説明

線状ペンテンニトリルの連続製造

1,3−ブタジエンおよびシアン化水素を1.6:1から1.1:1のモル比で使用する、キレート配位子を有する少なくとも1つのニッケル(0)触媒の存在下で1,3−ブタジエンを連続的にシアン化水素化するプロセスを記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル(0)触媒の存在下で1,3−ブタジエンを連続的にシアン化水素化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アジポニトリル(ナイロン生産における重要な中間体)は、1,3−ブタジエンの二重シアン化水素化により製造される。第一のシアン化水素化では、リン配位子で安定化されているニッケル(0)の存在下で、1,3−ブタジエンをシアン化水素と反応させてペンテンニトリルを得る。これは、線状3−ペンテンニトリルおよび分枝ペンテンニトリル(2−メチル−3−ブテンニトリル)から成る混合物を形成する。第二のプロセス段階では、その分枝ペンテンニトリルを一般には線状ペンテンニトリルに異性体化する。最後に、その3−ペンテンニトリルをルイス酸の存在下でシアン化水素化して、アジポニトリルを得る。
【0003】
ルイス酸の存在下でのペンテンニトリルへの1,3−ブタジエンのニッケル(0)触媒シアン化水素化、およびリン配位子により安定化されているニッケル(0)を利用する3−ペンテンニトリルへの2−メチル−3−ブテンニトリルの異性体化は、それ自体、公知である。
【0004】
ルイス酸の存在下でのペンテンニトリルへの1,3−ブタジエンのニッケル(0)触媒シアン化水素化も公知である。しかし、単座ホスファイト配位子で安定化されたニッケル(0)触媒を使用すると、結果として、アジポニトリルおよびメチルグルタロニトリルなどの線状および分枝ジニトリルの無差別形成が生じる(W.C.Seidel,C.A.Toleman; Annals of the New York Academy of Science、第415巻、Catalytic Transition Metal Hydrides、201から221頁、1983年)。
【0005】
工業プロセスの実施については、例えば、利用される原料のコストが製造コストの70%を一般に占めるので、個々のサブ段階の選択性は、経済的にも生態学的にも非常に有意である。公知のプロセスが、無差別な第一シアン化水素化にもかかわらず、85%を超える全選択性を達成し、そして工業的および経済的に実施することができる一つの理由は、ルイス酸不在の状態では、1,3−ブタジエンの第一シアン化水素化が、ペンテンニトリルのシアン化水素化段階で停止し、望ましくない分枝ペンテンニトリル異性体を望ましい線状異性体に転化させることができるからである。
【0006】
1,3−ブタジエンおよびシアン化水素からのペンテンニトリルの連続合成には、1,3−ブタジエンおよびシアン化水素を1:1のモル比で使用して、1,3−ブタジエンが再利用されないようにすると有利である。しかし、こうした方法では、経済的プロセスにとって望ましくないメチルグルタロニトリルの形成が多すぎることが判明した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の一つの目的は、メチルグルタロニトリルの形成を許容可能な程度に抑制することができる、1,3−ブタジエンをシアン化水素化するための単純で、選択的で、触媒保存的で、連続的なプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、キレート配位子を有する少なくとも1つのニッケル(0)触媒の存在下での1,3−ブタジエンの連続シアン化水素化プロセスにより達成される。本発明のプロセスでは、1,3−ブタジエンおよびシアン化水素が、1.6:1から1.1:1、好ましくは1.6:1から1.3:1のモル比で使用される。
【0009】
本発明によって、下に記載する配位子を有するニッケル(0)触媒を使用すると、過剰な1,3−ブタジエンがメチルグルタロニトリルの形成を抑制することが判明した。この発見は、大過剰の1,3−ブタジエンの使用が1,3−ブタジエン選択性不良を導くという、国際公開パンフレット第98/27054号の比較例1の教示とは正反対である。
【0010】
本発明のプロセスにおいて使用される触媒は、好ましくは、均質に溶解された触媒である。均質に溶解されたニッケル(0)触媒の使用が、特に好ましい。特に好ましいニッケル(0)触媒は、リンキレート配位子で安定化されている。
【0011】
キレート配位子は、好ましくは、特に、二座ホスファイト、ホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイト、およびホスフィナイトホスファイトから成る群より選択される。
【0012】
さらに好ましくは、キレート配位子は、一般式(I):
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、
11、X12、X13、X21、X22、X23は、各々、独立して、酸素または単結合であり;
11、R12は、各々、独立して、同じであるか異なる、別個のまたは架橋した有機基であり;
21、R22は、各々、独立して、同じであるか異なる、別個のまたは架橋した有機基であり;
Yは、架橋基である)
を有する。
【0015】
本発明に関連して、化合物Iは、前記の式の単一の化合物または異なる化合物の混合物である。
【0016】
好ましい実施形態において、X11、X12、X13、X21、X22、X23は、各々、酸素であり得る。こうした場合、架橋基Yは、ホスファイト基に結合している。
【0017】
もう一つの好ましい実施形態では、X11、X12およびX13によって取り囲まれたリン原子が、ホスホナイトの中心原子であるように、X11およびX12が、各々、酸素、ならびにX13が、単結合であってもよく;またはX11およびX13が、各々、酸素、ならびにX12が、単結合であってもよい。こうした場合、X21、X22およびX23によって取り囲まれたリン原子が、ホスファイト、ホスホナイト、ホスフィナイトまたはホスフィン、好ましくはホスホナイトの中心原子であり得るように、X21、X22およびX23が、各々、酸素であってもよく;またはX21およびX22が、各々、酸素、ならびにX23が、単結合であってもよく;またはX21およびX23が、各々、酸素、ならびにX22が、単結合であってもよく;またはX23が、酸素、ならびにX21およびX22が、各々単結合であってもよく;またはX21が、酸素、ならびにX22およびX23が、各々単結合であってもよく;またはX21、X22およびX23が、各々、単結合であってもよい。
【0018】
もう一つの好ましい実施形態では、X11、X12およびX13により取り囲まれたリン原子が、ホスホナイトの中心原子であるように、X13が、酸素、ならびにX11およびX12が、各々、単結合であってもよく;またはX11が、酸素、ならびにX12およびX13が、各々、単結合であってもよい。こうした場合、X21、X22およびX23により取り囲まれたリン原子が、ホスファイト、ホスフィナイトまたはホスフィン、好ましくはホスフィナイトの中心原子であるように、X21、X22およびX23が、各々、酸素であってもよく;またはX23が、酸素、ならびにX21およびX22が、各々、単結合であってもよく;またはX21が、酸素、ならびにX22およびX23が、各々、単結合であってもよく;またはX21、X22およびX23が、各々、単結合であってもよい。
【0019】
もう一つの好ましい実施形態では、X11、X12およびX13により取り囲まれたリン原子が、ホスフィンの中心原子であるように、X11、X12およびX13が、各々酸素であってもよい。こうした場合、X21、X22およびX23により取り囲まれたリン原子が、ホスファイトまたはホスフィン、好ましくはホスフィンの中心原子であり得るように、X21、X22およびX23が、各々、酸素であってもよく;またはX21、X22およびX23が、各々、単結合であってもよい。
【0020】
