説明

絶縁層付き導電性部材形成方法及び絶縁層付き導電性部材

【課題】簡便な方法で、導電性部材の所望の位置に精度良く絶縁層を形成する事のできる絶縁層付き導電性部材形成方法及び絶縁層付き導電性部材を提供する。
【解決手段】開口部を有する導電性部材の表面に絶縁性樹脂層をラミネートによって形成し、開口部を覆った後、開口部の絶縁性樹脂層をセルフアライメントで除去する工程を含む絶縁層付き導電性部材形成方法及び絶縁層付き導電性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性部材に絶縁層を形成するための絶縁層付き導電性部材形成方法及び、該方法を利用して作製した絶縁層付き導電性部材に関し、更に詳しくは、簡便な方法で、導電性部材の所望の位置に精度良く、絶縁層を形成する事のできる絶縁層付き導電性部材形成方法及び絶縁層付き導電性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型、多機能化に伴い、電子基板の高密度化や配線パターンの微細化が進められており、電子基板への電子部品の高密度実装化が広く行われている。これに伴い、部品の小型化が進展し、部品の端子間もより微細になってきている。これらの電子部品は最終的には、電子基板を実装してから、電気的な検査を行って、良品、不良品の選別が行われるが、特に半導体チップ部品等は、できるだけ上流の段階で良品、不良品の選別を行う事が、不良品廃棄の際のコスト負担を軽減する事ができ好ましい。
【0003】
電気的な検査は、コンタクトプローブと呼ばれる導電体からなるプローブを部品端子部に接触させる事で行われる。実際には、同時に多数のコンタクトプローブを部品上の端子パターンに合わせて配置し、接触させる必要があるため、多数のコンタクトプローブを端子パターンに合わせて配置し、検査しやすくしたプローブカードが使用される(例えば、特許文献1参照)。プローブカードの形状は、多くは円形(長方形など他の形もある)で、カードの周辺部にテスト装置との接続端子、中央に検査すべき部品に接触するコンタクトプローブが取りつけられている。コンタクトプローブは、周りから中心部に向けて略水平に取りつけるカンチレバー型(水平型)と呼ばれる構造と、上から下に垂直にコンタクトプローブを取りつける垂直型(スプリング型)がある。垂直型のコンタクトプローブは、チューブの両側に接点として使用するピポットが突き出し、中にコイルが入っている構造となっている。片方のピボットは、検査すべき部品の端子に対しての接点となり、もう片方は検査のための配線取り出し用のプリント配線板に接続される構成となる。
【0004】
最近の高密度化の流れから、隣接するコンタクトプローブ間の間隔を狭める事が求められている。しかし、プローブカードを用いた場合、構造的な点からこの間隔を狭める事ができなかった。そこで、より狭い間隔でコンタクトプローブを配列する事のできる積層プローブコンタクトが提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0005】
この積層プローブコンタクトはコンタクトプローブ部分を超薄板で形成し、それらを重ね合わせる事で、コンタクトプローブの寸法を微細化するとともに、隣り合うコンタクトプローブ同士の間隔を狭めて、部品の微細な端子パターンの検査を行える様にしたものである。ただし、この積層プローブコンタクトの場合には、隣り合うコンタクトプローブ間の電気的な短絡を避けるため絶縁層を形成する必要がある。
【0006】
積層プローブコンタクトは次のようにして作製される。まず、コンタクトプローブとなる導電性の板材を所望の形状に加工した開口部を有する導電性部材に、絶縁層を形成する。絶縁層の形成方法としては、フッ素樹脂微粉末等の絶縁体を蒸着法や静電被覆法によって導電性部材表面全面に形成し、その後、プローブ先端部の絶縁層を除去する方法がある。この方法で絶縁層を形成する事により、コンタクトプローブ同士を近接させても、両プローブ間の短絡等が発生せずに、信頼性が確保される。絶縁層の除去方法は、絶縁層を溶解する有機溶剤等に浸漬する方法により行われている。
【0007】
しかし、このような絶縁層の形成方法では、蒸着装置が必要となり、手間がかかるとともに、充分な蒸着膜厚を形成するには、時間がかかり、生産性も高いものではなかった。更に、プローブ先端部の絶縁層除去の工程が必要になる事と、精度良く絶縁層の除去を行う事が難しいという問題もあった。
【0008】
また、蒸着を用いずに絶縁性フィルムを介在させる事で絶縁層を形成する方法も提案されているが、この方法では、絶縁性フィルムをコンタクトプローブの形状に合わせて別途加工する必要があり、より微細かつ複雑なコンタクトプローブ形状となる場合には、絶縁性フィルムの加工が難しくなるとともに、積層する際のハンドリングも難しく、良好に位置合わせを行って重ね合わせる事も難しいという問題があった。
【0009】
また、スクリーン印刷法やフォトリソグラフィー法の手段を利用して、位置合わせ作業を行ってコンタクトプローブの形状に合わせて絶縁層を形成する事も可能ではあるが、その場合には、それぞれスクリーン版やフォトマスクを新たに作製する手間とコストがかかるとともに、部品がより微細になってくると位置合わせ作業の難しさから、所望の位置に絶縁層を形成する事ができなかった。
