説明

線電流検出装置および電力変換システム

【課題】たとえスイッチングパターンが長期間に渡って維持されるとしても、線電流を得ることができる線電流検出装置を提供する。
【解決手段】スイッチング制御部31はスイッチング素子S1〜S6のスイッチングパターンを制御して相電圧を交流線Pu,Pv,Pwに印加させる。相電圧は交流の1周期において略1パルス波形を有する。電流検出部4は直流線LH,LLを流れる直流電流Idcを検出する。線電流取得部32はスイッチングパターンが変化する第1タイミングの前の第1時点において検出された直流電流Idcを第1時点でのスイッチングパターンによって決定される第1相の線電流として推定し、第1タイミングの後の第2時点において検出された直流電流Idcを第2時点でのスイッチングパターンによって決定される第2相の線電流として推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線電流検出装置および電力変換システムに関し、特に直流電流を検出して線電流を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には三相インバータが記載されている。三相インバータは入力された直流電圧を交流電圧に変換する。この変換はインバータが有するスイッチング素子の導通/非導通を適宜に切り替えることで実現される。
【0003】
また特許文献1では三相インバータの入力側を流れる直流電流を用いて、三相インバータの出力側を流れる電流、即ち3相の相電流を検出する。この検出は、インバータが採用する通電パターンに基づいて母線電流と相電流とを対応させることで行われる。例えば所定周期(例えばキャリア周期)において、異なる2つの通電パターンが採用される期間の各々で母線電流を検出し、これらを当該2つの通電パターンに基づいて決定される2相の相電流として検出する。そして、3相の相電流の総和が零であるという関係に基づいて残りの1相の相電流を算出している。
【0004】
本発明に関連する技術として特許文献2〜7が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4429338号公報
【特許文献2】特許第4578500号公報
【特許文献3】特開2004−48868号公報
【特許文献4】特開2011−67023号公報
【特許文献5】特開2004−64093号公報
【特許文献6】特開2007−312511号公報
【特許文献7】特許第3611492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
三相インバータの相電圧がその1周期当たりに例えば1パルスを有するように三相インバータを制御する場合、一つのスイッチングパターンが維持される期間が比較的長い。相電圧が略1パルス波形を有する場合でも同様である。換言すれば、相電圧が非常に短い期間(パルス幅)のパルスを含んでいるものの、実質的には1パルスを有する場合にも、一つのスイッチングパターンが維持される期間は比較的長い。この略1パルス波形の定義については実施の形態において詳述する。
【0007】
一方、特許文献1に記載の技術では、相電圧の1周期に比べて十分に短いキャリア周期で2つのスイッチングパターンが採用されることにより、直流電流から3相の線電流を得ている。よって、特許文献1のように短い周期で2つのスイッチングパターンが採用される技術を、スイッチングパターンが維持される期間が長い略1パルス波形へとどのように適用するかについては検討されていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、たとえスイッチングパターンが長期間に渡って維持されるとしても、線電流を得ることができる線電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる線電流検出装置の第1の態様は、誘導性負荷(2)に接続される3つの交流線(Pu,Pv,Pw)と、相互間に直流電圧が印加される第1及び第2の直流線(LH,LL)と、前記3つの交流線の各々と前記第1の直流線との間に設けられる第1のスイッチング素子(S1〜S3)と、前記3つの交流線の各々と前記第2の直流線との間に設けられる第2のスイッチング素子(S4〜S6)とを備える電力変換装置において、前記3つの交流線を流れる3相の線電流(iu,iv,iw)を検出する線電流検出装置であって、前記第1及び前記第2のスイッチング素子のスイッチングパターンを制御して交流の3相電圧を前記3つの交流線に印加させ、前記相電圧は前記交流の1周期において略1パルス波形を有し、前記略1パルス波形とは、前記相電圧が前記第1又は第2の直流線に印加される電位を連続して採る期間のうち第1期間より短いものを、前記相電圧の波形から無視した波形が、矩形波のパルスを一つのみを有する波形であり、前記第1期間は前記第1又は前記第2の直流線を流れる直流電流(Idc)の検出に必要な最小時間であるスイッチング制御部(31)と、前記第1又は前記第2の直流線を流れる直流電流(Idc)を検出する電流検出部(4)と、前記スイッチングパターンが変化する第1タイミング(t(0))の前の第1の時点(t1)において前記電流検出部で検出された前記直流電流を前記第1の時点での前記スイッチングパターンによって一つ決定される第1相の線電流として推定し、前記第1タイミングの後の第2の時点において前記電流検出部で検出された前記直流電流を前記第2の時点での前記スイッチングパターンによって一つ決定される第2相の線電流として推定する線電流取得部(32)とを備える。
【0010】
本発明にかかる線電流検出装置の第2の態様は、第1の態様にかかる線電流検出装置であって、前記第1相及び前記第2相の線電流の基本波成分の波形の式と、前記線電流取得部(32)において取得された前記第1相及び前記第2相の線電流とに基づいて、前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでの前記3相の線電流のうち少なくとも2相の線電流を推定する線電流推定部(33)を更に備える。
【0011】
本発明にかかる線電流検出装置の第3の態様は、第2の態様にかかる線電流検出装置であって、前記相電圧についての電圧位相(θv)を取得する電圧位相取得部(38)を更に備え、前記線電流推定部(33)は、前記第1相及び前記第2相の線電流(iu,iv,iw)に基づいて電流振幅(Im)および前記第1タイミングにおける電流位相(θi)を算出し、前記第1タイミングにおける前記電流位相と前記電圧位相との位相差(Δθ)を算出し、前記第2タイミング(t(1),t(n))における前記電圧位相と前記位相差と基づいて前記第2タイミングにおける前記電流位相を算出し、前記電流振幅と前記第2タイミングにおける前記電流位相と前記波形の式とを用いて前記第2タイミングにおける前記3相の線電流のうち少なくとも2相の線電流を推定する。
【0012】
本発明にかかる線電流検出装置の第4の態様は、第2の態様にかかる線電流検出装置であって、前記線電流推定部(33)は、前記第1相及び前記第2相の線電流(iu,iv,iw)に基づいて電流振幅(Im)および前記第1タイミングにおける電流位相(θi)を算出し、前記第1タイミングから前記第2タイミング(t(1),t(0))までの前記電流位相の進みを、前記第1タイミングにおける前記電流位相に加算して前記第2タイミングにおける前記電流位相を算出し、前記電流振幅と前記第2タイミングにおける前記電流位相と前記波形の式とを用いて前記第2タイミングにおける前記3相の線電流のうち少なくとも2相の線電流を推定する。
【0013】
本発明にかかる線電流検出装置の第5の態様は、第2の態様にかかる線電流検出装置であって、前記第2タイミング(t(1),t(n))における前記直流電流(Idc)を、前記第2タイミングにおける前記スイッチングパターンに基づいて決定される1相の線電流(iu)として取得する1相線電流取得部(39)と、前記相電圧についての電圧位相(θv)を取得する電圧位相取得部(38)とを更に備え、前記線電流推定部(33)は、前記第1相及び前記第2相の線電流(iu,iv,iw)に基づいて前記第1タイミング(t(0))における電流位相(θi)を算出し、前記第1タイミングにおける前記電流位相と前記電圧位相との位相差(Δθ)を算出し、前記第2タイミングにおける前記電圧位相と前記位相差に基づいて前記第2タイミングにおける前記電流位相を算出し、前記1相の線電流と、前記第2タイミングにおける前記電流位相と、前記波形の式とに基づいて、前記3相の線電流の電流振幅(Im)を算出し、前記電流振幅と前記第2タイミングにおける前記電流位相と前記波形の式とに基づいて残りの2相の線電流(iv,iw)のうち少なくとも1相の線電流を推定する。
【0014】
