説明

給紙装置、原稿搬送装置、画像形成装置

【課題】超音波で用紙の端部を検知しているとき、誤検知を生ずることなく正確に重送を検知し、搬送のできるだけ早い段階で重送を検知する。
【解決手段】給紙装置は、用紙が載置される載置部と、載置部に載置された用紙を送り出す給紙体と、超音波を発する発信部と、発信部が発した超音波を受信し超音波の受信量に応じて出力が変化する受信部を含む超音波検知部と、受信部の出力を処理して受信レベルを示す信号を出力する信号処理部と、先端部検知時間が経過するまでの間、予め定められた第1重送検知閾値に基づき重送発生を検知し、先端部検知時間が経過すると予め定められた第2重送検知閾値に基づき重送発生を検知する検知処理部と、第2重送検知閾値と、第2重送検知閾値よりも、受信部が超音波を受信していないときの信号の値に近づくように定められた第1重送検知閾値を記憶する記憶部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿や印刷用の用紙を給紙する給紙装置に関する。又、この給紙装置を備えた原稿搬送装置、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置では、機内で搬送される用紙に対し画像形成がなされる。そして、用紙が正しく搬送されないとジャム(詰まり)等の原因となり、画像形成を適切に行えない。そこで、用紙の搬送路に沿って用紙を検知、検出するセンサーを設け、用紙の搬送状況を確認することがある。
【0003】
このような搬送路にセンサーを設け、用紙を検出する画像形成装置の一例が特許文献1に記載されている。具体的に、特許文献1には、供給された印刷媒体に画像を印刷し、印刷媒体の有/無を検出する印刷媒体検出手段と、検出手段から出力される検出信号に矯正処理を施して出力する信号処理手段と、信号処理手段で矯正処理が施された検出信号に基づいて印刷動作を制御する制御手段とを備え、矯正処理が、入力した検出信号が印刷媒体の有を示す状態から無を示す状態に又はその逆に変化したとき、その変化時点から所定の不感時間の間、検出信号の状態の乱れに拘らず変化時点での変化後の状態を強制的に固定する不感処理を含む画像形成装置が記載されている。この構成により、印刷媒体検出手段からの検出信号の波形の乱れに関し、検出信号の読み取りを中止する時間を短縮し、画像形成装置のスループットを向上させようとする(特許文献1:請求項1、段落[0006]、[0007]等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−212387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像形成装置では、用紙の検知に超音波センサーを用いることがある。搬送される用紙に向けて超音波を発し、受信される超音波のレベルの大小により各種検知が行われる。例えば、受信される超音波のレベルが用紙の無いときよりも下がったことに基づき、用紙の超音波センサーへの到達が検知される。又、例えば、受信される超音波のレベルが、1枚の用紙検知中よりも更に下回っている(予め定められた閾値を下回っている)ことに基づき、重送発生が検知される。
【0006】
ここで、搬送される用紙の端部(例えば、端から数センチの部分、先端部分)は、揺れたり、反ったりすることがある。そして、用紙の先端がばたつくと、受信部での超音波の受信量は、乱反射や拡散等により、用紙にばたつきが無く安定している状態の時に比べ、少なくなる。そのために、超音波センサーの発信部と受信部の間を用紙の先端部分が通過しているとき、受信される超音波のレベルが、重送発生時のレベルに近づくことがある。従って、用紙の端部(先端等)が超音波センサーの検知領域を通過中のときの受信部の出力に基づいて重送検知を行うと、重送を誤検知することがあるという問題がある。
【0007】
特に、高地(例えば、メキシコなど)のような気圧の低い環境では、超音波を伝える空気の密度が薄い。そのため、全体的に、受信部が受信する超音波のレベルが低下し、重送発生時とばたついた用紙の端部分検知時の受信部の出力値の差が小さくなり、正確な検知が難しくなる。
【0008】
一方で、超音波の受信レベルが小さいとき(用紙の端部を検知しているとき)の受信部の出力に対応するように重送検知の閾値を設定すると、誤検知の危険性は減る。しかし、重送発生時の受信部での超音波の受信レベル(用紙の超音波の透過量)は、場合により異なり、幅がある。そのため、超音波の受信レベルが小さいときの受信部の出力に対応するように閾値を設定すると、かえって重送未検知が発生してしまうという問題がある。
【0009】
ここで、特許文献1記載の画像形成装置は、超音波センサーを用いていない。又、重送発生検知については記載されていない。従って、用紙の重送の発生に対応することができず、上記の問題に対処することはできない。又、特許文献1記載の発明の内容を応用すると、超音波センサーを用いたとき、用紙のばたつきがある段階(超音波センサーを用紙の端部部分が通過している状態)では、重送や用紙の検知を停止することになる。しかし、これでは、用紙の端部通過中は重送検知が停止され、重送発生を正確かつできるだけ早い段階で検知することはできない。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、超音波で用紙の端部を検知しているとき、誤検知を生ずることなく正確に重送を検知し、搬送のできるだけ早い段階で重送を検知することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る給紙装置は、1又は複数の用紙が載置される載置部と、前記載置部に載置された用紙を送り出す給紙体と、超音波を発する発信部と、前記発信部が発した超音波を受信し超音波の受信量に応じて出力が変化する受信部を含み、前記発信部と前記受信部は用紙搬送経路を挟むように配され、前記給紙体よりも用紙搬送方向下流側に設けられる超音波検知部と、前記受信部の出力を処理して受信レベルを示す信号を出力する信号処理部と、用紙の先端が前記超音波検知部に到達して予め定められた先端部検知時間が経過するまでの間、前記信号の値と予め定められた第1重送検知閾値に基づき重送発生を検知し、前記先端部検知時間が経過すると、前記信号の値と予め定められた第2重送検知閾値に基づき重送発生を検知する検知処理部と、前記第2重送検知閾値と、前記第2重送検知閾値よりも、前記受信部が超音波を受信していないときの前記信号の値に近づくように定められた前記第1重送検知閾値を記憶する記憶部、を含むこととした。
【0012】
用紙のばたつきにより、受信部の超音波受信レベルは全体的に低下する。そこで、この構成によれば、検知処理部は、用紙の先端が超音波検知部に到達して予め定められた先端部検知時間が経過するまでの間、信号の値と予め定められた第1重送検知閾値に基づき重送発生を検知し、先端部検知時間が経過すると、信号の値と予め定められた第2重送検知閾値に基づき重送発生を検知する。そして、記憶部は、第2重送検知閾値と、第2重送検知閾値よりも、受信部が超音波を受信していないときの信号の値に近づくように定められた第1重送検知閾値を記憶する。これにより、用紙の先端部検知中の閾値は、安定した状態の用紙が超音波検知部の検知領域を通過している状態のときの閾値(第2重送検知閾値)と異なる。言い換えると、用紙の先端部分を検知して用紙のばたつきにより受信部の受信レベルが全体的に低下している間、重送検知用の閾値は、ばたつきによる受信部の受信レベル低下の影響を考慮した閾値(第1重送検知閾値)とされる。
【0013】
従って、用紙のばたつきにより受信部の受信レベルが低下しても、重送と誤検知され難くなる。そして、超音波検知部が原稿の先端部を検知している段階(用紙が搬送されてから早い段階)で、重送の発生を確実に検知することができる。又、用紙の先端部での検知結果を無視せず、用紙の先端部を超音波検知部が検知している段階で、速やかに重送を検知することができる。従って、重送による用紙へのダメージを無くすことができる。一方、先端部検知時間が過ぎ、受信部の受信レベルの全体的な回復にあわせて、重送検知用の閾値は、第1重送検知閾値から第2重送検知閾値に変更される。従って、先端部検知時間が過ぎて、受信部の受信レベルが全体的に回復したとき、重送の未検知を防ぐことができ、正確に重送の発生を検知することができる。
【0014】
又、請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記記憶部は、前記受信部が超音波を受信していないときの前記信号の値と、1枚の用紙を通過させたときの前記先端部検知時間で検知された前記信号の値との範囲内で定められた前記第1重送検知閾値を記憶し、前記受信部が超音波を受信していないときの前記信号の値と、1枚の用紙を通過させたときの前記第2重送検知閾値を用いて重送発生を検知する予め定められた時間で検知された前記信号の値との範囲内で定められた前記第2重送検知閾値を記憶することとした。
【0015】
