説明

継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造

【課題】継手金物を設けた同一部材に開孔部を隣接配置した構造で、該継手金物と開孔部とにより生じる構造上の補強問題を解決する方法を提供する。
【解決手段】鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造等の構築物の主要構造部の同一部材に主筋2の継手に継手金物1を使用し、継手金物1部位に隣接して開孔部6を設け、その各々を補強した構造において、継手金物1の開孔部6側端部と開孔部6の継手金物1側端部との間に、継手金物1の端部外方位置に巻き付けた集約せん断補強筋4a、4b及び開孔部6の継手金物1側位置の主筋2に巻き付けた孔際補強筋8を継手金物1及び開孔部6の補強筋として兼ねるように配筋する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造等の建築や土木等の構築物や構造物(以下、単に構築物という)の梁や柱等の主要構造部における鉄筋の継手手段として継手金物を使用し、その継手金物の配設部位に隣接して開孔部や開孔部(以下、開孔部という)を設けた構造において、該継手金物部位と開孔部を補強する補強部材の一部を兼ねるように配置して補強した補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造等の構築物の主要構造部に使用する鉄筋の継手手段として、スリーブ状の継手金物が使用されている。該継手金物は、図10の点線に示すように、その両端部から各々鉄筋(以下、継手金具を使用する鉄筋を主筋という)を挿入し、該継手金物の内側で固定する構造としているので、該継手金物の外径は主筋径と比較して太径となっている。従って、主要構造部のせん断力補強等の有効手段として該継手金物を配設した部位にスターラップ筋或いはフープ筋等のせん断補強筋を設け、該せん断補強筋を上下或いは左右の相互に対向する位置の最外側に位置する該継手金物の外周側壁間に小間隔毎或いは密接に並べて架け渡したりコイル状の1本の鉄筋を連続的に架け渡して(以下、それらを総称して巻き付けと表現する)いる。しかし、上記したように、該継手金物は太径のため、該外側壁間に巻き付けられた該せん断補強筋は他の位置となる主筋の最外側に巻き付けられたものより大気に近い外方位置(コンクリートの表面側)へ突出することになり、それにより構築物の必要とするかぶり厚となるコンクリート部分が他の位置より外方へ突出することになり、そのことは当該部位のみならず他の部位全体のかぶり厚を厚くするとか、主筋の位置を内側へ移動(主筋の位置を下げる)させる設計変更等を余儀なくされ、それら設計変更や施工においても効率的ではなく、経済的ではなかった。
【0003】
そこで、図10に示すように、対向する位置の継手金物A間にせん断補強筋Bを巻き付けることなく該継手金物Aの端部となる主筋の入り口部の外方に複数の又は所定のせん断補強が得られる単数の鉄筋又は単数の鉄筋をコイル状に数回巻いて巾のある状態とした鉄筋或いは予め束ねた1本巻きの単数の鉄筋を複数本集約した鉄筋等を主筋に巻き付け(以下、上記した単数の或いは予め束ねたせん断補強筋等様々な形態が想定されるが、それら継手金物Aの端部に配筋する補強筋を集約せん断補強筋或いは鉄筋を束ねた集約せん断補強筋という)、該せん断補強筋Bや集約せん断補強筋Cが外方へ突出してかぶり厚に影響を与えないようにして当該部位に生じる所定のせん断力に耐える構造としていた。なお、図10は、該継手金物Aを横方向に設けた実施例であるが、柱等の縦方向でも同様の構造となる。
【0004】
他方、開孔部においても、該開孔部が設けられる箇所にはその上下或いは左右に位置する主筋間に該開孔部を通過するようにしてせん断補強筋を巻き付けること或いはせん断補強筋を切断することは構造上できないので、該開孔部を囲む箇所に別途開孔部囲繞補強筋及び開孔部の補強有孔範囲に密に配筋するせん断補強筋(以下、孔際補強筋という)等の開孔部専用の開孔部補強筋を設ける必要があった。
【0005】
上記構築物を構成する主要構造部の梁や柱において、継手金物を設けた梁や柱と同一部材に開孔部を隣接して設けなければならない設計が生じることがある。その場合、該継手金物の一方又は双方の端部となる主筋の入り口部から開孔部が配設される箇所までの間に少なくとも該継手金物の補強筋及び開孔部の補強筋が配筋できる寸法及び開孔部の補強筋のかぶり厚さ分の寸法を確保した上で該継手金物と開孔部とを隣接配置することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−3942号公報
