説明

線状検出具及び接着剤

【課題】亀裂の発生とその場所を早期に発見でき、しかも簡単な構造の亀裂検出システム、このシステムで利用可能な接着剤及び線状検出具を提供する。
【解決手段】亀裂検出システムでは、銅線で形成された検出線10を橋梁5の表面上に、亀裂想定場所を通して一筆書状に配線することにより、この検出線10が積層された部分で亀裂が発生した場合、検出線10は断線する。そのため、亀裂の発生を検出することができる。またこの亀裂検出システムでは、TDR法により、検出線10が破断した位置を検出することによって、橋梁5に発生した亀裂の場所が的確に把握できる。従って、この亀裂検出システムを用いると、橋梁5の亀裂の発生とその場所を早期にしかも正確に発見できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亀裂検出システム、このシステムで利用可能な接着剤及び線状検出具に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁・車両・船舶・航空機・機械等の機械的な振動を受ける構造物は、金属疲労による亀裂が発生することがある。この亀裂は、構造物の内部から発生するものや、表面から発生するもの、ある程度成長すると成長が止まるもの、成長速度が次第に速くなっていくものなど様々であるが、いずれの亀裂も構造物の安全管理の観点から早期発見と対策が必要である。
【0003】
そのため従来は、亀裂の発見のため、定期的または不定期に目視による検査を行っていた。
しかし、目視による検査は、検査員の能力や注意力によるので、亀裂を見逃してしまうおそれがある。また、検査周期の間に疲労亀裂が成長して、構造物の破壊等に至ることがある。さらに、検査員の給与、検査足場の敷設など、検査コストがかかってしまう。
【0004】
そのため近年では、橋梁の亀裂を発見するための様々なモニタリングシステムが開発されている。
(1)「橋梁連続性ヘルスモニタリングシステム、及び方法」では、図6に示すように、一方の端部側の橋梁5から各橋梁5まで複数の光ファイバー6を設置し、各光ファイバーの他方側の端部に反射鏡60を備え、橋梁5が折れるなどして光ファイバー6も折れ、入光器62から光ファイバー6に入光した光が反射して帰ってこなくなったら、橋梁5が折れたと判定するものである(特許文献1)。
(2)「亀裂検知装置」は、図7に示すように、構造部材7の内部7aに気体を圧送入し密封する機構70と、内部気圧を表示する圧力センサー72と、内部気圧を表示する表示部74を備えている。構造部材7は、圧力センサー72によって測定された構造部材7の内部空気圧の測定値Pを監視する。構造部材7に亀裂が発生し、亀裂が板圧を貫通すると内部の空気圧が低下し、内部空気圧の測定値Pが低下する。表示部74に表示されたPの変化が生じたことを表示部74の表示から判定することにより、亀裂発生を検知する(特許文献2)。
【特許文献1】特願2000−133206
【特許文献2】特願2000−026169
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、(1)「橋梁連続性ヘルスモニタリングシステム、及び方法」では、橋梁の破壊が起こってはじめて検出が行われるので、安全管理の点では問題がある。
また、(2)「亀裂検知装置」では、構造部材を密閉空間にせねばならないためコストがかかり、しかも、構造部材に穴が開くほどの亀裂が発生しないと亀裂を検出できないため、亀裂の検出タイミングが遅れてしまい、さらに、どこで空気が漏れているかわからないので亀裂が発生した場所を特定するのが困難であるという問題がある。
【0006】
そこで本発明では、上述した問題点を解決し、亀裂の発生とその場所を早期に発見でき、しかも簡単な構造の亀裂検出システム、このシステムで利用可能な接着剤及び線状検出具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題点を解決するためになされた請求項1に記載の亀裂検出システムは、被検出物の表面に沿って並ぶように配線され、前記被検出物の表面上に積層された2本の検出線あるいはこの検出線を備えた線状検出具と、この亀裂検出手段が前記被検出物の亀裂の有無を検出したら、TDR法により前記検出線の断線位置を検出して、前記被検出物の亀裂発生場所を特定する亀裂場所特定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
