説明

統合アンテナ

【課題】電界通信用アンテナと非接触ICカード用アンテナ或いはRFID用アンテナを同一面に配置し、且つ其々のアンテナが互いに影響することなく良好な通信を確保できる統合アンテナを提供することを目的とする。
【解決手段】電界通信用アンテナ5と非接触ICカード用アンテナ2からなる統合アンテナであって、電界通信用アンテナ5は、スリット4を備えた第1の金属面電極5aと誘電体6と第2の金属面電極5bとを重ねた積層構造を有し、金属面電極5a,5bが誘電体6を介して所定の間隔で配置され、非接触ICカード用アンテナ2は、コイル2cが巻かれた複数の磁性体コア2a,2bを対向位置に配置した構成で、電界通信用アンテナ5の金属面電極の間に配置され、且つ磁性体コア2a,2bの対向した端部の放出面2dが金属面電極5aのスリット4に臨設されることを特徴とする統合アンテナ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界通信用アンテナと非接触ICカード用アンテナ或いはRFID用アンテナを、同一面に配置する統合アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、自動販売機や売店のレジで使用される非接触ICカード(以下、ICカードと記す)或いは商品に取付けられたRFIDタグを用いた電子マネーによる決済システムが一般的となっている。
【0003】
例えば、自動販売機などに備えられた非接触ICカード用アンテナに対して、ICカードをかざすことで自動販売機とICカードとの間で通信を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、人体を通信路とする電界通信を利用した自動販売機の電子決済システムが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。この電子決済システムでは、電子マネーを記憶した電界通信用装置を所持した顧客が、自動販売機に搭載された電界通信用装置の電界通信用アンテナに手をかざすことで、顧客が所持する電界通信用装置と自動販売機の電界通信用アンテナとの間で通信が行われ、記憶された電子マネーから決済が行われる。
【0005】
また、電界通信に用いる通信装置のアンテナ部にスリットを設けて、非接触ICカード用アンテナを電界通信用アンテナの電極に重なった場合でも、非接触ICカード用アンテナの通信の遮蔽を抑止する技術が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【0006】
また、電界通信用アンテナの電極板を透明導電体にすることで、渦電流の発生を抑えてICカードとの通信を阻害しない技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
また、電界通信用アンテナの電極間に発生する容量を低く抑えて、良好な出力特性を実現する電界通信装置の技術が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
また、顧客の利便性を最優先にした、従来の非接触ICカード用アンテナ或いはRFID用アンテナと電界通信用アンテナの両方を装備した統合アンテナの普及が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−30393号公報
【特許文献2】特開2004−145873号公報
【特許文献3】特開2009−33610号公報
【特許文献4】特開2009−081771号公報
【特許文献5】特開2009−232284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、ICカードと電界通信とを利用するためには、自動販売機等に特性の異なる従来の非接触ICカード用アンテナと電界通信用アンテナの両方を搭載する必要があり、非接触ICカード用アンテナと電界通信用アンテナを配置する際、特性を最大限に発揮させるため別々の位置に配置するとアンテナの設置面が広くなるという問題がある。
【0011】
また、非接触ICカード用アンテナと電界通信用アンテナを別々の位置に配置すると、顧客がどちらを利用して良いか戸惑う可能性があり、顧客の利便性を損なわないためには、従来の非接触ICカード用アンテナと電界通信用アンテナとを同一位置に配置する必要がある。
【0012】