この構成によれば、記憶部は、受信部が超音波を受信していないときの信号の値と、1枚の用紙を通過させたときの先端部検知時間で検知された信号の値との範囲内で定められた第1重送検知閾値を記憶し、受信部が超音波を受信していないときの信号の値と、1枚の用紙を通過させたときの第2重送検知閾値を用いて重送発生を検知する予め定められた時間で検知された信号の値との範囲内で定められた第2重送検知閾値を記憶する。これにより、信号処理部の出力値に基づき、適切な第1重送検知閾値、第2重送検知閾値を定めることができる。従って、用紙搬送の状況を問わず、正確に重送発生を検知することができる。
【0016】
又、請求項3に係る発明は、請求項1又は2の発明において、前記検知処理部は、前記超音波検知部が用紙の後端部を検知するまでとして前記第2重送検知閾値を用いて重送発生を検知する予め定められた時間が経過するまで第2重送検知閾値を用いて重送発生を検知し、前記時間経過後、前記第1重送検知閾値を用いて重送発生を検知することとした。
【0017】
用紙のばたつきは、用紙の後端部でも生じ得る。そこで、この構成によれば、検知処理部は、超音波検知部が用紙の後端部を検知するまでとして第2重送検知閾値を用いて重送発生を検知する予め定められた時間が経過するまで第2重送検知閾値を用いて重送発生を検知し、時間経過後、第1重送検知閾値を用いて重送発生を検知する。これにより、用紙の後端部のばたつきにより、受信部の受信レベルが全体的に再び低下しても、重送検知用の閾値は、ばたつきによる受信部の受信レベル低下の影響を考慮した閾値に変更される。従って、用紙の後端部を超音波検知部が検知しているとき(超音波検知部の検知領域を用紙の後端部が通過しているとき)でも、重送発生を正確に検知することができる。
【0018】
又、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の発明において、前記第1重送検知閾値と前記第2重送検知閾値の設定指示を受け付ける操作部を含み、前記操作部が前記第1重送検知閾値と前記第2重送検知閾値の設定指示を受け付けると前記給紙体は、用紙を搬送し、前記検知処理部は、用紙の先端が到達してから前記予め定められた先端部検知時間が経過するまでの間に得られた前記信号の値に基づき前記第1重送検知閾値を定め、前記先端部検知時間が経過した後に得られた前記信号の値に基づき前記第2重送検知閾値を定め、前記記憶部は、記憶している前記第1重送検知閾値と前記第2重送検知閾値を前記検知処理部が定めた値に更新することとした。
【0019】
この構成によれば、操作部は、第1重送検知閾値と第2重送検知閾値の設定指示を受け付ける。これにより、使用者は、所望の用紙を搬送させることにより、所望の用紙に適した第1重送検知閾値と第2重送検知閾値を設定することができる。
【0020】
又、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4の発明において、前記検知処理部が重送を検知したとき、前記給紙体は、給紙動作を停止することとした。
【0021】
この構成によれば、検知処理部が重送を検知したとき、給紙体は給紙動作を停止する。これにより、重送によって用紙が破れたり、折れたりすることを防ぐことができ、又、複数の用紙にまたがって1ページを印刷するといった重送により生ずる不都合の発生を防ぐことができる。
【0022】
又、請求項6に係る原稿搬送装置は、請求項1乃至5の何れか1項の給紙装置を含むこととした。
【0023】
この構成によれば、原稿搬送装置から送り出される原稿での重送の発生を正確に検知することができる。又、超音波検知部が原稿の先端部を検知している段階でも、正確に重送の有無を検知することができる。又、用紙搬送が開始されてから早い段階で重送の発生を検知することができる。従って、ステープル針で止められた原稿や吸着している原稿を搬送しても、原稿の破れやシワを防ぐことができる。又、原稿重送による原稿搬送を行う部材の破損を防ぐことができる。
【0024】
又、請求項7に係る画像形成装置は、請求項1乃至5の何れか1項の給紙装置を含むこととした。
【0025】
この構成によれば、画像形成装置に設けられた給紙装置から送り出される用紙での重送の発生を正確に検知することができる。又、超音波検知部が用紙の先端部を検知している段階でも、正確に重送の有無を検知することができる。又、用紙搬送が開始されてから早い段階で重送の発生を検知することができる。従って、例えば、重送により、複数の用紙に跨った印刷や、用紙の詰まり、破れ、シワを防ぐことができる。また、用紙重送によって、搬送を行う部材を破損させてしまうこともない。
【発明の効果】
【0026】
上述したように、本発明によれば、超音波検知部が用紙端部を検知していても、誤検知を生ずることなく正確に重送を検知できる。又、用紙の先端部分を検知していても、重送を正確に検知できるので、搬送のできるだけ早い段階で重送を検知できる。又、安定した状態の用紙が超音波検知部の検知領域を通過する状態になると、閾値を変更するので、超音波検知部の検知領域を、用紙のどの部分が通過していても、正確に重送の発生を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】複合機の概略構成を示す模型的断面図である。
【図2】複合機の一例を示すブロック図である。
【図3】原稿搬送装置での給紙装置に関する部分を示すブロック図である。
【図4】超音波センサーを用いた検知を説明するための説明図である。
【図5】重送検知制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【図6】給紙部での給紙装置に関する部分を示すブロック図である。
【図7】給紙部での重送検知制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【図8】第1重送検知閾値と第2重送検知閾値の設定の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図1〜図8を参照しつつ説明する。以下の説明では、本発明に係る給紙装置1や原稿搬送装置2を含む複合機100(画像形成装置に相当)を例に挙げて説明する。但し、各実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
【0029】
(複合機100の概略構成)
まず、図1を用いて、実施形態に係る複合機100の概略を説明する。図1は、複合機100の概略構成を示す模型的断面図である。
【0030】
本実施形態にかかる複合機100は、図1に示すように最上部に原稿搬送装置2を有する。又、複合機100は、画像読取部3a、給紙部4a、搬送路4b、画像形成部5a、定着部5bなどを含む。又、複合機100の正面前方には、複合機100に対し入力、設定を行うための操作パネル3b(操作部に相当)が設けられる(図1で破線で図示)。
【0031】
まず、原稿搬送装置2は、読み取りを行う原稿D(用紙に相当)を1枚ずつ、自動的に連続して読み取り位置(後述の搬送読取用コンタクトガラス31)に搬送する。原稿搬送装置2は、原稿搬送方向上流側から順に、原稿トレイ21(載置部に相当)、ピックアップローラー22(給紙体に相当)、原稿搬送路23、原稿レジストローラー対24、原稿搬送ローラー対25、原稿排出ローラー対26、原稿排出トレイ27等を備える。又、原稿搬送装置2は、図2の紙面奥側を支点として画像読取部3aに上下方向に開閉自在に取り付けられ、画像読取部3aの各コンタクトガラスを上方から押さえるカバーとして機能する。
【0032】
読み取りを行う複数枚の原稿Dは原稿トレイ21に載置される。そして、ピックアップローラー22は、原稿トレイ21に載置された原稿Dのうち最上位の原稿Dに当接する。例えば、スタートキー35の押下等、原稿読取を行う旨の入力が複合機100に入力されると、ピックアップローラー22は、原稿搬送路23に原稿Dを1枚ずつ送り出す。そして、原稿レジストローラー対24よりも上流側であって、ピックアップローラー22の下流側近傍に、原稿Dの到達、通過や原稿Dの重送を検知するための超音波センサー61(超音波検知部に相当)が設けられる(詳細は後述)。
【0033】
原稿レジストローラー対24は、原稿到達当初は回転していない。そして、送り出された原稿Dは、原稿レジストローラー対24に突き当てられ、撓ませられる。原稿Dの用紙の弾性により、原稿Dの先端が原稿レジストローラー対24の軸線方向に沿う。これにより、原稿Dの斜行が矯正される。そして、原稿レジストローラー対24が回転し、原稿Dは、送り出される。
【0034】
原稿レジストローラー対24から送り出された原稿Dは、原稿搬送ローラー対25対24やガイドに導かれ、画像読取部3aの上面に設けられた搬送読取用コンタクトガラス31の上面を通過する。この通過の際、画像読取部3aが原稿Dの読取を行う。そして、読取が完了した原稿Dは、原稿排出ローラー対26によって原稿排出トレイ27に排出される(原稿搬送経路を破線で図示)。
【0035】
そして、原稿搬送装置2の下方の画像読取部3aの内部には、露光ランプ、ミラー、レンズ、イメージセンサー等の光学系部材が設けられる(不図示)。又、画像読取部3aの上面のコンタクトガラスは、本実施形態では、二つに大別でき、図1において、左側に搬送読取用コンタクトガラス31が、右側に載置読取用コンタクトガラス32が配される。そして、搬送読取用コンタクトガラス31を通過する原稿Dや、載置読取用コンタクトガラス32に載置された原稿Dに対し、露光ランプが光を照射し、原稿Dの反射光をミラー、レンズでイメージセンサーに導く。そして、イメージセンサーは、各画素について光信号を電気信号に変換し、原稿Dの画像データが得られる。
