説明

絶縁皮膜形成用材料、この材料を使用してフラットパネルディスプレイ用部品を製造する方法、及びフラットパネルディスプレイ用部品

【課題】十分な絶縁耐圧を有する金属板被覆用の材料と、この材料を使用して前記隔壁等のフラットパネルディスプレイ用部品を製造する方法、及び、こうして得られるフラットパネルディスプレイ用部品を提供することを目的とする。
【解決手段】金属材料101の表面に塗布し、焼成して電気絶縁性皮膜を形成する材料であって、溶媒と、この溶媒に溶解したシリコン系材料と、この溶媒に分散された粉体とを主成分とする絶縁皮膜形成用材料を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁皮膜形成用材料、この材料を使用してフラットパネルディスプレイ用部品を製造する方法、及びフラットパネルディスプレイ用部品に関する。
【0002】
さらに詳しくは、例えば、プラズマパネルディスプレイ(PDP)の放電セル同士を隔離する隔壁として使用する部品を被覆する材料であって、放電電圧に耐える十分な絶縁耐圧を有する金属板被覆用の材料と、この材料を使用して前記隔壁等のフラットパネルディスプレイ用部品を製造する方法、及び、こうして得られるフラットパネルディスプレイ用部品に関するものである。また、本発明は、フィールドエミッションディスプレイ(FED)のスペーサーにも適用できる。
【背景技術】
【0003】
プラズマパネルディスプレイの放電セルの配置は、例えば、図3に示すようなものである。すなわち、図3において、aは前面板、bは背面板で、ガラスで構成されていることが多い。そして、前面板aと背面板bの間に隔壁cがはさまれている。隔壁cには多数の貫通孔が設けられており、この貫通孔を放電セルとして所要のガスを封入すると共に、前面板a及び背面板bの間でセル毎に放電し、画面表示する。また、最近では、背面板bと隔壁cを一体成形することにより、作業性を向上させる試みもなされている(非特許文献1参照)。隔壁cは電気的に絶縁されている必要があり、放電時の電圧に耐える絶縁耐性を有する必要がある。
【0004】
従来、隔壁cとして、貫通孔を設けたガラス板などが用いられてきたが、近年、電気絶縁性の皮膜を被覆した金属材料を使用する技術が注目されている。金属材料はウエットエッチングによって大面積を一括で高アスペクト比に加工することができ、板材を用いた場合、厚さ方向の寸法精度が±数μmと安定しているである。また、放熱性に優れ、電磁波や電気的ノイズのシールドとしての役割をも果たすことが可能であるなどの利点もある。
【0005】
貫通孔を設けた金属板に電気絶縁性の皮膜を被覆する方法としては、例えば、電着法やスプレー塗装法によってガラスを含む誘電体を形成するが知られている(特許文献1、2)。また、気相成長法で電気絶縁性の皮膜を設ける方法(特許文献3)、液相成長法を利用して基板表面に酸化物を形成する絶縁処理方法(特許文献4)、大気開放CVD法による絶縁処理方法(特許文献5)、粉体静電塗装による電気絶縁性ガラスを成膜する方法(特許文献6)などが知られている。
【非特許文献1】「円形ディスプレイ」(株)テクノタイムズ,2004年6月号、P34
【特許文献1】特開平03−205738号公報
【特許文献2】特開2000−277021号公報
【特許文献3】特開2004−2403号公報
【特許文献4】特開2004−22404号公報
【特許文献5】特開2003−132802号公報
【特許文献6】特開2001−195978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1、特許文献2の方法では、膜形成時に気泡が絶縁層中に発生、残存する。また、焼成時の絶縁層の熱フローによりエッチングで形成されたコーナー部の膜厚が薄くなる。これら気泡の存在やコーナー部の薄みのため、十分な絶縁耐圧を確保することが困難である。
【0007】
また、特許文献3に示す気相成長法では、絶縁物の成膜速度が遅いため十分な膜厚の皮膜を得ることが困難であり、薄ければ絶縁耐圧を得ることができない。
【0008】
特許文献4に示す大気開放CVDでは、通常の気相成長法とは異なり、減圧プロセスがないため材料の搬入、搬出が容易で連続成膜が可能で、大型サイズへの展開も比較的容易である。しかし、成膜時に基板上での熱化学反応を促すために基板を高温に加熱する必要があり、金属基板表面に黒色の酸化物が生成される。その結果、絶縁膜との密着性が低下し剥離を起こしたり、ディスプレイ化したときの輝度低下につながる。