この亀裂検出システムでは、被検出物の表面に沿って並ぶように配線された2本の検出線あるいはこの検出線を備えた線状検出具を被検出物の表面上に積層しておき、亀裂場所特定手段により、TDR法を用いて検出線の断線位置を特定することにより被検出物の亀裂の発生位置を特定している。そのため、本発明の亀裂検出システムでは、TDR法を用いることにより被検出物の亀裂の発生場所を適格に把握することができる。しかも本発明の亀裂検出システムは、検出線あるいは線状検出具を被検出物の表面上に積層するだけの簡単な構造なので、低コストで導入できる。
【0009】
尚、本発明の亀裂検出システムにおいて、2本の検出線を使用している理由は、TDR方式の原理が、2本の検出線間に電位差をパルス状に伝播させ、破断点等の測定対象物の表面で反射し戻ってくるまでの時間を測っているためで、電位差を与えるためには2つの絶縁された検出線が必要だからである。
【0010】
本発明の亀裂検出システムは、検出線の両端から常時通電し、検出線の通電不能により検出線の断線の有無を検出することによって被検出物の亀裂の有無を検出する亀裂検出手段を備える場合、亀裂場所特定手段は、この亀裂検出手段が被検出物の亀裂の有無を検出したら、被検出物の亀裂発生箇所を特定するよう構成することが好ましい。
【0011】
この亀裂検出システムでは、亀裂検出手段により検出線を常に通電し、その検出線が通電不能になったことを検出することをもって、被検出物の亀裂の発生を検出している。そのためこの亀裂検出システムを用いると、被検出物の亀裂の発生を迅速に検出することができる。
【0012】
検出線は、直径0.30mm以下の被覆銅線で形成されていることが好ましい。この被覆銅線を用いれば、橋梁の亀裂に反応よく断線するので、被検出物の亀裂の発生を感度よく検出することができる。
【0013】
2本の検出線あるいはこの検出線を備えた前記線状検出具は、被検出物上に一筆書状に亀裂想定箇所を通って配線することが好ましい。被検出物の亀裂想定箇所(溶接部の始終端部や形状変化部など)のそれぞれに検出線等を配線して亀裂を検出することも考えられるが、被検出物の表面上に一筆書状に亀裂想定箇所を通って配線したほうがコストがかからず、しかもTDR法により亀裂発生箇所の特定が可能なので、被検出物の亀裂の発生場所も正確に検出できる。
【0014】
検出線は、長手方向に垂直な断面の形状が長方形状に形成された硬銅線からなり、断面の長尺な辺の一辺側の表面が被検出物の表面に対向する状態で配線されることが好ましい。
断面円状の検出線は、被検出物の表面から被検出物に対抗する面までの垂直な距離が大きくなるが、この検出線は断面積に対して垂直距離を小さくすることが出来、被検出物の亀裂に精度よく呼応して断線する。そのため、断面長方形状の検出線を用いると、被検出物の亀裂を精度よく検出することができる。
【0015】
検出線、あるいはこの検出線を備えた線状検出具は、硬化時に縦弾性係数が300MP
a以上となる接着剤を用いて被検出物に積層するのが好ましい。この接着剤を用いると、被検出物に亀裂が生ずると、これに呼応して亀裂が生じるので、縦弾性係数が300MPa以下の接着剤を用いた場合に比べ、被検出物の亀裂を非常に感度よく検出することができる。尚、300MPa以上の接着剤としては、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤などがある
ところで、線状検出具としては以下のような構成のものを用いるとよい。
【0016】
その線状検出具とは、被検出物に発生する亀裂を検出するため、この被検出物の表面に沿って配線される並行な検出線と、被検出物に対向する被検出物側及びその反対側に配置された一対のフィルムとを備え、前記一対のフィルムの間に、硬化時に縦弾性係数が300MPa以上の材料からなる接着剤を注入して、前記一対のフィルムと検出線とを一体に接着したことを特徴とするものである。
【0017】
この線状検出具は、検出線がフィルムによって保護されているので、雨にぬれて錆びることなどを防止することができ、対候性が向上する。また、この線状検出具は、検出線をフィルムで挟む構造になっており、折り返してもいずれか一方のフィルムが検出線を保護するので、自由に折り曲げて配線することができる。