【0036】
給紙部4aは、複合機100の最下部に設けられ、レジストローラー対47や画像形成部5a等に向け、印刷に用いる用紙Pの供給を行う。給紙部4aは、カセット41、給紙ローラー42(給紙体に相当)等を含む。尚、給紙部4aを複数段積み重ね、用紙収容能力を高めることが可能である。
【0037】
カセット41は、各サイズ(例えば、A4やレターサイズ等)、各種(例えば、普通紙、再生紙、厚紙、薄紙、コピー用紙、OHP用紙、ラベル用紙等)の用紙Pを積載し収容する。そして、用紙載置台43(載置部に相当)が、用紙Pを載置する部分としてカセット41内に設けられる。そして、給紙ローラー42は、用紙載置台43上の最上位の用紙Pと接する。複合機100に対して画像を形成する旨の入力がなされると、給紙ローラー42は、所定の方向(図1では反時計方向)に回転駆動し、1枚ずつ用紙Pを搬送路4bに送り出す。そして、給紙ローラー42の下流側近傍(搬送ローラー対45よりも上流側)に、用紙Pの到達、通過や用紙Pの重送を検知するための超音波センサー62(超音波検知部に相当)が設けられる(詳細は後述)。
【0038】
搬送路4bは、給紙部4aから供給された用紙Pを、排出トレイ44まで搬送するための通路である。搬送路4bには、装置内部で用紙Pの搬送を行うために、複数の搬送ローラー対45、46(図1において、上流側から順に符号を付す)、レジストローラー対47等が設けられ、又、搬送路4bの経路上に画像形成部5aや定着部5bが設けられる。
【0039】
印刷時、搬送ローラー対45、46は、回転して用紙Pを搬送する。又、レジストローラー対47は、画像形成部5aよりも用紙搬送方向上流側に設けられ、搬送されてきた用紙Pが突き当てられる。レジストローラー対47は、用紙Pを撓ませた後、回転駆動して用紙を搬送する。
【0040】
画像形成部5aは、画像読取部3aで得られた画像データやコンピューター200から送信される画像データに基づきトナー像を形成し、用紙Pにトナー像の転写を行って画像を用紙Pに形成する。具体的に、画像形成部5aは、感光体ドラム51と、感光体ドラム51の周囲に配設された帯電装置52、現像装置53、露光装置54、転写ローラー55、クリーニング装置56等を備える。
【0041】
感光体ドラム51は、画像形成部5aの略中心に設けられ、同図中に示す矢印方向に回転可能に支持される。帯電装置52は、感光体ドラム51の上方に設けられ、感光体ドラム51の表面を所定電位に帯電させる。露光装置54は、例えば、レーザ走査ユニットを含み、画像データに基づき、光を感光体ドラム51表面に照射して、走査露光を行い、静電潜像を形成する。現像装置53は、感光体ドラム51の右方に設けられ、トナーを帯電させ、感光体ドラム51上の静電潜像にトナーを供給して現像する。
【0042】
そして、感光体ドラム51の下方に設けられる転写ローラー55は、感光体ドラム51に圧接しニップが形成する。印刷のとき、感光体ドラム51と転写ローラー55は回転し、用紙Pを搬送する。又、レジストローラー対47から送り出された用紙Pはニップに進入し通過するとき、転写ローラー55に転写のための電圧が印加される。これにより、感光体ドラム51上に形成されたトナー像が、用紙Pに転写される。クリーニング装置56は、転写の終了後、次のトナー像形成のため、感光体ドラム51の表面に残留するトナーを清掃する。
【0043】
定着部5bは、画像形成部5aよりも用紙搬送方向下流側に設けられる。そして、定着部5bは用紙Pに転写されたトナー像の定着を行う。本実施形態における定着部5bは、主として、発熱源が内蔵される加熱ローラー57と加圧ローラー58とで構成される。加圧ローラー58と加熱ローラー57は圧接する。そして、定着時、用紙Pは、加熱ローラー57と加圧ローラー58のニップに進入し、搬送される。ニップ通過時にトナー像が加熱・加圧されることで、トナーが溶融・加熱される。その結果、トナー像が用紙Pに定着する。尚、定着後の用紙Pは、排出トレイ44に排出され、1枚の画像形成処理が完了する。
【0044】
操作パネル3b(操作部に相当)は、複合機100に対し、指示、設定のための入力を行う部分である。図1に示すように、操作パネル3bは、設定用の各種キーが示される設定画面等を表示し、タッチパネル式であり、各種入力、設定を受け付ける液晶表示部33を含む。又、設定用のハードキーとして、テンキー部34や、コピーやスキャンを実行する際に押されるスタートキー35などを備える。
【0045】
(複合機100のハードウェア構成)
次に、図2に基づき、実施形態に係る複合機100のハードウェア構成を説明する。図2は、複合機100の一例を示すブロック図である。
【0046】
図2に示すように、本体内に、複合機100全体の動作制御を行い、CPU101aや電子部品(不図示)等を含む主制御部101を有する。主制御部101は、例えば、通信制御やジョブ実行の管轄や画像処理等、各種処理を行う。主制御部101のCPU101aは中央演算処理装置として機能し、本体記憶部102に記憶され、又は入力されるプログラム、データに基づき、各種処理、演算を行い、複合機100の各部を制御する。
【0047】
本体記憶部102は、主制御部101と通信可能に接続され、例えば、RAM、HDD、フラッシュROM等の記憶装置で構成される。RAMは、揮発性のメモリであり制御用プログラムや制御用データを一時的に展開する場合や、画像データを一時的に保存しておく場合などに用いられる。HDDは、大容量の不揮発性の記憶装置であって、制御用プログラムや、画像データの保存や、使用者による複合機100の設定情報を保存する場合などに使用される。フラッシュROMは、複合機100の制御用プログラムや制御用データ等を記憶する。そして、CPU101aは、制御のため本体記憶部102からプログラムやデータを読み出して制御を行う。
【0048】
そして、図2に示すように、主制御部101は、通信部103、原稿搬送装置2、画像読取部3a、操作パネル3b、エンジン制御部7等と通信可能に接続される。そして、主制御部101は通信可能に接続される各部に対して動作指示を与える。
【0049】
通信部103は、コンピューター200(例えば、パーソナルコンピュータやサーバー)と直接又はネットワークを介して接続するためのコネクタ、ソケットを備える。又、相手方のFAX装置300と通信するための回路等(例えば、モデム)などを備える。これにより、複合機100は、コンピューター200から送信された画像データを受け取り、印刷を行うことができる(プリンタ機能)。又、画像読取部3aで読み取られた画像データをコンピューター200に送信することもできる(スキャナ機能)。又、相手方FAX装置300と画像データを送受信することもできる(FAX機能)。
【0050】
エンジン制御部7(検知処理部に相当)は、印刷を実行する部分(印刷エンジン部分:給紙部4a、搬送路4b、画像形成部5a、定着部5b等)の動作を制御するコントローラーである。主制御部101は、エンジン制御部7に対して、印刷実行の指示を出す。印刷実行指示を受けると、エンジン制御部7は印刷エンジン部分を実際に制御して、印刷を行わせる。例えば、エンジン制御部7は、各種回転体(例えば、搬送ローラー対や感光体ドラム51等)を回転させるモータのON、OFFやトナー像の形成、転写、定着等の制御を行う。
【0051】
(原稿搬送装置2のハードウェア構成)
次に、図1、図3を用いて、実施形態に係る給紙装置1を含む原稿搬送装置2を説明する。図3は、原稿搬送装置2での給紙装置1に関する部分を示すブロック図である。
【0052】
まず、原稿搬送装置2には、実際に原稿搬送装置2での原稿搬送の動作制御を行う原稿搬送制御部20(検知処理部に相当)が設けられる。例えば、原稿搬送制御部20は、CPU等の制御用の素子、回路を含む基板や、ワンチップ化された回路である。そして、原稿搬送制御部20には、原稿搬送に関するデータ、プログラム、設定値、パラメータを記憶する原稿搬送メモリー201(記憶部に相当)が設けられる。
【0053】
主制御部101からの原稿読み取り指示を受けると、原稿搬送制御部20は、原稿搬送メモリー201内のデータやプログラムを用いて、実際に原稿搬送を制御する。
【0054】
例えば、原稿搬送制御部20は、原稿サイズセンサー28a、28b、28c、28dに基づき、原稿トレイ21に載置された原稿Dのサイズを認識する。例えば、原稿トレイ21には、原稿Dを主走査方向から挟んで規制する1対の規制板21aが設けられる(図1参照。尚、図1では、手前側のもののみ可視)。1対の規制板21aは連動してスライドする。そして、例えば、一対の規制板21aのスライド機構に連動して抵抗値が切り替わる可変抵抗が、主走査方向の用紙サイズを検知するための原稿サイズセンサー28aとして設けられる。又、副走査方向での原稿サイズを検知するため、原稿トレイ21の副走査方向に複数の光センサーが原稿サイズセンサー28b〜28dとして設けられる。これらの複数の原稿サイズセンサー28a〜28dの出力は、原稿搬送制御部20に入力される。
【0055】
