説明

給紙搬送装置及び画像形成装置

【課題】プリント生産性やレジスト機能を低下させることなく、用紙の先端がレジストローラに衝突する際のレジスト衝突音を低減させる。
【解決手段】用紙を1枚ずつ分離して給紙する給紙手段と、用紙を搬送経路内で搬送する搬送手段と、用紙を所定のタイミングで画像転写部へ送り込むレジストローラとを有する給紙搬送装置において、用紙の先端部の線速を減少させる減速部材とこれに対向する対向手段が、レジストローラの上流側及び搬送手段の下流側に配置され、減速部材は駆動手段に接続され、減速部材は、その回転軸から外周面までの距離が一定でなく、搬送手段は減速されず、用紙先端がレジストローラに突き当たる前に、減速部材は、その回転軸から最も離れた長径外周面の線速が搬送手段による用紙の線速より遅くなるように回転制御され、用紙は長径外周面と対向手段によって挟持されることで解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリなどの画像形成装置において、中間転写体などの表面に保持されたトナー像を用紙上に転写させるために、所定のタイミングで用紙を転写位置に給紙する給紙搬送装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、電子写真方式の複写機、ファクシミリ装置などの画像形成装置の画像形成部においては、感光体や中間転写体などの上に形成されたトナー像を転写装置によって用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含む画像が形成されるものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙などとも称される)上に転写し、定着した後、トナー像の定着された用紙を機外に排出するようにしている。この際、給紙装置の給紙ローラにより給紙された用紙は、搬送ローラによって搬送され、転写装置の手前に配置されたレジストローラ対に先端を突き当てた状態で一旦停止され、感光体又は中間転写体上のトナー像の移動とタイミングを合わせてレジストローラ対が駆動されて、用紙は転写位置に給紙される。しかし、高画質及び高速・高生産性を実現するために用紙の搬送速度及びレジストローラ対への突入速度は益々速くなっているため、給紙装置によって転写位置に向けて給紙されてきた用紙の先端が停止状態にあるレジストローラに衝突する際の衝突音(以下では「レジスト衝突音」という)は比較的大きく、耳障りである。そのため、この衝突音の低減が従来から求められていた。
【0003】
そこで、この問題を解決するために、特許文献1では、レジストローラ直前に設けたセンサで用紙の先端を検出した後、ステッピングモータを減速することで給紙ローラ及び搬送ローラの搬送速度を減少させるため、レジスト衝突音は低減できるが、給紙ローラ及び搬送ローラの減速によって画像形成装置のプリント生産性が大きく低下してしまう。特許文献2でも同様に、レジストローラ直前に設けたセンサで用紙の先端を検出した後、給紙ローラ及び搬送ローラの搬送速度を減少させることを開示しており、これによりレジスト衝突音は低減できるが、やはりプリント生産性は大きく低下してしまう。
【0004】
また、特許文献3は、レジストローラの直前に設けられた搬送ローラ対をソレノイドなどを用いて離間させて用紙に対するグリップ力を解除し、レジスト機能を妨げない方法を開示しているが、ソレノイドやその他の機械部品の作動による騒音や、搬送ローラ対の衝突による衝突音が発生してしまう。特に高速機では高速で搬送ローラの接離を繰り返すため、大きな騒音が生じ易い。そして、用紙先端の搬送速度は減少されないので、レジスト衝突音は低減されない。また、構成が複雑で部品点数が多く、スペース増大やコストアップを引き起こしてしまう。
【0005】
また、特許文献4には、レジストローラより搬送方向上流であって、用紙の撓み形成位置よりも下流の位置にスポンジローラを設けた構成が開示されている。この構成によれば、用紙がレジストローラ当接前にスポンジローラを通過するため、用紙先端の衝突力を一旦スポンジローラにて緩衝した後に用紙をレジストローラに当接させることができ、用紙のレジストローラ当接時の衝突力の低減、従ってレジスト衝突音の低減が可能になる。しかし、スポンジローラ自体が用紙の撓み形成や撓み形成によるスキュー補正を妨げる恐れがあり、また搬送中の用紙先端がスポンジローラを通過する際の搬送抵抗によってジャムする恐れもある。