非接触ICカード用アンテナと電界通信用アンテナを同一位置に配置した場合、単に非接触ICカード用アンテナの下に電界通信用アンテナを重ね合わせた場合、非接触ICカード用アンテナ載置領域が電極面を覆うため、電界通信の通信を遮る障壁となる問題がある。
【0013】
また、非接触ICカード用アンテナを電界通信用アンテナの誘電体(絶縁体)と共に両電極で挟むと、非接触ICカード用アンテナから発生する磁界が、電界通信用アンテナの電極により遮断されてしまい、非接触ICカード用アンテナとICカードとの通信を、相互で阻害するという問題がある。
【0014】
本発明は、以上の問題点に着目して成されたもので、非接触ICカード用アンテナと電界通信用アンテナを同一位置に配置した場合、非接触ICカード用アンテナとICカードとの通信が、相互に干渉し通信を阻害するという問題を解決するため、電界通信用アンテナと非接触ICカード用アンテナ或いはRFID用アンテナを電界通信用アンテナの電極間に配置し、且つ其々のアンテナが互いに影響することなく良好な通信を確保できる統合アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上述の目的を達成するため、以下(1)〜(8)の構成を備えるものである。
【0016】
(1)電界通信用アンテナと非接触ICカード用アンテナからなる統合アンテナであって、前記電界通信用アンテナは、スリットを備えた第1の金属面電極と、誘電体と、第2の金属面電極との順に重ねられた積層構造を有し、前記第1、第2の金属面電極が前記誘電体を介して所定の間隔で配置され、前記非接触ICカード用アンテナは、コイルが巻かれた複数の磁性体コアを対向位置に配置した構成で、前記電界通信用アンテナの前記第1及び第2の金属面電極の間に配置され、且つ前記磁性体コアの対向した端部の放出面が前記第1の金属面電極の前記スリットに臨設されることを特徴とする統合アンテナ。
【0017】
(2)前記非接触ICカード用アンテナが、前記コイルを巻かれた磁性体コアの下部に接する金属層を更に有することを特徴とする前記(1)記載の統合アンテナ。
【0018】
(3)対向位置に配置された前記磁性体コアに巻かれた前記コイルに流れる電流が、其々の前記磁性体コアの前記放出面から同相の磁界を発生させるため、互いに逆相方向に前記電流が流れるように前記コイルが接続されていることを特徴とする前記(1)または(2)記載の統合アンテナ。
【0019】
(4)対称位置に配置された前記磁性体コアの対向した端部の形状が、L字状に垂直あるいは直角に立ち上がる部分から成ることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の統合アンテナ。
【0020】
(5)電界通信用アンテナと非接触ICカード用アンテナからなる統合アンテナであって、前記電界通信用アンテナは、スリットを備えた第1の金属面電極と、該第1の金属面電極と導線で接続された第3の金属面電極と、誘電体と、第2の金属面電極との順に重ねられた積層構造を有し、前記第3の金属面電極と前記第2の金属面電極が前記誘電体を介して所定の間隔で配置され、前記非接触ICカード用アンテナが、コイルを巻かれた複数の磁性体コアを対向位置に配置した構成で、前記電界通信用アンテナの前記第1及び第3の金属面電極の間に配置され、且つ前記複数の磁性体コアの対向した端部の放出面が、前記第1の金属面電極の前記スリットに臨設されることを特徴とする統合アンテナ。
【0021】
(6)電界通信用アンテナと非接触ICカード用アンテナからなる統合アンテナであって、前記電界通信用アンテナは、スリットを備えた第1の金属面電極と、誘電体と、第2の金属面電極との順に重ねられた積層構造を有し、前記第1、第2の金属面電極が前記誘電体を介して所定の間隔で配置され、前記非接触ICカード用アンテナは、コイルを巻かれた複数の磁性体コアを対向位置に配置した構成で、前記磁性体コアが対向する端部の上面に磁性体を載置し、前記非接触ICカード用アンテナは、前記電界通信用アンテナの前記第1及び第2の金属面電極の間に配置され、且つ前記磁性体コアが対向する端部の前記磁性体が前記第1の金属面電極の前記スリットに臨設されることを特徴とする統合アンテナ。
【0022】
