説明

緊急通報システム

【課題】居住者に負担をかけることなく、居住者の生命に係わるような異常が就寝中に生じた場合でも、それを検知して通報することを目的とする。
【解決手段】寝具上を複数の領域に分割し、各領域に重さを検知する感圧センサー2と温度を検知する温度センサー3とをそれぞれ設け、感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知している場合に、その領域にて温度センサー3が第二の値以上の温度を検知しているか否かを判定し、温度センサー3が第二の値以上の温度を検知していないと判断した場合に、通報するようにしている。これにより、寝具上にかかる重さを検知することで居住者が就寝していることが判断され、重さを検知した領域の温度を検知することで居住者の体温が異常な状態であるかどうかが判断されるので、就寝中に居住者の体温が低下するといった居住者の生命に係わるような異常が生じた場合に、居住者に負担をかけることなく、通報することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者などが居住する住宅内における居住者の異常を検知して通報を発する緊急通報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、核家族化などの進行により、高齢者のみが居住する住宅が増えている。また、このような高齢者が居住する住宅を集めて、管理人室などにより管理する集合住宅が知られている。
【0003】
このような集合住宅において、赤外線センサーなどにより部屋内の居住者の動きを検知し、赤外線センサーによる検知ができない時間が所定時間以上になった場合に、居住者に異常があったと判断して警報を発するライフセキュリティシステムが知られている(例えば、特許文献1など)。
【特許文献1】特開昭61−279221号公報
【0004】
特許文献1に記載の技術は、赤外線センサーが居住者の動きを検知することができなくても、日常生活のタイムスケジュールのパターンに照らして就寝時刻である場合には、居住者に異常が生じていないと判断している。
【0005】
しかしながら、この特許文献1に記載の技術では、日常生活のタイムスケジュールのパターンとして就寝時刻である場合には、たとえ居住者の生命に係わるような異常が生じたときでも、それを検知して警報を発することができないという問題があった。
【0006】
ところで、居住者が心停止や脳卒中などの生命に係わるような状態になった場合に、脳波・体動センサー/送信器ユニットを居住者の手首に付けることで、睡眠中など居所が固定している時間帯でも居住者の状態を検知して警報を発することができる技術が知られている(例えば、特許文献2など)。
【特許文献2】特開2002−42277号公報
【0007】
しかしながら、この特許文献2に記載の技術では、居住者の手首にユニットを装着する必要があるので、居住者に負担をかけてしまうという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、居住者に負担をかけることなく、居住者の生命に係わるような異常が就寝中に生じた場合でも、それを検知して通報することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明では、寝具上を複数の領域に分割し、各領域に重さを検知する感圧センサーと温度を検知する温度センサーとをそれぞれ設け、感圧センサーが第一の値以上の重さを検知している場合に、感圧センサーが第一の値以上の重さを検知している領域にて温度センサーが第二の値以上の温度を検知しているか否かを判定し、温度センサーが第二の値以上の温度を検知していないと判断した場合に、通報するようにしている。
【0010】
また、本発明の他の態様によれば、寝具上を複数の領域に分割し、各領域に重さを検知する感圧センサーと温度を検知する温度センサーとをそれぞれ設け、感圧センサーが第一の値以上の重さを検知している場合に、感圧センサーが第一の値以上の重さを検知している領域にて温度センサーが第二の値以上の温度を検知しているか否かを判定する。そして、温度センサーが第二の値以上の温度を検知したと判断した場合に、居住者が就寝していると判断し、その後、感圧センサーが第一の値以上の重さを検知している領域にて温度センサーが第二の値以上の温度を検知しているか否かを再度判定して、温度センサーが第二の値以上の温度を検知していないと判断したときに、通報するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明によれば、寝具上にかかる重さを検知することで居住者が就寝していることが判断され、重さを検知した領域の温度を検知することで居住者の体温が異常な状態であるかどうかが判断されるので、就寝中に居住者の体温が低下するといった居住者の生命に係わるような異常が生じた場合に、居住者に負担をかけることなく、それを検知して通報を行うことができる。
【0012】
また、本発明の他の態様によれば、感圧センサーが第一の値以上の重さを検知した場合に、第一の値以上の重さを検知している領域にて温度センサーが第二の値以上の温度を検知したときに居住者の就寝が判断されるので、居住者以外の物が寝具上に乗ったときに発生する誤報を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による緊急通報システムの構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態による緊急通報システムは、集合住宅内の各住戸に設けられる居室装置1と、管理人室などに設けられる管理室装置10とを備えて構成されている。また、居室装置1は、複数の感圧センサー2、複数の温度センサー3、居住者判定部4、体温判定部5、居室制御部6、居室インターフェース7を備えて構成されている。また、管理室装置10は、管理室制御部11、管理室インターフェース12、通報部13を備えて構成されている。
【0014】
感圧センサー2は、図2に示すように、ベッドのマットレスや敷布団などの上や下、内部の所定の位置に敷かれたシートAの平面を分割した複数の領域にそれぞれ設けられており、それぞれ重さを検知する。温度センサー3は、図2に示すように、シートAの平面を分割した複数の領域に対して、感圧センサー2に対応するように設けられており、温度を検知する。
