は感染した個体と区別され得ない。
【0005】
マクロファージはM. tuberculosis免疫性の主要なエフェクターとして作用することが示されたとはいえ、T細胞はこのような免疫性の優勢なインデューサーである。M. tuberculosis感染に対する防御におけるT細胞の本質的な役割は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染に関連するCD4 T細胞の涸渇に起因する、AIDS患者におけるM. tuberculosisの頻繁な発生により例示される。マイクバクテリア応答性CD4 T細胞はγ-インターフェロン(IFN-γ)の強力なプロデューサーであることが示されており、これは、次に、マウスにおいてマクロファージの抗マイコバクテリア効果を誘発することも示された。ヒトにおけるIFN-γの役割はそれほど明らかでないが、研究により、1,25-ジヒドロキシ-ビタミンD3単独またはこれとIFN-γまたは腫瘍壊死因子-αとの組み合わせのいずれかが、ヒトマクロファージを活性化してM. tuberculosis感染を阻害することが示された。さらに、IFN-γがヒトマクロファージを刺激して1,25-ジヒドロキシ-ビタミンD3を生じることが知られる。同様に、IL-12はM. tuberculosis感染に対する耐性を刺激するのに役割を果たすことが示された。M. tuberculosis感染の免疫学の総説については、ChanおよびKaufmann、Tuberculosis:Pathogenesis、Protection and Control, Bloom(編)、ASM Press、Washington, DC、1994を参照のこと。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、当該分野において結核を予防、処置、および検出するための改善されたワクチンおよび方法についての要求が存在する。本発明は、これらの要求を満たし、そしてさらに他の関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
簡潔に述べると、本発明は結核を予防および診断するための化合物および方法を提供する。1つの局面において、可溶性M. tuberculosis抗原の抗原性部分、または保存的置換および/もしくは改変のみが異なるこのような抗原の変異体を含むポリペプチドが提供される。この局面の1つの実施態様において、可溶性抗原は以下のN末端配列の1つを有する:
(a) Asp-Pro-Val-Asp-Ala-Val-Ile-Asn-Thr-Thr-Cys-Asn-Tyr-Gly-Gln-Val-
Val-Ala-Ala-Leu(配列番号120);
(b) Ala-Val-Glu-Ser-Gly-Met-Leu-Ala-Leu-Gly-Thr-Pro-Ala-Pro-Ser(配列
番号121);
(c) Ala-Ala-Met-Lys-Pro-Arg-Thr-Gly-Asp-Gly-Pro-Leu-Glu-Ala-Ala-Lys-
Glu-Gly-Arg(配列番号122);
(d) Tyr-Tyr-Trp-Cys-Pro-Gly-Gln-Pro-Phe-Asp-Pro-Ala-Trp-Gly-Pro(配列
番号123);
(e) Asp-Ile-Gly-Ser-Glu-Ser-Thr-Glu-Asp-Gln-Gln-Xaa-Ala-Val(配列番号
124);
(f) Ala-Glu-Glu-Ser-Ile-Ser-Thr-Xaa-Glu-Xaa-Ile-Val-Pro(配列番号
125);
(g) Asp-Pro-Glu-Pro-Ala-Pro-Pro-Val-Pro-Thr-Thr-Ala-Ala-Ser-Pro-Pro-
Ser(配列番号126);
(h) Ala-Pro-Lys-Thr-Tyr-Xaa-Glu-Glu-Leu-Lys-Gly-Thr-Asp-Thr-Gly(配列
番号127);
(i) Asp-Pro-Ala-Ser-Ala-Pro-Asp-Val-Pro-Thr-Ala-Ala-Gln-Leu-Thr-Ser-
Leu-Leu-Asn-Ser-Leu-Ala-Asp-Pro-Asn-Val-Ser-Phe-Ala-Asn(配列番号
128);
(j) Xaa-Asp-Ser-Glu-Lys-Ser-Ala-Thr-Ile-Lys-Val-Thr-Asp-Ala-Ser(配列
番号134);
(k) Ala-Gly-Asp-Thr-Xaa-Ile-Tyr-Ile-Val-Gly-Asn-Leu-Thr-Ala-Asp(配列
番号135);または
(l) Ala-Pro-Glu-Ser-Gly-Ala-Gly-Leu-Gly-Gly-Thr-Val-Gln-Ala-Gly(配列
番号136)、
ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり得る。
【0008】
関連する局面では、M. tuberculosis抗原の免疫原性部分または保存的置換および/もしくは改変のみが異なるこのような抗原の変異体を含むポリペプチドが提供され、この抗原は以下のN末端配列の1つを有する:
(m) Xaa-Tyr-Ile-Ala-Tyr-Xaa-Thr-Thr-Ala-Gly-Ile-Val-Pro-Gly-Lys-Ile-
Asn-Val-His-Leu-Val(配列番号137);または
(n) Asp-Pro-Pro-Asp-Pro-His-Gln-Xaa-Asp-Met-Thr-Lys-Gly-Tyr-Tyr-Pro-
Gly-Gly-Arg-Arg-Xaa-Phe(配列番号129)、
ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり得る。
【0009】
別の実施態様では、抗原は、配列番号1、2、4〜10、13〜25、52、99および101に列挙される配列から成る群から選択されるDNA配列、この配列の相補体、ならびに配列番号1、2、4〜10、13〜25、52、99および101に列挙される配列またはそれらの相補体に中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を含む。
【0010】
関連する局面では、ポリペプチドは、M. tuberculosis抗原の抗原性部分または保存的置換および/もしくは改変のみが異なるこのような抗原の変異体を含む。ここで、抗原は配列番号26〜51に列挙される配列から成る群から選択されるDNA配列、これらの配列の相補体、および配列番号26〜51に列挙される配列またはそれらの相補体に中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を含む。
【0011】
関連する局面では、上記のポリペプチドをコードするDNA配列、これらのDNA配列を含む発現ベクター、およびこのような発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞もまた提供される。
【0012】
別の局面では、本発明は第1および第2の本発明のポリペプチド、またはあるいは、本発明のポリペプチドおよび公知のM. tuberculosis抗原を含む融合タンパク質を提供する。
【0013】
他の局面では、本発明は、上記の1つ以上のポリペプチドまたはこのようなポリペプチドをコードするDNA分子、および生理学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物を提供する。本発明はまた、上記の1つ以上のポリペプチドおよび非特異的免疫応答エンハンサーを含有するワクチンを、1つ以上のこのようなポリペプチドをコードするDNA配列および非特異的免疫応答エンハンサーを含有するワクチンとともに提供する。
【0014】
なお別の局面では、患者での防御免疫を誘導するための方法が提供される。この方法は、1つ以上の上記ポリペプチドの有効量を、患者に投与する工程を包含する。
【0015】
本発明のさらなる局面では、患者における結核を検出するための方法および診断キットが提供される。この方法は、患者の表皮細胞と上記の1つ以上のポリペプチドとを接触させる工程、および患者の皮膚上の免疫応答を検出する工程を包含する。診断キットは、患者の表皮細胞とポリペプチドを接触させるに充分な装置と組み合わせた上記の1つ以上のポリペプチドを含む。
【0016】
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照すれば明らかになる。本明細書中に開示されるすべての文献は、この結果、各々が個々に組み込まれたかのように、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1AおよびBは、それぞれ、実施例1に記載の14Kd、20Kd、および26Kdの抗原による、第1および第2のM. tuberculosis免疫ドナー由来のT細胞での増殖およびインターフェロン-γ産生の刺激を例示する。
【図1B】図1AおよびBは、それぞれ、実施例1に記載の14Kd、20Kd、および26Kdの抗原による、第1および第2のM. tuberculosis免疫ドナー由来のT細胞での増殖およびインターフェロン-γ産生の刺激を例示する。
【図2】図2は、2つの代表的なポリペプチドTbRa3およびTbRa9による、M. tuberculosis免疫個体由来のT細胞での増殖およびインターフェロン-γの産生の刺激を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(配列の識別名)
配列番号1は、TbRa1のDNA配列である。
【0019】
配列番号2は、TbRa10のDNA配列である。
【0020】
配列番号3は、TbRa11のDNA配列である。
【0021】
配列番号4は、TbRa12のDNA配列である。
【0022】
配列番号5は、TbRa13のDNA配列である。
【0023】
配列番号6は、TbRa16のDNA配列である。
【0024】
配列番号7は、TbRa17のDNA配列である。
【0025】
配列番号8は、TbRa18のDNA配列である。
【0026】
配列番号9は、TbRa19のDNA配列である。
【0027】
配列番号10は、TbRa24のDNA配列である。
【0028】
配列番号11は、TbRa26のDNA配列である。
【0029】
配列番号12は、TbRa28のDNA配列である。
【0030】
配列番号13は、TbRa29のDNA配列である。
【0031】
配列番号14は、TbRa2AのDNA配列である。
【0032】
配列番号15は、TbRa3のDNA配列である。
【0033】
配列番号16は、TbRa32のDNA配列である。
【0034】
配列番号17は、TbRa35のDNA配列である。
【0035】
配列番号18は、TbRa36のDNA配列である。
【0036】
配列番号19は、TbRa4のDNA配列である。
【0037】
配列番号20は、TbRa9のDNA配列である。
【0038】
配列番号21は、TbRaBのDNA配列である。
【0039】
配列番号22は、TbRaCのDNA配列である。
【0040】
配列番号23は、TbRaDのDNA配列である。
【0041】
配列番号24は、YYWCPGのDNA配列である。
【0042】
配列番号25は、AAMKのDNA配列である。
【0043】
配列番号26は、TbL-23のDNA配列である。
【0044】
配列番号27は、TbL-24のDNA配列である。
【0045】
配列番号28は、TbL-25のDNA配列である。
【0046】
配列番号29は、TbL-28のDNA配列である。
【0047】
配列番号30は、TbL-29のDNA配列である。
【0048】
配列番号31は、TbH-5のDNA配列である。
【0049】
配列番号32は、TbH-8のDNA配列である。
【0050】
配列番号33は、TbH-9のDNA配列である。
【0051】
配列番号34は、TbM-1のDNA配列である。
【0052】
配列番号35は、TbM-3のDNA配列である。
【0053】
配列番号36は、TbM-6のDNA配列である。
【0054】
配列番号37は、TbM-7のDNA配列である。
【0055】
配列番号38は、TbM-9のDNA配列である。
【0056】
