説明

絞り駆動機構および内視鏡装置

【課題】絞り駆動機構を小型化すること。
【解決手段】伸縮動作可能なアクチュエータ62と、アクチュエータ62と接続された駆動部材61と、駆動部材61に摩擦係合された被駆動部材63と、駆動部材61の中心軸線O2に直交する面に沿って動作して所定の光軸O1に沿う光が通過可能な光通過口の径を変化させる光学絞り部70と、駆動部材61に沿う被駆動部材63の進退動作を中心軸線O1に直交する前記面内での光学絞り部70の動作に変換する動力変換機構66と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り駆動機構および内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械等の内部を検査する際に、内視鏡装置を機械等の内部に挿入して内視鏡的に検査する方法が知られている。内視鏡装置には、例えば遠位端と近位端とを有する長尺な挿入部が設けられ、挿入部の遠位端に対象物を撮像するための光学手段が配置されたものが知られている。
【0003】
ここで、特許文献1には、光学手段としてレンズと明るさ絞りとからなる複数の光学部材が扇型のベースに設けられた内視鏡装置が記載されている。この特許文献1に記載の内視鏡装置では、ベースを旋回動作させることで選択された光学部材を光路上に配置することができる。この内視鏡装置によれば、対象物との間の距離に応じて焦点と明るさとを切り換えて観察できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−208915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の内視鏡装置では、扇形に形成されたベースにレンズと明るさ絞りとの組が複数組設けられているので、ベースが旋回動作される空間を要する。このため、挿入部を細径化することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は絞り駆動機構の小型化を図ることである。
また本発明の他の目的は挿入部を細径化できる内視鏡装置の提供を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施態様にかかる絞り駆動機構は、伸縮動作可能なアクチュエータと、前記アクチュエータと接続された駆動部材と、前記駆動部材に摩擦係合された被駆動部材と、前記駆動部材の中心軸線に直交する面に沿って動作する光学絞り部と、前記駆動部材に沿う前記被駆動部材の進退動作を前記中心軸線に直交する前記面内での前記光学絞り部の動作に変換する動力変換機構と、を備えるものである。
【0008】
本実施態様によれば、アクチュエータが伸縮動作されることで駆動部材が振動する。駆動部材が振動すると、駆動部材の振動のうち中心軸線方向の動作によって被駆動部材が駆動部材上を摺動移動する。被駆動部材の摺動移動は動力変換機構によって光学絞り部の動作へと変換され、光学絞り部において光通過口の径が変化する。このようにアクチュエータの伸縮動作によって光通過口の径を変化させることができるので、光学絞り部を駆動させる要素を小型化することができる。
【0009】
また、前記光学絞り部は、前記面に沿って配置された支持体と、前記支持体との前記光軸回りの相対回転動作によって光通過口の大きさを変化させる遮光部材と、を有し、前記動力変換機構は、前記被駆動部材の前記進退移動を前記面に沿う回転動作に変換して前記光学絞り部に伝達するカム部を有することが好ましい。
この場合、カム部において被駆動部材の進退動作が光学絞り部の回転動作に変換されるので、光学絞り部を回転動作させることができる。
【0010】
また、前記光学絞り部は、前記面内で前記光軸に直交する一直線方向の対向動作によって光通過口の大きさを変化させる遮光部材を有し、前記動力変換機構は、前記被駆動部材の前記進退移動を前記対向動作に変換して前記光学絞り部に伝達するカム部を有していてもよい。
この場合、カム部において被駆動部材の進退動作が光学絞り部の対向動作に変換されるので、光学絞り部を被駆動部材の進退方向と異なる一直線方向に対向動作させることができる。
【0011】
また、前記アクチュエータは、前記駆動部材の中心軸線方向に伸縮動作するものであることが好ましい。
この場合、伸縮動作は一方向に限られるため、より小型化された絞り駆動機構を提供できる。また、この場合、アクチュエータの近傍には複数枚のレンズが配列され光軸方向に長くなる。それに隣接して沿うように駆動部材とアクチュエータを配列すればまとまった形状になり小型化には有効である。
【0012】
