説明

絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物及び外面被覆有底円筒状金属

【課題】 本発明の目的は、飲料缶の生産効率向上を目的とした高速塗装性に優れ、かつ、良好な開栓性と高度な絞り加工性を有する塗膜を形成し得る、絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物を提供することにある。
【解決手段】 多価アルコール成分100モル%のうち、2級の水酸基を少なくとも1個有する分子量80以上700以下のジオール成分を5〜40モル%、3官能以上の多価アルコール成分を多くとも0.5モル%含む多価アルコール成分と、多価カルボン酸とから構成される、数平均分子量が1000〜5000、酸価が5(mgKOH/g)以下であるポリエステル樹脂(A)、及びアミノ樹脂(B)を含有することを特徴とする絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶外面塗料に関し、詳しくは高度な絞り加工にも耐え得る塗膜を形成し、かつ、高速塗装が要求される飲料缶の外面塗料に関する。より詳しくは、良好な開栓性と高度な絞り加工性を有し、さらには、サイズコーティングやホワイトコーティング等の下塗り層を施さなくても高度の絞り加工性を有し、かつ200〜400m/min程度の高速塗装性とそれに伴う短時間硬化性を要求される、絞り加工缶に好適な絞り加工缶用上塗り外面塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
金属缶は、従来、飲料、食品類等の、包装容器の一種として広く用いられてきている。これらの缶の外面は、美装、防錆、内容物表示等の目的で印刷及び塗装がなされている。缶胴部の外面は、高度の絞り加工を施さない缶の場合は、金属 + インキ + 上塗り塗料で構成されているが、高度の絞り加工を施す缶の場合には、以下に示すような構成で印刷・塗装されることが多い。
(1)金属 + サイズコーティング + インキ + 上塗り塗料
(2)金属 + ホワイトコーティング + インキ + 上塗り塗料
(3)金属 + サイズコーティング + ホワイトコーティング + インキ + 上塗り塗料
【0003】
サイズコーティングは、金属の表面に薄く有機皮膜を設けることにより、金属とインキもしくは金属と上塗り塗料との間に強固な密着性を付与して、後工程での絞り加工性を向上させる役割を持つ透明な塗料である。
【0004】
ホワイトコーティングは、酸化チタン等の顔料を配合した塗料で、下地の金属表面を覆い、下地を白色や淡赤色、淡黄色に着色する。この上に施されるインキや上塗り塗料は、金属に直接施される場合よりも密着性は良好で、加工性が向上する。
ホワイトコーティングだけでは加工性が不十分な場合には、(3)に示すような方法も執られる場合がある。
【0005】
インキは主にポリエステル樹脂をビヒクルの主成分とする油性インキが用いられ、凸版、平版等の印刷方法により図柄や文字などが印刷される。
【0006】
上塗り塗料は上記インキ層の上に施される透明な塗料であり、光沢を付与したり、インキ層の傷付きを防止したりする、表面保護の役割を担う。上塗り塗料には通常シリコーン系やワックス系の潤滑剤が添加される。上塗り塗料の焼付けによる塗膜の硬化に伴い、これら潤滑剤が塗膜の表面ににじみ出て潤滑作用を発現し、塗膜の傷付きを防止する。
上記インキは、工程合理化の観点から、印刷された後、未硬化の状態で上塗り塗料が施され、上塗り塗料と同時に焼付け硬化される。従って、上塗り塗料の硬化が不十分であると、下のインキ層の硬化も不十分となり、傷付きの原因となりやすい。
また、上塗り塗料の硬化が不十分であると、上塗り塗料を焼付けた後、焼付けオーブンから出て缶を搬送する際に、缶同士がくっつき合う、所謂「ブロッキング現象」を生じたりする。
【0007】
金属包装容器のうち、底部と円筒状部材とが一体化し一方の端が開口している有底円筒状部材(缶胴部部材)と、蓋状部材とを具備してなる容器(以下、2ピース缶ともいう)の場合、缶胴部部材の外面に上記したような塗装・印刷層を設けた後、蓋状部材を取り付けるため、缶胴部の開口端の直径を、底部の直径よりも小さくすることが一般的である。この工程を絞り加工と称する。
従来は、缶胴部の開口端の直径を、底部の直径の80〜90%程度位までしか小さくできなかった。例えば、従来は底部の直径が60mm程度の有底筒状部材の開口部の直径を、底部直径よりも10mm程度小さくし、直径50mm程度にまで細く絞る加工が標準的であった。
【0008】
最近は、缶胴部の開口端の直径を、底部の直径の40〜70%程度にまで小さくする加工が、下地金属の適切な選択やそれを成型する加工技術の面から確立しつつある。例えば、底部の直径が65mm程度の有底筒状部材の開口部の直径を30mm程度小さくし、直径35mm程度にまで細く絞る加工が採用されつつある。さらには、35mm程度まで絞った部分にネジ切り加工を施し、キャップを被せる所謂「リシール缶」等も採用されつつある。この様な絞り加工部分にネジ切り加工を施す場合には、ネジ切り部分だけは、各層のうち最も耐加工性の劣るインキ層を省き
(4)金属 + サイズコーティング + 上塗り塗料
の様な構成を用いる場合もある。
缶胴部の開口端に施されたネジ切り部は、別途ネジ切り加工を施されたキャップを被せられて、リシール缶となる。このネジ部分はリシール缶においては非常に重要な部分であり、ネジの締め方が緩過ぎると内容物が漏れたりする。一方、ネジの締め方が強過ぎると、消費者がキャップを手で開けるときに開け難いという問題が生じる。以下、リシール缶のキャップの開け易さを開栓性と称する。レトルト殺菌処理され、その後加温状態で販売される飲料の場合、加温によって上塗り塗料の塗膜とキャップ側の内面塗膜とがブロッキングし易くなるので、開栓性は、特に重要である。
開栓性を満足させる方法としては、上塗り塗料の塗膜のガラス転移温度を上げてキャップ側の内面塗膜とのブロッキング現象を低下させる方法があるが、従来の技術では、上塗り塗料の塗膜のガラス転移温度を上げると、絞り加工性が低下するという難点があった。
【0009】
また、工程の合理化の面から、前記サイズコーティングを省略し、
(5)金属 + インキ + 上塗り塗料 のような構成で缶胴部の外面を印刷・塗装する絞り加工缶も採用されつつある。この場合もネジ切り部分だけは上記(4)のようにインキ層を省き、
(6)金属 + 上塗り塗料 の様な構成となる。
【0010】
このような高度な絞り加工に対応する塗料に関する発明が幾つかの特許文献に提案されている。
特許文献1:特開2004−26912号公報には、前記(5)の構成の缶に好適に用いられる塗料組成物が開示されている。即ち、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂及びエポキシ樹脂を含有する塗料組成物は、サイズコーティングを施さなくても、高度な絞り加工に耐え得る塗膜を形成し得る旨、記載されている。
【0011】
しかし、特許文献1に示される塗料組成物は、数平均分子量が5000〜15000の比較的高分子量のポリエステル樹脂を用いているので、前記したような、200〜400m/minといった高速では塗装が出来ないという欠点を有する。
即ち、特許文献1に示される様な比較的高分子量のポリエステル樹脂を用いた塗料組成物を高速塗装すると、塗料ミストが多量に発生して、缶に付着したり、塗装機を汚染したりする。
ところで、2ピース缶の缶胴部の上塗り塗料は、一般にロールコート塗装され、塗装の初めの部分と塗装の終わりの部分とがごく僅かに重なり合う。この重なり合う部分を「ラップ部」といい、缶胴部外面の天地(縦)を結ぶようにスジ状に位置する。特許文献1記載の塗料組成物から形成される塗膜は、このラップ部においてインキ層の濃度が非ラップ部よりも濃く見える、所謂「縦スジ」が発生して、缶の外観を損なうという問題も有していた。
