説明

線量を低減させたX線撮像の方法及びシステム

【課題】患者のX線曝射に基づく撮像手法において、患者のX線被曝を実行可能な範囲まで最小化し又は減少させつつ、可能な限り多くの有用な画像データを取得する。
【解決手段】全走査に対応しているが線量を低減させて計算機式断層写真法(CT)画像データを取得するアプローチが開示される。一具現化形態では、X線管電流変調を用いて実効線量を減少させる。他の具現化形態では、散在型ビューの取得、z−コリメーション、及び2回転取得プロトコルを用いて、全走査取得プロトコルに対して低減された線量を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
非侵襲型の撮像技術は、患者又は物体に対して侵襲的処置を施すことなく患者又は物体の内部構造の画像を得ることを可能にする。具体的には、計算機式断層写真法(CT)のような技術が、標的容積を通過するX線の差分透過のような様々な物理的原理を用いて、画像データを取得して断層写真法画像(例えば人体又は他の被撮像構造の内部の三次元表現)を構築する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
しかしながら、患者のX線曝射に基づく撮像手法は、可能な限り多くの有用な画像データを取得するという要求と、患者のX線被曝を実行可能な範囲まで最小化する又は減少させるという要求との間で比較考量を要する場合がある。すなわち、患者が被曝するX線量は、取得される画像データの形式及び/又は量を制約し得る。結果として、幾つかの状況において又は幾つかの病状(心臓応用若しくは血管撮影法応用等)について有用であると看做され得る撮像プロトコルが、投与線量の理由で望ましくない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態では、画像データ取得の方法が提供される。この方法によれば、撮像容積の周りで少なくとも全回転を通してX線源を回転させる。半走査(ハーフ・スキャン)に全体的に対応する全回転の部分が全回転の残部よりも高い動作電流において生ずるように、全回転中にX線源の動作電流を変調させる。X線源が撮像容積の周りを回転するのに伴ってX線透過データを取得する。
【0004】
さらにもう一つの実施形態では、CTイメージング・システムでの画像データ取得の方法が提供される。この方法によれば、撮像容積の周りで少なくとも1回の全回転を通してCTイメージング・システムのX線源を回転させる。撮像容積の周りでのX線源の回転中に全走査(フル・スキャン)に対応する画像データを取得する。画像データの取得に関連する線量が、X線源の一定の動作電流においてCTイメージング・システムにおいて全走査を行なうことに関連する対応する線量よりも小さい。
【0005】
もう一つの実施形態では、CTイメージング・システムが提供される。このCTイメージング・システムは、撮像容積の周りを回転するように構成されているX線源と、X線源によって放出されたX線を検出するように構成されている検出器とを含んでいる。CTイメージング・システムはまた、X線源及び検出器の一方又は両方の動作を制御するように構成されているシステム制御器を含んでいる。システム制御器は、撮像容積の周りで少なくとも1回の全回転にわたりX線源を回転させて、撮像容積の周りでのX線源の回転中に全走査に対応する画像データを取得する。画像データの取得に関連する線量が、X線源の一定の動作電流においてCTイメージング・システムにおいて全走査を行なうことに関連する対応する線量よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の実施形態のこれらの特徴及び観点、並びに他の特徴及び観点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むとさらに十分に理解されよう。図面全体にわたり、類似の参照符号は類似の部材を表わす。
【図1】本開示の各観点による画像を形成するのに用いられるCTイメージング・システムの線図である。
【図2】一定のX線管電流(mA)において実行される全走査についての積算管電流を示す図である。
【図3】一定のX線管電流において実行される半走査についての積算管電流を示す図である。
【図4】本開示の各観点によるX線管電流が半走査領域に関して対称に変調される全走査の一具現化形態についての積算管電流を示す図である。
【図5】本開示の各観点によるX線管電流が半走査領域に関して非対称に変調される全走査の一具現化形態についての積算管電流を示す図である。
【図6】本開示の各観点によるX線管電流が半走査領域に関して非対称に変調される全走査のさらにもう一つの具現化形態についての積算管電流を示す図である。
【図7】本開示の各観点による管電圧を高から低へ高速に変化させることによる散在型ビューが半走査領域の外部で取得されるような全走査の一具現化形態についての積算管電流を示す図である。