【0006】
仮にこのスポンジローラを用紙に対して接離可能に構成したとしても、用紙先端をスポンジローラを通過させた直後にスポンジローラを用紙に当接させる際の用紙先端検知からの応答性を高めようとすると、スポンジローラを素早く対向するローラに当接させなくてはならないため、これによる新たな騒音が生じてしまう。つまり、レジストローラになるべく近い位置で用紙搬送に対するブレーキ効果を瞬時に得ることができなかった。用紙をレジストローラにゆっくり当接させるためには、レジストローラからスポンジローラまでの距離を大きく取り、用紙先端の通過検知後からブレーキ作用を与える前にレジストローラに到達しないようにしなくてはならないが、そうすると用紙の撓み形成位置にこのスポンジローラを配置する必要性が生じ、撓み形成によるスキュー補正の邪魔になってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、これらの従来の問題に鑑み、プリント生産性やレジスト機能を低下させたり、ローラ離間機構によりローラを接離させる際の騒音を生じさせたりすることなく、給紙装置から転写位置に向けて給紙搬送されてきた用紙の先端がレジストローラに衝突する際のレジスト衝突音を低減させることができる給紙搬送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この課題は、用紙を1枚ずつ分離して給紙する給紙手段と、該給紙手段から給紙された用紙を搬送経路内で搬送する搬送手段と、該搬送手段の下流側に配置され、該搬送経路を搬送されてきた用紙を所定のタイミングで画像転写部へ送り込むレジストローラとを有する給紙搬送装置において、用紙の先端部の線速を減少させる減速部材とこれに対向する対向手段が、前記レジストローラの上流側及び前記搬送手段の下流側に配置され、前記減速部材は駆動手段に接続され、前記減速部材は、その回転軸から外周面までの距離が一定でなく、前記搬送手段は減速されず、前記搬送手段により搬送されてきた用紙先端が前記レジストローラに突き当たる前に、前記減速部材は、その回転軸から最も離れた長径外周面の線速が前記搬送手段による用紙の線速より遅くなるように前記駆動手段によって回転制御され、用紙は前記減速部材の該長径外周面と前記対向手段によって挟持されることにより解決される。
【0009】
また、前記減速部材はカムの形状を有していると好ましい。
さらに、前記駆動手段に接続しこれを制御する制御手段と、前記レジストローラの上流側近傍位置に配置されて搬送されてきた用紙の先端を検出した信号を該制御手段に出力する検出手段とが設けられ、該制御手段は、これに接続した該検出手段からの検出信号によって前記駆動手段を制御すると好ましい。
【0010】
また、前記検出手段で用紙先端が検知されると、前記減速部材は、前記駆動手段と前記制御手段によって、前記減速部材の前記長径外周面と前記対向手段によって用紙を挟持する位置に回転制御され、その後、用紙先端が前記レジストローラに到達したときに用紙の撓み形成を妨げない位置に回転制御されると好ましい。
さらに、用紙の厚さを検知する紙厚検知手段が、前記搬送手段の上流側に配置されて前記制御手段に接続され、該紙厚検知手段の検知情報に応じて前記減速部材の線速が制御されると好ましい。
【0011】
また、用紙が厚いときの前記減速部材の線速は用紙が薄いときのそれよりも小さいと好ましい。
さらに、前記検出手段による用紙先端の検知位置から前記レジストローラのニップまでの距離をL、前記減速部材が初期設定の位置から前記長径外周面と前記対向手段によって用紙を挟持する位置になるまでの回転角度をθ、前記減速部材の角速度をω、用紙の線速をVとすると、L>(θ×V)/ωの関係が成り立つと好ましい。
【0012】
また、前記長径外周面を覆うように前記減速部材に弾性部材が取り付けられると好ましい。