【0010】
図9は絶縁層3を形成した開口部2を有する導電性部材1における位置ずれを示す概念図である。導電性部材1の開口部2の開口部エッジを基準とした絶縁層3のエッジがオフセット幅D0(設計オフセット幅)となるように、絶縁層を形成すべきところ、位置ずれが発生すると、D0よりも広いオフセット幅D1と、D0よりも狭いオフセット幅D2となる部位が発生してしまう。オフセット幅が広すぎると、絶縁性能が得られずに、近接するコンタクトプローブ間で短絡が発生する可能性がある。また、オフセット幅が狭すぎると、プローブ先端部等の導電性部材が露出していなければならない部分で、接触不良等が発生する事がある。
【特許文献1】特開平5−55316号公報
【特許文献2】特開平8−86809号公報
【特許文献3】特開2001−83179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、積層プローブコンタクト等を作製するための導電性部材に絶縁層を、簡便に、精度良く形成するための絶縁層付き導電性部材形成方法及び絶縁層付き導電性部材を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、
(1)開口部を有する導電性部材の表面に絶縁性樹脂層をラミネートによって形成し、開口部を覆った後、開口部の絶縁性樹脂層をセルフアライメントで除去する工程を含む絶縁層付き導電性部材形成方法を見出した。
【0013】
(2)また、(1)の発明において、開口部の絶縁性樹脂層をセルフアライメントで除去する工程が、絶縁性樹脂層をラミネートした面とは反対側の面から樹脂層除去液を供給して開口部の絶縁性樹脂層を除去する工程である絶縁層付き導電性部材形成方法を見出した。
【0014】
(3)また、(1)の発明において、開口部の絶縁性樹脂層をセルフアライメントで除去する工程が、開口部以外の絶縁性樹脂層の上に更に電着樹脂層を形成した後に、電着樹脂層を形成した面から樹脂層除去液を供給して開口部の絶縁性樹脂層を除去する工程である絶縁層付き導電性部材形成方法を見出した。
【0015】
(4)また、(1)から(3)のいずれかの発明によって形成した絶縁層付き導電性部材を見出した。
【0016】
(5)また、(4)の発明において、絶縁層が導電性部材の両面に形成されている絶縁層付き導電性部材を見出した。
【発明の効果】
【0017】
(1)開口部を有する導電性部材の表面に絶縁性樹脂層をラミネートによって形成し、開口部を覆った後、開口部の絶縁性樹脂層をセルフアライメントで除去する工程を含む事で、あらかじめ所定の膜厚に設定したフィルム状の絶縁性樹脂層を使用する事により、膜厚が均一な絶縁性樹脂層を簡便に形成する事ができる。また、開口部の絶縁性樹脂層をセルフアライメントで除去する事により、導電性部材の開口部に沿って、精度良く、絶縁層を簡便に形成する事ができる。
【0018】
(2)また、(1)の発明において、開口部の絶縁性樹脂層をセルフアライメントで除去する工程が、絶縁性樹脂層をラミネートした面とは反対側の面から樹脂層除去液を供給して開口部の絶縁性樹脂層を除去する工程である事により、湿式処理により簡便にかつ精度良く、セルフアライメントでの開口が可能となり、導電性部材の絶縁性樹脂層で覆われている部分の幅のコントロールを良好に行う事が可能となる。また、ラミネート及び湿式処理での絶縁層形成であるので、機械的な加工処理とは異なり、導電性部材に加わるストレスは少なく、処理前後での導電性部材の寸法精度は良好に保たれ、絶縁層付き導電性部材の加工ができる。
【0019】
(3)また、(1)の発明において、開口部の絶縁性樹脂層をセルフアライメントで除去する工程が、開口部以外の絶縁性樹脂層の上に更に電着樹脂層を形成した後に、電着樹脂層を形成した面から樹脂層除去液を供給して開口部の絶縁性樹脂層を除去する工程である事により、電着樹脂層の付着状態を適正にコントロールする事で、絶縁層の除去領域のコントロールを良好に行う事ができる。また、導電性部材の両面に絶縁性樹脂層を形成する必要がある場合には、一括で両面処理が行えるため高い生産性が得られる。
【0020】
(4)また、(1)から(3)のいずれかの発明によって形成した絶縁層付き導電性部材は、導電性部材の絶縁性樹脂層で覆われている部分及び導電性部材が露出している部分の幅が設計通りの値に精度良く形成された絶縁層付き導電性部材を得る事ができる。導電性部材を形成した後に(1)から(3)のいずれかの発明によって絶縁樹脂層を形成するため、導電性部材の加工精度を良好に保ったまま、絶縁層を所望の位置に精度良く形成した絶縁層付き導電性部材を得る事ができる。
【0021】
(5)また、(4)の発明において、絶縁層が導電性部材の両面に形成されている絶縁層付き導電性部材は、絶縁層を所望の位置に両面とも精度良く形成されているため、部品検査時等の際に隣り合うプローブ同士の重なりが多少ずれたとしても、それぞれの導電性部材のプローブ先端部に露出している部分の幅が両面とも常に適正な幅に保たれているため、高い絶縁信頼性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の絶縁層付き導電性部材形成方法及び絶縁層付き導電性部材について詳細に説明する。積層プローブコンタクトへの絶縁層形成を例に挙げて説明するが、本発明の趣旨に反しない限り、以下の例に限定されるものではない。
