説明

絶縁型スイッチング電源装置

【課題】回路規模が小さく、スイッチング素子がオン期間或いはオフ期間に関わらず、1次側から2次側へエネルギー伝送できる絶縁型スイッチング電源装置を構成する。
【解決手段】第1のスイッチング素子Q1と第2のスイッチング素子Q2を相補的にオン/オフ制御して、Q1のオン期間には、第2の1次巻線ni及び第2の2次巻線noとで1次側から2次側へエネルギーを伝送し、Q2のオン期間には、第1の1次巻線np及び第1の2次巻線nsとでエネルギーを伝送し、ns及びnoは直列接続され、noに直列にインダクタが挿入され、Q1のオン期間或いはQ2のオン期間に関わらず、出力電流がインダクタを介して流れるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランスの1次−2次間でのエネルギー伝達が行われない期間が実質的に存在しない絶縁型スイッチング電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な絶縁型スイッチング電源装置としては、フォワードコンバータやフライバックコンバータ等が知られている。これらの絶縁型スイッチング電源装置は、いずれも主スイッチ素子がオンしている期間に、トランスまたはインダクタにエネルギーを蓄積して,1次側の主スイッチ素子がオンまたはオフしている間に1次側から2次側にエネルギーを伝送するという動作を行っており、主スイッチのオン/オフのいずれかの期間では、1次側から2次側へのエネルギー伝送が行われない期間が存在する。
【0003】
一方で、1次側の主スイッチ素子のオン期間、及びオフ期間の両方において、1次側から2次側へのエネルギー伝送を行う絶縁型スイッチング電源装置として、2個のトランスを持つ2トランス型DC−DCコンバータが知られている。その一例として下記の特許文献1を示す。
【0004】
下記の特許文献1は、図1に示すように、1次側回路としては、トランスT1の一次コイルW1と、トランスT2の一次コイルW4と、主スイッチQ1とからなる直列回路が、入力直流電源2に対して接続点10及び20において接続されている。
【0005】
また、トランスT2の一次コイルW4と主スイッチQ1との接続点と、入力直流電源2のマイナス端と主スイッチQ1との接続点20との間に、トランスT2の一次コイルW5と、トランスT1の一次コイルW2と、コンデンサC1とからなる直列回路が接続されている。
【0006】
さらに、トランスT2の一次コイルW4と主スイッチ素子Q1との接続点と、トランスT1の一次コイルW2とコンデンサC1との接続点との間に、コンデンサC2と副スイッチ素子Q2とからなる直列回路が接続されている。
【0007】
また、2次側回路としては、トランスT1の二次コイルW3と出力スイッチQ4からなる直列回路と、出力スイッチQ3とトランスT2の二次コイルW6からなる直列回路が、互いに並列になるように負荷系3の両端に接続されており、出力スイッチQ3及びQ4が同期整流素子として働くことにより、所謂センタータップ方式の全波整流回路を構成している。また、コンデンサC3が平滑コンデンサとして負荷系3の両端に接続されている。
【0008】
このように主スイッチ素子Q1がオンしている期間は、副スイッチ素子Q2はオフになっており、1次側では、トランスT1の一次コイルW1及びトランスT2の一次コイルW4に電流が流れ、2次側では、出力スイッチQ3がオン、Q4がオフとなり、トランスT2の二次コイルW6に電流が流れ、負荷系3に出力電圧が供給される。
【0009】
また、主スイッチ素子Q1がオフしている期間は、副スイッチ素子Q2がオンとなり、1次側では、トランスT1の一次コイルW2及びトランスT2の一次コイルW5に電流が流れ、2次側では、出力スイッチQ3がオフ、Q4がオンとなり、トランスT1の二次コイルW3に電流が流れ、負荷系3に出力電圧が供給される。
【特許文献1】特開2005−51994号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1に示されている絶縁型スイッチング電源装置においては、2つのトランスを用いることで、2次側のチョークコイルを不要とすることが出来るという特徴であるため、トランスが必然的に2つ必要となり、回路が大型化するという問題があった。
【0011】
また、チョークコイルが不要となるという利点は、1次側の主スイッチ素子Q1がオンの間もオフの間も、1次側から2次側にエネルギーを伝送できるという意味では有効だが、2次側のチョークコイルを不要とすると、1次側の主スイッチ素子Q1の、オンとオフの切り換わりの期間にて発生するスイッチングノイズのために出力リップルは大きくなり、平滑用のコンデンサC3が大型化するという問題があった。
【0012】
さらに、主スイッチ素子Q1のドレイン−ソース間には入力電圧VinにコンデンサC2の両端電圧を加えた電圧が印加されるため、高耐圧のスイッチ素子が要求され、高耐圧のスイッチ素子は導通時の抵抗成分であるオン抵抗が大きいためにスイッチ素子での導通損は増加する。このため、効率が低下したり、コストが増加するという問題があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上述の問題を解消して、主スイッチ素子のオン/オフ期間に関わらず、トランスの1次側から2次側へエネルギーが伝送でき、更にスイッチ素子の、オンとオフの切り換わりの期間にて発生するスイッチングノイズの発生を抑制すると同時に出力リップルを低減でき、また、低耐圧のスイッチ素子を用いることが出来る絶縁型スイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は前記課題を解決するために次のように構成する。
(1) 直流入力電圧Viが入力される直流電源入力部と、
一つの磁性部品で構成され、磁気的に結合された第1の1次巻線npと、第1の2次巻線nsと、第2の2次巻線noと、を備えたトランスTと、
前記第1の1次巻線npに直列に接続された第1のインダクタLrと、
前記第1の2次巻線ns及び前記第2の2次巻線noに生じる各々の電流を加算したものを整流する第1の整流素子Dsと、前記第2の2次巻線noに生じる電流を整流する第2の整流素子Dfとからなる整流回路と、
第1のスイッチング素子Q1と、第1のキャパシタC1と、第1のダイオードD1の並列回路からなる第1のスイッチ回路S1と、
第2のスイッチング素子Q2と、第2のキャパシタC2と、第2のダイオードD2の並列回路からなる第2のスイッチ回路S2と、
第3のキャパシタCrと、
前記直流電源入力部の両端に接続され、前記第1の1次巻線npと、前記第1のスイッチ回路S1とが直列に接続された第1の直列回路と、
前記第1のスイッチ回路S1の両端、または前記第1の1次巻線npの両端に接続され、前記第2のスイッチ回路S2と前記第3のコンデンサCrとが直列に接続された第2の直列回路と、を備え、
前記第1のスイッチ回路S1と前記第2のスイッチ回路S2は、共にオフである期間を挟んで互いに相補的にオン/オフを繰り返すように動作するように構成された絶縁型スイッチング電源装置であって、
前記トランスTは、前記第1のスイッチ回路S1と前記第2のスイッチ回路S2の相補的なオン/オフ動作に同期して、前記第1の2次巻線nsまたは前記第2の2次巻線noによって相補的に1次側から2次側にエネルギー伝送が行われるように巻回され、
前記第1の2次巻線nsと前記第2の2次巻線noは、互いに巻線の磁気極性が逆極性であって、
前記第2のインダクタLroを介して2次側に出力電圧Voが出力されるようにしたことを特徴とする。
(2)
直流入力電圧Viが入力される直流電源入力部と、
一つの磁性部品で構成され、磁気的に結合された第1の1次巻線npと第1の2次巻線nsと、第2の1次巻線niと第2の2次巻線noと、を備えたトランスTと、
前記第1の1次巻線npに直列に接続された第1のインダクタンスLrと、
前記第2の1次巻線niに直列に接続された第3のインダクタLriと、
前記第1の2次巻線noに直列に接続された第2のインダクタLroと、
前記第1の2次巻線ns及び前記第2の2次巻線noに生じる各々の電流を加算したものを整流する第1の整流素子Dsと、前記第2の2次巻線noに生じる電流を整流する第2の整流素子Dfとからなる整流回路と、 第1のスイッチング素子Q1と、第1のキャパシタC1と、第1のダイオードD1の並列回路からなる第1のスイッチ回路S1と、
第2のスイッチング素子Q2と、第2のキャパシタC2と、第2のダイオードD2の並列回路からなる第2のスイッチ回路S2と、
第3のキャパシタCrと、