また、前記アクチュエータは、側面視して長手方向と短手方向とを有する圧電素子を備え、該圧電素子の前記長手方向を利用するものであることが好ましい。
この場合、形状記憶合金、サーボモータ、又は油圧シリンダを用いたアクチュエータと比較して、電圧制御が容易であることから、精度の高い駆動機構を提供できる。また、この場合、圧電素子が小型化されるにともない駆動力が不足してくるが、その場合前記配置で積層枚数を増やせば伸縮変位が稼げる。内視鏡においても小型化するためには径方向を小さく抑えることができ、有効である。
【0013】
また、本発明の絞り駆動機構は、前記アクチュエータを伸縮動作させる駆動部をさらに備え、前記駆動部は、前記アクチュエータの伸縮動作速度を漸次変化させることが好ましい。
この場合、伸縮に速度差がつくことで摩擦係合された被駆動部材が所定方向に移動する。連続動作させれば圧電素子の微小な変位でも被駆動部材を連続的に移動できるため必要なストローク分動作可能となる。また伸縮で逆の速度差を与えれば方向を逆に変えることもできる。
【0014】
本実施態様の内視鏡装置は、遠位端と近位端とを有し軸線方向に延びるシースと、前記シースの遠位端に配置され対象物の映像を撮像する撮像機構と、前記シースの近位端に配置されて前記撮像装置を操作するための操作部と、を備え、前記撮像機構は、本発明の絞り駆動機構と、前記光軸と同軸上に配置された固体撮像素子と、前記駆動部材の軸線に平行に配置された第二駆動部材と、伸縮動作可能な第二アクチュエータと、前記第二駆動部材に摩擦係合されて前記絞り駆動機構と前記固体撮像素子との間で前記光軸と同軸上に配置され、前記光通過口から前記固体撮像素子へと進む光の焦点を変化させる移動光学系と、を有するものである。
【0015】
本実施態様の内視鏡装置によれば、絞り駆動機構を小型に構成することができるので、シースの遠位端に配置された撮像機構を小型化することができる。
【発明の効果】
【0016】
本実施態様の絞り駆動機構によれば、伸縮動作するアクチュエータによって駆動部材が振動することで光通過口の径を変化させることができるので絞り駆動機構を小型化することができる。
本実施態様の内視鏡装置によれば、小型化された絞り駆動機構を備えることで撮像機構を小型化できるので対象物に挿入される挿入部を細径化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の1実施形態の内視鏡装置を示す斜視図である。
【図2】同内視鏡装置の一部の構成を分解して示す斜視図である。
【図3】(A)は同内視鏡装置の一部の構成を示す正面図である。(B)は同内視鏡装置の一部の構成を拡大して示す斜視図である。
【図4】同内視鏡装置の一部の構成を拡大して示す斜視図である。
【図5】(A)は同内視鏡装置の一部の構成を拡大して示す斜視図、(B)は同内視鏡装置の構成を説明するための比較例を示す斜視図である。
【図6】(A)は同内視鏡装置の使用時の動作を示す断面図、(B)は、同内視鏡装置の使用時の動作を示す背面図である。
【図7】(A)および(B)は同内視鏡装置の使用時の動作を示す背面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の内視鏡装置の一部の構成を分解して示す斜視図である。
【図9】同内視鏡装置の一部の構成を分解して示す斜視図である。
【図10】(A)および(B)は同内視鏡装置の作用を示す側面図である。
【図11】(A)および(B)は同内視鏡装置の使用時の動作を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1は本実施形態の駆動機構を搭載する内視鏡装置を示す斜視図である。図1に示すように、内視鏡装置1は、近位端から遠位端に向かって延びるシース2と、シース2の遠位端に配置され対象物を撮影する撮像機構3と、シース2内で撮像機構3の近位端側に配置されシース2を湾曲動作させる湾曲駆動部3aと、シース2の近位端に配置されて湾曲駆動部3aを湾曲動作させるための操作部4と、操作部4からさらに近位端側に延びて接続された本体5とを備えている。
【0019】
シース2は、詳細は図示しないが可撓性を有する筒状に形成され、その内部には操作部4および本体5から撮像機構3および湾曲駆動部3aまで延びる配線路が挿通されている。
【0020】
操作部4には、湾曲駆動部3aを湾曲させるために使用者が湾曲方向を入力するためのジョイスティック4aが設けられている。本実施形態の内視鏡装置1では、ジョイスティック4aは所定の中立位置に対して傾けられた方向が湾曲駆動部3aを湾曲させる方向として本体5に入力される。本体5ではジョイスティック4aからの入力に基づいて湾曲駆動部3aを湾曲動作させる。
【0021】