さらに、本発明に従う画像形成装置は前記の給紙搬送装置を備えると好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、搬送手段は減速されずに、用紙先端が前記レジストローラに突き当たる前に、回転軸から外周面までの距離が一定でない減速部材は、その回転軸から最も離れた長径外周面の線速が搬送手段による用紙の線速より遅くなるように回転されて、用紙は減速部材の長径外周面と対向手段によって挟持されるため、レジストローラに突入する用紙先端の線速のみ減少されて、レジスト衝突音が低減される。このとき、搬送手段は減速されないためプリント生産性は低下せず、また減速部材はその回転軸から外周面までの距離が一定でないためレジストローラでのレジストレーションは阻害されない。また、ローラ離間機構を設けなくて済むため、これによる騒音も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従う給紙搬送装置を適用するためのカラー画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の給紙搬送装置の第1の実施形態の要部(レジスト部)の概略構成図であり、減速部材72の初期位相を示している。
【図3】本発明の給紙搬送装置の第1の実施形態の要部(レジスト部)の概略構成図であり、減速作用を生じる減速部材72の位相を示している。
【図4】本発明の給紙搬送装置の第1の実施形態の要部(レジスト部)の概略構成図であり、減速部材72が用紙の撓み形成を妨げない向きに回転した位相を示している。
【図5】減速部材72とローラ73の概略斜視図である。
【図6】減速部材72とローラ73の別な実施形態の概略斜視図である。
【図7】複数の減速部材72及びローラ73の概略平面図である。
【図8】複数の減速部材72及びローラ73の別な構成を示す概略平面図である。
【図9】本発明の給紙搬送装置の第2の実施形態の要部(レジスト部)の概略構成図である。
【図10】本発明の給紙搬送装置の第3の実施形態の要部(レジスト部)の概略構成図である。
【図11】減速部材72の別な実施形態を示す概略断面図である。
【図12】従来の搬送ローラの搬送速度と時間の関係を示した図である。
【図13】本発明の搬送ローラの搬送速度と時間の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に従う給紙搬送装置を適用するためのカラー画像形成装置1の一例を模式的に示しており、先ずこの画像形成装置1について説明する。
当該カラー画像形成装置1では、図示のように給紙テーブル200上に装置本体100が載置されている。その装置本体100の上にはスキャナ300を取り付けると共に、その上に自動原稿給送装置(ADF)400を取り付けている。装置本体100内には、その略中央にベルト状の無端移動部材である中間転写ベルト10を有する転写装置を設けており、中間転写ベルト10は駆動ローラ14と2つの従動ローラ15,16の間に張架されて図1において時計回りに回動するようになっている。
【0016】
また、この中間転写ベルト10は、従動ローラ15の左方に設けられているクリーニング装置17により、その表面に画像転写後に残留する残留トナーが除去されるようになっている。その中間転写ベルト10の駆動ローラ14と従動ローラ15の間に架け渡された直線部分の上方には、その中間転写ベルト10の移動方向に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4つのドラム状の感光体40Y,40M,40C,40Bk(以下、特定しない場合には単に感光体40と呼ぶ)が所定の間隔を置いて配設されている。そして、中間転写ベルト10の内側に各感光体40に対向して中間転写ベルト10を挟むように、4個の1次転写ローラ58が設けられている。
【0017】
4個の各感光体40は、それぞれ図1で反時計回りに回転可能であり、その各感光体40の回りには、それぞれ帯電装置、現像装置60、上述した1次転写ローラ58、感光体クリーニング装置、除電装置を設けており、それぞれ作像ユニット18を構成している。そして、その4個の作像ユニット18の上方に、共用の露光装置21を設けている。
そして、その各感光体上に形成された各画像(トナー画像)が、中間転写ベルト10上に直接重ね合わせて順次転写されていくようになっている。
一方、中間転写ベルト10の下側には、その中間転写ベルト10上の画像を記録紙である用紙Pに転写する転写部からなる2次転写装置22を設けている。その2次転写装置22は、2つのローラ23,23間に無端ベルトである2次転写ベルト24を掛け渡したものであり、その2次転写ベルト24が中間転写ベルト10を介して従動ローラ16に押し当たるようになっている。
【0018】
