説明

給電装置及び車両の受電装置

【課題】給電が開始された後に、給電部と受電部の位置がずれて異常な給電状態を発生させてしまうことを防止できる給電装置及び車両の受電装置を提供すること。
【解決手段】この給電装置30は、車両10に搭載された受電部103へ非接触で給電を行う給電部106と、車両10に搭載された車両側通信部104と通信を行う給電側通信部105と、給電部106の動作制御を行う給電側制御部107とを備える。給電側制御部107は、給電部106による給電の開始後、給電側通信部105が車両側通信部104から車両の動き検知有りを示す情報を受信した場合に、給電部106による給電を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両へ非接触の給電を行う給電装置及び非接触で受電を行う車両の受電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気で走行する車両(例えば電気自動車またはハイブリッド自動車など)に対して、非接触で給電を行う給電システムについて開発がなされている。このような給電システムでは、車両に受電装置が搭載される一方、駐車スペースの地面等に給電装置が設置される。そして、車両が駐車スペースに停車している間に給電装置から受電装置へ送電が行われる。受電装置の受電部と給電装置の給電部とには、例えば受電用のコイルと給電用のコイルとがそれぞれ設けられ、給電部から受電部へ電磁誘導方式で電力が送られる。
【0003】
また、本発明に関連する技術として、特許文献1には、次のような非接触の給電システムが開示されている。この給電システムは、車両が停止した状態で給電が行われるように、車両のパーキングブレーキが掛けられた場合に、給電要求を給電装置へ送信できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−226945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁誘導方式により非接触で車両に給電を行う給電システムにおいては、給電装置の給電部と受電装置の受電部とが数センチ以内の誤差で位置合わせされた状態で、給電を行う必要がある。給電部と受電部との位置が合っていないと、漏洩磁界および不要輻射が増大して、正常な給電が行えなくなるという課題が発生する。
【0006】
また、このような非接触の給電システムでは、給電の開始時に両者の位置が正確に合っていても、その後の給電中に両者の位置がずれてしまうと、上記と同様に漏洩磁界および不要輻射が増大して異常な給電状態となってしまう。
【0007】
例えば、上記特許文献1のシステムでは、パーキングブレーキが掛けられて車両の停止状態が確認されてから給電が開始されるが、給電中に、パーキングブレーキが緩められて車両が動いてしまうと、上記と同様に異常な給電状態が発生してしまう。また、パーキングブレーキが掛けられたままであっても、ブレーキの緩みや劣化等で制動の効き具合が悪くなっている場合に、上記と同様に異常な給電状態が発生しえる。例えば、車両に人がもたれかかった場合、傾斜途中に車輪が乗り上げて車両が停止している場合、可動物に車輪が乗り上げて車両が停止している場合、または、地震が発生した場合などに、停車中でも車両が数センチ程度移動してしまう可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、給電部と受電部との位置が合って給電が開始された後に、給電部と受電部の位置がずれて異常な給電状態が発生してしまうことを防止できる給電装置及び車両の受電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る給電装置は、車両に搭載された受電部へ非接触で給電を行う給電部と、前記車両に搭載された車両側通信部と通信を行う給電側通信部と、前記給電部の動作制御を行う給電側制御部と、を具備し、前記給電側制御部は、前記給電部による給電の開始後、前記給電側通信部が前記車両側通信部から前記車両の動き検知有りを示す情報を受信した場合に、前記給電部による給電を停止させる構成を採る。
【0010】
本発明の一態様に係る車両の受電装置は、車両に搭載される受電装置であって、前記車両の外部に設けられた給電装置の給電部から非接触で受電を行う受電部と、前記給電装置に設けられた給電側通信部と通信を行う車両側通信部と、前記車両に搭載されて前記車両の動きを検知する動き検知部の検知情報を入力する車両側制御部と、を具備し、前記車両側制御部は、前記受電部による受電の開始後、前記動き検知部から動き検知有りを示す検知情報を入力した場合に、動き検知有りを示す情報、或いは、給電を停止させる指令を前記車両側通信部から前記給電側通信部へ送信させる構成を採る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、給電部と受電部との位置が合わされて給電が開始された後、給電部と受電部の位置がずれた場合に、給電が停止されて、異常な給電状態が発生してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1の車両用電力供給システムの要部を示す図