本体5は、撮像機構3によって取得された画像を表示するためのディスプレイ5aと、撮像機構3や湾曲駆動部3aを制御する制御部50を備えている。
【0022】
図2は、内視鏡装置1の一部の構成を示す斜視図で、撮像機構3の構成を分解して示している。また、図3(A)は内視鏡装置1の一部の構成を拡大して示す正面図である。また、図3(B)は内視鏡装置1の一部の構成を拡大して示す斜視図である。図2ないし図3(B)に示すように、撮像機構3は、図1に示すシース2の遠位端に固着されるケース31と、ケース31より遠位端側でケース31に被せられて固定されたキャップ32とを備えている。
【0023】
撮像機構3には、所定の光軸O1が設定されている。この光軸O1に沿って、キャップ32に設けられたカバーガラス32aと、光軸O1に沿う光が通過可能な光通過口の径を変化させるように駆動する絞り駆動機構60と、絞り駆動機構60に組み合わされて光軸O1に沿って進退動作可能な移動光学系80と、カバーガラス32aに対して位置関係が固定されて配置された結像光学部90とがこの順に配置されている。本実施形態では、カバーガラス32aは円盤状に形成されたガラス板である。
【0024】
移動光学系80は、カバーガラス32aから入射された光を結像光学部90に導く際の焦点距離を調整して、撮像する対象物にピントを合わせるためのものである。本実施形態では、移動光学系80には凸レンズが配置されている。
【0025】
結像光学部90には、詳細は図示しない結像レンズ群91と、結像レンズ群91を透過して出射した光を受光する固体撮像素子92とが設けられている。カバーガラス32aから移動光学系80を介して入射された光学像は固体撮像素子92における所定の結像位置に結像される。また、結像光学部90はケース31に対して位置関係が固定されて配置されている。
【0026】
詳細は図示していないが、固体撮像素子92としては、周知のCCDやCMOSエリアイメージセンサを適宜採用することができる。また、固体撮像素子92は図1に示す本体5と電気的に接続されており、固体撮像素子92によって撮像された画像がディスプレイ5aに表示される。
【0027】
絞り駆動機構60は、伸縮動作可能なアクチュエータ62と、アクチュエータ62と接続された駆動部材61と、駆動部材61に摩擦係合された被駆動部材63と、光軸O1に沿う光が通過可能な光通過口の径を変化させる光学絞り部70と、駆動部材61に沿う被駆動部材63の進退動作を中心軸線O2に直交する面内での光学絞り部70の動作に変換する動力変換機構66と、を備えている。
【0028】
駆動部材61は、中心軸線O2に沿う母線を有する円柱状に形成されている。中心軸線O2と光軸O1とは平行である。駆動部材61はケース31に形成された孔311に挿通されており、駆動部材61の先端61aが遠位端方向、駆動部材61の基端61bが近位端方向にそれぞれ向けられて支持されている。また、駆動部材61の外周面には被駆動部材63が摩擦係合されている。
【0029】
アクチュエータ62は、第一端62aと第二端62bとを有し、第一端62aにおいて駆動部材61に固定されている。また、アクチュエータ62は、たとえばピエゾ素子などの圧電素子を用いるものであって、図示しないリード線により電圧印加することで厚み方向に伸縮動作する圧電アクチュエータである。また、上述の圧電素子は、側面視して長手方向と短手方向とを有し、この圧電素子の長手方向を利用して動作するものである。アクチュエータ62は、形状記憶合金、サーボモータ、又は油圧シリンダを用いたアクチュエータと比較して、電圧制御が容易であることから、精度の高い駆動機構を提供できる。
【0030】
詳細は図示しないがアクチュエータ62の第二端62bにはおもりが固着されており、おもりは図示しない金属部材を介してケース31に接着固定されている。なお、おもりとケース31との間の接着は、例えばゴム状の接着剤が用いられるなどの柔軟性を有して接着される構成であることが好ましい。おもりとケース31とが柔軟性を有する接着剤を用いて固着されていることで、外部からアクチュエータ62に伝わる振動を緩衝することができる。アクチュエータはおもりにより慣性力を得て動きを発生させることができる。
【0031】
アクチュエータ62において上述のおもりの先が固定端とされており、第二端62bとケース31との位置関係が固定されている。したがって、アクチュエータ62が伸縮動作すると第二端62bを固定端としてアクチュエータ62の第一端62aが中心軸線O2方向に振動する。詳細は図示しないが、アクチュエータ62は、図1に示すシース2の内部を通じて本体5に電気的に接続されており、制御部50によって伸縮動作される。
【0032】