【0009】
特許文献5の粉体静電塗装によるガラスの成膜では、焼成時に溶融し膜は緻密化するが、表面張力で凝集することによりコーナー部の膜が薄くなり耐電圧特性が十分でなくなってしまう。また、焼成時に粉体と接していない金属板表面が酸化し、絶縁膜との密着性が確保できないといった問題が発生する。したがって、PDPの金属隔壁についての絶縁膜技術としては製品化に至っていない。
【0010】
他方、金属板にポリシラザンを利用して絶縁皮膜を形成する方法がある。ポリシラザンは、Si−N結合を持つシラザンを基本とする有機溶媒に可溶な無機ポリマーで、このポリマーの有機溶媒溶液を塗布液として用いて金属板表面に塗布して皮膜を形成し、大気中または水蒸気含有雰囲気中で、350〜550℃の温度で焼成することにより、水分や水と反応し、非結晶である緻密な高純度シリカが得られる。こうして得られた高純度シリカの皮膜は、1000℃以上の耐熱性と30kV/mm程度の高い絶縁耐圧を有する。
【0011】
しかしながら、このポリシラザンの皮膜は、その膜厚が3μmより大きくなると、350〜550℃の温度で大気焼成する工程でクラックが発生する。これは、焼成中に蓄積されるポリシラザン自体又は生成した高純度シリカ自体の内部応力や金属板との熱膨張差により発生するものと考えられている。事実、本発明者の検討によれば、ポリシラザンを金属板上に3μm形成して焼成したところ、200〜350V程度の絶縁耐圧しか得ることができなかった。
【0012】
本発明は上記問題を解決するために発明されたものであり、十分な絶縁耐圧を有する金属板被覆用の材料と、この材料を使用して前記隔壁等のフラットパネルディスプレイ用部品を製造する方法、及び、こうして得られるフラットパネルディスプレイ用部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
金属材料の表面に塗布し、焼成して電気絶縁性皮膜を形成する材料であって、溶媒と、この溶媒に溶解したシリコン系材料と、この溶媒に分散された粉体とを主成分とすることを特徴とする絶縁皮膜形成用材料である。
【0014】
ここで、シリコン系材料は、焼成によって電気絶縁性シリカ皮膜を構成するものである
。また、粉体は、皮膜中で熱緩衝効果を発揮して、前記シリコン系材料自体又は生成した電気絶縁性シリカ皮膜自体の内部応力を緩和し、以って焼成によるクラックの発生を防止し、電気絶縁性シリカ皮膜本来の高い絶縁耐圧の確保を実現する。
【0015】
次に、請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明を前提として、前記シリコン系材料がポリシラザンであること特徴とする絶縁皮膜形成用材料である。
【0016】
そして、請求項2に記載の発明によれば、ポリシラザンを焼成して得られる電気絶縁性シリカ皮膜は高純度のシリカ皮膜であるため、高絶縁耐圧を有する皮膜を得ることが可能となる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1〜2のいずれかに記載の発明を前提として、前記粉体の熱膨張係数が前記シリコン系材料より大きく、かつ、前記金属材料よりも小さいこと特徴とする絶縁皮膜形成用材料である。
【0018】
この請求項3に記載の発明によれば、前記粉体の熱膨張係数が前記シリコン系材料より大きく、かつ、前記金属材料よりも小さいため、両者の熱膨張率の差を吸収して、焼成時の内部応力を緩和し、電気絶縁性シリカ皮膜にクラックが発生することを防止する。そして、このため、一層絶縁耐圧に優れた電気絶縁性シリカ皮膜の形成を可能とする。なお、電気絶縁性シリカ皮膜の熱膨張係数は0.6×10-6(/℃)、金属材料の熱膨張係数は一般に5〜20×10-6(/℃)である。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明を前提として、前記粉体の直径0.5μm〜10μmであること特徴とする絶縁皮膜形成用材料である。
【0020】
この請求項4に記載の発明によれば、前記粉体の直径0.5μm〜10μmであるため、厚さ30μmまでの厚膜の電気絶縁性シリカ皮膜の形成が可能となり、一層高い絶縁耐圧を得ることが可能となる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明を前提として、