(7)非接触ICカード用アンテナと電界通信用アンテナからなる統合アンテナであって、前記電界通信用アンテナは、スリットを備えた第1の金属面電極と、誘電体と、第2の金属面電極との順に重ねた積層構造を有し、前記第1、第2の金属面電極が前記誘電体を介して所定の間隔で配置され、前記非接触ICカード用アンテナは、コイルを巻かれた複数の磁性体コアを対向位置に配置し、前記磁性体コアが対向する端部の上面にLC共振器を載置し、前記非接触ICカード用アンテナが、前記電界通信用アンテナの前記第1及び第2の金属面電極の間に配置され、且つ前記水平コアが対向する端部の前記LC共振器が前記第1の金属面電極の前記スリットに臨設されることを特徴とする統合アンテナ。
【0023】
(8)前記(1)乃至(7)のいずれか1項に記載の電界通信用アンテナと非接触ICカード用アンテナからなる統合アンテナであって、前記電界通信用アンテナは、前記スリットを備えた第1の金属面電極が、着脱可能な構造を更に有することを特徴とする統合アンテナ。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、非接触ICカード用アンテナ或いはRFID用アンテナと電界通信用アンテナを同一位置に配置することで、顧客の利便性を損なわず、且つ其々のアンテナが相互の通信を阻害することなく良好な通信環境を確保した統合アンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)本実施例に係る統合アンテナの構成図、(b)A−A断面図、(c)非接触ICカード用アンテナの構造例を示す図、(d)非接触ICカード用アンテナの構造例を示す図、(e)非接触ICカード用アンテナの構造例を示す図
【図2】(a)本実施例に係る統合アンテナを分割構造とした構成図、(b)B−B断面図
【図3】(a)本実施例に係る統合アンテナのかざし部の正面図、(b)電界通信用アンテナの電極間容量を考慮した構成を示すC−C断面図、(c)電界通信用アンテナの電極間容量を下げる電極構造を示す断面図、(d)電界通信用アンテナの電極間容量を下げる別の電極構造を示す断面図
【図4】本実施例に係る統合アンテナの電界通信用アンテナのかざし部を着脱構造とする構成図
【図5】本実施例に係る統合アンテナの非接触ICカード用アンテナに平行コアと開口部に磁性体を設けた構成図
【図6】本実施例に係る統合アンテナの非接触ICカード用アンテナに平行コアと開口部に共振器を設けた構成図
【図7】本実施例に係る統合アンテナの電極間容量を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づいて詳しく説明する。
【実施例】
【0027】
図1は、本実施例に係る統合アンテナ1の構成図で、電界通信用アンテナ5の電極間に配置され、非接触ICカード或いはRFIDタグに使用可能な非接触ICカード用アンテナ2が、対構造のL字状の左右コア(磁性体)2a,2bにコイル2cを巻き、コア先端の放出面2dから磁界Hを放出するように構成されている。
【0028】
この非接触ICカードとRFIDタグに使用可能な非接触ICカード用アンテナ2の構造において、本実施例では対構造の左右コア磁性体2a,2bの形状については、後述する平行な磁性体コア7を対向配置した対構造を基本構成とするが、垂直磁界発生に最適な構造である特開2007−081647号公報に開示されている垂直磁界センサシステムの技術原理を応用したL字状のコアを用いて説明する。
【0029】
図1(a)は電界通信用アンテナ5の上部電極5aの中央に形成されたスリット4の開口部に、図1(b)の断面図に示すように、向かい合わせに配置されたL字状の左右磁性体コア2a,2bの先端の放出面2dから、磁界Hが放出される構成となっている。電界通信用アンテナ5の上部電極5aに設けられたスリット4の開口部から同相の磁界が発生するように、L字状の左右磁性体コア2a,2bに巻かれたコイル2cに流れる電流値が同一で、電流の流れる方向が逆相となるようにコイル2cが巻かれている。この非接触ICカード用アンテナ2を誘電体6内配置することで、電界通信用アンテナ5の金属面電極5a,5bの影響を受けることがなく、逆に電界通信用アンテナ5の金属面電極5a,5bの影像効果により、コイル軸方向に磁界Hが更に強く誘導される利点ある。
【0030】
図1(c)、図1(d)、図1(e)は非接触ICカードアンテナの構造例を示すもので、図1(c)は非接触ICカード用アンテナの基本構造である平行な左右磁性体コア7a,7bに、コイル7cを巻いた構造で影像効果を利用する場合には、図1(e)と同じように対向面の間に金属が挟みこまれる構造となる。
【0031】