【特許文献2】特開2002−356953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記状況を考慮し、継手金物を設けた同一部材に開孔部を隣接配置した構造で、該継手金物と開孔部とにより生じる構造上の補強問題を解決するために、該継手金物及び開孔部間に位置する補強のための集約せん断補強筋又は孔際補強筋を該継手金物及び開孔部の補強として兼ねるようにした構築物の補強構造に関するものである。また、必要に応じて該開孔部を囲む開孔部囲繞補強筋の一部を該継手金物側へ突出させ、該継手金物と開孔部とを同一部材に隣接配置しても構造上問題のない構築物の主要構造部の補強構造に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造等の構築物の主要構造部の同一部材に主筋の継手に継手金物を使用し、該継手金物部位に隣接して開孔部を設け、その各々を補強した構造において、該継手金物の開孔部側端部と開孔部の継手金物側端部との間に、該継手金物の端部外方位置に巻き付けた集約せん断補強筋及び開孔部の該継手金物側位置の主筋に巻き付けた孔際補強筋を該継手金物及び開孔部の補強筋として兼ねるように配筋してなる継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造を特徴とする。
【0009】
また、上記開孔部には、主筋に巻き付けた集約せん断補強筋又は孔際補強筋の他、開孔部周囲を囲む開孔部囲繞補強筋を配筋してなる継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造を特徴とする。
【0010】
更に、上記集約せん断補強筋又は孔際補強筋は、複数のせん断補強筋を主要構造部の長手方向において密接配筋してなる継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造を特徴とする。
【0011】
また、上記集約せん断補強筋又は孔際補強筋は、複数のせん断補強筋を主要構造部の長手方向において小間隔を有した集中状態で配筋してなる継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造を特徴とする。
【0012】
更に、上記集約せん断補強筋又は孔際補強筋は、1本の鉄筋或いは1本の鉄筋をコイル状に数回巻いた鉄筋としてなる継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造を特徴とする。
【0013】
また、上記開孔部囲繞補強筋は、直線部材と斜材部材とを組み合わせてなる継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造を特徴とする。
【0014】
更に、上記開孔部囲繞補強筋は、四角形部材と多角形部材或いは多角形部材相互又は多角形部材と湾曲部材或いは湾曲部材相互等を適宜組み合わせてなる継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造を特徴とする。
【0015】
また、上記開孔部囲繞補強筋は、開孔部の長手方向に沿って延出し、該開孔部を囲むスパイラル状の鉄筋とした継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造を特徴とする。
【0016】
更に、上記開孔部囲繞補強筋は、主筋、せん断補強筋、孔際補強筋、集約せん断補強筋、中子筋、その他開孔部周囲の補強筋等に連結してなる継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造を特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、継手金物の端部外方の主筋に集約せん断補強筋を巻き付けることにより対向する該継手金物本体の外側壁間にせん断補強筋を巻き付ける必要がなくなり、その巻き付けた集約せん断補強筋により当該部分からせん断補強筋が外方へ突出することがなく、コンクリートのかぶり厚の増加を防止し、主筋の位置を内側へ移動させる設計変更等をすることもなく、コンクリート使用量の減少及び通常の設計や施工を行うことができ、経済的になった。