前記粉体の熱軟化温度又は融点が550℃以上であること特徴とする絶縁皮膜形成用材料である。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、粉体の熱軟化温度又は融点が550℃以上であるため、350〜550℃の焼成温度に耐えて型崩れを起こすことがなく、電気絶縁性シリカ皮膜自体の内部応力や電気絶縁性シリカ皮膜と金属材料との間の応力を緩和して、クラックがなく、かつ、高い絶縁耐圧を有する電気絶縁性シリカ皮膜を形成することが可能となる。
【0023】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明を前提として、前記粉体の誘電率が10以下であること特徴とする絶縁皮膜形成用材料である。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、前記粉体の誘電率が10以下であるため、皮膜付金属材料をPDPの電極間の隔壁として使用した場合、前面板上に形成された電極の配線と金属材料との間の電気的ロスを低減させることが可能となる。なお、粉体の誘電率は低い方が望ましく、例えば5以下であることが望ましい。また、シリカの誘電率が3程度であることから、これと同じ3程度であることが一層望ましい。
【0025】
次に、請求項7に記載の発明は、貫通孔又は凹部を有する金属平板の表面に絶縁皮膜形成用材料を塗布して前記貫通孔の内壁又は凹部を含む表面全体を前記材料で被覆し、次に
、この金属平板を大気中で350〜550℃の温度で焼成して電気絶縁性皮膜を形成するフラットパネルディスプレイ用部品の製造方法において、
絶縁皮膜形成用材料として、請求項1〜6のいずれかの絶縁皮膜形成用材料を使用することを特徴とするフラットパネルディスプレイ用部品の製造方法である。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、貫通孔又は凹部を有する金属平板を使用すると共に、請求項1〜6のいずれかの絶縁皮膜形成用材料を使用してこれを金属平板の表面に塗布し、大気中で350〜550℃の温度で焼成して電気絶縁性皮膜を形成するため、高い絶縁耐圧の電気絶縁性シリカ皮膜を備え、しかも厚さ方向に寸法精度が安定し、また、放熱性や電気的シールド性能に優れた部品を、安定的に生産することが可能となる。
【0027】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明を前提として、前記金属平板が、Ni、Cr、Coから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を含むFe系合金であることを特徴とするフラットパネルディスプレイ用部品の製造方法である。
【0028】
PDPなど、フラットパネルディスプレイに利用される背面ガラス板や前面ガラス板には、熱膨張係数が8×10-6(/℃)程度のソーダガラスや高歪点ガラスが用いられているが、請求項7に記載の発明によれば、金属平板が、Ni、Cr、Coから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を含むFe系合金であって、その熱膨張係数がソーダガラスや高歪点ガラスの熱膨張係数に近いため、パネル組み立て工程の450〜500℃の熱サイクルに耐えてパネルに歪みを生じることがなく、安定的にパネルを組み立てることが可能になる。
【0029】
また、請求項9に記載の発明は、請求項7〜8のいずれかに記載の発明を前提として、絶縁皮膜形成用材料を0.5〜30μmの厚みに塗布することを特徴とするフラットパネルディスプレイ用部品の製造方法である。
【0030】
請求項9に記載の発明によれば、絶縁皮膜形成用材料を0.5〜30μmの厚みに塗布するため、高い絶縁耐圧の電気絶縁性シリカ皮膜を設けることができる。
【0031】
また、請求項10に記載の発明は、請求項7〜9のいずれかの方法で製造されたフラットパネルディスプレイ用部品である。
【0032】
請求項10に記載の発明におれば、高い絶縁耐圧の電気絶縁性シリカ皮膜を備え、しかも厚さ方向に寸法精度が安定し、また、放熱性や電気的シールド性能に優れた部品を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
請求項1〜6に記載の発明によれば、高絶縁耐圧を有する電気絶縁性シリカ皮膜を得ることが可能となる。
【0034】