好ましくは、架橋基Yは、例えばC1〜C4−アルキル、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素)、ハロゲン化アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)によって置換されているか、非置換であるアリール基、好ましくはその芳香族環構造内に6から20の炭素原子を有する基、特に、ピロカテコール、ビス(フェノール)またはビス(ナフトール)である。
【0021】
11およびR12基は、各々、独立して、同じであるか異なる有機基であり得る。有利なR11およびR12基は、アリール基、好ましくは6から10の炭素原子を有するものであり、これらは、非置換であってもよいし、または特にC1〜C4−アルキル、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素)、ハロゲン化アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)もしくは非置換アリール基によって、一もしくは多置換されていてもよい。
【0022】
21およびR22基は、各々、独立して、同じであるか異なる有機基であり得る。有利なR21およびR22基は、アリール基、好ましくは6から10の炭素原子を有するものであり、これらは、非置換であってもよいし、または特にC1〜C4−アルキル、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素)、ハロゲン化アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)または非置換アリール基によって、一もしくは多置換されていてもよい。
【0023】
11およびR12基は、各々、別個であってもよいし、または架橋していてもよい。R21およびR22基は、各々、別個であってもよいし、または架橋していてもよい。R11、R12、R21およびR22基は、各々、別個であってもよいし;または2つが架橋しており、2つが別個であってもよいし;または4つすべてが、説明する様式で、架橋していてもよい。
【0024】
特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、米国特許第5,723,641号に明記されている式I、II、III、IVおよびVの化合物である。特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、米国特許第5,512,696号に明記されている式I、II、III、IV、V、VIおよびVIIの化合物、特に、その特許における実施例1から31で使用されている化合物である。特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、米国特許第5,821,378号に明記されている式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIVおよびXVの化合物、特に、その特許における実施例1から73で使用されている化合物である。
【0025】
特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、米国特許第5,512,695号に明記されている式I、II、III、IV、VおよびVIの化合物、特に、その特許における実施例1から6で使用されている化合物である。特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、米国特許第5,981,772号に明記されている式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIおよびXIVの化合物、特に、その特許における実施例1から66で使用されている化合物である。
【0026】
特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、米国特許第6,127,567号に明記されている化合物およびその特許における実施例1から29で使用されている化合物である。特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、米国特許第6,020,516号に明記されている式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IXおよびXの化合物、特に、その特許における実施例1から33で使用されているか化合物である。特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、米国特許第5,959,135号に明記されている化合物およびその特許における実施例1から13で使用されている化合物である。
【0027】
特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、米国特許第5,847,191に明記されている式I、IIおよびIIIの化合物である。特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、米国特許第5,523,453号に明記されている化合物、特にその特許において式1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21で説明されている化合物である。特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、国際公開パンフレット第01/14392号に明記されている化合物、好ましくは、そのパンフレットにおいて式V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XXI、XXII、XXIIIで説明されている化合物である。
【0028】
特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、国際公開パンフレット第98/27054号に明記されている化合物である。特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、国際公開パンフレット第99/13983号に明記されている化合物である。特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、国際公開パンフレット第99/64155号に明記されている化合物である。
【0029】
特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、ドイツ特許出願第100 380 37号に明記されている化合物である。特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、ドイツ特許出願第100 460 25号に明記されている化合物である。特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、ドイツ特許出願第101 502 85号に明記されている化合物である。
【0030】
特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、ドイツ特許出願第101 502 86号に明記されている化合物である。特に好ましい実施形態において、有用な化合物は、ドイツ特許出願第102 071 65号に明記されている化合物である。本発明のさらに特に好ましい実施形態において、有用なリンキレート配位子は、米国特許第2003/0100442号A1に明記されているものである。
【0031】
本発明のさらに特に好ましい実施形態において、有用なリンキレート配位子は、2003年10月30日のドイツ特許出願参照番号DE 103 50 999.2(この出願は、本出願より前の優先権主張日を有するが、本出願の優先権主張日において公開されていなかった)に明記されているものである。
【0032】
こうした化合物(I)およびそれらの製造は、それ自体、公知である。
【0033】
使用されるリン配位子は、化合物(I)を含む混合物であってもよい。
【0034】
シアン化水素化は、適切な場合には、追加の単座リン配位子の存在下で行ってもよい。これらの単座リン配位子は、好ましくは、ホスフィン、ホスファイト、ホスフィナイトおよびホスホナイトから成る群より選択される。