【0018】
また、開孔部において、該開孔部周囲の上下或いは左右に位置する主筋間に孔際補強筋を設け、その内の継手金物側の孔際補強筋は該継手金物の集約せん断補強筋を兼ねるように配筋し、更に、該開孔部周囲を囲むようにして開孔部囲繞補強筋を設けることにより該開孔部を有効的に補強することが可能となった。
つまり、集約せん断補強筋が孔際補強筋を兼ねて配筋する態様、継手金物側の孔際補強筋間隔は従来の孔際補強筋間隔のままで孔際補強筋が集約せん断補強筋を兼ねて配筋する態様及び継手金物側の孔際補強筋は密接して束ねて配筋し孔際補強筋が集約せん断補強筋を兼ねて配筋する態様等が必要に応じて適宜選択できることが可能となった。
【0019】
また、上記した継手金物と開孔部との間の集約せん断補強筋又は孔際補強筋を両者の補強筋として兼ねることにより、該継手金物と開孔部とを隣接した状態で配置することができ、要求される設計に合理的に対応できることが可能となり、設計巾が広がった。
【0020】
また、上記開孔部周囲の補強筋として斜材部材或いは湾曲部材並びにそれらに連続する直線部材を有する開孔部囲繞補強筋を該開孔部を囲むようにして配設し、少なくともその一部を主筋間に巻き付けた該集約せん断補強筋又は孔際補強筋と重なる内側位置或いは主筋、せん断補強筋、孔際補強筋、集約せん断補強筋、中子筋、その他開孔部周囲の補強筋に固定することにより強固な連結が得られ、該開孔部の有効的な補強を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】構築物の主要構造部の継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造の長手方向の側面図。
【図2】構築物の主要構造部の継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造の長手方向の平面図。
【図3(a)(b)(c)】(a)開孔部補強構造の短手方向の断面図、(b)同他の実施例の断面図、(c)同他の実施例の断面図。
【図4】継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造の他の実施例の長手方向の側面図。
【図5】継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造の他の実施例の平面図。
【図6】継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造の他の実施例の長手方向の側面図。
【図7】継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造の他の実施例の平面図。
【図8】継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造の他の実施例の長手方向の側面図。
【図9】継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造の他の実施例の長手方向の側面図。
【図10】従来の継手金物部位における集約せん断補強筋を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参考に本発明を実施するための最良の形態についてその実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0023】
図1及び図2は、本発明の主筋相互を連結する継手金物を設けた部位に隣接して開孔部を設け、その両者の補強構造に関する実施例を示したものである。1は鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造等の構築物の梁又は柱等の主要構造部の左右或いは上下方向に延びる主筋2の端部相互を連結するための継手金物で、該継手金物1への主筋挿入部となる両端部3a、3bの外方にスターラップ筋或いはフープ筋等のせん断補強筋を密接或いは小間隔を有した集中状態で或いは所定のせん断補強が得られる単数の鉄筋で主筋2の長手方向に沿って上下或いは左右の最外側に位置する対向する主筋2間に巻き付けて集約せん断補強筋4a、4bとしている。なお、実施例は梁を示しているので、図での主筋2は上下に位置している。
【0024】