また、請求項7,9に記載の発明によれば、高い絶縁耐圧の電気絶縁性シリカ皮膜を備え、しかも厚さ方向に寸法精度が安定し、また、放熱性や電気的シールド性能に優れた部品を、安定的に生産することが可能となる。
【0035】
また、請求項8に記載の発明によれば、パネル組み立て工程の450〜500℃の熱サイクルに耐えてパネルに歪みを生じることがなく、安定的にパネルを組み立てることが可能になる。
【0036】
また、請求項10に記載の発明によれば、高い絶縁耐圧の電気絶縁性シリカ皮膜を備え
、しかも厚さ方向に寸法精度が安定し、また、放熱性や電気的シールド性能に優れた部品を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
(金属材料)
本発明に係る金属材料は、その表面に電気絶縁性シリカ皮膜を設けて、例えば、PDPの隔壁として使用するものである。このため、高いアスペクト比で、厚さのばらつきが10μm以下の均一な厚みの金属平板に貫通孔を設けたものが好適に使用できる。なお、この貫通孔は、PDPの放電セルを構成するものである。貫通孔の代わりに貫通していない孔、すなわち、凹部を有する金属平板を利用することもできる。
【0038】
また、PDPなどのフラットパネルディスプレイ組み立て工程の熱サイクルに耐える必要から、Ni、Cr、Coから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を含むFe系合金であることが望ましい。中でもNiを40〜52質量%含有するFe−Ni系合金が望ましく、特にNiを46〜50質量%含有するFe−Ni系合金が望ましい。
【0039】
かかる金属平板に貫通孔又は凹部を設けるためには、定法に従ってエッチングすれば良い。すなわち、まず、金属平板表面の片面または両面に感光性レジストを塗布し、パターン状の露光・現像して、孔形状を形成させたい所望の箇所を開口させるようパターニングする。次に塩化第二鉄液等の腐食性溶液をスプレーする事により、レジストが開口している部分の金属をエッチングし、金属材料にハーフエッチング形状または貫通孔を有する形状を形成させる。その後残余の感光性レジストをアルカリなどにより剥離する。
(シリコン系材料)
シリコン系材料は、焼成によて電気絶縁性シリカ皮膜を構成する作用を有するものである。この理由から、ポリシラザンを利用することが望ましい。ポリシラザンは(SiH2−NH)nを基本とする無機ポリマーで、分子量が600から1000である事が好ましい。ポリシラザンを選択した理由は以下の通りである。
(1)表面に塗布し、300℃から500℃の温度で焼成することで非結晶である緻密な高
純度シリカが得られる。
(2)ポリシラザンのSiO2は(SiH2−NH)n中に炭素を含有していないため、金 属セラミックスやガラスあるいは金属材料との密着性が良く、ゾルゲル法のように熱分 解中に膜の収縮や残留炭素の問題がなくクラックが比較的発生しにくい。
(3)塗布し、大気焼成が可能なため、真空環境などの特殊な装置、成膜条件を用いること
なく連続加工ができる。
(4)ポリシラザンを塗布し基板表面が露出無くコートされた状態で焼成するため、金属板
表面の酸化の問題がない。
(5)鉛などの環境を害する物質を使用しない。
(粉体)
粉体は、電気絶縁性シリカ皮膜中で熱緩衝効果を発揮して、前記シリコン系材料自体又は生成した電気絶縁性皮膜自体の内部応力を緩和し、以って焼成によるクラックの発生を防止する作用を有するものである。
【0040】
また、電気絶縁性シリカ皮膜と金属材料の熱膨張の違いによる応力の発生とこの応力に基づくクラックの発生を防止する作用も有することが望ましい。
【0041】
また、粉体は、厚膜の電気絶縁性シリカ皮膜の形成を可能にするという作用を有することが望ましい。
【0042】
さらに、粉体は、350〜550℃の焼成温度に耐えて型崩れを起こすことがないという作用を有することが望ましい。
【0043】
また、粉体は、皮膜付金属材料をPDPの電極間の隔壁として使用し且つこの上に電極を設けて、電極と金属材料との間の電気的ロスを低減させることが望ましい。
【0044】
このような粉体としては、Si、Alなどの金属酸化物又は窒化物、SiO2,Ba0,B23,Na2O,TiO2,Nd25などを含むの高融点ガラスなどがあげられる。
(溶媒)
溶媒は、シリコン系材料を溶解し、粉体を分散して、塗布可能な材料を形成するものである。このような溶媒としては、例えば、キシレン、ターペン、ソルベッソ、ジブチルエーテルなどがあり、ポリシラザン(SiH2−NH)nなどのシリコン系材料を重量比で0.5〜25%溶解させ、粉体を重量比で0.5〜25%分散させて使用する。
