説明

給送用カセット、自動給送装置

【課題】 記録装置に対して略垂直に立てた状態或いは斜めに傾けた姿勢で装着される給送用カセットにおいて、給送用カセットを記録装置に装着した状態で長期間放置した際に、給送用カセットに収容されている被記録材の先端部分がカールするように変形してしまうことを防止しつつ、記録装置に装着した状態のままでも被記録材の補充を可能にする。
【解決手段】 給送用カセット10に収容されている記録紙Pは、ホッパ16が進出した状態ではホッパ16で押動されて給送用ローラ71に当接するとともにホッパ16の記録紙Pを支持している面と給送用ローラ71との間に挟持され、ホッパ16が退避した状態では給送用ローラ71から離間する。ホッパ16は、開閉蓋12の閉動作に連動して進出し、開閉蓋12の開動作に連動して退避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給送用ローラの回転により被記録材を記録装置の記録実行手段へ向けて一ずつ自動給送する自動給送装置及び該自動給送装置に装着され、前記記録実行手段へ向けて自動給送される被記録材を収容する給送用カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙等の被記録材に画像等の記録を実行するインクジェットプリンタ等の記録装置には、記録装置の記録実行手段へ被記録材を一ずつ自動給送する自動給送装置が搭載されているのが通常である。一般的な自動給送装置は、給送用カセット等に収容されて積重されている複数の被記録材が一ずつ分離されながら給送用ローラの回転により給送される構成を有している。
【0003】
この給送用カセットは、一般的に、矩形の箱状の形態を有しているとともに、記録装置に装着された状態では、収容されている被記録材が外部に露出しない略密閉された状態となって、収容されている被記録材が埃や紫外線等から保護される。そのため、この給送用カセットを装着して使用する記録装置は、給送用カセットにまとまった数の被記録材を一度に収容して装着した後は、そのまま長期間継続して使用できるという利点がある。つまり、給送用カセットを装着して被記録材を供給する記録装置においては、記録装置を使用する度に被記録材を自動給送装置にセットし、使用後に残った未使用の被記録材を自動給送装置から取り出す、といった煩雑な操作が不要であるというメリットがある。そして、給送用カセットを装着して使用する記録装置は、従来は給送用カセットが記録装置に対して略水平に装着されるように構成されているものが一般的であった(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ところが、近年は、記録装置の内部構造やデザイン上の都合、操作性の向上、小型化等の観点から、給送用カセットが記録装置に対して略垂直に立てた状態、或いは斜めに傾けた姿勢で装着される記録装置が登場しつつある。このような記録装置においては、記録装置に装着した状態の給送用カセットの姿勢が略水平でないことに起因して、従来にない課題が生じていた。
【0005】
つまり、このような記録装置においては、被記録材を収容した給送用カセットを記録装置に装着した状態では、収容されている被記録材が自重によって傾斜方向へ移動し、傾斜方向の先端が給送用カセットの内壁面に自重で押し付けられて当接した状態となる。そのため、被記録材を収容した給送用カセットを記録装置に装着した状態で長期間放置すると、被記録材の自重によって、内壁面に当接している先端部分がカールするように変形してしまう虞があった。
【0006】
このような課題を解決可能な従来技術の一例としては、例えば、縦置き(略垂直に立てた状態)で使用される給紙トレイ(給送用カセット)であって、用紙(被記録材)を積重方向へ押圧する用紙押さえ部材を回動自在に設けた給紙トレイが公知である(例えば、特許文献2を参照)。
【0007】
このような従来技術においては、給紙トレイを記録装置に装着した状態において、収容されている用紙が給紙トレイの底面と用紙押さえ部材とで挟持されるので、収容されている用紙が自重によって傾斜方向へ移動してしまうことが回避でき、用紙先端が自重によってカールするように変形してしまう虞を低減させることができる。また、給紙トレイに用紙を補充する際には、ユーザは、給紙トレイを記録装置から取り外した後、給紙トレイの用紙押さえ部材を回動させれば、給紙トレイに用紙を補充することができる。
【特許文献1】特開2005−82323号公報
