緊急通報システム
【課題】 公衆網に対しては代表電話番号だけが登録されている構内交換機配下の内線端末からの緊急通報に対して、回線保留機能や逆信機能を適切に実現させる。
【解決手段】 本発明は、構内交換機が、公衆網を介して、緊急通報を受け付ける緊急通報受理機関の指令台に接続可能な緊急通報システムに関する。そして、構内交換機が、内線端末からの緊急通報を、代表電話番号の外線によって公衆網に送出する緊急通報送出部と、緊急通報元の内線端末の特定情報とこの内線端末の緊急通報状態とを含む緊急通報情報を格納する緊急通報格納部と、緊急呼に対する内線端末からの切断要求に対し、少なくとも内線構成側の切断を行った回線保留状態にする回線保留移行部と、代表電話番号の外線を用いた、公衆網側からの逆信指示信号の受信時に、上急通報格納部から、緊急通報元の内線端末を検索し、該当する移動端末に対して呼接続を行う逆信処理部とを備える。
【解決手段】 本発明は、構内交換機が、公衆網を介して、緊急通報を受け付ける緊急通報受理機関の指令台に接続可能な緊急通報システムに関する。そして、構内交換機が、内線端末からの緊急通報を、代表電話番号の外線によって公衆網に送出する緊急通報送出部と、緊急通報元の内線端末の特定情報とこの内線端末の緊急通報状態とを含む緊急通報情報を格納する緊急通報格納部と、緊急呼に対する内線端末からの切断要求に対し、少なくとも内線構成側の切断を行った回線保留状態にする回線保留移行部と、代表電話番号の外線を用いた、公衆網側からの逆信指示信号の受信時に、上急通報格納部から、緊急通報元の内線端末を検索し、該当する移動端末に対して呼接続を行う逆信処理部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緊急通報システムに関し、例えば、構内交換機(PBX)に収容された移動端末からの緊急通報にも対応しようとしたものである。
【背景技術】
【0002】
電話サービスの一つとして、犯罪通報、火災通報、事故通報、救急など緊急性を要する場合に利用される緊急通報サービス(以下、単に、緊急通報と呼ぶ)がある。緊急通報では、緊急通報受理機関(例えば、警察署、消防署、海上保安庁など)側から呼を終了しない限り、通報者から切断した場合でも、呼を維持する必要がある(回線保留)。また、通報者が切断して移行した回線保留中にも、緊急通報受理機関側から呼び出すことができなくてはならない(逆信)。
【0003】
構内交換機を含む電話交換システムにおける、上述した回線保留機能や逆信機能については、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平02−228865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の固定電話システムでは、呼に対して物理的(電気的)に回線を割り当てていたため、回線を保留することは容易であった。
【0005】
しかし、構内交換機は、異なる位置に配置される複数の内線端末を収容しているため、従来、緊急通報受理機関に通知される電話番号は、構内交換機に登録されている代表の電話番号のみである。そのため、緊急通報受理機関側で、犯罪発生場所、火災発生場所、事故発生場所などを、電話番号から小さい範囲に特定しても、内線端末の位置によっては正しくないことが生じる。
【0006】
そのため、緊急通報元の内線端末の電話番号を緊急通報受理機関に通知することも考えられる。しかしながら、構内交換機に接続されている内線端末の電話番号は、従来の固定電話のような市外局番や市内局番などから構成される位置に依存した電話番号ではなく、内線番号などが単に割り当てられているものである。そのため、緊急通報受理機関にその内線番号を通知するようにしても、位置特定には機能しない。
【0007】
また、構内交換機に接続される内線端末としては、有線を介して接続される一般電話(アナログ電話機、ISDN電話機など)の他に、無線を介して接続される無線端末(PHS端末など)がある。無線端末は、位置を変えて利用できる。通報者が無線端末から緊急通報受理機関へ通報し、その後、通報者側が切断して移行した回線保留中に位置を変えることもあり得る。このような無線端末の位置変更後に、緊急通報受理機関側から逆信しても、構内交換機の機能によっては、通報者の位置変更により、逆信に適用し得ないことも生じる。
【0008】
そのため、構内交換機配下の内線端末からの緊急通報に対しても、回線保留機能や逆信機能を適切に実現できる緊急通報システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、本発明は、構内交換機が、公衆網を介して、緊急通報を受け付ける緊急通報受理機関の指令台に接続可能な緊急通報システムにおいて、上記構内交換機が、内線端末からの緊急通報を、当該構内交換機の代表電話番号の外線によって上記公衆網に送出する緊急通報送出部と、緊急通報元の内線端末の特定情報とこの内線端末の緊急通報状態とを含む緊急通報情報を格納する緊急通報格納部と、緊急呼に対する上記内線端末からの切断要求に対し、少なくとも内線構成側の切断を行った回線保留状態にする回線保留移行部と、当該構内交換機の上記代表電話番号の外線を用いた、上記公衆網側からの逆信指示信号の受信時に、上記緊急通報格納部から、緊急通報元の内線端末を検索し、該当する移動端末に対して、呼接続の処理を行う逆信処理部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、公衆網に対しては代表電話番号だけが登録されている構内交換機の配下にある内線端末からの緊急通報に対しても、回線保留機能や逆信機能を適切に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による緊急通報システムの第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第1の実施形態の緊急通報システムは、IP電話網を介して、緊急通報受理機関(例えば、警察署、海上保安庁、消防署など)の緊急通報指令台(以下、指令台と略する)に通報を行うものである。
【0012】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態の緊急通報システム(IP電話システム)の網構成を示すブロック図である。
【0013】
図1において、IP電話網5は、IP電話サービスを提供する事業者(キャリア)が、その加入者に対してIP電話サービスを提供するための1又は複数のIP電話交換装置1と、IP電話交換装置1が電話サービスを提供するために利用する呼処理データベース(以下、呼処理DBと略する)2と、IP電話サービスの加入者情報を管理する加入者情報データベース(以下、加入者情報DBと略する)3と、IP電話網5内で回線保留機能を補助するための保留装置4とを有している。
【0014】
第1の実施形態の緊急通話システムにおけるIP電話サービスの加入者は、構内交換機(PBX)6と、構内交換機6に接続されたアクセスポイント装置8と、アクセスポイント装置8経由で構内交換機6に収容される移動端末9とでなっている。このうち、構内交換機6がIP電話網5に接続される。
【0015】
また、緊急通報受理機関は指令台7をIP電話網5に接続しており、これにより、緊急通報を処理可能としている。
【0016】
アクセスポイント装置8及び移動端末9は、既存のものと同様な構成を有している。構内交換機6も、既存のものとほぼ同様な構成を有しているが、例えば、ソフトウェア的に実現する緊急通報機能部が既存のものから変更されている。
【0017】
ここで、移動端末9がIP網対応のものであっても良く、また、移動端末9はIP網対応ではないがアクセスポイント装置8からIP網対応になっているものでも良く、さらには、移動端末9及びアクセスポイント装置8はIP網対応ではないが構内交換機6の外線側処理部がIP網対応のものであっても良い。
【0018】
IP電話交換装置1は、ハードウェア構成は既存のものとほぼ同様であり、主として、ソフトウェアによって実現される呼処理の中に、緊急通報用の呼処理に対応する部分が追加されている。
【0019】
保留装置4は、詳細構成の図示は省略するが、IP電話機(ソフトフォンや、アナログ電話機とゲートウェイの組み合わせなどを含む概念である)などと同様な呼処理を実現できる構成を有するものであれば良い。保留装置4は、IP電話網5の中に1台でも複数台でも良い。後者の場合に、例えば、緊急通報の種別毎(「110」(警察署)、「118」(海上保安庁)、「119」(消防署)など)に設けられたものであっても良い。また、1台の保留装置4が、複数のIPアドレスや通信インタフェースなどを備えて、複数の回線に対する回線保留を同時に補助し得るものであっても良い。
【0020】
呼処理DB2及び加入者情報DB3は、外部装置からのアクセスが可能なデータベースとしての一般的な構成を有している。
【0021】
ここで、呼処理DB2は、IP電話交換装置1のそれぞれの台に1対1に対応するように設けられたものであっても良い。1対1対応の場合には、IP電話交換装置1と、呼処理DB2とが同一装置上に構成されたものであっても良く、また、専用線などによって直結されたものであっても良い。
【0022】
加入者情報DB3は、IP電話サービスを提供する事業者(キャリア)毎(言い換えると、IP電話網5毎)に1台だけ設けられていても良く、同一事業者に関するものであっても複数の加入者情報DB3がIP電話網5内に分散配置されたものであっても良い。
【0023】
指令台7は、モニタやキーボード(又は操作卓)などを備えたものであるが、機能的には、IP電話機とほぼ同様な呼処理機能を実現できるハードウェア構成及びソフトウェア構成を有している。指令台7は、機能的には、IP電話機と同様な機能に加え、音声接続先を切り替える機能と、逆信のための呼び出し信号を送出する機能とを有している。なお、図1では、指令台7がIP電話網5に直接接続されているものを示したが、指令台が現状の電話網対応のものであり、その指令台をIP電話網5にゲートウェイが接続制御するものであっても良い。言い換えると、現状の指令台とゲートウェイとの組合せが、図1に示した指令台7に該当していても良い。
【0024】
図2は、第1の実施形態の呼処理DB2の管理情報の構成例を示す説明図である。
【0025】
図2において、呼処理DB2は、呼処理に必要な登録加入者情報を管理しているものである。呼処理DB2は、登録動作を行ったある加入者についての登録加入者情報として、少なくとも、IP電話交換装置1で扱う加入者(IP電話機(構内交換機を含む))毎に、その加入者を識別するための情報としての電話番号とIPアドレスと、その加入者が緊急通報中かどうかを識別するための情報(緊急通報状態)と、回線保留中であれば保留のために接続している保留装置4を特定する情報(IPアドレスなど)と、その加入者が契約している付加サービス(例えば、転送、発信専用、番号非通知など)に関する情報とを管理している。
【0026】
なお、呼処理DB2で管理される登録加入者情報には、指令台7(緊急通報受理機関)に係る登録加入者情報も含まれている。呼処理DB2は、指令台7(緊急通報受理機関)に係る登録加入者情報を専用エリアで管理し、その書換えを実行できる保守者を制限できるものであることが好ましい。
【0027】
また、構内交換機については、登録加入者情報の電話番号の欄には、代表の電話番号が記述される。
【0028】
図3は、第1の実施形態の加入者情報DB3の管理情報の構成例を示す説明図である。
【0029】
図3において、加入者情報DB3は、IP電話網5で電話サービスを受けるように加入契約された加入者毎に、以下のような情報を管理しているものである。加入者情報DB3は、ある契約加入者についての情報として、少なくとも、その加入者を識別するための情報としての電話番号とIPアドレスと、緊急通報状態と、緊急通報中でかつ回線保留中であれば保留のために接続している保留装置4を特定する情報(IPアドレスなど)と、その加入者を現在扱っているIP電話交換装置1を特定する情報と、その加入者が契約している付加サービス(例えば、転送、発信専用、番号非通知など)に関する情報とを管理している。
【0030】