配列番号39は、TbM-12のDNA配列である。
【0057】
配列番号40は、TbM-13のDNA配列である。
【0058】
配列番号41は、TbM-14のDNA配列である。
【0059】
配列番号42は、TbM-15のDNA配列である。
【0060】
配列番号43は、TbH-4のDNA配列である。
【0061】
配列番号44は、TbH-4-FWDのDNA配列である。
【0062】
配列番号45は、TbH-12のDNA配列である。
【0063】
配列番号46は、Tb38-1のDNA配列である。
【0064】
配列番号47は、TbH38-4のDNA配列である。
【0065】
配列番号48は、TbL-17のDNA配列である。
【0066】
配列番号49は、TbL-20のDNA配列である。
【0067】
配列番号50は、TbL-21のDNA配列である。
【0068】
配列番号51は、TbH-16のDNA配列である。
【0069】
配列番号52は、DPEPのDNA配列である。
【0070】
配列番号53は、DPEPの推定アミノ酸配列である。
【0071】
配列番号54は、DVP N末端抗原のタンパク質配列である。
【0072】
配列番号55は、AVGS N末端抗原のタンパク質配列である。
【0073】
配列番号56は、AAMK N末端抗原のタンパク質配列である。
【0074】
配列番号57は、YYWC N末端抗原のタンパク質配列である。
【0075】
配列番号58は、DIGS N末端抗原のタンパク質配列である。
【0076】
配列番号59は、AEES N末端抗原のタンパク質配列である。
【0077】
配列番号60は、DPEP N末端抗原のタンパク質配列である。
【0078】
配列番号61は、APKT N末端抗原のタンパク質配列である。
【0079】
配列番号62は、DPAS N末端抗原のタンパク質配列である。
【0080】
配列番号63は、TbRa1の推定アミノ酸配列である。
【0081】
配列番号64は、TbRa10の推定アミノ酸配列である。
【0082】
配列番号65は、TbRa11の推定アミノ酸配列である。
【0083】
配列番号66は、TbRa12の推定アミノ酸配列である。
【0084】
配列番号67は、TbRa13の推定アミノ酸配列である。
【0085】
配列番号68は、TbRa16の推定アミノ酸配列である。
【0086】
配列番号69は、TbRa17の推定アミノ酸配列である。
【0087】
配列番号70は、TbRa18の推定アミノ酸配列である。
【0088】
配列番号71は、TbRa19の推定アミノ酸配列である。
【0089】
配列番号72は、TbRa24の推定アミノ酸配列である。
【0090】
配列番号73は、TbRa26の推定アミノ酸配列である。
【0091】
配列番号74は、TbRa28の推定アミノ酸配列である。
【0092】
配列番号75は、TbRa29の推定アミノ酸配列である。
【0093】
配列番号76は、TbRa2Aの推定アミノ酸配列である。
【0094】
配列番号77は、TbRa3の推定アミノ酸配列である。
【0095】
配列番号78は、TbRa32の推定アミノ酸配列である。
【0096】
配列番号79は、TbRa35の推定アミノ酸配列である。
【0097】
配列番号80は、TbRa36の推定アミノ酸配列である。
【0098】
配列番号81は、TbRa4の推定アミノ酸配列である。
【0099】
配列番号82は、TbRa9の推定アミノ酸配列である。
【0100】
配列番号83は、TbRaBの推定アミノ酸配列である。
【0101】
配列番号84は、TbRaCの推定アミノ酸配列である。
【0102】
配列番号85は、TbRaDの推定アミノ酸配列である。
【0103】
配列番号86は、YYWCPGの推定アミノ酸配列である。
【0104】
配列番号87は、TbAAMKの推定アミノ酸配列である。
【0105】
配列番号88は、Tb38-1の推定アミノ酸配列である。
【0106】
配列番号89は、TbH-4の推定アミノ酸配列である。
【0107】
配列番号90は、TbH-8の推定アミノ酸配列である。
【0108】
配列番号91は、TbH-9の推定アミノ酸配列である。
【0109】
配列番号92は、TbH-12の推定アミノ酸配列である。
【0110】
配列番号93は、Tb38-1ペプチド1のアミノ酸配列である。
【0111】
配列番号94は、Tb38-1ペプチド2のアミノ酸配列である。
【0112】
配列番号95は、Tb38-1ペプチド3のアミノ酸配列である。
【0113】
配列番号96は、Tb38-1ペプチド4のアミノ酸配列である。
【0114】
配列番号97は、Tb38-1ペプチド5のアミノ酸配列である。
【0115】
配列番号98は、Tb38-1ペプチド6のアミノ酸配列である。
【0116】
配列番号99は、DPASのDNA配列である。
【0117】
配列番号100は、DPASの推定アミノ酸配列である。
【0118】
配列番号101は、DPVのDNA配列である。
【0119】
配列番号102は、DPVの推定アミノ酸配列である。
【0120】
配列番号103は、ESAT-6のDNA配列である。
【0121】
配列番号104は、ESAT-6の推定アミノ酸配列である。
【0122】
配列番号105は、TbH-8-2のDNA配列である。
【0123】
配列番号106は、TbH-9FLのDNA配列である。
【0124】
配列番号107は、TbH-9FLの推定アミノ酸配列である。
【0125】
配列番号108は、TbH-9-1のDNA配列である。
【0126】
配列番号109は、TbH-9-1の推定アミノ酸配列である。
【0127】
配列番号110は、TbH-9-4のDNA配列である。
【0128】
配列番号111は、TbH-9-4の推定アミノ酸配列である。
【0129】
配列番号112は、Tb38-1F2 INのDNA配列である。
【0130】
配列番号113は、Tb38-2F2 RPのDNA配列である。
【0131】
配列番号114は、Tb37-FLの推定アミノ酸配列である。
配列番号115は、Tb38-INの推定アミノ酸配列である。
【0132】
配列番号116は、Tb38-1F3のDNA配列である。
【0133】
配列番号117は、Tb38-1F3の推定アミノ酸配列である。
【0134】
配列番号118は、Tb38-1F5のDNA配列である。
【0135】
配列番号119は、Tb38-1F6のDNA配列である。
【0136】
配列番号120は、DVPの推定N末端アミノ酸配列である。
【0137】
配列番号121は、AVGSの推定N末端アミノ酸配列である。
【0138】
配列番号122は、AAMKの推定N末端アミノ酸配列である。
【0139】
配列番号123は、YYWCの推定N末端アミノ酸配列である。
【0140】
配列番号124は、DIGSの推定N末端アミノ酸配列である。
【0141】
配列番号125は、AEESの推定N末端アミノ酸配列である。
【0142】
配列番号126は、DPEPの推定N末端アミノ酸配列である。
【0143】
配列番号127は、APKTの推定N末端アミノ酸配列である。
【0144】
配列番号128は、DPASの推定アミノ酸配列である。
【0145】
配列番号129は、DPPD N末端抗原のタンパク質配列である。
【0146】
配列番号130〜133は、4つのDPPD臭化シアンフラグメントのタンパク質配列である。
【0147】
配列番号134は、XDS抗原のN末端タンパク質配列である。
【0148】
配列番号135は、AGD抗原のN末端タンパク質配列である。
【0149】
配列番号136は、APE抗原のN末端タンパク質配列である。
【0150】
配列番号137は、XYI抗原のN末端タンパク質配列である。
【0151】
発明の詳細な説明
上記のように、本発明は、一般に、結核を予防、処置、および診断するための組成物および方法に関する。本発明の組成物は、M. tuberculosis抗原、または保存的置換および/または改変でのみ異なるこのような抗原の変異体の、少なくとも1つの免疫原性部分を含むポリペプチドを含む。本発明の範囲内のポリペプチドとしては、免疫原性の可溶性M. tuberculosis抗原が挙げられるが、これらに限定されない。「可溶性M. tuberculosis抗原」は、M. tuberculosis培養濾液中に存在するM. tuberculosis起源のタンパク質である。本明細書で使用する用語「ポリペプチド」は、全長タンパク質(すなわち、抗原)を含む、任意の長さのアミノ酸鎖を包含し、ここで、アミノ酸残基は共有ペプチド結合によって連結されている。従って、上記の抗原の1つの免疫原性部分を含むポリペプチドは、全体が免疫原性部分からなり得るか、またはさらなる配列を含み得る。さらなる配列は、天然のM. tuberculosis抗原に由来し得るか、または異種のものであり得、そしてこのような配列は、免疫原性であり得る(そうである必要はない)。
【0152】
本明細書で使用する「免疫原性」は、患者(例えばヒト)および/または生物学的サンプルにおいて免疫応答(例えば、細胞性)を誘発する能力をいう。特に、免疫原性である抗原(および免疫原性部分またはこのような抗原の他の変異体)は、T細胞、NK細胞、B細胞、およびマクロファージ(ここで、細胞はM. tuberculosis免疫個体由来である)からなる群より選択される1つ以上の細胞を含む生物学的サンプルにおいて、細胞増殖、インターロイキン12産生、および/またはインターフェロンγ産生を刺激し得る。1つ以上のM. tuberculosis抗原の少なくとも免疫原性部分を含むポリペプチドが、一般に、結核を検出するため、または患者において結核に対して防御免疫を誘導するために使用され得る。
【0153】
本発明の組成物および方法はまた、上記のポリペプチドの変異体を包含する。本明細書で使用する「変異体」は、保存的置換および/または改変のみが天然の抗原と異なり、その結果、ポリペプチドの免疫応答を誘導する能力が保持されているポリペプチドである。このような変異体は、一般に、例えば本明細書中に記載する代表的な手順を使用して、上記のポリペプチド配列の1つを改変し、そして改変されたポリペプチドの免疫原性特性を評価することによって、同定され得る。
【0154】
「保存的置換」は、ペプチド化学の当業者がこのポリペプチドの2次構造およびのヒドロパシー性質が実質的に変化していないことを予測するように、アミノ酸を類似する特性を有する別のアミノ酸で置換する置換である。一般に、以下の群のアミノ酸は、保存的変化を示す:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。
【0155】
変異体はまた(またはあるいは)、例えば、ポリペプチドの免疫原性特性、2次構造、およびヒドロパシー性質に最小の影響しか及ぼさないアミノ酸の欠失または付加によって改変され得る。例えば、ポリペプチドは、翻訳と同時にまたは翻訳後にタンパク質の転移を導くタンパク質のN末端でシグナル(またはリーダー)配列に結合され得る。このポリペプチドはまた、ポリペプチド(例えば、ポリ-His)の合成、精製、または同定を容易にするために、または固体支持体ヘのこのポリペプチドの結合を増強するために、リンカーまたは他の配列に結合され得る。例えば、ポリペプチドは、免疫グロブリンFc領域に結合され得る。
【0156】
関連する局面において、組合せポリペプチドが開示される。「組合せポリペプチド」は、少なくとも1つの上記の免疫原性部分および1つ以上のさらなる免疫原性M. tuberculosis配列を含むポリペプチドであり、これは、ペプチド結合によって単一のアミノ酸鎖に接合されている。この配列は、直接接合される(すなわち、介入アミノ酸なしに)か、または成分ポリペプチドの免疫原性特性を顕著に消失させないリンカー配列(例えば、Gly-Cys-Gly)によって接合され得る。
【0157】
一般に、M. tuberculosis抗原、およびこのような抗原をコードするDNA配列は、任意の種々の手順を使用して調製され得る。例えば、可溶性抗原を、当業者に公知の手順(陰イオン交換クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィーを含む)によってM. tuberculosis培養濾液から単離し得る。次いで、精製された抗原を、例えば、本明細書中に記載する代表的な方法を使用して、適切な免疫応答(例えば、細胞性)を誘発する能力について評価し得る。次いで、免疫原性抗原を、例えば伝統的なエドマン化学のような技法を使用して部分的に配列決定し得る。EdmanおよびBerg, Eur. J. Biochem. 80:116-132, 1967を参照のこと。