【0023】
本発明に係わる開口部を有する導電性部材は、所望の形状に加工する事が可能であれば、任意の導電性の板材を用いる事ができる。積層プローブコンタクトを形成する場合には、使用条件によって、材質、形状が選ばれる。より微細なパターンの検査を行うには、コンタクトプローブの導電性部材の厚みは薄くなくてはならず、加工のしやすさや剛直性から、銅、銅合金、タングステン、焼入れ帯鋼板、ベリリウム合金等が好適に用いられる。
【0024】
積層プローブコンタクトを形成する場合は、まず、第一に導電性部材の加工を行う。通常、エッチング加工やレーザ加工を行う。図1に積層プローブコンタクトに用いられる導電性部材の一例を示す。導電性部材1の中には、実際に積層プローブコンタクトとして使用される部分、すなわち、コンタクトプローブ部品11が複数面付けされて形成されている。図1の場合には、説明のため2個面付けされているが、より多くのコンタクトプローブ部品11を、一枚の導電性部材1の中に面付けする事もできるし、少なくする事もできる。積層プローブコンタクト用のコンタクトプローブ部品11はリード部12と呼ばれる部分でワク部13と連結されている状態となっている。コンタクトプローブ部品11の周囲及び内部には開口部2が形成されている。
【0025】
本発明の絶縁層付き導電性部材形成方法及び絶縁層付き導電性部材は、この導電性部材1に絶縁層の形成をセルフアライメントで行う。小規模な処理設備で処理を行う場合には、各コンタクトプローブ部品11をリード部12から切断して、ワク部13から切り離してから、絶縁層の形成をセルフアライメントで行う事も可能である。この場合は、積層プローブコンタクト部品1個を導電性部材1として処理を行う。その際には、積層プローブコンタクトの周囲部分も開口部と称する。
【0026】
本発明に係わる絶縁性樹脂層のラミネートとは、すでにシート状に形成されている絶縁性樹脂層シートを熱圧着させる工程である。密着性が確保され、かつ、導電性部材に熱や圧力によって歪みが発生する事がなく、均一な膜厚でのラミネートができればいずれの方法でも使用可能であるが、好ましくは、熱ロールによるラミネートにより行い、温度は40℃から150℃、より好ましくは、60℃から120℃の範囲でラミネートを行う。圧力は、熱ロールでのラミネートの場合には、線圧力で、1N/cmから100N/cmの範囲、より好ましくは5N/cmから50N/cmの範囲である。このラミネート工程により、開口部を有する導電性部材に膜厚の均一な絶縁性樹脂層を良好に形成する事が可能となる。
【0027】
本発明の絶縁層付き導電性部材形成方法におけるセルフアライメントで除去するとは、位置合わせの作業をせずに、開口部の絶縁性樹脂層の除去を行う事をいう。開口部を有する導電性部材の開口形状を基準として、ラミネートした樹脂層の開口部の除去を行う。除去方法としては、樹脂層除去液による湿式処理を用いる。湿式処理を用いる事で、導電性部材の厚み、寸法の大小にかかわらず、良好に均一に樹脂層の除去を生産性良く行う事ができる。
【0028】
本発明に係わるセルフアライメントで除去された絶縁層の開口部は、図9に示すように、導電性部材1の開口部エッジを基準として、オフセット幅D0(設計オフセット幅)となるように絶縁性樹脂層の除去が行われる。本発明に係わるセルフアライメントで除去された場合には、位置ずれが発生しないため、広いオフセット幅D1と狭いオフセット幅D2となるような事がなく、オフセット幅のばらつきを抑えて良好に絶縁層の形成が行われる。
【0029】
本発明(2)の絶縁層付き導電性部材形成方法を図2を用いて説明する。開口部2を有する導電性部材1(図2(a))に、絶縁性樹脂層3及びマスキング層31をラミネートにより片面(第1面とする)に形成した後(図2(b))、第1面とは反対側の第2面から樹脂層除去液を供給して第1面の開口部の絶縁性樹脂層3を除去する(図2(c))。この際、絶縁性樹脂層3の導電性部材接触面とは反対の面には、マスキング層31があるため、開口部2以外の絶縁性樹脂層3が樹脂層除去液によって除去される事はない。最後にマスキング層31の除去を行い、絶縁層付き導電性部材が形成される(図2(d))。マスキング層31は、絶縁性樹脂層3をラミネートした後に形成する事もできるが、あらかじめ、絶縁性樹脂層3と一体として形成しておき、ラミネートによって、絶縁性樹脂層3を導電性部材1に熱圧着する方法が、生産性の点から好ましい。
【0030】