なお、加入者情報DB3で管理される契約加入者情報には、指令台7(緊急通報受理機関)に係る情報も含まれている。加入者情報DB3は、指令台7(緊急通報受理機関)に係る情報を専用エリアで管理し、その書換えを実行できる保守者を制限できるものであることが好ましい。
【0031】
また、構内交換機については、加入者情報DB3で管理される契約加入者情報の電話番号の欄には、代表の電話番号が記述される。なお、構内交換機が複数の代表番号を有する場合には、例えば、契約加入者情報がそれに応じた数だけ用意される。
【0032】
上述した呼処理DB2及び加入者情報DB3はそれぞれ、少なくともリブートや電源断などによっては保持している情報が消滅しない、不揮発性の記憶装置である。
【0033】
構内交換機6は、電源投入したりIP電話網5に接続したりすると、自装置に付与されているIPアドレスと代表電話番号をIP電話網5に送信し、IP電話交換装置1へ登録を依頼し、IP電話交換装置1からの登録成功応答を受信することで利用可能となるものである。なお、第1の実施形態は、IP網でのVoIPシグナリングプロトコルはSIPプロトコルに限定されるものではないが、機能説明や以下の動作説明は、SIPプロトコルを考慮して記述している。
【0034】
構内交換機6は、収容する移動端末9から緊急通報があった場合には、その緊急通報の特番と移動端末9の特定情報(内線番号やIPアドレス若しくはMACアドレスなど)と緊急通報状態を対応付けて緊急通報格納部6aに格納し、IP網5側には、代表電話番号回線から緊急通報を行う機能と、回線保留時の逆信指令がIP網5側から与えられたときに、緊急通報格納部6aに収容されている移動端末9の内線番号に基づいてその移動端末9を収容しているアクセスポイント装置8を検索して内線呼を確立させる機能とを有している。
【0035】
IP電話交換装置1は、構内交換機6及び指令台7からの登録依頼を受信し、加入者情報DB3を検索し、同一電話番号を有する加入者が登録されていれば、加入者情報DB3の該当する加入者情報の領域に、一緒に受信したIPアドレスとIP電話交換装置1を特定するための情報とを登録すると共に、IP電話交換装置1が利用する呼処理DB2に、その加入者を識別するための情報としての電話番号とIPアドレスと、その加入者が契約している付加サービスに関する情報とを格納し、登録依頼元へ登録が成功した旨を通知する機能を有する。
【0036】
また、IP電話交換装置1は、加入者が緊急通報を発呼した場合には、加入者情報DB3から指令台7に関する情報を取得して指令台7を扱うIP電話交換装置1に接続する機能と、加入者情報DB3及び呼処理DB2の該当する加入者の緊急通報状態を「緊急通報中」に設定する機能とを有する。
【0037】
さらに、緊急通報中の加入者が切断した場合に、接続先の指令台7に対して接続先を保留装置4に変更するように指示する機能と、呼処理DB2及び加入者情報DB3の該当する加入者の緊急通報状態を「保留中」にし、接続した保留装置4を特定する情報を設定する機能とを有する。
【0038】
IP電話交換装置1は、緊急通報状態が「保留中」に通報者が新規発呼を行った場合、呼処理DB2に格納した保留装置4の情報に基づいて、保留装置4と指令台7との接続を通報者のIP電話機(構内交換機6を含む)と指令台7との接続に変更するように指示する機能と、呼処理DB2及び加入者情報DB3の該当する加入者の緊急通報状態を「緊急通報中」にし、接続した保留装置4に関する情報を削除する機能とを有する。
【0039】
IP電話交換装置1は、緊急通報状態が「保留中」に第3者から通報者に着信があった場合、通報者を話中としての処理を行う機能を有する。IP電話交換装置1は、緊急通報状態が「保留中」に指令台7から逆信指示があった場合、契約付加サービスに関わらず該通報者のIP電話機(構内交換機6を含む)を呼び出し、応答したら、呼処理DB2に格納した保留装置4の情報に基づいて、保留装置4と指令台7との接続を通報者のIP電話機(構内交換機6を含む)と指令台7との接続に変更するように指示する機能と、呼処理DB2及び加入者情報DB3の該当する加入者の緊急通報状態を「緊急通報中」にし、接続した保留装置4に関する情報を削除する機能とを有する。
【0040】
保留装置4は、指令台7との音声コネクションを保留するための相手として機能するものであり、IP電話交換装置1の指示により、指令台7との音声コネクションを確立したり、解放したりする機能を有する。
【0041】
なお、構内交換機6及び指令台7を含むIP電話網5に係る全てのリソースは、緊急通報に係るIPパケットを送信又は中継するときは、そのIPパケットの優先レベルのフラグやフィールドを最上位にする設定を行うようになされている。
【0042】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の緊急通報システムの動作を説明する。なお、加入者の構内交換機6と緊急通報受理機関の指令台7が加入者情報DB3に加入登録されており、指令台7は、IP電話交換装置1bに扱われるものとして既に登録済みで、構内交換機6は登録処理によりIP電話交換装置1aに登録されるものとする。また、IP電話交換装置1aが呼処理DB2aを、IP電話交換装置1bが呼処理DB2bを利用するものする。さらに、移動端末9(構内交換機6)から発呼された緊急通報は指令台7に着信するものとする。
【0043】
(A−2−1)構内交換機6のIP電話網5への登録シーケンス
まず、図4を参照して、構内交換機6のIP電話網5への登録シーケンスを説明する。
【0044】
構内交換機6のオペレータが、構内交換機6をIP電話網5に接続するか、若しくは、IP電話網5に接続された電源の切断された構内交換機6の電源を投入すると、構内交換機6からIP電話網5に対して、構内交換機6のIP電話網5への登録要求がVoIPシグナリングプロトコル(例えばSIP)により、少なくとも構内交換機6の代表電話番号とIPアドレスを伴って発行される(S001)。該要求は、IPアドレスの管理領域の関係から定まるIP電話交換装置1aが受信する。このとき、IP電話交換装置1aは、該要求が加入者からのものかを確認するために加入者情報DB3に対して、ステップS001で受信した情報と自装置を特定するための情報とを伴う確認要求を送出する(S002)。加入者情報DB3は、受信した電話番号に基づいて検索し、管理情報を確認する(S003)。
【0045】
加入者情報DB3は、受信した電話番号が自DBに未登録であれば加入者ではないものとみなし、ステップS002での確認要求にエラーで応答する(S004)。エラー応答を受信したIP電話交換装置1aは、構内交換機6が登録対象ではないものとして登録拒否で応える(S005)。
【0046】
これに対して、加入者情報DB3は、ステップS003の処理において、構内交換機6の電話番号が検索できれば(電話番号が登録されていれば)、該当する加入者情報の管理領域に受信した構内交換機6のIPアドレスと、構内交換機6を扱うことになったIP電話交換装置1aを特定するための情報を登録し(S006)、さらに、管理している加入者情報から該加入者が契約している付加サービスの情報を抽出して、ステップS002の確認要求の応答としてIP電話交換装置1aに返却する(S007)。IP電話交換装置1aは、構内交換機6から受信した電話番号とIPアドレス、及び、加入者情報DB3から受信した契約付加サービス情報を呼処理に用いるデータとして呼処理DB2aに登録指示する(S008)。要求を受けた呼処理DB2aは、受信したデータを登録する(S009)。そして、登録成功が、呼処理DB2aからIP電話交換装置1aへ、IP電話交換装置1aから構内交換機6へ通知されて、登録処理が完了する(S010、S011)。
【0047】
なお、上述したステップS006における加入者情報DB3でのデータ登録や、ステップS009における呼処理DB2aでのデータ登録では、登録対象データ以外のデータ領域は空(又は無意味なデータ)となっている。例えば、以上のような登録時点では、呼処理DB2aや加入者情報DB3のIPアドレスや緊急通報状態や保留装置特定情報は空となっている。
【0048】
以上の登録動作そのものは、呼処理DB2aや加入者情報DB3内の情報が異なっているが、既存のIP電話システムとほぼ同様である。
【0049】
(A−2−2)移動端末9の構内交換機6への登録シーケンス
次に、図5を参照して、移動端末9の構内交換機6への登録シーケンスを説明する。
【0050】
移動端末9が構内交換機6への接続動作を起動するか、若しくは、電源の切断された移動端末9の電源を投入すると、移動端末9の近傍のアクセスポイント装置8を経由して、内線番号やIPアドレスなどの移動端末9の特定情報を含む登録要求(通信可能状態への移行要求)が構内交換機6に与えられる(S020、S021)。構内交換機6では、収容対象の移動端末の特定情報を内蔵するデータベース(図示せず)で管理しており、登録要求を送出した移動端末8の情報がそのデータベースで管理されているかを確認する(S022)。
【0051】
登録要求を送出した移動端末9の情報が構内交換機6で管理されていなければ、アクセスポイント装置8経由で、登録拒否が移動端末9に返信される(S023、S024)。
【0052】
登録要求を送出した移動端末9の情報が構内交換機6で管理されていれば、構内交換機6は、登録要求を送出した移動端末9の特定情報やその移動端末9を現時点で収容しているアクセスポイント装置8の情報などを、内線端末の呼処理データベース(図示せず)などに設定した後(S025)、アクセスポイント装置8経由で、登録成功を移動端末9に返信する(S026、S027)。
【0053】
以上のような2種類の登録シーケンスによって、構内交換機6配下の移動端末8から、IP電話網5に係る指令台7への緊急通報が可能な状態となる。
【0054】
(A−2−3)緊急通報の発呼シーケンス
次に、図6を参照して、移動端末9からの緊急通報の発呼シーケンスを説明する。
【0055】
移動端末9に対してその所持者が緊急通報特番(例えば、「110」、「118」又は「119」)をダイヤルすると、緊急通報の発呼信号が、アクセスポイント装置8経由で構内交換機6に与えられる(S030、S031)。
【0056】
構内交換機6は、移動端末9が収容端末であることを確認すると、その緊急通報の特番と通報元の移動端末9の特定情報(内線番号やIPアドレス若しくはMACアドレスなど)とを対応付けて緊急通報格納部6aに格納した後(S032)、当該構内交換機6を扱うIP電話交換装置1aに対し、VoIPシグナリングプロトコルを適用した代表電話番号からの発呼を行う(S033)。
【0057】
このとき、IP電話交換装置1aは、接続先(指令台7)の情報を取得するために、加入者情報DB3に対して、ダイヤルされた緊急通報特番を添えて接続先情報の取得を要求する(S034)。加入者情報DB3は、指定された緊急通報特番を索引にして指令台7のIPアドレス(及び又は指令台7に付与されている電話番号)を取得し(S035)、IP電話交換装置1aに返却する(S036)。なお、指令台7には、構内交換機6の電話番号と同様な具体的な電話番号が割り当てられていてルーティングがなされるので、加入者情報DB3は、特番を指令台7に付与されている電話番号に変換することも行っている。
【0058】
図6では、上述のように、加入者情報DB3は、特番を指令台7に付与されている電話番号に変換する場合を示しているが、これに代え、IP電話交換装置1aに、緊急通報特番を指令台7の電話番号に変換するための情報を保持させておき、IP電話交換装置1aが、緊急通報特番を指令台7の電話番号に変換し、変換した電話番号を添えて接続先情報の取得を加入者情報DB3に要求するようにしても良い。
【0059】
IP電話交換装置1aは、上述のようにして、接続先(指令台7)の情報(IPアドレス及び又は電話番号)を取得すると、緊急通報を行うために、加入者情報DB3と呼処理DB2aに対して、構内交換機6の電話番号と「緊急通報中」状態を渡すことにより、緊急通報状態(「緊急通報中」)の設定を要求する(S037、S040)。加入者情報DB3、呼処理DB2aはそれぞれ、管理している構内交換機6(の代表電話番号)の状態を「緊急通報中」に設定し(S038、S041)、応答を返却する(S039、S042)。
【0060】
