説明

絹タンパク質

本発明は、絹タンパク質、およびそのようなタンパク質をコードする核酸を提供する。本発明は、絹タンパク質を合成する、組換え細胞および/または生物体も提供する。本発明の絹タンパク質を、パーソナルケア製品、プラスチック、織物、および生物医学製品の製造におけるなど、様々な目的に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絹タンパク質、およびそのようなタンパク質をコードする核酸に関する。本発明は、絹タンパク質を合成する組換え細胞および/または生物体にも関する。本発明の絹タンパク質を、パーソナルケア製品、プラスチック、織物、および生物医学製品の製造においてなど、様々な目的に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
絹は、並外れた強度および靭性を示す繊維タンパク質分泌物であり、そのため、広範囲な研究の的となっている。絹は、30000種を超えるクモによって、また多くの昆虫によって生成される。これらの絹のうち特徴付けられているものは殆どなく、殆どの調査は、飼育されているカイコであるカイコガ(Bombyx mori)の繭の絹、および円形網を作るクモであるアメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)のドラグラインシルクに集中している。
【0003】
鱗翅目およびクモでは、フィブロイン絹の遺伝子は、疎水性および親水性の交互のブロックの広範な領域をまたがるどちらかの終端に、突出した親水性末端ドメインを有する、一般に大型のタンパク質をコードしている(Biniら、2004年)。一般的に、これらのタンパク質は、βシート、βスパイラル、αへリックス、および無構造の領域とゆるく結合しているβプリーツシートの結晶配列の様々な組合せを含んでいる(再考には、CraigおよびRiekel、2002年を参照されたい)。
【0004】
絹繊維は、知られているいくつかの最強の天然の繊維を代表するので、これらの合成を再現しようと、広範な研究にかけられている。しかし、鱗翅目およびクモのフィブロイン遺伝子の発現で頻発する問題は、有害な組換えの事象をもたらす絹の遺伝子における反復性のヌクレオチドモチーフの組合せにより、様々な組換えの発現系において発現率が低く、また、遺伝子のサイズが大きく、遺伝子における各アミノ酸に用いられるコドンの数が少ないため、宿主細胞においてtRNAプールの枯渇がもたらされることであった。組換えの発現により、コドン選択およびコドン要求の結果として翻訳の休止など翻訳中の困難がもたらされ、高い組換え率により遺伝子の切断がもたらされている。より短く、反復の少ない配列であれば、今日までの絹遺伝子の発現に関連する多くの問題は回避されよう。
【0005】
鱗翅目(特に、カイコガの繭の絹)、およびクモ(特に、アメリカジョロウグモのドラグラインシルク)に関して蓄積されてきた広範囲な知識とは対照的に、他の昆虫の絹の化学組成、および分子構造については、殆ど知られていない。
【0006】
1960年代初頭、有剣類の膜翅目の絹に、ミツバチの幼虫の唾液腺から引き出した絹繊維から得たエックス線回折パターンにより、αへリックス構造があることが示された(Rudall、1962年)。この絹がらせん状であることが実証されただけでなく、得られたパターンはαへリックス鎖のコイルドコイル系を示すものであった(Atkins、1967年)。スズメバチであるシュードポンピリウス フンボルティ(Pseudopompilus humbolti)(Rudall、1962年)、およびマルハナバチであるボンバス ルコルム(Bombus lucorum)(LucasおよびRundall、1967年)を含む他の有剣類の種からの繭の絹に対して、類似のエックス線回折パターンが得られた。
【0007】
有剣類の絹で記載されたαへリックス構造とは対照的に、有剣類であるヒメバチ科に関連するクレードから特徴付けられる絹は平行−β構造を有する。この構造の4例に対するエックス線図は、コマユバチ科(アオムシコマユバチ(Cotesia(=Apenteles) glomerate);コテシア ゴノプテリギス(Cotesia(=Apenteles) gonopterygis);アペンテレス ビグネリ(Apenteles bignelli)、およびヒメバチ科(Ichneumonidae)における3つ(ドウソナ(Dusona)種;フィトディエトリス(Phytodietris)種;ブランチェス フェモラリス(Branchus femoralis))において記載されている(LucasおよびRudall、1967年)。さらに、単一のコマユバチ科(アオムシコマユバチ)の絹の配列は記載されている(Genbankデータベースアクセス番号AB188680;Yamadaら、2004年)。この部分的なタンパク質配列は、高度に保存されている28個のX−アスパラギン反復(Xはアラニンまたはセリン)からなり、コイルドコイル形成性の7つ組反復を含むことは予測されていない。コマユバチ科の繭の絹におけるアミノ酸組成の広範な解析では、サムライコマユバチ(Microgastrinae)亜科由来の絹は、その高いアスパラギンおよびセリン含量において独特であることが示されている(Lucasら、1960年;Quickeら、2004年)。関連の亜科は大幅に異なるアミノ酸組成を有する絹を生成し、サムライコマユバチの絹は、この亜科において特異的に進化したことを示唆している(Yamadaら、2004年)。アオムシコマユバチの部分的なcDNAは、単離された繭の絹のタンパク質に由来する内部ペプチドから得られた配列よりデザインされた、PCRプライマーを用いて単離された。この部分的な配列の予測されるアミノ酸組成は、この種由来の、よく洗浄された絹のアミノ酸組成に非常に類似する。
【0008】
他の有剣類ではない細腰亜目、および残りの膜翅目(シンファータ(symphata))内の、多くの絹の構造は、最も一般的には平行−βシートであり、ハバチ科(Tenthredinidae)によって生成される、コラーゲン様およびポリグリシンの両方の絹である(LucasおよびRudall、1967年)。
【0009】
ミツバチの絹のタンパク質は、終齢中期に合成され、脱重合した絹タンパク質の混合であると想像できる(Silva−Zacarinら、2003年)。齢が進行するにつれ、腺から水分が除かれ、脱水により絹タンパク質の重合がもたらされて、十分に組織化された不溶性の絹フィラメントで標識したタクトイドが形成される(Silva−Zacarinら、2003年)。脱水の進行により、タクトイドのさらなる再編成(Silva−Zacarinら、2003年)、およびおそらくはフィラメント間の新しいフィラメント間結合(Rundall、1962年)がもたらされる。ミツバチの絹糸腺から単離した原繊維の電子顕微鏡画像は、直径約20〜25オングストロームの構造を示している(FlowerおよびKenchington、1967年)。この値は、3本鎖、4本鎖、または5本鎖のコイルドコイルに一致する。
【0010】
様々な有剣類の膜翅目の種における絹のアミノ酸組成は、LucasおよびRudall(1967年)によって決定され、高含有量のアラニン、セリン、酸性残基、アスパラギン酸、およびグルタミン酸、および古典的なフィブロインに比べて少量のグリシンを含むことが見出された。有剣類の膜翅目の絹のヘリックス含量は、グリシン含有量の低下と酸性残基の含有量の増大の結果であると考えられた(RudallおよびKenchington、1971年)。
【0011】
クサカゲロウ(目:翅目)の幼虫の絹については殆ど知られていない。繭は、内側の固層および外側の繊維層の2層からなる。これまでに、繭はクチクリン絹からなると記載されており(RudallおよびKenchington、1971年)、唯一の、内側の固層に関する記載であった。LaMunyon(1988年)は、外側の繊維を構成するマルピーギ管から排出された物質を記載した。この層が堆積した後、固体の内側の壁は、高度に絨毛で覆われた管腔における上皮細胞からの分泌物から構築された(LaMunyon、1988年)。
【0012】
クサカゲロウの幼虫は、全ての齢を通してタンパク質に富む粘着性の物質をマルピーギ管から生成して、幼虫を基体に固着させ、幼虫の背上にカモフラージュの物を接着し、または獲物をわなにかけることも知られている(Speilger、1962年)。ロマミヤ(Lomamyia)(ベソシダエ(Bethothidae))属では、幼虫は絹および粘着性物質を同時に生成し、これら2つの物質は同じ生成物の可能性が十分にあると仮定されている(Speilger、1962年)。粘着性の分泌物は高度に可溶性であり、捕食者に対する防御に関連するとも考えられている(LaMunyonおよびAdams、1987年)。
【特許文献1】米国特許第5,792,294号
【特許文献2】米国特許第5,939,288号
【特許文献3】米国特許第4,943,674号
【特許文献4】米国特許第2004/0170827号
【特許文献5】米国特許第2005/0054830号
【特許文献6】EP−A−239400
【特許文献7】米国特許第5,981,718号
【特許文献8】米国特許第5,856,451号
【特許文献9】米国特許第6,303,752号
【特許文献10】米国特許第6,284,246号
【特許文献11】米国特許第6,358,501号
【特許文献12】米国特許第6,280,747号
【特許文献13】米国特許第2004/0170590号
【特許文献14】米国特許第6,139,851号
【特許文献15】米国特許第6,013,250号
【特許文献16】米国特許第6,398,821号
【特許文献17】米国特許第6,129,770号
【特許文献18】米国特許第2005/0161058号
【特許文献19】米国特許第2005/0130857号
【特許文献20】米国特許第5,643,672号
【特許文献21】米国特許第6,175,053号
【特許文献22】米国特許第2005/0055051号
【特許文献23】米国特許第2004/0199241号
【特許文献24】米国特許第2005/0089552号
【特許文献25】米国特許第2005/0266992号
【特許文献26】米国特許第2005/0019297号
【特許文献27】米国特許第2004/0005363号
【特許文献28】米国特許第6,416,558号
【特許文献29】米国特許第5,232,611号
【特許文献30】日本国特許第2004284246号
【特許文献31】米国特許第2005/175825号
【特許文献32】米国特許第4,515,737号
【特許文献33】日本国特許第47020312号
【特許文献34】国際公開第WO2005/017004号
【特許文献35】日本国特許第2000139755号
【特許文献36】国際公開第WO2005/045122号
【特許文献37】米国特許第2005/268443号
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
膜翅目および脈翅目などの昆虫が生成する絹の独特の性質を考慮すると、これらの生物体から絹タンパク質をコードする、新規の核酸を同定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、昆虫から多くの絹タンパク質を同定した。これらの絹タンパク質は、その1次配列、2次構造、および/またはアミノ酸含有量において、他の知られている絹タンパク質と驚くほどに異なるものである。
【0015】
このように、第1の態様では、本発明は、実質的に精製された、および/または組換えの絹ポリペプチドを提供し、ポリペプチドの少なくとも一部分は、コイルドコイル構造を有する。
【0016】
当技術分野では知られているように、ポリペプチドのコイルドコイル構造は、コンセンサス配列(abcdefg)によって表される、7つ組反復を特徴とし、ポジションaおよびdは一般的に疎水性の残基、残りのポジションは一般的に極性の残基である。驚くべきことに、本発明のポリペプチドの7つ組は、集合的に見た場合は新規な組成を有し、「疎水性の」7つ組のポジションaおよびdでは、アラニンの存在比が異常に高い。さらに、これらのポジションには、高レベルの、小型の極性残基が存在する。さらに、eポジションは、また、高レベルのアラニンおよび小型の疎水性残基を有する。
【0017】
したがって、特に好ましい一実施形態では、コイルドコイル構造を有するポリペプチドの部分は、少なくとも10コピーの7つ組配列abcdefgを含み、ポジションaおよびdのアミノ酸の少なくとも25%はアラニン残基である。
【0018】
さらに好ましい一実施形態では、コイルドコイル構造を有するポリペプチドの部分は、少なくとも10コピーの7つ組配列abcdefgを含み、ポジションa、dおよびeにおけるアミノ酸の少なくとも25%はアラニン残基である。
【0019】
さらに好ましい一実施形態では、コイルドコイル構造を有するポリペプチドの部分は、少なくとも10コピーの7つ組配列abcdefgを含み、ポジションaにおけるアミノ酸の少なくとも25%はアラニン残基である。
【0020】
さらに好ましい一実施形態では、コイルドコイル構造を有するポリペプチドの部分は、少なくとも10コピーの7つ組配列abcdefgを含み、ポジションdにおけるアミノ酸の少なくとも25%はアラニン残基である。
【0021】
さらに好ましい一実施形態では、コイルドコイル構造を有するポリペプチドの部分は、少なくとも10コピーの7つ組配列abcdefgを含み、ポジションeにおけるアミノ酸の少なくとも25%はアラニン残基である。
【0022】
特に好ましい一実施形態では、7つ組配列の少なくとも10コピーは近接している。
【0023】
さらに好ましい一実施形態では、コイルドコイル構造を有するポリペプチドの部分は、少なくとも5コピーの7つ組配列abcdefgを含み、ポジションaおよびdにおけるアミノ酸の少なくとも15%はアラニン残基である。
【0024】
さらに好ましい一実施形態では、コイルドコイル構造を有するポリペプチドの部分は、少なくとも5コピーの7つ組配列abcdefgを含み、ポジションa、dおよびeにおけるアミノ酸の少なくとも15%はアラニン残基である。
【0025】
さらに好ましい一実施形態では、コイルドコイル構造を有するポリペプチドの部分は、少なくとも5コピーの7つ組配列abcdefgを含み、ポジションaにおけるアミノ酸の少なくとも15%はアラニン残基である。
【0026】
さらに好ましい一実施形態では、コイルドコイル構造を有するポリペプチドの部分は、少なくとも5コピーの7つ組配列abcdefgを含み、ポジションdにおけるアミノ酸の少なくとも15%はアラニン残基である。
【0027】
さらに好ましい一実施形態では、コイルドコイル構造を有するポリペプチドの部分は、少なくとも5コピーの7つ組配列abcdefgを含み、ポジションeにおけるアミノ酸の少なくとも15%はアラニン残基である。
【0028】
特に好ましい一実施形態では、7つ組配列の少なくとも5コピーは近接している。
【0029】
一実施形態では、ポリペプチドは:
i)配列番号1、配列番号2、配列番号22、配列番号23、配列番号40、配列番号41、配列番号56、および配列番号57の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
ii)配列番号1、配列番号2、配列番号22、配列番号23、配列番号40、配列番号41、配列番号56、および配列番号57の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、ならびに
iii)i)またはii)の生物学的に活性なフラグメント
から選択される配列を含む。
【0030】
別の一実施形態では、ポリペプチドは:
i)配列番号3、配列番号4、配列番号24、配列番号25、配列番号42、配列番号43、配列番号58、および配列番号59の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
ii)配列番号3、配列番号4、配列番号24、配列番号25、配列番号42、配列番号43、配列番号58、および配列番号59の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、ならびに
iii)i)またはii)の生物学的に活性なフラグメント
から選択される配列を含む。
【0031】
別の一実施形態では、ポリペプチドは:
i)配列番号5、配列番号6、配列番号26、配列番号27、配列番号44、配列番号45、配列番号60、および配列番号61の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
ii)配列番号5、配列番号6、配列番号26、配列番号27、配列番号44、配列番号45、配列番号60、および配列番号61の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、ならびに
iii)i)またはii)の生物学的に活性なフラグメント
から選択される配列を含む。
【0032】
別の一実施形態では、ポリペプチドは:
i)配列番号7、配列番号8、配列番号28、配列番号29、配列番号46、配列番号47、配列番号62、および配列番号63の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
ii)配列番号7、配列番号8、配列番号28、配列番号29、配列番号46、配列番号47、配列番号62、および配列番号63の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、ならびに
iii)i)またはii)の生物学的に活性なフラグメント
から選択される配列を含む。
【0033】
さらなる一実施形態では、ポリペプチドは:
i)配列番号72または配列番号73で提供されるアミノ酸配列、
ii)配列番号72および/または配列番号73に少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、ならびに
iii)i)またはii)の生物学的に活性なフラグメント
から選択される配列を含む。
【0034】
第1の態様のタンパク質と相互に結合するさらなる絹タンパク質が同定されている。これらのタンパク質の1つ(配列番号10)は、PROFsecによって、αへリックス41%、βシート8%、およびループ2次構造50%を有すると予測され、したがって混構造のタンパク質と分類される。このタンパク質のMARCOIL解析により、コイルドコイル構造を有するタンパク質に特徴的な7つ組反復の短い領域だけが予測された。
【0035】
したがって、第2の態様では、本発明は:
i)配列番号9、配列番号10、および配列番号30の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
ii)配列番号9、配列番号10、および配列番号30の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、ならびに
iii)i)またはii)の生物学的に活性なフラグメント
から選択される配列を含む、実質的に精製された、および/または組換えの絹ポリペプチドを提供する。
【0036】
理論によって限定しようとするものではないが、第1の態様の4個のタンパク質は絡み合って、らせん状の軸が互いに殆ど平行である束を形成し、この束が軸方向に延長して原繊維になると思われる。さらに、ミツバチおよびマルハナバチなど、少なくともいくつかの種では、第2の態様のタンパク質は、第1の態様のコイルドコイルタンパク質が様々な束を結合するのを助ける「接着剤」として作用して、一緒に繊維状のタンパク質複合体を形成することが予測される。しかし、絹繊維およびコポリマーは、第2の態様のポリペプチドなしでも形成され得る。
【0037】
好ましい一態様では、本発明のポリペプチドは、膜翅目もしくは脈翅目の1種由来の、精製された形態であってよく、または精製したポリペプチドの突然変異である。膜翅目の種がミツバチ(Apis mellifera)、ツムギアリ(Oecophylla smaragdina)、ミルメシア フォーフィカータ(Myrmecia forticata)、またはセイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris)であることが好ましい。脈翅目の種がマラダ シグナータ(Mallada signata)であることが好ましい。
【0038】
別の一態様では、本発明は、少なくとも1つの他のポリペプチドに融合している、本発明のポリペプチドを提供する。
【0039】
好ましい一実施形態では、少なくとも1つの他のポリペプチドは:本発明のポリペプチドの安定性を増強するポリペプチド、融合タンパク質の精製を助けるポリペプチド、および本発明のポリペプチドが細胞から分泌される(例えば、植物細胞から分泌される)のを助けるポリペプチド、からなる群から選択される。
【0040】
別の一態様では、本発明は、絹ポリペプチドをコードする、単離された、および/または外来の、ポリヌクレオチドを提供し、ポリペプチドの少なくとも一部分はコイルドコイル構造を有する。
【0041】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは:
i)配列番号11、配列番号12、配列番号31、配列番号32、配列番号48、配列番号49、配列番号64、および配列番号65の任意の1つで提供されるヌクレオチドの配列、
ii)本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列、
iii)配列番号11、配列番号12、配列番号31、配列番号32、配列番号48、配列番号49、配列番号64、および配列番号65の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるヌクレオチドの配列、ならびに
iv)厳密な条件下でi)からiii)の任意の1つにハイブリダイズする配列
から選択される配列を含む。
【0042】
別の一実施形態では、ポリヌクレオチドは:
i)配列番号13、配列番号14、配列番号33、配列番号34、配列番号50、配列番号51、配列番号66、および配列番号67の任意の1つで提供されるヌクレオチドの配列、
ii)本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列、
iii)配列番号13、配列番号14、配列番号33、配列番号34、配列番号50、配列番号51、配列番号66、および配列番号67の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるヌクレオチドの配列、ならびに
iv)厳密な条件下でi)からiii)の任意の1つにハイブリダイズする配列
から選択される配列を含む。
【0043】
別の一実施形態では、ポリヌクレオチドは:
i)配列番号15、配列番号16、配列番号35、配列番号36、配列番号52、配列番号53、配列番号68、および配列番号69の任意の1つで提供されるヌクレオチドの配列、
ii)本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列、
iii)配列番号15、配列番号16、配列番号35、配列番号36、配列番号52、配列番号53、配列番号68、および配列番号69の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるヌクレオチドの配列、ならびに
iv)厳密な条件下でi)からiii)の任意の1つにハイブリダイズする配列
から選択される配列を含む。
【0044】
さらなる一実施形態では、ポリヌクレオチドは:
i)配列番号17、配列番号18、配列番号37、配列番号38、配列番号54、配列番号55、配列番号70、配列番号71、および配列番号76の任意の1つで提供されるヌクレオチドの配列、
ii)本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列、
iii)配列番号17、配列番号18、配列番号37、配列番号38、配列番号54、配列番号55、配列番号70、配列番号71、および配列番号76の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるヌクレオチドの配列、ならびに
iv)厳密な条件下でi)からiii)の任意の1つにハイブリダイズする配列
から選択される配列を含む。
【0045】
別の一実施形態では、ポリヌクレオチドは:
i)配列番号74または配列番号75で提供されるヌクレオチドの配列、
ii)本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列、
iii)配列番号74および/または配列番号75に少なくとも30%同一であるヌクレオチドの配列、ならびに
iv)厳密な条件下でi)からiii)の任意の1つにハイブリダイズする配列
から選択される配列を含む。
【0046】
さらなる一態様では、本発明は、単離された、および/または外来性のポリヌクレオチドを提供し、ポリヌクレオチドは:
i)配列番号19、配列番号20、配列番号21、および配列番号39の任意の1つで提供されるヌクレオチドの配列、
ii)本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列、
iii)配列番号19、配列番号20、配列番号21、および配列番号39の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるヌクレオチドの配列、ならびに
iv)厳密な条件下でi)からiii)の任意の1つにハイブリダイズする配列
から選択される配列を含む。
【0047】
好ましい一実施形態では、ポリヌクレオチドを膜翅目もしくは脈翅目の種から単離することができ、またはポリヌクレオチドはこれらの種から単離されたポリヌクレオチドの変異体である。膜翅目の種が、ミツバチ、ツムギアリ、ミルメシア フォーフィカータ、またはセイヨウオオマルハナバチであるのが好ましい。脈翅目の種が、マラダ シグナータであるのが好ましい。
【0048】
さらなる一態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを少なくとも1つ含むベクターを提供する。
【0049】
ベクターが発現ベクターであるのが好ましい。
【0050】
別の一態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを少なくとも1つ、および/または本発明のベクターを少なくとも1つ、含む宿主細胞を提供する。
【0051】
宿主細胞は、あらゆるタイプの細胞であってよい。例として、それだけには限定されないが、細菌、酵母菌、または植物細胞が含まれる。
【0052】
本発明によるポリペプチドを調製するための方法も提供され、この方法は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現、および発現されたポリペプチドの回収を可能にする条件下で、本発明の宿主細胞、または本発明のベクターを培養することが含まれる。
【0053】
トランスジェニック植物は、本発明のポリペプチドの生成に特に有用であることが予想される。したがって、さらに別の一態様では、本発明は、外来のポリヌクレオチドを含むトランスジェニック植物を提供し、このポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドを少なくとも1つコードする。
【0054】
別の一態様では、本発明は、外来のポリヌクレオチドを含む、非ヒトのトランスジェニック動物を提供し、このポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドを少なくとも1つコードする。
【0055】
さらに別の一態様では、本発明は、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。
【0056】
さらなる一態様では、本発明は、本発明のポリペプチドを少なくとも1つ含む、絹繊維を提供する。
【0057】
好ましくは、このポリペプチドは組換えのポリペプチドである。
【0058】
一実施形態では、少なくともいくつかのポリペプチドは架橋されている。一実施形態では、ポリペプチドの少なくともいくつかのリジン残基は架橋されている。
【0059】
別の一態様では、本発明は、本発明のポリペプチドを少なくとも2つ含むコポリマーを提供する。
【0060】
好ましくは、ポリペプチドは組換えのポリペプチドである。
【0061】
一実施形態では、コポリマーは、第1の態様の様々なポリペプチドを少なくとも4つ含む。別の一実施形態では、コポリマーは、第2の態様のポリペプチドをさらに含む。
【0062】
一実施形態では、少なくともいくつかのポリペプチドは架橋されている。一実施形態では、ポリペプチドの少なくともいくつかのリジン残基は架橋されている。
【0063】
当業者であれば理解するように、本発明のポリペプチドは、他のタイプの絹タンパク質に対して当技術分野では知られているように、多種多様な用途がある。このように、さらなる一態様では、本発明は、本発明のポリペプチドを少なくとも1つ、本発明の絹繊維、および/または本発明のコポリマーを、含む製品を提供する。
【0064】
製品の例には、それだけには限定されないが、パーソナルケア製品、織物、プラスチック、および生物医学製品が含まれる。
【0065】
またさらなる一態様では、本発明は、本発明のポリペプチドを少なくとも1つ、本発明の絹繊維、および/または本発明のコポリマー、および1つもしくは複数の許容できる担体を含む、組成物を提供する。
【0066】
一実施形態では、組成物は薬物をさらに含む。
【0067】
別の一実施形態では、組成物を、医薬として、医療機器、または化粧品で用いる。
【0068】
別の一態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを少なくとも1つ、および1つもしくは複数の許容できる担体を含む、組成物を提供する。
【0069】
好ましい一実施形態では、本発明の、組成物、絹繊維、コポリマー、および/または製品は、昆虫が生成するローヤルゼリーのタンパク質を含まない。
【0070】
さらなる一態様では、本発明は、疾患を治療または予防する方法を提供し、その方法は、疾患を治療または予防するための薬物、および薬学的に許容できる担体を含む組成物を投与することを含み、この薬学的に許容できる担体は、本発明のポリペプチドの少なくとも1つ、本発明の絹繊維、および/または本発明のコポリマーから選択される。
【0071】
さらに別の一態様では、本発明は、疾患を治療または予防するための薬物を製造するために、本発明のポリペプチドの少なくとも1つ、本発明の絹繊維、および/または本発明のコポリマー、および薬物の使用を提供する。
【0072】
さらなる一態様では、本発明は、本発明のポリペプチドを少なくとも1つ、本発明のポリヌクレオチドを少なくとも1つ、本発明のベクターを少なくとも1つ、本発明の絹繊維を少なくとも1つ、および/または本発明のコポリマーを含む、キットを提供する。
【0073】
キットが、キットを使用するための情報および/または指示をさらに含むのが好ましい。
【0074】
明らかであるように、本発明の一態様の好ましい特色および特徴は、本発明の他の多くの態様に応用できる。
【0075】
本明細書を通して「含む(comprise)」の語、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変形は、提示されている要素、完全体もしくはステップ、または要素、完全体、もしくはステップのグループを包含するが、あらゆる他の要素、完全体、もしくはステップ、または要素、完全体もしくはステップのグループを排除しないことを意味すると理解されよう。
【0076】
本発明を、以下の非限定的な実施例により、また、添付の図を参照にして、以下に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
一般的技術および定義
別の方法で特に定義されなければ、本明細書で用いられる技術用語および科学用語は全て、当技術分野(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、および生化学)の技術者の1人によって通例に理解されるのと同じ意味を有するものと理解されよう。
【0078】
別段の指摘がなければ、本発明で利用される、組換えのタンパク質、細胞培養物、および組換え技術は標準の手順であり、当業者にはよく知られている。このような技術は、J. Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley and Sons(1984年)、J.Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989年)、T.A. Brown(編集)、「Essential Molecular Biology:A Practical Approach」第1巻および第2巻、IRL Press (1991年)、D.M.Glover and B.D. Hames(編集)、「DNA Cloning:A Practical Approach」第1巻〜第4巻、IRL Press(1995年および1996年)、ならびにF.M. Ausubelら(編集)、「Current Protocols in Molecular Biology」、Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience (1988年、現在までの最新版を全て含む)、Ed HarlowおよびDavid Lane(編集)「Antibodies: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbour Laboratory、(1988年)、ならびにJ.E. Coliganら(編集)「Current Protocols in Immunology」John Wiley & Sons(現在までの最新版を全て含む)などの出典における文献全体に記載および説明されており、これらは参照として本明細書に組み入れられる。
【0079】
本明細書で用いられる、「絹タンパク質」および「絹ポリペプチド」の語は、絹繊維、および/または、繊維状のタンパク質複合体を生成するために用いることができる、繊維状のタンパク質/ポリペプチドを意味する。本発明の天然に存在する絹タンパク質は、ミツバチなどの昆虫の蜂児巣板(brood comb)(ハチの巣などの蜜蝋構造)の絹の部分を形成するが、本明細書に記載するように、好適な昆虫内で発現される場合に同じ機能を行うこれらのタンパク質の変異体を容易に生成することができる。
【0080】
本明細書で用いられる「絹繊維」は、織物などの様々な物品に織ることができる、本発明のタンパク質を含む、フィラメントを意味する。
【0081】
本発明で用いられる「コポリマー」は、本発明の絹タンパク質を2つ以上含む組成物である。この語は、昆虫の蜂児巣板などの天然に存在するコポリマーを除外する。
【0082】
「植物」の語には、植物全体、植物性構造(例えば、葉、茎)、根、花器官/構造、種子(胚、胚乳、および種皮を含む)、植物組織(例えば、維管束組織、基本組織など)、細胞、ならびにその子孫が含まれる。
【0083】
「トランスジェニック植物」は、同じ種、変種、または品種の野生型植物に見られない遺伝子構築物(「導入遺伝子」)を含む植物を意味する。本明細書で言及する「導入遺伝子」は、バイオテクノロジーの技術分野における通常の意味を有し、組換えDNAまたはRNAの技術によって生成されまたは改変された遺伝子配列、および植物細胞中に導入された遺伝子配列を含む。導入遺伝子は、植物細胞に由来する遺伝子配列を含んでいてよい。典型的には、導入遺伝子は、人的操作によって、例えば形質転換などによって植物中に導入されているが、当業者が認めるあらゆる方法を用いることができる。
【0084】
「ポリヌクレオチド」は、オリゴヌクレオチド、核酸分子、またはそれらのあらゆるフラグメントを意味する。これは、ゲノム起源または合成起源のDNAでもRNAでも、二本鎖でも1本鎖でもよく、本明細書に規定する特定の活性を遂行するために、炭水化物、脂質、タンパク質、または他の材料と組み合わせてもよい。
【0085】
本明細書で用いられる「操作可能に連結している」は、2つまたはそれを超える核酸の(例えばDNAの)セグメント間の機能上の関係を意味する。典型的には、これは転写される配列に対する転写調節エレメントの機能上の関係を意味する。例えば、プロモーターは、それが好適な宿主細胞でコード配列の転写を刺激または調節する場合は、本明細書に規定するポリヌクレオチドなどのコード配列に、操作可能に連結している。一般的に、転写される配列に操作可能に連結しているプロモーターの転写調節エレメントは、転写される配列に物理的に近接しており、すなわち、これらはシス作用である。しかし、エンハンサーなどの、いくつかの転写調節エレメントは、その転写を増強するコード配列に対して、物理的に近接し、または非常に近くに位置する必要はない。
【0086】
「シグナルペプチド」の語は、成熟分泌タンパク質に先行する、アミノ末端のポリペプチドを意味する。シグナルペプチドは、成熟タンパク質から切断され、したがって成熟タンパク質に存在しない。シグナルペプチドは、分泌タンパク質を誘導し、細胞膜を貫通させる機能を有する。シグナルペプチドは、シグナル配列とも呼ばれる。
【0087】
本明細書で用いられる「形質転換」は、ポリヌクレオチドの組入れによって、細胞において新しい遺伝子が獲得されることである。
【0088】
本明細書で用いられる「薬物」の語は、特定の疾患を治療または予防するために用いることができるあらゆる化合物を意味し、本発明の絹タンパク質と調合することができる薬物の例には、それだけには限定されないが、タンパク質、核酸、抗腫瘍薬、鎮痛薬、抗生物質、抗炎症の化合物(ステロイド性および非ステロイド性の両方)、ホルモン、ワクチン、標識されている物質などが含まれる。
【0089】
ポリペプチド
「実質的に精製されたポリペプチド」は、脂質、核酸、他のポリペプチド、および、その天然状態で結合している、ロウなどの他の汚染性分子から概ね分離された、ポリペプチドを意味する。本発明の他のタンパク質がない状態で、実質的に精製されたポリペプチドは、それが天然に結合している他の成分が、少なくとも60%ないことが好ましく、より好ましくは少なくとも75%なく、より好ましくは90%ない。
【0090】
ポリペプチドの文脈における「組換え」の語は、ポリペプチドが細胞によって、または無細胞の発現系において生成される場合における、その天然状態に比べて改変された量または改変された比率での、ポリペプチドを意味する。一実施形態では、細胞は、ポリペプチドを天然に生成しない細胞である。しかし、細胞は、生成されるべきポリペプチドの量を改変し、好ましくは量の増大をもたらす、非内在性の遺伝子を含む細胞であってよい。本発明の組換えポリペプチドは、トランスジェニックの(組換え)細胞における、またはそれが生成される無細胞の発現系における、他の成分から分離されていないポリペプチドを含み、引き続き精製して少なくともいくつかの他の成分から除かれる、細胞または無細胞系で生成されるポリペプチドを含む。
【0091】
「ポリペプチド」および「タンパク質」の語は、一般に交換可能に用いられ、アミノ酸以外の基の付加によって修飾しても、またはしていなくてもよい、単一のポリペプチド鎖を意味する。本明細書で用いられる「タンパク質」および「ポリペプチド」の語は、本明細書に記載するように、本発明のポリペプチドの、変異体、突然変異体、修飾体、類似体、および/または誘導体も含む。
【0092】
ポリペプチドの%同一性は、GAP(NeedlemanおよびWunsch、1970年)分析(GCGプログラム)によって、ギャップ挿入ペナルティ=5、およびギャップ伸長ペナルティ=0.3で決定される。クエリー配列は、少なくとも長さ15個のアミノ酸であり、GAP解析は、少なくとも15個のアミノ酸の領域にわたって2つの配列をアラインメントする。より好ましくは、クエリー配列は、少なくとも長さ50個のアミノ酸であり、GAP解析は、少なくとも50個のアミノ酸の領域にわたって2つの配列をアラインメントする。より好ましくは、クエリー配列は、少なくとも長さ100個のアミノ酸であり、GAP解析は、少なくとも100個のアミノ酸の領域にわたって2つの配列をアラインメントする。さらにより好ましくは、クエリー配列は、少なくとも長さ250個のアミノ酸であり、GAP解析は、少なくとも250個のアミノ酸の領域にわたって2つの配列をアラインメントする。さらにより好ましくは、GAP解析は、2つの配列をその全長にわたってアラインメントする。
【0093】
本明細書で用いられる「生物学的に活性な」フラグメントとは、ポリペプチドの全長において、規定された活性、すなわち絹を生成するのに用いられる能力、を維持する、本発明のポリペプチドの一部分である。生物学的に活性なフラグメントは、それが規定された活性を維持するのであれば、あらゆるサイズであってよい。
【0094】
規定されたポリペプチドに関しては、上記に提供したものよりも高い数値の%同一性が好ましい実施形態を包含することが理解されよう。したがって、適用可能な場合には、最小の%同一性の数値を考慮すると、ポリペプチドが、関連の指定された配列番号のものに、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、そして、さらにより好ましくは少なくとも99.9%、同一であるアミノ酸配列を含む。
【0095】
本発明のポリペプチドのアミノ酸配列の突然変異体は、本発明の核酸中に、好適なヌクレオチドの変更を導入することによって、または望ましいポリペプチドのin vitroの合成によって、調製することができる。このような突然変異体には、例えば、アミノ酸配列中の残基の欠失、挿入、または置換が含まれる。最終のポリペプチド生成物が望ましい特徴を有するのであれば、最終構築物に到達するために、欠失、挿入、および置換の組合せを行うことができる。
【0096】
当技術分野では知られているあらゆる技術を用いて、突然変異の(改変した)ポリペプチドを調製することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドに、in vitroの突然変異誘発を受けさせてもよい。このようなin vitroの突然変異誘発技術には、適切なベクター内への、ポリヌクレオチドのサブクローニング、大腸菌XL−1red(Stratagene)などの「突然変異誘発遺伝子」株中への、ベクターの形質転換、および形質転換した細菌の適切な世代数の間での増殖が含まれる。別の一例では、本発明のポリヌクレオチドに、Harayama(1998年)によって広く記載されているDNAシャフリング技術を受けさせる。このDNAシャフリング技術には、本明細書で特徴付ける特定の種以外の、膜翅目または脈翅目の種由来の絹遺伝子などの、おそらくは本発明の遺伝子に関連する遺伝子に加えて、本発明の遺伝子が含まれ得る。突然変異/改変したDNAに由来する生成物を、それが絹タンパク質として用いることができるか否かを決定するために、本明細書に記載する技術を用いて容易にスクリーニングすることができる。
【0097】
アミノ酸配列の突然変異体をデザインする際に、突然変異部位の位置、および突然変異体の性質は、修飾されるべき特徴に依存する。突然変異の部位は、例えば、(1)最初に保存的なアミノ酸の選択で置換し、次いで得られた結果に応じて、より合理的な選択で置換することによって、(2)標的の残基を除去することによって、または(3)決めた部位に隣接して他の残基を挿入することによって、個々に、または一続きで、修飾することができる。
【0098】
アミノ酸配列の欠失は、一般に、約1から15残基、より好ましくは約1から10残基、典型的には約1から5個の近接する残基の範囲である。
【0099】
置換型突然変異体では、ポリペプチド分子において、少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その場所に異なる残基が挿入されている。置換型突然変異に関して最も関心の高い部位には、機能上、重要であると同定される部位が含まれる。他の関心の高い部位は、様々な株または種から得た、特定の残基が同一であるものである。これらの位置は、生物学的活性にとって重要な可能性がある。これらの部位、特に、他の同様に保存されている少なくとも3つの部位の配列に当てはまる部位は、相対的に保存的な様式で置換されていることが好ましい。このような保存的置換を、表1で「例示の置換」の見出しの下に示す。
【0100】
上記に概略したように、本発明のポリペプチドのいくつかの一部分は、コイルドコイル構造を有する。ポリペプチドのコイルドコイル構造は、コンセンサス配列(abcdefg)によって表される、7つ組反復を特徴とする。好ましい一実施形態では、コイルドコイル構造を有するポリペプチドの部分は、少なくとも10コピーの7つ組配列abcdefgを有し、ポジションaおよびdのアミノ酸の少なくとも25%は、アラニン残基である。
【0101】
【表1】