【0158】
免疫原性抗原はまた、この抗原をコードするDNA配列を使用して組換え的に産生され得る。このDNA配列は発現ベクターに挿入され、そして適切な宿主内で発現される。可溶性抗原をコードするDNA分子を、可溶性M. tuberculosis抗原に対して特異的に惹起された抗血清(例えば、ウサギ)を用いて、適切なM. tuberculosis発現ライブラリーをスクリーニングすることによって単離し得る。可溶性であるかもしれないしそうでないかもしれない抗原をコードするDNA配列を、M. tuberculosisに感染した患者から得られた血清を用いて、適切なM. tuberculosisゲノムライブラリーまたはcDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることによって同定し得る。このようなスクリーニングは、一般に、当業者に周知の技術(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載される技術)を使用して行われ得る。
【0159】
可溶性抗原をコードするDNA配列はまた、単離された可溶性抗原の部分アミノ酸配列に由来する縮重オリゴヌクレオチドにハイブリダイズするDNA配列について、適切なM. tuberculosis cDNAまたはゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、得られ得る。このようなスクリーニングで使用するための縮重オリゴヌクレオチド配列を設計および合成し得、そしてスクリーニングは、 (例えば)Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, Cold Spring Harbor, NY 1989(および本明細書中で援用された参考文献)に記載されるように行い得る。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)もまた、当該分野で周知の方法において上記のオリゴヌクレオチドを使用して、cDNAまたはゲノムライブラリーから核酸プローブを単離するために用い得る。次いで、ライブラリースクリーニングを、単離されたプローブを使用して行い得る。
【0160】
あるいは、M.tuberculosisに由来するゲノムDNAライブラリーまたはcDNAライブラリーは、1つ以上のM.tuberculosisで免疫した個体に由来する末梢血単核細胞(PBMS)またはT細胞株もしくはクローンを用いて直接的にスクリーニングされ得る。一般に、このようなスクリーニングにおける使用のためのPBMSおよび/またはT細胞は、以下に記載のように調製され得る。直接的ライブラリースクリーニングは、一般に、発現された組換えタンパク質のプールを、M.tuberculosisで免疫した個体に由来するT細胞における増殖および/またはインターフェロン-γ産生を誘導する能力についてアッセイすることにより行われ得る。あるいは、潜在的なT細胞抗原は、第1に、上記のように、抗体反応性に基づいて選択され得る。
【0161】
調製の方法にかかわらず、本明細書中に記載の抗原(およびその免疫原性部分)(これは、可溶性であってもそうでなくてもよい)は、免疫原性応答を誘導する能力を有する。より詳細には、抗原は、M.tuberculosisで免疫した個体に由来するT細胞、NK細胞、B細胞、および/またはマクロファージにおける増殖および/またはサイトカイン産生(すなわち、インターフェロンγおよび/またはインターロイキン-12産生)を誘導する能力を有する。抗原に対する免疫原性応答を評価する際に使用するための細胞型の選択は、もちろん、所望の応答に依存する。例えば、インターロイキン-12産生は、B細胞および/またはマクロファージを含有する調製物を用いて最も容易に評価される。M.tuberculosisで免疫した個体は、M.tuberculosisに対する有効なT細胞応答が惹起されたことにより、結核の進行に耐性である(すなわち、実質的に疾患の症状がない)と考えられる個体である。このような個体は、結核タンパク質(PPD)に対する強力に陽性な皮内皮膚試験応答(すなわち、約10mmより大きな硬結直径)および結核病の徴候または症状が無いことに基づいて同定され得る。M.tuberculosisで免疫した個体に由来するT細胞、NK細胞、B細胞およびマクロファージは、当業者に公知の方法を用いて調製され得る。例えば、PBMC(例えば、末梢血単核細胞)の調製は、構成細胞のさらなる調製を伴わずに行なわれ得る。PBMCは、一般に例えば、FicollTMを通しての密度勾配遠心分離を用いて調製され得る(Winthrop Laboratories, NY)。本明細書中に記載されるアッセイにおける使用のためのT細胞はまた、PBMCから直接精製され得る。あるいは、マイコバクテリアタンパク質に対して反応性の富化T細胞株、または個々のマイコバクテリアタンパク質に対して反応性なT細胞クローンが用いられ得る。このようなT細胞クローンは、例えば、マイコバクテリアタンパク質を有する、M.tuberculosisで免疫した個体由来のPBMCを2〜4週間の期間培養することにより作製され得る。これは、マイコバクテリアタンパク質特異的T細胞のみの拡大を可能にし、このような細胞のみでなる株をもたらす。次いで、これらの細胞は、個々のT細胞特異性をより正確に規定するために、当業者に周知の方法を用いてクローン化および個々のタンパク質で試験され得る。一般に、M.tuberculosisで免疫した個体に由来するT細胞、NK細胞、B細胞、および/またはマクロファージを用いて行われた、増殖および/またはサイトカイン産生(すなわち、インターフェロン-γおよび/またはインターロイキン-12産生)についてのアッセイで陽性である抗原は、免疫原性であると考えられる。このようなアッセイは、例えば、下記の代表的な手順を用いて行われ得る。このような抗原の免疫原性部分は、同様のアッセイを用いて同定され得、そして本明細書中に記載のポリペプチド内に存在し得る。
【0162】
ポリペプチド(例えば、免疫原性抗原、またはその部分もしくは他の変異体)が細胞増殖を誘導する能力は、細胞(例えば、T細胞および/またはNK細胞)を、ポリペプチドと接触させ、そして細胞の増殖を測定することにより評価される。一般に、約10個の細胞を評価するために充分であるポリペプチドの量は、約10ng/mL〜約100μg/mLの範囲であり、そして好ましくは約10μg/mLである。ポリペプチドと細胞とのインキュベーションは、代表的には37℃で約6日間行われる。ポリペプチドとのインキュベーション後、細胞を増殖応答についてアッセイする。増殖応答は、当業者に公知の方法(例えば、放射標識したチミジンのパルスに細胞を曝露し、そして細胞DNAへの標識の取り込みを測定すること)により評価され得る。一般に、バックグラウンドを超えて少なくとも3倍の増殖増加(すなわち、ポリペプチドなしで培養した細胞について観察された増殖)をもたらすポリペプチドは、増殖を誘導し得ると考えられる。
【0163】
ポリペプチドが、細胞におけるインターフェロン-γおよび/またはインターフェロンー12の産生を刺激する能力は、細胞をポリペプチドと接触させ、そして細胞により産生されるインターフェロン-γまたはインターロイキン-12のレベルを測定することにより評価され得る。一般に、約10個の細胞の評価に充分であるポリペプチドの量は、約10ng/mL〜約100μg/mLの範囲であり、好ましくは約10μg/mLである。ポリペプチドは、その必要はないが、固体支持体(例えば、米国特許第4,897,268号および同第5,075,109号に記載されるような、ビーズまたは生分解性マイクロスフェア)に固定化され得る。ポリペプチドと細胞とのインキュベーションは、代表的には37℃で約6日間行われる。ポリペプチドとのインキュベーションの後、細胞を、インターフェロン-γおよび/またはインターロイキン-12(またはそれらの1つ以上のサブユニット)についてアッセイする。インターフェロン-γおよび/またはインターロイキン-12(またはそれらの1つ以上のサブユニット)は、当業者に公知の方法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはIL-12 P70サブユニットの場合はT細胞の増殖を測定するアッセイのようなバイオアッセイ)により評価され得る。一般に、培養上清1mL(1mLあたり10〜10T細胞を含む)あたり少なくとも50pgのインターフェロン-γの産生をもたらすポリペプチドは、インターフェロン-γの産生を刺激し得ると考えられる。10個のマクロファージまたはB細胞あたり(または3×10PMBCあたり)、少なくとも10pg/mLのIL-12 P70サブユニット、および/または少なくとも100pg/mLのIL-12 P40サブユニットの産生を刺激するポリペプチドは、IL-12の産生を刺激し得ると考えられる。
【0164】
一般に、免疫原性抗原は、M.tuberulosisで免疫した個体の少なくとも約25%に由来するT細胞、NK細胞、B細胞、および/またはマクロファージにおける増殖および/またはサイトカイン産生(すなわち、インターフェロン-γおよび/またはインターロイキン-12産生)を刺激する抗原である。これらの免疫原性抗原の中でも、優れた治療的特性を有するポリペプチドは、上記のアッセイにおける応答の大きさに基づいて、そして応答が観察された個体の%に基づいて区別され得る。さらに、優れた治療的特性を有する抗原は、M.tuberulosisで免疫していない個体の約25%より多くに由来する細胞におけるインビトロでの増殖および/またはサイトカイン産生を刺激しない。その結果、M.tuberulosis応答性細胞に特異的に起因しない応答を排除する。M.tuberulosisで免疫した個体に由来するT細胞、NK細胞、B細胞、および/またはマクロファージ調製物の高い%において応答を誘導する抗原(他の個体からの細胞調製物における応答の低出現率を有する)は、優れた治療的特性を有する。
【0165】
優れた治療的特性を有する抗原はまた、ワクチンとして投与した場合に、実験動物におけるM.tuberulosis感染の重篤度を減少させる能力に基づいて同定され得る。実験動物における使用のために適切なワクチン調製物は、以下に詳細に記載される。効率は、細菌数の少なくとも約50%減少および/または実験的感染後の死亡率を少なくとも約40%減少を提供する抗原の能力に基づいて決定され得る。適切な実験動物は、マウス、モルモット、および霊長類を包含する。
【0166】
優れた診断的特性を有する抗原は、一般に、進行中の結核を有する個体で行なった皮内皮膚試験における応答を惹起するが、M.tuberulosisに感染していない個体において行なった試験においては惹起しないという能力に基づいて同定され得る。皮膚試験は、一般に、陽性と考えられる少なくとも5mm硬結の応答で、以下に記載のように行われ得る。
【0167】
本明細書中に記載の抗原の免疫原性部分は、Paul, Fundamental Immunology, 第3版, Raven Press, 1993, 243-247頁およびその中に引用される文献において要約されるような周知の技術を用いて調製および同定され得る。このような技術は、免疫原性特性についての天然抗原のポリペプチド部分のスクリーニングを包含する。本明細書中に記載される代表的な増殖およびサイトカイン産生アッセイは、一般に、これらのスクリーニングに用いられ得る。ポリペプチドの免疫原性部分は、このような代表的なアッセイにおいて、完全長抗原により生じる免疫応答と実質的に同様である免疫応答(例えば、増殖、インターフェロン-γ産生および/またはインターロイキン-12産生)を生じる部分である。言い換えれば、抗原の免疫原性部分は、本明細書中に記載のモデル増殖アッセイにおいて完全長抗原により誘導される増殖の少なくとも約20%、そして好ましくは約100%を生じ得る。免疫原性部分はまた、あるいは、本明細書中に記載のモデルアッセイにおいて完全長抗原により誘導されるインターフェロンーγおよび/またはインターロイキンー12の産生の少なくとも約20%、そして好ましくは約100%を刺激し得る。