【図8】本開示の各観点によるそれぞれのデータ取得が異なるX線管電流において生ずるような2回転走査の一具現化形態について積算管電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ワイド・コーン(wide-cone)・アキシャル心CT再構成のような幾つかの撮像プロトコルでは、従来の半走査(すなわち180°部分回転+X線ビームのコーン角又はファン角)と同じ時間分解能を保ちつつコーン・ビーム・アーティファクトを最小化するように、全走査(すなわち360°回転分の画像データ+幾分かの可能な重なり)の画像データが取得され得る。他の走査プロトコルも、アーティファクトを減少させる又は他の場合にはさらに完全なデータ集合を提供する等のために、360°分のビューの取得から利益を享受し得る。かかる全走査具現化形態は360°分のビューを取得するため、従来の半走査に比較してX線量は約50%増大する。
【0008】
本書に開示される各実施形態は、全走査型ワイド・コーン・データ取得のような所望の形式及び/又は量のX線画像データを得つつ患者X線量を減少させる様々なアプローチに関する。幾つかのかかる実施形態では、画像データ取得中にmA変調を用いることにより、線量を減少させて全走査のデータを得ることができる。他のアプローチでは、散在型(sparse)ビュー取得を用いて、全走査のコーン・ビーム・データのような画像データを取得しつつ所与の線量未満に留めることができる。同様に、2回転プロトコル及び/又はz−コリメーションをかかるシナリオに用いることができる。これらのようなアプローチでは、全走査の画像データ(心CT画像データ等)を適当なX線量レベルにおいて取得することができる。
【0009】
このことを念頭に置いて、本発明のアプローチに従って患者(又は他の着目被検体若しくは着目物体)の周りの多様なビューにおいてX線減弱データを取得するのに適しており断層写真法再構成に適した計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム10の一例を図1に掲げる。図1に示す実施形態では、イメージング・システム10は、コリメータ14に隣接して配置されているX線放射線源12を含んでいる。X線源12は、X線管、分散型X線源(固体X線源若しくは熱イオンX線源等)、又は医用画像若しくは他の画像の取得に適した他の任意のX線放射線源であってよい。
【0010】
コリメータ14は、患者18が配置されている領域にX線16を通過させる。図示の例では、X線16は円錐形のビームすなわちコーン・ビームになるようにコリメートされて、このビームが被撮像容積を通過する。X線放射線の一部20が患者18(若しくは他の着目被検体)を又は周囲を通過して、参照番号22に全体的に表わされている検出器アレイに入射する。アレイの検出器素子は、入射X線20の強度を表わす電気信号を発生する。これらの信号を取得し処理して、患者18の体内の特徴の画像を再構成する。
【0011】
線源12はシステム制御器24によって制御され、制御器24はCT検査系列のための電力及び制御信号の両方を供給する。図示の実施形態では、システム制御器24は、当該システム制御器24の一構成要素であり得るX線制御器26を介して線源12を制御する。かかる実施形態では、X線制御器26は、電力及びタイミング信号をX線源12に供給するように構成され得る。
【0012】
また、検出器22もシステム制御器24に結合され、制御器24は検出器22において発生される信号の取得を制御する。図示の実施形態では、システム制御器24は、検出器によって発生される信号をデータ取得システム28を用いて取得する。データ取得システム28は、検出器22の読み出し電子回路によって収集されるデータを受け取る。データ取得システム28は標本採集されたアナログ信号を検出器22から受け取り、このデータをディジタル信号へ変換して、以下で議論されるプロセッサ30による後の処理に供することができる。代替的に他の実施形態では、検出器22自体に設けられている回路によってディジタルからアナログへの変換を行なうことができる。システム制御器24はまた、ダイナミック・レンジの初期調節及びディジタル画像データのインタリーブ処理等のような取得画像信号に関する様々な信号処理作用及びフィルタ処理作用を実行することができる。
【0013】
図1に示す実施形態では、システム制御器24は回転サブシステム32及び線形配置サブシステム34に結合されている。回転サブシステム32は、X線源12、コリメータ14及び検出器22が、患者を中心としたxy平面において主に回転する等のように患者18の周りで1回又は多数回にわたり回転することを可能にする。尚、回転サブシステム32は、それぞれのX線放出構成要素及びX線検出構成要素が配設されているガントリを含み得ることを特記しておく。このように、かかる実施形態では、システム制御器24を用いてガントリを動作させることができる。
【0014】