本発明(2)の絶縁層付き導電性部材形成方法に用いられる絶縁性樹脂層としては、導電性部材との密着性、化学的強度、機械的強度を有している樹脂であり、必要な電気抵抗値を有し、かつ樹脂層除去液により溶解除去可能な樹脂であれば特に限定されない。アクリル樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラール等のビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその塩化物、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンイソフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエステル誘導体等の樹脂が利用できる。アルカリ水溶液を樹脂層除去液として使用する場合には、アルカリ水溶液に対する溶解性が高い樹脂を絶縁性樹脂層として使用する事で、樹脂層除去液により溶解除去が可能になる。アルカリ水溶液を樹脂層除去液として使用する場合、絶縁性樹脂層としては酸価が1mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上の樹脂を好適に用いる事ができる。また、絶縁層には、耐久性、機械的強度をもたせるため、紫外線硬化性や加熱硬化性を付与する事もできる。樹脂層除去液による溶解除去可能な状態で、樹脂層除去液により処理を行い、その後、紫外線硬化や加熱硬化によって、処理を施すと、容易に除去処理工程を行う事ができるとともに、後工程に対する耐久性を増すとともに、絶縁性を向上させた絶縁層形成ができるため好ましい。体積抵抗率としては、好ましくは1010Ω・cm以上の樹脂、より好ましくは1014Ω・cm以上の樹脂が好ましい。
【0031】
本発明(2)に係わる樹脂層除去液としては、絶縁性樹脂層を溶解又は分散可能な液であり、使用する絶縁性樹脂層の組成に見合った液を使用する。樹脂層除去液によって、開口部の絶縁性樹脂層を除去し、開口部に絶縁性樹脂層の存在しない領域を形成する。樹脂層除去液は、マスキング層を溶解しない液か、あるいは、マスキング層を溶解する液であっても、絶縁性樹脂層を適正量分だけ溶解する条件において、マスキング層が膨潤したり、形状が変化したりする事がない液を使用する。また、導電性部材に対しても、形状変化等を起こさせない樹脂層除去液を使用する。一般的には、アルカリ水溶液が有用に使用され、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩又はアルカリ金属炭酸塩、リン酸又は炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物の水溶液、エタノールアミン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、モルホリン等の有機塩基性化合物を使用する事ができる。これら水溶液は、絶縁性樹脂層に対する溶解性をコントロールするため、濃度、温度、スプレー圧等を調整する必要がある。樹脂層除去液の供給は、マスキング層を有する面と反対の面から、開口部を通して樹脂層に樹脂層除去液が接触するように供給できれば、いずれの方式を用いてもよい。ディップ処理装置、両面シャワースプレー装置、片面シャワースプレー装置等を利用する事ができる。絶縁性樹脂層の除去は、樹脂層除去液による処理に続いて、水洗や酸処理を行う事によって、速やかに停止させる事ができる。
【0032】
また、導電性部材の形状によっては、種々の開口形状、曲率半径、板厚、材質等の条件により、液の循環の効果が場所によって異なる場合がある。その場合には、以下に述べるように、樹脂層除去液として2種類の液の組み合わせ(樹脂層除去液A及び樹脂層除去液B)を用いて、それぞれの液による2段階処理を行って絶縁性樹脂層の除去を行えば、より均一なオフセット幅を得る事ができるため、好ましい。
【0033】
樹脂層除去液Aとしては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物のうち少なくともいずれか1種を含み、無機アルカリ性化合物の含有量が5〜20質量%である水溶液が好適に用いられる。
【0034】
樹脂層除去液Aの処理では、樹脂層除去液Aを供給する事により絶縁性樹脂成分のミセルを形成するが、上記の樹脂層除去液Aで処理を行うと、形成された絶縁性樹脂層成分のミセルが不溶化し、樹脂層除去液A中に溶解拡散するのを防止する。次いで、樹脂層除去液Bを供給して、樹脂層除去液Aによる処理で不溶化されたミセルを再分散させて除去を行う。このようにして絶縁性樹脂層の除去を行うと、より均一な幅のオフセット幅が得られ好ましい。樹脂層除去液Aの無機アルカリ性化合物の含有量は、より好ましくは7〜20質量%、さらに好ましくは10〜20質量%含有する。5質量%未満では、ミセルが不溶化し難く除去途中で可溶化されたミセルが溶解拡散しやすい。また、20質量%を超えると、析出が起こりやすく、液の経時安定性、作業性に劣る。樹脂層処理液のpHは9〜13の範囲とする事が好ましい。また、界面活性剤、消泡剤等を適宜添加する事もできる。
【0035】
樹脂層除去液Bとしては、樹脂層除去液Aの処理で生成した不溶化ミセルを溶解再分散させ、かつ、溶解再分散後は、樹脂層除去液Bのみによる処理ではそれ以上、絶縁性樹脂層の除去が進行しないか、もしくは進行しにくい液であればいずれの液も使用可能である。好ましくは、水または、pH6からpH10の範囲の酸またはアルカリ性の水溶液が好適に用いられる。
【0036】