その後、IP電話交換装置1aが指令台7に対して接続を要求し、応答を受信することで、構内交換機6に応答を転送し、構内交換機6が内外線の音声コネクションの接続制御を行った後、アクセスポイント装置8経由で移動端末9に応答を転送することにより(S043〜S047)、移動端末9と指令台7での緊急呼が確立される(S048)。
【0061】
なお、指令台7への接続に係るシーケンスはVoIPシグナリングプロトコルによるものであるため、図6では概略のみを示し、詳細を示していない。例えば、ステップS043の宛先が指令台7であるため、指令台7を扱うことになっているIP電話交換装置1bを経由するが、通常のルーティングの範疇であることから、図6では詳細を示していない。
【0062】
また、構内交換機6及び移動端末9間の信号授受でも、アクノリッジ信号の返信など、細かいシーケンスがあるが、図6では、特徴が明らかになる程度の概略のみを示している(他のシーケンス図でも同様である)。
【0063】
(A−2−4)緊急呼の移動端末からの切断シーケンス
次に、図7を参照して、緊急通報中の移動端末9からの切断シーケンスを説明する。
【0064】
緊急呼が確立されている状態において通報元の移動端末9がオンフックされると、その移動端末9からアクセスポイント装置8経由で切断が構内交換機6に通知される(S50、S51)。
【0065】
構内交換機6は、緊急通報格納部6aを参照することにより、緊急呼に対する切断であるので、回線保留状態を緊急通報格納部6aに書き込んだ後(S052)、当該構内交換機6を扱うIP電話交換装置1aに対してVoIPシグナリングプロトコルを適用した切断要求を行う(S053)。
【0066】
このとき、IP電話交換装置1aは、呼処理DB2aにおける構内交換機6の呼状態(緊急通報状態)を参照する(S054、S055)。図7では、省略しているが、構内交換機6が、「緊急通報中」や「保留中」でなければ(緊急通報状態が「空」であれば)、一般的な切断シーケンスが実行される。
【0067】
緊急呼が確立している状態で切断要求が行われたので、構内交換機6の緊急通報状態が「緊急通報中」であり(S056)、IP電話交換装置1aは、通報者からは呼を終了させてはならないため、回線保留を行う処理に入る。IP電話交換装置1aは、指令台7側の接続を保持しなくてはならないため、指令台7を一時的に保留装置4と接続させることで指令台7側の接続を保留させる。すなわち、IP電話交換装置1aは、指令台7に対しては保留装置4との接続を指示し、保留装置4に対しては指令台7との接続を指示して、指令台7を保留装置4に接続させる(S057、S058)。これにより、構内交換機6側との通話コネクションは切断されるが、指令台7は保留装置4とのコネクションが残るため、逆信を行うことも可能である(S059)。
【0068】
次に、IP電話交換装置1aは、加入者情報DB3と呼処理DB2aに対して、構内交換機6の代表電話番号と「保留中」状態、及び該当緊急通報の保留を実施している保留装置4を特定する情報を渡して、緊急通報状態の設定を要求する(S060、S063)。加入者情報DB3、呼処理DB2aはそれぞれ、管理している構内交換機6の状態を「保留中」に設定すると共に保留装置4の特定情報を格納し(S061、S064)、応答を返却する(S062、S065)。
【0069】
IP電話交換装置1aは、両データベース3、2aからの更新の応答を受信すると、構内交換機6に切断処理終了を応答する(S066)。なお、IP電話交換装置1a自体は、緊急呼の音声コネクションの切断処理を実行せず、保持しておく。例えば、緊急呼に係る呼制御データなどをそのまま保持しておく。このようにしても、緊急呼に係る双方向のIPパケットが到来することはないので、問題が生じることはなく、むしろ、逆信指示時に、対応できるリソース(呼制御データなど)を確保できていて好ましい。
【0070】
構内交換機6は、IP電話交換装置1aから、外線(指令台7)側の回線保留の応答を受けると、自装置における移動端末9との内線経路の切断処理を行い(S067)、アクセスポイント装置8経由で移動端末9に切断応答を送出する(S068、S069)。なお、構内交換機6は、緊急呼の内線経路を切断しても、緊急呼の外線経路の切断処理を実行せず、保持しておく。このようにしても、緊急呼に係る双方向のIPパケットを外線間で授受することはないので、問題が生じることはなく、むしろ、逆信指示時に、対応できるリソース(呼制御データなど)を確保できていて好ましい。
【0071】
上記では、緊急通報中の加入者から切断が指示された場合のシーケンスを説明したが、指令台7による切断指示の場合の動作は、IP電話システムにおける一般的な切断シーケンスとほぼ同様である。異なる点は、各種のデータベースで緊急通報に関係する情報がクリアされる点である。
【0072】
(A−2−5)緊急通報の回線保留時の新規発呼シーケンス
次に、図8を参照して、緊急通報について回線保留がなされている状態において、通報元の移動端末9から新規発呼があった際のシーケンスを説明する。
【0073】
移動端末9に対して新規発呼操作がなされると、移動端末9から、アクセスポイント装置8経由で構内交換機6に新規発呼が通知される(S070、S071)。構内交換機6は、緊急通報格納部6aを参照することにより、回線保留状態における第3者への発呼であることを認識して強制的に指令台7に接続することに決定し(S072)、当該構内交換機6を扱うIP電話交換装置1aに対してVoIPシグナリングプロトコルを適用した発呼要求を行う(S073)。
【0074】
このとき、IP電話交換装置1aは、呼処理DB2aにおける構内交換機6の呼状態(緊急通報状態)を参照する(S074、S075)。緊急呼が保留した状態で発呼要求が行われたので、構内交換機6の緊急通報状態が「保留中」であり(S076)、そのため、IP電話交換装置1aは、通報者からの新規呼を発生させてはならず、構内交換機6を保留中の指令台7に接続させる処理を行う。すなわち、IP電話交換装置1aは、構内交換機6に対しては緊急呼の再確立を指示し(S077)、指令台7に対しては保留装置4との接続を構内交換機6との接続に切り替える指示を行い(S078)、保留装置4に対しては指令台7との接続を切断する指示を行う(S079)。このとき、構内交換機6は、緊急通報格納部6aの情報を緊急呼中に更新すると共に、当該構内交換機6内部での緊急呼経路を再確立させ(S080)、アクセスポイント装置8経由で接続応答を移動端末9に送出する(S081、S082)。
【0075】
これにより、移動端末9と指令台7との通話路(緊急呼の音声コネクション)が回復される(S083)。
【0076】
次に、IP電話交換装置1aは、加入者情報DB3と呼処理DB2aに対して、構内交換機6の電話番号と「緊急通報中」状態を渡すとともに、該当緊急通報の保留を実施していた保留装置4を特定する情報を削除することを要求する(S084、S087)。加入者情報DB3、呼処理DB2aはそれぞれ、管理している構内交換機6の状態を「緊急通報中」に設定すると共に保留装置4の情報を削除し(S085、S088)、応答を返却する(S086、S089)。
【0077】
以上のような処理により、緊急呼の保留状態において、加入者が、移動端末9から指令台7以外への新規発呼を行っても指令台7との通話状態に復帰するようになる。
【0078】
上記では、緊急通報について回線保留がなされている状態において、通報元の移動端末9から新規発呼があった際には、強制的に指令台7に接続する場合(第1のパターン)を示したが、これに代え、以下のようにしても良い。
【0079】
第2のパターン;発呼先の状態に関係なく、移動端末9にビジートーンを送出する。例えば、構内交換機6が、緊急通報格納部6aを参照することにより、回線保留状態における第3者への発呼であることを認識したときに、移動端末9にビジートーンを送出する。なお、このような場合のビジートーンの送出元が、IP電話交換装置1aなどの構内交換機以外の装置がなっても良い。
【0080】
第3のパターン;緊急通報について回線保留がなされている状態において、通報元の移動端末9から新規発呼があった際に、その新規発呼を該当する第3者(の電話端末)と接続させ、この呼の確立中に、指令台7のオペレータが逆信指示操作を行ったときに、第3者との呼を強制切断して、緊急呼を復帰させる。
【0081】
この第3のパターンについては、第2の実施形態の項で説明する。
【0082】
(A−2−6)緊急通報保留時の加入者への着呼シーケンス
次に、図9を参照して、構内交換機6が登録されているIP電話交換装置1aに、緊急通報保留中の加入者(構内交換機の代表電話番号)に対する第3者からの着呼要求があった場合のシーケンスを説明する。
【0083】
構内交換機6に対する着呼要求がIP電話交換装置1aに到達すると(S090)、IP電話交換装置1aは、構内交換機6の緊急通報状態を参照する(S091、S092)。
【0084】
緊急呼が保留されている状態で着呼要求が到達したので、構内交換機6の緊急通報状態が「保留中」であり(S093)、そのため、IP電話交換装置1aは、指令台7からの逆信による緊急呼の回復を優先できるようにするために、着呼要求を拒否して、構内交換機6が話中であるとして応答を返す(S094)。
【0085】
以上のように、保留状態の構内交換機6に対する着呼要求は、構内交換機6自体は切断されていても、話中を発呼元に返信し、指令台7からの逆信に直ちに対応できるようにしている。
【0086】
なお、このような話中応答を構内交換機6が行うものであっても良い。
【0087】
(A−2−7)緊急通報保留時の加入者への逆信シーケンス
次に、図10を参照して、指令台7から緊急通報保留中の加入者への逆信シーケンスを説明する。
【0088】
指令台7に対してオペレータが逆信指示を行うと、指令台7から逆信指示がIP電話交換装置1aになされる(S100)。この逆信指示は、指令台7が登録されているIP電話交換装置1bを経由して、IP電話網5内をルーティングされ、IP電話交換装置1aに到達するが、ルーティングについては通常の動作であるため、ここでは詳細を記載しない。同様に、指令台7への信号もIP電話網5内をルーティングされていくが、図10ではそのルーティング処理の記載を省略している。
【0089】
IP電話交換装置1aは、逆信指示が与えられると呼処理DB2aの呼状態を参照する(S101、S102)。IP電話交換装置1aは、構内交換機6(の代表電話番号)の緊急通報状態が「保留中」であるため、構内交換機6(従って移動端末9)と指令台7の通話を回復させる。まず、IP電話交換装置1aは、構内交換機6に対して発呼要求する(S103)。
【0090】
このとき、構内交換機6は、緊急通報格納部6aを参照することにより、緊急呼の内線側経路が切断されていることを確認し、移動端末9との緊急呼の内線経路を確立させるためのシグナリングの授受を行い(S104〜S108)、その後、IP電話交換装置1aに応答を返す(S109)。
【0091】
IP電話交換装置1aは、以上のようにして構内交換機6が応答すると(S109)、指令台7に対しては、保留装置4との接続を構内交換機6(の代表電話番号)との接続に切り替える指示を行い(S110)、保留装置4に対しては、指令台7との接続を切断する指示を行う(S111)。これにより、移動端末9と指令台7との緊急呼が回復される(S112)。
【0092】
ここで、通常の呼接続処理であれば付加サービスの契約条件を確認し、仮に、着信転送が契約されていればその設定された転送先に呼を接続するが、緊急呼の逆信であるため、付加サービスの契約条件に依らずに、発信先の構内交換機6(の代表電話番号)に着信させる。
【0093】
次に、IP電話交換装置1aは、加入者情報DB3と呼処理DB2aに対して、構内交換機6の代表電話番号と「緊急通報中」状態を渡すとともに、該当緊急通報の保留を実施していた保留装置4を特定する情報を削除することを要求する(S113、S116)。加入者情報DB3、呼処理DB2aはそれぞれ、管理している構内交換機6の状態を「緊急通報中」に設定すると共に保留装置4の情報を削除し(S114、S117)、応答を返却する(S115、S118)。
【0094】
その後、IP電話交換装置1aが指令台7に逆信処理終了を応答することでシーケンスが終了する(S119)。
【0095】