【0102】
好ましい一実施形態では、コイルドコイル構造を有するポリペプチドは、少なくとも12個の連続するコピー、より好ましくは少なくとも15個の連続するコピー、さらにより好ましくは少なくとも18個の連続するコピーの7つ組を含む。さらなる実施形態では、コイルドコイル構造を有するポリペプチドは、7つ組を少なくとも28コピーまで有することができる。典型的には、7つ組のコピーは、タンデムに反復する。しかし、これらは必ずしも完全なタンデム反復でなければならないわけではなく、例えば、図5および図6に示すように、少数のアミノ酸が2つの7つ組の間にあってもよく、または少数の切断された7つ組があってもよい(例えば、図5における、Xenospira1を参照されたい)。
【0103】
コイルドコイル構造を有する本発明のポリペプチドに対して行うことができる、アミノ酸置換に関する手引きを、図5および6、ならびに表6から10に提供する。本明細書で提供する実験データに基づいた、予測される有用なアミノ酸の置換が、表1に提供される例示の置換とどうしても対立する場合は、実験データに基づく置換を用いるのが好ましい。
【0104】
本発明のポリペプチドのコイルドコイル構造は、特に、7つ組のアミノ酸ポジションa、d、およびeにおいてアラニン残基の含有量が高い。しかし、ポジションb、c、f、およびgも、アラニン残基の頻度が高い。好ましい一実施形態では、7つ組のポジションa、d、および/またはeのアミノ酸の少なくとも15%、より好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%は、アラニン残基である。さらに好ましい一実施形態では、7つ組のポジションaおよびd両方のアミノ酸の少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%は、アラニン残基である。さらに、7つ組のポジションb、c、f、およびgのアミノ酸の少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも25%はアラニン残基である。
【0105】
典型的には、7つ組は、あらゆるプロリンまたはヒスチジン残基を含まない。さらに、7つ組は、もしあれば、少数の(1または2個の)、フェニルアラニン、メチオニン、チロシン、システイン、グリシン、またはトリプトファンの、残基を含む。アラニンとは別に、7つ組における、通常の(例えば、5%を超える、より好ましくは10%を超える)アミノ酸は、ロイシンを(特に、ポジションbおよびdに)含み、セリンを(特に、ポジションb、e、およびfに)含み、グルタミン酸を(特に、ポジションc、e、およびfに)含み、リジンを(特に、ポジションb、c、d、f、およびgに)含み、ならびにポジションgにアルギニンを含む。
【0106】
本発明のポリペプチド(およびポリヌクレオチド)を、広範囲の膜翅目または脈翅目の種から精製(単離)することができる。膜翅目の例には、それだけには限定されないが、ハチ亜目(ハチ、アリ、およびスズメバチ)のあらゆる種が含まれ、これには以下の昆虫の科が含まれる:セイボウ科(Chrysididae)(カッコーワスプ(cuckoo wasps))、アリ科(Formicidae)(アリ)、アリバチ科(Mutillidae)(アリバチ)、ベッコウバチ科(Pompilidae)(ベッコウバチ)、ツチバチ科(Scoliidae)、スズメバチ科(Vespidae) (ペーパーワスプ(paper wasps)、トックリバチ、スズメバチ)、イチジクコバチ科(Agaonidae)(イチジクコバチ)、アシブトコバチ科(Chalcididae)(アシブトコバチ(chalcidids))、アリヤドリコバチ科(Eucharitidae)(アシヤドリコバチ(eucharitids))、ナガコバチ科(Eupelmidae)(ナガコバチ(eupelmids))、コガネコバチ科(Pteromalidae)(コガネコバチ(pteromalids))、ヤセバチ科(Evaniidae)(エンサインワスプ(ensign wasps))、コマユバチ科(Braconidae)、ヒメバチ科(Ichneumonidae)(ヒメバチ(ichneumons))、ハキリバチ科(Megachilidae)、ミツバチ科(Apidae)、ミツバチモドキ科(Colletidae)、コハナバチ科(Halictidae)、およびケアシハナバチ科(Melittidae)(オイルコレクティングビー(oil collecting bees))。脈翅目の例には、以下の昆虫の科に由来する種が含まれる:カマキリモドキ科(Mantispidae)、クサカゲロウ科(Chrysopidae)(クサカゲロウ)、ウスバカゲロウ(Myrmeleontidae)(ウスバカゲロウ(antlions))、およびツノトンボ科(Ascalaphidae)(ツノトンボ(owlflies))。このようなさらなるポリペプチド(および、ポリヌクレオチド)を、セイヨウオオマルハナバチ、ミルメシアフォルティカタ、ツムギアリ、およびマラダ シグナータに由来する絹に対して、本明細書に記載されている同じ手順を用いて、特徴付けることができる。
【0107】
さらに、所望により、非天然のアミノ酸または化学的なアミノ酸類似体を、本発明のポリペプチド中に、置換または付加として導入してもよい。このようなアミノ酸には、それだけには限定されないが、通常のアミノ酸のD−異性体、2,4−ジアミノ酪酸、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、2−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、フルオロアミノ酸;例えばβ−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、Nα−メチルアミノ酸のようなデザイナーアミノ酸(意図的に作り出したアミノ酸)、および一般的なアミノ酸類似体が含まれる。
【0108】
例えば、ビオチン化、ベンジル化、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、知られている保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解性の切断、抗体分子または他の細胞のリガンドなどへの連結などによって、合成の間または合成後に、様々に修飾される本発明のポリペプチドも、本発明の範囲内に含まれる。これらの修飾は、本発明のポリペプチドの安定性、および/または生物活性を増大するように作用する可能性がある。
【0109】
本発明のポリペプチドを、天然のポリペプチドの生成および回収、組換えのポリペプチドの生成および回収、およびポリペプチドの化学合成を含む、様々な方法で生成することができる。一実施形態では、本発明の単離されたポリペプチドを、このポリペプチドを生成するのに有効な条件下でポリペプチドを発現することができる細胞を培養し、ポリペプチドを回収することによって生成する。培養するのに好ましい細胞は、本発明の組換え細胞である。有効な培養条件には、それだけには限定されないが、ポリペプチドの生成を可能にする有効な培地、バイオリアクター、温度、pH、および酸素条件が含まれる。有効な培地とは、本発明のポリペプチドを生成するように細胞を培養するあらゆる培地を意味する。このような培地は、典型的には、同化できる、炭素、窒素、およびリン酸塩の供給源、ならびに好適な塩、ミネラル、金属、および他の栄養素、例えばビタミンを有する、液体培地を含む。本発明の細胞を、従来の発酵バイオリアクター、振盪フラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュ、およびペトリ皿で培養することができる。培養は、組換え細胞に好適な温度、pH、および酸素含有量で行うことができる。このような培養条件は、当業者の専門知識の範囲内にある。
【0110】
ポリヌクレオチド
DNA、RNA、もしくはこれらの組合せ、1本鎖もしくは2本鎖、センスもしくはアンチセンスの方向、もしくはその両方、dsDNA、またはその他を含めた、「単離されたポリヌクレオチド」は、天然の状態において、結合されまたは連結されるポリヌクレオチド配列から、少なくとも部分的に分離されているポリヌクレオチドを意味する。好ましくは、単離されたポリヌクレオチドは少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、非常に好ましくは少なくとも90%、天然に結合している他の成分がない。さらに、「ポリヌクレオチド」の語は、本明細書では「核酸」の語と交換可能に用いられる。
【0111】
ポリヌクレオチドの文脈における「外来の」の語は、その天然状態に比べて改変された量で、細胞に、または無細胞の発現系に存在する場合のポリヌクレオチドを意味する。一実施形態では、細胞は、このポリヌクレオチドを天然に含まない細胞である。しかし、細胞は、改変された、好ましくは増大した量の、コードされたポリペプチドの生成をもたらす、非内因性のポリヌクレオチドを含む細胞であってよい。本発明の外来のポリヌクレオチドには、それが存在するトランスジェニック(組換え)細胞、または無細胞の発現系における、他の成分から分離されていないポリヌクレオチド、および、そのような細胞または無細胞系で生成され、少なくともいくつかの他の成分から引き続き精製して除去されるポリヌクレオチドが含まれる。
【0112】
ポリペプチドの%同一性は、GAP(NeedlemanおよびWunsch、1970年)解析(GCGプログラム)によって、ギャップ挿入ペナルティ=5、およびギャップ伸長ペナルティ=0.3で決定される。別段の記載がなければ、クエリー配列は、少なくとも長さ45個のヌクレオチドであり、GAP解析は、少なくとも45個のヌクレオチドの領域にわたって2つの配列をアラインメントする。好ましくは、クエリー配列は、少なくとも長さ150個のヌクレオチドであり、GAP解析は、少なくとも150個のヌクレオチドの領域にわたって2つの配列をアラインメントする。より好ましくは、クエリー配列は、少なくとも長さ300個のヌクレオチドであり、GAP解析は、少なくとも300個のヌクレオチドの領域にわたって2つの配列をアラインメントする。さらにより好ましくは、GAP解析は、その長さ全体にわたって2つの配列をアラインメントする。
【0113】
規定されたポリヌクレオチドに関しては、上記に提供するものよりも高い数値の%同一性が好ましい実施形態を包含することが理解されよう。したがって、適用可能な場合には、最小の%同一性の数値を考慮すると、本発明のポリヌクレオチドが、関連の指定された配列番号のものに、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、さらにより好ましくは少なくとも99.9%、同一である配列を含むことが好ましい。
【0114】
本発明のポリヌクレオチドは、天然に存在する分子と比べた場合、ヌクレオチド残基の欠失、挿入、または置換である、1つまたは複数の突然変異を所有してもよい。突然変異は、自然発生でもよく(すなわち、天然の供給源から単離してもよく)、または合成(例えば、核酸上で部位特異的突然変異誘発を行うことによって)でもよい。
【0115】
本発明のオリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドは、本発明の絹遺伝子、または前記遺伝子に隣接する領域に、厳密な条件下でハイブリダイズする。本明細書で用いられる「厳密なハイブリダイゼーション条件」などの語は、ハイブリダイゼーション温度とオリゴヌクレオチドの長さの変異を含む、技術分野ではよく知られているパラメーターを意味する。核酸ハイブリダイゼーションのパラメーターは、このような方法を編集している、Sambrookら(上述)、およびAusubelら(上述)の参考文献に見ることができる。例えば、本発明で用いられる、厳密なハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションバッファー(3.5×SSC、0.02%Ficoll、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ血清アルブミン(BSA)、2.5mM NaHPO(pH7)、0.5%SDS、2mM EDTA)において65℃でのハイブリダイゼーションの後、50℃での0.2×SSC、0.01%BSAにおける1回または複数回の洗浄を意味することがある。あるいは、核酸および/またはオリゴヌクレオチド(「プライマー」または「プローブ」と呼ぶこともある)を、ミツバチのゲノムなどの、対象の昆虫のゲノムの領域に、PCRなどの核酸増殖技術で用いられる条件下でハイブリダイズさせる。
【0116】
本発明のオリゴヌクレオチドは、RNA、DNA、またはいずれかの誘導体であってよい。ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの語には重複する意味があるが、オリゴヌクレオチドは、典型的には、比較的短い1本鎖の分子である。このようなオリゴヌクレオチドの最小のサイズは、標的の核酸分子上でオリゴヌクレオチドと相補的な配列との間に安定なハイブリッドを形成するのに必要とされるサイズである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは少なくとも長さ15個のヌクレオチドであり、より好ましくは少なくとも長さ18個のヌクレオチドであり、より好ましくは少なくとも長さ19個のヌクレオチドであり、より好ましくは少なくとも長さ20個のヌクレオチドであり、さらにより好ましくは少なくとも長さ25個のヌクレオチドである。
【0117】
通常、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのモノマーは、リン酸ジエステル結合またはその類似体によって連結して、比較的短いモノマー単位から、例えば12〜18から数百のモノマー単位のサイズの範囲のオリゴヌクレオチドを形成する。リン酸ジエステルに連結する類似体には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホソホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホラミデートが含まれる。
【0118】
本発明は、例えば、核酸分子を同定するためのプローブ、または核酸分子を生成するためのプライマー、として用いることができる、オリゴヌクレオチドを含む。プローブとして用いられる本発明のオリゴヌクレオチドは、典型的には、放射性同位元素、酵素、ビオチン、蛍光分子、または化学発光分子などの、検出可能な標識と共役している。
【0119】
組換えベクター
本発明の一実施形態には、ポリヌクレオチド分子を宿主細胞中に送達することができる、あらゆるベクター中に挿入された、本発明の単離されたポリヌクレオチド分子を少なくとも1つ含む、組換えベクターが含まれる。このようなベクターは、本発明のポリヌクレオチド分子に隣接して天然に見出されないポリヌクレオチド配列であり、それにポリヌクレオチド分子が由来する種以外の種に由来することが好ましいポリヌクレオチド配列である、異種性のポリヌクレオチド配列を含む。ベクターは、RNAまたはDNAのいずれか、原核生物または真核生物のいずれかであってよく、典型的にはトランスポゾン(米国特許第5,792,294号に記載されているものなど)、ウイルス、またはプラスミドである。
【0120】
組換えベクターの1タイプは、発現ベクターに操作的に連結している本発明のポリヌクレオチド分子を含む。操作的に連結している、の句は、宿主細胞中に形質転換した場合に、分子を発現することができるやり方で、発現ベクター中にポリヌクレオチド分子が挿入されていることを意味する。本明細書で用いられる発現ベクターは、宿主細胞を形質転換することができ、特定のポリヌクレオチド分子の発現をもたらすことができる、DNAまたはRNAベクターである。好ましくは、発現ベクターは、宿主細胞内で複製することもできる。発現ベクターは、原核細胞でも、または真核細胞でもよく、典型的にはウイルスまたはプラスミドである。本発明の発現ベクターには、細菌、真菌、内部寄生体、節足動物、動物、および植物の細胞を含むものにおける、本発明の組換え細胞で機能する(すなわち、遺伝子の発現を指示する)あらゆるベクターが含まれる。本発明の、特に好ましい発現ベクターは、植物細胞において遺伝子の発現を指示することができる。本発明のベクターは、無細胞の発現系においてポリペプチドを生成するためにも用いることができ、そのような系は当技術分野ではよく知られている。
【0121】
特に、本発明の発現ベクターは、転写制御配列、翻訳制御配列、複製開始点、および、組換え細胞と適合性があり、本発明のポリヌクレオチド分子の発現を制御する、他の制御配列などの、制御配列を含んでいる。特に、本発明の組換え分子には、転写制御配列が含まれている。転写制御配列は、転写の、開始、伸長、および終結を制御する、配列である。特に重要な転写制御配列は、プロモーター、エンハンサー、オペレーター、およびリプレッサー配列など、転写開始を制御するものである。適切な転写制御配列には、本発明の組換え細胞の少なくとも1つにおいて機能することができる、あらゆる転写制御配列が含まれる。当業者であれば、様々なこのような転写制御配列を知っている。好ましい転写制御配列には、細菌、酵母菌、節足動物、植物、または哺乳動物の細胞において機能するものが含まれ、例えば、それだけには限定されないが、tac、lac、trp、trc、oxy−pro、omp/lpp、rrnB、バクテリオファージλ、バクテリオファージT7、T7lac、バクテリオファージT3、バクテリオファージSP6、バクテリオファージSP01、メタロチオネイン、アルファ接合因子、ピキアのアルコール酸化酵素、アルファウイルスのサブゲノムのプロモーター(例えば、シンドビスウイルスのサブゲノムのプロモーター)、抗生物質耐性の遺伝子、バキュロウイルス、ヘリオチスゼア(Heliothis zea)昆虫ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、アライグマのポックスウイルス、他のポックスウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス(例えば、インターメディエートアーリープロモーター(intermediate early promoters))、シミアンウイルス40、レトロウイルス、アクチン、レトロウイルス長末端反復配列、ラウス肉腫ウイルス、熱ショック、リン酸および硝酸塩転写制御配列、ならびに原核細胞または真核細胞において遺伝子発現を制御することができる他の配列が含まれる。
【0122】
特に好ましい転写制御配列は、植物またはその部分の使用に応じて、構成的に、または段階および/もしくは組織特異的のいずれかで、植物において転写を指示するのに活性であるプロモーターである。これらの植物のプロモーターには、それだけには限定されないが、構成的な発現を示すプロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター)、葉に特異的な発現のためのもの(例えば、リブロース二リン酸カルボキシラーゼのスモールサブユニット遺伝子のプロモーター)、根に特異的な発現のためのもの(例えば、グルタミン合成酵素遺伝子のプロモーター)、種子に特異的な発現のためのもの(例えば、アブラナ(Brassica napus)のクルシフェリンAプロモーター)、塊茎に特異的な発現のためのもの(例えば、ジャガイモのクラス−Iパタチンプロモーター)、または果実に特異的な発現のためのもの(例えば、トマトのポリガラクツロナーゼ(PG)プロモーター)が含まれる。
【0123】
本発明の組換え分子は、(a)本発明の発現されたポリペプチドがポリペプチドを生成する細胞から分泌されるのを可能にする分泌性のシグナル(すなわち、シグナルセグメント核酸配列)を含んでもよく、および/または(b)融合タンパク質として本発明の核酸分子の発現をもたらす融合配列を含んでもよい。適切なシグナルセグメントの例には、本発明のポリペプチドの分泌を指示することができる、あらゆるシグナルセグメントが含まれる。好ましいシグナルセグメントには、それだけには限定されないが、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)、インターフェロン、インターロイキン、成長ホルモン、ウイルスのエンベロープの糖タンパク質シグナルセグメント、ニコチアナ ネクタリン(nicotiana nectarin)のシグナルペプチド(米国特許第5,939,288号)、タバコのエクステンシンシグナル、ダイズのオレオシン油ボディーバインディング(body binding )タンパク質シグナル、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)液胞の塩基性キチナーゼシグナルペプチド、および本発明のポリペプチドの天然のシグナル配列が含まれる。さらに、本発明の核酸分子は、ユビキチン融合セグメントなど、コードされたポリペプチドをプロテオソームに指示する、融合セグメントに連結し得る。組換え分子には、本発明の核酸配列の周囲の、および/またはその中の、介在性の、および/または非翻訳の配列が含まれてもよい。
【0124】
宿主細胞
本発明の別の一実施形態には、本発明の組換え分子を、1つまたは複数で形質転換した、宿主細胞を含む組換え細胞、またはその子孫細胞が含まれる。ポリヌクレオチド分子の細胞への形質転換は、ポリヌクレオチド分子を細胞内に挿入することができるあらゆる方法によって遂行することができる。形質転換の技術には、それだけには限定されないが、トランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、およびプロトプラスト融合が含まれる。組換え細胞は、単細胞のままであってもよく、または増殖して組織、器官、もしくは多細胞生物になってもよい。本発明の形質転換されたポリヌクレオチド分子は、染色体外のままであってもよく、または、発現されるべきその能力が保持される態様で、形質転換した(すなわち、組換えの)細胞の染色体内の、1つまたは複数の部位中に組み入れてもよい。
【0125】
形質転換するのに適した宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチドで形質転換することができるあらゆる細胞が含まれる。本発明の宿主細胞は、本発明のポリペプチドを内因的に(すなわち、天然に)生成する能力があってもよく、または本発明のポリヌクレオチド分子の少なくとも1つで形質転換した後に、そのようなポリペプチドを生成する能力があってもよい。本発明の宿主細胞は、本発明のタンパク質を少なくとも1つ生成する能力があるあらゆる細胞であってよく、細菌、真菌(酵母菌を含む)、寄生体、節足動物、動物、および植物の細胞を含む。宿主細胞の例には、サルモネラ、大腸菌類(Escherichia)、バチルス(Bacillus)、リステリア、酵母類(Saccharomyces)、スポドプテラ(spodoptera)、放線菌(Mycobacteria)、トリコプルシア(Trichoplusia)、BHK(仔ハムスター腎)細胞、MDCK細胞、CRFK細胞、CV−1細胞、COS(例えば、COS−7)細胞、およびベロ細胞が含まれる。宿主細胞のさらなる例には、大腸菌K−12由来株を含む大腸菌、チフス菌(Salmonella typhi)、弱毒化株を含むネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、スポドプテラ フルギペルタ(Spodoptera frugiperda)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、および非腫瘍形成性のマウス筋芽細胞G8細胞(例えば、ATCC CRL 1246)がある。さらなる好適な哺乳動物細胞の宿主には、他の腎臓細胞系、他の線維芽細胞系(例えば、ヒト、マウス、またはニワトリの胚の線維芽細胞系)、ミエローマ細胞系、チャイニーズハムスター卵巣細胞、マウスNIH/3T3細胞、LMTK細胞、および/またはHeLa細胞が含まれる。特に好ましい宿主細胞は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)から入手可能なものなどの植物細胞である。
【0126】
組換えDNA技術を用いて、例えば宿主細胞内のポリヌクレオチド分子のコピー数を操作することによって、形質転換されたポリヌクレオチド分子の発現を、これらのポリヌクレオチド分子が転写される効率を、得られた転写物が翻訳される効率を、および翻訳後修飾の効率を、改善することができる。本発明のポリヌクレオチド分子の発現を増大するのに有用な組換え技術には、それだけには限定されないが、ポリヌクレオチド分子を高コピー数のプラスミドに操作的に連結すること、1つまたは複数の宿主細胞の染色体中へのポリヌクレオチド分子の組入れ、プラスミドへのベクターの安定化配列の付加、転写制御シグナル(例えば、プロモーター、オペレーター、エンハンサー)の置換または修飾、翻訳制御シグナル(例えば、リボソーム結合性部位、シャインダルガノ配列)の置換または修飾、宿主細胞のコドン使用頻度に対応させるための本発明のポリヌクレオチド分子の修飾、および転写物を不安定化する配列の欠失が含まれる。
【0127】
トランスジェニック植物
「植物」の語は、植物全体、植物器官(例えば、葉、茎、根など)、種子、植物細胞などを意味する。本発明の実践に用いるために企図される植物には、単子葉植物および双子葉植物の両方が含まれる。標的の植物には、それだけには限定されないが、以下のものが含まれる:穀類(コムギ、オオムギ、ライムギ、カラスムギ、コメ、モロコシ、および関連の作物)、ビート(サトウダイコン、および飼料ビート)、ナシ状果、石果、および柔らかい果実(リンゴ、西洋ナシ、スモモ、モモ、アーモンド、サクランボ、イチゴ、ラズベリー、およびブラックベリー)、マメ科の植物(マメ、レンズマメ、エンドウマメ、ダイズ)、油脂植物(アブラナ、カラシ、ケシ、オリーブ、ヒマワリ、ココナツ、ヒマシ油植物、カカオ豆、ピーナッツ)、キュウリ植物(マロウ、キュウリ、メロン)、繊維植物(ワタ、アマ、アサ、ジュート)、柑橘果実(オレンジ、レモン、グレープフルーツ、マンダリン)、野菜(ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、バレイショ、パプリカ)、クスノキ科(アボカド、シナモン、カンファー)、またはトウモロコシ、タバコ、ナッツ、コーヒー、サトウキビ、茶、つる植物、ホップ、芝、バナナ、および天然ゴム植物、ならびに観賞用(花、低木、広葉樹、および針葉樹などの常緑樹)の植物。
【0128】
本発明の文脈で定義されるトランスジェニック植物には、植物(ならびに前記植物の部分および細胞)、ならびに望ましい植物または植物器官において、少なくとも1つの本発明のポリペプチドの生成をもたらすために組換え技術を用いて遺伝的に修飾されたその子孫、が含まれる。トランスジェニック植物は、A.Slaterら、Plant Biotechnology−The Genetic Manipulation of Plants、Oxford University Press(2003年)、ならびにP.ChristouおよびH.Klee、Handbook of Plant Biotechnology、John Wiley and Sons(2004年)に概ね記載されているものなど、当技術分野では知られている技術を用いて生成することができる。
【0129】
本発明のポリヌクレオチドは、発達の全段階の間、トランスジェニック植物で恒常的に発現されてよい。ポリペプチドは、植物または植物器官の使用に応じて、発生時期特異的な様式で発現されてよい。さらに、ポリヌクレオチドは、組織特異的に発現されてよい。
【0130】
植物において対象のポリペプチドをコードする遺伝子の発現をもたらすことが知られ、または見出されている制御配列を、本発明で用いてもよい。用いられる制御配列の選択は、標的植物、および/または対象の標的器官に依存する。このような制御配列を、植物、または植物ウイルスから得てもよく、または化学的に合成してもよい。このような制御配列は、当業者にはよく知られている。
【0131】
構成的な植物プロモーターはよく知られている。先に言及したプロモーターにさらに付け加えると、いくつかの他の適切なプロモーターには、それだけには限定されないが、ノパリン合成酵素プロモーター、オクトピン合成酵素プロモーター、CaMV35Sプロモーター、リブロース−1,5−二リン酸エステルカルボキシラーゼプロモーター、Adh1−ベースのpEmu、Act1、SAM合成酵素プロモーター、およびUbiプロモーター、およびクロロフィルa/b結合タンパク質のプロモーターが含まれる。あるいは、制御されている様式で発現されている導入遺伝子を有することが望ましいこともある。ポリペプチドの制御されている発現は、組織特異的な、発生特異的な、または誘導可能な、プロモーターの制御下で、絹タンパク質のコード配列を配置することによって、可能である。いくつかの組織特異的に制御されている遺伝子、および/またはプロモーターは、植物で報告されている。これらには、種子貯蔵タンパク質(例えば、ナピン、クルシフェリン、β−コングリシニン、グリシニン、およびファセオリン)をコードする遺伝子、ゼインまたは油体タンパク質(例えば、オレオシン)、または脂肪酸生合成に関与する遺伝子(アシルキャリアータンパク質、ステアロイル−ACPデサチュラーゼ、および脂肪酸デサチュラーゼ(fad2−1)を含む)、ならびに胚発生の間に発現される他の遺伝子(例えば、Bce4)が含まれる。種子特異的な発現に特に有用なものは、エンドウマメのビシリンプロモーターである。成熟した葉における発現に有用な他のプロモーターは、シロイヌナズナ(Arabidopsis)由来のSAGプロモーターなど、老化の開始時にスイッチオンになるものである。開花から果実への発生時またはその間、少なくとも成熟の開始までに発現される、果実特異的なプロモーターの1クラスは、米国特許第4,943,674号に論じられている。組織特異的なプロモーターの他の例には、塊茎における発現を指示するもの(例えば、パタチン遺伝子プロモーター)、および繊維細胞における発現を指示するもの(発生的に制御される繊維細胞タンパク質の一例はE6繊維である)、が含まれる。
【0132】
終結配列およびポリアデニル化シグナルなどの他の制御配列には、植物などにおける、あらゆるそのような配列機能性が含まれ、その選択は当業者であれば明らかである。終結領域は比較的互換的である様子なので、発現カセットで用いられる終結領域は、主に利便性に対して選択される。用いられる終結領域は、転写開始領域に固有であってよく、対象のポリヌクレオチド配列に固有であってよく、または別の供給源に由来していてもよい。終結領域は、天然に存在してもよく、または全体的もしくは部分的に合成でもよい。好都合な終結領域は、オクトピン合成酵素およびノパリン合成酵素の終結領域などの、アグロバクテリウム チュメファシエンス(A.tumefaciens)のTiプラスミドから、または化学的に誘導可能なlant遺伝子であるpINであるβ−ファゼオリンのための遺伝子から、入手可能である。
【0133】
対象のポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現構築物を、標的植物中に導入するのに、いくつかの技術が利用可能である。このような技術には、それだけには限定されないが、カルシウム/ポリエチレングリコール法を用いたプロトプラストの形質転換、電気穿孔およびマイクロインジェクション、または(コーティングされた)微粒子銃が含まれる。これらの、いわゆる直接DNA形質転換方法の他に、ウイルスおよび細菌のベクターなどの(例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属由来の)ベクターを伴う形質転換系が、広く利用可能である。選択および/またはスクリーニング後、プロトプラスト、細胞、または形質転換された植物の部分を、当技術分野では知られている方法を用いて植物全体中に再生することができる。形質転換および/または再生の技術の選択は、本発明にとって決定的ではない。
【0134】
トランスジェニック細胞および植物における導入遺伝子の存在を確認するために、当業者には知られている方法を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、またはサザンブロット解析を行うことができる。導入遺伝子の発現生成物を、生成物の性質に応じて、あらゆる様々な方法で検出することができ、ウェスタンブロットおよび酵素アッセイが含まれる。タンパク質の発現を定量するための、および様々な植物組織における複製を検出するための、特に有用な1つの方法は、GUSなどのレポーター遺伝子を用いることである。トランスジェニック植物を得た後、望ましい表現型を有する、植物組織または部分を生成するために、植物を成長させてもよい。植物組織または植物の部分を収穫してもよく、および/または種子を収集してもよい。種子は、望ましい特徴を有する、組織または部分を有する、さらなる植物を成長させるための供給源として供することができる。
【0135】
トランスジェニックの非ヒト動物
トランスジェニック動物を生成するための技術は、当技術分野ではよく知られている。この主題についての有用な全般的な教科書は、Houdebine、Transgenic animals−Generation and Use(Harwood Academic、1997年)である。
【0136】
異種性のDNAを、例えば哺乳動物の受精卵中に導入することができる。例えば、全能性幹細胞または多能性幹細胞を、マイクロインジェクション、リン酸カルシウムが媒介する沈降、リポソーム融合、レトロウイルスの感染または他の手段によって形質転換することができ、次いで、形質転換された細胞を胚中に導入し、次いで胚が発生してトランスジェニック動物になる。高度に好ましい一方法では、発生する胚に、望ましいDNAを含むレトロウイルスを感染させ、感染した胚からトランスジェニック動物を生成する。しかし、非常に好ましい一方法では、好適なDNAを、好ましくは単細胞の段階で、胚の前核または細胞質中に同時注入し、この胚を発生させて成熟したトランスジェニック動物にする。
【0137】
トランスジェニック動物を生成するのに用いられる別の一方法は、標準の方法によって、核酸を前核段階の卵子中にマイクロインジェクションすることを伴う。次いで、注射された卵子を培養し、その後、偽妊娠したレシピエントの卵管中に移す。
【0138】
トランスジェニック動物は、核移植技術によって生成してもよい。この方法を用いて、ドナー動物からの線維芽細胞に、制御配列の制御下で、対象の結合ドメインまたは結合パートナーに対するコード配列を組み入れているプラスミドを、安定に形質移入する。次いで、安定な形質移入体を、除核した卵母細胞に融合し、培養し、メス(雌)のレシピエント中に移植する。
【0139】
回収方法および絹の生成
本発明の絹タンパク質を、植物、細菌、または酵母菌の細胞などの、組換え細胞から抽出し、精製し、様々な方法によって前記タンパク質を生成してもよい。一実施形態では、この方法は、ホモジナイズした細胞/組織/植物などから、pHを下げ、加熱し、その後硫酸アンモニウム分画によって、天然の細胞タンパク質を除去することを伴う。簡潔に述べると、細胞/組織/植物をホモジナイズすることによって、可溶性タンパク質全体を抽出する。pH4.7で、次いで60℃で沈澱することによって、天然のタンパク質を除去する。次いで、得られた上清を、40%飽和の硫酸アンモニウムで分画化する。得られたタンパク質は、95%の純度である。従来のゲルクロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーで、さらなる精製を行ってもよい。
【0140】
別の一例では、細胞可溶化物を、高濃度の酸、例えばHClまたはプロピオン酸で処理して、1時間またはそれを超えて、pHを約1〜2に下げ、これにより絹タンパク質を可溶化させるが他のタンパク質を沈澱させる。
【0141】
タンパク質濃度が臨界値を超えると、本発明の絹タンパク質の自発的な自己集合によって、溶液から原繊維の凝集物が形成される。凝集物を集め、O’Brienらの方法にしたがって機械的に紡いで、肉眼で見える繊維にする(I. O’Brienら、「Design, Synthesis and Fabrication of Novel Self−Assembling Fibrillar Proteins」、Silk Polymers: Materials Science and Biotechnology、104〜117頁、Kaplan、Adams、Farmer、およびViney編集、c、1994年、American Chemical Society, Washington, D.C.)。
【0142】
固有のコイルドコイルの2次構造の性質によって、Xenospira1〜4、BBF1〜4、BAF1〜4およびGAF1〜4などのタンパク質は、脱水時に自発的にコイルドコイルの2次構造を形成する。以下に記載するように、コイルドコイルの強度を、近接近するリジン残基の酵素的または化学的な架橋により増強することができる。
【0143】
本発明の、絹繊維および/またはコポリマーの、加工の必要性は低い。本発明の絹タンパク質は、リジン架橋などの架橋で強化することができる、強力なコイルドコイルを自発的に形成することができるので、強力な繊維を形成するのに最小の加工を、例えば紡績を、必要とする。これは、繊維の、2次構造(β−シート)および強度を得るために、洗練された紡績技術を必要とする、カイコガ(B.mori)およびクモの、組換えの絹ポリペプチドと対照的である。
【0144】
しかし、繊維は、液晶相に特徴的な性質を有する溶液から紡いでもよい。相転移が起こり得る繊維濃度は、溶液に存在する、タンパク質の組成またはタンパク質の組合せ、に依存する。しかし、相転移は、溶液の、透明さおよび複屈折をモニターすることによって、検出することができる。交差した偏光フィルターを通して見たときに、溶液が半透明の外観を獲得し、複屈折を示す場合に、液晶相の開始を検出することができる。
【0145】
一つの繊維形成技術では、初めに、機械的手段によって持ち上げるのに十分な長さが生成するまで、繊維をタンパク質溶液から、開口部を通してメタノール中に押し出してよい。次いで、繊維を、メタノール溶液を通してこのような機械的手段によって引っ張り、回収し、乾燥させることができる。繊維を引き出すための方法は、当技術分野ではよく知られていると考えられる。
【0146】
本発明の、絹繊維および/またはコポリマーを生成するために用いてもよい方法のさらなる例は、米国特許第2004/0170827号、および米国特許第2005/0054830号に記載されている。
【0147】
好ましい一実施形態では、本発明の、絹繊維および/またはコポリマーは架橋している。一実施形態では、絹繊維および/またはコポリマーは、当技術分野では知られている技術を用いて、対象の、表面/物品/生成物などで架橋されている。別の一実施形態では(または、前の実施形態と組み合わせて)、絹繊維の少なくともいくつかの絹タンパク質および/またはコポリマーは、相互に架橋している。好ましくは、絹タンパク質は、タンパク質におけるリジン残基によって架橋している。このような架橋は、当技術分野では知られている、化学技術および/または酵素技術を用いて遂行することができる。例えば、酵素の架橋は、リシルオキシダーゼによって触媒され得るが、非酵素の架橋は、糖化されたリジン残基から産生することができる(Reiserら、1992年)。
【0148】
抗体
本発明は、本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントに対する、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体も提供する。したがって、本発明は、本発明のポリペプチドに対する、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を生成するための方法をさらに提供する。
【0149】
「特異的に結合する」の語は、本発明のポリペプチドの少なくとも1つに結合するが、他の周知の絹タンパク質には結合しない、抗体の能力を意味する。
【0150】
本明細書で用いられる「エピトープ」の語は、抗体によって結合している本発明のポリペプチドの領域を意味する。エピトープは、このエピトープに対する抗体を産生するために、動物に投与することができるが、本発明の抗体が、ポリペプチド全体の状況において、エピトープ領域に特異的に結合することが好ましい。
【0151】
ポリクローナル抗体が望ましい場合は、選択された哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)を、本発明の免疫原性のポリペプチドで免疫化する。免疫化した動物からの血清を回収し、知られている手順にしたがって処理をする。ポリクローナル抗体を含んでいる血清が、他の抗原に対する抗体を含んでいる場合は、イムノアフィニティークロマトグラフィーによってポリクローナル抗体を精製することができる。ポリクローナル抗血清を生成および加工するための技術は、当技術分野では知られている。このような抗体を作成し得るために、本発明は、動物における免疫原として使用するための他のポリペプチドに対して、ハプテン化された、本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントも提供する。
【0152】
本発明のポリペプチドに対して向けられているモノクローナル抗体も、当業者であれば容易に生成することができる。ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を作成するための一般的な方法論は、よく知られている。不死の抗体生成細胞系を、細胞融合によって、ならびに発がん性DNAを持つBリンパ球での直接の形質転換、またはエプスタインバーウイルスを用いたトランスフェクションなどの、他の技術によっても、作り出すことができる。生成されたモノクローナル抗体のパネルを、様々な性質に対して、すなわちイソ型およびエピトープの親和性に対して、スクリーニングすることができる。
【0153】
代替の技術は、ファージディスプレイライブラリーのスクリーニングを伴い、その場合、例えば、ファージは、広範囲の相補性決定領域(CDR)でコーティングしたその表面上に、scFvフラグメントを発現する。この技術は、当技術分野ではよく知られている。
【0154】
本発明の目的では、「抗体」の語は、別段の指定がない限り、標的の抗原に対するその結合活性を保持する、抗体全体のフラグメントを含む。このようなフラグメントには、Fv、F(ab’)、およびF(ab’)フラグメント、ならびに単鎖抗体(scFv)が含まれる。さらに、抗体およびそのフラグメントは、ヒト化抗体、例えば、EP−A−239400に記載されているものなどであってよい。
【0155】
本発明の抗体は、固体の支持体に結合していてもよく、および/または適切な試薬、コントロール、指示書などとともに、適切な容器におけるキットに包装されていてもよい。
【0156】
本発明の抗体が、検出可能に標識されているのが好ましい。抗体の結合の直接測定を可能にする、例示の検出可能な標識には、放射性標識、フルオロフォア、色素、磁性ビーズ、化学発光物質、コロイド粒子などが含まれる。結合の間接的な測定を可能にする標識の例には酵素が含まれ、この場合、基質が着色または蛍光の生成物を提供してもよい。さらなる例示の検出可能な標識には、適切な基質を付加した後に、検出可能な生成物のシグナルを提供することができる、共有結合している酵素が含まれる。複合体で使用するのに適する酵素の例には、西洋ワサビのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼなどが含まれる。このような抗体−酵素複合体が市販されていない場合は、当業者には知られている技術によって容易に生成することができる。さらなる例示の検出可能な標識には、アビジンまたはストレプトアビジンに高親和性で結合するビオチン;蛍光活性化したセルソーターで用いることができる蛍光色素(例えば、フィコビリタンパク質、フィコエリスリン、およびアロフィコシアニン;フルオレセイン、およびテキサスレッド);ハプテンなどが含まれる。検出可能な標識が、ビオチンなど、プレートルミノメーターにおける直接測定を可能にするのが好ましい。このような標識した抗体を、本発明のポリペプチドを検出するために当技術分野では知られている技術で用いることができる。
【0157】
組成物
本発明の組成物は、「許容できる担体」を含んでいてよい。このような許容できる担体の例には、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス液、およびその他の生理学的に平衡な塩の水溶液が含まれる。非水性のビヒクル、例えば、不揮発性油、ゴマ油、オレイン酸エチル、またはトリグリセリドも用いてもよい。
【0158】
一実施形態では、「許容できる担体」は、「薬学的に許容できる担体」である。薬学的に許容できる担体の語は、動物、特に哺乳動物、より詳しくはヒト、に投与した場合に、アレルギー性を、毒性を、またはその他の方法で有害な反応を、生成しない、分子の構成要素および組成物を意味する。薬学的に許容できる担体または希釈剤の有用な例には、それだけには限定されないが、溶剤、分散媒体、コーティング、安定化剤、保護コロイド、接着剤、増粘剤、チキソトロープ剤、浸透剤、金属イオン封鎖剤、ならびに本発明のポリペプチドの活性に影響を及ぼさない等張化剤および吸収遅延剤が含まれる。例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合に必要とされる粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。より一般的には、本発明のポリペプチドは、通常の製剤技術に対応する、あらゆる非毒性の、固体または液体の、添加剤と組み合わせることができる。
