説明

線維症を治療するためのピリミジルアミノベンズアミド誘導体の使用

本発明は、線維症の治療において使用するための医薬組成物を製造するための、式(I)(式中、基は、本明細書中で定義される意味を有する)のピリミジルアミノベンズアミドまたはその医薬的に許容可能な塩の使用;線維症の治療における式(I)のピリミジルアミノベンズアミドまたはその医薬的に許容可能な塩の使用;線維症を患う温血動物(ヒトを含む)を、このような治療を必要とする前記動物に有効な用量の式(I)のピリミジルアミノベンズアミドまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することによって治療する方法;ならびに(a)少なくとも1種の式(I)のピリミジルアミノベンズアミドおよび(b)AT−受容体アンタゴニストおよびACE阻害薬から選択される少なくとも1種の化合物を含む組合せ、ならびに線維症、特に肝線維症の治療におけるこのような組合せの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線維症の治療において使用するための医薬組成物を製造するための、後に定義する式Iのピリミジルアミノベンズアミドまたはその医薬的に許容可能な塩の使用;線維症の治療における式Iのピリミジルアミノベンズアミドまたはその医薬的に許容可能な塩の使用;およびこのような治療を必要とする温血動物に有効な用量の式Iのピリミジルアミノベンズアミドまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することによって線維症を患う温血動物(ヒトを含む)を治療する方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
線維症は、腎臓、心臓、肺、肝臓、皮膚および関節を含む、皮膚および内部臓器における細胞外マトリックス成分の沈着を特徴とする状態である。
【0003】
用語「線維症」は、本明細書中で使用する場合、限定はされないが、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心線維症、および強皮症を包含する。好ましい実施形態において、線維症は、DDR1(ジスコイジンドメイン受容体1)、DDR2(ジスコイジンドメイン受容体1)、およびPDGFR(血小板由来成長因子受容体)のキナーゼ活性のうちの1つ以上によって媒介される。
【0004】
一実施形態において、本発明は、肺線維症の治療に関する。
【0005】
肺線維症は、非特異的な炎症後局所性線維症、および間質性肺炎で発生する特異的経過に対する一般的な病理学的反応である。線維症性変化は、機能障害を引き起こし、疾病(例えば、間質性肺炎および気管支拡張症)として分類される。
【0006】
肺の線維症は、5つの別個のパターン:気管支、間質、実質、胸膜、および血管性の状態で発生する可能性がある。異なるパターンは、機能障害の型を大部分決定し、共存することも多い。
− 気管支線維症は、びまん性閉塞性気腫に関連付けられる機能変化をもたらす。
− 間質性線維症は、本質的に拡散障害をもたらす。
− 血管線維症は、肺高血圧をもたらす。
− 胸膜線維症は、実質性線維症の程度が進行するにつれて、ある程度の換気障害をもたらす。
【0007】
肺線維症は、罹患率および死亡率の主要な原因である。患者は、典型的には、咳および呼吸困難の症状を呈し、状態が進行すると、結果として慢性呼吸不全が起こることが多い。原因既知の肺線維症の一部の形態は良好な予後を有することもあるが、特発性肺線維症(IPF)は、あるとしても自発的に元に戻ることは稀である進行性の状態である。大規模な試験で(in large series)、IPFを有する患者の5年生存率は50%未満である。残念ながら、徹底的な研究にもかかわらず、IPFに対する治療結果は、相変わらず不十分なままである。
【0008】
本発明は、肺線維症、とりわけ間質性線維症、および特に特発性肺線維症の治療における代替療法に対する必要性に答えるものである。
【0009】
一実施形態において、本発明は肝線維症の治療に関する。
【0010】
本明細書に言及される肝線維症には、限定はされないが、慢性のB型肝炎、C型肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatophepatitis)(NASH)、アルコール性肝疾患、代謝性肝疾患(ウィルソン病、ヘモクロマトーシス)、胆管閉塞(先天性または後天性)、または原因不明の線維症に関連付けられる肝疾患を有する患者が含まれる。
【0011】
一実施形態において、本発明は、DDR1(ジスコイジンドメイン受容体1)またはDDR2(ジスコイジンドメイン受容体1)のキナーゼ活性によって媒介される強皮症に関する。
【0012】
後で定義される式Iのピリミジルアミノベンズアミドは、線維症性障害を調節し、それによって、患者に利益を提供することができることが見出されるに至った。
【0013】
したがって、本発明は、線維症を治療するための医薬組成物を調製するための、式I
【0014】
【化3】


[式中、
(a)Pyは3−ピリジルを意味し、
は、水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、またはフェニル−低級アルキルを表し、
は、水素、低級アルキル(必要により1つ以上の同一または異なる基Rで置換されている)、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、あるいは0、1、2もしくは3個の環窒素原子および0もしくは1個の酸素原子および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環式または二環式へテロアリール基(これらの基は、いずれの場合も、非置換であるか、または一置換もしくは多置換されている)を表し、
は、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、あるいは0、1、2もしくは3個の環窒素原子および0もしくは1個の酸素原子および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環式または二環式へテロアリール基(これらの基は、いずれの場合も、非置換であるか、または一置換もしくは多置換されている)を表すか、