【0012】
特許文献2:特開2004−175845号公報には、前記(1)〜(3)の構成の缶に好適に用いられる塗料組成物が開示されている。即ち、数平均分子量が1000〜3000のポリエステル樹脂、数平均分子量が3000〜6000のポリエステル樹脂、特定のアクリル樹脂、アミノ樹脂及びエポキシ樹脂を含有する塗料組成物は、高速塗装性に優れ、サイズコーティングやホワイトコーティング等を施した場合において、加工性に優れる塗膜を形成し得る旨、記載されている。
しかし、特許文献2に示される塗料組成物は、高速塗装性を向上させるために、比較的低分子量のポリエステル樹脂を用いているので、サイズコーティングやホワイトコーティング等を省略した前記(5)や(6)の様な構成の場合には、加工性の点で満足できるものではなかった。
【0013】
また、特許文献1及び特許文献2に示される様な塗料組成物では、前記した開栓性を満足させることは出来なかった。塗膜のガラス転移点を上げる場合、ポリエステル樹脂のガラス転移温度を上げることが一般的に行われる。しかしながら、ポリエステル樹脂のガラス転移温度を上げると塗膜の加工性が低下してしまい、絞り加工性と開栓性の両方を満足することが出来なかった。
【0014】
また、特許文献3:特開2003−82076号公報、特許文献4:特開2002−348362号公報、特許文献5:特開2002−97410号公報、特許文献6:特開2001−131470号公報には、多価アルコール成分に2級の水酸基を有するジオールを含むポリエステル樹脂を用いて加工性と、耐低温衝撃性、耐レトルト性、耐水性、等とが両立した組成物が開示されているが、いずれも本発明のリシール缶という形態から来る高度な絞り加工性と開栓性等といった独自の要求には応えられない。
【特許文献1】特開2004−26912号公報
【特許文献2】特開2004−175845号公報
【特許文献3】特開2003−82076号公報
【特許文献4】特開2002−348362号公報
【特許文献5】特開2002−97410号公報
【特許文献6】特開2001−131470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、上記現状を踏まえてなされたものであり、その目的とするところは、200〜400m/min程度の高速塗装性とそれに伴う短時間硬化性を有する絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物であって、従来よりも高度の加工性、例えばネジ切り加工性に優れる塗膜を形成し得る絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物を提供することにある。さらには、サイズコーティングやホワイトコーティング等の下塗り層を施さなくても従来よりも高度の加工性を有する絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物を提供することにある。
そして、さらに本発明の目的は、加温販売の飲料の場合に特に要求される開栓性にも優れる塗膜を形成し得る絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、
塗膜形成成分として、特定の多価アルコール成分から構成され、特定の分子量と酸価を有するポリエステル樹脂(A)とアミノ樹脂(B)を必須成分とする塗料組成物が、高度の絞り加工性と良好な開栓性を有し、かつ、200〜400m/min程度の高速塗装性とそれに伴う短時間硬化性を兼ね備えることを見出し、さらにはサイズコーティングやホワイトコーティング等の下塗り層を施さなくても高度の絞り加工性を有し、かつ、高速塗装性とそれに伴う短時間硬化性を兼ね備えることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0017】
即ち、第1の発明は、多価アルコール成分100モル%のうち、2級の水酸基を少なくとも1個有する分子量80以上700以下のジオール成分を5~40モル%、3官能以上の多価アルコール成分を多くとも0.5モル%含む多価アルコール成分と、多価カルボン酸とから構成される、数平均分子量が1000~5000、酸価が5(mgKOH/g)以下であるポリエステル樹脂(A)、及びアミノ樹脂(B)を含有することを特徴とする絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物であり、
【0018】
第2の発明は、ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が、15〜60℃であることを特徴とする第1の発明に記載の絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物である。
【0019】
第3の発明は、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド系モノマーを、その他のアクリル系モノマーと共重合させてなるアクリル樹脂(C)をさらに含有することを特徴とする第1の発明又は第2の発明に記載の絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物である。
【0020】
第4の発明は、エポキシ樹脂(D)をさらに含有することを特徴とする第1の発明ないし第3の発明いずれかに記載の絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物である。
【0021】
第5の発明は、ポリエステル樹脂(A)が、3官能以上の成分を含まない多価アルコール成分から構成されることを特徴とする第1の発明ないし第4の発明いずれかに記載の絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物である。
【0022】
第6の発明は、一方の端が開口している有底円筒状金属の円筒部外面に下塗り層を設け、該下塗り層上に、第1の発明ないし第4の発明いずれかに記載の絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物から形成される上塗り層が設けられていることを特徴とする外面被覆有底円筒状金属である。
【0023】
第7の発明は、下塗り層と上塗り層との間に、中塗り層及びインキ層が設けられているか、又はインキ層が設けられていることを特徴とする外面被覆有底円筒状金属である。
【0024】
第8の発明は、一方の端が開口している有底円筒状金属の円筒部外面に下塗り層を設けずに、インキ層が設けられ、該インキ層上に第5の発明に記載の絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物から形成される上塗り層が設けられていることを特徴とする外面被覆有底円筒状金属である。
【発明の効果】
【0025】
本発明による絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物は、塗膜形成成分として、特定の多価アルコール成分から構成され、特定の分子量と酸価を有するポリエステル樹脂(A)とアミノ樹脂(B)を必須成分とすることにより、飲料缶の生産効率向上を目的とした高速塗装性に優れ、かつ、高度の絞り加工性と良好な開栓性を有する塗膜を形成することが出来た。
