説明

統合ミラー

自動車を運転する運転者が走路変更等で自動車の後方・後側方の車両状況の確認作業を行う時、視線の動きや後方映像の認知において軽い負担で確認作業を行うことができる自動車用の統合ミラーを提供する。 この統合ミラー16は、車両後方の車室内側視界を映す車室内ミラー部18と、車両後方の車室外側視界を映す車室外ミラー部17と、車室内ミラー部と車室外ミラー部を各々のミラー面が平行になるように結合する結合部材21と、結合部材の途中に設けられ、フロントピラー15等の上端に回動自在に取り付けられた取付け部材22と、から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は統合ミラーに関し、特に、自動車等の車両の後方および後側方の視界を良好にする統合ミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の運転者が当該自動車の後方の状況を知ろうとする場合には、運転者は、フロントウィンドウの中央上部に配置されたルームミラーまたは車体の左右側部に配置されたサイドミラー(ドアミラーまたはフェンダミラー)等の後方ミラーを利用する。ルームミラーは主に自動車の後方の視界の確認に用いられ、サイドミラー等は自動車の後側方の視界の確認に用いられる。従来の後方ミラーの配置では、構造上死角の発生はやむをえず、当該死角の部分は運転者自身の目視による再度の確認が必要であった。
【0003】
そこで従来では、運転時の後側方の視界を拡大して死角領域を減少させるという目的で、ルームミラーに対して後付けで付設されるいわゆるワイドミラーと呼ばれるミラー器具が提案されていた。当該ワイドミラーによれば、自動車の後方に加えて、側方の一部を含む広い視界を同時に得ることができる。
【0004】
後方ミラーで得られる視界を拡大する技術は例えば特許文献1に開示されている。特許文献1によるドアミラーは、車室内側に位置するサブミラーを付設し、ドアミラーとサブミラーとを組み合せることにより、視界を広く大きくするようにしている。
【0005】
上記の従来の後方ミラーでは、次のような問題が提起されていた。
【0006】
第1の問題は、前方の死角を増加することである。ルームミラーに付設されるワイドミラーは、通常、ルームミラーよりも大きいため、前方の視界に関して死角が増加する。特許文献1によるドアミラーとサブミラーの組合せによれば、前方路面を確認するときに重要な目の高さより低いガラス領域であって、かつフロントピラーとドアミラーで挟まれる当該ガラス領域が、サブミラーで隠されるという問題があった。
【0007】
第2の問題は、後方視界の調整が面倒であることである。自動車に搭乗する運転者の座席位置や運転席位置等を変更する場合、運転者は良好な視界を確保するため、ルームミラーや左右のサイドミラー等を調節することが必要となる。この調節は3回行わなければならない。さらに上記の特許文献1に開示されるドアミラーによれば、上記の3回の調節に加えて、車室内の左右のサブミラーの角度調節を考慮することが必要となる。
【0008】
第3の問題は、自動車の後方や後側方の確認の回数が多くなることである。交差点での右折時または左折時に、一般的な交通状況では、運転者はその視線を少なくとも2回移動させ、ルームミラーと左右のいずれかのサイドミラーを確認する必要があった。運転者の視線移動に関しては、例えば、ルームミラーに対する左上方向、あるいは右ドアミラーに対する右下方向のごとく、左右移動と上下移動という大きな動きが含まれていた。交差点など、特にドライバが周囲の状況を詳細に把握する必要のあるときには、不必要な視線移動をなるべく低減させたいという要求がある。
【0009】
第4の問題は、各後方ミラーに移った映像を運転者の認知能力で統合しなければならないことである。従来の後方ミラーの利用では、運転者が後側方の状況を認知するためにそのイメージを頭の中で構成する際、例えば、まずルームミラーで得た後方映像を記憶し、その後でサイドミラーによる側方映像を見ながらこれを統合するという認知作業を行っていた。従来ではルームミラーとサイドミラーの設置位置が大きく離れているので、各ミラーの映像に基づいて空間認知を行うという作業は負担の大きいものであった。