平行な左右磁性体コア7a,7bによる磁界の発生は、上面の放出面7dから垂直磁界Hが放出される構造で、実際の印刷による薄膜アンテナを形成する場合、L字状の磁性体コア2を形成することは困難であるため、平行な磁性体コア7をパターン成形した薄膜アンテナを使用する。
【0032】
図1(d)は非接触ICカード用アンテナ2のL字状の左磁性体コア2a、右磁性体コア2bとコイル2cの構造で、用途に合わせて左右磁性体コア2a,2bのL字状の放出面2dにコイル2cを巻かない構造を示している。
【0033】
図1(e)は向かい合わせたL字状の左右磁性体コア2a,2bにコイル2cを巻きつけ、その下面及び垂直に立ち上がった磁性体コアの間に金属層2fを挟み込んだ構造の非接触ICカード用アンテナ2である。
【0034】
非接触ICカード用アンテナ2の磁性体コアの構造は、ICカードやRFIDタグの種類に応じて上述の磁性体コアから選択可能である。
【0035】
非接触ICカード用アンテナ2は、電界通信用アンテナ5の電極間に挟み込むように配置し、電界通信の上部電極5aの上面のかざし部(表面材)3の中央には、渦電流の発生を防止するために貫通孔ではないスリット4が設けられている。非接触ICカード用アンテナ2の磁力の放出面2dは、このかざし部3に設けられたスリット4の開口部に位置している。
【0036】
上述の構成としたことで、非接触ICカード用アンテナ2の下部と上部に、電界通信用アンテナ5の電極5a,5bの金属面が配置されていても、非接触ICカード用アンテナ2の放出面2dから発生した磁界Hは、遮蔽されることなく電界通信用アンテナ5のスリット4から垂直方向へと放出され、かざし部3の側面へ回り込むような磁界Hを形成し、かざし部3にICカードとの通信に必要な磁界Hを発生させて、ICカードとの通信を良好に保つことができる。
【0037】
また、非接触ICカード用アンテナ2の磁界の放出面2dが、平面状に形成された従来の非接触ICカード用アンテナよりも小型であり、近傍に金属面が有っても磁界Hが遮断されることなく磁界Hが循環するようにして、電界通信のかざし部3のスリット4の開口部を小さくすることができる。即ち電界通信用アンテナ5の人体との接触面に占める非接触ICカード用アンテナ2の占有面積を小さく抑えることで、電界通信用アンテナ5の通信感度の低下を防ぐことができる。
【0038】
また、電界通信用アンテナ5の上面に非接触ICカード用アンテナ2が載置されていないため、非接触ICカード用アンテナ2による障害容量が発生しないので、非接触ICカード用アンテナ2が電界通信の通信障壁となることはない。
【0039】
電界通信用アンテナ5は、特許文献5に記述されているように電極間容量を低くすることが望まれるが、上述した図1(b)に示す構成では、非接触ICカード用アンテナ2のコイル2cと電極5a,5bとの間のギャップの間隔dが小さいため電極間の容量が増す可能性がある。この電極間容量を下げるには、電極間に配置される非接触ICカード用アンテナ2の形状ごとに電極5a,5bの間隔dを広げて電極間容量を調整する必要がある。
【0040】
この問題の解決方法として図2に示すように、非接触ICカード用アンテナ2の配置位置と電界通信用アンテナ5とを分割し、積層構造とすることで非接触ICカード用アンテナ2の形状ごとに電極5a,5bの間隔を広げて電極間容量を調整する必要のない電界通信用アンテナ5を形成することができる。
【0041】
図2(a)は、電界通信用アンテナ5のかざし部3の構成で、図1(a)のかざし部3と同一の構成である。
【0042】
図2(b)に示すように、電界通信用アンテナ5のかざし部3にスリット4の開口部が形成された上部電極5aと、下部電極5b間に非接触ICカード用アンテナ2を配置し、非接触ICカード用アンテナ2の下側に第3の中央部電極5cを設けた三層の積層構造となっている。上部電極5aと中央の電極5cとは結線されているため同電位であり、この電極5a、5c間に非接触ICカード用アンテナ2を配置しても電界通信の通信障壁となることはない。また中央部電極5cと下部電極5bの間に誘電体6を挿入し、電界通信用アンテナ5の最適な電極間容量となる電極間距離dを設定することが可能で、顧客の仕様に合わせた非接触ICカード用アンテナ2の形状を選択できる。
【0043】
図3はアンテナ下部に影像効果を生む金属面を配置する非接触ICカード用アンテナ2の構成と、電界通信用アンテナ5の最適な容量特性を考慮した統合アンテナ1の構成を示している。
【0044】
図3(a)に示す統合アンテナ1の構成では、電界通信用アンテナ5のかざし部の構造を同一にして、顧客の仕様に合わせたL字状の非接触ICカード用アンテナ2と電界アンテナ5の下部構造を変えた電界アンテナ5の組み合わせを示す。