【0015】
居住者判定部4は、全ての感圧センサー2を接続しており、感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知しているか否かを判定するものである。そして、感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知した場合に、居住者判定部4は、ベッドのマットレスや敷布団上に居住者が居ると判断する。ここで、居住者判定部4は、一部の感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知した場合でもベッドのマットレスや敷布団上に居住者が居ると判断する。また、第一の値は、居住者の体重などにより適宜設定することが好ましく、更に、感圧センサー2の数によっても異なる値となるものである。
【0016】
なお、感圧センサー2の数を増やすことで、居住者判定部4は、極一部の感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知した場合には、ベッドのマットレス上や敷布団上に居住者が居ないと判断するようにしても良い。すなわち、居住者以外の物がベッドのマットレス上や敷布団上に落下したような場合を除くことができる。
【0017】
体温判定部5は、全ての温度センサー3を接続しており、前述した居住者判定部4にて第一の値以上の重さを検知したと判断された感圧センサー2に対応する温度センサー3が第二の値以上の温度を検知しているか否かを判定する。ここで、第二の値は、温度センサー3とベッドのマットレス上や敷布団上に存在する居住者との間の距離や介在物(シーツなど)により適宜設定することが好ましく、更に、居住者の年齢や性別などによっても異なる値となるものである。
【0018】
居室制御部6は、居室装置1の各構成要素を制御するとともに、居住者判定部4にて第一の値以上の重さを検知したと判断された感圧センサー2に対応する温度センサー3が第二の値以上の温度を検知していないと体温判定部5が判断した場合に、通報信号を生成して出力する。ここで、通報信号は、ベッドのマットレス上や敷布団上に存在する居住者の体温が所定の値(第二の値とは異なるケースが多い)よりも低くなってしまったことを示すものである。また、通報信号は、通報を行った居室(または居住者)を特定するための識別信号を含んでいる。
【0019】
居室インターフェース7は、居室装置1と管理室装置10とを接続するためのものであり、居室制御部6から入力した通報信号を管理室装置10へ出力する。
【0020】
管理室制御部11は、管理室装置10の各構成要素を制御する。管理室インターフェース12は、管理室装置10と居室装置1とを接続するためのものであり、居室装置1から出力された通報信号を入力する。通報部13は、スピーカや表示ランプ、表示ディスプレイなどにより構成されており、通報信号に含まれる識別信号により特定される居室(または居住者)と異常が発生していることとを通報する。
【0021】
次に、本実施形態による緊急通報システムの動作及び就寝時通報方法を説明する。図3は、本実施形態による緊急通報システムの動作及び就寝時通報方法を示すフローチャートである。まず、居室装置1では、感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知したか否かを居住者判定部4により調べる(ステップS1)。感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知していないと居住者判定部4により判断した場合には(ステップS1にてNO)、ステップS1の処理に戻る。
【0022】
一方、感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知したと居住者判定部4により判断した場合には(ステップS1にてYES)、第一の値以上の重さを検知した感圧センサー2に対応する温度センサー3が第二の値以上の温度を検知しているか否かを体温判定部5にて調べる(ステップS2)。温度センサー3が第二の値以上の温度を検知していると体温判定部5にて判断した場合には(ステップS2にてYES)、居住者に異常が発生していないとして、ステップS1の処理に戻る。
【0023】
一方、温度センサー3が第二の値以上の温度を検知していないと体温判定部5にて判断した場合には(ステップS2にてNO)、居室制御部6は、居住者に異常が発生したとして通報信号を生成し、出力する。管理室装置10では、通報信号を入力したか否かを管理室制御部11にて調べる(ステップS4)。通報信号を入力していないと管理室制御部11にて判断した場合には(ステップS4にてNO)、ステップS4の処理に戻る。一方、通報信号を入力したと管理室制御部11にて判断した場合には(ステップS4にてYES)、管理室制御部11は、通報部13を動作させて居住者に異常が発生したことを通報する(ステップS5)。
【0024】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、寝具上を複数の領域に分割し、各領域に重さを検知する感圧センサー2と温度を検知する温度センサー3とをそれぞれ設け、感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知している場合に、感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知している領域にて温度センサー3が第二の値以上の温度を検知しているか否かを判定し、温度センサー3が第二の値以上の温度を検知していないと判断した場合に、通報するようにしている。
【0025】
これにより、寝具上にかかる重さを検知することで居住者が就寝していることが判断され、重さを検知した領域の温度を検知することで居住者の体温が異常な状態であるかどうかが判断されるので、就寝中に居住者の体温が低下するといった居住者の生命に係わるような異常が生じた場合に、居住者に負担をかけることなく、それを検知して通報することができる。
【0026】