さらにはサイズコーティングやホワイトコーティング等の下塗り層を施さなくても高度の絞り加工性を有する塗膜を形成することが出来るため、工程が合理化され、飲料缶のコストダウンが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明で用いられるポリエステル樹脂(A)は、広く知られている多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合反応(エステル化反応ないしエステル交換反応)により合成することができる。この反応は常圧下、減圧下の何れで行っても良く、又分子量の調節は多価カルボン酸と多価アルコールとの仕込み比や酸価の調製、減圧脱グリコールの程度等によって行うことができる。
【0027】
本発明で用いられるポリエステル樹脂(A)の原料として、多価カルボン酸に特に制限はないが、ポリエステル樹脂(A)としては、ガラス転移温度(以下、Tgという)が15〜60℃と比較的高いものが好ましいので、芳香族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸を多く用い、脂肪族ジカルボン酸は用いないか、脂肪族ジカルボン酸を用いる場合でも多価カルボン酸成分100モル%のうち、25モル%以下用いることが好ましい。
【0028】
本発明におけるポリエステル樹脂(A)の合成に用いる多価カルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸等が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、(無水)コハク酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ハイミック酸等が挙げられ、塗膜の硬度と可撓性を勘案してこれらのうちから適宜選択して使用することができる。
3官能以上の多価カルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸等が挙げられる。
【0029】
本発明で用いられるポリエステル樹脂(A)の原料の1つ、多価アルコール成分は、100モル%のうち、2級の水酸基を少なくとも1個有する分子量80以上のジオール成分が5〜40モル%であることが必須であり、2級の水酸基を少なくとも1個有するジオール成分は、分子量は700以下であることが好ましい。
そして、多価アルコール成分としては、3官能以上の成分も使用し得るが、絞り加工性の点からは含まない方が好ましいので、必要に応じて用いる場合には、多くとも0.5モル%であることが重要である。
【0030】
2級の水酸基を少なくとも1個有する上記のジオールの2級の水酸基は、1級の水酸基よりもエステル化反応が遅いので、ポリエステル樹脂(A)の末端に位置しやすいと考察される。このようなポリエステル樹脂(A)とアミノ樹脂(B)とを含有する塗料組成物を金属板に塗装し、焼き付ける際に、ポリエステル樹脂(A)の末端に位置する2級の水酸基は、1級の水酸基に比して、アミノ樹脂(B)との架橋反応が比較的遅い。ポリエステル樹脂(A)中の2級の水酸基の反応性の遅さを逆に利用し、硬化・架橋を抑制することによって、硬化塗膜の高度な絞り加工性を確保することができる。
そして、ポリエステル樹脂(A)としてはTgが15〜60℃のものが好ましく、このような比較的高Tgのポリエステル樹脂(A)を用いることによって、硬化塗膜の架橋を緩やかにしつつ、ネジ切り加工部の外面塗膜とキャップ部材の内面塗膜との加温状態におけるブロッキングを防止し、良好な開栓性を確保することができる。
【0031】
上記したように2級の水酸基を少なくとも1個有するジオールは、ポリエステル樹脂(A)を構成する多価アルコール成分100モル%のうち、5〜40モル%であることが重要であり、10〜30モル%であることが好ましい。5モル%より少ないと塗料組成物の架橋反応を抑制する効果が小さく、ポリエステル樹脂(A)を高Tgにした時に絞り加工性が低下する。40モル%より多いと、塗料組成物の架橋反応が低下し、耐レトルト性や塗膜硬度が低下する傾向にある。
また、これら2級の水酸基を有するジオールは分子量80以上であることが重要であり、700以下であることが好ましい。理由は定かではないが、2級の水酸基を有していても、ジオールの分子量が小さ過ぎると、ポリエステル樹脂を構成した場合に、分子末端に位置する2級の水酸基と、それに隣接するエステル結合との間の炭素数が少なくなったり、或いは側鎖にあたる部分の炭素数が少なくなったりして、結果として架橋反応の抑制効果がほとんど期待できなくなる。一方、分子量が700よりも大きいジオールを用いると、形成されるポリエステル樹脂の分子末端の2級水酸基と、それに隣接するエステル結合との間の炭素数が多くなったり、或いは側鎖にあたる部分の炭素数が多くなったりして、結果として架橋反応の抑制が大きくなりすぎて、耐レトルト性や塗膜硬度が低下する傾向にある。
【0032】
上記したようにポリエステル樹脂(A)を構成する多価アルコール成分としては、3官能以上の多価アルコール成分を多くとも0.5モル%の範囲で使用し得る。絞り加工性の点からは3官能以上の多価アルコール成分は含まない方が好ましいが、0.5モル%以下なら含むことも出来る。特に以下に示す(5)や(6)の様な構成
(5)金属 + インキ + 上塗り塗料
(6)金属 + 上塗り塗料
の場合には、3官能以上の多価アルコール成分は含まない方がよい。
一方、以下に示す(1)〜(4)の様な構成の場合には、架橋反応の調整や樹脂合成上の都合等により、3官能以上の多価アルコール成分を0.5モル%以下であれば含むことが出来る。
(1)金属+ サイズコーティング + インキ + 上塗り塗料
(2)金属 + ホワイトコーティング + インキ + 上塗り塗料
(3)金属 + サイズコーティング + ホワイトコーティング + インキ + 上塗り塗料
(4)金属 + サイズコーティング + 上塗り塗料
【0033】
本発明におけるポリエステル樹脂(A)の合成に用いる多価アルコール成分のうち、2級の水酸基を少なくとも1個有する分子量80以上、700以下のジオール成分としては、1,2−ブチレングリコール(別名、1,2−ブタンジオール)、1,3−ブチレングリコール(別名、1,3−ブタンジオール)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(別名、オクタンジオール)、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−ヒドロキシシクロヘキシル−メタノール、3−ヒドロキシシクロヘキシル−メタノール、4−ヒドロキシシクロヘキシル−メタノール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAP、水素化ビスフェノールF、水素化ビスフェノールS、水素化ビフェノール、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(2〜8モル付加)、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加物(2〜8モル付加)等が挙げられる。
【0034】
本発明におけるポリエステル樹脂(A)の合成に用いる多価アルコール成分のうち、3官能以上の多価アルコール成分としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0035】
本発明におけるポリエステル樹脂(A)の合成に用いるその他の多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(別名、1,2−プロピレングリコール)、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAもしくはビスフェノールFにエチレンオキサイドを付加したもの、キシレングリコール、又バーサチック酸グリシジルエステル、εカプロラクトン等の二価アルコール相当化合物が挙げられ、塗膜の硬度と可撓性を勘案してこれらのうちから適宜選択して使用することができる。
【0036】