【0168】
M. tuberculosis抗原の部分および他の変異体は、合成手段または組換え手段により生成され得る。約100より少ないアミノ酸、および一般には約50より少ないアミノ酸を有する合成ポリペプチドを、当業者に周知の技術を用いて生成し得る。例えば、このようなポリペプチドを、伸長するアミノ酸鎖にアミノ酸が連続的に添加される、Merrifield固相合成法のような、任意の市販の固相技術を用いて合成し得る。Merrifield、J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2146、1963を参照のこと。ポリペプチドの自動合成のための装置は、Applied BioSystems, Inc., Foster City, CAのような供給者から市販されており、そしてこれを製造者の指示に従って操作し得る。天然の抗原の変異体を、一般に、オリゴヌクレオチド指定部位特異的変異誘発のような、標準的な変異誘発技術を用いて調製し得る。DNA配列の断片もまた、短縮型のポリペプチドの調製を可能にする標準的な技術を用いて取り除き得る。
【0169】
天然の抗原の部分および/または変異体を含む組換えポリペプチドを、当業者に周知の種々の技術を用いてポリペプチドをコードするDNA配列から容易に調製し得る。例えば、培地に組換えタンパク質を分泌する適切な宿主/ベクター系からの上清を、市販のフィルターを用いて最初に濃縮し得る。濃縮の後、濃縮物を、アフィニティーマトリックスまたはイオン交換樹脂のような適切な精製マトリクスに適用し得る。最後に、1以上の逆相HPLC工程を用いて組換えタンパク質をさらに精製し得る。
【0170】
当業者に公知の任意の種々の発現ベクターを用いて、本発明の組換えポリペプチドを発現し得る。発現を、組換えポリペプチドをコードするDNA分子を含む発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた任意の適切な宿主細胞で達成し得る。適切な宿主細胞は、原核生物、酵母および高等真核生物の細胞を含む。好ましくは、使用される宿主細胞は、E. coli、酵母もしくはCOSまたはCHOのような哺乳動物細胞株である。この様式で発現されるDNA配列は、天然に存在する抗原、天然に存在する抗原の部分、またはそれらの他の変異体をコードし得る。
【0171】
一般に、調製方法によらず、本明細書中に開示されるポリペプチドは実質的に純粋な形態で調製される。好ましくは、ポリペプチドは少なくとも約80%純粋であり、より好ましくは少なくとも約90%純粋であり、そして最も好ましくは少なくとも約99%純粋である。以下に詳細に記載される特定の好ましい実施態様では、実質的に純粋なポリペプチドは、本明細書中に開示される1以上の方法での使用のために薬学的組成物またはワクチンに組み込まれる。
【0172】
ある特定の実施態様では、本発明は、以下のN末端配列の1つを有する可溶性M. tuberculosis抗原の少なくとも免疫原性部分、または保存的置換および/または改変のみが異なるその変異体を含むポリペプチドを開示する:
(a) Asp-Pro-Val-Asp-Ala-Val-Ile-Asn-Thr-Thr-Cys-Asn-Tyr-Gly-Gln-Val-
Val-Ala-Ala-Leu(配列番号120);
(b) Ala-Val-Glu-Ser-Gly-Met-Leu-Ala-Leu-Gly-Thr-Pro-Ala-Pro-Ser(配列
番号121);
(c) Ala-Ala-Met-Lys-Pro-Arg-Thr-Gly-Asp-Gly-Pro-Leu-Glu-Ala-Ala-Lys-
Glu-Gly-Arg(配列番号122);
(d) Tyr-Tyr-Trp-Cys-Pro-Gly-Gln-Pro-Phe-Asp-Pro-Ala-Trp-Gly-Pro(配列
番号123);
(e) Asp-Ile-Gly-Ser-Glu-Ser-Thr-Glu-Asp-Gln-Gln-Xaa-Ala-Val(配列番号
124);
(f) Ala-Glu-Glu-Ser-Ile-Ser-Thr-Xaa-Glu-Xaa-Ile-Val-Pro(配列番号
125);
(g) Asp-Pro-Glu-Pro-Ala-Pro-Pro-Val-Pro-Thr-Ala-Ala-Ser-Pro-Pro-Ser
(配列番号126);
(h) Ala-Pro-Lys-Thr-Tyr-Xaa-Glu-Glu-Leu-Lys-Gly-Thr-Asp-Thr-Gly(配列
番号127);
(i) Asp-Pro-Ala-Ser-Ala-Pro-Asp-Val-Pro-Thr-Ala-Ala-Gln-Leu-Thr-Ser-
Leu-Leu-Asn-Ser-Leu-Ala-Asp-Pro-Asn-Val-Ser-Phe-Ala-Asn(配列番号
128);
(j) Xaa-Asp-Ser-Glu-Lys-Ser-Ala-Thr-Ile-Lys-Val-Thr-Asp-Ala-Ser(配列
番号134);
(k) Ala-Gly-Asp-Thr-Xaa-Ile-Tyr-Ile-Val-Gly-Asn-Leu-Thr-Ala-Asp(配列
番号135);または
(l) Ala-Pro-Glu-Ser-Gly-Ala-Gly-Leu-Gly-Gly-Thr-Val-Gln-Ala-Gly(配列
番号136)、
ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり得、好ましくはシステイン残基である。上記の(g)として同定された抗原をコードするDNA配列を配列番号52に提供し、そして配列番号52によりコードされるポリペプチドを配列番号53に提供する。上記の(a)として定義された抗原をコードするDNA配列を配列番号101に提供する;その推定のアミノ酸配列を配列番号102に提供する。上記の抗原(d)に対応するDNA配列を配列番号24に提供し、抗原(c)に対応するDNA配列を配列番号25に提供し、そして抗原(i)に対応するDNA配列を配列番号99に提供し;その推定のアミノ酸配列を配列番号100に提供する。
【0173】
さらなる特定の実施態様では、本発明は、以下のN末端配列の1つを有するM. tuberculosis抗原の少なくとも1つの免疫原性部分、または保存的置換および/または改変のみが異なるその変異体を含むポリペプチドを開示する。
【0174】
(m) Xaa-Tyr-Ile-Ala-Tyr-Xaa-Thr-Thr-Ala-Gly-Ile-Val-Pro-Gly-Lys-Ile-
Asn-Val-His-Leu-Val(配列番号137);または
(n) Asp-Pro-Pro-Asp-Pro-His-Gln-Xaa-Asp-Met-Thr-Lys-Gly-Tyr-Tyr-Pro-
Gly-Gly-Arg-Arg-Xaa-Phe(配列番号129)、
ここで、Xaaは任意のアミノ酸であり得、好ましくはシステイン残基である。
【0175】
他の特定の実施態様では、本発明は、(a)配列番号1、2、4〜10、13〜25および52のDNA配列;(b)このようなDNA配列の相補物、または(c)(a)または(b)の配列に実質的に相同なDNA配列によりコードされる1以上のアミノ酸配列を含む、可溶性M. tuberculosis抗原(またはこのような抗原の変異体)の少なくとも免疫原性部分を含むポリペプチドを開示する。
【0176】
さらなる特定の実施態様では、本発明は、(a)配列番号26〜51のDNA配列、(b)このようなDNA配列の相補物、あるいは(c)(a)または(b)の配列に実質的に相同なDNA配列によりコードされる1以上のアミノ酸配列を含む、可溶性であり得るかまたは可溶性でなくてもよい、M. tuberculosis抗原(またはこのような抗原の変異体)の少なくとも免疫原性部分を含むポリペプチドを開示する。
【0177】
上述の特定の実施態様では、M. tuberculosis抗原は、特に本明細書中に列挙される1以上のDNA配列に実質的に相同なDNA配列によりコードされる変異体を含む。本明細書中で使用される「実質的な相同性」は、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNA配列を言う。適切な中程度にストリンジェントな条件は、5×SSC、0.5%SDS、1.0 mM EDTA(pH 8.0)での予備洗浄;50℃〜65℃での、5×SSC、一晩、または交差-種相同性の場合、45℃、0.5×SSCでのハイブリダイズ;続く0.1%SDSを含む2×、0.5×および0.2×SSCの各々を用いる65℃での20分間の2回の洗浄を含む。このようなハイブリダイズするDNA配列はまた本発明の範囲内であり、コードの縮重のため、ハイブリダイズするDNA配列によりコードされる免疫原性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列も同様である。
【0178】
関連する局面では、本発明は、第1と第2の本発明のポリペプチドを含む融合タンパク質または、あるいは、本発明のポリペプチドと上述の38kDの抗原またはESAT-6(配列番号103および104)のような公知のM. tuberculosis抗原とを含む融合タンパク質を、このような融合タンパク質の変異体とともに提供する。本発明の融合タンパク質はまた、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとの間にリンカーペプチドを含み得る。
【0179】
本発明の融合タンパク質をコードするDNA配列を、公知の組換えDNA技術を用いて構築して、第1および第2のポリペプチドをコードする別々のDNA配列を、適切な発現ベクターに集める。第1のポリペプチドをコードするDNA配列の3'末端をペプチドリンカーを用いてまたは用いずに第2のポリペプチドをコードするDNA配列の5'末端に連結し、その結果配列のリーディングフレームは、第1および第2の両方のポリペプチドの生物学的活性を保持する単一の融合タンパク質へ2つのDNA配列のmRNA翻訳を許容する相中に存在する。
【0180】
ペプチドリンカー配列を用いて、各々のポリペプチドをその二次構造および三次構造に折り畳むことを確実にするのに十分な間隔を置いて第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを分離し得る。このようなペプチドリンカー配列を、当該分野で周知の標準的な技術を用いて融合タンパク質に組み込む。適切なペプチドリンカー配列を以下の要因に基づいて選択し得る:(1)可撓性の伸長した構造を採用するそれらの能力;(2)第1および第2のポリペプチド上の機能的なエピトープと相互作用し得る二次構造を採用するそれらの能力のなさ;および(3)ポリペプチドの機能的なエピトープと反応し得る疎水性残基または荷電残基の欠失。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly、AsnおよびSer残基を含む。ThrおよびAlaのような、他の中性に近いアミノ酸をまたリンカー配列で用い得る。リンカーとして通常に用いられ得るアミノ酸配列は、Marateaら、Gene 40:39-46、1985;Murphyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8258-8262、1986;米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に開示されるものを含む。リンカー配列は、1〜約50アミノ酸長であり得る。ペプチド配列は、第1および第2のポリペプチドが、機能的ドメインを分離しかつ立体障害を妨げるために使用され得る非必須N末端アミノ酸領域を有する場合には必要でない。
【0181】
連結されたDNA配列は、適切な転写または翻訳調節エレメントに作動可能に結合される。DNAの発現を担う調節エレメントは、第1のポリペプチドをコードするDNA配列の5'末端にのみ位置する。同様に、翻訳および転写終止シグナルを終止させるために必要とされる終止コドンは、第2のポリペプチドをコードするDNA配列の3'末端にのみ存在する。