【0035】
これらの単座リン配位子は、好ましくは式(II):
【0036】
【化2】

を有する。
【0037】
本発明に関連して、化合物(II)は、単一の化合物であるか、または前記の式の異なる化合物の混合物である。
【0038】
本発明によると、X1、X2、X3は、各々、独立して、酸素または単結合である。X1、X2およびX3基のすべてが単結合であるとき、化合物(II)は、本明細書に明記するR1、R2およびR3の定義を有する式P(R123)のホスフィンである。
【0039】
1、X2およびX3基のうちの2つが単結合であり、1つが酸素であるとき、化合物IIは、下に明記するR1、R2およびR3の定義を有する式P(OR1)(R2)(R3)またはP(R1)(OR2)(R3)またはP(R1)(R2)(OR3)のホスフィナイトである。
【0040】
1、X2およびX3基のうちの1つが単結合であり、2つが酸素であるとき、化合物IIは、本明細書に明記するR1、R2およびR3の定義を有する式P(OR1)(OR2)(R3)またはP(R1)(OR2)(OR3)またはP(OR1)(R2)(OR3)のホスホナイトである。
【0041】
好ましい実施形態において、化合物IIが、有利には、下に明記するR1、R2およびR3の定義を有する式P(OR1)(OR2)(OR3)のホスファイトであるように、すべてのX1、X2およびX3基が、酸素でなければならない。
【0042】
本発明によると、R1、R2、R2は、各々、独立して、同じであるか異なる有機基である。R1、R2およびR3は、各々、独立して、アルキル基、好ましくは、1から10の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル)、アリール基(例えば、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、1−ナフチル、2−ナフチルまたはヒドロカルビル)、好ましくは、1から20の炭素原子を有するアリール基(例えば、1,1’−ビフェノール、1,1’−ビナフトール)である。R1、R2およびR3基は、互いに直接、すなわち中心リン原子によるばかりでなく、結合することができる。R1、R2およびR3基は、互いに直接結合していないほうが好ましい。
【0043】
好ましい実施形態において、R1、R2およびR3基は、フェニル、o−トリル、m−トリルおよびp−トリルから成る群より選択される基である。特に好ましい実施形態において、R1、R2およびR3基のうちの最大2つは、フェニル基でなければならない。
【0044】
もう一つの好ましい実施形態において、R1、R2およびR3基のうちの最大2つは、o−トリル基でなければならない。
【0045】
使用することができる特に好ましい化合物IIは、式IIa
【0046】
【化3】

【0047】
(式中、w、x、y、zは、各々、自然数であり、次の条件にあてはまる:
w+x+y+z=3、およびw、z2)
の化合物である。
【0048】
こうした化合物IIaは、例えば、(p−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(m−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(o−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(p−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(m−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)(p−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(p−トリル−O−)3P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、(o−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、(m−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(o−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)P、(m−トリル−O−)3P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)2P、(o−トリル−O−)2(m−トリル−O−)P、またはこうした化合物の混合物である。
【0049】
例えば、原油の蒸留処理において得られるような、m−クレゾールおよびp−クレゾールを特に2:1のモル比で含む混合物を、三塩化リンなどの三ハロゲン化リンと反応させることにより、(m−トリル−O−)3P、(m−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)2Pおよび(p−トリル−O−)3Pを含む混合物を得ることができる。
【0050】
もう一つの同様に好ましい実施形態において、リン配位子は、ドイツ特許公開第199 53 058号に詳細に記載されている、式IIb:
【0051】
【化4】

【0052】
(式中、
1: 芳香族基であって、その芳香族環構造にリン原子を連結する酸素原子に対してo位にC1〜C18−アルキル置換基を有する、またはその芳香族環構造にリン原子を連結する酸素原子に対してo位に芳香族置換基を有する、またはその芳香族環構造にリン原子を連結する酸素原子に対してo位に縮合芳香族環構造を有する芳香族基;
2: 芳香族基であって、その芳香族環構造にリン原子を連結する酸素原子に対してm位にC1〜C18−アルキル置換基を有し、またはその芳香族環構造にリン原子を連結する酸素原子に対してm位に芳香族置換基を有し、またはその芳香族環構造にリン原子を連結する酸素原子に対してm位に縮合芳香族環構造を有し、ならびにその芳香族環構造にリン原子を連結する酸素原子に対してo位に水素原子を有する芳香族基;
3: 芳香族基であって、その芳香族環構造にリン原子を連結する酸素原子に対してp位にC1〜C18−アルキル置換基を有し、またはその芳香族環構造にリン原子を連結する酸素原子に対してp位に芳香族置換基を有し、ならびにその芳香族環構造にリン原子を連結する酸素原子に対してo位に水素原子を有する芳香族基;
4: 芳香族基であって、その芳香族環構造にリン原子を連結する酸素原子に対してo、mおよびp位に、R1、R2およびR3について定義したもの以外の置換基を有し、その芳香族環構造にリン原子を連結する酸素原子に対してo位に水素原子を有する芳香族基;
x: 1または2;
y、z、p: 各々、独立して、0、1または2、但し、x+y+z+p=3)
のホスファイトである。
【0053】
式IIbの好ましいホスファイトは、ドイツ特許公開第199 53 058号から得ることができる。R1基は、有利には、o−トリル、o−エチルフェニル、o−n−プロピルフェニル、o−イソプロピルフェニル、o−n−ブチルフェニル、o−s−ブチルフェニル、o−t−ブチルフェニル、(o−フェニル)フェニルまたは1−ナフチル基であり得る。
【0054】
好ましいR2基は、m−トリル、m−メチルフェニル、m−n−プロピルフェニル、m−イソプロピルフェニル、m−n−ブチルフェニル、m−s−ブチルフェニル、m−t−ブチルフェニル、(m−フェニル)フェニルまたは2−ナフチル基である。
【0055】
有利なR3基は、p−トリル、p−エチルフェニル、p−n−プロピルフェニル、p−イソプロピルフェニル、p−n−ブチルフェニル、p−s−ブチルフェニル、p−t−ブチルフェニルまたは(p−フェニル)フェニル基である。
【0056】
4基は、好ましくは、フェニルである。pは、好ましくはゼロである。化合物IIbにおける添字x、y、zおよびpについては、以下の可能性がある:
【0057】
【表1】

【0058】
式IIbの好ましいホスファイトは、pがゼロであり、R1、R2およびR3が、各々、独立して、o−イソプロピルフェニル、m−トリルおよびp−トリルから選択され、R4が、フェニルであるものである。
