説明

緑化用植栽ユニット

【課題】本発明の課題は屋上等の緑化効果を向上せしめることにある。
【解決手段】下トレイ1に水または養液Wを充填し、上トレイ5には草木類Gと木本類Tとを植栽して葉の縮合面積を増大せしめ、吸水体15,25によって下トレイ1の水または養液Wを上トレイ5に吸い上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば屋上緑化に使用される緑化用植栽ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば屋上緑化用として、トレイに培地を敷設し、該培地に草本類を植栽したユニットが提供されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−61457号公報
【特許文献2】特開2006−204291号公報
【特許文献3】特開2006−296211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
屋上緑化の目的は、主として建物の冷却効果あるいは保温効果を向上せしめ、建物内の空調に要するエネルギーの節約を図ることにある。しかし草木類は葉が小型で葉面からの充分な水分蒸散が期待出来ず、冷却効果あるいは保温効果を充分向上させることが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、下トレイ1と、該下トレイ1の上側からスペーサー2を介して嵌着される上トレイ5とからなり、
該上トレイ5の中央部には木本類植栽用容器13を嵌着する嵌着孔6が設けられ、
該嵌着孔6の周囲には吸水体10を臨出せしめる複数個の臨出孔7が設けられ、
該上トレイ5の嵌着孔6には木本類植栽用容器13を嵌着し、該容器13には木本類Tを植栽し、
該容器13の周囲には草本類G植栽用の培地11を敷設し、該培地11に草本類Gを植栽し、
該下トレイ1には該上トレイ5の臨出孔7に臨出し、該培地11に接触する複数個の吸水体25を設置し、
該木本類植栽用容器13の底部からは該下トレイ1内に吸水体15を垂下するかまたは該底部に導水孔を開設し、該下トレイ1には水または養液Wを充填し、
該水または養液Wを該吸水体15,25によって吸い上げて該上トレイ5の木本類植栽用容器13と草本類植栽用培地11に供給するか、あるいは該容器には該導水孔から該水または養液を導入することによって供給する緑化用植栽ユニットPUを提供するものである。
通常該下トレイ1の周縁には、該緑化用植栽ユニットPUの複数個を縦および/または横に配列した場合に隣接する緑化用植栽ユニットPUの下トレイ1との間で水または養液Wを連通せしめる連通手段4が設けられている。そして該上トレイ5の嵌着孔6上には該木本類植栽用容器13を嵌着する嵌着筒8が取付けられていることが望ましく、該上トレイ5の木本類植栽用容器13と該容器13に植栽される木本類Tとの間には、該木本類Tの支持手段16が差設されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
該緑化用植栽ユニットPUにあっては、該上トレイ5の嵌着孔6に嵌着した容器13に葉が大型な木本類Tを植栽し、その周りの培地11に草本類Gを植栽するから、葉の総合面積が増加し、充分な水分蒸散が行われる。
上記木本類Tや草本類Gには下トレイ1に充填されている水あるいは養液Wは、吸水体15,25によって該木本類植栽用容器13や培地11に供給される(請求項1)。
【0007】
屋上緑化等の場合には、上記植栽ユニットPUを縦横に配列する。この場合には該植栽ユニットPUの下トレイ1に充填されている水や養液Wは、該下トレイ1の周縁に設けられている連通手段4によって隣接する植栽ユニットPUに流通する(請求項2)。
【0008】
該上トレイ5の嵌着孔6上に嵌着筒8を取付け、該嵌着筒8内に該木本類植栽用容器13を嵌着すると、該容器13が嵌着筒8によって安定に支持される(請求項3)。
【0009】
木本類Tは草本類Gに比べて重心が高いため、風等で倒れやすいので、該容器13との間に支持手段16を差設して倒れるのを防止する。そして該木本類Tに及ぼされる風等による外力は、該支持手段16を伝って該容器13、更に上トレイ5から下トレイ1へと分散される(請求項4)。
【0010】
〔効果〕
したがって本発明においては、冷却効果や保温効果の高い緑化が可能になり、建物空調に要するエネルギーが大巾に節減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施例を図1〜図5に示す。図1に示す下トレイ1は平面形状正方形であって中央部には環状のスペーサー2が設置されており、四周壁3,3,3,3にはそれぞれ連通手段としての通水切欠き部4,4,4,4が形成されている。