図3(A)に示すように、被駆動部材63は、駆動部材61に摩擦係合する摩擦係合部64と、一端が被駆動部材63に固定されると共に他端が駆動部材61の外周面に向かって延びる弾性部材67を有している。弾性部材67の前記他端には、駆動部材61に対して摩擦係合されると共に摩擦係合部64に嵌合されたアタッチメント67aが設けられている。被駆動部材63と駆動部材61とは中心軸線O2に沿って相対移動可能である。
【0033】
被駆動部材63を駆動部材61の基端61b側に移動させるためには、図1に示す制御部50において、アクチュエータ62を振動させるための第一駆動パルスが印加される。
【0034】
第一駆動パルスは、アクチュエータ62を伸張させる速度が相対的に速く、またアクチュエータ62を収縮させる速度が相対的に遅くなるように波形が設定されている。このため、アクチュエータ62が伸張された際には、被駆動部材63における摩擦係合部64、アタッチメント67dと駆動部材61との間に生じる摩擦力に抗して駆動部材61と被駆動部材63とが摺動移動される。このとき、駆動部材61は中心軸線O2に沿って遠位端側に直線移動されるが、被駆動部材63の位置は駆動部材61が直線移動される前の位置とほぼ同じ場所に位置している。
【0035】
続いてアクチュエータ62が収縮される。この際には、アクチュエータ62の収縮速度が相対的に遅いために摩擦係合部64、アタッチメント67dと駆動部材61との間に生じる摩擦力によって駆動部材61と被駆動部材63とが一体的に移動される。
従って、上述の第一駆動パルスがアクチュエータ62に印加された際には、アクチュエータ62の伸張と収縮とを一単位として被駆動部材63が中心軸線O2に沿って一定幅ずつ基端61b側へ移動される。
このように第一駆動パルスを連続してアクチュエータ62に印加することにより被駆動部材63を駆動部材61の基端61b側に移動させることができる。
【0036】
逆に、被駆動部材63を駆動部材61の先端61a側に移動させるためには、制御部50において、第一駆動パルスとは波形が異なる第二駆動パルスがアクチュエータ62に印加される。
【0037】
第二駆動パルスは、アクチュエータ62を伸張させる速度が相対的に遅く、またアクチュエータ62を収縮させる速度が相対的に速くなるように波形が設定されている。このため、上述の第一駆動パルスによる駆動と反対に、アクチュエータ62が伸張される際には駆動部材61と被駆動部材63とが一体的に直線移動される。また、アクチュエータ62が収縮動作される際には被駆動部材63はアクチュエータ62の収縮前とほぼ同じ場所に位置している。
駆動部材61の基端61a側に被駆動部材63を移動させるには第二駆動パルスを連続的に印加することで達成できる。
【0038】
このように、絞り駆動機構60によって駆動部材61の中心軸線O2に沿って被駆動部材63が進退動作される。
【0039】
図3(B)に示すように、被駆動部材63には、光軸O1方向に両端が開口された略円筒状の本体部65が形成されている。本体部65には、壁部65bを貫通して形成された長孔65cが形成されている。長孔65cは、光軸O1に対して角度を有して形成されている。
【0040】
本実施形態では、移動光学系80に対しても絞り駆動機構60と同様の駆動機構が設けられている。図2および図3に示すように、移動光学系80は、中心軸線O3方向に伸縮動作する第二アクチュエータ82と、第二アクチュエータ82と接続された第二駆動部材81とを備えており、制御部50からの駆動信号に基づく第二アクチュエータ82の伸縮動作によって移動光学系80が進退駆動されている。
【0041】
図4に示すように、光学絞り部70は、光軸O1と直交する面に沿って配置された支持体71と、支持体71と光軸O1回りに相対回転動作自在な回転部72と、支持体71と回転部72とに共に連結されて光通過口の大きさを変化させる遮光部材73a〜73hとを有する。
【0042】
支持体71は、キャップ32(図2参照)に固定されており、光軸O1方向で近位端側に延びる突起71a〜71hが光軸O1周りに等間隔に形成されている。
回転部72は、支持体71に対して光軸O1回りに摺動可能に嵌合して構成されたリング状の部材である。さらに、回転部72には、光軸O1方向で近位端側に延びる突起72a〜72hが光軸O1回りに等間隔に形成されている。また、突起72a〜72hは、突起71a〜71hよりも外側に配置されている。
遮光部材73a〜73hは4枚1組に構成され、遮光部材73a、73c、73e、73gと、遮光部材73b、73d、73f、73hとの間には支持体71に係合されて遮光部材73a〜73hを支持する仕切り部材74が介在されている。さらに、突起71a〜71hには、遮光部材73a〜73hの抜け止めとして機能する円環状のカバー77が設けられている。