上記多価カルボン酸成分と上記多価アルコール成分とを適宜選択して、ガラス転移温度が15〜60℃のポリエステル樹脂(A)を得ることが好ましい。
このようにして得られるポリエステル樹脂(A)の数平均分子量は、1000〜5000であることが重要であり、2000〜4000であることが好ましい。数平均分子量が1000未満の場合には、硬度や加工性、耐水性等の塗膜性能が著しく劣る。一方、数平均分子量が5000を超えると、高速塗装においてミストの発生量が多くなったり、ラップ部に「縦スジ」が出やすくなる。
尚、本発明にいう分子量とは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、GPCという)における標準ポリスチレン換算の値である。数平均分子量とは、GPC排出曲線上に現出するピークのスタートから分子量300までの部分の数平均分子量である。
【0037】
本発明の塗料組成物に用いるポリエステル樹脂(A)の酸価は、5(mgKOH/g)以下であることが重要であり、3(mgKOH/g)であることが好ましい。酸価が5よりも大きくなると、絞り加工性や耐レトルト性、塗料組成物の安定性等が低下する傾向にある。
【0038】
本発明の塗料組成物に用いるポリエステル樹脂(A)の製造方法は特に限定はされないが、以下に示す様な公知の重合方法により得ることが出来る。
使用する多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分を反応釜に仕込み、加熱昇温することにより、エステル化反応またはエステル交換反応を行い、この反応で生じた水またはアルコールを留去しながら所定の酸価になるまで反応を続ける。常圧で行っても良いし、50mmHg以下の減圧下で行っても良い。必要に応じて、テトラブチルチタネート、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸亜鉛、酢酸スズなどの重合触媒を用いることが出来る。
【0039】
前記した様な数平均分子量と酸価を有するポリエステル樹脂(A)を製造する場合、例えば、多価カルボン酸成分に対する多価アルコール成分の仕込みモル比(OH/COOH)を1.10〜1.35とすることが好ましく、1.13〜1.20とすることがより好ましい。水酸基をこのような範囲で過剰にし、酸価を5(mgKOH/g)以下になるまで反応すると、前記したような数平均分子量のポリエステル樹脂(A)を好適に得ることができる。
また、触媒は、多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分合計100重量部に対して0.001部〜0.1部であることが好ましく、0.005部〜0.05部であることがより好ましい。
【0040】
さらに、本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、任意の方法でカルボキシル基を導入することもできる。カルボキシル基を導入する目的としては、架橋剤との硬化促進、下地金属材料との密着性向上等が挙げられる。
カルボキシル基を導入する方法としては、重縮合後期に多価カルボン酸無水物を付加する方法、プレポリマー(オリゴマー)の段階でこれを高酸価とし、次いでこれを重縮合して酸価を有するポリエステル樹脂を得る方法等があるが、操作の容易さ、目標とする酸価の得られやすさ等から、前者の多価カルボン酸無水物を付加する方法が好ましい。
このような酸無水物を付加する方法での酸付加に用いられる多価カルボン酸無水物としては、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。好ましくは無水トリメリット酸である。
【0041】
上記重縮合反応で得られたポリエステル樹脂(A)は、溶剤に溶解した溶液の形で塗料調整に供される。この溶剤にはポリエステル樹脂を希釈可能なものであれば特に制限なく使用できる。たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル系、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のセロソルブ系の各種溶剤が挙げられる。
ポリエステル樹脂(A)溶液の固形分濃度は、いずれも通常20〜70重量%、好ましくは40〜60重量%である。70重量%を超える場合には高粘度で取り扱いが困難となり、20重量%に満たない場合には調整した塗料の粘度が低くなりすぎて、目標とする塗膜量が得られない。
【0042】
本発明の塗料組成物は、上記ポリエステル樹脂(A)以外に、数平均分子量が5000を超え10000未満のポリエステル樹脂(E)を、ポリエステル樹脂全体の50%を超えない範囲で併用することが出来る。これらを併用することにより、絞り加工性や開栓性が更に向上する。高速塗装性は低下する傾向にあるが、ポリエステル樹脂全体の50%未満であれば、実用上問題ない。
【0043】
本発明の塗料組成物に用いるアミノ樹脂(B)としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等のアルデヒド成分との反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。このメチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、炭素原子数1〜6のアルコールによってエーテル化したものも上記アミノ樹脂に含まれる。これらのアミノ樹脂は、単独或いは併用しても使用出来る。これらの内、メラミン、ベンゾグアナミンを使用したアミノ樹脂が好ましく、更に好ましくは加工性に優れるベンゾグアナミンを使用したアミノ樹脂である。また、メラミンとベンゾグアナミンを併用したメラミン・ベンゾグアナミン共縮合樹脂も好適に用いられる。
【0044】
ベンゾグアナミンを使用したアミノ樹脂としては、メチロール化ベンゾグアナミン樹脂のメチロール基の一部もしくは全部を、メチルアルコールによってエーテル化したメチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチルアルコールによってブチルエーテル化したブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、或いはメチルアルコールとブチルアルコールの両者によってエーテル化したメチルエーテル、ブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。上記ブチルアルコールとしては、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコールが好ましい。
【0045】
メラミンを使用したアミノ樹脂としては、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基の一部もしくは全部を、メチルアルコールによってエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルアルコールによってエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、或いはメチルアルコールとブチルアルコールの両者によってエーテル化したメチルエーテル、ブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂が好ましい。
【0046】
次に本発明に用いられるアクリル系樹脂(C)について説明する。
アクリル樹脂(C)は、上記したポリエステル樹脂(A)とアミノ樹脂(B)との相溶性を向上させ、上塗り塗料のウエットインキ適性、光沢及び硬化性を向上する機能を担う。