【特許文献1】実用新案登録第3017776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題では、上記の第1から第4の問題を解決するものであり、前方の死角の増加を防止しつつ、複数の後方ミラーの各々の調節負担を軽減し、複数の後方ミラーの各々に対する視線移動の負担を軽減し、さらに複数の後方ミラーの各々の映像を頭の中で統合する認知作業の負担を軽減することにより、自動車を運転する運転者にとっての後方状況の確認作業の負荷を軽減しようとするものである。
【0011】
本発明の目的は、上記の課題を達成し、自動車を運転する運転者が走路変更等で当該自動車の後方または後側方の車両状況の確認作業を行う時、視線の動きや後方映像の認知において、従来車以上に軽い負担で確認作業を行うことができる自動車用の統合ミラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る統合ミラーは、上記目的を達成するために次のように構成される。
【0013】
本発明に係る統合ミラーは、車両後方の車室内側視界を映す車室内ミラー部と、車両後方の車室外側視界を映す車室外ミラー部と、車室内ミラー部と車室外ミラー部を各々のミラー面が平行になるように結合する結合部材と、から構成される。
【0014】
上記統合ミラーでは、車室外ミラー部と車室内ミラー部とを近接して配置し、各ミラー面が平行な位置関係を有するよう、結合部材で結合して一体的に構成し、さらにフロントピラー等に可動する状態で取り付けている。車両の後方視界に関しては、車室内ミラー部で車室内を含む車両後方の視界を得、車室外ミラー部で車両の後側方の視界を得る。車室内ミラー部で得られる後方像と、車室外ミラー部で得られる後方像とは、違和感のない一体的な、かつ連続する像として作られる。
【0015】
本発明に係る統合ミラーは、上記の構成において、好ましくは、車室内ミラー部と車室外ミラー部が、各ミラー面に映る像が共通の仮想視点に基づいて結像されるように光学的に設計され、各ミラー面に映る像が連続性を有することで特徴づけられる。この構成によれば、車室内ミラー部と車室外ミラー部の各ミラー面は、光学的に仮想視点を基準にして設計されるため、それぞれのミラー面に映る後方像を連続的および一体的な像として認識することが可能となる。
【0016】
本発明に係る統合ミラーは、上記の各構成において、好ましくは、車室内ミラー部と車室外ミラー部が取付け部を回動中心にして連動して動くことで特徴づけられる。この構成によって、統合ミラーの視界調整では、車室内ミラー部を把持して調整を行えば、車室外ミラー部の視界調整も同時に行うことができ、調整の回数を低減し、調整負担を軽減することが可能となる。
【0017】
本発明に係る統合ミラーは、上記の各構成において、好ましくは、車室内ミラー部を動かすことによってミラー位置を調整することを特徴とする。この構成によってミラーに映る後方像の調整作業の負担が軽減される。
【0018】
本発明に係る統合ミラーは、上記の各構成において、好ましくは、車両外郭部は左右のフロントピラーであることを特徴とする。この構成によって簡単な構造で統合ミラーを装備することができる。
【0019】
本発明に係る統合ミラーは、上記の各構成において、好ましくは、車室内ミラー部と車室外ミラー部が、着座した運転者の視線以上の高さに配置されることを特徴とする。この構成により、車両前方の視界において死角を作ることなく、良好な前方視界を得ることが可能となる。
【0020】
本発明に係る統合ミラーは、上記の各構成において、好ましくは、車室内ミラー部と車室外ミラー部が、所定の体格データに基づき決定される運転者視点位置以上の高さに配置されることを特徴とする。この構成により、車両前方に運転者にとって良好な視界を確保することができる。
【0021】
本発明に係る統合ミラーは、上記の各構成において、好ましくは、前記仮想視点が、前記フロントピラーの前方かつ車両コーナー部であって、地面から車高までの高さの範囲内に設けられることを特徴とする。この構成により、運転者にとって視界が最も良好となるよう、その体格に合わせた統合ミラーの設置が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、自動車等においてフロントピラー等の上端等に車室内ミラー部と車室外ミラー部が一体的になった統合ミラーを可動自在に設けるようにしたため、フロントウィンドウおよびその周辺の前方の死角の増加を防止しつつ、後方を見るためのミラーの調節負担を軽減し、後方ミラーに対する視線移動の負担を軽減し、さらに複数の後方ミラーで得られる各映像を頭の中で統合する認知作業の負担を軽減することができ、これにより自動車を運転する運転者にとっての後方状況の確認負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0024】