本発明において、樹脂層を除去するための処理条件(温度、スプレー圧、時間)は、樹脂層のミセルの形成と溶解拡散の程度に合わせて適宜調整される。具体的には、処理温度は10〜50℃、より好ましくは15〜40℃、さらに好ましくは15〜35℃である。また、スプレー圧は0.05〜0.5MPaとするのが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.3MPaである。
【0037】
マスキング層としては、樹脂層除去液に対して不溶性又は難溶性である樹脂や金属等を使用する事ができる。樹脂としては、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラールの様なビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその塩化物、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンイソフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエステル誘導体等の樹脂が利用できる。汎用性の点から、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等を好適に使用する事ができる。金属としては、銅やアルミニウム等を使用できる。マスキング層としては、簡便性や面内の均一性の点から金属よりも樹脂を用いるのがより好ましい。マスキング層は、フィルム形状として、絶縁性樹脂層と一体化して導電性部材上に形成するようにすれば、工程上、簡便で安定に絶縁性樹脂層とマスキング層の形成ができるので好ましい。アルカリ水溶液を樹脂層除去液として使用する場合、マスキング層の酸価は、絶縁性樹脂層の酸価の十分の一以下、好ましくは百分の一以下である樹脂を好適に使用する事ができる。
【0038】
本発明に用いられる絶縁性樹脂層とマスキング層とを一体に形成する方法としては、あらかじめ、マスキング層となるフィルム状支持体に絶縁性樹脂層を形成し、ラミネータにより開口部を有する導電性部材にラミネートする方法を好適に使用する事ができる。
【0039】
本発明(2)の絶縁層付き導電性部材形成方法では、両面に絶縁性樹脂層を形成する事も可能である。すなわち、その場合には、図3に示すように、第1面へ絶縁性樹脂層3を形成した(図3(a))後に、第2面に対しても同様の処理を行う。第1面と同様に、第2面に絶縁性樹脂層3及びマスキング層31をラミネートにより形成した後(図3(b))、第2面とは反対側の第1面から樹脂層除去液を供給して第2面の開口部の絶縁性樹脂層3を除去する(図3(c))。この際、絶縁性樹脂層3の導電性部材接触面とは反対の面には、マスキング層31があるため、開口部以外の絶縁性樹脂層3が樹脂層除去液によって除去される事はない。最後にマスキング層31の除去を行い、絶縁層付き導電性部材が形成される(図3(d))。マスキング層31は、絶縁性樹脂層3をラミネートした後に形成する事もできるが、あらかじめ、絶縁性樹脂層3と一体として形成しておき、ラミネートによって、絶縁性樹脂層3を導電性部材1に熱圧着する方法が、生産性の点から好ましい。
【0040】
また、よりオフセット幅の均一性が求められる場合には、第1面への絶縁性樹脂層形成の場合と同様に、樹脂層除去液として2種類の液の組み合わせ(樹脂層除去液A及び樹脂層処理液B)を用いて、それぞれの液による2段階処理を行って絶縁性樹脂層の除去を行えば、より均一なオフセット幅を得る事ができるため、好ましい。
【0041】
また、第2面への絶縁性樹脂層およびマスキング層をラミネートする前に、第1面の絶縁性樹脂層に耐性化処理を施す事もできる。絶縁性樹脂層及び樹脂層除去液の種類によって、第2面の開口部の絶縁性樹脂層の除去を行う際に、第1面の絶縁性樹脂層を膨潤もしくは変形させるような可能性のある場合には、耐性化処理を施す事が好ましい。耐性化処理は、紫外線照射及び/もしくは熱処理が効果的である。品質管理上、第1面及び第2面に同様の絶縁性樹脂層及びマスキング層を用いる事が好ましいが、この場合には、第2面の開口部の絶縁性樹脂層の除去を行う前に、第1面の耐性化処理が必要となる。
【0042】
また、第2面への絶縁層の形成を終えた後に、更に、紫外線照射及び/もしくは熱処理を行って、絶縁性向上処理を行う事もできる。この絶縁性向上処理は、紫外線照射は1J/cm以上、熱処理は130℃以上15分以上の条件で行う事が好ましい。より絶縁信頼性が求められる場合には、絶縁性向上処理を行う事が好ましい。
【0043】
本発明(3)の絶縁層付き導電性部材形成方法における、セルフアライメントで絶縁性樹脂層を除去する工程について図4に示す。開口部2を有する導電性部材1(図4(a))に、絶縁性樹脂層3をラミネートにより第1面に形成した後(図4(b))、更に、開口部以外の絶縁性樹脂層3上に電着樹脂層32を形成する(図4(c))。次に、樹脂層除去液を供給する事で、開口部2の絶縁性樹脂層3の除去を行う(図4(d))。続いて、必要な場合には、電着樹脂層32の剥離除去を行い、絶縁層形成が可能となる。(図4(e))。
【0044】