【特許文献2】特開2002−128287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献2に開示されている給紙トレイは、記録装置から給紙トレイを引っ張り出して取り外した後、用紙押さえ部材を手動操作で回動させた状態にしなければ、給紙トレイに用紙を補充することができない。つまり、上記の特許文献2に開示されている給紙トレイは、記録装置に装着した状態のままでは内部に用紙を補充することができないため、用紙を補充する度に記録装置から給紙トレイを取り外さなければならないという煩わしさがあり、利便性の面で課題があった。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、記録装置に対して略垂直に立てた状態或いは斜めに傾けた姿勢で装着される給送用カセットにおいて、給送用カセットを記録装置に装着した状態で長期間放置した際に、給送用カセットに収容されている被記録材の先端部分がカールするように変形してしまうことを防止しつつ、記録装置に装着した状態のままでも被記録材の補充を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、給送用ローラの回転により被記録材を記録装置の記録実行手段へ向けて一ずつ自動給送する自動給送装置に装着され、前記記録実行手段へ向けて自動給送される被記録材を収容する給送用カセットであって、前記給送用カセットに収容されている被記録材を底面側から支持するとともに前記給送用ローラへ向けて進出及び退避可能に配設されたホッパと、前記ホッパを進出方向へ付勢する付勢手段と、前記自動給送装置に装着した状態で被記録材を収容するための開口を開閉可能に設けられた開閉蓋とを備え、前記給送用カセットに収容されている被記録材は、前記ホッパが進出した状態では前記ホッパで押動されて前記給送用ローラに当接するとともに前記ホッパの被記録材支持面と前記給送用ローラとの間に挟持され、前記ホッパが退避した状態では前記給送用ローラから離間し、前記ホッパは、前記開閉蓋の閉動作に連動して進出し、前記開閉蓋の開動作に連動して退避する、ことを特徴とした給送用カセットである。
【0011】
給送用カセットを自動給送装置に装着した状態において、開閉蓋が閉じた状態のときは、その開閉蓋の閉動作に連動して進出したホッパが収容されている被記録材を押動して給送用ローラに当接させるので、給送用ローラの回転による自動給送が可能な状態となる。また、その状態において、収容されている被記録材は、進出したホッパの被記録材支持面と給送用ローラとで挟持されるので、その自重によって傾斜方向へ移動することが抑制される。したがって、給送用カセットの内壁面に当接している被記録材の先端が、その被記録材の自重によって内壁面に押し付けられてカールするように変形してしまうことを防止することができる。
【0012】
他方、給送用カセットを自動給送装置に装着した状態において、開閉蓋が開いた状態のときは、その開閉蓋の開動作に連動してホッパが退避し、収容されている被記録材が給送用ローラから離間する。したがって、開閉蓋を開くことによって、給送用カセットを自動給送装置に装着した状態のままで、前記開口を通じて給送用カセット内に被記録材を補充することができる。
【0013】
これにより、本発明の第1の態様に記載の給送用カセットによれば、記録装置に対して略垂直に立てた状態或いは斜めに傾けた姿勢で装着される給送用カセットにおいて、給送用カセットを記録装置に装着した状態で長期間放置した際に、給送用カセットに収容されている被記録材の先端部分がカールするように変形してしまうことを防止しつつ、記録装置に装着した状態のままでも被記録材を補充することが可能になるという作用効果が得られる。
【0014】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様に記載の給送用カセットにおいて、前記ホッパの被記録材支持面と対面する挟持面を備え、前記給送用カセットに収容されている被記録材は、前記ホッパが進出した状態では前記ホッパの被記録材支持面と前記給送用ローラ及び前記挟持面との間に挟持され、前記ホッパが退避した状態では前記給送用ローラ及び前記挟持面から離間する、ことを特徴とした給送用カセットである。
【0015】
本発明の第2の態様に記載の給送用カセットは、開閉蓋が閉じた状態において、収容されている被記録材が、進出したホッパの被記録材支持面と給送用ローラ及び挟持面との間で挟持される。すなわち、給送用カセットに収容されている被記録材は、開閉蓋を閉じた状態では、ホッパの被記録材支持面と給送用ローラとで挟持される同時に、ホッパの被記録材支持面と挟持面とでも挟持されるので、より強固に保持されることになる。
【0016】
したがって、本発明の第2の態様に記載の給送用カセットによれば、前述した第1の態様に記載の発明による作用効果に加えて、収容されている被記録材が自重によって傾斜方向へ移動することをより確実に抑制することができるので、給送用カセットの内壁面に当接している被記録材の先端がカールするように変形してしまうことをより確実に防止することができるという作用効果が得られる。