【0045】
図3(b)に示す統合アンテナ1のC−C断面図の構成は、非接触ICカード用アンテナ2の設置領域に、誘電体6と下部電極5bを設けて非接触ICカード用アンテナ2と電界通信用アンテナ5を一体化したユニットを配置した構成で、顧客の仕様に合わせてユニット単位で交換できる構成を示す。
【0046】
図3(c)に示す統合アンテナ1のC−C断面図の構成は、非接触ICカード用アンテナ2の周辺領域に、誘電体6と下部電極5bを配置した環状構成で、非接触ICカード用アンテナ2の下部には孔が空いた構造で、使用するICカードやRFIDタグに合わせて非接触ICカード用アンテナ2の交換が容易な構成となっている。
【0047】
図3(d)に示す統合アンテナ1のC−C断面図の構成は、非接触ICカード用アンテナ2の下部に影像効果を生む金属面2fを配置した構成と、異種積層構造の電極間容量を下げるために電界通信用アンテナ5の電極間隔dを広げて電極間容量の低減を図る構成である。
【0048】
図3に示す非接触ICカード用アンテナ2の下部に影像効果を生む金属面2fを配置する構成は、上部電極5aと下部電極5b、或いは金属面2fとの間に非接触ICカード用アンテナ2を挟み込まれることで、上下の金属面の多面影像効果によりコイル軸方向に磁界が更に強く誘導される構成となり、多面影像方式の高感度の非接触ICカード用アンテナ2を装備した統合アンテナ1を提供することができる。
【0049】
図4は電界通信用アンテナ5のかざし部3が、上部電極5aに形成されたスリット4の幅が均一な形状を持ち、上部電極5aを含めて着脱可能な構造の統合アンテナ1の構成を示し、ユニット化した非接触ICカード用アンテナ2と電界アンテナ5の下部構造を、顧客の仕様に合わせて変更することができる。
【0050】
図4(a)は、統一された着脱可能な電界通信用アンテナ5の上面に非接触ICカード用アンテナ2の開口部のない平面状のかざし部3で、上部電極5aが形成されている裏面と断面である。かざし部3の上部電極5aには、等幅のスリット4が設けられている。
【0051】
図4(b)は、非接触ICカード用アンテナ2の磁力の放出面2dと同一の高さまで均一に誘電体6を封入した電界通信用アンテナ5の下部構造で、ユニット化した下部構造、顧客の仕様に合わせて変更することができる構成である。尚、この非接触ICカードアンテナ2の磁力Hの放出面2dと同一の高さまで均一に誘電体6を封入した電界通信用アンテナ5の下部構造は、単独で非接触ICカード用アンテナ2として機能可能である。
【0052】
図4(c)は、着脱可能な電界通信用アンテナ5のかざし部3と、顧客の仕様に基づき配置するユニット化された非接触ICカード用アンテナ2と電界通信用アンテナ5の下部構造との組み合わせである。ユニット化された非接触ICカード用アンテナ2と電界アンテナ5の下部構造に対して、電界通信用アンテナ5のかざし部3を組み合わせると、非接触ICカード用アンテナ2として機能すると共に、電界通信用アンテナ5としても機能するような統合アンテナ1を構成できる。
【0053】
図4に示した統合アンテナ1の構成は、顧客の仕様に基づきユニット化された複数の電界通信用アンテナ5の下部構造を形成し、電界通信用アンテナ5のかざし部3と上部電極5aの形状を変更することなく、ユニット化された非接触ICカード用アンテナ2と電界通信用アンテナ5の下部構造を組み替えることで、多種多様な顧客の要求に対応可能な構成の統合アンテナ1を提供することができる。
【0054】
また、顧客に対して既に非接触ICカード用アンテナ2と電界通信用アンテナ5の下部構造からなるユニットを提供後であっても、顧客のニーズに応じて電界通信用アンテナ5のかざし部3と上部電極5aを後付けすることもできる。
【0055】
図5に示す非接触ICカード用アンテナ2の構造は、図1(c)に示した基本構造である軸方向が平行な磁性体コア7a,7bにコイル7cを巻いた構成で、電界通信用アンテナ5の金属面電極5a,5bと、電界通信用アンテナ5のかざし部3のスリット4には、平行コア7a,7bの磁界の放出面7d上に、板状磁性体8を其々の磁性体コアの放出面7dに載置した非接触ICカード用アンテナ2の構成である。
【0056】