本発明(3)に係わる電着樹脂層は、次のようにして形成される。絶縁性樹脂層をラミネートした導電性部材に対向するように現像電極を設置し、導電性部材表面の絶縁性樹脂層と現像電極との間に電荷を有する樹脂粒子を分散させた液を充填し、適正な電界を現像電極と導電性部材との間に印加する事で、樹脂粒子を電着させ、電着樹脂層を形成する。電着樹脂層の膜厚は、電着条件(樹脂粒子の電荷および印加電圧、処理時間、樹脂粒子分散液供給量等)をコントロールする事で決定する事ができる。電着法によって付着した樹脂粒子は、加熱、圧力、光、溶剤等によって、絶縁性樹脂層上に定着されて、電着樹脂層となる。この電着樹脂層は、樹脂層除去液に対して、難溶、もしくは不溶となるように選択する。
【0045】
このように絶縁性樹脂層をラミネートした導電性部材に対し電気泳動法によって電着を行うと、樹脂粒子は、開口部のない表面(非開口部の表面)に向かってより大きな電界を受け、開口部の絶縁性樹脂層表面よりも多くの樹脂粒子が、非開口部の絶縁性樹脂層表面に付着する事となる。電着条件を適正に調整する事で、開口部の絶縁性樹脂層表面と非開口部の絶縁性樹脂層表面の樹脂粒子付着量をコントロールでき、開口部の絶縁性樹脂層表面には不十分な付着量であるが、非開口部の絶縁性樹脂層表面では、絶縁性樹脂層を完全に被覆するのに十分な量の樹脂粒子付着量が得られるように設定する。すなわち、導電性部材の非開口部のみに樹脂粒子が多く付着し、電着樹脂層を形成する事となる。これは位置合わせ作業は不要でセルフアライメントで行われる。その結果、樹脂層除去液を供給する事により、電着樹脂層によって覆われていない開口部の絶縁性樹脂層のみ除去される。電着条件とともに、樹脂層除去液による除去条件をコントロールする事でも、絶縁性樹脂層の開口幅を所望の値にコントロールできる。開口部の絶縁性樹脂層を除去した後に、必要な場合には、電着樹脂層の除去を行い、絶縁層付き導電性部材が形成される。
【0046】
本発明に係わる電着樹脂層は樹脂層除去液に不溶でかつ電着可能な樹脂を用いる。電着樹脂層の成分は、たとえば、電子写真に使用する湿式トナー樹脂を使用することができる。電子写真に使用する湿式トナー樹脂の成分としては、電気絶縁性の液体中に分散された樹脂粒子が挙げられ、樹脂粒子の具体的な例は、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラールの様なビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびその塩化物、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンイソフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエステル誘導体等が挙げられる。粒子には電荷制御剤を含有させることができ、所望の電着条件で適正な電着樹脂層が形成できるようにコントロールする事ができる。
【0047】
本発明(3)に係わる絶縁性樹脂層および樹脂層除去液は、電着樹脂層の形成及び、絶縁性樹脂層の除去が上記のように良好に行われるのであれば、本発明(2)に用いられるものの中のいかなる絶縁性樹脂層及び樹脂層除去液を用いる事ができる。
【0048】
また、本発明(3)の絶縁層付き導電性部材の形成方法では、両面に絶縁層を形成する事も可能である。その場合には、第1面へ絶縁層を形成した後に、第2面に対しても同様の処理を行っても良いし、両面同時に絶縁層を形成する事も可能である。両面同時に絶縁層を形成する場合には、絶縁性樹脂層を導電性部材の両面にラミネートを行った後、電着現像装置を、両面に現像電極を有するような構成にする事で、容易に導電性部材の両面の開口部以外の絶縁性樹脂層上に電着樹脂層を形成する事ができる。
【0049】
図5に片面ずつ逐次処理で絶縁層を形成する場合を示す。すなわち、第1面へ絶縁層3を形成した(図5(a))後に、第2面に対しても同様の処理を行う。第1面と同様に、第2面に絶縁性樹脂層3をラミネートにより形成した後(図5(b))、更に、第2面の開口部2以外の絶縁性樹脂層3上に電着樹脂層32を形成する(図5(c))。次に、樹脂層除去液を供給する事で、開口部2の絶縁性樹脂層3の除去を行う(図5(d))。続いて、必要な場合には、電着樹脂層32の剥離除去を行い、絶縁層形成が可能となる(図5(e))。
【0050】
図6には、両面同時に絶縁層を形成する場合の工程順を示す。すなわち、開口部を有する導電性部材(図6(a))の両面に絶縁性樹脂層3をラミネートにより形成した後(図6(b))、両面の開口部2以外の絶縁性樹脂層3上に電着樹脂層32を形成する(図6(c))。次に、樹脂層除去液を両面から供給する事で、両面の開口部2の絶縁性樹脂層3の除去を行う(図6(d))。続いて、必要な場合には、電着樹脂層32の剥離除去を行い、絶縁層形成が可能となる(図6(e))。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