【0018】
尚、線状検出具は、上述した亀裂検出システムに用いる場合は2本の検出線を備えているとよい。また、それ以上の複数の検出線を備えていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明が適用された実施の形態について図面を用いて説明する。
[第1実施形態]
図1は第1実施形態の亀裂検出システムが適用された橋脚の全体図で、(a)〜(e)で亀裂の測定手順を時系列的に説明したものである。図2は、使用する接着剤を特定するための実験結果を説明するためのグラフで、縦弾性係数と亀裂通過距離とをパラメータとするグラフである。
【0020】
第1実施形態の亀裂検出システム1は、図1に示すように、被検出物である橋梁5の亀裂を検出するためのシステムであって、橋梁5の表面に沿って並べられた2本の検出線10と、亀裂場所特定装置20とを備えている。
【0021】
検出線10は、硬銅線(JIS C 3002の電気用銅線及びアルミニウム線の試験方法で規定された硬銅線)を被覆した直径0.30mmの被覆電線である。そして、図1(a)に示すように、並行に並べられた2本の検出線10を、橋梁5の亀裂想定箇所を通るように橋梁5の表面上に一筆書状に配線し、硬化すると300MPa以上の硬さとなるエポキシ樹脂系の接着剤で橋梁5の表面上に接着する。
【0022】
亀裂場所特定装置20は、TDR(Time Domain Refectometory)方式の検出器である。ここでTDR方式とは、電子回路で間欠的に発信したマイクロパルスを検出線10に伝播させ、破断点等の測定対象物の表面で反射し再び検出線10を伝わるマイクロパルスを受信し、マイクロパルスの測定対象物までの往復時間を計測することで発信点から破断点までの距離を計測するものである。本実施形態ではMEGGER社製のCFL535F TDR2000/2を用いている。
【0023】
本実施形態の亀裂検出システム1を用いて橋梁5の亀裂を検出する場合、以下のような手順で行う。
図1(b)に示すように、列車が橋梁5を何度も通過すると、溶接部分などの構造上脆い亀裂想定箇所で(図中×印を売った部分)亀裂が発生することがある。この亀裂想定箇
所で亀裂が発生すると、検出線10が亀裂に伴って断線する
橋梁5に亀裂が発生していないか検査する場合、図1(c)に示すように、亀裂場所特定装置20を検出線10に接続し、検出線10にマイクロパルスを間欠的に発信して亀裂の発生の有無を検出する。
【0024】
もし橋梁5に複数の亀裂が発生していると、亀裂場所特定装置20から見て、検出線10の配線方向に沿った一番近い亀裂発生箇所で、検出線10の断線が発生しているので、そこでマイクロパルスが反射して、その亀裂発生箇所が亀裂場所特定装置20により特定される。
【0025】
亀裂が発生している場所が特定できたら、作業員は、図1(d)に示すように、断線した検出線10をジャンパー線10aで接続する。すると、亀裂場所特定装置から見て一番近い亀裂発生箇所よりも、さらに遠い亀裂発生箇所も検出される。
【0026】
そして最後に、図1(e)に示すように、遠い亀裂検出発生箇所にもジャンパー線10bを設置し、もう一度亀裂が発生していないか検出したら、検出を終了する。
尚、亀裂を検出する場合、図1(c)(d)(e)に示すように、載荷用列車・車両等を橋梁5に載せておくと、橋梁5に荷重がかかって亀裂が開口し、一度断線した検出線10が再び接触することがないので、検出線10の断線箇所、すなわち橋梁5の亀裂発生箇所を適格に把握することができる
以上説明した亀裂検出システム1を用いると、次のような効果がある。
【0027】
この亀裂検出システムでは、橋梁5の表面に沿って並ぶように配線された2本の検出線10を橋梁5の表面上に積層しておき、亀裂場所特定装置20により、TDR法を用いて検出線10の断線位置を特定することにより橋梁5の亀裂の発生位置を特定している。そのため、本実施形態の亀裂検出システム1では、TDR法を用いることにより橋梁5の亀裂の発生場所を適格に把握することができる。しかも本実施形態の亀裂検出システム1は、検出線10を橋梁5の表面上に積層するだけの簡単な構造なので、低コストで導入できる。
【0028】
検出線10として直径0.30mm以下の被覆銅線を用いれば、橋梁5の亀裂に呼応して断線するので、橋梁5の亀裂の発生を感度よく検出することができる。