【0017】
本発明の第3の態様は、前述した第1の態様又は第2の態様に記載の給送用カセットにおいて、前記開閉蓋を所定方向へスライドさせる第1開動作とその後に前記開閉蓋を回動させる第2開動作とにより前記開閉蓋が開いた状態となり、前記第1開動作に連動して前記ホッパが退避し、前記第2開動作後も前記ホッパの退避状態が維持され、前記第2開動作後の前記開閉蓋のスライド位置及び回動位置が保持される、ことを特徴とした給送用カセットである。
【0018】
まず、開閉蓋を所定方向へスライドさせる第1開動作に連動してホッパが退避する。ホッパは、付勢手段によって進出方向へ付勢されているので、開閉蓋の第1開動作に連動したホッパの退避動作は、この付勢手段の付勢力に抗して行われることになる。つまり、開閉蓋の第1開動作は、付勢手段の付勢力に抗してホッパを退避位置へ退避させるための動作である。したがって、第1開動作後の開閉蓋は、付勢手段の付勢力によって、第1開動作前の元の位置に戻ろうとする方向の力が作用している状態となる。
【0019】
つづいて、開閉蓋を回動させる第2開動作を行うと、その時点で開閉蓋が開いた状態となる。また、第2開動作後は、ホッパの退避状態が維持されるとともに、回動させた開閉蓋はその回動位置で保持される。したがって、開閉蓋の第2開動作後は、ユーザが開閉蓋から手をはなしても、開いた状態の開閉蓋が付勢手段の付勢力で閉じてしまうことが防止される。それによって、ユーザは、記録装置に装着されたままの状態の給送用カセット内に、前記の開口を通じて、被記録材を補充等することができる。
【0020】
本発明の第4の態様は、前述した第3の態様に記載の給送用カセットにおいて、前記第2開動作に連動して前記給送用カセットの給送方向上流側の側面が開放される、ことを特徴とした給送用カセットである。
このように、開閉蓋を開いた状態においては、給送用カセットの給送方向上流側側面が開放されるので、記録装置に対して略垂直に立てた状態或いは斜めに傾けた姿勢で自動給送装置に装着された状態にある給送用カセットの中の状態(収容されている被記録材の数量等)をユーザが視認し易くなる。それによって、ユーザが被記録材を補充する際の操作性をより向上させることができる。
【0021】
本発明の第5の態様は、前述した第4の態様に記載の給送用カセットにおいて、前記第2開動作後の状態から前記開閉蓋が前記第1開動作におけるスライド方向と逆方向へスライドする第3開動作が可能であり、前記第3開動作に連動して前記ホッパが進出し、前記第3開動作後も前記給送用カセットの給送方向上流側の側面が開放された状態が維持される、ことを特徴とした給送用カセットである。
【0022】
開閉蓋の第1開動作によって、ホッパは、収容されている被記録材が給送用ローラから離間するように退避し、その後に開閉蓋を回動させる第2開動作によって、給送方向上流側の側面が開いた状態となる。この状態においては、給送用カセット内の被記録材が給送用ローラとホッパとによる挟持状態から解放されるとともに、給送方向上流側の側面が開いた状態となっている。したがって、例えば、給送用カセット内に収容できない長さの被記録材であっても、当該給送用カセットに収容可能な横幅の被記録材であれば、給送方向上流側から被記録材の長さ方向の一部が外にはみ出た状態で収容することが可能になる。
【0023】
そして、その状態から、開閉蓋を第1開動作におけるスライド方向と逆方向へスライドさせる第3開動作を行うと、第1開動作により付勢手段の付勢力に抗して退避させられていたホッパは、再び付勢手段の付勢力によって進出した状態となる。それによって、給送方向上流側から被記録材の長さ方向の一部が外にはみ出た状態で収容されている被記録材は、ホッパで押動されて給送用ローラに当接する。したがって、給送ローラを回転させれば、当該被記録材を記録装置の記録実行手段へ向けて自動給送することが可能となる。
【0024】
すなわち、本発明の第5の態様に記載の給送用カセットによれば、前述した第4の態様に記載の発明による作用効果に加えて、給送用カセットに収容可能な被記録材の最大サイズを超える大きさの被記録材を記録装置の記録実行手段へ向けて自動給送することが可能になるという作用効果が得られる。
【0025】
本発明の第6の態様は、前述した第5の態様に記載の給送用カセットにおいて、前記第3開動作後の前記開閉蓋は、前記給送用カセットに収容されている被記録材の、前記給送用カセットの給送方向上流側の側面より給送方向上流側に突出した部分を支持する、ことを特徴とした給送用カセットである。
【0026】