この2次転写装置22は、2次転写ベルト24と中間転写ベルト10との間に送り込まれる用紙Pに、中間転写ベルト10上のトナー画像を一括転写する。
そして、2次転写装置22の用紙搬送方向下流側には、用紙P上のトナー画像を定着する定着装置25があり、そこでは無端ベルトである定着ベルト26に加圧ローラ27が押し当てられている。
なお、2次転写装置22は、画像転写後の用紙を定着装置25へ搬送する機能も果たす。また、この2次転写装置22は、転写ローラや非接触のチャージャを使用した転写装置であってもよい。その2次転写装置22の下側には、用紙の両面に画像を形成する際に用紙を反転させる用紙反転装置28を設けている。
【0019】
このように、この装置本体100は、間接転写方式のタンデム型カラー画像形成装置1を構成している。
このカラー画像形成装置1によってカラーコピーをとるときは、自動原稿給送装置400の原稿台30上に原稿をセットする。また、手動で原稿をセットする場合には、自動原稿給送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、自動原稿給送装置400を閉じてそれを押える。
【0020】
そして、図示していないスタートキーを押すと、自動原稿給送装置4に原稿をセットしたときは、その原稿がコンタクトガラス32上に給送される。また、手動で原稿をコンタクトガラス32上にセットしたときは、直ちにスキャナ300が駆動し、第1走行体33および第2走行体34が走行を開始する。そして、第1走行体33の光源から光が原稿に向けて照射され、その原稿面からの反射光が第2走行体34に向かうと共に、その光が第2走行体34のミラーで反射して結像レンズ35を通して読取りセンサ36に入射して、原稿の内容が読み取られる。
【0021】
また、上述したスタートキーの押下により、中間転写ベルト10が回動を開始する。さらに、それと同時に各感光体40Y,40M,40C,40Kが回転を開始して、その各感光体上にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各単色トナー画像を形成する動作を開始する。そして、その各感光体上に形成された各色のトナー画像は、図1で時計回りに回動する中間転写ベルト10上に重ね合わせて順次転写されていき、そこにフルカラーの合成カラー画像が形成される。
【0022】
一方、上述したスタートキーの押下により、給紙テーブル2内の選択された給紙段の給紙ローラ42が回転し、ペーパーバンク43の中の選択された1つの給紙カセット44から用紙Pが繰り出され、それが分離ローラ45により1枚に分離されて給紙路46に搬送される。その用紙Pは、搬送ローラ47により装置本体1内の給紙路48に搬送され、レジストローラ49に突き当たって一旦停止する。この時、用紙Pの撓みが形成され、用紙Pのスキューが補正される。
【0023】
また、手差し給紙の場合には、手差しトレイ51上にセットされた用紙Pが給紙ローラ50の回転により繰り出され、それが分離ローラ52により1枚に分離されて手差し給紙路53に搬送され、レジストローラ49に突き当たって一旦停止状態になる。
そのレジストローラ49は、中間転写ベルト10上の合成カラー画像に合わせた正確なタイミングで回転を開始し、一旦停止状態にあった用紙Pを中間転写ベルト10と2次転写装置22との間に送り込む。そして、その用紙P上に2次転写装置22でカラー画像が転写される。
【0024】
そのカラー画像が転写された用紙Pは、搬送装置としての機能も有する2次転写装置22により定着装置25へ搬送され、そこで熱と加圧力が加えられることにより転写されたカラー画像が定着される。その後、その用紙Pは、切換爪55により排出側に案内され、排出ローラ56により排紙トレイ57上に排出されて、そこにスタックされる。
また、両面コピーモードが選択されているときには、片面に画像を形成した用紙Pを切換爪55により用紙反転装置28側に搬送し、そこで反転させて再び転写位置へ導き、今度は裏面に画像を形成した後に、排出ローラ56により排紙トレイ57上に排出する。
ここでは、カラー画像形成装置を用いて説明したが、本発明に従う給紙搬送装置をモノクロ画像形成装置に適用することももちろん可能である。
【0025】
次に、本発明の特徴部である給紙搬送装置を説明する。図2は、本発明の給紙搬送装置の第1の実施形態の要部(レジスト部)の概略構成図である。