本発明にかかる線電流検出装置の第6の態様は、第2の態様にかかる線電流検出装置であって、前記第2タイミング(t(1),t(n))における前記直流電流(Idc)を、前記第2タイミングにおける前記スイッチングパターンに基づいて決定される1相の線電流(iu)として取得する1相線電流取得部(39)を更に備え、前記線電流推定部(33)は、前記第1相及び前記第2相の線電流(iu,iv,iw)に基づいて前記第1タイミング(t(0))における電流位相(θi)を算出し、前記第1タイミングから前記第2タイミングまでの電流位相の進みを、前記第1タイミングにおける前記電流位相に加算して前記第2タイミングにおける前記電流位相を算出し、前記1相の線電流と、前記第2タイミングにおける前記電流位相と、前記波形の式とに基づいて、前記3相の線電流の電流振幅(Im)を算出し、前記電流振幅と前記第2タイミングにおける前記電流位相と前記波形の式とに基づいて残りの2相の線電流(iv,iw)のうち少なくとも1相の線電流を推定する。
【0015】
本発明にかかる線電流検出装置の第7の態様は、第4又は第6の態様にかかる線電流検出装置であって、前記3相の線電流(iu,iv,iw)の角速度(ω)を取得する角速度取得部(381)を更に備え、前記線電流推定部(33)は、前記第1タイミングから前記第2タイミングまでの前記電流位相の進みを、前記前記第1タイミングから前記第2タイミング(t(1),t(0))までの期間(ΔT')と前記角速度との積として算出する。
【0016】
本発明にかかる線電流検出装置の第8の態様は、第4又は第6の態様にかかる線電流検出装置であって、前記相電圧についての電圧位相(θv)を取得する電圧位相取得部(38)を更に備え、前記線電流推定部(33)は、前記第1タイミングから前記第2タイミングまでの前記電流位相の進みを、前記第1タイミング及び前記第2タイミング(t(1),t(n))における前記電圧位相の差として算出する。
【0017】
本発明にかかる線電流検出装置の第9の態様は、第2の態様にかかる線電流検出装置であって、前記第2タイミング(t(1),t(n))における前記直流電流(Idc)を、前記第2タイミングにおける前記スイッチングパターンに基づいて決定される1相の線電流(iu)として取得する1相線電流取得部(39)を更に備え、前記線電流推定部(33)は、前記第1相及び前記第2相の線電流(iu,iv,iw)に基づいて電流振幅(Im)を算出し、前記電流振幅と前記1相の線電流と前記波形の式とに基づいて、前記第2タイミングにおける電流位相(θi)を算出し、前記電流振幅と前記第2タイミングにおける前記電流位相と前記波形の式とに基づいて残りの2相の線電流(iv,iw)のうち少なくとも1相の線電流を推定する。
【0018】
本発明にかかる線電流検出装置の第10の態様は、第1の態様にかかる線電流検出装置であって、前記誘導性負荷についての等価回路の電圧方程式と、前記線電流取得部によって取得された前記第1相及び前記第2相の線電流とに基づいて、前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでの前記第1相及び前記第2相の線電流を推定する線電流推定部(33)を更に備える。
【0019】
本発明にかかる線電流検出装置の第11の態様は、第10の態様にかかる線電流検出装置であって、前記誘導性負荷(2)はモータであって、前記等価回路において、前記誘導性負荷(2)の抵抗成分(R2)及び誘導成分(L2)が、前記交流線(Pu,Pv,Pw)に印加される前記相電圧による第1電圧源(E1)と、前記モータの回転に伴って前記誘導成分に生じる誘起電圧による第2電圧源(E2)とに直列に接続される。
【0020】
本発明にかかる線電流検出装置の第12の態様は、第1から第11の何れか一つの態様にかかる線電流検出装置であって、前記第1時点(t1)から前記第1タイミング(t(0))までの期間(ts1)は、前記直流電流をアナログ値からデジタル値へ変換するのに要する期間よりも大きい。
【0021】
本発明にかかる線電流検出装置の第13の態様は、第1から第12の何れか一つの態様にかかる線電流検出装置であって、前記第1タイミング(t(0))から前記第2時点(t2)までの期間(ts2)は、前記スイッチングパターンの変化に伴う前記直流電流の過渡変動が所定の範囲内に収まるのに要する期間よりも大きい。
【0022】
本発明にかかる電力変換システムの第1の態様は、相互間に直流電圧が印加される第1及び第2の直流線(LH,LL)と、誘導性負荷(2)に接続される3つの交流線(Pu,Pv,Pw)と、前記3つの交流線の各々と前記第1の直流線との間に設けられる第1のスイッチング素子(S1〜S3)と、前記3つの交流線の各々と前記第2の直流線との間に設けられる第2のスイッチング素子(S4〜S6)と、第1から第13の何れか一つの態様にかかる線電流検出装置(3)とを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる線電流検出装置の第1の態様によれば、相電圧の1周期において実質的に1パルスのみが存在する(略1パルス波形を含む)、いわゆる1パルス駆動であっても、直流電流に基づいて第1タイミング付近における線電流を取得することができる。
【0024】
本発明にかかる線電流検出装置の第2の態様によれば、パルスが立ち上がるまたは立ち下がる第1タイミングとは異なる第2タイミングにおける第1相及び第2相の線電流を得ることができる。しかも、誘導性負荷の等価回路の電圧方程式を用いるよりも簡易な演算で第2タイミングにおける第1相及び第2相の線電流を推定することができる。
【0025】
本発明にかかる線電流検出装置の第3および第4の態様によれば、第2の態様にかかる線電流推定部の実現に資する。
【0026】
本発明にかかる線電流検出装置の第5および第6の態様によれば、第2タイミングにおける1相の線電流を検出しているので、第3および第4の態様のいずれかにかかる線電流推定部に比して、推定精度が高い。
【0027】
本発明にかかる線電流検出装置の第7及び第8の態様によれば、第4又は第6の態様にかかる線電流推定部の実現に資する。
【0028】
本発明にかかる線電流検出装置の第9の態様によれば、第2タイミングにおける1相の線電流を検出しているので、請求項3から5のいずれかにかかる線電流推定部に比して、推定精度が高い。しかも、第2タイミングにおける電流位相の算出が容易である。
【0029】
本発明にかかる線電流検出装置の第10の態様によれば、等価回路を用いているので推定精度を向上できる。
【0030】
本発明にかかる線電流検出装置の第11の態様によれば、簡易な等価回路を用いているので、比較的簡易な演算で線電流を推定できる。
【0031】
本発明にかかる線電流検出装置の第12および第13の態様によれば、より適切に直流電流を検出できる。
【0032】
本発明にかかる電力変換システムの第1の態様によれば、相電圧の1周期において実質的に1パルスのみが存在する(略1パルス波形を含む)、いわゆる1パルス駆動であっても、直流電流に基づいて第1タイミングにおける線電流を取得することができる電力変換システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】インバータの概念的な構成の一例を例示する図である。
【図2】相電圧の一例を模式的に示す図である。
【図3】インバータを流れる電流を示す図である。
【図4】インバータを流れる電流を示す図である。
【図5】インバータを流れる電流を示す図である。
【図6】インバータを流れる電流を示す図である。
【図7】インバータを流れる電流を示す図である。
【図8】インバータを流れる電流を示す図である。
【図9】直流電流の検出タイミングおよび相電流の推定タイミングの一例を模式的に示す図である。
【図10】制御部の概念的な構成の一例を例示する図である。
【図11】電流検出のタイミング信号を生成する方法を説明するための図である。
【図12】電流検出のタイミング信号を生成する方法を説明するための図である。
【図13】電流検出のタイミング信号を生成する方法を説明するための図である。
【図14】制御部の概念的な構成の一例を例示する図である。
【図15】電流検出のタイミングを決める方法を説明するための図である。
【図16】キャリアの周期と相電圧の周期との関係を説明するための図である。
【図17】電流検出のタイミングを決める方法を説明するための図である。
【図18】電流検出のタイミングを決める方法を説明するための図である。
【図19】制御部の概念的な構成の一例を例示する図である。
【図20】制御部の概念的な構成の一例を例示する図である。
【図21】制御部の概念的な構成の一例を例示する図である。
【図22】制御部の概念的な構成の一例を例示する図である。
【図23】等価回路の一例を示す図である。
【図24】位相差δを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
第1の実施の形態.