橋梁5の亀裂の発生を検出するには、橋梁5の亀裂想定箇所(溶接部の始終端部や形状変化部など)のそれぞれに検出線10を配線して亀裂を検出することも考えられるが、橋梁5上に一筆書状に亀裂想定箇所を通って配線したほうがコストがかからず、しかもTDR法により亀裂発生箇所の特定が可能なので、橋梁5の亀裂の発生場所も正確に検出できる。
【0029】
本実施形態では、検出線10は、硬化時に縦弾性係数が300MPa以上となる接着剤を用いて橋梁5に積層している。この接着剤は橋梁5に亀裂が発生すると、亀裂に呼応して亀裂が生じるので、縦弾性係数が300MPa以下の接着剤を用いた場合に比べ、橋梁5の亀裂を非常に感度よく検出することができる。
【0030】
ところで、上記実施形態では、縦弾性係数が300MPaの接着剤を用いたが、これは以下のような理由による。
図2は、図2中に丸で囲って記載したモデル図にあるように、直径0.08mmの検出線を接着剤である樹脂中に、被検出対象物(本実施形態では橋梁)から所定(0.08mmと0.58mm)高さに埋めて、亀裂通過距離(亀裂が検出線10を横切って通過した距離)と縦弾性係数との関係を調べたものである。この図2の実験によると、300MPa付近で、グラフの傾きが急となっているので、本実施形態では硬化時に縦弾性係数が3
00MPa以上の接着剤を用いていた。
【0031】
尚、金属構造物に疲労亀裂が発生した場合、初期は荷重が繰り返される度にわずかずつ亀裂が進展し、ある長さに至った時突然急激に破壊が生じる。このある長さを「限界亀裂長」と呼ぶ。よって、構造物を維持管理する立場からすると、限界亀裂長まで亀裂が進展する前に亀裂を発見する必要がある。今回の実施形態にこのことを当てはめると、亀裂の開始点が想定される位置から、検出線設置位置を過ぎて亀裂通過距離までの総長さを限界亀裂長以下にすれば、安全に亀裂を発見できることになる。図2のパラメータは(1)亀裂通過距離(縦軸)(2)縦弾性係数(横軸)(3)樹脂厚であるため、(1)が限界亀裂長との関係から最初に設定され、(2)、(3)の組み合わせは任意に変更できる。なお、通常の鋼材や使用条件下で限界亀裂長は20mm以上あると考えられている。一方縦弾性係数が300MPaを下回ると亀裂通過距離が5.0mm以上と急激に長くなるため、安全をみて、縦弾性係数が300MPaを上回る材料を使うのがよいと考えた。
【0032】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。尚、この実施形態については、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0033】
ここで、図3は、第2実施形態の亀裂検出システムが適用された橋脚の全体図で、(a)〜(f)で亀裂の測定方法を時系列的に説明したものである。
この第2実施形態では、図3(a)に示すように、亀裂想定箇所を通して一筆書状に2本の検出線10を並行に敷設している点までは第1実施形態とは同様だが、亀裂場所特定装置20を用いる前に、亀裂検出装置30を用いる点が異なる。
【0034】
この亀裂検出装置30は、2本ある検出線10のうち、いずれか一方の検出線10の一端側から他端側に向かって常時通電し、検出線10にかけた電流が、検出線10が断線することによって遮断されると、リレースイッチが異常を示す動作をし、その動作後の状態を保持するよう構成されている。
【0035】
この亀裂検出装置30は、図3(b)に示すように、1箇所でも橋脚5に亀裂が発生すると、検出線10の通電が切れて、図3(c)に示すように、リレースイッチが保持される。従って、この亀裂検出装置30は、検出線10が通電不能になったかいなかにより、橋梁5の亀裂の発生を検出しているので、橋梁5の亀裂を迅速に検出することができる。
【0036】
以下は、第1実施形態と同様に、検出線10に亀裂場所特定装置20を取り付け、図3(d)に示すように、2箇所の亀裂のうち一箇所を特定したら、図3(e)に示すように、検出線10が断線した部分にジャンパー線10aを接続して、もう一箇所を特定し、図3(f)に示すように、ジャンパー線10bを接続して、亀裂が検出されなくなったことを確認し、亀裂の検出作業を終了する。
【0037】