前記直流電源入力部の両端に接続され、前記第1の1次巻線npまたは前記第2の1次巻線niと、前記第1のスイッチ回路S1とが直列に接続された第1の直列回路と、
前記第1のスイッチ回路S1の両端、または前記第1の1次巻線npまたは前記第2の1次巻線niの両端に接続され、前記第2のスイッチ回路S2と前記第3のコンデンサCrとが直列に接続された第2の直列回路と、
前記第1の直列回路に対して並列に接続される第4のキャパシタCeと、を備え、
前記第1のスイッチ回路S1と前記第2のスイッチ回路S2は、共にオフである期間を挟んで互いに相補的にオン/オフを繰り返すように動作するように構成された絶縁型スイッチング電源装置であって、
前記トランスTは、前記第1のスイッチ回路S1と前記第2のスイッチ回路S2の相補的なオン/オフ動作に同期して、前記第1の2次巻線nsまたは前記第2の2次巻線noによって相補的に1次側から2次側にエネルギー伝送が行われるように巻回され、
前記第1の2次巻線nsと前記第2の2次巻線noは、互いに巻線の磁気極性が逆極性であって、
前記第2のインダクタLroを介して2次側に出力電圧Voが出力されるようにしたことを特徴とする。
(3)
前記トランスTを、前記第1の1次巻線np及び前記第1の2次巻線nsとからなる第1のトランスT1と、前記第2の1次巻線ni及び前記第2の2次巻線noとからなる第2のトランスT2とで構成したことを特徴とする。
(4)
前記第1のインダクタLrとして、前記トランスTの1次側漏れ磁束を利用することを特徴とする。
(5)
前記第2のインダクタLroとして、前記トランスTの2次側漏れ磁束を利用したことを特徴とする。
(6)
前記第3のインダクタLriとして、前記トランスTの1次側漏れ磁束を利用したことを特徴とする。
(7)
前記トランスTにおいて、前記第2の2次巻線noに流れる電流により共通磁心に発生する直流磁束を打ち消す方向に、前記第1の1次巻線np、または前記第2の1次巻線niを巻回して、前記第1の2次巻線nsは、前記第2の2次巻線noと磁気極性を逆極性とし、かつ巻数を前記第2の2次巻線noの巻数より大きくしたことを特徴とする。
(8)
前記第1のスイッチ回路S1が導通状態、または前記第2のスイッチ回路S2が導通状態のときに流れる電流の向きに対して、前記第1の1次巻線npと前記第2の1次巻線niは磁気極性を同極性とし、前記第1の2次巻線nsと前記第2の2次巻線noは磁気極性を逆極性としたことを特徴とする。
(9)
前記第1のトランスT1の方が前記第2のトランスT2よりも磁気結合度を小さくしたことを特徴とする。
(10)
前記第1のスイッチ回路S1または前記第2のスイッチ回路S2は電界効果トランジスタであることを特徴とする。
(11)
前記第1のスイッチ回路S1または前記第2のスイッチ回路S2はスイッチ回路両端の電圧が0Vまたは0V付近まで低下してからスイッチング素子がターンオンする動作となるゼロ電圧スイッチング動作にて駆動されることを特徴とする。
(12)
前記整流回路は、前記第1の2次巻線nsによって1次側から2次側にエネルギー伝送が行われる期間において、前記第1の2次巻線nsに流れる電流を整流する第3のダイオードDsと、前記第2の2次巻線noによって1次側から2次側にエネルギー伝送が行われる期間において、前記第2の2次巻線noに流れる電流を整流する第4のダイオードDfとから構成されることを特徴とする。
(13)
前記第3のダイオードDsまたは前記第4のダイオードDfを、電界効果トランジスタに置き換えた同期整流回路で構成したことを特徴とする。
(14)
前記第1の2次巻線nsの巻数と、前記第2の2次巻線noの巻数との巻数比を、
ns:no=2:1
としたことを特徴とする。
(15)
前記トランスTにおいて、少なくとも前記第1の1次巻線npと前記第1の2次巻線nsとの磁気結合度が相対的に大きく、かつ前記第2の2次巻線noと他の巻線との磁気結合度が相対的に小さいことを特徴とする。
(16)
前記第1の1次巻線npと前記第1の2次巻線nsは積層巻きで構成され、前記第1の2次巻線nsと前記第2の2次巻線no、または前記第1の1次巻線npと第2の2次巻線noのうち、少なくとも一方が分割巻きで構成されたことを特徴とする。
(17)
前記トランスTは複数の脚部コアを有し、前記第1の1次巻線npと前記第1の2次巻線nsが同一の脚部コアに巻回され、少なくとも前記第2の2次巻線noは他の脚部コアに巻回されるように構成したことを特徴とする。
(18)
前記第1の1次巻線npと前記第1の2次巻線nsは積層巻きで構成され、前記第1の2次巻線nsと前記第2の2次巻線no、または前記第1の1次巻線npと第2の2次巻線noのうち、少なくとも一方が分割巻きで構成されたことを特徴とする。
(19)
前記第1のスイッチ回路S1及び前記第2のスイッチ回路S2は、PWM制御によって出力電圧Voを安定化するように制御することを特徴とする。
(20)
前記第3のキャパシタCrは、前記第1の1次巻線niと前記第1のスイッチ回路S1との間に接続されたことを特徴とする。
(21)
前記第1のスイッチ回路S1、または前記第2のスイッチ回路S2のいずれか一方は、その時比率(=オン時間/スイッチング周期)をDaとした場合、
0≦Da≦0.5
の範囲でのみ駆動し、他方は、
0.5≦Da≦1
の範囲でのみ駆動することを特徴とする。
(22)
前記電源入力部の入力電圧Viに対する前記出力電圧Voの比率で表される電圧変換率をM(=Vo/Vi)とし、前記第1の1次巻線npと前記第1の2次巻線nsの巻数比をn(=np/ns)とした場合に、
M=D(1−D)/n
で表されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、
(a)スイッチング素子がオン期間及びオフ期間のどちらであっても、1次側から2次側にエネルギー伝送ができ、電力変換効率に優れる。
(b)漏洩磁束型トランスで構成した1つの複合型トランスを用いることで、回路動作上必要な全てのインダクタンス素子を、トランスの漏れ磁束で代替させることができ、回路規模全体の大幅な小型化が可能となる。
(c)1次側から2次側へのエネルギー伝送において、インダクタンス素子にエネルギーを蓄積させることがなく、トランスの小型化が可能となる。
(d)重負荷時においてもトランスの最大磁束密度を十分に低減できるため、従来と比較して磁気飽和などに対して余裕をもってトランスを設計することができるため、トランスの小型軽量化が可能となる。
(e)一方の1次巻線niと2次巻線noとの磁気結合から他方の1次巻線npと2次巻線nsとの磁気結合にエネルギー伝送経路が切り換わる際の電流変動を抑制するためのフィルタインダクタを1次側及び2次側に有しているため、出力のリップルノイズを大幅に低減でき、平滑用キャパシタを小型化できる。
(f)出力側のフィルタインダクタLroをトランスの漏れ磁束で代替させるため、部品点数を削減でき、回路規模を大幅に小型化できる。
(g)第1のスイッチング素子Q1の動作電圧が入力電圧と同じ電圧まで下げられるので、スイッチング素子に低耐圧の半導体部品を用いることができ、低オン抵抗であるため、スイッチング損失の低減も見込め、低コスト、高効率化が実現できる。
(h)第1のスイッチング素子Q1及び第2のスイッチング素子Q2をゼロ電圧スイッチング(ZVS)駆動させることで、スイッチング損失をさらに低減することができ、高効率化を図ることができる。
(i)ゼロ電圧スイッチング(ZVS)駆動に必要な、1次側のインダクタンス素子をトランスの漏れ磁束で代替することで、部品点数を削減でき、回路規模を大幅に小型化できる。
(j)スイッチング素子Q2が電圧クランプ回路として機能するため、スイッチング素子Q1に対してスイッチングサージ電圧が印加されることを防ぐことができるので、スイッチング素子に低耐圧の半導体部品を用いることができ、低オン抵抗の素子を用いることで導通損失を低減でき、高効率化が実現できる。
といった効果を奏し、回路規模を簡素にでき、かつ高効率な絶縁型スイッチング電源装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
《第1の実施形態》
図2は第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【0017】
図2に示すように、この絶縁型スイッチング電源装置は、直流電圧Viが供給される電源入力部の+側端子及び−側端子に対して、第1のインダクタLriと複合型トランスTの第2の1次巻線niと第3のキャパシタCrと第1のスイッチ回路S1とからなる直列回路が接続され、複合型トランスTの第2の1次巻線niと第3のキャパシタCrとの接続点と、電源入力部の−側端子との間に、複合型トランスTの第1の1次巻線npと第2のインダクタLrと第4のキャパシタCeとからなる直列回路が接続され、第3のキャパシタCrと第1のスイッチ回路S1との接続点と、第2のインダクタLrと第4のキャパシタCeとの接続点との間に、第2のスイッチ回路S2が接続されている。