梁又は柱等の主要構造部に設けるせん断補強筋5は、一定の間隔毎に主筋2に巻き付けて配筋しているが、本実施例では該継手金物1を設けた部位には上記従来の欠点で示した理由により該せん断補強筋5を設けていない。それにより継手金物部位はせん断補強筋5が存在しない空間部Sとなるため、その補強手段として該継手金物1の両端部3a、3bの外方の位置となる継手金物に密接して集約せん断補強筋4a、4bを対向する主筋2間に巻き付け配筋している。
【0025】
設計上、同一部材において上記した継手金物1と隣接する位置に開孔部6を設けなければならない状態が生じることがある。その際、該継手金物1と開孔部6との配置間隔には様々な寸法が考えられるが、該継手金物1同様、該開孔部6においても有効な補強手段を講じる必要があるので、両者の補強が兼用できる間隔さえ得られれば両者を隣接配置することが可能となる。そこで、上記した継手金物1の開孔部6側に位置する集約せん断補強筋4aと下記する開孔部6の継手金物1側に位置する開孔部補強筋とが兼用できる補強筋とすれば、両者を限りなく隣接状態で配置することが可能となる。
【0026】
該開孔部6の開孔部補強筋として、本実施例では該開孔部6の周囲を囲むようにして補強する開孔部囲繞補強筋7及び開孔部6の左右に配筋する孔際補強筋8があり、他方、上記継手金物1の左右に密接して配筋する集約せん断補強筋4aがあり、継手金物の左右に密接して配筋する集約せん断補強筋の部位となる集約部と開孔部が限りなく近づくと、集約部側の孔際補強筋と、開孔部側の集約せん断補強筋とが、重なる位置に配筋することになる。しかし、両者を重ねて配筋する事は出来ないので、重なる位置に配筋する補強筋を集約せん断補強筋とし、これは集約せん断補強筋と、孔際補強筋の両方の機能を果たす補強筋となる。開孔部6の周囲を囲む該開孔部囲繞補強筋7は、その一部が孔際補強筋8、集約せん断補強筋4aと前後となる位置に配筋することにより補強上有効な配筋となる。
【0027】
該開孔部囲繞補強筋7は、本実施例では内側から外側にかけての四角形状或いは変形多角形状の第1補強筋9、該第1補強筋9の外側から内側にかけての四角形状或いは変形多角形状の第2補強筋10で取り囲むようにして二重配筋となるように形成している。また、第1補強筋9、第2補強筋10の内側及び外側位置を逆にしたり、或いはそれらを連続状態で形成したり、また、それらを三重、四重、…にした形状も該開孔部6及び施工の状況により適宜考えられる。
【0028】
図1に示すように、上記開孔部囲繞補強筋7は、一方の孔際補強筋8側から上方の主筋2に向かって該開孔部6を囲むようにして基点より斜材部材11を設け、折曲部12から折り曲げて下方の集約せん断補強筋4aへ向かって斜材部材13を設け、更に、折曲部14で折り曲げて下方の主筋2に向かって集約せん断補強筋4aと平行となる平行部材15を設け、更に、折曲部16で折り曲げて斜材部材17を設け、折曲部18で折り曲げて主筋2と平行となる平行部材19とし、折曲部20で折り曲げ、斜材部材21他方側の折曲部22で折り曲げてスタート位置となる基点と接する孔際補強筋8と平行となる平行部材23とし、全体として多角形形状の第1補強筋9としている。
【0029】
上記第1補強筋9と連続或いは固定又は断続状態で一体として作用することになる折曲部22より該孔際補強筋8と平行となる平行部材23により所定長の延設後、該上方の主筋2に向かって折曲部24で折り曲げ、該斜材部材11の外側に該斜材部材11と平行状態で斜材部材25を設け、その一端の折曲部26で折り曲げて該折曲部12と接する或いは固定又は断続状態で一体として作用して該上方の主筋2と平行となるように折曲部27の位置まで延設して平行部材28とし、該折曲部27より集約せん断補強筋4a側へ折り曲げて斜材部材29とし、折曲部30により折り曲げて該集約せん断補強筋4aと平行となるように平行部材31を設け、折曲部14と重なる位置の折曲部まで延設し、該折曲部14の位置から下方の主筋2に向かって該斜材部材17と平行となるように折り曲げて斜材部材32とし、次の折曲部33まで延設し、該折曲部33で折り曲げて孔際補強筋8側へ延設して斜材部材34とし、スタート部となる基点へ戻り一体とし、全体として多角形形状の第2補強筋10を形成している。
【0030】
上記実施例の場合、継手金物1部位と開孔部6との間には、継手金物1の開孔部6側となる端部3a側に配筋された集約せん断補強筋4aが開孔部6の該継手金物1側の孔際補強筋を兼ねる配筋になり、該集約せん断補強筋4aが配筋できる寸法及び開孔部側の補強筋のかぶり厚さ分の寸法さえ確保できれば、同一部材において継手金物1と開孔部6とを隣接配置することが可能となる。従って、開孔部6を補強する他の補強手段となる開孔部囲繞補強筋7が、その一部を継手金物1間の空間部S側に突出したとしても、邪魔となることはない。