【図2】実施の形態1の充電手順を説明するフローチャート
【図3】実施の形態2の充電手順を説明するフローチャート
【図4】実施の形態2の給電側制御部の制御手順を示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態3の車両用電力供給システムの要部を示す図
【図6】加速度センサにより検出される加速度の方向成分を説明する図
【図7】実施の形態3の充電手順を説明するフローチャート
【図8】実施の形態4の充電手順を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の車両用電力供給システムの要部を示す構成図である。
【0015】
本発明の実施の形態1の車両用電力供給システムは、車両10に搭載される受電装置20と、駐車スペースの地面に設置される給電装置30とを備えている。受電装置20は、車両側通信部104と、受電部103と、車両側制御部101とを備え、この受電装置20には、車両10の車輪速センサ108と、蓄電池102とが接続されている。給電装置30は、給電側通信部105と、給電部106と、給電側制御部107とを備えている。
【0016】
車両10は、電力により走行することが可能な電気自動車またはハイブリッド自動車などであり、走行用の電力を蓄える蓄電池102を備えている。蓄電池102は、例えば大容量のリチウムイオン電池などである。
【0017】
車両側通信部104と給電側通信部105とは、車両10が給電装置30の近傍にある状態で無線によりデータ通信可能にされる。これらの車両側通信部104と給電側通信部105とを介して、車両側制御部101と給電側制御部107とが無線により互いにデータ通信を行う。
【0018】
給電部106は、給電用のコイルを有し、このコイルに交流電流を流して電磁誘導方式により受電部103へ電力を送る。
【0019】
受電部103は、受電用のコイルを有し、電磁誘導方式により給電部106から電力を受ける。そして、受電部103は、受電した電力を蓄電池102(その充電回路)へ送る。
【0020】
給電側制御部107は、制御プログラムを記憶した記憶手段を有し、この制御プログラムに従って、給電側通信部105を介して車両側制御部101から指令および情報を受け取り、また、給電部106の駆動制御を行う。
【0021】
車両側制御部101は、制御プログラムを記憶した記憶手段を有し、この制御プログラムに従って、車両側通信部104を介して給電側制御部107へ指令および情報を送り、また、受電部103の駆動制御を行う。受電部103の駆動制御には、受電部103の回路を開閉する制御と、受電部103と蓄電池102(その充電回路)との間の電路を開閉する制御等が含まれる。
【0022】
車輪速センサ108は、ABS(Antilock Brake System)において車輪の回転状態を検出するために車両10に設けられているセンサである。この車輪速センサ108は、車両10のタイヤが微小量回転したことを検知可能なセンサであり、所定量の回転ごとに例えば1つの検出パルスを出力する。車輪速センサ108が検知可能なタイヤの回転量は、車両10の移動量に換算して、短い長さ(例えば4センチなど)であり、受電部103と給電部106との位置合わせの許容誤差程度の長さに設定されている。なお、車輪速センサ108としては、ABSの車輪速センサを流用したものでなく、受電の制御のために専用に車両10に設けられたものを採用してもよい。
【0023】
図2は、実施の形態1の充電手順を説明するフローチャートである。図2において、ステップS201,S202はユーザが行う処理であり、ステップS203〜S206は車両側制御部101が制御プログラムに従って実行する処理である。
【0024】
車両10の蓄電池102へ充電を行う場合、先ず、ユーザは、車両10を所定の精度で充電用の停止位置に停車させる。これにより、受電部103と給電部106とが所定の誤差内の精度で位置合わせされる(ステップS201)。続いて、ユーザは、充電開始の操作を行う(ステップS202)。操作が行われなければ(ステップS202の「無し」)充電動作は開始されずに、この充電処理は終了する。
【0025】
なお、ステップS202の充電開始の操作は、ユーザが車両10内で図示略の操作スイッチを操作することで実行されるように構成できる。そして、この操作スイッチの操作信号が車両側制御部101へ送られることで、車両側制御部101がその後の充電処理を開始する。
【0026】
