説明

絶縁トロリーの集電装置

【課題】 絶縁トロリーの絶縁カバーの摩耗と摺接部の電気抵抗の増大を抑え、移動負荷への電力供給と信号伝送を確実に行うと共に、シューの走行を安定させ、脱線事故を防ぐことができる絶縁トロリーの集電装置を提供する。
【解決手段】 絶縁トロリー20の導体22に摺接しながら走行可能なシュー28と、これを保持するシューホルダ30と、これを支持してシュー28を前記導体22に押し付けるシューホルダ支持押し付け手段32とを備え、前記シューホルダ30におけるシュー28の長手方向の前後方位置に、滑りロッド34が絶縁カバー24の開口26内に挿入されるように固定して支持され、絶縁カバー24の開口26内に挿入された滑りロッド34の幅員が前記開口26内に挿入されたシュー28の幅員よりも大きく、該滑りロッド34の摩擦係数が前記開口26部分の摩擦係数よりも小さくなるように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクレーン、ホイスト、搬送台車等の移動負荷に電力を供給したり、信号を伝送したりする絶縁トロリーの集電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーン、ホイスト、搬送台車等の移動負荷に電力を供給したり、信号を伝送したりするために使用される絶縁トロリーの集電装置は、図7、8に示すような構成になっている。即ち、平板状に形成された銅(銅合金を含む。以下同じ)製の導体2及びこれをその長手方向に沿って開口4が存するように覆う硬質ポリ塩化ビニル製の絶縁カバー3を有する絶縁トロリー1にあって、その絶縁カバー3の開口4内に挿入され、導体2に摺接しながらその導体2の長手方向に走行可能な銅製のシュー(集電子)5と、シュー5を保持するシューホルダ6と、シューホルダ6を支持し、そのホルダ6を介してシュー5を絶縁トロリー1の導体2に押し付けるシューホルダ支持押し付け手段7とを備える。そして、シュー5が導体2に押し付けられながら絶縁カバー3の開口4内を導体2の長手方向に往復走行する際、導体2からシューホルダ6に取り付けられた電気ケーブル(光複合ケーブルを含む。以下同じ)(図示せず)を介して移動負荷の電源等に電力を供給したり、信号を伝送したりする。
【0003】
シューホルダ支持押し付け手段7は、シューホルダ6を軸9により回動自在に支持する第1支持部材8と、これより所定間隔をおいて配置され、移動負荷(図示せず)にブラケット11により支持される第2支持部材10と、第1支持部材8及び第2支持部材10との間に平行に配置され、これら部材8、10に平行リンクを形成するように各両端が軸14、15により回動自在に支持されて連結される一対の第1、第2集電アーム12、13と、これら集電アーム12、13間に斜め向きに懸架され、ばね引張り作用により、第1支持部材8及びシューホルダ6を介してシュー5を絶縁トロリー1の導体2に押し付ける引張コイルばねからなるばね部材16とを備える(特許文献1参照)。
【0004】
絶縁トロリー1は、その導体2が、図9(a)に示すように、断面コの字状に形成されたり、図9(b)(c)に示すように、断面8の字状に形成されたり、絶縁カバー3の開口4が図7、8、図9(a)(b)のような下方ではなく、図9(c)に示すように、側方に形成されたもの等がある。絶縁カバー3は導体2の電気絶縁のほか、シュー5が走行するためのガイドの機能も兼ねている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−95603号公報(発明の詳細な説明の段落番号0006乃至0007、図1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の絶縁トロリー1の集電装置では、シュー5が絶縁トロリー1の導体2に押し付けられながら絶縁カバー3の開口4内を導体2の長手方向に往復走行する際、シュー5が蛇行する等して絶縁カバー3の開口4部分(開口4内の部分を含む。