図1に例示するように、電力変換システムは電力変換装置1と制御部3と電流検出部4とを備える。電力変換装置1は直流線LH,LL及び交流線Pu,Pv,Pwと接続される。電力変換装置1は例えばインバータであって、直流線LH,LLの間に印加される直流電圧を交流電圧に変換して、当該交流電圧を交流線Pu,Pv,Pwへと出力する。ここでは直流線LLに印加される電位は直流線LHに印加される電位よりも低い。また図1の例示では平滑コンデンサC1が設けられている。平滑コンデンサC1は直流線LH,LLの間の直流電圧を平滑する。ただし平滑コンデンサC1は設けられていなくても構わない。
【0035】
インバータ1はスイッチング素子S1〜S6とダイオードD1〜D6とを備えている。スイッチング素子S1〜S6は例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ又は電界効果トランジスタなどである。スイッチング素子S1〜S3は交流線Pu,Pv,Pwの各々と直流線LHとの間に設けられる。以下では、各スイッチング素子S1〜S3を上側のスイッチング素子とも呼ぶ。ダイオードD1〜D3はそれぞれスイッチング素子S1〜S3と並列に接続され、ダイオードD1〜D3のアノードはそれぞれ交流線Pu,Pv,Pwに接続される。
【0036】
各スイッチング素子S4〜S6は交流線Pu,Pv,Pwの各々と直流線LLとの間に設けられている。以下では各スイッチング素子S4〜S6を下側のスイッチング素子とも呼ぶ。ダイオードD4〜D6はそれぞれスイッチング素子S4〜S6と並列に接続され、ダイオードD4〜D6のアノードは直流線LLに接続される。なお、スイッチング素子S1〜S6がMOS電界効果トランジスタなどのように寄生ダイオードを有する場合には、ダイオードD1〜D6は当該寄生ダイオードであってもよい。
【0037】
かかるスイッチング素子S1〜S6には制御部3からそれぞれスイッチング信号Sが与えられる。かかるスイッチング信号Sにより各スイッチング素子S1〜S6が導通する。制御部3が適切なタイミングでスイッチング素子S1〜S6へとそれぞれスイッチング信号Sを与えることにより、インバータ1は直流電圧を交流電圧に変換する。インバータ1の制御については後に詳述する。
【0038】
インバータ1は例えば誘導性負荷2を駆動することができる。誘導性負荷2は例えばモータであって、交流線Pu,Pv,Pwに接続される。そして、誘導性負荷2に交流電圧が印加されれば、誘導性負荷2に略正弦波状の線電流iu,iv,iwが流れる。これによって誘導性負荷2が駆動される。ここでは、インバータ1から誘導性負荷2へと流れる線電流の方向を正、誘導性負荷2からインバータ1へと流れる線電流の方向を負とそれぞれ定義する。
【0039】
直流線LH,LLに流れる直流電流Idcは電流検出部4によって検出され、制御部3へと出力される。図1の例示では電流検出部4は直流線LLに設けられているが、直流線LHに設けられても良い。
【0040】
電流検出部4は例えばシャント抵抗R41と検出部41とを備えている。図1の例示ではシャント抵抗R41は直流線LLに設けられている。検出部41は例えばシャント抵抗R41に印加される電圧を検出して、シャント抵抗R41の抵抗値と、検出した電圧とに基づいて直流電流Idcを得る。検出部41はかかる直流電流Idcの値を制御部3に出力する。なお検出部41がシャント抵抗R41の電圧を検出して制御部3に出力し、制御部3が直流電流Idcを算出しても良い。また電流検出部4はシャント抵抗を用いて検出する必要はなく、任意の直流電流検出センサが採用され得る。例えばホールCTなどの電流センサを用いても良い。
【0041】
制御部3はスイッチング制御部31と線電流取得部32とを備えている。スイッチング制御部31はスイッチング信号Sをスイッチング素子S1〜S6へと出力してスイッチング素子S1〜S6のスイッチングパターンを制御する。これにより、インバータ1は交流の相電圧を交流線Pu,Pv,Pwに印加する。このスイッチング信号Sは例えば次のように生成される。即ち、例えば交流線Pu,Pv,Pwに印加する相電圧Vu,Vv,Vwについての相電圧指令値を線電流取得部32からの線電流iu,iv,iwに基づいて生成し、かかる相電圧指令値とキャリア波形との比較によってスイッチング信号Sを生成する。線電流iu,iv,iwに基づく相電圧指令値の生成および相電圧指令値とキャリア波形との比較に基づくスイッチング信号Sの生成は公知技術であるのでここでは詳細な説明は省略する。
【0042】
線電流取得部32は線電流iu,iv,iwを取得する。具体的な動作については後に詳述する。
【0043】
またここでは、制御部3はマイクロコンピュータと記憶装置を含んで構成される。マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。上記記憶装置は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)、ハードディスク装置などの各種記憶装置の1つ又は複数で構成可能である。当該記憶装置は、各種の情報やデータ等を格納し、またマイクロコンピュータが実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。なお、マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップに対応する各種手段として機能するとも把握でき、あるいは、各処理ステップに対応する各種機能を実現するとも把握できる。また、制御部3はこれに限らず、制御部3によって実行される各種手順、あるいは実現される各種手段又は各種機能の一部又は全部をハードウェアで実現しても構わない。
【0044】
<インバータ1の制御>
インバータ1はスイッチング信号Sによって例えば以下で述べるように制御される。まず、同じ交流線に接続される上側のスイッチング素子および下側のスイッチング素子は相互に排他的に導通する。即ち、スイッチング素子S1,S4は相互に排他的に導通し、スイッチング素子S2,S5は相互に排他的に導通し、スイッチング素子S3,S6は相互に排他的に導通する。これは、直流線LH,LLが短絡して各スイッチング素子S1〜S6に大電流が流れることを防止するためである。
【0045】
スイッチング素子S1〜S6は、交流線Pu,Pv,Pwに印加される相電圧Vu,Vv,Vwが図2に例示する波形を採るように制御される。図2の例示では、交流の相電圧Vu,Vv,Vwの各々は交流の1周期当たりに矩形波の1パルスのみを有している。また図2の例示では、各相電圧Vu,Vv,Vwが高電圧値を採る高電圧期間と低電圧値を採る低電圧期間とが互いにほぼ等しく、相電圧Vu,Vv,Vwの高電圧期間が電気角においてほぼ120度互いにずれている。
【0046】
なお相電圧Vu,Vv,Vwの波形は理想的には矩形波であって、それぞれスイッチング素子S1〜S3の導通/非導通に対応した二値をとる。なぜなら、例えばスイッチング素子S1が導通すれば直流線LHが交流線Puと接続されて相電圧Vuが高電圧値を採り、スイッチング素子S1が非導通すればスイッチング素子S4が導通するので、直流線LLが交流線Puと接続されて相電圧Vuが低電圧値を採るからである。図2では「Vu(S1)」と記載して、相電圧Vuの高電圧値/低電圧値が、それぞれスイッチング素子S1の導通/非導通であることをも示している。
【0047】
よって、スイッチング素子S1〜S3の各々において導通期間と非導通期間とを互いにほぼ等しくし、スイッチング素子S1〜S3の導通期間を互いにほぼ120度ずつずらすことで、インバータ1は図2の相電圧Vu,Vv,Vwを出力することができる。
【0048】
また、このような制御によれば、スイッチング素子S1〜S6は次の6つのスイッチングパターンのいずれかを採用する。ここで、上側および下側のスイッチング素子が導通することをそれぞれ「1」「0」で示し、各相のスイッチングパターンを並べて表すと、上述の6つのスイッチングパターンは、(001)(010)(011)(100)(101)(110)である。例えば下側のスイッチング素子S4,S5が導通し、上側のスイッチング素子S3が導通するときにはスイッチングパターン(001)が採用される(図2の電気角300度から360度の期間を参照)。
【0049】
また、これらのスイッチングパターンが採用されるときにインバータ1が出力する相電圧についてのベクトルを、上記数字の並びを2進数の数字と把握し、これを10進数で表して、それぞれ電圧ベクトルV1〜V6と表す。かかる電圧ベクトルV1〜V6は図2にも付記されている。
【0050】
なお、図2の例示では相電圧Vu,Vv,Vwは交流の1周期(言い換えれば相電圧の基本波成分の1周期)において1パルスのみを有しているが、略1パルス波形を有していればよい。略1パルス波形については後に詳述する。
【0051】
<線電流の取得方法>
図2の各スイッチングパターンが採用されているときにインバータ1に流れる電流について考察する。なお上述の通りスイッチングパターンは電圧ベクトルと対応するので、以下では電圧ベクトルをも用いて説明する。図3〜図8はそれぞれ電圧ベクトルV1〜V6が採用されたときにインバータ1に流れる電流を示している。
【0052】
図3に示すように電圧ベクトルV1が採用されるときには上側のスイッチング素子S3と下側のスイッチング素子S4,S5とが導通する。したがって直流線LHを流れる直流電流Idcはスイッチング素子S3を経由して線電流iwとして交流線Pwを正の方向に流れる。かかる線電流iwは誘導性負荷2において分岐する。分岐された2つの電流は線電流iu,ivとしてそれぞれ交流線Pu,Pvを負の方向に流れる。線電流iu,ivはそれぞれスイッチング素子S4,S5を経由して直流線LLにおいて合流し、直流電流Idcとして流れる。したがって、電圧ベクトルV1が採用されているときには直流電流Idcは線電流iwと等しい。
【0053】