図1に、本発明に係る統合ミラーを備える乗用自動車の斜視図を示す。自動車11は、車室部12を形成する車両外郭部(ボディー部)を備える。車室部12では、フロントウィンドウ13の側縁と前側ドア14のドアウィンドウ14aの前縁との間にフロントピラー15が設けられている。フロントピラー15はフロントウィンドウ13の左右の両側に設けられる。通常、フロントピラー15は、上端が車体後方に傾斜した形状を有している。本発明に係る統合ミラー16は、好ましくは、左右のフロントピラー15のそれぞれの上端部に設けられる。統合ミラー16は、車室部12の外側に位置する車室外ミラー部17と、車室部12の内側に位置する車室内ミラー部18とを有している。
【0025】
図2は、車室部12の車室内側から見たフロントウィンドウ13およびその周辺部を示す。図3はフロントウィンドウ13の周辺部の概略的な一部断面平面図を示す。図4は車室内側から見た右側フロントピラー15における統合ミラー16の取付け状態を示す。
【0026】
図2で、フロントウィンドウ13には、左右のフロントピラー15によって両側縁部を支持されたフロントガラス13aが取り付けられている。左右のフロントピラー15の上端部に統合ミラー16が設けられている。左右の統合ミラー16のそれぞれは車室外ミラー部17と車室内ミラー部18を有している。運転者19は、自動車11の運転中、後方を状況を確認するときには、左右の統合ミラー16の2つのミラー部17,18を見る。
【0027】
図3および図4において、フロントピラー15の上端部に形成された横方向の貫通孔部分に、統合ミラー16の結合部材21を挿通させ、結合部材21の中間にある球状の取付け部材22をフロントピラー15内において回動自在に取り付けることにより、統合ミラー16が取り付けられている。結合部材21は、車室外ミラー部17と車室内ミラー部18を結合する部材である。フロントピラー15の横方向の貫通孔は比較的に大きめに形成され、その内側および外側の開口部にはゴムパッキン23が設けられている。貫通孔を挿通させて配置された結合部材21は、運転者19が車室内ミラー部18を手で操作することにより取付け部材22を中心として動かす時、その動きに応じてミラーの向きを変えることが可能である。これにより良好な後方視界を得るべく統合ミラー16の全体姿勢を変化させることができる。図4に示すごとくフロントピラー15における統合ミラー16の取付け位置は、好ましくは、運転者19の視線(目線)の高さ位置24よりも高い位置に位置するように設定されている。なお、ゴムパッキン23は、ミラー部17,18の必要な角度調整を許容しつつ、車室内外の密閉性をも成立させるためのものとして設けられており、この目的を達成するためにプラスチックや金属など他のものでフロントピラー15の貫通孔を覆ってもよい。
【0028】
図5〜図8を参照して本発明の統合ミラーの基本的な実施例を説明する。図5は統合ミラー16の拡大正面図を示し、図6は統合ミラー16の拡大平面図を示し、図7はフロントピラー15に設けられた統合ミラー16の取付け構造の拡大図を示し、図8は取付け部材22の構造図を示す。なお実際にはフロントピラー15の外観や内部構造は複雑になっているが、本発明の理解を容易にするため、図2〜図7に示すごとく簡略して図示している。
【0029】
統合ミラー16は、車室外ミラー部17と車室内ミラー部18とから成り、2つのミラー部17,18はその背面部で結合部材21を用いて結合されている。この実施例では、車室外ミラー部17と車室内ミラー部18は同形である。ただし、各ミラ−部の形状やサイズは任意である。結合部材21は、所要の剛性を有する樹脂や金属等の部材で作られ、かつその中央部に球体形状の取付け部材22を有している。取付け部材22は、図7および図8に示されるごとく、フロントピラー15の内部に設けられた自在継手構造25によって回動自在に支持されている。
【0030】
図6および図7で明らかなように、本実施例では、車室外ミラー部17のミラー面と車室内ミラー部18のミラー面とは同一の平面(鏡面:線26)に含まれる関係となっている。本発明では、車室外ミラー部17のミラー面と車室内ミラー部18のミラー面は、必ずしも同一面である必要はなく、少なくとも平行な関係に保たれていればよい。
【0031】