線形配置サブシステム34は、患者18又はさらに明確に述べると患者を支持したテーブルを、ガントリの回転に対してz方向等にCTシステム10の中孔の内部で変位させることを可能にし得る。このように、テーブルをガントリの内部で線形移動させることができ(連続的態様又は段階的態様で)、患者18の特定の区域の画像を形成することができる。図示の実施形態では、システム制御器24は、モータ制御器36を介して回転サブシステム32及び/又は線形配置サブシステム34の移動を制御する。
【0015】
一般的には、システム制御器24は、検査プロトコルを実行して取得データを処理するようにイメージング・システム10の動作を命令する(上述の線源12、検出器22、及び配置システムの動作等を介して)。例えば、システム制御器24は上述の各システム及び各制御器を介して、X線減弱データを被検体に対して多様なビューにおいて得ることができるように線源12及び検出器22を支持したガントリを着目被検体の周りに回転させることができる。ここでの状況では、システム制御器24はまた、信号処理回路と、コンピュータによって実行されるプログラム及びルーチン(本書に記載される画像処理手法を実行するルーチン等)、並びに構成パラメータ及び画像データ等を記憶する付設されるメモリ回路とを含み得る。
【0016】
図示の実施形態では、システム制御器24によって取得されて処理される画像信号は、画像の再構成のために処理構成要素30に供給される。処理構成要素30は、1又は複数の従来のマイクロプロセッサであってよい。データ取得システム28によって収集されるデータは、直接又はメモリ38での記憶の後に処理構成要素30に伝送され得る。データを記憶するのに適した任意の形式のメモリが、かかる例示的なシステム10によって用いられ得る。例えば、メモリ38は、1又は複数の光学式、磁気式、及び/又は固体メモリ記憶構造を含み得る。また、メモリ38は、取得システムの現場に位置していてもよいし、後述するような画像再構成のためのデータ、処理パラメータ、及び/又はルーチンを記憶する遠隔記憶装置を含んでいてもよい。
【0017】
処理構成要素30は、典型的にはキーボード及び/又は他の入力装置を装備した操作者ワークステーション40を介して操作者から命令及び走査パラメータを受け取るように構成され得る。操作者が、操作者ワークステーション40を介してシステム10を制御することができる。このように、操作者は、操作者ワークステーション40を用いて再構成画像を観察し、且つ/又は他の場合にはシステム10を動作させることができる。例えば、操作者ワークステーション40に結合されている表示器42を用いて再構成画像を観察したり撮像を制御したりすることができる。加えて、操作者ワークステーション40に結合され得るプリンタ44によって画像を印刷することもできる。
【0018】
さらに、処理構成要素30及び操作者ワークステーション40を、標準型又は特殊目的のコンピュータ・モニタ及び付設の処理回路を含み得る他の出力装置に結合することができる。さらに、システム・パラメータの出力、検査依頼、及び画像観察等を行なうために1又は複数の操作者ワークステーション40がシステムに結合されていてよい。一般的には、システムの内部に提供されている表示器、プリンタ、ワークステーション、及び類似の装置は、データ取得構成要素に対してローカルに位置していてもよいし、これらの構成要素から遠隔に位置していてもよく、インターネット及び仮想私設網等のような1又は複数の構成自在型網を介して画像取得システムに結合されて施設若しくは病院の内部の他の箇所、又は全く異なる位置等に位置していてよい。
【0019】
さらに、操作者ワークステーション40はまた、画像保管及び通信システム(PACS)46に結合され得ることを特記しておく。次いで、異なる位置にいる他者が処理前又は処理済みの画像データに接触し得るように、PACS46を遠隔クライアント48、放射線科情報システム(RIS)、病院情報システム(HIS)、又は内外の網に結合してよい。
【0020】
以上の議論ではイメージング・システム10の様々な例示的な構成要素を別々に扱ったが、これら様々な構成要素が共通の一つのプラットフォームの内部又は相互接続された複数のプラットフォームに設けられていてもよい。例えば、処理構成要素30、メモリ38、及び操作者ワークステーション40が、本開示の各観点に従って動作するように構成されている汎用又は特殊目的のコンピュータ又はワークステーションとしてまとめて設けられていてもよい。かかる実施形態では、汎用又は特殊目的コンピュータはシステム10のデータ取得構成要素に関して別個の構成要素として設けられていてもよいし、かかる構成要素を備えた共通のプラットフォームに設けられていてもよい。同様に、システム制御器24も、かかるコンピュータ又はワークステーションの一部として設けられていてもよいし、画像取得専用の別個のシステムの一部として設けられていてもよい。
【0021】