原稿搬送制御部20は、各原稿サイズセンサー28a〜28dの出力に基づき、原稿Dのサイズを認識する。尚、操作パネル3bで受け付けられた原稿Dの読み取りサイズを定める入力に基づき、原稿搬送制御部20は、原稿Dのサイズを認識してもよい。
【0056】
又、原稿搬送装置2には、各種回転体を回転させる駆動力を供給する原稿搬送モーター29が1又は複数設けられる(図3では便宜上1つのみ図示)。原稿搬送制御部20は、原稿搬送モーター29のON/OFFや回転速度を制御する。そして、原稿Dの給紙を開始するタイミングとなれば、原稿搬送制御部20は、ピックアップ用クラッチ22cを連結し、原稿搬送モーター29の駆動を伝達し、ピックアップローラー22を回転させる。そして、給紙完了やページ間の休止期間では、ピックアップ用クラッチ22cを開放し、原稿搬送モーター29の駆動のピックアップローラー22への伝達を切り、ピックアップローラー22を停止させる。又、原稿搬送制御部20は、レジストクラッチ24cの連結と開放を制御し、原稿搬送モーター29からの駆動伝達を制御し、原稿レジストローラー対24の回転を制御する。
【0057】
そして、原稿レジストローラー対24の上流側であって、ピックアップローラー22の下流側近傍には、超音波センサー61が設けられる。超音波センサー61は、原稿Dが送り出されているか、重送が発生していないか等を検知するために用いられる。
【0058】
そして、超音波センサーは、超音波を発信する発信部6Sと、発信部6Sからの音波を受信する受信部6Rで構成される。例えば、発信部6Sと受信部6Rは、それぞれ圧電体(例えば、圧電セラミック)を内蔵する。そして、発信部6Sは、超音波域の周波数で圧電体の電極間に電圧を加え、この電圧に対応した機械的な変形が圧電体で生じ、超音波が発信部6Sから放射される。そして、発信部6Sから放射された超音波の波動が、受信部6Rの圧電体に加わると、圧電体の電極間から波動に応じた電圧が取り出される。
【0059】
そして、発信部6Sと受信部6Rは、図1に示すように、それぞれ検知面(超音波発信面と超音波受信面)が原稿搬送路23(原稿D)を挟むように対向して配される。例えば、発信部6Sと受信部6Rは、原稿搬送方向に垂直な方向ではなく、若干角度をつけて(原稿搬送面に対して斜めに超音波が入射するように)取り付けられる。そして、発信部6Sは受信部6Rに向けて音波を発し、受信部6Rは、原稿Dを介して伝わる音波を受けて電圧を出力する。
【0060】
そして、受信部6Rの出力電圧は、信号処理部81で処理された後、原稿搬送制御部20に入力される。信号処理部81は、受信部6Rの出力電圧を処理して、受信部6Rの受信レベルを示す受信レベル信号S1を出力する。
【0061】
信号処理部81は、例えば、増幅回路8a、サンプルホールド回路8b、A/D変換部8c等を含む。信号処理部81は、受信部6Rの出力値(電圧)から、受信レベル信号S1を生成し、原稿搬送制御部20に出力する。
【0062】
増幅回路8aは、受信部6Rの出力を増幅する。そして、サンプルホールド回路8bは、例えば、コンデンサを含む。そして、サンプルホールド回路8bは、増幅回路8aの出力をコンデンサにチャージする。このように、サンプルホールド回路8bは、増幅回路8aの出力信号をDCに変換し、一定時間レベルを保持する。そして、サンプルホールド回路8bの出力は、A/D変換部8cに入力される。A/D変換部8cは、サンプルホールド回路8bの出力値(電圧値)をディジタルデータ化し、受信部6Rの超音波の受信量(受信レベル)を示す受信レベル信号S1として原稿搬送制御部20に入力する。
【0063】
信号処理部81は、受信部6Rが超音波を受信している量を示す信号である受信レベル信号S1を生成する。原稿Dが発信部6Sと受信部6Rの間に存在していれば、存在していないときよりも、受信部6Rが受信できる超音波の量は減る。又、重送があれば、複数枚の原稿Dと各原稿D間の空気層によって、原稿Dが1枚の時に比べ受信部6Rが受信する超音波の量は更に減る。そのため、超音波の受信レベル(受信量)に応じて受信部6Rの出力は変化し、受信レベル信号S1の大きさも合わせて変化する(本実施形態では、受信部6Rの出力値が小さくなれば、受信レベル信号S1の大きさも小さくなる)。そして、原稿搬送制御部20は、閾値と比較し受信レベル信号S1の大きさを確認することにより、原稿Dの到達、通過、重送等の各種の検知を行える。
【0064】
尚、重送が発生したとき、受信レベル信号S1が極端に小さくなることがある。そこで、受信レベル信号S1の大きさをある程度確保するため、別途増幅回路8aを設け、重送検知用の受信レベル信号S1の増幅率を大きくし、重送検知用と原稿Dの到達、通過検知用の受信レベル信号S1の2種類の受信レベル信号S1を生成するようにしてもよい。又、本実施形態では、超音波センサー61を用いて、原稿Dの到達、通過を検知する例を説明するが、別途、透過式の光センサー等の超音波センサー以外のセンサーを設け、超音波センサー61の設置位置への原稿Dの到達、通過を超音波センサー以外のセンサーを用いて検知してもよい。
【0065】
そして、原稿搬送制御部20は、A/D変換部8cが出力する受信レベル信号S1を任意のタイミングで(一定の周期で)取り込む。このように、原稿搬送制御部20は、受信レベル信号S1に基づき、受信部6Rの受信レベル(超音波の到達量)を把握する。尚、原稿搬送制御部20は、サンプルホールド回路8bに対して指示を与え、サンプルホールド回路8b内の電荷のディスチャージを、任意の周期、タイミングで行わせることができる。
【0066】
このように、図3に示される部分(原稿搬送制御部20、本体記憶部102、超音波センサー61、信号処理部81、ピックアップローラー22、操作パネル3b等)が原稿搬送装置2での給紙装置1といえる部分である。
【0067】
(超音波センサー61を用いた原稿搬送装置2での重送検知の概要)
次に、図4に基づき、超音波センサー61を用いた原稿搬送装置2での重送検知を説明する。図4は、超音波センサー61を用いた検知を説明するための説明図である。
【0068】
まず、図4を用いて、本実施形態の原稿搬送装置2(の給紙装置1)での原稿検知と重送検知を説明する。図4の縦軸は、受信レベル信号S1の大きさを示す。図4の横軸は、時間を示す。又、図4では、実線で、1枚の原稿搬送時の受信レベル信号S1の推移の一例を示し、破線で重送(複数枚の原稿Dの同時搬送)が生じているときの受信レベル信号S1の推移の一例を示す。
【0069】
図4に示すように、発信部6Sが発信している状態で、超音波センサー61の検知範囲に原稿Dが無ければ(発信部6Sと受信部6R間に原稿Dがなければ)、受信部6Rは最大限超音波を受信でき、受信レベル信号S1の大きさは最大となる(約1.5V程度)。
【0070】
そして、発信部6Sと受信部6Rの間に原稿Dが進入すると、受信部6Rが受信できる超音波の量が減る。そのため、受信レベル信号S1の大きさは小さくなる。そこで、原稿Dの到達、通過、検知用の閾値である用紙検知用閾値TH0が設けられる(図4においては、用紙検知用閾値TH0を約1.0V程度として例示、一点鎖線で図示)。例えば、用紙検知用閾値TH0は、原稿搬送メモリー201(本体記憶部102でもよい)に記憶され、原稿搬送の際に読み出され、原稿Dの到達、通過検知に用いられる。
【0071】
そして、図4に示すように、原稿Dの先端部(原稿Dの先頭から数センチ分)が超音波センサー61の検知領域を通過しているとき、原稿Dのばたつきが無いときに比べて、全体的に、受信レベル信号S1の大きさは低下する。これは、ピックアップローラー22から送り出された直後では、原稿Dの先端部は、原稿Dがカールしていたり、搬送により原稿端部が揺れたりするなどしてばたつき、搬送が安定しているときよりも、受信部6Rへの超音波の到達量を減らしてしまうためである。そして、原稿Dの搬送が続けられ、ある程度原稿Dが搬送されると、原稿Dのばたつきが無くなるため、受信レベル信号S1の大きさは全体的に回復する(大きくなる。)
【0072】
このように、原稿Dの端部のばたつきにより、1枚の原稿Dが超音波センサー61を通過している間、受信部6Rの出力(受信レベル信号S1の大きさ)が変動する。そこで本実施形態の原稿搬送装置2(給紙装置1)では、受信レベル信号S1の大きさに関し、2種類の重送検知用の閾値が用意される。図4では、二点鎖線で示すラインが重送検知用の閾値を示す。
【0073】
具体的に、超音波センサー61が原稿Dの先頭部を検知しているとき、原稿Dのばたつきによって、受信部6Rの超音波受信量が全体的に減る(受信レベル信号S1の大きさが全体的に小さくなる)。そこで、超音波センサー61が原稿Dの先頭部を検知しているとき、重送検知に用いる閾値を第1重送検知閾値TH1とする。一方で、原稿Dのばたつきが解消され、安定した状態の原稿Dを超音波センサー61が検知しているときに重送検知に用いる閾値を第2重送検知閾値TH2とする。
【0074】