また図5に示すように電圧ベクトルV3が採用されるときには、上側のスイッチング素子S2,S3と下側のスイッチング素子S4とが導通する。したがって直流線LHを流れる直流電流Idcは分岐してそれぞれスイッチング素子S2,S3を経由して線電流iv,iwとして交流線Pv,Pwを正の方向に流れる。かかる線電流iv,iwは誘導性負荷2において合流して線電流iuとして交流線Puを負の方向に流れる。線電流iuはスイッチング素子S4を経由して直流電流Idcとして直流線LLを流れる。したがって、電圧ベクトルV3が採用されているときには直流電流Idcは、値が負である線電流iuの絶対値−iuと等しい。以下では、線電流の値が負であるときにその絶対値を表現すべく負号を付記することもある。
【0054】
図4、図6〜図8に示すように、他の電圧ベクトルV2,V4〜V6が採用されるときにも直流電流Idcと線電流とが対応付けられる。図2には各電圧ベクトルに対応して直流電流Idcとして流れる線電流が示されている。
【0055】
図2の例示では、任意の時点において電圧ベクトルが採用されるので、任意の時点において直流電流Idcは正負を無視すれば線電流iu,iv,iwのいずれかと対応する。したがって、このときの直流電流Idcを、スイッチングパターンに基づいて決定される1相の線電流として推定することができる。例えばスイッチングパターン(100)が採用される期間において直流電流Idcを線電流iuとして検出することができる(図6も参照)。
【0056】
さて図2に例示するように、スイッチングパターンは電気角60度毎に切り替わる。そして、図9に例示するように、このスイッチングパターンが切り替わる前後の2つの時点t1,t2において検出される線電流の相は互いに相違する。そこで、線電流取得部32は、時点t1において電流検出部4によって検出された直流電流Idcを時点t1におけるスイッチングパターンによって一つ決定される相の線電流として推定し、時点t2において電流検出部4によって検出された直流電流Idcを時点t2におけるスイッチングパターンによって一つ決定される相の線電流として推定する。
【0057】
例えば図9を参照して、電圧ベクトルが電圧ベクトルV5から電圧ベクトルV4に切り替わるタイミングt(0)の前の時点t1において、スイッチングパターン(101)(電圧ベクトルV5)が採用されている。よってこのとき、時点t1における直流電流Idcを、負の値をとるv相の線電流ivの絶対値−ivとして推定する。線電流ivの値は直流電流Idcの符号を負にして得られる値である。また時点t(0)の後の時点t2において、スイッチングパターン(100)(電圧ベクトルV4)が採用される。したがって、時点t2における直流電流Idcを、u相の線電流iuとして推定する。
【0058】
この2相の線電流は、ほぼ同じタイミングで検出された線電流であると近似することができる。この近似は2つの時点t1,t2の間の期間が短いほど妥当である。実質的には当該期間は相電圧の周期の数十分の1程度以下であれば妥当である。そして、同じタイミングでの3相の線電流の和は零であるので、線電流取得部32はこの関係に基づいて当該2相の線電流から残りの1相の線電流を算出する。例えば上述のようにして検出された線電流iu,ivに基づいて線電流iwを算出する。なお、線電流iwの算出は必須要件ではない。たとえば線電流iu,iv,iwを二相の固定座標系に変換するときには、線電流iw=−iu−ivであることに鑑みて線電流iu,ivのみを用いて変換することが可能であるからである。
【0059】
なお図1に例示するように、線電流取得部32には直流電流Idcとスイッチング信号Sとが入力されている。線電流取得部32はスイッチング信号Sによって、現時点で採用されているスイッチングパターンを認識し、そのスイッチングパターンに基づいて直流電流Idcあるいはその値に負号を付した電流を線電流として推定する。言い換えれば、直流電流Idcを線電流として検出する。また線電流取得部32は、直流電流Idcを検出する時点t1,t2を例えば次のようにして認識することができる。すなわち、線電流取得部32は相電圧指令値をスイッチング制御部31から受け取ってスイッチングパターンの変化の予定を認識し、スイッチングパターンの変化の予定から例えば予め設定された期間前及び期間後に時点t1,t2を設定する。そして現在時点が時点t1,t2に至ったと判断したときに、直流電流Idcを線電流として検出する。この判断は例えば公知のタイマ回路やカウンタ回路などを用いて実現できる。
【0060】
なお、スイッチングパターンが変化すると、例えば図3〜図8に示すとおり、電流の流れる経路が変化する。このように電流の経路が変化することは転流と呼ばれる。したがってスイッチングパターンが変化するタイミングとは、インバータ1に転流が生じるタイミング、と見なすことができる。
【0061】
上述した線電流検出方法によって、スイッチングパターンが変化する毎に、即ち電気角60度毎に、直流電流Idcを用いて3相の線電流を検出することができる。
【0062】
次に、時点t1,t2の各々と、スイッチングパターンが変化するタイミングt(0)との間の期間をどの程度の期間にするのか、について考慮する。スイッチングパターンが変化した直後では、直流電流Idcは当該変化に伴って過渡的に変動する。このような過渡的な変動が収まる、即ち直流電流Idcの過渡変動が所定の範囲内に収まった状態で、直流電流Idcを検出することが望ましい。よって、スイッチングパターンが変化してから時点t2までの期間ts2は、直流電流Idcの過渡変動が所定の範囲内に収まるのに要する過渡期間よりも長いことが望ましい。この過渡期間は電力変換装置1及び誘導性負荷2、さらにコンデンサC1の静電容量及びコンデンサC1に直流電圧を供給する電源の電力容量等の回路条件によって決定されるので、予め設計或いは実験によって決定することができる。
【0063】
また例えば電流検出部4が、検出した直流電流Idcのアナログ値をデジタル値に変換する必要がある場合、当該変換に要する変換期間が経過するまでスイッチングパターンが変化しないことが望ましい。よって時点t1からスイッチングパターンが変化するまでの期間ts1は、電流検出部4がこの変換に要する期間よりも長いことが望ましい。
【0064】
なお、期間ts1,ts2はそれぞれ上述の条件を満たしつつも、できるだけ短い方が望ましい。なぜなら、上述したように同じタイミングでの3相の線電流の和は零であるという関係を用いて、2相の線電流から残りの1相の線電流を算出するからである。
【0065】
ここで、略1パルス波形について説明する。ここでいう略1パルス波形とは、次のようなパルスを含む。例えば図2において、相電圧Vが低電圧値を採る半周期において、非常に短い期間に相電圧Vが高電圧値を維持してもよい。即ち、相電圧Vは非常に細いパルスを含んでいても良い。この非常に短い期間とは、直流電流Idcの検出に必要な最小期間よりも短い期間であり、最小期間とは例えば上述した過渡期間と変換期間とスイッチング素子のターンオン期間との和である。ただし、電流検出に必要な期間として、過渡期間、変動期間、ターンオン期間以外にも考慮すべき他の期間が存在する。このような他の期間は当業者であれば技術常識であり当然に想定される。また同様に相電圧Vが高電圧値を採る半周期において、非常に短い期間に相電圧Vが低電圧値を維持してもよい。この非常に短い期間とは、上述の最小期間よりも短い期間である。要するに、略1パルス波形とは、相電圧Vが高電圧値または低電圧値を連続して採る期間のうち最小期間より短いものを、相電圧Vの波形から無視した波形が、矩形波のパルスを一つのみ有していればよい。
【0066】
次に、直流電流Idcを検出するタイミング(即ち時点t1,t2)を生成する方法の一例について述べる。
【0067】
<直流電流の検出タイミングの生成1>
制御部3は直流電流Idcを検出するタイミングを、タイマ回路を用いて決定する。例えば図10に示すように、制御部3は周期信号生成部341とタイマ値初期化信号生成部342とタイマ回路343と転流タイミング信号生成部344と電流検出タイミング信号生成部345とを更に備えている。
【0068】
周期信号生成部341は図11に例示する周期信号を生成する。周期信号の活性/非活性は電気角60度の周期で切り替わる。この周期信号は、例えばモータ2の回転子の回転位置(機械角)を検出する回転位置検出部を用いて生成される。回転位置検出部は例えば回転子の回転位置を検出するセンサ(例えばホールセンサ)であってもよく、例えばモータ2の巻線に生じる誘起電圧またはモータ2に流れる線電流などに基づいて公知のセンサレス技術によって回転位置を算出しても良い。これによれば、ホールセンサを用いる必要がないので製造コストが抑制される。
【0069】
タイマ値初期化信号生成部342は、周期信号の活性/非活性が切り替わるたびにタイマ初期化信号SAをタイマ回路343に出力する。
【0070】
タイマ回路343は時間の経過と共にタイマ値CVを増大させるとともに、タイマ初期化信号SAを受け取る毎にタイマ値CVを初期化する。これによって、図11に例示するように、タイマ値CVは時間の経過と共に増大しつつも、電気角が60度進む度に初期化される。なお回転子の回転速度が早いほど短時間で電気角が60度進む。よって、タイマ値CVの最大値は、相電圧の角速度ωに依存する。角速度ωが高いほど短時間でタイマ値が初期化されるので、タイマ値CVの最大値はより小さい値を採る。
【0071】
転流タイミング信号生成部344は、タイマ値CVが設定値aと等しいかどうかを判断し、肯定的な判断がなされたときに転流タイミング信号SBを生成し、これをスイッチング制御部31に出力する。なお図11の例示では、初期化のタイミングでタイマ値CVと設定値aとが互いに交差するが、実際にはタイマ値CVは初期化の前後で不連続となる。よって、このタイミングではタイマ値CVは設定値aと等しくならず、転流タイミング信号SBは出力されない。
【0072】
スイッチング制御部31は、転流タイミング信号SBを受け取ったときに、スイッチング素子S1〜S6のスイッチングパターンを変更すべくスイッチング信号Sを変更する。これによって、電気角60度ごとにスイッチングパターンを変化させることができる。なおスイッチングパターンは図11(及び図2)に示すとおりの順序で採用される。
【0073】
電流検出タイミング信号生成部345は、タイマ値CVが設定値a1(<設定値a)又は設定値a2(>設定値a)と等しいかどうかを判断し、肯定的な判断がなされたときに検出タイミング信号SHを生成し、これを線電流取得部32に出力する。
【0074】