【0159】
本明細書で概略するように、いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチド、絹繊維、および/またはコポリマーを、薬学的に許容できる担体として用いる。
【0160】
他の適切な組成物を、本発明のポリペプチドの特定の使用を特に参考にして、以下に記載する。
【0161】
使用
絹タンパク質は、並外れた靭性および強度によって、新しい生体材料を作り出すのに有用である。しかし、現在まで、クモおよび昆虫の繊維タンパク質は、大型のタンパク質(100kDaを超える)であり、高度に反復性のアミノ酸配列からなっている。これらのタンパク質は、高度に偏ったコドンを含む、大型の遺伝子によってコードされており、そのため組換え系でこれらを生成するのは特に困難であった。比較すると、本発明の絹タンパク質は短く、非反復性である。これらの性質により、これらのタンパク質をコードする遺伝子は、新しい生体材料を組換えで生成するのに特に魅力あるものとなっている。
【0162】
本発明の絹タンパク質、絹繊維、および/またはコポリマーを、医薬の、軍用の、工業用の、および商業用の応用による、広範かつ多様な一連のものに用いることができる。繊維を、縫合、皮膚移植、細胞増殖マトリックス、置換用靭帯、および外科用メッシュなどの医療機器の製造に、ならびに広範囲の工業用および商業用製品に、例えば、ケーブル、ロープ、網、釣糸、服地、防弾チョッキ裏地、容器布地、バックパック、ナップザック、バッグまたは財布のストラップ、接着性結合材料、非接着性結合材料、ストラップ材料、テント布地、防水シート、プールカバー、乗物カバー、フェンシング材料、密閉剤、建築材料、防水材料、柔軟なパーティション材料、スポーツ器具、ならびに、実際に、それに対して高度の伸張強度および弾力性が望ましい性質である、繊維または布地の殆どあらゆる使用に用いることができる。本発明の絹タンパク質、絹繊維、および/またはコポリマーは、化粧品、スキンケア、ヘアケア、およびヘアカラーなどのパーソナルケア製品のための組成物にも、ならびに顔料などの粒子のコーティングにも、用途がある。
【0163】
絹タンパク質をその天然の形態で用いてもよく、または、修飾してより有益な効果をもたらす誘導体を形成してもよい。例えば、絹タンパク質を、米国特許第5,981,718号、および米国特許第5,856,451号に記載されているように、アレルゲン性を低減するように、ポリマーに結合することによって修飾してもよい。適切な修飾性ポリマーには、それだけには限定されないが、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリカルボキシレート、ポリ(ビニルピロリドン)、およびデキストランが含まれる。別の一例では、絹タンパク質を、選択的消化および他のタンパク質修飾因子のスプライシングによって修飾してもよい。例えば、絹タンパク質を、約60℃という高温で酸と処理することによって、より小さなペプチド単位に切断してもよい。有用な酸には、それだけには限定されないが、希塩酸、硫酸、またはリン酸が含まれる。あるいは、絹タンパク質の消化を、水酸化ナトリウムなどの塩基との処理によって行ってもよく、または適切なプロテアーゼを用いて酵素消化を行ってもよい。
【0164】
タンパク質をさらに修飾して、パーソナルケア製品に対する特定の用途において有用である、性能特性を提供してもよい。パーソナルケア製品で用いるためのタンパク質の修飾は、当技術分野ではよく知られている。例えば、一般に用いられる方法は、米国特許第6,303,752号、米国特許第6,284,246号、および米国特許第6,358,501号に記載されている。修飾の例には、それだけには限定されないが、水−油乳剤の増強を促進するためのエトキシ化、親油性の適合性をもたらすためのシロキシレーション(siloxylation)、ならびに、石鹸および洗剤の組成物との適合性を助ける、エステル化が含まれる。さらに、それだけには限定されないが、アミン、オキシラン、シアン酸、カルボン酸エステル、シリコーンコポリオール、シロキサンエステル、四級化アミン脂肪族、ウレタン、ポリアクリルアミド、ジカルボキシル酸エステル、およびハロゲン化エステルを含む官能基で、絹タンパク質を誘導体化してもよい。絹タンパク質を、ジイミンとの反応によって、および金属塩の形成によって、誘導体化してもよい。
【0165】
「ポリペプチド」(および「タンパク質」)の上記の定義と一致して、このような誘導体化および/または修飾した、分子を、本明細書では広く「ポリペプチド」および「タンパク質」とも呼ぶ。
【0166】
本発明の絹タンパク質を、他の繊維タイプと一緒に、紡ぎ、および/または束ね、または編むことができる。例には、それだけには限定されないが、ポリマー繊維(例えば、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル)、他の植物および動物起源の繊維および絹(例えば、綿、羊毛、カイコガ、もしくはクモの絹)、ならびにガラス繊維が含まれる。好ましい実施形態は、10%ポリプロピレン繊維を有する、編んだ絹繊維である。本発明は、このような繊維の組合せの生成を容易に行って、例えば、医薬用、工業用、または商業用の、用途のための、繊維の製造および生成において一般に求められることのある、外観、柔軟性、重量、耐久性、撥水の性質、製造コストの改善など、あらゆる望まれる特徴を増強することができることを企図するものである。
【0167】
パーソナルケア製品
化粧用およびスキンケアの組成物は、化粧用に許容できる媒体に有効量の絹タンパク質を含む、無水の組成物であってよい。これら組成物の使用には、それだけには限定されないが、スキンケア、スキンクレンジング、メーキャップ、および抗シワ製品が含まれる。化粧用およびスキンケアの組成物に対する絹タンパク質の有効量は、本明細書では、組成物の全重量に対して、約10−4から約30重量%までの比率と規定されるが、好ましくは約10−3から約15重量%までである。この比率は、化粧用またはスキンケアの組成物のタイプの関数として変化してよい。化粧用に許容できる媒体に適する組成物は、米国特許第6,280,747号に記載されている。例えば、化粧用に許容できる媒体は、一般的に、組成物の全重量に対して約10から約90重量%までの比率の脂肪物質を含んでいてよく、この場合、脂肪相は、少なくとも1つの液体、固体、または半固体の脂肪物質を含む。脂肪物質には、それだけには限定されないが、油、ロウ、ゴム、およびいわゆるペースト状の脂肪物質が含まれる。あるいは、組成物は、油中水型または水中油型の乳剤などの安定な分散剤の形態であってもよい。さらに、組成物は、それだけには限定されないが、抗酸化剤、保存剤、充填剤、界面活性剤、UVAおよび/またはUVB日焼け止め剤、香料、増粘剤、湿潤剤、ならびに陰イオン性の、非イオン性の、または両性の、ポリマー、ならびに染料または顔料を含む、1つまたは複数の、従来の化粧用または皮膚科学上の添加剤または補助剤を含んでいてよい。
【0168】
本発明の絹タンパク質を少なくとも1つ含む、乳化した材料を使用して製造可能である、乳化した化粧品および医薬部外品には、例えば、クレンジング化粧品(美容用石鹸、洗顔剤、シャンプー、リンスなど)、ヘアケア製品(ヘアダイ、毛髪用化粧品など)、基礎化粧品(一般用クリーム、乳液、ひげそり用クリーム、コンディショナー、コロン、ひげそり用ローション、整髪油、パックなど)、メーキャップ用化粧品(ファンデーション、アイブロウペンシル、アイクリーム、アイシャドー、マスカラなど)、芳香化粧品(香水など)、日焼け用および日焼け止め化粧品(日焼け用および日焼け止めクリーム、日焼け用および日焼け止めローション、日焼け用および日焼け止めオイルなど)、爪用化粧品(ネイルクリームなど)、アイライナー化粧品(アイライナーなど)、リップ化粧品(口紅、リップクリームなど)、オーラルケア製品(歯みがきなど)、浴用化粧品(浴用製品など)などが含まれる。
【0169】
化粧用組成物は、マニキュア液などのネイルケア用製品の形態でもよい。マニキュア液は、本明細書では、化粧用に許容できる媒体に有効量の絹タンパク質を含む、爪のトリートメントおよび着色のための組成物と定義される。マニキュア液組成物で使用するための有効量の絹タンパク質は、本明細書では、マニキュア液の全重量に対して、約10−4から約30重量%までの比率であると規定される。マニキュア液に対して化粧用に許容できる媒体の成分は、米国特許第6,280,747号に記載されている。マニキュア液は、典型的には、溶剤、およびフィルム形成物質、例えば、セルロース誘導体、ポリビニル誘導体、アクリルポリマーまたはコポリマー、ビニルコポリマー、およびポリエステルポリマーを含んでいる。組成物は、有機または無機の顔料も含んでいてよい。
【0170】
ヘアケア組成物は、本明細書では、それだけには限定されないが、化粧用に許容できる媒体に有効量の絹タンパク質を含む、シャンプー、コンディショナー、ローション、エアロゾル、ゲル、およびムースを含む、毛髪の処置のための組成物と定義される。ヘアケア組成物で使用される絹タンパク質の有効量は、本明細書では、組成物の全重量に対して、約10−2から約90重量%までの比率と規定される。ヘアケア組成物のための化粧用に許容できる媒体の成分は、米国特許第2004/0170590号、米国特許第6,280,747号、米国特許第6,139,851号、および米国特許第6,013,250号に記載されている。例えば、これらのヘアケア組成物は、水性、アルコール性、または水性−アルコール性の溶液であってよく、アルコールは、水性−アルコール性溶液では、全重量に対して約1から約75重量%までの比率の、エタノールまたはイソプロパノールであることが好ましい。さらに、ヘアケア組成物は、上記に示した、1つまたは複数の従来の化粧用または皮膚科学上の、添加剤または補助剤を含んでいてよい。
【0171】
ヘアカラー組成物は、本明細書では、化粧用に許容できる媒体に有効量の絹タンパク質を含む、毛髪を着色し、染色し、またはブリーチするための組成物と定義される。ヘアカラー組成物において使用される絹タンパク質の有効量は、本明細書では、組成物の全重量に対して、約10−4から約60重量%までの比率と規定される。ヘアカラー組成物に対する化粧用に許容できる媒体の成分は、米国特許第2004/0170590号、米国特許第6,398,821号、および米国特許第6,129,770号に記載されている。例えば、ヘアカラー組成物は、一般的に、無機のペルオキシゲンベースの染色酸化剤と酸化可能なカラー剤との混合物を含んでいる。ペルオキシゲンベースの染色酸化剤は、過酸化水素が最も一般的である。酸化的なヘアカラー剤は、第1の中間体(例えば、p−フェニレンジアミン、p−アミノフェノール、p−ジアミノピリジン、ヒドロキシインドール、アミノインドール、アミノチミジン、またはシアノフェノール)と第2の中間体(例えば、フェノール、レゾルシノール、m−アミノフェノール、m−フェニレンジアミン、ナフトール、ピラゾロン、ヒドロキシインドール、カテコール、またはピラゾール)との酸化的カップリングによって形成される。さらに、ヘアカラー組成物は、酸化性の酸、金属イオン封鎖剤、安定化剤、増粘剤、バッファー、担体、界面活性剤、溶剤、抗酸化剤、ポリマー、非酸化性染料およびコンディショナーを含んでいてよい。
【0172】
絹タンパク質は、化粧品およびコーティング組成物での用途に、粒子の分散性を改善するために、顔料および化粧用粒子をコーティングするのに用いることもできる。化粧用粒子は、本明細書では、化粧用組成物で用いられる顔料または不活性な粒子などの粒子状材料と定義される。適切な顔料および化粧用粒子には、それだけには限定されないが、無機の着色顔料、有機顔料、および不活性な粒子が含まれる。無機の着色顔料には、それだけには限定されないが、二酸化チタン、酸化亜鉛、ならびに鉄、マグネシウム、コバルト、およびアルミニウムの酸化物が含まれる。有機顔料には、それだけには限定されないが、D&C Red No36、D&C Orange No17、D&C Red Nos7、11、31、および34のカルシウムレーキ、D&C Red No12のバリウムレーキ、D&C Red No.13のストロンチウムレーキ、FD&C Yellow No.5のアルミニウムレーキ、およびカーボンブラック粒子が含まれる。不活性な粒子には、それだけには限定されないが、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、雲母、タルク、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、粉末状Nylon(商標)、パーフルオロアルカン、および他の不活性な粒子が含まれる。
【0173】
絹タンパク質は、デンタルフロスでも用いてもよい(例えば、米国特許第2005/0161058号を参照されたい)。フロスは、モノフィラメント糸、またはマルチフィラメント糸であってよく、繊維はよりあわせてあってもよく、またはよりあわせてなくてもよい。デンタルフロスは、個々の断片として、または断片をあらゆる所望の長さに切断するためのカッター付きロールで、包装してもよい。デンタルフロスは、それだけには限定されないが、条片、およびシートなどの、フィラメント以外の様々な形状で提供してもよい。フロスを、それだけには限定されないが、ロウ、フロス用のポリテトラフルオロエチレンのモノフィラメントの糸など、様々な材料でコーティングしてもよい。
【0174】
絹タンパク質を、石鹸で用いてもよい(例えば、米国特許第2005/0130857号を参照されたい)。
【0175】
顔料および化粧用粒子のコーティング
顔料および化粧用粒子のコーティングで使用される絹タンパク質の有効量は、本明細書では、粒子の乾燥重量に対して、約10−4から約50重量%まで、しかし好ましくは約0.25から約15重量%までの比率と規定される。使用する最適な量の絹タンパク質は、コーティングする顔料または化粧用粒子のタイプに依存する。例えば、無機の着色顔料と一緒に用いる絹タンパク質の量は、約0.01重量%と20重量%との間であるのが好ましい。有機顔料の場合は、絹タンパク質の好ましい量は約1重量%と約15重量%との間であり、一方、不活性な粒子では、好ましい量は約0.25重量%と約3重量%との間である。コーティングした顔料および粒子を調製するための方法は、米国特許第5,643,672号に記載されている。これらの方法には、混転し、または混和しながら、粒子に絹タンパク質の水溶液を加えること、絹タンパク質と粒子とのスラリーを形成すること、および粒子上に絹タンパク質の溶液を乾燥し、スプレードライすること、または絹タンパク質と粒子とのスラリーを凍結乾燥することが含まれる。これらのコーティングされた顔料および化粧用粒子には、化粧用製剤、塗料、インクなどを用いてもよい。
【0176】
生物医学
絹タンパク質を、傷の治癒を促進するために、絆創膏上のコーティングとして用いてもよい。この用途では、絆創膏材料を、有効量の絹タンパク質でコーティングする。傷の治癒用の絆創膏の目的において、絹タンパク質の有効量は、本明細書では、絆創膏材料の重量に対して約10−4から約30重量%までの比率と規定される。コーティングされる材料は、あらゆる、柔軟な、生物学的に不活性な、多孔性の布または繊維であってよい。例には、それだけには限定されないが、綿、絹、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリエチレン、ポリエステル、およびこれらの組合せが含まれる。布または繊維のコーティングは、当技術分野では知られている数々の方法によって遂行してよい。例えば、コーティングされる材料を、絹タンパク質を含む水溶液中に浸漬してもよい。あるいは、絹タンパク質を含む溶液を、スプレーガンを用いてコーティングされる材料の表面上にスプレーしてもよい。さらに、ローラー塗装の印刷工程を用いて、絹タンパク質を含む溶液を表面上にコーティングしてもよい。傷の絆創膏は、それだけには限定されないが、ヨウ素、ヨウ化カリウム、ポビドンヨウ素、アクリノール、過酸化水素、塩化ベンザルコニウム、およびクロルヘキシジンなどの消毒薬;アラントイン、塩酸ジブカイン、およびマレイン酸クロロフェニラミンなどの治癒促進薬;塩酸ナファゾリンなどの血管収縮薬、酸化亜鉛などの収斂薬、ならびにホウ酸などの痂皮生成薬を含む、他の添加物を含んでもよい。
【0177】
本発明の絹タンパク質を、創傷被覆材料としてのフィルムの形態で用いてもよい。創傷包帯材料としての、無定形なフィルムの形態での絹タンパク質の使用は、米国特許第6,175,053号に記載されている。無定形なフィルムは、有効量の絹タンパク質を含む、結晶化度10%未満の、密で、非多孔性の、フィルムを含む。創傷ケア用のフィルムに対しては、絹タンパク質の有効量は、本明細書では約1から99重量%までの間と規定される。フィルムは、それだけには限定されないが、上記に記載するような、セリシンなどの他のタンパク質、消毒薬、治癒促進薬、血管収縮薬、収斂薬、および痂皮生成薬を含む、他の成分も含んでいてもよい。セリシンなどの他のタンパク質は、組成物の1から99重量%までを含んでいてよい。列挙した他の成分の量は、好ましくは全部で約30重量%未満、より好ましくは組成物の約0.5から20重量%までの間である。傷包帯フィルムは、上記で言及した材料を水溶液に溶解し、ろ過または遠心分離によって不溶物を除去し、溶液をアクリル板などの滑らかな固体表面上に注型し、その後乾燥することによって、調製することができる。
【0178】
本発明の絹タンパク質を、縫合糸に用いてもよい(例えば、米国特許第2005/0055051号を参照されたい)。このような縫合糸は超高分子量の繊維および絹繊維でできている網目状の包被を特色とすることができる。ポリエチレンによって強度がもたらされる。ポリエステル繊維を高分子量のポリエチレンと織って、タイダウンの性質の改善をもたらしてもよい。絹を、縫合の認識および同定を改善するための、形跡をもたらすための対照となる色で提供してもよい。絹は、また、他の繊維よりも組織に適合でき、縫合糸の終端と周囲の組織との間の、有害な相互作用に関する心配なしに、結び目近くで終端を切断できる。強度が高い縫合糸の取扱い上の特性は、縫合糸をコーティングする様々な材料を用いて、増強することもできる。縫合糸がEthibond No.5縫合糸の強度を有し、さらにNo.2縫合糸の直径、感触、および結び能力を有すると、有利である。結果として、前記縫合糸は、回旋筋腱板修復、アキレス腱修復、膝蓋腱修復、ACL/PCL再建術、臀部および肩再建術の手順、および縫合糸固定装置において、またはそれとともに用いられる縫合糸の代替品など、整形外科手順の殆どに理想的である。縫合糸は、非コーティングでもよく、または、例えば、組みひもの平滑潤滑性、結び目の確実性、または耐摩耗性を改善するために、ロウ(ミツロウ、石油蝋、ポリエチレンワックスまたはその他)、シリコーン(Dow Corningのシリコーン液202Aまたはその他)、シリコーンゴム、PBA(ポリブチレート酸(polybutylate acid))、エチルセルロース(Filodel)、または他のコーティングで、コーティングされていてもよい。
【0179】
本発明の絹タンパク質を、ステントで用いてもよい(例えば、米国特許第2004/0199241号を参照されたい)。例えば、腔内ステントおよびグラフトを含むステントグラフトが提供され、ステントグラフトは絹を含む。絹は、ステントグラフトを受けたホスト(host)における反応を誘発し、この反応によって、絹のステントグラフトの絹に隣接するホストの組織と、絹のステントグラフトとの間の接着の増大がもたらされ得る。絹は、絹をグラフト中に織り込むことによって、または絹をグラフトに接着することによって(例えば、接着剤または縫合糸によって)など、あらゆる様々な手段によってグラフトに接着してよい。絹は、糸、組みひも、シート、粉末などの形態であってよい。ステントグラフト上の絹の位置に関しては、絹はステントの外側だけに付着していてよく、および/または、ホストにおける近接組織にこれら遠位の領域を確保するのを助けるために、絹がステントグラフトの遠位領域に付着していてもよい。本発明の文脈内では、望まれる処置の部位および性質に応じて、広範囲のステントグラフトを利用してもよい。ステントグラフトは、例えば、二叉または管状のグラフト、円柱状または先細の、自己拡張型またはバルーン拡張型の、ユニボディー(unibody)またはモジュール型などであってよい。
【0180】
ステントグラフトは、絹の他に、いくつかまたは全ての絹の上にコーティングを含んでいてよく、この場合、ステントグラフトをホスト中に挿入した時にコーティングは分解し、それによってコーティングは絹とホストとの間の接触を遅らせる。適切なコーティングには、制限なく、ゼラチン、分解性ポリエステル(例えば、PLGA、PLA、MePEG−PLGA、PLGA−PEG−PLGA、およびコポリマー、およびそれらのブレンド)、セルロースおよびセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、多糖類(例えば、ヒアルロン酸、デキストラン、硫酸デキストラン、キトサン)、脂質、脂肪酸、糖エステル、核酸エステル、ポリ無水物、ポリオルトエステル(polyorthoester)、およびポリビニルアルコール(PVA)が含まれる。絹含有のステントグラフトは、生物学的に活性な物質(薬物)を含んでいてよく、物質はステントグラフトから放出され、次いで細胞反応(例えば、細胞もしくは細胞外マトリックスの堆積)、および/またはその中にステントグラフトを挿入するホストにおける繊維性の反応の増強を誘発する。
【0181】
本発明の絹タンパク質を、ex vivoで靭帯および腱を生成するためのマトリックスでも用いてもよい(例えば、米国特許第2005/0089552号を参照されたい)。絹繊維ベースのマトリックスを、骨髄間質細胞(BMSC)などの多能性の細胞とともに接種することができる。生体工学によって作った靭帯または腱を、細胞の配向および/または機械的な力が適用される方向におけるマトリックスの折れ曲がりパターンによって、ならびにそのような力を適用する場合は、I型コラーゲン、III型コラーゲン、および機械的な力または刺激によって生成される機械的な負荷の軸に沿ったフィブロネクチンタンパク質を含む、靭帯および腱に特異的なマーカーの生成によっても、特徴付けると有利である。好ましい一実施形態では、靭帯または腱は、らせん状の機構に配列される繊維の束の存在を特徴とする。生成することができる靭帯または腱のいくつかの例には、前十字靭帯、後十字靭帯、回旋筋腱板、肘および膝の内側側副靭帯、手の屈筋腱、足首の外側靭帯、ならびに顎または顎関節の靭帯および腱が含まれる。本発明の方法によって生成することができる他の組織には、軟骨(関節および半月板の両方)、骨、筋肉、皮膚、および血管が含まれる。
【0182】
本発明の絹タンパク質を、ヒドロゲルで用いてもよい(例えば、米国特許第2005/0266992号を参照されたい)。絹フィブロインのヒドロゲルは、組織工学の足場、細胞培養のための基質、傷および火傷の包帯、軟部組織の代用、骨充填剤、および薬学的または生物学的に活性な化合物に対する支持体としてそれらが使用できるようにする、開口気孔構造によって特徴付けることができる。
【0183】
絹タンパク質は、皮膚科の組成物で用いてもよい(例えば、米国特許第2005/0019297号を参照されたい)。さらに、本発明の絹タンパク質、およびその誘導体を、徐放性の組成物で用いてもよい(例えば、米国特許第2004/0005363号を参照されたい)。
【0184】
織物
本発明の絹タンパク質を、織物で引き続き使用するために、繊維の表面に適用してもよい。これにより、繊維上にタンパク質のフィルムの単層がもたらされ、滑らかな仕上がりがもたらされる。米国特許第6,416,558号および米国特許第5,232,611号は、繊維に対して仕上げ塗りを加えることを記載している。これらの開示に記載されている方法は、良好な感触および滑らかな表面をもたらすために、繊維を仕上げる、万能性の例を提供するものである。この用途では、繊維を、有効量の絹タンパク質でコーティングする。織物において使用するための繊維のコーティングの目的では、絹タンパク質の有効量は、本明細書では、繊維材料の重量に対して約1から約99重量%までの比率と規定される。繊維材料には、それだけには限定されないが、綿や、レーヨンおよびLycra(商標)などのポリエステル、ナイロン、羊毛、ならびに天然の絹を含む他の天然繊維の、織物繊維が含まれる。絹タンパク質を繊維上に適用するのに適する組成物には、エタノール、イソプロパノール、ヘキサフルオラノール(hexafluoranol)、イソチオシアノウラン酸塩、および水と混合して溶液またはマイクロエマルジョンを形成することができる他の極性溶媒などの、共溶媒が含まれてもよい。絹タンパク質を含む溶液を繊維上にスプレーしてもよく、または繊維を溶液中に浸漬してもよい。必須ではないが、コーティングした材料をフラッシュ乾燥することが好ましい。代替のプロトコールは、絹タンパク質組成物を、織られた繊維上に適用することである。本開示の理想的な一実施形態は、絹タンパク質を使用して、ストッキングに用いるものなどの、伸縮自在の織物をコーティングすることである。
【0185】
複合材料
絹繊維を、ポリウレタン、他の樹脂、または熱可塑性充填剤に加えて、羽目板および他の建築材料を調製し、または木材およびパーティクルボードに代わる成形された家具およびベンチトップとして調製することができる。複合材は、建築物および自動車の建築、特に屋上およびドアパネルにも用いることができる。絹繊維は樹脂を強化し、材料をはるかに強力にし、材料が他のパーティクルボードおよび複合材料と同じまたはそれに勝る強度である、より軽量の建築を可能にする。絹繊維を単離し、合成の複合材形成性樹脂に加えてもよく、または植物由来のタンパク質、デンプン、および油と組み合わせて用いて、生物学ベースの複合材料を生成してもよい。このような材料を生成するための工程は、日本国特許第2004284246号、米国特許第2005175825号、米国特許第4,515,737号、日本国特許第47020312号、および国際公開第WO2005/017004号に記載されている。
【0186】
製紙用添加剤
本発明の絹の繊維の性質は、紙の製造に対して強度および高品質の質感を加えることができる。格別に滑らかな手製紙を調製するために、コットンパルプに絹糸を斑入りにすることによって作成された絹の紙は、贈り物の包装、ノートのカバー、キャリーバッグに用いられる。本発明の絹タンパク質を含むことができる紙製品を製造するための工程は、日本国特許第2000139755号に概ね記載されている。
【0187】
先端材料
本発明の絹は、相当な靭性を有し、湿潤時にこれらの性質を維持する点で、他の絹の間で際立っている(Hepburnら、1979年)。
【0188】
衣類織物産業において実質的に成長している領域は、技術的かつインテリジェントな織物である。健康的な、価値が高く機能的な、環境に優しい、かつ個別化された織物製品に対する需要は高まっている。湿潤時に性質を変えず、特にその強度および伸展性を維持する本発明のもののような繊維は、スポーツおよびレジャー衣類用の機能性衣類、ならびに作業服および防護衣に有用である。
【0189】
武器および監視技術における発達は、個々の防護装備、ならびに戦場に関連する、システムおよび構造物における革新を促している。曝露の延長に対する材料の耐久性、重量のある衣類、および外部環境からの保護などの従来の必要性に加えて、本発明の絹織物を、弾道発射体、火、および化学物質に抵抗するように加工することができる。このような材料を生成するための工程は、国際公開第WO2005/045122号、および米国特許第2005268443号に記載されている。
【0190】
配列リストに対する手がかり
配列番号1−本明細書でXenospira1と呼ばれる(本明細書でAmelF1とも呼ばれる)ミツバチの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号2−本明細書でXenospira1と呼ばれるミツバチの絹タンパク質である。
配列番号3−本明細書でXenospira2と呼ばれる(本明細書でAmelF2とも呼ばれる)ミツバチの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号4−本明細書でXenospira2と呼ばれるミツバチの絹タンパク質である。
配列番号5−本明細書でXenospira3と呼ばれる(本明細書でAmelF3とも呼ばれる)ミツバチの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号6−本明細書でXenospira3と呼ばれるミツバチの絹タンパク質である。
配列番号7−本明細書でXenospira4と呼ばれる(本明細書でAmelF4とも呼ばれる)ミツバチの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号8−本明細書でXenospira4と呼ばれるミツバチの絹タンパク質である。
配列番号9−本明細書でXenosinと呼ばれる(本明細書でAmelSA1とも呼ばれる)ミツバチの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号10−本明細書でXenosinと呼ばれるミツバチの絹タンパク質である。
配列番号11−ミツバチの絹タンパク質であるXenospira1をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号12−ミツバチの絹タンパク質であるXenospira1をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号13−ミツバチの絹タンパク質であるXenospira2をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号14−ミツバチの絹タンパク質であるXenospira2をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号15−ミツバチの絹タンパク質であるXenospira3をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号16−ミツバチの絹タンパク質であるXenospira3をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号17−ミツバチの絹タンパク質であるXenospira4をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号18−ミツバチの絹タンパク質であるXenospira4をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号19−ミツバチの絹タンパク質であるXenosinをコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号20−ミツバチの絹タンパク質であるXenosinをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号21−ミツバチの絹タンパク質であるXenosinをコードする遺伝子配列である。
配列番号22−本明細書でBBF1と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質(シグナルペプチド無し) である。
配列番号23−本明細書でBBF1と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質である。
配列番号24−本明細書でBBF2と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質(シグナルペプチド無し) である。
配列番号25−本明細書でBBF2と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質である。
配列番号26−本明細書でBBF3と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号27−本明細書でBBF3と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質である。
配列番号28−本明細書でBBF4と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号29−本明細書でBBF4と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質である。
配列番号30−本明細書でBBSA1と呼ばれるマルハナバチの絹タンパク質の部分的なアミノ酸配列である。
配列番号31−マルハナバチの絹タンパク質であるBBF1をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号32−マルハナバチの絹タンパク質であるBBF1をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号33−マルハナバチの絹タンパク質であるBBF2をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号34−マルハナバチの絹タンパク質であるBBF2をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号35−マルハナバチの絹タンパク質であるBBF3をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号36−マルハナバチの絹タンパク質であるBBF3をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号37−マルハナバチの絹タンパク質であるBBF4をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号38−マルハナバチの絹タンパク質であるBBF4をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号39−マルハナバチの絹タンパク質であるBBSA1をコードする部分的なヌクレオチド配列である。
配列番号40−本明細書でBAF1と呼ばれるブルドッグアリの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号41−本明細書でBAF1と呼ばれるブルドッグアリの絹タンパク質である。
配列番号42−本明細書でBAF2と呼ばれるブルドッグアリの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である
配列番号43−本明細書でBAF2と呼ばれるブルドッグアリの絹タンパク質である。
配列番号44−本明細書でBAF3と呼ばれるブルドッグアリの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号45−本明細書でBAF3と呼ばれるブルドッグアリの絹タンパク質である。
配列番号46−本明細書でBAF4と呼ばれるブルドッグアリの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号47−本明細書でBAF4と呼ばれるブルドッグアリの絹タンパク質である。
配列番号48−ブルドッグアリの絹タンパク質であるBAF1をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号49−ブルドッグアリの絹タンパク質であるBAF1をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号50−ブルドッグアリの絹タンパク質であるBAF2をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号51−ブルドッグアリの絹タンパク質であるBAF2をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号52−ブルドッグアリの絹タンパク質であるBAF3をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号53−ブルドッグアリの絹タンパク質であるBAF3をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号54−ブルドッグアリの絹タンパク質であるBAF4をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号55−ブルドッグアリの絹タンパク質であるBAF4をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号56−本明細書でGAF1と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号57−本明細書でGAF1と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質である。
配列番号58−本明細書でGAF2と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号59−本明細書でGAF2と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質である。
配列番号60−本明細書でGAF3と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号61−本明細書でGAF3と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質である。
配列番号62−本明細書でGAF4と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号63−本明細書でGAF4と呼ばれるツムギアリの絹タンパク質である。
配列番号64−ツムギアリの絹タンパク質であるGAF1をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号65− ツムギアリの絹タンパク質であるGAF1をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号66−ツムギアリの絹タンパク質であるGAF2をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号67− ツムギアリの絹タンパク質であるGAF2をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号68−ツムギアリの絹タンパク質であるGAF3をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号69− ツムギアリの絹タンパク質であるGAF3をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号70−ツムギアリの絹タンパク質であるGAF4をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号71− ツムギアリの絹タンパク質であるGAF4をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号72−本明細書でMalF1と呼ばれるクサカゲロウの絹タンパク質(シグナルペプチド無し)である。
配列番号73−本明細書でMalF1と呼ばれるクサカゲロウの絹タンパク質である
配列番号74−クサカゲロウの絹タンパク質であるMalF1をコードするヌクレオチド配列(シグナルペプチドをコードする領域無し)である。
配列番号75−クサカゲロウの絹タンパク質であるMalF1をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号76−植物の発現用にコドンを最適化した、本明細書でXenospira4と呼ばれるミツバチの絹タンパク質をコードするヌクレオチド配列(pET14bおよびpVEC8中にサブクローニングする前)である。
配列番号77−植物の発現用に最適化した、ミツバチの絹タンパク質(Xenospira4)のオープンリーディングフレーム(翻訳融合物を除く)である。
(実施例)
[実施例1]
【0191】
終齢末期唾液腺cDNAの調製および解析
絹のトリプシン消化によって得たペプチドのイオントラップ型の連続測定質量分析の(MS/MS)フラグメンテーションパターンを、終齢末期の幼虫の唾液腺から単離したcDNAによってコードされるタンパク質の予測されるマススペクトルデータと一致させることによって、ユーアキュレアタン(euaculeatan)および脈翅目(ミツバチ、セイヨウオオマルハナバチ、ミルメシア フォーフィカータ、ツムギアリ、マラダ シグナータ)の絹に見出されるタンパク質を同定した。ミツバチに対するこの分析によってタンパク質を見逃してなかったことを確認するために、ペプチドのマススペクトルのデータを、ハチのゲノムプロジェクトによって予測されたミツバチのタンパク質の事実上のトリプシン消化物、および6個のリーディングフレーム全てにおけるAmel3ミツバチのゲノム配列の翻訳と比較した。
【0192】
ミツバチ
ミツバチの幼虫を、飼いならした巣箱から得た。ミツバチにおける絹の生成は、最終齢の後半の間の唾液腺に限られていることが、以前に示されていた(Silva−Zacarinら、2003年)。この期間、腺の後部終端で、RNAはより豊富である(FlowerおよびKenchington、1967年)。50個の唾液腺の立方状の細胞領域を、リン酸緩衝食塩水に浸漬した第5齢末期のミツバチから切開した。切開した腺の後部終端を、直ちにRNAlater(登録商標)(Ambion、Austin、テキサス州、米国)中にセットしてmRNAを安定化し、引き続き4℃で貯蔵した。
【0193】
全RNA(35μg)を、Ambion(Austin、テキサス州、米国)からのPCRキット用のRNAqueousを用いて、最終齢末期の唾液腺から単離した。単離したmRNAをRNAseを含まない水10ul中に溶出する製造元の指示にしたがって、Invitrogen(Calsbad、カリフォルニア州、米国)のMicro−FastTrack(商標)2.0 mRNA Isolationキットを用いて、メッセージRNAを全RNAから単離した。
【0194】
Invitrogen(Calsbad、カリフォルニア州、米国)のCloneMiner(商標)cDNAライブラリー構築キットを用いて、標準のプロトコールから以下の修飾をして、ミツバチの幼虫から単離したmRNAからcDNAライブラリーを構築した:第1の鎖の合成に対しては、6pmol/μlのBiotin−attB2−Oligo(dT)プライマー0.5μl、および各2mMのdNTP0.5μlを、mRNA10μlに加えた。65℃で5分間、次いで45℃で2分間インキュベートした後、5×第1の鎖のバッファー2μl、0.1M DTT 1μl、および200U/μlのSuperScript(商標)II RT 0.5μlを加えた。第2の鎖を合成するために、全ての試薬の全体積を半分にし、エタノール沈澱後、cDNAをDEPC処理水5μlに再懸濁した。aatB1アダプター(1μl)を、5×Adapterバッファー2μl、0.1M DTT 1μl、およびT4 DNAリガーゼ(1U/μl)1μlと一緒のcDNA5μlに対して全体積10μlで、16℃で48時間ライゲートし、16時間後にさらなる0.5μlのT4 DNAリガーゼ(1U/μl)を加えた。cDNAを製造元の指示にしたがってサイズ分画化し、サンプルを300〜500μlの間で溶出し、エタノールで沈澱し、再懸濁し、推奨どおりに提供される大腸菌DH10B(商標)T1ファージ耐性細胞中に形質転換した。cDNAライブラリーは、約1%のオリジナルのベクターとともに、約1,200,000コロニー形成単位(cfu)を含んでいた。平均の挿入サイズは、1.3±1.4kbpであった。
【0195】
82個のクローンをランダムに選択し、GenomeLab(商標)DTCS Quick startキット(Beckman Colulter、Fullerton、カリフォルニア州、米国)を用いて配列決定し、CEQ8000Bioradシークエンサーに流した。これらはクラスター形成して54グループになった(表2)。絹タンパク質をコードするcDNAの同定を、以下に記載する。
【0196】
他の種
マルハナバチ(Bombus terrestris)4匹(2μg RNA)、ブルドッグアリ(ミルメシア フォーフィカータ)4匹(3μg RNA)、ツムギアリ(Oecophylla smaragadina)約100匹(0.4μg RNA)、およびグリーンクサカゲロウ(マラダ シグナータ)約50匹の後期幼虫の唇腺から、Ambion(Austin、テキサス州、米国)のPCRキット用RNAqueousを用いて、全RNAを単離した。mRNAを、Invitrogen(Calsbad、カリフォルニア州、米国)のMicro−FastTrack(商標)2.0mRNA Isolationキットを用いて、全RNAから、最終体積10μlの水中に単離した。Invitrogen(Calsbad、カリフォルニア州、米国)のCloneMiner(商標)cDNAキットを用いて、標準のプロトコールから以下の修飾をして、cDNAライブラリーをmRNAから構築した:第1の鎖の合成に対して、Biotin−attB2−Oligo(dT)プライマー3pmol、および各dNTP1nmolをmRNA10μlに加えた。65℃で5分、その後45℃で2分の後、5×第1の鎖のバッファー2μl、DTT 50nmol、およびSuperScript(商標)II RT 100Uを加えた。
【0197】
【表2】