【0018】
なお、第1のスイッチ回路S1と第2のスイッチ回路S2は、両方が同時にオンするとショートしてしまうため、必要最小限のデッドタイムを挟んで互いに相補的にオン/オフ動作をするように構成される。
【0019】
前記第1のスイッチ回路S1は、第1のスイッチング素子Q1、第1のダイオードD1、および第1のキャパシタC1の並列接続回路で構成されていて、前記第2のスイッチ回路S2は、第2のスイッチング素子Q2、第2のダイオードD2、および第2のキャパシタC2の並列接続回路で構成されている。
【0020】
この第1のスイッチング素子Q1および第2のスイッチング素子Q2をMOSFET等の電界効果トランジスタで構成することによって、その寄生ダイオードを第1のダイオードD1及び第2のダイオードD2、寄生キャパシタを第1のキャパシタC1及び第2のキャパシタC2として利用することが可能である。このことによってこれらの個別部品としての実装を省略することができ、部品点数が削減できる。
【0021】
また、複合型トランスTの2次側には、第1の1次巻線と主に結合する第1の2次巻線nsと、第2の1次巻線niと主に結合する第2の2次巻線noが設けられており、第1の1次巻線npと第2の1次巻線nsは逆極性、第2の1次巻線niと第2の2次巻線noは同極性となるように巻回されている。
【0022】
複合型トランスTの、第1の2次巻線nsの一端には第3のダイオードDsのアノードが接続され、第1の2次巻線nsの他端には第4のダイオードDfのアノードが接続され、第4のダイオードDfのカソードは、第3のダイオードDsのカソードと接続される。また、第2の2次巻線noの一端は第3のダイオードDsのカソードと第4のダイオードDfのカソードとの接続点に接続され、第2の2次巻線noの他端は、第3のインダクタLroの一端に接続される。第3のインダクタLroの他端は、負荷Roの一端に接続され、負荷Roの他端は第1の2次巻線nsの他端に接続される。また、負荷Roの両端には平滑用の第5のキャパシタCoが並列に接続されている。
【0023】
このような構成により、複合型トランスTにおける第1の1次巻線np及び第1の2次巻線nsは、第1のスイッチング素子Q1がオフ、かつ第2のスイッチング素子Q2がオンの期間において出力に電力を送るフライバック方式として動作するように巻線の極性が設定され、第2の1次巻線ni及び第2の2次巻線noは、第1のスイッチング素子Q1がオン、かつ第2のスイッチング素子Q2がオフの期間において出力に電力を送るフォワード方式として動作するように巻線の極性が設定されるので、第1のスイッチング素子Q1がオン、かつ第2のスイッチング素子Q2がオフである期間中は、第2の2次巻線noに電圧が誘起されて第4のダイオードDfがオンし、第3のインダクタLroを介して出力電流を流して負荷Roに直流出力電圧が供給される。
【0024】
また、第1のスイッチング素子Q1がオフ、かつ第2のスイッチング素子Q2がオンである期間中は、第1の2次巻線nsに電圧が誘起されて第3のダイオードDsがオンし、第3のインダクタLroを介して出力電流を流して負荷Roに直流出力電圧が供給される。
【0025】
このように複合型トランスTにて、第1のスイッチ回路S1のオン期間、またはオフ期間のいずれにおいても、1次側から2次側へのエネルギー伝送が実現できるため、必要最低限のデッドタイムを除いて、実質的にスイッチング周期の全領域に渡って1次側から2次側へのエネルギー伝送が可能となる。更に伝送経路が切り換わる短い期間であるデッドタイム期間においては、トランスの漏れ磁束で構成できるフィルタインダクタLroにて、電流変動を抑制できるため出力のリップルノイズを大幅に低減でき、平滑用の第5のキャパシタCoを小型化できる。
【0026】
図18は図2に示した絶縁型スイッチング電源装置の回路各部の波形図である。以下、図2および図12を参照して回路動作を説明する。図18において、vgs1、vgs2はそれぞれスイッチング素子Q1、Q2のゲート−ソース間電圧であり、実質的にスイッチング素子Q1、Q2のオン・オフを表す波形である。また、vds1、vds2はそれぞれスイッチング素子Q1、Q2のドレイン−ソース間電圧であり、実質的にキャパシタC1、C2の両端電圧波形である。さらに、id1、id2、ii、ip、iLはそれぞれスイッチ回路S1、S2、第2の1次巻線ni、第1の1次巻線np、第3のインダクタLroに流れる電流の電流波形である。
【0027】
この絶縁型スイッチング電源装置の定格動作における動作は、1スイッチング周期Tsにおいて時刻t1〜t7の6つの動作状態に分けることができる。以下に各状態に分けて回路動作について説明する。
【0028】
(1)状態1 state1 [t1〜t2]
初めに第2のスイッチング素子Q2がターンオフした後、第1のスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間電圧Vds1がゼロ電圧近傍になると、第1のダイオードD1がターンオンする。このタイミングで、第1のスイッチング素子Q1をターンオンさせ、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)動作を行う。
【0029】
(2)状態2 state2 [t2〜t3]
第1のスイッチング素子Q1がターンオンされることにより、第1の1次巻線np及び第2の1次巻線niには電流が流れ、第1のスイッチング素子Q1に流れる電流id1及び第1の1次巻線npに流れる電流ipは1次関数的に増大する。この時、第1の1次巻線npと主に磁気的に結合している第1の2次巻線nsはフライバックコンバータとして動作し、第2の1次巻線niと主に磁気的に結合している第2の2次巻線noは、フォワードコンバータとして動作するため、複合型トランスTの2次側においては、第2の2次巻線noにのみ電流が流れるため、第3のダイオードDsはターンオフし、第4のダイオードDfがターンオンしている。よって複合型トランスTの2次側に流れる電流は、第4のダイオードDf→第1の2次巻線no→第3のインダクタLro→負荷Roという順番で流れる。
【0030】
(3)状態3 state3 [t3〜t4]
第1のスイッチング素子Q1がターンオフすると、第1のインダクタLri及び第2のインダクタLrに蓄積されたエネルギーによって、第1のキャパシタC1が充電され、それに伴い第1のスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間電圧Vds1は上昇する。また、同時に第2のキャパシタC2は放電され、それに伴い第2のスイッチング素子Q2のドレイン−ソース間電圧Vds2は降下する。
【0031】
(4)状態4 state4 [t4〜t5]
第2のスイッチング素子Q2のドレイン−ソース間電圧Vds2がゼロ電圧近傍になると、第2のダイオードD2がターンオンする。このタイミングで、第2のスイッチング素子Q2をターンオンさせ、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)動作を行う。
【0032】
(5)状態5 state5 [t5〜t6]
第2のスイッチング素子Q2がターンオンされることにより、第1の1次巻線np及び第2の1次巻線niは[状態2]の時とは逆方向に励磁され、第2の1次巻線niには電流が流れず、第1の1次巻線npは[状態2]の時とは逆方向に1次関数的に増大する。また、第2のスイッチング素子Q2に流れる電流id2も1次関数的に増大する。この時、第1の1次巻線npと主に磁気的に結合している第1の2次巻線nsはフライバックコンバータとして動作し、第2の1次巻線niと主に磁気的に結合している第2の2次巻線noは、フォワードコンバータとして動作するため、複合型トランスTの2次側においては、第1の2次巻線nsにのみ電流が流れるため、第3のダイオードDsがターンオンし、第4のダイオードDfはターンオフしている。よって複合型トランスTの2次側に流れる電流は、第1の2次巻線ns→第3のダイオードDs→第2の2次巻線no→第3のインダクタLro→負荷Roという順番で流れる。
【0033】
(6)状態6 state6 [t6〜t7]