或いは、ステップS202の充電開始の操作は、駐車場に充電開始の操作スイッチを設けて、ユーザがこの操作スイッチを操作することで実行されるようにしてもよい。そして、この操作スイッチの操作信号が無線により車両側通信部104を介して車両用制御部101へ送られるように構成してもよい。或いは、駐車場に充電開始の操作スイッチが設けられ、この操作スイッチの操作信号が、給電側制御部107に入力される構成としてもよい。そして、この操作信号が、給電側通信部105と車両側通信部104との通信により車両側制御部101へ送られて、充電処理が開始されてもよい。また、車両10が充電用の停止位置に停車したことを検出する検出装置を設け、この検出装置が車両の停車を検出したことを充電開始の操作とみなして、この検出信号が車両側通信部104へ送られるように構成してもよい。
【0027】
充電開始の操作があると、車両側制御部101は、給電開始要求を車両側通信部104を介して給電装置30へ送信する(ステップS203)。この給電開始要求は、給電側通信部105を介して給電側制御部107へ送られ、この要求に基づき給電側制御部107は給電部106の駆動制御を行って給電を開始する。なお、給電開始要求は、車両の速度がゼロのとき、すなわち、車両が停止中であることが確認されたときのみ送信可能にすると好ましい。
【0028】
給電開始要求を送信したら、続いて、車両側制御部101は、車輪速センサ108の出力の監視(ステップS204)と、充電状況(充電完了となったか否か)の監視(ステップS205)とを繰り返し実行する処理ループへ処理を移行させる。車両側制御部101は、例えば蓄電池102が満充電となった場合に充電完了と判別する。そして、車輪速センサ108の出力があって車両側制御部101が車輪が回転したと判別するか、或いは、車両側制御部101が充電完了と判別すると、車両側制御部101の処理がステップS204,S205の処理ループから抜ける。
【0029】
処理ループを抜けたら、車両側制御部101は、給電停止要求を車両側通信部104を介して給電装置30へ送信する(ステップS206)。この給電停止要求は、給電側通信部105を介して給電側制御部107へ送られ、給電側制御部107はこの要求に基づき給電部106を制御して給電を停止させる。そして、充電処理が終了する。
【0030】
この実施の形態1の受電装置20によれば、給電中に車両側制御部101が車輪速センサ108の出力を監視して、この出力があった場合に、給電を停止させるようになっている。従って、車両用電力供給システムにおいては、給電中に受電部103と給電部106との間に位置ズレが生じた場合でも、漏洩磁界および不要輻射が増大するような異常な給電状態になることが防止される。
【0031】
なお、実施の形態1において、車両10は、車両10の上下方向および左右方向の加速度を検出する加速度センサを備え、この加速度センサの出力が車両側制御部101へ出力される構成としてもよい。さらに、車両側制御部101は、車輪速センサ108の出力に基づき車両10が前後方向に移動したことを判別するとともに、加速度センサの出力に基づき車両10が上下方向または左右方向に変動したことを判別する構成としてもよい。そして、車両側制御部101は、これら前後方向の移動を判別した場合、または、上下方向または左右方向の変動を判別した場合に、給電を停止させるための制御を行ってもよい。
【0032】
このような構成とすることで、給電中に車両10が前後方向に移動した場合のみならず、左右または上下に変動するような事態が生じた場合にも、給電を停止させて、漏洩磁界および不要輻射が増大するような異常な給電状態になることを防止することができる。
【0033】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の車両用電力供給システムは、実施の形態1のシステムと同様の構成であり、処理の一部が実施の形態1と異なるのみである。同様の構成および処理については同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
図3は、実施の形態1の充電手順を説明するフローチャートである。
【0035】
実施の形態2では、実施の形態1と同様に、図3のステップS201〜S203の処理が行われた後、ステップS204,S205の処理ループへ移行する。そして、処理ループの中で充電完了と判断されると、ステップS206で給電停止要求が給電装置30へ送られて給電が停止される。
【0036】
また、実施の形態2では、ステップS204,S205の処理ループ中に車輪速センサ108の出力があって処理ループを抜けると、車両側制御部101は、動き検知情報を車両側通信部104を介して給電装置30へ送信する(ステップS207)。この動き検知情報は、受電部103と給電部106との位置がずれて、この位置ズレが許容誤差を上回る可能性のあることを示す情報となる。そして、動き検知情報が送信されたら、給電部106の停止を確認したあと車両側制御部101は充電処理を終了する。
【0037】
図4は、実施の形態2の給電側制御部107の制御手順を示すフローチャートである。
【0038】