線電流取得部32は検出タイミング信号SHが入力されるたびに、上述したように直流電流Idcを線電流として検出する。
【0075】
設定値aは、例えば回転子の回転速度が最高速度である場合のタイマ値CVの最大値よりも小さい値に設定される。これにより、回転速度に依らずにタイマ値CVと設定値aとが互いに一致するタイミングが存在する。
【0076】
設定値a1は、電流検出部4のアナログ/デジタル変換に要する期間よりも期間ts1が長くなるように設定される。なお、この条件を満たすように算出された設定値a1がタイマ値CVの最小値よりも小さくなる場合には、設定値a1を図12に示すように更新する。例えばタイマ値CVの最小値と最大値との差たるタイマ振幅を、設定値a1に足して設定値a1を更新する。より具体的にはタイマ最小値、タイマ最大値及び設定値aがそれぞれ0,100,10であり、当該条件を満たすように算出された設定値a1が−5である場合、設定値a1を95に更新する。そして、電流検出タイミング信号生成部345はタイマ値CVが更新後の設定値a1と等しいときに検出タイミング信号SHを出力する。これにより、当該条件を満たして検出タイミング信号SHを出力することができる。なおタイマ振幅は、電気角が60度進むのに要する時間であり、これは角速度ωにより算出可能である。
【0077】
設定値a2は、スイッチングパターンの変化による直流電流Idcの過渡変動が所定の範囲内に収まるのに要する過渡期間よりも期間ts2が長くなるように設定される。なお、この条件を満たすように算出された設定値a2がタイマ最大値よりも大きくなる場合には、設定値a2を図13に示すように更新する。例えば設定値a2からタイマ振幅を減算して設定値a2を更新する。より具体的にはタイマ最小値、タイマ最大値及び設定値aがそれぞれ0,100,90であり、当該条件を満たすように算出された設定値a2が105である場合には、設定値a2を5に更新する。そして、電流検出タイミング信号生成部345はタイマ値CVが更新後の設定値a2と等しいときに検出タイミング信号SHを出力する。
【0078】
また設定値aは予め定められた値であっても良く、可変であってもよい。例えば設定値aを、タイマ値CVの最大値と最小値との間の中央の値に設定してもよい。これにより、設定値aがタイマ値CVの最大値または最小値に近い値に設定された場合と比較して、設定値a1,a2がタイマ値CVの最小値よりも大きく最大値よりも小さい範囲に収まりやすい。よって設定値a1,a2を更新する必要性を低減できる。
【0079】
<直流電流の検出タイミングの生成2>
制御部3は直流電流Idcを検出するタイミングを、スイッチング信号Sを生成するためのキャリアを用いて決定してもよい。例えば図14に示すように、スイッチング制御部31はキャリア生成部311と電圧指令値生成部312と比較部313とを有している。
【0080】
電圧指令値生成部312は公知の任意の手法によって相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*(図面では纏めて「V*」と表記)を生成する。例えば線電流についての指令値I*と線電流取得部32からの線電流とに基づいて、相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を生成する。なお指令値I*は例えばモータ2の回転速度についての指令値と、モータ2の回転速度とに基づいて生成され得るものの、本発明の本質とは異なるため詳細な説明は省略する。生成された相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*は図2に例示する相電圧Vu,Vv,Vwと同じ波形を有する。
【0081】
キャリア生成部311は図15に例示するように三角形状のキャリアCWを生成する。図15の例示では、キャリアCWとして二等辺三角波が示されているが、これに限らず例えば直角三角波等の任意の三角波が採用されてもよい。また複数種類の三角波が連なってキャリアCWを形成してもよい。
【0082】
比較部313はキャリアCWと相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*との比較に基づいてスイッチング信号Sを出力する。例えば相電圧指令値Vu*がキャリアCWよりも大きいときにスイッチング素子S1を導通させ、相電圧指令値Vu*がキャリアCWよりも小さいときにスイッチング素子S4を導通させる。他の相についても同様である。よって図15に例示するように、相電圧指令値のいずれかとキャリアCWとが交差する時点が、スイッチングパターンが変化するタイミング(転流タイミング)となる。
【0083】
線電流取得部32は、転流タイミングの前後においてキャリアCWが最小値または最大値を採る時点で、直流電流Idcを線電流として検出する。図15の例示では、これらの時点が検出タイミングとして示されている。例えば線電流取得部32は、相電圧指令値Vv*がキャリアCWと等しくなる転流タイミングの直前でキャリアCWが最小値を採る時点にて、直流電流Idcを線電流として検出し、当該転流タイミングの直後でキャリアCWが最大値を採る時点にて、直流電流Idcを線電流として検出する。
【0084】
なお図15の例示では、相電圧指令値Vu*がキャリアCWと等しくなる転流タイミングと、その直前でキャリアCWが最小値を採る時点との間の期間ts1’が非常に短い。この期間ts1’がアナログ/デジタル変換に要する期間よりも短いと、適切に直流電流Idcを検出できない。よって図15に例示するように、線電流取得部32はさらに前にキャリアCWが最大値を採る時点で、直流電流Idcを線電流として検出する。これによって、より適切に直流電流Idcを検出できる。同様に、転流タイミングと、その直後にキャリアCWが最小値および最大値のいずれか一方を採る時点との間の時間が短ければ、その次にキャリアが他方を採る時点で直流電流Idcを検出すればよい。これにより、直流電流Idcの過渡期間を避けて、より適切に直流電流Idcを検出できる。
【0085】
なおキャリアCWの半周期は相電圧の一周期T1の6分の1よりも短く設定される。キャリアCWの半周期が相電圧の一周期T1の6分の1よりも長い場合には、図16に例示するように、スイッチングパターンが維持される期間において、キャリアCWが最大値も最小値も採らない期間が存在し、この期間において直流電流Idcを検出できないからである。
【0086】
なおキャリアCWが直角三角波であれば、キャリアCWの一周期は相電圧の6分の1周期よりも短く設定される。
【0087】
<直流電流の検出タイミングの生成3>
ここでも制御部3は直流電流Idcを検出するタイミングを、スイッチング信号Sを生成するためのキャリアCWを用いて決定する。以下に図17を参照して詳細に説明する。なお図17の例示では代表的に相電圧指令値Vu*のみが示されている。線電流取得部32は、まず相電圧指令値のいずれかがキャリアCWと等しくなるときの、キャリアCWの値(設定値a)を算出する。より詳細には、設定値aを次式に基づいて算出する。
【0088】
a=(CW2−CW1)・ta/T ・・・(1)
ここで、CW1,CW2はそれぞれキャリアCWの最小値および最大値を示し、TはキャリアCWの半周期を示す。taは、転流タイミングを含むキャリアCWの半周期Tの始期から転流タイミングまでの時間である。
【0089】
次に線電流取得部32は、式(1)により算出された設定値aを用いて設定値a1,a2を算出する。例えば設定値aに予め定められた第1所定値を減算して設定値a1を算出し、設定値aに予め定められた第2所定値を加算して設定値a2を算出する。
【0090】
そして設定値a1,a2の両方が最小値CW1以上であり最大値CW2以下であれば、線電流取得部32は、転流タイミングを含むキャリアCWの半周期においてキャリアCWが設定値a1又は設定値a2と等しいときに、直流電流Idcを線電流として検出する。
【0091】
また図17の例示では、相電圧指令値Vu*が立ち上がってキャリアCWと交差するときのキャリアCWの値(設定値a)は、最小値CW1と近い。例えば設定値aと最小値CW1との差が第1所定値よりも小さければ、算出された設定値a1は最小値CW1よりも小さい。この場合は、線電流取得部32は次のようにして設定値a1を更新する。即ち、キャリアCWの最小値CW1の2倍から設定値a1を減算して設定値a1’を算出する。例えば最小値CW1が−1であり、設定値a1が−1.2であれば、設定値a1’は−0.8となる。そして、線電流取得部32は、相電圧指令値Vu*が立ち上がってキャリアCWと交差する時点を含む半周期よりも一つ前の半周期においてキャリアCWが設定値a1’と等しいときに、直流電流Idcを線電流として検出する。
【0092】
また図18に例示するように設定値a2がキャリアCWの最大値CW2よりも大きい場合は、次のようにして設定値a2を更新する。即ち、キャリアCWの最大値CW2の2倍から設定値a2を減算して設定値a2’を算出する。例えば最大値CW2が1であり、設定値a2が1.3である場合には、設定値a2’は0.7となる。そして線電流取得部32は、相電圧指令値とキャリアCWとが交差する半周期よりも一つ後の半周期においてキャリアCWが設定値a2’と等しいときに、直流電流Idcを線電流として検出する。
【0093】
なお図17,18の例示ではキャリアCWが二等辺三角波であるが、例えば直角三角波であってもよい。この場合、式(1)におけるTはキャリアCWの半周期ではなく1周期である。
【0094】
設定値a1が直角三角波のキャリアCWの最小値CW1よりも小さい場合は、設定値a1に、キャリアCWの最大値CW2と最小値CW1との差を加算して設定値a1’を算出する。そして、相電圧指令値がキャリアCWと交差する一周期の一つ前の一周期においてキャリアCWが設定値a1’と等しいときに、線電流取得部32は直流電流Idcを線電流として検出する。
【0095】
設定値a2が直角三角波のキャリアCWの最大値CW2よりも大きい場合は、設定値a2から、最大値CW2と最小値CW1との差を減算して設定値a2’を算出する。そして、相電圧指令値がキャリアCWと交差する一周期の一つ後の一周期においてキャリアCWが設定値a2’と等しいときに、線電流取得部32は直流電流Idcを線電流として検出する。
【0096】
第2の実施の形態.