あるいは、RおよびRは、一緒になって、4、5または6個の炭素原子を有するアルキレン(必要により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニル、またはピリミジニルで一置換もしくは二置換されている);4または5個の炭素原子を有するベンズアルキレン;1個の酸素原子および3もしくは4個の炭素原子を有するオキサアルキレン;あるいは1個の窒素原子および3もしくは4個の炭素原子を有するアザアルキレン(ここで、窒素は、非置換であるか、あるいは低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニルまたはピラジニルで置換されている)を表し、
は、水素、低級アルキル、またはハロゲンを表すか、あるいは、
(b)Pyは、5−ピリミジルを意味し、Rは水素であり、Rは、[[(3S)−3−(ジメチルアミノ)−1−ピロリジニル]−メチル]−3−(トリフルオロメチル)フェニルであり、Rはメチルである]
のピリミジルアミノベンズアミドまたはその医薬的に許容可能な塩の、単独でのまたは別の活性化合物と組み合わせた使用に関する。
【0015】
式中、pyが3−ピリジルであり、基が、互いに独立に次の意味:
[すなわち、
・Rは、水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、またはフェニル−低級アルキルを;より好ましくは水素を表し、
・Rは、水素、低級アルキル(必要により1つ以上の同一または異なる基Rで置換されている)、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、あるいは0、1、2もしくは3個の環窒素原子および0もしくは1個の酸素原子および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環式または二環式へテロアリール基(これらの基は、いずれの場合も、非置換であるか、または一置換もしくは多置換されている)を表し、
・Rは、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、あるいは0、1、2もしくは3個の環窒素原子および0もしくは1個の酸素原子および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環式または二環式へテロアリール基(これらの基は、いずれの場合も、非置換であるか、または一置換もしくは多置換されている)を表し、
・Rは、低級アルキル、特にメチルを表す]を有する式Iのピリミジルアミノベンズアミド類が選択される。
【0016】
好ましいピリミジルアミノベンズアミドは、「ニロチニブ」としても知られる、4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドである。
【0017】
これまでおよびこれより使用される一般用語は、特記しない限り、好ましくは本開示の文脈内で次の意味を有する。
【0018】
接頭辞「低級」は、最大で7個まで(7個を含む)の、とりわけ最大で4個まで(4個を含む)の炭素原子を有する基を意味し、当該基は、直鎖または単一もしくは複数の分岐を有する分枝鎖のどちらかである。
【0019】
化合物、塩などに関して複数形を使用する場合、これは、単一の化合物、塩などをも意味すると解釈される。
【0020】
低級アルキルは、好ましくは、1個(1個を含む)〜7個(7個を含む)までの、好ましくは1個(1個を含む)〜4個(4個を含む)までのアルキルであり、直鎖または分枝鎖であり;好ましくは、低級アルキルは、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルなどのブチル;n−プロピルもしくはイソプロピルなどのプロピル;エチル;またはメチルである。好ましくは、低級アルキルは、メチル、プロピル、またはtert−ブチルである。
【0021】
低級アシルは、好ましくは、ホルミルまたは低級アルキルカルボニル、特にアセチルである。
【0022】
アリール基は、芳香族基であり、それは該基の芳香環炭素原子に配置された結合を介して分子に結合されている。好ましい実施形態において、アリールは、6〜14個の炭素原子を有する芳香族基、とりわけ、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フルオレニル、またはフェナントレニルであり、非置換であるか、あるいはアミノ、一置換もしくは二置換アミノ、ハロゲン、低級アルキル、置換された低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、フェニル、ヒドロキシ、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、エステル化カルボキシ、アルカノイル、ベンゾイル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミジノ、グアジニノ、ウレイド、メルカプト、スルホ、低級アルキルチオ、フェニルチオ、フェニル−低級アルキルチオ、低級アルキルフェニルチオ、低級アルキルスルフィニル、フェニルスルフィニル、フェニル−低級アルキルスルフィニル、低級アルキルフェニルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、フェニルスルホニル、フェニル−低級アルキルスルホニル、低級アルキルフェニルスルホニル、ハロゲン−低級アルキルメルカプト、ハロゲン−低級アルキルスルホニル(とりわけ、トリフルオロメタンスルホニルなど)、ジヒドロキシボラ(−B(H))、ヘテロシクリル、単環式もしくは二環式へテロアリール基、および環の隣接C−原子に結合している低級アルキレンジオキシ(メチレンジオキシなど)からとりわけ選択される1つ以上の、好ましくは3つまでの、とりわけ、1つまたは2つの置換基で置換されている。