なお、前述した実施形態では、感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知した場合に居住者が寝具上に居ると判断していたが、これに限定されない。例えば、感圧センサー2が第一の重さを最初に検知した時に温度センサーが第二の値以上の温度を検知している場合に居住者が寝具上に居ると判断するようにしても良い。
【0027】
具体的には、図4に示すように、就寝判定部8を居室装置1に設け、感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知していると居住者判定部4にて判断した場合に、感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知している領域にて温度センサー3が第二の値以上の温度を検知しているか否かを体温判定部5により判定し、温度センサー3が第二の値以上の温度を検知していると体温判定部5にて判断した場合に、居住者が就寝していると就寝判定部8にて判断する。そして、居住者が就寝していると就寝判定部8にて判断した場合に、居室制御部6は、感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知している領域にて温度センサー3が第二の値以上の温度を検知しているか否かを体温判定部5にて再度判定させる。この判定により、温度センサー3が第二の値以上の温度を検知していないと体温判定部5にて判断したときに、居室制御部6は通報信号を出力する。
【0028】
これにより、感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知した場合に、第一の値以上の重さを検知している領域にて温度センサー3が第二の値以上の温度を検知したときに居住者の就寝が判断されるので、居住者以外の物が寝具上に乗ったときに発生する誤報を防止することができる。
【0029】
また、前述した実施形態では、シートAに体温判定部5を設けているが、これに限定されない。例えば、寝具上を撮影可能なサーモグラフィーカメラを使用して、感圧センサー2が設けられた領域の温度を検知するようにしても良い。
【0030】
また、前述した実施形態では、感圧センサー2が第一の値以上の重さを検知しているか否か、温度センサー3が第二の値以上の温度を検知しているか否かなどの判定を居室装置1にて行っているが、これに限定されず、管理室装置10で行うようにしても良い。同様に、前述した実施形態では、通報部13を管理室装置10に設けているが、これに限定されず、居室装置1に設けるようにしても良い。
【0031】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態による緊急通報システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による緊急通報システムに使用されるセンサーの例を示す図である。
【図3】本実施形態の緊急通報システムの動作および就寝時通報方法を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態による緊急通報システムの変形例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0033】
1 居室装置
2 感圧センサー
3 温度センサー
4 居住者判定部
5 体温判定部
6 居室制御部
7 居室インターフェース
8 就寝判定部
10 管理室装置
11 管理室制御部
12 管理室インターフェース
13 通報部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝具上の所定の位置に敷かれており、前記寝具上の居住者が乗る平面を分割した複数の領域にそれぞれ設けられ、重さを検知する感圧センサーと、
前記複数の領域のそれぞれの温度を検知する温度センサーと、
前記感圧センサーが第一の値以上の重さを検知しているか否かを判定する居住者判定部と、
前記感圧センサーが前記第一の値以上の重さを検知していると前記居住者判定部にて判断した場合に、前記感圧センサーが前記第一の値以上の重さを検知している領域にて前記温度センサーが第二の値以上の温度を検知しているか否かを判定する体温判定部と、
前記温度センサーが前記第二の値以上の温度を検知していないと前記体温判定部にて判断した場合に、通報信号を出力する居室制御部と、
前記居室制御部から出力された前記通報信号を入力して通報を発する通報部と、
を備えた緊急通報システム。
【請求項2】
寝具上の所定の位置に敷かれており、前記寝具上の居住者が乗る平面を分割した複数の領域にそれぞれ設けられ、重さを検知する感圧センサーと、
前記複数の領域のそれぞれの温度を検知する温度センサーと、
前記感圧センサーが第一の値以上の重さを検知しているか否かを判定する居住者判定部と、
前記感圧センサーが前記第一の値以上の重さを検知していると前記居住者判定部にて判断した場合に、前記感圧センサーが前記第一の値以上の重さを検知している領域にて前記温度センサーが第二の値以上の温度を検知しているか否かを判定する体温判定部と、
前記温度センサーが前記第二の値以上の温度を検知していると前記体温判定部にて判断した場合に、前記居住者が就寝していると判断する就寝判定部と、
前記居住者が就寝していると前記就寝判定部にて判断した場合に、前記感圧センサーが前記第一の値以上の重さを検知している領域にて前記温度センサーが第二の値以上の温度を検知しているか否かを前記体温判定部にて再度判定させ、前記温度センサーが第二の値以上の温度を検知していないと前記体温判定部にて判断したときに、通報信号を出力する居室制御部と、
前記居室制御部から出力された前記通報信号を入力して通報を発する通報部と、
を備えた緊急通報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−157760(P2009−157760A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336869(P2007−336869)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(591253593)株式会社ケアコム (493)
【Fターム(参考)】