上記の構成を有する統合ミラー16では、後方視界を調整するとき、例えば運転者19が車室内ミラー部18を把持し、車室内ミラー部18のミラー面に映る後方像を見ながらそれが最適になるように動かすと、車室外ミラー部17も同時に動いてそのミラー面に映る後方像も同時に調整される。
【0032】
図7において、矢印27は反時計回りの回動を示し、矢印28は時計回りの回動を示している。なお取付け部材27は、1軸(x軸)周りの回動に限られず、他の軸(y軸、z軸)の周りにも回動自在に設けられている。
【0033】
図9を参照して統合ミラー16で見ることのできる後方視界を光学的に説明する。ここで、ミラー部17,18のサイズ、取付け位置、角度等は、自動車11の全長、全幅、車室部12のサイズ、フロントピラー15と運転者席(ドライバシート)との位置関係、統合ミラー16で得られるようにしたい後方視野角32,33、ミラー部17,18の反射特性などの様々なパラメータを考慮して、運転者周囲の視野獲得(前方視野も含む)が最適になるように決定される。この際、仮想視点31という仮想的な位置概念が用いられる。仮想視点31から見た場合に統合ミラー16によって遮断される車両の後方/側方領域が、統合ミラー16を介して運転者19が見ることのできる領域である。このように仮想視点31という概念を利用することによって、運転者19が得られる視野の設定/調整を容易かつ高精度に行うことができる。
【0034】
仮想視点31は、例えば、図9に示す一点鎖線26を中心線として、運転席位置に座る運転者19(標準的な体格)の眼の位置に対して線対称の点であって、かつフロントピラー15の前方に設定される点である。図9に示すように、仮想視点31とミラー部17,18の端部を結ぶ線で決定される視野角32,33が、運転者19から得られる後方および後側方の視野角である。従って、自動車11のサイズ等に応じて必要な視野角32,33を決定し、この視野角32,33が得られるように、ミラー部17,18の横方向の幅寸法を決定することができる。なお上記視野角32は外側視界に対応し、上記視野角33は室内側視界に対応している。
なお上記の「標準的な体格」とは、日本人に関して云えば、例えば社団法人人間生活工学研究センター発行「日本人の人体計測データ」1992〜1994年のような十分な母数に基づく実計測体格データに基づいて決められる。そして、仮想視点31の設定基準となる「標準的な体格における運転者視点の3次元位置」は、上記のような標準的体格を有する複数の被験者が複数回の運転席合わせを行うことによって特定できる。すなわち、本発明が採用される車両のターゲット顧客層の標準的な体格を算出した上で、その体格を有する運転者によって視界が最も良好になるように仮想視点31は決定される。
なお、近年の顧客志向性の向上に対応して、顧客個々人にカスタマイズしたフロントピラー設計としても良い。この場合には、車両を製造する前に顧客の体格データを取得し、その体格を有する第三者又は顧客自身が視界面で最適と思われるように仮想視点31及び統合ミラー16の設置が行われる。
また、本発明の統合ミラーが採用される車両のターゲット購買層の平均的な体格に基づき、統合ミラーのミラー部17,18のサイズおよび形状、取付け位置、仮想視点31などを決定すれば、より快適な外界視認環境を実現することができる。
【0035】
既述のごとく統合ミラー16は回動自在に設けられているので、運転者19の体格の違いや好みに応じて後方視野角32,33を適宜に調整することも可能である。
【0036】
以上のように、本発明では、統合ミラー16の車室外ミラー部17と車室内ミラー部18の各ミラー面によって自動車11の後方視界を同時に見渡すことが可能となる。このとき、仮想視点31の高さ位置は車室部12のルーフの位置としている。車室外ミラー部17によって外側視界(後側方の視界)32を見ることができ、車室内ミラー部18によって室内側視界33を見ることができる。外側視界32は従来のドアミラー等で見られる角度範囲と同程度であり、室内側視界33は後部ウィンドウの助手席側縁部が納まる角度範囲である。
【0037】
上記の仮想視点31は、フロントピラー15、中間ピラー34、およびリアピラー35の前方にあるので、これらのピラー15,34,35で作られる死角36は最小限に抑えられる。また統合ミラー16をフロントピラー15の上端部に設けることで、ミラー部18による前方視界の減少および運転者19の頭部による後方視界の減少を防止することができる。さらに好ましくは、統合ミラー16はフロントピラー15の上端部であって、かつ、運転者19の頭頂よりも高い位置に設けるとよい。
【0038】