アリールは、より好ましくは、フェニル、ナフチル、またはテトラヒドロナフチルであり、それらは、いずれの場合も、非置換であるか、あるいはハロゲン(とりわけフッ素、塩素、または臭素);ヒドロキシ;低級アルキル(例えば、メチル)で、ハロゲン−低級アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で、またはフェニルでエーテル化されたヒドロキシ;2つの隣接C原子と結合した低級アルキレンジオキシ(例えば、メチレンジオキシ)、低級アルキル(例えば、メチルまたはプロピル);ハロゲン−低級アルキル(例えば、トリフルオロメチル);ヒドロキシ−低級アルキル(例えば、ヒドロキシメチルまたは2−ヒドロキシ−2−プロピル);低級アルコキシ−低級アルキル(例えば、メトキシメチルまたは2−メトキシエチル);低級アルコキシカルボニル−低級アルキル(例えば、メトキシカルボニルメチル);低級アルキニル(1−プロピニルなど);エステル化カルボキシ、とりわけ低級アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニルまたはイソプロポキシカルボニル);N−一置換カルバモイル、特に、低級アルキル(例えば、メチル、n−プロピルまたはイソプロピル)で一置換されたカルバモイル;アミノ;低級アルキルアミノ(例えば、メチルアミノ);ジ低級アルキルアミノ(例えば、ジメチルアミノまたはジエチルアミノ);低級アルキレン−アミノ(例えば、ピロリジノまたはピペリジノ);低級オキサアルキレン−アミノ(例えば、モルホリノ)、低級アザアルキレン−アミノ(例えば、ピペラジノ)、アシルアミノ(例えば、アセチルアミノまたはベンゾイルアミノ);低級アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル);スルファモイル;またはフェニルスルホニルを含む群から選択される1つまたは2つの置換基で独立に置換されている。
【0023】
シクロアルキル基は、好ましくは、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであり、非置換でもよいし、あるいはアリールに関する置換基のような前に定義した群から選択される1つ以上の、とりわけ1つまたは2つの置換基で、最も好ましくは低級アルキル(メチルなど)、低級アルコキシ(メトキシもしくはエトキシなど)またはヒドロキシで、さらにはオキソで置換されていてもよく、あるいはベンズシクロペンチルまたはベンズシクロヘキシルなどのベンゾ環に縮合されていてもよい。
【0024】
置換アルキルは、前に定義したようなアルキル、とりわけ低級アルキル、好ましくはメチルであり、ここで、1つ以上の、とりわけ3つまでの置換基が存在することができ、該置換基は、主に、ハロゲン(とりわけ、フッ素)、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ低級アルキルアミノ、N−低級アルカノイルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、およびフェニル−低級アルコキシカルボニルから選択される群からのものである。トリフルオロメチルが、とりわけ好ましい。
【0025】
一置換または二置換アミノは、とりわけ、低級アルキル(メチルなど);ヒドロキシ−低級アルキル(2−ヒドロキシエチルなど);低級アルコキシ低級アルキル(メトキシエチルなど);フェニル−低級アルキル(ベンジルまたは2−フェニルエチルなど);低級アルカノイル(アセチルなど);ベンゾイル;置換ベンゾイル(ここで、フェニル基は、ニトロ、アミノ、ハロゲン、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイルおよびカルバモイルから選択される1つ以上、好ましくは1つまたは2つの置換基でとりわけ置換されている);およびフェニル−低級アルコキシカルボニル(ここで、フェニル基は、非置換であるか、あるいは、ニトロ、アミノ、ハロゲン、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、およびカルバモイルから選択される1つ以上、好ましくは1つまたは2つの置換基でとりわけ置換されている)から互いに独立に選択される1つまたは2つの基で置換されたアミノであり;好ましくは、N−低級アルキルアミノ(N−メチルアミノなど)、ヒドロキシ−低級アルキルアミノ(2−ヒドロキシエチルアミノまたは2−ヒドロキシプロピルなど)、低級アルコキシ低級アルキル(メトキシエチルなど)、フェニル−低級アルキルアミノ(ベンジルアミノなど)、N,N−ジ低級アルキルアミノ、N−フェニル−低級アルキル−N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ低級アルキルフェニルアミノ、低級アルカノイルアミノ(アセチルアミノなど)、あるいはベンゾイルアミノおよびフェニル−低級アルコキシカルボニルアミノを含む群から選択される置換基(ここで、フェニル基は、いずれの場合も、非置換であるか、あるいはニトロもしくはアミノで、またはさらにハロゲン、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、カルバモイルもしくはアミノカルボニルアミノでとりわけ置換されている)である。二置換アミノは、また、低級アルキレン−アミノ(例えば、ピロリジノ、2−オキソピロリジノまたはピペリジノ)、低級オキサアルキレン−アミノ(例えば、モルホリノ)、または低級アザアルキレン−アミノ(例えば、ピペラジノ)、またはN−置換ピペラジノ(N−メチルピペラジノまたはN−メトキシカルボニルピペラジノなど)である。
【0026】
ハロゲンは、とりわけ、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、特に、フッ素、塩素、または臭素である。
【0027】