【0182】
別の局面では、本発明は、1つまたはそれ以上の上記ポリペプチドまたは融合タンパク質(あるいはこのようなポリペプチドをコードするDNA分子)を用いて患者において結核に対して防御免疫を誘導するための方法を提供する。本明細書中で使用されるように、「患者」とは、任意の温血動物、好ましくはヒトを意味する。患者は、疾患で苦しんでいる状態かもしれないし、または検出可能な疾患および/または感染に罹っていない状態かもしれない。換言すれば、防御免疫は、結核を予防または処置するために誘導され得る。
【0183】
この局面において、ポリペプチド、融合タンパク質、またはDNA分子は、一般に薬学的組成物および/またはワクチン中に存在する。薬学的組成物は、1つまたはそれ以上のポリペプチド(これらのそれぞれは、1つ以上の上記配列(またはその変異体)を含有し得る)、および生理的に受容可能なキャリアを含み得る。ワクチンは、1つまたはそれ以上の上記ポリペプチド、およびアジュバントまたはリポソームのような非特異的免疫応答エンハンサー(それには、ポリペプチドが取り込まれている)を含み得る。このような薬学的組成物およびワクチンはまた、組み合わせポリペプチドに取り込まれているかまたは別のポリペプチド中に存在するかのいずれかの、他のM. tuberculosis抗原を含有し得る。
【0184】
あるいは、ワクチンは、1つまたはそれ以上の上記ポリペプチドをコードするDNAを含有し得、これによって、ポリペプチドをインサイチュで生じさせる。このようなワクチンにおいて、DNAは、核酸発現系、細菌およびウイルスの発現系を含む、当業者に公知の種々の送達系のいずれかに存在し得る。適切な核酸発現系には、患者での発現に必要なDNA配列(例えば、適切なプロモーターおよび終止シグナル)が含まれる。細菌送達系には、ポリペプチドの免疫原性部分をその細胞表面上で発現する細菌(例えば、Bacillus-Calmette-Guerrin)の投与が含まれる。好ましい実施態様では、DNAは、ウイルス発現系(例えば、ワクシニアまたは他のポックスウイルス、レトロウイルス、あるいはアデノウイルス)を用いて導入され得、これには、非病原性の(欠損)複製コンピテントウイルスの使用が含まれ得る。このような発現系にDNAを取り込むための技術は、当業者に周知である。DNAはまた、例えば、Ulmerら, Science 259:1745-1749, 1993に記載され、かつCohen, Science 259:1691-1692, 1993によって総説されるように、「裸」であり得る。裸のDNAの取り込みは、生分解性のビーズ(これは、細胞に効率的に運搬される)上にDNAをコーティングすることにより増大され得る。
【0185】
関連する局面では、上記のDNAワクチンは、本発明のポリペプチドまたは公知のM. tuberculosis抗原(例えば、上記の38kD抗原)のいずれかと同時にまたは連続的に投与され得る。例えば、ワクチンの防御免疫効果を高めるために、本発明のポリペプチドをコードするDNA(「裸」または上記の送達系中でのいずれか)の投与に続き、抗原を投与し得る。
【0186】
投与の経路および頻度、ならびに用量は、個体によって変化し、そして現在BCGを用いる免疫化に使用されているものと平行し得る。一般に、薬学的組成物およびワクチンは、注射(例えば、皮内、筋肉内、静脈内または皮下)、鼻腔内(例えば、吸入により)、または経口によって投与され得る。1回と3回との間の用量は、1〜36週間で投与される。好ましくは、3回の用量を3〜4月の間隔で投与し、そして追加ワクチン接種をその後周期的に行い得る。別のプロトコルは、個別の患者に適切であり得る。適切な用量は、上記のように投与される場合、免疫化された患者においてM. tuberculosis感染から患者を少なくとも1〜2年間防御するのに充分な免疫応答を生じ得る量の、ポリペプチドまたはDNAである。一般に、単回用量中に存在する(または単回用量中のDNAによってインサイチュで産生される)ポリペプチドの量は、宿主1kgあたり約1pg〜約100mg、代表的には、約10pg〜約1mg、そして好ましくは約100pg〜約1μgの範囲である。適切な用量の容積は、患者の体積によって変化するが、代表的には、約0.1mL〜約5mLの範囲である。
【0187】
当業者に公知の任意の適切なキャリアが本発明の薬学的組成物に使用され得るが、キャリアのタイプは、投与の様式に依存して変化する。非経口投与(例えば、皮下注射)の場合、キャリアは、好ましくは、水、生理食塩水、アルコール、油脂、ワックスまたは緩衝液を含む。経口投与の場合、上記のキャリアのいずれかまたは固形キャリア(例えば、マンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、および炭酸マグネシウム)が使用され得る。生分解性のマイクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ガラクチド(polylactic garactide))もまた、本発明の薬学的組成物のキャリアとして使用され得る。適切な生分解性マイクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号および同第5,075,109号に開示されている。
【0188】
任意の種々のアジュバントは、免疫応答を非特異的に高めるために本発明のワクチンに使用され得る。ほとんどのアジュバントは、迅速な異化作用から抗原を保護するために設計された基質(例えば、水酸化アルミニウムまたは鉱油)、および非特異的な免疫応答の刺激剤(例えば、リピドA、Bortadella pertussisまたはMycobacterium tuberculosis)を含有する。適切なアジュバントが、市販されており、例えば、Freund's Incomplete AdjuvantとFreund's Complete Adjuvant(Difco Laboratories)、およびMerck Adjuvant 65(Merck and Company, Inc., Rahway, NJ)がある。他の適切なアジュバントには、ミョウバン、生分解性のマイクロスフェア、モノホスホリルリピドAおよびキルA(quil A)が挙げられる。
【0189】
別の局面では、本発明は、1つまたはそれ以上の上記ポリペプチドを用いて、皮膚試験を用いる結核を診断するための方法を提供する。本明細書中で使用されるように、「皮膚試験」とは、1つまたはそれ以上の上記ポリペプチドの皮内注射の後に遅延型過敏症(DTH)反応(例えば、腫脹、発赤または皮膚炎)が測定される、患者で直接行われるアッセイである。このような注射は、ポリペプチドを患者の皮膚細胞と接触させるのに充分に適切な任意のデバイス(例えば、ツベルクリン注射器または1mL注射器)を用いて達成され得る。好ましくは、反応は、注射後少なくとも48時間、より好ましくは48〜72時間に測定される。
【0190】
DTH反応は、細胞媒介性免疫応答であり、これは、先に試験抗原(すなわち、使用されたポリペプチドの免疫原性部分、またはその変異体)に曝された患者では、より大きくなる。応答は、定規を用いて視覚的に測定される。一般に、直径約0.5cm以上、好ましくは、直径約1.0cm以上の応答は、陽性応答であり、結核感染を示す。これは、進行中の疾患として顕著であるかもしれないしそうでばないかもしれない。
【0191】
本発明のポリペプチドは、好ましくは、皮膚試験で使用するための、上記のポリペプチドおよび生理的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物として処方される。このような組成物は、代表的には、1つまたはそれ以上の上記ポリペプチドを0.1mLの容積中に約1μg〜約100μg、好ましくは約10μg〜約50μgの範囲の量で含有する。好ましくは、このような薬学的組成物に使用されるキャリアは、適切な保存剤(例えば、フェノールおよび/またはTween 80TM)を含む生理食塩水である。
【0192】
好ましい実施態様では、皮膚試験に使用されるポリペプチドは、これが反応期間中注射の部位に存続するような十分な大きさである。一般に、長さが少なくとも9アミノ酸のポリペプチドは充分である。ポリペプチドはまた、好ましくは、注射の数時間内にマクロファージによって破壊されて、T細胞に提示される。このようなポリペプチドは、1つまたはそれ以上の上記配列および/または他の免疫原性または非免疫原性配列の反複を含み得る。
【0193】
以下の実施例は、限定のためでなく、例示のために提供される。
【実施例1】
【0194】
M.tuberculosis培養濾過物由来のポリペプチドの精製および特徴付け
本実施例は、培養濾過物からのM.tuberculosis可溶性ポリペプチドの調製を例示する。他に言及されない限り、以下の実施例における全てのパーセントは、容量あたりの重量である。
【0195】
M.tuberculosis(H37Ra,ATCC No.25177、またはH37Rv,ATCC No.25618のいずれか)を、滅菌GAS培地で37℃で14日間培養した。次いで、培地を、0.45μフィルターに通して吸引濾過して(大部分の細胞を残す)滅菌2.5Lボトルに入れた。次いで、培地を、0.2μフィルターに通して濾過して滅菌4Lボトルに入れた。NaN3を培養濾過物に0.04%の濃度に添加した。次いで、ボトルを4℃の低温室に置いた。
【0196】
濾過物をオートクレーブした12Lリザーバーに入れ、エタノールでリンスし、10,000kDa MWCO膜を含む400ml Amicon stir cellに濾過物を送り込むことより、培養濾過物を濃縮した。圧力を、窒素ガスを用いて60psiで維持した。この手順により、12L容量を約50mlに減少させた。
【0197】
培養濾過物を、重炭酸アンモニウム溶液を2回交換して、8,000kDa MWCOセルロースエステル膜を用いて0.1%重炭酸アンモニウム中に透析した。次いで、タンパク質濃度を、市販のBCAアッセイ(Pierce,Rockford,IL)により決定した。
【0198】
次いで、透析した培養濾過物を凍結乾燥し、そしてポリペプチドを蒸留水に再懸濁した。ポリペプチドを、陰イオン交換クロマトグラフィーの初期条件である、0.01mM 1,3ビス[トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]プロパン、pH7.5(Bis-Trisプロパン緩衝液)に対して透析した。分画を、0.01mM Bis-Trisプロパン緩衝液(pH7.5)で平衡化したPOROS 146 II Q/M陰イオン交換カラム4.6mm×100mm(Perseptive BioSystems,Framingham,MA)でのゲルプロフュージョンクロマトグラフィーを用いて行った。ポリペプチドを、上記の緩衝液系での線形0〜0.5M NaClグラジエントで溶出した。カラムの溶出液を220nmの波長でモニターした。
【0199】
イオン交換カラムから溶出したポリペプチドのプールを、蒸留水に対して透析し、そして凍結乾燥した。得られた物質を、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)pH1.9を含む水に溶解し、そしてポリペプチドを、Delta-Pak C18カラム(Waters,Milford,MA)300オングストローム孔サイズ、5ミクロン粒子サイズ(3.9×150mm)で精製した。ポリペプチドを、0〜60%希釈緩衝液(アセトニトリル中の0.1%TFA)の線形グラジエントでカラムから溶出した。流速は0.75ml/分であり、そしてHPLC溶出液を214nmでモニターした。溶出されたポリペプチドを含む画分を回収し、個々のサンプルの純度を最大にした。約200個の精製されたポリペプチドを得た。
【0200】