以下同じ)に接触しながら、絶縁カバー3をガイドにして走行している。そこで、絶縁カバー3の開口4部分が磨耗して磨耗粉、削りかす、塵埃等(以下磨耗粉という)が発生し、導体2とシュー5間の摺接部に巻き込まれる恐れがある。磨耗粉が巻き込まれると、摺接部の電気抵抗が増大して、電力を供給する動力系では過熱事故が発生し、信号伝送を行う制御系では、伝送不具合が発生し易くなるという問題がある。また、絶縁カバー3はシュー5のガイドを兼ねるため、絶縁カバー3が摩耗することにより、シュー5の走行が不安定になるほか、開口4が広がることにより、シュー5が脱線事故を引き起こす恐れがある。更に、絶縁カバーの開口4部分を長手方向に沿って連続的に金属その他の耐磨耗性材料でガードすることも考えられるが、絶縁トロリー1が長尺体のため、それを新規に製造したり、改造したりする必要があり、費用が嵩む問題がある。
【0007】
本発明は上記の課題を解決し、絶縁トロリーの絶縁カバーの摩耗と摺接部の電気抵抗の増大を抑え、移動負荷への電力供給と信号伝送を確実に行うと共に、シューの走行を安定させ、脱線事故を防ぐことができる絶縁トロリーの集電装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載された発明は、導体及びこれを開口が存するように覆う絶縁カバーを有する絶縁トロリーにあって、絶縁カバーの開口内に挿入されて導体に摺接しながら走行可能なシューと、シューを保持するシューホルダと、シューホルダを支持し、シューを絶縁トロリーの導体に押し付けるシューホルダ支持押し付け手段とを備えた絶縁トロリーの集電装置において、前記シューホルダにおけるシューの長手方向の前後方位置に、滑りロッドが絶縁カバーの開口内に挿入されるように固定して支持され、絶縁カバーの開口内に挿入された(開口内に挿入された部分だけでなく、開口部分を含む。以下同じ)滑りロッドの幅員が絶縁カバーの開口内に挿入されたシューの幅員よりも大きく、該滑りロッドの摩擦係数が絶縁カバーの開口部分の摩擦係数よりも小さくなるように形成されることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項2に記載された発明は、導体及びこれを開口が存するように覆う絶縁カバーを有する絶縁トロリーにあって、絶縁カバーの開口内に挿入されて導体に摺接しながら走行可能なシューと、シューを保持するシューホルダと、シューホルダを支持し、シューを絶縁トロリーの導体に押し付けるシューホルダ支持押し付け手段とを備えた絶縁トロリーの集電装置において、前記シューホルダにおけるシューの長手方向の前後方位置に、回転ロッドが絶縁カバーの開口内に挿入されるように回転自在に支持され、絶縁カバーの開口内に挿入された回転ロッドの外径が絶縁カバーの開口内に挿入されたシューの幅員よりも大きく形成されることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項3に記載された発明は、導体及びこれを開口が存するように覆う絶縁カバーを有する絶縁トロリーにあって、絶縁カバーの開口内に挿入されて導体に摺接しながら走行可能なシューと、シューを保持するシューホルダと、シューホルダを支持し、シューを絶縁トロリーの導体に押し付けるシューホルダ支持押し付け手段とを備えた絶縁トロリーの集電装置において、前記シューホルダにおけるシューの長手方向の前後方位置に、導電性滑りロッドが絶縁カバーの開口内に挿入されるように固定して支持され、絶縁カバーの開口内に挿入された導電性滑りロッドの幅員が絶縁カバーの開口内に挿入されたシューの幅員よりも大きく、該導電性滑りロッドの硬さが絶縁カバーの開口部分の硬さよりも小さくなるように形成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1記載の絶縁トロリーの集電装置によると、前記滑りロッドの幅員がシューの幅員よりも大きく形成されているので、シューが導体に押し付けられながら絶縁カバーの開口内を導体の長手方向に走行する際、絶縁カバーの開口部分に直接接触しなくなる。