【0043】
回転部72には、被駆動部材63の本体65に係合するように突出して形成された連結部75と、連結部75に設けられ上述した被駆動部材63の本体65に形成された長孔65cに嵌合する突起76とが形成されている。突起76と長孔65cとは摺動自在に構成されている。
突起76と、上述の長孔65cとによって被駆動部材63の進退動作を回転部72の回転動作に変換するカム部(動力変換機構66)が構成されている。
【0044】
図5(A)は、内視鏡装置1の一部の構成を拡大して示す斜視図で、被駆動部材63の本体部65を特に示す斜視図である。また、図5(B)は、図5(A)に示す構成の比較例を示す斜視図である。
【0045】
図5(A)に示すように、本実施形態では、長孔65cは光軸O1に対して傾斜する直線方向に延びて形成されている。例えば図5(A)に示すように、長孔65cの両端部における長孔65cによる壁部65bの貫通方向の軸線L1、L2は互いに平行である。
【0046】
このように長孔65cを構成すると、長孔65c部分の外面にねじれ形状がないため、被駆動部材63を生産する際の抜き型の製造が容易になる。
【0047】
なお、長孔65cの形状は、図5(B)に示すような光軸O1を中心とする螺旋状に形成された長孔65xの形状を近似して成形容易な形状としたものである。本実施形態において長孔65xのような螺旋に沿った形状としても内視鏡装置1の動作に問題は生じない。
【0048】
以上に説明する構成の、本実施形態の内視鏡装置の作用について図6(A)ないし図7(B)を参照して説明する。
図6(A)は、内視鏡装置1における動力変換機構66(被駆動部材63、回転部72)の作用を説明するための図である。また、図6(B)は、回転部72の動作を示す図である。
【0049】
上述のように、被駆動部材63は駆動部材61の外周面に沿って進退動作される。例えば、被駆動部材63が進退動作されて被駆動部材63の本体65が図6(A)に示す面Qから面Rへ移動すると、長孔65cに係合された突起76は、長孔65cの壁面に沿って押圧移動される。
【0050】
図6(B)に示すように、突起76が押圧移動される方向は、回転部72において外周部分を周方向に移動させている。回転部72が支持体71に対して光軸O1回りに摺動可能に嵌合しており、支持体71がキャップ32(図2参照)に固定されているので、回転部72と支持体71とは光軸O1回りに相対回転動作する。
【0051】
突起76は、長孔65cの内面から光軸O1方向にすべりながら図6(A)にFで示す力を受ける。力Fは回転部72を突起76の位置から支持体71に向かって斜めに押し付けるように作用する力である。回転部72は、支持体71に円筒状に嵌合しており、支持体71と回転部72との接触面の摩擦抵抗を減らすことにより支持体71から浮くことなく旋回する。
このように、被駆動部材63の進退動作は支持体71に対する回転部72の回転動作に変換される。
【0052】
図7(A)および(B)は、内視鏡装置1の使用時の動作を示す背面図である。図7(A)に示すように、光学絞り部70が組み立てられた状態では、支持体71に形成された突起71a〜71hは遮光部材73a〜73hに形成された孔731a〜731hのそれぞれに挿通されている。孔731a〜731hのそれぞれは、遮光部材73a〜73hが旋回動作される際の旋回の中心になっている。また、回転部72に形成された突起72a〜72hは遮光部材73a〜73hに形成された長孔731b〜731bのそれぞれに挿通されている。
【0053】
遮光部材73a〜73hによって、光軸O1に沿う光通過口が生じる。支持体71に対して回転部72が光軸O1回りに相対回転動作されると、遮光部材73a〜73hのそれぞれは光軸O1に向かって近接あるいは離間するように旋回動作する。すると、光通過口の最大開口径d1と最小開口径d2との間で光通過口の径が変化する。言い換えると、光学絞り部70において動作する回転部72および遮光部材73a〜73hは、いずれも光軸O1と直交する面すなわち駆動部材61の中心軸線O2に直交する面に沿って動作して光通過口の径を変化させている。
なお、本実施形態では、光通過口の径は、図6(A)に示す点P1に突起72bが接触しているときに最小開口径d2となり、図6(A)に示す点P2に突起72bが接触しているときに最大開口径d1となる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の内視鏡装置1によれば、アクチュエータ62の伸縮動作による被駆動部材63の進退動作が動力変換機構66によって光軸O1回りの回転動作へと変換される。動力変換機構66による光軸O1回りの回転動作によって遮光部材73a〜73hが動作されて光通過口の径を変化させることができる。このため、光学絞り部70を駆動させる要素を小型化することができ、絞り駆動機構60を小型化することができる。