本発明におけるアクリル樹脂(C)は、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド系モノマー(a)を含有するアクリル系モノマーを従来公知の種々の重合方法、例えば有機溶剤中でラジカル重合させて得ることができる。
N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド系モノマー(a)との共重合に用いられる上記(a)以外のモノマーとしては、α、βーエチレン性不飽和二重結合及びCOOH基を有するモノマー(b)、上記(a)、(b)以外のα、βーエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーであってガラス転移温度が−85〜0℃の単独重合体を形成し得る低Tgモノマー(c)、上記(a)〜(c)と共重合可能な他のモノマー(d)を挙げることができる。
【0047】
本発明においてアクリル樹脂(C)を得る際に用いられるN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド系モノマー(a)としては、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、好ましくはN−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
このようなモノマー(a)は、モノマー(a)〜(d)の合計の100重量%中に5〜40重量%の範囲にあることが好ましく、10〜20重量%の範囲にあることがより好ましい。モノマー(a)は、上塗り塗料が硬化塗膜を形成する際に自己縮合したり、上記ポリエステル樹脂(A)と反応し得る官能基をアクリル樹脂(C)に導入する機能を担うので、このような自己縮合性モノマー(a)が、全モノマー100重量%中5重量%未満になると上塗り塗料の架橋密度が低下し、その結果塗膜の耐傷付き性、塗膜硬度が低下してしまう。一方、モノマー(a)が、全モノマー100重量%中40重量%を超えると、モノマー(a)の自己縮合反応が亢進し過ぎて上塗り塗料の架橋密度が増大し、その結果として本来発揮すべき加工性や密着性が低下してしまう。
【0048】
アクリル樹脂(C)を得る際に用いられ得るα、β−エチレン性不飽和二重結合及びCOOH基を有し、上記(a)と共重合し得るモノマー(b)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸モノマーが挙げられ、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。これらCOOH基含有モノマー(b)の使用量は、(a)〜(d)モノマー100重量%中1〜10重量%であることが好ましい。1重量%未満では基材に対する密着性が低下する傾向にあり、一方、10重量%を超えると、塗膜の耐水性を低下させる傾向にある。
【0049】
本発明においてアクリル樹脂(C)を得る際に用いられ得るα、β−エチレン性不飽和二重結合を有し、ガラス転移温度が−85〜0℃の単独重合体を形成し得る低Tgモノマー(c)としては、エチルアクリレート(−22℃)、イソプロピルアクリレート(−5℃)、n−ブチルアクリレート(−54℃)、n−ヘキシルメタアクリレート(−5℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃)、2−エチルヘキシルメタアクリレート(−10℃)、n−ラウリルアクリレート(−3℃)、n−ラウリルメタアクリレート(−65℃)、イソオクチルアクリレート(−45℃)、フェノキシエチルアクリレート(−25℃)、トリデシルメタアクリレート(−46℃)等が挙げられる。低Tgモノマー(c)の使用量は、(a)〜(d)全モノマー100重量%中20〜60重量%であることが好ましく、30〜55重量%であることがより好ましい。低Tgモノマー(c)が、20重量%未満だと上塗り塗料の塗膜層とインキ層との相溶性及び塗膜の柔軟性が低下し易く、その結果として上塗り塗料に必須とされるインキ層上の光沢や加工性、密着性が低下する。一方、低Tgモノマー(c)が60重量%を超えると、形成される塗膜の耐傷付き性、硬度、耐臭気吸着性が低下し易い。
【0050】
本発明においてアクリル樹脂(C)を得る際に必要に応じて用いられる他のモノマー(d)は、上記(a)〜(c)と共重合しうるものであれば特に制限は無く、結果として共重合されたアクリル樹脂(C)のポリマーのTgが−20〜50℃に調整可能なモノマーが好ましい。例えば、メチルアクリレート(単独重合体のTg:8℃、以下同様)、n−ブチルメタアクリレート(20℃)、酢酸ビニル(30℃)、エチルメタアクリレート(65℃)、メチルメタアクリレート(105℃)、イソプロピルメタアクリレート(81℃)、イソブチルメタアクリレート(67℃)、t−ブチルメタアクリレート(107℃)、スチレン(100℃)、イソボロニルアクリレート(94℃)、シクロヘキシルメタアクリレート(66℃)等が挙げられる。またOH基含有モノマーとしては、2−ヒドロキエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタアクリレートやε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。これらのモノマーの使用量は、(a)〜(d)の全モノマー100重量%中0〜40重量%であることが好ましい。
【0051】
本発明において上記アクリルモノマーを使用してアクリル樹脂(C)を得る際に用いられる重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、tーブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物、又は2,2−アゾビスイソブチルニトリルのようなアゾ化合物が挙げられ、これらを使用してラジカル重合反応を行えばよい。
さらに重合反応時に使用する溶剤としては、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチルー3−メトキシブタノール等のグリコール系溶剤、トルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系が挙げられる。
【0052】
上記のようにして得られるアクリル樹脂(C)は、数平均分子量が5000〜15000であることが好ましく、7000〜10000であることがより好ましい。数平均分子量が5000未満となると、低分子物による加工性の低下が見られ、数平均分子量が15000を越えると配合される高分子ポリエステル樹脂(A)との相溶性が劣り、結果として加工性や硬化性が劣る。
また、上記のようにして得られるアクリル樹脂(C)のTgは、−20〜50℃であり、Tgが−20℃未満のアクリル共重合体を用いると、塗膜の伸縮性は向上するものの、塗膜硬度と耐傷付き性が劣る。一方、アクリル共重合体のTgが50℃を越えると、合成されたアクリル樹脂の樹脂溶液粘度が増大するので、結果として高分子ポリエステル樹脂との相溶性が低下し、不揮発分50%以上の高固形分の塗料を得ることが困難となり、また塗膜の密着性や加工性も劣る。
【0053】
本発明の塗料組成物は、さらにエポキシ樹脂(D)を含有することが好ましい。本発明において用いられるエポキシ樹脂(D)は、数平均分子量が300〜1500の範囲にあることが好ましく、350〜1400の範囲にあることがより好ましい。また、エポキシ当量180〜1000の範囲にあることが好ましく、184〜600の範囲にあることがより好ましい。エポキシ樹脂(D)としては、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1001(数平均分子量:900、エポキシ当量:450〜500)等を挙げることができる。
【0054】