なお、以上のような逆信時においては、移動端末9が緊急通報時点とは異なるアクセスポイント装置8の管理エリアに存在することがあるが、移動端末9を収容しているアクセスポイント装置8の情報は、構内交換機6が把握しているので(止まり木チャネルによる)、逆信処理を、その時点のアクセスポイント装置8経由で行うことができる。緊急通報元の移動端末9に係るアクセスポイント装置8の情報も、各移動端末の収容装置の管理テーブルだけでなく、緊急通報格納部6aに格納するようにすることが好ましい。
【0096】
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態の緊急通報システムによれば、IP電話網に対しては代表電話番号だけが登録されている構内交換機の配下にある内線端末からの緊急通報に対しても、回線保留機能や逆信機能を適切に実現することができる。すなわち、内線端末に対して、IP電話網での電話番号を付与せず、内線番号だけを割り振っていても、緊急通報に係る回線保留機能や逆信機能を発揮させることができる。
【0097】
また、回線保留状態においても、構内交換機及び指令台間のリソース(呼制御データなど)を解放せずに保留するようにしたので、逆信にリソース不足によって応じられないようなことを未然に防止することができる。
【0098】
さらに、回線保留状態での移動端末からの第3者の新規発呼に対しては強制的に指令台に接続するようにしたので、又は、第3者の状態に関係なく、ビジートーンを返すようにしたので、逆信に対して確実に対応することができる。
【0099】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による緊急通報システムの第2の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0100】
第2の実施形態の緊急通報システムにおける網構成は第1の実施形態と同様であり、第2の実施形態は、上述したように(上記第3のパターン)、緊急通報について回線保留がなされている状態において、通報元の移動端末9から新規発呼があった際の処理が、第1の実施形態とは異なっている。
【0101】
すなわち、第2の実施形態では、緊急通報について回線保留がなされている状態において、通報元の移動端末9から新規発呼があった際に、その新規発呼を該当する第3者(の電話端末)と接続させ、この呼の確立中に、指令台7のオペレータが逆信指示操作を行ったときに、第3者との呼を強制切断して、緊急呼を復帰させる。
【0102】
この第2の実施形態においては、回線保留状態において、緊急通報元の移動端末9が第3者への新規発呼を行った場合には、第3者との通話路を確立させるが、この際の緊急通報元の移動端末9と第3者との通話路を確立させる際の呼処理シーケンスは、一般的なシーケンスと同様であるので、その説明は省略する。
【0103】
但し、構内交換機6の緊急通報格納部6aには、緊急通報元の移動端末9が第3者と通話中であることや、第3者の特定情報(例えば、電話番号やIPアドレス)の書き込みが実行される。第3者が外線の場合には、構内交換機6が複数の代表電話番号を有していることを要する。また、呼処理DB2aや加入者情報DB3に対し、第3者通話に係る第2の代表電話番号の登録加入者情報や契約加入者情報に関する書き込みもなされる。
【0104】
以下では、図11を参照して、回線保留状態で、しかも、緊急通報元の移動端末9と第3者とが通話中に、逆信指示が生じた場合のシーケンスを説明する。なお、図11は、第1の実施形態に係る図10に対応する図面である。また、図11では、図面の簡略化のためにアクセスポイント装置8を省略したが、移動端末9及び構内交換機6間の信号授受にアクセスポイント装置8が介在しているのは当然である。
【0105】
指令台7に対してオペレータが逆信指示を行うと、指令台7から逆信指示がIP電話交換装置1aになされる(S150)。
【0106】
IP電話交換装置1aは、逆信指示が与えられると、呼処理DB2aの呼状態を参照する(S151、S152)。IP電話交換装置1aは、構内交換機6(の緊急通報に係る代表電話番号)の緊急通報状態が「保留中」であるため、構内交換機6(従って移動端末9)と指令台7の通話を回復させるべく、構内交換機6に対して発呼要求する(S153)。
【0107】
このとき、構内交換機6は、緊急通報格納部6aを参照することにより、緊急通報元の移動端末9が第3者と通話中であることを認識する(S154)。そこで、構内交換機6は、移動端末9を緊急通報に係る代表電話番号に内部接続させると共に、移動端末9に接続している第3者との強制的切断(第2の代表電話番号の切断処理)を行う(S155、S156)。そして、構内交換機6は、IP電話交換装置1aに対して、ステップS153に対する応答を返す(S157)。
【0108】
IP電話交換装置1aは、以上のようにして構内交換機6が応答すると、指令台7に対しては、保留装置4との接続を構内交換機6(の代表電話番号)との接続に切り替える指示を行い(S158)、保留装置4に対しては、指令台7との接続を切断する指示を行う(S159)。これにより、移動端末9と指令台7との緊急呼が回復される(S160)。
【0109】
次に、IP電話交換装置1aは、加入者情報DB3と呼処理DB2aに対して、構内交換機6の代表電話番号と「緊急通報中」状態を渡すとともに、該当緊急通報の保留を実施していた保留装置4を特定する情報を削除することを要求する(S161、S164)。加入者情報DB3、呼処理DB2aはそれぞれ、管理している構内交換機6の状態を「緊急通報中」に設定すると共に保留装置4の情報を削除し(S162、S165)、応答を返却する(S163、S166)。
【0110】
その後、IP電話交換装置1aが指令台7に逆信処理終了を応答することでシーケンスが終了する(S167)。
【0111】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態とほぼ同様な効果に加え、緊急通報元の移動端末は、回線保留状態でも第3者と通話し得るという効果を奏することができる。
【0112】
(C)他の実施形態
上記各実施形態の説明においても、種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0113】
上記各実施形態では、保留装置を利用して回線保留状態にするものを示したが、保留装置を用いずに、構内交換機の機能を利用して回線保留状態を実現するようにしても良い。構内交換機の場合、内線構成と、外線構成とを有するが、移動端末からの切断要求に対し、内線構成だけの切断処理を行い、外線構成に対する切断処理を実行せずに、回線保留状態を形成させるようにしても良い。
【0114】
上記各実施形態での加入者情報DBは複数のサーバで構成しても良い。また、呼処理DBとIP電話交換装置は物理的に同一のサーバで構成しても良い。呼処理DBのデータは、IP電話交換装置のリブート後は、IP電話交換装置のメインメモリ上にあっても良く、逐一加入者情報DBをアクセスする形態でも良い。上記実施形態では、加入者情報DBと呼処理DBとが別個のものを示したが、上述した加入者情報DBと呼処理DBとの機能を発揮できるならば、同一のデータベースであっても良い。
【0115】
上記各実施形態においては、他人のなりすましを考慮し、各種データベースにおける加入者を特定する情報として、電話番号とIPアドレスとの組み合わせを用いるものを示したが、他の情報を、加入者を特定する情報として用いても良いことは勿論である。例えば、SIP−URIとIPアドレスとの組み合わせを用いるようにしても良い。
【0116】
構内交換機のIP電話網への接続に際して実行される、IPアドレスの付与については、DHCPやPPPなど、その実現手段は問われない。
【0117】
上記各実施形態の説明は、IP電話網5での呼制御プロトコルがSIPであるイメージで行ったが、呼制御プロトコルはSIPに限定されるものではなく、MGCPなどの他のプロトコルを適用したものであっても良い。
【0118】
上記実施形態では、内線端末が無線端末であるものを示したが、有線端末の場合にも本発明を適用することができる。
【0119】
また、本発明は網がIP電話網である場合に好適なものであるが、他の公衆網であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】第1の実施形態の緊急通報システムの網構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態の呼処理データベースの管理情報の構成例を示す説明図である。
【図3】第1の実施形態の加入者情報データベースの管理情報の構成例を示す説明図である。
【図4】第1の実施形態の構内交換機をIP電話網へ登録する動作を示すシーケンス図である。
【図5】第1の実施形態の移動端末を構内交換機へ登録する動作を示すシーケンス図である。
【図6】第1の実施形態の加入者が緊急通報を発呼した際の動作を示すシーケンス図である。
【図7】第1の実施形態の緊急通報加入者からの切断動作を示すシーケンス図である。
【図8】第1の実施形態の緊急通報保留中の加入者からの新規発呼動作を示すシーケンスを説明する。
【図9】第1の実施形態の緊急通報保留中の加入者に対する第3者からの着呼要求時動作を示すシーケンス図である。
【図10】第1の実施形態の緊急通報保留中の加入者に対する逆信動作を示すシーケンス図である。
【図11】第2の実施形態の緊急通報保留中かつ第3者と通話中の加入者に対する逆信動作を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0121】
1、1a、1b…IP電話交換装置、2、2a、2b…呼処理データベース(呼処理DB)、3…加入者情報データベース(加入者情報DB)、4…保留装置、5…IP電話網、6…構内交換機、7…指令台、8…アクセスポイント装置、9…移動端末(内線端末)。
【技術分野】
【0001】
本発明は緊急通報システムに関し、例えば、構内交換機(PBX)に収容された移動端末からの緊急通報にも対応しようとしたものである。
【背景技術】
【0002】
電話サービスの一つとして、犯罪通報、火災通報、事故通報、救急など緊急性を要する場合に利用される緊急通報サービス(以下、単に、緊急通報と呼ぶ)がある。緊急通報では、緊急通報受理機関(例えば、警察署、消防署、海上保安庁など)側から呼を終了しない限り、通報者から切断した場合でも、呼を維持する必要がある(回線保留)。また、通報者が切断して移行した回線保留中にも、緊急通報受理機関側から呼び出すことができなくてはならない(逆信)。
【0003】
構内交換機を含む電話交換システムにおける、上述した回線保留機能や逆信機能については、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平02−228865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の固定電話システムでは、呼に対して物理的(電気的)に回線を割り当てていたため、回線を保留することは容易であった。
【0005】
しかし、構内交換機は、異なる位置に配置される複数の内線端末を収容しているため、従来、緊急通報受理機関に通知される電話番号は、構内交換機に登録されている代表の電話番号のみである。そのため、緊急通報受理機関側で、犯罪発生場所、火災発生場所、事故発生場所などを、電話番号から小さい範囲に特定しても、内線端末の位置によっては正しくないことが生じる。
【0006】
そのため、緊急通報元の内線端末の電話番号を緊急通報受理機関に通知することも考えられる。しかしながら、構内交換機に接続されている内線端末の電話番号は、従来の固定電話のような市外局番や市内局番などから構成される位置に依存した電話番号ではなく、内線番号などが単に割り当てられているものである。そのため、緊急通報受理機関にその内線番号を通知するようにしても、位置特定には機能しない。
【0007】
また、構内交換機に接続される内線端末としては、有線を介して接続される一般電話(アナログ電話機、ISDN電話機など)の他に、無線を介して接続される無線端末(PHS端末など)がある。無線端末は、位置を変えて利用できる。通報者が無線端末から緊急通報受理機関へ通報し、その後、通報者側が切断して移行した回線保留中に位置を変えることもあり得る。このような無線端末の位置変更後に、緊急通報受理機関側から逆信しても、構内交換機の機能によっては、通報者の位置変更により、逆信に適用し得ないことも生じる。