給送方向上流側から被記録材の長さ方向の一部が外にはみ出た状態で収容されている被記録材は、はみ出た部分が第3開動作後の開閉蓋で支持される。したがって、そのような状態で給送用カセットに収容されている長尺な被記録材をより安定的に支持した状態で自動給送することが可能になるので、給送時の被記録材のスキュー(傾き)等の虞をより低減させることができる。また、長尺な被記録材の給送用カセットからはみ出た部分が自重によって垂れ下がるように湾曲変形してしまうことも防止できる。
【0027】
本発明の第7の態様は、給送用ローラの回転により被記録材を記録装置の記録実行手段へ向けて一ずつ自動給送する自動給送装置であって、前述した第1〜第6の態様のいずれかに記載の給送用カセットを備えている、ことを特徴とした自動給送装置である。
本発明の第7の態様に記載の自動給送装置によれば、給送用ローラの回転により被記録材を記録装置の記録実行手段へ向けて一ずつ自動給送する自動給送装置において、前述した第1〜第6の態様のいずれかに記載の発明による作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る「自動給送装置」を備えた記録装置の一例としてのインクジェットプリンタ50の要部側断面図である。図2は、本発明に係る給送用カセット10の斜視図である。
【0029】
まず、インクジェットプリンタ50の概略構成について説明する。
インクジェットプリンタ50は、「被記録材」としての記録紙Pに記録を実行する「記録実行手段」として、搬送駆動ローラ51、搬送従動ローラ52、プラテン53、排紙駆動ローラ54、排紙従動ローラ55、キャリッジ61及び記録ヘッド62をプリンタ本体1内に備えている。後述する「自動給送装置」から給送された記録紙Pは、搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52とで挟持され、搬送駆動ローラ51の駆動回転により搬送方向Yへ所定の搬送量でプラテン53上を搬送される。
【0030】
キャリッジ61の底部には、記録ヘッド62が配設されている。キャリッジ61は、記録ヘッド62のヘッド面とプラテン53上の記録紙Pの記録面とが略平行で一定の間隔となる状態を維持しながら搬送方向Yと略直交する方向へ往復動可能に支持されている。プラテン53上を搬送される記録紙Pは、キャリッジ61が搬送方向Yと略直交する方向へ往復動しながら記録ヘッド62のヘッド面からインクが噴射されることによって記録が実行される。記録実行後の記録紙Pは、排紙駆動ローラ54と排紙従動ローラ55とで挟持され、排紙駆動ローラ54の駆動回転により搬送方向Yへ搬送される。排紙駆動ローラ54の搬送方向Yの下流側には、排紙口3が設けられており、記録実行後の記録紙Pは排紙口3から排出される。
【0031】
インクジェットプリンタ50は、前記の搬送駆動ローラ51へ向けて記録紙Pを一ずつ自動給送する「自動給送装置」を構成する給送用カセット10、給送用ローラ71及びリタードローラ72を備えている。給送用カセット10は、プリンタ本体1に設けられた給送用開口部2に着脱可能であり、図示の如く傾斜姿勢で挿入した状態で装着されて使用される。その装着状態において、給送用カセット10は、「自動給送装置」に装着された状態となり、給送用カセット10に収容されている記録紙Pは、搬送方向Yの先端近傍がホッパ16で給送用ローラ71の外周面に押圧され、給送用ローラ71の駆動回転により、搬送駆動ローラ51へ向けて給送される。このとき、公知のリタードローラ72の従動回転抵抗によって、最上位の記録紙P1から他の記録紙Pが分離され、記録紙Pの重送が防止される。
【0032】
つづいて、引き続き図1及び図2を参照しながら、本発明に係る給送用カセット10の構成について説明する。尚、図2においては、図面を見やすくして本発明の理解を容易にするため、記録紙Pの図示は省略してある。
【0033】
給送用カセット10は、カセット本体11、開閉蓋12、上側面蓋13、リンクアーム14、V字揺動体15及び前記のホッパ16を備えている。
カセット本体11は、図示の如く箱体形状を有している。以下、カセット本体11については、開口17となっている面を前面、底面18を後面、幅方向Xの両側面を右側面及び左側面、給送方向(搬送方向)Yの上流側の側面を上側面、給送方向Yの下流側の側面を下側面として説明する。
【0034】
カセット本体11は、底面18(後面)が記録紙Pを積重する載置面となっており、前面が開口17となっている。給送用カセット10は、インクジェットプリンタ50に装着した状態のままで、この開口17から記録紙Pを収容することが可能である。記録紙Pは、給送方向(搬送方向)Yの先端がカセット本体11の下側面の内壁面111に当接した状態で給送用カセット10に収容される。カセット本体11の右側面及び左側面には、切り欠き部114が形成されている。また、カセット本体11の右側面と左側面との間には、図示の如く軸体115が前面寄りに幅方向Xと略平行に配設されている。