前述のように、図示のCTイメージング・システム10のようなイメージング・システムによる画像データの取得は、撮像過程中に患者の幾分かのX線被曝を伴う。この線量は特に、検査中に全走査(すなわち360°回転分の画像データ・ビュー+幾分かの可能な重なり)が用いられているか、或いは半走査(すなわち180°部分回転+X線ビームのコーン角又はファン角)が用いられているかに依存して変化する。例えば、図2へ移ると、撮像容積の周りでのX線源の全走査回転についてのX線管電流プロファイルが示されている。同様に、図3は、撮像容積の周りでのX線源の半走査回転についてのX線管電流プロファイルを示す。図2及び図3では、網掛けの面積が、それぞれ全走査及び半走査についての患者線量に対応する積算X線管電流(mAs単位)60、62を表わす。55°のファン角度の場合に、全走査に関連する積算管電流60は、半走査に関連する積算管電流62に関して53%(横側領域64)だけ増大している。幾つかの実施形態では、半走査データ取得に関連する時間分解能を保ちつつ(すなわち半走査の短縮した継続時間による)、また半走査に対して相対的な線量の不利益を保つ又は減少させつつ、全走査データ取得に関連する利益(例えばコーン・ビーム・アーティファクトが減少する)を保つことが目標である。
【0022】
図2及び図3に関して、幾つかの取得アプローチでは、全走査の画像データを取得して、データが相対的に完全であるような画像容積の部分(すなわちX線ビームに常に曝射されている領域)でのボクセルを再構成するために半走査に対応するデータ66に主に頼ることにより時間分解能を保存することを図る。残りの走査データ(すなわち横側領域64に対応するデータ)は、データが相対的に完全である領域の外部で主に用いられるが、データが完全である領域の内部でも低周波数シェーディング・アーティファクト(例えばコーン・ビーム・アーティファクト)を解消するために用いられてよい。
【0023】
従って、かかるアプローチでは、患者が受ける全体的な線量を減少させるがデータが相対的に完全である領域の内部では画質及び/又は時間分解能に著しい影響を与えないようにするために、横側領域64の一方又は両方に関連するmAを低下させると有用であり得る。この理解に基づいて、多様な線量低減アプローチがここで思量される。
【0024】
例えば、一具現化形態では、横側領域64の一方又は両方の内部でmA変調を用いることができる。一実施形態では、完全な又は部分的な台形型のmA変調を用いる。例えば、図4へ移り、一具現化形態では、X線源(例えば管)に電力を与えることに関して対称な又は「完全な」台形mAプロファイルが用いられ、この場合には、全mA半走査区間70が二つの低mA区画72に挟まれている。
【0025】
図4は、二つの低mA区画72が全mA半走査区間70に対してそれぞれの増加及び減少しているmAを呈するような実施形態を示しているが、理想化されたシナリオでは、半走査領域66の外部の横側領域64の内部では最小mAが保たれるとよい(すなわち一定になる)。しかしながら、図4に示すように、実際には(及び図示のように)、X線管電流を瞬時に上下させて変調させることは困難又は不可能である場合があり、下降勾配及び上昇勾配はX線管及び発生器の能力を反映させたものとなっている。実際に、幾つかのスキャナでは、mAは約5,000mA/秒以下で上昇させられ、約4,000mA/秒以下で減少させられる場合がある。このように、上昇時間及び減少時間に依存して、X線管電流が一定となる区画は存在したりしなかったりする。ともかく、患者被曝線量は、全走査シナリオの積算X線管電流面積(図2の網掛けの面積60)と、mA変調シナリオ(台形面積80(図4の面積70及び72で構成される))との間の差に比例して減少する。すなわち、全走査分のデータが取得されるが、全mA(例えば図示の例では700mA)において費やされる時間は、図2に示すような従来の全走査に対して減少している。
【0026】
図4は対称構成の全mA区画及び低mA区画を示しているが、非対称構成を用いることもできる。例えば、図5に移ると、X線管電流が半走査時間(又は続く区画72においてmAが所望の低mAまで低下し得る速度を盛り込んだ少し短い継続時間)に対応する期間にわたり全mA(区画70)で開始し、続いて残りの走査時間では下降している(低mA区画72)具現化形態が示されている。反対に、図6では、X線管電流が低mA(区画72)で開始し、続いて半走査時間(又はmAが全mAまで増大し得る速度を盛り込んだ少し短い継続時間)に対応する期間にわたり全mA(区画70)まで上昇している具現化形態が示されている。このように、これら二つの非対称の例では、上の対称の例と同様に、全走査分のデータが取得されるが、全mAにおいて費やされる時間は従来の全走査に対して減少している。
【0027】