【0008】
そのため、構内交換機配下の内線端末からの緊急通報に対しても、回線保留機能や逆信機能を適切に実現できる緊急通報システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、本発明は、構内交換機が、公衆網を介して、緊急通報を受け付ける緊急通報受理機関の指令台に接続可能な緊急通報システムにおいて、上記構内交換機が、内線端末からの緊急通報を、当該構内交換機の代表電話番号の外線によって上記公衆網に送出する緊急通報送出部と、緊急通報元の内線端末の特定情報とこの内線端末の緊急通報状態とを含む緊急通報情報を格納する緊急通報格納部と、緊急呼に対する上記内線端末からの切断要求に対し、少なくとも内線構成側の切断を行った回線保留状態にする回線保留移行部と、当該構内交換機の上記代表電話番号の外線を用いた、上記公衆網側からの逆信指示信号の受信時に、上記緊急通報格納部から、緊急通報元の内線端末を検索し、該当する移動端末に対して、呼接続の処理を行う逆信処理部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、公衆網に対しては代表電話番号だけが登録されている構内交換機の配下にある内線端末からの緊急通報に対しても、回線保留機能や逆信機能を適切に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による緊急通報システムの第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第1の実施形態の緊急通報システムは、IP電話網を介して、緊急通報受理機関(例えば、警察署、海上保安庁、消防署など)の緊急通報指令台(以下、指令台と略する)に通報を行うものである。
【0012】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態の緊急通報システム(IP電話システム)の網構成を示すブロック図である。
【0013】
図1において、IP電話網5は、IP電話サービスを提供する事業者(キャリア)が、その加入者に対してIP電話サービスを提供するための1又は複数のIP電話交換装置1と、IP電話交換装置1が電話サービスを提供するために利用する呼処理データベース(以下、呼処理DBと略する)2と、IP電話サービスの加入者情報を管理する加入者情報データベース(以下、加入者情報DBと略する)3と、IP電話網5内で回線保留機能を補助するための保留装置4とを有している。
【0014】
第1の実施形態の緊急通話システムにおけるIP電話サービスの加入者は、構内交換機(PBX)6と、構内交換機6に接続されたアクセスポイント装置8と、アクセスポイント装置8経由で構内交換機6に収容される移動端末9とでなっている。このうち、構内交換機6がIP電話網5に接続される。
【0015】
また、緊急通報受理機関は指令台7をIP電話網5に接続しており、これにより、緊急通報を処理可能としている。
【0016】
アクセスポイント装置8及び移動端末9は、既存のものと同様な構成を有している。構内交換機6も、既存のものとほぼ同様な構成を有しているが、例えば、ソフトウェア的に実現する緊急通報機能部が既存のものから変更されている。
【0017】
ここで、移動端末9がIP網対応のものであっても良く、また、移動端末9はIP網対応ではないがアクセスポイント装置8からIP網対応になっているものでも良く、さらには、移動端末9及びアクセスポイント装置8はIP網対応ではないが構内交換機6の外線側処理部がIP網対応のものであっても良い。
【0018】
IP電話交換装置1は、ハードウェア構成は既存のものとほぼ同様であり、主として、ソフトウェアによって実現される呼処理の中に、緊急通報用の呼処理に対応する部分が追加されている。
【0019】
保留装置4は、詳細構成の図示は省略するが、IP電話機(ソフトフォンや、アナログ電話機とゲートウェイの組み合わせなどを含む概念である)などと同様な呼処理を実現できる構成を有するものであれば良い。保留装置4は、IP電話網5の中に1台でも複数台でも良い。後者の場合に、例えば、緊急通報の種別毎(「110」(警察署)、「118」(海上保安庁)、「119」(消防署)など)に設けられたものであっても良い。また、1台の保留装置4が、複数のIPアドレスや通信インタフェースなどを備えて、複数の回線に対する回線保留を同時に補助し得るものであっても良い。
【0020】
呼処理DB2及び加入者情報DB3は、外部装置からのアクセスが可能なデータベースとしての一般的な構成を有している。
【0021】
ここで、呼処理DB2は、IP電話交換装置1のそれぞれの台に1対1に対応するように設けられたものであっても良い。1対1対応の場合には、IP電話交換装置1と、呼処理DB2とが同一装置上に構成されたものであっても良く、また、専用線などによって直結されたものであっても良い。
【0022】
加入者情報DB3は、IP電話サービスを提供する事業者(キャリア)毎(言い換えると、IP電話網5毎)に1台だけ設けられていても良く、同一事業者に関するものであっても複数の加入者情報DB3がIP電話網5内に分散配置されたものであっても良い。
【0023】
指令台7は、モニタやキーボード(又は操作卓)などを備えたものであるが、機能的には、IP電話機とほぼ同様な呼処理機能を実現できるハードウェア構成及びソフトウェア構成を有している。指令台7は、機能的には、IP電話機と同様な機能に加え、音声接続先を切り替える機能と、逆信のための呼び出し信号を送出する機能とを有している。なお、図1では、指令台7がIP電話網5に直接接続されているものを示したが、指令台が現状の電話網対応のものであり、その指令台をIP電話網5にゲートウェイが接続制御するものであっても良い。言い換えると、現状の指令台とゲートウェイとの組合せが、図1に示した指令台7に該当していても良い。
【0024】
図2は、第1の実施形態の呼処理DB2の管理情報の構成例を示す説明図である。
【0025】
図2において、呼処理DB2は、呼処理に必要な登録加入者情報を管理しているものである。呼処理DB2は、登録動作を行ったある加入者についての登録加入者情報として、少なくとも、IP電話交換装置1で扱う加入者(IP電話機(構内交換機を含む))毎に、その加入者を識別するための情報としての電話番号とIPアドレスと、その加入者が緊急通報中かどうかを識別するための情報(緊急通報状態)と、回線保留中であれば保留のために接続している保留装置4を特定する情報(IPアドレスなど)と、その加入者が契約している付加サービス(例えば、転送、発信専用、番号非通知など)に関する情報とを管理している。
【0026】
なお、呼処理DB2で管理される登録加入者情報には、指令台7(緊急通報受理機関)に係る登録加入者情報も含まれている。呼処理DB2は、指令台7(緊急通報受理機関)に係る登録加入者情報を専用エリアで管理し、その書換えを実行できる保守者を制限できるものであることが好ましい。
【0027】
また、構内交換機については、登録加入者情報の電話番号の欄には、代表の電話番号が記述される。
【0028】
図3は、第1の実施形態の加入者情報DB3の管理情報の構成例を示す説明図である。
【0029】
図3において、加入者情報DB3は、IP電話網5で電話サービスを受けるように加入契約された加入者毎に、以下のような情報を管理しているものである。加入者情報DB3は、ある契約加入者についての情報として、少なくとも、その加入者を識別するための情報としての電話番号とIPアドレスと、緊急通報状態と、緊急通報中でかつ回線保留中であれば保留のために接続している保留装置4を特定する情報(IPアドレスなど)と、その加入者を現在扱っているIP電話交換装置1を特定する情報と、その加入者が契約している付加サービス(例えば、転送、発信専用、番号非通知など)に関する情報とを管理している。
【0030】
なお、加入者情報DB3で管理される契約加入者情報には、指令台7(緊急通報受理機関)に係る情報も含まれている。加入者情報DB3は、指令台7(緊急通報受理機関)に係る情報を専用エリアで管理し、その書換えを実行できる保守者を制限できるものであることが好ましい。
【0031】
また、構内交換機については、加入者情報DB3で管理される契約加入者情報の電話番号の欄には、代表の電話番号が記述される。なお、構内交換機が複数の代表番号を有する場合には、例えば、契約加入者情報がそれに応じた数だけ用意される。
【0032】
上述した呼処理DB2及び加入者情報DB3はそれぞれ、少なくともリブートや電源断などによっては保持している情報が消滅しない、不揮発性の記憶装置である。
【0033】
構内交換機6は、電源投入したりIP電話網5に接続したりすると、自装置に付与されているIPアドレスと代表電話番号をIP電話網5に送信し、IP電話交換装置1へ登録を依頼し、IP電話交換装置1からの登録成功応答を受信することで利用可能となるものである。なお、第1の実施形態は、IP網でのVoIPシグナリングプロトコルはSIPプロトコルに限定されるものではないが、機能説明や以下の動作説明は、SIPプロトコルを考慮して記述している。
【0034】
構内交換機6は、収容する移動端末9から緊急通報があった場合には、その緊急通報の特番と移動端末9の特定情報(内線番号やIPアドレス若しくはMACアドレスなど)と緊急通報状態を対応付けて緊急通報格納部6aに格納し、IP網5側には、代表電話番号回線から緊急通報を行う機能と、回線保留時の逆信指令がIP網5側から与えられたときに、緊急通報格納部6aに収容されている移動端末9の内線番号に基づいてその移動端末9を収容しているアクセスポイント装置8を検索して内線呼を確立させる機能とを有している。
【0035】
IP電話交換装置1は、構内交換機6及び指令台7からの登録依頼を受信し、加入者情報DB3を検索し、同一電話番号を有する加入者が登録されていれば、加入者情報DB3の該当する加入者情報の領域に、一緒に受信したIPアドレスとIP電話交換装置1を特定するための情報とを登録すると共に、IP電話交換装置1が利用する呼処理DB2に、その加入者を識別するための情報としての電話番号とIPアドレスと、その加入者が契約している付加サービスに関する情報とを格納し、登録依頼元へ登録が成功した旨を通知する機能を有する。
【0036】
また、IP電話交換装置1は、加入者が緊急通報を発呼した場合には、加入者情報DB3から指令台7に関する情報を取得して指令台7を扱うIP電話交換装置1に接続する機能と、加入者情報DB3及び呼処理DB2の該当する加入者の緊急通報状態を「緊急通報中」に設定する機能とを有する。
【0037】
さらに、緊急通報中の加入者が切断した場合に、接続先の指令台7に対して接続先を保留装置4に変更するように指示する機能と、呼処理DB2及び加入者情報DB3の該当する加入者の緊急通報状態を「保留中」にし、接続した保留装置4を特定する情報を設定する機能とを有する。
【0038】
IP電話交換装置1は、緊急通報状態が「保留中」に通報者が新規発呼を行った場合、呼処理DB2に格納した保留装置4の情報に基づいて、保留装置4と指令台7との接続を通報者のIP電話機(構内交換機6を含む)と指令台7との接続に変更するように指示する機能と、呼処理DB2及び加入者情報DB3の該当する加入者の緊急通報状態を「緊急通報中」にし、接続した保留装置4に関する情報を削除する機能とを有する。
【0039】
IP電話交換装置1は、緊急通報状態が「保留中」に第3者から通報者に着信があった場合、通報者を話中としての処理を行う機能を有する。IP電話交換装置1は、緊急通報状態が「保留中」に指令台7から逆信指示があった場合、契約付加サービスに関わらず該通報者のIP電話機(構内交換機6を含む)を呼び出し、応答したら、呼処理DB2に格納した保留装置4の情報に基づいて、保留装置4と指令台7との接続を通報者のIP電話機(構内交換機6を含む)と指令台7との接続に変更するように指示する機能と、呼処理DB2及び加入者情報DB3の該当する加入者の緊急通報状態を「緊急通報中」にし、接続した保留装置4に関する情報を削除する機能とを有する。
【0040】