【0031】
上記第1補強筋9と第2補強筋10とにより開孔部囲繞補強筋7としているが、図3(a)、(b)に示すように、該開孔部囲繞補強筋7は、梁の手前側及び奥側に位置する孔際補強筋8、集約せん断補強筋4aの内側で上下の主筋2間或いは開孔部上下の水平補強筋に配筋し、図1に示すように、固定手段35、36によりそれらに固定している。また、図3(c)にあっては、部材の手前側及び奥側に位置する孔際補強筋8、集約せん断補強筋4a、主筋2の他に中子筋37にも沿って開孔部囲繞補強筋7を配筋し、固定手段によって開孔周囲の補強筋に固定し、開孔部6の補強構造としている。中子筋37にはその前面又は背面位置或いは中子筋37を中心としてその両面に該開孔部囲繞補強筋7を固定する実施例とすることもできる。
【0032】
上記継手金物1及び開孔部6に採用される集約せん断補強筋4a、4b、孔際補強筋8は、対向する主筋2間において複数のせん断補強筋又は孔際補強筋を密接状態で束ねて配筋したもの、小間隔を有して集中状態で配筋したもの、1本の鉄筋を巻き付け配筋したもの、1本の鉄筋を数回巻き付けて配筋したもの等様々な対応が考えられる。図1、2に示したものは、継手金物1と開孔部6との間の集約せん断補強筋4a及び他側の集約せん断補強筋4bを部材の長手方向において密接状態となるように配筋し、開孔部6の他方側の孔際補強筋8は小間隔を有した集中状態で配筋した例を示している。
【実施例2】
【0033】
図4及び図5は、継手金物を設けた部位に隣接して開孔部を設け、その両者の補強構造の他の実施例を示したもので、主筋2aの端部相互を連結する継手金物1aの両端部3c、3dの外方に孔際補強筋4c、集約せん断補強筋4dを配筋している。
【0034】
継手金物1aを設けた部位はせん断補強筋5aを設けることなく空間部Sとし、該継手金物1aの開孔部6a側の端部3c側に孔際補強筋4cを配筋し、該孔際補強筋4cに隣接して開孔部6aを配置している。該孔際補強筋4cは、小間隔を有して集中状態で配筋し、集約せん断補強筋を兼ねている。
【0035】
開孔部の左右には孔際補強筋8a及び孔際補強筋4cを各々配筋し、このうち該孔際補強筋4cは集約せん断補強筋も兼ねている。
【0036】
該開孔部6aは、実施例1と同様、開孔部囲繞補強筋7aによりその周囲を取り囲むことにより開孔部6aの補強をしている。従って、該孔際補強筋4c、8aと開孔部囲繞補強筋7aとは前後に配置することになり、且つ継手金物1a側に位置する開孔部囲繞補強筋7aは空間部S側に突出することになるが、邪魔となることはない。
【実施例3】
【0037】
図6、7は、継手金物を設けた部位に隣接して開孔部を設け、その両者の補強構造の他の実施例を示したもので、主筋2bの端部相互を連結する継手金物1bの両端部3e、3fの外方に孔際補強筋4e及び集約せん断補強筋4fを配筋している。
【0038】
継手金物1bを設けた部位はせん断補強筋5bを設けることなく空間部Sとし、該継手金物1bの開孔部6b側の端部3e側に孔際補強筋4eを配筋し、該孔際補強筋4eに隣接して開孔部6bを配置している。該孔際補強筋4eは、他の孔際補強筋8bを開孔部に対して対称となる位置に配置し、集約せん断補強筋を兼ねている。
【0039】
開孔部の左右には孔際補強筋8b及び孔際補強筋4eを各々配筋し、このうち孔際補強筋4eは密接に束ねて配筋し、集約せん断補強筋も兼ねている。
【0040】
該開孔部6bは、実施例1、2と同様、開孔部囲繞補強筋7bによりその周囲を取り囲むことにより開孔部6bの補強をしている。従って、該孔際補強筋4e、8bと開孔部囲繞補強筋7bとは前後に配置することになるが、邪魔となることはない。
【実施例4】
【0041】
図8は、鉄筋を組んで開孔部周りを補強する実施例を示したものである。継手金物1cの両端部3g、3hにその外方にスターラップ筋或いはフープ筋等のせん断補強筋の複数本を密接或いは小間隔を有した集中状態で集約せん断補強筋又は孔際補強筋4g、4hとしている。図8では、両集約せん断補強筋又は孔際補強筋4g、4h及び開孔部6cの他側の孔際補強筋8cも小間隔を有して集中状態で配筋している。