上の例から認められるように、最大mA、最小mA、mA増減時間、及び最大mAの継続時間は、mA変調プロトコルを構成するのに適したパラメータであって、標準的な全走査プロトコルに対してどれほどの線量を各々のプロトコルが節減するかを画定する。上の例では、全mA区画70は、さらなる線量低減のため、また雑音の影響を最小にする等のため、半走査区間66よりも狭く(継続時間が短く)なるように選択されていた。さらに、前述のように、低mA区画72が走査時間中に平坦部に達するか否かは、相対的なmA変調速度(すなわちmA増加速度及び/又は減少速度)に依存する。さらに、図5及び図6に示すもののような非対称mA変調アプローチは、図4に示すもののような対称mA変調アプローチよりもさらに多くの線量を節減することができる。
【0028】
mA変調は線量を低減する一つのアプローチであるが、他の適当なアプローチを用いることもできる。例えば、前述のように、X線管フィラメントの熱応答時間が有限である等のためmAを変調させ得る速度は限定され得る。一具現化形態では、mAを変調させる(且つ有限のmA変調速度によって課される制限を受け入れる)代わりに、全線量が発せられる状態(すなわち「入」)と線量が全く又は実質的に発せられない状態(すなわち「切」又は「実効的に切」)との間(140kVと80kVとの間等)でX線管を切り替えるようにX線管電圧を制御することができる。認められるように、X線管又はX線源の「切」状態は、必ずしも0kVpに対応していなくてよく、代わりに管電圧が患者に対して最小の線量を発生する又は線量を全く発生しないのに十分に低くなっていることを示していればよい。
【0029】
このことを念頭に置いて図7に移ると、一つの線量低減アプローチでは、全mAにおいて半走査ビュー範囲66を取得し、横側領域64に対応する全走査の残部ではビューの散在型部分集合のみを取得する。すなわち、半走査区間66の外部ではX線管電圧の制御によってX線源を入状態と切状態との間で交番させることができ、全mAでは、間歇型又は交番型ビューが取得され、一方線量が殆ど又は全くない場合すなわちX線放出がない場合に対応するmAでは間隙ビュー又は時間調節が生ずるようにする。従って、横側領域64の「入」ビューのみが再構成に用いられる。さらに、これら「入」ビューのみが患者線量に寄与し、従って全体的な患者線量が全走査(図2)に対して減少する。幾つかの具現化形態では、パルス型ビュー(すなわちX線管電圧の交番中に取得されるビュー)の実効スペクトルは、X線管電圧が交番していない場合のビューと異なっていてよい。かかる具現化形態では、パルス型ビューのスペクトル基準線を得るために専用の較正ステップを実行することができる。
【0030】
有限のmA変調速度を扱うもう一つのアプローチでは、図8に示すように、全mA区画70及び低減mA区画72を2回の回転に分配する。一つのかかる実施形態では、半走査区画70(すなわち180°+ファン角度)が全mA(例えば700mA)において行なわれ、低減mA区画72(例えば100mA)が1回転ずらして(半走査の前又は後に)得られる。かかる具現化形態の時間の一例では、回転時間は約0.28秒(例えば約4分の1秒)であり得る。2回の回転からのビューは、再構成のために単一のデータ集合に結合される。一実施形態では、2回転アプローチは、上述の対称mA変調アプローチよりも多くの線量を減少させることができる(標準的な全走査に対して)。2回転の具現化形態では、低mAでの2回目の回転を用いて、データが相対的に完全である領域の外部の画像容積の部分での画質を高めると共に、データが相対的に完全であるような画像容積の部分の内部(すなわち常にX線ビームに曝射されている領域)でのコーン・ビーム・アーティファクトのような幾つかの低周波数シェーディング・アーティファクトを減少させることができる。
【0031】
一具現化形態では、急激な移行を回避するために、異なる回転において取得される二つの区画は、何らかの程度のフェザリングと組み合わせ得るように幾分かの角度ビュー重なりを有し得る。例えば、低mAビューが次第に平滑化されるようにサイノグラム領域平滑化を用いて、低mAビューと高mAビューとの間の不連続性を減少させる又は解消することができる。
【0032】
全走査画像取得の横側領域64においてX線量を減少させるもう一つの方法は、コーン角に基づいてX線を選択的にコリメートするものである。さらに明確に述べると、ビームの内部のX線は検出器領域の隅の領域には寄与しないので、これらの内部X線をコリメートし又は他の場合には遮断することができる。従って、隅の領域に寄与するコーンの外部に向かうX線は、コリメーションを通過して伝達されるとよい。例えば、アイソ・プレーン(iso-plane)に近い横列を遮断し、何らかのコーン角を上回るX線を通過させるコリメータを用いて、半走査ビュー範囲は内部コーン・コリメーションを行なわずに取得され、走査の残りは内部コーン・コリメーションを行なって収集されるような走査プロトコルを開発することができる。この場合にも、この態様で、全走査時間の走査を行なうが、半走査ビュー範囲の外部のX線のコーンの内部のコリメーションのため患者への実効線量を減少させることができる。