【0059】
式IIbの特に好ましいホスファイトは、R1が、o−イソプロピルフェニル基であり、R2が、m−トリル基であり、R3が、p−トリル基であり、上の表に明記されている添字を有するものであり;R1が、o−トリル基であり、R2が、m−トリル基であり、R3が、p−トリル基であり、上の表に明記されている添字を有するものでもあり;加えて、R1が、1−ナフチル基であり、R2が、m−トリル基であり、R3が、p−トリル基であり、上の表に明記されている添字を有するものであり;R1が、o−トリル基であり、R2が、2−ナフチル基であり、R3が、p−トリル基であり、上の表に明記されている添字を有するものでもあり;最後に、R1が、o−イソプロピルフェニル基であり、R2が、2−ナフチル基であり、R3が、p−トリル基であり、上の表に明記されている添字を有するものであり;ならびにこれらのホスファイトの混合物でもある。
【0060】
式IIbのホスファイトは、
a)R1OH、R2OH、R3OHおよびR4OHまたはこれらの混合物から成る群より選択されるアルコールと三ハロゲン化リンを反応させて、ジハロ亜リン酸モノエステルを得る段階;
b)R1OH、R2OH、R3OHおよびR4OHまたはこれらの混合物から成る群より選択されるアルコールと前記ジハロ亜リン酸モノエステルを反応させて、モノハロ亜リン酸ジエステルを得る段階;ならびに
c)R1OH、R2OH、R3OHおよびR4OHまたはこれらの混合物から成る群より選択されるアルコールと前記モノハロ亜リン酸モノエステルを反応させて、式IIbのホスファイトを得る段階
によって得ることができる。
【0061】
この反応は、3つの別の段階で行うことができる。同様に、これら3つの段階のうちの2つ、すなわち、a)とb)またはb)とc)、を組み合わせることができる。あるいは、段階a)、b)およびc)のすべてを共に組み合わせることができる。
【0062】
1OH、R2OH、R3OHおよびR4OHまたはこれらの混合物から成る群より選択されるアルコールの適するパラメータおよび量は、二、三の簡単な予備実験により容易に決定することができる。
【0063】
有用な三ハロゲン化リンは、原則としてはすべての三ハロゲン化リンであり、好ましくは、使用されているハロゲンが、Cl、Br、I、特にCl、およびこれらの混合物である三ハロゲン化リンである。様々な同様にまたは別様にハロゲン置換されているホスフィンの混合物を三ハロゲン化リンとして使用することも可能である。PCl3が、特に好ましい。ホスファイトIIbの製造の際の反応条件およびその処理についてのさらなる詳細は、ドイツ特許公開第199 53 058号から得ることができる。
【0064】
ホスファイトIIbは、異なるホスファイトIIbの混合物の形態で配位子として使用することもできる。こうした混合物は、例えば、ホスファイトIIbの製造の際に得ることができる。
【0065】
本発明のプロセスの特に好ましい実施形態において、ニッケル(0)錯体の追加の単座リン配位子および/または追加の単座遊離リン配位子は、トリトリルホスファイトおよび式IIb:
【0066】
【化5】

【0067】
(式中、R1、R2およびR3は、各々、独立して、o−イソプロピルフェニル、m−トリルおよびp−トリルから選択され;R4は、フェニルであり;xは、1または2であり;y、z、pは、各々、独立して、0、1または2であるが、但し、x+y+z+p=3であることを条件とする)
のホスファイトならびにそれらの混合物から選択される。
【0068】
記載した化合物I、II、IIaおよびIIbならびにそれらの製造は、それ自体、公知である。式Iのキレート配位子または式Iの多数のキレート配位子の混合物に加えて、追加の単座リン配位子として、化合物II、IIaおよびIIbのうちの少なくとも2つを含む混合物を使用することもできる。
【0069】
シアン化水素化は、溶媒の存在下で行うことができ、または溶媒の不在下で行うことができる。溶媒を使用するとき、その溶媒は、液体でなければならず、ならびに所定の反応温度および所定の反応圧で不飽和化合物および少なくとも1つの触媒に対して不活性でなければならない。一般に、使用される溶媒は、炭化水素(例えば、ベンゼンもしくはキシレン)またはニトリル(例えば、アセトニトリルもしくはベンゾニトリル)である。しかし、配位子を溶媒として使用することが好ましい。加えて、多数の、例えば2つまたは3つの溶媒を使用することも可能である。
【0070】
本発明のプロセスで使用する触媒は、例えば、還元的触媒合成により製造することができる。このために、例えば米国特許第6,127,567号およびそこに引用されている参考文献ならびにまたBASF AGのドイツ特許出願第103 51 000.1号、同第103 51 002.8号および同第103 51 003.6号に記載されている、一般に知られているプロセスにより、ニッケル(II)源を配位子と反応させる。
【0071】
還元的ニッケル触媒合成の好ましい実施形態は、発明の名称「ニッケル(0)−リン配位子錯体の製造(Preparation of nickel(0)−phosphorus ligand complexes)」を有するBASF AGのドイツ特許出願第103 51 000.1号、(この特許出願は、本出願より前のの優先権主張日を有するが、本出願の優先権主張日において公開されていなかった)に記載されている。これによると、ニッケル(0)触媒は、少なくとも1つのリン配位子の存在下でニッケル(II)−エーテル付加体を還元することにより製造される。このプロセスに使用することができるニッケル(II)−エーテル付加体は、好ましくは、水にハロゲン化ニッケルを溶解し、適切な場合には攪拌しながらエーテルおよび有機ニトリルと混合し、その後、水および適切な場合にはエーテルを除去することにより製造される。このニッケル(II)−エーテル付加体は、好ましくは、無水物であり、好ましい実施形態では、ハロゲン化ニッケルを含む。有用なハロゲン化ニッケルは、塩化ニッケル、臭化ニッケルおよびヨウ化ニッケルである。塩化ニッケルが好ましい。
【0072】
使用されるニッケル(II)−エーテル付加体は、好ましくは、酸素含有エーテル、硫黄含有エーテル、または混合酸素/硫黄含有エーテルを含む。これは、好ましくは、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−s−エーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテルおよびトリエチレングリコールジアルキルエーテルから成る群より選択される。使用されるエチレングリコールジアルキルエーテルは、好ましくはエチレングリコールジメチルエーテル(1,2−ジメトキシエタン、グリム)およびエチレングリコールジエチルエーテルである。使用されるジエチレングリコールジアルキルエーテルは、好ましくは、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)である。使用されるトリエチレングリコールジアルキルエーテルは、好ましくは、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)である。
【0073】
ニッケル(0)錯体を製造するために使用される還元剤は、好ましくは、ニッケルより電気陽性度が高い金属、金属アルキル、電流、複合水素化物および水素から成る群より選択される。
【0074】
さらなる実施形態において、ニッケル(0)触媒は、発明の名称「ニッケル(0)−リン配位子錯体の製造(Preparation of nickel(0)−phosphorus ligand complexes)」を有するBASF AGのドイツ特許出願第103 51 002.8号、(この特許出願は、本出願より前のの優先権主張日を有するが、本出願の優先権主張日において公開されていなかった)に記載されている方法により製造することができる。この特許出願によると、ニッケル(0)錯体は、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケルまたはそれらの混合物を含むニッケル(II)源をリン配位子の存在下で還元することにより製造される。ニッケル(II)源は、好ましくは、前もって特別な乾燥を施さずに使用される。好ましくは、この製造は、有機ニトリル、芳香族もしくは脂肪族炭化水素またはそれらの混合物から成る群より選択される溶媒中で行われる。好ましくは、使用される還元剤は、ニッケルより電気陽性度が高い金属である。同様に、金属アルキル、電流、複合水素化物または水素を使用することもできる。
