説明

緑化装置

【課題】本発明は、窓15を開けても遮光性を損なうことなく、植栽された植物17に触れることで生成されたさわやかな空気を居室内に取り込むことができる緑化装置11を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、緑化装置11として、植物17を掛止する掛止面12と、建造物13に取付ける取付面14とで柱状体を構成するものである。また、この緑化装置11の内部に植栽する植栽ベッド16を掛止する、というものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅やオフィスビル、高速道路の遮音板などの建造物に用いる緑化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術は、隣家との境界を明らかにするブロック塀に代わる手段として金網でフェンスを形成し、このフェンスに蔓植物を絡ませるものが提案されている。
【0003】
また、近年では地球環境の保全、特に都市部のヒートアイランド現象の抑制を目的としたものも多数、提案されている。
【0004】
これら従来技術について、図面を用いて説明する。
【0005】
図15に示すものは、ブロック塀に代わるフェンス1の強度を向上させるためのものであり、金網部分を立体トラス構造としたものである(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
次に図16に示すものは、パネル2を取付けたパネル支持装置3を複数積層し、蔓植物を絡ませて成長させるものである(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
最後に図17に示すものは、壁面緑化体4の一端5aを脱着可能とし、反対側の一端5bを軸として、開閉自在にしたものである(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2000−230352号公報
【特許文献2】特開2005−42338号公報
【特許文献3】特開2004−92157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術は、平面状のパネル支持装置を用いて窓を覆う構成となっており、外部からのブラインド性や日射の遮光性の向上を意図するものは多数存在するものの、例えば突き出し窓や滑り出し窓、片開き窓や回転窓等のように外部に押し出して開く回転式窓の開閉性に配慮したものはない。
【0009】
また、特許文献3には、引き違い窓の外部に、一端を脱着可能とし、反対側の一端を軸として、開閉自在にした壁面緑化体4を設けたものが記載されている。
【0010】
この壁面緑化体4を用いれば、建造物の窓が回転式窓であっても対応することも可能かと推察するが、壁面緑化体4を開けた場合、その開口部からの遮光ができず、また、窓を開けても、植栽された植物に触れた空気を居室内へ取り込むことができないという課題があった。
【0011】
しかも上記いずれの構成を用いても、壁面緑化を行おうとする壁面の面積に対して、同等以下の緑化面積しか得ることができないという課題を有していた。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、窓を開けても遮光性を損なうことなく、植栽された植物に触れることで生成されたさわやかな空気を居室内に取り込むことができる緑化装置を提供することを目的とするものである。
【0013】
さらに、本発明は、緑化装置を取付ける壁面面積よりも大きな面積の緑化を行うことで、緑化面積に対応して拡大する建ぺい率をより増大することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、植物を掛止する掛止面と、建造物に取付ける取付面とで柱状体を構成するものである。
【0015】
本構成とすることにより、回転式窓のように建造物外部側に回転しろを必要とする窓を用いた建造物であっても、日射の遮光性を確保したまま、窓を開けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、窓の開閉方式を問うことなく、日射の遮光を保ったまま窓を開けることで外気を導入することができる。
【0017】
しかも、窓の開口部近傍に植栽された植物の間を通ってくるさわやかな空気を居室内に取り込むことができるので、居室内におけるリフレッシュ効果も期待することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態は、植物を掛止する掛止面と、建造物に取付ける取付面とで柱状体の緑化装置を構成したものである。