給電側制御部107は、給電開始前には、給電側通信部105の受信データを入力して給電開始要求の受信の監視を行う(ステップS301)。そして、給電側制御部107は、この給電開始要求が受信されたら、給電部106を駆動して給電を開始する(ステップS302)。
【0039】
給電が開始されると、給電側制御部107は、受電装置20からの動き検知情報の受信の監視(ステップS303)と、受信装置20からの給電停止要求の受信の監視(ステップS304)とを行う処理ループへ処理を移行させる。そして、給電側通信部105を介して給電停止要求が受信されるか、或いは、動き検知情報が受信されると、給電側制御部107のステップS303,S304の処理ループを抜ける。
【0040】
ステップS303,S304の処理ループを抜けると、給電側制御部107は、給電部106を制御して給電を停止させる(ステップS305)。
【0041】
この実施の形態2の受電装置20によれば、給電中、車両側制御部101が、車輪速センサ108の出力を監視して、この出力があった場合に、給電装置30へ動き検知情報を送信する。また、この実施の形態2の給電装置30によれば、給電中、給電側制御部107が動き検知情報の受信の有無を監視し、この受信があった場合に、給電を停止させる。従って、車両用電力供給システムにおいては、給電中に受電部103と給電部106との間に位置ズレが生じた場合でも、漏洩磁界および不要輻射が増大するような異常な給電状態になることが防止される。
【0042】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3の車両用電力供給システムの要部を示す構成図である。この実施の形態3の車両用電力供給システムの構成または動作において、実施の形態1と同様のものは同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
実施の形態3の車両用電力供給システムでは、給電中における車両10の僅かな移動を検知するために車輪速センサ108の代わりに、加速度センサ109を採用している。
【0044】
図6には、加速度センサ109の作用を説明する図を示す。図6に示すように、加速度センサ109は、互いに直交する3軸方向の加速度をそれぞれ検出するセンサであり、車両10に所定の向きで設置されて、検出出力を車両側制御部101へ送る。車両側制御部101は、この検出出力に基づいて、車両10の進行方向Xbの加速度、右側方向Ybの加速度、鉛直下方向Zbの加速度を認識することができる。また、加速度センサ109の出力には、車両10が動いていないときでも、常に、重力加速度の出力が現れる。
【0045】
この加速度センサ109としては、車両10に備わる何らかの機能(例えばカーナビケーション機能)のために車両10に予め搭載されている加速度センサを流用してもよいし、受電の制御のために専用に設けられたものを採用してもよい。なお、加速度センサ109は、3軸のセンサに限られず、例えば車両10の前後方向など、1軸方向の加速度のみを検出可能な構成でもよい。加速度センサ109が車両10の前後方向の加速度を検知することで実施の形態1の車輪速センサ108の代替的な機能が実現される。また、前後方向の加速度を検知する加速度センサと、車両10の上下方向または左右方向の加速度を検知する加速度センサとを組み合わせることで車両10の動きの検出の確実性を向上させることができる。
【0046】
図7は、実施の形態3の充電手順を説明するフローチャートである。
【0047】
実施の形態3では、実施の形態1と同様にステップS201,S202の処理が行われて充電操作がなされると、車両側制御部101は、次のような処理を実行する。すなわち、先ず、車両側制御部101は、以降の加速度変化を求めるために、その時点(すなわち車両10の停止時)の加速度センサ109の検出結果(加速度As)を入力して、この値を記憶する(ステップS209)。続いて、車両側制御部101は、給電装置30へ給電開始要求を送信する(ステップS210)。そして、この給電開始要求の送信により給電が開始される。
【0048】
給電が開始されたら、車両側制御部101は、加速度変化の有無と充電完了の監視を行う処理ループ(ステップS211〜S213)へ処理を移行させる。すなわち、車両側制御部101は、先ず、加速度センサ109のその時点の検出結果(加速度At)を入力して、この加速度AtからステップS209で記憶された加速度Asを減算して、加速度変化を求める(ステップS211)。続いて、この加速度変化と閾値とを比較して、閾値を超えているか判別する(ステップS212)。その結果、閾値を超えていれば、ステップS211〜S213の処理ループから車両側制御部101の処理が抜ける。一方、閾値を超えていなければ、車両側制御部101は充電完了か確認し(ステップS213)、未完了であればステップS211へ戻り、完了であれば処理ループを抜ける。
【0049】