尚、亀裂場所特定装置20でも亀裂の有無は検出できるが、TDR法は、そのための装置がリレー方式の亀裂検出装置30に比べ高価であること、現在用意に入手できる機器であるTDR2000/2等は、仕様上1秒間に3回の測定しかできず、列車等が通過した際に生じ
る一瞬の断線を見逃す恐れがある(機器を改良すればこの欠点は除くことができる)ため、リレー回路を用いる方法も提案したものである。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。尚、この実施形態については、第1実施形態及び第2実施形態と異なる点のみ説明する。
【0038】
ここで図4は、線状検出具の断面図、図5はその平面図である。
本実施形態では、検出線10そのものを橋梁5に積層するのではなく、線状検出具40を橋梁5に積層する点が、第1及び第2実施形態とは異なる。
【0039】
この線状検出具40は、図4に示すように、橋梁5に発生する亀裂を検出するため、この橋梁5の表面に沿って配線される並行な検出線11と、橋梁5に対向する橋梁5側及びその反対側に配置された一対のフィルム41とを備え、一対のフィルム41の間に、硬化時に縦弾性係数が300MPa以上の材料からなる接着剤42を注入して、一対のフィルム41と検出線11とを一体に接着したものである。尚、フィルム41も300MPa以上の縦弾性係数を有する。この線状検出具40は、第1実施形態と同様、硬化したときに縦弾性係数が300MPa以上となる接着剤を用いて橋梁5に接着して、亀裂検出を行う。
【0040】
この線状検出具40は、検出線11がフィルム41によって保護されているので、雨にぬれて錆びることなどを防止することができ、検出線11そのものを橋梁5に積層する場合くらべ、耐候性が向上する。また、この線状検出具40は、検出線11をフィルム41で挟む構造になっており、図5に示すように、折り返してもいずれか一方のフィルム41が検出線11を保護するので、自由に折り曲げて配線し貼り付け方向を自由に変えることが出来、一筆書きで配線するのに適している。さらに本実施形態の線状検出具40を用いると、2本の検知線を独立に積層するのに比べ、1回の積層で検知線を並列に積層するこ
とができる。また、2本の検出線を単独で扱うより、積層作業中に誤って切ることが少なくなり扱いが簡単である。
【0041】
ところで、本実施形態の線状検出具40は、検出線11としては、長手方向に垂直な断面の形状が長方形状に形成された硬銅線が用いられており、この検出線11は、線状検出具40が橋梁5に積層された際、断面の長尺な辺の一辺側の表面が橋梁5の表面に対向する状態で配線される。断面円状の検出線11は、被検出物の表面から被検出物に対向する面までの垂直な距離が大きくなるが、この検出線11は断面積に対して垂直距離を小さくすることが出来、被検出物の亀裂に精度よく呼応して断線する。そのため、断面長方形状の検出線11を用いると、橋梁5の亀裂を精度よく検出することができる。
【0042】
尚、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、橋梁5の亀裂を検出する場合について説明したが、航空機の隔壁や、ボディ、建物の壁面など、あらゆる種類の構造物の亀裂を検出するためのシステムとして用いることができることはもちろんである。
【0043】
また、上記実施形態では、接着剤として、エポキシ系の接着剤を用いたが、300MPa以上の接着剤としては、他にシアノアクリレート系接着剤などがある。
また、上記実施形態では、検出線として、硬銅線を被覆した被覆電線を用いたが、エナメル線(軟銅線を被覆した被覆銅線)、裸の硬銅線及び軟銅線等でもよい。また、アルミニウム線でもよく、本実施形態の検出線として利用できるものであれば、材質はどのようなものでもよい。
【0044】
また、形状についても、リボン線でもよいし、角線でもよいし、本実施形態の機能を果すのであればどのような形状のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1実施形態の亀裂検出システムが適用された橋脚の全体図で、(a)〜(e)で亀裂の測定手順を時系列的に説明したものである。
【図2】使用する接着剤を特定するための実験結果を説明するためのグラフで、縦弾性係数と亀裂通過距離とをパラメータとするグラフである。
【図3】第2実施形態の亀裂検出システムが適用された橋脚の全体図で、(a)〜(f)で亀裂の測定手順を時系列的に説明したものである。