なお、集約せん断補強筋4hと、符号4gで示す補強筋を同じ配筋にした場合には、符号4gの補強筋は集約せん断補強筋と言い、該集約せん断補強筋4gは、開孔部6cの孔際補強筋を兼ねることになる。また、符号4gで示す補強筋を孔際補強筋8cと同配筋にしたり、孔際補強筋8cを密接状態で束ねて配筋した場合には、符号4gの補強筋は孔際補強筋と言い、孔際補強筋4gは、集約せん断補強筋を兼ねることになる。
【0042】
該継手金物1cと隣接する位置に開孔部6cを設ける場合は、該開孔部囲繞補強筋7cの定着部を梁の長手方向に延設でき、該定着部の先端側が継手金物1cの空間部Sに達しても邪魔となることはない。
【0043】
本実施例の開孔部6cを囲む開孔部囲繞補強筋7cは、主筋2c方向となる長手方向に延設した鉄筋と該開孔部6cを囲む斜材部材或いは湾曲部材となる鉄筋とを折り曲げ形成した鉄筋を組み合せることにより開孔部を囲繞する補強筋としたものである。
【0044】
該開孔部囲繞補強筋7cは、継手金物1cの一端部3g側より上方に配筋した主筋2cの長手方向へ延設する方向と同一方向へ該主筋2cと平行に延設した延長部材38と一方の該集約せん断補強筋又は孔際補強筋3gの内側背面を通過し、該開孔部6cの開孔縁側の位置に折曲部39を設け、該折曲部39から、下方の主筋2c側へ折曲し、他方の該孔際補強筋8cの内側背面を通過し、下方側の主筋2cの長手方向へ延設する方向と同一方向へ該下方の主筋2cと平行に延設して延長部材40とし、該延長部材40は折曲部41により折り曲げられて連続的に延設され、該折曲部39、41間に斜材部材42を設けてなる第1補強筋43と、上記第1補強筋43と同様の形状とし、折曲部44、45間の斜材部材46を、該開孔部6cの上記斜材部材42とは開孔部6cを挟んで反対側位置を通過するようにし、該折曲部44、45からは各々延長部材47、48を設け、それらにより第2補強筋49とし、上記第1、第2補強筋43、49とにより後面側の開孔部囲繞補強筋としている。
【0045】
上記第1補強筋43は、結束筋、クリップ、溶接等の各種固定手段50によって集約せん断補強筋又は孔際補強筋4g、孔際補強筋8c及び必要に応じてせん断補強筋、主筋2c或いは他の部材等に連結され固定されることになる。また、上記第2補強筋49は、上記同様に、固定手段51によって集約せん断補強筋又は孔際補強筋4g、孔際補強筋8c及び必要に応じてせん断補強筋、主筋2c或いは他の部材等に連結され固定されることになる。
【0046】
他方、上記第1、第2補強筋43、49の後面側に重ねて配置する開孔部囲繞補強筋7cは、継手金物1cより上方に配筋した主筋2cの長手方向へ延設する方向と同一方向へ該主筋2cと平行に延設した延長部材52と一方の該孔際補強筋8cの内側背面を通過し、該開孔部6cの開孔縁から該継手金物1c側の位置に折曲部53を設け、該折曲部53から、下方の主筋2c側へ折曲し、他方の該集約せん断補強筋又は孔際補強筋4gの内側背面を通過し、下方の主筋2cの長手方向へ延設する方向と同一方向へ該下方の主筋2cと平行に延設した延長部材54への折目となる折曲部55まで延設した斜材部材56を設けてなる第3補強筋57と、上記第3補強筋57と同様の形状とし、折曲部58、59間の斜材部材60を、該開孔部6cの上記斜材部材56とは開孔部6cを挟んで反対側位置を通過するようにし、該折曲部58、59からは各々延長部61、62を設け、それらにより第4補強筋63とし、上記第3、第4補強筋57、63とにより前面側の開孔部囲繞補強筋としている。
【0047】
上記第3補強筋57は、固定手段64によって孔際補強筋8c及び必要に応じてせん断補強筋、主筋2c或いは他の部材等に連結され固定されることになる。また、上記第4補強筋63は、上記同様に、固定手段65によって集約せん断補強筋又は孔際補強筋4g、孔際補強筋8c及び必要に応じてせん断補強筋、主筋2c或いは他の部材等に連結され固定されることになる。
【0048】
上記開孔部6cの周辺部を上記第1乃至第4補強筋43、49、57、63を前面側及び後面側に組み合わせることにより、主要構造部の手前側及び奥側等の開孔部囲繞補強筋7cとしている。該開孔部囲繞補強筋7cは、図8に示すように、延長部材及び斜材部材、湾曲部材によって開孔部6cの周辺を囲むことにより全体として菱形形状或いは多角形形状、湾曲形状とされている。図面では斜材部材を直線状に表現しているが、開孔部の円形形状に沿うように湾曲状の円形部材とすることも効果的である。
【0049】