【0035】
開閉蓋12は、開口17を開閉可能に配設されている。より具体的には、開閉蓋12の右側面及び左側面の内側に形成された2つの開閉軸122が、カセット本体11の右側面及び左側面に形成された2つの長孔112にそれぞれ係合している。それによって、開閉蓋12は、カセット本体11に対して、ガイド部121でガイドされながら長孔112に沿ってスライド可能であるとともに、かつ開閉軸122を回動軸として回動可能に配設されている。
【0036】
上側面蓋13は、給送用カセット10がインクジェットプリンタ50に装着された状態(図1)において外部に露出するカセット本体11の上側面を構成する。この上側面蓋13は、カセット本体11の底面18の上端に設けられた揺動軸131に揺動可能に軸支されている。また、上側面蓋13は、捻りコイルばね等の付勢手段(図示せず)により、カセット本体11の上側面を構成する揺動方向(閉じる方向)へ付勢されている。
【0037】
カセット本体11の右側面及び左側面に配設された2つのリンクアーム14は、それぞれ、一端側にスライド孔141が設けられており、開閉蓋12の開閉軸122がスライド孔141に遊挿された状態で開閉蓋12と係合している。カセット本体11の右側面及び左側面に配設された2つのV字揺動体15は、それぞれ、カセット本体11の右側面及び左側面に設けられた揺動軸113に一端側で軸支されている。また、V字揺動体15の他端側には、ホッパ支持部152が設けられており、ホッパ16が軸支されている。そして、V字揺動体15の略中央部分に設けられた軸部151には、リンクアーム14の他端側が軸支されて連結されている。
【0038】
ホッパ16は、カセット本体11に収容されている記録紙Pを底面18側から支持するとともに、V字揺動体15の揺動に伴って、給送用ローラ71へ向けて進出する方向及び給送用ローラ71から退避する方向へ変位する。また、ホッパ16は、コイルばね等の弾性体からなる「付勢手段」(図示せず)によって、給送用ローラ71へ向けて進出する方向へ付勢されている。尚、カセット本体11の突起部116は、ホッパ16が進出する方向におけるV字揺動体15の揺動位置を規制するためのものである。
【0039】
このような構成を有する給送用カセット10は、図1に図示した如くインクジェットプリンタ50に装着した状態において、開閉蓋12が閉じた状態では、開閉蓋12で開口17が覆われるので、収容されている記録紙Pが埃や紫外線等から保護される。
【0040】
また、給送用カセット10に収容されている記録紙Pは、ホッパ16が進出した状態では、ホッパ16で押動されて給送用ローラ71に当接するとともに、ホッパ16の記録紙Pを支持している面(被記録材支持面)と給送用ローラ71との間に挟持されて保持される。それによって、給送用カセット10に収容されている記録紙Pは、給送用ローラ71の回転による自動給送が可能な状態となるとともに、その自重による傾斜方向(給送方向Y)への移動が抑制される。したがって、カセット本体11の下側面の内壁面111に当接している記録紙Pの先端が自重で内壁面111に押し付けられてカールするように変形してしまうことを防止することができる。
【0041】
さらに、給送用カセット10は、図1に図示した如くホッパ16が進出した状態において、ホッパ16の記録紙Pを支持している面と開閉蓋12の挟持面123とでも記録紙Pが挟持される。すなわち、給送用カセット10に収容されている記録紙Pは、ホッパ16が進出した状態において、ホッパ16と給送用ローラ71とで挟持されると同時に、ホッパ16と開閉蓋12の挟持面123とでも挟持されるので、より強固に保持されることになる。したがって、給送用カセット10に収容されている記録紙Pが自重によって傾斜方向へ移動することをより確実に抑制することができるので、内壁面111に当接している記録紙Pの先端が自重でカールするように変形してしまうことをより確実に防止することができる。
【0042】
尚、上述したカール防止効果は、給送用カセット10がインクジェットプリンタ50に装着されている状態である場合のみならず、給送用カセット10をインクジェットプリンタ50から取り外して単体で放置した場合にも得ることができるのは言うまでもない。また、給送用カセット10は、ホッパ16と給送用ローラ71との間に挟持されていることによって、上記のような自重による記録紙Pの先端のカール変形を防止できるだけでなく、周囲の温度や湿度に起因して記録紙Pの全体が反るように変形してしまうことも防止できる。すなわち、例えば、記録紙Pのコート層と紙層とで収縮立が異なることに起因したいわゆるバイメタル効果による記録紙Pの反り等の変形をも防止する作用効果が得られる。
【0043】