ステップS212の判別処理の閾値は、次のように設定される。すなわち、加速度センサ109は、重量の大きな車両10に固定されているため、小さな力や振動が車両10へ加わった程度では、出力を変化させず、車両10が前後左右に僅か(例えば、0.2〜2cm)に動くような大きな力が加わっても、出力の変化は比較的小さくなる。従って、上記の閾値には、このように車両10が前後左右に僅かに動くような加速度変化が識別できる値が設定され、この閾値はほぼゼロとなる場合もある。
【0050】
ステップS211〜S213の処理ループ中、加速度変化が閾値を超えた場合、或いは車両側制御部101が充電完了と判別した場合には、車両側制御部101は給電停止要求を給電装置30へ送信する(ステップS214)。この給電停止要求の送信により、給電装置30の給電が停止されて、充電処理が終了する。
【0051】
この実施の形態3の受電装置20によれば、給電中に車両側制御部101が加速度センサ109の出力を監視し、この出力に基づき閾値以上の加速度変化が検出されると、給電を停止させるようになっている。従って、車両用電力供給システムにおいては、給電中に受電部103と給電部106との間に位置ずれが生じた場合でも、漏洩磁界および不要輻射が増大するような異常な給電状態になることが防止される。
【0052】
なお、加速度センサ109の感度が高くて、車両10が全く動かないような小さな振動等によってもセンサ出力が変化する場合には、受電装置20は一定のセンサ出力の変化を無視する構成としてもよい。例えば、車両側制御部101は、車両10のドアの開閉センサから検出信号を入力し、且つ、この検出信号に基づきドアの開閉から所定期間だけステップS212の判別処理で使用する閾値を大きく設定変更する構成とする。このように構成することで、受電装置20は、ドアの開閉や運転手の昇降によるセンサ出力の変化を無視することができる。さらに、加速度センサ109の感度および検出精度が非常に高くて、加速度の検出から車両10の移動量が正確に算出できるような場合には、車両側制御部101は加速度の検出出力から充電操作後の車両10の移動量を算出する構成としてもよい。そして、車両側制御部101は、算出した移動量に基づいて給電を停止させる制御を行う構成としてもよい。
【0053】
(実施の形態4)
図8は、実施の形態4の充電手順を説明するフローチャートである。この実施の形態4の車両用電力供給システムは、実施の形態3と構成が同一である。また、受電装置20の動作の一部は、実施の形態2および実施の形態3のものと同一であり、給電装置30の動作は、実施の形態3のものと同一である。図8の処理ステップにおいて、実施の形態2,3の処理ステップと同じ処理ステップは、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
実施の形態4では、実施の形態3と同様に、図8のステップS201,S202,S209,S210の処理が行われて、ステップS211〜S213の処理ループに移行する。そして、この処理ループの中で車両側制御部101が充電完了と判別すると、ステップS206で給電停止要求が給電装置30へ送られて給電が停止される。
【0055】
実施の形態4では、ステップS211,S213の処理ループ中、車両側制御部101が加速度変化を検出して処理ループを抜けると、車両側制御部101は、動き検知情報を車両側通信部104を介して給電装置30へ送信する(ステップS207)。この動き検知情報は、受電部103と給電部106との位置ズレが給電動作の許容誤差を超える可能性があることを示す情報となる。
【0056】
動き検知情報が送信されると、給電側制御部107は、図4のフローチャートで説明したように、給電側通信部105を介してこの情報を受信する。そして、この動き検知情報に基づいて、給電側制御部107は、給電部106を制御して給電を停止させる。
【0057】
この実施の形態4の受電装置20によれば、給電中、車両側制御部101は、加速度センサ109の出力を監視し、加速度変化があった場合に、動き検知情報を給電装置30へ送信する。また、この実施の形態4の給電装置30によれば、給電中、給電側制御部107は、上記の動き検知情報の受信の有無を監視し、この受信があった場合に、給電を停止させる。従って、この車両用電力供給システムにおいては、給電中に受電部103と給電部106との間に位置ずれが生じた場合でも、漏洩磁界および不要輻射が増大するような異常な給電状態になることが防止される。
【0058】
以上、本発明の各実施の形態について説明した。
【0059】
なお、各実施の形態では、受電装置が車輪速センサ108または加速度センサ109の出力に基づき車両10の動きを検出するようにしているが、受電装置は両者の検出を併用して車両10の小さな動きをより精度高く検出する構成としてもよい。また、受電装置は反射型のフォトセンサ(フォトリフレクタ)を用いて、給電装置30と車両10との相対位置の変化を検出する構成としてもよい。
【0060】
また、各実施の形態において、非接触で送電を行う構成は、給電コイルと受電コイルとを用いた電磁誘導方式の構成としている。しかしながら、この非接触で送電を行う構成は、給電中に受電部と給電部との位置が正確に合っている必要のある構成であれば、どのような方式の構成であってもよい。このような構成であれば、本発明は有効に適用できる。