具体的に、原稿端部のばたつきにより受信レベル信号S1の大きさが低下することに応じて、第1重送検知閾値TH1は、第2重送検知閾値TH2よりも小さく設定される。例えば、第1重送検知閾値TH1は、受信レベル信号S1の最低値(図4の例では、ほぼ0V)と、原稿Dがばたついているときの受信レベル信号S1の値(例えば、平均値)の間の範囲で定められる。又、第1重送検知閾値TH1は、原稿Dのばたつきにより最も小さくなったときの受信レベル信号S1の値よりも小さい値に設定してもよい。そして、原稿Dの端部分では、原稿搬送制御部20は、第1重送検知閾値TH1を受信レベル信号S1が下回ると、重送発生と検知、判断する。
【0075】
これにより、原稿Dのばたつきによって受信レベル信号S1の大きさが小さくなっても、原稿搬送制御部20が重送発生と誤検知することが無くなる。実際には、例えば、最低値と、原稿Dがばたついているときの受信レベル信号S1の値(例えば、平均値)の間の範囲のうち、どのあたりの値に第1重送検知閾値TH1を設定すれば、重送の誤検知を回避できるかを予めの実験により、求めておき、第1重送検知閾値TH1を定める。
【0076】
一方、原稿Dのばたつきが収まり、安定した状態の原稿Dが超音波センサー61の検知領域を通過する状態になると、受信部6Rの超音波の受信量は回復傾向(増加傾向)を示す。そのため、図4に示すように、安定した状態の原稿Dが超音波センサー61の検知領域を通過する状態になると、重送が発生していても、受信レベル信号S1の大きさが、第1重送検知閾値TH1を上回ってしまうことがある。
【0077】
そのため、重送検知用の閾値を固定し、1種類の閾値のみ用いていると、原稿Dのばたつきが少なく、安定した状態の原稿Dが超音波センサー61の検知領域を通過する場合に重送を検知できない場合が生じ得る。
【0078】
そこで、原稿Dのばたつきが収まり、安定した状態の原稿Dが超音波センサー61の検知領域を通過する状態では受信レベル信号S1の大きさが回復することに応じ、第2重送検知閾値TH2は、第1重送検知閾値TH1よりも大きく設定される。例えば、第2重送検知閾値TH2は、1枚の原稿搬送時の受信レベル信号S1の値(図4の例では約0.6V程度)と、重送発生時の受信レベル信号S1の値(図4の例では、約0.2V程度)の間の範囲で定められる(例えば、平均値)。又、第2重送検知閾値TH2は、重送発生時の受信レベル信号S1の値(図4の例では、約0.2V程度)よりも大きい値に設定する。このように、原稿Dの端部ではなく、原稿Dの搬送が安定している間、原稿搬送制御部20は、第2重送検知閾値TH2を受信レベル信号S1が下回ると、重送発生と検知、判断する。
【0079】
これにより、原稿Dのばたつきが収まり、安定した状態の原稿Dが超音波センサー61の検知領域を通過する状態で、原稿搬送制御部20は、重送発生を確実に検知できる。例えば、1枚の原稿搬送時の受信レベル信号S1の値と、重送発生時の受信レベル信号S1の値の間の範囲のうち、どのあたりの値に第2重送検知閾値TH2を設定すれば、第2重送検知閾値適用時間で重送を確実に検知できるかを予めの実験により、求めておき、第2重送検知閾値TH2を定める。
【0080】
そして、原稿Dの先頭部が超音波センサー61の検知領域を通過しているとして第1重送検知閾値TH1を適用する区間(先端部検知時間)を示すデータが、例えば、原稿搬送メモリー201(本体記憶部102でもよい)に記憶される。例えば、第1重送検知閾値TH1を適用する区間を示すデータは、原稿Dの先頭到達を検知してから(例えば、受信レベル信号S1の値が用紙検知用閾値TH0を下回ってから)の時間を示すデータとして定められる。例えば、先端部検知時間は、原稿Dの先頭から数センチ分の原稿Dの搬送に要する時間とされる。尚、原稿Dを搬送する速度(ピックアップローラー22の周速度)は予め定められているので、数センチを原稿搬送速度で除すことにより、先端部検知時間が求められる。
【0081】
又、原稿Dの後端部も先端部と同様にばたつくことがある。そこで、本実施形態の原稿搬送装置2では、原稿Dの後端部が超音波センサー61の検知領域を通過する状態となったとき、第1重送検知閾値TH1を用いて重送検知を行う。
【0082】
そして、例えば、原稿Dの先頭部が過ぎ、第2重送検知閾値TH2を適用する区間(第2重送検知閾値適用時間)を示すデータが、例えば、原稿搬送メモリー201(本体記憶部102でもよい)に記憶される。例えば、第2重送検知閾値適用時間を示すデータは、原稿サイズごとに記憶される。尚、本実施形態の原稿搬送装置2は、上述のように原稿サイズを検知する。例えば、第2重送検知閾値TH2を適用する時間を示すデータは、原稿Dの先頭部を検知してから先端部検知時間が経過した後、再び第1重送検知閾値TH1を適用するまでの間の時間を示す。
【0083】
更に、原稿搬送制御部20は、第2重送検知閾値適用時間を示すデータに基づき、適用する閾値を第2重送検知閾値TH2から第1重送検知閾値TH1に切り替える。言い換えると、第2重送検知閾値適用時間は、原稿Dの先頭部が通過してから後端部までの間隔を示す。そして、原稿搬送制御部20は、原稿Dの通過を検知するまで(受信レベル信号S1の大きさが用紙検知用閾値TH0を上回るまで)、超音波センサー61の検知領域を後端部が通過している間、第1重送検知閾値TH1を用いて重送検知を行う。従って、原稿搬送制御部20は、原稿Dを検知してから先端部検知時間と第2重送検知閾値適用時間の合計時間が経過した時点よりも後を後端部と扱う。
【0084】
(原稿搬送装置2での重送検知の流れ)
次に、図5に基づき、本実施形態の原稿搬送装置2での重送検知の流れを説明する。図5は、重送検知制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【0085】
図5のスタートは、原稿搬送制御部20が主制御部101の指示に基づき、ピックアップローラー22を回転させ、原稿搬送制御部20は、発信部6Sに超音波の発信を開始させた時点である。
【0086】
まず、原稿搬送制御部20は、信号処理部81の出力(受信レベル信号S1)の大きさを確認し、超音波センサー61に原稿Dが到達したか(原稿有りを検知できたか)を確認する(ステップ♯1)。もし、原稿到達が検知できなければ(ステップ♯1のNo)、原稿搬送制御部20は、ピックアップローラー22を回転させてから予め定められた無給紙ジャム検知時間(例えば、0.5〜1秒程度)が経過したか否かを確認し、無給紙ジャムが発生したか否かを確認する(ステップ♯2)。例えば、無給紙ジャム検知時間を示すデータは、原稿搬送メモリー201に記憶される。
【0087】
もし、無給紙ジャム検知時間が経過していれば(ステップ♯2のYes)、無給紙ジャム発生として、本フローは中止となり、ステップ♯11に移行する。一方、無給紙ジャム検知時間が経過していなければ(ステップ♯2のNo)、フローは、ステップ♯1に戻る
【0088】
一方、原稿到達を検知できれば(ステップ♯1のYes)、原稿搬送制御部20は、第1重送検知閾値TH1に基づき重送検知を行う(ステップ♯3)。そして、原稿搬送制御部20は、第1重送検知閾値TH1と受信レベル信号S1に基づき、重送が発生したかを確認する(ステップ♯4)。もし、重送が生じたならば(ステップ♯4のYes)、本フローは中止となり、ステップ♯11に移行する。一方、重送が発生していなければ(ステップ♯4のNo)、原稿搬送制御部20は、原稿有り検知からの経過時間が先端部検知時間を越えた否かを確認する(ステップ♯5)。
【0089】
もし、原稿有り検知からの経過時間が先端部検知時間を越えていなければ(ステップ♯5のNo)、フローはステップ♯3に戻る。一方、先端部検知時間が経過していれば(ステップ♯5のYes)、原稿搬送制御部20は、第2重送検知閾値TH2に基づき重送検知を行う(ステップ♯6)。
【0090】
そして、原稿搬送制御部20は、第2重送検知閾値TH2と受信レベル信号S1に基づき、重送が発生したかを確認する(ステップ♯7)。もし、重送が生じたならば(ステップ♯7のYes)、本フローは中止となり、ステップ♯11に移行する。一方、重送が発生していなければ(ステップ♯7のNo)、原稿搬送制御部20は、先端部検知時間経過から第2重送検知閾値適用時間が経過したか否かを確認する(ステップ♯8)。
【0091】
もし、第2重送検知閾値適用時間が経過していなければ(ステップ♯8のNo)、フローはステップ♯6に戻る。一方、第2重送検知閾値適用時間が経過していれば(ステップ♯8のYes)、原稿搬送制御部20は、第1重送検知閾値TH1に基づき原稿Dの後端部の重送検知を行う(ステップ♯9)。
【0092】
そして、原稿搬送制御部20は、第2重送検知閾値TH2と受信レベル信号S1に基づき、重送が発生したかを確認する(ステップ♯10)。もし、重送が生じたならば(ステップ♯10のYes)、本フローは中止となり、ステップ♯11に移行する。
【0093】
ステップ♯11では、原稿搬送制御部20は、原稿搬送動作(給紙動作)を停止させる(ステップ♯11→エンド)。例えば、原稿搬送制御部20は、超音波センサー61を停止させる。又、原稿搬送制御部20は、原稿搬送モーター29を停止させ、ピックアップローラー22等を停止させる。又、もし、無給紙ジャムが生じていれば、原稿搬送制御部20は、操作パネル3bに無給紙ジャム発生を報知させる。
【0094】