第2のスイッチング素子Q2がターンオフすると、第2のインダクタLrに蓄積されたエネルギーによって、第2のキャパシタC2が充電され、それに伴い第2のスイッチング素子Q2のドレイン−ソース間電圧Vds2は上昇する。また、同時に第1のキャパシタC1は放電され、それに伴い第1のスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間電圧Vds1は降下する。この後、[状態1]の動作に戻る。
【0034】
第1のスイッチング素子Q1、及び第2のスイッチング素子Q2のオン/オフタイミングは、例えば、出力電圧を検出するための出力電圧検出回路等を有し、予め決められた電圧を超えたことをフォトカプラ等の絶縁帰還手段を用いてフィードバックし、それに基づいてオン/オフ制御が行われる。
【0035】
また、そのオン/オフ制御としてPWM(パルス幅変調)制御を用いた場合、スイッチング周波数は一定となるので、スイッチング動作にともなって発生するEMIノイズ等の周波数成分も一定の周波数に集中するために、ノイズ対策が取りやすいという利点がある。
【0036】
但し、本発明では、PWM制御に限らず、PAM(パルス振幅変調)制御やPFM(パルス周波数変調)等の各種制御方法やこれらを組み合わせた制御方式を用いることも可能である。
【0037】
図19は、第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置に用いられる複合型トランスTの外観図である。
【0038】
図19に示されているように、第1の1次巻線npと主に磁気的に結合する第1の2次巻線nsと、第2の1次巻線niと主に磁気的に結合する第2の2次巻線noとが、1つの複合型トランスとして構成されている。また、第1の2次巻線noは他の各巻線との磁気結合度が最も小さく、漏れ磁束が大きくなるように巻回されている。具体的には、図19や図21等に示すように、複合型トランスTは複数の脚部コアを有し、第1の1次巻線npと第1の2次巻線nsは同一の脚部コアに巻回され、少なくとも第2の2次巻線noは他の脚部コアに巻回するようにしている。また、第1の1次巻線npと第1の2次巻線nsを積層巻きで構成し、第2の2次巻線noをそれらに対して分割巻きで構成してもよい。これは第2のインダクタンスLroを複合型トランスTの漏れ磁束で代替する場合に、インダクタンス値を大きくとるための構成である。
【0039】
また、1つの複合型トランスTのうち、第1の2次巻線nsに誘起される電圧をVo1、第2の2次巻線noに誘起される電圧をVo2、負荷Roに出力される電圧をVoとすると、第1の2次巻線nsと第2の2次巻線noの巻数比が、ns:no=2:1の場合、
第1のスイッチング素子Q1がオン、かつ第2のスイッチング素子Q2がオフの時、出力電圧Voは、
Vo=Vo2
となり、第1のスイッチング素子Q1がオフ、かつ第2のスイッチング素子Q2がオンの時、出力電圧Voは、
Vo=Vo1−Vo2=2Vo2−Vo2=Vo2
となって、出力電圧Voのリップル成分をなくすことができる。
【0040】
また、ns:no=1:1とした場合、
第1のスイッチング素子Q1がオン、かつ第2のスイッチング素子Q2がオフの時に複合型トランスTのコアに生じる磁束の大きさと、第1のスイッチング素子Q1がオフ、かつ第2のスイッチング素子Q2がオンの時に複合型トランスTのコアに生じる磁束の大きさが等しくなり、トランスのコアが最も磁気飽和しにくくなるため、複合型トランスの設計に余裕度を持たせることができる。
【0041】
図19に示されたような、漏れ磁束を意図的に生じさせるように、磁気結合度が小さい箇所を設けたトランスを漏洩磁束型トランスと呼ぶ。こうした漏洩磁束型トランスの構造としては、例えば図19〜図26に示したようなバリエーションが考えられる。いずれも、第2の2次巻線noと、その他の巻線との磁気結合度を小さくし、かつ第1の1次巻線np及び第1の2次巻線nsの磁気結合度を大きくしたような構造となっている。コア構造は図示したように、「EE型コア」、「EI型コア」、「ER型コア」、「ERI型コア」、「LL型コア」、「UU型コア」等が考えられる。
【0042】
さらに、第1の実施形態において、複合型トランスTの、第1の1次巻線npと第2の1次巻線niの巻数を等しくした場合において、例えばスイッチング素子の時比率(=オン時間/スイッチング周期)をDaとし、第1の1次巻線npと第1の2次巻線nsの巻数比をnとした場合、電圧変換率M(=Vo/Vi)は、第3のキャパシタCrの両端電圧をVCr、第4のキャパシタCeの両端電圧をVCe、スイッチング素子のオン時間をTon、オフ時間をToffとした場合、Vi=VCe、D=Ton/(Ton+Toff)であるから、
(Vi−VCr)×Ton=−(Vi−VCe−VCr)×Toff
という式が成り立つ。これを解くと、
VCr=D×Viとなる。
また、同時に
Vo={(no/ni)×(Vi−VCr)×D+((no−ns)/np)×(−VCr)×(1−D)}×Vi
という式が成り立つ。ni=npであるから、これを解くと、
M=Da×(1−Da)/n
となる。よって、電圧変換率Mは、Da=0.5をピークとした放物線状の特性曲線を描くため、第1のスイッチング素子Q1と第2のスイッチング素子Q2は、Da=0.5を境界点にして対称動作が可能となる。すなわち、一方のスイッチング素子は
0≦Da≦0.5
の範囲で動作し、他方のスイッチング素子は
0.5≦Da≦1
の範囲で動作する。こうすることで、スイッチング素子の導通損を分散させることができ、放熱構造の小型化、ひいてはスイッチング電源装置の小型化が実現できる。
【0043】
この第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は次のとおりである。
【0044】
(a)スイッチング素子がオン期間及びオフ期間のどちらであっても、1次側から2次側にエネルギー伝送ができ、電力変換効率に優れる。
【0045】
(b)漏洩磁束型トランスで構成した1つの複合型トランスを用いることで、回路動作上必要な全てのインダクタンス素子を、トランスの漏れ磁束で代替させることができ、回路規模全体の大幅な小型化が可能となる。
【0046】
(c)1次側から2次側へのエネルギー伝送において、インダクタンス素子にエネルギーを蓄積させることがなく、トランスの小型化が可能となる。
【0047】
(d)重負荷時においてもトランスの最大磁束密度を十分に低減できるため、従来と比較して磁気飽和などに対して余裕をもってトランスを設計することができるため、トランスの小型軽量化が可能となる。
【0048】
(e)一方の1次巻線niと2次巻線noとの磁気結合から他方の1次巻線npと2次巻線nsとの磁気結合にエネルギー伝送経路が切り換わる際の電流変動を抑制するためのフィルタインダクタを1次側及び2次側に有しているため、出力のリップルノイズを低減でき、平滑用キャパシタを小型化できる。
【0049】
(f)出力側のフィルタインダクタLroをトランスの漏れ磁束で代替させるため、部品点数を削減でき、回路規模を大幅に小型化できる。
【0050】
(g)第1のスイッチング素子Q1の動作電圧が入力電圧と同じ電圧まで下げられるので、スイッチング素子に低耐圧の半導体部品を用いることができ、低オン抵抗であるため、スイッチング損失の低減も見込め、低コスト、高効率化が実現できる。
【0051】
(h)第1のスイッチング素子Q1及び第2のスイッチング素子Q2をゼロ電圧スイッチング(ZVS)駆動させることで、スイッチング損失をさらに低減することができ、高効率化を図ることができる。
【0052】
(i)ゼロ電圧スイッチング(ZVS)駆動に必要な、1次側のインダクタンス素子をトランスの漏れ磁束で代替することで、部品点数を削減でき、大幅にを小型化できる。
【0053】
(j)スイッチング素子Q2が電圧クランプ回路として機能するため、スイッチング素子Q1に対してスイッチングサージ電圧が印加されることを防ぐことができるので、スイッチング素子に低耐圧の半導体部品を用いることができ、低オン抵抗の素子を用いることで導通損失を低減でき、高効率化が実現できる。
【0054】
なお、第1の実施形態においては、第1の1次巻線npと、第1の2次巻線nsとを逆極性として構成し、第2の1次巻線niと、第2の2次巻線noとを同極性として構成しているが、第1の1次巻線npと第1の2次巻線nsとを同極性、第2の1次巻線niと第2の2次巻線noとを逆極性となるように巻回してもよい。
《第2の実施形態》
図3は第2の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。図2に示した回路と異なるのは、第3のダイオードDsの接続位置である。すなわち図3では、第3のダイオードは、第4のダイオードDfとアノード同士が接続されている。その他の構成は図2に示したものと同様である。