【0061】
また、上記実施の形態では、本発明をハードウェアと制御部によるソフトウェアとの連携により実現する構成を例にとって説明したが、ソフトウェアにより実現した部分はハードウェアによって実現することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、電気で走行する車両に搭載されて外部から非接触で受電を行う受電装置、および、給電を行う給電装置に有用である。
【符号の説明】
【0063】
10 車両
20 受電装置
30 給電装置
101 車両側制御部
102 蓄電池
103 受電部
104 車両側通信部
105 給電側通信部
106 給電部
107 給電側制御部
108 車輪速センサ
109 加速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された受電部へ非接触で給電を行う給電部と、
前記車両に搭載された車両側通信部と通信を行う給電側通信部と、
前記給電部の動作制御を行う給電側制御部と、
を具備し、
前記給電側制御部は、
前記給電部による給電の開始後、前記給電側通信部が前記車両側通信部から前記車両の動き検知有りを示す情報を受信した場合に、前記給電部による給電を停止させる
給電装置。
【請求項2】
車両に搭載された受電部へ非接触で給電を行う給電部と、
前記車両に搭載された車両側通信部と通信を行う給電側通信部と、
前記給電部の動作制御を行う給電側制御部と、
を具備し、
前記給電側制御部は、
前記給電部による給電の開始後、前記車両の動き検知有りを示す情報に基づき前記車両側通信部から送信される給電停止指令を前記給電側通信部が受信した場合に、前記給電部による給電を停止させる
給電装置。
【請求項3】
前記動き検知有りを示す情報は、前記車両の車輪速センサが車輪の回転を検知したことを示す情報である
請求項1または2に記載の給電装置。
【請求項4】
前記動き検知有りを示す情報には、さらに、前記車両の加速度センサが前記車両の左右又は上下の加速度変化を検知したことを示す情報が含まれる
請求項3記載の給電装置。
【請求項5】
前記動き検知有りを示す情報は、前記車両の加速度センサが車両の加速度変化を検知したことを示す情報である
請求項1または2に記載の給電装置。
【請求項6】
前記加速度センサは、車両の前後方向、上下方向および左右方向を含む三次元方向のうち、少なくとも所定の一方向の加速度変化を検知する
請求項5記載の給電装置。
【請求項7】
車両に搭載される受電装置であって、
前記車両の外部に設けられた給電装置の給電部から非接触で受電を行う受電部と、
前記給電装置に設けられた給電側通信部と通信を行う車両側通信部と、
前記車両に搭載されて前記車両の動きを検知する動き検知部の検知情報を入力する車両側制御部と、
を具備し、
前記車両側制御部は、
前記受電部による受電の開始後、前記動き検知部から動き検知有りを示す検知情報を入力した場合に、動き検知有りを示す情報を前記車両側通信部から前記給電側通信部へ送信させる
車両の受電装置。
【請求項8】
車両に搭載される車両の受電装置であって、
前記車両の外部に設けられた給電装置の給電部から非接触で受電を行う受電部と、
前記給電装置に設けられた給電側通信部と通信を行う車両側通信部と、
前記車両に搭載されて前記車両の動きを検知する動き検知部の検知情報を入力する車両側制御部と、
を具備し、
前記車両側制御部は、
前記受電部による受電の開始後、前記動き検知部から動き検知有りを示す検知情報を入力した場合に、給電を停止させる指令を前記車両側通信部から前記給電側通信部へ送信させる
車両の受電装置。
【請求項9】
前記動き検知部は、前記車両の車輪の回転を検知する車輪速センサである
請求項7または8に記載の車両の受電装置。
【請求項10】
前記動き検知有りを示す情報には、さらに、前記車両の加速度センサが前記車両の左右又は上下の加速度変化を検知したことを示す情報が含まれる
請求項9記載の車両の受電装置。
【請求項11】
前記動き検知部は、前記車両の加速度を検知する加速度センサであり、
前記動き検知有りを示す検知情報は、加速度の変化有りを示す情報である
請求項7または8に記載の車両の受電装置。
【請求項12】
前記加速度センサは、車両の前後方向、上下方向および左右方向を含む三次元方向のうち、少なくとも所定の一方向の加速度変化を検知する
請求項11記載の車両の受電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−63004(P2013−63004A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201726(P2011−201726)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】