一方、重送が発生していなければ(ステップ♯10のNo)、原稿搬送制御部20は、受信レベル信号S1と用紙検知用閾値TH0に基づき、原稿Dが通過したか否かを確認する(ステップ♯12)。もし、原稿Dが通過していなければ(ステップ♯12のNo)、フローは、ステップ♯9に戻る。一方、原稿Dが通過すれば(ステップ♯12のYes)、本フローは終了する(エンド)
【0095】
(超音波センサー62を用いた給紙部4aでの重送検知)
次に、図1、図6を用いて、実施形態に係る超音波センサー62を用いた機内の給紙部4aでの重送検知を説明する。図6は、給紙部4aでの給紙装置1に関する部分を示すブロック図である。
【0096】
まず、複合機100内には、印刷エンジン部分の動作制御を行うエンジン制御部7が設けられる。例えば、エンジン制御部7は、エンジンCPU71や印刷制御に関するデータ、プログラム、設定値、パラメータを記憶するエンジンメモリー72(記憶部に相当)が設けられる。主制御部101からの印刷指示を受けると、エンジン制御部7は、エンジンメモリー72内のデータやプログラムを用いて、給紙部4a内の用紙Pの供給、搬送を制御する。
【0097】
例えば、エンジン制御部7は、用紙サイズセンサー47a、47bに基づき、給紙部4a内の用紙載置台43に載置された用紙Pのサイズを認識する。例えば、用紙載置台43には、用紙Pを主走査方向で挟んで規制する1対の規制板43aや後端を規制する後端規制板43bが設けられる(図1参照。尚、図1では、手前側のもののみ可視)。各規制板はスライド可能である。そして、各規制板にはスライド量に連動して抵抗値が切り替わる可変抵抗を含み、用紙サイズを検知するための用紙サイズセンサー47a、47bがそれぞれ設けられる。これらの用紙サイズセンサー47a、47bの出力は、エンジン制御部7に入力される。エンジン制御部7は、各用紙サイズセンサー47a、47bの出力に基づき、給紙部4a内の用紙Pのサイズを認識する。尚、操作パネル3bでの給紙部4aに収容した用紙サイズを定める入力に基づき、エンジン制御部7は、用紙サイズを認識してもよい。
【0098】
又、エンジン制御部7は、給紙部4aの給紙ローラー42のON/OFFや回転速度を制御する。そして、給紙開始タイミングとなれば、エンジン制御部7は、給紙ローラー42を回転させる。そして、エンジン制御部7は、給紙完了やページ間の休止期間では、給紙ローラー42を停止させる。
【0099】
そして、搬送ローラー対45の上流側であって、給紙ローラー42の下流側近傍には、超音波センサー62が設けられる。超音波センサー62は、用紙Pが給紙部4aから送り出されているか、重送が発生していないか等を検知するために用いられる。そして、超音波センサー62は、超音波センサー61と同様、超音波を発信する発信部6Sと、発信部6Sからの音波を受信する受信部6Rで構成される。言い換えると、超音波センサー62は、超音波センサー61と同等のものを用いればよく。上述の超音波センサー61の説明は超音波センサー62にもあてはまる。そして、発信部6Sと受信部6Rは、それぞれ検出面が給紙部4aの出口部分の搬送路4bを挟むように対向して配される(図1参照)。
【0100】
そして、原稿搬送装置2と同様に、給紙部4aに設けられた受信部6Rの出力電圧を処理する信号処理部82が設けられる。信号処理部82は、上述の原稿搬送装置2の信号処理部81と同様でよい。上述の信号処理部81の説明は信号処理部82にもあてはまる。そこで、信号処理部82については、信号処理部81の説明を準用するものとして説明を省略し、信号処理部82に含まれる部分(増幅回路8a、サンプルホールド回路8b、A/D変換部8c)については、同様の符号を用いて、以下説明する。
【0101】
そして、信号処理部82は、信号処理部81と同様に、超音波センサー62の受信部6Rの出力値(電圧)から、受信レベル信号S2を生成し、エンジン制御部7に出力する。そして、エンジン制御部7は、信号処理部82が出力する受信レベル信号S2に基づき、原稿搬送装置2の場合と同様に、給紙部4aから供給された用紙Pの到達、通過、重送等の各種の検知を行うことができる。
【0102】
そして、図4を用いた上述の説明は、給紙部4aから給紙された用紙Pにも当てはまる。給紙部4aから給紙された用紙Pの先端部がばたつくことにより、用紙Pの先端部(用紙Pの先頭から数センチ分)が超音波センサー62の検知領域を通過しているとき、原稿のばたつきが無いときに比べて、全体的に、受信レベル信号S2の大きさは低下する。又、原稿の搬送が続けられ、ある程度用紙Pが搬送されて用紙Pのばたつきが無くなると、受信レベル信号S2の大きさは全体的に回復する(大きくなる)点も給紙部4aから給紙された用紙Pに当てはまる。
【0103】
そこで、本実施形態のエンジン制御部7は、受信レベル信号S2の大きさに関し、原稿搬送制御部20と同様に2種類の重送検知用の閾値(便宜上、以下では、「給紙部用の第1重送検知閾値TH1」と「給紙部用の第2重送検知閾値TH2」と称する)を用いて重送検知を行う。又、給紙部用の第1重送検知閾値TH1と第2重送検知閾値TH2の大小関係や定め方は、原稿搬送装置2の場合と同様でよい。
【0104】
具体的に、給紙部用の第1重送検知閾値TH1は、給紙部用の第2重送検知閾値TH2よりも小さく設定される。又、給紙部用の第1重送検知閾値TH1は、受信レベル信号S2の最低値(超音波を受信していないときの値)と、用紙Pがばたついているときの受信レベル信号S2の値(例えば、平均値)の間の範囲で定められる。又、給紙部用の第1重送検知閾値TH1は、用紙Pのばたつきにより受信レベル信号S2が最も小さくなったときの値よりも、小さい値に設定してもよい。
【0105】
一方、用紙Pのばたつきが収まり、安定した状態の用紙Pが超音波センサー62の検知領域を通過する状態になると、エンジン制御部7は、給紙部用の第2重送検知閾値TH2を用いて重送検知を行う。原稿搬送装置2と同様に、給紙部用の第2重送検知閾値TH2は、給紙部用の第1重送検知閾値TH1よりも大きく設定される。又、例えば、給紙部用の第2重送検知閾値TH2は、第2重送検知閾値適用時間での1枚の用紙搬送時の受信レベル信号S2の値と、重送発生時の受信レベル信号S2の値の間の範囲で定められる。又、給紙部用の第2重送検知閾値TH2は、重送発生時の受信レベル信号S2の値よりも大きい値に設定してもよい。
【0106】
又、エンジンメモリー72(本体記憶部102でもよい)に給紙部用の先端部検知時間や、給紙部用の第2重送検知閾値適用時間を示すデータを記憶させておき、給紙部用の先端部検知時間や給紙部用の第2重送検知閾値適用時間に基づき、先端部と後端部では、給紙部用の第1重送検知閾値TH1を用い、第2重送検知閾値適用時間では、給紙部用の第2重送検知閾値TH2を用いる点も同様である。
【0107】
このように、図6に示される部分(エンジン制御部7、本体記憶部102、超音波センサー62、信号処理部82、給紙ローラー42、操作パネル3b等)が画像形成装置内の給紙装置1といえる部分である。
【0108】
(給紙部4aでの重送検知の流れ)
次に、図7に基づき、本実施形態の給紙部4aでの重送検知の流れを説明する。図7は、給紙部4aでの重送検知制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【0109】
図7のスタートは、エンジン制御部7が主制御部101の指示に基づき、給紙ローラー42を回転させ、エンジン制御部7は、発信部6Sに超音波の発信を開始させた時点である。
【0110】
まず、エンジン制御部7は、信号処理部82の出力(受信レベル信号S2)の大きさを確認し、超音波センサー62に用紙Pが到達したか(用紙有りを検知できたか)を確認する(ステップ♯21)。もし、用紙到達が検知できなければ(ステップ♯21のNo)、エンジン制御部7は、給紙ローラー42を回転させてから予め定められた無給紙ジャム検知時間が経過したため無給紙ジャムが発生したか否かを確認する(ステップ♯22)。尚、無給紙ジャム検知時間を示すデータは、エンジンメモリー72に記憶される。
【0111】
もし、無給紙ジャム検知時間が経過していれば(ステップ♯22のYes)、無給紙ジャム発生として、本フローは中止となり、ステップ♯31に移行する。一方、無給紙ジャム検知時間が経過していなければ(ステップ♯22のNo)、フローは、ステップ♯21に戻る
【0112】
一方、用紙到達を検知できれば(ステップ♯21のYes)、エンジン制御部7は、給紙部用の第1重送検知閾値TH1に基づき重送検知を行う(ステップ♯23)。そして、エンジン制御部7は、給紙部用の第1重送検知閾値TH1と受信レベル信号S2に基づき、重送が発生したかを確認する(ステップ♯24)。もし、重送が生じたならば(ステップ♯24のYes)、本フローは中止となり、ステップ♯31に移行する。一方、重送が発生していなければ(ステップ♯24のNo)、エンジン制御部7は、用紙検知時点から先端部検知時間が経過したか否かを確認する(ステップ♯25)。
【0113】
もし、先端部検知時間が経過していなければ(ステップ♯25のNo)、フローはステップ♯3に戻る。一方、先端部検知時間が経過していれば(ステップ♯25のYes)、エンジン制御部7は、給紙部用の第2重送検知閾値TH2に基づき重送検知を行う(ステップ♯26)。
【0114】