第1の実施の形態ではスイッチングパターンが変化する毎に3相の線電流iu,iv,iwを得ることができる。一方で図9に例示するように、スイッチングパターンが維持される期間では、直流電流Idcに基づいて1相の線電流を検出できるものの、直流電流Idcに基づいて3相の線電流を検出することは困難である。そこで、第2の実施の形態では、スイッチングパターンが変化するタイミングt(0)における3相の線電流iu,iv,iwを用いて、他のタイミング(図9では時点t(1)〜t(n)、nは自然数)における3相の線電流iu,iv,iwを推定する。
【0097】
図19に例示するように、制御部3は図1の制御部3と比較して線電流推定部33を更に備えている。線電流推定部33には線電流取得部32から3相の線電流iu,iv,iwが入力される。線電流推定部33はこの3相の線電流iu,iv,iwを用いて、次式(2)〜(4)を用いて、タイミングt(0)とは異なるタイミングにおける3相の線電流iu,iv,iwを推定する。
【0098】
iu=Im・sinθi ・・・(2)
iv=Im・sin(θi−2π/3) ・・・(3)
iw=Im・sin(θi+2π/3) ・・・(4)
ここで、Imは線電流iu,iv,iwの振幅(以下、電流振幅と呼ぶ)であり、θiは線電流iu,iv,iwの位相(以下、電流位相と呼ぶ)である。これらの式(2)〜式(4)は線電流ix(xはu,v,wを代表する、以下、同様)の基本波成分についての波形の式である。
【0099】
式(2)〜式(4)によって理解されるとおり、任意のタイミングでの線電流iu,iv,iwは、電流振幅Imとそのタイミングにおける電流位相θiとを得ることで、算出される。よって、以下では、電流振幅Imと任意のタイミングにおける電流位相θiとをそれぞれ算出する。
【0100】
まず電流振幅Imの算出の一例について説明する。線電流推定部33は時点t(0)における3相の線電流iu,iv,iwから電流振幅Imを算出する。例えば線電流推定部33はまず線電流取得部32からの線電流iu,iv,iwを2相の固定座標系におけるα軸の電流iα及びβ軸の電流iβへと変換する。かかる変換として、例えば公知の絶対変換を採用する。なお、この変換は2相の線電流のみを用いて行うことができる。なぜなら残りの1相がこの2相の線電流で表すことができるからである。よって、線電流取得部32は必ずしも残りの1相の線電流を算出するというステップを必要としない。そして、線電流推定部33は電流iα,iβに基づいて次式により電流振幅Imを算出する。
【0101】
Im=sqrt(2/3)・sqrt(iα^2+iβ^2)・・・(5)
ここで、sqrt()は括弧内の値の平方根を示し、A^BはAのB乗を示す。なお、電流振幅Imは、スイッチングパターンが変化する度に算出された複数の電流振幅Imの平均値であってもよく、或いは算出された電流振幅Imをローパスフィルタに入力し、その出力を電流振幅Imとして用いても良い。
【0102】
次に、任意の時点t(k)(kは1〜nまでの自然数)における電流位相θiの算出の一例について説明する。線電流推定部33は、時点t(k)における電流位相θiを算出するに当たって、まず時点t(0)における電流位相θiを算出する。時点t(0)における電流位相θiは時点t(0)において検出された線電流iu,iv,iwから算出することが可能である。例えば線電流推定部33は次式に基づいて時点t(0)における電流位相θiたる電流位相θi(t0)を算出する。
【0103】
θi(t0)=arctan(iα/iβ) ・・・(6)
ここでarctan()は、括弧内の値の逆正接を示す。
【0104】
さて、時点t(0)における電流位相θiを用いて、時点t(k)における電流位相θiを例えば以下で説明するように算出する。ここでは、電流位相θiと相電圧の位相(以下、電圧位相と呼ぶ)との間の位相差Δθは、時点t(0),t(k)において互いに等しい、と仮定する。この仮定は、誘導性負荷2が例えばモータであれば特にモータを安定した速度で回転させる定常状態において妥当である。よって、時点t(0)における電流位相θiと電圧位相θvとを用いて位相差Δθを算出できれば、時点t(k)における電圧位相θvと位相差Δθとを用いて時点t(k)における電流位相θiを算出することができる。
【0105】
さて、時点t(0)における電流位相θiは式(6)を用いて算出される。一方、時点t(0)における電圧位相θvは次のように取得することができる。即ち、図19に示すように制御部3は電圧位相取得部38を備える。電圧位相取得部38は例えばスイッチング制御部31から相電圧指令値V*を受け取り、相電圧指令値V*に基づいて電圧位相θvを取得する。なお、相電圧指令値V*は図2の相電圧と同様の波形を有するので、その基本波成分を抽出し、電流位相θiと同様にして電圧位相θvを算出しても良い。或いは、交流線Pu,Pv,Pwに印加される相電圧を検出する電圧検出部を設け、検出された相電圧から電圧位相θvを算出しても構わない。
【0106】
線電流推定部33は時点t(0)における電流位相θiと電圧位相θvとを用いてこれらの間の位相差Δθ(=θi−θv)を算出する。なお、位相差Δθは、スイッチングパターンが変化する度に算出された複数の位相差Δθの平均値であっても良く、また算出された位相差Δをローパスフィルタに入力し、その出力を位相差Δθとして用いても良い。
【0107】
時点t(k)における電圧位相θvは、時点t(0)における電圧位相θvと同様に電圧位相取得部38によって取得される。線電流推定部33は、位相差Δθと時点t(k)における電圧位相θvとを用いて次式により時点t(k)における電流位相θiを算出する。
【0108】
θi=θv+Δθ ・・・(7)
そして、線電流推定部33は、算出した電流振幅Imと時点t(k)における電流位相θiとを用いて式(2)〜式(4)に基づいて時点t(k)における線電流ixを算出する。これにより、スイッチングパターンが維持される期間の任意の時点t(k)においても線電流iu,iv,iwを推定することができる。なお、必ずしも線電流iu,iv,iwを推定する必要はなく、いずれか二相の線電流を推定してもよい。例えば線電流iu,iv,iw二相の固定座標系に変換する場合には、線電流iw=−iu−ivであることに鑑みて二相の線電流で足りるからである。
【0109】
次に、時点t(k)における電流位相θiの算出の他の一例について説明する。なお電流振幅Imの算出と、電流振幅Imおよび時点t(k)における電流位相θiに基づく時点t(k)における線電流の算出とは、上述の算出と同様であるので、繰り返しの説明を避ける。図20に例示するように、制御部3は図19の制御部3と比較して電圧位相取得部38の替わりに角速度取得部381を更に備えている。角速度取得部381については後に述べる。
【0110】
さて電流位相θiは次式を満たす。
【0111】
θi(tk)=θi(t0)+ωΔt’ ・・・(8)
ここで、θi(tk)は時点t(k)における電流位相θiを示し、θi(t0)は時点t(0)における電流位相θiを示し、Δt’は時点t(0)からの時点t(k)までの経過時間を示し既知である。時点t(0)における電流位相θi(t0)は上述のように算出できるので、角速度ωを取得できれば時点tkにおける電流位相θi(tk)を算出できる。
【0112】
角速度ωは角速度取得部381によって取得される。以下、角速度ωの算出について詳述する。なお相電圧Vxの角速度と線電流ixの角速度とは互いに等しいので、角速度ωは電流位相θiから算出しても良く、電圧位相θvから算出しても良い。ここでは、まず電流位相θiから算出する場合について説明する。角速度ωは次式で表される。
【0113】
ω=(θi1−θi2)/ΔT ・・・(9)
ここで、θi1,θi2は、それぞれ電気角60度毎に検出された線電流iu,iv,iwの電流位相θiのうち、異なる2つの時点における電流位相θiである。例えば電気角60度毎の時点t(0)のうち、時点t(k)に最も近い2つの時点t(0)における電流位相θiである。ΔTは当該2つの時点同士の間の期間である。期間ΔTは任意の計時手段(例えばタイマ回路)を用いて取得することができる。よって、この2つの時点の間の期間における角速度ω、を式(9)に基づいて算出することができる。
【0114】
そして、角速度ωはほぼ一定であると見なして、この2つの時点の間の期間における角速度ωが時点t(0)から時点t(k)までの期間における角速度ωと等しいと仮定する。この仮定は、誘導性負荷2が例えばモータであれば特にモータを一定速度で回転させる定常状態において妥当である。
【0115】
よって、線電流推定部33は、角速度ωと、時点t(0)から時点t(k)までの期間Δt’と、時点t(0)における電流位相θiとを用いて、式(8)に基づいて、時点t(k)における電流位相θiを算出することができる。言い換えれば、線電流推定部33は、角速度ωと時点t(0)から時点t(k)までの期間Δt’とに基づく電流位相θiの進みを、時点t(0)における電流位相θiに加算して時点t(k)における電流位相θiを算出する。
【0116】
また上述のとおり、角速度ωは相電圧Vxについての角速度でもある。よって、電圧位相θvを用いて角速度ωを算出することができる。例えば任意の2つの時点における電圧位相θvたる電圧位相θv1,θv2と、これらの2つの時点の間の期間ΔT’とを用いて、次式に基づいて角速度ωを算出することができる。
【0117】
ω=(θv2−θv1)/ΔT’ ・・・(10)
したがって、電圧位相θvに基づいて算出した角速度ωを用いて、式(8)に基づいて時点t(k)における電流位相θiを算出し、続いて式(2)から式(4)に基づいて時点t(k)における線電流iu,iv,iwを算出してもよい。
【0118】
なお、角速度ωを任意の複数の時点(例えばスイッチングパターンが変化するたびに)で算出し、その平均値を角速度ωとして用いても良く、或いはその角速度ωをローパスフィルタに入力し、その出力を角速度ωとして用いても良い。
【0119】
なお当該2つの時点として時点t(0),t(k)を採用すれば、式(10)における期間ΔT’は期間Δt’と一致する。このときの式(10)を式(8)に代入すれば次式が導かれる。