【0033】
本発明の技術的効果としては、全走査範囲(すなわち回転)にわたりCT画像データの取得が行なわれるが、一定のX線管電流によって具現化される全走査に対して低減された線量で行なわれることが挙げられる。他の技術的効果としては、半走査窓の外部でX線管電流の変調を行なう全走査CT取得プロトコルの具現化形態が挙げられる。さらに他の技術的効果としては、半走査窓の外部で散在型ビューの取得を行なう全走査CT取得プロトコルの具現化形態が挙げられる。さらに他の技術的効果としては、2回転プロトコルの各々の回転が異なるX線管電流を用いるようにして単一の全走査回転に対応する画像データを取得する2回転CT取得プロトコルの具現化形態が挙げられる。他の技術的効果としては、半走査窓の外部で差分z−コリメーションを行なう全走査CT取得プロトコルの具現化形態が挙げられる。
【0034】
この書面の記載は、最適な態様を含めて発明を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めてあらゆる当業者が発明を実施することを可能にするように実例を用いている。特許付与可能な発明の範囲は特許請求の範囲によって画定されており、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0035】
10:計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム
12:X線放射線源
14:コリメータ
16:X線
18:患者
20:X線放射線の一部
22:検出器
24:システム制御器
26:X線制御器
28:データ取得システム
30:処理構成要素
32:回転サブシステム
34:線形配置サブシステム
36:モータ制御器
38:メモリ
40:操作者ワークステーション
42:表示器
44:プリンタ
46:PACS
48:遠隔クライアント
60:全走査についての積算X線管電流
62:半走査についての積算X線管電流
64:横側領域
66:半走査に対応するデータ
70:全mA半走査区間
72:低mA区画
80:台形面積(mA変調シナリオ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データ取得の方法であって、
撮像容積の周りで少なくとも全回転を通してX線源を回転させるステップと、
半走査に全体的に対応する前記全回転の部分が前記全回転の残部よりも高い動作電流において生ずるように、前記全回転中に前記X線源の動作電流を変調させるステップと、
前記X線源が前記撮像容積の周りを回転するのに伴ってX線透過データを取得するステップと
を備えた方法。
【請求項2】
前記動作電流は、前記半走査に全体的に対応する前記全回転の前記部分に関して対称に変調される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動作電流は、前記半走査に全体的に対応する前記全回転の前記部分に関して非対称に変調される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記全回転中の前記X線源によるX線の放出に関連する線量が、前記より高い一定の動作電流において前記全回転を通して前記X線源を回転させることにより得られる対応する線量よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記動作電流を変調させるステップは、前記動作電流をより低い動作電流から前記より高い動作電流まで増大させること又は前記動作電流を前記より高い電流から前記より低い動作電流まで減少させることの一方又は両方を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
計算機式断層写真法(CT)イメージング・システムでの画像データ取得の方法であって、
撮像容積の周りで少なくとも1回の全回転を通して前記CTイメージング・システムのX線源を回転させるステップと
前記撮像容積の周りでの前記X線源の前記回転中に全走査に対応する画像データを取得するステップと
を備えており、
前記画像データの前記取得に関連する線量が、前記X線源の一定の動作電流において前記CTイメージング・システムにおいて全走査を行なうことに関連する対応する線量よりも小さい、方法。
【請求項7】
半走査に全体的に対応する当該回転の部分が当該回転の残部よりも高い動作電流において生ずるように、回転中に前記X線源の動作電流を変調させるステップを含んでいる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記動作電流は、前記半走査に全体的に対応する前記回転の前記部分に関して対称に変調される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記動作電流は、前記半走査に全体的に対応する前記回転の前記部分に関して非対称に変調される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