そして、エンジン制御部7は、給紙部用の第2重送検知閾値TH2と受信レベル信号S2に基づき、重送が発生したかを確認する(ステップ♯27)。もし、重送が生じたならば(ステップ♯27のYes)、本フローは中止となり、ステップ♯31に移行する。一方、重送が発生していなければ(ステップ♯27のNo)、エンジン制御部7は、先端部検知時間が経過してから第2重送検知閾値適用時間が経過したか否かを確認する(ステップ♯28)。
【0115】
もし、第2重送検知閾値適用時間が経過していなければ(ステップ♯28のNo)、フローはステップ♯26に戻る。一方、第2重送検知閾値適用時間が経過していれば(ステップ♯28のYes)、エンジン制御部7は、給紙部用の第1重送検知閾値TH1に基づき用紙Pの後端部の重送検知を行う(ステップ♯29)。
【0116】
そして、エンジン制御部7は、給紙部用の第1重送検知閾値TH1と受信レベル信号S2に基づき、重送が発生したかを確認する(ステップ♯30)。もし、重送が生じたならば(ステップ♯30のYes)、本フローは中止となり、ステップ♯31に移行する。
【0117】
ステップ♯31では、エンジン制御部7は、給紙動作等の印刷動作を停止させる(ステップ♯31→エンド)。例えば、エンジン制御部7は、画像形成部5aでのトナー像形成を停止させ、給紙部4aや搬送路4bでの用紙搬送を停止させる。もし、無給紙ジャムが生じていれば、エンジン制御部7は、操作パネル3bに無給紙ジャム発生を報知させる。
【0118】
一方、重送が発生していなければ(ステップ♯30のNo)、エンジン制御部7は、受信レベル信号S2と給紙部用の用紙検知用閾値TH0に基づき、用紙Pが通過したか否かを確認する(ステップ♯32)。もし、用紙Pが通過していなければ(ステップ♯32のNo)、フローは、ステップ♯9に戻る。一方、用紙Pが通過すれば(ステップ♯32のYes)、本フローは終了する(エンド)
【0119】
(第1重送検知閾値TH1と第2重送検知閾値TH2の設定)
次に、図8を用いて、原稿搬送装置2や画像形成装置の給紙部4aでの第1重送検知閾値TH1と第2重送検知閾値TH2の設定手法の一例を説明する。図8は、第1重送検知閾値TH1と第2重送検知閾値TH2の設定の流れの一例を示すフローチャートである。
【0120】
受信部6Rの超音波の受信レベルは、用紙(上述の原稿Dや用紙P、以下、同様)の厚さや設置環境(例えば、標高、平均湿度等)によって変化する。一般的に、薄い用紙よりも、厚い用紙の方が受信部6Rが受信する超音波の量は少なくなる。しかし、どのような用紙を用いるかは、使用者による。
【0121】
又、標高によって、超音波を伝える空気の密度に差が生ずる。メキシコの高地のような標高が高いところと、海抜数メートルでは、空気の密度の差により、同じ厚さの用紙を通過させても、受信レベル信号S1、S2の大きさに誤差とは言えないほどの差が生ずることがある。しかし、どのような環境に複合機100を設置するかは、使用者による。
【0122】
そのため、複合機100に用いる用紙の厚さや設置環境にあわせて重送検知のための閾値を設定したほうが、より正確に重送検知を行える場合がある。そこで、本実施形態の複合機100では、使用者が主に使用する用紙や設置環境にあわせて、第1重送検知閾値TH1と第2重送検知閾値TH2を設定可能とする。これにより、使用する用紙や設置環境を問わず、正確な重送検知を行うことができる。以下、各重送検知閾値の設定の流れの一例を説明する。
【0123】
まず、使用者は、各重送検知閾値の設定を行うとき、操作パネル3bに入力を行って、複合機100のモードを、各重送検知閾値を設定するための閾値設定モードとする。尚、複合機100の設置時の設定や、メンテナンスの一環として、複合機100の設置やメンテナンスを行うサービスマンが各重送検知閾値の設定を実行するようにしてもよい。又、閾値設定モードとする前に、使用者やサービスマンは、原稿トレイ21や用紙載置台43に頻繁に使用する用紙をセッティングしておく。
【0124】
そして、図8のスタートは、複合機100のモードが閾値設定モードと設定された時点である。閾値設定モードとなった後、原稿搬送制御部20はピックアップローラー22を回転させて原稿トレイ21から原稿Dの給紙を開始させる(ステップ♯41)。
【0125】
そして、原稿搬送制御部20は、原稿Dの先端部の通過中で最も小さい受信レベル信号S1の値を認識し、各受信レベル信号S1の最低値(例えば、ほぼ0V)と原稿Dの先端部の通過中で最も小さい受信レベル信号S1の値の範囲で、原稿搬送装置2用の第1重送検知閾値TH1を定める(ステップ♯42)。尚、超音波センサー61と超音波センサー62が全く同様であり、信号処理部81と信号処理部82が全く同様であれば、原稿搬送制御部20かエンジン制御部7の何れか一方が第1重送検知閾値TH1を求め、第1重送検知閾値TH1を共用してもよい(第2重送検知閾値TH2も同様)。
【0126】
次に、原稿搬送制御部20は、第2重送検知閾値適用時間での受信レベル信号S1の値を取得し(例えば、複数点の平均値)、第2重送検知閾値適用時間での受信レベル信号S1の値と各受信レベル信号S1の最低値(例えば、ほぼ0V)の範囲で原稿搬送装置2用の第2重送検知閾値TH2を定める(ステップ♯43)。そして、原稿搬送制御部20は、求めた原稿搬送装置2用の第1重送検知閾値TH1や第2重送検知閾値TH2を原稿搬送メモリー201や本体記憶部102に記憶させる(ステップ♯44)。これにより、使用する用紙や複合機100の設置環境に応じた閾値への更新がなされる。
【0127】
続いて、エンジン制御部7は、給紙ローラー42を回転させて用紙載置台43から用紙の給紙を開始させる(ステップ♯45)。
【0128】
そして、エンジン制御部7は、用紙の先端部の通過中で最も小さい受信レベル信号S2の値を認識し、各受信レベル信号S2の最低値(例えば、ほぼ0V)と用紙の先端部の通過中で最も小さい受信レベル信号S2の値の範囲で、給紙部用の第1重送検知閾値TH1を定める(ステップ♯46)。
【0129】
次に、エンジン制御部7は、第2重送検知閾値適用時間での受信レベル信号S2の値を取得し(例えば、複数点の平均値)、第2重送検知閾値適用時間での受信レベル信号S2の値と各受信レベル信号S2の最低値(例えば、ほぼ0V)の範囲で、給紙部用の第2重送検知閾値TH2を定める(ステップ♯47)。そして、エンジン制御部7は、求めた給紙部用の第1重送検知閾値TH1や第2重送検知閾値TH2をエンジンメモリー72や本体記憶部102に記憶させる(ステップ♯48)。そして、各重送検知閾値の設定処理が完了する(エンド)これにより、複合機100の使用環境や設置環境に合わせた第1重送検知閾値TH1や第2重送検知閾値TH2を設定し、正確、適切な重送検知を行うことができる。
【0130】
このようにして、本実施形態の給紙装置1は、1又は複数の用紙(原稿Dや用紙P)が載置される載置部(原稿トレイ21、用紙載置台43)と、載置部に載置された用紙を送り出す給紙体(ピックアップローラー22、給紙ローラー42)と、超音波を発する発信部6Sと、発信部6Sが発した超音波を受信し超音波の受信量に応じて出力が変化する受信部6Rを含み、発信部6Sと受信部6Rは用紙搬送経路を挟むように配され、給紙体よりも用紙搬送方向下流側に設けられる超音波検知部(超音波センサー61、超音波センサー62)と、受信部6Rの出力を処理して受信レベルを示す信号(受信レベル信号S1、受信レベル信号S2)を出力する信号処理部(信号処理部81、信号処理部82)と、用紙の先端が超音波検知部に到達して予め定められた先端部検知時間が経過するまでの間、信号の値と予め定められた第1重送検知閾値TH1に基づき重送発生を検知し、先端部検知時間が経過すると、信号の値と予め定められた第2重送検知閾値TH2に基づき重送発生を検知する検知処理部(原稿搬送制御部20、エンジン制御部7)と、第2重送検知閾値TH2と、第2重送検知閾値TH2よりも、受信部6Rが超音波を受信していないときの信号の値に近づくように定められた第1重送検知閾値TH1を記憶する本体記憶部102(本体記憶部102、原稿搬送メモリー201、エンジンメモリー72)、を含む
【0131】
これにより、用紙の先端部検知中の閾値は、安定した状態の用紙が超音波検知部(超音波センサー61、超音波センサー62)の検知領域を通過している状態のときの閾値(第2重送検知閾値TH2)と異なる。言い換えると、用紙の先端部分を検知して用紙のばたつきにより受信部6Rの受信レベルが全体的に低下している間、重送検知用の閾値は、ばたつきによる受信部6Rの受信レベル低下の影響を考慮した閾値(第1重送検知閾値TH1)とされる。従って、用紙のばたつきにより受信部6Rの受信レベルが低下しても、重送と誤検知され難くなる。そして、超音波検知部が用紙の先端部を検知している段階で(用紙が搬送されてから早い段階で)、重送の発生を確実に検知することができる。又、用紙の先端部での検知結果を無視せず、用紙の先端部を超音波検知部が検知している段階で、速やかに重送を検知することができる。従って、重送による用紙へのダメージを無くすことができる。一方、先端部検知時間が過ぎ、受信部6Rの受信レベルの全体的な回復にあわせて、重送検知用の閾値は、第1重送検知閾値TH1から第2重送検知閾値TH2に変更される。従って、先端部検知時間が過ぎて、受信部6Rの受信レベルが全体的に回復したとき、重送の未検知を防ぐことができ、正確に重送の発生を検知することができる。