本発明の塗料組成物は、上記した(A)〜(D)の各成分を、塗料を構成する塗膜形成成分、即ち(A)〜(D)100重量%中に、
ポリエステル樹脂(A):25〜60重量%、
アミノ樹脂(B):25〜60重量%、
アクリル樹脂(C):3〜10重量%、
エポキシ樹脂(D):1〜10重量%を含有することが好ましい。
【0055】
ポリエステル樹脂(A)の含有量が60重量%を超えるとアミノ樹脂(B)等との相溶性が劣り、インキ層上の塗膜の光沢低下、下地金属との密着性不足、高速硬化性の低下を招致する。
一方、ポリエステル樹脂(A)の含有量が、25重量%未満となると、十分な加工性を得ることができずに、絞り加工において塗膜に剥離や亀裂が発生する。
【0056】
本発明において用いられるアミノ樹脂(B)の含有量が25重量%未満では、形成される塗膜の硬化性、硬度が低下し、耐傷付き性や耐レトルト性、開栓性等が低下する。一方、アミノ樹脂(B)の含有量が60重量%を超えると形成される塗膜の絞り加工性や密着性が低下する傾向にある。
【0057】
本発明において用いられるアクリル樹脂(C)の含有量が3重量%未満の場合、ポリエステル樹脂(A)とアミノ樹脂(B)との相溶性の悪さを改善できない。その結果、上塗り塗料として必要不可欠な光沢が悪くなる。一方、アクリル樹脂(C)の含有量が10重量%を超えると、ポリエステル樹脂(A)とアクリル樹脂(C)との相溶性が悪くなり、塗膜が白濁しやすくなったり、光沢の面で劣った塗膜となりやすい。
【0058】
本発明において用いられるエポキシ樹脂(D)の含有量は、(A)〜(D)の合計100重量%中1〜10重量%であることが好ましく、3〜7重量%であることがより好ましい。1重量%未満では下地金属との密着性が劣り塗膜の絞り加工性が低下する。10重量%を超えると、相対的に低分子量成分が増えるので加工性、耐レトルト性が劣る。
【0059】
本発明の塗料組成物には、さらに潤滑性付与剤を含有することができる。
潤滑性付与剤としては主にワックス系とシリコーン系が用いられ、ワックス系単独、シリコーン系単独、ワックス系とシリコーン系の併用等種々の方法が用いられる。ワックス系としては、天然ワックスまたは合成ワックスいずれでもよく、天然ワックスとしてはラノリン、ミツロウ、鯨ロウ等の動物系、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス等の植物系、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス等の鉱物系のいずれであっても良い。また、合成ワックスとしては、ポリオレフィン系、シリコーン系ワックス、フッ素系ワックスの他に、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物等も用いることができる。
シリコーン系潤滑性付与剤としては、ジメチルポリシロキサン及びその変性物が好適に用いられる。ジメチルポリシロキサンの変性剤としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エポキシ、アミン等が用いられ、ジメチルポリシロキサンの分子量や、変性の割合等により様々な潤滑性を付与することが出来る。
潤滑性付与剤は、(A)〜(D)の合計100重量部に対して0.5〜5重量部配合することが好ましく、1〜3重量部配合することがより好ましい。
【0060】
本発明の塗料組成物には、必要に応じて、硬化を促進させる様な触媒として、例えばp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、リン酸等の酸触媒、又は前記酸触媒をアミンブロックしたものを、全樹脂(A)〜(D)100重量部に対して0.1〜4.0重量部添加して使用することができる。
【0061】
本発明の塗料組成物は、各種基材、例えば金属、プラスチックフィルム、又は金属板にプラスチックフィルムを積層してなるもの等に、ロールコート、コイルコート、スプレー塗装、刷毛塗り等公知の手段により塗装することができる。
金属としては、電気メッキ錫鋼板、ティンフリースチール鋼板、アルミニウム板、ステンレス鋼板等が挙げられ、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のプラスチックのフィルムが挙げられる。
【0062】
本発明の塗料組成物は、アルミニウム板から形成される、特に一方の端が開口している有底円筒状金属の円筒部外面に下塗り層を設けずにもしくは下塗り層を設けて、円筒部外面にインキ層を設け、未乾燥・未硬化状態の該インキ層上に塗装されることが好ましい。膜厚は1〜10μm程度が好ましい。円筒部外面に薄く均一に塗装するためには、上記塗装方法のうちロールコート塗装方法が好適である。該ロールコートの塗装速度は、飲料缶の生産速度を考慮すると、200〜400m/min程度であると考察される。
【0063】
本発明の塗料組成物は、常温乾燥してもよいが、焼付けにより熱硬化させた方がより性能を発揮できる。焼付けの方法としては、電気オーブン、遠赤外線オーブン、ガスオーブン等が好適に用いられる。焼付けの条件としては、150℃〜240℃の温度雰囲気中で、20秒〜15分程度の焼付けが好適に用いられる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を説明する。例中、「部」とは重量部、「%」とは重量%をそれぞれ示す。
【0065】
合成例1(ポリエステル樹脂(A−1)溶液の調整)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管及び還流脱水装置を備えたフラスコに、テレフタル酸ジメチル90.1部(0.464モル)、ネオペンチルグリコール92.6部(0.89モル)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール71.2部(0.445モル)、1,2−ブチレングリコール13.4部(0.148モル)、及び酢酸亜鉛0.02部を仕込んだ。原料を加熱溶融して撹拌できるようになったら撹拌を開始して、留出するメタノールを常圧下に系外に除きながら170℃から220℃まで3時間かけて徐々に昇温し、220℃で2時間保持した。内温を一旦170℃まで冷却し、イソフタル酸32.1部(0.193モル)、アジピン酸45.2部(0.31モル)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸55.5部(0.322モル)、及びジ−n−ブチル錫オキサイド0.02部を加え、留出する水を常圧下に系外に除きながら240℃まで3時間かけて昇温し、さらに240℃で保持して、酸価が1.8(mgKOH/g)になるまで反応を続けた。次いで、内温を150℃まで冷却し、ソルベッソ#150/ブチルセロソルブ=1/1の混合溶剤を加えて均一に樹脂を溶解し、不揮発分60%のポリエステル樹脂(A−1)溶液を得た。その特性値を表−1に示す。
【0066】
合成例2〜14
合成例1と同様にして表−1に示す仕込みモル数に従って、ポリエステル樹脂(A−2)〜(A−14)溶液を得た。その特性値を表−1に示す。
【0067】
合成例15〜24(比較例用のポリエステル樹脂の合成例)
合成例1と同様にして表−2に示す仕込みモル数に従って、ポリエステル樹脂(A−15)〜(A−24)溶液を得た。その特性値を表−2に示す。
【0068】
<酸価の測定>
各ポリエステル樹脂をトルエン/イソプロピルアルコール=2/1に溶解して、JIS K 6901に準じて滴定法により求めた。
【0069】
<水酸基価の測定>
各ポリエステル樹脂の水酸基を無水酢酸のピリジン溶液でアセチル化し、JIS K 1557に準じて滴定法により求めた。
【0070】
<数平均分子量の測定>