(塗布)
本発明に係る絶縁皮膜形成用材料は、スプレー法、ディッピング法などで塗布することが可能である。なお、貫通孔又は凹部の深さが深いときは、半乾燥した吐液を金属表面に均一厚さの膜として形成することができるスプレー噴射法が有利である。更に、貫通孔又は凹部の壁面に絶縁物を的確に塗布するために、静電塗装を用いることも効果的である。(焼成)
本発明に係る焼成工程は、塗布された絶縁皮膜形成用材料中のシリコン系材料を電気絶縁性シリカに変えるものであり、乾燥した大気中または水蒸気を含有する雰囲気中で350〜550℃で焼成すれば良い。膜を緻密にして絶縁耐性を増大するため、400℃以上の高温で焼成することが好ましい。なお、ポリシラザンを大気中で焼成してシリカ(SiO2)皮膜を得る反応は次式で示される。
【0045】
(SiH2−NH)+O2→SiO2+NH3
【実施例1】
【0046】
以下、本発明の実施例1を説明する。
【0047】
厚み300μmのFe―50Ni合金(熱膨張係数;94×10-7/℃)の平板をアルカリ脱脂し、膜厚20μmの市販のドライフイルムレジストを前記金属平板の表面に貼り合わせた。次いで、ピッチ270×810μmで、100×640μmが開孔しているスロットパターンのフォトマスクで露光し、アルカリ水溶液のスプレー現像で、前記金属平板に、フォトマスクと同寸法のフォトレジストパターンを形成した。次いで、塩化第二鉄エッチング液でスプレーエッチングし、ドライフイルムレジストを残したハーフエッチング金属平板を作製した。苛性ソーダ水溶液をスプレーしてフォトレジストを剥膜し、PDP用金属隔壁のリブ形状を有し、凹部を有する金属平板を作製した。
【0048】
他方、キシレンに、ポリシラザンを10重量%の割合で溶解させ、平均直径2μmのアルミナ粉末(融点;2020℃,誘電率;9.0,熱膨張係数;78×10-7/℃)を20重量%の割合で分散させて、絶縁皮膜形成用材料を調整した。
【0049】
そして、前記金属平板を再びアルカリ脱脂し、水洗後、絶縁皮膜形成用材料を塗布した。。塗布はスプレー法を使用し、面内均一に、乾燥前の膜厚が25μmになるように塗布した。
【0050】
その後、大気中で溶剤が十分揮発するまで乾燥させ、480℃で60分、乾燥した大気中で焼成を行った。上記PDP用金属隔壁のリブ形状に絶縁層をクラック等発生することなく形成させることができた。
【0051】
この絶縁処理を施したPDP用金属隔壁をスロットの長手方向と垂直に切断し断面を観
察すると、図1の様な形状となり、凹部の側壁104では5μm、隔壁のトップ平坦部105では15.6μmの膜が形成されていることが確認できた。絶縁耐圧測定装置にて、金属隔壁上部に測定端子平板を接触させ、平坦部105の絶縁耐圧を測定したところ1050Vとなり、十分な絶縁耐圧を示した。また、誘電率は6.5であった。
【実施例2】
【0052】
以下、本発明の実施例2を説明する。
厚み500μmのFe―42Ni合金(熱膨張係数;110×10-7/℃)の平板をアルカリ脱脂し、膜厚20μmの市販のドライフイルムレジスト基板表面に貼り合わせた。。次いで、ピッチ270×810μmで、100×620μmが開孔しているスロットパターンのフォトマスクで露光し、アルカリ水溶液のスプレー現像で、前記金属平板に、フォトマスクと同寸法のフォトレジストパターンを形成した。次いで、塩化第二鉄エッチング液でスプレーエッチングし、ドライフイルムレジストを残したハーフエッチング金属平板を作製した。次にドライフィルムを苛性ソーダ水溶液にて剥離後、ポジ型電着フォトレジストのゾンネEDUV P−500(関西ペイント製)をハーフエッチング金属平板上に均一な膜厚でコーティングした。次いでポジ用フォトマスクの位置合わせを行って露光し、炭酸ソーダ水溶液でスプレー現像してゾンネEDUV P−500をパターニングした。最後に、二回目のエッチング工程として、塩化第二鉄エッチング液をスプレーエッチングし、苛性ソーダ水溶液をスプレーしてフォトレジストを剥膜し、板厚500μmで、ピッチ270×810μmで、220×760μmが開孔しているスロットパターンの貫通孔を有する金属平板を作製した。
【0053】
他方、キシレンに、ポリシラザンを20重量%の割合で溶解させ、平均直径5.7μmのNa2O−B23-SiO2系の粉末ガラス(日本電気硝子製:ls−500、熱軟化点;589℃,誘電率;7.6,熱膨張係数;83×10-7/℃)を20重量%の割合で分散させて、絶縁皮膜形成用材料を調整した。