【0075】
加えて、本発明のプロセスで使用するニッケル(0)触媒は、発明の名称「共沸乾燥ハロゲン化ニッケル(II)の使用(Use of azeotropically dried nickel(II) halides)」を有するBASF AGのドイツ特許出願第103 51 003.6号、(この特許出願は、本出願より前のの優先権主張日を有するが、本出願の優先権主張日において公開されていなかった)に記載されている方法により製造することもできる。これによると、ニッケル(0)錯体は、共沸蒸留により乾燥させたハロゲン化ニッケル(II)水溶液を少なくとも1つのリン配位子の存在下で還元することによって製造される。ハロゲン化ニッケル(II)は、好ましくは、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)およびヨウ化ニッケル(II)から成る群より選択される。共沸蒸留により乾燥させたハロゲン化ニッケル(II)は、好ましくは、対応するハロゲン化ニッケル(II)水溶液から水を除去するプロセスにより製造され、このプロセスでは、その混合物を、沸点が水の沸点より高く、この水の沸点で液体形態で存在する希釈剤(前記希釈剤が、下で述べる蒸留の圧力条件下で水と共沸混合物を形成しない場合)、または下で述べる蒸留の圧力および温度条件下で水と共沸混合物もしくは異相共沸混合物を形成する希釈剤と混合し、前記ハロゲン化ニッケル(II)水溶液を含む混合物および前記希釈剤を蒸留し、この混合物から水または前記共沸混合物または前記異相共沸混合物を除去して、ハロゲン化ニッケル(II)および前記希釈剤を含む無水混合物を得る。好ましくは、希釈剤は、少なくとも1つのニトリル基を有する有機希釈剤である。対応するニッケル(0)錯体の製造のための還元は、好ましくは、ニッケルより電子陽性度が高い金属により行われる。あるいは、金属アルキル、電流、金属水素化物および水素を使用することも可能である。
【0076】
上記特許出願ドイツ特許第103 51 000.1号、同第103 51 002.8号および同第103 51 003.6号のプロセスに使用されている配位子は、シアン化水素化反応において触媒溶液として既に使用された、従って、ニッケル(0)中で消耗されない配位子溶液中に存在することもある。
【0077】
シアン化水素化は、当業者に公知のいずれかの適する装置で行うことができる。この反応に有用な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、第20巻、John Wiley&Sons、ニューヨーク(New York)、1996年、1040から1055頁(stirred tank reactors、loop reactors、gas circulation reactors、bubble coulumn reactrsまたはtublar reacters参照)に記載されてるような通例の装置であり、それぞれの場合、適切であるならば、反応熱を除去するための装置を伴う。この反応は、多数の、例えば2つまたは3つの装置で行うことができる。
【0078】
本発明のプロセスの好ましい実施形態において、有利な反応器は、逆混合特性を有するもの、または逆混合特性を有する反応器バッテリーを有するものであることが判明した。逆混合特性を有する特に有利な反応器バッテリーは、シアン化水素の計量に関してクロスフローモードで操作されるものである。
【0079】
シアン化水素化は、好ましくは1つまたはそれ以上の攪拌プロセス段階で連続的に行われる。多数のプロセス段階を用いるとき、それらのプロセス段階は、直列に連結されているほうが好ましい。この場合、生成物は、1つのプロセス段階から直接次のプロセス段階に移送される。シアン化水素は、最初のプロセス段階に直接供給してもよいし、または個々のプロセス段階間に供給してもよい。
【0080】
好ましくは、反応は、0.1から500MPa、さらに好ましくは0.5から50MPa、特に1から5MPaの圧力で行われる。反応は、好ましくは273から473K、さらに好ましくは313から423K、特に333から393Kの温度で行われる。液体反応相の有利な平均滞留時間は、1反応器あたり、0.001から100時間、好ましくは0.05から20時間、さらに0.1から5時間であることが判明した。
【0081】
一つの実施形態において、反応は、気相および適する場合には固体懸濁相の存在下、液相で行うことができる。出発原料(シアン化水素および1,3−ブタジエン)は、各場合、液体形態で計り入れられてもよいし、または気体形態で計り入れられてもよい。
【0082】
さらなる実施形態において、反応は、液相で行うことができ、この場合、反応器内の圧力は、1,3−ブタジエン、シアン化水素および少なくとも1つの触媒などのすべての反応物が、液体形態で計り入れられ、ならびにその反応混合物の液相中に存在する。固体懸濁相が、その反応混合物中に存在することがあり、ならびに例えば中でもニッケル(II)化合物を含む触媒系の分解生成物から成る、少なくとも1つの触媒と共に計り入れられることもある。
【0083】
本発明のプロセスの好ましい実施形態において、連続シアン化水素化は、少なくとも1つのルイス酸の存在下で行われる。
【0084】
本発明によると、過剰の1,3−ブタジエンを使用すると、ルイス酸の存在が、メチルグルタロニトリルの形態でのジニトリルの(モノホスファイト錯体についての文献から知られている)形成を導かないことが判明した。本発明のプロセスで得られる結果は、ルイス酸を添加しないものに匹敵する。
【0085】
好ましい実施形態において、本発明のプロセスは、
(a)キレート配位子を有する少なくとも1つのニッケル(0)触媒の存在下、および適切な場合には少なくとも1つのルイス酸の存在下、1,3−ブタジエンとシアン化水素を1.6:1から1.1:1のモル比で使用することにより、1,3−ブタジエンを連続的にシアン化水素化して、3−ペンテンニトリルおよび2−メチル−3−ブテンニトリルを含む混合物1を得るプロセス段階;
(c)少なくとも1つの溶解または分散させた異性体化触媒を用いて、前記混合物1中に存在する2−メチル−3−ブテンニトリルを連続的に異性体化して、混合物2を生じさせるプロセス段階
により特徴付けられる。
【0086】
本発明によると、前記異性体化は、
a)ニッケル(0);
b)三価のリンを含有し、配位子としてニッケル(0)を錯化する化合物;および適切な場合には、
c)ルイス酸
を含む系の存在下で行われる。
【0087】
ニッケル(0)含有触媒系は、それ自体、公知のプロセスによって製造することができる。
【0088】
異性体化触媒についての配位子は、シアン化水素化触媒に使用されるのと同じリン配位子であり得る。従って、本発明のプロセスの好ましい実施形態において、プロセス段階(c)で使用される異性体化触媒は、キレート配位子と共に段階(a)で使用されるニッケル(0)触媒である。
【0089】
加えて、この系は、適切な場合には、ルイス酸を含む。2−メチル−3−ブテンニトリルの異性体化におけるルイス酸の使用は、反応速度の上昇を導く。これにより、反応温度を低下させることができ、従って、触媒に対する熱応力を低下させる。
【0090】
本発明に関連して、ルイス酸は、単一のルイス酸、または多数の、例えば2つ、3つもしくは4つのルイス酸の混合物を指す。
【0091】