【0198】
第2の鎖の合成では、全ての試薬の全体積を、製造元が推奨する量から半分にし、エタノール沈澱後、cDNAをDEPC処理水5μlに再懸濁した。aatB1アダプター(1μl)を、16℃で12時間、5×Adapterバッファー2μl、50nmolDTT、および1U T4 DNAリガーゼと一緒のcDNA5μlに対して全体積10μlでライゲーションした。cDNAライブラリーは、約2.4×10(マルハナバチ)、5.0×10(ブルドッグアリ)、および6000(グリーンアント((green ant))コロニー形成単位(cfu)を含んでおり、ブルドッグアリおよびマルハナバチのライブラリーに対してはオリジナルのベクターは1%未満であり、グリーンアントのライブラリーにおけるオリジナルのベクターは80%を超えていた。ライブラリー内の挿入サイズの平均は、1.3Kbpであった。
【0199】
配列データを、マルハナバチおよびブルドッグアリ由来のcDNAライブラリーの100個を超えるランダムクローンから、ミツバチからの82個のクローンから、およびクサカゲロウからの60個のクローンから、得た。細かい(長さ約1mm)グリーンアントからの唾液腺を得るのは技術上困難であり、この種由来のライブラリーの有効性は低減し、そのためわずか40の配列を試験した。同定した絹タンパク質の概略を、表3に提供する。
【0200】
【表3】