上記のごとく、本実施例に係る統合ミラー16における車室外ミラー部17および車室内ミラー部18の各ミラー面の光学的な設計では、各ミラー面に映る後方像が共通の仮想視点31を有するように設計が行われる。
【0039】
左側(助手席側)の統合ミラー16の後方視界については、自動車11の車体の左側の前方位置に同様に仮想視点を設定することに基づいて、右側の統合ミラー16の後方視界に対して、ほぼ線対称の位置関係にて設定される。
【0040】
図10の(A),(B)において、自動車11の車体に関する車幅範囲41、運転者19の眼に関する位置を表す線42、フロントピラー15等の車両中心線側に近い線43、および車高範囲44に関して、領域45は右仮想視点31が設定され得る範囲であり、領域46は左仮想視点が設定され得る範囲であり、領域47は左右の仮想視点の高さ方向において設定され得る範囲である。なお、運転者19は通常、周囲の車両や通行人をしっかり認知する必要があるため、仮想視点31の高さは運転者19の視点高さと略同等の高さとすることが好ましい場合が多い。
【0041】
上記実施例では、左右の統合ミラー16をフロントピラー15の上端部に設けた構成としたが、取付け箇所はこれに限定されない。その他、フロントガラス、サイドガラス(ドアガラス)、ルーフ部分、サンルーフ部分などの、車室部12またはその周辺の車両外郭部に設けることができる。
【0042】
また統合ミラー16の車室外ミラー部17と車室内ミラー部18の各ミラー面は、平面ミラーの使用が前提であるが、これには限定されない。例えば水平方向に突出した凸面ミラー面を用いることも可能である。この場合には、平面ミラーと同じ視野角度を維持しながら、ミラー部の大きさを小さくすることができる。さらに垂直方向に突出した凸面ミラー面を用いることも可能である。この場合には、垂直方向の視野角度を拡大して、ミラー直下の地面まで視界を拡大することができる。
【0043】
上記の実施例によれば、統合ミラー16の全体を運転者19の眼の高さ位置よりも高くしたため、運転者19にとって前方の走行路面に対して死角がなくなり、前方の視界を大きくすることができる。車室内ミラー部18を調整すると、車室外ミラー部17も連動して動き、実質的に左右の車室内ミラー部18を2回調節するだけで簡単に全体を調整することができる。
【0044】
さらに、左右の統合ミラー16の車室外ミラー部17と車室内ミラー部18は、車室12Aの内外の位置で近接して配置されており、統合ミラー16を見た時、2つのミラー部17,18に映る後方像を、記憶に頼ることなく、即座に結合・合成することができ、運転者の空間認知の負担を軽減することができる。運転者19にとって、車室外ミラー部17と車室内ミラー部18のそれぞれに映る後方像は連続的に認識でき、車室内外のミラー像を違和感なくイメージ的に結合することができる。さらに仮想視点31という概念を導入することにより統合ミラー16のサイズや取付け位置の設定が容易になる。
【0045】
次に図11〜図13に本発明に係る統合ミラーの他の実施例を示す。図11に示した統合ミラー16は、同形の車室外ミラー部51と車室内ミラー部52であってその高さ位置を異ならせたものである。また各ミラー部51,52のミラー面が平行に保たれた状態で前後方向に位置をずらすことも可能である。図12に示した統合ミラー16は、車室内ミラー部62に対して車室外ミラー部61の形状を異なるものとして形成している。このように車室内外の各ミラー部の形状は任意に定めることができる。図13の(A)に示した統合ミラー16では、車室外ミラー部71を結合部材21と回転継手72で結合している。この構成によれば、図13の(B)に示すごとく、車庫入れ時や障害物との接触時に後方に倒れるようにすることができる。車室外ミラー部71の後方への倒れ等はモータで自動的に行うように構成することもできる。さらに図8に示した取付け部材22がフロントピラー16の長手方向に沿って上下にスライドする構成にすれば、運転者19に応じてより良好な視野を得るようにできる。また統合ミラー16の制御は、周知のドアミラーの駆動機構と同様に電動で行うようにしてもよい。
【0046】
以上の実施例で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に示したものであり、本発明は、説明された実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、自動車の運転中、運転者等が自動車の後方または後側方の状況を得る時に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る統合ミラーを備えた乗用自動車を前側斜め上方から見た斜視図である。