有用なルイス酸は、カチオンが、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、カドミウム、レニウムおよび錫から成る群より選択される、無機または有機金属化合物である。例としては、例えば米国特許第6,127,567号、同第6,171,996号および同第6,380,421号に記載されているような、ZnBr2、ZnI2、ZnCl2、ZnSO4、CuCl2、CuCl、Cu(O3SCF32、CoCl2、CoCl2、FeI2、FeCl3、FeCl2、FeCl2(THF)2、TiCl4(THF)2、TiCl4、TiCl3、ClTi(O−イソプロピル)3、MnCl2、ScCl3、AlCl3、(C817)AlCl2、(C8172AlCl、(i−C492AlCl、(C652AlCl、(C65)AlCl2、ReCl5、ZrCl4、NbCl5、VCl3、CrCl2、MoCl5、YCl3、CdCl2、LaCl3、Er(O3SCF33、Yb(O2CCF33、SmCl3、B(C653、TaCl5が挙げられる。例えば米国特許第3,496,217号、同第3,496,218号および同第4,774,353号に記載されているような、金属塩、例えばZnCl2、CoI2およびSnCl2、ならびに有機金属化合物、例えばRAlCl2、R2AlCl、RSnO3SCF3およびR3B(この場合、Rは、アルキルまたはアリール基である)も有用である。米国特許第3,773,809号によると、使用されるプロモータは、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、エルビウム、ゲルマニウム、錫、バナジウム、ニオブ、スカンジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、パラジウム、トリウム、鉄およびコバルト、好ましくは、亜鉛、カドミウム、チタン、錫、クロム、鉄およびコバルトから成る群より選択される、カチオン形態の金属であり得、ならびにその化合物のアニオン部分は、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物、2から7の炭素原子を有する低級脂肪酸のアニオン、HPO32-、H3PO2-、CF3COO-、C715OSO2-、またはSO42-から成る群より選択することができる。米国特許第3,773,809号により開示されている、さらに適するプロモータは、水素化ホウ素塩、有機水素化ホウ素塩、ならびに式R3BおよびB(OR)3(この場合、Rは、水素、6から18の炭素原子を有するアリール基、1から7の炭素原子を有するアルキル基により置換されているアリール基、および1から7の炭素原子を有するシアノ置換アルキル基により置換されているアリール基から成る群より選択される)のホウ酸エステル、有利には、トリフェニルボロンである。さらに、米国特許第4,874,884号に記載されているように、触媒系の活性を増大させるために、ルイス酸の相乗作用性併用物の使用が可能である。適するプロモータは、例えば、CdCl2、FeCl2、ZnCl2、B(C653およびB(C653SnX(この場合、X=CF3SO3、CH364SO3または(C653BCNである)から成る群より選択することができ、明記されているプロモータのニッケルに対する好ましい比率は、約1:16から約50:1である。
【0092】
本発明に関連して、用語ルイス酸は、米国特許第3,496,217号、同第3,496,218号、同第4,774,353号、同第4,874,884号、同第6,127,567号、同第6,171,996号および同第6,380,421号に明記されているプロモータも包含する。
【0093】
上記のものの中で特に好ましいルイス酸は、特に、金属塩、さらに好ましくは、金属ハロゲン化物、例えばフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、特に塩化物であり、そしてまた、これらのうち、塩化亜鉛、塩化鉄(II)および塩化鉄(III)が特に好ましい。
【0094】
異性体化は、液体希釈剤、
− 例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルクロロへキサン、ベンゼン、デカヒドロナフタレンなどの炭化水素、
− 例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、グリコールジメチルエーテル、アニソールなどのエーテル、
− 例えば、酢酸エチル、安息香酸メチルなどのエステル、もしくは
− 例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル、または
− こうした希釈剤の混合物
の存在下で行うことができる。
【0095】
特に好ましい実施形態において、異性体化は、こうした液体希釈剤の不在下で行われる。
【0096】
さらに、異性体化および/またはシアン化水素化は、非酸化雰囲気で、例えば、窒素または希ガス(例えばアルゴン)から成る保護気体雰囲気下で行うと有利であることが判明した。この場合、異性体化および/またはシアン化水素化は、湿気を排除しながら行われる。
【0097】
異性体化は、当業者に知られているいずれかの適する装置で行うことができる。異性体化に有用な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、第20巻、John Wiley&Sons、ニューヨーク(New York)、1996年、1040から1055頁(stirred tank reactors、loop reactors、gas circulation reactors、bubble coulumn reactorsまたはtublar reactors参照)に記載されているような通例の装置である。この反応は、多数の、例えば2つまたは3つの装置で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0098】
本発明の好ましい実施形態において、異性体化は、区画化管状反応器(compartmented tubular reactor)で行われる。
【0099】
本発明のプロセスのさらに好ましい実施形態において、異性体化は、直列に連結された少なくとも2つの反応器で行われ、この場合、第一の反応器は、実質的に攪拌タンクの特徴を有し、第二の反応器は、実質的に管状の特徴を有するように設計されている。
【0100】
本発明のプロセスの特に好ましい実施形態において、異性体化は、2から20の攪拌タンク、特に3から10の攪拌タンクに対応する攪拌タンクバッテリーの特徴を有する1つの反応器で行われる。
【0101】
異性体化は、好ましくは、0.1mbarから100bar、さらに好ましくは1mbarから16bar、特に10mbarから6barの絶対圧で行われる。温度は、好ましくは80から125℃、さらに好ましくは85から120℃、特に90から115℃である。
【0102】
本発明のプロセスの特に好ましい実施形態では、プロセス段階(a)とプロセス段階(c)の間に次の(b):
(b)前記混合物1から1,3−ブタジエンを蒸留により除去するプロセス段階
を通す。
【0103】
本発明によると、1,3−ブタジエンは、2−メチル−3−ブテンニトリルの異性体化において抑制剤として作用する。従って、1,3−ブタジエンを異性体化前に除去することが、本プロセスのために、特に好ましい。
【0104】
本発明のプロセスの特に好ましい実施形態において、本発明のプロセスによりプロセス段階(c)において得られる3−ペンテンニトリルは、適切な場合には上記実施形態によって同時に得られる2−メチル−3−ブテンニトリルの異性体化後、少なくとも1つのルイス酸の存在下でのさらなるシアン化水素化に付されて、アジポニトリルをもたらす。この場合に利用することができるプロセス条件は、それ自体、公知である。このシアン化水素化においても、リン配位子を有するニッケル(0)触媒が使用される。従って、経済的プロセスの1つの可能性は、第一のシアン化水素化の場合と同じ触媒系を第二のシアン化水素化でも使用することができるように、個々のシアン化水素化に使用される触媒回路を連結させることである。対応する手順は、ドイツ特許公開第102 004 004 682号に記載されている。今や、本発明のプロセスにより、ルイス酸を用いて1,3−ブタジエンのシアン化水素化を行うことができるので、過剰な1,3−ブタジエンを使用すると、1,3−ブタジエンの第一のシアン化水素化での使用前の、3−ペンテンニトリルの第二のシアン化水素化からのルイス酸の、今日まで施されてきたような費用の嵩む不便な定量的除去は、必要ない。従って、特恵として、本発明では、第二のシアン化水素化後、ジニトリル除去のための簡単な抽出で十分である。