【0132】
又、本体記憶部102(本体記憶部102、原稿搬送メモリー201、エンジンメモリー72)は、受信部6Rが超音波を受信していないときの信号(受信レベル信号S1、受信レベル信号S2)の値と、1枚の用紙を通過させたときの先端部検知時間で検知された信号の値との範囲内で定められた第1重送検知閾値TH1を記憶し、受信部6Rが超音波を受信していないときの信号の値と、1枚の用紙を通過させたときの第2重送検知閾値TH2を用いて重送発生を検知する予め定められた時間(第2重送検知閾値適用時間)で検知された信号の値との範囲内で定められた第2重送検知閾値TH2を記憶する。これにより、信号処理部(信号処理部81、信号処理部82)の出力値に基づき、適切な第1重送検知閾値TH1、第2重送検知閾値TH2を定めることができる。従って、用紙搬送の状況を問わず、正確に重送発生を検知することができる。
【0133】
用紙のばたつきは、用紙の後端部でも生じ得る。そこで、検知処理部(原稿搬送制御部20、エンジン制御部7)は、超音波検知部(超音波センサー61、超音波センサー62)が用紙の後端部を検知するまでとして第2重送検知閾値TH2を用いて重送発生を検知する予め定められた時間(第2重送検知閾値適用時間)が経過するまで第2重送検知閾値TH2を用いて重送発生を検知し、時間経過後、第1重送検知閾値TH1を用いて重送発生を検知する。これにより、用紙の後端部のばたつきにより、受信部6Rの受信レベルが全体的に再び低下しても、重送検知用の閾値は、ばたつきによる受信部6Rの受信レベル低下の影響を考慮した閾値に変更される。従って、用紙の後端部を超音波検知部が検知しているとき(超音波検知部の検知領域を用紙の後端部が通過しているとき)でも、重送発生を正確に検知することができる。
【0134】
又、第1重送検知閾値TH1と第2重送検知閾値TH2の設定指示を受け付ける操作部(操作パネル3b)を含み、操作部が第1重送検知閾値TH1と第2重送検知閾値TH2の設定指示を受け付けると給紙体(ピックアップローラー22、給紙ローラー42)は、用紙を搬送し、検知処理部(原稿搬送制御部20、エンジン制御部7)は、用紙の先端が到達してから予め定められた先端部検知時間が経過するまでの間に得られた信号(受信レベル信号S1、受信レベル信号S2)の値に基づき第1重送検知閾値TH1を定め、先端部検知時間が経過した後に得られた信号の値に基づき第2重送検知閾値TH2を定め、本体記憶部102(本体記憶部102、原稿搬送メモリー201、エンジンメモリー72)は、記憶している第1重送検知閾値TH1と第2重送検知閾値TH2を検知処理部が定めた値に更新する。これにより、使用者は、所望の用紙を搬送させることにより、所望の用紙に適した第1重送検知閾値TH1と第2重送検知閾値TH2を設定することができる。
【0135】
又、検知処理部(原稿搬送制御部20、エンジン制御部7)が重送を検知したとき、給紙体(ピックアップローラー22、給紙ローラー42)は、給紙動作を停止する。これにより、重送によって用紙が破れたり、折れたりすることを防ぐことができ、又、複数の用紙にまたがって1ページを印刷するといった重送により生ずる不都合の発生を防ぐことができる。
【0136】
又、原稿搬送装置2は、本実施形態の給紙装置1を含む。これにより、原稿搬送装置2から送り出される原稿での重送の発生を正確に検知することができる。又、超音波検知部(超音波センサー61)が原稿の先端部を検知している段階でも、正確に重送の有無を検知することができる。又、用紙搬送が開始されてから早い段階で重送の発生を検知することができる。従って、ステープル針で止められた原稿や吸着している原稿を搬送しても、原稿の破れやシワを防ぐことができる。又、原稿重送による原稿搬送を行う部材の破損を防ぐことができる。
【0137】
又、画像形成装置(例えば、複合機100)は、本実施形態の給紙装置1を含む。これにより、画像形成装置に設けられた給紙装置1から送り出される用紙での重送の発生を正確に検知することができる。又、超音波検知部(超音波センサー62)が用紙の先端部を検知している段階でも、正確に重送の有無を検知することができる。又、用紙搬送が開始されてから早い段階で重送の発生を検知することができる。従って、例えば、重送により、複数の用紙に跨った印刷や、用紙の詰まり、破れ、シワを防ぐことができる。また、用紙重送によって、搬送を行う部材を破損させてしまうこともない。
【0138】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、給紙装置、原稿搬送装置、画像形成装置などで利用可能である。
【符号の説明】
【0140】
100 複合機(画像形成装置) 1 給紙装置
2 原稿搬送装置 20 原稿搬送制御部(検知処理部)
201 原稿搬送メモリー(記憶部) 21 原稿トレイ(載置部)
22 ピックアップローラー(給紙体) 3b 操作パネル(操作部)
42 給紙ローラー(給紙体) 43 用紙載置台(載置部)
61 超音波センサー(超音波検知部) 62 超音波センサー(超音波検知部)
6S 発信部 6R 受信部
7 エンジン制御部(検知処理部) 72 エンジンメモリー(記憶部)
81 信号処理部 82 信号処理部
102 本体記憶部 D 原稿(用紙の一種)
P 用紙 S1 受信レベル信号
S2 受信レベル信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の用紙が載置される載置部と、
前記載置部に載置された用紙を送り出す給紙体と、
超音波を発する発信部と、前記発信部が発した超音波を受信し超音波の受信量に応じて出力が変化する受信部を含み、前記発信部と前記受信部は用紙搬送経路を挟むように配され、前記給紙体よりも用紙搬送方向下流側に設けられる超音波検知部と、
前記受信部の出力を処理して受信レベルを示す信号を出力する信号処理部と、
用紙の先端が前記超音波検知部に到達して予め定められた先端部検知時間が経過するまでの間、前記信号の値と予め定められた第1重送検知閾値に基づき重送発生を検知し、前記先端部検知時間が経過すると、前記信号の値と予め定められた第2重送検知閾値に基づき重送発生を検知する検知処理部と、
前記第2重送検知閾値と、前記第2重送検知閾値よりも、前記受信部が超音波を受信していないときの前記信号の値に近づくように定められた前記第1重送検知閾値を記憶する記憶部、を含むことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記受信部が超音波を受信していないときの前記信号の値と、1枚の用紙を通過させたときの前記先端部検知時間で検知された前記信号の値との範囲内で定められた前記第1重送検知閾値を記憶し、
前記受信部が超音波を受信していないときの前記信号の値と、1枚の用紙を通過させたときの前記第2重送検知閾値を用いて重送発生を検知する予め定められた時間で検知された前記信号の値との範囲内で定められた前記第2重送検知閾値を記憶することを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記検知処理部は、前記超音波検知部が用紙の後端部を検知するまでとして前記第2重送検知閾値を用いて重送発生を検知する予め定められた時間が経過するまで第2重送検知閾値を用いて重送発生を検知し、
前記時間経過後、前記第1重送検知閾値を用いて重送発生を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記第1重送検知閾値と前記第2重送検知閾値の設定指示を受け付ける操作部を含み、
前記操作部が前記第1重送検知閾値と前記第2重送検知閾値の設定指示を受け付けると前記給紙体は、用紙を搬送し、
前記検知処理部は、用紙の先端が到達してから前記予め定められた先端部検知時間が経過するまでの間に得られた前記信号の値に基づき前記第1重送検知閾値を定め、前記先端部検知時間が経過した後に得られた前記信号の値に基づき前記第2重送検知閾値を定め、
前記記憶部は、記憶している前記第1重送検知閾値と前記第2重送検知閾値を前記検知処理部が定めた値に更新することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の給紙装置。
【請求項5】
前記検知処理部が重送を検知したとき、前記給紙体は、給紙動作を停止することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の給紙装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の給紙装置を含むことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の給紙装置を含むことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−82539(P2013−82539A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223880(P2011−223880)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】