【図4】線状検出具の断面図である。
【図5】線状検出具を折り曲げた様子を示す平面図である。
【図6】従来の技術の説明図である。
【図7】従来の技術の説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1・・・亀裂検出システム、5・・・橋梁、10、11・・・検出線、20・・・亀裂場所特定装置、30・・・亀裂検出装置、40・・・線状検出具、41・・・フィルム、42・・・接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物の表面に沿って並ぶように、前記被検出物の表面上に積層された状態で配線された2本の検出線あるいはこの検出線を備えた線状検出具と、
この亀裂検出手段が前記被検出物の亀裂の有無を検出したら、TDR法により前記検出線の断線位置を検出して、前記被検出物の亀裂発生場所を特定する亀裂場所特定手段と
を備えることを特徴とする亀裂検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の亀裂検出システムにおいて、
前記検出線の両端から常時通電し、前記検出線の通電不能により前記検出線の断線の有無を検出することによって前記被検出物の亀裂の有無を検出する亀裂検出手段を備え、
前記亀裂場所特定手段は、この亀裂検出手段が前記被検出物の亀裂の有無を検出したら、前記被検出物の亀裂発生箇所を特定することを特徴とする亀裂検出システム。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の亀裂検出システムにおいて、
前記検出線は、直径0.30mm以下の被覆銅線で形成されていることを特徴とする亀裂検出システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の亀裂検出システムにおいて、
前記2本の検出線あるいはこの検出線を備えた前記線状検出具を、前記被検出物の亀裂想定箇所を通って前記被検出物上に一筆書状に配線したことを特徴とする亀裂検出システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の亀裂検出システムにおいて、
前記検出線は、長手方向に垂直な断面の形状が長方形状に形成された硬銅線からなり、前記断面の長尺な辺の一辺側の表面が前記被検出物の表面に対向する状態で配線されることを特徴とする亀裂検出システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の亀裂検出システムにおいて、
検出線、あるいはこの検出線を備えた線状検出具を、硬化時に縦弾性係数が300MPa以上となる接着剤を用いて被検出物に積層したことを特徴とする亀裂検出システム。
【請求項7】
検出線の断線の有無によって被検出物に発生する亀裂の有無を検出するため、前記検出線、あるいはこの検出線を備える線状検出具を、被検出物の表面上に積層した状態で配線するための接着剤であって、硬化時に縦弾性係数が300MPa以上となることを特徴とする接着剤。
【請求項8】
請求項7記載の接着剤において、
エポキシ系接着剤あるいはシアノアクリレート系接着剤であることを特徴とする接着剤。
【請求項9】
被検出物に発生する亀裂を検出するため、この被検出物の表面に沿って配線される並行な検出線と、
被検出物に対向する被検出物側及びその反対側に配置された一対のフィルムと
を備え、
前記一対のフィルムの間に、硬化時に縦弾性係数が300MPa以上の材料からなる接着剤を注入して、前記一対のフィルムと前記検出線とを一体に接着したことを特徴とする線状検出具。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−187672(P2007−187672A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38342(P2007−38342)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【分割の表示】特願2004−323538(P2004−323538)の分割
【原出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】