従って、絶縁カバーの開口部分がシューとの接触で磨耗して磨耗粉を発生することがなくなる。また、前記滑りロッドの摩擦係数が絶縁カバーの開口部分の摩擦係数よりも小さくなるように形成されているので、シューの走行に伴って、滑りロッドが絶縁カバーの開口部分に接触しても滑り度合が大きくなる。従って、絶縁カバーの開口部分が磨耗して磨耗粉を発生することが抑えられる。その結果、導体とシュー間の摺接部に巻き込まれる磨耗粉の量が減少し、摺接部の電気抵抗の増大が抑えられて、電力を供給する動力系における過熱事故の発生や信号伝送を行う制御系における伝送不具合の発生を防止することができる。また、絶縁カバーの摩耗が抑えられるので、シューの走行が安定するほか、開口の広がりが抑えられるので、シューが脱線事故を引き起こすのを確実に防止することができる。更に、絶縁トロリーの開口部分を耐磨耗性材料でガードする必要がないので、絶縁トロリーを新規に製造したり、改造したりしなくて済み経済的である。
【0012】
本発明の請求項2記載の絶縁トロリーの集電装置によると、前記回転ロッドの外径がシューの幅員よりも大きく形成されているので、シューが導体に押し付けられながら絶縁カバーの開口内を導体の長手方向に走行する際、絶縁カバーの開口部分に直接接触しなくなる。従って、絶縁カバーの開口部分がシューとの接触で磨耗して磨耗粉を発生することがなくなる。また、回転ロッドがシューホルダに回転自在に支持されているので、シューの走行に伴って、回転ロッドが絶縁カバーの開口部分に接触したとき転がりながら回転する。従って、絶縁カバーの開口部分が磨耗して磨耗粉を発生することが抑えられる。その結果、導体とシュー間の摺接部に巻き込まれる磨耗粉の量が減少し、摺接部の電気抵抗の増大が抑えられて、電力を供給する動力系における過熱事故の発生や信号伝送を行う制御系における伝送不具合の発生を防止することができる。また、絶縁カバーの摩耗が抑えられるので、シューの走行が安定するほか、開口の広がりが抑えられるので、シューが脱線事故を引き起こすのを確実に防止することができる。更に、絶縁トロリーの開口部分を耐磨耗性材料でガードする必要がないので、絶縁トロリーを新規に製造したり、改造したりしなくて済み経済的である。
【0013】
本発明の請求項3記載の絶縁トロリーの集電装置によると、前記導電性滑りロッドの幅員がシューの幅員よりも大きく形成されているので、シューが導体に押し付けられながら絶縁カバーの開口内を導体の長手方向に走行する際、絶縁カバーの開口部分に直接接触しなくなる。従って、絶縁カバーの開口部分がシューとの接触で磨耗して磨耗粉を発生することがなくなる。また、前記導電性滑りロッドーの硬さが絶縁カバーの開口部分の硬さよりも小さくなるような導電材料で形成されているので、シューの走行に伴って、導電性滑りロッドが絶縁カバーの開口部分に接触したとき、導電性滑りロッドが磨耗して導電性の磨耗粉を発生する。その結果、導体とシュー間の摺接部に磨耗粉が巻き込まれても、摺接部の電気抵抗の増大が抑えられて、電力を供給する動力系における過熱事故の発生や信号伝送を行う制御系における伝送不具合の発生を防止することができる。また、絶縁カバーの摩耗が抑えられるので、シューの走行が安定するほか、開口の広がりが抑えられるので、シューが脱線事故を引き起こすのを確実に防止することができる。更に、絶縁トロリーの開口部分を耐磨耗性材料でガードする必要がないので、絶縁トロリーを新規に製造したり、改造したりしなくて済み経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の構成を図面により詳細に説明する。図1は本発明に係る絶縁トロリーの集電装置の第1実施形態を示すもので、(a)は一部断面正面図、(b)は(a)の左側面図、図2は図1のシューホルダを拡大して示す一部断面正面図、図3は図2の平面図、図4は図2の左側面図である。