保留装置4は、指令台7との音声コネクションを保留するための相手として機能するものであり、IP電話交換装置1の指示により、指令台7との音声コネクションを確立したり、解放したりする機能を有する。
【0041】
なお、構内交換機6及び指令台7を含むIP電話網5に係る全てのリソースは、緊急通報に係るIPパケットを送信又は中継するときは、そのIPパケットの優先レベルのフラグやフィールドを最上位にする設定を行うようになされている。
【0042】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の緊急通報システムの動作を説明する。なお、加入者の構内交換機6と緊急通報受理機関の指令台7が加入者情報DB3に加入登録されており、指令台7は、IP電話交換装置1bに扱われるものとして既に登録済みで、構内交換機6は登録処理によりIP電話交換装置1aに登録されるものとする。また、IP電話交換装置1aが呼処理DB2aを、IP電話交換装置1bが呼処理DB2bを利用するものする。さらに、移動端末9(構内交換機6)から発呼された緊急通報は指令台7に着信するものとする。
【0043】
(A−2−1)構内交換機6のIP電話網5への登録シーケンス
まず、図4を参照して、構内交換機6のIP電話網5への登録シーケンスを説明する。
【0044】
構内交換機6のオペレータが、構内交換機6をIP電話網5に接続するか、若しくは、IP電話網5に接続された電源の切断された構内交換機6の電源を投入すると、構内交換機6からIP電話網5に対して、構内交換機6のIP電話網5への登録要求がVoIPシグナリングプロトコル(例えばSIP)により、少なくとも構内交換機6の代表電話番号とIPアドレスを伴って発行される(S001)。該要求は、IPアドレスの管理領域の関係から定まるIP電話交換装置1aが受信する。このとき、IP電話交換装置1aは、該要求が加入者からのものかを確認するために加入者情報DB3に対して、ステップS001で受信した情報と自装置を特定するための情報とを伴う確認要求を送出する(S002)。加入者情報DB3は、受信した電話番号に基づいて検索し、管理情報を確認する(S003)。
【0045】
加入者情報DB3は、受信した電話番号が自DBに未登録であれば加入者ではないものとみなし、ステップS002での確認要求にエラーで応答する(S004)。エラー応答を受信したIP電話交換装置1aは、構内交換機6が登録対象ではないものとして登録拒否で応える(S005)。
【0046】
これに対して、加入者情報DB3は、ステップS003の処理において、構内交換機6の電話番号が検索できれば(電話番号が登録されていれば)、該当する加入者情報の管理領域に受信した構内交換機6のIPアドレスと、構内交換機6を扱うことになったIP電話交換装置1aを特定するための情報を登録し(S006)、さらに、管理している加入者情報から該加入者が契約している付加サービスの情報を抽出して、ステップS002の確認要求の応答としてIP電話交換装置1aに返却する(S007)。IP電話交換装置1aは、構内交換機6から受信した電話番号とIPアドレス、及び、加入者情報DB3から受信した契約付加サービス情報を呼処理に用いるデータとして呼処理DB2aに登録指示する(S008)。要求を受けた呼処理DB2aは、受信したデータを登録する(S009)。そして、登録成功が、呼処理DB2aからIP電話交換装置1aへ、IP電話交換装置1aから構内交換機6へ通知されて、登録処理が完了する(S010、S011)。
【0047】
なお、上述したステップS006における加入者情報DB3でのデータ登録や、ステップS009における呼処理DB2aでのデータ登録では、登録対象データ以外のデータ領域は空(又は無意味なデータ)となっている。例えば、以上のような登録時点では、呼処理DB2aや加入者情報DB3のIPアドレスや緊急通報状態や保留装置特定情報は空となっている。
【0048】
以上の登録動作そのものは、呼処理DB2aや加入者情報DB3内の情報が異なっているが、既存のIP電話システムとほぼ同様である。
【0049】
(A−2−2)移動端末9の構内交換機6への登録シーケンス
次に、図5を参照して、移動端末9の構内交換機6への登録シーケンスを説明する。
【0050】
移動端末9が構内交換機6への接続動作を起動するか、若しくは、電源の切断された移動端末9の電源を投入すると、移動端末9の近傍のアクセスポイント装置8を経由して、内線番号やIPアドレスなどの移動端末9の特定情報を含む登録要求(通信可能状態への移行要求)が構内交換機6に与えられる(S020、S021)。構内交換機6では、収容対象の移動端末の特定情報を内蔵するデータベース(図示せず)で管理しており、登録要求を送出した移動端末8の情報がそのデータベースで管理されているかを確認する(S022)。
【0051】
登録要求を送出した移動端末9の情報が構内交換機6で管理されていなければ、アクセスポイント装置8経由で、登録拒否が移動端末9に返信される(S023、S024)。
【0052】
登録要求を送出した移動端末9の情報が構内交換機6で管理されていれば、構内交換機6は、登録要求を送出した移動端末9の特定情報やその移動端末9を現時点で収容しているアクセスポイント装置8の情報などを、内線端末の呼処理データベース(図示せず)などに設定した後(S025)、アクセスポイント装置8経由で、登録成功を移動端末9に返信する(S026、S027)。
【0053】
以上のような2種類の登録シーケンスによって、構内交換機6配下の移動端末8から、IP電話網5に係る指令台7への緊急通報が可能な状態となる。
【0054】
(A−2−3)緊急通報の発呼シーケンス
次に、図6を参照して、移動端末9からの緊急通報の発呼シーケンスを説明する。
【0055】
移動端末9に対してその所持者が緊急通報特番(例えば、「110」、「118」又は「119」)をダイヤルすると、緊急通報の発呼信号が、アクセスポイント装置8経由で構内交換機6に与えられる(S030、S031)。
【0056】
構内交換機6は、移動端末9が収容端末であることを確認すると、その緊急通報の特番と通報元の移動端末9の特定情報(内線番号やIPアドレス若しくはMACアドレスなど)とを対応付けて緊急通報格納部6aに格納した後(S032)、当該構内交換機6を扱うIP電話交換装置1aに対し、VoIPシグナリングプロトコルを適用した代表電話番号からの発呼を行う(S033)。
【0057】
このとき、IP電話交換装置1aは、接続先(指令台7)の情報を取得するために、加入者情報DB3に対して、ダイヤルされた緊急通報特番を添えて接続先情報の取得を要求する(S034)。加入者情報DB3は、指定された緊急通報特番を索引にして指令台7のIPアドレス(及び又は指令台7に付与されている電話番号)を取得し(S035)、IP電話交換装置1aに返却する(S036)。なお、指令台7には、構内交換機6の電話番号と同様な具体的な電話番号が割り当てられていてルーティングがなされるので、加入者情報DB3は、特番を指令台7に付与されている電話番号に変換することも行っている。
【0058】
図6では、上述のように、加入者情報DB3は、特番を指令台7に付与されている電話番号に変換する場合を示しているが、これに代え、IP電話交換装置1aに、緊急通報特番を指令台7の電話番号に変換するための情報を保持させておき、IP電話交換装置1aが、緊急通報特番を指令台7の電話番号に変換し、変換した電話番号を添えて接続先情報の取得を加入者情報DB3に要求するようにしても良い。
【0059】
IP電話交換装置1aは、上述のようにして、接続先(指令台7)の情報(IPアドレス及び又は電話番号)を取得すると、緊急通報を行うために、加入者情報DB3と呼処理DB2aに対して、構内交換機6の電話番号と「緊急通報中」状態を渡すことにより、緊急通報状態(「緊急通報中」)の設定を要求する(S037、S040)。加入者情報DB3、呼処理DB2aはそれぞれ、管理している構内交換機6(の代表電話番号)の状態を「緊急通報中」に設定し(S038、S041)、応答を返却する(S039、S042)。
【0060】
その後、IP電話交換装置1aが指令台7に対して接続を要求し、応答を受信することで、構内交換機6に応答を転送し、構内交換機6が内外線の音声コネクションの接続制御を行った後、アクセスポイント装置8経由で移動端末9に応答を転送することにより(S043〜S047)、移動端末9と指令台7での緊急呼が確立される(S048)。
【0061】
なお、指令台7への接続に係るシーケンスはVoIPシグナリングプロトコルによるものであるため、図6では概略のみを示し、詳細を示していない。例えば、ステップS043の宛先が指令台7であるため、指令台7を扱うことになっているIP電話交換装置1bを経由するが、通常のルーティングの範疇であることから、図6では詳細を示していない。
【0062】
また、構内交換機6及び移動端末9間の信号授受でも、アクノリッジ信号の返信など、細かいシーケンスがあるが、図6では、特徴が明らかになる程度の概略のみを示している(他のシーケンス図でも同様である)。
【0063】
(A−2−4)緊急呼の移動端末からの切断シーケンス
次に、図7を参照して、緊急通報中の移動端末9からの切断シーケンスを説明する。
【0064】
緊急呼が確立されている状態において通報元の移動端末9がオンフックされると、その移動端末9からアクセスポイント装置8経由で切断が構内交換機6に通知される(S50、S51)。
【0065】
構内交換機6は、緊急通報格納部6aを参照することにより、緊急呼に対する切断であるので、回線保留状態を緊急通報格納部6aに書き込んだ後(S052)、当該構内交換機6を扱うIP電話交換装置1aに対してVoIPシグナリングプロトコルを適用した切断要求を行う(S053)。
【0066】
このとき、IP電話交換装置1aは、呼処理DB2aにおける構内交換機6の呼状態(緊急通報状態)を参照する(S054、S055)。図7では、省略しているが、構内交換機6が、「緊急通報中」や「保留中」でなければ(緊急通報状態が「空」であれば)、一般的な切断シーケンスが実行される。
【0067】
緊急呼が確立している状態で切断要求が行われたので、構内交換機6の緊急通報状態が「緊急通報中」であり(S056)、IP電話交換装置1aは、通報者からは呼を終了させてはならないため、回線保留を行う処理に入る。IP電話交換装置1aは、指令台7側の接続を保持しなくてはならないため、指令台7を一時的に保留装置4と接続させることで指令台7側の接続を保留させる。すなわち、IP電話交換装置1aは、指令台7に対しては保留装置4との接続を指示し、保留装置4に対しては指令台7との接続を指示して、指令台7を保留装置4に接続させる(S057、S058)。これにより、構内交換機6側との通話コネクションは切断されるが、指令台7は保留装置4とのコネクションが残るため、逆信を行うことも可能である(S059)。
【0068】
次に、IP電話交換装置1aは、加入者情報DB3と呼処理DB2aに対して、構内交換機6の代表電話番号と「保留中」状態、及び該当緊急通報の保留を実施している保留装置4を特定する情報を渡して、緊急通報状態の設定を要求する(S060、S063)。加入者情報DB3、呼処理DB2aはそれぞれ、管理している構内交換機6の状態を「保留中」に設定すると共に保留装置4の特定情報を格納し(S061、S064)、応答を返却する(S062、S065)。
【0069】
IP電話交換装置1aは、両データベース3、2aからの更新の応答を受信すると、構内交換機6に切断処理終了を応答する(S066)。なお、IP電話交換装置1a自体は、緊急呼の音声コネクションの切断処理を実行せず、保持しておく。例えば、緊急呼に係る呼制御データなどをそのまま保持しておく。このようにしても、緊急呼に係る双方向のIPパケットが到来することはないので、問題が生じることはなく、むしろ、逆信指示時に、対応できるリソース(呼制御データなど)を確保できていて好ましい。
【0070】
構内交換機6は、IP電話交換装置1aから、外線(指令台7)側の回線保留の応答を受けると、自装置における移動端末9との内線経路の切断処理を行い(S067)、アクセスポイント装置8経由で移動端末9に切断応答を送出する(S068、S069)。なお、構内交換機6は、緊急呼の内線経路を切断しても、緊急呼の外線経路の切断処理を実行せず、保持しておく。このようにしても、緊急呼に係る双方向のIPパケットを外線間で授受することはないので、問題が生じることはなく、むしろ、逆信指示時に、対応できるリソース(呼制御データなど)を確保できていて好ましい。