合成例、比較合成例で合成したポリエステル樹脂を夫々0.3%の濃度でテトラヒドロフラン(THF)に溶解して、0.45μmのフィルターでろ過して試料とし、ゲル浸透型クロマトグラフィー(GPC)により測定を行った。測定装置には、東ソー(株)製HLC−8020を用い、カラムはTSKgel G−1000 + G−2000 + G−3000 + G−4000 の4本組を用いた。移動相には上記と同様のテトラヒドロフラン(THF)を用い、注入量100μl、カラム温度40℃、流速1.0ml/minの条件で測定を行った。
分子量の算出は、標準ポリスチレン換算で行った。ポリスチレン換算分子量300を終点として、数平均分子量(Mn)を求めた。
【0071】
<ガラス転移温度>
各ポリエステル樹脂のガラス転移温度を、セイコー電子工業社製示差走査熱量計SSC5200を用いて、10℃/分の昇温速度で測定した。
【0072】
合成例25(アクリル樹脂Cの合成)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽、温度計、窒素ガス導入管を具備した容量1リットルの四ツ口フラスコに、ジエチレングリコールモノブチルエーテル141部、N−ブタノール42部、ソルベッソ#150を233部を仕込み、110℃まで昇温した。同温を保持しつつ、滴下槽から、アクリル酸27部、アクリル酸ブチル 219部、スチレン219部、N−メトキシメチルメタアクリルアミド82部、過酸化ベンゾイル10部の混合液を4時間に亘って連続滴下した。滴下終了1時間後に過酸化ベンゾイル3部を添加し、更に2時間反応を行った。生成溶液を80℃まで冷却し、ソルベッソ#150を19部添加し混合して、数平均分子量10000、ガラス転移温度が9℃の透明なアクリル樹脂(C)溶液を得た(不揮発分55.0%、気泡粘度計による粘度W)。
【0073】
(実施例1〜20及び比較例1〜19)
合成例1〜24で得られたポリエステル樹脂(A−1〜A−24)溶液、アミノ樹脂(B)、合成例25で得られたアクリル樹脂(C)溶液及びエポキシ樹脂(D)を表−3、表−4、表−5、表−6に示した割合(固形分換算)で配合し、さらに傷付き防止のために潤滑性付与剤(動植物物系ワックス溶剤分散体、合成ワックス溶剤分散体、シリコーン溶液)及び硬化触媒を表−3〜表−6に示す割合(固形分換算)で配合し、これをソルベッソ#150/ブチルセロソルブ=1/1の混合溶剤で希釈して不揮発分57%の上塗り塗料を調整した。
【0074】
得られた上塗り塗料を用いて以下に示す3種類の塗装板を作成し、以下に示す試験を行った。結果を表−3、表−4、表−5、表−6に示す。
【0075】
<塗装板1>(金属+サイズコーティング+インキ+上塗り塗料)
厚さ0.28mmのアルミニウム板にポリエステル系のサイズコーティング(東洋インキ製造社製)を塗装し(膜厚1μm)、雰囲気温度220℃のガスオーブンで1分間加熱乾燥した。その上にポリエステル樹脂をビヒクルの主成分とするインキ(マツイカガク社製)を印刷し(膜厚2μm)、インキが未乾燥の状態で上記の上塗り塗料を乾燥後膜厚が8μmとなるように塗装し、雰囲気温度220℃のガスオーブンで1分間加熱乾燥した。さらに内面塗料の焼付けを想定して、雰囲気温度220℃のガスオーブンで3分間、追加で加熱乾燥を行い、塗装板1を得た。
【0076】
<塗装板2>(金属+サイズコーティング+上塗り塗料)
インキ層を設けなかった以外は、塗装板1と同様にして塗装板2を得た。
<塗装板3>(金属+インキ+上塗り塗料)
サイズコーティング層を設けなかった以外は、塗装板1と同様にして塗装板4を得た。
【0077】
<塗装板4>(金属+上塗り塗料)
サイズコーティング層を設けなかった以外は、塗装板2と同様にして塗装板4を得た。
【0078】
<塗装板5>(金属+上塗り塗料)
厚さ0.28mmのアルミニウム板に、上記の上塗り塗料を乾燥後の膜厚が8μmとなるように塗装し、雰囲気温度220℃のガスオーブンで1分間加熱乾燥を行い塗装板5を得た。(追加加熱乾燥なし)
【0079】
<キャップ内面用塗装板>
厚さ0.28mmのアルミニウム板に、ポリエステル系のキャップ内面用塗料(東洋インキ製造社製)を、乾燥後の膜厚が4μmとなるように塗装し、雰囲気温度200℃のガスオーブンで10分間加熱乾燥を行い、キャップ内面用塗装板を得た。
【0080】
<ゲル分率の測定>
塗料の硬化性評価の試験として、硬化塗膜のゲル分率を測定した。塗装板5を15×15cmの大きさに切り出して、重量(W1)測定後、塗装板2cm当たり1mlのMEK(メチルエチルケトン)を用いて、沸点で1時間の抽出を行った。抽出後の塗装板を130℃、1時間の条件で乾燥し、抽出後の塗装板の重量(W2)を測定した。さらに塗膜を濃硫酸による分解法で剥離し、金属板の重量(W3)を測定した。塗装板のゲル分率は、以下の式で求められる。
ゲル分率(%)=(W2−W3)/(W1−W3)×100
【0081】
<キャップ成形性試験、ネジ切り加工性試験>
塗装板1、塗装板2、塗装板3、塗装板4をそれぞれ直径55mmの円形に打ち抜き、打ち抜いた円盤を硬化塗膜が外側になるように絞り加工して、直径25mm、深さ18mmのキャップを作成した。
塗装板2、塗装板4から作成したキャップには、さらにネジ切り加工を施した。
さらに各々のキャップを沸騰水で30分間煮沸処理(以下、ボイル処理)、もしくはレトルト処理(130℃−30分)し、塗膜の剥離と割れの程度を下記基準により目視で判定した。○△以上が実用レベル。
○ :剥離、割れが全くない。
○△:若干剥離、割れが認められる。
△ :剥離、割れがやや多い。
× :剥離、割れが著しい。
【0082】
<耐沸騰水性試験、耐レトルト性試験>
塗装板1、塗装板2、塗装板3、塗装板4をそれぞれボイル処理、もしくはレトルト処理(130℃−30分)した後、塗膜の白化程度を目視で評価した。○△以上が実用レベルである。
○ :白化が全くない。
○△:若干白化が認められる。
△ :白化がやや多い。
× :白化が著しい。
【0083】
<密着性試験>
塗装板1、塗装板2、塗装板3、塗装板4をそれぞれボイル処理、もしくはレトルト処理(130℃−30分)した後、塗膜にカッターを使用して碁盤目状に1mm間隔で11本の切り込みを入れ、セロハンテープを貼着した後、セロハンテープを剥離する際に剥離した碁盤目の数で密着性を評価した。(剥離した碁盤目の数/100)
【0084】
<鉛筆硬度>
塗装板1、塗装板2、塗装板3、塗装板4を用いて、JIS K−5400に準じて鉛筆硬度を測定した。
【0085】
<湯中鉛筆硬度>
塗装板1、塗装板2、塗装板3、塗装板4をそれぞれボイル処理、もしくはレトルト処理(130℃−30分)した後、80℃の湯中に浸漬し、30分後に湯中に漬けたまま、JIS K−5400に準じて鉛筆硬度を測定した。
【0086】
<耐ブロッキング試験>
開栓性の評価として、上塗り塗膜とキャップ内面用塗膜間の耐ブロッキング性試験を行った。
塗装板2、及びキャップ内面用塗装板をそれぞれレトルト処理(130℃−30分)した後、それぞれの塗装板を10cm×10cmの大きさに切り出し、塗装板2とキャップ内面用塗装板とを、塗装面同士が向き合う様に重ね合わせて、70℃のホットプレス上に載せ、5kg/cmの加重をかけて30分間静置した。その後、70℃に保ったままで、引っ張り試験機にて塗装板同士を引き剥がし、剥離抵抗値を測定した。
○ :剥離抵抗値が10g未満
○△:剥離抵抗値が10g〜30g
△ :剥離抵抗値が31g〜100g
× :剥離抵抗値が100g以上
【0087】
<ミスト飛散性試験>
(株)東洋精機製作所社製デジタルインコメーターにて、メタルロール(直径76.2mm)とバイブレーションロール(NBRゴム製、直径50.8mm)の間に実施例、比較例で調整した上塗り塗料を各1g載せて、メタルロールを1500rpm(周速度360m/min)及び2500rpm(周速度595m/min)の回転数で回転し、両ロールの下においたアルミニウム板に付着した塗料の重量を測定した。