給紙カセット44から給紙ローラ42と分離ローラ45により1枚に分離されて給紙路内を給紙されてきた用紙Pをさらに搬送する搬送ローラ対47a,47bが配置されており、駆動ローラ47aは、これに連結したモータなどの駆動手段76とその制御手段77(CPU、ROM、RAMなど)によって駆動される。また、図1に示した給紙ローラ42は、図示しないモータなどの駆動手段とその制御手段(CPU、ROM、RAMなど)により駆動される。
【0026】
また、搬送ローラ対47a,47bの下流には案内板81,82,83により形成された搬送経路48がある。この搬送経路48の終端部には回転可能な減速部材72とローラ73が配置されており、減速部材72はこれに連結されたステッピングモータ74によって駆動される。ステッピングモータ74はこれに連結された制御手段75(CPU、ROM、RAMなど)によって制御される。後に詳述するが、図示のように、減速部材72はその回転軸から外周面までの距離が一定でなく、カムの形状を有している。減速部材72とローラ73のさらに下流にはレジストレーション用のレジストローラ対49a,49bが配置されている。減速部材72及びローラ73とレジストローラ49a,49bの間にはさらなる搬送経路があり、減速部材72とローラ73の下流側及びレジストローラ49a,49bの上流側近傍位置には、搬送されてきた用紙Pの先端の通過を検出するセンサ(フォトセンサなどの検出手段)71が設けられ、制御手段75に接続されている。センサ71と制御手段75により、用紙Pの先端位置を正確に把握し、用紙先端がレジストローラ対49a,49bへ衝突する前に、正確に減速部材72による用紙Pの減速作用を生じさせることができる。
【0027】
以上の構成において、搬送ローラ対47a,47bにより下流に搬送されてきた用紙Pの先端が減速部材72とローラ73の間を通過する時、減速部材72は図2に示す初期設定の方向を向いている。次に用紙の先端がセンサ71を通過すると、センサ71からの先端検知信号が、減速部材72の駆動を制御する制御手段75に出力される。そして用紙先端がレジストローラ49a,49bに衝突する直前に、減速部材72が図3に示す向きになるように、減速部材72に回転駆動を与える。この回転駆動は、減速部材72の回転中心から最も離れた外周面78の線速が、用紙の線速より遅くなるように駆動を行い、用紙を減速部材72とローラ73のニップで狭持することによって、用紙にブレーキ作用を与える。これにより、用紙先端は、先端検知以前の速度よりも遅い速度で回転を停止しているレジストローラ対49a,49bに衝突するので、レジスト衝突音が低減される。その後、このようにして減速された用紙Pはレジストローラ対49a,49bへ衝突し、そこで撓みが形成されてスキュー補正され、中間転写ベルト上のトナー像の移動とタイミングを合わせてレジストローラ対49a,49bが駆動されて、用紙Pは転写位置に給紙される。
【0028】
一方、レジストローラ対49a,49bへの衝突直前に、用紙Pの先端だけの搬送速度(線速)が遅くなるが、搬送ローラ対47a,47bの線速、すなわち用紙Pの線速は減少させないので、プリント生産性が低下することもない。
【0029】
また、減速部材72は、用紙先端がレジストローラ対49a,49bに衝突した後の撓み形成時には、図4に示すような向きになるように制御手段75、ステッピングモータ74によって制御される。それにより、用紙がレジストローラに衝突した後、減速部材72が撓み形成を妨げることなく、用紙が撓みを形成できるので、レジスト機能を阻害することがない。また、減速部材72は、次の用紙が搬送されてくる前に、図2に示す初期設定の向きに戻るように制御手段75、ステッピングモータ74によって制御される。
【0030】
なお、案内板81と案内板82は所定の間隔を置いて配置されているため、開口部84が形成されている。開口部84は、外周面78の遅めの線速と搬送ローラ対47a,47bによる用紙Pの速めの線速の差により生じる用紙Pの撓みや、用紙Pがレジストローラ対49a,49bに突き当たった後形成される撓みを逃がす働きをする。これにより、用紙Pの撓み形成によるスキュー補正が保障され、さらに用紙Pの撓みが案内板に接触することにより生じる衝突音も回避される。
【0031】
次に、減速部材72の形状について説明する。