エーテル化ヒドロキシは、とりわけ、C〜C20アルコキシ(n−デシルオキシなど)、好ましくは低級アルコキシ(メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、またはtert−ブチルオキシなど)、フェニル−低級アルコキシ(ベンジルオキシ、フェニルオキシなど)、ハロゲン−低級アルコキシ(トリフルオロメトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシまたは1,1,2,2−テトラフルオロエトキシなど)、あるいは1つまたは2つの窒素原子を含む単環式または二環式へテロアリールで置換された低級アルコキシ、好ましくは、イミダゾリル(1H−イミダゾール−1−イルなど)、ピロリル、ベンズイミダゾリル(1−ベンズイミダゾリルなど)、ピリジル(とりわけ、2−、3−または4−ピリジル)、ピリミジニル(とりわけ、2−ピリミジニル)、ピラジニル、イソキノリニル(とりわけ、3−イソキノリニル)、キノリニル、インドリル、またはチアゾリルで置換された低級アルコキシである。
【0028】
エステル化ヒドロキシは、とりわけ、低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、低級アルコキシカルボニルオキシ(tert−ブトキシカルボニルオキシなど)、またはフェニル−低級アルコキシカルボニルオキシ(ベンジルオキシカルボニルオキシなど)である。
【0029】
エステル化カルボキシは、とりわけ、低級アルコキシカルボニル(tert−ブトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニルなど)、フェニル−低級アルコキシカルボニル、またはフェニルオキシカルボニルである。
【0030】
アルカノイルは、主として、アルキルカルボニル、とりわけ低級アルカノイル(例えば、アセチル)である。
【0031】
N−一置換またはN,N−二置換カルバモイルは、低級アルキル、フェニル−低級アルキルおよびヒドロキシ−低級アルキル、または低級アルキレン、オキサ−低級アルキレン、または末端窒素原子の位置で必要により置換されるアザ−低級アルキレンから独立に選択される1つまたは2つの置換基でとりわけ置換されている。
【0032】
0、1、2もしくは3個の環窒素原子および0もしくは1個の酸素原子および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環式または二環式へテロアリール基(これらの基は、いずれの場合も、非置換であるか、または一置換もしくは多置換されている)は、該ヘテロアリール基を式Iの分子の残部に結合している環中で不飽和である複素環部分を指し、好ましくは結合している環だけではなく、任意選択でさらに任意の縮合している環において、少なくとも1個の炭素原子を、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子で代替されている環であり、ここで、結合している環は、好ましくは5〜12個、より好ましくは5または6個の環原子を有し、非置換でもよいし、あるいはアリールに関する置換基として前に定義した群から選択される1つ以上、とりわけ1つまたは2つの置換基で、最も好ましくは低級アルキル(メチルなど)、低級アルコキシ(メトキシまたはエトキシなど)、またはヒドロキシで置換されていてもよい。好ましくは、単環式または二環式へテロアリール基は、2H−ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、プリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、キノリニル、プテリジニル、インドリジニル、3H−インドリル、インドリル、イソインドリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニルおよびフラニルから選択される。より好ましくは、単環式または二環式へテロアリール基は、ピロリル、イミダゾリル(1H−イミダゾール−1−イルなど)、ベンズイミダゾリル(1−ベンズイミダゾリルなど)、インダゾリル(とりわけ、5−インダゾリル)、ピリジル(とりわけ、2−、3−または4−ピリジル)、ピリミジニル(とりわけ、2−ピリミジニル)、ピラジニル、イソキノリニル(とりわけ、3−イソキノリニル)、キノリニル(とりわけ、4−または8−キノリニル)、インドリル(とりわけ、3−インドリル)、チアゾリル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニル、およびフラニルからなる群から選択される。本発明の1つの好ましい実施形態において、ピリジル基は、窒素原子のオルト位がヒドロキシルで置換され、それ故、少なくとも一部は、対応する互変異性体であるピリジン−(1H)2−オンの形態で存在する。
【0033】
別の好ましい実施形態において、ピリミジニル基は、2位および4位の双方がヒドロキシで置換され、それ故、いくつかの互変異性形、例えば、ピリミジン−(1H,3H)2,4−ジオンとして存在する。
【0034】
ヘテロシクリルは、窒素、酸素および硫黄を含む群から選択される1または2個のヘテロ原子を有するとりわけ5、6または7員の複素環式系であり、不飽和でもよいし、あるいは完全にまたは部分的に飽和でもよく、かつ、非置換であるか、または、とりわけ低級アルキル(メチルなど)、フェニル−低級アルキル(ベンジルなど)、オキソ、もしくはヘテロアリール(2−ピペラジニルなど)で置換されており;ヘテロシクリルは、とりわけ、2−または3−ピロリジニル、2−オキソ−5−ピロリジニル、ピペリジニル、N−ベンジル−4−ピペリジニル、N−低級アルキル−4−ピペリジニル、N−低級アルキル−ピペラジニル、モルホリニル(例えば、2−または3−モルホリニル)、2−オキソ−1H−アゼピン−3−イル、2−テトラヒドロフラニル、または2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イルである。
【0035】
式Iの範囲内のピリミジルアミノベンズアミド(ここで、pyは3−ピリジルである)、およびそれらの製造方法は、参照により本出願に組み込まれる、2004年1月15日に公開の国際公開第04/005281号に開示されている。
【0036】
式Iのピリミジルアミノベンズアミド(ここで、Pyは5−ピリミジルを意味し、Rは水素であり、Rは[[(3S)−3−(ジメチルアミノ)−1−ピロリジニル]メチル]−3−(トリフルオロメチル)フェニルであり、Rはメチルである)は、INNO−406としても知られている。該化合物、その製造、およびその投与に適した医薬組成物が、欧州特許出願公開第1533304号に開示されている。