上記下トレイ1の内側に上側から嵌着される上トレイ5は該下トレイ1の平面形状に対応して平面形状正方形であり、該下トレイ1よりも一周り小さなサイズに設定されており、中央部には木本類植栽用容器13を嵌着する嵌着孔6が設けられ、該嵌着孔6の周囲(トレイ四隅)には吸水体25を臨出せしめる複数個(4個)の臨出孔7,7,7,7が設けられており、該嵌着孔6上には該木本類植栽用容器13を嵌着する嵌着筒8が取付けられている。即ち図3に示すように該嵌着筒8の下周縁には複数個の切欠き8Aが形成され、更に係止片9の複数個が差出されており、更に上周縁には係止突起9Aの複数個が差出されている。そして該上トレイ5の嵌着孔6の周縁には係止溝10Aを形成した係止具10の複数個が設けられており、該嵌着筒8を該上トレイ5の底面に載せ若干回転して該嵌着筒8の係止片9を該上トレイ5の嵌着孔6周縁の係止具10の係止溝10Aにそれぞれ係止せしめることによって、該嵌着筒8は該上トレイ5の嵌着孔6上に着脱可能に取付けられる。
【0012】
該下トレイ1の底面には円柱状の吸水体25が複数個(4個)載置される。該吸水体25は例えば多孔質セラミック、樹脂発泡体、あるいは該多孔質セラミックや樹脂発泡体をセメント、発泡性接着剤等で結着した結着体、セラミック粒子や樹脂粒子の焼結体等、またはポリエステル系の樹脂よりなる吸水シート等の吸水材料からなる。該吸水体25載置位置は該上トレイ5の臨出孔7,7,7,7に対応する位置とする。
【0013】
該上トレイ5の底面上には芝、セダム類、野草等の草本類Gを植栽した培地11が載置される。該培地11としてはヤシ繊維、麻繊維、パルプ、綿繊維等の植物繊維を材料としたマット、吸水性ゴム発泡体シート、セラミック発泡体シート等の吸水性のシートが使用され、中央部該上トレイ5の嵌着孔6に対応する位置に開孔12が設けられている。
【0014】
該上トレイ5の嵌着筒8の内側には木本類Tを植栽した木本類植栽用容器13が嵌着される。該木本類Tとしては、例えばアベリア、ツツジ、サツキ、クチナシ、コトネアスター、シャリンバイ、ジンチョウゲ、ナギイカダ、斑入りナワシログミ、ナンテン(オタフク・ササバ)、ヒイラギナンテン(冬咲き・ナリヒラ)、ヒサカキ、トキワマンサク、アカバナトキワマンサク、アセビ、レッドロビン、ツバキ、サザンカ、カクレミノ、ヤブコウジ、アメリカイワナンテン、ヒベリカム(ヒデコート・カリシナム)、ヒカゲツツジ、ゴモジュ、ニワデマリ、ハマヒサカキ、カンツバキ、カラタネオガタマ、ヒイラギモチ、サルココッカ、ミヤマシキミ、トキワレンゲ、マンリョウ、コニファー類、ヒメイチゴノキ、四川トキワガキ、ローズマリー等の常緑樹、アジサイ、ウツギ、オウバイ、コデマリ、シロヤマブキ、シモツケ、ニシキギ、バイカウツギ、ハギ、ボケ、レンゲツツジ、ミツバツツジ、コムラサキ、ムラサキシキブ、メギ、ユキヤナギ、レンギョウ、ニワフジ、ハクチョウゲ、ツクバネウツギ、コバノズイナ、トサミズキ、ヒュウガミズキ、ニワウメ、ハナズオウ、アブラチャン、ダンコウバイ、マンサク、ガクウツギ、ショウキウツギ、ブルーベリー、ムクゲ、アメリカザイフリボク、ホザキナナカマド等の落葉樹、アケビ、ムベ、イタビカズラ、カロライナジャスミン、スイカズラ、セイヨウキヅタ、ツルバラ、ツリガネカズラ、ツキヌキニンドウ、ツルアジサイ、ツルウメモドキ、アメリカツルマサキ、テイカカズラ、ナツヅタ、フユヅタ、ノウゼンカズラ、ハゴロモジャスミン、ビナンカズラ、フジ、常緑性クレマチス、クレマチス、ウンナンオウバイ、サッコウフジ、ナツユキカズラ、ハツユキカズラ、ウキツリボク、ツルハナナス、トラノツメ、イワガラミ、ツルニチニチソウ等の木性つる植物等がある。そして該木本類Tと該容器13との間には支持手段としてベルト16が差設され、該木本類Tが倒れないよう支持される。該ベルト16は4本の板部17,17,17,17を有し、中央には該木本類Tを通す通し孔18が設けられ、各板部17の末端には係止孔19が設けられており、該ベルト16の通し孔18に木本類Tの幹を通し、係止孔19を該嵌着筒8の係止突起9Aにそれぞれ係止する。
該容器13の下部には切欠き13Aの複数個が設けられており、更に該容器13内下部にはネットまたは防根シート14が張設されており、その上からは土壌、木粉、植物粉、セラミック粉等の人口土壌からなる培地Mが充填され、更に該容器13の切欠き13Aからは該容器13内の該培地Mに通じるシート状吸水体15が垂下される。
該容器13は該切欠き13Aの位置と該嵌着筒8の切欠き8Aの位置と合致するように該嵌着筒8内に嵌着される。
【0015】
上記植栽ユニットPUは例えば屋上緑化に使用する場合には、図4に示すように縦横に複数個配列される。そして図5に示すように隣接する該植栽ユニットPU相互の通水切欠き部4,4を合わせて断面コの字形の連結具20を該通水切欠き部4,4の下辺に嵌着することによって該植栽ユニットPU相互を連結し、周縁には見切り部材21の複数個が配置される。該見切り部材21は図1に示すように断面コの字形であり、外側の壁部には溢流口22の複数個が横並びに配列され、内側の壁部の中央部には通水切欠き部23が形成されており、両端には凹形隔壁24,24が設けられている。そして各植栽ユニットPUに接している見切り部材21の通水切欠き部23を該植栽ユニットPUの通水切欠き部4と合わせて該連結具20を下辺に嵌着することによって該見切り部材21を各植栽ユニットPUの側部に連結する。