【0015】
本実施形態の集電装置は、前記図に示すように、断面コの字状に形成されて下方に開口する銅製の導体22及びこれをその長手方向に沿って下方に開口26が存するように覆う硬質ポリ塩化ビニル製の絶縁カバー24を有する絶縁トロリー20にあって、その絶縁カバー24の開口26に挿入され、導体22に摺接しながらその導体22の長手方向に走行可能な銅製のシュー28と、シュー28を保持するシューホルダ30と、シューホルダ30を支持し、そのホルダ30を介してシュー28を絶縁トロリー20の導体22に押し付けるシューホルダ支持押し付け手段32とを備える。また、前記シューホルダ30のシュー28に隣接し、且つ、その長手方向軸線上の前後方位置に、絶縁カバー24の磨耗を抑える滑りロッド34が絶縁カバー24の開口26内に挿入されるように、螺着等により固定して垂直に支持される。そして、シュー28が導体22に押し付けられながら絶縁カバー24の開口26内を導体22の長手方向に往復走行する際、導体22からシューホルダ30に取り付けられた電気ケーブル36を介して移動負荷の電源等に電力を供給したり、信号を伝送したりする。
【0016】
シューホルダ支持押し付け手段32は、図1(a)に示すように、シューホルダ30を軸40により回動自在に支持する第1支持部材38と、これより所定間隔をおいて配置され、移動負荷(図示せず)に棒状のブラケット44により支持される第2支持部材42と、第1支持部材38及び第2支持部材42との間に平行に配置され、これら部材38、42に平行リンクを形成するように各両端が軸50、52により回動自在に支持されて連結される一対の第1、第2集電アーム46、48と、これら集電アーム46、48間に斜め向きに懸架され、ばね引張り作用により、第1支持部材38及びシューホルダ30を介してシュー28を絶縁トロリー20の導体22に押し付ける引張コイルばねからなるばね部材54とを備える。
【0017】
滑りロッド34は、図2、3に示すように、例えば、断面円形の棒柱状体からなり、絶縁カバー24の開口26内に挿入された滑りロッド34の幅員W1が絶縁カバー24の開口26内に挿入されたシュー28の幅員W2よりも大きく、また、絶縁カバー24の開口26内に挿入された滑りロッド34の外側面の摩擦係数が絶縁カバー24の開口26部分(内側面)の摩擦係数よりも小さくなるように形成される。本実施形態では、滑りロッド34全体が4弗化エチレン樹脂を成形加工して単一層に形成され、開口26内に挿入された部分の摩擦係数は略0.1である。一方、全体がポリ塩化ビニル製の絶縁カバー24の開口26部分の摩擦係数は略0.45であるので、滑りロッド34の前記部分の摩擦係数が絶縁カバー24の開口26部分(内側面)の摩擦係数よりも小さくなる。滑りロッド34は、前記絶縁カバー24の材質がポリ塩化ビニルの場合、前記4弗化エチレン樹脂以外に、ポリアセタール(摩擦係数略0.14)、高密度ポリエチレン(摩擦係数略0.18)、低密度ポリエチレン(摩擦係数略0.27)、ポリアミド(ナイロン66)(摩擦係数略0.37)等で形成することができる。なお、滑りロッド34は単一層の代わりに内外複数層に形成し、最外層を前記4弗化エチレン樹脂等で形成したり、二硫化モリブデンや潤滑材を被覆、塗布、又は含浸処理して形成したり等して外側面の摩擦係数が絶縁カバー24の開口26部分(内側面)の摩擦係数よりも小さくなるようにしてもよい。また、滑りロッド34は、断面楕円形、四角形、6角形等の多角形その他非円形状に形成してもよい。更に、滑りロッド34の外側面の硬さが絶縁カバー24の開口26部分の硬さよりも大きくなるようにしてもよい。そうすると、滑りロッド34の絶縁カバー24の開口26部分に対する滑り度合が一層良くなり、絶縁カバー24の磨耗をより低減させることができる。
【0018】