【0055】
このような構成であっても第1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
【0056】
この第2の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。

《第3の実施形態》
図4は第3の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。図2に示した回路と異なるのは、第1の1次巻線npと第1の2次巻線nsがフォワード方式として動作し、第2の1次巻線niと第2の2次巻線noがフライバック方式として動作する点である。すなわち図4では、第1のスイッチング素子Q1がオン、第2のスイッチング素子Q2がオフの間は、第1の2次巻線nsに電圧が誘起されて第3のダイオードDsがオンし、第3のインダクタLroを介して出力電流を流して負荷Roに直流出力電圧が供給される。
また、第1のスイッチング素子Q1がオフ、第2のスイッチング素子Q2がオンの間は、第2の2次巻線noに電圧が誘起されて第4のダイオードDfがオンし、第3のインダクタLroを介して出力電流を流して負荷Roに直流出力電圧が供給される。その他の構成は図2に示したものと同様である。
【0057】
このような構成であっても第1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
【0058】
この第3の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。
《第4の実施形態》
図5は第4の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図であり、第1の実施形態から、第2の1次巻線ni及び第2の2次巻線noを省いて構成した例である。第1の実施形態において、第1のスイッチ回路S1がオンしている期間における伝送エネルギーと、第2のスイッチ回路S2がオンしている期間における伝送エネルギーを等しくするためには、第1の1次巻線npと第2の1次巻線niの巻数は等しくする必要がある。すなわち、第1のスイッチ回路S1がオンしている期間には第2の1次巻線niに電流が流れ、第2のスイッチ回路S2がオンしている期間には第1の1次巻線npに電流が流れるのであるから、第2の1次巻線niを省略し、第1の1次巻線npのみでトランスTを駆動させることが可能となる。その他の点については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0059】
第4の実施形態は、第1の実施形態に比べると、トランスTにおいて第2の1次巻線niが不要となるので、より小型化することができる。
【0060】
この第2の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(b)、(c)、(d)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。
《第5の実施形態》
図6は第5の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図であり、第1の実施形態における第1の1次巻線npと第1の2次巻線nsとで第1のトランスT1を構成し、第2の1次巻線niと第2の2次巻線noとで第2のトランスT2を構成した例である。その他の点については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
第5の実施形態は、第1の実施形態に比べると、トランスが2つに分離されている分、小型化の面では不利であるが、第1のトランスT1と第2のトランスT2は、1つ1つは小型であり、実装面において配置場所の自由度を広げることができる。
【0062】
この第5の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。
《第6の実施形態》
図7は第6の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。図6に示した回路と異なるのは、2次側の第3のダイオードDsを第6のキャパシタCsに置き換えた点である。図6において、第1のスイッチング素子Q1がオン、第2のスイッチング素子Q2がオフの際には、第3のダイオードDsはオフであり、第1のスイッチング素子Q1がオフ、第2のスイッチング素子Q2がオンの際には、第3のダイオードDsはオンとなる。
【0063】
これに対して図7における回路は、所謂倍電圧整流回路を構成しており、第1のスイッチング素子Q1がオン、第2のスイッチング素子Q2がオフの際には、第6のキャパシタCsには電荷がチャージされ、第1のスイッチング素子Q1がオフ、第2のスイッチング素子Q2がオンの際には、第1の2次巻線nsには図4における実施形態に比べて倍の電圧が出力される。その他の点については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0064】
第6の実施形態は、第1の実施形態に比べて、第3のダイオードDsが存在しないため、負荷電流が大きい場合、その順方向電圧降下による損失をなくすことができ、高効率化が図れるという利点がある。
【0065】
また、第6の実施形態においては、特に複合型トランスTのうち、第1の2次巻線nsと第2の2次巻線noとの巻数比を、
ns:no=1:1
とすることが好ましい。この場合、第1の2次巻線nsに誘起される電圧をVo1、第2の2次巻線noに誘起される電圧をVo2、負荷Roに出力される電圧をVoとすると、第1のスイッチング素子Q1がオン、かつ第2のスイッチング素子Q2がオフの時、出力電圧Voは、
Vo=Vo2
となり、第1のスイッチング素子Q1がオフ、かつ第2のスイッチング素子Q2がオンの時、第6のキャパシタCs及び第4のダイオードDfからなる倍圧整流回路が構成されているため、出力電圧Voは、
Vo=2Vo1−Vo2=2Vo2−Vo2=Vo2
となり、出力電圧Voのリップル電圧をなくし、かつ複合型トランスTのコアが最も磁気飽和しにくい構成にすることができる。
【0066】
この第6の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。
《第7の実施形態》
図8は第7の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。図6に示した回路と異なるのは、第3のキャパシタCrの接続位置である。すなわち図8では、第3のキャパシタCrは、第1の1次巻線npと第2の1次巻線niとの間に接続されている。その他の構成は図6に示したものと同様である。
【0067】
このような構成であっても第1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
【0068】
この第7の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。
《第8の実施形態》
図9は第8の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。図7に示した回路と異なるのは、第1のキャパシタCrの接続位置である。すなわち図9では、第3のキャパシタCrは、第2のインダクタLrと第4のキャパシタCeとの接続点と、第2のスイッチ素子S2との間に接続されている。その他の構成は図7に示したものと同様である。
【0069】
このような構成であっても第1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
【0070】
第8の実施形態は、第1の実施形態に比べて、第3のダイオードDsが存在しないため、負荷電流が大きい場合、その順方向電圧降下による損失をなくすことができ、高効率化が図れるという利点がある。
【0071】
また、第8の実施形態においては、特に複合型トランスTのうち、第1の2次巻線nsと第2の2次巻線noとの巻数比を、
ns:no=1:1
とすることが好ましい。理由は第6の実施形態で示したのと同様である。
【0072】
この第8の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。
《第9の実施形態》
図10は第9の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【0073】
図10に示す絶縁型スイッチング電源装置は、第8の実施形態である図10に示す絶縁型スイッチング電源装置から、第4の実施形態同様に、第2の1次巻線niを省略し、第1の1次巻線npのみでトランスTを駆動させるように構成したものである。その他の点については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