【0201】
[実施例2]
【0202】
天然絹の調製およびプロテオミクス解析
幼虫除去後のミツバチの蜂児巣板、幼虫除去後のマルハナバチの繭、幼虫除去後のブルドッグアリの繭、またはツムギアリの絹シートを、温水で3回よく洗浄して水溶性の汚染物質を除去し、次いで、クロロホルムで3回よく洗浄してロウを除いた。蒸留水ですすぐことによってクロロホルムを除去し、この絹のサブセットを解析用に保持した。膜翅目(アリおよびハチ)の絹サンプルのサブセットを、カイコの絹を精錬するための標準の手順である、0.05%炭酸ナトリウム溶液で30分間煮沸し、次いで蒸留水ですすぐことによってさらに洗浄した。クサカゲロウの絹は、蒸留水だけですすいだ。クサカゲロウの絹のサンプルのサブセットを、0.05%炭酸ナトリウム溶液で30分間煮沸することによって精錬した。
【0203】
ミツバチの材料のサブセットを、2%SDSに95℃で1晩浸漬し、その後蒸留水で3回洗浄した。熱SDS溶液における抽出で、殆どのタンパク質は可溶化するが、この場合、絹のシートはその高次構造を保持している。
【0204】
清浄な絹を、以下に記載するような、液体クロマトグラフィー、その後タンデム質量分析法(LCMS)によって分析した。
【0205】
清浄な絹片を、C18逆相クロマトグラフィー媒体のプラグ(plug)を含む96ウェルのマイクロタイタートレイである、Millipore「ジッププレート」のウェルに配置し、各ウェルの底部を通して、そこに、配列決定用グレードのトリプシン(Promega)160ngを含む25mM炭酸水素アンモニウム20μlを加えた。次いで、トレイを、30℃の加湿したプラスチックバッグで1晩インキュベーションした。
【0206】
アセトニトリル(10μl)を各ウェルの側部にピペッティングし、プレートを37℃で15分間インキュベーションすることによって、C18材料を湿潤させた。ギ酸溶液(130μl、1%v/v)を各ウェルに加え、30分後、消化したハチのタンパク質由来のペプチドを、減圧真空下、プレートの底部を通して各ウェルから溶液をゆっくりと引くことによって、C18材料上に捕獲した。C18材料を、ギ酸溶液100μlを通して引くことによって、2回洗浄した。ペプチドを、C18材料上に直接ピペッティングした70%メタノール中1%ギ酸入り6μlで溶出し、C18プラグを通して下にあるマイクロタイタートレイに直ちに遠心した。このトレイを、蒸発によって各ウェルにおける体積が約2倍低減するまで、真空下に置いた。ギ酸溶液(10μl)を各ウェルに加え、トレイを、Agilent1100キャピラリー液体クロマトグラフィーシステムのウェルプレートサンプラーに移した。
【0207】
絹抽出物からのペプチド(8μl)を、Agilent Zorbax SB−C18 5μm 150×0.5mmカラムに、流速20μl/分の0.1%ギ酸/5%アセトニトリルで1分間結合させ、次いで1分間かけて流速5μl/分の0.1%ギ酸/20%アセトニトリルで、次いで28分かけて0.1%ギ酸/50%アセトニトリルで、次いで1分間かけて0.1%ギ酸/95%アセトニトリルで、アセトニトリル濃度を増大させるグラジエントで溶出した。カラムを、5分間かけて0.1%ギ酸/95%〜100%アセトニトリル20μl/分で洗浄し、0.1%ギ酸/5%アセトニトリルで7分間再平衡化し、その後次のウェルからペプチドをサンプリングした。
【0208】
カラムからの溶出液を、マイクロネブライザーを装着した装置のエレクトロスプレーイオン源を通して、Agilent XCTイオントラップ質量分析器に導入した。簡潔に述べると、ペプチドをカラムから溶出すると、イオントラップは全スペクトルのポジティブイオンスキャン(100〜2200m/z)を収集し、その後、電荷を1つしか保有しないイオンの選択を避けて、全スペクトルにイオンの2つのMS/MSスキャンが観察された。MS/MS分析に対してあるイオンが選択された場合は、他は全てイオントラップから除外され、選択されたイオンは、装置が推奨する「SmartFrag」および「Peptide Scan」の設定にしたがってフラグメント化された。2つのフラグメント化したスペクトルを任意の特定のm/z値に対して収集した後、重複するデータの収集を避けるためにさらなる30秒間、分析用の選択からその値を除外した。
【0209】
実験全体からの質量スペクトルのデータセットを、Agilent’s Spectrum Millソフトウエアを用いて分析して、データをcDNAライブラリーからのタンパク質の配列の予測とマッチングした。ペプチドのフラグメントの質量において、実験的に観察されたセットと、提供されるデータベースにおけるタンパク質の配列にしたがって産生することができるフラグメントの予測との間の、各マッチングの量に対して、ソフトウエアがスコアを産生した。ここで報告された配列のマッチング全てに、20を超えるスコアが与えられ、初期設定は自動であり、有効なマッチングの信頼の許容値であった。
【0210】
この分析により、唇腺で高レベルに発現された5つのタンパク質は、同種のハチの種の各々からの絹とマッチし(表2および3に示す)、唇腺で高レベルに発現された4つのタンパク質は、同種のアリの種の各々からの絹とマッチした(表3に示す)ことが確認された。幼虫の唇腺においてこれらのタンパク質をコードするメッセージRNAの存在量は、大量に生成されるタンパク質と一致していた(メッセージの存在量を表3に示す)。
【0211】
この同定プロセスによってミツバチの絹タンパク質のどれも見逃してなかったことを確かめるために、我々は、また、ミツバチの絹のトリプシンペプチドの質量スペクトルデータを、ハチの完全なゲノムDNA配列において転写された遺伝子を認識しようと試みるコンピュータアルゴリズムによって産生された、ミツバチのゲノムプロジェクトから公的に入手可能な予測されるタンパク質配列の1セットと比較した。さらに、ハチゲノムプロジェクトによって提供された各々の近接するゲノムDNA配列の、6個の可能なリーディングフレームにおける翻訳のデータベースを作成した(Amel3リリース)。これらの翻訳されたDNA配列は、それらが非常に大型のタンパク質の配列であるかのように、Spectrum Millソフトウエアに提示された。MS/MSのペプチドデータのマッチングにより、遺伝子の組織化を最初に予測する必要なしに、単離されたハチのタンパク質の部分をコードしていた、ゲノム配列内のオープンリーディングフレームが同定された。この分析によって、絹におけるさらなるタンパク質は同定されなかった。
[実施例3]
【0212】
天然絹の構造解析
実施例2に記載したように、天然の絹のサンプルを調製した。絹のサンプルを、Bruker Tensor 37フーリエ変換赤外線分光光度計を用いて、PikeのMiracle diamondが減弱する全反射の付属品で試験した。ミツバチ、マルハナバチ、グリーンアント、ブルドッグアリの絹およびクサカゲロウ幼虫の絹のスペクトルのアミドIおよびIIの領域の分析(図1)により、これらの絹は全て、主にαへリックスの2次構造を有することが示されている。ユーアキュレアタン種の絹は、FT−IRスペクトルにおいて1645〜1646cm−1に主要ピークがあり、古典的なα−へリックスのシグナルよりも約10 cm−1低くシフトし、幅広くなっていた。α−へリックスのシグナルにおけるこのシフトは、コイルドコイルのタンパク質に典型的である(Heimburgら、1999年)。精錬したサンプルからのスペクトルは、変化がなかった。
[実施例4]
【0213】
天然絹のアミノ酸組成は同定された絹タンパク質のアミノ酸組成と非常に類似している
天然絹のアミノ酸組成を、Australian Proteome Analysis Facility Ltd(Macquarie University、シドニー)によるWaters AccQTagケミストリーを用いて、110℃で24時間の気相加水分解後に決定した。
【0214】
SDS洗浄した絹の、測定されたアミノ酸組成は、同定された絹タンパク質配列から予測されたものと類似していた(図2および3)。
[実施例5]
【0215】
絹タンパク質の構造解析
予測された分泌性ペプチド
絹タンパク質に対して予測されたように、2つのモデルを用いてシグナルペプチドを同定するSignalP3.0シグナル予測プログラム(Bendtsenら、2004年)は、同定された絹遺伝子は全て、細胞からの分泌に対してそれらを標的にするシグナルペプチドを含むタンパク質をコードすることを予測した(データは示さず)。予測されるポリペプチドの切断部位は以下の通りである:
Xenospira1(Ame1F1)−pos19と20との間(ASA−GL)、
Xenospira2(Ame1F2)−pos19と20との間(AEG−RV)、
Xenospira3(Ame1F3)−pos19と20との間(VHA−GV)、
Xenospira4(Ame1F4)−pos19と20との間(ASG−AR)、
Xenosin(Ame1SA1)−pos19と20との間(VCA−GV)、
BBF1−pos19と20との間(ASA−GQ)、
BBF2−pos20と21との間(AEG−HV)、
BBF3−pos19と20との間(VHA−GS)、
BBF4−pos19と20との間(ASA−GK)、
BAF1−pos19と20との間(ASA−SG)、
BAF2−pos19と20との間(ASG−RV)、
BAF3−pos19と20との間(ASG−NL)、
BAF4−pos19と20との間(VGA−SE)、
GAF1−pos19と20との間(ADA−SK)、
GAF2−pos19と20との間(ASG−GV)、
GAF3−pos19と20との間(ASG−GV)、
GAF4−pos19と20との間(VGA−SE)、
MalF1−pos26と27との間(SST−AV)。
アリ4種全て、およびハチ5種のうち4種の絹タンパク質は、らせん状であり、コイルドコイルを形成する。
【0216】
タンパク質モデリング、およびパターン認識アルゴリズムからの結果により、同定されたミツバチの絹タンパク質の大多数は、コイルドコイルを形成するらせん状タンパク質であることが確認された。
【0217】
PROFsec(RostおよびSander、1993年)、ならびにNNPredict(McClellandおよびRumelhart、1988年;Knellerら、1990年)アルゴリズムを用いて、同定された絹遺伝子の2次構造を調査した。これらのアルゴリズムにより、76〜85%の間のらせん状構造を有する、高度ならせん状タンパク質として、Xenospira1[GB12184−PA](配列番号1)、Xenospira2[GB12348−PA](配列番号3)、Xenospira3[GB17818−PA](配列番号5)、およびXenospria4[GB19585−PA](配列番号7)が同定された(表4)。Xenosin[GB15233−PA](配列番号10)のらせん構造は著しく少なかった。
【0218】
【表4】