【0037】
式Iのピリミジルアミノベンズアミド(ここで、pyは3−ピリジルである)の医薬的に許容可能な塩は、とりわけ、国際公開第2007/015871号に開示されているものである。1つの好ましい実施形態において、ニロチニブは、その塩酸塩一水和物の形態で用いられる。国際公開2007/015870号には、本発明にとって有用な、ニロチニブのいくつかの多形体およびその医薬的に許容可能な塩が開示されている。
【0038】
式Iのピリミジルアミノベンズアミド(ここで、pyは3−ピリジルである)は、経口、非経口(例えば、腹腔内、静脈内、筋内、皮下、腫瘍内、もしくは直腸)、または経腸を含む任意の経路で投与することができる。好ましくは、式Iのピリミジルアミノベンズアミド(ここで、pyは3−ピリジルである)は、経口で、好ましくは50〜2000mgの1日当たり投与量で投与される。ニロチニブの好ましい1日当たり経口投与量は、200〜1200mg、例えば800mgであり、単回用量として、または1日2回投与などの複数回用量に分割して投与される。INNO−406は、200〜300mg、例えば240mgの用量で1日2回経口で投与することができる。
【0039】
通常、最初に少量の用量を投与し、該投与量を、治療下の宿主に対する最適投与量が決定されるまで徐々に増加させる。投与量の上限は、副作用によって課せられる量であり、治療されている宿主に対する試験によって決定できる。
【0040】
用語「治療」または「療法」は、本明細書中で開示される疾患の予防的または好ましくは治療的(限定はされないが、緩和、治癒、症状軽減、症状低減、キナーゼ調節および/またはキナーゼ阻害が挙げられる)処置を指す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】肺組織中の間質性コラーゲン(マニュアルスコア)の、Picrosirius red染色を使用して組織学的に判定される相対面積および強度を示す図である(統計解析:マン・ホイットニー順位和検定)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
さらなる態様において、本発明は、組合せ製剤または医薬組成物などの組合せ(併用)(combination)に関するものであり、該組合せは、(a)少なくとも1種の式Iのピリミジルアミノベンズアミド、および(b)AT−受容体アンタゴニストおよびACE阻害薬から選択される少なくとも1種の化合物を含み、該組合せ中で、活性成分は、同時的、個別的または逐次的使用(simultaneous, separate or sequential use)のために、互いに独立に遊離形態で、または医薬的に許容可能な塩および任意選択で少なくとも1種の医薬的に許容可能な担体の形態で存在する。このような組合せは、以後、「本発明の組合せ」と呼ぶ。
【0043】
「本発明の組合せ」は、肝線維症を治療するのに特に有用である。
【0044】
驚くべきことに、「本発明の組合せ」のin vivoでの投与は、有益な効果、とりわけ、例えば、線維症を減速、抑制または逆転することに関する相乗的治療効果だけではなく、さらに驚くべき有益な効果、例えば、「本発明の組合せ」中で使用される医薬的に活性な成分の一方のみを適用する単剤療法に比較して、より少ない副作用、生活の質の改善、ならびに罹患率および死亡率の減少をもたらす。
【0045】
さらなる利点は、より少ない用量の「本発明の組合せ」の活性成分を使用できること、例えば、投与量が、しばしばより少なくてよいばかりではなく、より少ない頻度で適用され、あるいは副作用の発生率を減らすのに使用できることである。このことは、治療される予定の患者の希望および要求と一致する。
【0046】
AT−受容体アンタゴニスト(アンジオテンシンII受容体アンタゴニストとも呼ばれる)は、アンジオテンシンII受容体のAT−受容体サブタイプに結合するが、受容体の活性化をもたらさない活性成分であると解される。AT−受容体の阻害の結果として、これらのアンタゴニストを、例えば、血圧降下薬としてまたは鬱血性心不全を治療するために採用することができる。
【0047】
AT−受容体アンタゴニストの部類は、異なる構造的特徴を有する化合物を包含し、本質的に好ましいのは非ペプチド性化合物である。例えば、バルサルタン(欧州特許出願公開第0443983号または米国特許第5,399,578号に記載のような−CAS:137862-53-4、商標名:Diovan)、ロサルタン(欧州特許出願公開第253310号に記載されている)、カンデサルタン(欧州特許出願公開第459136号に記載されている)、エプロサルタン(欧州特許出願公開第403159号に記載されている)、イルベサルタン(欧州特許出願公開第454511号に記載されている)、オルメサルタン(欧州特許出願公開第503785号に記載されている)、タソサルタン(欧州特許出願公開第539086号に記載されている)、テルミサルタン(欧州特許出願公開第522314号に記載されている)、またはシレキセチルからなる群から選択される化合物を挙げることができる。
【0048】
ACE阻害薬の部類は、異なる構造的特徴を有する化合物を包含する。例えば、アラセプリル、ベナゼプリル、ベナゼプリラート、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナプリラート、フォシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル、テモカプリル、およびトランドラプリル、またはいずれの場合もその医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される化合物を挙げることができる。好ましいACE阻害薬は、上市されている薬剤であり、最も好ましいのは、ベナゼプリルおよびエナラプリルである。
【0049】
組合せパートナーへの言及は、該化合物の医薬的に許容可能な塩も包含することを意味すると解される。
【0050】