上記実施例の第1、第2補強筋43、49の位置を、第3、第4補強筋57、63の位置とは逆にしてその後面側としてもよいことは言うまでもない。
【0050】
また、上記実施例の第1、第2補強筋43、49と第3、第4補強筋57、63との重なりは開孔部6cの大きさに応じて図8で示す状態より、継手金物1c側にずらしたり、或いはその反対方向側へずらして構成することも可能である。この場合も、開孔部6cと継手金物1c間には集約せん断補強筋又は孔際補強筋4gが配置できる寸法及びそのかぶり厚さ分の寸法を確保することになる。
【0051】
更に、図3(a)、(b)に示した断面図同様、上記第1乃至第4補強筋43、49、57、63よりなる開孔部囲繞補強筋7cを手前側及び奥側に位置する集約せん断補強筋又は孔際補強筋(必要に応じてせん断補強筋、主筋或いは他の部材等)に固定する等、適宜実施例が採用できる。また、図3(c)に示す断面図のように、該第1乃至第4補強筋43、49、57、63を手前側の集約せん断補強筋又は孔際補強筋(必要に応じてせん断補強筋、主筋或いは他の部材等)及び奥側の集約せん断補強筋又は孔際補強筋(必要に応じてせん断補強筋、主筋或いは他の部材等)に固定する他に、中子筋37にも固定する補強構造を採用することができる。該開孔部の補強として、該中子筋37を中心としてその両面に第1乃至第4補強筋43、49、57、63を配筋した補強構造も考えられる。
なお、図3では開孔部補強筋として3列までの配筋として例示しているが、主筋の数や部材厚によっては4列或いはそれ以上の配筋も考えられる。このことは他の実施例も同様である。
【実施例5】
【0052】
図9は、鉄筋の継手金物部位1dに隣接した開孔部6dの補強構造の他の実施例で、上下或いは左右の継手金物の端部に設けた集約せん断補強筋又は孔際補強筋4i、集約せん断補強筋4jの一方の集約せん断補強筋又は孔際補強筋4iに隣接する位置に開孔部6dを設けたものである。
【0053】
該開孔部6dを取り囲むようにして開孔部6dの長手方向となる部材の手前側から部材の奥側へと連続する円形、四角形或いは多角形としたスパイラル状の開孔部囲繞補強筋7dを設けることにより該開孔部6dを補強したものである。
【0054】
該スパイラル状の開孔部補強筋7dは、開孔部6dの外方となる周囲の開孔部6dの長手方向に沿って延設されるもので、集約せん断補強筋又は孔際補強筋4i、孔際補強筋8d及び必要に応じてせん断補強筋5d、主筋或いは他の部材等の内側に固定できるように延長部材66、67を設け、該延長部材66、67を固定手段68、69によって連結固定している。
【0055】
開孔部6dを形成する筒体等を保持する支持突出部70を設けることもできる。これは他の実施例も同様である。また、該開孔部囲繞補強筋7dは、該開孔部6dの長手方向の中間部から延長部材66、67を延出し、それを中子筋37と固定することもできる。中子筋37にはその前面又は背面位置或いは中子筋37を中心としてその両面に固定する実施例も考えられる。
【0056】
本実施例でも、継手金物及び開孔部の補強として使用する集約せん断補強筋及び孔際補強筋の種類やその相互の間隔は、上記実施例と同様である。
【0057】
また、上記実施例1乃至5における集約せん断補強筋及び孔際補強筋或いは開孔部囲繞補強筋等の各補強筋の単独または集約状態は必要に応じて適宜選択することができることはも言うまでもない。
また、上記実施例では、対象となる部材を梁として説明したが、梁に限定することなく、柱や斜材等の他の構造部材においても同様の補強構造とすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1、1a、1b、1c、1d、A 継手金物
2、2a、2b、2c 主筋
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h 継手端部
4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i、4j 集約せん断補強筋
8、8a、8b、8c、8d 孔際補強筋
5、5a、5b、5c、5d せん断補強筋
6、6a、6b、6c、6d 開孔部
7、7a、7b、7c、7d 開孔部囲繞補強筋
9、43 第1補強筋
10、49 第2補強筋
11、13、17、21、25、29、32、34、42、46、56、60 斜材部材
12、14、16、18、20、22、24、26、27、30、33、39、41、44、45、53、55、58、59 折曲部