【0219】
さらなるタンパク質のモデリング、およびパターン認識アルゴリズムからの結果により、同定された絹タンパク質の大多数は、コイルドコイルを形成するらせん状タンパク質であったことが確認された。PredictProtein(Rostら、2004年)アルゴリズムを用いて、同定された絹遺伝子の2次構造を調査した。これらのアルゴリズムにより、Xenospira1(配列番号1)、Xenospira2(配列番号3)、Xenospira3(配列番号5)、Xenospira4(配列番号7)、BBF1(配列番号22)、BBF2(配列番号24)、BBF3(配列番号26)、BBF4(配列番号28)、BAF1(配列番号40)、BAF2(配列番号42)、BAF3(配列番号44)、BAF4(配列番号46)、GAF1(配列番号56)、GAF2(配列番号58)、GAF3(配列番号60)、GAF4(配列番号62)、およびMalF1(配列番号72)は、69〜88%の間のらせん構造を有する、高度ならせん状のタンパク質と確認された(表3)。AmelSA1[GB15233−PA](Xenosin)(配列番号10)およびBBSA1(配列番号30)のらせん構造は著しく少なかった。
【0220】
らせん状タンパク質のスーパーコイリング(コイルドコイル)は、通常(abcdefg)と表示される特徴的な7つ組の反復配列に起因し、ポジションaおよびdには一般的に疎水性の残基、残りのポジションには一般的に荷電した、または極性の、残基がある。パターン認識プログラム(MARCOIL(DelorenziおよびSpeed、2002年)、COILS(Lupasら、1991年))により、Xenospira1[GB12184−PA](配列番号1)、Xenospira2[GB12348−PA](配列番号3)、Xenospira3[GB17818−PA](配列番号5)、およびXenospira4[GB19585−PA](配列番号7)(MARCOIL:表5;COILS:図4)、ならびにBBF1(配列番号22)、BBF2(配列番号24)、BBF3(配列番号26)、BBF4(配列番号28)、BAF1(配列番号40)、BAF2(配列番号42)、BAF3(配列番号44)、BAF4(配列番号46)、GAF1(配列番号56)、GAF2(配列番号58)、GAF3(配列番号60)、GAF4(配列番号62)、およびMalF1(配列番号72)(MARCOIL:表3)におけるコイルドコイルに典型的な、7つ組反復が数多く同定された。
【0221】
ミツバチの絹タンパク質における新規のコイルドコイル配列の同定
Xenospira1[GB12184−PA]、Xenospira2[GB12348−PA]、Xenospira3[GB17818−PA]、Xenospria4[GB19585−PA]の配列で同定されたアミノ酸残基の7つ組反復は、各々が、コイルドコイルの2次構造を大いに示唆するものであった(図5)(信頼水準に対しては、表5を参照されたい)。7つ組が連続し、かつ数多く見られるという事実は、タンパク質が非常に規則正しい構造を採用していることを示唆している。重複する7つ組は、ミツバチのタンパク質の2つで同定された:Xenospira1の主なコイルドコイル領域は、3個の残基のオフセット(offset)を有する重複する7つ組を含み、5個の残基のスペースが続き、次いで4個の連続する7つ組が続き、Xenospira2のコイルドコイル領域全体は、単一のオフセットおよび4個の残基のオフセット(3個の残基のオフセットに等しい)を有する、多数の重複する7つ組を有していた。主要な7つ組の様々なポジションにおけるアミノ酸の組成を、表6における最初のコラムに示し、重複する7つ組のポジションを隣のコラムに示す。
【0222】
【表5】