コード番号、一般名または商品名によって識別される活性薬剤の構造は、標準的な概論「The Merck Index」の現行版から、またはデータベース、例えば、Patents International(例えば、IMS World Publication)から得ることができる。その該当する内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
本明細書中で開示される組合せ中で用いられる組合せパートナーが、単一薬物として市販される形態で適用される場合、それらの投与量および投与方式は、本明細書中に特記されていないなら、本明細書に記載の有益な効果をもたらすために、それぞれの市販薬物の包装挿入物に示されている情報に従って行うことができる。
【0052】
最良の実施形態において、アンジオテンシン受容体遮断薬は、バルサルタンである。バルサルタンは、強力な、経口で活性のあるアンジオテンシンII受容体アンタゴニストであり、1日1回、80mgおよび160mgの用量で、軽度〜中等度の本態性高血圧の治療に関して、一般的に使用されるACE阻害薬(エナラプリルが挙げられる)と同様に有効かつ良好な耐容性であることがわかった。「本発明の組合せ」によるバルサルタンの好ましい経口での1日当たり投与量は、40〜180mgの間、好ましくは80〜160mgである。
【0053】
したがって、さらに好ましい態様において、本発明は、前記のような組合せ、使用または方法に関するものであり、ここで、(a)は、少なくとも1種の式Iのピリミジルアミノベンズアミド、とりわけ、ニロチニブであり、(b)は、バルサルタンおよび任意選択でヒドロクロロチアジドである。驚くべきことに、組合せパートナー(b)としてのバルサルタンは、有益かつ予想外の効果、例えば、組合せパートナー(a)および(b)の効果の相互増強、特に、相乗作用、例えば、相加効果を超える効果、付加的な有利な効果、より少ない副作用、組合せパートナー(a)および(b)の一方または双方の非有効投与量での組合せ治療効果、ならびに極めて好ましくは、組合せパートナー(a)および(b)の強力な相乗作用を示す。
【0054】
本発明は、さらに、線維症を治療するための医薬を調製するための組合せの使用;このような組合せを、同時的、個別的または逐次的使用のための組合せ製剤として、このような組合せを線維症の治療で使用するための説明書と一緒に含む市販パーケージまたは製品、ならびに線維症を治療する方法に関する。
【0055】
用語「組合せ製剤」は、本明細書中で使用する場合、前に定義したような組合せパートナー(a)および(b)を、独立に、または組合せパートナー(a)および(b)の特徴的な量(distinguished amount)を含む種々の固定された組合せを使用することによって、すなわち、同時にまたは異なる時点で投与できるという意味で、特に「パーツのキット(kit of parts)」を規定する。次いで、パーツのキット中のパーツを、例えば、同時に、または時差的交互的に(chronologically staggered)、すなわち、パーツのキット中の任意のパーツに関して異なる時点で、かつ等しいまたは異なる時間間隔で投与できる。極めて好ましくは、時間間隔は、治療される疾患に対するパーツの組合せ使用での効果が、組合せパートナー(a)および(b)のいずれか一方のみを使用して得られる効果に比べてより大きくなるように選択される。組合せ製剤における投与すべき組合せパートナー(a)の組合せパートナー(b)に対する総量比率は、例えば、治療予定の患者下位集団の必要性または単一患者の必要性(必要性の相違は、患者の個々の疾患、年齢、性別、体重などによることがある)をうまく処理するように変更できる。好ましくは、少なくとも1種の有益な効果、例えば、組合せパートナー(a)および(b)の効果の相互増強、特に、相乗作用、例えば、相加効果を超える効果、さらなる有利な効果、より少ない副作用、組合せパートナー(a)および(b)の一方または双方の非有効投与量での組合せ治療効果、ならびに極めて好ましくは組合せパートナー(a)および(b)の強力な相乗作用が存在する。
【0056】
したがって、さらに別の実施形態において、本発明は、動物に、「本発明の組合せ」および任意選択で少なくとも1種の医薬的に許容可能な担体を含む組合せ製剤または医薬組成物などの組合せを投与することを含む、線維症性障害を有するか、あるいはそれに罹患していると思われる温血動物(とりわけ、ヒト)を治療する方法、特に肝線維症を治療する方法を提供する。
【0057】
「本発明の組合せ」を含み、線維症性疾患(特に、肝線維症)に対して一緒になって治療上有効である量を含む医薬組成物を提供することは、本発明の1つの目的である。この組成物において、組合せパートナー(a)および(b)は、一緒に、代わるがわる、または1つの組合せ単位剤形(combined unit dosage form)で、もしくは2つの別個の単位剤形で別々に投与することができる。単位剤形は、固定された組合せでもよい。
【0058】
組合せパートナー(a)および(b)を別個的に投与するための、ならびに固定された組合せ、すなわち、本発明による少なくとも2種の組合せパートナー(a)および(b)を含む単一製剤組成物(single galenical composition)で投与するための医薬組成物は、本質的に公知の方式で調製することができ、ヒトを含む哺乳動物(温血動物)に対する経腸(経口または経直腸など)および非経口投与に適した組成物であり、治療上有効な量の少なくとも1種の薬理学的に活性な組合せパートナーを、単独で、またはとりわけ経腸または非経口適用に適した1種以上の医薬的に許容可能な担体と組み合わせて含む。
【0059】
新規な医薬組成物は、例えば、約10%〜約100%、好ましくは約20%〜約60%の活性成分を含む。組合せ療法のための経腸または非経口投与用の医薬製剤は、例えば、糖衣錠、錠剤、カプセル剤または座剤およびさらにはアンプル剤などの単位剤形中の製剤である。特記されないなら、これらは、本質的に公知の方式で、例えば、通常的な混合、造粒、糖衣、溶解または凍結乾燥工程によって調製される。必要な有効量は複数の投与量単位を投与することによって達することができるので、各剤形の個々の用量中に含まれる組合せパートナーの単位含有量は、それ自体有効量を構成する必要はないことを認識されたい。
【0060】