【0019】
本構成とすることにより、壁面緑化による日射の調光(遮光や採光)を実現しながら、建造物に設けられた窓の開閉方式に係わらず、窓を開けることができる。
【0020】
その結果、植栽した植物に触れたさわやかな空気を居室内へ導くことができる。
【0021】
また、掛止面の柱状体内側に植物を植栽することで、居室から植栽した植物の手入れを行うことも可能となり、植物の手入れが容易にできるようになる。しかも、事故などで植栽ベッドが落下することがあったとしても、緑化装置内に落下することとなり、通行人へ植栽ベッドが当たるなどの2次的事故を防止することができる。
【0022】
また、柱状体の水平断面形状を三角形状とすることで、壁面緑化することが可能な面積を増加することができる。
【0023】
すなわち、壁面緑化を施す建造物の壁面に、例えば直角二等辺三角形の緑化装置を配設した場合、蔦などの蔓植物を絡ませることができる面積は約1.4倍となり、限られた空間をより有効に活用することができる。
【0024】
しかも、柱状体の水平断面形状を三角形状とした場合、太陽が東から西へ移動することにより生じる各緑化装置の影が、建造物へ落とす割合を少なくできる。
【0025】
次に、柱状体の取付面の反対側に装飾部材を設けることで、緑化装置の装飾性を向上することができる。
【0026】
その結果、取付ける建造物の雰囲気に適した装飾を施すことで、より建造物の美観性を高めることができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0028】
(実施例1)
図1に、建造物に対して本発明の緑化装置を用いた場合の概観図を、また図2に、その要部断面図を示す。
【0029】
図に示すように、11は緑化装置であり、植物を掛止する掛止面12と建造物13に相対する取付面14から成り立っている。
【0030】
これら緑化装置11は、図1中の要部拡大図や図2に示すように、建造物13に設けた各窓15を覆うように配置されている。
【0031】
本実施例1で使用する緑化装置11は、縦部材12a、横部材12bからなる格子で掛止面12を構成したものであり、掛止面12と取付面14とで構成した柱状体の緑化装置11内部に植栽した植栽ベッド16を配置している。
【0032】
このように、窓15の前に植栽した植栽ベッド16を配することで、建造物13に設けた居室(図示せず)内への日射を調光することができる。
【0033】
また、本構成とすることで、植栽ベッド16と建造物13の外壁面13a、および窓15と掛止面12で形成した開放空間11aを得ることができるので、本実施例1で示したような回転窓15aを採用した建造物13であっても、回転窓15aを全開することが可能となる。
【0034】
しかも、植栽ベッド16に植栽した植物17に触れた空気は、図2中矢印18aから18cで示す流れとなって居室内へと導かれる。その結果、緑が少ない都会にあっても、植物17が生成したさわやかな空気を得ることができ、そのさわやかな空気によるリフレッシュ効果を期待することができる。
【0035】
さらに、窓15を全開することができるため、居室から植栽した植物の手入れを行うことも可能となり、植物17の手入れが容易にできるので、例えば、遮光性を向上させたい場合には、植物17を増やしたり、逆に、植物17を間引くことで、採光性を向上するなど、細かな調光が可能となる。
【0036】
また、より高い遮光性を要求される場合には、図3に示すように、植栽ベッド16に植栽する植物を蔦などの蔓植物17aとし、この蔓植物17aを掛止面12に絡ませるとよい。
【0037】
この場合、蔓植物17aが生長して生い茂ることにより、居室に対する遮光性が向上する。
【0038】
しかも、本実施例1のように、緑化装置11の水平断面形状を三角形状とすることで、建造物13に緑化装置11を取付ける面積より大きな面積を緑化することができる。
【0039】
その一例として、水平断面形状を直角二等辺三角形とした場合、緑化装置11を建造物13に取付ける取付面14の面積1に対して、蔦などの蔓植物17aを絡ませることができる面積は約1.4となり、限られた空間をより有効に活用することができる。
【0040】
なお、水平断面形状を三角形状とすると、太陽が東から西へ移動することにより生じる各緑化装置11の影が、建造物13へ落とす割合を少なくできる。
【0041】
特に、全面ガラス張りのオフィスビルなどに本緑化装置11を設け、隣接する緑化装置11間の距離をとった場合、緑化装置を配していないガラス面に対する採光性を確保することができる。
【0042】
その結果、緑化面積に対応して拡大できる建ぺい率を上げることができ、ヒートアイランド現象の抑制にも役立てることができる。