つづいて、図3〜図8を参照しながら、給送用カセット10における開閉蓋12の開閉動作に連動したホッパ16の進出及び退避動作について説明する。尚、リンクアーム14及びV字揺動体15は、カセット本体11の右側面と左側面とに一組ずつ配設されているが(図2)、図3〜図8においては、図面を見やすくして本発明の理解を容易にするため、一方のみ図示し、他方の図示は省略してある。また、図3〜図8においては、図面を見やすくして本発明の理解を容易にするため、記録紙Pの図示は省略してある。
【0044】
図3は、インクジェットプリンタ50の要部側断面図であり、図4は、給送用カセット10の斜視図であり、いずれも開閉蓋12の「第1開動作」後の状態を図示したものである。
図5は、インクジェットプリンタ50の要部側断面図であり、図6は、給送用カセット10の斜視図であり、いずれも開閉蓋12の「第2開動作」後の状態を図示したものである。
【0045】
給送用カセット10は、開閉蓋12を所定方向(符号Aで示した方向)へスライドさせる「第1開動作」と(図3、図4)、「第1開動作」後に開閉蓋12を符号Eで示した方向へ回動させる「第2開動作」とにより、開閉蓋12が開いた状態となる(図5、図6)。
【0046】
まず、図3及び図4を参照しながら開閉蓋12の「第1開動作」について説明する。
開閉蓋12を符号Aで示した方向へスライドさせると、開閉蓋12に設けられている開閉軸122は、カセット本体11の長孔112内を符号Aで示した方向へ、長孔112の上端に当接する位置まで変位する。それによって、開閉軸122がスライド孔141に遊挿されて開閉蓋12と係合しているリンクアーム14は、その回動軸122に引っ張り上げられながら符号Bで示した方向へ移動する。リンクアーム14が符号Bで示した方向へ移動することによって、リンクアーム14の他端側に連結されているV字揺動体15は、符号Cで示した方向へ揺動する。V字揺動体15が符号Cで示した方向へ揺動することによって、V字揺動体15に軸支されているホッパ16が符号Dで示した方向へ変位する。すなわち、給送用カセット10は、開閉蓋12の「第1開動作」に連動して、ホッパ16が給送用ローラ71から離間する方向へ退避する。
【0047】
次に、図5及び図6を参照しながら開閉蓋12の「第2開動作」について説明する。
「第1開動作」の状態、つまり開閉蓋12を符号Aで示した方向へスライドさせた状態(開閉軸122が長孔112の上端に当接した状態)から、開閉軸122を回動中心として開閉蓋12を符号Eで示した方向へ回動させる。このような「第2開動作」によって、それまで開閉蓋12に略覆われて閉じていたカセット本体11の開口17は、完全に開いた状態となる。また、「第1開動作」後のスライド位置はそのままに開閉蓋12を回動させるので、給送用ローラ71から退避したホッパ16は、開閉蓋12の「第2開動作」の後も退避状態が維持される。
【0048】
このように、給送用カセット10は、インクジェットプリンタ50に装着した状態のままで、開閉蓋12を「第1開動作」及び「第2開動作」を経て開いた状態とすることができる。また、給送用カセット10は、「第1開動作」に連動してホッパ16が給送用ローラ71から離間する方向へ退避し、そのホッパ16の退避状態が維持されたまま、「第2開動作」によって開閉蓋12が開いた状態となる。さらに、給送用カセット10は、「第2開動作」後の開閉蓋12のスライド位置及び回動位置を、「付勢手段」(図示せず)によるホッパ16の進出方向への付勢力で閉じた状態に戻ろうとする力に抗して保持可能なクリック機構等の保持手段(図示せず)を備えている。
【0049】
したがって、開閉蓋12の「第2開動作」後は、開口17が完全に開いた状態で、かつホッパ16と給送用ローラ71及び挟持面123とによる記録紙Pの挟持が解除された状態が、クリック機構等の「保持手段」によって保持されることになる。また、開口17は、給送用カセット10をインクジェットプリンタ50に装着した状態のままで、給送用カセット10に記録紙Pを収容することが可能である。すなわち、開閉蓋12の「第2開動作」後の状態において、ユーザは、給送用カセット10をインクジェットプリンタ50に装着した状態のままで、開口17を通じて、給送用カセット10に記録紙Pを補充したり、収容されている記録紙Pを取り出したりすることができる。
【0050】
さらに、給送用カセット10は、開閉蓋12の「第2開動作」に連動して、上側面蓋13が開閉蓋12のガイド部121に押動されて符号Fで示した方向へ回動し、給送方向Yの上流側の側面が開放された状態となる。それによって、インクジェットプリンタ50に対して傾斜姿勢で装着された状態にある給送用カセット10は、内部の状態(収容されている記録紙Pの種別や数量等)をユーザがより視認し易くなり、記録紙Pを補充等する際の操作性をより向上させることができる。
【0051】