導電性部材として、板厚0.03mmのベリリウムニッケル合金板材の加工を行って、図1に示すような形状の導電性部材1を得た。これは、積層プローブコンタクトを作製するもので、それぞれのコンタクトプローブ部品11はリード部12によってワク部13と接続されている形状となっている。次に、この導電性部材1にラミネータを用いて、表1に示す成分よりなる絶縁性樹脂層(膜厚10μm)及び25μmのマスキング層(支持体フィルム、材質:ポリエステル)で形成された樹脂フィルムを導電性部材の片面(第1面とする)に熱圧着し、絶縁性樹脂層及びマスキング層(支持体フィルム)を形成した。
【0052】
【表1】

【0053】
次に、樹脂層除去液として、2種類の液、樹脂層除去液A及び樹脂層除去液Bの組み合わせを用いて、絶縁性樹脂層の除去を行った。樹脂層除去液Aとして、10質量%炭酸ナトリウム水溶液(25℃)を用いて、導電性部材の第2面側よりシャワースプレーを30秒間当てた後、樹脂層除去液Bとして水をシャワースプレーで当てて、開口部の絶縁性樹脂層の除去を行った。その後マスキング層の除去を行った。
【0054】
図7に絶縁層形成後の導電性部材1の片面の概略図を示す。また、図8にプローブ先端部5付近の拡大図を示す。導電性部材1の開口部2及び開口部周辺を光学顕微鏡で観察したところ、開口部2周辺の絶縁層は、開口部形状に沿って除去され、図8のDで示すオフセット幅Dは、ばらつきなく5μmであった。
【0055】
次に、紫外線を照射し、5J/cmの照射を行った。続いて、第2面側にラミネータを用いて、表1に示す成分よりなる絶縁性樹脂層(膜厚10μm)及び25μmのマスキング層(支持体フィルム、材質:ポリエステル)で形成された樹脂フィルムを熱圧着し、絶縁性樹脂層及びマスキング層(支持体フィルム)を形成した。
【0056】
次に、樹脂層除去液として、2種類の液、樹脂層除去液A及び樹脂層除去液Bの組み合わせを用いて、絶縁性樹脂層の除去を行った。樹脂層除去液Aとして、10質量%炭酸ナトリウム水溶液(25℃)を用いて、導電性部材の第1面側よりシャワースプレーを30秒間当てた後、樹脂層除去液Bとして水をシャワースプレーで当てて、開口部の絶縁性樹脂層の除去を行った。その後、マスキング層の除去を行った。
【0057】
第2面の開口部及び開口部周辺を光学顕微鏡で観察したところ、開口部周辺の絶縁性樹脂層は、開口部形状に沿って除去されていた。また、第1面と同様に第2面についてもオフセット幅Dを測定したところ、ばらつきなく5μmであった。次に、第2面への紫外線照射(5J/cm)の後、乾燥炉において、150℃30分間加熱処理を行う事で絶縁性向上処理を行い、良好に絶縁層が形成されたコンタクトプローブ部品11ができあがった。これを、リード部12から切り離して、コンタクトプローブ部品11内部にある開口部2を位置合わせ孔として、複数個重ねる事で、端子ピッチ50μm間隔の積層プローブコンタクトができた。
【0058】
(実施例2)
絶縁性樹脂層の厚みを20μmとし、第1面の樹脂層除去液として使用した2種類の液の組み合わせのうちの樹脂層除去液Aの処理時間を90秒、オフセット幅40μmとした以外は、実施例1と同様にして、第1面に絶縁層を形成した。続いて、第2面にも、第1面と同様の条件にて絶縁層を形成した。その結果、良好に両面に絶縁層が形成されたコンタクトプローブ部品ができあがった。両面の開口部及び開口部周辺を光学顕微鏡で観察したところ、開口部周辺の絶縁層は、両面とも開口部形状に沿って除去され、実施例1と同様にしてオフセット幅Dを測定したところ、ばらつきなく40μmであった。これを、リード部12から切り離して、コンタクトプローブ部品11内部にある開口部2を位置合わせ孔として、複数個重ねる事で、端子ピッチ70μm間隔の積層プローブコンタクトができた。
【0059】
(実施例3)
導電性部材として、板厚0.03mmのベリリウムニッケル合金板材の加工を行って、図1に示すような形状の導電性部材1を得た。これは、コンタクトプローブ部品11を複数個作製するもので、それぞれのコンタクトプローブ部品11はリード部12によってワク部13と接続されている形状となっている。次に、この導電性部材1の両面にラミネータを用いて、表1に示す成分よりなる絶縁性樹脂層(膜厚9μm)及び25μmのマスキング層(支持体フィルム、材質:ポリエステル)で形成された樹脂フィルムを導電性部材の両面に熱圧着し、絶縁性樹脂層及びマスキング層(支持体フィルム)を導電性部材1の両面に形成した。
【0060】
次に、両面のマスキング層を剥離した後、正帯電樹脂粒子が分散された電子写真用の湿式トナーを用いて、バイアス電圧+200Vを印加して電着塗布を行い、導電性部材の開口部以外の部分の絶縁性樹脂層上をトナー粒子層で覆った。次に70℃で2分間加熱してトナー粒子を定着させ、開口部以外の両面に電着樹脂層(厚み1μm)を形成した。
【0061】
続いて、樹脂層除去液として1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を両面からシャワースプレーにより供給する事で、開口部の絶縁性樹脂層の除去を行った。両面の開口部及び開口部周辺を光学顕微鏡で観察したところ、開口部周辺の絶縁層は、両面とも開口部形状に沿って除去され、実施例1と同様に両面のオフセット幅Dを測定したところ、ばらつきなく40μmであった。これを、リード部12から切り離して、コンタクトプローブ部品11内部にある開口部2を位置合わせ孔として、複数個重ねる事で、端子ピッチ50μm間隔の積層プローブコンタクトができた。