第1実施形態の集電装置によると、前記滑りロッド34の幅員W1がシュー28の幅員W2よりも大きく形成されているので、シュー28が導体22に押し付けられながら絶縁カバー24の開口26内を導体22の長手方向に走行する際、絶縁カバー24の開口26部分に直接接触しなくなる。従って、絶縁カバー24の開口26部分がシュー28との接触で磨耗して磨耗粉を発生することがなくなる。また、前記滑りロッド34の摩擦係数が絶縁カバー24の開口26部分の摩擦係数よりも小さくなるように形成されているので、シュー28の走行に伴って、滑りロッド34が絶縁カバー24の開口26部分に接触しても滑り度合が大きくなる。従って、絶縁カバー24の開口26部分が磨耗して磨耗粉を発生することが抑えられる。その結果、導体22とシュー28間の摺接部に巻き込まれる磨耗粉の量が減少し、摺接部の電気抵抗の増大が抑えられて、電力を供給する動力系における過熱事故の発生や信号伝送を行う制御系における伝送不具合の発生を防止することができる。また、絶縁カバー24の摩耗が抑えられるので、シュー28の走行が安定するほか、開口26の広がりが抑えられるので、シュー28が脱線事故を引き起こすのを確実に防止することができる。更に、絶縁トロリー20の開口26部分を耐磨耗性材料でガードする必要がないので、絶縁トロリー20を新規に製造したり、改造したりしなくて済み経済的である。
【0019】
図5は本発明に係る集電装置の第2実施形態の主要部である回転ロッド56を拡大して示す断面図である。本実施形態の集電装置は、前記第1実施形態の集電装置において、前記滑りロッド34の代わりに絶縁カバー24の磨耗を抑える回転ロッド56が使用される。この回転ロッド56は、前記シューホルダ30のシュー28に隣接し、且つ、その長手方向軸線上の前後方位置に螺着等により立設された固定軸58にボール、ローラベアリング、砲金材等の軸受材料で出来た平(滑り)軸受等の軸受60を介して絶縁カバー24の開口26内に挿入されるように、回転自在に、且つ、垂直に支持される。軸受60の摩擦係数は前記回転ロッド56の外周面及び絶縁カバー24の開口26部分(内側面)の摩擦係数よりも小さく設定され、回転ロッド56が絶縁カバー24の開口26部分に接触しながら走行したとき、絶縁カバー24に対して滑らず、転がりながら回転する。また、回転ロッド56は頭部が閉塞されたゴム、プラスチック又は金属製の円筒体からなり、絶縁カバー24の開口26内に挿入された回転ロッド56の外径が絶縁カバー24の開口26内に挿入されたシュー28の幅員W2よりも大きく形成される。なお、回転ロッド56は固定軸58を介さずシューホルダ30の前記位置に直に回転自在に支持するようにしてもよい。また、回転ロッド56が絶縁カバー24に対して転がりながら回転する(転がり接触をする)ので、回転ロッド56の外側面の摩擦係数を第1実施形態のようなシュー28の摩擦係数よりも小さくなるように設定することは必ずしも必要でない。前記以外の構成は第1実施形態のものと実質的に同じなので説明を省略する。
【0020】
第2実施形態の集電装置によると、前記回転ロッド56の外径Dがシュー28の幅員W2よりも大きく形成されているので、シュー28が導体22に押し付けられながら絶縁カバー24の開口26内を導体22の長手方向に走行する際、絶縁カバー24の開口26部分に直接接触しなくなる。従って、絶縁カバー24の開口26部分がシュー28との接触で磨耗して磨耗粉を発生することがなくなる。また、回転ロッド56がシューホルダ30に回転自在に支持されているので、シュー28の走行に伴って、回転ロッド56が絶縁カバー24の開口26部分に接触したとき、転がりながら回転する。従って、絶縁カバー24の開口26部分が磨耗して磨耗粉を発生することが抑えられる。その結果、導体22とシュー28間の摺接部に巻き込まれる磨耗粉の量が減少し、摺接部の電気抵抗の増大が抑えられて、電力を供給する動力系における過熱事故の発生や信号伝送を行う制御系における伝送不具合の発生を防止することができる。また、絶縁カバー24の摩耗が抑えられるので、シュー28の走行が安定するほか、開口26の広がりが抑えられるので、シュー28が脱線事故を引き起こすのを確実に防止することができる。更に、絶縁トロリー20の開口26部分を耐磨耗性材料でガードする必要がないので、絶縁トロリー20を新規に製造したり、改造したりしなくて済み経済的である。