図7は、インクジェットプリンタ50の要部側断面図であり、図8は、給送用カセット10の斜視図であり、いずれも開閉蓋12の「第3開動作」後の状態を図示したものである。
【0052】
給送用カセット10は、「第1開動作」及び「第2開動作」を経て開いた状態となっている開閉蓋12を、前記のクリック機構等による保持を解除しながら、さらに「第1開動作」におけるスライド方向Aと逆方向(符号Gで示した方向)へスライドさせる「第3開動作」が可能な構成を有している。開いた状態の開閉蓋12を符号Gで示した方向へスライドさせると、開閉蓋12のガイド部121がカセット本体11の切り欠き部114に進入して係合し、それによって、開閉蓋12のスライド位置及び回動位置が保持される。
【0053】
この開閉蓋12のスライド動作によって、開閉蓋12に設けられた回転軸122も同じ方向へ変位するので、ホッパ16を進出方向へ付勢している「付勢手段」(図示せず)の付勢力によって、リンクアーム14が符号Hで示した方向へ移動し、V字揺動体15が符号Jで示した方向へ揺動し、ホッパ16が符号Kで示した方向へ進出する。また、給送用カセット10は、開閉蓋12のガイド部121が上側面蓋13の開状態を保持したままスライドするので、給送方向Yの上流側の側面が開放された状態も維持される。
【0054】
すなわち、給送用カセット10は、開閉蓋12の「第3開動作」によって、給送方向Yの上流側の側面が開放された状態のままで、退避していたホッパ16を給送用ローラ71へ向けて進出させることができる。このような構成であることによって、給送用カセット10は、例えば、ハイビジョンサイズの記録紙等のように、給送用カセット10に収容可能な横幅(幅方向Xの長さ)でありながら、給送方向Yの長さが給送用カセット10に収容可能な長さを超える長尺な記録紙P(以下、長尺サイズの記録紙Pという。)である場合に、以下のようにして、インクジェットプリンタ50への自動給送が可能になる。
【0055】
まず、給送用カセット10がインクジェットプリンタ50に装着されている状態から、「第1開動作」及び「第2開動作」を経て開閉蓋12を開いた状態とする。この状態における給送用カセット10は、ホッパ16が給送用ローラ71から退避した状態になる。同時に、上側面蓋13が開いて給送方向Yの上流側の側面が開放された状態となる。それによって、長尺サイズの記録紙Pであっても、上側面蓋13が開いて開放されている給送方向Yの上流側から長尺サイズの記録紙Pの一部が給送用カセット10の外側にはみ出た状態で収容することができる。
【0056】
そして、その状態から開閉蓋12を符号Gで示した方向へスライド移動させる「第3開動作」を行うと、上側面蓋13の開状態が維持されたまま、ホッパ16が再び給送用ローラ71へ向けて進出する。給送用カセット10に収容されている長尺サイズの記録紙Pは、進出したホッパ16に押動されて給送用ローラ71に押圧され、給送用ローラ71の駆動回転により自動給送可能な状態となる。このとき、給送用カセット10の底面18に載置されてホッパ16で給送用ローラ71へ押圧された状態の長尺な記録紙Pは、同時にホッパ16と軸体115とで挟持されて前面側(開口17側)へ倒れてしまわないように支持される。
【0057】
そして、長尺な記録紙Pの給送用カセット10からはみ出た部分(突出した部分)は、「第3開動作」後の開閉蓋12で底面側から支持される。それによって、一部が給送用カセット10からはみ出た状態となっている長尺な記録紙Pを安定的に支持した状態で自動給送することが可能になり、給送時にスキュー(傾き)等が生ずる虞をより低減させることができる。また、長尺な記録紙Pの給送用カセット10からはみ出た部分が自重によって垂れ下がるように湾曲変形してしまうことも防止できる。
【0058】
以上説明したように、本発明に係る給送用カセット10によれば、給送用カセット10をインクジェットプリンタ50に装着した状態で長期間放置した際に、給送用カセット10に収容されている記録紙Pの先端部分がカールするように変形してしまうことを防止しつつ、インクジェットプリンタ50に装着した状態のままでも記録紙Pを補充することが可能になる。
【0059】
また、本発明に係る給送用カセット10によれば、インクジェットプリンタ50に別途手差し給送手段を設けたり、給送用カセット10を長尺な記録紙Pに合わせて大きくしたりすることなく、給送用カセット10に収容可能な記録紙Pの最大サイズを超える大きさの記録紙Pをインクジェットプリンタ50の「記録実行手段」へ向けて自動給送することが可能になる。したがって、給送用カセット10に収容可能な記録紙Pの最大サイズを超える大きさの記録紙Pへの記録を実行可能なインクジェットプリンタ50を低コストに実現することができる。