【0105】
異性体化を行う場合、その異性体化と同じ触媒系を第一および第二シアン化水素化において使用することが特に好ましい。第一のシアン化水素化においてルイス酸が選択性を喪失しないようにすることができることにより、触媒抽出を減少させることができる。
【0106】
後続の作業例を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0107】
[実施例]
実施例: BDの2M3BN/3PNへの連続シアン化水素化
本実施例では、以下の略記を用いる:
HCN: シアン化水素
3PN: 3−ペンテンニトリル
MGN: メチルグルタロニトリル
2M3BN: 2−メチル−3−ブテンニトリル
BD: 1,3−ブタジエン
THF: テトラヒドロフラン
【0108】
【化6】

【実施例1】
【0109】
(BD/HCN比=1/1)
1.65molの1,3−ブタジエン、1.65molのHCN、ならびに3−ペンテンニトリルに溶解した1mmolのNi(0)、2mmolの配位子1および4mmolのm−/p−トリルホスファイトから成る触媒溶液の形態で4mmolのNiを、圧力反応器(圧力:15bar、内部温度:90℃、滞留時間:40分/反応器)の中に1時間ごとに供給する。定量分析によると、HCNの転化は、定量的である(Vollhardt滴定)。反応流出物の2M3BN/3PN比は、ガスクロマトグラフィーで決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/0.76である。HCNに基づく収率は、87.7% ペンテンニトリル、10.4% MGN、1.7% 2M2BNである。
【実施例2】
【0110】
(BD/HCN比=1.25/1)
1.9molの1,3−ブタジエン、1.5molのHCN、ならびに3−ペンテンニトリルに溶解した1mmolのNi(0)、2mmolの配位子1および4mmolのm−/p−トリルホスファイトから成る触媒溶液の形態で5.4mmolのNiを、圧力反応器(圧力:15bar、内部温度:90℃、滞留時間:40分/反応器)の中に1時間ごとに供給する。定量分析によると、HCNの転化は、定量的である(Vollhardt滴定)。反応流出物の2M3BN/3PN比は、ガスクロマトグラフィーで決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/0.73である。HCNに基づく収率は、94.6% ペンテンニトリル、4.0 MGN、1.3% 2M2BNである。
【実施例3】
【0111】
(BD/HCN比=1.5/1)
2.45molの1,3−ブタジエン、1.65molのHCN、ならびに3−ペンテンニトリルに溶解した1mmolのNi(0)、2mmolの配位子1および4mmolのm−/p−トリルホスファイトから成る触媒溶液の形態で4mmolのNiを、圧力反応器(圧力:15bar、内部温度:90℃、滞留時間:33分/反応器)の中に1時間ごとに供給する。定量分析によると、HCNの転化は、定量的である(Vollhardt滴定)。反応流出物の2M3BN/3PN比は、ガスクロマトグラフィーで決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/0.73である。HCNに基づく収率は、95.9% ペンテンニトリル、1.3 MGN、2.1% 2M2BNである。
【0112】
実施例: 連続反応器流出物の合成および異性体化
【実施例4】
【0113】
(ブタジエンを除去しない)
0.56% Ni(0)、62.2% 3PNおよび37.24% 配位子1から成る触媒溶液から、2mmolのNi(0)を取り出し、611mmolのBDと混合し、25℃でガラス製オートクレーブに移送し、90℃に加熱する。ここで、81分にわたってTHF中の400mmolのHCNを計り入れ、その混合物を90℃でさらに60分間攪拌し、サンプルを取る。HCNの転化は、定量的である(Vollhardに従って定量分析)。加えて、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/1.36である。
【0114】
その後、全混合物を120分間、115℃に加熱して、2M3BNを3PNに直接異性体化する。サンプルを取り、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/3.3である。
【実施例5】
【0115】
(ブタジエンを除去する)
0.56% Ni(0)、62.2% 3PNおよび37.24% 配位子1から成る触媒溶液から、2mmolのNi(0)を取り出し、705mmolのBDと混合し、25℃でガラス製オートクレーブに移送し、90℃に加熱する。ここで、72分にわたってTHF中の411mmolのHCNを計り入れ、その混合物を90℃でさらに60分間攪拌し、サンプルを取る。HCNの転化は、定量的である(Vollhardに従って定量分析)。ここで、過剰なBDを100mbarおよび50℃で蒸留除去し、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/1.4である。
【0116】
その後、全混合物を120分間、115℃に加熱して、2M3BNを3PNに直接異性体化する。サンプルを取り、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/13.2である。
【実施例6】
【0117】
(ブタジエンを除去しない)
【0118】
【化7】

【0119】
6mmolの配位子2を、THF中、2mmolのNi(COD)2および581mmolのBDと混合し、25℃でガラス製オートクレーブに移送し、90℃に加熱する。ここで、85分にわたってTHF中の407mmolのHCNを計り入れ、その混合物を90℃でさらに60分間攪拌し、サンプルを取る。HCNの転化は、定量的である(Vollhardに従って定量分析)。加えて、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/0.55である。
【0120】
その後、全混合物を120分間、115℃に加熱して、2M3BNを3PNに直接異性体化する。サンプルを取り、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/1.2である。
【実施例7】
【0121】
(ブタジエンを除去する)
6mmolの配位子2を、THF中、2mmolのNi(COD)2および583mmolのBDと混合し、25℃でガラス製オートクレーブに移送し、90℃に加熱する。ここで、105分にわたってTHF中の411mmolのHCNを計り入れ、その混合物を90℃でさらに60分間攪拌し、サンプルを取る。HCNの転化は、定量的である(Vollhardに従って定量分析)。ここで、過剰なBDを100mbarおよび50℃で蒸留除去し、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/0.6である。
【0122】
その後、全混合物を120分間、115℃に加熱して、2M3BNを3PNに直接異性体化する。サンプルを取り、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/8.9である。
【実施例8】
【0123】
(ブタジエンを除去しない)
【0124】
【化8】

【0125】
6.3mmolの配位子3を、THF中、2mmolのNi(COD)2および581mmolのBDと混合し、25℃でガラス製オートクレーブに移送し、90℃に加熱する。ここで、85分にわたってTHF中の407mmolのHCNを計り入れ、その混合物を90℃でさらに60分間攪拌し、サンプルを取る。HCNの転化は、定量的である(Vollhardに従って定量分析)。ここで、過剰なBDを100mbarおよび50℃で蒸留除去し、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/2.4である。
【0126】