15、19、23、28、31 平行部材
35、36、50、51、64、65、68、69 固定手段
37 中子筋
38、40、47、48、52、54、61、62、66、67 延長部材
57 第3補強筋
63 第4補強筋
70 支持突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造等の構築物の主要構造部の同一部材に主筋の継手に継手金物を使用し、該継手金物部位に隣接して開孔部を設け、その各々を補強した構造において、該継手金物の開孔部側端部と開孔部の継手金物側端部との間に、該継手金物の端部外方位置に巻き付けた集約せん断補強筋及び開孔部の該継手金物側位置の主筋に巻き付けた孔際補強筋を該継手金物及び開孔部の補強筋として兼ねるように配筋してなることを特徴とする継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造。
【請求項2】
開孔部には、主筋に巻き付けた集約せん断補強筋又は孔際補強筋の他、開孔部周囲を囲む開孔部囲繞補強筋を配筋してなることを特徴とする請求項1記載の継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造。
【請求項3】
集約せん断補強筋又は孔際補強筋は、複数のせん断補強筋を主要構造部の長手方向において密接配筋してなることを特徴とする請求項1又は2記載の継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造。
【請求項4】
集約せん断補強筋又は孔際補強筋は、複数のせん断補強筋を主要構造部の長手方向において小間隔を有した集中状態で配筋してなることを特徴とする請求項1又は2記載の継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造。
【請求項5】
集約せん断補強筋又は孔際補強筋は、1本の鉄筋或いは1本の鉄筋をコイル状に数回巻いた鉄筋としてなることを特徴とする請求項1又は2記載の継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造。
【請求項6】
開孔部囲繞補強筋は、直線部材と斜材部材とを組み合わせてなることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか記載の継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造。
【請求項7】
開孔部囲繞補強筋は、四角形部材と多角形部材或いは多角形部材相互又は多角形部材と湾曲部材或いは湾曲部材相互等を適宜組み合わせてなることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか記載の継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造。
【請求項8】
開孔部囲繞補強筋は、開孔部の長手方向に沿って延出し、該開孔部を囲むスパイラル状の鉄筋としたことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか記載の継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造。
【請求項9】
開孔部囲繞補強筋は、主筋、せん断補強筋、孔際補強筋、集約せん断補強筋、中子筋、その他開孔部周囲の補強筋等に連結してなることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか記載の継手金物部位と開孔部とを隣接配置した補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)(b)(c)】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−36186(P2013−36186A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171547(P2011−171547)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(390005186)日本スプライススリーブ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】