【図2】図1に示した自動車の車室内から前方を見たフロントウィンドウの周辺部の本発明に係る統合ミラーの配置例を概略的に示す図である。
【図3】本発明に係る統合ミラーを左右のフロントピラーに取り付けた状態を概略的に示す平面図である。
【図4】運転席から見て右側のフロントピラーにおける統合ミラーの取付け状態を示す図である。
【図5】本発明に係る統合ミラーの代表的実施例を示す正面図である。
【図6】図5に示した統合ミラーの平面図である。
【図7】図6に示した統合ミラーとフロントピラーとの取付け関係を示した一部断面平面図である。
【図8】実施例に係る統合ミラーの自在継手部とフロントピラーとの連結関係を示す水平断面図である。
【図9】本実施例に係る統合ミラーによって見ることのできる後方視界を光学的に説明する図である。
【図10】仮想視点の存在可能範囲を示す説明図である。
【図11】本発明に係る統合ミラーの他の実施例を示す正面図である。
【図12】本発明に係る統合ミラーの他の実施例を示す正面図である。
【図13】本発明に係る統合ミラーの他の実施例を示子、(A)は通常状態、(B)は車室外ミラー部が後方へ倒れた状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
11 自動車
12 車室部
12A 車室
13 フロントウィンドウ
14 ドア
15 フロントピラー
16 統合ミラー
17 車室外ミラー部
18 車室内ミラー部
19 運転者
21 結合部材
22 取付け部材
23 ゴムパッキン
31 右仮想視点
32 外側視界
33 室内側視界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後方の車室内側視界を映す車室内ミラー部と、
車両後方の車室外側視界を映す車室外ミラー部と、
前記車室内ミラー部と前記車室外ミラー部を各々のミラー面が平行になるように結合する結合手段と、
を有することを特徴とする統合ミラー。
【請求項2】
前記車室内ミラー部と前記車室外ミラー部は各ミラー面に映る像が、所定の体格データを用いて決定される運転者視点位置に応じて決定される共通の仮想視点に基づいて結像されるように光学的に設計され、各ミラー面に映る像が連続性を有することを特徴とする請求項1記載の統合ミラー。
【請求項3】
更に、前記結合手段の途中に設けられ、前記車両外郭部の上部に回動自在に設けられた取付け手段を有し、前記車室内ミラー部と前記車室外ミラー部は前記取付け手段を回動中心にして連動して動くことを特徴とする請求項1または2記載の統合ミラー。
【請求項4】
前記車室内ミラー部を動かすことによってミラー位置が調整可能に設けられた請求項3記載の統合ミラー。
【請求項5】
前記車両外郭部は左右のフロントピラーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の統合ミラー。
【請求項6】
前記車室内ミラー部と前記車室外ミラー部は着座した運転者の視線以上の高さに配置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の統合ミラー。
【請求項7】
前記車室内ミラー部と前記車室外ミラー部は、所定の体格データに基づき決定される前記運転者視点位置以上の高さに配置されることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の統合ミラー。
【請求項8】
前記仮想視点は、前記フロントピラーの前方かつ車両コーナー部であって、地面から車高までの高さの範囲内に設けられることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の統合ミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【国際公開番号】WO2005/035314
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514565(P2005−514565)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014623
【国際出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】