次いで、精製ポリペプチドを、PBMC調製物においてT細胞増殖を誘導する能力についてスクリーニングした。PPD皮膚試験ポジティブであることが知られ、そしてそのT細胞がPPDおよびMTB由来の粗可溶性タンパク質に応答して増殖することが示されているドナー由来のPBMCを、10%プールヒト血清および50μg/mlゲンタマイシンを補充したRPMI 1640を含む培地で培養した。精製ポリペプチドを、0.5〜10μg/mLの濃度で2連で添加した。200μlの容量の96ウェル丸底プレート中で6日間培養した後、培地の50μlを、以下の記載のようにIFN-γレベルの決定のために各ウェルから取り出した。次いで、プレートを、さらに18時間トリチウム化チミジンの1μCi/ウェルでパルスし、採集し、そしてトリチウムの取り込みをガスシンチレーションカウンターを用いて決定した。両方のレプリカで、培地のみで培養された細胞において観察された増殖よりも3倍大きな増殖をもたらす画分を、ポジティブとみなした。
【0201】
IFN-γを、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて測定した。ELISAプレートを、室温で4時間、PBS中のヒトIFN-γ(PharMingen,San Diego,CA)に対するマウスモノクローナル抗体でコートした。次いで、ウェルを、室温で1時間、5%(W/V)脱脂粉乳を含むPBSでブロックした。次いで、プレートを、PBS/0.2% TWEEN-20中で6回洗浄し、そしてELISAプレート中で培養培地で1:2に希釈したサンプルを、室温で一晩インキュベートした。プレートを再度洗浄し、そしてPBS/10%正常ヤギ血清で1:3000に希釈したポリクローナルウサギ抗ヒトIFN-γ血清を各ウェルに添加した。次いで、プレートを室温で2時間インキュベートし、洗浄し、そして西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgG(Sigma Chemical So.,St Louis,MO)を、PBS/5%脱脂粉乳中の1:2000希釈で添加した。さらに室温で2時間のインキュベーションの後、プレートを洗浄し、そしてTMB基質を添加した。反応を、1N硫酸で20分後に停止させた。光学密度を、参照波長として570nmを用いて450nmで測定した。両方のレプリカで、培地のみで培養した細胞からの平均ODよりも2倍大きなOD+3標準偏差を示す画分を、ポジティブとみなした。
【0202】
配列決定のために、ポリペプチドを個々に、BiobreneTM(Perkin Elmer/Applied BioSystems Division,Foster City,CA)処理したガラスファイバーフィルター上で乾燥した。ポリペプチドを有するフィルターを、Perkin Elmer/Applied BioSystems Division Procise 492 タンパク質配列決定機にロードした。ポリペプチドをアミノ末端から、従来のEdman化学を使用して配列決定した。アミノ酸配列を、適切なPTH誘導体標準に対するPTHアミノ酸誘導体の保持時間を比較することより、各ポリペプチドについて決定した。
【0203】
上記の手順を用いて、以下のN末端配列を有する抗原が単離された:
(a) Asp-Pro-Val-Asp-Ala-Val-Ile-Asn-Thr-Thr-Xaa-Asn-Tyr-Gly-Gln-Val-
Val-Ala-Ala-Leu(配列番号54);
(b) Ala-Val-Glu-Ser-Gly-Met-Leu-Ala-Leu-Gly-Thr-Pro-Ala-Pro-Ser(配列
番号55);
(c) Ala-Ala-Met-Lys-Pro-Arg-Thr-Gly-Asp-Gly-Pro-Leu-Glu-Ala-Ala-Lys-
Glu-Gly-Arg(配列番号56);
(d) Tyr-Tyr-Trp-Cys-Pro-Gly-Gln-Pro-Phe-Asp-Pro-Ala-Trp-Gly-Pro(配列
番号57);
(e) Asp-Ile-Gly-Ser-Glu-Ser-Thr-Glu-Asp-Gln-Gln-Xaa-Ala-Val(配列番号
58);
(f) Ala-Glu-Glu-Ser-Ile-Ser-Thr-Xaa-Glu-Xaa-Ile-Val-Pro(配列番号59);
(g) Asp-Pro-Glu-Pro-Ala-Pro-Pro-Val-Pro-Thr-Ala-Ala-Ala-Ala-Pro-Pro-
Ala(配列番号60);および
(h) Ala-Pro-Lys-Thr-Tyr-Xaa-Glu-Glu-Leu-Lys-Gly-Thr-Asp-Thr-Gly(配列
番号61);
ここでXaaは任意のアミノ酸であり得る。
【0204】
さらなる抗原を、上記の手順に加えて、微細孔HPLC精製工程を用いて単離した。詳細には、上記のクロマトグラフィーの精製工程による抗原の混合物を含む20μlの画分を、Perkin Elmer/Applied Biosystems Division Model 172 HPLCにおいて、7ミクロンの孔サイズ、カラムサイズ1mm×100mmを有するAquapore C18カラム(Perkin Elmer/Applied Biosystems Division, Foster City, CA)上で精製した。画分を、水(0.05% TFA)中のアセトニトリル(0.05% TFAを含む)の1%/分の線形グラジエントを用いて、80μl/分の流速でカラムから溶出した。溶出液を250nmでモニターした。元の画分を、4つの主要なピークと他の小さな成分とに分離し、そして12.054Kdの分子量(質量スペクトル測定による)および以下のN末端配列を有することが示されたポリペプチドを得た:
(i) Asp-Pro-Ala-Ser-Ala-Pro-Asp-Val-Pro-Thr-Ala-Ala-Gln-Gln-Thr-Ser-
Leu-Leu-Asn-Asn-Leu-Ala-Asp-Pro-Asp-Val-Ser-Phe-Ala-Asp(配列番号
62)
このポリペプチドは、上記のアッセイを用いるPBMC調製物において増殖およびIFN-γ産生の誘発を示した。
【0205】
さらなる可溶性抗原を、M. tuberculosis培養濾過物から以下のように単離した。M. tuberculosis培養濾過物を上記のように調製した。Bis-Trisプロパン緩衝液(pH5.5)に対する透析後、Bis-Trisプロパン緩衝液(pH5.5)で平衡化したPoros QEカラム4.6×100mm(Perseptive Biosystems)での陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて分画を行った。ポリペプチドを、10ml/分の流速で、先の緩衝液系中での0〜1.5MのNaCl線形グラジエントを用いて溶出した。カラム溶出液を214nmの波長でモニターした。
【0206】
イオン交換カラムから溶出した画分をプールし、そしてPoros R2カラム4.6×100mm(Perseptive Biosystems)を用いる逆相クロマトグラフィーに供した。ポリペプチドを、5ml/分の流速で、0〜100%のアセトニトリル(0.1% TFA)の線形グラジエントを用いて、カラムから溶出した。溶出液を214nmでモニターした。
【0207】
溶出したポリペプチドを含む画分を凍結乾燥し、そして80μlの水性の0.1%のTFAに再懸濁し、そしてさらに2ml/分の流速で、0〜100%のアセトニトリル(0.1%のTFA)の線形グラジエントを用いて、Vydac C4カラム4.6×150mm(Western Analytical, Temecula, CA)での逆相クロマトグラフィーに供した。溶出液を214nmでモニターした。
【0208】
生物学的活性を有する画分を、1つの主要なピークと他の小さな成分に分離した。PVDF膜上でのこのピークのウェスタンブロットは、分子量14Kd、20Kd、および26Kdの3つの主要なバンドを明らかにした。これらのポリペプチドが、それぞれ以下のN末端配列を有することを決定した:
(j) Xaa-Asp-Ser-Glu-Lys-Ser-Ala-Thr-Ile-Lys-Val-Thr-Asp-Ala-Ser(配列
番号134);
(k) Ala-Gly-Asp-Thr-Xaa-Ile-Tyr-Ile-Val-Gly-Asn-Leu-Thr-Ala-Asp(配列
番号135);および
(l) Ala-Pro-Glu-Ser-Gly-Ala-Gly-Leu-Gly-Gly-Thr-Val-Gln-Ala-Gly(配列
番号136)、ここでXaaは任意のアミノ酸であり得る。
【0209】
上記のアッセイを用いて、これらのポリペプチドがPBMC調製物において増殖およびIFN-γ産生を誘発することを示した。図1AおよびBは、それぞれ、最初の、および2番目のドナー由来のPBMC調製物を用いるこのようなアッセイの結果を示す。
【0210】
上記の(a)、(c)、(d)、および(g)と称される抗原をコードするDNA配列を、N末端配列に対応し、そしてM.tuberculosisコドン偏向を含む32P末端標識された変性オリゴヌクレオチドを用いて、M.tuberculosisゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって得た。配列番号101で提供される配列を有するクローンを先に同定した抗原(a)に対応するプローブを用いてスクリーニングを行った。配列番号101によりコードされるポリペプチドは配列番号102に提供される。配列番号52で提供される配列を有するクローンを先に同定した抗原(g)に対応するプローブを用いてスクリーニングを行った。配列番号52によりコードされるポリペプチドは配列番号53に提供される。配列番号24に提供される配列を有するクローンを先に同定した抗原(d)に対応するプローブを用いてスクリーニングを行い、そして配列番号25に提供される配列を有するクローンを先に同定した抗原(c)に対応するプローブを用いてスクリーニングを行った。
【0211】
先のアミノ酸配列を、DNA STARシステムを用いてgen bank中の公知のアミノ酸配列と比較した。検索したデータベースは約173,000タンパク質を含み、そしてこれは、翻訳されたタンパク質配列とSwiss, PIRデータベースの組み合わせである(Version 87)。抗原(a)〜(h)および(l)についてのアミノ酸配列との有意な相同性がないことを検出した。
【0212】
抗原(i)のアミノ酸配列は、M.leprae由来の配列に相同であることを見出した。全長のM.leprae配列を、GENBANKから得られた配列を用いてゲノムDNAから増幅した。次いで、この配列を用いて、以下の実施例2に記載のM.tuberculosisライブラリーをスクリーニングし、そしてM.tuberculosisホモログの全長のコピーを得た(配列番号99)。
【0213】
抗原(j)のアミノ酸配列は、DNA配列から翻訳された既知のM.tuberculosisタンパク質に対して相同であることを見出した。本発明者らの知識の限りでは、このタンパク質がT細胞刺激活性を有することは、これまでに示されていなかった。抗原(k)のアミノ酸配列が、M.leprae由来の配列に関連することを見出した。
【0214】
上記の、3つのPPDポジティブドナーを用いる、増殖およびIFN-γアッセイにおいて、先に提供された代表的な抗原についての結果を表1に示す:
【表1】

【0215】
表1において、2から4の間の刺激指標(SI)(培地のみで培養した細胞と比較した)を与える応答を、+で評点をつけ、1μg以下の濃度で4〜8または2〜4のSIを++で評点をつけ、そして8より大きいSIを+++で評点をつけた。配列(i)の抗原は、増殖およびIFN-γアッセイの両方において、1つのドナーについては高いSI(+++)、および2つの他のドナーについては低いSI(++および+)を有することを見出した。これらの結果は、これらの抗原が増殖および/またはインターフェロン-γ産生を誘発し得ることを示す。
【実施例2】
【0216】
M.tuberculosis抗原の単離のための患者の血清の使用
この実施例は、M.tuberculosis感染個体由来の血清を用いてスクリーニングすることにより、M.tuberculosis溶解物から抗原を単離することを説明する。
【0217】