L字状のコア2a,2bを対向位置に配置し対構造とした場合と同様に、平行磁性体コア7a,7bを対構造とした場合も、電界通信用アンテナ5のかざし部3のスリット4に載置された板状磁性体8の上部開放面から磁界が垂直方向に放出される構成となり、かざし部3の側面から平行磁性体コア7a,7bの他方の端部に回り込む磁界Hを形成する。
【0057】
また、非接触ICカード用アンテナ2の下部、及び平行磁性体コア7a,7bの対抗面の間に金属面2fを配置し、電界通信用アンテナ5の上部電極5aとの間で、上下から影像効果を生む金属面で挟み込む構造とすることで、金属面の多面影像効果によりコイル軸方向に磁界Hが更に誘導されて強くなる構成となり、電界通信用アンテナ5の電極間に多面影像方式の高感度の非接触ICカード用アンテナ2を装備した統合アンテナ1を提供できる。
【0058】
図6は、上述の図5で説明した多面影像方式の高感度の非接触ICカード用アンテナ2の構成において、電界通信用アンテナ5のかざし部3のスリット4に載置された板状の磁性体8に替わり、平面コイルによるLC共振器9を設けて、放出される垂直磁界Hを更に強くする構成である。
【0059】
また、図1〜6で説明した統合アンテナ1は、図4に示した電界通信用アンテナ5のかざし部3が着脱可能な構造を有することで、単一仕様のかざし部3に対し図1〜6で説明した非接触ICカード用アンテナ2と電界通信用アンテナ5の下部構造をユニット化して組み替えることで、多種多様な顧客の要求に対応可能な構成の統合アンテナ1を提供することができる。
【0060】
一般的に電界通信用アンテナ5は、電極間容量を低く抑えることが望まれるが、電界通信用アンテナの電極間に発生する平行板コンデンサの容量Cは、電界通信用アンテナの金属面電極の面積Sに誘電体の誘電率εをかけて電極間距離dで割った値C=εS/dで求められる。
【0061】
図7は統合アンテナ1の電極間容量を示す算出例である。図7(a)は電界通信用アンテナ5の単独の容量C1、電極の面積S1、誘電体の誘電率ε、電極間の距離d1とすると、容量C1の値は、C1=εS1/d1で求められる。
【0062】
図7(b)は電界通信用アンテナ5に非接触ICカード用アンテナ2を内蔵した異種積層構造の電極間容量の場合で、総容量Cc、かざし部3の上部電極5aの面積S2、上部電極5aと下部電極5bの間の距離d2、非接触ICカード用アンテナ2の容量Cx、非接触ICカード用アンテナ2の下部の面積S3と下部電極5bとの距離d3、非接触ICカード用アンテナ2の下部の容量C3とすると、非接触ICカード用アンテナ2下部の容量C3の値は、C3=εS3/d3で求められ、また総容量Ccの値は、Cc=εS2/d2+C3Cx/(C3+Cx)で求められる。
【0063】
従って、非接触ICカード用アンテナ2が占める空間の影響で電界通信用アンテナ5の総容量Ccが変化した時は、その容量に合う分の金属面電極の距離dや電極の大きさ、誘電体6の種類や大きさ或いは配置を変えて容量の調整を行うことが可能な構造で、電界通信用アンテナ5が単独に存在した場合と同一の容量、即ちC1=Ccとなるように其々の電極間距離d2、d3を調整することで、非接触ICカード用アンテナ2を内蔵しても電界通信に影響を与えない統合アンテナ1を提供することができる。
【0064】
以上、非接触ICカード用アンテナと電界通信用アンテナを同一位置に配置した場合、非接触ICカード用アンテナとICカードとの通信が、相互に干渉し通信を阻害するという問題の解決を目的として、電界通信用アンテナの電極間に非接触ICカード用アンテナを配置することで、其々のアンテナが互いに影響することなく良好な通信を確保できる統合アンテナを提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 統合アンテナ
2 非接触ICカード用アンテナ
2a 左磁性体コア
2b 右磁性体コア
2c コイル
2d 放出面
2f 金属層
3 かざし部(第1の金属面電極に対応)
4 スリット
5 電界通信用アンテナ
5a 電極(第1の金属面電極に対応)
5b 電極(第2の金属面電極に対応)
5c 電極(第3の金属面電極に対応)
6 誘電体
7 平行磁性体コア
7a 左磁性体コア
7b 右磁性体コア
7c コイル
7d 放出面
8 板状磁性体
9 保護材
C 容量
S 電極面積
d 距離(所定の間隔に対応)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界通信用アンテナと非接触ICカード用アンテナからなる統合アンテナであって、