図2などから分かるように減速部材72はカムの形状を有している。ここで、減速部材72の回転軸から減速部材72とローラ73のニップまでの距離をX1(mm)とし、減速部材72の回転軸から外周面78までの最長径をX2(mm)とする。減速部材72及びローラ73の表面が十分に硬く、共に剛体と仮定できる場合は、X1=X2とする。一方、減速部材72又はローラ73の少なくとも一方の表面が弾性を有していて柔らかい場合は、減速部材72とローラ73のニップで用紙Pを狭持することによって用紙Pにブレーキ作用を与えられるように、X2はX1より0.5mm程度大きくすることが好ましい。なお、減速部材72の最長径以外の径はX1より短くする。このように減速部材72をカムの形状とすることにより、プリント生産性を低下させることなく、レジスト衝突音を低減することができる。また、減速部材72を設けたことによるレジスト機能の低減も防止される。
【0032】
図5は、減速部材72とローラ73の概略斜視図である。ローラ73の外周面は円形に形成されているのに対して、減速部材72の外周面は卵形に形成されている。用紙Pを減速部材72の外周面78とローラ73のニップで狭持するために、少なくとも減速部材72の回転軸から最も離れた外周面78がローラ73の外周面に接触するように構成されている。一方、減速部材72のさらなる回転に伴って外周面78が用紙から離れると、小さめの径を有する減速部材72の外周面は用紙に当接しなくなるため、その後の用紙の撓み形成は阻害されない。
【0033】
図6は、減速部材72とローラ73の別な実施形態の概略斜視図である。図示のように、軸方向に複数の減速部材72とローラ73が設置されており、これにより、減速部材72の外周面78とローラ73のニップでの用紙Pの狭持が、スリップなどせずにより確実なものとなる。
【0034】
図7は、複数の減速部材72及びローラ73の概略平面図である。図示のように、減速部材72は、同軸上の継手92を介して同軸上のモータ91に連結されており、モータ91による駆動力が減速部材72に伝達されるようになっている。
図8は、複数の減速部材72及びローラ73の別な概略平面図である。図示のように、減速部材72は、同軸上のギヤ94とこれと噛み合ったギヤ93を介してモータ91に連結されており、モータ91による駆動力が減速部材72に伝達されるようになっている。
【0035】
特許文献3のようにソレノイドなどを使用して減速部材を接離させる方法では、これを接離させるにはある程度の長さのソレノイドのストロークが必要となり、また磁力で引付けて機械的な機構で動作させるため、センサで紙先端を検知した後の応答時間が長くなるが、このように構成された本発明によれば、モータ91を数度回転させて減速部材72を回転させるだけで済むため、センサ71で紙先端を検知した後の応答性が良好になる。また、図8におけるギヤ93の歯数を増やすかギヤ94の歯数を減らすことにより、さらに応答性を上げることができる。
【0036】
図9は、本発明の給紙搬送装置の第2の実施形態の要部(レジスト部)の概略構成図である。
第1の実施形態と異なる点は、搬送ローラ対47a,47bの上流に、用紙Pの紙厚を検知する紙厚検知センサ79が設置され、紙厚検知センサ79は下流の制御手段75に接続されていることである。用紙Pは、紙厚検知センサ79を通過した際これにより種類・紙厚を検知され、紙厚検知センサ79からの検知情報が、減速部材72の駆動を制御する制御手段75に出力される。制御手段75には、センサ71からの先端検知信号を受けた後の減速部材対72,73の線速が紙厚毎に設定されている。用紙の種類・紙厚によりレジスト衝突音の大きさは異なり、一般的に紙厚が厚い方がレジスト衝突音は大きく、紙厚が薄い方が小さい。従って、用紙の種類・厚さに応じて減速部材72の線速又は角速度ωを変えることで用紙のレジストローラへの衝突速度を変えることができる。例えば、レジスト衝突音が大きい紙厚の厚い用紙の場合は、減速部材72の線速又は角速度ωを遅くして用紙のレジスト衝突速度をより遅くすればよい。このようにして、任意の種類の用紙の場合に、プリント生産性を大きく低下させることなく、レジスト衝突音を低減することができる。
【0037】
次に、この給紙搬送装置の動作を説明する。