その後、全混合物を120分間、115℃に加熱して、2M3BNを3PNに直接異性体化する。サンプルを取り、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/4.3である。
【実施例9】
【0127】
(ブタジエンを除去する)
6mmolの配位子3を、THF中、2mmolのNi(COD)2および606mmolのBDと混合し、25℃でガラス製オートクレーブに移送し、90℃に加熱する。ここで、76分にわたってTHF中の400mmolのHCNを計り入れ、その混合物を90℃でさらに60分間攪拌し、サンプルを取る。HCNの転化は、定量的である(Vollhardに従って定量分析)。ここで、過剰なBDを100mbarおよび50℃で蒸留除去し、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/2.8である。
【0128】
その後、全混合物を120分間、115℃に加熱して、2M3BNを3PNに直接異性体化する。サンプルを取り、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/20である。
【実施例10】
【0129】
(ブタジエンを除去しない)
【0130】
【化9】

【0131】
2.6mmolの配位子4を、THF中、0.84mmolのNi(COD)2および612mmolのBDと混合し、25℃でガラス製オートクレーブに移送し、90℃に加熱する。ここで、80分にわたってTHF中の389mmolのHCNを計り入れ、その混合物を90℃でさらに60分間攪拌し、サンプルを取る。HCNの転化は、定量的である(Vollhardに従って定量分析)。ここで、過剰なBDを100mbarおよび50℃で蒸留除去し、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/1.3である。
【0132】
その後、全混合物を120分間、115℃に加熱して、2M3BNを3PNに直接異性体化する。サンプルを取り、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/5.2である。
【実施例11】
【0133】
(ブタジエンを除去する)
2.7mmolの配位子3を、THF中、0.89mmolのNi(COD)2および655mmolのBDと混合し、25℃でガラス製オートクレーブに移送し、90℃に加熱する。ここで、70分にわたってTHF中の414mmolのHCNを計り入れ、その混合物を90℃でさらに60分間攪拌し、サンプルを取る。HCNの転化は、定量的である(Vollhardに従って定量分析)。ここで、過剰なBDを100mbarおよび50℃で蒸留除去し、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1.3/1である。
【0134】
その後、全混合物を65分間、115℃に加熱して、2M3BNを3PNに直接異性体化する。サンプルを取り、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC面積パーセント)。2M3BN/3PN比は、1/20である。
【0135】
実施例: 溶媒の存在下でのBDのシアン化水素化
【実施例12】
【0136】
1.64mmolの配位子3を、THF中、0.55molのNi(COD)2、0.55mmolのZnCl2および380mmolのBDと混合し、25℃でガラス製オートクレーブに移送し、90℃に加熱する。ここで、100分にわたってTHF中の253mmolのHCNを計り入れ、その混合物を90℃でさらに60分間攪拌し、サンプルを取る。HCNの転化は、定量的である(Vollhardに従って定量分析)。加えて、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC重量パーセント、内基準:エチルベンゼン)。2M3BN/3PN比は、1/1.1である。0.2% MGNが、形成された。
【実施例13】
【0137】
1.72mmolの配位子4を、THF中、0.56molのNi(COD)2、0.57mmolのZnCl2および402mmolのBDと混合し、25℃でガラス製オートクレーブに移送し、90℃に加熱する。ここで、52分にわたってTHF中の259mmolのHCNを計り入れ、その混合物を90℃でさらに60分間攪拌し、サンプルを取る。HCNの転化は、定量的である(Vollhardに従って定量分析)。加えて、2M3BN/3PN比をガスクロマトグラフィーにより決定する(GC重量パーセント、内基準:エチルベンゼン)。2M3BN/3PN比は、1.5/1である。MGNは、形成されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キレート配位子を有する少なくとも1種のニッケル(0)触媒の存在下で1,3−ブタジエンを連続的にシアン化水素化する方法であって、1,3−ブタジエンとシアン化水素を1.6:1から1.1:1のモル比で使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記連続シアン化水素化を、加えて、少なくとも1種のルイス酸の存在下で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)キレート配位子を有する少なくとも1種のニッケル(0)触媒の存在下、および適宜、少なくとも1種のルイス酸の存在下、1,3−ブタジエンとシアン化水素を1.6:1から1.1:1のモル比で使用することにより、1,3−ブタジエンを連続的にシアン化水素化して、3−ペンテンニトリルおよび2−メチル−3−ブテンニトリルを含む混合物1を得る処理工程;
(c)少なくとも1種の溶解または分散させた異性体化触媒を用いて、前記混合物1中に存在する2−メチル−3−ブテンニトリルを連続的に異性体化して、混合物2を生じさせる処理工程
を特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
処理工程(c)において得られる3−ペンテンニトリルを、リン配位子を有する少なくとも1種のニッケル(0)触媒の存在下でシアン化水素化する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
処理工程(c)における異性体化を、混合物1を80から125℃に加熱することによって行う、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
処理工程(c)において行われる連続異性体化を、少なくとも1種のルイス酸の存在下で行う、請求項3から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
処理工程(a)と処理工程(c)との間に、次の(b):
(b)前記混合物1から1,3−ブタジエンを蒸留により除去する処理工程
を行う請求項3から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
処理工程(c)において使用する異性体化触媒が、処理工程(a)において使用する、キレート配位子を有するニッケル(0)触媒である、請求項3から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ニッケル(0)触媒が、二座ホスファイト、ホスフィン、ホスホナイト、ホスフィナイト、およびホスフィナイトホスファイトから成る群より選択されるリンキレート配位子で飽和されている、請求項1から8のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2007−519671(P2007−519671A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550095(P2006−550095)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000772
【国際公開番号】WO2005/073170
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】