特に、「本発明の組合せ」の組合せパートナー中のそれぞれの治療上有効な量は、同時にまたは逐次的かつ任意の順序で投与することができ、構成成分は、別個にまたは固定された組合せとして投与することができる。「本発明の組合せ」中の個々の組合せパートナーは、治療過程中の異なる時点で別個に、あるいは分割または単一の組合せ形態で同時に投与することができる。さらに、用語「投与すること(administering)」は、それ自体in vivoで組合せパートナーに転化する、組合せパートナーのプロドラッグの使用を包含する。したがって、本発明は、同時または交互治療(alternating treatment)のすべてのこのようなレジメンを包含すると解すべきであり、用語「投与すること」はそれに合うように解釈されるべきである。
【0061】
「本発明の組合せ」中で用いられる組合せパートナーのそれぞれの有効投与量は、用いられる個々の化合物または医薬組成物、投与方式、治療されている状態、治療されている状態の重症度に応じて変更できる。したがって、「本発明の組合せ」のレジメンは、投与経路および患者の腎機能および肝機能を含む各種因子に従って選択される。当業の医師、臨床医または獣医師は、状態の進行を予防、阻止または抑止するのに要求される単一活性成分の有効量を容易に決定し、処方することができる。毒性なしに有効性をもたらす範囲内の活性成分濃度を最適の精度で達成するには、標的部位に対する活性成分の利用能の動力学をベースにしたレジメンが必要とされる。
【0062】
さらに、本発明は、活性成分として「本発明の組合せ」を、線維症性疾患の進行遅延または治療におけるその同時的、個別的または逐次的使用のための説明書と一緒に含む市販パッケージを提供する。
【0063】
当業者は、これまでおよびこれから指摘する治療適応症および有益な効果を立証するための関連試験モデルを選択することが十分可能である。薬理学的活性は、例えば、十分に確立されたin vitroおよびin vivoでの試験法で、または本質的には後で説明する臨床研究で立証される。例えば、in vivo試験は、例えば、後記の方法またはDriscoll KEらがToxicol.Appl.Pharmacol.(1992)116:30〜7中で発表しているプロトコールにより、式Iのピリミジルアミノベンズアミドまたはその医薬的に許容される塩が、マウスにおけるアスベスト誘発性の肺の瘢痕形成を抑制するか、あるいはマウスにおけるバナジウム誘発性肺線維症を有意に低減(すなわち、線維芽細胞の増殖抑制、ヒドロキシプロリン蓄積の低減)することを示すことができる。肺線維症のためのもう1つの十分に確立されたモデルは、E.WhiteらがAm J Respir Crit Care Med.2006,173:112〜121に発表しているラットのブレオマイシンモデルである。
【実施例】
【0064】
実施例1 ラットのブレオマイシンモデルにおけるニロチニブ(AMN107)
ブレオマイシン単独、およびブレオマイシンとAMN107を含むいくつかの他の化合物との組合せに関して、Picrosirius red染色を使用して判定される、肺間質におけるコラーゲン沈着レベルの組織学的分析を実施した。結果を図1に示す。図1に描いたように(Picrosirius red染色を使用して組織学的に判定される肺組織における間質性コラーゲンのレベルを示す)、AMN107の共投与は、ブレオマイシンの影響を、50%を超えて低下させることができる(統計解析:マン・ホイットニー順位和検定)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】


[式中、
(a)Pyは3−ピリジルを意味し、
は、水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、またはフェニル−低級アルキルを表し、
は、水素、低級アルキル(必要により1つ以上の同一または異なる基Rで置換されている)、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0、1、2もしくは3個の環窒素原子および0もしくは1個の酸素原子および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環式または二環式へテロアリール基(これらの基は、いずれの場合も、非置換であるか、または一置換もしくは多置換されている)を表し、
かつ、Rは、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、あるいは0、1、2もしくは3個の環窒素原子および0もしくは1個の酸素原子および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環式または二環式へテロアリール基(これらの基は、いずれの場合も、非置換であるか、または一置換もしくは多置換されている)を表すか、
あるいは、RおよびRは、一緒になって、4、5または6個の炭素原子を有するアルキレン(必要により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニル、またはピリミジニルで一置換または二置換されている);4または5個の炭素原子を有するベンズアルキレン;1個の酸素および3または4個の炭素原子を有するオキサアルキレン;あるいは1個の窒素原子および3または4個の炭素原子を有するアザアルキレン(ここで、窒素は、非置換であるか、あるいは低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニルまたはピラジニルで置換されている)を表し、
は、水素、低級アルキル、またはハロゲンを表すか、あるいは、
(b)Pyは、5−ピリミジルを意味し、Rは水素であり、Rは、[[(3S)−3−(ジメチルアミノ)−1−ピロリジニル]−メチル]−3−(トリフルオロメチル)フェニルであり、Rはメチルであり、
ここで、接頭辞「低級」は、最大で7個(7個を含む)までの炭素原子を有する基を意味する]
のピリミジルアミノベンズアミドまたはその医薬的に許容可能な塩の、肺線維症および肝線維症から選択される線維症を治療するための医薬組成物を調製するための使用。
【請求項2】