上流側の搬送ローラにより搬送されてきた用紙Pは、紙厚検知センサ79により紙厚を検知され、紙厚検知センサ79からの検知情報が、減速部材72の駆動を制御する制御手段75に出力される。そして、用紙Pは、搬送ローラ対47a,47bによりさらに下流に搬送されて、用紙先端は減速部材72とローラ73の間を通って搬送される。この時、減速部材72は図2に示す初期設定の方向に向いている。次に、用紙Pの先端がセンサ71を通過すると、センサ71からの先端検知信号が、減速部材72の駆動を制御する制御手段75に出力される。そして、減速部材72は、紙厚検知センサ79からの紙厚情報に基づいて制御手段75に予め設定されている搬送速度(線速)で回転駆動される。この回転駆動は、減速部材72の回転軸から最も離れた外周面78の線速が用紙Pの線速より遅くなるように行われる。従って、用紙Pを減速部材72の外周面78とローラ73のニップで狭持することによって、用紙Pにブレーキ作用が加えられる。その後、このようにして減速された用紙Pはレジストローラ対49a,49bへ衝突し、そこで撓みが形成されてスキュー補正され、中間転写ベルト上のトナー像の移動とタイミングを合わせてレジストローラ対49a,49bが駆動されて、用紙Pは転写位置に給紙される。ここで、制御手段75に予め設定されている線速は、紙厚が厚い方が遅く、紙厚が薄い方が速く設定されている。
ここで説明しなかった他の構成及び動作は第1の実施形態と同様である。
【0038】
図10は、本発明の給紙搬送装置の第3の実施形態の要部(レジスト部)の概略構成図である。
図示のように、センサ71の用紙先端検知位置からレジストローラ対49a,49bのニップまでの距離をL(mm)、減速部材72が初期設定の位置から用紙Pの減速作用を生じさせる位置であって、外周面78とローラ73によって用紙Pを挟持する位置になるまでの回転角度をθ(rad)、減速部材72の角速度をω(rad/s)、用紙の搬送速度・線速をV(mm/s)とする。
【0039】
ここで、L(mm)が小さく、搬送速度・線速V(mm/s)が速く、回転角度θ(rad)が大きく、角速度ω(rad/s)が小さいなどの条件が重なると、減速部材72が外周面78とローラ73によって用紙Pを挟持して減速作用を生じる前に、用紙先端がレジストローラ対49a,49bに衝突してしまう場合がある。そこで、この給紙搬送装置は、用紙先端がレジストローラ対49a,49bに衝突する前に、確実に減速部材72による減速作用を生じさせるように、L>(θ×V)/ωが成立するように構成されている。これにより、減速部材72が用紙Pの減速作用を生じる前に、用紙先端がレジストローラ対49a,49bに衝突してしまうことを回避することができる。
ここで説明されていない本実施形態の構成及び動作は、第1又は第2の実施形態と同様である。
【0040】
図11は、減速部材72の別な実施形態を示す概略断面図である。図示のように、減速部材72の用紙との接触面に、摩擦係数の大きいシリコーンゴムなどのゴム部材95が取り付けられている。特にゴム部材95は、減速部材72の回転軸から最も離れた外周面78を覆うように減速部材72に取り付けられる。このゴム部材95により減速部材72と用紙Pのスリップが防止され、減速部材72でのより確実な用紙Pの減速作用が保障される。
【0041】
次に、本発明の給紙搬送装置のプリント生産性と、特許文献1,2のように用紙Pの搬送速度を遅くする従来技術の装置のそれを比較検討する。
図12は、従来技術の搬送ローラの搬送速度と時間の関係を示した図である。用紙先端がレジストローラに衝突する前後の時間の間、搬送ローラの搬送速度をV1からV2に減少させると、搬送速度をV1で搬送し続けた場合よりも、図7の斜線部の面積(用紙の長さ(mm)に相当)だけプリント生産性が低下する。
一方、図13は、本発明の搬送ローラの搬送速度と時間の関係を示した図である。本発明では、用紙先端がレジストローラに衝突する前後で、搬送ローラ47の搬送速度V1は減少せず変わらないので、プリント生産性は低下しない。このように、本発明によれば、従来技術に比べてプリント生産性を高めることができる。
【0042】
また、本発明では、図4に示すように、撓み形成時において減速部材72を用紙P又は用紙Pの撓みに当接しない位相に回転させるため、用紙Pの撓み形成は妨げられない。さらに、減速部材72を所定の位相だけ回転させるだけで用紙Pに対するブレーキ作用が創出されるので、部品点数も少なく簡単な構成で済み、従って低コスト且つ省スペースでの設置が可能である。また、減速部材72を回転させるだけなのでこれによる騒音は発生せず、特許文献3のような、ローラを接離させる際のソレノイドやその他の機械部品の作動による騒音は発生しない。