【0021】
図6は本発明に係る集電装置の第3実施形態の主要部である導電性滑りロッド62を拡大して示す断面図である。本実施形態の集電装置は、前記第1実施形態の集電装置において、前記滑りロッド34の代わりに絶縁カバー24の磨耗を抑える導電性滑りロッド62が使用される。この導電性滑りロッド62は、前記シューホルダ30のシュー28に隣接し、且つ、その長手方向軸線上の前後方位置に、絶縁カバー24の開口26内に挿入されるように、螺着等により固定して垂直に支持される。この導電性滑りロッド62は、例えば、断面円形の棒柱状体からなり、絶縁カバー24の開口26内に挿入された導電性滑りロッド62の幅員W3が絶縁カバー24の開口26内に挿入されたシュー28の幅員W2よりも大きく、また、絶縁カバー24の開口26内に挿入された導電性滑りロッド62の外側面の硬さが絶縁カバー24の開口26部分(内側面)の硬さよりも小さくなるような軟質の導電材料で形成される。本実施形態では、絶縁カバー24が硬質ポリ塩化ビニルで形成される場合、導電性滑りロッド62全体が軟質ポリ塩化ビニルや軟質ポリエチレン等にカーボン、銅等の導電性粉末を混入した導電材料で単一層に形成される。なお、導電性滑りロッド62は単一層の代わりに、内外複数層に形成し、最外層の外側面の硬さが絶縁カバー24の開口26部分(内側面)の硬さよりも小さくなるような軟質の導電材料で形成してもよい。また、この滑りロッド62は、断面楕円形、四角形、6角形等の多角形その他非円形状に形成してもよい。更に、導電性滑りロッド62の外側面の摩擦係数を第1実施形態のようなシュー28の摩擦係数よりも小さくなるように設定することは必ずしも必要でない。前記以外の構成は第1実施形態のものと実質的に同じなので説明を省略する。
【0022】
第3実施形態の集電装置によると、前記導電性滑りロッド62の幅員W3がシュー28の幅員W2よりも大きく形成されているので、シュー28が導体22に押し付けられながら絶縁カバー24の開口26内を導体22の長手方向に走行する際、絶縁カバー24の開口26部分に直接接触しなくなる。従って、絶縁カバー24の開口26部分がシュー28との接触で磨耗して磨耗粉を発生することがなくなる。また、前記導電性滑りロッド62の硬さが絶縁カバー24の開口部分の硬さよりも小さくなるような導電材料で形成されているので、シュー28の走行に伴って、導電性滑りロッド62が絶縁カバー24の開口26部分に接触したとき、導電性滑りロッド62が磨耗して導電性の磨耗粉を発生する。その結果、導体22とシュー28間の摺接部に磨耗粉が巻き込まれても、摺接部の電気抵抗の増大が抑えられて、電力を供給する動力系における過熱事故の発生や信号伝送を行う制御系における伝送不具合の発生を防止することができる。また、絶縁カバー24の摩耗が抑えられるので、シュー28の走行が安定するほか、開口26の広がりが抑えられるので、シュー28が脱線事故を引き起こすのを確実に防止することができる。更に、絶縁トロリー20の開口26部分を耐磨耗性材料でガードする必要がないので、絶縁トロリー20を新規に製造したり、改造したりしなくて済み経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る絶縁トロリーの集電装置の第1実施形態を示すもので、(a)は一部断面正面図、(b)は(a)の左側面図である。
【図2】図1のシューホルダを拡大して示す一部断面正面図である。
【図3】図2の概略平面図である。
【図4】図2の左側面図である。
【図5】本発明に係る集電装置の第2実施形態の主要部である回転ロッドを拡大して示す断面図である。