このような構成であっても第1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
【0075】
この第9の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。
《第10の実施形態》
図11は第10の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【0076】
図11に示す絶縁型スイッチング電源装置は、直流電圧Viが供給される電源入力部の+側端子及び−側端子に対して、第1のインダクタLriと複合型トランスTの第2の1次巻線niと第1のスイッチ回路S1とからなる直列回路が接続され、複合型トランスTの第1の1次巻線niと第1のスイッチ回路S1との接続点と、電源入力部の−側端子との間に、複合型トランスTの第1の1次巻線npと第2のインダクタLrと第4のキャパシタCeとからなる直列回路と、第2のスイッチ回路S2と第3のキャパシタCrとからなる直列回路が、互いに並列に接続されている。その他の点については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0077】
このような構成であっても第1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
【0078】
この第10の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。
《第11の実施形態》
図12は第11の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【0079】
図12に示す絶縁型スイッチング電源装置は、第10の実施形態である図11に示す絶縁型スイッチング電源装置から、第4の実施形態同様に、第2の1次巻線niを省略し、第1の1次巻線npのみでトランスTを駆動させるように構成したものである。その他の点については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0080】
このような構成であっても第1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
【0081】
この第11の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。
《第12の実施形態》
図13は第12の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。図13に示す絶縁型スイッチング電源装置は、図8に示した第7の実施形態における、第3のキャパシタCrを第7のキャパシタCr1と第8のキャパシタCr2に分けた構成となっている。すなわち、直流電圧Viが供給される電源入力部の+側端子及び−側端子に対して、第1のインダクタLriと複合型トランスTの第2の1次巻線niと第1のスイッチ回路S1とからなる直列回路が接続され、複合型トランスTの第2の1次巻線niと第1のスイッチ回路S1との接続点と、電源入力部の−側端子との間に、複合型トランスTの第1の1次巻線npと第2のインダクタLrと第7のキャパシタCr1と第4のキャパシタCeとからなる直列回路と、第7のキャパシタCr1と第4のキャパシタCeとの接続点と、第2の1次巻線niと第1のスイッチ素子S1との接続点との間に、第2のスイッチ素子S2が接続され、第2のインダクタンスLrと第7のキャパシタCr1との接続点と、電源入力部の−側端子との間に、第8のキャパシタCr2が接続されている。その他の点については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0082】
このような構成であっても第1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
【0083】
この第12の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。
《第13の実施形態》
図14は第13の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【0084】
図14に示す絶縁型スイッチング電源装置は、第1の実施形態に対して、第3のダイオードDs及び第4のダイオードDfを、第3のスイッチング素子Q3、第5のダイオードD3、および第9のキャパシタC3の並列接続回路で構成された第3のスイッチ回路S3と、第4のスイッチング素子Q4、第6のダイオードD4、および第10のキャパシタC4の並列接続回路で構成された第4のスイッチ回路S4に置換し、同期整流回路を構成した点が相違する。第3のスイッチ回路S3及び第4のスイッチ回路S4としては、電界効果トランジスタで構成することが好ましい。その他の点については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0085】
このような構成であっても第1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
【0086】
この第13の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。
《第14の実施形態》
図15は第14の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【0087】
図15に示す絶縁型スイッチング電源装置は、第1の実施形態に対して、第1の2次巻線nsを、第3の2次巻線ns1、及び第4の2次巻線ns2で構成し、第3のダイオードDs、第4のダイオードDfと共に、センタータップ方式の全波整流回路を構成した点で相違する。その他の点については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0088】
このような構成であっても第1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
【0089】
この第14の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。
《第15の実施形態》
図16は第15の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【0090】
図16に示す絶縁型スイッチング電源装置は、その1次側回路については第9の実施形態である図10に示す絶縁型スイッチング電源装置と同一であり、2次側回路において、第2の2次巻線noが、第5の2次巻線no1、第6の2次巻線no2とからなり、第5の2次巻線no1と第6の2次巻線no2は、それぞれの一端が第1の2次巻線nsの両端に接続され、各々が第4のインダクタLro1、第5のインダクタLro2を介して他端が互いに接続され、かつ負荷Roの一端に接続される。
【0091】
また、第1の2次巻線nsの両端はそれぞれ第5のダイオードD1と第6のダイオードD6を介して接続され、その接続点は負荷Roの他端に接続されている。
【0092】
こうした接続によって、2次側回路は所謂カレントダブラ(倍電流整流)回路を構成している。その他の点については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0093】
このような構成であっても第1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
【0094】
この第15の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。
《第16の実施形態》
図17は第16の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【0095】
図17に示す絶縁型スイッチング電源装置は、その2次側回路については第15の実施形態である図16に示す絶縁型スイッチング電源装置と同一であり、その他の点については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0096】
このような構成であっても第1の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
【0097】