【0071】
上記では、緊急通報中の加入者から切断が指示された場合のシーケンスを説明したが、指令台7による切断指示の場合の動作は、IP電話システムにおける一般的な切断シーケンスとほぼ同様である。異なる点は、各種のデータベースで緊急通報に関係する情報がクリアされる点である。
【0072】
(A−2−5)緊急通報の回線保留時の新規発呼シーケンス
次に、図8を参照して、緊急通報について回線保留がなされている状態において、通報元の移動端末9から新規発呼があった際のシーケンスを説明する。
【0073】
移動端末9に対して新規発呼操作がなされると、移動端末9から、アクセスポイント装置8経由で構内交換機6に新規発呼が通知される(S070、S071)。構内交換機6は、緊急通報格納部6aを参照することにより、回線保留状態における第3者への発呼であることを認識して強制的に指令台7に接続することに決定し(S072)、当該構内交換機6を扱うIP電話交換装置1aに対してVoIPシグナリングプロトコルを適用した発呼要求を行う(S073)。
【0074】
このとき、IP電話交換装置1aは、呼処理DB2aにおける構内交換機6の呼状態(緊急通報状態)を参照する(S074、S075)。緊急呼が保留した状態で発呼要求が行われたので、構内交換機6の緊急通報状態が「保留中」であり(S076)、そのため、IP電話交換装置1aは、通報者からの新規呼を発生させてはならず、構内交換機6を保留中の指令台7に接続させる処理を行う。すなわち、IP電話交換装置1aは、構内交換機6に対しては緊急呼の再確立を指示し(S077)、指令台7に対しては保留装置4との接続を構内交換機6との接続に切り替える指示を行い(S078)、保留装置4に対しては指令台7との接続を切断する指示を行う(S079)。このとき、構内交換機6は、緊急通報格納部6aの情報を緊急呼中に更新すると共に、当該構内交換機6内部での緊急呼経路を再確立させ(S080)、アクセスポイント装置8経由で接続応答を移動端末9に送出する(S081、S082)。
【0075】
これにより、移動端末9と指令台7との通話路(緊急呼の音声コネクション)が回復される(S083)。
【0076】
次に、IP電話交換装置1aは、加入者情報DB3と呼処理DB2aに対して、構内交換機6の電話番号と「緊急通報中」状態を渡すとともに、該当緊急通報の保留を実施していた保留装置4を特定する情報を削除することを要求する(S084、S087)。加入者情報DB3、呼処理DB2aはそれぞれ、管理している構内交換機6の状態を「緊急通報中」に設定すると共に保留装置4の情報を削除し(S085、S088)、応答を返却する(S086、S089)。
【0077】
以上のような処理により、緊急呼の保留状態において、加入者が、移動端末9から指令台7以外への新規発呼を行っても指令台7との通話状態に復帰するようになる。
【0078】
上記では、緊急通報について回線保留がなされている状態において、通報元の移動端末9から新規発呼があった際には、強制的に指令台7に接続する場合(第1のパターン)を示したが、これに代え、以下のようにしても良い。
【0079】
第2のパターン;発呼先の状態に関係なく、移動端末9にビジートーンを送出する。例えば、構内交換機6が、緊急通報格納部6aを参照することにより、回線保留状態における第3者への発呼であることを認識したときに、移動端末9にビジートーンを送出する。なお、このような場合のビジートーンの送出元が、IP電話交換装置1aなどの構内交換機以外の装置がなっても良い。
【0080】
第3のパターン;緊急通報について回線保留がなされている状態において、通報元の移動端末9から新規発呼があった際に、その新規発呼を該当する第3者(の電話端末)と接続させ、この呼の確立中に、指令台7のオペレータが逆信指示操作を行ったときに、第3者との呼を強制切断して、緊急呼を復帰させる。
【0081】
この第3のパターンについては、第2の実施形態の項で説明する。
【0082】
(A−2−6)緊急通報保留時の加入者への着呼シーケンス
次に、図9を参照して、構内交換機6が登録されているIP電話交換装置1aに、緊急通報保留中の加入者(構内交換機の代表電話番号)に対する第3者からの着呼要求があった場合のシーケンスを説明する。
【0083】
構内交換機6に対する着呼要求がIP電話交換装置1aに到達すると(S090)、IP電話交換装置1aは、構内交換機6の緊急通報状態を参照する(S091、S092)。
【0084】
緊急呼が保留されている状態で着呼要求が到達したので、構内交換機6の緊急通報状態が「保留中」であり(S093)、そのため、IP電話交換装置1aは、指令台7からの逆信による緊急呼の回復を優先できるようにするために、着呼要求を拒否して、構内交換機6が話中であるとして応答を返す(S094)。
【0085】
以上のように、保留状態の構内交換機6に対する着呼要求は、構内交換機6自体は切断されていても、話中を発呼元に返信し、指令台7からの逆信に直ちに対応できるようにしている。
【0086】
なお、このような話中応答を構内交換機6が行うものであっても良い。
【0087】
(A−2−7)緊急通報保留時の加入者への逆信シーケンス
次に、図10を参照して、指令台7から緊急通報保留中の加入者への逆信シーケンスを説明する。
【0088】
指令台7に対してオペレータが逆信指示を行うと、指令台7から逆信指示がIP電話交換装置1aになされる(S100)。この逆信指示は、指令台7が登録されているIP電話交換装置1bを経由して、IP電話網5内をルーティングされ、IP電話交換装置1aに到達するが、ルーティングについては通常の動作であるため、ここでは詳細を記載しない。同様に、指令台7への信号もIP電話網5内をルーティングされていくが、図10ではそのルーティング処理の記載を省略している。
【0089】
IP電話交換装置1aは、逆信指示が与えられると呼処理DB2aの呼状態を参照する(S101、S102)。IP電話交換装置1aは、構内交換機6(の代表電話番号)の緊急通報状態が「保留中」であるため、構内交換機6(従って移動端末9)と指令台7の通話を回復させる。まず、IP電話交換装置1aは、構内交換機6に対して発呼要求する(S103)。
【0090】
このとき、構内交換機6は、緊急通報格納部6aを参照することにより、緊急呼の内線側経路が切断されていることを確認し、移動端末9との緊急呼の内線経路を確立させるためのシグナリングの授受を行い(S104〜S108)、その後、IP電話交換装置1aに応答を返す(S109)。
【0091】
IP電話交換装置1aは、以上のようにして構内交換機6が応答すると(S109)、指令台7に対しては、保留装置4との接続を構内交換機6(の代表電話番号)との接続に切り替える指示を行い(S110)、保留装置4に対しては、指令台7との接続を切断する指示を行う(S111)。これにより、移動端末9と指令台7との緊急呼が回復される(S112)。
【0092】
ここで、通常の呼接続処理であれば付加サービスの契約条件を確認し、仮に、着信転送が契約されていればその設定された転送先に呼を接続するが、緊急呼の逆信であるため、付加サービスの契約条件に依らずに、発信先の構内交換機6(の代表電話番号)に着信させる。
【0093】
次に、IP電話交換装置1aは、加入者情報DB3と呼処理DB2aに対して、構内交換機6の代表電話番号と「緊急通報中」状態を渡すとともに、該当緊急通報の保留を実施していた保留装置4を特定する情報を削除することを要求する(S113、S116)。加入者情報DB3、呼処理DB2aはそれぞれ、管理している構内交換機6の状態を「緊急通報中」に設定すると共に保留装置4の情報を削除し(S114、S117)、応答を返却する(S115、S118)。
【0094】
その後、IP電話交換装置1aが指令台7に逆信処理終了を応答することでシーケンスが終了する(S119)。
【0095】
なお、以上のような逆信時においては、移動端末9が緊急通報時点とは異なるアクセスポイント装置8の管理エリアに存在することがあるが、移動端末9を収容しているアクセスポイント装置8の情報は、構内交換機6が把握しているので(止まり木チャネルによる)、逆信処理を、その時点のアクセスポイント装置8経由で行うことができる。緊急通報元の移動端末9に係るアクセスポイント装置8の情報も、各移動端末の収容装置の管理テーブルだけでなく、緊急通報格納部6aに格納するようにすることが好ましい。
【0096】
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態の緊急通報システムによれば、IP電話網に対しては代表電話番号だけが登録されている構内交換機の配下にある内線端末からの緊急通報に対しても、回線保留機能や逆信機能を適切に実現することができる。すなわち、内線端末に対して、IP電話網での電話番号を付与せず、内線番号だけを割り振っていても、緊急通報に係る回線保留機能や逆信機能を発揮させることができる。
【0097】
また、回線保留状態においても、構内交換機及び指令台間のリソース(呼制御データなど)を解放せずに保留するようにしたので、逆信にリソース不足によって応じられないようなことを未然に防止することができる。
【0098】
さらに、回線保留状態での移動端末からの第3者の新規発呼に対しては強制的に指令台に接続するようにしたので、又は、第3者の状態に関係なく、ビジートーンを返すようにしたので、逆信に対して確実に対応することができる。
【0099】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による緊急通報システムの第2の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0100】
第2の実施形態の緊急通報システムにおける網構成は第1の実施形態と同様であり、第2の実施形態は、上述したように(上記第3のパターン)、緊急通報について回線保留がなされている状態において、通報元の移動端末9から新規発呼があった際の処理が、第1の実施形態とは異なっている。
【0101】
すなわち、第2の実施形態では、緊急通報について回線保留がなされている状態において、通報元の移動端末9から新規発呼があった際に、その新規発呼を該当する第3者(の電話端末)と接続させ、この呼の確立中に、指令台7のオペレータが逆信指示操作を行ったときに、第3者との呼を強制切断して、緊急呼を復帰させる。
【0102】
この第2の実施形態においては、回線保留状態において、緊急通報元の移動端末9が第3者への新規発呼を行った場合には、第3者との通話路を確立させるが、この際の緊急通報元の移動端末9と第3者との通話路を確立させる際の呼処理シーケンスは、一般的なシーケンスと同様であるので、その説明は省略する。
【0103】
但し、構内交換機6の緊急通報格納部6aには、緊急通報元の移動端末9が第3者と通話中であることや、第3者の特定情報(例えば、電話番号やIPアドレス)の書き込みが実行される。第3者が外線の場合には、構内交換機6が複数の代表電話番号を有していることを要する。また、呼処理DB2aや加入者情報DB3に対し、第3者通話に係る第2の代表電話番号の登録加入者情報や契約加入者情報に関する書き込みもなされる。
【0104】
以下では、図11を参照して、回線保留状態で、しかも、緊急通報元の移動端末9と第3者とが通話中に、逆信指示が生じた場合のシーケンスを説明する。なお、図11は、第1の実施形態に係る図10に対応する図面である。また、図11では、図面の簡略化のためにアクセスポイント装置8を省略したが、移動端末9及び構内交換機6間の信号授受にアクセスポイント装置8が介在しているのは当然である。
【0105】
指令台7に対してオペレータが逆信指示を行うと、指令台7から逆信指示がIP電話交換装置1aになされる(S150)。
【0106】
IP電話交換装置1aは、逆信指示が与えられると、呼処理DB2aの呼状態を参照する(S151、S152)。IP電話交換装置1aは、構内交換機6(の緊急通報に係る代表電話番号)の緊急通報状態が「保留中」であるため、構内交換機6(従って移動端末9)と指令台7の通話を回復させるべく、構内交換機6に対して発呼要求する(S153)。