【0062】
(実施例4)
導電性部材として、板厚0.03mmのベリリウムニッケル合金板材の加工を行って、図1に示すような形状の導電性部材1を得た。これは、積層プローブコンタクトを作製するもので、それぞれのコンタクトプローブ部品11はリード部12によってワク部13と接続されている形状となっている。次に、この導電性部材1にラミネータを用いて、表1に示す成分よりなる絶縁性樹脂層(膜厚20μm)及び25μmのマスキング層(支持体フィルム、材質:ポリエステル)で形成された樹脂フィルムを導電性部材1の片面(第1面とする)に熱圧着し、絶縁性樹脂層及びマスキング層(支持体フィルム)を形成した。
【0063】
次に、樹脂層除去液として、2種類の液、樹脂層除去液A及び樹脂層除去液Bの組み合わせを用いて、絶縁性樹脂層の除去を行った。樹脂層除去液Aとして、10質量%炭酸ナトリウム水溶液(25℃)を用いて、導電性部材の第2面側よりシャワースプレーを90秒間当てた後、樹脂層除去液Bとして水をシャワースプレーで当てて、開口部の絶縁性樹脂層の除去を行った。その後マスキング層の除去を行った。
【0064】
図7に絶縁層形成後の導電性部材の片面の概略図を示す。また、図8にプローブ先端部5付近の拡大図を示す。開口部及び開口部周辺を光学顕微鏡で観察したところ、開口部周辺の絶縁層は、開口部形状に沿って除去され、図8のDで示すオフセット幅Dは、ばらつきなく40μmであった。紫外線照射(5J/cm)を行った後、乾燥炉において、150℃30分間加熱処理を行い、絶縁性向上処理を行い、良好に絶縁層が形成されたコンタクトプローブ部品11ができあがった。これを、リード部12から切り離して、コンタクトプローブ部品11内部にある開口部2を位置合わせ孔として、複数個重ねる事で、端子ピッチ50μm間隔の積層プローブコンタクトができた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の絶縁層付き導電性部材形成方法及び絶縁層付き導電性部材は、電気機器、電子機器に使用される各種部品への適用が可能であり、電気検査用のコンタクトプローブや、電子回路、電気機器同士の接続に使用するコネクター部品、さらには、より微細な導電性部品への絶縁層形成が精度良く可能であるため、MEMS部品用途、MEMS加工装置用部品用途等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係わる導電性部材の一例を示す説明図。
【図2】本発明(2)の絶縁層付き導電性部材形成方法の工程を示す説明図。
【図3】本発明(2)の絶縁層付き導電性部材形成方法を利用して導電性部材の両面に絶縁層を形成する工程を示す説明図。
【図4】本発明(3)の絶縁層付き導電性部材形成方法の工程を示す説明図。
【図5】本発明(3)の絶縁層付き導電性部材形成方法を利用して導電性部材の両面に絶縁層を形成する工程を示す説明図。
【図6】本発明(3)の絶縁層付き導電性部材形成方法を利用して導電性部材の両面に同時に絶縁層を形成する工程を示す説明図。
【図7】本発明の絶縁層付き導電性部材の一例を示す図。
【図8】本発明の絶縁層付き導電性部材のオフセット幅を示す図。
【図9】絶縁層付き導電性部材における位置ずれを示す説明図。
【符号の説明】
【0067】
1 導電性部材
2 開口部
3 絶縁性樹脂層(絶縁層)
5 プローブ先端部
11 コンタクトプローブ部品
12 リード部
13 ワク部
31 マスキング層
32 電着樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する導電性部材の表面に絶縁性樹脂層をラミネートによって形成し、開口部を覆った後、開口部の絶縁性樹脂層をセルフアライメントで除去する工程を含む事を特徴とする絶縁層付き導電性部材形成方法。
【請求項2】
開口部の絶縁性樹脂層をセルフアライメントで除去する工程が、絶縁性樹脂層をラミネートした面とは反対側の面から樹脂層除去液を供給して開口部の絶縁性樹脂層を除去する工程である事を特徴とする請求項1記載の絶縁層付き導電性部材形成方法。
【請求項3】
開口部の絶縁性樹脂層をセルフアライメントで除去する工程が、開口部以外の絶縁性樹脂層の上に更に電着樹脂層を形成した後に、電着樹脂層を形成した面から樹脂層除去液を供給して開口部の絶縁性樹脂層を除去する工程である事を特徴とする請求項1記載の絶縁層付き導電性部材形成方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の絶縁層付き導電性部材形成方法によって形成した絶縁層付き導電性部材。
【請求項5】
絶縁層が導電性部材の両面に形成されている事を特徴とする請求項4記載の絶縁層付き導電性部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−176934(P2008−176934A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6581(P2007−6581)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】