【0120】
θi(tk)=θi(t0)+θv(tk)−θv(t0) ・・・(11)
線電流推定部33は式(11)に基づいて時点t(k)における電流位相θiを算出しても良い。換言すれば、時点t(k)及び時点t(0)における電圧位相θv同士の差を、時点t(0)における電流位相θiに加算して時点t(k)における電流位相θiを算出てもよい。これによれば、角速度ωを算出することなく電流位相θiを算出することができる。よってこの場合、角速度取得部381の代わりに電圧位相取得部38が設けられる。
【0121】
なお誘導性負荷2がモータであれば、モータの機械角速度(回転子の角速度)を検出する回転速度検出センサを設け、角速度取得部381が機械角速度に基づいて角速度ωを算出しても良い。機械角速度をモータの回転子の極対数で除算した値が角速度ωである。また、このモータの機械角速度は公知のセンサレス技術によって算出しても良い。
【0122】
さて、上述の例のいずれもが、時点t(k)における線電流iu,iv,iwのうち少なくとも2相の線電流を算出している。以下では、時点t(k)における1相の線電流を検出し、残りの2相の線電流のうち少なくとも1相の線電流を算出する場合について説明する。
【0123】
図21の例示では、制御部3は図19,20の制御部3と比較して一相線電流取得部39を更に備えている。一相線電流取得部39は、時点t(k)において検出した直流電流Idcを、時点t(k)におけるスイッチングパターンに基づいて決定される1相の線電流として推定する。例えば時点t(k)におけるスイッチングパターンが(100)である場合には、直流電流Idcをu相の線電流iuとして推定する。
【0124】
以上のように、一相線電流取得部39によって、時点t(k)における線電流iu,iv,iwのうち1相の線電流が検出される。
【0125】
線電流推定部33は上述したいずれかの方法に基づいて時点t(k)における電流位相θiを算出する。そして、線電流推定部33は、時点t(k)における1相の線電流と、時点t(k)における電流位相θiと、線電流の波形の式(式(2)〜式(4))とに基づいて電流振幅Imを算出する。例えば時点t(k)における1相の線電流としてu相の線電流iuが検出される場合、式(2)に基づいて電流振幅Imを算出する。
【0126】
次に、線電流推定部33は、電流振幅Imと時点t(k)における電流位相θiとを用いて、線電流の基本波成分の波形の式に基づいて、残りの2相の線電流を算出する。例えば式(3)及び式(4)に基づいて線電流iv,iwのうち少なくとも1相の線電流を算出する。
【0127】
この推定方法によれば、時点t(k)における1相の線電流を検出しているので、推定精度を向上することができる。
【0128】
また線電流推定部33は以下のようにして残りの2相の線電流のうち少なくとも1相の線電流を算出しても良い。即ち、まず線電流推定部33は時点t(0)において検出された線電流iu,iv,iwに基づいて電流振幅Imを算出する。電流振幅Imは例えば式(5)に基づいて算出される。そして、時点t(k)において検出された1相の線電流と、電流振幅Imと、線電流の波形の式とに基づいて、時点t(k)における電流位相θiを算出する。例えば1相の線電流としてu相の線電流iuが検出された場合には、式(2)に基づいて時点t(k)における電流位相θiを算出する。
【0129】
次に、線電流推定部33は、電流振幅Imと時点t(k)における電流位相θiとを用いて、線電流の波形の式(式(2)〜(4))に基づいて、残りの2相の線電流のうち少なくとも1相の線電流を算出する。例えば式(2)及び式(4)に基づいて線電流iv,iwを算出する。
【0130】
この推定方法であっても、時点t(k)における1相の線電流を検出しているので、推定精度を向上することができる。しかも時点t(k)における電流位相θiを比較的簡単に算出でき、ひいては線電流の算出を簡易にできる。
【0131】
第3の実施の形態.
第2の実施の形態では、線電流推定部33は線電流の基本波成分の波形の式を用いて任意のタイミングにおける線電流を算出した。本実施の形態では、線電流推定部33は誘導性負荷2の等価回路における電圧方程式を用いて任意のタイミングにおける線電流を算出する。以下では誘導性負荷2としてモータが採用された場合について説明する。例えばここでいうモータとは永久磁石を有するモータを含む同期モータである。
【0132】
図22に例示するように、制御部3は図19の制御部3と比較して角速度取得部381と鎖交磁束取得部382と相電圧取得部383とを更に備えている。
【0133】
また図23に例示するように、この等価回路においては、モータ2の誘導成分L2と抵抗成分R2とが、相電圧を示す交流電圧源E1と、モータ2の回転によって誘導成分L2に生じる誘起電圧を示す交流電圧源E2とに直列に接続されている。かかる等価回路においては誘導性負荷2として簡易的な等価回路が採用されるので、次式で示されるとおり電圧方程式が簡易となる。よって演算処理を簡易にできる。
【0134】
【数1】

【0135】
ここで、Lは誘導成分L2のインダクタンスを示し、Rは抵抗成分R2の抵抗値を示し、ωは線電流の角速度を示し、φxは永久磁石によるx相電機子鎖交磁束を示す。また誘起電圧は角速度ωと鎖交磁束φxとの乗算で表される。
【0136】
式(12)を変形すると式(13)が導かれる。
【0137】
【数2】

【0138】
時点t(k+1),t(k)を用いた前方差分により式(13)を変形すると次式が導かれる。なお、前方差分によらず後方差分若しくは中央差分を用いても良い。ここでは前方差分を用いた方法について説明する。
【0139】
ix(tk+1)=ix(tk)+{Vx(tk)-R・ix(tk)-ω・φx(tk)}(t(k+1)-t(k))/L・・・(14)
ここで、ix(tk+1)は時点t(k+1)における線電流ixを示し、ix(tk)は時点t(k)における線電流ixを示し、Vx(tk)は時点tkにおける相電圧Vxを示し、φx(tk)は時点tkにおけるx相の鎖交磁束を示す。
【0140】
式(14)において、相電圧Vx(tk)は相電圧取得部383によって取得される。相電圧取得部383は例えば時点tkにおける相電圧Vxを検出しても良く、或いは時点tkにおける相電圧指令値を相電圧Vxとして採用してもよい。インダクタンスLおよび抵抗値Rはモータ2に固有の値であり既知である。したがって時点tkにおける誘起電圧(角速度ωと鎖交磁束φx(tk)との乗算)が既知となれば、式(14)によって、線電流ix(tk+1)と線電流ix(tk)との関係が既知となる。
【0141】
さて、各相の誘起電圧は次式で表される。
【0142】
ω・φu=ω・φa・sqrt(2/3)・sin(θv-δ) ・・・(15)
ω・φv=ω・φa・sqrt(2/3)・sin(θv-δ-2π/3) ・・・(16)
ω・φw=ω・φa・sqrt(2/3)・sin(θv-δ+2π/3) ・・・(17)
ここで、φaは鎖交磁束についての鎖交磁束ベクトルの大きさである。鎖交磁束ベクトルの大きさφaはモータ2に固有の値であり既知である。δは、誘起電圧ベクトルと、相電圧の基本波成分についての電圧ベクトルVとの間の位相差である。誘起電圧ベクトルは、モータ2の回転子の磁極中心に相当するd軸と、d軸と直交し回転子の極間に相当するq軸とを有する回転座標系において、q軸に沿う。よって、図24に例示するように、位相差δは回転座標系においてq軸と電圧ベクトルVとの間の位相差である。
【0143】
q軸の回転位置(位相)は任意の公知の手法によって検出できる。例えばモータ2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出部を設けることで検出される。回転位置検出部は、例えば回転子の回転位置を検出するホールセンサであってもよい。あるいは例えばモータ2の巻線に生じる誘起電圧またはモータ2に流れる線電流などに基づいて公知のセンサレス技術によって回転位置を算出しても良い。これによれば、ホールセンサを用いる必要がないので製造コストが抑制される。
【0144】
また電圧位相θvは電圧位相取得部38によって上述のように検出される。以上のとおり、q軸の回転位置(位相)と電圧位相θvとを検出できるので、位相差δを得ることができる。かかる位相差δの算出は鎖交磁束取得部382によって実行され、式(15)〜式(17)に基づいて鎖交磁束φxが算出される。
【0145】
角速度ωは上述したように角速度取得部381によって取得される。したがって、鎖交磁束φxと角速度ωとの乗算により、時点tkにおける誘起電圧を求めることができる。
【0146】
以上の通り、式(14)において線電流ix(tk+1),ix(tk)以外のパラメータを得ることができる。また時点t(0)における線電流ix(t0)は線電流取得部32によって取得される。したがって、時点t(0)における線電流ix(t0)を用いて時点t(1)における線電流ix(t1)を算出することができ、同様に時点t(1)における線電流ix(t1)を用いて時点t(2)における線電流ix(t2)を算出することができる。以後、順次に時点t(k+1)における線電流ix(tk+1)を、時点t(k)における線電流ix(tk)を用いて算出することができる。
【0147】
しかも第3の実施の形態では第2の実施の形態と比較して線電流iu,iv,iwの推定精度を向上することができる。この点について以下に説明する。線電流iu,iv,iwは角速度ωを有する基本波成分のみならず、実際には高調波成分も有している。この高調波成分は式(2)〜式(4)を満たさない。よって、式(2)〜式(4)を用いた線電流の推定においては、誤差が生じ得る。一方で、線電流の高調波成分であっても式(14)を満たす。よって、等価回路の電圧方程式を用いて線電流を推定すれば、第2の実施の形態と比較して線電流の推定精度を向上することができる。
【0148】