乾燥させたM.tuberculosis H37Ra(Difco Laboratories)を2% NP40溶液に添加し、そしてあるいは、3回ホモジネートおよび超音波処理した。得られた懸濁物を微量遠心チューブで13,000rpmで遠心分離し、そして上清を0.2ミクロンのシリンジフィルターに通した。濾液をMacro Prep DEAEビーズ(BioRad, Hercules, CA)に結合させた。ビーズを20mMのTris(pH7.5)で大規模に洗浄し、そして結合したタンパク質を1MのNaClを用いて溶出した。1M NaCl溶出液を10mMのTris(pH7.5)に対して一晩透析した。透析した溶液を、DNaseおよびRNaseを用いて、0.05mg/mlで30分間室温で処理し、ついでα-D-マンノシダーゼ 0.5U/mgを用いてpH4.5で3〜4時間室温で処理した。pH7.5に戻した後、材料をFPLCで、Bio Scale-Q-20カラム(BioRad)を通して分画した。画分を9つのプールと組み合わせ、Centriprep 10(Amicon, Beverley, MA)で濃縮し、次いで本発明の他の抗原と免疫反応性でないM.tuberculosis感染患者由来の血清プールを用いて、血清学的活性についてウェスタンブロットによりスクリーニングした。
【0218】
ほとんどの反応性画分をSDS-PAGEで泳動し、そしてPVDFに転移させた。以下の配列を生じる約85Kdのバンドを切り出した:
(m)Xaa-Tyr-Ile-Ala-Tyr-Xaa-Thr-Thr-Ala-Gly-Ile-Val-Pro-Gly-Lys-
Ile-Asn-Val-His-Leu-Val (配列番号137)、ここで、Xaaは任意のアミノ
酸であり得る。
【0219】
上記のようなこの配列と遺伝子バンクの配列との比較は、既知の配列に対して有意な相同性がないことを明らかにした。
【実施例3】
【0220】
M.tuberculosis抗原をコードするDNA配列の調製
この実施例は、M.tuberculosisで感染させた患者から得た血清、または可溶性M.tuberculosis抗原に対して惹起した抗血清を用いてM.tuberculosis発現ライブラリーをスクリーニングすることによる、M.tuberculosis抗原をコードするDNA配列の調製を説明する。
【0221】
A.ウサギ抗血清を用いるM.tuberculosis可溶性抗原の調製
ゲノムDNAをM.tuberculosis株H37Raから単離した。DNAをランダムに切断し、そしてLambda ZAP発現系(Stratagene,La Jolla, CA)を用いて発現ライブラリーを構築した。ウサギ抗血清を、M.tuberculosis培養物の濃縮した上清でウサギを免疫することにより、M.tuberculosis株H37Ra、H37Rv、およびErdmanの分泌タンパク質に対して生成させた。詳細には、最初にウサギを、10μgのムラミルジペプチド(Calbiochem, La Jolla, CA)および1mlの不完全フロイントアジュバントを含む2mlの全容量中の200μgのタンパク質抗原で皮下免疫した。4週間後、ウサギを不完全フロイントアジュバント中の100μgの抗原で皮下的に追加免疫した。最後に、ウサギを、4週間後に50μgのタンパク質抗原で静脈内免疫した。抗血清を用いて、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載のように発現ライブラリーをスクリーニングした。免疫反応性抗原を発現するバクテリオファージプラークを精製した。プラーク由来のファージミドをレスキューし、そしてM.tuberculosisクローンのヌクレオチド配列を推定した。
【0222】
32個のクローンを精製した。これらのうち25個がヒトM.tuberculosisにおいて以前に同定されていない配列を示した。組換え抗原を発現させ、そして精製した抗原を実施例1に記載のような免疫学的分析に用いた。Skeikyら、J. Exp. Med. 181: 1527-1537, 1995に記載のように、タンパク質をIPTGにより誘導し、そしてゲル溶出により精製した。このスクリーニングで同定されたDNA分子の代表的な配列を配列番号1〜25に提供する。対応する推定アミノ酸配列を、配列番号63〜87に示す。
【0223】
上記のデータベースを用いる遺伝子バンク中の既知の配列とこれらの配列との比較において、TbRA2A、TbRA16、TbRA18、およびTbRA29(配列番号76、68、70、75)として本明細書中以下で参照されるクローンが、Mycobacterium lepraeの既に同定された配列に対していくらかの相同性を示したが、M.tuberculosisにおいては示さなかったことを見出した。TbRA11、TbRA26、TbRA28、およびTbDPEP(配列番号65、73、74、53)は、M.tuberculosisにおいて以前に同定された配列であった。TbRA1、TbRA3、TbRA4、TbRA9、TbRA10、TbRA13、TbRA17、TbRA19、TbRA29、TbRA32、TbRA36、ならびにオーバーラップするクローンTbRA35およびTbRA12(それぞれ、配列番号63、77、81、82、64、67、69、71、75、78、80、79、66)に対して有意な相同性がないことを見出した。クローンTbRa24はクローンTbRa29とオーバーラップしている。
【0224】
代表的な組換え抗原について行われ、そしていくつかの異なるM. tuberculosis免疫患者由来のT細胞調製物を用いたPBMC増殖およびインターフェロン-γアッセイの結果を、それぞれ表2および3に示す。
【表2】

【表3】

【0225】
表2および3において、1.2〜2の間の刺激指標(SI)(培地のみで培養した細胞と比較した)を与える応答を±で評点をつけ、2〜4のSIを+で評点をつけ、1μg以下の濃度で4〜8または2〜4のSIを++で評点をつけ、そして8より大きいSIを+++で評点をつけした。さらに、増殖およびイFN-γ産生における濃縮の効果を添付の図において先の抗原の2つについて示す。増殖およびインターフェロン-γ産生の両方について、TbRa3は++で評点をつけられ、そしてTbRa9は+で評点をつけられた。
【0226】
これらの結果は、これらの可溶性抗原がM.tuberculosis免疫個体由来のT細胞において増殖および/またはインターフェロン-γ産生を誘発し得ることを示す。
【0227】
B.M.tuberculosis抗原をコードするDNA配列を同定するための患者血清の使用
上記のゲノムDNAライブラリー、およびさらなるH37Rvライブラリーを、進行性の結核の患者から得た血清プールを用いてスクリーニングした。H37Rvライブラリーを調製するために、M.tuberculosis H37Rv株のゲノムDNAを単離し、部分的なSau3A消化にかけ、そしてこれを用いて、ラムダZap発現系(Stratagene, La Jolla, Ca)を用いて発現ライブラリーを構築した。3つの異なる血清プール(それぞれ、進行性の肺疾患または胸膜疾患の3個体から得た血清を含有する)を、発現スクリーニングにおいて用いた。プールをTbL、TbM、およびTbHと称し、ELISAおよび免疫ブロットフォーマットの両方におけるH37Ra溶解物との相対的反応性(すなわち、TbL=低反応性、TbM=中反応性、およびTbH=高反応性)に注目した。7人の進行性肺結核の患者由来の第4の血清プールもまた用いた。どの血清にも、組換え38kD M.tuberculosis H37Raリン酸結合タンパク質との増大した反応性はなかった。
【0228】
全プールをE.coli溶解物に予め吸着させ、そしてこれを用いて、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載のようにH37RaおよびH37Rv発現ライブラリーをスクリーニングした。免疫反応性抗原を発現するバクテリオファージプラークを精製した。プラーク由来のファージミドをレスキューし、そしてM.tuberculosisクローンのヌクレオチド配列を推定した。
【0229】
32個のクローンを精製した。これらのうち31個が、ヒトM.tuberculosisにおいて以前に同定されていない配列を示した。同定したDNA分子の代表的な配列を、配列番号26〜51および105に提供する。これらのうち、TbH-8およびTbH-8-2(配列番号105)が、同一のクローン由来の連続していないDNA配列であり、そしてTbH-4(配列番号43)およびTbH-4-FWD(配列番号44)が、同一のクローン由来の連続していない配列である。本明細書中以降でTb38-1、TbH-4、TbH-8、TbH-9、およびTbH-12と同定した抗原のアミノ酸配列を配列番号88〜92に示す。先に特定したデータベースを用いた、これらの配列と遺伝子バンクにおける既知の配列との比較は、TbH-4、TbH-8、TbH-9、およびTbM-3に対して有意な相同性がないことを明らかにした。一方、弱い相同性をTbH-9に対して見出した。TbH-12が、M.paratuberculosis(受託番号第S28515号)において以前に同定された34kD抗原性タンパク質に対して相同であることを見出した。Tb38-1が、M.bovis(受託番号第U34848号)およびM.tuberculosis(Sorensenら、Infec. Immun. 63:1710-1717, 1995)において以前に同定された抗原ESAT-6のオープンリーディングフレームの34塩基対上流に位置することを見出した。
【0230】
Tb38-1およびTbH-9(ともにH37Raライブラリーから単離された)由来のプローブを用いて、H37Rvライブラリーにおいてクローンを同定した。Tb38-1は、Tb38-1-1F2、Tb38-1F3、Tb38-1F5およびTb38-1F6(配列番号112、113、116、118、および119)にハイブリダイズした。(配列番号112および113は、クローンTb38-1F2由来の連続していない配列である)。Tb38-1F2において、2つのオープンリーディングフレームを推定した;1つは、Tb37FL(配列番号114)に相当し、2番目の配列(部分配列)は、Tb38-1のホモログであり得、そしてTb38-IN(配列番号115)と呼ぶ。Tb38-1F3の推定アミノ酸配列を配列番号117に示す。TbH-9プローブは、H37Rvライブラリーにおいて3つのクローンを同定した:TbH-9-FL(配列番号106)、これは、TbH-9(R37Ra)のホモログであり得る、TbH-9-1(配列番号108)、およびTbH-9-4(配列番号110)、これらの全ては、TbH-9に対して高度に関連した配列である。これらの3つのクローンの推定アミノ酸配列を配列番号107、109、および111に示す。
【0231】
Tb38-1、ESAT-6および他の代表的な組換え抗原で行ったT細胞アッセイの結果を、以下の表4A、Bおよび5にそれぞれ示す:
【表4】

【表5】

【0232】
これらの結果は、本発明のM.tuberculosis抗原およびESAT-6は共に、増殖および/またはM.tuberculosis免疫個体由来のT細胞におけるインターフェロンγ産生を誘発し得ることを示す。発明者が知る限りでは、ESAT-6は、ヒト免疫応答を刺激することは以前には示されていなかった。
【0233】
抗原Tb38-1のアミノ酸配列をカバーする6個のオーバーラップするペプチドのセットを、実施例4に記載の方法を用いて構築した。これらのペプチドの配列(本明細書中以降でpep1-6と称する)をそれぞれ、配列番号93〜98に提供する。これらのペプチドを用いたT細胞アッセイの結果を表6および7に示す。これらの結果は、増殖およびM.tuberculosis免疫個体由来のT細胞におけるインターフェロンγ産生を誘発し得るTb38-1内のT細胞エピトープの存在を確認し、そしてその位置決めを助ける。
【表6】

【表7】

【実施例4】
【0234】
ツベルクリン精製タンパク質誘導体由来のポリペプチドの精製および特徴付け
M.tuberculosisポリペプチドを、ツベルクリン精製タンパク質誘導体(PPD)から以下のように単離した。
【0235】
PPDを、いくらかの改変を加えて公開されたとおりに調製した(Seibert, F.ら、Tuberculin purified protein derivative. Preparation and analyses of a large quantity for standard. The American Review of Tuberculosis 44:9-25, 1941)。