【0055】
また、光学絞り部70に、回転動作によって光通過口の大きさが最大開口径d1から最小開口径d2の範囲で連続的に変化する虹彩絞りが採用されている。このため、従来のように複数の光学絞りを別個に備えるよりも光学絞り部が占有する空間を低減することができる。
【0056】
また、絞り駆動機構60を小型化できるので、撮像機構3を小型化することができ、内視鏡装置1において対象物に挿入される挿入部を細径化できる。
【0057】
また、アクチュエータ62を伸縮動作させて駆動部材61上で被駆動部材63を移動させ、駆動部材61上の任意の位置に被駆動部材63を止めることで、光学絞り部70における光通過口の開口径を最大開口径d1から最小開口径d2の間の所望の大きさにすることができる。
【0058】
また、移動光学系80を進退動作させるために上述の絞り駆動機構60と同様の駆動機構が採用されている。このため、撮像機構3をより小型化することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の内視鏡装置について図8から図11を参照して説明する。図8は、本実施形態の内視鏡装置の一部の構成を分解して示す斜視図である。また、図9は本実施形態の内視鏡装置の一部の構成を分解して示す斜視図である。
図8及び図9に示すように、内視鏡装置300は、絞り駆動機構60に代えて絞り駆動機構260を備えている。絞り駆動機構260は、第1実施形態の内視鏡装置1と同様のアクチュエータ62と駆動部材61とを備えている。
【0060】
駆動部材61の外周面には、被駆動部材63に代えて被駆動部材263が摩擦係合されている。被駆動部材263は、第1実施形態の被駆動部材63と同様に摩擦係合部64、弾性部材67、およびアタッチメント67aを備えている。さらに、被駆動部材263は本体部65に代えて本体部265が形成されている。
本体部265は、第1実施形態の本体部65と同様に光軸O1方向に両端が開口する略円筒状に構成されている。さらに本体部265には、径方向に対向して形成された長孔265a、265b、および径方向に対向して形成された長孔265c、265dが形成されている。
【0061】
図9に示すように、内視鏡装置300では、被駆動部材63に代えて被駆動部材263を備え、被駆動部材263には本体部65に代えて本体部265が形成されている。
また、絞り駆動機構260は、第1実施形態の光学絞り部70に代えて光学絞り部270を備える。光学絞り部270には、支持体71に代えて支持体171が設けられている。支持体171は、図8に示すキャップ32に固定可能な略円板状に形成されており、光軸O1が貫通する貫通孔171aが形成されている。
【0062】
支持体171には、光軸O1に直交する面内で光軸O1を挟んで一直線方向に対向動作可能な一対の遮光部材273a、273bが設けられている。また、支持体171は、所定の深さw1を有する窪みが形成されており、窪み形成された窪み部171dに遮光部材273a、273bがはめ込まれている。
【0063】
遮光部材273aは、支持体171の長孔171b、171cに挿通される連結部270aを有し、連結部270aのそれぞれは突起2701aによって被駆動部材263の本体部265に形成された上述の長孔265c、265dに係合されている。
【0064】
また、遮光部材273bは、支持体171の長孔171b、171cに挿通される連結部270bを有し、連結部270aのそれぞれは突起2701bによって被駆動部材263の本体部265に形成された上述の長孔265a、265bに係合されている。
長孔265a、265b、265c、265dと突起2701a、2701bとによってカム部(動力変換機構266)が構成されている。
【0065】
また、遮光部材273a、273bには、支持体171に対して摺動する突起274a〜277a、274b〜277bがそれぞれ形成されている。突起274a〜277a、274b〜277bによって、遮光部材273a、273bは支持体171上を摺動移動する。
【0066】
図10(A)ないし図11(B)は内視鏡装置300の作用を説明するための側面図である。本実施形態でも、第1実施形態の内視鏡装置1と同様に、アクチュエータ62の伸縮動作によって被駆動部材263が駆動部材61の外面に沿って進退移動する。すると、被駆動部材263の本体部265に形成された長孔265a、265b、265、および265dによって遮光部材273a、273bが対向動作される。
【0067】