撮像容積の周りで少なくとも1回の全回転にわたり前記X線源を回転させる前記ステップは、前記X線源が第一のビュー集合について第一の動作電流において動作している間に1回目の回転を通して前記X線源を回転させるステップと、前記X線源が、前記第一のビュー集合に対して実質的に相補的である第二のビュー集合について前記第一の動作電流よりも小さい第二の動作電流において動作している間に2回目の回転を通して前記X線源を回転させるステップとを含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記第一のビュー集合及び前記第二のビュー集合を組み合わせて、前記撮像容積についての完全なビュー集合を提供する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記全走査に対応する前記画像データを取得するステップは、半走査ビュー範囲の外部のビュー範囲について散在型ビュー又は不完全ビューを取得するステップを含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記散在型ビュー又は不完全ビューを取得するステップは、入状態と切状態との間で前記X線源を交番させるようにX線源電圧を制御することを含んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記画像データを取得するステップは、半走査に対応する第一のビュー範囲では前記X線源がコリメートされず、前記第一のビュー範囲の外部の第二のビュー範囲では前記X線源が中央部の内部にコリメートされるように、前記X線源をコリメートすることを含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
前記コリメータは、アイソ・プレーンの近くでX線を遮断して、所定のコーン角を上回るX線を通過させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
撮像容積の周りを回転するように構成されているX線源と、
該X線源により放出されたX線を検出するように構成されている検出器と、
前記X線源及び前記検出器の一方又は両方の動作を制御するように構成されているシステム制御器と
を備えた計算機式断層写真法(CT)イメージング・システムであって、前記システム制御器は、前記撮像容積の周りで少なくとも1回の全回転にわたり前記X線源を回転させて、前記撮像容積の周りでのX線源の前記回転中に全走査に対応する画像データを取得し、前記画像データの前記取得に関連する線量が、前記X線源の一定の動作電流において当該CTイメージング・システムにおいて全走査を実行することに関連する対応する線量よりも小さい、計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム。
【請求項17】
前記システム制御器は、半走査に全体的に対応する前記回転の部分が前記回転の残部よりも高い動作電流において生ずるように、回転中に前記X線源の動作電流を変調させる、請求項16に記載の計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム。
【請求項18】
前記システム制御器は、前記X線源が第一のビュー集合について第一の動作電流において動作している間に1回目の回転を通して前記X線源を回転させ、前記X線源が、前記第一のビュー集合に対して実質的に相補的である第二のビュー集合について前記第一の動作電流よりも小さい第二の動作電流において動作している間に2回目の回転を通して前記X線源を回転させる、請求項16に記載の計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム。
【請求項19】
前記システム制御器は、前記全走査に対応する前記画像データを取得するときに半走査ビュー範囲の外部のビュー範囲について散在型ビュー又は不完全ビューを取得する、請求項16に記載の計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム。
【請求項20】
半走査に対応する第一のビュー範囲では前記X線源がコリメートされず、前記第一のビュー範囲の外部の第二のビュー範囲では前記X線源が中央部の内部にコリメートされるように、前記X線源をコリメートするコリメータを含んでいる請求項16に記載の計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−13723(P2013−13723A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−144874(P2012−144874)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】