なお、本第3の実施の形態においても、時点t(k+1)において検出される直流電流Idcを時点t(k+1)でのスイッチングパターンによって決定される1相の線電流として検出し、他の1相の線電流を式(14)に基づいて推定し、残りの1相を線電流の総和が零との関係に基づいて算出しても良い。これによって、時点t(k+1)の線電流の推定精度を向上することができる。
【0149】
また本第3の実施の形態においても、第1及び第2の実施の形態と同様に、線電流iu,iv,iwの全てを推定する必要はなく、例えば線電流取得部32によって取得される二相の線電流についてのみ、式(14)を用いて推定してもよい。
【符号の説明】
【0150】
1 インバータ
4 電流検出部
31 スイッチング制御部
32 線電流取得部
33 線電流推定部
38 電圧位相取得部
381 角速度取得部
39 一相線電流取得部
LH,LL 入力線
Pu,Pv,Pw 交流線
S1〜S6 スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導性負荷(2)に接続される3つの交流線(Pu,Pv,Pw)と、相互間に直流電圧が印加される第1及び第2の直流線(LH,LL)と、前記3つの交流線の各々と前記第1の直流線との間に設けられる第1のスイッチング素子(S1〜S3)と、前記3つの交流線の各々と前記第2の直流線との間に設けられる第2のスイッチング素子(S4〜S6)とを備える電力変換装置において、前記3つの交流線を流れる3相の線電流(iu,iv,iw)を検出する線電流検出装置であって、
前記第1及び前記第2のスイッチング素子のスイッチングパターンを制御して交流の3相電圧を前記3つの交流線に印加させ、前記相電圧は、前記交流の1周期において略1パルス波形を有し、前記略1パルス波形とは、前記相電圧が前記第1又は第2の直流線に印加される電位を連続して採る期間のうち第1期間より短いものを、前記相電圧の波形から無視した波形が、矩形波のパルスを一つのみを有する波形であり、前記第1期間は前記第1又は前記第2の直流線を流れる直流電流(Idc)の検出に必要な最小時間であるスイッチング制御部(31)と、
前記直流電流(Idc)を検出する電流検出部(4)と、
前記スイッチングパターンが変化する第1タイミング(t(0))の前の第1の時点(t1)において前記電流検出部で検出された前記直流電流を前記第1の時点での前記スイッチングパターンによって一つ決定される第1相の線電流として推定し、前記第1タイミングの後の第2の時点において前記電流検出部で検出された前記直流電流を前記第2の時点での前記スイッチングパターンによって一つ決定される第2相の線電流として推定する線電流取得部(32)と
を備える、線電流検出装置。
【請求項2】
前記第1相及び前記第2相の線電流の基本波成分の波形の式と、前記線電流取得部(32)において取得された前記第1相及び前記第2相の線電流とに基づいて、前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでの前記3相の線電流のうち少なくとも2相の線電流を推定する線電流推定部(33)を更に備える、請求項1に記載の線電流検出装置。
【請求項3】
前記相電圧についての電圧位相(θv)を取得する電圧位相取得部(38)を更に備え、
前記線電流推定部(33)は、
前記第1相及び前記第2相の線電流(iu,iv,iw)に基づいて電流振幅(Im)および前記第1タイミングにおける電流位相(θi)を算出し、
前記第1タイミングにおける前記電流位相と前記電圧位相との位相差(Δθ)を算出し、
前記第2タイミング(t(1),t(n))における前記電圧位相に前記位相差を加算して前記第2タイミングにおける前記電流位相を算出し、
前記電流振幅と前記第2タイミングにおける前記電流位相と前記波形の式とを用いて前記第2タイミングにおける前記3相の線電流のうち少なくとも2相の線電流を推定する、請求項2に記載の線電流検出装置。
【請求項4】
前記線電流推定部(33)は、
前記第1相及び前記第2相の線電流(iu,iv,iw)に基づいて電流振幅(Im)および前記第1タイミングにおける電流位相(θi)を算出し、
前記第1タイミングから前記第2タイミング(t(1),t(0))までの前記電流位相の進みを、前記第1タイミングにおける前記電流位相に加算して前記第2タイミングにおける前記電流位相を算出し、
前記電流振幅と前記第2タイミングにおける前記電流位相と前記波形の式とを用いて前記第2タイミングにおける前記3相の線電流のうち少なくとも2相の線電流を推定する、請求項2に記載の線電流検出装置。
【請求項5】
前記第2タイミング(t(1),t(n))における前記直流電流(Idc)を、前記第2タイミングにおける前記スイッチングパターンに基づいて決定される1相の線電流(iu)として取得する1相線電流取得部(39)と、
前記相電圧についての電圧位相(θv)を取得する電圧位相取得部(38)と
を更に備え、
前記線電流推定部(33)は、
前記第1相及び前記第2相の線電流(iu,iv,iw)に基づいて前記第1タイミング(t(0))における電流位相(θi)を算出し、
前記第1タイミングにおける前記電流位相と前記電圧位相との位相差(Δθ)を算出し、
前記第2タイミングにおける前記電圧位相に前記位相差を加算して前記第2タイミングにおける前記電流位相を算出し、
前記1相の線電流と、前記第2タイミングにおける前記電流位相と、前記波形の式とに基づいて、前記3相の線電流の電流振幅(Im)を算出し、
前記電流振幅と前記第2タイミングにおける前記電流位相と前記波形の式とに基づいて残りの2相の線電流(iv,iw)のうち少なくとも1相の線電流を推定する、請求項2に記載の線電流検出装置。
【請求項6】
前記第2タイミング(t(1),t(n))における前記直流電流(Idc)を、前記第2タイミングにおける前記スイッチングパターンに基づいて決定される1相の線電流(iu)として取得する1相線電流取得部(39)を更に備え、
前記線電流推定部(33)は、
前記第1相及び前記第2相の線電流(iu,iv,iw)に基づいて前記第1タイミング(t(0))における電流位相(θi)を算出し、
前記第1タイミングから前記第2タイミングまでの電流位相の進みを、前記第1タイミングにおける前記電流位相に加算して前記第2タイミングにおける前記電流位相を算出し、
前記1相の線電流と、前記第2タイミングにおける前記電流位相と、前記波形の式とに基づいて、前記3相の線電流の電流振幅(Im)を算出し、
前記電流振幅と前記第2タイミングにおける前記電流位相と前記波形の式とに基づいて残りの2相の線電流(iv,iw)のうち少なくとも1相の線電流を推定する、請求項2に記載の線電流検出装置。
【請求項7】
前記3相の線電流(iu,iv,iw)の角速度(ω)を取得する角速度取得部(381)を更に備え、
前記線電流推定部(33)は、前記第1タイミングから前記第2タイミングまでの前記電流位相の進みを、前記前記第1タイミングから前記第2タイミング(t(1),t(0))までの期間(ΔT')と前記角速度との積として算出する、請求項4又は6に記載の線電流検出装置。
【請求項8】
前記相電圧についての電圧位相(θv)を取得する電圧位相取得部(38)を更に備え、
前記線電流推定部(33)は、前記第1タイミングから前記第2タイミングまでの前記電流位相の進みを、前記第1タイミング及び前記第2タイミング(t(1),t(n))における前記電圧位相の差として算出する、請求項4又は6に記載の線電流検出装置。
【請求項9】
前記第2タイミング(t(1),t(n))における前記直流電流(Idc)を、前記第2タイミングにおける前記スイッチングパターンに基づいて決定される1相の線電流(iu)として取得する1相線電流取得部(39)を更に備え、
前記線電流推定部(33)は、
前記第1相及び前記第2相の線電流(iu,iv,iw)に基づいて電流振幅(Im)を算出し、
前記電流振幅と前記1相の線電流と前記波形の式とに基づいて、前記第2タイミングにおける電流位相(θi)を算出し、
前記電流振幅と前記第2タイミングにおける前記電流位相と前記波形の式とに基づいて残りの2相の線電流(iv,iw)のうち少なくとも1相の線電流を推定する、請求項2に記載の線電流検出装置。
【請求項10】
前記誘導性負荷についての等価回路の電圧方程式と、前記線電流取得部によって取得された前記第1相及び前記第2相の線電流とに基づいて、前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでの前記第1相及び前記第2相の線電流を推定する線電流推定部(33)を更に備える、請求項1に記載の線電流検出装置。
【請求項11】
前記誘導性負荷(2)はモータであって、
前記等価回路において、前記誘導性負荷(2)の抵抗成分(R2)及び誘導成分(L2)が、前記交流線(Pu,Pv,Pw)に印加される前記相電圧による第1電圧源(E1)と、前記モータの回転に伴って前記誘導成分に生じる誘起電圧による第2電圧源(E2)とに直列に接続される、請求項10に記載の線電流検出装置。
【請求項12】
前記第1時点(t1)から前記第1タイミング(t(0))までの期間(ts1)は、前記直流電流をアナログ値からデジタル値へ変換するのに要する期間よりも大きい、請求項1から11の何れか一つに記載の線電流検出装置。
【請求項13】
前記第1タイミング(t(0))から前記第2時点(t2)までの期間(ts2)は、前記スイッチングパターンの変化に伴う前記直流電流の過渡変動が所定の範囲内に収まるのに要する期間よりも大きい、請求項1から12の何れか一つに記載の線電流検出装置。
【請求項14】
請求項1から13の何れか一つに記載の線電流検出装置(3)と、
前記第1及び前記第2の直流線(LH,LL)と、
前記3つの交流線(Pu,Pv,Pw)と、
前記第1及び前記第2のスイッチング素子と
を備える、電力変換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−115895(P2013−115895A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258981(P2011−258981)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】