【図6】本発明に係る集電装置の第3実施形態の主要部である導電性滑りロッドを拡大して示す断面図である。
【図7】従来の絶縁トロリーの集電装置を示す一部断面正面図である。
【図8】図7の一部断面側面図である。
【図9】図7、8における絶縁トロリーの変形例を示すもので、(a)は導体が断面コの字状に形成されたものの断面図、(b)は導体が断面8の字状に形成されたものの断面図、(c)は絶縁カバーの開口が側方に形成されたものの斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
20 絶縁トロリー
22 導体
24 絶縁カバー
26 開口
28 シュー
30 シューホルダ
32 シューホルダ支持押し付け手段
34 滑りロッド
36 電気ケーブル
38 第1支持部材
40 軸
42 第2支持部材
44 ブラケット
46 第1集電アーム
48 第2集電アーム
50 軸
52 軸
54 ばね部材
56 回転ロッド
58 固定軸
60 軸受
62 導電性滑りロッド
W1 滑りロッドの幅員
W2 シューの幅員
W3 導電性滑りロッドの幅員
D 回転ロッドの外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体及びこれを開口が存するように覆う絶縁カバーを有する絶縁トロリーにあって、絶縁カバーの開口内に挿入されて導体に摺接しながら走行可能なシューと、シューを保持するシューホルダと、シューホルダを支持し、シューを絶縁トロリーの導体に押し付けるシューホルダ支持押し付け手段とを備えた絶縁トロリーの集電装置において、前記シューホルダにおけるシューの長手方向の前後方位置に、滑りロッドが絶縁カバーの開口内に挿入されるように固定して支持され、絶縁カバーの開口内に挿入された滑りロッドの幅員が絶縁カバーの開口内に挿入されたシューの幅員よりも大きく、該滑りロッドの摩擦係数が絶縁カバーの開口部分の摩擦係数よりも小さくなるように形成されることを特徴とする絶縁トロリーの集電装置。
【請求項2】
導体及びこれを開口が存するように覆う絶縁カバーを有する絶縁トロリーにあって、絶縁カバーの開口内に挿入されて導体に摺接しながら走行可能なシューと、シューを保持するシューホルダと、シューホルダを支持し、シューを絶縁トロリーの導体に押し付けるシューホルダ支持押し付け手段とを備えた絶縁トロリーの集電装置において、前記シューホルダにおけるシューの長手方向の前後方位置に、回転ロッドが絶縁カバーの開口内に挿入されるように回転自在に支持され、絶縁カバーの開口内に挿入された回転ロッドの外径が絶縁カバーの開口内に挿入されたシューの幅員よりも大きく形成されることを特徴とする絶縁トロリーの集電装置。
【請求項3】
導体及びこれを開口が存するように覆う絶縁カバーを有する絶縁トロリーにあって、絶縁カバーの開口内に挿入されて導体に摺接しながら走行可能なシューと、シューを保持するシューホルダと、シューホルダを支持し、シューを絶縁トロリーの導体に押し付けるシューホルダ支持押し付け手段とを備えた絶縁トロリーの集電装置において、前記シューホルダにおけるシューの長手方向の前後方位置に、導電性滑りロッドが絶縁カバーの開口内に挿入されるように固定して支持され、絶縁カバーの開口内に挿入された導電性滑りロッドの幅員が絶縁カバーの開口内に挿入されたシューの幅員よりも大きく、該導電性滑りロッドの硬さが絶縁カバーの開口部分の硬さよりも小さくなるように形成されることを特徴とする絶縁トロリーの集電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−33935(P2006−33935A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206010(P2004−206010)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】