5:付着量5mg以下
4:付着量6mg〜10mg
3:付着量11mg〜20mg
2:付着量21mg〜50mg
1:付着量51mg以上
【0088】
<インキ色相差試験>
[シングルコート(上塗り塗料1回塗装)の塗装板]
厚さ0.28mmのアルミニウム板にポリエステル樹脂をビヒクルの主成分とするインキを印刷し(膜厚2μm)、インキが未乾燥の状態で上記の上塗り塗料を乾燥後膜厚が6μmとなるように塗装し、雰囲気温度200℃のガスオーブンで1分間加熱乾燥し、シングルコートの塗装板を得た。
[ダブルコート(上塗り塗料2回塗装)の塗装板]
シングルコートの場合と同様にインキを印刷し、インキが未乾燥の状態で上塗り塗料を乾燥後の膜厚が9μm(シングルコートの1.5倍の膜厚)となるように、ウェットオンウェットで2回塗装し、雰囲気温度200℃のガスオーブンで1分間加熱乾燥し、ダブルコートの塗装板を得た。
シングルコートとダブルコートの塗装板でインキ層の色相差を目視評価した。
○ :色相差が全く認められない。
○△:色相差はあるが、少ない。
△ :色相差が明確にわかる。
× :色相差が著しい。
【0089】
合成例、比較合成例、実施例、比較例で用いた原料を以下に示した。
*多価カルボン酸
DMT:テレフタル酸ジメチル
IPA:イソフタル酸
1,4−CHDA:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸
HHPA:ヘキサヒドロ無水フタル酸
AdA:アジピン酸
SeA:セバシン酸
【0090】
*多価アルコール
1,2−BG:1,2−ブチレングリコール(別名、1,2−ブタンジオール)
1,3−BG:1,3−ブチレングリコール(別名、1,3−ブタンジオール)
OcD:オクタンジオール(別名、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)
1,4−CHD:1,4−シクロヘキサンジオール
R−HB:リカビノール HB(新日本理化社製、水素化ビスフェノ−ル A)
BA−P3:日本乳化剤社製、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド 3モル付加物
EG:エチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
1,4−BG:1,4−ブタンジオール
BEPG:2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール
1,4−CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール
BA−2:日本乳化剤社製、ビスフェノールAのエチレンオキサイド 2モル付加物
BA−4:日本乳化剤社製、ビスフェノールAのエチレンオキサイド 4モル付加物
TMP:トリメチルールプロパン
【0091】
*アミノ樹脂(B)
ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂:メラン310XK−IB(日立化成社製;不揮発分72%)
*エポキシ樹脂(D)
エピコート1001(数平均分子量:900、エポキシ当量:450〜500、ジャパンエポ キシレジン社製)ブチルセロソルブ溶液;不揮発分60%)
*潤滑性付与剤
動植物系ワックス分散体;ハイディスパーBC−8PC((株)岐阜セラック製造所製)/合 成系ワックス分散体:ハイフラットBC−10P2、ハイディスパー3050((株)岐阜セ ラック製造所製)/シリコーン樹脂:BYK−370(ビックケミー(株)製)=50/35 /15の比率で混合したもの。
*硬化触媒
NACURE−4054(KINGインダストリーズ社製、リン酸系触媒)
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【0096】
【表5】

【0097】
【表6】

【0098】
表3〜6に示すように、多価アルコール成分として、2級の水酸基を少なくとも1個有するジオール成分を用いてなるポリエステル樹脂(A)から形成される硬化塗膜は、前記ジオールを構成成分とはしないポリエステル樹脂から形成される硬化塗膜と比べ、ゲル分率が低くなる傾向がある。そして、ポリエステル樹脂(A)を構成する前記ジオールの量が多いほど硬化塗膜のゲル分率は低くなり、また、ジオールの分子量が大きいほど低くなる。
また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度が等しい場合、ゲル分率の低い方が良好な絞り加工性を示す。一方、硬化塗膜のゲル分率が等しい場合、用いるポリエステル樹脂のガラス転移温度が高い方が良好な開栓性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコール成分100モル%のうち、2級の水酸基を少なくとも1個有する分子量80以上700以下のジオール成分を5〜40モル%、3官能以上の多価アルコール成分を多くとも0.5モル%含む多価アルコール成分と、多価カルボン酸とから構成される、数平均分子量が1000〜5000、酸価が5(mgKOH/g)以下であるポリエステル樹脂(A)、及びアミノ樹脂(B)を含有することを特徴とする絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物。
【請求項2】
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が、15〜60℃であることを特徴とする請求項1記載の絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物。
【請求項3】
N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド系モノマーをその他のアクリル系モノマーと共重合させてなるアクリル樹脂(C)をさらに含有することを特徴とする請求項1又は2記載の絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂(D)をさらに含有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物。
【請求項5】
ポリエステル樹脂(A)が、3官能以上の成分を含まない多価アルコール成分から構成されることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物。
【請求項6】
一方の端が開口している有底円筒状金属の円筒部外面に下塗り層を設け、該下塗り層上に、請求項1ないし4いずれか記載の絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物から形成される上塗り層が設けられていることを特徴とする外面被覆有底円筒状金属。
【請求項7】
下塗り層と上塗り層との間に、中塗り層及びインキ層が設けられているか、又はインキ層が設けられていることを特徴とする外面被覆有底円筒状金属。
【請求項8】
一方の端が開口している有底円筒状金属の円筒部外面に下塗り層を設けずに、インキ層が設けられ、該インキ層上に請求項5記載の絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物から形成される上塗り層が設けられていることを特徴とする外面被覆有底円筒状金属。


【公開番号】特開2006−257317(P2006−257317A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78432(P2005−78432)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】