このとき、遮光部材273a、273bのそれぞれは、被駆動部材263の本体265に形成された長孔265c、265dのそれぞれによって離間した二箇所で押圧移動されている。遮光部材273a、273bの対向動作によって、光軸O1に沿う光通過口の開口径は、最大開口径d5(図10(A)参照)と最小開口径d6(図10(B)参照)との間で連続的に変化する。
【0068】
さらに、本実施形態では、遮光部材273a、273bは、突起274a〜277a、274b〜277bが支持体171に接触して摺動移動される。遮光部材273a、273bのそれぞれの四隅に突起274a〜277a、274b〜277bが配置されている。このため、突起274a〜277a、274b〜277bと支持体171との間の摺動抵抗による遮光部材273a、273bのねじれが抑制される。その結果、遮光部材273a、273bが支持体171上を滑らかに摺動移動できる。
【0069】
また、本実施形態では、遮光部材273aと遮光部材273bとの対向動作によって光通過口の大きさを変化させることができるので、光通過口の径を変化させるための部品点数が少ない。このため、絞り駆動機構260を小型化することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1、300 内視鏡装置
3 撮像機構
4 操作部
60、260 絞り駆動機構
61 駆動部材
62 アクチュエータ
63、263 被駆動部材
66、266 動力変換機構(カム部)
70、270 光学絞り部
71、171 支持体
73a、73b、73c、73d、73e、73f、73g、73h、273a、273b 遮光部材
80 移動光学系
81 第二駆動部材
82 第二アクチュエータ
92 固体撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮動作可能なアクチュエータと、
前記アクチュエータと接続された駆動部材と、
前記駆動部材に摩擦係合された被駆動部材と、
前記駆動部材の中心軸線に直交する面に沿って動作する光学絞り部と、
前記駆動部材に沿う前記被駆動部材の進退動作を前記中心軸線に直交する前記面内での前記光学絞り部の動作に変換する動力変換機構と、
を備える絞り駆動機構。
【請求項2】
前記光学絞り部は、
前記面に沿って配置された支持体と、
前記支持体との前記光軸回りの相対回転動作によって光通過口の大きさを変化させる遮光部材と、
を有し、
前記動力変換機構は、前記被駆動部材の前記進退移動を前記面に沿う回転動作に変換して前記光学絞り部に伝達するカム部を有する、
請求項1に記載の絞り駆動機構。
【請求項3】
前記光学絞り部は、前記面内で前記光軸に直交する一直線方向の対向動作によって光通過口の大きさを変化させる遮光部材を有し、
前記動力変換機構は、前記被駆動部材の前記進退移動を前記対向動作に変換して前記光学絞り部に伝達するカム部を有する、
請求項1に記載の絞り駆動機構。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記駆動部材の中心軸線方向に伸縮動作するものである請求項1に記載の絞り駆動機構。
【請求項5】
前記アクチュエータは、側面視して長手方向と短手方向とを有する圧電素子を備え、該圧電素子の前記長手方向を利用するものである請求項1に記載の絞り駆動機構。
【請求項6】
前記アクチュエータを伸縮動作させる駆動部をさらに備え、
前記駆動部は、前記アクチュエータの伸縮動作速度を漸次変化させる
請求項1に記載の絞り駆動機構。
【請求項7】
遠位端と近位端とを有し軸線方向に延びるシースと、
前記シースの遠位端に配置され対象物の映像を撮像する撮像機構と、
前記シースの近位端に配置されて前記撮像装置を操作するための操作部と、
を備え、
前記撮像機構は、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の絞り駆動機構と、
前記光軸と同軸上に配置された固体撮像素子と、
前記駆動部材の軸線に平行に配置された第二駆動部材と、
伸縮動作可能な第二アクチュエータと、
前記第二駆動部材に摩擦係合されて前記絞り駆動機構と前記固体撮像素子との間で前記光軸と同軸上に配置され、前記光通過口から前記固体撮像素子へと進む光の焦点を変化させる移動光学系と、
を有する、
内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−2581(P2011−2581A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144570(P2009−144570)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】