【0043】
しかも、採光が必要な箇所に対する採光性を確保することもできる。
【0044】
特に、植栽ベッド16を緑化装置11の内部に設けることで、万一、何らかの要因により、植栽ベッド16が落下するような事故が発生しても、この緑化装置11の外部に植栽ベッド16が落下することがないので、通行人に怪我をさせることがないという効果を奏することができる。
【0045】
なお、他の実施例を図4、図5を用いて説明する。
【0046】
図4には窓15に片開き窓15bを用いた場合の実施例を、図5には、緑化装置19を構成する掛止面20を曲面にした場合の実施例を示している。
【0047】
図4からは、本発明の緑化装置11であれば、回転式の窓15の形状を問わないことが明らかである。
【0048】
また図5からは、掛止面20の形状を変更することで、緑化装置19を建造物13に取付ける際に必要となる取付面21の幅Wを抑制したり、植栽ベッド22の面積を大きくすることができることは明らかである。
【0049】
なお、図5における取付面21は、緑化装置19の掛止面20の端部どうしを接続して、緑化装置19の強度を向上させるために設けた補助部材12cを含む面で成り立っているが、掛止面20の端部を含み、緑化装置19が建造物13と対向する面であれば、補助部材12cの有無は特に問わない。
【0050】
さらに、従来の技術で対応していた、引き違い窓(図示せず)についても適用できることはいうまでもない。
【0051】
すなわち、これらの実施例から明らかなように、緑化装置11,19を柱状体とすることで、建造物13の外部に向かって開閉するさまざまな形態の窓15を用いても、取付けられた窓15を全開することができ、植物17,17aに触れたさわやかな空気を居室内へ取り込むことができる。
【0052】
しかも、掛止面12,20の形状を変更することで、植栽ベッド16,22の植栽面積を調整したり、掛止面12,20の面積そのものを増加させて、例えば蔓植物17aが絡まる緑化面積を増加することも可能である。
【0053】
(実施例2)
次に、図6を用いて、実施例2を説明する。
この実施例2は、実施例1とは異なり、植物30を植栽するポット31を掛止面32の外部に設けたものである。
【0054】
本構成は、開閉空間11bを回転窓15aが開閉するために必要な最小限のスペースとすることで、緑化装置33の外部への突き出しを抑制することができるというものである。
【0055】
なお、本構成を用いても、実施例1と同様、ポット31に植栽した植物30に触れたさわやかな空気を居室内へ取り込むことができるので、リフレッシュ効果を得ることができる。
【0056】
当然のことながら、植栽する植物は実施例1で説明した蔓植物17aを用いてもよい。
【0057】
(実施例3)
次に、図7を用いて、実施例3を説明する。
【0058】
本実施例は、緑化装置40の外部側先端部に、装飾部材41を設けたものである。
【0059】
すなわち、緑化装置40の先端部に美観性を向上するための装飾部材41として、断面形状が凸状の部材を設けたものである。
【0060】
この装飾部材41を設けることにより、遠目から建造物13を眺めた場合に、図8に示すように、建造物13の縦方向にストライプを施したようになり、建造物13に引き締まった感じを抱かせることが可能となる。
【0061】
なお、上記実施例1から3で説明した各構成要素は、本発明の意図する一部の実施例であり、同様の効果を得る形態であれば、その形状は問わない。
【0062】
特に、美観向上という観点で考えた場合、建造物が持つ雰囲気や、施主の意向により、様々に発展した形態が考えられる。
【0063】
(実施例4)
次に、図9から10を用いて、本発明に用いる植栽ベッドについて説明する。
【0064】
図9は、植栽ベッド16の三面図であり、植栽ベッド本体16aと導水管16bとの関係を分かりやすく示した図である。
【0065】
すなわち、図9に示すごとく、植栽ベッド16には植栽ベッド本体16aの底面に導水管16bが設けてある。
【0066】
この植栽ベッド16を図10に示すように、緑化装置11に掛止する。
【0067】
各植栽ベッド16には、建造物(図示せず)から延出した給水管45を設けてあり、この給水管45の先端に設けた散水管46から各植栽ベッドへと水分が与えられる。
【0068】
従って、屋外に設置しても植物(図示せず)の生長に必要な水分は供給されるため、植物が枯れることはない。
【0069】
また、雨が降り、必要以上の水(雨)が植栽ベッド16に入り込んだ場合でも、植栽ベッド16底部に設けた導水管16bから不要な水分を排出することができるため、水分過多による植物の根腐れの心配もない。