【0016】
上記植栽ユニットPUの下トレイ1に水(雨水)または肥料、栄養剤、殺菌剤等を溶解した養液Wを充填する。該水または養液Wは吸水体15,25によって吸水されて草本類Gを植栽する培地11や木本類Tを植栽する培地Mに供給される。
図4に示すような複数個の植栽ユニットPUを縦横に配列した場合には、各植栽ユニットPUの下トレイ1に充填されている水または養液Wを通水切欠き部4を介して全体に流通させ、更に通水切欠き部4、23を介して見切り部材21に導入し、該見切り部材21から図4矢印に示すように溢流口22から溢流させる。該見切り部材21から溢流した水または養液Wは図示しない備蓄タンクに備蓄し、植栽ユニットPU配列へ循環させる。
【0017】
本発明は上記実施例のみに限定されるものではなく、連通手段としては通水切欠き部4に代えてバルブやサイホン等が使用されてもよく、また臨出孔7を有底でスリットや多数の孔を有するバケット状にし、バケット内に吸水体25を装着して、下トレイ1に充填された水または養液Wを該吸水体25により草本類Gが植栽される培地11に供給出来るようにしてもよい。
更に図6に示すように平面形状6角形の植栽ユニットPU、平面形状円形の植栽ユニットPU等が使用されてもよい。平面形状6角形の植栽ユニットPUを使用した場合には、図6に示すように種々の形状に配列することが出来る。
また植栽ユニットPU間の連結は連結具に代えてボルト−ナットを用いてもよく、この場合には該植栽ユニットPUの隣接する周壁間に防水のためのパッキンを介在させてもよい。更に木本類植栽用容器13の給水は吸水体によらず、該容器13底部に導水孔を設け、該導水孔を下トレイ1内の水または養液Wに浸漬して、該水または養液Wを該容器13内に導入してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の植栽ユニットは草本類のみならず、葉のサイズの大きい木本類を植栽するので、冷却効果、保温効果が大きく、建物の空調に要するエネルギーが大巾に節減出来るから、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1〜図5は本発明の一実施例を説明する図である。
【図1】植栽ユニット分解斜視図
【図2】植栽ユニット中央側断面図
【図3】嵌着筒取付け構造説明斜視図
【図4】植栽ユニット配列説明平面図
【図5】連通構造説明部分斜視図
【図6】他の実施例の植栽ユニット配列説明平面図
【符号の説明】
【0020】
1 下トレイ
5 上トレイ
8 嵌着筒
11、M 培地
13 木本類植栽用容器
20 連結具
21 見切り部材
W 水または養液
T 木本類
G 草本類
PU 植栽ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下トレイと、該下トレイの上側からスペーサーを介して嵌着される上トレイとからなり、
該上トレイの中央部には木本類植栽用容器を嵌着する嵌着孔が設けられ、
該嵌着孔の周囲には吸水体を臨出せしめる複数個の臨出孔が設けられ、
該上トレイの嵌着孔には木本類植栽用容器を嵌着し、該容器には木本類を植栽し、
該容器の周囲には草本類植栽用の培地を敷設し、該培地に草本類を植栽し、
該下トレイには該上トレイの臨出孔に臨出し、該培地に接触する複数個の吸水体を設置し、
該木本類植栽用容器の底部からは該下トレイ内に吸水体を垂下するかまたは該底部に導水孔を開設し、該下トレイには水または養液を充填し、
該水または養液を該吸水体によって吸い上げて該上トレイの木本類植栽用容器と草本類植栽用培地に供給するか、あるいは該容器には該導水孔から該水または養液を導入することによって供給することを特徴とする緑化用植栽ユニット。
【請求項2】
該下トレイの周縁には、該緑化用植栽ユニットの複数個を縦および/または横に配列した場合に隣接する緑化用植栽ユニットの下トレイとの間で水または養液を連通せしめる連通手段が設けられている請求項1に記載の緑化用植栽ユニット。
【請求項3】
該上トレイの嵌着孔上には該木本類植栽用容器を嵌着する嵌着筒が取付けられている請求項1または請求項2に記載の緑化用植栽ユニット。
【請求項4】
該上トレイの木本類植栽用容器と該容器に植栽される木本類との間には、該木本類の支持手段が差設されている請求項1〜請求項3のいづれか1項に記載の緑化用植栽ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−148560(P2008−148560A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336522(P2006−336522)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】