【0060】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】インクジェットプリンタの要部側断面図である。
【図2】本発明に係る給送用カセットの斜視図である。
【図3】「第1開動作」後のインクジェットプリンタの要部側断面図である。
【図4】「第1開動作」後の給送用カセットの斜視図である。
【図5】「第2開動作」後のインクジェットプリンタの要部側断面図である。
【図6】「第2開動作」後の給送用カセットの斜視図である。
【図7】「第3開動作」後のインクジェットプリンタの要部側断面図である。
【図8】「第3開動作」後の給送用カセットの斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1 プリンタ本体、2 給送用開口部、3 排紙口、10 給送用カセット、11 カセット本体、12 開閉蓋、13 上側面蓋、14 リンクアーム、15 V字揺動体、16 ホッパ、17 開口、50 インクジェットプリンタ、51 搬送駆動ローラ、52 搬送従動ローラ、53 プラテン、54 排紙駆動ローラ、55 排紙従動ローラ、61 キャリッジ、62 記録ヘッド、71 給送用ローラ、72 リタードローラ、123 挟持面、P 記録紙、X 記録紙の幅方向、Y 記録紙の搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給送用ローラの回転により被記録材を記録装置の記録実行手段へ向けて一ずつ自動給送する自動給送装置に装着され、前記記録実行手段へ向けて自動給送される被記録材を収容する給送用カセットであって、
前記給送用カセットに収容されている被記録材を底面側から支持するとともに前記給送用ローラへ向けて進出及び退避可能に配設されたホッパと、前記ホッパを進出方向へ付勢する付勢手段と、前記自動給送装置に装着した状態で被記録材を収容するための開口を開閉可能に設けられた開閉蓋とを備え、
前記給送用カセットに収容されている被記録材は、前記ホッパが進出した状態では前記ホッパで押動されて前記給送用ローラに当接するとともに前記ホッパの被記録材支持面と前記給送用ローラとの間に挟持され、前記ホッパが退避した状態では前記給送用ローラから離間し、
前記ホッパは、前記開閉蓋の閉動作に連動して進出し、前記開閉蓋の開動作に連動して退避する、ことを特徴とした給送用カセット。
【請求項2】
請求項1に記載の給送用カセットにおいて、前記ホッパの被記録材支持面と対面する挟持面を備え、
前記給送用カセットに収容されている被記録材は、前記ホッパが進出した状態では前記ホッパの被記録材支持面と前記給送用ローラ及び前記挟持面との間に挟持され、前記ホッパが退避した状態では前記給送用ローラ及び前記挟持面から離間する、ことを特徴とした給送用カセット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の給送用カセットにおいて、前記開閉蓋を所定方向へスライドさせる第1開動作とその後に前記開閉蓋を回動させる第2開動作とにより前記開閉蓋が開いた状態となり、
前記第1開動作に連動して前記ホッパが退避し、前記第2開動作後も前記ホッパの退避状態が維持され、前記第2開動作後の前記開閉蓋のスライド位置及び回動位置が保持される、ことを特徴とした給送用カセット。
【請求項4】
請求項3に記載の給送用カセットにおいて、前記第2開動作に連動して前記給送用カセットの給送方向上流側の側面が開放される、ことを特徴とした給送用カセット。
【請求項5】
請求項4に記載の給送用カセットにおいて、前記第2開動作後の状態から前記開閉蓋が前記第1開動作におけるスライド方向と逆方向へスライドする第3開動作が可能であり、
前記第3開動作に連動して前記ホッパが進出し、前記第3開動作後も前記給送用カセットの給送方向上流側の側面が開放された状態が維持される、ことを特徴とした給送用カセット。
【請求項6】
請求項5に記載の給送用カセットにおいて、前記第3開動作後の前記開閉蓋は、前記給送用カセットに収容されている被記録材の、前記給送用カセットの給送方向上流側の側面より給送方向上流側に突出した部分を支持する、ことを特徴とした給送用カセット。
【請求項7】
給送用ローラの回転により被記録材を記録装置の記録実行手段へ向けて一ずつ自動給送する自動給送装置であって、請求項1〜6のいずれか1項に記載の給送用カセットを備えている、ことを特徴とした自動給送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−247519(P2008−247519A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88717(P2007−88717)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】