【0070】
なお本構成は、特に本発明の実施例1の形態、すなわち、緑化装置11内部に植栽ベッド16を配設する形態に適するものであり、植栽ベッド16の排水時に、緑化装置11から外部に水分が飛散することを抑制する効果が期待できる。
【0071】
また、図11に示すように、導水管16cの本数を増やすことで、植栽ベッド16各所より排水することが可能となり、効率よく排水することが可能となる。
【0072】
(実施例5)
次に、図12から図14を用いて、掛止面12の実施例について説明する。
【0073】
図12は、実施例1などの説明に用いた格子状の掛止面12である。
【0074】
本形状の特徴としては、風を通す面積が多く、また、日射を通す面積も大きいことから、居室へ導入する風の風量や、日射量の変化幅を大きく調整可能なところである。
【0075】
また、各縦部材12aと横部材12bの接合強度を強めることで、火災などの災害発生時に、窓15からの避難経路として活用することも期待できる。
【0076】
次に、図13には、目の細かな網目上の掛止面50が記載してある。
【0077】
本形状の特徴としては、植栽ベッド16やポット31の取付け位置を細かく調整することができる、というものである。
【0078】
また、蔦などの蔓植物を絡ませた場合、図12に示したものよりも目が細かいため、遮光性に優れた調光が可能となる。
【0079】
また、図14には、パンチングメタルを用いたものが記載してある。
【0080】
本形状の特徴としては、掛止面51全体の強度を向上することで、緑化装置を構成する柱となる部材の使用量を低減し、簡易な構成で緑化装置を実現することを期待するものである。
【0081】
なお、上記各実施例で説明した柱状体からなる緑化装置は、水平方向の断面積が同一である必要はなく、三角錐などのように全体として傾斜を持つものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、住宅やオフィスビル、高速道路の遮音板などの建造物に対する壁面緑化に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施例における緑化装置を設けた建造物の概観図
【図2】本発明の一実施例における緑化装置を設けた建造物の要部断面図
【図3】本発明の一実施例における緑化装置を設けた建造物の要部断面図
【図4】本発明の他の実施例における緑化装置を設けた建造物の要部断面図
【図5】本発明の他の実施例における緑化装置を設けた建造物の上面図
【図6】本発明の他の実施例における緑化装置を設けた建造物の要部断面図
【図7】本発明の他の実施例における緑化装置を設けた建造物の要部断面図
【図8】本発明の他の実施例における緑化装置を設けた建造物の正面図
【図9】本発明の一実施例における植栽ベッドの三面図
【図10】本発明の一実施例における植栽ベッドに対する給水状態を表す説明図
【図11】本発明の他の実施例における植栽ベッドの三面図
【図12】本発明の一実施例における緑化装置の掛止面の正面図
【図13】本発明の他の実施例における緑化装置の掛止面の正面図
【図14】本発明の他の実施例における緑化装置の掛止面の正面図
【図15】従来のフェンスを説明する断面図
【図16】従来の壁面緑化体を説明する詳細図
【図17】従来のパネル支持装置の組立を説明する斜視図
【符号の説明】
【0084】
11、19、33、40 緑化装置
12、20、32、50、51 掛止面
13 建造物
14、21 取付面
17、17a 植物
41 装飾部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を植栽する掛止面と、建造物に取付ける取付面とで柱状体を構成することを特徴とする緑化装置。
【請求項2】
前記掛止面の前記柱状体内側に植物を植栽することを特徴とする請求項1に記載の緑化装置。
【請求項3】
前記柱状体の水平断面形状を三角形状とすることを特徴とする請求項1または2に記載の緑化装置。
【請求項4】
前記柱状体の前記取付面の反対側に装飾部材を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の緑化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−262741(P2006−262741A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83108(P2005−83108)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】