この第16の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成による効果は、第1の実施形態で挙げた効果のうち、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(h)、(i)、(j)の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】特許文献1に示されている絶縁型スイッチング電源装置の回路図で ある。
【図2】第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【図3】第2の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【図4】第3の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【図5】第4の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【図6】第5の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【図7】第6の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【図8】第7の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【図9】第8の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図である。
【図10】第9の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図であ る。
【図11】第10の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図で ある。
【図12】第11の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図で ある。
【図13】第12の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図で ある。
【図14】第13の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図で ある。
【図15】第14の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図で ある。
【図16】第15の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図で ある。
【図17】第16の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の回路図で ある。
【図18】第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の波形図であ る。
【図19】第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置に用いるトラ ンスの構造例である。
【図20】第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置に用いるトラ ンスの他の構造例である。
【図21】第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置に用いるトラ ンスの他の構造例である。
【図22】第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置に用いるトラ ンスの他の構造例である。
【図23】第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置に用いるトラ ンスの他の構造例である。
【図24】第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置に用いるトラ ンスの他の構造例である。
【図25】第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置に用いるトラ ンスの他の構造例である。
【図26】第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置に用いるトラ ンスの他の構造例である。
【符号の説明】
【0099】
T−複合型トランス
T1−第1のトランス
T2−第2のトランス
np−第1の1次巻線
ni−第2の1次巻線
ns−第1の2次巻線
no−第2の2次巻線
ns1−第3の2次巻線
ns2−第4の2次巻線
no1−第5の2次巻線
no2−第6の2次巻線
Lri−第1のインダクタ
Lr−第2のインダクタ
Lro−第3のインダクタ
Lro1−第4のインダクタ
Lro2−第5のインダクタ
C1−第1のキャパシタ
C2−第2のキャパシタ
Cr−第3のキャパシタ
Ce−第4のキャパシタ
Co−第5のキャパシタ
Cs−第6のキャパシタ
Cr1−第7のキャパシタ
Cr2−第8のキャパシタ
C3−第9のキャパシタ
C4−第10のキャパシタ
D1−第1のダイオード
D2−第2のダイオード
Ds−第3のダイオード
Df−第4のダイオード
D3−第5のダイオード
D4−第6のダイオード
D5−第7のダイオード
D6−第8のダイオード
Q1−第1のスイッチング素子
Q2−第2のスイッチング素子
Q3−第3のスイッチング素子
Q4−第4のスイッチング素子
S1−第1のスイッチ回路
S2−第2のスイッチ回路
S3−第3のスイッチ回路
S4−第4のスイッチ回路
Ro−負荷
Vo−出力電圧
Vi−電源入力部の入力電圧
Da−スイッチング素子の時比率
M−電圧変換率
Ton−スイッチング素子のオン時間
Toff−スイッチング素子のオフ時間
Vcr−第3のキャパシタの両端電圧
VCe−第4のキャパシタの両端電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流入力電圧Viが入力される直流電源入力部と、
一つの磁性部品で構成され、磁気的に結合された第1の1次巻線npと、第1の2次巻線nsと、第2の2次巻線noと、を備えたトランスTと、
前記第1の1次巻線npに直列に接続された第1のインダクタLrと、
前記第1の2次巻線ns及び前記第2の2次巻線noに生じる各々の電圧を加算したものを整流する第1の整流素子Dsと、前記第2の2次巻線noに生じる電圧を整流する第2の整流素子Dfとからなる整流回路と、
第1のスイッチング素子Q1と、第1のキャパシタC1と、第1のダイオードD1の並列回路からなる第1のスイッチ回路S1と、
第2のスイッチング素子Q2と、第2のキャパシタC2と、第2のダイオードD2の並列回路からなる第2のスイッチ回路S2と、
第3のキャパシタCrと、
前記直流電源入力部の両端に接続され、前記第1の1次巻線npと、前記第1のスイッチ回路S1とが直列に接続された第1の直列回路と、
前記第1のスイッチ回路S1の両端、または前記第1の1次巻線npの両端に接続され、前記第2のスイッチ回路S2と前記第3のコンデンサCrとが直列に接続された第2の直列回路と、を備え、
前記第1のスイッチ回路S1と前記第2のスイッチ回路S2は、共にオフである期間を挟んで互いに相補的にオン/オフを繰り返すように動作するように構成された絶縁型スイッチング電源装置であって、
前記トランスTは、前記第1のスイッチ回路S1と前記第2のスイッチ回路S2の相補的なオン/オフ動作に同期して、前記第1の2次巻線nsまたは前記第2の2次巻線noによって相補的に1次側から2次側にエネルギー伝送が行われるように巻回され、
前記第1の2次巻線nsと前記第2の2次巻線noは、互いに巻線の磁気極性が逆極性であって、
前記第2のインダクタLroを介して2次側に出力電圧Voが出力されるようにしたことを特徴とする絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項2】
直流入力電圧Viが入力される直流電源入力部と、
一つの磁性部品で構成され、磁気的に結合された第1の1次巻線npと第1の2次巻線nsと、第2の1次巻線niと第2の2次巻線noと、を備えたトランスTと、
前記第1の1次巻線npに直列に接続された第1のインダクタンスLrと、
前記第2の1次巻線niに直列に接続された第3のインダクタLriと、
前記第1の2次巻線noに直列に接続された第2のインダクタLroと、