【0236】
M.tuberculosis Rv株をローラーボトル中で合成培地において37℃で6週間増殖させた。次いで、増殖させた細菌を含むボトルを、3時間、水蒸気中で100℃まで加熱した。培養物を0.22μフィルターを用いて滅菌濾過し、そして液相を3kDカットオフメンブレンを用いて20回濃縮した。タンパク質を、50%硫酸アンモニウム溶液で1回および25%硫酸アンモニウム溶液で8回、沈澱させた。得られたタンパク質(PPD)を、Biocad HPLCシステム(Perseptive Biosystems, Framingham, MA)においてC18カラム(7.8×300mM;Waters, Milford, MA)を用いる逆相液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により分画した。画分を、0〜100%緩衝液(アセトニトリル中0.1% TFA)からの線形グラジエントを用いてカラムから溶出した。流速は10ml/分であり、そして溶出液を214nmおよび280nmでモニターした。
【0237】
6つの画分を採集し、乾燥し、PBS中に懸濁し、そしてM.tuberculosis感染モルモットにおいて、遅延型過敏(DTH)反応の誘発について個々に試験した。1つの画分が、強いDTH反応を誘発することを見出し、そしてこれを、Perkin Elmer/Applied Biosystems Division Model 172 HPLCの微細孔Vydac C18カラム(カタログ番号218TP5115)においてさらにRP-HPLCにより続けて分画した。画分を、80μl/分の流速を有する5〜100%緩衝液(アセトニトリル中0.05% TFA)からの線形グラジエントを用いて溶出した。溶出液を215nmでモニターした。8つの画分を採集し、そしてM.tuberculosis感染モルモットにおいてDTHの誘発について試験した。1つの画分が、約16mmの硬結の強いDTHを誘発することが見出された。他の画分は、検出可能なDTHを誘導しなかった。陽性画分をSDS-PAGEゲル電気泳動にかけ、そして約12kD分子量の単一のタンパク質バンドを含有することを見出した。
【0238】
このポリペプチド(本明細書中以降でDPPDと称する)を、上記のようにPerkin Elmer/Applied Biosystems Division Procise 492タンパク質配列決定装置を用いてアミノ末端から配列決定し、そしてこれが配列番号129に示すN末端配列を有することを見出した。上記のような、この配列と遺伝子バンクにおける既知の配列との比較は、公知のホモロジーがないことを明らかにした。DPPDの4つの臭化シアンフラグメントを単離し、そしてこれが配列番号130〜133に示す配列を有することを見出した。
【0239】
抗原DPPDがヒトPBMCを刺激して、増殖およびIFN-γを産生する能力を実施例1に記載のようにアッセイした。表8に示すように、DPPDは増殖を刺激し、そして大量のIFN-γの産生を惹起することを見出した;市販のPPDにより惹起されるよりも高程度である。
【表8】

【実施例5】
【0240】
合成ポリペプチドの合成
ポリペプチドを、HPTU(O-ベンゾトリアゾール-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)活性化と共にFMOC化学を用いて、Millipore 9050ペプチド合成機で合成し得る。Gly-Cys-Gly配列をペプチドのアミノ末端に結合して、ペプチドの結合または標識化の方法を提供し得る。固体支持体からのペプチドの開裂を、以下の開裂混合物を用いて実施し得る:トリフルオロ酢酸:エタンジチオール:チオアニソール:水:フェノール(40:1:2:2:3)。2時間の開裂後、ペプチドを冷メチル-t-ブチル-エーテル中で沈殿させ得る。次いで、ペプチドペレットを、C18逆相HPLCによる精製の前に、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含有する水中に溶解し、そして凍結乾燥し得る。水(0.1%TFAを含有する)中の0〜60%アセトニトリル(0.1%TFAを含有する)のグラジエントを用いて、ペプチドを溶出し得る。純画分の凍結乾燥後、ペプチドをエレクトロスプレー質量分析法を用いて、およびアミノ酸分析により特徴付け得る。
【0241】
上述から、本発明の特定の実施態様を説明の目的のために本明細書中に記載してきたが、種々の改変が、本発明の意図および範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解される。
【0242】

















































































































【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む単離されたポリペプチド。
(i)配列番号107に記載のアミノ酸配列;
(ii)保存的置換、付加又は欠失でのみ異なる配列番号107に記載のアミノ酸配列の変異体;または
(iii)配列番号107の免疫原性部分
【請求項2】
配列番号107に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号107に記載のアミノ酸配列からなる、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
保存的置換、付加又は欠失でのみ異なる配列番号107に記載のアミノ酸配列の変異体を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
保存的置換、付加又は欠失でのみ異なる配列番号107に記載のアミノ酸配列の変異体からなる、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
配列番号107の免疫原性部分を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
配列番号107の免疫原性部分からなる、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
以下を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、組換えデオキシリボ核酸分子。
(i)配列番号107に記載のアミノ酸配列;
(ii)保存的置換、付加又は欠失でのみ異なる配列番号107に記載のアミノ酸の変異体;または
(iii)配列番号107の免疫原性部分
【請求項9】
以下を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列からなる、請求項8に記載の組換えデオキシリボ核酸分子。
(i)配列番号107に記載のアミノ酸配列;
(ii)保存的置換、付加又は欠失でのみ異なる配列番号107に記載のアミノ酸の変異体;または
(iii)配列番号107の免疫原性部分
【請求項10】
前記ポリペプチドが配列番号107に記載のアミノ酸配列を含む、請求項8又は9に記載の組換えデオキシリボ核酸分子。
【請求項11】
前記ポリペプチドが配列番号107に記載のアミノ酸配列からなる、請求項10に記載の組換えデオキシリボ核酸分子。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、保存的置換、付加又は欠失でのみ異なる配列番号107に記載のアミノ酸配列の変異体を含む、請求項8又は9に記載の組換えデオキシリボ核酸分子。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、保存的置換、付加又は欠失でのみ異なる配列番号107に記載のアミノ酸配列の変異体からなる、請求項12に記載の組換えデオキシリボ核酸分子。
【請求項14】
前記ポリペプチドが配列番号107の免疫原性部分を含む、請求項8又は9に記載の組換えデオキシリボ核酸分子。
【請求項15】
前記ポリペプチドが配列番号107の免疫原性部分からなる、請求項14に記載の組換えデオキシリボ核酸分子。
【請求項16】
配列番号106に記載のヌクレオチド配列を含む、請求項8に記載の組換えデオキシリボ核酸分子。
【請求項17】
請求項8〜16のいずれか1項に記載のデオキシリボ核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項18】
請求項17に記載の発現ベクターで形質転換された、単離された宿主細胞。
【請求項19】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド、およびペプチド結合を介して結合されている1以上のさらなる免疫原性M.tuberculosis配列を含む、組合せポリペプチド。
【請求項20】
薬学的組成物であって、以下:
(i)請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド;
(ii)請求項8〜16のいずれか1項に記載のデオキシリボ核酸分子;または
(iii)請求項19に記載の組合せポリペプチド、
および、生理学的に許容し得る担体
を含む、薬学的組成物。
【請求項21】
ワクチンであって、以下:
(i)請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド;
(ii)請求項8〜16のいずれか1項に記載のデオキシリボ核酸分子;または
(iii)請求項19に記載の組合せポリペプチド、
および、非特異的免疫応答エンハンサー
を含む、ワクチン。
【請求項22】
非特異的免疫応答エンハンサーがアジュバントである、請求項21に記載のワクチン。
【請求項23】
薬剤として使用するための請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
結核の治療又は予防に使用するための請求項23に記載のポリペプチド。
【請求項25】
薬剤として使用するための請求項8〜16のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
結核の治療又は予防に使用するための請求項25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
以下:
(i)請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド;
(ii)請求項8〜16のいずれか1項に記載のデオキシリボ核酸分子;または
(iii)請求項19に記載の組合せポリペプチド、
の患者において防御免疫を誘導するためのワクチンの製造における、使用。
【請求項28】
患者において結核を検出するための診断剤の製造における、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項29】
以下を含む診断キット。
(a)請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド;および
(b)該ポリペプチドを患者の皮膚細胞に接触させるに十分な装置。
【請求項30】
宿主細胞中での請求項8〜16のいずれか1項に記載のDNA分子の組換え発現を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチドを産生するための方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−159982(P2009−159982A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94008(P2009−94008)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【分割の表示】特願平9−511464の分割
【原出願日】平成8年8月30日(1996.8.30)
【出願人】(397069329)コリクサ コーポレイション (38)
【Fターム(参考)】