【0107】
このとき、構内交換機6は、緊急通報格納部6aを参照することにより、緊急通報元の移動端末9が第3者と通話中であることを認識する(S154)。そこで、構内交換機6は、移動端末9を緊急通報に係る代表電話番号に内部接続させると共に、移動端末9に接続している第3者との強制的切断(第2の代表電話番号の切断処理)を行う(S155、S156)。そして、構内交換機6は、IP電話交換装置1aに対して、ステップS153に対する応答を返す(S157)。
【0108】
IP電話交換装置1aは、以上のようにして構内交換機6が応答すると、指令台7に対しては、保留装置4との接続を構内交換機6(の代表電話番号)との接続に切り替える指示を行い(S158)、保留装置4に対しては、指令台7との接続を切断する指示を行う(S159)。これにより、移動端末9と指令台7との緊急呼が回復される(S160)。
【0109】
次に、IP電話交換装置1aは、加入者情報DB3と呼処理DB2aに対して、構内交換機6の代表電話番号と「緊急通報中」状態を渡すとともに、該当緊急通報の保留を実施していた保留装置4を特定する情報を削除することを要求する(S161、S164)。加入者情報DB3、呼処理DB2aはそれぞれ、管理している構内交換機6の状態を「緊急通報中」に設定すると共に保留装置4の情報を削除し(S162、S165)、応答を返却する(S163、S166)。
【0110】
その後、IP電話交換装置1aが指令台7に逆信処理終了を応答することでシーケンスが終了する(S167)。
【0111】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態とほぼ同様な効果に加え、緊急通報元の移動端末は、回線保留状態でも第3者と通話し得るという効果を奏することができる。
【0112】
(C)他の実施形態
上記各実施形態の説明においても、種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0113】
上記各実施形態では、保留装置を利用して回線保留状態にするものを示したが、保留装置を用いずに、構内交換機の機能を利用して回線保留状態を実現するようにしても良い。構内交換機の場合、内線構成と、外線構成とを有するが、移動端末からの切断要求に対し、内線構成だけの切断処理を行い、外線構成に対する切断処理を実行せずに、回線保留状態を形成させるようにしても良い。
【0114】
上記各実施形態での加入者情報DBは複数のサーバで構成しても良い。また、呼処理DBとIP電話交換装置は物理的に同一のサーバで構成しても良い。呼処理DBのデータは、IP電話交換装置のリブート後は、IP電話交換装置のメインメモリ上にあっても良く、逐一加入者情報DBをアクセスする形態でも良い。上記実施形態では、加入者情報DBと呼処理DBとが別個のものを示したが、上述した加入者情報DBと呼処理DBとの機能を発揮できるならば、同一のデータベースであっても良い。
【0115】
上記各実施形態においては、他人のなりすましを考慮し、各種データベースにおける加入者を特定する情報として、電話番号とIPアドレスとの組み合わせを用いるものを示したが、他の情報を、加入者を特定する情報として用いても良いことは勿論である。例えば、SIP−URIとIPアドレスとの組み合わせを用いるようにしても良い。
【0116】
構内交換機のIP電話網への接続に際して実行される、IPアドレスの付与については、DHCPやPPPなど、その実現手段は問われない。
【0117】
上記各実施形態の説明は、IP電話網5での呼制御プロトコルがSIPであるイメージで行ったが、呼制御プロトコルはSIPに限定されるものではなく、MGCPなどの他のプロトコルを適用したものであっても良い。
【0118】
上記実施形態では、内線端末が無線端末であるものを示したが、有線端末の場合にも本発明を適用することができる。
【0119】
また、本発明は網がIP電話網である場合に好適なものであるが、他の公衆網であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】第1の実施形態の緊急通報システムの網構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態の呼処理データベースの管理情報の構成例を示す説明図である。
【図3】第1の実施形態の加入者情報データベースの管理情報の構成例を示す説明図である。
【図4】第1の実施形態の構内交換機をIP電話網へ登録する動作を示すシーケンス図である。
【図5】第1の実施形態の移動端末を構内交換機へ登録する動作を示すシーケンス図である。
【図6】第1の実施形態の加入者が緊急通報を発呼した際の動作を示すシーケンス図である。
【図7】第1の実施形態の緊急通報加入者からの切断動作を示すシーケンス図である。
【図8】第1の実施形態の緊急通報保留中の加入者からの新規発呼動作を示すシーケンスを説明する。
【図9】第1の実施形態の緊急通報保留中の加入者に対する第3者からの着呼要求時動作を示すシーケンス図である。
【図10】第1の実施形態の緊急通報保留中の加入者に対する逆信動作を示すシーケンス図である。
【図11】第2の実施形態の緊急通報保留中かつ第3者と通話中の加入者に対する逆信動作を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0121】
1、1a、1b…IP電話交換装置、2、2a、2b…呼処理データベース(呼処理DB)、3…加入者情報データベース(加入者情報DB)、4…保留装置、5…IP電話網、6…構内交換機、7…指令台、8…アクセスポイント装置、9…移動端末(内線端末)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構内交換機が、公衆網を介して、緊急通報を受け付ける緊急通報受理機関の指令台に接続可能な緊急通報システムにおいて、
上記構内交換機は、
内線端末からの緊急通報を、当該構内交換機の代表電話番号の外線によって上記公衆網に送出する緊急通報送出部と、
緊急通報元の内線端末の特定情報とこの内線端末の緊急通報状態とを含む緊急通報情報を格納する緊急通報格納部と、
緊急呼に対する上記内線端末からの切断要求に対し、少なくとも内線構成側の切断を行った回線保留状態にする回線保留移行部と、
当該構内交換機の上記代表電話番号の外線を用いた、上記公衆網側からの逆信指示信号の受信時に、上記緊急通報格納部から、緊急通報元の内線端末を検索し、該当する移動端末に対して、呼接続の処理を行う逆信処理部とを備える
ことを特徴とする緊急通報システム。
【請求項2】
上記内線端末が、いずれかのアクセスポイント装置を介して上記構内交換機に収容される移動端末であり、
上記逆信処理部は、上記内線端末を管理エリア内に有する上記アクセスポイント装置を介して上記内線端末との呼接続の処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の緊急通報システム。
【請求項3】
上記回線保留移行部は、緊急呼に対する上記内線端末からの切断要求に対し、当該構内交換機の緊急通報に係る外線の接続状態を維持するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の緊急通報システム。
【請求項4】
内線端末の発呼に対する上記緊急通報格納部の参照により、回線保留状態における、緊急通報元の上記内線端末の新規発呼と認識したときに、上記指令台と強制的に接続させる回線保留時発呼処理部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緊急通報システム。
【請求項5】
内線端末の発呼に対する上記緊急通報格納部の参照により、回線保留状態における、緊急通報元の上記内線端末の新規発呼と認識したときに、上記内線端末にビジートーンを返信する回線保留時発呼処理部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緊急通報システム。
【請求項6】
内線端末の発呼に対する上記緊急通報格納部の参照により、回線保留状態における、緊急通報元の上記内線端末の新規発呼と認識したときに、発呼先への接続を実行させる回線保留時発呼処理部を有すると共に、
上記逆信処理部は、上記公衆網側からの逆信指示信号の受信時に、緊急通報元の上記内線端末が上記指令台以外との呼を確立しているときに強制的に切断させる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緊急通報システム。
【請求項1】
構内交換機が、公衆網を介して、緊急通報を受け付ける緊急通報受理機関の指令台に接続可能な緊急通報システムにおいて、
上記構内交換機は、
内線端末からの緊急通報を、当該構内交換機の代表電話番号の外線によって上記公衆網に送出する緊急通報送出部と、
緊急通報元の内線端末の特定情報とこの内線端末の緊急通報状態とを含む緊急通報情報を格納する緊急通報格納部と、
緊急呼に対する上記内線端末からの切断要求に対し、少なくとも内線構成側の切断を行った回線保留状態にする回線保留移行部と、
当該構内交換機の上記代表電話番号の外線を用いた、上記公衆網側からの逆信指示信号の受信時に、上記緊急通報格納部から、緊急通報元の内線端末を検索し、該当する移動端末に対して、呼接続の処理を行う逆信処理部とを備える
ことを特徴とする緊急通報システム。
【請求項2】
上記内線端末が、いずれかのアクセスポイント装置を介して上記構内交換機に収容される移動端末であり、
上記逆信処理部は、上記内線端末を管理エリア内に有する上記アクセスポイント装置を介して上記内線端末との呼接続の処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の緊急通報システム。
【請求項3】
上記回線保留移行部は、緊急呼に対する上記内線端末からの切断要求に対し、当該構内交換機の緊急通報に係る外線の接続状態を維持するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の緊急通報システム。
【請求項4】
内線端末の発呼に対する上記緊急通報格納部の参照により、回線保留状態における、緊急通報元の上記内線端末の新規発呼と認識したときに、上記指令台と強制的に接続させる回線保留時発呼処理部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緊急通報システム。
【請求項5】
内線端末の発呼に対する上記緊急通報格納部の参照により、回線保留状態における、緊急通報元の上記内線端末の新規発呼と認識したときに、上記内線端末にビジートーンを返信する回線保留時発呼処理部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緊急通報システム。
【請求項6】
内線端末の発呼に対する上記緊急通報格納部の参照により、回線保留状態における、緊急通報元の上記内線端末の新規発呼と認識したときに、発呼先への接続を実行させる回線保留時発呼処理部を有すると共に、
上記逆信処理部は、上記公衆網側からの逆信指示信号の受信時に、緊急通報元の上記内線端末が上記指令台以外との呼を確立しているときに強制的に切断させる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緊急通報システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−191474(P2006−191474A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2881(P2005−2881)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(595125421)沖通信システム株式会社 (131)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(595125421)沖通信システム株式会社 (131)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]