前記第1の2次巻線ns及び前記第2の2次巻線noに生じる各々の電圧を加算したものを整流する第1の整流素子Dsと、前記第2の2次巻線noに生じる電圧を整流する第2の整流素子Dfとからなる整流回路と、 第1のスイッチング素子Q1と、第1のキャパシタC1と、第1のダイオードD1の並列回路からなる第1のスイッチ回路S1と、
第2のスイッチング素子Q2と、第2のキャパシタC2と、第2のダイオードD2の並列回路からなる第2のスイッチ回路S2と、
第3のキャパシタCrと、
前記直流電源入力部の両端に接続され、前記第1の1次巻線npまたは前記第2の1次巻線niと、前記第1のスイッチ回路S1とが直列に接続された第1の直列回路と、
前記第1のスイッチ回路S1の両端、または前記第1の1次巻線npまたは前記第2の1次巻線niの両端に接続され、前記第2のスイッチ回路S2と前記第3のコンデンサCrとが直列に接続された第2の直列回路と、
前記第1の直列回路に対して並列に接続される第4のキャパシタCeと、を備え、
前記第1のスイッチ回路S1と前記第2のスイッチ回路S2は、共にオフである期間を挟んで互いに相補的にオン/オフを繰り返すように動作するように構成された絶縁型スイッチング電源装置であって、
前記トランスTは、前記第1のスイッチ回路S1と前記第2のスイッチ回路S2の相補的なオン/オフ動作に同期して、前記第1の2次巻線nsまたは前記第2の2次巻線noによって相補的に1次側から2次側にエネルギー伝送が行われるように巻回され、
前記第1の2次巻線nsと前記第2の2次巻線noは、互いに巻線の磁気極性が逆極性であって、
前記第2のインダクタLroを介して2次側に出力電圧Voが出力されるようにしたことを特徴とする絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項3】
前記トランスTを、前記第1の1次巻線np及び前記第1の2次巻線nsとからなる第1のトランスT1と、前記第2の1次巻線ni及び前記第2の2次巻線noとからなる第2のトランスT2とで構成したことを特徴とする請求項2に記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項4】
前記第1のインダクタLrとして、前記トランスTの1次側漏れ磁束を利用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項5】
前記第2のインダクタLroとして、前記トランスTの2次側漏れ磁束を利用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項6】
前記第3のインダクタLriとして、前記トランスTの1次側漏れ磁束を利用することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項7】
前記トランスTにおいて、前記第2の2次巻線noに流れる電流により共通磁心に発生する直流磁束を打ち消す方向に、前記第1の1次巻線np、または前記第2の1次巻線niを巻回して、前記第1の2次巻線nsは、前記第2の2次巻線noと磁気極性を逆極性とし、かつ巻数を前記第2の2次巻線noの巻数より大きくしたことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項8】
前記第1のスイッチ回路S1が導通状態、または前記第2のスイッチ回路S2が導通状態のときに流れる電流の向きに対して、前記第1の1次巻線npと前記第2の1次巻線niは磁気極性を同極性とし、前記第1の2次巻線nsと前記第2の2次巻線noは磁気極性を逆極性としたことを特徴とする請求項7に記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項9】
前記第1のトランスT1の方が前記第2のトランスT2よりも磁気結合度を小さくしたことを特徴とする請求項8に記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項10】
前記第1のスイッチ回路S1または前記第2のスイッチ回路S2は電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項11】
前記第1のスイッチ回路S1または前記第2のスイッチ回路S2はスイッチ回路両端の電圧が0Vまたは0V付近まで低下してからスイッチング素子がターンオンする動作となるゼロ電圧スイッチング動作にて駆動されることを特徴とする請求項10に記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項12】
前記整流回路は、前記第1の2次巻線nsによって1次側から2次側にエネルギー伝送が行われる期間において、前記第1の2次巻線nsに流れる電流を整流する第3のダイオードDsと、前記第2の2次巻線noによって1次側から2次側にエネルギー伝送が行われる期間において、前記第2の2次巻線noに流れる電流を整流する第4のダイオードDfとから構成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項13】
前記第3のダイオードDsまたは前記第4のダイオードDfを、電界効果トランジスタに置き換えた同期整流回路で構成したことを特徴とする請求項12に記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項14】
前記第1の2次巻線nsの巻数と、前記第2の2次巻線noの巻数との巻数比を、
ns:no=2:1
としたことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項15】
前記トランスTにおいて、少なくとも前記第1の1次巻線npと前記第1の2次巻線nsとの磁気結合度が相対的に大きく、かつ前記第2の2次巻線noと他の巻線との磁気結合度が相対的に小さいことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項16】
前記第1の1次巻線npと前記第1の2次巻線nsは積層巻きで構成され、前記第1の2次巻線nsと前記第2の2次巻線no、または前記第1の1次巻線npと第2の2次巻線noのうち、少なくとも一方が分割巻きで構成されたことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項17】
前記トランスTは複数の脚部コアを有し、前記第1の1次巻線npと前記第1の2次巻線nsが同一の脚部コアに巻回され、少なくとも前記第2の2次巻線noは他の脚部コアに巻回されるように構成したことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項18】
前記第1の1次巻線npと前記第1の2次巻線nsは積層巻きで構成され、前記第1の2次巻線nsと前記第2の2次巻線no、または前記第1の1次巻線npと第2の2次巻線noのうち、少なくとも一方が分割巻きで構成されたことを特徴とする請求項17のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項19】
前記第1のスイッチ回路S1及び前記第2のスイッチ回路S2は、PWM制御によって出力電圧Voを安定化するように制御することを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項20】
前記第3のキャパシタCrは、前記第1の1次巻線niと前記第1のスイッチ回路S1との間に接続されたことを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項21】
前記第1のスイッチ回路S1、または前記第2のスイッチ回路S2のいずれか一方は、その時比率(=オン時間/スイッチング周期)をDaとした場合、
0≦Da≦0.5
の範囲でのみ駆動し、他方は、
0.5≦Da≦1
の範囲でのみ駆動することを特徴とする請求項20に記載の絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項22】
前記電源入力部の入力電圧Viに対する前記出力電圧Voの比率で表される電圧変換率をM(=Vo/Vi)とし、前記第1の1次巻線npと前記第1の2次巻線nsの巻数比をn(=np/ns)とした場合に、
M=D(1−D)/n
で表されることを特徴とする請求項21に記載の絶縁型スイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−171829(P2009−171829A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191174(P2008−191174)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】