【符号の説明】
【0043】
45 分離ローラ(給紙手段)
47 搬送ローラ(搬送手段)
49 レジストローラ
72 減速部材
73 ローラ(対向手段)
74 ステッピングモータ(駆動手段)
78 外周面(長径外周面)
P 用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【特許文献1】特開2003−155147号公報
【特許文献2】特開平9−175693号公報
【特許文献3】特開平11−79474号公報
【特許文献4】特開平9−86729号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を1枚ずつ分離して給紙する給紙手段と、該給紙手段から給紙された用紙を搬送経路内で搬送する搬送手段と、該搬送手段の下流側に配置され、該搬送経路を搬送されてきた用紙を所定のタイミングで画像転写部へ送り込むレジストローラとを有する給紙搬送装置において、
用紙の先端部の線速を減少させる減速部材とこれに対向する対向手段が、前記レジストローラの上流側及び前記搬送手段の下流側に配置され、前記減速部材は駆動手段に接続され、
前記減速部材は、その回転軸から外周面までの距離が一定でなく、
前記搬送手段は減速されず、
前記搬送手段により搬送されてきた用紙先端が前記レジストローラに突き当たる前に、前記減速部材は、その回転軸から最も離れた長径外周面の線速が前記搬送手段による用紙の線速より遅くなるように前記駆動手段によって回転制御され、用紙は前記減速部材の該長径外周面と前記対向手段によって挟持されることを特徴とする給紙搬送装置。
【請求項2】
前記減速部材はカムの形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の給紙搬送装置。
【請求項3】
前記駆動手段に接続しこれを制御する制御手段と、前記レジストローラの上流側近傍位置に配置されて搬送されてきた用紙の先端を検出した信号を該制御手段に出力する検出手段とが設けられ、該制御手段は、これに接続した該検出手段からの検出信号によって前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の給紙搬送装置。
【請求項4】
前記検出手段で用紙先端が検知されると、前記減速部材は、前記駆動手段と前記制御手段によって、前記減速部材の前記長径外周面と前記対向手段によって用紙を挟持する位置に回転制御され、その後、用紙先端が前記レジストローラに到達したときに用紙の撓み形成を妨げない位置に回転制御されることを特徴とする請求項3に記載の給紙搬送装置。
【請求項5】
用紙の厚さを検知する紙厚検知手段が、前記搬送手段の上流側に配置されて前記制御手段に接続され、該紙厚検知手段の検知情報に応じて前記減速部材の線速が制御されることを特徴とする請求項1〜4に記載の給紙搬送装置。
【請求項6】
用紙が厚いときの前記減速部材の線速は用紙が薄いときのそれよりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の給紙搬送装置。
【請求項7】
前記検出手段による用紙先端の検知位置から前記レジストローラのニップまでの距離をL、前記減速部材が初期設定の位置から前記長径外周面と前記対向手段によって用紙を挟持する位置になるまでの回転角度をθ、前記減速部材の角速度をω、用紙の線速をVとすると、L>(θ×V)/ωの関係が成り立つことを特徴とする請求項3又は4に記載の給紙搬送装置。
【請求項8】
前記長径外周面を覆うように前記減速部材に弾性部材が取り付けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の給紙搬送装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の給紙搬送装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−246208(P2011−246208A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118254(P2010−118254)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】