【0223】
驚くべきことに、集合的に見ると、主な7つ組は新規な組成を有し、「疎水性」の7つ組ポジションのaおよびdにおいて、アラニンの存在量が異常に高い(表6および図5を参照されたい)。さらに、高比率の7つ組は、同じ7つ組内でaおよびd両方のポジションにアラニンを有する(Xenospira1[GB12184−PA]では33%、Xenospira2[GB12348−PA]では36%、Xenospira3[GB 17818−PA]では27%、およびXenospira4 [GB19585−PA]では38%、表6および7を参照されたい)。
【0224】
【表6】

【0225】
【表7】

【0226】
膜翅目の絹のコイルドコイル領域における様々な7つ組のポジションにおけるアミノ酸の組成を、図6および7に概略してある。上記に記載したように、7つ組内のポジションは、新規な組成を有しており、ハチおよびアリの絹の「疎水性の」7つ組ポジションaおよびdは、他のコイルドコイルに比べて、非常に高レベルのアラニン(平均58%)、および高レベルの小型の極性残基(平均21%)を含んでいる。さらに、ポジションeは、異常に小型で疎水性である(表8、図7)。組織分布的に、このポジションはらせん内のa残基に隣接して位置している。その、aおよびd残基との組成上の類似性により、絹は、αへリックス1個あたり3個のコア残基を有するコイルドコイル構造を採用していることが示唆される。3個の残基のコアは、コアにおける2個の残基よりも大きい疎水性の界面をもたらしており(Dengら、2006年)、これはコイルドコイルの形成および安定性を助ける特色となっている。
【0227】
さらに、ひとまとめにして見ると、7つ組内のポジションb、c、e、f、およびgは、先に特徴付けたタンパク質のコイルドコイル領域よりも、一般的により疎水性であり、より極性が低く、より電荷が低い(図7、ならびに表8および9を参照されたい)。したがって、有剣類の膜翅目の絹のヘリックス含量は、グリシン含有量が低減し酸性残基の含有量が増大した結果であると歴史的にみなされたが(RudallおよびKenchington、1971年)、我々は、新規な絹の構造を担うのはグリシン/酸性残基ではなく、むしろポリペプチド鎖内のアラニン残基のポジションであることを発見した。
【0228】
【表8】

【0229】
[実施例6]
【0230】
ハチの絹タンパク質は広範囲に架橋されている可能性がある
ハチの絹タンパク質は全て、高比率のリジンを含んでいる(6.5%〜16.3%)。ハチの絹の測定したアミノ酸組成と、同定した絹タンパク質の配列との間を比較すると、リジン残基の数における実質的なミスマッチが明らかになり、絹に検出されるリジンは予想したよりもずっと少ない(図2および3)。これは、絹におけるリジン残基が修飾されており、したがって標準のアミノ酸解析によって同定されなかったことを示唆している。リジンは、リジルオキシダーゼによって触媒される酵素的な架橋、または糖化されたリジン残基から産生される非酵素的な架橋のいずれかの、様々な架橋を形成することが知られている(Reiserら、1992年)。ミツバチおよびマルハナバチの絹のアミノ酸解析においてリジンの表示が少なすぎることは、リジンに架橋が存在することと一致する。
【0231】
【表9】

【0232】
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)にかけられた、共有結合的に架橋したタンパク質は、架橋した複合体の分子量にしたがって移動することが予想される。我々は、終齢末期のミツバチの唇腺タンパク質をSDS PAGEにかけ、スタンダードのタンパク質マーカーに関して絹タンパク質の移動を測定した。同定した絹タンパク質の各々のモノマーに対応してバンドが観察されたが、架橋系で予想したとおり、これらのタンパク質を含む分子量のより高いバンドも存在した(図8)。
【0233】
上記に記載したように、ミツバチの唇腺は組織化された絹タンパク質と非組織化の絹タンパク質との混合物を含んでいる。観察された架橋したタンパク質は、絹を放出する準備がなされる腺の前側の領域のタンパク質の集団におそらく対応している。細胞外のミツバチの絹が、架橋したタンパク質を、唾液腺の絹タンパク質の全段階における異種性の混合物において観察されるよりも、実質的に高い比率で含んでいると仮定するのは理にかなっている。結合がシステインの架橋であるという見込みはない、というのは、絹は還元的処理による影響を受けず、同定した絹タンパク質は、殆ど、または全く、システイン残基を含まないからである。
[実施例7]
【0234】
ユーアキュレアタンの絹タンパク質は、他の絹タンパク質と大幅に異なる
ユーアキュレアタンの絹は、アミノ酸組成(表10)、関与するタンパク質の分子量、2次構造、および物理学的性質(表11および12)に関して、他の記載されている絹遺伝子と大幅に異なる。鱗翅目の絹は、小型のアミノ酸残基である、アラニン、セリン、およびグリシンから主に構成されており(例えば、カイコガの絹、表10)、βシートの2次構造が広がって、優位になっている。アオムシコマユバチの絹タンパク質は、アスパラギンおよびセリンに富み、セリン残基の存在量は、鱗翅目の絹であるセリシン(接着剤)に特徴的である(表10)。アオムシコマユバチの絹タンパク質のモデリングでは、2次構造におけるらせんまたはコイルドコイルは同定されていない。これとは対照的に、ハチ、アリ、およびクサカゲロウの絹は、アラニンに富み(表10)、高レベルのコイルドコイルを形成するらせん状の2次構造を含む。
【0235】
【表10】

【0236】
【表11】

【0237】
【表12】

【0238】
4種の膜翅目の種の絹タンパク質のコイルドコイル領域を、分岐分類学的に分析すると(図9)、遺伝子は、寄生性のスズメバチからのユーアキュレアタンの分岐に先行する、共通の祖先において進化したことが示唆される。絹の配列は広く分岐しており、我々は、各タンパク質のコイルドコイル領域に含まれる、210個のアミノ酸をアラインメントできたにすぎない。本明細書で提供される各絹タンパク質のコイルドコイル領域間のアミノ酸配列の同一性を表13に示し、対応する領域におけるDNA同一性を表14に示す。タンパク質のアミノ酸含有量(特に、高レベルのアラニン)および3次構造は類似しているが、アミノ酸の1次配列の同一性は非常に低い。実際、マラダの絹タンパク質をコードする遺伝子は独立に進化しており、それ自体、絹タンパク質の配列を膜翅目の配列とアラインメントすることができない。これは、アミノ酸の同一性においてかなりの多様性が起こり得るが、タンパク質の生物学的機能に影響を及ぼさないことを指摘するものである。
【0239】
分岐分類学的分析により、ユーアキュレアタンのスズメバチの絹は、アリおよびハチの絹に関連のあるタンパク質を含み、これらのタンパク質の組成および構造は本明細書に記載するタンパク質に類似しているが、これらは高度に分岐した1次配列を有することが予測される。
【0240】
本明細書で提供される絹タンパク質のアミノ酸配列(図10aから図10c)を、タンパク質のデータベースとの比較にかけたが、先行技術のタンパク質では任意の理にかなったレベルの配列同一性で同定されたものはなかった(例えば、絹タンパク質の配列の長さにわたって同一性が30%を超えたものはなかった)。
【0241】
【表13】