前記電界通信用アンテナは、スリットを備えた第1の金属面電極と、誘電体と、第2の金属面電極との順に重ねられた積層構造を有し、前記第1、第2の金属面電極が前記誘電体を介して所定の間隔で配置され、
前記非接触ICカード用アンテナは、コイルが巻かれた複数の磁性体コアを対向位置に配置した構成で、前記電界通信用アンテナの前記第1及び第2の金属面電極の間に配置され、且つ前記磁性体コアの対向した端部の放出面が前記第1の金属面電極の前記スリットに臨設されることを特徴とする統合アンテナ。
【請求項2】
前記非接触ICカード用アンテナが、前記コイルを巻かれた磁性体コアの下部に接する金属層を更に有することを特徴とする請求項1記載の統合アンテナ。
【請求項3】
対向位置に配置された前記磁性体コアに巻かれた前記コイルに流れる電流が、其々の前記磁性体コアの前記放出面から同相の磁界を発生させるため、互いに逆相方向に前記電流が流れるように前記コイルが接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の統合アンテナ。
【請求項4】
対称位置に配置された前記磁性体コアの対向した端部の形状が、L字状に垂直あるいは直角に立ち上がる部分から成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の統合アンテナ。
【請求項5】
電界通信用アンテナと非接触ICカード用アンテナからなる統合アンテナであって、
前記電界通信用アンテナは、スリットを備えた第1の金属面電極と、該第1の金属面電極と導線で接続された第3の金属面電極と、誘電体と、第2の金属面電極との順に重ねられた積層構造を有し、
前記第3の金属面電極と前記第2の金属面電極が前記誘電体を介して所定の間隔で配置され、
前記非接触ICカード用アンテナが、コイルを巻かれた複数の磁性体コアを対向位置に配置した構成で、前記電界通信用アンテナの前記第1及び第3の金属面電極の間に配置され、且つ前記複数の磁性体コアの対向した端部の放出面が、前記第1の金属面電極の前記スリットに臨設されることを特徴とする統合アンテナ。
【請求項6】
電界通信用アンテナと非接触ICカード用アンテナからなる統合アンテナであって、
前記電界通信用アンテナは、スリットを備えた第1の金属面電極と、誘電体と、第2の金属面電極との順に重ねられた積層構造を有し、前記第1、第2の金属面電極が前記誘電体を介して所定の間隔で配置され、
前記非接触ICカード用アンテナは、コイルを巻かれた複数の磁性体コアを対向位置に配置した構成で、前記磁性体コアが対向する端部の上面に磁性体を載置し、
前記非接触ICカード用アンテナは、前記電界通信用アンテナの前記第1及び第2の金属面電極の間に配置され、且つ前記磁性体コアが対向する端部の前記磁性体が前記第1の金属面電極の前記スリットに臨設されることを特徴とする統合アンテナ。
【請求項7】
非接触ICカード用アンテナと電界通信用アンテナからなる統合アンテナであって、
前記電界通信用アンテナは、スリットを備えた第1の金属面電極と、誘電体と、第2の金属面電極との順に重ねた積層構造を有し、前記第1、第2の金属面電極が前記誘電体を介して所定の間隔で配置され、
前記非接触ICカード用アンテナは、コイルを巻かれた複数の磁性体コアを対向位置に配置し、前記磁性体コアが対向する端部の上面にLC共振器を載置し、
前記非接触ICカード用アンテナが、前記電界通信用アンテナの前記第1及び第2の金属面電極の間に配置され、且つ前記水平コアが対向する端部の前記LC共振器が前記第1の金属面電極の前記スリットに臨設されることを特徴とする統合アンテナ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電界通信用アンテナと非接触ICカード用アンテナからなる統合アンテナであって、
前記電界通信用アンテナは、前記スリットを備えた第1の金属面電極が、着脱可能な構造を更に有することを特徴とする統合アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−44592(P2012−44592A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186163(P2010−186163)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(599154663)株式会社スマート (18)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】