式Iのピリミジルアミノベンズアミドが、4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ピリミジルアミノベンズアミドが、その塩酸塩一水和物の形態で用いられる、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
式(I)
【化2】


[式中、
(a)Pyは3−ピリジルを意味し、
は、水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、またはフェニル−低級アルキルを表し、
は、水素、低級アルキル(必要により1つ以上の同一または異なる基Rで置換されている)、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0、1、2もしくは3個の環窒素原子および0もしくは1個の酸素原子および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環式または二環式へテロアリール基(これらの基は、いずれの場合も、非置換であるか、または一置換もしくは多置換されている)を表し、
は、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、あるいは0、1、2もしくは3個の環窒素原子および0もしくは1個の酸素原子および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式へテロアリール基(これらの基は、いずれの場合も、非置換であるか、または一置換もしくは多置換されている)を表すか、あるいは
およびRは、一緒になって、4、5または6個の炭素原子を有するアルキレン(必要により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、一置換もしくは二置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニル、またはピリミジニルで一置換または二置換されている);4または5個の炭素原子を有するベンズアルキレン;1個の酸素および3または4個の炭素原子を有するオキサアルキレン;あるいは1個の窒素原子および3または4個の炭素原子を有するアザアルキレン(ここで、窒素は、非置換であるか、あるいは低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニルまたはピラジニルで置換されている)を表し、
は、水素、低級アルキル、またはハロゲンを表すか、あるいは、
(b)Pyは、5−ピリミジルを意味し、Rは水素であり、Rは、[[(3S)−3−(ジメチルアミノ)−1−ピロリジニル]−メチル]−3−(トリフルオロメチル)フェニルであり、Rはメチルである]
のピリミジルアミノベンズアミド誘導体またはこのような化合物の医薬的に許容可能な塩を投与することを含む、肺線維症または肝線維症を治療または予防する方法。
【請求項5】
ピリミジルアミノベンズアミドが、4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ピリミジルアミノベンズアミドが、その塩酸塩一水和物の形態で用いられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
線維症が、DDR1(ジスコイジンドメイン受容体1)、DDR2(ジスコイジンドメイン受容体1)およびPDGFR(血小板由来増殖因子受容体)のキナーゼ活性の少なくとも1つによって媒介される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用、または請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(a)少なくとも1種の請求項1で定義した通りの式Iのピリミジルアミノベンズアミド、および(b)AT−受容体アンタゴニストおよびACE阻害薬から選択される少なくとも1種の化合物を含み、その中で、活性成分が、同時的、個別的または逐次的使用のために、互いに独立に、遊離形態で、または医薬的に許容可能な塩および任意選択で少なくとも1種の医薬的に許容可能な担体の形態で存在する、組合せ。
【請求項9】
AT−受容体アンタゴニストが、バルサルタン、ロサルタン、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、およびシレキセチルから選択される、請求項8に記載の組合せ。
【請求項10】
AT−受容体アンタゴニストがバルサルタンである、請求項9に記載の組合せ。
【請求項11】
ピリミジルアミノベンズアミドが、4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドである、請求項8から10のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項12】
動物に、請求項8から11のいずれか一項に記載の組合せ、および任意選択で少なくとも1種の医薬的に許容可能な担体を投与することを含む、肺線維症または肝線維症を有するまたはそれらに罹患していると思われる温血動物、とりわけヒトを治療する方法。
【請求項13】
肝線維症を治療するための、請求項8から11のいずれか一項に記載の組合せの使用。
【請求項14】
慢性のB型肝炎、C型肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、アルコール性肝疾患、代謝性肝疾患、胆管閉塞、または原因不明の線維症に関連する肝疾患を有する患者の肝線維症を治療するための、請求項1から3または請求項13のいずれか一項に記載の使用。


【図1】
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【公表番号】特表2011−528015(P2011−528015A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517892(P2011−517892)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058940
【国際公開番号】WO2010/007034
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】