【0242】
【表14】

【0243】
絹タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(図11aから図11fで提供する)を、上記に記載したのと同様のデータベース検索にかけた。同定された唯一の関連する分子を、ミツバチのゲノムプロジェクトの部分として公開してある(www.ncbi.nlm.nih.gov/genome/guide/bee)。オープンリーディングフレームは、ハチのゲノムプロジェクトによって予測されていたが、コードされたタンパク質の機能は示唆されていなかった。さらに、mRNAのオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドが、あらゆるこれらの分子に対して今までに生成されてきたという証拠は存在しない。
【0244】
Xenospira1、Xenospira2、Xenospira3、およびXenospira4をコードする遺伝子は、単一のオープンリーディングフレーム全体をカバーするエキソンを含み、一方、Xenosinをコードする遺伝子は、少なくとも1個のイントロンを含む(図12を参照されたい)。
[実施例8]
【0245】
トランスジェニック植物における絹タンパク質の発現
本発明の絹タンパク質をコードする植物の発現ベクターは、カナマイシン耐性遺伝子(NptII)を含む、バイナリーベクターのバックボーンにおいて、CaMV 35Sプロモーターの下流に配置された、前記タンパク質をコードする組換えの核酸分子から構成されていてよい(例えば、配列番号11から21、31から39、48から55、64から71、74または75のいずれか1つで提供されるポリヌクレオチド)。
【0246】
配列番号11、13、15、17、19、31、33、35、37、48、50、52、54、64、66、68、70、または74のいずれか1つを含むポリヌクレオチドでは、構築物はさらに、インフレームに、および絹タンパク質をコードする配列の上流に、配置されている、シロイヌナズナの液胞内塩基性キチナーゼシグナルペプチドなどの、シグナルペプチドをコードする領域をさらに含んでいてよい。
【0247】
絹タンパク質をコードするポリペプチドを保有する構築物を、電気穿孔によってアグロバクテリウム チュメファシエンス中に別々に形質転換し、その後シロイヌナズナ中に形質転換する。胚軸を用いた形質転換の方法により、カナマイシン培地を含む選択培地上の生存に関して選択可能な、シロイヌナズナを形質転換することができる。再生体上に根が形成された後、これを土壌に移して、原始のトランスジェニック植物を定着させる。
【0248】
軽質転換のプロセスの確認を、PCRのスクリーニングによって実現することができる。ポリヌクレオチドの組入れおよび発現を、PCR、サザンブロット解析、および/またはトリプシン消化した発現タンパク質のLC/MS、を用いて測定することができる。
【0249】
構築物をコードする、2つまたはそれを超える、異なる絹タンパク質を、同じベクターで提供することができ、または多くの異なるベクターを、各々異なるタンパク質をコードする植物中に形質転換することができる。
【0250】
植物の発現の実験例として、AmelF4(Xenospira4)のコドンを最適化したバージョン(配列番号76)を、pET14b(Novagen)中にクローニングし、pET14b−6×His:F4opを産生させ、タンパク質のN末端に6×ヒスチジンとのインフレームの翻訳融合物を形成させた。タンパク質である、「6×ヒスチジン:F4op」をコードする配列を、CaMV 35Sプロモーターおよびocsポリアデニレーションの調節性機構の制御下でpVEC8(Wangら、1992年)中にクローニングし、pVEC8−35S−6×His:F4op−ocsを産生させた。pET14b−6×His:F4opを、化学的コンピテントな大腸菌中に形質転換し、pVEC8−35S−6×His:4opを、アグロバクテリウムが媒介する形質転換によってタバコのリーフディスク中に形質転換した。抗生物質耐性の大腸菌(発現誘導)およびタバコ葉からのタンパク質を単離し、検出用にテトラヒスチジン抗体(Qiagen、Karlsrule、ドイツ)を用いてウェスタンブロット解析にかけた。空のベクターであるpET14bおよびpVEC8−35S−ocsを、それぞれの宿主のバックグラウンドにおいてネガティブコントロールとして用いた。図13に示すように、これらの実験により、Xenospira4(AmelF4)タンパク質を生成する植物がもたらされた。
[実施例9]
【0251】
絹タンパク質の発酵および精製
ミツバチ遺伝子であるAmelF1−F4(それぞれXenospira1から4)およびクサカゲロウのMalF1遺伝子の絹をコードする領域をPCRによって増幅し、pET14b発現ベクター(Novagen、Madison、ウィスコンシン州)中にクローニングした後、発現構築物を構築した。次いで、得られた発現プラスミドを、大腸菌BL21(DE3)Rosetta細胞中に電気穿孔し、アンピシリンを含むLB寒天上で1晩増殖させた。次いで、単一のコロニーを用いて、アンピシリンを含むLB液体培地に接種し、次いで、37℃で1晩増殖させた。遠心分離によって細胞を回収し、界面活性剤(Bugbuster、Novagen)で溶解した。封入体をよく洗浄し、6Mグアニチジンに再溶解した。
【0252】
この手順によって、純度95%を超えるミツバチのタンパク質と、純度50%を超えるクサカゲロウのMalF1タンパク質との、タンパク質混合物が得られた。大腸菌細胞ペレットの湿重量の50%までの収量が規則正しく得られ、このやり方でタンパク質を発現するのは容易であることを示していた。
【0253】
可溶化したミツバチの組換えタンパク質を、製造元の指示にしたがって調製したTalon樹脂カラムに適用した。次いで、これを、100mM Tris.HCL、150mMイミダゾールpH8で、カラムから溶出した。
[実施例10]
【0254】
絹タンパク質の糸への加工
ミツバチおよびクサカゲロウの絹タンパク質を、様々な方法を用い(図14を参照されたい)、以下の手順を用いて糸を作成するのは容易であった。
【0255】
終齢後期のミツバチ由来の唾液腺の前側切片を、リン酸緩衝食塩水の下で切開し、1滴のバッファー中で、平坦な表面に移した。ピンセットを用いて、切片のいずれかの終端を捕えた。一端を液滴から持ち上げて出し、一定の速度で他端から離した。これにより、空気中で直ちに凝固する細糸を引くのが可能となった。
【0256】
ミツバチおよびクサカゲロウの幼虫の組換えの絹タンパク質は、脱水または濃縮後、糸またはシート、例えば、可溶性のタンパク質をブタノール溶液中に滴下することによって、またはTalon樹脂カラム上でタンパク質を濃縮することによって、形成した。
【0257】
ミツバチまたはクサカゲロウの組換えの絹タンパク質を有機溶剤(例えば、ヘキサン)と混合して、正確な立体配座における界面でそれを濃縮し、次いで、界面からそれらを除くために試薬(例えば、ブタノール)を加えた後でも、糸は得られる。この手順によって形成された糸のFT−IRスペクトルは天然の絹と同様であり、これらは同じコイルドコイル構造からなることが示された。
【0258】
本明細書に記載した他の種からの絹タンパク質も、この手順によって加工することができる。
【0259】
特定の実施形態に示すように、広範囲に記載した本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明に対して多くの変更および/または修正を行うことができることを、当業者であれば理解するであろう。したがって、本実施形態は全ての態様において例示的なものとみなされ、限定的なものとはみなされない。
【0260】
上記で論じた出版物は全て、その全文が本明細書に組み入れられる。
【0261】
本明細書に含まれる、あらゆる文書の考察、行為、材料、装置、文献などは、本発明に対する状況を提供する目的にすぎない。任意の、または全てのこれらの事柄は、本出願の各々の請求項の優先日前に存在したので、先行技術の部分を形成し、または本発明に関連する分野における共通の一般的な知識であったことを、認めるものとして解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0262】
【図1】1)ミツバチの絹、2)マルハナバチの絹、3)ブルドッグアリの絹、4)ツムギアリの絹、5)クサカゲロウの幼虫の絹:の絹のアミドIおよびII領域の、フーリエ変換赤外線スペクトルを示す図である。全ての絹が、らせん状タンパク質と予期されるスペクトルを有している。膜翅目の絹(アリおよびハチ)は、1645〜1646cm−1(標識してある)に最大スペクトルがあり、コイルドコイルのタンパク質に典型的であるように、古典的なαヘリックスのシグナルよりも約10cm−1低くシフトし、幅広くなっている(Heimburgら、1999年)。
【図2】SDS洗浄したミツバチの蜂児巣板の絹のアミノ酸組成と、Xenospiraタンパク質(すなわち、Xenospira1、Xenospira2、Xenospira3、およびXenospira4)(等モル量で合計65%)ならびにXenosin(35%)のアミノ酸組成との、比較を示す図である。
【図3】絹のアミノ酸組成と、絹遺伝子がコードするタンパク質から予測されるアミノ酸組成との比較を示す図である。
【図4】ミツバチの絹タンパク質におけるコイルドコイル領域の予測を示す図である。COILSは、配列を、知られている平行の2本鎖のコイルドコイルのデータベースと比較するプログラムであり、類似のスコアを引き出す。このスコアを、球状のタンパク質およびコイルドコイルのタンパク質におけるスコアの分布と比較することによって、プログラムは、次に、Lupasら(1991年)に記載されているようなコイルドコイルの立体配座を配列が採用する確率を計算する。ウインドウサイズ28を用いて、このプログラムは、コイルドコイルドメインにおいて各タンパク質に存在する残基は以下の数であると予測している:Xenospira3:77個、Xenospira4:35個、Xenospira1:28個、Xenospira2:80個。
【図5】コイルドコイル構造を形成する主な7つ組のMARCOIL予測を示す、ミツバチの絹タンパク質のアラインメントを示す図である。7つ組配列をアミノ酸の上に示し、ポジションaおよびdにおけるアラニン残基を強調してある。
【図6】7つ組ポジションの割り当てを示す、膜翅目(ハチおよびアリ)の絹タンパク質の、コイルドコイル領域のMarciol予測されたアラインメントを示す図である。Amel、ミツバチ;BB、マルハナバチ;BA、ブルドッグアリ;WA、ツムギアリ;F1〜4、絹フィブロイン1〜4。7つ組の配列をアミノ酸の上に示し、ポジションa、d、およびeにおけるアラニン残基を強調してある。
【図7】マラダ シグナータの幼虫の絹タンパク質の予測されるコイルドコイル領域、および膜翅目の絹タンパク質のオルソログのクラスターにおける、7つ組のポジションにおけるアミノ酸の特徴を示す図である。
【図8】終齢末期の唾液腺タンパク質のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を示す図である。トリプシン消化、ならびにcDNA配列から同定したタンパク質からのタンパク質配列の予測とデータをマッチングするためのAgilient’s Spectrum Millソフトウエアを用いた質量スペクトルデータセットによる解析の後に、タンパク質を同定した。提供されるデータベースにおけるタンパク質の配列にしたがって産生される可能性のあるフラグメントの予測と、ペプチドのフラグメントにおいて実験的に観察された質量のセットとの間の各マッチングの質に対して、ソフトウエアがスコアを算出した。ここで示された配列のマッチング全てに、Spectrum Millソフトウエアによって20を超えるスコアが与えられ、ここで、20というスコアは、自動的な、有効なマッチングの信頼の許容値には十分である。
【図9】絹タンパク質のコイルドコイル領域の最節約分析を示す図である。4つのコイルドコイルタンパク質の関連性は、遺伝子がユーアキュレアタンの分岐に先立つ、共通の祖先から進化したことを示唆している。点線によって結ばれたエリアは、ジュラ紀後期にアリおよびスズメバチ(Vespoidea)が、ハチ(Apoidea)から分岐する前に生じた変異を示す(155百万年、GrimaldiおよびEngel、2005年)。1000回の反復からのブートストラップ値を示す値を示してある。
【図10a】A)トリプシンで消化後、ハチの絹から産生されたペプチドの質量スペクトル解析によって同定された、ミツバチの絹タンパク質を示す図である。陰影は質量スペクトル解析によって同定されたペプチドを示している。ここで示される配列のマッチングには全て、Spectrum Millソフトウエアによって20を超えるスコアが与えられ、20というスコアは、自動的な、有効なマッチングの信頼の許容値には十分である。B)マルハナバチ、ブルドッグアリ、ツムギアリ、およびクサカゲロウの絹タンパク質の全長のアミノ酸配列を示す図である。
【図10b】A)トリプシンで消化後、ハチの絹から産生されたペプチドの質量スペクトル解析によって同定された、ミツバチの絹タンパク質を示す図である。陰影は質量スペクトル解析によって同定されたペプチドを示している。ここで示される配列のマッチングには全て、Spectrum Millソフトウエアによって20を超えるスコアが与えられ、20というスコアは、自動的な、有効なマッチングの信頼の許容値には十分である。B)マルハナバチ、ブルドッグアリ、ツムギアリ、およびクサカゲロウの絹タンパク質の全長のアミノ酸配列を示す図である。
【図10c】A)トリプシンで消化後、ハチの絹から産生されたペプチドの質量スペクトル解析によって同定された、ミツバチの絹タンパク質を示す図である。陰影は質量スペクトル解析によって同定されたペプチドを示している。ここで示される配列のマッチングには全て、Spectrum Millソフトウエアによって20を超えるスコアが与えられ、20というスコアは、自動的な、有効なマッチングの信頼の許容値には十分である。B)マルハナバチ、ブルドッグアリ、ツムギアリ、およびクサカゲロウの絹タンパク質の全長のアミノ酸配列を示す図である。
【図11a】ミツバチ、マルハナバチ、ブルドッグアリ、ツムギアリ、およびクサカゲロウの絹タンパク質をコードする、オープンリーディングフレームを示す図である。
【図11b】ミツバチ、マルハナバチ、ブルドッグアリ、ツムギアリ、およびクサカゲロウの絹タンパク質をコードする、オープンリーディングフレームを示す図である。
【図11c】ミツバチ、マルハナバチ、ブルドッグアリ、ツムギアリ、およびクサカゲロウの絹タンパク質をコードする、オープンリーディングフレームを示す図である。
【図11d】ミツバチ、マルハナバチ、ブルドッグアリ、ツムギアリ、およびクサカゲロウの絹タンパク質をコードする、オープンリーディングフレームを示す図である。
【図11e】ミツバチ、マルハナバチ、ブルドッグアリ、ツムギアリ、およびクサカゲロウの絹タンパク質をコードする、オープンリーディングフレームを示す図である。
【図11f】ミツバチ、マルハナバチ、ブルドッグアリ、ツムギアリ、およびクサカゲロウの絹タンパク質をコードする、オープンリーディングフレームを示す図である。
【図12】Xenosinをコードする遺伝子の配列を示す図である。単一のイントロン(強調してある)によって中断されるコード配列全体を提供する。
【図13】タバコにおける絹タンパク質の発現を示す図である。1.空の発現ベクターで形質転換した大腸菌、2.AmelF4(Xenospira4)のコード領域を含む発現ベクターで形質転換した大腸菌、3.空の発現ベクターで形質転換したタバコ、4.AmelF4コード領域を含む発現ベクターで形質転換したタバコ:からのタンパク質をウェスタンブロット解析した後、ヒスチジンタグ付けしたタンパク質の検出。
【図14】複屈折の糸を示す、組換えのミツバチの絹タンパク質から作成した繊維を示す図である。複屈折により、糸に構造が存在することが示される。様々な組換えのミツバチの糸を、A〜Dの各パネルに示し、組換えのクサカゲロウの糸をパネルEに示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドの少なくとも一部分がコイルドコイル構造を有する、実質的に精製された、および/または組換えの、絹ポリペプチド。
【請求項2】
コイルドコイル構造を有する前記ポリペプチドの部分が、少なくとも10コピーの7つ組配列abcdefgを含み、ポジションaおよびdにおけるアミノ酸の少なくとも25%がアラニン残基である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
コイルドコイル構造を有する前記ポリペプチドの部分が、少なくとも10コピーの7つ組配列abcdefgを含み、ポジションa、dおよびeにおけるアミノ酸の少なくとも25%がアラニン残基である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
i)配列番号1、配列番号2、配列番号22、配列番号23、配列番号40、配列番号41、配列番号56、および配列番号57の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
ii)配列番号1、配列番号2、配列番号22、配列番号23、配列番号40、配列番号41、配列番号56、および配列番号57の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、ならびに
iii)i)またはii)の生物学的に活性なフラグメント
から選択される配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
i)配列番号3、配列番号4、配列番号24、配列番号25、配列番号42、配列番号43、配列番号58、および配列番号59の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
ii)配列番号3、配列番号4、配列番号24、配列番号25、配列番号42、配列番号43、配列番号58、および配列番号59の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、ならびに
iii)i)またはii)の生物学的に活性なフラグメント
から選択される配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
i)配列番号5、配列番号6、配列番号26、配列番号27、配列番号44、配列番号45、配列番号60、および配列番号61の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
ii)配列番号5、配列番号6、配列番号26、配列番号27、配列番号44、配列番号45、配列番号60、および配列番号61の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、ならびに
iii)i)またはii)の生物学的に活性なフラグメント
から選択される配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
i)配列番号7、配列番号8、配列番号28、配列番号29、配列番号46、配列番号47、配列番号62、および配列番号63の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
ii)配列番号7、配列番号8、配列番号28、配列番号29、配列番号46、配列番号47、配列番号62、および配列番号63の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、ならびに
iii)i)またはii)の生物学的に活性なフラグメント
から選択される配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
i)配列番号72または配列番号73で提供されるアミノ酸配列、
ii)配列番号72および/または配列番号73に少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、ならびに
iii)i)またはii)の生物学的に活性なフラグメント
から選択される配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
i)配列番号9、配列番号10、および配列番号30の任意の1つで提供されるアミノ酸配列、
ii)配列番号9、配列番号10、および配列番号30の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるアミノ酸配列、ならびに
iii)i)またはii)の生物学的に活性なフラグメント
から選択される配列を含む、実質的に精製された、および/または組換えの絹ポリペプチド。
【請求項10】
膜翅目または脈翅目の種から精製することができる、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
膜翅目の種が、ミツバチ(Apis mellifera)、ツムギアリ(Oecophylla smaragdina)、ミルメシア フォーフィカータ(Myrmecia foricata)、またはセイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris)である、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
脈翅目の種がマラダ シグナータ(Mallada signata)である、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項13】
少なくとも1つの他のポリペプチドに融合している、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記ポリペプチドの少なくとも1部分がコイルドコイル構造を有する、絹ポリペプチドをコードする、単離された、および/または外来のポリヌクレオチド。
【請求項15】
i)配列番号11、配列番号12、配列番号31、配列番号32、配列番号48、配列番号49、配列番号64、および配列番号65の任意の1つで提供されるヌクレオチドの配列、
ii)請求項1から4、または10から13のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列、
iii)配列番号11、配列番号12、配列番号31、配列番号32、配列番号48、配列番号49、配列番号64、および配列番号65の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるヌクレオチドの配列、ならびに
iv)厳密な条件下でi)からiii)の任意の1つにハイブリダイズする配列
から選択される配列を含む、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
i)配列番号13、配列番号14、配列番号33、配列番号34、配列番号50、配列番号51、配列番号66、および配列番号67の任意の1つで提供されるヌクレオチドの配列、
ii)請求項1から3、5、または10から13のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列、
iii)配列番号13、配列番号14、配列番号33、配列番号34、配列番号50、配列番号51、配列番号66、および配列番号67の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるヌクレオチドの配列、ならびに
iv)厳密な条件下でi)からiii)の任意の1つにハイブリダイズする配列
から選択される配列を含む、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
i)配列番号15、配列番号16、配列番号35、配列番号36、配列番号52、配列番号53、配列番号68、および配列番号69の任意の1つで提供されるヌクレオチドの配列、
ii)請求項1から3、6、または10から13のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列、
iii)配列番号15、配列番号16、配列番号35、配列番号36、配列番号52、配列番号53、配列番号68、および配列番号69の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるヌクレオチドの配列、ならびに
iv)厳密な条件下でi)からiii)の任意の1つにハイブリダイズする配列
から選択される配列を含む、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
i)配列番号17、配列番号18、配列番号37、配列番号38、配列番号54、配列番号55、配列番号70、配列番号71、および配列番号76の任意の1つで提供されるヌクレオチドの配列、
ii)請求項1から3、7、または10から13のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列、
iii)配列番号17、配列番号18、配列番号37、配列番号38、配列番号54、配列番号55、配列番号70、配列番号71、および配列番号76の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるヌクレオチドの配列、ならびに
iv)厳密な条件下でi)からiii)の任意の1つにハイブリダイズする配列
から選択される配列を含む、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
i)配列番号74または配列番号75で提供されるヌクレオチドの配列、
ii)請求項1から3、8、または10から13のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列、
iii)配列番号74および/または配列番号75に少なくとも30%同一であるヌクレオチドの配列、ならびに
iv)厳密な条件下でi)からiii)の任意の1つにハイブリダイズする配列
から選択される配列を含む、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
i)配列番号19、配列番号20、配列番号21、および配列番号39の任意の1つで提供されるヌクレオチドの配列、
ii)請求項1から3、または9から13のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列、
iii)配列番号19、配列番号20、配列番号21、および配列番号39の任意の1つまたは複数に少なくとも30%同一であるヌクレオチドの配列、ならびに
iv)厳密な条件下でi)からiii)の任意の1つにハイブリダイズする配列
から選択される配列を含む、単離された、および/または外来性のポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項14から20のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを少なくとも1つ含むベクター。
【請求項22】
発現ベクターである、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
請求項14から20のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを少なくとも1つ、および/または請求項21または22に記載のベクターを少なくとも1つ含む宿主細胞。
【請求項24】
細菌、酵母菌、または植物細胞である、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項25】
前記ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドの発現、および発現された前記ポリペプチドの回収を可能にする条件下で、請求項23もしくは24に記載の宿主細胞、または請求項22に記載のベクターを培養することを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のポリペプチドを調製するための方法。
【請求項26】
請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチドをコードする、外来のポリヌクレオチドを含むトランスジェニック植物。
【請求項27】
請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチドをコードする、外来性のポリヌクレオチドを含むトランスジェニックの非ヒト動物。
【請求項28】
請求項1から12のいずれか一項に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体。
【請求項29】
請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチドを含む絹繊維。
【請求項30】
少なくともいくつかのポリペプチドが架橋されている、請求項29に記載の繊維。
【請求項31】
前記ポリペプチドの少なくともいくつかのリジン残基が架橋されている、請求項30に記載の繊維。
【請求項32】
請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも2つのポリペプチドを含むコポリマー。
【請求項33】
請求項4に記載のポリペプチド、請求項5に記載のポリペプチド、請求項6に記載のポリペプチド、および請求項7に記載のポリペプチドを含む、請求項32に記載のコポリマー。
【請求項34】
請求項9に記載のポリペプチドをさらに含む、請求項33に記載のコポリマー。
【請求項35】
少なくともいくつかのポリペプチドが架橋されている、請求項33または34に記載のコポリマー。
【請求項36】
ポリペプチドの少なくともいくつかのリジン残基が架橋されている、請求項35に記載のコポリマー。
【請求項37】
請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチド、請求項29から31のいずれか一項に記載の絹繊維、および/または請求項32から36のいずれか一項に記載のコポリマーを含む製品。
【請求項38】
パーソナルケア製品、織物、プラスチック、および生物医学製品からなる群から選択される、請求項37に記載の製品。
【請求項39】
請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチド、請求項29から31のいずれか一項に記載の絹繊維、および/または請求項32から36のいずれか一項に記載のコポリマー、および1つまたは複数の許容できる担体、を含む組成物。
【請求項40】
薬物をさらに含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
医薬品、医療機器、または化粧品としての使用のための、請求項39に記載の組成物。
【請求項42】
請求項14から20のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを少なくとも1つ、および1つまたは複数の許容できる担体を含む組成物。
【請求項43】
疾患を治療しまたは予防するための薬物、および薬学的に許容できる担体を含む組成物を投与することを含み、薬学的に許容できる担体が、請求項1から13のいずれか一項に記載のポリペプチドを少なくとも1つ、請求項29から31のいずれか一項に記載の絹繊維、および/または請求項32から36のいずれか一項に記載のコポリマーから選択される、疾患を治療または予防する方法。
【請求項44】
疾患を治療しまたは予防するための薬物を製造するための、請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチド、請求項29から31のいずれか一項に記載の絹繊維、および/または請求項32から36のいずれか一項に記載のコポリマー、および薬物の使用。
【請求項45】
請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチド、請求項14から20のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチド、請求項21または請求項22に記載の少なくとも1つのベクター、請求項29から31のいずれか一項に記載の少なくとも1つの絹繊維、および/または請求項32から36のいずれか一項に記載のコポリマー、を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図11d】
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【図11e】
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【図11f】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−509550(P2009−509550A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533823(P2008−533823)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001453
【国際公開番号】WO2007/038837
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】