【0054】
そして、前記金属平板を再びアルカリ脱脂し、水洗後、絶縁皮膜形成用材料を塗布した。。塗布はスプレー法を使用し、面内均一に、乾燥前の膜厚が15μmになるように塗布した。
【0055】
その後、溶剤が十分揮発するまで乾燥させ、500℃で60分、乾燥した大気中で焼成を行った。上記したスロットパターンの貫通孔を有する金属平板に絶縁層を形成させることができた。
【0056】
この絶縁処理を施した金属平板の断面を観察すると、図2のような形状となり、貫通孔の側壁204では5.1μm、貫通孔のない平坦部205では12.4μmの膜が形成されていることが確認できた。絶縁耐圧測定装置にて、金属隔壁上部に測定端子平板を接触させ、平坦部205の絶縁耐圧を測定したところ1240Vとなり、十分な絶縁耐圧を示した。また、誘電率は5.2であった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1(凹部を有するPDP用金属隔壁)の実施例断面図
【図2】本発明の実施例2(貫通孔を有する金属エッチング製品)の実施例断面図
【図3】PDPの放電セルの配置を示す説明用斜視図
【符号の説明】
【0058】
101…金属平板
102…シリカ
103…粉体
104…凹部の側壁
105…隔壁のトップ平坦部
201…金属平板
202…シリカ
203…粉体
204…貫通孔の側壁
205…貫通孔のない平坦部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料の表面に塗布し、焼成して電気絶縁性皮膜を形成する材料であって、溶媒と、この溶媒に溶解したシリコン系材料と、この溶媒に分散された粉体とを主成分とすることを特徴とする絶縁皮膜形成用材料
【請求項2】
前記シリコン系材料がポリシラザンであること特徴とする請求項1に記載の絶縁皮膜形成用材料。
【請求項3】
前記粉体の熱膨張係数が前記シリコン系材料より大きく、かつ、前記金属材料よりも小さいこと特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の絶縁皮膜形成用材料。
【請求項4】
前記粉体の直径0.5μm〜10μmであること特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁皮膜形成用材料。
【請求項5】
前記粉体の熱軟化温度又は融点が550℃以上であること特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の絶縁皮膜形成用材料。
【請求項6】
前記粉体の誘電率が10以下であること特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の絶縁皮膜形成用材料。
【請求項7】
貫通孔又は凹部を有する金属平板の表面に絶縁皮膜形成用材料を塗布して前記貫通孔の内壁又は凹部を含む表面全体を前記材料で被覆し、次に、この金属平板を大気中で350〜550℃の温度で焼成して電気絶縁性皮膜を形成するフラットパネルディスプレイ用部品の製造方法において、
絶縁皮膜形成用材料として、請求項1〜6のいずれかの絶縁皮膜形成用材料を使用することを特徴とするフラットパネルディスプレイ用部品の製造方法。
【請求項8】
前記金属平板が、Ni、Cr、Coから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を含むFe系合金であることを特徴とする請求項7記載のフラットパネルディスプレイ用部品の製造方法。
【請求項9】
絶縁皮膜形成用材料を0.5〜30μmの厚みに塗布することを特徴とする請求項7〜8のいずれかに記載のフラットパネルディスプレイ用部品の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかの方法で製造されたフラットパネルディスプレイ用部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−193571(P2006−193571A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4888(P2005−4888)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】